JP7840367B2 - 電気化学反応セルスタック - Google Patents

電気化学反応セルスタック

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Description

本明細書に開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、燃料電池スタックの形態で利用される。従来、複数の燃料電池セルと、Crを含有する合金材料によって構成されるマニホールドと、燃料電池セルとマニホールドとを接合するガラスシール部材とを備えるセルスタックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上述のように、燃料電池スタックは、単セルと、金属部材と、絶縁部材と、を備える。燃料電池スタックは、さらに、金属部材の表面に形成され、Tiを含有する酸化膜を備えることがある。このような燃料電池スタックにおいては、単セルまたは単セルと電気的に接続された導電部材と、金属部材の表面に形成された酸化膜と、の間に、絶縁部材が配置されることとなる。
特開2020-107593号公報
単セルまたは単セルと電気的に接続された導電部材と、酸化膜との間には、絶縁部材が介在しているため、例えば燃料電池スタックの発電時に比較的大きな電界が発生する。このとき、単セルを流れる電流が、絶縁部材を介して、Tiを含有する酸化膜にリークすると、Tiの価数変化に伴い、酸化膜におけるTiOとTiOの割合が変化することがある。TiOとTiOの割合が変化すると、酸化膜の体積が変化し、酸化膜中または酸化膜と他の部材との界面にクラックが発生し、ひいては酸化膜と他の部材とが剥離することがある。
なお、このような課題は、例えば、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う電解セル(以下、「SOEC」という。)の一形態である電解セルスタックにも共通の課題である。本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて単セルと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、単セルと、金属部材と、前記金属部材の表面に形成され、Tiを含有する酸化膜と、前記単セルまたは前記単セルと電気的に接続された導電部材と、前記酸化膜と、の間に配置された絶縁部材と、を備える。前記酸化膜におけるTiOの含有量をTiOの含有量とTiOの含有量との合計値で除した値をTiOの存在比としたとき、前記金属部材と、前記単セルまたは前記単セルと電気的に接続された導電部材と、の間に700℃で20Vの電圧を200時間印加する場合において、電圧印加後の前記TiOの存在比と電圧印加前の前記TiOの存在比との差の絶対値は、0.3以下である。
本電気化学反応セルスタックによれば、700℃で20Vの電圧を200時間印加する場合において、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.3以下である。すなわち、例えばTiOとTiOとの間の変換が抑制されることにより、酸化膜におけるTiOとTiOの割合の変化に伴って酸化膜の体積が変化することを抑制し、酸化膜中または酸化膜と他の部材との界面におけるクラックの発生を抑制することができる。
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、電圧印加後の前記TiOの存在比と電圧印加前の前記TiOの存在比との差の絶対値は、0.1以下である構成としてもよい。本構成によれば、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.1以下である。すなわち、例えばTiOとTiOとの間の変換が抑制されることにより、酸化膜におけるTiOとTiOの割合の変化に伴って酸化膜の体積が変化することを抑制し、酸化膜中または酸化膜と他の部材との界面におけるクラックの発生をより効果的に抑制することができる。
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記酸化膜は、Al、Crのうちの少なくとも1種を含有する構成としてもよい。本構成によれば、例えば金属部材がFe等の金属を含む場合に、酸化膜に含まれるAlまたはCrが、金属部材中の金属の酸化を抑制し、ひいては金属部材の酸化を抑制することができる。
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記金属部材は、0.05質量%以上のTiを含有する構成としてもよい。本構成によれば、例えば金属部材がFe等の他の金属を含む場合に、金属部材中に含まれ、比較的イオン化傾向が大きいTiが、金属部材中の他の金属の酸化を抑制し、ひいては金属部材の酸化を抑制することができる。
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記絶縁部材は、結晶化ガラスである構成としてもよい。本構成によれば、絶縁部材が結晶化ガラスであるため、単セルまたは単セルと電気的に接続された導電部材と酸化膜との間の絶縁性の確保と、絶縁部材と酸化膜との間の接合性の確保とを両立することができる。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタックや、その製造方法等の形態で実現することが可能である。
本実施形態における燃料電池スタック10の外観構成を示す斜視図 図1のII-IIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図 図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図 図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック10のYZ断面構成を示す説明図 図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図 図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図 図6のX1部のXZ断面構成を拡大して示す説明図 図3のX2部のXZ断面構成を拡大して示す説明図 テストピースの上面図 図9におけるX-Xの位置におけるテストピースの断面図
A.実施形態:
A-1.燃料電池スタック10の構成:
図1は、本実施形態における燃料電池スタック10の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック10のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック10のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸方向を上下方向と呼び、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック10は、実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されていてもよい。燃料電池スタック10は、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。
(燃料電池スタック10の全体構成)
燃料電池スタック10は、図1から図4に示すように、発電ブロック100と、末端セパレータ230と、第1プレート232と、第2プレート260と、第1ターミナルプレート240と、第2ターミナルプレート250と、絶縁部220と、第1エンドプレート210と、第2エンドプレート270と、4つのガス通路部材280と、を備える。第1エンドプレート210、絶縁部220、末端セパレータ230、第1ターミナルプレート240、発電ブロック100、第2ターミナルプレート250、第2プレート260、および第2エンドプレート270は、ほぼ同じ大きさの矩形の外形を有しており、所定の配列方向(上下方向)に、この順に重なって配置されている。
燃料電池スタック10は、図1および図4に示すように、4つの角部付近に、それぞれ、第1エンドプレート210から第2エンドプレート270まで貫通するボルト孔BHを有している。各ボルト孔BHにはボルトBが挿入されている。各ボルトBの両端部にはナットNがねじ付けられている。これらのボルトBおよびナットNにより、第1エンドプレート210から第2エンドプレート270までの部材が一体に締結されている。図2から図4に示すように、第1プレート232は末端セパレータ230に支持されており、4つのガス通路部材280は第2エンドプレート270に接続されている。
発電ブロック100は、図2から図4に示すように、所定の配列方向(上下方向)に並んで配置された複数(本実施形態では7つ)の発電単位100Uによって構成される。
(第1エンドプレート210)
第1エンドプレート210は、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)することにより形成された部材である。第1エンドプレート210は、例えばステンレス等の金属により形成されており、0.05質量%以上のTiを含有している。第1エンドプレート210の表面には、後に詳述するように、酸化膜OM2が形成されている(図8参照)。第1エンドプレート210は、図1から図4に示すように、中央付近に貫通孔212を有する矩形のフレーム状の平面部211と、平面部211から絶縁部220と反対方向(図2の上方)に突出する外側凸部213および内側凸部214と、を備えている。平面部211は、上述したボルト孔BHを構成する孔を有している。外側凸部213は、平面部211の外周縁から突出している。外側凸部213は、平面部211の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部214は、平面部211の内周縁から突出している。内側凸部214は、平面部211の内周部の全周にわたって形成されている。第1エンドプレート210は、特許請求の範囲における金属部材の一例である。
(絶縁部220)
絶縁部220は、中央付近に貫通孔を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、結晶化ガラスや、マイカ、フォルステライト等の絶縁性セラミックス等の絶縁性材料により形成されている。絶縁部220は、図2に示すように、第1エンドプレート210と末端セパレータ230との間に挟み込まれており、これにより、第1エンドプレート210と末端セパレータ230との絶縁性が確保されている。絶縁部220は、特許請求の範囲における絶縁部材の一例である。
(末端セパレータ230)
末端セパレータ230は、図2から図4に示すように、中央付近に貫通孔231を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ230は、特許請求の範囲における導電部材の一例である。
(第1プレート232)
第1プレート232は、矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。第1プレート232は、図2から図4に示すように、末端セパレータ230における貫通孔231の周縁部分に、例えば溶接により接合されている。末端セパレータ230と第1プレート232とは、発電ブロック100を燃料電池スタック10の外部空間から区画する。
第1プレート232は、発電ブロック100を構成する複数の発電単位100Uのうちの一端(図2の上端)に配された発電単位100Uに備えられる後述のインターコネクタ190に、後述の燃料極集電部材144と同一構造の接続部材を介して接続されており、これにより、この発電単位100Uと第1プレート232とが電気的に接続されている。
(第1ターミナルプレート240)
第1ターミナルプレート240は、中央付近に貫通孔241を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば表面にアルミナの酸化被膜を形成するフェライト系ステンレス等の導電材料により形成されている。第1ターミナルプレート240は、発電ブロック100を構成する複数の発電単位100Uのうちの一端(図2の上端)に配された発電単位100Uに、第1プレート232、および末端セパレータ230を介して電気的に接続されている。第1ターミナルプレート240の一端部(図2の右端部)は、発電ブロック100から側方に張り出しており、この張り出し部分は、燃料電池スタック10のプラス側の出力端子として機能する。
(第2ターミナルプレート250)
第2ターミナルプレート250は、矩形の板状の部材であり、例えば表面にアルミナの酸化被膜を形成するフェライト系ステンレス等の導電材料により形成されている。第2ターミナルプレート250は、発電ブロック100を構成する複数の発電単位100Uのうちの他端(図2の下端)に配された発電単位100Uに電気的に接続されている。第2ターミナルプレート250の一端部(図2の右端部)は、発電ブロック100から側方に張り出しており、この張り出し部分は、燃料電池スタック10のマイナス側の出力端子として機能する。
(第2プレート260)
第2プレート260は、矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。第2プレート260の周縁部は、第2ターミナルプレート250と第2エンドプレート270との間に挟み込まれており、これにより、第2ターミナルプレート250と第2エンドプレート270との絶縁性が確保されている。
(第2エンドプレート270)
第2エンドプレート270は、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)することにより形成された部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。第2エンドプレート270は、中央付近に貫通孔272を有する矩形のフレーム状の平面部271と、平面部271から第2ターミナルプレート250と反対方向(図2の下方)に突出する外側凸部273および内側凸部274と、を備えている。平面部271は、上述したボルト孔BHを構成する孔を有している。外側凸部273は、平面部271の外周縁から突出している。外側凸部273は、平面部271の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部274は、平面部271の内周縁から突出している。内側凸部274は、平面部271の内周部の全周にわたって形成されている。
(マニホールド311、312、321、322)
図1、図2および図3に示すように、燃料電池スタック10は、発電ブロック100から第2エンドプレート270まで貫通する4つの孔を有している。4つの孔は、それぞれ、酸化剤ガス供給マニホールド311、酸化剤ガス排出マニホールド312、燃料ガス供給マニホールド321、燃料ガス排出マニホールド322である。
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311は、燃料電池スタック10の外部から導入された酸化剤ガスOGを各発電単位100Uの後述の空気室313に供給するガス流路である。酸化剤ガス排出マニホールド312は、各発電単位100Uの空気室313から排出された酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック10の外部へ排出するガス流路である。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。酸化剤ガス供給マニホールド311と酸化剤ガス排出マニホールド312とは、空気室313を挟んで、互いに反対側に配されている。
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド321は、燃料電池スタック10の外部から導入された燃料ガスFGを各発電単位100Uの後述の燃料室323に供給するガス流路である。燃料ガス排出マニホールド322は、各発電単位100Uの燃料室323から排出された燃料オフガスFOGを燃料電池スタック10の外部へ排出するガス流路である。燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス供給マニホールド321と燃料ガス排出マニホールド322とは、燃料室323を挟んで、互いに反対側に配されている。
(ガス通路部材280)
4つのガス通路部材280のそれぞれは、図1から図3に示すように、本体部281と、フランジ部282と、を備えている。本体部281には、上下方向に貫通するガス貫通孔283が形成されている。フランジ部282は、本体部281の他端(図2の下端)から外側に張り出すように設けられている。フランジ部282は、複数のボルト孔284を有している。各ボルト孔284には、燃料電池スタック10を外部装置に接続するためのボルト(図示せず)が挿入される。4つのガス通路部材280に備えられる本体部281の一端(図2、図3の上端)は、第2エンドプレート270に対して例えば溶接により接合され、ガス貫通孔283は、それぞれマニホールド311、312、321、322に連通している。各本体部281には、ガスの供給または排出のためのガス配管が接続されている(図示せず)。
(発電単位100Uの全体構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図である。図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位100UのXZ断面構成を示す説明図である。図5および図6に示すように、発電単位100Uは、単セル110と、単セル用セパレータ120と、空気極フレーム130と、ガラスシール部135と、燃料極フレーム140と、燃料極集電部材144と、2つのインターコネクタ190と、2つのIC用セパレータ180と、を備える。一方のIC用セパレータ180、空気極フレーム130、単セル用セパレータ120、燃料極フレーム140、他方のIC用セパレータ180が、この順に重なって配置されている。単セル110は単セル用セパレータ120に支持され、インターコネクタ190はIC用セパレータ180に支持され、燃料極集電部材144は単セル110とインターコネクタ190との間に配されている。
図5および図6に示すように、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190は、隣り合う2つの発電単位100Uに共有されている。但し、図2に示すように、複数の発電単位100Uのうちの他端(図2の下端)に位置する発電単位100Uは、燃料極フレーム140に隣り合うIC用セパレータ180とインターコネクタ190とを備えておらず、燃料極フレーム140に第2ターミナルプレート250が重なっている。
(単セル110)
単セル110は、電解質層112と、空気極114と、燃料極116と、反応防止層118と、を備える。図5および図6に示すように、空気極114と、反応防止層118と、電解質層112と、燃料極116とが、この順に重なって配されている。本実施形態の単セル110は、燃料極116によって単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)が支持される燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、矩形の平板状の部材であって、空気極114が配された一面(図5および図6の上面)と、燃料極116が配され、一面に平行な他面(図5および図6の下面)と、を有する。電解質層112は、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含む層である。空気極114は、電解質層112より小さい矩形の外形を有する層であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含む。燃料極116は、電解質層112と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等を含む。反応防止層118は、空気極114と略同じ大きさの矩形の外形を有する層であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含む。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する機能を有する。
(単セル用セパレータ120)
単セル用セパレータ120は、図5および図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔121を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下である。単セル用セパレータ120における貫通孔121の周縁部は、電解質層112の一面(空気極114が配された面:図5および図6の上面)の周縁部に、接合部124によって接合されている。接合部124は、例えばロウ材(Agロウ)により形成されている。単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における導電部材の一例である。
(空気極フレーム130)
空気極フレーム130は、図5および図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔131を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えばマイカにより形成されている。空気極フレーム130の厚さは、0.5mm以上、5mm以下であることが好ましい。空気極フレーム130は、図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド311と空気室313とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室313と酸化剤ガス排出マニホールド312とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133と、を有している。空気極フレーム130は、特許請求の範囲における絶縁部材の一例である。
(ガラスシール部135)
ガラスシール部135は、空気極フレーム130を挟んで上下方向に対向する単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間に設けられる。ガラスシール部135は、結晶化ガラスによって構成されている。ガラスシール部135は環状であり、燃料ガス供給マニホールド321および燃料ガス排出マニホールド322のそれぞれの周りを囲むように配置されている。ガラスシール部135は、空気極フレーム130と単セル用セパレータ120との界面や、空気極フレーム130とIC用セパレータ180との界面を介した、燃料ガス供給マニホールド321および燃料ガス排出マニホールド322からの燃料ガスFGまたは燃料オフガスFOGのリークを抑制する。ガラスシール部135は、特許請求の範囲における絶縁部材の一例である。
(燃料極フレーム140)
燃料極フレーム140は、図5および図6に示すように、中央付近に略矩形の貫通孔141を有する矩形のフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極フレーム140は、図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド321と燃料室323とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室323と燃料ガス排出マニホールド322とを連通する燃料ガス排出連通流路143と、を有している。
(IC用セパレータ180)
IC用セパレータ180は、図5および図6に示すように、中央付近に貫通孔181を有する矩形のフレーム状の部材である。IC用セパレータ180は、金属により形成されており、0.05質量%以上のTiを含有している。IC用セパレータ180の表面には、後に詳述するように、酸化膜OM1が形成されている(図7参照)。IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における金属部材の一例である。
(インターコネクタ190、および、燃料極集電部材144)
インターコネクタ190は、図5および図6に示すように、矩形の平板形状の平板部191と、平板部191の一面から空気極114に向かって突出した複数の板状の空気極集電部192と、被覆層193と、を備えている。平板部191と空気極集電部192とは、導電性を有し、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。被覆層193は、導電性を有し、空気極集電部192の表面と、平板部191において空気極集電部192が配された面と、を覆うように配されている。平板部191は、IC用セパレータ180における貫通孔181の周縁部に、例えば溶接により接合されている。
燃料極集電部材144は、インターコネクタ190と燃料極116とを接続する部材であって、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等の導電性材料により形成されている。燃料極集電部材144は、図5および図6に示すように、インターコネクタ対向部146と、インターコネクタ対向部146に平行な電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備え、全体としてU字状をなしている。電極対向部145は、燃料極116に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190の平板部191に接触している。
上述したように、インターコネクタ190は、隣り合う2つの発電単位100Uに共有されている。より具体的には、図5および図6に示すように、空気極集電部192は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、隣り合う2つの発電単位100Uのうち一方に備えられる単セル110の空気極114に接合されており、これにより空気極114に電気的に接続されている。平板部191は、燃料極集電部材144を介して、隣り合う2つの発電単位100Uのうち他方に備えられる単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。これにより、隣り合う2つの発電単位100U間の電気的導通が確保されている。
但し、上述したように、複数の発電単位100Uのうち他端(図2の下端)に位置する発電単位100Uは、燃料極116側のインターコネクタ190を備えていない。この発電単位100Uに備えられる燃料極116は、燃料極集電部材144を介して第2ターミナルプレート250に接続されている。
電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位100Uの変形に追随し、燃料極集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または第2ターミナルプレート250)との電気的接続が良好に維持される。
(空気室313および燃料室323)
図5および図6に示すように、単セル用セパレータ120および単セル110と、空気極フレーム130と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、で区画される空間は、空気極114に面し、酸化剤ガスOGが流通する空気室313となっている。空気極フレーム130は、空気室313を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間をシールし、空気室313から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
また、単セル用セパレータ120および単セル110と、燃料極フレーム140と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、で区画される空間は、燃料極116に面し、燃料ガスFGが流通する燃料室323となっている。燃料極フレーム140は、燃料室323を全周にわたって外部空間から区画するとともに、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180との間をシールし、燃料室323から外部空間へガスが漏れ出ることを防ぐ役割を果たしている。
単セル用セパレータ120により、空気室313と燃料室323とが区画され、単セル110の周辺において空気極114側から燃料極116側、または燃料極116側から空気極114側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。また、IC用セパレータ180とインターコネクタ190とにより、隣り合う発電単位100U間のガスのリークが抑制される。
A-2.燃料電池スタック10の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガスOGは、ガス配管(図示せず)およびガス通路部材280を介して酸化剤ガス供給マニホールド311に供給され、酸化剤ガス供給連通流路132を介して空気室313に供給される。
また、図3および図6に示すように、燃料ガスFGは、ガス配管(図示せず)およびガス通路部材280を介して燃料ガス供給マニホールド321に供給され、燃料ガス供給連通流路142を介して燃料室323に供給される。
各発電単位100Uの空気室313に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室323に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。上述したように、インターコネクタ190は、隣り合う2つの発電単位100Uに共有されており、インターコネクタ190によって隣り合う2つの発電単位100U間の導通が確保されている。つまり、燃料電池スタック10に含まれる複数の発電単位100Uは、電気的に直列に接続されている。また、複数の発電単位100Uのうち他端(図2の下端)に位置する発電単位100Uには、第2ターミナルプレート250が電気的に接続されており、一端(図2の上端)に位置する発電単位100Uには、第1ターミナルプレート240が電気的に接続されている。これにより、燃料電池スタック10の出力端子として機能するターミナルプレート240、250から、各発電単位100Uにおいて生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック10が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
図2および図5に示すように、各発電単位100Uの空気室313から酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド312に排出された酸化剤オフガスOOGは、本体部281の内部空間を通って燃料電池スタック10の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位100Uの燃料室323から燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド322に排出された燃料オフガスFOGは、本体部281の内部空間を通って燃料電池スタック10の外部に排出される。
A-3.酸化膜OM周辺の詳細構成:
図7は、図6のX1部のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。図7には、単セル用セパレータ120の一部と、空気極フレーム130の一部と、ガラスシール部135の一部と、IC用セパレータ180の一部とが示されている。
IC用セパレータ180の表面には、酸化膜OM1が形成されている。空気極フレーム130とガラスシール部135とは、それぞれ、接合部124を介して単セル110と電気的に接続された単セル用セパレータ120と、酸化膜OM1との間に配置されている。このような構成であるため、酸化膜OM1の周辺には、例えば燃料電池スタック10の発電時に比較的大きな電界が発生する。なお、例えば燃料電池スタック10が単セル用セパレータ120を含まない構成(具体的には、単セル110の一部が発電ブロック100の外縁まで延びている構成)等においては、空気極フレーム130とガラスシール部135とが、それぞれ、単セル110と直接的に接続され、単セル110と、酸化膜OM1との間に配置されていてもよい。
酸化膜OM1は、例えば、0.1質量%以上(好ましくは0.5質量%以上)、10質量%以下のTiを含有している。具体的には、酸化膜OM1は、TiOやTiO等のTi酸化物を含有している。また、本実施形態のIC用セパレータ180は、Ti以外にも、Al、Crのうちの少なくとも1種を含有している。
図8は、図3のX2部のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。図7には、末端セパレータ230の一部と、絶縁部220の一部と、第1エンドプレート210の一部とが示されている。
第1エンドプレート210の表面には、酸化膜OM2が形成されている。絶縁部220は、インターコネクタ190、燃料極集電部材144および第1プレート232を介して単セル110と電気的に接続された末端セパレータ230と、酸化膜OM2との間に配置されている。このような構成であるため、酸化膜OM2の周辺には、例えば燃料電池スタック10による発電時には、電界が発生する。
酸化膜OM2は、Tiを含有している。具体的には、酸化膜OM2は、TiOやTiO等のTi酸化物を含有している。また、本実施形態の第1エンドプレート210は、Ti以外にも、Al、Crのうちの少なくとも1種を含有している。
本実施形態における燃料電池スタック10は、酸化膜OM1および酸化膜OM2(以下、これらをまとめて、単に「酸化膜OM」という。)のそれぞれにおける、TiOのモル数をTiOのモル数とTiOのモル数との合計値で除した値をTiOの存在比としたとき、燃料電池スタック10に700℃で20Vの電圧を200時間印加する場合において、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.3以下、好ましくは、0.1以下となるように構成されている。このような構成とする手段としては、例えば絶縁部材であるガラスシール部135、空気極フレーム130および絶縁部220の抵抗値を高くすることが挙げられる。より具体的には、絶縁部材の厚みを厚くしたり、体積抵抗値が高い材料(例えば、アルミナ)を用いたり、また、絶縁部材としてガラスを用いる場合には、ガラスに含まれる遷移金属の含有量を調整したり、ガラスの結晶化度をあげたりすることによって実現することができる。
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック10は、単セル110と、金属部材(IC用セパレータ180、第1エンドプレート210)と、金属部材の表面に形成され、Tiを含有する酸化膜OMと、単セル110または単セル110と電気的に接続された導電部材(単セル用セパレータ120、末端セパレータ230)と、酸化膜OMとの間に配置された絶縁部材(空気極フレーム130、ガラスシール部135、絶縁部220)と、を備える。酸化膜OMにおけるTiOの含有量をTiOの含有量とTiOの含有量との合計値で除した値をTiOの存在比としたとき、金属部材と、単セル110または単セル110と電気的に接続された導電部材と、の間に700℃で20Vの電圧を200時間印加する場合において、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.3以下である。
本実施形態の燃料電池スタック10によれば、700℃で20Vの電圧を200時間印加する場合において、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.3以下である。すなわち、例えばTiOとTiOとの間の変換が抑制されることにより、酸化膜OMにおけるTiOとTiOの割合の変化に伴って酸化膜OMの体積が変化することを抑制し、酸化膜OM中または酸化膜OMと他の部材との界面におけるクラックの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.1以下である。本実施形態の燃料電池スタック10によれば、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、0.1以下である。すなわち、例えばTiOとTiOとの間の変換が抑制されることにより、酸化膜OMにおけるTiOとTiOの割合の変化に伴って酸化膜OMの体積が変化することを抑制し、酸化膜OM中または酸化膜OMと他の部材との界面におけるクラックの発生をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、酸化膜OMは、Al、Crのうちの少なくとも1種を含有する。本実施形態の燃料電池スタック10によれば、例えば金属部材がFe等の金属を含む場合に、酸化膜OMに含まれるAlまたはCrが、金属部材中の金属の酸化を抑制し、ひいては金属部材の酸化を抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、金属部材は、0.05質量%以上のTiを含有する。本実施形態の燃料電池スタック10によれば、例えば金属部材がFe等の他の金属を含む場合に、金属部材中に含まれ、比較的イオン化傾向が大きいTiが、金属部材中の他の金属の酸化を抑制し、ひいては金属部材の酸化を抑制することができる。
また、本実施形態の燃料電池スタック10では、ガラスシール部135は、結晶化ガラスである。本実施形態の燃料電池スタック10によれば、ガラスシール部135が結晶化ガラスであるため、単セル110と酸化膜OMとの間の絶縁性の確保と、ガラスシール部135と酸化膜OMとの間の接合性の確保とを両立することができる。
A-5.性能評価:
次に、本実施形態の性能評価について説明する。例えば絶縁部材の抵抗値を調整することにより、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値が異なる複数の燃料電池スタック10のサンプルを作製し、当該複数のサンプルを用いて耐クラック性(クラックに対する耐性)の評価を行った。表1は、性能評価結果を表している。
(各サンプルのTiOの存在比の差の絶対値の測定)
電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値は、燃料電池スタック10を模擬したテストピースを用いて測定した。図9は、テストピースの上面図を示しており、図10は、図9におけるX-Xの位置におけるテストピースの断面図を示している。テストピースは、2つの金属部材MEと、絶縁部材IMと、2枚の金属板PLと、2つの絶縁体INと、ボルトBと、2つのナットNとから構成される。金属部材MEと、絶縁部材IMと、金属板PLと、絶縁体INとは、それぞれ中央付近に貫通孔が形成されている。
テストピースの作製方法について説明する。まず、Tiを含有する金属部材MEを、例えば1000℃で熱処理することにより、金属部材MEの表面に酸化膜OMを形成した。次に、一方の絶縁体IN、一方の金属板PL、一方の金属部材ME、絶縁部材IM、他方の金属部材ME、他方の金属板PL、他方の絶縁体INを、それぞれの貫通孔が連通するようにこの順番で重ね合わせ、貫通孔にボルトBを挿入し、ナットNを用いてすべての部材を締結することによってテストピースを作製した。
上記方法によって作製されたテストピースは、電圧印加試験に供した。電圧印加試験は、テストピースを700℃の電気炉中に設置し、20Vの電圧を200時間印加することによって行った。電圧の印加は、外部の電源に接続されたコードを2つの金属板PLのそれぞれに接続することによって行った。なお、一方の金属部材MEは、燃料電池スタック10における末端セパレータ230および単セル用セパレータ120に相当するものであり、他方の金属部材MEは、燃料電池スタック10における第1エンドプレート210およびIC用セパレータ180に相当するものであり、絶縁部材IMは、燃料電池スタック10における絶縁部220、空気極フレーム130およびガラスシール部135に相当するものである。また、絶縁体INは、燃料電池スタック10におけるいずれかの部材に相当するものではないが、金属板PLとナットNとを絶縁するために用いられている。
電圧印加前の酸化膜OMにおけるTiOおよびTiOの含有量の測定は、電圧印加試験前にテストピースの一部を切り出したものを測定用サンプルとし、当該測定用サンプルを、テストピースにおける酸化膜OMの層内で破断し、破断面をXPS法(X線電子分光法)による測定に供した。また、電圧印加後の酸化膜OMにおけるTiOおよびTiOの含有量の測定は、電圧印加試験後のテストピースを酸化膜OMの層内で破断し、破断面をXPS法による測定に供した。XPS法による測定は、ビーム径を100μmとし、結合エネルギーが452eV以上、468eV以下の範囲内において行った。TiO由来のTi2p3/2、Ti2p1/2のピークはそれぞれ455eV、461eVに、TiO由来のTi2p3/2、Ti2p1/2のピークはそれぞれ458eV、464eVに存在し、原理的にTi2p3/2ピーク面積とTi2p1/2ピーク面積の比は2:1になるため、TiOの含有量を、Ti2p3/2のピーク面積とTi2p1/2のピークの面積の比が2:1になるように固定してフィッティングを行い、フィッティングしたTi2p3/2とTi2p1/2のピーク面積の合計値を使って求めた。同様の方法でTiOの含有量を求めた。得られたTiO含有量とTiO含有量より、TiOの存在比を次の式(1)により求めた。
TiOの存在比=TiO含有量÷(TiO含有量+TiO含有量) ・・・(1)
各テストピースについて、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との絶対値の差を算出し、各テストピースの特性を評価した。なお、実際の製品(例えば燃料電池スタック10)に備えられる酸化膜におけるTiOの存在比は、一方の金属部材ME、他方の金属部材ME、絶縁部材IMに相当する部材を取り出し、それらを用いることによってテストピースにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。
(耐クラック性評価)
耐クラック性の評価は、絶縁部材の組成や絶縁部材の厚み等の条件が、各上記テストピースと同一である複数の燃料電池スタック10をサンプルとして用い、一定条件下で燃料電池スタック10を加熱した後の酸化膜OM中または酸化膜OMと他の部材との界面におけるクラックの有無によって評価を行った。70℃から700℃に2時間で昇温し、700℃で2時間保持した後、700℃から70℃に12時間で降温する加熱工程を1サイクルとし、まず、各燃料電池スタック10に対する加熱工程を280サイクル実施した後にクラックの有無を確認した。280サイクル終了後にクラックが確認されなかった燃料電池スタック10は、さらに120サイクル(合計で400サイクル)の加熱工程を実施した後にクラックの有無を確認した。評価基準は、280サイクル実施後にクラックが発生していたサンプルを不可「×」とし、280サイクル実施後にクラックが無かったものの、400サイクル実施後にクラックが発生していたサンプルを可「△」とし、400サイクル実施後にクラックが無かったサンプルを良「○」とした。なお、クラックの有無の判断は、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察により行った。
(性能評価結果)
表1は、性能評価結果を表す表である。
表1では、各サンプルの耐クラック性の評価等が示されている。表中の「電圧印加前後のTiOの存在比の差の絶対値」は、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値の値を示している。
表1に示すように、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値が0.3より大きいサンプル(S1,S2)の耐クラック性評価は、いずれも不可「×」であった。また、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値が0.3以下であって0.1より大きいサンプル(S3~S5)の耐クラック性評価は、いずれも可「△」であった。また、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値が0.1以下のサンプル(S6~S8)の耐クラック性評価は、いずれも良「○」であった。この結果から、電圧印加後のTiOの存在比と電圧印加前のTiOの存在比との差の絶対値が0.3以下、好ましくは、0.1以下の燃料電池スタック10において、クラックの発生を抑制することができることが確認された。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における燃料電池スタック10や発電単位100Uの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態における燃料電池スタック10に含まれる単セル110の個数(発電単位100Uの個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は、燃料電池スタック10に要求される出力電圧に応じて適宜決められる。
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。例えば、上記実施形態におけるガラスシール部135は、結晶化ガラスにより構成されているが、マイカや、絶縁性セラミックス等の他の絶縁材料によって構成されていてもよく、また、複数の絶縁材料を含んでいてもよい。
上記実施形態では、導電部材(単セル用セパレータ120および末端セパレータ230)には酸化膜が形成されていないが、導電部材に酸化膜が形成されていてもよい。
上記実施形態では、単セル用セパレータ120を導電部材の一例とし、IC用セパレータ180を金属部材の一例としているが、単セル用セパレータ120を金属部材の一例とし、IC用セパレータ180を導電部材の一例としてもよい。
上記実施形態では、酸化膜OMは、Al、Crのうちの少なくとも1種を含有しているが、必ずしもAl、Crのうちの少なくとも1種を含有していなくてもよい。
上記実施形態では、金属部材(IC用セパレータ180および第1エンドプレート210)は、0.05質量%以上のTiを含有しているが、必ずしもTiを含有していなくてもよい。
上記実施形態の燃料電池スタック10は、コフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、カウンターフロータイプのSOFCや、クロスフロータイプのSOFCにも適用可能である。
上記実施形態では、単セル110は、燃料極支持型の単セルであるが、電解質支持型や金属支持型等の他のタイプの単セルであってもよい。
上記実施形態では、燃料電池スタック10は、平板型の単セル110を複数備える構成であるが、本発明は、他のタイプ(例えば、筒型、扁平筒型等)の単セルを複数備える燃料電池スタックにも同様に適用可能である。
上記実施形態では、電気化学反応セルスタックが、固体酸化物形の燃料電池(SOFC)に用いられるセルスタックであったが、上記の構成は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池に用いられるセルスタック、あるいは、固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位を単セルとして備える電解セルスタックにも適用可能である。
10:燃料電池スタック 100:発電ブロック 100U:発電単位 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:貫通孔 124:接合部 130:空気極フレーム 131:貫通孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 135:ガラスシール部 140:燃料極フレーム 141:貫通孔 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 180:IC用セパレータ 181:貫通孔 190:インターコネクタ 191:平板部 192:空気極集電部 193:被覆層 196:導電性接合材 210:第1エンドプレート 211:平面部 212:貫通孔 213:外側凸部 214:内側凸部 220:絶縁部 230:末端セパレータ 231:貫通孔 232:第1プレート 240:第1ターミナルプレート 241:貫通孔 250:第2ターミナルプレート 260:第2プレート 270:第2エンドプレート 271:平面部 272:貫通孔 273:外側凸部 274:内側凸部 280:ガス通路部材 281:本体部 282:フランジ部 283:ガス貫通孔 284:ボルト孔 311:酸化剤ガス供給マニホールド 312:酸化剤ガス排出マニホールド 313:空気室 321:燃料ガス供給マニホールド 322:燃料ガス排出マニホールド 323:燃料室 B:ボルト BH:ボルト孔 N:ナット FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス OM1:酸化膜 OM2:酸化膜

Claims (5)

  1. 単セルと、
    金属部材と、
    前記金属部材の表面に形成され、Tiを含有する酸化膜と、
    前記単セルまたは前記単セルと電気的に接続された導電部材と、前記酸化膜と、の間に配置された絶縁部材と、
    を備える、電気化学反応セルスタックにおいて、
    前記酸化膜におけるTiOの含有量をTiOの含有量とTiOの含有量との合計値で除した値をTiOの存在比としたとき、前記金属部材と、前記単セルまたは前記単セルと電気的に接続された導電部材と、の間に700℃で20Vの電圧を200時間印加する場合において、電圧印加後の前記TiOの存在比と電圧印加前の前記TiOの存在比との差の絶対値は、0.3以下である、
    ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
  2. 請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
    電圧印加後の前記TiOの存在比と電圧印加前の前記TiOの存在比との差の絶対値は、0.1以下である、
    ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
  3. 請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
    前記酸化膜は、Al、Crのうちの少なくとも1種を含有する、
    ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
  4. 請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
    前記金属部材は、0.05質量%以上のTiを含有する、
    ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
    前記絶縁部材は、結晶化ガラスである、
    ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
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