実施例において後述するように、発明者らは、00502タンパク質を有する細菌又は00509タンパク質を有する細菌が、菌体の表面にトリプシン又はTMPRSS2を吸着し、トリプシン又はTMPRSS2の自己消化によりトリプシン又はTMPRSS2を分解することを明らかにした。
したがって、00502タンパク質を有する細菌又は00509タンパク質を有する細菌を有効成分として含有する組成物を、トリプシン又はTMPRSS2の分解の用途に使用することができる。したがって、本実施形態の組成物は、トリプシン又はTMPRSS2の分解剤であるということもできる。
後述する、Paraprevotella clara(YIT 11840)株(カタログ番号「JCM:14859」)の00502タンパク質のUniProtKBのアクセッション番号は、G5SNC9である。また、Paraprevotella clara(YIT 11840)株の00502タンパク質はHMPREF9441_00858遺伝子(UniProtKB)にコードされる。HMPREF9441_00858遺伝子のNCBIアクセッション番号はNZ_JH376591 REGION:complement(87340..91131)である。Paraprevotella clara(YIT 11840)株の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号5に示し、HMPREF9441_00858遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号1に示す。
また、Paraprevotella clara(1C4)株の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示し、Paraprevotella clara(1C4)株の00502タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号7に示す。
また、Paraprevotella xylaniphila(82A6)株の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号8に示し、Paraprevotella xylaniphila(82A6)株の00502タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号9に示す。
また、Paraprevotella xylaniphila(YIT 11841)株(カタログ番号「JCM:14860」)の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号10に示し、Paraprevotella xylaniphila(YIT 11841)株の00502タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号11に示す。
また、Prevotella rara(109)株(カタログ番号「DSM:105141」)の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号12に示し、Prevotella rara(109)株の00502タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号13に示す。
また、Prevotella rodentium(PJ1A)株(カタログ番号「DSM:105243」)の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号14に示し、Prevotella rodentium(PJ1A)株の00502タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号15に示す。
また、Prevotella muris(PMUR)株(カタログ番号「DSM:103722」)の00502タンパク質のアミノ酸配列を配列番号16に示し、Prevotella muris(PMUR)株の00502タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号17に示す。
後述する、Paraprevotella clara(YIT 11840)株(カタログ番号「JCM:14859」)の00509タンパク質のUniProtKBのアクセッション番号は、G5SNC1である。また、Paraprevotella clara(YIT 11840)株00509タンパク質はHMPREF9441_00850遺伝子(UniProtKB)にコードされる。HMPREF9441_00850遺伝子のNCBIアクセッション番号はNZ_JH376591 REGION:73848..76931である。Paraprevotella clara(YIT 11840)株の00509タンパク質のアミノ酸配列を配列番号18に示し、HMPREF9441_00850遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
また、Paraprevotella clara(1C4)株の00509タンパク質のアミノ酸配列を配列番号19に示し、Paraprevotella clara(1C4)株の00509タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号20に示す。
また、Paraprevotella xylaniphila(82A6)株の00509タンパク質のアミノ酸配列を配列番号21に示し、Paraprevotella xylaniphila(82A6)株の00509タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号22に示す。
また、Paraprevotella xylaniphila(YIT 11841)株(カタログ番号「JCM:14860」)の00509タンパク質のアミノ酸配列を配列番号23に示し、Paraprevotella xylaniphila(YIT 11841)株の00509タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号24に示す。
また、Prevotella rara(109)株(カタログ番号「DSM:105141」)の00509タンパク質のアミノ酸配列を配列番号25に示し、Prevotella rara(109)株の00509タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号26に示す。
また、Prevotella rodentium(PJ1A)株(カタログ番号「DSM:105243」)の00509タンパク質のアミノ酸配列を配列番号27に示し、Prevotella rodentium(PJ1A)株の00509タンパク質をコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を配列番号28に示す。
実施例において後述するように、本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物は、00502タンパク質のホモログを有する細菌、又は、00509タンパク質のホモログを有する細菌を有効成分とするものであってもよい。
00502タンパク質のホモログとしては、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有し、且つトリプシン結合能を有するタンパク質が挙げられる。00502タンパク質のホモログを有する細菌は、トリプシン又はTMPRSS2結合能を有し、更にトリプシン又はTMPRSS2を分解する活性を有することが好ましい。
00509タンパク質のホモログとしては、配列番号18に記載のアミノ酸配列に対して30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有し、且つトリプシン結合能を有するタンパク質が挙げられる。00509タンパク質のホモログを有する細菌は、トリプシン又はTMPRSS2結合能を有し、更にトリプシン又はTMPRSS2を分解する活性を有することが好ましい。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、「有効成分として含有する」とは、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログを有する細菌、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌を、トリプシン又はTMPRSS2を分解するのに十分な量を含むことを意味する。あるいは、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログを有する細菌、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌を、主要な活性成分として含むことを意味する。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、00502タンパク質又は00502タンパク質のホモログを有する細菌とは、00502タンパク質又は00502タンパク質のホモログを発現する細菌を意味する。
00502タンパク質を発現する細菌は、00502タンパク質をコードするHMPREF9441_00858遺伝子(配列番号1)を有する細菌であってもよい。また、00502タンパク質のホモログを有する細菌は、配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有し、且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードするcDNAをコードする遺伝子を有する細菌であってもよい。00502タンパク質は、細菌に内在する遺伝子由来であってもよく、外来遺伝子由来であってもよい。
同様に、00509タンパク質又は00509タンパク質のホモログを有する細菌とは、00509タンパク質又は00509タンパク質のホモログを発現する細菌を意味する。
00509タンパク質を発現する細菌は、00509タンパク質をコードするHMPREF9441_00850遺伝子(配列番号2)を有する細菌であってもよい。また、00509タンパク質のホモログを有する細菌は、配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有し、且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードするcDNAをコードする遺伝子を有する細菌であってもよい。00509タンパク質は、細菌に内在する遺伝子由来であってもよく、外来遺伝子由来であってもよい。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物は、トリプシン又はTMPRSS2の分解活性を有する限り、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログを有する細菌のみを含有していてもよいし、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌のみを含有していてもよいし、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログを有する細菌、及び、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌の双方を含有していてもよい。あるいは、本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物は、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、及び、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌を含有していてもよい。このような細菌は遺伝子改変等により作製することができる。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログを有する細菌、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌は、type IX secretion system(IX型分泌機構、T9SS)を有することが好ましい。
また、T9SSが、PorVタンパク質、PorUタンパク質、PorNタンパク質、PorMタンパク質、PorLタンパク質、PorKタンパク質又はPorPタンパク質を含むことが好ましい。
実施例において後述するように、発明者らは、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログが、T9SSにより外膜を越えて細菌の表面に輸送され、細菌表面に結合することを明らかにした。
例えば、後述するParaprevotella clara株において、PorVタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008622445.1であり、PorUタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008622443.1であり、PorNタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008623210.1であり、PorMタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008623211.1であり、PorLタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008623213.1であり、PorKタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008623215.1であり、PorPタンパク質のNCBIアクセッション番号はWP_008623217.1である。また、Paraprevotella clara株以外の細菌においては、当該細菌におけるこれらのタンパク質のホモログがT9SSを構成する。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌は、Paraprevotella属、Prevotella属、Prevotellamasilia属又はBacteroidetes属に属する細菌であってもよい。
実施例において後述するように、発明者らは、Paraprevotella属、Prevotella属、Prevotellamasilia属又はBacteroidetes属に属する細菌が、トリプシン又はTMPRSS2を分解することを明らかにした。Paraprevotella属に属する細菌としては、Paraprevotella clara、Paraprevotella xylaniphila、Paraprevotella sp.MSP 0303、Paraprevotella sp.MSP 0335等が挙げられる。Prevotella属に属する細菌としては、Prevotella rara、Prevotella rodentium、Prevotella muris等が挙げられる。
Paraprevotella属に属する細菌は、配列番号3の塩基配列若しくは配列番号4の塩基配列からなる16S rRNA遺伝子、又は、配列番号3の塩基配列若しくは配列番号4の塩基配列に対して97%以上の配列同一性を有する塩基配列からなる16S rRNA遺伝子を有する細菌である。なお、16S rRNA遺伝子の配列同一性が97%以上であると、同じ種に属する細菌であると判断される。
配列番号3に記載の塩基配列は、後述するParaprevotella clara(YIT 11840)株(カタログ番号「JCM:14859」)の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。また、配列番号29に記載の塩基配列は、Paraprevotella clara(1C4)株の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。また、配列番号4に記載の塩基配列は、後述するParaprevotella xylaniphila (82A6)株の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。また、配列番号30に記載の塩基配列は、Paraprevotella xylaniphila(YIT 11841)株(カタログ番号「JCM:14860」)の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌は、Paraprevotella sp.MSP 0303、Paraprevotella sp.MSP 0335、Prevotellamassilia timonensis、Bacteroidetes sp.MSP 0288、Bacteroidetes sp.MSP 0410、Bacteroidetes sp.MSP 0435及びPorphyromonas gingivalisからなる群より選択される少なくとも1種の細菌であってもよい。
Prevotella raraとしては、Prevotella rara(MSP 0081)株、Prevotella rara(109)株が挙げられる。Prevotella rodentiumとしては、Prevotella rodentium(PJ1A)株(カタログ番号「DSM:105243」)が挙げられる。Prevotella murisとしては、Prevotella muris(PMUR)株(カタログ番号「DSM:103722」)が挙げられる。Prevotellamassilia timonensisとしては、Prevotellamassilia timonensis(MSP 0224)株が挙げられる。Porphyromonas gingivalisとしては、Porphyromonas gingivalis(ATCC33277)株が挙げられる。
配列番号31に記載の塩基配列は、Prevotella rara(109)株(カタログ番号「DSM:105141」)の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。また、配列番号32に記載の塩基配列は、Prevotella rodentium(PJ1A)株(カタログ番号「DSM:105243」)の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。また、配列番号33に記載の塩基配列は、Prevotella muris(PMUR)株(カタログ番号「DSM:103722」)の16S rRNA遺伝子の塩基配列である。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、上記の細菌は、トリプシン又はTMPRSS2の分解活性を有する限り、生菌であってもよいし、死菌であってもよい。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物は、例えば、溶液又は懸濁液等の水性形態若しくは半固体形態で埋め込まれている、粉末形態又は凍結乾燥形態等で上記の細菌を含有していてもよい。一態様において、組成物又は細菌は、凍結乾燥されている。一態様において、組成物中の細菌のサブセットは凍結乾燥されている。細菌を含む組成物を凍結乾燥する方法は、当該技術分野において周知である。例として、米国特許第3261761号明細書、米国特許第4205132号明細書、国際公開第2012/098358号を参照することができる。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
細菌は、組み合わせとして凍結乾燥されてもよく、別々に凍結乾燥され、組み合わされてもよい。細菌は、他の細菌と組み合わされる前に薬学的に許容される担体と組み合わされてもよい。複数の凍結乾燥された細菌は、凍結乾燥された形態において組み合わされてもよい。一度組み合わせられた細菌の混合物は、続いて、薬学的に許容される担体と組み合わされてもよい。一態様において、細菌は、凍結乾燥された固形物である。一態様において、組成物は、凍結乾燥された固形物である。
一実施形態において、本発明は、00502タンパク質若しくは前記00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、又は、00509タンパク質若しくは前記00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、を有効成分として含有する、トリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物を提供する。
実施例において後述するように、発明者らは、00502タンパク質又は00509タンパク質が、トリプシン又はTMPRSS2を分解することを明らかにした。ここで、00502タンパク質又は00509タンパク質は、固相表面に固定されていることが好ましい。
固相としては、特に限定されず、樹脂、ガラス、金属等を材料とする粒子、プレート、チューブ等の容器の表面、樹脂を材料とする膜等が挙げられる。粒子は磁気粒子であってもよい。
固相は、薬学的に許容される固相であってもよい。薬学的に許容される固相としては、リポソーム、タンパク質ナノ粒子、脂質ナノ粒子等の高分子ナノ粒子、鉄ナノ粒子、リピッドマイクロスフェア等のナノエマルジョン、ミセル、ワクチンアジュバント、ナノ結晶等が挙げられる。薬学的に許容される固相は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceutical and Medical Devices Agency、PMDA)、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)、欧州医薬品庁(European Medicines Agency、EMA)により承認されたものであることが好ましい。
00502タンパク質又は00509タンパク質の固相への固定方法は、特に限定されず、化学リンカーによる結合、アビジン-ビオチンによる結合、物理的吸着等が挙げられる。
実施例において後述するように、本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物は、00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質のホモログを有効成分とするものであってもよい。
00502タンパク質のホモログとしては、上述したものと同様であり、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有し、且つトリプシン結合能を有するタンパク質が挙げられる。00502タンパク質のホモログは、トリプシン又はTMPRSS2結合能を有することが好ましい。
00509タンパク質のホモログとしては、上述したものと同様であり、配列番号18に記載のアミノ酸配列に対して30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上の配列同一性を有し、且つトリプシン結合能を有するタンパク質が挙げられる。00509タンパク質のホモログは、トリプシン又はTMPRSS2結合能を有することが好ましい。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物において、「有効成分として含有する」とは、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを、トリプシン又はTMPRSS2を分解するのに十分な量を含むことを意味する。あるいは、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを、主要な活性成分として含むことを意味する。
00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログは、タンパク質精製のため、タンパク質検出のため、あるいは固相への結合のために、ペプチドタグを付加されていてもよい。ペプチドタグとしては特に限定されず、例えば、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、MYCタグ等が挙げられる。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物は、トリプシン又はTMPRSS2の分解活性を有する限り、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログのみを含有していてもよいし、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログのみを含有していてもよいし、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、及び、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログの双方を含有していてもよい。
本実施形態に係るトリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物が、00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び、00509タンパク質若しくはそのホモログの双方を含有する場合、00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び、00509タンパク質若しくはそのホモログは、結合していてもよい。
ここで、00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び、00509タンパク質若しくはそのホモログは、直鎖状に結合していてもよく、環状に結合していてもよい。また、00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び、00509タンパク質若しくはそのホモログは、直接結合していてもよいし、リンカーを介して結合していてもよい。リンカーとしては、特に限定されず、例えば、GGGGS(配列番号34)が1~4回反復したアミノ酸配列からなるペプチド等が挙げられる。
00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び/又は、00509タンパク質若しくはそのホモログは、抗体定常領域との融合タンパク質の形態であってもよい。抗体定常領域は、ヒト抗体由来の定常領域であってよく、ヒトIgG型抗体由来の定常領域であってよい。
図53は、00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び/又は、00509タンパク質若しくはそのホモログと、抗体定常領域との融合タンパク質の一例を示す模式図である。図53中、「Protein」は00502タンパク質若しくはそのホモログ、又は、00509タンパク質若しくはそのホモログを示し、「CH2」は抗体定常領域CH2ドメインを示し、「CH3」は抗体定常領域CH3ドメインを示す。
図53に示すように、00502タンパク質若しくはそのホモログ、及び/又は、00509タンパク質若しくはそのホモログと、抗体定常領域は、リンカーを介して結合していてもよい。リンカーとしては、特に限定されず、例えば、GGGGS(配列番号34)が1~4回反復したアミノ酸配列からなるペプチド等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物において、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログ、これらを有する細菌については上述したものと同様である。
本実施形態の医薬組成物において、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患としては、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、過敏性腸炎、急性膵炎、慢性膵炎等が挙げられる。
あるいは、本実施形態の医薬組成物において、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患としては、感染症が挙げられる。感染症としては、ウイルス感染症、細菌感染症が挙げられる。また、上記炎症性腸疾患、過敏性腸炎又は感染症としては、TMPRSS2又はIgAが関わる疾患が挙げられる。TMPRSS2が感染に関わる感染症としては、コロナウイルス感染症等が挙げられる。IgAが関わる感染症としては、サルモネラ感染症等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物は、薬学的に許容される担体と共に製剤化されていてもよい。薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤、デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤、アルギン酸等の膨化剤等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤、ペパーミント、アカモノ油等の香味剤、ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤、リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物は、上記の担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
本実施形態の医薬組成物の投与方法は特に限定されず、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、液剤、注腸剤、坐剤等が挙げられる。錠剤、散剤、カプセル剤、液剤は経口投与される。注腸剤、坐剤は腸内に投与される。医薬組成物は、有効成分(00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログを有する細菌、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログを有する細菌、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のホモログ、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のホモログ)を腸に送達できる剤型であることが好ましい。
医薬組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、有効成分が生菌である場合には、例えば、投与単位形態あたり0.1~100mg/kg体重の有効成分を1回から数回投与することが考えられる。また、有効成分が死菌又はタンパク質である場合には、例えば、投与単位形態あたり0.1~100mg/kg体重の有効成分を1日あたり1回から数回投与することが考えられる。
本実施形態の医薬組成物は医薬部外品であってもよい。医薬部外品とは、特定の効能、効果が認められる製品であって、人体に対する作用が緩和なものをいう。本実施形態の医薬部外品としては、特に限定されないが、ドリンク剤、健胃薬、整腸薬等の形態が挙げられる。
すなわち、本実施形態の診断薬は、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログを、タンパク質レベルで検出するための特異的結合物質を含む。
本実施形態の診断薬において、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログ、これらを有する細菌については上述したものと同様である。また、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患についても上述したものと同様である。
本実施形態の診断薬を用いて、対象由来の生体試料における、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログ、又はこれらを有する細菌の存在の有無を検出することができる。
本実施形態の診断薬による検出原理は特に限定されず、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、ラテラルフローイムノアッセイ、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー(FACS)等が挙げられる。
対象由来の生体試料としては、便試料等が挙げられる。本実施形態の診断薬を用いて、対象由来の生体試料中に、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログ、又はこれらを有する細菌の存在が検出された場合、対象は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患に罹患していないと判断することができる。
対象由来の生体試料中に、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログ、又はこれらを有する細菌の存在が検出されなかった場合、対象は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患に罹患している可能性があると判断することができる。この場合には、対象に上述した医薬組成物又は医薬部外品を投与することにより、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の症状を治療又は緩和することができる。
一実施形態において、本実施形態の診断薬は、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、00509タンパク質のホモログを、遺伝子レベルで検出するものであってもよい。
すなわち、一実施形態において、本発明は、00502タンパク質をコードするHMPREF9441_00858遺伝子若しくは前記HMPREF9441_00858遺伝子の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子、又は、00509タンパク質をコードするHMPREF9441_00850遺伝子若しくは前記HMPREF9441_00850遺伝子の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子、を検出するためのプライマーセット又はプローブを含む、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の診断薬を提供する。いいかえると、本実施形態の診断薬は、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子若しくは配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子、又は、配列番号2に記載の塩基配列からなる遺伝子若しくは配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子、を検出するためのプライマーセット又はプローブを含む。
HMPREF9441_00858遺伝子の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子とは、上述した00502タンパク質のホモログをコードする遺伝子である。
また、HMPREF9441_00850遺伝子の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子とは、上述した00509タンパク質のホモログをコードする遺伝子である。
本実施形態の診断薬を用いて、対象由来の生体試料における、00502タンパク質を有する細菌、00502タンパク質のホモログを有する細菌、00509タンパク質を有する細菌、00509タンパク質のホモログを有する細菌の存在の有無を検出することができる。
本実施形態の診断薬による検出原理は特に限定されず、例えば、PCR、RNAシーケンス(RNA-Seq)、メタゲノム解析、DNAマイクロアレイ解析等が挙げられる。
対象由来の生体試料としては、上述したものと同様であり、便試料等が挙げられる。本実施形態の診断薬を用いて、対象由来の生体試料中に、00502タンパク質を有する細菌、00502タンパク質のホモログを有する細菌、00509タンパク質を有する細菌、00509タンパク質のホモログを有する細菌の存在が検出された場合、対象は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患に罹患していないと判断することができる。
対象由来の生体試料中に、00502タンパク質を有する細菌、00502タンパク質のホモログを有する細菌、00509タンパク質を有する細菌、00509タンパク質のホモログを有する細菌の存在が検出されなかった場合、対象は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患に罹患している可能性があると判断することができる。
一実施形態において、本発明は、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子若しくは配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌、又は、配列番号2に記載の塩基配列からなる遺伝子若しくは配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質の有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を含む、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、対象由来の生体試料における、00502タンパク質、00502タンパク質のホモログ、00509タンパク質、又は、00509タンパク質のホモログの存在の有無を検出する工程であって、前記タンパク質又はホモログの存在が検出されなかったことが、前記対象がトリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患に罹患していることを示す工程と、前記タンパク質又はホモログの存在が検出されなかった場合に、前記対象に、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質の有効量を投与する工程とを含む、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の診断及び治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、対象由来の生体試料における、00502タンパク質を有する細菌、00502タンパク質のホモログを有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌、00509タンパク質を有する細菌、00509タンパク質のホモログを有する細菌、配列番号2に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、又は、配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌の存在の有無を検出する工程であって、前記タンパク質若しくは前記ホモログ若しくは前記遺伝子を有する細菌の存在が検出されなかったことが、前記対象がトリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患に罹患していることを示す工程と、前記タンパク質若しくは前記ホモログ若しくは前記遺伝子を有する細菌の存在が検出されなかった場合に、前記対象に、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、配列番号2に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌、00502タンパク質若しくは00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、又は、00509タンパク質若しくは00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質の有効量を投与する工程とを含む、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の診断及び治療方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の治療のための組成物であって、00502タンパク質を有する細菌、00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌、00509タンパク質を有する細菌、00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、配列番号2に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、又は、配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌を有効成分として含有する組成物を提供する。
一実施形態において、本発明は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の治療のための医薬組成物であって、00502タンパク質、00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、00509タンパク質、又は、00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。
一実施形態において、本発明は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の治療のための医薬組成物を製造するための、00502タンパク質を有する細菌、00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、配列番号1に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌、00509タンパク質を有する細菌、00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質を有する細菌、配列番号2に記載の塩基配列からなる遺伝子を有する細菌、又は、配列番号2に記載の塩基配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質をコードする遺伝子を有する細菌の使用を提供する。
一実施形態において、本発明は、トリプシン又はTMPRSS2に起因する疾患の治療のための医薬組成物を製造するための、00502タンパク質、00502タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質、00509タンパク質、又は、00509タンパク質のアミノ酸配列に対して30%以上の配列同一性を有し且つトリプシン結合能を有するタンパク質の使用を提供する。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[材料及び方法]
(マウス)
特定病原体フリー(SPF)条件又は無菌(GF)条件で飼育されたC57BL/6マウスは、三共ラボラトリーズジャパン、SLCジャパン、チャールズリバージャパン又はCLEAジャパンから購入した。GFマウスおよびノトバイオート(gnotobiotic)マウスは、理化学研究所生命医科学研究センターのgnotobiotic施設内で繁殖・維持された。すべての動物実験は、理研横浜研究所の動物実験委員会の承認を得た。
(細菌株)
Paraprevotella clara(JCM14859)、Paraprevotella xylaniphila(JCM14860)、Paraprevotella copri(JCM13464)、Paraprevotella denticola(JCM13449)、Paraprevotella stercorea(JCM13469)及びParaprevotella oulorum(JCM14966)は、Japan Collection of Microorganisms(JCM)から入手した。Paraprevotella clara(P237E3b)及び(P322B5)は、Vedanta Biosciencesから提供を受けた。Paraprevotella xylaniphila(82A6)は、発明者らが単離した。
(盲腸内容物のプロテオーム解析)
プロテアーゼインヒビター入りのTween20含有トリス緩衝生理食塩水(TBST)でピペッティングと混合を行い、盲腸内容物中のタンパク質を抽出した。続いて、15,000×gで20分間、4℃で遠心分離して不溶物を除去した後、上清を新しいチューブに移し、25%トリクロロ酢酸(最終濃度12.5%v/v)を加え、4℃で1時間インキュベートした。続いて、15,000×g、15分間、4℃で遠心分離して上澄みを除去した後、沈殿物をアセトンで2回洗浄し、蓋を開けて乾燥させた。続いて、乾燥させた試料を、0.5%ドデカン酸ナトリウムと100mM Tris-HCl(pH8.5)に水浴式ソニケーター(Bioruptor UCD-200,SonicBio Corp)を用いて再溶解した。ビシンコニン酸(BCA)アッセイにより再溶解したサンプルのタンパク質濃度を測定し、タンパク質濃度を1μg/μLに調整した。ショットガンプロテオーム解析の前処理は、既報(Kawashima Y., et al., Optimization of Data-Independent Acquisition Mass Spectrometry for Deep and Highly Sensitive Proteomic Analysis, Int J Mol Sci., 20 (23),5932, 2019.)に記載の通りに行った。
ペプチドは、2.7μmのコアシェルC18粒子(CAPCELL CORE MP 2.7μm、160Å material、大阪曹達株式会社)をインハウスで充填した75μm×15cmのPicoFritエミッタ(New Objective)に直接注入し、Eksigent ekspert nanoLC 400 HPLCシステム(Sciex)を用いて、300nL/分の流速で180分間のグラジエントをかけて分離した。
カラムから溶出したペプチドは、TripleTOF 5600+質量分析計(Sciex)を用いて、ショットガンMS及びSWATH(Sequential Window Acquisition of All Theoretical Mass Spectra)-MS分析を行った。ショットガンMSを用いた実験では、400~1000m/zの範囲で250ミリ秒の間、MS1スペクトルを収集した。電荷状態が2+から5+で150カウント/秒を超える上位25個のプリカーサーイオンを選択し、ローリングコリジョンエネルギーでフラグメンテーションを行い、100~1500m/zの範囲で100ミリ秒の間、MS2スペクトルを収集した。ダイナミックエクスクルージョン時間は24秒に設定した。
SWATH-MSを用いた実験では、質量分析計を、連続したデータに依存しない取り込みモードで動作させ、プレカーサー分離ウィンドウで12m/zずつ増加させた。分離幅13 m/z(ウィンドウのオーバーラップは1m/z)を使用して、400~1000m/zのプリカーサー質量範囲をカバーする50個のウィンドウのセットを構築した。SWATH MS2スペクトルは、MS2実験ごとに60ミリ秒の間、100~1500m/zの範囲で行われた。各MS2実験では、ローリングコリジョンエネルギーを用いて前駆イオンをフラグメント化した。
すべてのショットガンMSファイルは、ProteinPilotソフトウエアv.4.5とParagonアルゴリズム(Sciex)を用いて、マウスのUniProtリファレンスプロテオーム(Uniprot id UP000000589、レビュー済み、canonical)と照合し、タンパク質の同定を行った。
タンパク質の信頼性の閾値は、ProteinPilotの未使用スコアが1.3で、少なくとも1つのペプチドが95%の信頼性を持つものとした。今回の研究では、ペプチドとタンパク質の両方において、グローバルな偽発見率は1%未満であった。同定されたタンパク質は、PeakView v.2.2(Sciex)を用いてSWATH-MSデータから定量された。
(P.claraの培養上清のプロテオーム解析)
P.claraの培養上清に25%トリクロロ酢酸(最終濃度12.5%v/v)を加え、4℃で1時間インキュベートした。続いて、15,000×g、15分間、4℃で遠心分離して上澄みを除去した後、沈殿物をアセトンで2回洗浄し、蓋を開けて乾燥させた。続いて、乾燥した試料を、水浴型ソニケーター(Bioruptor UCD-200)を用いて、0.5%ドデカン酸ナトリウムと100mM Tris-HCl(pH8.5)に再溶解した。BCAアッセイにより再溶解したサンプルのタンパク質濃度を測定し、タンパク質濃度を1μg/μLに調整した。ショットガンプロテオーム解析の前処理は、上述した通りに行った。
ペプチドは、2.7μmのコアシェルC18粒子をインハウスで充填した75μm×20cmのPicoFritエミッターに50℃で直接注入した後、UltiMate 3000 RSLCnano LCシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて、100nL/分の流速で80分間のグラジエントをかけて分離した。カラムから溶出したペプチドは、Q Exactive HF-X(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いてオーバーラップウインドウDIA-MSで分析した。MS1スペクトルは495~785m/zの範囲で30,000の分解能で収集し、自動ゲインコントロールの目標値を3×e6、最大注入時間を55に設定した。
MS2スペクトルは、自動ゲインコントロールの目標値を3×e6、最大注入時間を「auto」、段階的な正規化衝突エネルギーを22、26、30%に設定し、30,000の分解能で200m/z以上の範囲で収集した。MS2のアイソレーション幅を4m/zに設定し、500~780m/zのオーバーラップするウィンドウパターンを使用した。ウィンドウの配置はSkylineソフトウエアを用いて最適化した。
MSファイルは、Scaffold DIA(Proteome Software)を用いて,P.claraのスペクトルライブラリーと照合した。スペクトルライブラリーは、P.clara(UniProt id UP000000589,reviewed,canonical)のタンパク質配列データベースから、Prositソフトウエアを用いて生成した。
P.claraのタンパク質配列データベースは、メタゲノム解析により独自に作成した。Scaffold DIAの検索パラメータは以下の通りであった。実験データ検索酵素:トリプシン、最大ミス切断部位:1、前駆体質量の許容範囲:8ppm、フラグメント質量の許容範囲:8ppm、静的修飾:システインのカルバミドメチル化。
タンパク質同定の閾値は、ペプチド及びタンパク質の偽発見率が1%以下になるように設定した。ペプチドの定量は、Scaffold DIAのEncyclopeDIAアルゴリズムにより算出した。各ペプチドについて、最も品質の高い4つのフラグメントイオンを選択し、定量した。タンパク質の定量値は、ペプチドの定量値の合計から推定した。
(ペプチドーム解析)
盲腸内容物に、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むアセトニトリル(ACN)を加え、遠心エバポレーターで乾燥させた。乾燥したサンプルにアセトンを加え、水浴式ソニケーターで脂質に溶ける低分子化合物を抽出した後、4℃で15,000×g、15分間の遠心分離を行った。
上清を除去した後、沈殿物に70%ACN-HClを加え、水浴型ソニケーターでペプチドを再溶解させた後、15,000×g、15分間、4℃で遠心分離した。続いて、上清を新しいチューブに移し、遠心エバポレーターで乾燥させた。続いて、乾燥したサンプルを、プロテアーゼ阻害剤を含む100mM Tris-HClに再溶解し、10mMジチオスレイトールで50℃で30分間処理した。その後、30mMのヨードアセトアミドで30分間、室温で暗所にてアルキル化した後、0.5%トリフルオロ酢酸(終濃度)で酸性化した。酸性化したサンプルをMonospin C18(GLサイエンス)で脱塩した。
ペプチドは、C18コアシェル粒子(CAPCELL CORE MP 2.7μm、160Å、大阪曹達)をインハウスで充填した75μm×25cmのPicoFritエミッター(New Objective)に50℃で直接注入した後、UltiMate 3000 RSLCnano LCシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて,100nL/分の流速で90分間のグラジエントをかけて分離した。
カラムから溶出したペプチドは,Q Exactive HF-X(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いてDDA-MSで分析した。MS1スペクトルは,自動ゲインコントロール(AGC)の目標値である3×106を達成するために、12万の分解能で350~1500m/zの範囲で収集した。
4.4×103を超える電荷状態が2+から5+の最も強い30個のイオンを、データに依存したモードで、規格化された衝突エネルギーが26%の衝突誘起解離で断片化し、200m/zで30,000の質量分解能を持つOrbitrap質量分析計でタンデムマススペクトルを取得した。AGCターゲットを1×105に設定した。
MSファイルは、マウスのUniProtリファレンスプロテオーム(Uniprot id UP000000589, review, canonical)PEAKS Studioで検索した。
検索条件は、前駆体の質量許容範囲8ppm、フラグメントイオンの質量許容範囲0.01Da、酵素の有無、固定修飾のカルバミドメチル化、可変修飾の酸化(M)であった。ペプチドの偽発見率が1%以下になるようにフィルターをかけて同定した。
(ウエスタンブロット)
マウス糞便サンプルを懸濁し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ)を添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で50倍に希釈した。続いて、懸濁したサンプルを4℃、15,000×gで10分間遠心分離し、その上清をウエスタンブロットに供した。マウス膵臓組織を液体窒素で急速凍結し、TRIzol Reagent(サーモフィッシャーサイエンティフィック)でタンパク質を抽出し、最終タンパク質濃度を4μg/μLに調整した。SDS-PAGEとブロッティングには、Novex(R)NuPAGE(R)SDS-PAGE Gel system(サーモフィッシャーサイエンティフィック)とiBlotTM 2 Dry Blotting System(サーモフィッシャーサイエンティフィック)をメーカーの指示にしたがって使用した。
いくつかの実験では、SDS-PAGE及びPVDF膜(0.2μm Transfer Membranes Immobilon-PSQ、メルクミリポア)の転写は、メーカー(XV PANTERA SYSTEM(DRC))の説明書にしたがって行った。
染色にはiBindTM Western Systems(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用した。
使用した抗体は以下の通りであった。ウサギ抗マウスPRSS2抗体(コスモバイオ)、ウサギ抗マウスHSP90抗体(#4877、セルシグナリングテクノロジー)、ウサギ抗ヒトPRSS2抗体(LS-B15726、LSBio)、ウサギ抗ヒトPRSS1抗体(LS-331381、LSBio)、ウサギ抗マウスTMPRSS2抗体(LS-C373022, LSBio, プロテアーゼドメインの配列に対するもの)、ウサギ抗6-His抗体(A190-214A, Bethyl laboratories)、ヤギ抗マウスIgAα鎖抗体(HRP)(ab97235、アブカム)、ラット抗マウスκ鎖抗体(HRP)(ab99632、アブカム)、ウサギ抗マウスCELA3b抗体(OACD03205, Avivasysbio)、抗ウサギIgG抗体(HRP)(#7074、セルシグナリングテクノロジー)、ウサギ抗マウスReg3抗体(51153-R005, Sino Biological)。
化学発光アッセイにはChemi-Lumi One(ナカライテスク)を、イメージングにはMolecular imager(R)ChemiDocTM XRS+ system(バイオラッド)又はiBrightTM FL1500を使用した。
(RT-qPCR)
マウス膵臓のRNAは、TRIzol Reagent(サーモフィッシャーサイエンティフィック)で抽出した。抽出したRNAは、ReverTra Ace(R)qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡)を用いてcDNAに変換した。
RT-qPCR解析は,Thunderbird SYBR qPCR Mix(東洋紡)とLightcycler480(ロシュ)を用いて行い,ΔΔCt法で解析した。内因性コントロールとしてGAPDHを用いた。使用したプライマーの塩基配列は次の通りであった。
GAPDH Forward primer:5'-GTCGTGGAGTCTACTGGTGTCTTC-3'(配列番号35)
GAPDH Reverse primer:5'-GTCATATTTCTCGTGGTTCACACC-3'(配列番号36)
PRSS2 Forward primer:5'-TGTGACCCTCAATGCCAGAG-3'(配列番号37)
PRSS2 Reverse primer:5'-AGCACTGGGGCATCAACAC-3'(配列番号38)
(免疫蛍光染色)
マウス大腸組織(糞便を含む)を採取し、コルノイ液(60%メタノール、30%クロロホルム、10%氷酢酸)で4℃で一晩固定した。パラフィン包埋にはTissue Processor(ライカマイクロシステムズ)を使用した。続いて、パラフィンブロックをミクロトームで薄切片(5.0μm)にした後、パラフィンを除去し、免疫染色を行った。
免疫蛍光法に使用した抗体は以下の通りであった。ウサギ抗PRSS2抗体(LSBio)、Alexa 488標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(サーモフィッシャーサイエンティフィック)、4’-6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(同仁化学研究所)、ローダミン標識UEA1(Ulex Europaeus Agglutinin 1、ベクターラボラトリーズ)。免疫蛍光イメージングには、Leica AF600と共焦点のLeica TCS SP5を使用した。
(マウス及びヒト糞便サンプルでのトリプシン活性測定)
マウス腸管内容物又は糞便サンプルを0.9%NaCl溶液で500倍(w/v)に希釈した。ヒト糞便を0.9%NaCl溶液で200倍(w/v)に希釈した。希釈した溶液をミニシェーカーで20分間、2,000rpmでボルテックスし、ピペッティングでホモジナイズした後、4℃、10,000×gで15分間遠心分離した。続いて、上清を回収し、メーカーのプロトコルにしたがってTrypsin Activity Assay Kit(Colorimetric) 100 test(ab102531)でトリプシン活性を測定した。405nmの吸光度をPerkinElmer 2030 Multilabel Readerを用いてキネティックモードで測定した。
(ヒト微生物叢のGFマウスへの定着)
ヒトの糞便サンプルは、機関内審査委員会で承認された研究プロトコルにしたがって、理化学研究所及び慶應義塾大学で採取された。各被験者からインフォームドコンセントを得た。ヒト糞便サンプル(20%(v/v)グリセロールで保存)を嫌気チャンバーに移し、解凍後、100μmのメッシュでふるい、GFアイソレーターに移し、GFマウスに200μL/マウスを経口投与した。
抗生物質処理は、0.5g/Lアンピシリン(ナカライテスク)、0.5g/Lメトロニダゾール(ナカライテスク)、1.0g/Lタイロシン(シグマ)の各溶液をオートクレーブ処理した水道水で作製した。ドナーC由来の糞便内容物を経口投与したマウスに、12日間抗生物質溶液を与えた。抗生物質溶液は1週間に1回交換した。
(マウス糞便内容物からのコロニー形成種の分離と同定)
マウス腸管内容物をグリセロール含有(20%)PBSと混合して嫌気チャンバーに入れ、-80℃でストックした。ストックを、嫌気チャンバー内で等量のTSブロス(BD)と混合し、以下に示す、異なる寒天プレートにプレーティングした。EG、ES、M10、NBGT、VS、TS(BD)、BL(栄研化学)、BBE(極東製薬)、Oxoid CM0619(サーモフィッシャーサイエンティフィック)、CM0619-supplemented SR0107(サーモフィッシャーサイエンティフィック)、CM0619-supplemented SR0108(サーモフィッシャーサイエンティフィック)、mGAM(日水製薬)、Schaedler(BD)。2日間の培養後、外観が異なるコロニーを新しいEGプレートに移した。その後、コロニーをEGEF液体培地で一晩培養し、グリセロール(最終濃度20%(v/v))と混合し、-80℃でストックした。
EG(Eggerth Gagnon)寒天培地の配合は以下の通りであった。プロテアーゼペプトンNo.3(10.0g)、酵母エキス(5.0g)、Na2HPO4(4.0g)、グルコース(1.5g)、可溶性デンプン(0.5g)、L-システインHCl(0.5g)、L-システイン(0.2g)、Tween80(0.5g)、寒天(4.8g)、馬肉抽出液(500mL)、1000mLまでの水+脱線維した馬の血液(50mL)。EGEF培地では、寒天を除き、脱線維した馬の血液(50mL)をフィルデス液(40mL)に置換した。
続いて、分離された菌株から、糞便からのDNA分離と同様のプロトコルで、細菌のDNAゲノムを抽出した。16S rRNAは、KOD plus Neoキット(東洋紡)を用いて、メーカーのプロトコルにしたがってPCRで増幅した。サンガーシークエンスはEurofins社に委託した。塩基配列はNCBIデータベースと照合した。サンガーシークエンスのためのプライマー配列は次の通りであった。
F27 primer:5'-AGRGTTTGATYMTGGCTCAG-3'(配列番号39)
R1492 primer:5'-TACGGYTACCTTGTTACGACTT-3'(配列番号40)
(16S rRNAのシーケンス)
凍結したマウス糞便サンプルを解凍し、100μLの懸濁液を、RNase A(最終濃度100μg/mL、サーモフィッシャーサイエンティフィック)とリゾチーム(最終3.0mg/mL、シグマ)を含む900μLのTE10(10mM Tris-HCl, 10mM EDTA)緩衝液と混合した。懸濁液を穏やかに攪拌しながら37℃で1時間インキュベートした。精製したアクロモペプチダーゼ(和光)を最終濃度2,000ユニット/mLになるように加え、さらに37℃で30分間インキュベートした。続いて、ドデシル硫酸ナトリウム(最終1%)とプロテイナーゼK(最終1mg/mL、ナカライ)を懸濁液に加え、55℃で1時間インキュベートした。
続いて、高分子DNAをフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、イソプロパノールで沈殿させた後、70%エタノールで洗浄し、100μLのTEに再懸濁した。
PCRはEx taq(Takara)を用いて行った。16S rRNA遺伝子のV1-V2領域を増幅するためのプライマー配列は次の通りであった。
27Fmod primer:5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACxxxxxxxxACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTAGRGTTTGATYMTGGCTCAG-3'(配列番号41、「xxxxxxxx」は、Miseq(イルミナ)インデックス配列を表す。)
)338R primer:5'-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATxxxxxxxxGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCTTGCTGCCTCCCGTAGGAGT-3'(配列番号42、「xxxxxxxx」は、Miseq(イルミナ)インデックス配列を表す。)
PCR産物は、メーカーのプロトコルにしたがってAgencourt AMPure XP(ベックマン・コールター)で精製した。16S rRNAライブラリは、Kapa library quantification Kit(Kapa Biosystems社)を用いて、メーカーのプロトコルにしたがって作製した。16S rRNAのシーケンスは、MiSeq Reagent kit ver3の標準プロトコルで行った。
(ノトバイオート実験)
Phasolactobacterium faecium(3G4)を除き、分離した菌株は嫌気チャンバーで37℃の温度で1~2日間培養した。Phasolactobacterium faeciumを80mMコハク酸ナトリウムを添加したOxoid CM0619寒天プレートで2~3日間培養し、コロニーを回収してEGEFに再懸濁した。OD600値をもとに菌密度を調整し、培養株の混合物をGFマウスに経口投与した(150μL/マウス、総菌数約1~2×108CFU)。
糞便中のP.clara DNAを定量するために、マウスの糞便DNAを精製し、LightCycler 480 System(ロシュ)でTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡)を用いてP.clara株の16s rRNA遺伝子に特異的な配列を増幅する定量的リアルタイムPCRを行った。P.clara(JCM14859)株のゲノムDNAの連続希釈液から標準曲線を作成した。使用したプライマーの塩基配列は次の通りであった。
5'-CGTAGGAGTTTGGACCGTGT-3'(配列番号43)
5'-GCATGGGAGCGACAAATAAA-3'(配列番号44)
(Citrobacter rodentium(C.rodentium)感染)
GFマウスに、200μLの2-mix(B.uniformis及びP.merdae)+P.clara(WT)、2-mix+P.clara(Δ00502)、2-mixのみのいずれかを経口接種した。14日後、マウスに、一晩培養したC.rodentium(150μL/マウス)を経口投与して感染させ、7日目に安楽死させた。
組織学的分析のために、マウスの頸部を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋した。パラフィンブロックを切開し、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。
大腸炎の程度は、炎症細胞の浸潤(スコア、0~4)、粘膜の肥厚(スコア、0~4)、杯細胞の枯渇(スコア、0~4)、陰窩膿瘍(スコア、0~4)、組織構造の破壊(スコア、0~4)の基準にしたがって、消化器専門医が評価した。最終的な組織学的スコアは、これらのパラメータのスコアの合計として定義した。
コロニー形成単位(CFU)アッセイのために、盲腸パッチ(cecal patches)又は盲腸管腔内容物を採取し、PBSでホモジナイズした後、段階希釈したホモジネートをLB寒天プレートにプレーティングした。好気的条件下、37℃で一晩培養した後、CFUをカウントした。
C.rodentium特異的IgAのex vivo評価のために、盲腸内容物を5x(w/v)LB培地に再懸濁し、遠心分離し、上清を孔径0.22μmのPVDF膜付きの滅菌フィルターユニットで濾過した後、等量のin vitroで一晩培養したC. rodentium培養液と混合した。この混合物を室温で穏やかに振って1時間インキュベートし、共焦点顕微鏡(Leica TCS SP8)で凝集効果を調べた。あるいは、インキュベーション後、混合物を遠心分離し、PBSで1回洗浄した後、1%SDS溶液(5mM EDTAを添加した50mM Tris-HCl緩衝液で希釈)で菌体ペレットを溶解した。ライセートをヤギ抗マウスIgAα鎖抗体(HRP)(ab97235)でウエスタンブロットにより染色し、糞便内容物中のC.rodentium結合性(C.rodentium特異性)IgAの相対的な量を評価した。
ワクチン投与実験のために、GFマウスをあらかじめ200μLの2-mix(B.uniformis及びP.merdae)+ P.clara(WT)又は2-mix+P.clara(Δ00502)を投与した。4日後、マウスに過酢酸で不活性化したC.rodentium(1010個/マウス)を週1回、3週間にわたって経口投与した。3週間の免疫後、マウスは経口投与により一晩培養したC.rodentium(150μL/マウス)に感染し、14日目に安楽死させた。
過酢酸で不活性化されたC.rodentiumは、次のようにして作製した。一晩培養したC.rodentiumを遠心分離(16,000×g、10分)して回収し、滅菌したPBSに1mLあたり1010個の密度で再懸濁した。過酢酸(240990、シグマ)を最終濃度0.4%になるように加え、室温で1時間インキュベートした。滅菌したPBSで3回洗浄した後、最終ペレットをPBSに1011粒子/mLの最終濃度で再懸濁し、4℃で保存した。ワクチンは使用前に、100μLの不活化ワクチンを200mLのLB培地に接種し、37℃で一晩培養して完全に不活化されていることを確認した。
(マウス肝炎ウイルス(MHV)感染)
MHV-2は氏家誠氏(日本獣医生命科学大学)より提供された。5週齢のGF C57BL/6N雄マウスは、CLEAジャパン又は三共ラボサービスから入手し、別々のステンレススチール製アイソレーターで飼育した。GFマウスは2-mix(B.uniformis及びP.merdae)+P.clara(WT)又は2-mix+P.clara(Δ00502)を200μL経口投与した。接種から2週間後、マウスに4.5x106 PFUのMHV-2を経口感染させ、10日間毎日生存率を観察した。
ウイルスの力価を測定するために、感染後4日目又は5日目に肝臓と脳を採取し、DNA/RNAシールド(Zymo Research社)でホモジナイズした。ウイルスRNAは、Quick-RNA Viral Kit(Zymo Research社)を用いてメーカーの説明書にしたがって抽出し、ReverTra Ace(東洋紡)とランダムプライマー(東洋紡)を用いてcDNAを合成した。
LightCycler 480 System(ロシュ)でTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡)を用いて定量的リアルタイムPCRを行い、orf1a遺伝子を増幅した。MHVの相対量は、MHVゲノムcDNAの段階希釈液から作成した標準曲線から求めた。使用したプライマーの塩基配列は次の通りであった。
5'-AAGAGTGATTGGCGTCCGTAC-3'(配列番号45)
5'-ATGGACACGTCACTGGCAGAG-3'(配列番号46)
(in vitroでのトリプシン分解)
一晩培養した細菌を、組換えマウストリプシン(最終濃度1μg/mL)と1時間、またはヒトトリプシン(最終濃度20μg/mL)と4時間インキュベートした。使用した組換えトリプシンアイソフォームは、組換えマウスPRSS2(50383-M08H、Sino Biological社)、組換えヒトPRSS1(LS-G135640)、組換えヒトPRSS2(LS-G20167)、組換えヒトPRSS3(His-tag)(NBP2-52220)であった。
いくつかの実験では、組換えマウスPRSS2を、P.clara培養液とのインキュベーションの前に、まず次のトリプシン阻害剤の1つで30分間処理した。AEBSF(シグマ、最終濃度2mM)、ロイペプチン(シグマ、最終濃度100μM)、TLCK(アブカム、最終濃度100μM)。
いくつかの実験では、組換えマウスPRSS2とのインキュベーションの前に、ツニカマイシン(シグマ、最終濃度10μg/mL)、2-フルオロ-L-フコース(ケイマンケミカル、最終濃度250μM)、又は対応するDMSOコントロールの存在下でP.claraを一晩培養した。
Ca2+の影響を評価する実験では、組換えマウスPRSS2とのインキュベーションの前に、1mMのCa2+を補充した又は補充しなかった低Ca2+ mGAM培地でP.claraを培養した。P.clara上清を用いた実験では、一晩培養したP.claraを、孔径0.22μmのPVDF膜を用いた滅菌フィルターユニットでろ過した。
(共焦点顕微鏡)
組換えマウスPRSS2をAlexa FluorTM 488 Antibody Labeling Kit(A20181, ThermoFisher)を用いてAlexa FluorTM 488で標識し、AEBSF阻害剤で前処理した(150μg/mL rmPRSS2 with 20mM AEBSF)。
Alexa FluorTM 488で標識したマウスPRSS2を、最終濃度5μg/mLで培養した細菌と、嫌気チャンバー内で20分間インキュベートした。混合物を遠心分離し、PBSで1回洗浄した後、PBSに再懸濁した。共焦点画像の撮影には、Leica TCS SP8共焦点顕微鏡を用いた。
(ジスクシンイミジルスルホキシド(DSSO)クロスリンク)
DSSO(A33545)はサーモフィッシャーサイエンティフィックから購入した。一晩培養したP.clara(1C4)株を、AEBSFで処理したマウスの組換えPRSS2と20分間インキュベートし、PBSで1回洗浄した後、10mM DSSOに再懸濁した。室温で10分間インキュベートした後、トリス-塩酸緩衝液(最終濃度20mM)を加えて反応を停止した。
PBSで洗浄した後、ペレットを1%SDS溶液(5mM EDTAを添加した50mM Tris-HCl緩衝液で希釈)で溶解した。P.clara(1C4)株のみ(PRSS2とのインキュベーションなし)を同様に処理し、ネガティブコントロールとした。上清をウサギ抗6-His抗体(A190-214A、Bethyl laboratories)及び抗ウサギIgG抗体(HRP)(#7074、セルシグナリングテクノロジー)で染色し、ウエスタンブロットで解析した。
(全細胞ライセート、上清、糖鎖含有タンパク質のタンパク質染色)
P.clara(1C4)株を、ツニカマイシン(シグマ、最終10μg/mL)、2-fluro-L-fucose(ケイマンケミカル、最終250μM)、又は対応するDMSOコントロールの存在下で一晩培養した。その後、培養した細菌をペレット化し、PBSで1回洗浄した後、1%SDS溶液(5mM EDTAを添加した50mM Tris-HCl緩衝液で希釈したもの)で溶かした。SDS-PAGEはNovex(R)NuPAGE(R)SDS-PAGE Gel system(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて行った。糖鎖を含むタンパク質は、Pro-QTM Emerald 300 Glycoprotein Gel and Blot Stain Kit(ThermoFisher)を用いて、メーカーのプロトコルにしたがって染色した。全細胞ライセートのタンパク質をColloidal Blue Staining kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック)で染色した。上清のタンパク質をAmicon Ultra Centrifugal Filters(10kD NMWL)で濃縮した後、Colloidal Blue Staining kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック)で染色した。
(変異体作製)
P.clara(JCM14859)株の欠失変異体(Δ03049~03053、Δ000502及びΔ000509)は、次のようにして作製した。まず、コーディング領域を挟む約1kbの配列をPCRで増幅し、HiFi DNA Assembly(NEB)を用いてメーカーのプロトコル通りに自殺用ベクターpLGB30に組み入れた。続いて、各反応液1μLずつをエレクトロ-コンピテント大腸菌S17-1 λpirに形質転換した。
続いて、形質転換体を以下のようにP.clara(JCM14859)株と結合させた。ドナー株とレシピエント株をそれぞれLB培地とEGEF培地でOD600が0.5になるように培養し、1:1の割合で混合した。この混合物をEGEF寒天プレートに滴下し、37℃で16時間好気的に培養した。続いて、テトラサイクリン(10μg/mL)を含むEGEF寒天培地プレートで接合完了体を選択した。接合完了体は、ラムノースで誘発されたss-bfe1トキシンの発現に部分的に感受性であり、10mMのラムノースの存在下では成長が阻害された(一晩のOD600が~0.3)。その後、2回目のクロスオーバーによるプラスミドのゲノムからの消失を選択するために、接合完了体を、10mMラムノースを添加したEGEFブロスで、接合完了体が復帰体に負けるまで、少なくとも3世代培養した(一晩のOD600が~1.0に達した)。その後、細菌培養を行い、単一のコロニーを採取し、PCRで正常な欠失を確認した。
コード領域の約0.5~1kbの相同配列を自殺ベクターpLGB30に組み入れ、エレクトロコンピテント大腸菌S17-1株に形質転換し、同様の手順で挿入変異体を作製した。
形質転換体を同じプロトコルでP.clara(JCM14859)株と共役させ、テトラサイクリン(10μg/mL)を含むEGEF寒天プレートで接合完了体を選択し、PCRで確認した後、テトラサイクリン(10μg/mL)を添加したEGEFブロスで維持した。変異体作成に用いた全てのプライマーの塩基配列を下記表1~5に示す。
(透過型電子顕微鏡(TEM))
野生型(WT)又はΔ00502 P.clara(JCM14589)株を、マウス組換えPRSS2(50383-M08H、Sino Biological社、終濃度5μg/mL)と20分間インキュベートし、PBSで洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド-1%グルタルアルデヒド溶液を用いて、室温で2時間固定した。0.05M PBSで洗浄した後、ペレットを段階的にエタノール(50%、70%、80%、90%、95%、100%)で脱水した。脱水したペレットをLRW樹脂(100%エタノールとLRWの1:1で1時間、その後100%エタノールとLRWの1:2で一晩、さらに100%LRWで5時間)で浸潤した。浸潤後、サンプルはゼラチンカプセルで硬化させた(53℃、24時間)。重合したLRWブロックをLeica Ultracut UCTで切開し、80nmの切片を得た。
免疫金染色のために、まず、切片を、1%BSAを添加した0.05MのPBSでブロックした後、ウサギ抗6-His抗体(A190-214A、Bethyl laboratories)で60分間染色した。0.05MのPBSで洗浄した後、切片を12nmのコロイド金標識ヤギ抗ウサギIgG抗体で60分間染色した。0.05MのPBSで再度洗浄した後、切片を0.05MのPBSに溶解した1%のグルタルアルデヒドで固定し、水で洗浄した後、酢酸ウラニルで5分間染色した。すべての画像はJEOL JEM-1400透過型電子顕微鏡で撮影した。
(組換えタンパク質の発現と磁気マイクロビーズへの結合)
組換え00502タンパク質及び組換え00509タンパク質を作製するために、両タンパク質の遺伝子のコード領域(シグナルペプチドをコードするN末端配列を除く)を発現ベクターpET-28b(+)(#69865、Novagen)にクローニングし、サプライヤーのプロトコルにしたがってC末端にHisタグを導入した。
続いて、発現ベクターをRosetta-gami B(DE3)コンピテントセル(#71136、Novagen)に形質転換した。続いて、形質転換体を指数関数的に成長させ、0.4mM IPTG(I6758、シグマ)を添加することでタンパク質の発現を誘導した。25℃で一晩培養した後、B-PERTM Bacterial Protein Extraction Reagent(#78243、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて細胞を溶解し、PierceTM Ni-NTA Magnetic Agarose Beads(#78605、サーモフィッシャーサイエンティフィック)及びPierceTM Polyacrylamide Spin Desalting Columns(#89849、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて組換え00502タンパク質及び00509タンパク質を調製した。
続いて、精製した組換え00502タンパク質、組換え00509タンパク質又はウシ血清アルブミン(#23209、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を、DynabeadsTM Antibody Coupling kit(14311D、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて、メーカーのプロトコルにしたがって、マイクロ磁気ビーズ(DynabeadsTM)に結合させた。ビーズ1mgあたり15μgのタンパク質を添加した。
続いて、1mgのタンパク質結合DynabeadsTMを200μLのEGEF培地に再懸濁し、組換えマウスPRSS2(終濃度3μg/mL)、AEBSFで前処理したAlexa FluorTM 488標識マウスPRSS2(終濃度5μg/mL)、又は50μLのGF盲腸内容物(PBSで50倍希釈)と混合した。組換え体の作製に使用したすべてのプライマーの塩基配列を下記表6に示す。
(プロテアーゼ活性アッセイ)
PierceTM Fluorescent Protease Assay Kit(#23266、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて,メーカーのプロトコルにしたがって、P.clara培養液、P.clara培養液上清、組換え00502タンパク質及び組換え005009タンパク質のプロテアーゼ活性を測定した。
フルオレセインの励起フィルター及び発光フィルター(485/538nm)を備えたPerkinElmer 2030 Multilabel Readerを使用し、FITC-カゼイン基質が消化されて、より小さなフルオレセイン標識断片になったことによる蛍光総量の増加を検出した。プロテアーゼ活性は、相対的な蛍光単位(RFU)の変化として測定した。
(公開されたコホートのヒト便サンプルのメタゲノム解析)
PRISM、HMP2、FHS、500FG、CVON、Jieの各コホートのヒト便サンプルから得られたメタゲノムは、de novoで、非冗長遺伝子カタログにアセンブルし、MSPminerを用いてメタゲノム種にまとめて相対的な存在量を定量化した。
00502タンパク質をコードする遺伝子と00509タンパク質をコードする遺伝子を含むトリプシン関連遺伝子座のP.clara株の遺伝子とP.xylanphila株の遺伝子のホモログ、及び、他の6つの近傍遺伝子を遺伝子カタログで検索するために、USEARCH ublast(at protein level)を採用し、最小e-valueが0.1のヒットを保持した。その結果、各種とも8つの遺伝子すべてが存在することを遺伝子カタログで確認した。
この遺伝子座をコードする追加の推定ホモログや種を同定するために、まずP.clara株とP.xylanphila株の対応するホモログ間の類似性を評価し、遺伝子座の各遺伝子に対するublastヒットの最小同一性(Id)とカバレッジ(Cov)の閾値を以下のように設定した。00502:Id=25%、Cov=90%。00503:Id=70%、Cov=90%。00504:Id=60%、Cov=90%。00505:Id=60%、Cov=90%。00506:Id=50%、Cov=90%。00507:Id=25%、Cov=90%。00508:Id=45%、Cov=80%。00509:Id=20%、Cov=30%。
続いて、どの他のメタゲノム種(MPS)が、P.clara株とP.xylanphila株の00502~00509遺伝子の相同体をコードするかを評価し、それぞれ8と7の相同体を持つMSP 0355とMSP 0305を同定した。MSP 0355とMSP 0305は、以前、Bacteroidetes門にのみアノテーションされていたが、今回、ublastを用いて、これらのプロテオームを統合ヒト消化管ゲノム(UHGG)コレクションと比較した。その結果、MSP 0355及びMSP 0305は、それぞれGUT_GENOME 140082及びGUT_GENOME 016875と注釈され、遺伝子の大部分(>90%)が、高い信頼性(アミノ酸同一性中央値>99%及びe値<1×e-184)で、UHGGを代表する単一種にマッピングされた。UHGGでは、両方とも系統発生的にParaprevotella種として分類された。
(統計)
全ての統計解析は、GraphPad Prismソフトウエア(GraphPad Software, Inc)を用いて行った。多重比較にはTukey’s testを併用したOne-way ANOVAを用いた。2群間の比較には,ウェルチの補正を加えたMann-Whitney検定(ノンパラメトリック)またはpaired t検定(パラメトリック)を用いた。2つの変数間の相関を調べるために、Spearman順位相関を用いた。生存分析には,Log-rank(Mantel-Cox)検定を用いた。
[実験例1]
(微生物叢による大腸内トリプシンの制御)
腸内微生物叢が大腸内のタンパク質分布に及ぼす影響を調べるため、無菌(GF)マウスと特定病原体フリー(SPF)マウスの盲腸内容物を採取し、質量分析法によるプロテオミクス解析を行った。検出された713種類の宿主由来タンパク質のうち、324種類がGFマウスよりもSPFマウスの方が高いことがわかった(>2-fold,p<0.05)。それらには、α-デフェンシン21(Defa21)やペプチドグリカン認識タンパク質1(Pglyrp1)等の免疫関連分子も含まれていた。一方、GFマウスでは、SPFマウスと比較して45種類のタンパク質がより多く存在していた(>2-fold,p<0.05)。
図1は、プロテオミクス解析の結果を示す図である。図1は、SPFマウスよりもGFマウスの盲腸で発現量が増加したタンパク質を示す。その中で、アニオン性トリプシンプロテアーゼ(Prss2遺伝子にコードされる)に着目した。アニオン性トリプシンプロテアーゼ(PRSS2)のレベルは、GFマウスの盲腸内容物で著しく上昇していた。
図2は、SPFマウス及びGFマウスの糞便のトリプシン活性試験の結果を示すグラフである。図3は、SPFマウス及びGFマウスの糞便のウエスタンブロット解析によりアニオン性トリプシンプロテアーゼ(PRSS2)を検出した結果を示す写真である。図4は、SPFマウス及びGFマウスの大腸切片の免疫染色により、粘液(UEA1)及びアニオン性トリプシンプロテアーゼ(PRSS2)を検出した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。また、DAPIで細胞核を染色した。
その結果、SPFマウス及びGFマウスの糞便のトリプシン活性試験、SPFマウス及びGFマウスの糞便のウエスタンブロット解析、大腸切片の免疫染色の結果も、プロテオミクス解析の結果と同様であり、GFマウスでは、SPFマウスと比較して、盲腸内容物及び糞便中に、アニオン性トリプシンプロテアーゼがより多く存在することが明らかとなった。以下、アニオン性トリプシンプロテアーゼを単にトリプシンという場合がある。
トリプシンは膵臓で不活性の前駆体(トリプシノーゲン)として生成された後、十二指腸に分泌され、エンテロペプチダーゼによって活性化される。そこで、GFマウスとSPFマウスの膵臓におけるトリプシノーゲンの発現を調べた。その結果、GFとSPFでは、膵臓におけるPRSS2のmRNAおよびタンパク質レベルが同等であることが明らかとなった。この結果から、大腸で観察されたトリプシンレベルの差が、膵臓での生産量の差によるものである可能性は否定された。
続いて、GFマウスとSPFマウスの小腸と大腸の異なる場所で、管腔内トリプシン活性を調べた。図5は、空腸、回腸、盲腸、大腸、糞便におけるトリプシン活性を測定した結果を示すグラフである。図5中、「n.s.」は有意差がないことを示し、「*」はp<0.05で有意差があることを示す。
その結果、小腸の遠位端までは、SPFマウスとGFマウスは同程度のトリプシン量であることが明らかとなった。一方、大腸では、SPFマウスはGFマウスに比べてトリプシン活性が有意に低下しており、大腸におけるトリプシンの制御に微生物叢が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
[実験例2]
(トリプシン分解を促進できるParaprevotella株の同定)
大腸の微生物叢が膵臓のプロテアーゼを不活性化することはこれまでに報告されていたが、この過程に関与する菌は未同定であった。そこで、ヒト微生物叢から、トリプシンを減少させる細菌の単離と同定を試みた。
まず、6名の健常人の日本人ドナー(ドナーA~F)から採取した糞便サンプルをGFマウスに投与した。続いて、GFマウスの糞便におけるトリプシン活性を測定した。図6は、それぞれの健常人ドナー(A~F)から採取した糞便サンプルを投与した、GFマウスにおける糞便トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。図6中、「n.s.」は有意差がないことを示し、「***」はp<0.001で有意差があることを示す。
その結果、検討したヒト糞便サンプルには、マウスの糞便トリプシン活性を低下させる能力にばらつきがあることが明らかとなった。具体的には、ドナーBの微生物叢を投与されたマウスは糞便トリプシン活性が減少しなかった一方で、ドナーC、D、E及びFの微生物叢を投与されたマウスは糞便トリプシン活性が大幅に減少した。
続いて、ドナーCの微生物叢を投与されたマウス(マウスC#5)を選択し、その盲腸内容物を採取した。さらに、その盲腸内容物を新たなGFマウス(GF+C#5マウス)に経口投与した。ここで、微生物叢を絞り込むために、GF+C#5マウスを4群に分け、それぞれの群に、飲水を介してアンピシリン(Amp)、メトロニダゾール(MNZ)、タイロシン(Tyl)又はコントロール(抗生剤なし、No Abx)を投与し、各群の糞便中のトリプシン活性を経時的に計測した。
図7は、各群のマウスの糞便トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。図7中、「n.s.」は有意差がないことを示し、「***」はp<0.001で有意差があることを示す。その結果、抗生剤を処置しなかったGF+C#5マウスでは、数日のうちに糞便中トリプシン活性が減少した。注目すべきことに、Amp処理群で糞便中トリプシン活性はより減少しており、一方、MNZ処理群又はTyl処理群での糞便中トリプシン活性減少がなくなっていた。これらの結果は、C#5の微生物叢が、Amp処理群で濃縮されており、MNZ又はTyl処理群で減少している、トリプシン活性を低下させる細菌を含有していることを示す。
Amp処理マウスのうち1匹(マウスC5-Amp#5)を追跡調査し、その盲腸内容物を採取し、嫌気性条件下でさまざまな培地を用いてin vitroで培養した。続いて、432個の異なるコロニーを単離し、16S rRNA遺伝子の塩基配列を解析した結果、35個のユニークな株に細分化された。この35株は、C5-Amp#5マウスに定着している菌種を広くカバーしていた。35株の単離菌(35-mix)の混合物をGFマウス(GF+35-mix)に投与すると、糞便中トリプシン活性が顕著に減少し、その減少は元のドナーCの微生物叢を定着させたマウスの減少と同等であった。
次に、エフェクターとなる細菌を絞り込むために、上述した抗生物質投与試験で得られた糞便サンプルの16S rRNA遺伝子配列を解析し、スピアマンの順位相関試験を行って、35株それぞれの相対的な存在量とトリプシン活性の低下との関連性を評価した。その結果、35株のうち、14株はトリプシン活性と負の相関を示した(ρ≦-0.3)。
続いて、ノトバイオートマウスを作製することで、この14菌と残りの21菌の効果を比較した。その結果、GF+14-mixマウスは、GF+35-mixマウスと同程度に、糞便中のトリプシン活性の強力な減少を示した一方、GF+21-mixマウスはその活性を減少させなかった。続いて、この14-mixから、トリプシン活性の減少と有意に関連する9株をさらに選択した(ρ≦-0.5,p<0.05)。
GFマウスへの9-mixの定着は、14-mixが定着したマウスと同程度に、糞便中のトリプシン活性の強力な減少を示した。最終的に、9-mixを、Bacteroidales種からなる3-mixと、非Bacteroidales種からなる6-mixに分けた。
Paraprevotella clara(P.clara,strain ID:1C4),Bacteroides uniformis(B.uniformis,strain ID:3H3)及びParabacteroides merdae(P.merdae,strain ID:1D4)からなる3-mixで、in vivoにおける糞便トリプシン活性の減少に必要十分であり、6種の非-Bacteroidales mixは糞便トリプシン活性の減少に全く効果がないことが明らかとなった。
トリプシンを分解する細菌を特定するために、9-mixのそれぞれの株を、組換えマウストリプシン(rmPRSS2、C-terminal His-tagを付加)と混合してインキュベーションし、ウエスタンブロットにてトリプシンの分解を測定した。
図8は、ウエスタンブロットの結果を示す写真である。その結果、唯一、P.clara(strain ID:1C4)が、トリプシンを減少させた。これと一致して、B.uniformis 3H3及びP. merdae 1D4の混合物(3-mixからP.clara(1C4)を除外したもの)又は34-mixは、in vivoにおいて糞便トリプシン活性の減少能を示さなかった。
以上のことから、微生物叢のコニュニティーがトリプシン活性の低下に必要であるという当初の仮説とは異なり、単一のP.clara(1C4)がトリプシン活性の低下に必要であると結論した。
続いて、組換えヒトトリプシンアイソフォームPRSS1、PRSS2、PRSS3(rhPRSS1-3)を、P.clara(1C4)と混合してインキュベートし、ヒトトリプシンの分解をウエスタンブロットで解析した。
図9は、ウエスタンブロットの結果を示す写真である。図9中、「-」はP.claraを添加しなかったことを示し、「+」はP.claraを添加したことを示す。その結果、P.claraは、マウストリプシンに加えて、3つの既知のヒトトリプシン(PRSS1及びPRSS2、また、より少ない程度にPRSS3)の減少を促進できることが明らかとなった。
続いて、P.claraによるトリプシン活性の減少の効果が株特異的であるかどうかを調べた。具体的には、組換えマウスPRSS2(rmPRSS2)を、Paraprevotella属菌株又はPrevotella属菌株とin vitroでインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した。Paraprevotella属菌株としては、P.clara株(JCM14859、P237E3b、P322B5)及びP.xylaniphila株(JCM14860、82A6)を使用した。Prevotella属菌株としては、Prevotella copri、Prevotella denticola、Prevotella stercorea、Prevotella oulorumを使用した。図10は、ウエスタンブロットの結果を示す写真である。図10中、「*」は、抗PRSS2抗体で検出されたPRSS2の切断されたフラグメントの位置を示す。
Paraprevotellaは、最近同定されたPrevotellaceaeの属で、P.claraとParaprevotella xylaniphilaの2種のみを含む。そこで、ヒト健常人糞便サンプルから単離したP.xylaniphila(JCM14860)株及びP.xylaniphila(82A6)株を調べた。
その結果、非日本人ドナーを含む健常人より採取した糞便サンプルから単離した3つの他のP.clara株(JCM14859、P237E3b、P322B5)は、共通してトリプシンを減少させる効果があることが明らかとなった。また、P.xylaniphila(JCM14860)株及びP.xylaniphila(82A6)株の双方が、P.clara株に似た強力なトリプシン減少能を示すことが明らかとなった。
一方、Paraprevotellaと系統的に近い、Prevotella属細菌(Prevotella copri、Prevotella denticola、Prevotella stercorea及びPrevotella oulorum)は、すべてトリプシン活性を低下させなかった。
これらの結果は、Paraprevotella属細菌が、トリプシン分解能を持つヒト微生物叢の代表的な構成要素であることを示す。
[実験例3]
(IX型分泌機構依存性ポリサッカライド(多糖)結合分子によるトリプシンの自己分解)
P.claraの基質特異性について調べた。具体的には、各種タンパク質と共にトリプシンが大量に含まれているGFマウス盲腸内容物をex vivoでP.clara(1C4)と共にインキュベーションした。続いて、各タンパク質由来ペプチドの存在量をLC-MSによるペプチドーム解析により調べた。その結果、276タンパク質由来の7614ペプチドのうち、トリプシンが、P.claraの存在下で時間経過に伴ってペプチド濃度が明確に増加するパターンを示した、ただ1つのタンパク質であった。
これらの結果は、P.claraが狭い基質特異性を有しており、トリプシンに対する高い活性を有することを示している。また、P.claraによるトリプシン分解の反応速度を調べたところ、反応は徐々に化学量論的に起きることが明らかとなった。
また、P.claraにより媒介されるトリプシン分解は、十分量の2価カチオン(例えば、Ca2+)の存在下でのみ起きていた。よって、この分解は酵素(プロテアーゼ)を介したものであることが明らかとなった。しかし、この分解は、トリプシンをP.claraの培養上清とインキュベーションしたときには観察されなかった。さらに、P.clara生菌又はフィルターをかけたP.claraの上清をプロテアーゼ基質(フルロセインラベルしたカゼイン)とともにインキュベーションしたところ、タンパク質分解活性は検出されなかった。
図11は、組換えマウスPRSS2(rmPRSS2)を、プロテアーゼ阻害剤で前処理した後にP.clara(1C4)とインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。その結果、セリンプロテアーゼ阻害剤であるAEBSF又はロイペプチン、更に、特異的なトリプシン阻害剤であるTLCKで前処理することにより、P.claraのトリプシン分解能が消失することが明らかとなった。この結果は、P.claraによるトリプシン分解が、トリプシン依存性の自己消化に媒介されることを示す。
続いて、P.claraがトリプシンの自己消化を促進する機構を解明する目的で、トリプシンをAlexa Fluor 488で標識し、トリプシンとP.claraの相互作用を視覚化した。図12は、Alexa Fluor 488標識したrmPRSS2を、P.clara(1C4)、及び、2つのPrevotella種である、P.denticola、P.oulorumとそれぞれインキュベートし、細菌の表面へのrmPRSS2の結合を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す写真である。図12中、黒四角は、P.clara(1C4)の拡大画像を示す。
その結果、蛍光標識したトリプシンは、数分以内にP.claraの表面に集積することが観察された。一方、P.denticola及びP.oulorumでは、トリプシンの集積は観察されなかった。このことから、トリプシン分解はトリプシン結合表面分子を介してP.claraの表面で起こっており、トリプシン結合表面分子がトリプシンの集積と自己消化を促進していると考えられた。
続いて、P.claraのトリプシン結合表面分子を同定するために、トリプシン(His-tag rmPRSS2)とP.clara由来分子との複合体を捕捉する化学的架橋剤として、ジスクシンイミジルスルホキシド(DSSO)で処理した。続いて、rmPRSS2とP.clara由来分子がクロスリンクした複合体をウエスタンブロットで解析した。
その結果、DSSO処理によって、抗His-tag抗体でブロットされた高分子量(~250kDa)の新たなバンドが出現した。このバンドは、トリプシンを含む高分子量複合体の存在を示す。
手持ちのマススペクトメトリーはこの複合体由来のクロスリンクしたペプチドを検出するのに十分な感度がなかったが、サイズ的にスメア状の250kDa付近のバンドはトリプシンが不均一な分子と相互作用していることを示していた。
Paraprevotellaを含むBacteroidetesは、グリカン複合体が細胞表面に修飾されていることが知られている。このことから、P.claraの表面に存在するグリカンを含む分子がトリプシンの結合と分解に関与していると考えられた。
この仮説を調べるため、P.claraの糖鎖合成を標的とした阻害剤を使用した。まず、細菌のリポポリサッカライド(LPS)のO-グリカン形成の最初のステップを仲介するWecA様トランスフェラーゼを標的とした阻害剤であるツニカマイシンで、P.claraを処理した。
図13は、ツニカマイシン(Tuni.)又はビークルコントロールと前処理したP.clara(1C4)を、rmPRSS2とインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。その結果、ツニカマイシンで処理したP.claraでは、トリプシンの分解が見られないことが明らかとなった。
図14は、ツニカマイシン処理を行ったP.clara(1C4)又はツニカマイシン処理を行わなかったP.clara(1C4)を、Alexa Fluor 488標識したrmPRSS2とそれぞれインキュベートし、細菌の表面へのrmPRSS2の結合を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す写真である。図14中、「Tunicamycin(+)」はツニカマイシン処理を行った結果であることを示し、「Tunicamycin(-)」はツニカマイシン処理を行わなかった結果であることを示す。その結果、ツニカマイシン処理したP.claraでは、トリプシンのP.claraの表面への集積が認められないことが明らかとなった。同様に、フコース含有糖鎖の合成を広く阻害するフコース転移酵素阻害剤である2-フルオロ-L-フコース(2F-Fuc)でP.claraを処理したところ、トリプシンのP.clara表面への結合とトリプシンの分解の双方が阻害された。
T9SS(IX型分泌機構)は、Secシステムと協調して、保存されたC末端ドメインを持つタンパク質を、外膜を越えて表面に輸送する細菌の機構である。T9SSは、ソーターゼのようなプロテアーゼ活性でC末端ドメインを除去し、細胞外に輸送されたタンパク質を、表面の多糖類に結合させる役割を果たす。
発明者らは、T9SSによって分泌される細胞表面タンパク質が、トリプシンのリクルートと分解の原因となっていると推定し、以下の検討を行った。まず、P.claraとP.xylaniphila種のゲノムにおいて、T9SSに含まれると推定される遺伝子配列を同定した。
図15は、P.clara(JCM14859)、P.xylaniphila(JCM14860)及びP.gingivalis(ATCC33277)のゲノム中のT9SS遺伝子構成のアライメントを示す模式図である。
続いて、プラスミド配列を相同組換えにより、T9SSの基本構成因子であるPorUの発現が欠失した変異P.clara(JCM14859)株を作製した。図16は、PorUの発現を欠失させる相同組換えを説明する模式図である。
図17は、変異P.clara(JCM14859)をrmPRSS2とインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。図17中、「PorU mutant」は、変異P.clara(JCM14859)の結果であることを示し、「WT」は野生型のP.clara(JCM14859)の結果であることを示す。その結果、変異P.clara(JCM14859)では、トリプシン分解が完全に欠失しており、T9SS依存性表面タンパク質がトリプシン分解に関与していることが明らかとなった。
続いて、トリプシン分解への作用効果を有する細胞表面タンパク質を同定するため、ツニカカマイシンの存在又は非存在下で、P.clara培養上清のプロテオーム解析を実施した。その結果、ツニカカマイシン処理P.clara培養上清において、20個のバクテリア由来タンパク質を見出した。
そこで、プラスミド配列を20個の標的遺伝子座にそれぞれ導入すること、又は、遺伝子クラスターを除去すること(Δ03048~03053)により、ツニカマイシン感受性タンパク質の合成が阻害された一連の変異P.clara株を作製した。
図18は、野生型(WT)P.clara(JCM14859)又は一連の変異体P.clara(JCM14859)を介したrmPRSS2分解のウエスタンブロット解析の結果を示す写真である。図18中、「Δ03048~03053」は、遺伝子クラスターを除去した変異体P.claraの結果であることを示し、「00029」、「00890」、「00822」、「00342」、「00104」、「03191」、「00502」、「02199」、「00472」、「01041」、「00823」、「00729」、「00935」、「01686」、「03166」、「00509」、「00002」、「PorU」、「WecA」はそれぞれ、記載された遺伝子を、プラスミドの挿入により欠失した変異体P.claraの結果であることを示す。
その結果、00502タンパク質(UniProtKB ID:G5SNC9、Omp28関連細胞膜外タンパク質)、又は、00509タンパク質(UniProtKB ID:G5SNC1、機能未知タンパク質)をコードする遺伝子を破壊することで、PorU又はWecA(ツニカマイシンの標的因子)欠損変異株と同様に、in vitroでのトリプシン分解が消失することが明らかとなった。
続いて、挿入変異体に代えて、00502タンパク質又は00509タンパク質が欠失したP.clara株(Δ00502及びΔ00509)を作製して同様の検討を行った。
図19は、Δ00502及びΔ00509を、Alexa Fluor 488標識したrmPRSS2とそれぞれインキュベートし、細菌の表面へのrmPRSS2の結合を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す写真である。その結果、Δ00502株及びΔ00509株の双方において、トリプシンのリクルートが欠失したことが明らかとなった。
また、図20は、Δ00502株及びΔ00509株を、rmPRSS2とインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。図20中、「WT」は野生型のP.clara(JCM14859)の結果であることを示す。その結果、Δ00502株及びΔ00509株の双方において、トリプシン分解が欠失したことが明らかとなった。
続いて、Paraprevotella株のゲノム配列を解析した。図21は、Paraprevotella株のゲノム配列を示す模式図である。その結果、トリプシン分解能を有するすべての株が、00502遺伝子及び00509遺伝子を有していることが明らかとなった。これに対し、調べたどのPrevotella種も00502遺伝子及び00509遺伝子のホモログを有していなかった。
また、Paraprevotella株間で、00502遺伝子及び00509遺伝子の遺伝子座とは離れた部位に00503~00508遺伝子が保存されていた。図22は、00502~00509遺伝子のそれぞれを欠失させたP.clara変異株を、rmPRSS2とインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。その結果、00503~00508遺伝子が欠失したP.clara変異株はトリプシン分解活性を保有しており、これらのトリプシン分解過程への関与は否定された。
[実験例4]
(00502タンパク質及び00509タンパク質の検討)
組換え00502タンパク質及び00509タンパク質を作製した。00502タンパク質又は00509タンパク質の発現ベクターを組み込んだ大腸菌をイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)で処理して組換えタンパク質の発現を誘導し、発現した組換え00502タンパク質又は00509タンパク質を細胞溶解液から磁性アガロースビーズで精製した。
図23は、FITC標識したカゼインの切断によって、組換え00502タンパク質又は00509タンパク質のプロテアーゼ活性を測定した結果を示すグラフである。トリプシン(1ng/μL)をポジティブコントロールとして使用した。図23中、(-)は、タンパク質を添加していないことを示す。プロテアーゼ活性は、相対的な蛍光単位の変化として表した。その結果、組換え00502タンパク質及び00509タンパク質は、プロテアーゼ活性を有していないことが明らかとなった。
図24は、遊離型の組換え00502タンパク質及び00509タンパク質、又は、組換え00502タンパク質及び00509タンパク質をマイクロビーズに結合したものをrmPRSS2とインキュベートし、rmPRSS2の分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。
図25は、組換え00502タンパク質、組換え00509タンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA)をマイクロビーズ結合させたものを、rmPRSS2と一緒にインキュベートし、rmPRSS2とタンパク質結合ビーズの結合状態を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す写真である。スケールバーは5μmである。BSAはネガティブコントロールとして使用した。
その結果、遊離型の00502タンパク質及び00509タンパク質は、トリプシン分解活性を示さないことが明らかとなった。一方、マイクロビーズに結合させた組換え00502タンパク質は、トリプシンの効果的なリクルート及び分解を示した。
図26は、GFマウスの盲腸内容物を、培地コントロール(-)又はマイクロビーズに結合させた組換え00502タンパク質とインキュベートし、24時間後又は48時間後のトリプシンのex vivoでの分解をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。図26中、「*」は、抗PRSS2抗体で検出されたPRSS2の切断されたフラグメントの位置を示す。その結果、マイクロビーズに結合させた組換え00502タンパク質により、顕著なトリプシン分解が検出された。
これらの結果は、00502タンパク質がトリプシン結合の足場として働き、トリプシンの自己分解を促進するという発明者らのモデルを支持するものである。また、マイクロビーズに結合させた組換え00509タンパク質に、トリプシンは効果的に結合したが、トリプシン分解は起きないことが明らかとなった。
これらの結果から、00502タンパク質はトリプシンのリクルートと自己消化の効果を発揮させる主要な構成因子であるが、00509タンパク質はトリプシンのリクルートを補助する働きを持つことが示唆された。
図27に、発明者らが提唱する、Paraprevotella属細菌を介したトリプシン分解のモデルを示す。図27中、「Sec」は、細胞質膜を超えてタンパク質が排出されるSecシステムを示す。
図27に示すように、00502タンパク質及び00509タンパク質は、IX型分泌機構(T9SS)を介してParaprevotellaの細胞外膜を超えて輸送される。PorUは基本的なT9SS構成因子であり、T9SS依存性タンパク質のC末端ドメイン(CTD)を分解し、Paraprevotella属細菌のLPS分子とそれらのタンパク質をつなぐ。WecAは、LPS O-グリカン合成の初めのステップを仲介し、例えば、ツニカマイシン処理によるWecAの機能の破壊により、T9SS依存性タンパク質の放出をもたらす。00502タンパク質は、トリプシンのリクルート及び自己消化のための主要なエフェクター構成因子として働く。一方、00509タンパク質は、トリプシンのリクルートを補助する。
00509タンパク質ではなく、00502タンパク質がトリプシンの自己消化を促進する正確なメカニズムはまだ不明であるが、トリプシンが00502タンパク質に結合することでトリプシンの構造が変化し、自己消化が起こりやすくなるのではないかと推測される。
[実験例5]
(P.clara株の定着はIgAの維持に貢献する)
in vivoでのトリプシン分解への00502及び00509タンパク質の貢献を確認するために、3つのP.clara(JCM14859)株(野生型(WT)、Δ00502又はΔ00509)の一つを定着させたGFマウスを解析した。
P.clara株は単一株ではマウスに定着しなかったため、P.clara株を2つのトリプシン分解をしない株(2-mix:Bacteroides uniformis 3H3及びParabacteroides merdae 1D4)を共に接種した。2-mixと共に接種することにより、すべての3つのP.clara株は、効果的にマウスの腸に定着した。
図28は、P.clara株(野生型(WT)、Δ00502又はΔ00509)を2-mixと共に接種したGFマウスの糞便中のP.clara株のDNAを定量した結果を示すグラフである。図28中、「n.s.」は有意差がないことを示す。その結果、in vivoにおいて、00502遺伝子又は00509遺伝子の欠失は、P.clara株の存在量に影響を与えないことが明らかとなった。
図29は、P.clara株(野生型(WT)、Δ00502又はΔ00509)を2-mixと共に接種したGFマウスの糞便トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。図29中、「*」、「***」は、それぞれ、p<0.05、p<0.001で有意差があることを示す。その結果、in vitroでの結果と一致して、Δ00502 P.clara株を定着させたマウスは糞便中で高いトリプシン活性を保っており、一方、Δ00509 P.clara株を定着させたマウスは部分的にトリプシン活性の減少を示した。
続いて、00502の重要性を、より複雑な微生物叢コミュニティーが存在する条件下で検討した。図30は、P.clara株(野生型(WT)、Δ00502)を、上述した34-mix(35-mixからP.clara(1C4)を除外したもの)と共に接種したGFマウスの糞便トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。図30中、「**」は、p<0.01で有意差があることを示す。その結果、Δ00502 P.claraを定着させたマウスは、野生型(WT)P.claraを定着させたマウスよりも、糞便中トリプシン活性が高いことが明らかとなった。
以上の結果から、00502タンパク質の本質的な役割は、in vivoでのトリプシン分解を促進することであると確認できた。
続いて、野生型(WT)及び変異型P.claraによる腸内トリプシンレベルの調節が、IgAや抗菌ペプチド等の、重要な腸内防御因子に与える影響を検討した。
図31は、P.clara株(野生型(WT)、Δ00502又はΔ00509)を2-mixと共に接種したGFマウスの糞便中の、トリプシン(PRSS2)、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)、IgA重鎖、κ軽鎖、グラム陰性菌に対する抗菌ペプチドであるReg3β、Chymotrypsin Like Elastase 3B(CELA3B)をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。
その結果、野生型のP.clara株のマウスへの定着では、Δ00502又はΔ00509 P.clara株のマウスへの定着よりも多量の糞便中のIgA重鎖(α鎖)が検出された。これに対し、κ軽鎖はトリプシン耐性なので、各種P.clara株を定着させたマウス間での糞便中κ軽鎖レベルは同様であった。また、グラム陰性菌に対する抗菌ペプチドであるReg3βは、κ軽鎖と同様にトリプシン分解耐性であった。
これらの結果は、in vivoにおいて、P.clara株の定着が、トリプシンによる分解からIgAを保護することを示す。
図32は、GFマウスの糞便、2-mixと共に野生型P.clara株を接種したGFマウスの糞便、上記2者を混合した試料、上記2者を混合した試料にトリプシン阻害剤(TCLK)を添加した試料を、37℃で48時間インキュベーションし、トリプシン(PRSS2)、IgA重鎖、κ軽鎖、Chymotrypsin Like Elastase 3B(CELA3B)をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。
その結果、第1レーンの結果より、GFマウスの糞便中にトリプシンが含まれており、IgA重鎖が分解されたことが示された。また、第2レーンの結果より、2-mixと共に野生型P.clara株を接種したGFマウスの糞便では、トリプシンが減少しておりIgA重鎖が残存していることが示された。また、第3レーンの結果より、GFマウスの糞便中に残存していたトリプシンにより、2-mixと共に野生型P.clara株を接種したGFマウスの糞便中に残存していたIgA重鎖が分解されたことが示された。また、第4レーンの結果より、トリプシン阻害剤の添加により、レーン3におけるIgA重鎖の分解が阻害されることが示された。また、第3、第4レーンの結果より、IgA重鎖の方がκ軽鎖よりもトリプシンに分解されやすいことが示された。
[実験例6]
(P.clara株の定着が腸管病原菌の感染に与える影響の検討)
腸管病原菌が感染した条件下でも、P.clara株により媒介されるトリプシン分解がIgA量を維持できるかどうかを検討した。
GFマウスに2-mix又は2-mixに加えて野生型(WT)又はΔ00502 P.clara株を接種し、14日後に、主に大腸に感染するマウスの病原体である、Citrobacter rodentium(C.rodentium)を感染させた。
図33は、C.rodentium感染後の各群のマウスの体重変化を示すグラフである。図33中、「**」、「***」は、それぞれ、p<0.01、p<0.001で有意差があることを示す(2-mix+Δ00502 vs. 2-mix)。また、「#」はP<0.05で有意差があることを示す(2-mix+WT vs. 2-mix)。
図34上段は、C.rodentium感染から7日後の各マウスの大腸の画像である。2-mix群では盲腸の色が白っぽく、収縮していた。図34下段は、盲腸組織のヘマトキシリン・エオジン染色の代表的な画像を示す顕微鏡写真である。
図35は、ヘマトキシリン・エオジン染色に基づく盲腸組織の組織学的スコアを示すグラフである。図35中、「n.s.」は有意差がないことを示し、「***」はp<0.001で有意差があることを示す。
その結果、2-mix群は、C.rodentiumの感染に続き、急速な体重の減少と重篤な盲腸の炎症を示した。一方、P.clara定着マウスでは、体重減少はより軽度であり、盲腸の炎症もより軽度であった。これは、意外なことに、2-mix+WT群と2-mix+Δ00502群ともに同様であった。この結果は、P.clara株が、トリプシン分解とは独立の機構でC.rodentium感染から防御することを示唆した。
図36は、糞便中の全IgA、C.rodentium特異的IgA、Chymotrypsin Like Elastase 3B(CELA3B)をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。
その結果、同程度の盲腸の炎症に関らず、2-mix+WT群のマウスは高い総IgA量で維持されており、2-mix+Δ00502群に比べて、早ければC.rodentium感染の7日後から、C.rodentium特異的IgAがかなり存在することが明らかとなった。
図37は、生きたC.rodentiumと糞便液のex vivoインキュベーションによって、糞便IgAによる凝集効果を評価した結果を示す写真である。その結果、2-mix+WT群の糞便微生物叢とC.rodentium生菌をインキュベーションすると顕著な細菌の凝集が認められた。この結果は、C.rodentium特異的なIgAが存在することを示す。
以上のことから、P.clara株は、C.rodentium感染に対する未知の機構による防御効果に加えて、病原体特異的IgAを保護することで、病原体に対する適応免疫反応を強めることが示された。
[実験例7]
(P.clara株を介したトリプシン分解はC.rodentium感染に対するワクチン効果を高める)
P.clara株を介したトリプシンの分解とその結果としての病原体特異的IgAの保護は、腸内病原体に対する経口ワクチンの効果を高める可能性があり、同じ病原体に再びさらされたときに、より大きな抵抗性をもたらす。
この仮説を確認するために、以下の検討を行った。図38は、本実験例のスケジュールを示す模式図である。2-mixに加えてWT又はΔ00502 P.clara株を定着させたGFマウスに、過酢酸で不活化したC.rodentiumを週1回、3週間にわたって経口ワクチン接種した。その後、経口でC.rodentium生菌を感染させた。
図39はC.rodentium感染後のマウス体重の変化を示すグラフである。図39中、「*」はp<0.05で有意差があることを示す。その結果、あらかじめ野生型P.clara株を接種したマウスは、体重減少が軽減されたことが明らかとなった。
続いて、C.rodentium感染から14日目のマウスから盲腸パッチと管腔内容物を回収し、C.rodentiumのCFUを測定した。図40は盲腸パッチにおけるC.rodentiumのCFUの測定値を示すグラフである。また、図41は管腔内容物におけるC.rodentiumのCFUの測定値を示すグラフである。
その結果、2-mix+WT群及び2-mix+Δ00502群の双方において、盲腸中のC.rodentiumの存在量は同様であったにもかかわらず、2-mix+WT群では、盲腸組織へのC.rodentiumの浸潤が抑制されていた。
図42は、盲腸管腔内容物中のトリプシン(PRSS2)、全IgA、C.rodentium特異的IgA、Chymotrypsin Like Elastase 3B(CELA3B)をウエスタンブロットで解析した結果を示す写真である。
その結果、野生型(WT)P.clara株定着マウスの盲腸において、顕著に高い全IgA量及び顕著に高いC.rodentium特異的IgA量が検出された。この結果から、2-mix+WT群へのC.rodentium侵入に対する優れた防御効果には、ワクチンの効果が大きかったことが考えられた。
以上の結果は、P.clara株を送達することで、宿主が以前に遭遇した腸内病原菌に対してより効果的な対応ができるようになる、という発明者らの見解を支持するものである。
[実験例8]
(P.clara株はコロナウイルスの感染からマウスを保護する)
トリプシンやII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)等のトリプシン様プロテアーゼは、コロナウイルスのスパイクタンパク質のタンパク質分解活性化や、ウイルスと宿主の細胞膜の融合に関与することが知られている。
TMPRSS2は、肺や腸の上皮細胞に膜貫通型のタンパク質として発現しているが、自己切断を受けてプロテアーゼドメインを放出することができる。興味深いことに、発明者らは、上述する実験例5において、野生型P.clara株が生着したGFマウスでは、糞便中のTMPRSS2量が減少していることを見出した。このことは、P.clara株がin vivoにおいてTMPRSS2の活性型の放出と似た効果を持つことを示唆する。このことは、腸内において、遊離型のTMPRSS2が、トリプシンと一緒に、コロナウイルス感染を促進している可能性があることを示す。
P.clara株がトリプシンとTMPRSS2の分解を介してコロナウイルスの腸内感染を防御する可能性を検討した。具体的には、P.clara株の定着がマウス肝炎ウイルス(MHV)(マウストロピックコロナウイルス)の感染に与える影響を検討した。
図43は、MHV感染実験の概要を説明する模式図である。GFマウスに、2-mixと合わせて、WT又はΔ00502 P.clara(JCM14859)株を接種し、14日後にMHVの経口感染を行った。
図44は、MHV感染後のマウスの生存曲線を示すグラフである。その結果、野生型P.clara株を定着させることにより、MHVの致死的な感染の後で、マウスの生存が延長したことが明らかとなった。
図45は、肝臓、脳、糞便中のMHVのウイルスタイターを測定した結果を示すグラフである。図45中、「*」、「**」、「***」は、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.01で有意差があることを示す。
その結果、野生型P.clara株を定着させることにより、肝臓や脳でのウイルスの拡散が有意に防御されたことが明らかとなった。また、2-mix+WT群のマウスは、2-mix+Δ00502群のマウスに比べて、糞便中に排出されるウイルス粒子の数が有意に少なかった。
図46は、各群のマウスの肝臓組織のヘマトキシリン・エオジン染色の結果を示す代表的な画像である。組織学的解析により、野生型P.clara株を定着させたマウスは、MHVによる壊死性肝病理から保護されたことが明らかになった。
以上の結果は、コロナウイルスの感染時に、P.clara株の保菌が宿主に保護効果をもたらすことを示す。
[実験例9]
(ヒト微生物叢におけるParaprevotella属及び関連する遺伝子の検出)
地理的に異なる6つのコホートから収集した約600万個の非冗長完全遺伝子からなる腸内細菌遺伝子カタログを新規に作成し、Paraprevotella属、トリプシン関連00502遺伝子、00509遺伝子の存在量と有病率を分析した。
5,929,528個の遺伝子を持つ非冗長な腸内細菌遺伝子カタログに対してUSEARCH ublast(タンパク質レベル)で相同性検索を行った結果、最小e-valueが0.1のヒットに集約された。
図47は、計算機上で検索した、トリプシン分解に関連する遺伝子(00502遺伝子及び00509遺伝子)のホモログ及びそれをコードする種を示す図である。
図48は、各細菌種におけるトリプシン分解に関連する遺伝子の遺伝子座の構造及びP.clara株の遺伝子に対する配列同一性(%)を示す図である。
その結果、まず、P.clara株の00502遺伝子と、P.xylanphila株の00502遺伝子ホモログが、同一又はほぼ同一であることが確認された。同様に、P.clara株の00509遺伝子と、P.xylanphila株の00509遺伝子ホモログが、同一又はほぼ同一であることが確認された。さらに、00502遺伝子及び00509遺伝子の間に位置する、00503~00508遺伝子についても、P.clara株の遺伝子と、P.xylanphila株の遺伝子ホモログが、同一又はほぼ同一であることが確認された。
また、00502~00509遺伝子ホモログを持つ2つのメタゲノム種(MSP 0303及びMSP 0335)を同定し、Paraprevotella属に属する可能性があることを確認した。
Paraprevotella属にアノテーションされた2つのメタゲノム種(MSP 0303とMSP 0335)は、P.clara株の遺伝子00502~00509の全て又はほぼ全てのホモログをコードしていた。Bacteroidetesにアノテーションされた5つのMSP(MSP 0081、MSP 0224、MSP 0288、MSP 0410、MSP 0435)は、00502遺伝子と00509遺伝子のホモログをコードしていたが、00503~00508遺伝子のホモログを欠いていた。
また、Prevotella murisは00509遺伝子のホモログを有していないと考えられた。
メタゲノム解析の中で、Paraprevotella属は平均して最大3%の相対存在比を示し、その存在率はコホートによって大きく異なり(サンプルの7~50%)、P.clara株が最も多い種であり、次いでP.xylaniphilla株が多かった。
これらのデータは、Paraprevotella種がヒトのかなりの部分の微生物叢を構成していることを示唆しており、これが腸内病原体の感染に対する感受性の個人差に関連している可能性がある。
ヒトのトリプシン濃度は、マウスと同様に、Paraprevotellaのようなトリプシンを分解する細菌種によって調節されていると考えられる。潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)等の炎症性腸疾患(IBD)の患者では、糞便中のトリプシン濃度が上昇することが報告されている。そこで、日本人コホートの非IBD対照群(健常人)、潰瘍性大腸炎(UC)群、クローン病(CD)群の患者の糞便中のトリプシン活性を測定した。
図49は、トリプシン活性の測定結果を示すグラフである。図49中、「*」はp<0.05で有意差があることを示す。その結果、非IBD対照群と比較して、UC患者及びCD患者は、糞便中のトリプシン活性が高いことが明らかとなった。
続いて、2つのIBDコホート(PRISM及びHMP2)の非IBD対照群、UC群、CD群のサブグループにおけるParaprevotellaの保菌率を分析した。図50は、PRISMコホート及びHMP2コホートにおいて、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)と診断された患者の集団における、Paraprevotellaの保菌率を示すグラフである。その結果、両方の研究で、ParaprevotellaはUCやCD患者よりも非IBD検体において、より存在していることが判明した。また、より大規模なHMP2コホートにおいて、この傾向は統計的に有意であった。
これらの結果は、Paraprevotellaの保菌が、腸内の健康状態と関連があることを示唆する。
図51は、Prevotella rodentium株、Prevotella muris株、ポジティブコントロールとしての野生型P.clara株(P.clara(WT)、ネガティブコントロールとしての00502遺伝子をノックアウトしたP.clara株(P.clara(00502KO))の各株を、組換えマウストリプシン(rmPRSS2、C-terminal His-tagを付加)と混合してインキュベーションし、ウエスタンブロットにてトリプシンの分解を測定した結果を示す写真である。その結果、Prevotella rodentium株、Prevotella muris株が、トリプシン分解活性を有することが明らかとなった。
図52は、Prevotella rara(MSP 0081)株、ポジティブコントロールとしての野生型P.clara株(P.clara(WT)、ネガティブコントロールとしての00502遺伝子をノックアウトしたP.clara株(P.clara(00502KO))の各株を、組換えマウストリプシン(rmPRSS2、C-terminal His-tagを付加)と混合してインキュベーションし、ウエスタンブロットにてトリプシンの分解を測定した結果を示す写真である。その結果、Prevotella rara(MSP 0081)株が、トリプシン分解活性を有することが明らかとなった。