以下に、本開示の実施の形態に係る希土類焼結磁石、希土類焼結磁石の製造方法、回転子および回転機を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による希土類焼結磁石の焼結状態の構造の一例を模式的に示す図である。実施の形態1による希土類焼結磁石1は、一般式(Nd,Pr,RH,R)-Fe-Bを満たし、Nd2Fe14B結晶構造を基本とする結晶粒を含む主相10を有し、主相10は、コア部とコア部を被覆するシェル部とを有する。ここで、RHは重希土類元素であり、一例ではDy,Tb,Gd(ガドリニウム),Ho(ホルミウム)であり、望ましくは、RHは、DyおよびTbの少なくとも一方を含む重希土類元素である。RはNd,Pr,RH以外から選択される1種類以上の希土類元素である。シェル部は、コア部とは異なる組成を有し、コア部を覆うように設けられる。また、希土類焼結磁石1は、主相10と主相10との間、すなわち複数の主相10の間に存在する副相20をさらに有する。副相20は、(Nd,Pr,R)-Oを主成分として表される酸化物相を基本とする相である。Oは酸素である。
実施の形態1による希土類焼結磁石1において、コア部11c,12cのNdの濃度をCNdとし、コア部11c,12cのPrの濃度をCPrとしたときに、主相10は、CNd>CPrである第1主相11と、CNd<CPrである第2主相12と、を有し、第1主相11と第2主相12とが混在している。また、第1主相11のコア部11cにおける重希土類元素RHの濃度は、第2主相12のコア部12cにおける重希土類元素RHの濃度よりも高い。すなわち、第1主相11のコア部11cにおける重希土類元素RHの濃度をC1RHとし、第2主相12のコア部12cにおける重希土類元素RHの濃度をC2RHとすると、C1RH>C2RHである。第1主相11は、コア部11cと、コア部11cとは組成が異なり、コア部11cを覆うシェル部11sと、を有する。第2主相12は、コア部12cと、コア部12cとは組成が異なり、コア部12cを覆うシェル部12sと、を有する。
あるいは、実施の形態1による希土類焼結磁石1において、コア部11c,12cのNdの濃度と重希土類元素RHの濃度との和をC(Nd,RH)としたときに、主相10は、C(Nd,RH)>CPrである第1主相11と、C(Nd,RH)<CPrである第2主相12と、を有し、第1主相11と第2主相12とが混在しているともいえる。
つまり、希土類焼結磁石1には、第1主相11および第2主相12の2種類の主相10が存在し、2種類の主相10のコア部11c,12cに着目すると、第1主相11ではNdの濃度と重希土類元素RHの濃度との和がPrの濃度よりも高く、逆に第2主相12ではPrの濃度がNdの濃度と重希土類元素RHの濃度との和よりも高いということを意味している。このように異方性磁界、すなわち磁気異方性が異なるコアシェル構造を有する2種類の主相10を混在させるとともに主相10内で重希土類元素RHを選択的に存在させることで、Ndおよび重希土類元素RHを削減しつつも、良好な着磁性を維持しながら残留磁束密度および保磁力を向上させることができる。さらに、重希土類元素RHを添加することで保磁力が大きく向上するため、温度変化に伴う磁気特性における低下の抑制にも寄与する。
ここで「C1RH>C2RH」に示される濃度差は、電子プローブマイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)を用いたマッピング分析により、第1主相11のコア部11cと第2主相12のコア部12cとにおける重希土類元素RHの検出強度に明確に差が出ていることを意味する。具体的には、第1主相11のコア部11cの重希土類元素RHの濃度については、EPMAの検出強度が重希土類元素RHの検出強度の平均より高く、第2主相12のコア部12cの重希土類元素RHの濃度については、EPMAの検出強度が重希土類元素RHの検出強度の下限付近を示しているということである。一例では、重希土類元素RHは、第1主相11のコア部11cには含まれるが、第2主相12のコア部12cにはほとんど含まれない。
また、「C(Nd,RH)>CPrである第1主相11と、C(Nd,RH)<CPrである第2主相12」に示される濃度差はEPMAを用いたマッピング分析により、Ndおよび重希土類元素RHの検出強度とPrの検出強度との間に明確に差が出ていることを意味する。具体的には、第1主相11の場合を例として挙げると、コア部11cのNdおよび重希土類元素RHの濃度については、EPMAの検出強度がNdおよび重希土類元素RHの検出強度の平均よりも高く、Prの濃度については、EPMAの検出強度がPrの検出強度の下限付近を示しているということである。第2主相12は第1主相11の場合と逆になっているといえる。
また、実施の形態1による希土類焼結磁石1は、第1主相11のコア部11cのNd濃度をC1Ndとし、第2主相12のコア部12cのNd濃度をC2Ndとし、第1主相11のコア部11cのPr濃度をC1Prとし、第2主相12のコア部12cのPr濃度をC2Prとしたとき、C1Nd>C2Nd、C1Pr<C2Prの関係式を満たす。つまり、Nd濃度については、第2主相12のコア部12cに比して第1主相11のコア部11cの方が高くなっており、逆にPr濃度については、第1主相11のコア部11cに比して第2主相12のコア部12cの方が高くなっている。ここでの濃度差も上記のEPMAを用いたマッピング分析によるNdおよびPrの検出強度に差が出ていることを意味する。具体的に、Ndの濃度の場合には、第1主相11のコア部11cのNdのEPMAの検出強度が、Ndの検出強度の平均よりも高く、第2主相12のコア部12cのNdのEPMAの検出強度が、Ndの検出強度の平均よりも低い状態であることを意味している。Prの濃度の場合には、第2主相12のコア部12cのPrのEPMAの検出強度が、Prの検出強度の平均よりも高く、第1主相11のコア部11cのPrのEPMAの検出強度が、Prの検出強度の平均よりも低い状態になっていることを意味する。つまり、Nd濃度が低い第2主相12のコア部12cにはPrが多く存在し、反対に、Pr濃度が低い第1主相11のコア部11cにはNdが多く存在していることになる。このような組織形態に制御することで、優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石1を得ることが可能となる。
また、実施の形態1による希土類焼結磁石1において、C(Nd,RH)<CPrである第2主相12よりもC(Nd,RH)>CPrである第1主相11の方を多く存在させる。言い換えれば、(Nd,RH)2Fe14Bの組成式を有する第1主相11の数が、Pr2Fe14Bの組成式を有する第2主相12の数よりも多いことを意味している。これは、(Nd,RH)2Fe14Bの組成式を有する第1主相11を増やした方が、Pr2Fe14Bの組成式を有する第2主相12を増やすよりもより優れた磁気特性および温度特性が得られるためである。さらに、このような組織形態に制御することで、全体的な結晶粒の微細化も抑制されることから、着磁性を担保しつつ、かつ従来に比して優れた磁気特性を得ることが可能となる。
また、実施の形態1による希土類焼結磁石1において、コアシェル構造のシェル部11s,12sに着目し、シェル部11s,12sのNdの濃度をSNdとし、シェル部11s,12sのPrの濃度をSPrとし、シェル部11s,12sの重希土類元素RHの濃度をSRHとしたとき、第1主相11は、CNd>SNd、CPr<SPr、CRH>SRHの関係式を満たし、第2主相12は、CNd<SNd、CPr>SPr、CRH<SRHの関係式を満たす。具体的には、第1主相11のシェル部11sではNdおよび重希土類元素RHの濃度がコア部11cよりも低い代わりに、Prの濃度がコア部11cよりも高い。また、第2主相12のシェル部12sではPrの濃度がコア部12cよりも低い代わりに、Ndおよび重希土類元素RHの濃度がコア部12cよりも高い。
あるいは換言すると、実施の形態1による希土類焼結磁石1において、コアシェル構造のシェル部11s,12sに着目し、シェル部11s,12sのNdの濃度および重希土類元素RHの濃度の和をS(Nd,RH)とし、シェル部11s,12sのPrの濃度をSPrとしたとき、第1主相11は、C(Nd,RH)>S(Nd,RH)、CPr<SPrの関係式を満たし、第2主相12は、C(Nd,RH)<S(Nd,RH)、CPr>SPrの関係式を満たす。具体的には、第1主相11のシェル部11sではNdの濃度および重希土類元素RHの濃度の和がコア部11cよりも小さい代わりに、Prの濃度がコア部11cよりも高い。また、第2主相12のシェル部12sではPrの濃度がコア部12cよりも小さい代わりに、Ndの濃度および重希土類元素RHの濃度の和がコア部12cよりも高い。
第1主相11のようにPrの濃度が高いシェル部11sを有する主相10を形成させることで、保磁力を向上させることができる。さらに、第2主相12のようにNdの濃度および重希土類元素RHの和が高いシェル部12sを有する主相10を形成させることで、保磁力を維持させつつ残留磁束密度の低下を抑制することができる。このような組織形態となるように選択的に制御することで、希土類焼結磁石1は、従来に比して優れた磁気特性を発揮することが可能となる。
また、主相10は、表面の少なくとも一部に重希土類元素RHを含有する重希土類元素含有層31を有する。つまり、主相10、すなわち第1主相11および第2主相12の表面の少なくとも一部には、重希土類元素RHが存在する。より具体的には、コア部11c,12cには重希土類元素RHが入り込んでいるが、シェル部11s,12sの外周面の少なくとも一部にさらに重希土類元素RHが存在している。このように、第1主相11および第2主相12のRのサイトに重希土類元素RHが入ることで保磁力が上がる。このような効果を得るためには、主相10における重希土類元素RHの割合は、0at.%よりも大きく10at.%以下であることが望ましい。
さらに、主相10の結晶粒の平均粒径は、100μm以下にすることが好ましく、磁気特性向上のために、0.5μm以上50μm以下にすることがより好ましい。さらには、1μm以上10μm以下程度とすることで、熱間加工から製造される微細組織とは異なる粒径となり、良好な着磁性能が維持され、従来に比して優れた磁気特性を有する希土類焼結磁石1とすることが可能になる。
実施の形態1による希土類焼結磁石1は、磁気特性をさらに向上させる添加元素Mを含有していてもよい。添加元素Mは、Ga,Cu,Al,Co,Zr,Ti,NbおよびMnの群から選択される1種類以上の元素である。したがって、実施の形態1による希土類焼結磁石1は、RHをDy,Tb,GdおよびHoの群から選択される1種類以上の元素である重希土類元素とし、RをNd,Prおよび重希土類元素RH以外の希土類元素とすると、一般式が(NdaPrbRcRHd)FeeBfMgで表現される。a,b,c,d,e,f,gは、以下の関係式を満足することが望ましい。
5≦a+b≦20
0<c+d<(a+b)
0<d<10
70≦e≦90
0.5≦f≦10
0≦g≦5
a+b+c+d+e+f+g=100at.%
実施の形態1による希土類焼結磁石1は、RをNd,Prおよび重希土類元素RH以外から選択される1種類以上の希土類元素とすると、一般式(Nd,Pr,RH,R)-Fe-Bを満たし、Nd2Fe14B結晶構造を基本とする結晶粒を含む主相10において、コア部11c,12cとコア部11c,12cを被覆するシェル部11s,12sとを有する主相10が存在し、主相10は、CNd>CPrである第1主相11と、CNd<CPrである第2主相12と、を有し、第1主相11の重希土類元素RHの濃度は、第2主相12の重希土類元素RHの濃度よりも高く、第1主相11と第2主相12とが混在している。このような構成によって、Ndおよび重希土類元素RHの使用を抑えながら、従来に比して磁気特性および着磁性を向上させた希土類焼結磁石1を得ることができる。
特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石と実施の形態1による希土類焼結磁石1とを比較する。特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石では、重希土類元素RHを必須とする1種類以上の希土類元素を有し、コア部とシェル部とから構成される1種類の主相粒子を有している。つまり、特許文献1では、R-T-B系焼結磁石内のすべての主相粒子に重希土類元素RHが含まれることになる。一方、実施の形態1による希土類焼結磁石1では、主相10は、第1主相11と第2主相12とを有し、重希土類元素RHの濃度は、第1主相11に比して第2主相12の方が少なくなっている。一例では、第1主相11のコア部11cには、重希土類元素RHが含まれるが、第2主相12のコア部12cには、重希土類元素RHはほとんど含まれない。つまり、重希土類元素RHが主相10内で選択的に配置されるようにしている。このように、1種類しかない主相のすべてに重希土類元素RHが含まれるようにしなければならない特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石に比して、第1主相11と、第1主相11に比して重希土類元素RHの濃度が少ない第2主相12と、を有する主相10を備える実施の形態1による希土類焼結磁石1の方が、重希土類元素RHの使用量を抑えることができる。特に、第2主相12に重希土類元素RHがほとんど含まれない場合には、重希土類元素RHが選択的に配置されることになり、特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石に比して、重希土類元素RHの使用量を抑えることができる。
特許文献2に記載の技術で製造した希土類磁石と実施の形態1による希土類焼結磁石1とを比較する。特許文献2に記載の技術で製造した希土類磁石で実施の形態1による希土類焼結磁石1と同等の磁気特性を得ようとする場合には、後述する実施例に示されるように、実施の形態1による希土類焼結磁石1に比してより多くの重希土類元素RHを入れなければならない。つまり、実施の形態1による希土類焼結磁石1は、同じ磁気特性を得ようとした場合に、特許文献2に記載の技術に比して重希土類元素RHの使用量を抑えることができる。あるいは、特許文献2に記載の技術で製造した希土類磁石における重希土類元素RHの含有量を、実施の形態1,2に係る希土類焼結磁石1における重希土類元素RHの含有量と同じとした場合には、特許文献2に記載の技術で製造した希土類磁石の磁気特性は、実施の形態1,2に係る希土類焼結磁石1の磁気特性よりも低いものとなる。
実施の形態1による希土類焼結磁石1では、第1主相11および第2主相12は、C1Nd>C2Nd、C1Pr<C2Prの関係式を満たすようにした。あるいは、第2主相12の数よりも第1主相11の数の方が多くなるようにした。あるいは、第1主相11はCNd>SNd、CPr<SPr、CRH>SRHの関係式を満たし、第2主相12はCNd<SNd、CPr>SPr、CRH<SRHの関係式を満たすようにした。これによっても、Ndおよび重希土類元素RHの使用を抑えながら、磁気特性および着磁性を向上させた希土類焼結磁石1を得ることができる。
さらに、第1主相11および第2主相12の表面の少なくとも一部に重希土類元素RHが存在するようにした。すなわち、第1主相11および第2主相12は、それぞれの表面の少なくとも一部に重希土類元素含有層31を有する。これによっても、重希土類元素RHの使用を抑えながら、保磁力を従来に比して向上させるとともに残留磁束密度の著しい低下を抑制した希土類焼結磁石1を得ることができる。すなわち、従来に比して希土類焼結磁石1の磁気特性を向上させることができるという効果を有する。
さらに、主相10が重希土類元素RHを含むことで、従来に比して保磁力が大きく向上した希土類焼結磁石1が得られる。また、後述する実施例に示されるように、保磁力の温度係数も従来に比して良好な希土類焼結磁石1が得られる。このため、希土類焼結磁石1に熱負荷を与えても、保磁力は従来に比して大きくなり、従来に比して保磁力の温度上昇による低下も緩やかとなる。つまり、従来の希土類焼結磁石に比して保磁力が大きく向上するため、希土類焼結磁石1に熱負荷を与えたときの磁気特性も従来に比して良好なものとなる。
実施の形態2.
図2は、実施の形態2による希土類焼結磁石の焼結状態の構造の一例を模式的に示す図である。なお、実施の形態1と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。実施の形態2による希土類焼結磁石1は、主相10と、副相20と、を有する。
主相10は、実施の形態1と同様の構造を有する。つまり、主相10は、コアシェル構造を有する第1主相11および第2主相12を有し、コア部11c,12cの組成およびシェル部11s,12sの組成は、実施の形態1で説明したものと同様である。ただし、実施の形態2では、主相10の表面には、重希土類元素含有層31は存在していてもよいし、していなくてもよい。
副相20は、(Nd,Pr,RH,R)-Oを主成分として表される酸化物相を基本とする相である。つまり、実施の形態2では、副相20は、重希土類元素RHを含む。重希土類元素RHは、副相20の全体にわたって分布している。一例では、重希土類元素RHは、副相20の内部に均一に分布している。
このように、実施の形態2では、主相10と主相10との間に、重希土類元素RHを有する副相20が存在する。副相20内には均一に重希土類元素RHが分布しており、副相20と接する主相10の表面の一部には、重希土類元素RHが入り込んでいるとも考えることができる。つまり、重希土類元素RHは、シェル部11s,12sの一部に入り込んでいると考えられる。このため、実施の形態1と同様に、希土類焼結磁石1の保磁力を向上させながら残留磁束密度の低下を抑えることができる。
図2に示されるように、希土類焼結磁石1の中で、主相10は、副相20を介さずに他の主相10と接触したり、副相20を介して、他の主相10と接触したりする。すなわち、主相10の表面の少なくとも一部は副相20と接している状態となる。また、副相20には、重希土類元素RHが含まれている。このため、主相10の表面の少なくとも一部は、重希土類元素RHを含む副相20によって覆われていることになる。このことから、主相10の表面の少なくとも一部に、具体的には副相20と接する主相10の表面に、重希土類元素RHが存在しているということができる。つまり、同じ希土類焼結磁石1について、主相10と副相20との界面に注目して、重希土類元素RHの分布を示したものが実施の形態1であり、副相20に注目して、重希土類元素RHの分布を示したものが実施の形態2である。このように、実施の形態1および実施の形態2は、同じ希土類焼結磁石1を別の角度から見たものということができる。
実施の形態2によっても、実施の形態1と同様に、重希土類元素RHの使用を抑えながら、保磁力を従来に比して向上させるとともに残留磁束密度の著しい低下を抑制した希土類焼結磁石1を得ることができる。あるいは、従来に比して少ない重希土類元素RHの量で、従来のものと同等以上の磁気特性を有する希土類焼結磁石1を得ることができる。また、従来の希土類焼結磁石に比して保磁力が大きく向上するため、希土類焼結磁石1に熱負荷を与えたときの磁気特性も従来に比して良好なものとなる。すなわち、従来に比して希土類焼結磁石1の磁気特性を向上させることができるという効果を有する。
実施の形態3.
図3は、実施の形態3による希土類焼結磁石の焼結状態の構造の一例を模式的に示す図である。実施の形態3による希土類焼結磁石1は、主相10と、副相20と、を有する。主相10は、実施の形態1で説明したように第1主相11および第2主相12を含む。副相20は、主相10間に存在する。
実施の形態3による希土類焼結磁石1では、希土類元素RにLa(ランタン),Sm(サマリウム)を選択する場合を示す。希土類元素RにLa,Smを選択する場合には、Ndおよび重希土類元素RHの使用を抑えながら、磁気特性を向上させ、従来に比して優れた着磁性を有するという効果がさらに大きくなる。この例では、主相10は、(Nd,Pr,RH,La,Sm)2Fe14Bの組成式を有する。正方晶R2Fe14B結晶構造を有する希土類焼結磁石1の希土類元素RをLaおよびSmを含む希土類元素とする理由は、分子軌道法を用いた磁気的相互作用エネルギの計算結果から、LaとSmとを添加した組成とすることで、温度上昇に伴う磁気特性の低下を大きく抑制することのできる実用的な希土類焼結磁石1が得られるためである。また、LaとSmとを意図的に副相20の一例である粒界にも偏析させることによって、相対的にNdおよびPrを主相10に拡散させ、主相10の結晶磁気異方性を高めることができる。これによって、主相10内において磁気異方性の高い部分と低い部分とが存在するコアシェル構造が形成され、CNd>CPrである第1主相11と、CNd<CPrである第2主相12と、が混在し、第1主相11のコア部11cにおける重希土類元素RHの濃度は、第2主相12のコア部12cにおける重希土類元素RHの濃度よりも高い希土類焼結磁石1ができやすい状態を形成する。
なお、LaとSmとの添加量が多過ぎると、磁気異方性定数および飽和磁気分極の高い元素であるNdおよびPrの量が減少し、磁気特性の低下を招いてしまう。このため、Nd,Pr,LaおよびSmの組成比率をそれぞれA,B,CおよびDとしたとき、(A+B)>(C+D)とすることが好ましい。
実施の形態3による希土類焼結磁石1においては、R=La,Smとしたとき、実施の形態1,2における第1主相11および第2主相12に加え、副相20を有する。副相20は、主成分が(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Oとして表される酸化物相を基本とする結晶性の第1副相21と、主成分が(Nd,Pr,RH,La)-Oとして表される結晶性の第2副相22と、を有する。副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いという特徴を有する。つまり、第1副相21は、第2副相22に比してSm濃度が高いSm濃化部41を形成している。これにより、室温の磁気特性のみならず、温度上昇に伴う磁気特性の低下を抑制する効果を奏する。
ここで、「Smの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高い」とは、EPMAを用いたマッピング分析により、第2副相22よりも第1副相21においてSmの検出強度が平均して高いことを意味する。
結晶性の副相20は、結晶性の第1副相21および結晶性の第2副相22の総称であり、主相10の間に存在する。結晶性の第1副相21は、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Oで表され、結晶性の第2副相22は、(Nd,Pr,RH,La)-Oで表される。ここで、(Nd,Pr,RH,La,Sm)は、Nd,Prの一部が重希土類元素RH、LaおよびSmによって置換されていることを意味している。なお、ここでは主成分の元素を括弧内に記載しているので、第1副相21および第2副相22は、括弧内に示される元素のほかに他の成分を微量含んでいてもよい。一例では、(Nd,Pr,RH,La)-Oで表される第2副相22は、極微量のSmを含んでいる。
実施の形態3による希土類焼結磁石1において、主相10と副相20とでは、LaおよびSmの濃度差が存在し、LaおよびSmは、主相10よりも副相20に偏析している。つまり、第1副相21および第2副相22におけるLaの濃度の和は、主相10におけるLaの濃度以上であり、第1副相21および第2副相22におけるSmの濃度の和は、主相10におけるSmの濃度以上である。具体的には、副相20のLaおよびSmの濃度は、主相10のLaおよびSmの濃度以上である。ここでの主相10のLaの濃度は、第1主相11のLaの濃度と第2主相12のLaの濃度との和である。つまり、第1副相21および第2副相22におけるLaの濃度の和は、第1主相11および第2主相12におけるLaの濃度の和よりも高い。また、主相10のSmの濃度は、第1主相11のSmの濃度と第2主相12のSmの濃度との和である。つまり、第1副相21および第2副相22におけるSmの濃度の和は、第1主相11および第2主相12におけるSmの濃度の和よりも高い。
ここで、主相10に含まれるLa濃度をXとし、第1副相21に含まれるLa濃度をX1とし、第2副相22に含まれるLa濃度をX2とし、主相10に含まれるSm濃度をYとし、第1副相21に含まれるSm濃度をY1とし、第2副相22に含まれるSm濃度をY2としたときに、次式(1)の関係が満たされる。
1<(Y1+Y2)/Y<(X1+X2)/X ・・・・(1)
さらに、磁気特性向上の観点から、主相10に含まれるNdおよびPrの濃度に対しては、次式(2)、(3)の関係が満たされる。
(CNd+SNd)>(X+Y) ・・・・(2)
(CPr+SPr)>(X+Y) ・・・・(3)
なお、上記では、主相10のLaの濃度は、第1主相11および第2主相12におけるLaの濃度の和であり、主相10のSmの濃度は、第1主相11および第2主相12におけるSmの濃度の和であるとした。これは、La,Smが、ともに主相10よりも副相20に偏析していることを示すものである。ただし、局所的に見た場合には、第1主相11および第2主相12におけるLaおよびSmのそれぞれの濃度の和と、第1副相21および第2副相22におけるLaおよびSmのそれぞれの濃度の和と、が上記した関係を満たさない場合もあり得る。このため、より具体的には、主相10のLaの濃度は、第1主相11および第2主相12におけるLaの濃度の平均を示し、主相10のSmの濃度は、第1主相11および第2主相12におけるSmの濃度の平均を示すものである。この場合には、副相20のLaの濃度、すなわち第1副相21および第2副相22におけるLaの濃度の和は、第1副相21および第2副相22におけるLaの濃度の平均を意味し、副相20のSmの濃度、すなわち第1副相21および第2副相22におけるSmの濃度の和は、第1副相21および第2副相22におけるSmの濃度の平均を意味するものとなる。
Laは、製造工程、特に熱処理過程で粒界に高濃度に存在することによって、相対的にNdおよびPrを主相10に拡散させる。この結果、実施の形態3における希土類焼結磁石1は、主相10のNdおよびPrが粒界で消費されずに結晶磁気異方性が向上する。Smにおいても、主相10に比して副相20、特に第1副相21に高濃度に存在するため、Laと同様に相対的にNdを主相10に拡散させ、結晶磁気異方性を向上させる。
実施の形態2で説明したように、副相20は重希土類元素RHを含むので、第1副相21および第2副相22は重希土類元素RHを含むが、実施の形態3では第1副相21と第2副相22とで重希土類元素RHの分布が異なる。Sm濃度が第1副相21よりも低い第2副相22では、重希土類元素RHは、第2副相22内に均一に分布している。一方、Sm濃化部41を形成している第1副相21では、重希土類元素RHは、第1副相21内に均一に分布しているのではなく、第1副相21の外郭とSm濃化部41との間、すなわち第1副相21の外郭の内周部に選択的に分布している。具体的には、第1副相21のSm濃度が高いSm濃化部41の外郭を選択的に取り囲むように重希土類元素RHが存在する。このことから、第1副相21は、Sm濃化部41と、Sm濃化部41の外郭を選択的に取り囲む重希土類元素RHが存在する重希土類元素含有部42と、を有するともいえる。第1副相21の外郭は、第1副相21と主相10との境界部である。
実施の形態2と同様に、主相10と主相10との間に、重希土類元素RHを有する第1副相21および第2副相22が存在する。このため、重希土類元素RHを有する第1副相21および第2副相22と接する主相10の表面の一部には、重希土類元素RHが入り込んでいると考えることができる。つまり、副相20の重希土類元素RHは、シェル部11s,12sの一部に入り込んでいると考えられる。このため、実施の形態3による希土類焼結磁石1でも、実施の形態1と同様に、希土類焼結磁石1の保磁力を向上させながら残留磁束密度の低下を抑えることができる。
なお、実施の形態3による希土類焼結磁石の断面を電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(Field Emission-Electron Probe Micro Analyzer:FE-EPMA)で分析すると、図3のように、コア部11cに重希土類元素RHが分布している第1主相11と、コア部12cに重希土類元素RHがほとんど分布していない第2主相12と、を有する主相10が存在し、主相10と主相10との間に副相20が存在していることが確認される。また、副相20には、Sm濃化部41を有する第1副相21と、第1副相21よりもSm濃度が低い第2副相22と、が存在することも確認される。第2副相22では、上記したように重希土類元素RHであるTbが均一に分布している一方、第1副相21では、Tbの分布に偏りが生じていることも確認される。また、第1副相21の中のSm濃度が高くなっているSm濃化部41の周囲を選択的に取り囲むように重希土類元素含有部42が存在していることも確認される。さらに、Sm濃化部41の中には、重希土類元素RHはほとんど存在していないこと、Sm濃化部41の周囲に選択的に分布している重希土類元素RHの濃度は、第2副相22の内部に全体的に分布している重希土類元素RHの濃度よりも高くなっていることも確認される。
次に、LaおよびSmが正方晶R2Fe14B結晶構造のどの原子サイトにおいて置換されているかについて説明する。図4は、正方晶Nd2Fe14B結晶構造における原子サイトを示す図である。なお、図4に示される結晶構造は、一例では、下記に示す参考技術文献1のFIG.1に記載されている。置換されるサイトは、バンド計算およびハイゼンベルグモデルの分子場近似によって、置換による安定化エネルギを求め、そのエネルギの数値によって判断される。
(参考技術文献1)J.F.Herbst et al. “Relationships between crystal structure and magnetic properties in Nd2Fe14B”. PHYSICAL REVIEW B. 1984, Vol.29, No.7, p. 4176-4178.
まず、Laにおける安定化エネルギの計算方法について説明する。Laにおける安定化エネルギは、Nd8Fe56B4結晶セルを用いて、(Nd7La1)Fe56B4+Ndと、Nd8(Fe55La1)B4+Feと、のエネルギ差によって求めることができる。エネルギの値が小さいほど、そのサイトに原子が置換された場合に、より安定である。すなわち、Laは、原子サイトの中で、エネルギが最も小さくなる原子サイトに置換されやすい。この計算では、Laが元の原子と置換された場合に、正方晶R2Fe14B結晶構造における格子定数は、原子半径の違いによって変わらないとしている。表1は、環境温度を変えた場合の各置換サイトにおけるLaの安定化エネルギを示す表である。
表1によると、Laの安定な置換サイトは、1000K以上の温度では、Nd(f)サイトであり、温度293Kおよび500Kでは、Fe(c)サイトである。実施の形態3による希土類焼結磁石1は、後述するように、希土類焼結磁石1の原料を1000K以上の温度に加熱して溶融した後、急冷される。このため、希土類焼結磁石1の原料は、1000K以上、すなわち727℃以上、好ましくは1300K程度、すなわち1027℃の状態が維持されていると考えられる。その際、LaはNd(f)サイトまたはNd(g)サイトに置換されていると考えられる。ここで、エネルギ的に安定なNd(f)サイトに優先的にLaが置換されると考えられるが、Laの置換サイトの中でエネルギ差の小さいNd(g)サイトへの置換もあり得る。このため、Nd(g)サイトもLaの置換サイトの候補として挙げられている。
さらに、後述する製造方法によって希土類焼結磁石1を製造した場合には、焼結時には1000K以上であるものの、後述する第1次時効工程、第2次時効工程、さらには第3次時効工程、第4次時効工程および冷却工程を経ることで、幾度となく表1に記載のFe(c)サイトがエネルギ的に安定な温度帯で保持される。言い換えれば、主相10のNdサイトにおけるLaの置換は不安定なエネルギ状態で保たれていることになる。つまり、希土類焼結磁石1の原料段階においては、Laは主相10のNdサイトに主に置換されていたが、後述する製造方法では、主相10のNdサイトに対して、敢えて不安定なエネルギ状態の温度域で幾度となく希土類焼結磁石1を保持することにより、主相10のNdサイトからある程度のLaが選択的に放出された結果、Laは副相20に偏析することになる。この結果、主相10はコアシェル構造という特徴的な構造形成を促進していることになる。
次に、Smにおける安定化エネルギの計算方法について説明する。Smの安定化エネルギについては、(Nd7Sm1)Fe56B4+Ndと、Nd8(Fe55Sm1)B4+Feと、のエネルギ差によって求めることができる。原子が置換されることによって、正方晶R2Fe14B結晶構造における格子定数が変化しないとした点については、Laの場合と同様である。表2は、環境温度を変えた場合の各置換サイトにおけるSmの安定化エネルギを示す表である。
表2によると、Smの安定な置換サイトは、Laとは異なり、いずれの温度においても、Nd(g)サイトである。Smにおいても、エネルギ的に安定なNd(g)サイトに優先的に置換されると考えられるが、Smの置換サイトの中でエネルギ差の小さいNd(f)サイトへの置換もあり得る。
後述する製造方法によって希土類焼結磁石1を製造した場合には、エネルギ的には主相10のNd(g)サイトへの置換が最も安定である。しかし、上記した通り、Laにおいて主相10のNdサイトへの置換が不安定になる温度域で保持することで、一部のSmもLaと一緒に主相10のNdサイトから放出され、副相20に偏析する。この結果、LaおよびSmの濃度は主相10と副相20とで濃度差が存在し、第1副相21および第2副相22におけるLaの濃度の和は、主相10におけるLaの濃度以上であり、第1副相21および第2副相22におけるSmの濃度の和は、主相10におけるSmの濃度以上である。より具体的には、第1副相21および第2副相22におけるLaの濃度の平均は、第1主相11および第2主相12におけるLaの濃度の平均以上であり、第1副相21および第2副相22におけるSmの濃度の平均は、第1主相11および第2主相12におけるSmの濃度の平均以上である。つまり、LaおよびSmは、副相20に偏析するといえる。
LaおよびSmで比較すると、エネルギ的な観点から、不安定なエネルギ状態の温度域で保持されるLaの方が、圧倒的に副相20に偏析しやすいことがわかる。これにより、LaおよびSmの濃度を同程度で調製された希土類焼結磁石1の場合、希土類焼結磁石1に存在するLaとSmとでは、Laの方が副相20への偏析割合が大きくなる。この温度領域で幾度となく保持されることにより、副相20において、偏析割合の少ないSmの濃度差が生まれ、第1副相21と第2副相22とが形成される。これにより、主相10におけるコアシェル構造の形成を促進させていることになる。
今回、図4に示されるように代表的にNdについての説明とするが、Di(ジジム)に代表されるように、NdとPrとは混合物として産出されることから、NdおよびPrのエネルギ準位が近いと考えられる。このため、NdをPrに置き換えた場合でも同様のことがいえる。NdおよびPrの2種類を存在させることで、2種類のコアシェル構造を有する主相10を形成させることができる。
以上のように、実施の形態3の希土類焼結磁石1は、RはNd,Pr,RH以外から選択される1種類以上の希土類元素である場合に、一般式(Nd,Pr,RH,R)-Fe-Bを満たし、Nd2Fe14B結晶構造を基本とする結晶粒を含む主相10を有し、主相10は、コア部11c,12cとコア部11c,12cを被覆するシェル部11s,12sとを有し、R=La,Smとしたとき、実施の形態1における第1主相11および第2主相12に加え、副相20を有する。副相20は、主成分が(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Oで表される酸化物相を基本とする結晶性の第1副相21と、主成分が(Nd,Pr,RH,La)-Oで表される結晶性の第2副相22と、を有し、Smの濃度については、第2副相22に比して第1副相21の方が高くなるようにし、第1副相21は、Smが選択的に分布したSm濃化部41を有する。つまり、2種類の主相10および2種類の副相20が存在するようにした。これにより、磁気特性の温度特性など、磁気特性が従来に比して優れた希土類焼結磁石1の提供が可能になる。また、RをLa,Smとすることで、主相10は、C(Nd,RH)>CPrである第1主相11と、C(Nd,RH)<CPrである第2主相12と、が混在している状態となる。言い換えれば、希土類焼結磁石1には2種類の第1主相11および第2主相12を有する主相10が存在し、2種類の主相10のコア部11c,12cに着目すると、第1主相11ではNd濃度がPr濃度よりも高く、逆に第2主相12ではPr濃度がNd濃度よりも高く、第1主相11の重希土類元素RHの濃度は、第2主相12の重希土類元素RHの濃度よりも高くなるような、2種類のコアシェル構造を有する主相10が生じやすくなる。この結果、Ndおよび重希土類元素RHの使用を従来に比して抑えながら、磁気特性を向上させ、従来に比して優れた着磁性を有するという効果をさらに高めることができる。
また、実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、重希土類元素RHの使用を抑えながら、保磁力を従来に比して向上させるとともに残留磁束密度の著しい低下を抑制した希土類焼結磁石1を得ることができる。また、従来の希土類焼結磁石に比して保磁力が大きく向上するため、希土類焼結磁石1に熱負荷を与えたときの磁気特性も従来に比して良好なものとなる。すなわち、従来に比して希土類焼結磁石1の磁気特性を向上させることができるという効果を有する。
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態1,2,3で説明した希土類焼結磁石1を製造する方法について説明する。図5は、実施の形態4による希土類焼結磁石の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。図5に示されるように、希土類焼結磁石1の製造方法は、重希土類元素RHを含む希土類焼結磁石1に重希土類元素RHを拡散させる前の焼結体である拡散前駆体の原料となる希土類焼結磁石合金を製造する希土類焼結磁石合金製造工程(ステップS10)と、拡散前駆体を形成する拡散前駆体製造工程(ステップS20)と、拡散前駆体に重希土類元素RHを拡散させる粒界拡散工程(ステップS30)と、重希土類元素RHを拡散させた拡散前駆体を冷却して希土類焼結磁石1を得る冷却工程(ステップS40)と、を含む。
まず、ステップS10の希土類焼結磁石合金製造工程の詳細について説明する。図6は、実施の形態4による希土類焼結磁石合金製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。まず、図6に示されるように、拡散前駆体の原料となる希土類焼結磁石合金の製造工程は、拡散前駆体を構成する元素を含む希土類焼結磁石合金の原料を1000K以上の温度に加熱して溶融する溶融工程(ステップS11)と、溶融状態の原料を回転する回転体上で冷却して凝固合金を得る第1次冷却工程(ステップS12)と、凝固合金を容器の中でさらに冷却する第2次冷却工程(ステップS13)と、を含む。これにより、希土類焼結磁石合金を製造することができる。以下、各工程について説明する。
ステップS11の溶融工程では、Ar(アルゴン)などの不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で、拡散前駆体の原料を坩堝の中で1000K以上の温度に加熱して溶融する。これによって、希土類焼結磁石合金が溶融した合金溶湯が調製される。実施の形態1,2の希土類焼結磁石1を製造する場合には、原料として、Nd,Pr,RH,R,FeおよびBを用いることができる。実施の形態3の希土類焼結磁石1を製造する場合には、原料として、Nd,Pr,RH,La,Sm,FeおよびBを用いることができる。実施の形態3の場合には、実施の形態1,2で希土類元素RをLaおよびSmとする場合となる。RHとして、Dy,Tbを挙げることができる。また、原料として、Bの代わりにFeBを用いてもよい。このとき、添加元素MとしてGa,Cu,Al,Co,Zr,Ti,NbおよびMnの群から選択される1種類以上の元素を、原料に含めてもよい。
次いで、ステップS12の第1次冷却工程では、溶融工程で調製された合金溶湯を、タンディッシュに流し、続けて、回転体である単ロールの上に流す。これによって、合金溶湯は定められた方向に回転する単ロール上で急速に冷却され、合金溶湯からインゴット合金よりも厚さの薄い凝固合金が単ロール上で調製される。ここでは、回転する回転体として、単ロールを用いたが、これに限定されるものではなく、双ロール、回転ディスク、回転円筒鋳型等に接触させて急速に冷却させてもよい。厚さの薄い凝固合金を効率良く得る観点から、第1次冷却工程における冷却速度は、10℃/秒以上107℃/秒以下とすることが好ましく、103℃/秒以上104℃/秒以下とすることがより好ましい。凝固合金の厚さは、0.03mm以上10mm以下の範囲にある。合金溶湯は、単ロールと接触した部分から凝固が始まり、単ロールとの接触面から厚さ方向に結晶が柱状または針状に成長する。ステップS12の第1次冷却工程は、第1次合金冷却工程に対応する。
その後、ステップS13の第2次冷却工程では、第1次冷却工程で調製された厚さの薄い凝固合金をトレイ容器の中に入れて冷却する。厚さの薄い凝固合金は、トレイ容器に入る際に砕けて鱗片状の希土類焼結磁石合金となって冷却される。冷却速度によっては、リボン状の希土類焼結磁石合金が得られることもあり、鱗片状に限定されるものではない。磁気特性の温度特性が良好な組織構造を有する希土類焼結磁石合金を得る観点から、第2次冷却工程における冷却速度は、10-2℃/秒以上105℃/秒以下とすることが好ましく、10-1℃/秒以上102℃/秒以下とすることがより好ましい。ステップS13の第2次冷却工程は、第2次合金冷却工程に対応する。
これらの工程を経て得られる希土類焼結磁石合金は、短軸方向サイズが3μm以上10μm以下であり、かつ長軸方向サイズが10μm以上300μm以下である。実施の形態3の場合、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Fe-B結晶相と、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Oで示される酸化物の結晶性の副相20と、を含有する微細結晶組織を有する。以下では、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Oで示される酸化物の結晶性の副相20は、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-O相と称される。(Nd,Pr,RH,La,Sm)-O相は、希土類元素の濃度が比較的高い酸化物からなる非磁性相である。(Nd,Pr,RH,La,Sm)-O相の厚さは、粒界の幅に相当し、10μm以下である。以上の製造工程によって製造された希土類焼結磁石合金は、急速に冷却される工程を経ているため、鋳型鋳造法によって得られる希土類焼結磁石合金と比較して、組織が微細化されている。
次に、図5のステップS20の拡散前駆体製造工程について説明する。図7は、実施の形態4による拡散前駆体製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。以下では、実施の形態3の希土類焼結磁石1を製造する場合を例に挙げて説明するが、使用する希土類焼結磁石合金の原料を変えることで実施の形態1,2の希土類焼結磁石1を製造することができる。つまり、実施の形態3のLaおよびSmは、Nd,Prおよび重希土類元素RH以外の希土類元素Rとすることができる。図7に示されるように、拡散前駆体製造工程は、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Fe-B結晶相と、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-O相と、を有する希土類焼結磁石合金を粉砕する粉砕工程(ステップS21)と、粉砕された希土類焼結磁石合金の粉末を成形することによって成形体を調製する成形工程(ステップS22)と、定められた温度である焼結温度で成形体を焼結して焼結体を得る焼結工程(ステップS23)と、希土類焼結磁石1の保磁力等の磁気特性を高めるために焼結体を時効する時効工程(ステップS24)と、時効処理された焼結体を冷却する焼結体冷却工程(ステップS25)と、を含む。以下、各工程について説明する。
ステップS21の粉砕工程では、図6の希土類焼結磁石合金製造工程に従って製造された(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Fe-B結晶相と、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-O相と、を有する希土類焼結磁石合金を粉砕し、粒径が200μm以下、好ましくは0.5μm以上100μm以下、さらに着磁性能を考慮した場合には、1μm以上10μm以下程度である希土類焼結磁石合金粉末を得る。希土類焼結磁石合金の粉砕は、一例では、めのう乳鉢、スタンプミル、ジョークラッシャまたはジェットミルを用いて行われる。特に、粉末の粒径を小さくする場合には、希土類焼結磁石合金の粉砕を、不活性ガスを含む雰囲気中で行うことが好ましい。希土類焼結磁石合金の粉砕を、不活性ガスを含む雰囲気中で行うことによって、粉末中への酸素の混入を抑制することができる。ただし、粉砕を行う際の雰囲気が磁石の磁気特性に影響を与えない場合には、希土類焼結磁石合金の粉砕を大気中で行ってもよい。なお、実施の形態1,2の希土類焼結磁石1を製造する場合には、実施の形態3の希土類焼結磁石1を製造する際に使用する希土類焼結磁石合金のLaおよびSmを、Nd,Prおよび重希土類元素RH以外の希土類元素Rとすることができる。つまり、(Nd,Pr,RH,R)-Fe-B結晶相と、(Nd,Pr,RH,R)-O相と、を有する希土類焼結磁石合金を粉砕すればよい。
ステップS22の成形工程では、希土類焼結磁石合金の粉末を、磁場をかけた金型の中で圧縮成形し、成形体を調製する。ここで、印加する磁場は、一例では2Tとすることができる。なお、成形は、磁場中ではなく、磁場を印加せずに行ってもよい。
ステップS23の焼結工程では、圧縮成形された成形体を950℃以上1300℃以下、好ましくは1000℃以上1150℃未満の範囲内の焼結温度で0.1時間以上10時間以下の範囲内の時間、好ましくは1.0時間以上6.0時間以下の範囲内の時間で保持することで、焼結体を得る。焼結は、酸化抑制のために、不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で行われることが好ましい。焼結は、磁場を印加しながら行ってもよい。
ステップS24の時効工程は、図7の場合には、ステップS24-1の第1次時効工程、ステップS24-2の第2次時効工程、ステップS24-3の第3次時効工程、およびステップS24-4の第4次時効工程を含む。時効は、酸化抑制のために、不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で行われることが好ましい。
ステップS24-1の第1次時効工程では、得られた焼結体を焼結温度未満の温度である第1次時効温度で、0.1時間以上10時間以下、好ましくは0.5時間以上5時間以下の範囲内の時間で焼結体を保持する。第1次時効温度は、具体的には700℃以上950℃未満の範囲内の温度であり、焼結温度よりも低い温度である。
ステップS24-2の第2次時効工程では、第1次時効工程後、第1次時効工程で保持された焼結体を、第1次時効温度未満の温度である第2次時効温度で、0.1時間以上10時間以下、好ましくは1.0時間以上7時間以下の範囲内の時間で保持する。第2次時効温度は、具体的には450℃以上700℃未満の範囲内の温度であり、第1次時効温度よりも低い温度である。
ステップS24-3の第3次時効工程では、第2次時効工程後、第2次時効工程で保持された焼結体を、再び第1次時効温度、具体的には700℃以上950℃未満の範囲内の温度に昇温し、第1次時効温度で0.1時間以上10時間以下、好ましくは0.5時間以上5時間以下の範囲内の時間で保持する。
ステップS24-4の第4次時効工程では、第3次時効工程後、第3次時効工程で保持された焼結体を、再び第2次時効温度、具体的には450℃以上700℃未満の範囲内の温度で0.1時間以上10時間以下、好ましくは1.0時間以上7時間以下の範囲内の時間で保持する。
最後に、ステップS25の焼結体冷却工程では、第4次時効工程で保持された焼結体を、200℃以上450℃未満の範囲内の温度である冷却温度で0.1時間以上5時間以下の範囲内の時間で保持する。その後、室温まで冷却することにより、希土類焼結磁石1の拡散前駆体が製造される。冷却も酸化抑制のために、不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で行われることが好ましい。
以上のようにして、最終的な希土類焼結磁石1の形状を有する焼結体である拡散前駆体が形成される。
図5に戻り、ステップS30の粒界拡散工程では、ステップS25で形成された拡散前駆体と重希土類元素RHとが存在する条件下で熱処理を行い、重希土類元素RHを拡散前駆体に粒界拡散させる。一例では、ステップS23の焼結工程における焼結温度未満の温度で拡散前駆体を保持する熱処理が行われる。粒界拡散工程は、ステップS24の時効工程と同時に行ってもよい。粒界拡散工程において、重希土類元素RHが、第1副相21のSm濃化部41の外郭の少なくとも一部に選択的に拡散され、第2副相22に均一に拡散される。粒界拡散工程における処理には、既知の粒界拡散法を用いることができる。粒界拡散法は、重希土類元素RHの供給形態によって種々の技術が提案されており、塗布拡散法、スパッタ拡散法、蒸気拡散法が代表的な方法である。以下ではこれらの代表的な粒界拡散法について説明する。
<塗布拡散法>
塗布拡散法では、粒界拡散工程は、重希土類元素RHを含有する材料であり、拡散前駆体への重希土類元素RHの供給源となる重希土類元素供給部を付着させる拡散元素付着工程と、重希土類元素供給部から拡散前駆体へと重希土類元素RHを拡散させるために熱処理を行う拡散熱処理工程と、を含む。拡散元素付着工程では、粉末状の重希土類元素合物を水または有機溶媒などに混合したスラリーを拡散前駆体の表面に付着させる。拡散前駆体の表面に付着したスラリーは、重希土類元素供給部となる。スラリーの付着は、スプレー噴霧、ディップコート、スピンコート、スクリーンプリント、電着等によって行うことができる。拡散熱処理工程では、重希土類元素供給部が付着された拡散前駆体をステップS23の焼結工程における焼結温度未満の拡散温度で熱処理することで、拡散前駆体の内部へ重希土類元素RHを拡散させる。熱処理の条件は、焼結温度未満の拡散温度で、0.1時間以上100時間以下の範囲内の時間とする。拡散温度は、一例では300℃以上1000℃以下の範囲内の温度であり、焼結温度よりも低い温度である。熱処理は酸化抑制のために、不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で行われることが好ましい。
<スパッタ拡散法>
スパッタ拡散法でも塗布拡散法と同様に、粒界拡散工程は、拡散元素付着工程と、拡散熱処理工程と、を含む。拡散元素付着工程では、拡散前駆体の表面に乾式環境下で重希土類元素RHの単体金属または合金組成の薄膜を形成する。拡散前駆体の表面に形成される薄膜は、重希土類元素供給部となる。薄膜は、一例ではスパッタ法によって形成される。拡散熱処理工程では、重希土類元素供給部が形成された拡散前駆体をステップS23の焼結工程における焼結温度未満の拡散温度で熱処理することで、拡散前駆体の内部へ重希土類元素RHを拡散させる。熱処理の条件は、焼結温度未満の拡散温度で、0.1時間以上100時間以下の範囲内の時間とする。拡散温度は、一例では300℃以上1000℃以下の範囲内の温度であり、焼結温度よりも低い温度である。熱処理は酸化抑制のために、不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で行われることが好ましい。
<蒸気拡散法>
蒸気拡散法では、真空炉内に拡散前駆体と重希土類元素供給部とを設置した後、真空炉内で拡散前駆体をステップS23の焼結工程における焼結温度未満の温度で熱処理することで、拡散前駆体の内部へ重希土類元素RHを拡散させる熱処理を行う。熱処理では、真空加熱によって重希土類元素供給源を気相にし、気相を介して重希土類元素RHを拡散前駆体に供給する。熱処理の条件は、焼結温度未満の拡散温度で、0.1時間以上100時間以下の範囲内の時間とする。拡散温度は、一例では600℃以上900℃以下の範囲内の温度であり、焼結温度よりも低い温度である。また、蒸気拡散法では、塗布拡散法およびスパッタ拡散法のように、重希土類元素供給部を拡散前駆体に付着させる必要がなく、拡散元素付着工程を省略することができるため、粒界拡散工程の時間を短縮することができる。
図5に戻り、最後のステップS40の冷却工程では、粒界拡散工程で重希土類元素RHが拡散された拡散前駆体を、200℃未満の温度で、0.1時間以上5時間以下の範囲内の時間で保持する。その後、室温まで冷却することにより、実施の形態1から3に示した希土類焼結磁石1が形成される。実施の形態1の場合には、重希土類元素RHを含む主相10の表面の少なくとも一部に重希土類元素RHが存在する希土類焼結磁石1が形成される。実施の形態2の場合には、重希土類元素RHを含む主相10と主相10との間に存在する副相20に重希土類元素RHが拡散した希土類焼結磁石1が形成される。実施の形態3の場合には、重希土類元素RHを含む主相10と、重希土類元素RHがSm濃化部41の外郭を選択的に取り囲むように拡散した第1副相21および重希土類元素RHが均一に拡散した第2副相22と、を含む希土類焼結磁石1が形成される。冷却は酸化抑制のために、不活性ガスを含む雰囲気中または真空中で行われることが好ましい。
以上のように、最終的な希土類焼結磁石1の形状を有する拡散前駆体に重希土類元素RHを粒界拡散させることによって、所望の形状の希土類焼結磁石1が得られる。
以上のように、実施の形態4では、(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Fe-B結晶相と(Nd,Pr,RH,La,Sm)-O相とを有する希土類焼結磁石合金を粉砕した希土類焼結磁石合金粉末を成形し、成形した成形体を焼結して焼結体を形成した後に、焼結体を時効して、希土類焼結磁石1を製造する。これによって、実施の形態3で説明した構造を有する希土類焼結磁石1を製造することができる。また、重希土類元素を所望の濃度となるように調製してから希土類焼結磁石合金を製造し、この希土類焼結磁石合金を用いて希土類焼結磁石1を製造するので、主相10の内部に重希土類元素RHが入りやすくなる。
また、実施の形態4では、焼結工程、時効工程および焼結体冷却工程での温度と時間とを制御する。特に、第1次時効工程にて、得られた焼結体を焼結温度未満の温度である第1次時効温度で0.1時間以上10時間以下、好ましくは0.5時間以上5時間以下の範囲内で焼結体を保持する。第2次時効工程にて、第1次時効温度未満の温度である第2次時効温度で0.1時間以上10時間以下、好ましくは1.0時間以上7時間以下の範囲内で焼結体を保持する。第3次時効工程にて、再び第1次時効温度に昇温し、第1次時効温度で0.1時間以上10時間以下、好ましくは0.5時間以上5時間以下の範囲内で焼結体を保持する。第4次時効工程にて、再び第2次時効温度で0.1時間以上10時間以下、好ましくは1.0時間以上7時間以下の範囲内で焼結体を保持する。このように、第1次時効工程および第2次時効工程を2セット実施するように、温度および時間を制御する。これによって、不安定なエネルギ状態の温度域で幾度となく焼結体が保持される状態が作り出される。この結果、CNd>CPrからなる第1主相11と、CNd<CPrからなる第2主相12と、が混在し、第1主相11の重希土類元素RHの濃度を第2主相12の重希土類元素RHの濃度よりも高くさせることが可能となる。言い換えれば、希土類焼結磁石1には第1主相11および第2主相12の2種類の主相10が存在し、2種類の主相10のコア部11c,12cに着目すると、第1主相11はNdの濃度および重希土類元素RHの濃度の和がPrの濃度よりも高く、逆に第2主相12はPrの濃度がNdの濃度および重希土類元素RHの濃度の和よりも高くなる希土類焼結磁石1を選択的に製造することができる。
さらに、実施の形態1における第1主相11および第2主相12に加え、主成分が(Nd,Pr,RH,La,Sm)-Oで表される酸化物相を基本とする結晶性の第1副相21と、主成分が(Nd,Pr,RH,La)-Oで表される結晶性の第2副相22と、を有し、Smの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高くなり、第1副相21にはSm濃化部41が形成されるという特徴的な組織構造を有する希土類焼結磁石1を選択的に製造することができる。
また、実施の形態4による希土類焼結磁石1の製造方法では、NdおよびPrを含む希土類元素Rとして含有するR-Fe-B系の希土類焼結磁石合金を粉砕し、R-Fe-B系の希土類焼結磁石合金の粉末の成形体を焼結し、時効処理を行うことによって、第1主相11および第2主相12を有し、第1主相11の重希土類元素RHの濃度が第2主相12の重希土類元素RHの濃度よりも高い拡散前駆体を形成する。実施の形態4による希土類焼結磁石1の製造方法では、拡散前駆体に重希土類元素RHを粒界拡散させる熱処理によって、第1主相11および第2主相12の内部に重希土類元素RHが存在するとともに、第1主相11および第2主相12の表面の一部に重希土類元素RHが存在する希土類焼結磁石1、あるいは副相20に重希土類元素RHが存在する希土類焼結磁石1を製造することができる。
さらに、実施の形態4による希土類焼結磁石1の製造方法では、Nd,Pr,LaおよびSmを含む希土類元素Rとして含有するR-Fe-B系の希土類焼結磁石合金を粉砕し、R-Fe-B系の希土類焼結磁石合金の粉末の成形体を焼結し、時効処理を行うことによって、重希土類元素RHを含む第1主相11および第1主相11よりも重希土類元素RHの濃度が低い第2主相12に加えて、Smが濃化したSm濃化部41を有する第1副相21と、第1副相21よりもSm濃度が低い第2副相22と、を有する拡散前駆体を形成する。実施の形態4による希土類焼結磁石1の製造方法では、拡散前駆体に重希土類元素RHを粒界拡散させる熱処理によって、第1副相21では、Sm濃化部41の外郭を重希土類元素RHが選択的に取り囲み、第2副相22では、重希土類元素RHが均一に分布した希土類焼結磁石1を作製することができる。
特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石と比較すると、特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石は、重希土類元素RHを必須とする1種類以上の希土類元素を有し、コア部とシェル部とから構成される1種類の主相粒子を有している。つまり、特許文献1では、すべての主相粒子に重希土類元素RHが含まれることになる。一方、実施の形態1による希土類焼結磁石1の主相10は、重希土類元素RHがコア部11cに含まれる第1主相11と、重希土類元素RHがコア部12cにほとんど含まれない第2主相12と、を混在させている。つまり、2種類の主相10のうち一方の第1主相11に重希土類元素RHが選択的に配置されるようにしている。このように、1種類しかない主相のすべてに重希土類元素RHが含まれるようにしなければならない特許文献1に記載のR-T-B系焼結磁石に比して、2種類の主相10のうち一方の第1主相11に重希土類元素RHが含まれるようにすればよい実施の形態1による希土類焼結磁石1の方が重希土類元素RHの使用量を抑えることが可能となる。また、希土類焼結磁石1の全体の体積に占める副相20の体積の割合は極めて小さいため、副相20に重希土類元素RHが拡散して存在しているとしても、特許文献1の技術に比して重希土類元素RHの使用量を抑制することができる。
また、特許文献2に記載の技術と比較すると、特許文献2に記載の方法で製造した希土類磁石で実施の形態1による希土類焼結磁石1と同等の磁気特性を得ようとする場合には、後述するように、重希土類元素RHを大量に入れなければならない。つまり、同じ磁気特性を得ようとした場合に、特許文献2に記載の技術に比して実施の形態1による希土類焼結磁石1では、重希土類元素RHの使用量を抑えることができる。また、特許文献2に記載の方法は熱間加工を含むが、実施の形態4による希土類焼結磁石1の製造方法は熱間加工を含まない。このため、主相10の粒径が小さくなることが抑えられ、残留磁束密度および着磁性の低下を、特許文献2に記載の技術で製造した希土類磁石に比して抑えることが可能となる。
これによって、重希土類元素RHの使用を従来に比して抑制しながら、従来に比して磁気特性を向上させる希土類焼結磁石1を得ることができる。
実施の形態5.
実施の形態5では、実施の形態4の製造方法で製造された実施の形態1,2,3における希土類焼結磁石1を用いた回転子について説明する。図8は、実施の形態5による希土類焼結磁石を搭載した回転子の構成の一例を模式的に示す断面図である。図8では、回転子100の回転軸RAに垂直な方向の断面を示している。
回転子100は、回転軸RAを中心に回転可能である。回転子100は、回転子鉄心101と、回転子100の周方向に沿って回転子鉄心101に設けられた磁石挿入穴102に挿入される希土類焼結磁石1と、を備える。図8では、4つの磁石挿入穴102を回転子鉄心101に設け、4つの希土類焼結磁石1を磁石挿入穴102に挿入する例を示しているが、磁石挿入穴102および希土類焼結磁石1の数は回転子100の設計に応じて変更してもよい。回転子鉄心101は、円盤形状の電磁鋼板が、回転軸RAの軸線方向に複数積層して形成されている。
希土類焼結磁石1は、実施の形態4で説明した製造方法に従って製造されたものである。4つの希土類焼結磁石1は、それぞれ対応する磁石挿入穴102に挿入されている。4つの希土類焼結磁石1は、回転子100の径方向外側における希土類焼結磁石1の磁極が、隣り合う希土類焼結磁石1との間で異なるように、それぞれ着磁されている。
このように、実施の形態5による回転子100は、室温における磁気特性の向上と温度上昇に伴う磁気特性の低下の抑制とを実現することができる実施の形態1、実施の形態2または実施の形態3による希土類焼結磁石1を備える。このように、重希土類元素RHの使用を従来に比して抑制し、高い残留磁束密度と保磁力とを維持しながら、温度上昇に伴う磁気特性の低下を抑制することのできる希土類焼結磁石1であるため、100℃を超えるような高温環境下においても磁気特性の低下が抑制される。これによって、高価で地域偏在性が高く調達リスクがあるNdおよび重希土類元素RHを安価な希土類元素で代替しながら、磁気特性および着磁性を向上させ、100℃を超えるような高温環境下においても、回転子100の動作を安定化することができる。さらに、実施の形態1、実施の形態2または実施の形態3による希土類焼結磁石1は従来に比して優れた着磁性能を有することから、回転子100に希土類焼結磁石1をセットしたアッセンブリ状態での着磁も可能とするため、製造工程の取り扱いが容易になる。さらに、電圧を抑制した着磁工程が実現できるため、省エネルギ化にも寄与する。
実施の形態6.
実施の形態6では、実施の形態5における回転子100を搭載した回転機について説明する。図9は、実施の形態6による回転機の構成の一例を模式的に示す断面図である。図9では、回転子100の回転軸RAに垂直な方向の断面を示している。
回転機120は、回転軸RAを中心に回転可能な、実施の形態5で説明した回転子100と、回転子100と同軸に設けられ、回転子100に対向配置された環状の固定子130と、を備える。固定子130は、電磁鋼板を回転軸RAの軸線方向に複数積層させることによって形成される。固定子130の構成はこれに限定されるものではなく、既存の構成を採用することもできる。固定子130は、回転子100側に突出したティース131が、固定子130の内面に沿って設けられる。ティース131には巻線132が備え付けられている。巻線132の巻き方は、一例では、集中巻きでもよいし、分布巻きでもよい。つまり、固定子130は、回転子100が配置される側の内面に、回転子100に向かって突出したティース131に備え付けられる巻線132を有し、回転子100に対向配置される環状の構造を有する。回転機120の中にある回転子100の磁極数は2極以上、すなわち、希土類焼結磁石1は、2つ以上であればよい。また、図9では、磁石埋込型の回転子100の例を示したが、希土類焼結磁石1を外周部に接着剤で固定した表面磁石型の回転子100でもよい。
このように、実施の形態6における回転機120は、室温における磁気特性の向上と温度上昇に伴う磁気特性の低下の抑制とを実現することができる実施の形態1、実施の形態2または実施の形態3による希土類焼結磁石1を備える。このように、重希土類元素RHの使用を従来に比して抑制し、高い残留磁束密度と保磁力とを維持しながら、温度上昇に伴う磁気特性の低下を抑制することのできる希土類焼結磁石1であるため、100℃を超えるような高温環境下においても、磁気特性の低下が抑制される。この結果、高価で地域偏在性が高く調達リスクがあるNdおよび重希土類元素RHを安価な希土類元素で代替しながら、磁気特性および着磁性を向上させ、100℃を超えるような高温環境下においても、回転子100を安定的に駆動させ、回転機120の動作を安定化することができる。
以下に、実施例および比較例によって本開示の希土類焼結磁石1の詳細を説明する。
実施例1から8では、組成の異なる複数の希土類焼結磁石合金の(Nd,Pr,Dy,La,Sm)-Fe-Bで示される試料を用いて、実施の形態4に示される方法によって希土類焼結磁石1を製造する。実施例1から8では、Nd,Pr,Dy,LaおよびSmの含有量を変更した希土類焼結磁石合金を用いて、拡散前駆体を形成し、重希土類元素RHであるTbが0.10at.%となるように拡散前駆体にTbを粒界拡散させて、希土類焼結磁石1を製造する。つまり、実施例1から8では、(Nd,Pr,Dy,La,Sm)-Fe-Bで示される希土類焼結磁石合金から、実施の形態4で示した製造方法を用いて、重希土類元素RHであるTbが0.10at.%拡散された希土類焼結磁石1を製造する。
比較例1から14では、組成の異なる複数の希土類焼結磁石合金R-Fe-Bで示される試料を用いて、特許文献1または特許文献2に示されるような一般的な希土類磁石の製造方法によって実験的に重希土類元素RHであるTbを粒界拡散させた希土類焼結磁石1を製造する。比較例1から14による希土類焼結磁石1の試料では、Rの部分を変更している。
比較例1から7では、RがNdである希土類焼結磁石合金から、あるいはRがNdと、Dy,Pr,LaおよびSmの群から選択される1つ以上の元素と、を含む希土類焼結磁石合金から、特許文献1に示される製造方法を用いて重希土類元素RHであるTbが0.15at.%拡散された希土類焼結磁石1を製造する。
比較例8から14では、RがNdである希土類焼結磁石合金から、あるいはRがNdと、Dy,Pr,LaおよびSmの群から選択される1つ以上の元素と、を含む希土類焼結磁石合金から、特許文献2に示される製造方法を用いて重希土類元素RHであるTbが0.15at.%拡散された希土類焼結磁石1を製造する。
表3は、実施例および比較例による希土類焼結磁石の一般式、Rを構成する元素の含有量、組織形態の分析結果、および磁気特性と着磁性能との判定結果を示す表である。表3には、実施例1から8および比較例1から14の希土類焼結磁石1である各試料の主相10の一般式が示されている。
次に、実施例1から8および比較例1から14の希土類焼結磁石1の組織を分析する方法について説明する。希土類焼結磁石1の組織形態は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)およびEPMAを用いた元素分析により決定される。ここでは、SEMおよびEPMAとして、FE-EPMA(日本電子株式会社製、製品名:JXA-8530F)を用いる。元素分析の条件は、加速電圧が15.0kVであり、照射電流が2.271e-008Aであり、照射時間が130msであり、画素数が512ピクセル×512ピクセルであり、倍率が5000倍であり、積算回数が1回である。
次に、実施例1から8および比較例1から14の希土類焼結磁石1の磁気特性の評価方法について説明する。磁気特性の評価は、パルス励磁式のBHトレーサを用いて、複数の試料の保磁力を測定することによって行われる。BHトレーサによる最大印加磁場は、希土類焼結磁石1が完全に着磁された状態となる6T以上である。パルス励磁式のBHトレーサの他に、6T以上の最大印加磁場を発生させることができれば、直流式のBHトレーサとも呼ばれる直流自記磁束計、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)、磁気特性測定装置(Magnetic Property Measurement System:MPMS)、物理特性測定装置(Physical Property Measurement System:PPMS)等を用いてもよい。測定は、窒素等の不活性ガスを含む雰囲気中で行われる。各試料の磁気特性は、印加磁場により着磁された希土類焼結磁石1をサーチコイルまたは磁気センサによってピックアップされた磁化を検出することにより測定される。測定された磁気ヒステリシスであるJ-HカーブまたはB-Hカーブより、磁気特性を測定する。また、各試料の磁気特性は、互いに異なる第1測定温度T1および第2測定温度T2のそれぞれの温度で測定される。残留磁束密度の温度係数α[%/℃]は、第1測定温度T1での残留磁束密度と第2測定温度T2での残留磁束密度との差と、第1測定温度T1での残留磁束密度との比を、温度の差(T2-T1)で割った値である。また、保磁力の温度係数β[%/℃]は、第1測定温度T1での保磁力と第2測定温度T2での保磁力との差と、第1測定温度T1での保磁力との比を、温度の差(T2-T1)で割った値である。したがって、磁気特性の温度係数の絶対値|α|および|β|が小さくなるほど、温度上昇に対する磁石の磁気特性の低下が抑制されることになる。
さらに、着磁性能の測定については、一定のパーミアンス係数において、任意の磁場を印加することにより描かれる磁気ヒステリシスより測定される磁束密度と、飽和する磁場を印加することにより描かれる磁気ヒステリシスより測定される磁束密度と、の比より着磁率を算出することによって求められる。より低い磁場でも高い着磁率が得られれば、着磁性能が高いといえる。
まず、実施例1から8および比較例1から14による各試料における分析結果について説明する。図示は省略するが、実施例1から8の各試料をFE-EPMAで元素マッピングしたところ、RHをDy,Tbとし、RをNd,Pr,RH以外から選択される1種類以上の希土類元素とし、一般式(Nd,Pr,Dy,Tb,R)-Fe-Bを満たし、Nd2Fe14B結晶構造を基本とする結晶粒を含む主相10において、コア部11c,12cとコア部11c,12cを被覆するシェル部11s,12sとを有する主相10が存在することが確認できる。また、主相10には、CNd>CPrである第1主相11と、CNd<CPrである第2主相12と、が混在していることが確認できる。また、第1主相11のDyの濃度をC1Dyとし、第2主相12のDyの濃度をC2Dyとしたときに、C1Dy>C2Dyとなっていることも確認できる。
ここで「CNd>CPrである第1主相11と、CNd<CPrである第2主相12」に示される濃度差は、EPMAを用いたマッピング分析により、Ndの検出強度とPrの検出強度との間に明確に差が出ていることを意味する。具体的には、第1主相11の場合を例として挙げると、コア部11cのNdの濃度はEPMAの検出強度が平均よりも高く、Prの濃度はEPMAの検出強度が下限付近を示しているということである。第2主相12は第1主相11の場合と逆になっているといえる。
また、「C1Dy>C2Dy」に示される濃度差は、EPMAを用いたマッピング分析により、第1主相11のDyの検出強度と第2主相12のDyの検出強度との間に明確に差が出ていることを意味する。具体的には、第1主相11のDyの濃度はEPMAの検出強度が平均よりも高く、第2主相12のDyの濃度はEPMAの検出強度が下限付近を示しているということである。
また、R=La,Smとしたとき、希土類焼結磁石1は、実施の形態1における第1主相11と第2主相12とに加え、主成分が(Nd,Pr,Dy,Tb,La,Sm)-Oとして表される酸化物相を基本とする結晶性の第1副相21と、主成分が(Nd,Pr,Dy,Tb,La)-Oとして表される結晶性の第2副相22と、を有することも確認できる。さらに、Smの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことが確認できる。
表3には、Ndの濃度および重希土類元素RHであるTbの濃度の和をC(Nd,Tb)と表記すると、C(Nd,RH)>CPrである第1主相11、およびC(Nd,RH)<CPrである第2主相12の状態が確認できた試料については、それぞれ第1主相11および第2主相12の欄に「〇」が入力され、確認できなかった試料については、それぞれ第1主相11および第2主相12の欄に「×」が入力されている。不等号の濃度差については、NdおよびDyの検出強度とPrの検出強度との間に明確に差が出ていることを意味する。具体的な例を挙げると、第1主相11の場合においては、Ndの濃度およびDyの濃度はEPMAの検出強度が平均より高いことを示し、Prの濃度はEPMAの検出強度が下限値付近であることを示している。第2主相12の場合においては第1主相11の場合とは逆になっているといえる。第2主相12のようなC(Nd,RH)<CPrしか確認されなかった場合は、第2主相12の欄のみに「〇」が入力され、第1主相11の欄には「×」が入力されている。
さらに、表3には、主成分が(Nd,Pr,Dy,Tb,La,Sm)-Oとして表される酸化物相を基本とする結晶性の第1副相21、主成分が(Nd,Pr,Dy,Tb,La)-Oとして表される結晶性の第2副相22と、を有し、第2副相22に比して第1副相21の方がSmの濃度が高くなることが確認できた試料については、第1副相21および第2副相22の欄のそれぞれに「〇」が入力され、確認できなかった試料については、第1副相21および第2副相22の欄のそれぞれに「×」が入力されている。また、副相20が1つしか存在しない、または、副相20間のSmの濃度差がない状態のものは、第1副相21しか存在しないとして、第1副相21の欄のみに「〇」が入力され、第2副相22の欄には「×」が入力されている。なお、第1副相21と第2副相22との濃度差は、EPMAを用いたマッピング分析により、第2副相22より第1副相21においてSmの検出強度が平均して高いことを意味する。
また、FE-EPMAで分析して得られた元素マッピングの強度比から、C(Nd,RH)<CPrである第2主相12の数よりもC(Nd,RH)>CPrである第1主相11の数の方が多く存在していることも確認できる。コア部11c,12cにおけるDyの濃度をCDyとし、シェル部11s,12sにおけるDyの濃度をSDyとし、コアシェル構造のシェル部11s,12sに着目したとき、第1主相11はCNd>SNd、CPr<SPr、CDy>SDyの関係式を満たし、第2主相12はCNd<SNd、CPr>SPr、CDy<SDyの関係式を満たすことも確認できる。
次に、実施例1から8および比較例1から14による各試料における磁気特性の測定結果について説明する。磁気測定を行う各試料の形状は、縦、横および高さがすべて7mmのブロック形状である。第1測定温度T1は23℃であり、第2測定温度T2は200℃である。23℃は、室温である。第2測定温度T2の200℃は、自動車用モータおよび産業用モータの動作時の環境として、起こり得る温度である。
まず、実施例1から8および比較例2から14による各試料における残留磁束密度および保磁力の判定は、比較例1と比較して行う。各試料の23℃における残留磁束密度および保磁力の値が、比較例1での値と比較して測定誤差と考えられる1%以内の値を示した場合には、「同等」と判定し、1%以上高い値を示した場合には、「良」と判定し、1%以下の低い値を示した場合には、「不良」と判定する。
次に、残留磁束密度の温度係数αは、第1測定温度T1の23℃における残留磁束密度および第2測定温度T2の200℃における残留磁束密度を用いて算出される。また、保磁力の温度係数βは、第1測定温度T1の23℃における保磁力および第2測定温度T2の200℃における保磁力を用いて算出される。実施例1から8および比較例2から14による各試料における残留磁束密度の温度係数および保磁力の温度係数は、比較例1と比較して判定される。各試料について、比較例1による試料における残留磁束密度の温度係数の絶対値|α|および保磁力の温度係数の絶対値|β|と比較して、測定誤差と考えられる±1%以内の値を示した場合には、「同等」と判定し、-1%より低い値を示した場合には、「良」と判定し、+1%より高い値を示した場合には、「不良」と判定する。「良」と判定された試料については、温度係数がより小さいことから、温度上昇に伴う磁気特性の低下が抑制され、高温環境下においても、安定的な磁気特性を有する希土類焼結磁石1を提供することができる。
次に、着磁性能は、印加磁場20kOeの磁気ヒステリシスとパーミアンス係数Pcとの1の交点である磁束密度と、飽和磁化状態である印加磁場80kOeの磁気ヒステリシスとパーミアンス係数Pcとの1の交点である磁束密度と、の比から着磁率を算出する。実施例1から8および比較例2から14による各試料における着磁性能は、比較例1と比較して判定される。つまり、各試料について、比較例1による試料における着磁率と比較して、測定誤差と考えられる-1%以上の値を示した場合には、「同等以上」と判定し、-1%より低い値を示した場合には、「不良」と判定する。「同等以上」と判定された試料については、着磁性能が高い希土類焼結磁石1を提供することができる。
以上の残留磁束密度、保磁力、残留磁束密度の温度係数、保磁力の温度係数および着磁性能の判定結果は、表3に示されている。
比較例1は、(Nd,Dy)-Fe-Bとなるように、Nd,Dy,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prと、La,Smと、は添加されていないことから、主相10におけるコアシェル構造は確認できず、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、残留磁束密度は1.25Tであり、保磁力は1900kA/mである。残留磁束密度および保磁力の温度係数は、それぞれ|α|=0.185%/℃、|β|=0.455%/℃である。また着磁率は98.6%である。比較例1のこれらの値がリファレンスとして用いられる。
比較例2は、Nd-Fe-Bとなるように、Nd,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prと、La,Smと、は添加されていないことから、主相10におけるコアシェル構造は確認できず、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、重希土類元素RHであるDy,Tbが主相10に入っていないため、残留磁束密度は「良」となり、保磁力は「不良」となる。また、残留磁束密度の温度係数は「同等」となり、保磁力の温度係数は「同等」となり、着磁性能は「同等以上」となる。
比較例3は、(Nd,Pr)-Fe-Bとなるように、Nd,Pr,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prが添加されたことにより、NdおよびPrが混ざり合った主相10は確認できたものの、コアシェル構造を形成していない。また、La,Smが添加されていないことから、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、重希土類元素RHであるDy,Tbが母材に入っていないため、残留磁束密度は「良」となり、保磁力は「不良」となる。また、Prが添加されたことによって、保磁力の温度係数は「不良」となる。製造方法に熱間加工を含まないので、着磁性能は「同等以上」となる。なお、残留磁束密度の温度係数は「同等」となる。また、重希土類元素RHが入っていない母材である拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例4は、(Nd,Pr,Dy)-Fe-Bとなるように、Nd,Pr,Dy,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、NdおよびPrが混ざり合った主相10は確認できたものの、コアシェル構造を形成していない。また、La,Smが添加されていないことから、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、Prを添加し、また重希土類元素RHであるDyの添加が比較例1と同等であることによって、残留磁束密度は「同等」となる。重希土類元素RHであるDyの添加に加えて、Prが添加されたことによって、保磁力は「良」となり、保磁力の温度係数は「不良」となる。製造方法に熱間加工を含まないので、着磁性能は「同等以上」となる。残留磁束密度の温度係数は「同等」となり、これは、TbおよびPrの添加により、主相10の磁気異方性が高まり、保磁力は向上するものの、主相10および副相20における最適な組織形態でないことを反映した結果となっている。
比較例5は、(Nd,La,Sm)-Fe-Bとなるように、Nd,La,Sm,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prが添加されていないことにより、主相10のコアシェル構造は確認できない。また、LaおよびSmが添加されることにより、Smの濃度は、Laの偏析に伴い、1つの副相20に偏析しているものの、第2副相22は存在しない。さらに、Smの濃度が第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、重希土類元素RHであるDyが母材に入っていないため、残留磁束密度は「良」となり、保磁力は「不良」となる。また、LaおよびSmが添加されることによって、保磁力の温度係数は「良」となる。製造方法に熱間加工を含まないので、着磁性能は「同等以上」となる。残留磁束密度の温度係数は「同等」となる。これは、La,Smが主相10または副相20に存在することにより、磁気特性の温度係数は良好な結果を示しているものの、室温における磁気特性は向上せず、主相10および副相20における最適な組織形態でないことを反映した結果となっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例6は、(Nd,La,Sm)-Fe-Bとなるように、Nd,La,Sm,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。比較例5とはNd,La,Smの組成比が異なっている。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prが添加されていないことにより、主相10のコアシェル構造は確認できない。また、LaおよびSmが添加されることにより、Smの濃度は、Laの偏析に伴い、1つの副相20に偏析しているものの、第2副相22は存在しない。さらに、Smの濃度が第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、重希土類元素RHであるDyが母材に入っていないため、残留磁束密度は「良」となり、保磁力は「不良」となる。また、LaおよびSmの添加量の最適化によって、残留磁束密度の温度係数は「良」となり、保磁力の温度係数は「良」となる。製造方法に熱間加工を含まないので、着磁性能は「同等以上」となる。これは、La,Smが主相10または副相20に存在することにより、磁気特性の温度係数は良好な結果を示しているものの、重希土類元素RHであるDyが母材に添加されていないので、室温における磁気特性は向上せず、主相10および副相20における最適な組織形態でないことを反映した結果となっている。Nd,La,Smの組成比を変えても、比較例5とほぼ同様の結果が得られる。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例7は、(Nd,Pr,La,Sm)-Fe-Bとなるように、Nd,Pr,La,Sm,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献1に記載されている製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prが添加されたことにより、NdおよびPrが混ざり合った主相10は確認できるものの、コアシェル構造を形成していない。また、LaおよびSmが添加されることにより、Smの濃度は、Laの偏析に伴い、1つの副相20に偏析しているものの、第2副相22は存在しない。さらに、Smの濃度が第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、重希土類元素RHであるDyが母材に入っていないため、残留磁束密度は「良」となり、保磁力は「不良」となる。また、LaおよびSmの添加量の最適化によって、残留磁束密度の温度係数および保磁力の温度係数が「良」となるはずであるが、Prが添加されたことによって保磁力の温度係数のみ「同等」に低下している。製造方法に熱間加工を含まないので、着磁性能は「同等以上」となる。
比較例8は、(Nd,Dy)-Fe-Bとなるように、Nd,Dy,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prと、La,Smと、は添加されていないことから、主相10におけるコアシェル構造は確認できず、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。しかし、熱間加工で作製される磁石の特徴である組織の微細化が確認される。この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力は「良」となり、保磁力の温度係数は「同等」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「同等」となる。これは、熱間加工による磁粉の微細化に伴い、保磁力の絶対値および保磁力の温度係数は向上しているものの、磁気モーメントが揃いにくいことから残留磁束密度の低下と着磁性能の悪化とを反映した結果となっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例9は、Nd-Fe-Bとなるように、Nd,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prと、La,Smと、は添加されていないことから、主相10におけるコアシェル構造は確認できず、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。しかし、熱間加工で作製される磁石の特徴である組織の微細化が確認される。この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力は「良」となり、保磁力の温度係数は「同等」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「同等」となる。これは、熱間加工による組織の微細化に伴い、保磁力は向上しているものの、残留磁束密度の低下を反映した結果となっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例10は、(Nd,Pr)-Fe-Bとなるように、Nd,Pr,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prの添加に加え、熱間加工により、コアシェル構造が確認されるが、コアシェル構造が確認されるのはコア部のPr濃度が高い1種類の主相10のみである。また、La,Smが添加されていないことから、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力は「良」となり、保磁力の温度係数は「同等」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「同等」となる。これは、コア部のPr濃度が高いコアシェル構造の形成により、Dyを添加している希土類焼結磁石1のレベルまで保磁力が大幅に向上するものの、その他の特性については、組織微細化を反映した結果となっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例11は、(Nd,Pr,Dy)-Fe-Bとなるように、Nd,Pr,Dy,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prの添加に加え、熱間加工により、コアシェル構造が確認されるが、コアシェル構造が確認されるのはコア部のPr濃度が高い1種類の主相10のみである。また、La,Smは添加されていないことから、副相20におけるSmの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力は「良」となり、保磁力の温度係数は「同等」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「同等」となる。これは、熱間加工により作製されることに加え、結晶磁気異方性が高いDyがNdの一部と置換されることによって保磁力が大幅に向上するものの、その他の特性については、熱間加工による組織の微細化を反映した結果となっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例12は、(Nd,La,Sm)-Fe-Bとなるように、Nd,La,Sm,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prが添加されていないことにより、主相10のコアシェル構造は確認できない。また、LaおよびSmが添加されることにより、Smの濃度は、Laの偏析に伴い、1つの副相20に偏析しているものの、第2副相22は存在しない。さらに、Smの濃度が第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力および保磁力の温度係数は「良」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「良」となる。これは、La,Smが主相10または副相20に存在することによって、磁気特性の温度係数は良好な結果を示しているものの、磁気モーメントが揃いにくいことから室温における残留磁束密度および着磁性能は向上せず、主相10および副相20における最適な組織形態でないことを反映した結果となっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例13は、(Nd,La,Sm)-Fe-Bとなるように、Nd,La,Sm,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。比較例12とはNd,La,Smの組成比が異なっている。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prが添加されていないことにより、主相10のコアシェル構造は確認できない。また、LaおよびSmが添加されることにより、Smの濃度は、Laの偏析に伴い、1つの副相20に偏析しているものの、第2副相22は存在しない。さらに、Smの濃度が第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力および保磁力の温度係数は「良」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「良」となる。これは、La,Smが主相10または副相20に存在することにより、磁気特性の温度係数は良好な結果を示しているものの、磁気モーメントが揃いにくいことから室温における残留磁束密度および着磁性能は向上せず、主相10および副相20における最適な組織形態でないことを反映した結果となる。Nd,La,Smの組成比を変えても、比較例12とほぼ同様の結果が得られる。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
比較例14は、(Nd,Pr,La,Sm)-Fe-Bとなるように、Nd,Pr,La,Sm,FeおよびFeBを原料として用いて特許文献2に記載されている熱間加工を含む製造方法に従って作製した0.15at.%のTbを拡散させた希土類焼結磁石1の試料である。この試料の組織形態を上述した方法に従って観察すると、Prの添加に加え、熱間加工により、コアシェル構造が確認されるが、コアシェル構造が確認されるのはコア部のPr濃度が高い1種類の主相10のみである。また、LaおよびSmが添加されることにより、Smの濃度は、Laの偏析に伴い、1つの副相20に偏析しているものの、第2副相22は存在しない。さらに、Smの濃度が第2副相22に比して第1副相21の方が高いことも確認できない。また、この試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、磁粉の微細化によって、保磁力および保磁力の温度係数は「良」となる。また、磁気モーメントが揃いにくいことから、残留磁束密度および着磁性能は「不良」となる。残留磁束密度の温度係数は「良」となる。これは、コア部のPr濃度が高いコアシェル構造の形成により、Dyを添加している希土類焼結磁石1のレベルまで保磁力が大幅に向上し、La,Smが主相10または副相20に存在することにより、磁気特性の温度係数、特に保磁力の温度係数は良好な結果を示している。しかし、磁気モーメントが揃いにくいことから室温における残留磁束密度は向上せず、主相10および副相20における最適な組織形態でないことを反映した結果ともなっている。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、このような拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させても、磁気特性は向上しない。
実施例1から8の試料は、重希土類元素RHをDy,Tbとし、RをNd,Pr,Dy,Tb以外から選択される1種類以上の希土類元素とし、一般式(Nd,Pr,RH,R)-Fe-Bを満たし、Nd2Fe14B結晶構造を基本とする結晶粒を含む主相10を有し、主相10は、コア部11c,12cとコア部11c,12cを被覆するシェル部11s,12sとを有し、主相10は、CNd>CPrである第1主相11と、CNd<CPrである第2主相12と、が混在し、第1主相11のコア部11cにおける重希土類元素RHであるDyの濃度は、第2主相12のコア部12cにおけるDyの濃度よりも高い希土類焼結磁石1である。また、実施例1から8の希土類焼結磁石1は、R=La,Smとした場合であり、第1主相11および第2主相12に加え、主成分が(Nd,Pr,Dy,Tb,La,Sm)-Oとして表される酸化物相を基本とする結晶性の第1副相21と、主成分が(Nd,Pr,Dy,Tb,La)-Oとして表される結晶性の第2副相22と、を有し、Smの濃度は、第2副相22に比して第1副相21の方が高く、第1副相21にSm濃化部41を形成していることを特徴としている。実施例1から8の試料の磁気特性を上述した方法に従って評価すると、残留磁束密度は「良」となり、保磁力は「良」となり、残留磁束密度の温度係数は「良」となり、保磁力の温度係数は「良」となり、着磁性能は「同等以上」となる。この結果、これらの希土類焼結磁石1は、高価でかつ地域偏在性が高く調達リスクがあるNdおよび重希土類元素Dy,Tbの使用を抑えながら、従来に比して優れた磁気特性を有するという効果を奏する。また、磁気特性は、母材である拡散前駆体の組織構造に依存しているため、磁気特性の良好な拡散前駆体に重希土類元素RHであるTbを拡散させると、さらに磁気特性が向上する。また、実施例1から8では、比較例1から14でのTbの拡散量である0.15at.%よりも低い0.10at.%の拡散量で、磁気特性の良好な希土類焼結磁石1を得ることができる。つまり、比較例1から14に比して、重希土類元素RHの使用量を抑えながら、残留磁束密度を低減させずに、保磁力を大きく向上させることができる希土類焼結磁石1を得ることができる。
また、表3からわかるように、実施例1から8の試料では、比較例1,4,8,11の試料に比して一般式の重希土類元素RHであるDyの含有量が少なく、重希土類元素RHであるTbの拡散量も少ないが、磁気特性は、比較例1,4,8,11の試料よりも優れた結果が得られている。特に特許文献2の製造方法で製造される比較例8,11の試料で実施例1から8の試料と同等の磁気特性を得ようとした場合には、Dy,Tbをさらに含有させなければならない。このため、実施の形態1,2,3に係る希土類焼結磁石1は、特許文献2の技術に比して、重希土類元素RHの使用量を低減させることができるという効果を有する。あるいは、特許文献2の製造方法で製造される希土類磁石における重希土類元素RHの含有量を、実施の形態1,2,3に係る希土類焼結磁石1における重希土類元素RHの含有量と同じとした場合には、特許文献2の製造方法で製造される希土類磁石の磁気特性は、実施の形態1,2,3に係る希土類焼結磁石1の磁気特性よりも低いものとなる。また、表3には、特許文献1の製造方法で製造される比較例1,4の試料と比較して、実施例1から8の試料では、一般式の重希土類元素RHであるDyの含有量を少なくするとともに、重希土類元素RHであるTbの拡散量も少なくしながら、磁気特性を向上させることが可能であることが示されている。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。