JPH0467953B2 - - Google Patents
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- JPH0467953B2 JPH0467953B2 JP57502758A JP50275882A JPH0467953B2 JP H0467953 B2 JPH0467953 B2 JP H0467953B2 JP 57502758 A JP57502758 A JP 57502758A JP 50275882 A JP50275882 A JP 50275882A JP H0467953 B2 JPH0467953 B2 JP H0467953B2
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Description
請求の範囲
1 弱毒化されたガラクトースエピメラーゼ非含
有チフス菌(Salmonella typhi)の突然変異株
に対し、ゾンネ菌(Shigella sonnei)型抗原
をコードするDNAを有するプラスミドを導入し
た雑株誘導体の有効量を活性成分として含有する
ことを特徴とする、腸疾患に対する免疫性を賦与
するための弱毒化生経口ワクチン。 2 さらに薬剤的希釈剤を含んでいるものである
請求の範囲第1項の経口ワクチン。 3 凍結乾燥されたものである請求の範囲第1項
の経口ワクチン。 4 弱毒化されたガラクトースエピメラーゼ非含
有チフス菌(Salmonella typhi)の突然変異株
に対し、ゾンネ菌(Shigella sonnei)型抗原
をコードするDNAを有するプラスミドを導入し
た雑株誘導体。 要 約 腸疾患に対する免疫性を賦与する弱毒化生経口
ワクチン系について述べる。本経口ワクチンは腸
チフス菌の弱毒化ガラクトースエピメラーゼ不含
株の遺伝的雑種誘導体であつて、通常の体細胞の
腸チフス菌抗原以外の少なくとも一種の保護抗原
をもつている。本経口ワクチンは腸チフスと少な
くとももう一種の腸疾患の両方に保護性をもつも
のである。非腸チフス保護性抗原がゾンネ菌のプ
ラスミドーエンコード型である、二価経口ワク
チンについて述べられる。ゾンネ菌からの保護抗
原を腸チフス菌のストレプトマイシン抵抗性突然
変異株Ty21aに移入した。この被接合腸チフス菌
は腸チフス菌とゾンネ菌の両方の抗原を発現し、
実験動物の腸チフス菌およびゾンネ菌による致死
的感染を防止した。この菌株は腸チフスに対して
もゾンネ菌によつて起こる細菌性下痢疾患に対し
てもワクチンとして役に立つと考えられる。 発明の背景 本発明は広くは腸疾患予防用の経口ワクチンに
関するものである。非病原性の突然変異株である
腸チフス菌の経口生ワクチンの安全性や腸チフス
に対する保護性については公知である;それは腸
チフス菌のガラクトースエピメラーゼ不含の突然
変異株であつて、Ty21aとよばれる。その経口ワ
クチンの調製、安全性、有効性についてはすでに
下記文献に記述されているところである;R.
Germanier and E.Furer,J.Infect.Dis.131:553
−558,1975;N.H.Wahdan,et al.,Bull.
WHO,58:469−474;U.S.Patent NO.3856935
(R.Germanier)、その内容については参考のため
に以後の記述で触れる。 胃腸管の細菌性疾患は通常三つの機構のどれか
によつて起こる。第一の機構は“中毒”とよばれ
るもので、細菌が分泌する菌体外毒素によつて起
こり、多くは宿主の摂取以前に食品中につくられ
ている。これはブドウ球菌属やクロストリジウム
属による食中毒で例示されるものである。これに
対して残りの二つのプロセスは生きた増殖性病原
体によるものである。“腸内毒素性中毒”機構で
は、細菌が小腸、普通は空腸または十二指腸にコ
ロニーをつくる。これらの細菌は腸壁表面に増殖
して腸内毒素をつくり出し、流体や電解質の過剰
流出を刺激する結果水性下痢を起こす。代表的な
例として腸内毒素性大腸菌やコレラ菌がある。最
後に三番目の微生物群として“侵入性”とよばれ
るものがあり、大腸の上皮粘膜を貫通してくる。
その結果細胞内で増殖し、粘膜の内部や周囲に広
がつて行く。この機構はシゲラ属やサルモネラ属
細菌で代表されるもので、そのほか大腸菌、
Yersinia属、さらに多分Campylobacter属の侵
入型菌株にもみられるとされている。サルモネラ
性疾患は侵入してきた細菌が宿主の内部に広がつ
て行くのに反して、シゲラ性疾患は通常腸管内に
限られる。このようにして、毒素性機構と侵入型
機構を腸疾患の中で区別することができる。 侵入型細菌の二つの共通した本質的特徴は結腸
の上皮細胞内の貫通と増殖である。貫通できない
シゲラ菌の変異菌と、貫通しても細胞内増殖でき
ない変異菌とが単離された。両種とも非病原性で
ある。侵入のプロセスはこれまで顕微鏡的に観察
されたことはあるが、生化学的に詳細に研究され
たことはない。宿主腸上皮にみられる最初の変化
は腸管の最上皮構造である微小絨毛の部分的破壊
である。次いで侵入細菌が腸の細胞膜の陥入によ
つて内部へ巻き込まれ、空腸内部にとじ込めら
れ、結果として細胞内へ侵入したことになる。次
いで微小絨毛が再生され、細胞内細菌の増殖がは
じまる。これらの細菌が次に空腸を破壊して隣接
する細胞へ広がり、壊死を起こし、その結果上皮
の急性炎症や巣状かいよう化が起こる。結果とし
て起こる下痢の特徴は痛みを伴い、血便や粘性下
痢で、通常比較的少容量である。 フレキシナ赤痢菌の遺伝的研究の結果、伝染に
与かる因子は複数であつて、侵入に対しては少な
くとも二つのはつきり分けられた細菌染色体領域
が必要という結論がでている。さらにこれらの研
究から腸壁侵入に必要なのは平滑なリポ多糖類質
の細菌細胞表面だけではなく、むしろこのプロセ
スに有効なのは、ある種のO−繰り返し単位のポ
リマーのみであることが示されている;シゲラ属
菌や侵入型大腸菌ではこれは正しい。最近まで、
プラスミドはシゲラ菌の侵入プロセスや伝染性に
は何の役割りも示さないとみられていたが、ここ
3年間に集められた事実からすると、シゲラ菌の
プラスミドは侵入プロセスに関与していることが
はつきりしてきた。 細菌性の下痢は、世界的にみると多分に地方的
であり、なお開発途上国では重要な病因の一つで
ある。シゲラ性疾患(細菌性下痢)を起こす微生
物の血清型は30種以上あるが、そのうち主要なも
のはゾンネ菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌
およびボイド赤痢菌である。フレクスナー型赤痢
菌は血清学的に6種(から)に分離され、そ
のうちフレスクナー赤痢菌感染の大部分はタイプ
aとによるものである。アメリカと北欧で
は、症例の65%以上がゾンネ菌によるものであ
る。フレクスナー赤痢菌のa株、株およびゾ
ンネ菌を合せると世界中のシゲラ性疾患の90%以
上を占める。非経口ワクチンは、シゲラ性疾患
が、結腸の粘膜の表面層にのみ起こる感染である
ため、細菌性下痢の保護には有効でなかつた。従
つて、人間や霊長類に対して、不活性ワクチンま
たは生の毒性微性物を非経口的に投与して免疫を
賦与しようとする試みが成功しなかつたのは驚く
に当らない。 弱毒化生経口シゲラ菌株ワクチンは実験的にも
臨床的にも細菌性下痢にきくことが分かつた。生
経口ワクチンによつて与えられた局所的腸免疫応
答が腸上皮細胞の病原菌による侵入を阻止するこ
とが示された。この免疫はワクチン株の型特異性
菌体抗原によるものとされた。安全で遺伝的に安
全な(非復帰性の)菌株の単離が難しいか、免疫
をうるために大量の投与が必要だつたために、ま
だ広く用いられるに至つていない。 ゾンネ菌は型とよばれる特長的な細胞表面抗
原をつくり、そのO−特異性側鎖の一成分として
アルトロウロン酸(altruronicacid)をもつてい
る。最近型抗原は大きな非接合プラスミドによ
つてコード化されていることが分かつた。(D.J.
Kopecko,et al,Infect,Immun,29:207−
214,1980)、この基礎研究により、プラスミド可
動化系を利用してある特定のフレクスナー赤痢菌
や腸チフス菌株へ型抗原合成遺伝子を移入する
ことが可能となり、また場合によつてはゾンネ菌
型株への再移入もできることが分かつた。 シゲラ属菌株と異なり、チフス型細菌は腸粘膜
を貫通して全身的感染を起こすので、このタイプ
の感染には非経口的ワクチンが有効であることが
分かつている。しかしこれらの非経口的ワクチン
は副作用が強く、発熱、不快感、頭痛、接種部の
局所的反応等を起こす。腸チフス菌系の株Ty21a
の安全性(上述の副作用がないこと)と免疫賦与
性はすでに確定しているので、この弱毒化菌株を
他の保護性抗原の担体微生物として利用し、さら
に腸チフス以外の腸内感染を防止する経口ワクチ
ンとして利用するか、チフスとその他の腸内感染
合併症に対して同時に防止することを考えた。保
護性抗原という用語は、一種以上の抗体の生産を
刺激し、特定の腸疾患を防止する体細胞性または
可溶性の分子構造に対して使うものである。さら
に、“運ぶ”“運ばれた”または“担体”という語
は本発明を親株であるgal E 腸チフス菌の特定
の誘導体や修飾法に限定すると解釈されるべきで
はない。この用語は、遺伝決定因子が必らずプラ
スミド性のものでなければならないということを
意味しない;逆にそれが細菌の染色体の一部であ
ることもありうるのである。 発明の説明 本発明は、ただ一種の(非チフス性)腸疾患に
対して、または二種以上の腸疾患に対して同時に
免疫性となしうる弱毒化生経口ワクチンを指向す
るものである。シゲラ性疾患は四種の菌株のどれ
かによつて起こり、本発明に関していえば四種の
別の腸疾患と考えてよい。本発明はラクトースエ
ピメラーゼ不含の弱毒化腸チフス菌株をベースと
するものであるが、この菌株は腸チフスの防止に
安全であることが立証されており、それ以外の保
護性抗原の遺伝決定因子の担体として遺伝的につ
くられたものである。腸チフスに加えて他の微生
物によつて起こる腸内感染は本発明によるワクチ
ン処理で治療可能と考えられる。これらの微生物
としてはたとえば各種のシゲラ属菌株、すなわち
ゾンネ菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌、ボ
イド赤痢菌がある。 本発明による特定ワクチンは弱毒化生経口ワク
チンであつて、腸チフスならびにゾンネ菌由来の
細菌性下痢に対して保護的に使用される。すでに
述べたように、ゾンネ菌の型保護性抗原の合成
は大きな非接合プラスミド上にコード化されてい
る(Kopecko,D.J,et al.,Infect,Immun,
29:207−214,1980)、このプラスミドを弱毒化
された腸チフス菌のストレプトマイシン抵抗性突
然変異株、Ty21a株ワクチンに移入した。その結
果得られた被接合菌株5076−1−C(メリーラン
ド州ロツクビルにあるアメリカン・タイプ・カル
チヤー・コレクシヨンにATCCNo.31904として寄
託されている)は腸チフス菌とゾンネ菌I型の両
方の菌体抗原を発現する。ラビツト中にチフス菌
とゾンネ菌の両方に対する抗体を生じたこの被接
合菌株はマウスの毒性腸チフス菌およびゾンネ菌
のどちらによる腸膜内抗原投与にも保護性を示し
た。菌株5076−1−Cは弱毒化経口ワクチン株の
候補と考えられ、腸チフス菌とゾンネ菌由来細菌
性下痢の両方を防止する目的にかなつたものであ
る。 ドナー菌株の構成 ゾンネ菌型53Gを大腸菌株HU679と交配させ
てゾンネ菌株内にF′ts lac::Tn3プラスミドを導
入した。交配は32℃で培養し、ラクトース、ニコ
チン酸、アスパラギン酸、および20mg/mlアンピ
シリンを補つた最小成育培地上でクローンを選
別、精製した。えられたラクトース資化性
(Lac+)でアンピシリン抵抗性(ApR)クローン
を42℃でPenassayブロス(D ifco)中で成長
させてF′lacプラスミドを除去した。20μg/mlア
ンピシリンを含有するマツコンキー寒天上で16種
のApR,Lac-型53G独立単離株が選択された。
Tn3を含有している16種のクローンを大腸菌
HU679株と再交配させてF′lac::Tn3プラスミ
ドを再生させた。これらの交配によつて、型抗
原(Lac+マーカーを加えて)をlac-,met-,
nic-,nalRである受容体型ゾンネ菌株へ移入す
る能力をテストした。接合交配混合体をラクトー
ス、ニコチン酸、アスパラギン酸、メチオニン、
50μg/mlナリジキシン酸を補つた最小成長培地
上で培養すると、一種のドナー菌株(5006−7−
3)が型合成能力を伝達することが観察され
た。そこで、えられたクローン(5022−1C−9)
をドナー体に用いて型抗原をフレクスナー赤痢
菌の型株M42−43に移入した。菌株5022−1C
−9とM42−43の交配混合体をラクトース、ニコ
チン酸、アスパラギン酸補充最小成育培地上で培
養し、えられたフレクスナー赤痢菌の5054−6−
1株単離体は型抗原を受け継いでおり、型抗
原をチフス菌Ty21a株へ移入するドナー株として
採用した。 受容菌株 商品名VIVOTIFとして市販されている大腸菌
Ty21a株はL.S.Baronによつてスイス血清研究所
(スイス、ベルン)のR.Germanierから入手され
た。この研究所はGermanierの米国特許第
3856935号の被譲渡者である。実験目的のために、
変種生成法によつてこの株のストレプトマイシン
抵抗性突然変異体をつくつた。親のガラクト−ス
エピメラーゼ不含突然変異体であるチフス菌
Ty21a株の望ましい担体特性は実験選択に必要な
期間維持された。 チフス菌−ゾンネ菌接合株5076−1Cの構成 ドナー菌種5054−6−1(ゾンネ菌型プラス
ミドを宿したフレクスナー赤痢菌)をチフス菌
Ty21a株のストレプトマイシン抵抗型突然変異体
と交配させた。ラクトース、トリプトフアン、シ
スチン、カザミノ酸、ストレプトマイシンを補つ
た最小寒天成育培地表面で約1×109個のドナー
と1×1010個の受容菌細胞を交配させた。 適当な最小寒天成育培地上でLac+ チフス菌被
接合体が選択された。その結果えられたLac+ク
ローンを同じ培地上で2回画線接種法を行つて精
製し、次いで血清学的検査を行つた。さらにチフ
ス菌とゾンネ菌型抗血清体で凝集したLac+単
離体5076−1Cを選出した。この菌株は血清学的
に大腸菌Ty21a株受容菌の特性を持ち、ゾンネ菌
型抗原の性質も持つていることが分かつた。 チフス菌被接合体5076−1CはF′ts lac::Tn3
可動化プラスミドと型プラスミドの両方に対す
る受容体になると予想された。5076−1C株中の
これらプラスミドの存在を証明するために、ドナ
ー、受容菌、接合株からDNAを調製した。アガ
ロースゲル電気泳動法により、親菌と接合株のプ
ラスミドプロフイルを調べて比較した。第1図は
受容体チフス菌Ty21a、ドナーフレクスナー赤痢
菌5054−6−1、被接合型チフス菌5076−1C
株からの環状プラスミドDNAのアガロースゲル
電気泳動プロフイルである。(A)がドナー株5054−
6−1、(B)が被接合チフス菌5076−1C、そして
(C)が受容体チフス菌Ty21aのプラスミドプロフイ
ルを示す。断片DNAすなわち染色体DNA対応の
ゲル位置は“Chr”で示してある。F′ts lac::Tn
3プラスミドと型プラスミドのスーパーコイル
分子の位置はそれぞれ“F”と“”で示してあ
る。染色体バンドの下にいくつかの小さいプラス
ミドDNA種がしえる。電気泳動の方向は図の上
から下へである。第1図にみられるように、受容
体チフス菌Ty21a株は大きなプラスミドを含んで
いない。しかし、ドナーと接合株は二つの大きな
プラスミド種を宿しており、それぞれ独立にF′ts
lac::Tn3(80Mdal)と型(120Mdal)プ
ラスミドに相当する。これらの観察はチフス菌接
合株5076−1C中の型抗原合成が型プラスミ
ドの存在によるものであることを示唆している。 型−galEチフス菌誘導体5076−1Cの血清学的
特性 第1表に示すように、チフス菌接合体5076−
1Cはチフス菌抗血清体とゾンネ菌型抗血清体
によつて高力価に凝集された。さらに、チフス菌
gal Eに対して調製された抗血清体である型
株5076−1Cはチフス菌とゾンネ菌型両方の細
胞を凝集させることが観察された。予想通り、チ
フス菌Ty21aすなわち643W細胞はゾンネ菌型
抗血清体中では凝集せず、ゾンネ菌型53G細胞
もフレクスナー赤痢菌型ドナー株、5054−6−
1もチフス菌抗血体中では反応しなかつた。 さらに研究した結果、ゾンネ菌型特異性抗血
清体のチフス菌型株5076−1Cの細胞による吸
着は、ゾンネ菌型株53Gに対して1:80まで減
少した。同様に、チフス菌643W抗血清体の型
チフス菌5076−1C細胞による吸着はチフス菌
643W細胞に対して力価を1:1600から1:160に
低下させた。すなわち、チフス菌 gal E、型
株5076−1Cは普通のチフス菌細胞抗原とゾンネ
菌型抗原の両方を生産する。 【表】 * 凝集作用が認められた希釈度の逆数
** ND=起らない(Not done)
ガラクトース誘導溶解感受性 チフス菌Ty21a株はgal E突然変異を内蔵して
おり、ガラクトースを吸蔵してガラクトース−1
−りん酸塩とUDP−ガラクトースの細胞内蓄積
を起こして細胞溶解に至る。0.1%ガラクトース
のあるときとないときのチフス菌Ty21a株と5076
−1CのBHI Broth中の成長パターンを第2図に
示す。これはチフス菌Ty2,Ty21aおよび5076−
1Cのガラクトース有無による成長感受性を示す
もので、白抜きはガラクトース抜きの場合、黒印
はありの場合の成長である。対照のgal +株Ty2は
どちらの培地でも徐々に成長したが、両菌種とも
ガラクトースがある培地では同じように成長を阻
止される。従つて、5076−1C株はこれらの条件
ではTy21a株同等の挙動を示す。 親および被接合gal Eチフス菌株のマウス組織中
の耐性 チフス菌Ty21aと被接合株型5076−1Cをそ
れぞれ18匹ずつのマウスの各グループに腹腔内注
射した。接種後15日までの間隔で3匹をぎ牲にし
てひ臓の細菌の有無を調べた。すべてのマウスが
接種後1〜3日後にぎ牲にされるときは両微生物
の生きた細胞を宿していたが、引続いてぎ牲にさ
れたママウスの培養結果は一様に陰性であつた。 これらのワクチン株の投与安全性を調べるため
に、5匹ずつのグループ(マウス)に、豚の胃粘
液中に懸濁した1×108細胞個のチフス菌Ty21a
とその誘導菌5076−1Cを腹腔内に注射した。一
週間の観察期間中一匹も死ななかつた。すなわち
予期通り、親および被接合型gal E チフス菌
は3〜6日以上は感染したマウス体内に生存でき
ない。 マウスの保護に関する研究 マウスに免疫性を賦与するために、腹腔内また
は皮下注射で、チフス菌Ty21a、ゾンネ菌53G
型、チフス菌 gal E、型株5076−1Cならびに
標準的なアセトン不活化乾燥(AKD)チフス菌
Ty21aの生存細胞を用いた。対照マウスは食塩水
を接種された。すべてのマウスに対して接種後4
週間、毒性チフス菌またはゾンネ菌細胞を投与
し、72時間後の死亡数を記録した。その結果を第
2表にまとめてある。それぞれの一価ワクチンは
同種投与に対しては保護性を示したが、異種投与
には弱かつた。これと対照的に、型チフス菌
Ty21a誘導体5076−1C株はチフス菌に対しても
ゾンネ菌に対しても保護性を示した。 【表】 経口ワクチンとして用いるための付加的gal E
チフス菌の遺伝雑種菌の構成 gal E チフス菌突然変異株の経口ワクチン株
構成用保護抗原担体としての一般的有用性は以下
の実験によつてさらに明確になる。フレクスナー
赤痢菌の血清タイプaはその細菌の染色体によ
つてコード化された細胞表面抗原をもつている。
タイプ抗原決定因子が染色体のpro領域に極限さ
れているのに対して、グループ抗原決定因子は
his領域に強く連鎖していることがすでに明らか
にされている。バクテリオフアージMucts62を運
ぶF′lacプラスミドをフレクスナー赤痢菌a株
M4243に導入し、えられた株6023−1−1を32℃
に保ちMuフアージ誘導を起こさないようにし
た。次に6023−1−1株を37℃で大腸菌の一種で
rec A,mel,his,leu,met,arg,nalR ,Mu
cts62溶解原となる株と交配させた。37℃での成
長はMuフアージを誘導し、染色体のhis領域の
F′lacプラスミドへの転位を起こすことが期待さ
れた。フレクスナー赤痢菌aヒスチジン遺伝子
および恐らくは強く連鎖したグループ抗原遺伝子
をも取り込んだF′lac−Muプラスミドを受け入れ
た大腸菌被接合体に対する選択を行つた。His+
被接合体が単離されたが、この株はフレクスナー
赤痢菌属(3,4)の細胞表面抗原を発現した。
この大腸菌DK102被接合体株をドナーとして
F′lac−Mu−hisプラスミドをチフス菌突然変異
株Ty21aに移入した。チフス菌Ty21a株がStrRで
His-にされ(すなわち、ニトログアニジン突然
変異とペニシリン選択で構成された)て、Mucts
62溶解原になつた。その結果えられたチフス菌被
接合体はF′lac−Mu−hisプラスミドを持つてお
り、チフス菌9,12抗原とフレクスナー赤痢菌グ
ループ3,4抗原の両性で、従つてこのチフス菌
雑種(WR6003と命名)はチフス菌とフレクスナ
ーa型赤痢菌の両方に対する免疫用経口ワクチ
ンとして有用である。WR6003以上にフレクスナ
ーa型赤痢菌に対してワクチンとしてすぐれた
経口性ワクチンが構成された。 上述の方法と同様ふたたびドナー株6023−1−
1を用いて、フレクスナー赤痢菌a型の染色体
のhisおよびpro領域を組換えF′lac−Mu−his−
proプラスミドを経て中間体大腸菌、AB1133
pro,his,thr,leu,thi,arg.のMucts62溶解
原に移入した。この中間体株を用いてフレクスナ
ー赤痢菌のhisおよびpro領域をチフス菌Ty21a株
のMucts62溶解原性his 132,str R突然変異株に移入
した。その結果えられたgal E チフス菌株はチ
フス菌9,12抗原およびフレクスナー赤痢菌タイ
プおよびグループ(3,4)抗原を発現した。
この雑種菌は腸チフスとフレクスナー赤痢菌a
型によるシゲラ菌症を防ぐ経口ワクチンとして有
望と考えられる。この雑種経口ワクチンWR6000
をATCC(ATCCNo.31931)に寄託した。 上述したような構成の各種チフス菌由来雑種経
口ワクチン株(すなわち、5076−1C,WR6003,
WR6000)は本発明による有用な菌株の代表例と
考えられる。ゾンネ菌型プラスミドを有する
5076−1Cというチフス菌雑株は型プラスミド
が本来不安定なために遺伝的に安定しない。5076
−1C株は有用ではあるが、もつと安定な雑株の
構成が望ましい。チフス菌由来の雑株が従来の標
準的な遺伝的な遺伝操作でなくDNA組換えによ
つて構成されうるということは強調しておくべき
である。DNA組換え操作はゾンネ菌を組込んだ
チフス菌 gal E株をつくり、単離して切り継ぐ
ことにより小さい遺伝的に安定なプラスミドを
gal E チフス菌内に挿入できるのである。その
結果えられる雑種は安定な型抗原性を示すから
有望と考えられる。 いま述べたgal E チフス菌遺伝雑株は活性強
く、本発明による経口ワクチン成分として使用に
堪えるものである。これらのgal E チフス菌遺
伝雑株細胞をヒトやそれより下等の動物が消化で
きる適当な液状希釈剤に分散させればよい。また
冷凍乾燥して固型(例えばタブレツトやカプセ
ル)で投与することもでできる。 単一のgal E チフス菌株に導入できる非チフ
ス菌性抗原遺伝子の数には制限がある。しかし、
本発明は多価ワクチン、すなわちいくつかの病気
に対して同時に保護作用を示すワクチンを提供す
る。すなわち、それぞれ異なる非チフス性保護抗
原を産出しうる、いくつかの異なるチフス菌遺伝
雑種を混合することによつて構成可能である。例
えば、本発明によれば腸チフスとシゲラ菌性疾患
にきく三種類のgal E チフス菌雑種が構成でき
る。その一種はゾンネ菌型抗原を産生し、2番
目のものはフレクスナー赤痢菌型菌体抗原を、
また3番目のものはフレクスナー赤痢菌型菌体
抗原を産生する。ゾンネ菌やフレクスナー赤痢菌
血清タイプaおよび型は全世界のシゲラ菌由
来疾患の90%以上の病因であるから、このワクチ
ンの有用性はきわめて高い。 ここに述べた発明はgal E チフス菌遺伝雑株
であつて、少なくとも一種の非チフス性疾患の保
護抗原性を示し、腸疾患に対する免疫性を賦与す
る経口ワクチンに使えるものを志向している。非
チフス性疾患に対する保護抗原性遺伝子の遺伝添
操作や、それらのgal E チフス菌担体株への移
入は各種の手法で行われる。上述の遺伝的雑株の
構成にはF′lac::T3やF′ts lac::Mucts62プ
ラスミドを用いた。しかし、その他の遺伝系を用
いても同じ遺伝子操作を行うことができる。ま
た、型抗原性遺伝子の給源として型プラスミ
ドを含むゾンネ菌を使うこともできるし、これら
の抗原性遺伝子の給源として各種のタイプやグル
ープの抗原性を示すフレクスナー赤痢菌a株を
使うこともできる。 本発明の趣旨を徹底的に理解することを目的と
して詳細かつ具体的な説明を行つたが、これによ
つて次に述べる特許請求の範囲をさらに限定しよ
うとするものではない。単なる例示としてみるべ
きものである。
有チフス菌(Salmonella typhi)の突然変異株
に対し、ゾンネ菌(Shigella sonnei)型抗原
をコードするDNAを有するプラスミドを導入し
た雑株誘導体の有効量を活性成分として含有する
ことを特徴とする、腸疾患に対する免疫性を賦与
するための弱毒化生経口ワクチン。 2 さらに薬剤的希釈剤を含んでいるものである
請求の範囲第1項の経口ワクチン。 3 凍結乾燥されたものである請求の範囲第1項
の経口ワクチン。 4 弱毒化されたガラクトースエピメラーゼ非含
有チフス菌(Salmonella typhi)の突然変異株
に対し、ゾンネ菌(Shigella sonnei)型抗原
をコードするDNAを有するプラスミドを導入し
た雑株誘導体。 要 約 腸疾患に対する免疫性を賦与する弱毒化生経口
ワクチン系について述べる。本経口ワクチンは腸
チフス菌の弱毒化ガラクトースエピメラーゼ不含
株の遺伝的雑種誘導体であつて、通常の体細胞の
腸チフス菌抗原以外の少なくとも一種の保護抗原
をもつている。本経口ワクチンは腸チフスと少な
くとももう一種の腸疾患の両方に保護性をもつも
のである。非腸チフス保護性抗原がゾンネ菌のプ
ラスミドーエンコード型である、二価経口ワク
チンについて述べられる。ゾンネ菌からの保護抗
原を腸チフス菌のストレプトマイシン抵抗性突然
変異株Ty21aに移入した。この被接合腸チフス菌
は腸チフス菌とゾンネ菌の両方の抗原を発現し、
実験動物の腸チフス菌およびゾンネ菌による致死
的感染を防止した。この菌株は腸チフスに対して
もゾンネ菌によつて起こる細菌性下痢疾患に対し
てもワクチンとして役に立つと考えられる。 発明の背景 本発明は広くは腸疾患予防用の経口ワクチンに
関するものである。非病原性の突然変異株である
腸チフス菌の経口生ワクチンの安全性や腸チフス
に対する保護性については公知である;それは腸
チフス菌のガラクトースエピメラーゼ不含の突然
変異株であつて、Ty21aとよばれる。その経口ワ
クチンの調製、安全性、有効性についてはすでに
下記文献に記述されているところである;R.
Germanier and E.Furer,J.Infect.Dis.131:553
−558,1975;N.H.Wahdan,et al.,Bull.
WHO,58:469−474;U.S.Patent NO.3856935
(R.Germanier)、その内容については参考のため
に以後の記述で触れる。 胃腸管の細菌性疾患は通常三つの機構のどれか
によつて起こる。第一の機構は“中毒”とよばれ
るもので、細菌が分泌する菌体外毒素によつて起
こり、多くは宿主の摂取以前に食品中につくられ
ている。これはブドウ球菌属やクロストリジウム
属による食中毒で例示されるものである。これに
対して残りの二つのプロセスは生きた増殖性病原
体によるものである。“腸内毒素性中毒”機構で
は、細菌が小腸、普通は空腸または十二指腸にコ
ロニーをつくる。これらの細菌は腸壁表面に増殖
して腸内毒素をつくり出し、流体や電解質の過剰
流出を刺激する結果水性下痢を起こす。代表的な
例として腸内毒素性大腸菌やコレラ菌がある。最
後に三番目の微生物群として“侵入性”とよばれ
るものがあり、大腸の上皮粘膜を貫通してくる。
その結果細胞内で増殖し、粘膜の内部や周囲に広
がつて行く。この機構はシゲラ属やサルモネラ属
細菌で代表されるもので、そのほか大腸菌、
Yersinia属、さらに多分Campylobacter属の侵
入型菌株にもみられるとされている。サルモネラ
性疾患は侵入してきた細菌が宿主の内部に広がつ
て行くのに反して、シゲラ性疾患は通常腸管内に
限られる。このようにして、毒素性機構と侵入型
機構を腸疾患の中で区別することができる。 侵入型細菌の二つの共通した本質的特徴は結腸
の上皮細胞内の貫通と増殖である。貫通できない
シゲラ菌の変異菌と、貫通しても細胞内増殖でき
ない変異菌とが単離された。両種とも非病原性で
ある。侵入のプロセスはこれまで顕微鏡的に観察
されたことはあるが、生化学的に詳細に研究され
たことはない。宿主腸上皮にみられる最初の変化
は腸管の最上皮構造である微小絨毛の部分的破壊
である。次いで侵入細菌が腸の細胞膜の陥入によ
つて内部へ巻き込まれ、空腸内部にとじ込めら
れ、結果として細胞内へ侵入したことになる。次
いで微小絨毛が再生され、細胞内細菌の増殖がは
じまる。これらの細菌が次に空腸を破壊して隣接
する細胞へ広がり、壊死を起こし、その結果上皮
の急性炎症や巣状かいよう化が起こる。結果とし
て起こる下痢の特徴は痛みを伴い、血便や粘性下
痢で、通常比較的少容量である。 フレキシナ赤痢菌の遺伝的研究の結果、伝染に
与かる因子は複数であつて、侵入に対しては少な
くとも二つのはつきり分けられた細菌染色体領域
が必要という結論がでている。さらにこれらの研
究から腸壁侵入に必要なのは平滑なリポ多糖類質
の細菌細胞表面だけではなく、むしろこのプロセ
スに有効なのは、ある種のO−繰り返し単位のポ
リマーのみであることが示されている;シゲラ属
菌や侵入型大腸菌ではこれは正しい。最近まで、
プラスミドはシゲラ菌の侵入プロセスや伝染性に
は何の役割りも示さないとみられていたが、ここ
3年間に集められた事実からすると、シゲラ菌の
プラスミドは侵入プロセスに関与していることが
はつきりしてきた。 細菌性の下痢は、世界的にみると多分に地方的
であり、なお開発途上国では重要な病因の一つで
ある。シゲラ性疾患(細菌性下痢)を起こす微生
物の血清型は30種以上あるが、そのうち主要なも
のはゾンネ菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌
およびボイド赤痢菌である。フレクスナー型赤痢
菌は血清学的に6種(から)に分離され、そ
のうちフレスクナー赤痢菌感染の大部分はタイプ
aとによるものである。アメリカと北欧で
は、症例の65%以上がゾンネ菌によるものであ
る。フレクスナー赤痢菌のa株、株およびゾ
ンネ菌を合せると世界中のシゲラ性疾患の90%以
上を占める。非経口ワクチンは、シゲラ性疾患
が、結腸の粘膜の表面層にのみ起こる感染である
ため、細菌性下痢の保護には有効でなかつた。従
つて、人間や霊長類に対して、不活性ワクチンま
たは生の毒性微性物を非経口的に投与して免疫を
賦与しようとする試みが成功しなかつたのは驚く
に当らない。 弱毒化生経口シゲラ菌株ワクチンは実験的にも
臨床的にも細菌性下痢にきくことが分かつた。生
経口ワクチンによつて与えられた局所的腸免疫応
答が腸上皮細胞の病原菌による侵入を阻止するこ
とが示された。この免疫はワクチン株の型特異性
菌体抗原によるものとされた。安全で遺伝的に安
全な(非復帰性の)菌株の単離が難しいか、免疫
をうるために大量の投与が必要だつたために、ま
だ広く用いられるに至つていない。 ゾンネ菌は型とよばれる特長的な細胞表面抗
原をつくり、そのO−特異性側鎖の一成分として
アルトロウロン酸(altruronicacid)をもつてい
る。最近型抗原は大きな非接合プラスミドによ
つてコード化されていることが分かつた。(D.J.
Kopecko,et al,Infect,Immun,29:207−
214,1980)、この基礎研究により、プラスミド可
動化系を利用してある特定のフレクスナー赤痢菌
や腸チフス菌株へ型抗原合成遺伝子を移入する
ことが可能となり、また場合によつてはゾンネ菌
型株への再移入もできることが分かつた。 シゲラ属菌株と異なり、チフス型細菌は腸粘膜
を貫通して全身的感染を起こすので、このタイプ
の感染には非経口的ワクチンが有効であることが
分かつている。しかしこれらの非経口的ワクチン
は副作用が強く、発熱、不快感、頭痛、接種部の
局所的反応等を起こす。腸チフス菌系の株Ty21a
の安全性(上述の副作用がないこと)と免疫賦与
性はすでに確定しているので、この弱毒化菌株を
他の保護性抗原の担体微生物として利用し、さら
に腸チフス以外の腸内感染を防止する経口ワクチ
ンとして利用するか、チフスとその他の腸内感染
合併症に対して同時に防止することを考えた。保
護性抗原という用語は、一種以上の抗体の生産を
刺激し、特定の腸疾患を防止する体細胞性または
可溶性の分子構造に対して使うものである。さら
に、“運ぶ”“運ばれた”または“担体”という語
は本発明を親株であるgal E 腸チフス菌の特定
の誘導体や修飾法に限定すると解釈されるべきで
はない。この用語は、遺伝決定因子が必らずプラ
スミド性のものでなければならないということを
意味しない;逆にそれが細菌の染色体の一部であ
ることもありうるのである。 発明の説明 本発明は、ただ一種の(非チフス性)腸疾患に
対して、または二種以上の腸疾患に対して同時に
免疫性となしうる弱毒化生経口ワクチンを指向す
るものである。シゲラ性疾患は四種の菌株のどれ
かによつて起こり、本発明に関していえば四種の
別の腸疾患と考えてよい。本発明はラクトースエ
ピメラーゼ不含の弱毒化腸チフス菌株をベースと
するものであるが、この菌株は腸チフスの防止に
安全であることが立証されており、それ以外の保
護性抗原の遺伝決定因子の担体として遺伝的につ
くられたものである。腸チフスに加えて他の微生
物によつて起こる腸内感染は本発明によるワクチ
ン処理で治療可能と考えられる。これらの微生物
としてはたとえば各種のシゲラ属菌株、すなわち
ゾンネ菌、フレクスナー赤痢菌、志賀赤痢菌、ボ
イド赤痢菌がある。 本発明による特定ワクチンは弱毒化生経口ワク
チンであつて、腸チフスならびにゾンネ菌由来の
細菌性下痢に対して保護的に使用される。すでに
述べたように、ゾンネ菌の型保護性抗原の合成
は大きな非接合プラスミド上にコード化されてい
る(Kopecko,D.J,et al.,Infect,Immun,
29:207−214,1980)、このプラスミドを弱毒化
された腸チフス菌のストレプトマイシン抵抗性突
然変異株、Ty21a株ワクチンに移入した。その結
果得られた被接合菌株5076−1−C(メリーラン
ド州ロツクビルにあるアメリカン・タイプ・カル
チヤー・コレクシヨンにATCCNo.31904として寄
託されている)は腸チフス菌とゾンネ菌I型の両
方の菌体抗原を発現する。ラビツト中にチフス菌
とゾンネ菌の両方に対する抗体を生じたこの被接
合菌株はマウスの毒性腸チフス菌およびゾンネ菌
のどちらによる腸膜内抗原投与にも保護性を示し
た。菌株5076−1−Cは弱毒化経口ワクチン株の
候補と考えられ、腸チフス菌とゾンネ菌由来細菌
性下痢の両方を防止する目的にかなつたものであ
る。 ドナー菌株の構成 ゾンネ菌型53Gを大腸菌株HU679と交配させ
てゾンネ菌株内にF′ts lac::Tn3プラスミドを導
入した。交配は32℃で培養し、ラクトース、ニコ
チン酸、アスパラギン酸、および20mg/mlアンピ
シリンを補つた最小成育培地上でクローンを選
別、精製した。えられたラクトース資化性
(Lac+)でアンピシリン抵抗性(ApR)クローン
を42℃でPenassayブロス(D ifco)中で成長
させてF′lacプラスミドを除去した。20μg/mlア
ンピシリンを含有するマツコンキー寒天上で16種
のApR,Lac-型53G独立単離株が選択された。
Tn3を含有している16種のクローンを大腸菌
HU679株と再交配させてF′lac::Tn3プラスミ
ドを再生させた。これらの交配によつて、型抗
原(Lac+マーカーを加えて)をlac-,met-,
nic-,nalRである受容体型ゾンネ菌株へ移入す
る能力をテストした。接合交配混合体をラクトー
ス、ニコチン酸、アスパラギン酸、メチオニン、
50μg/mlナリジキシン酸を補つた最小成長培地
上で培養すると、一種のドナー菌株(5006−7−
3)が型合成能力を伝達することが観察され
た。そこで、えられたクローン(5022−1C−9)
をドナー体に用いて型抗原をフレクスナー赤痢
菌の型株M42−43に移入した。菌株5022−1C
−9とM42−43の交配混合体をラクトース、ニコ
チン酸、アスパラギン酸補充最小成育培地上で培
養し、えられたフレクスナー赤痢菌の5054−6−
1株単離体は型抗原を受け継いでおり、型抗
原をチフス菌Ty21a株へ移入するドナー株として
採用した。 受容菌株 商品名VIVOTIFとして市販されている大腸菌
Ty21a株はL.S.Baronによつてスイス血清研究所
(スイス、ベルン)のR.Germanierから入手され
た。この研究所はGermanierの米国特許第
3856935号の被譲渡者である。実験目的のために、
変種生成法によつてこの株のストレプトマイシン
抵抗性突然変異体をつくつた。親のガラクト−ス
エピメラーゼ不含突然変異体であるチフス菌
Ty21a株の望ましい担体特性は実験選択に必要な
期間維持された。 チフス菌−ゾンネ菌接合株5076−1Cの構成 ドナー菌種5054−6−1(ゾンネ菌型プラス
ミドを宿したフレクスナー赤痢菌)をチフス菌
Ty21a株のストレプトマイシン抵抗型突然変異体
と交配させた。ラクトース、トリプトフアン、シ
スチン、カザミノ酸、ストレプトマイシンを補つ
た最小寒天成育培地表面で約1×109個のドナー
と1×1010個の受容菌細胞を交配させた。 適当な最小寒天成育培地上でLac+ チフス菌被
接合体が選択された。その結果えられたLac+ク
ローンを同じ培地上で2回画線接種法を行つて精
製し、次いで血清学的検査を行つた。さらにチフ
ス菌とゾンネ菌型抗血清体で凝集したLac+単
離体5076−1Cを選出した。この菌株は血清学的
に大腸菌Ty21a株受容菌の特性を持ち、ゾンネ菌
型抗原の性質も持つていることが分かつた。 チフス菌被接合体5076−1CはF′ts lac::Tn3
可動化プラスミドと型プラスミドの両方に対す
る受容体になると予想された。5076−1C株中の
これらプラスミドの存在を証明するために、ドナ
ー、受容菌、接合株からDNAを調製した。アガ
ロースゲル電気泳動法により、親菌と接合株のプ
ラスミドプロフイルを調べて比較した。第1図は
受容体チフス菌Ty21a、ドナーフレクスナー赤痢
菌5054−6−1、被接合型チフス菌5076−1C
株からの環状プラスミドDNAのアガロースゲル
電気泳動プロフイルである。(A)がドナー株5054−
6−1、(B)が被接合チフス菌5076−1C、そして
(C)が受容体チフス菌Ty21aのプラスミドプロフイ
ルを示す。断片DNAすなわち染色体DNA対応の
ゲル位置は“Chr”で示してある。F′ts lac::Tn
3プラスミドと型プラスミドのスーパーコイル
分子の位置はそれぞれ“F”と“”で示してあ
る。染色体バンドの下にいくつかの小さいプラス
ミドDNA種がしえる。電気泳動の方向は図の上
から下へである。第1図にみられるように、受容
体チフス菌Ty21a株は大きなプラスミドを含んで
いない。しかし、ドナーと接合株は二つの大きな
プラスミド種を宿しており、それぞれ独立にF′ts
lac::Tn3(80Mdal)と型(120Mdal)プ
ラスミドに相当する。これらの観察はチフス菌接
合株5076−1C中の型抗原合成が型プラスミ
ドの存在によるものであることを示唆している。 型−galEチフス菌誘導体5076−1Cの血清学的
特性 第1表に示すように、チフス菌接合体5076−
1Cはチフス菌抗血清体とゾンネ菌型抗血清体
によつて高力価に凝集された。さらに、チフス菌
gal Eに対して調製された抗血清体である型
株5076−1Cはチフス菌とゾンネ菌型両方の細
胞を凝集させることが観察された。予想通り、チ
フス菌Ty21aすなわち643W細胞はゾンネ菌型
抗血清体中では凝集せず、ゾンネ菌型53G細胞
もフレクスナー赤痢菌型ドナー株、5054−6−
1もチフス菌抗血体中では反応しなかつた。 さらに研究した結果、ゾンネ菌型特異性抗血
清体のチフス菌型株5076−1Cの細胞による吸
着は、ゾンネ菌型株53Gに対して1:80まで減
少した。同様に、チフス菌643W抗血清体の型
チフス菌5076−1C細胞による吸着はチフス菌
643W細胞に対して力価を1:1600から1:160に
低下させた。すなわち、チフス菌 gal E、型
株5076−1Cは普通のチフス菌細胞抗原とゾンネ
菌型抗原の両方を生産する。 【表】 * 凝集作用が認められた希釈度の逆数
** ND=起らない(Not done)
ガラクトース誘導溶解感受性 チフス菌Ty21a株はgal E突然変異を内蔵して
おり、ガラクトースを吸蔵してガラクトース−1
−りん酸塩とUDP−ガラクトースの細胞内蓄積
を起こして細胞溶解に至る。0.1%ガラクトース
のあるときとないときのチフス菌Ty21a株と5076
−1CのBHI Broth中の成長パターンを第2図に
示す。これはチフス菌Ty2,Ty21aおよび5076−
1Cのガラクトース有無による成長感受性を示す
もので、白抜きはガラクトース抜きの場合、黒印
はありの場合の成長である。対照のgal +株Ty2は
どちらの培地でも徐々に成長したが、両菌種とも
ガラクトースがある培地では同じように成長を阻
止される。従つて、5076−1C株はこれらの条件
ではTy21a株同等の挙動を示す。 親および被接合gal Eチフス菌株のマウス組織中
の耐性 チフス菌Ty21aと被接合株型5076−1Cをそ
れぞれ18匹ずつのマウスの各グループに腹腔内注
射した。接種後15日までの間隔で3匹をぎ牲にし
てひ臓の細菌の有無を調べた。すべてのマウスが
接種後1〜3日後にぎ牲にされるときは両微生物
の生きた細胞を宿していたが、引続いてぎ牲にさ
れたママウスの培養結果は一様に陰性であつた。 これらのワクチン株の投与安全性を調べるため
に、5匹ずつのグループ(マウス)に、豚の胃粘
液中に懸濁した1×108細胞個のチフス菌Ty21a
とその誘導菌5076−1Cを腹腔内に注射した。一
週間の観察期間中一匹も死ななかつた。すなわち
予期通り、親および被接合型gal E チフス菌
は3〜6日以上は感染したマウス体内に生存でき
ない。 マウスの保護に関する研究 マウスに免疫性を賦与するために、腹腔内また
は皮下注射で、チフス菌Ty21a、ゾンネ菌53G
型、チフス菌 gal E、型株5076−1Cならびに
標準的なアセトン不活化乾燥(AKD)チフス菌
Ty21aの生存細胞を用いた。対照マウスは食塩水
を接種された。すべてのマウスに対して接種後4
週間、毒性チフス菌またはゾンネ菌細胞を投与
し、72時間後の死亡数を記録した。その結果を第
2表にまとめてある。それぞれの一価ワクチンは
同種投与に対しては保護性を示したが、異種投与
には弱かつた。これと対照的に、型チフス菌
Ty21a誘導体5076−1C株はチフス菌に対しても
ゾンネ菌に対しても保護性を示した。 【表】 経口ワクチンとして用いるための付加的gal E
チフス菌の遺伝雑種菌の構成 gal E チフス菌突然変異株の経口ワクチン株
構成用保護抗原担体としての一般的有用性は以下
の実験によつてさらに明確になる。フレクスナー
赤痢菌の血清タイプaはその細菌の染色体によ
つてコード化された細胞表面抗原をもつている。
タイプ抗原決定因子が染色体のpro領域に極限さ
れているのに対して、グループ抗原決定因子は
his領域に強く連鎖していることがすでに明らか
にされている。バクテリオフアージMucts62を運
ぶF′lacプラスミドをフレクスナー赤痢菌a株
M4243に導入し、えられた株6023−1−1を32℃
に保ちMuフアージ誘導を起こさないようにし
た。次に6023−1−1株を37℃で大腸菌の一種で
rec A,mel,his,leu,met,arg,nalR ,Mu
cts62溶解原となる株と交配させた。37℃での成
長はMuフアージを誘導し、染色体のhis領域の
F′lacプラスミドへの転位を起こすことが期待さ
れた。フレクスナー赤痢菌aヒスチジン遺伝子
および恐らくは強く連鎖したグループ抗原遺伝子
をも取り込んだF′lac−Muプラスミドを受け入れ
た大腸菌被接合体に対する選択を行つた。His+
被接合体が単離されたが、この株はフレクスナー
赤痢菌属(3,4)の細胞表面抗原を発現した。
この大腸菌DK102被接合体株をドナーとして
F′lac−Mu−hisプラスミドをチフス菌突然変異
株Ty21aに移入した。チフス菌Ty21a株がStrRで
His-にされ(すなわち、ニトログアニジン突然
変異とペニシリン選択で構成された)て、Mucts
62溶解原になつた。その結果えられたチフス菌被
接合体はF′lac−Mu−hisプラスミドを持つてお
り、チフス菌9,12抗原とフレクスナー赤痢菌グ
ループ3,4抗原の両性で、従つてこのチフス菌
雑種(WR6003と命名)はチフス菌とフレクスナ
ーa型赤痢菌の両方に対する免疫用経口ワクチ
ンとして有用である。WR6003以上にフレクスナ
ーa型赤痢菌に対してワクチンとしてすぐれた
経口性ワクチンが構成された。 上述の方法と同様ふたたびドナー株6023−1−
1を用いて、フレクスナー赤痢菌a型の染色体
のhisおよびpro領域を組換えF′lac−Mu−his−
proプラスミドを経て中間体大腸菌、AB1133
pro,his,thr,leu,thi,arg.のMucts62溶解
原に移入した。この中間体株を用いてフレクスナ
ー赤痢菌のhisおよびpro領域をチフス菌Ty21a株
のMucts62溶解原性his 132,str R突然変異株に移入
した。その結果えられたgal E チフス菌株はチ
フス菌9,12抗原およびフレクスナー赤痢菌タイ
プおよびグループ(3,4)抗原を発現した。
この雑種菌は腸チフスとフレクスナー赤痢菌a
型によるシゲラ菌症を防ぐ経口ワクチンとして有
望と考えられる。この雑種経口ワクチンWR6000
をATCC(ATCCNo.31931)に寄託した。 上述したような構成の各種チフス菌由来雑種経
口ワクチン株(すなわち、5076−1C,WR6003,
WR6000)は本発明による有用な菌株の代表例と
考えられる。ゾンネ菌型プラスミドを有する
5076−1Cというチフス菌雑株は型プラスミド
が本来不安定なために遺伝的に安定しない。5076
−1C株は有用ではあるが、もつと安定な雑株の
構成が望ましい。チフス菌由来の雑株が従来の標
準的な遺伝的な遺伝操作でなくDNA組換えによ
つて構成されうるということは強調しておくべき
である。DNA組換え操作はゾンネ菌を組込んだ
チフス菌 gal E株をつくり、単離して切り継ぐ
ことにより小さい遺伝的に安定なプラスミドを
gal E チフス菌内に挿入できるのである。その
結果えられる雑種は安定な型抗原性を示すから
有望と考えられる。 いま述べたgal E チフス菌遺伝雑株は活性強
く、本発明による経口ワクチン成分として使用に
堪えるものである。これらのgal E チフス菌遺
伝雑株細胞をヒトやそれより下等の動物が消化で
きる適当な液状希釈剤に分散させればよい。また
冷凍乾燥して固型(例えばタブレツトやカプセ
ル)で投与することもでできる。 単一のgal E チフス菌株に導入できる非チフ
ス菌性抗原遺伝子の数には制限がある。しかし、
本発明は多価ワクチン、すなわちいくつかの病気
に対して同時に保護作用を示すワクチンを提供す
る。すなわち、それぞれ異なる非チフス性保護抗
原を産出しうる、いくつかの異なるチフス菌遺伝
雑種を混合することによつて構成可能である。例
えば、本発明によれば腸チフスとシゲラ菌性疾患
にきく三種類のgal E チフス菌雑種が構成でき
る。その一種はゾンネ菌型抗原を産生し、2番
目のものはフレクスナー赤痢菌型菌体抗原を、
また3番目のものはフレクスナー赤痢菌型菌体
抗原を産生する。ゾンネ菌やフレクスナー赤痢菌
血清タイプaおよび型は全世界のシゲラ菌由
来疾患の90%以上の病因であるから、このワクチ
ンの有用性はきわめて高い。 ここに述べた発明はgal E チフス菌遺伝雑株
であつて、少なくとも一種の非チフス性疾患の保
護抗原性を示し、腸疾患に対する免疫性を賦与す
る経口ワクチンに使えるものを志向している。非
チフス性疾患に対する保護抗原性遺伝子の遺伝添
操作や、それらのgal E チフス菌担体株への移
入は各種の手法で行われる。上述の遺伝的雑株の
構成にはF′lac::T3やF′ts lac::Mucts62プ
ラスミドを用いた。しかし、その他の遺伝系を用
いても同じ遺伝子操作を行うことができる。ま
た、型抗原性遺伝子の給源として型プラスミ
ドを含むゾンネ菌を使うこともできるし、これら
の抗原性遺伝子の給源として各種のタイプやグル
ープの抗原性を示すフレクスナー赤痢菌a株を
使うこともできる。 本発明の趣旨を徹底的に理解することを目的と
して詳細かつ具体的な説明を行つたが、これによ
つて次に述べる特許請求の範囲をさらに限定しよ
うとするものではない。単なる例示としてみるべ
きものである。
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