JPH05224715A - フィードバック式加工条件補正装置 - Google Patents

フィードバック式加工条件補正装置

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JPH05224715A
JPH05224715A JP6130592A JP6130592A JPH05224715A JP H05224715 A JPH05224715 A JP H05224715A JP 6130592 A JP6130592 A JP 6130592A JP 6130592 A JP6130592 A JP 6130592A JP H05224715 A JPH05224715 A JP H05224715A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加工後の寸法情報をフィードバックして定寸
装置の定寸点を補正する加工システムにおいて、その補
正精度を向上させる。 【構成】 加工機10の加工具を制御する定寸装置22
と、加工機10の下流に配置されて加工穴の内径を測定
する全数計測機14とを、制御装置28を経て互いに接
続する。さらに、この制御装置28を、全数計測機14
による測定値の目標値からの寸法誤差と、その寸法誤差
の変化傾向とに基づき、ファジィ推論を用いて定寸点の
補正値を決定するものとする。定寸装置22はその補正
値に基づいて定寸点を補正するから、加工穴の寸法精度
のばらつきが小さくなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加工中または加工後の
ワークの寸法情報をフィードバックして加工条件を補正
する装置に関するものであり、特にその補正精度を向上
させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、車両のエンジンのシリンダボア
等の内円筒面,エンジンのクランクシャフトのジャーナ
ル面等の外円筒面等の加工部位をそれの実直径等の実寸
法が目標寸法に精度よく一致するように加工するため
に、インプロセス制御,ポストプロセス制御,ハイブリ
ッド制御等が使用される。
【0003】インプロセス制御は、加工中に加工部位の
寸法を測定するインプロセス測定具を用い、それによる
測定寸法が目標寸法に達したときに一回の加工を終了さ
せる制御である。なお、インプロセス制御においては普
通、測定寸法が判定基準値(例えば、定寸点)に達した
ときに実寸法が目標寸法に達するとの前提を用い、測定
寸法と判定基準値との比較によって実寸法が目標寸法に
達したか否かの判定が間接に行われるようになってい
る。
【0004】ポストプロセス制御は、加工後に加工部位
の寸法を測定するポストプロセス測定具を用い、それに
よる測定寸法と目標寸法との差である寸法誤差をフィー
ドバックして加工具が次に使用すべき加工データ(例え
ば、NCデータ)を補正する制御である。なお、ここに
おける「ポストプロセス測定具」は、常に加工終了直後
の加工部位の寸法を測定する態様で使用されるとは限ら
ず、それより先に加工された加工部位(すなわち、複数
回前に加工済の加工部位)の寸法を測定する態様で使用
される場合もある。
【0005】ハイブリッド制御は、それらインプロセス
制御とポストプロセス制御とを組み合わせた制御であ
る。ハイブリッド制御は普通、ポストプロセス制御にお
ける寸法誤差、すなわち、ポストプロセス測定具による
測定寸法に基づく加工後の寸法誤差をフィードバックし
て、インプロセス制御における目標寸法を実質的に補正
する制御とされる。なお、ここにおいて「目標寸法を実
質的に補正する」とは、目標寸法を直接に補正すること
のみならず、例えば前記判定基準値を補正することによ
って目標寸法を間接に補正することをも意味する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】それら制御のうちポス
トプロセス制御およびハイブリッド制御はいずれも、加
工後の加工部位の寸法誤差をフィードバックして加工具
の加工条件を補正する制御である。しかし、従来のポス
トプロセス制御も従来のハイブリッド制御も、寸法誤差
のみに基づいて加工条件としての、加工データ,判定基
準値等を補正するものであるため、その補正精度を高め
るにも限界があるという問題がある。加工条件の補正は
本来、加工部位の実寸法に影響を及ぼす要因をできる限
り多く勘案して行うべきものであるにもかかわらず、従
来のポストプロセス制御およびハイブリッド制御はいず
れも、寸法誤差しか勘案せずに加工条件を補正するから
である。
【0007】要するに、加工後の加工部位の寸法誤差を
フィードバックして加工条件を補正する従来のフィード
バック式加工条件補正装置には、加工部位の実寸法に影
響を及ぼす要因を十分には勘案せずに加工条件を補正す
るため、その補正精度を十分には高めることができない
という問題があったのである。
【0008】本発明はこの問題を解決することを課題と
して為されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明の要旨は、複数のワークの各々に設定された少
なくとも1個の加工部位の各々を順に加工する加工具を
加工条件に従って制御する加工具制御手段に接続される
フィードバック式加工条件補正装置を、図1に示すよう
に、(a) 加工中と加工後と少なくとも一方において、各
加工部位の寸法誤差とそれの変化傾向とをそれぞれ寸法
情報として取得する寸法情報取得手段1と、(b) 取得さ
れた寸法誤差と寸法誤差変化傾向とに基づいて加工条件
を実質的に補正する加工条件補正手段2とを含むものと
したことにある。
【0010】なお、本発明に係るフィードバック式加工
条件補正装置(以下、単に本発明装置という)は、例え
ば、1個のワークに加工部位が1個だけ設定されてい
て、複数のワークの各々が順に同じ加工具により加工さ
れる場合や、1個のワークに加工部位が複数個設定さ
れていて、複数のワークの各々が順に、かつ、各ワーク
においては複数の加工部位の各々が順に同じ加工具によ
り加工される場合や、1個のワークに加工部位が複数
個設定されているが、複数のワークの各々が順に、か
つ、各ワークにおいては複数の加工部位がそれぞれ、互
いに異なる加工具により加工される場合などにも適用す
ることができる。なお、の場合には、その複数の加工
部位の各々について個々に加工条件の補正値を実際に決
定するようにして本発明を実施することは可能である
が、例えば、複数の加工部位が形も大きさも互いに一致
する場合には、それら加工部位の少なくとも1個につい
ては加工条件の補正値を実際に決定するが、それ以外の
加工部位については、その決定された補正値を流用する
ことによって補正値の実際の決定を省略するものとして
本発明を実施することもできる。
【0011】また、本発明における「ワーク」には、例
えば、直径が変化しないで真っ直ぐに延びる円筒面を有
してそこが加工部位とされるものや、直径が変化しなが
ら真っ直ぐに延びる円筒面を有してそこが加工部位とさ
れるものを選ぶことができる。前者の場合には、各円筒
面についてそれの直径が1個の寸法として測定されるの
が普通であるため、その1個の寸法が本発明における
「寸法」となる。これに対し、後者の場合には、円筒面
の各軸方向位置ごとに寸法が測定されるのが普通である
ため、各軸方向位置ごとの寸法が本発明における「寸
法」となる。
【0012】また、本発明において「加工条件を実質的
に補正する」とは、結果として加工具の加工状態が補正
されるようにすることを意味するのであって、加工条件
を直接に補正することのみならず、加工条件に関連する
パラメータを補正することによって加工条件を間接に補
正することをも意味する。
【0013】本発明はポストプロセス制御に適用するこ
とができる。すなわち、例えば、前記寸法情報取得手段
1を、ポストプロセス測定具による測定寸法と目標寸法
との差を加工後の寸法誤差として取得し、さらにそれの
変化傾向(互いに異なる複数の加工部位間における変化
傾向)をも取得するものとし、かつ、前記加工条件補正
手段2を、それら加工後の寸法誤差と寸法誤差変化傾向
とをフィードバックして、加工条件としての加工データ
(例えば、NCデータ)を実質的に補正するものとする
ことによって、本発明をポストプロセス制御に適用する
ことができるのである。
【0014】また、本発明はハイブリッド制御に適用す
ることもできる。すなわち、例えば、前記寸法情報取得
手段1を、ポストプロセス測定具による測定寸法と目標
寸法との差を加工後の寸法誤差として取得し、さらにそ
れの変化傾向(互いに異なる複数の加工部位間における
変化傾向)をも取得するものとし、かつ、前記加工条件
補正手段2を、それら加工後の寸法誤差と寸法誤差変化
傾向とをフィードバックして、加工条件としての、イン
プロセス測定具による測定寸法と比較されるべき判定基
準値を実質的に補正するものとすることによって、本発
明をハイブリッド制御に適用することもできるのであ
る。
【0015】また、本発明はインプロセス制御に適用す
ることもできる。すなわち、例えば、前記寸法情報取得
手段1を、インプロセス測定具により各加工部位の寸法
(各加工部位全体を代表する1個の寸法)が逐次(同じ
加工部位について加工が進行するにつれて)測定される
ごとにその測定寸法と目標寸法との差を加工中の寸法誤
差として取得し、さらにそれの変化傾向(同じ加工部位
における時間の経過に対する変化傾向)をも取得するも
のとし、かつ、前記加工条件補正手段2を、それら寸法
誤差と寸法誤差変化傾向とをフィードバックして、加工
具の加工条件(例えば、加工具の送り速度)を逐次実質
的に補正するものとすることによって、本発明をインプ
ロセス制御に適用することもできるのである。
【0016】さらに、前記寸法情報取得手段1を、イン
プロセス測定具を加工終了後に作動させて寸法を測定さ
せ、その測定寸法と目標寸法との差を加工後の寸法誤差
として取得し、さらにそれの変化傾向(互いに異なる複
数の加工部位間における変化傾向)をも取得するものと
し、かつ、前記加工条件補正手段2を、それら加工後の
寸法誤差と寸法誤差変化傾向とをフィードバックして、
加工条件としての、インプロセス測定具による測定寸法
と比較されるべき判定基準値を実質的に補正するものと
することによって、本発明をインプロセス制御に適用す
ることもできる。つまり、この適用例は、ある加工部位
に係る寸法情報に基づいて別の加工部位に係る加工条件
を補正する例なのであり、これに対し、先の適用例は、
同じ加工部位に対して加工が行われている際中にその同
じ加工部位に係る寸法情報に基づいてその同じ加工部位
に係る加工条件を補正する例なのである。
【0017】
【作用】本発明装置においては、寸法情報取得手段1に
より、加工中と加工後との少なくとも一方において、各
加工部位の寸法誤差とそれの変化傾向とがそれぞれ寸法
情報として取得され、加工条件補正手段2により、取得
された寸法誤差と寸法誤差変化傾向とに基づいて加工条
件が実質的に補正される。
【0018】このように、本発明装置においては、寸法
誤差のみならずそれの変化傾向にも基づいて加工条件が
補正されるため、加工条件が、ワークの実寸法に影響を
及ぼす要因との関係において従来より適正に補正される
こととなる。
【0019】なお付言すれば、加工条件補正手段2は例
えば、寸法誤差と寸法誤差変化傾向とに基づき、ファジ
ィ推論を用いて加工条件の補正値を決定するものとする
こともできる。ファジィ推論を用いれば、寸法誤差とそ
れの変化傾向と加工条件との間に存在すると経験的に認
識される規則、すなわち、いわゆる経験則を、それが線
形性を示すか非線形性を示すかを問わず、忠実に表現す
ることができてそれに従って加工条件の補正値を決定す
ることができる。したがって、この加工条件補正手段2
を採用する場合には、加工条件が加工に係る種々の要因
との関係において一層適正に補正されることとなる。た
だし、本発明はファジィ推論以外の制御理論、例えば、
PID制御理論や現代制御理論を用いて加工条件の補正
値を決定するものとして実施することも可能である。
【0020】
【発明の効果】このように、本発明によれば、加工条件
を加工に係る種々の要因との関係において従来より適正
に補正することが可能となるため、それら要因とは無関
係にワークの寸法精度を比較的簡単に高めることが可能
となるという効果が得られる。
【0021】また、特に、ファジィ推論を用いて加工条
件の補正値を決定するものとして本発明を実施する場合
には、加工に係る経験則に忠実に従って加工条件が補正
されることとなるため、加工条件を加工に係る種々の要
因との関係において一層適正に補正することが可能とな
るという特有の効果が得られる。
【0022】また、特に、従来のポストプロセス制御に
本発明を適用する場合には、次のような特有の効果が得
られる。従来のポストプロセス制御には、加工具により
相前後して加工される2個の加工部位の寸法誤差の差、
すなわち、いわゆる隣接間ばらつきを小さく抑えること
が困難であるという問題がある。しかし、このポストプ
ロセス制御に本発明を適用すれば、隣接間ばらつきが小
さくなるようにも加工条件が補正されることとなる。そ
のため、従来のポストプロセス制御が持つ問題が解決さ
れ、ポストプロセス制御のインテリジェント化が可能と
なるという特有の効果が得られるのである。
【0023】
【実施例】以下、本発明の一実施例であるフィードバッ
ク式の定寸点補正装置を含む加工システムを図面に基づ
いて詳細に説明する。
【0024】本加工システムは、自動車のエンジンの、
複数個のシリンダボアを持つシリンダブロックを加工す
べきワークとし、かつ、各シリンダブロックの各シリン
ダボアの内円筒面を加工すべき加工穴として、その加工
穴をホーニングするために設けられている。すなわち、
本実施例においては、加工部位としての加工穴が複数個
ずつ設定されたワークが本発明における「ワーク」の一
態様なのである。
【0025】本加工システムは、図2に示すように、複
数のワークが一列に並んで搬送される搬送ライン(図に
おいて白抜きの矢印で表す)のある位置に、ホーンを加
工具として各ワークの各シリンダボアをホーニングする
加工機10が配置され、それの下流側のある位置に、ホ
ーニング加工されたワーク全部について各加工穴の内径
を計測する全数計測機14が配置されている。
【0026】加工機10は、加工具を加工穴ごとに備え
(各ワークにおける加工穴の数と同数備え)、さらに、
各加工具を駆動する駆動装置も加工穴ごとに備えてい
る。各加工具のホーンの内部にインプロセス測定ヘッド
18(これが前記インプロセス測定具の一態様である)
が組み込まれている。各インプロセス測定ヘッド18は
ホーンと共に運動しながら、加工中に加工穴の内径をエ
アマイクロメータ方式により直接測定する。
【0027】一方、全数計測機14は、加工後の加工穴
の内径を電気マイクロメータ方式により直接測定するポ
ストプロセス測定ヘッド20(これが前記ポストプロセ
ス測定具の一態様である)を加工穴ごとに備えている。
【0028】加工機10とインプロセス測定ヘッド18
とはそれぞれ定寸装置22に接続されている。全数計測
機14はコンピュータを主体とする制御装置28に接続
されている。この制御装置28は定寸装置22にも接続
され、さらに、データを保存する装置としてのデータバ
ンク32にも接続されている。
【0029】次に作動を説明する。ただし、各ワーク内
の複数の加工穴は互いに異なる加工具により同時に加工
され、それら加工穴の間では作動が共通するため、複数
の加工穴のうちの1個についての作動を代表的に説明す
ることとする。また、以下、加工機10,インプロセス
測定ヘッド18,定寸装置22,ポストプロセス測定ヘ
ッド20,制御装置28およびデータバンク32という
ときには、ある1個の加工穴に関連する部分を意味する
こととする。
【0030】定寸装置22は、一連の加工に先立ち、そ
れの定寸点が作業者によって較正される。具体的には、
目標寸法と同じ寸法に仕上げられたマスタワークがイン
プロセス測定ヘッド18により測定されている状態で、
定寸点を表す基準電圧が、インプロセス測定ヘッド18
からの出力電圧(測定寸法を表す)にちょうど一致して
両者の差がゼロとなるように、作業者によって較正され
る。そして、定寸装置22は、加工中の加工穴の内径を
インプロセス測定ヘッド18を介して逐次監視し、それ
による測定寸法が定寸点に達したときに実寸法が目標寸
法に達したと予想して、一回の加工を終了させる旨の制
御信号を加工機10(正確には、前記駆動装置)に対し
て出力する。さらに、この定寸装置22は、外部から定
寸点の補正値が入力されれば、それに応じて定寸点を補
正し、加工機10により加工された加工穴の内径が実際
に一定の公差内で収まるようにする。すなわち、本実施
例においては、定寸点が前記判定基準値の一態様であ
り、本発明における「加工条件」の一態様でもあるので
ある。
【0031】その定寸点補正値を決定して定寸装置22
に対して出力するのが制御装置28である。制御装置2
8は、概略的に説明すれば、全数計測機14による加工
穴の測定値が測定データとして入力され、それに基づ
き、データバンク32を利用しつつ、ファジィ推論を用
いて定寸点の補正値を決定するものである。
【0032】具体的には、制御装置28は、それのコン
ピュータのROMにおいて、図3のフローチャートで表
されるプログラムを予め記憶しており、そのプログラム
を実行することによって定寸点の補正値を決定するもの
である。
【0033】制御装置28はさらに、そのROMにおい
てファジィ推論のためのデータも予め記憶している。フ
ァジィ推論のためのデータは、(a) 推論プログラム,
(b) ポストプロセス測定ヘッド20による測定値Xと目
標値A0 との差である誤差値Rに関する複数のメンバー
シップ関数,(c) 誤差値Rの微分値Tに関する複数のメ
ンバーシップ関数,(d) 定寸点の補正値Uに関する複数
のメンバーシップ関数,(e) それら誤差値R,微分値T
および補正値U相互の関係を規定する複数のファジィル
ール等から成っている。
【0034】誤差値Rについては、それが負から正に向
かって増加するにつれて『NB』,『NM』,『N
S』,『ZO』,『PS』,『PM』および『PB』に
順に変化する7個のファジィラベルが用意されており、
それぞれのメンバーシップ関数は図4にグラフで表され
るようになっている。微分値Tについては、それが負か
ら正に向かって増加するにつれて『NB』,『NS』,
『ZO』,『PS』および『PB』に順に変化する5個
のファジィラベルが用意されており、それぞれのメンバ
ーシップ関数は図5にグラフで表されるようになってい
る。補正値Uについては、それが負から正に向かって増
加するにつれて『NB』,『NM』,『NS』,『Z
O』,『PS』,『PM』および『PB』に順に変化す
る7個のファジィラベルが用意されており、それぞれの
メンバーシップ関数は図6にグラフで表されるようにな
っている。なお、補正値Uが増加すれば定寸点が高くな
って加工穴が大径化され、逆に、補正値Uが減少すれば
定寸点が低くなって加工穴が小径化されることになる。
【0035】複数のファジィルールは次に表で表される
ようになっている。
【0036】
【表1】
【0037】このファジィルールの一例は、 If R=NS and T=PS then U=ZO で表される。
【0038】このファジィルールは次のような思想に基
づいて設計されている。インプロセス測定へッド18
は、加工に基づく振動や、ワークの加工歪みや、寸法測
定対象との温度不一致などが存在するという厳しい条件
の下で寸法を測定しなければならない。さらに、インプ
ロセス測定ヘッド18は、全数計測機14ほどには頻繁
に較正が行われず、また、加工穴の測定結果を電気信号
として出力するものであってその電気信号にはドリフト
が発生する。これらの事情から、インプロセス測定ヘッ
ド18は全数計測機14ほどには高い精度で寸法測定を
行うことができず、また、そのような原因に基づいてイ
ンプロセス測定ヘッド18からの出力信号に発生する誤
差は普通、比較的長い周期(大きなうねり)を持つ成分
である。
【0039】なお、誤差の長周期成分はインプロセス測
定ヘッド18自体が原因であるものが大半であるのが普
通であるが、全数計測機14自体が原因であるものなど
も存在する。
【0040】このような事情に基づき、ファジィルール
は、誤差値Rのファジィラベルが増加する(以下、単に
誤差値Rが増加するという。他のパラメータについても
同じとする)につれて補正値Uが減少するのはもちろ
ん、微分値Tが増加するにつれて補正値Uが減少するよ
うにも設計されている。
【0041】そして、このことは具体的に、前記表(以
下、ファジィルール表という)において次のように表現
されている。すなわち、例えば、微分値Tが『NS』で
ある場合には、誤差値Rが増加するにつれて補正値Uが
『PB』,『PM』,『PS』,『ZO』,『NS』お
よび『NM』の順に減少することとして表現され、ま
た、誤差値Rが『NM』である場合には、微分値Tが
『NS』,『ZO』および『PS』の順に増加するにつ
れて補正値Uが『PM』から『PS』に減少することと
して表現されているのである。
【0042】インプロセス測定ヘッド18は何らかの事
情で故障することがあり、この場合にはそれの測定精度
が急にかつ大きく低下することになる。それにもかかわ
らずインプロセス測定ヘッド18からの出力信号を信頼
して補正値Uを決定すると、加工穴の実際の寸法精度が
許容公差範囲から逸脱してしまうおそれがある。
【0043】このような事情に鑑み、ファジィルール
は、ポストプロセス測定ヘッド20による測定値Xが急
に減少してかなり小さくなった場合と、急に増加してか
なり大きくなった場合とにはそれぞれ、補正量Uが十分
に0に近づくように設計されている。このようにすれ
ば、インプロセス測定ヘッド18が故障した場合には、
それからの出力信号が無視されて前回までの定寸点が今
回も適当であると予想して加工が行われるから、インプ
ロセス測定ヘッド18の故障の影響をそれほど強く受け
ることなく加工穴の寸法精度を高く維持することが可能
となる。
【0044】そして、このことは具体的に、ファジィル
ール表において次のように表現されている。すなわち、
誤差値Rが『NB』または『NM』であり、かつ、微分
値Tが『NB』である場合と、誤差値Rが『PM』また
は『PB』であり、かつ、微分値Tが『PB』である場
合とにはそれぞれ、補正値Uが『ZO』であることとし
て表現されているのである。
【0045】図3のプログラムにおいては、まず、ステ
ップS1(以下、単にS1で表す。他のステップについ
ても同じとする)において、加工穴の内径の目標値
0 ,後述の移動平均に係る定数ω,nmax 等のパラメ
ータ等が図示しない特定のメモリから入力される。続い
て、S2において、全数計測機14から今回の測定値X
i(i=0,1,・・・)が入力され、S3において、
データバンク32(図7参照)から、今回より先に取得
された複数の測定値Xi-1 ,Xi-2 ,・・・(以下、単
に過去の測定値Xという)が入力される。
【0046】その後、S4において、過去の測定値Xと
今回の測定値Xi とに基づき、今回の測定値Xi からそ
れの隣接間ばらつき(短周期成分)を除去すべく、今回
の測定値Xi について移動平均値Pi が算出される。具
体的には、
【0047】
【数1】
【0048】なる式を用いて算出される。ただし、ここ
において「ωi 」は今回の測定値Xi に係る重み係数、
「nmax」は過去の測定値Xの数をそれぞれ意味する。
【0049】本実施例においては、加工機10と全数計
測機14との間の搬送ライン上において、全数計測機1
4による計測を待つワークが存在する。このように待機
するワークの数は、全数計測機14に基づく寸法情報を
入力信号、定寸点の補正値Uを出力信号とする制御系に
おけるむだ時間を意味する。むだ時間の概念を具体的に
説明すれば、待機するワークの数が0である場合には、
全数計測機14は加工終了直後のワークの寸法を測定す
ることになるから、むだ時間が1となるのに対し、待機
するワークの数がY(>0)である場合には、全数計測
機14は、加工機10により(Y+1)回前に加工され
たワークの寸法を測定することになるから、むだ時間が
(Y+1)となる。
【0050】そして、本実施例においては、待機するワ
ークの数が19個とされてむだ時間が20とされてお
り、その値に応じて上記重み係数ωi の各値および数n
max の値もファジィルールおよびメンバーシップ関数の
特性も予め設定されている。
【0051】なお、S4においては、データバンク32
に現に保存されている測定値Xの数がnmax に達しない
間は、今回の測定値Xi がそのまま今回の移動平均値P
i とされるようになっている。移動平均値Pi の算出に
必要な過去の測定値X全部が未だ揃っていないからであ
る。
【0052】したがって、例えば、図8(a) にグラフで
表される複数の測定値Xi については、同図(b) にグラ
フで表される複数の移動平均値Pi が算出されることに
なる。
【0053】S4の実行が終了すれば、S5において、
今回の移動平均値Pi の目標値A0からの誤差値Ri
算出される。続いて、S6において、データバンク32
から過去m(≧2)回分の移動平均値Pが入力され、そ
れらと今回の移動平均値Piとから最小二乗回帰直線が
算出され、それの微分値Ti (すなわち、その算出され
た最小二乗回帰直線の傾きをθ(ラジアン)とした場合
のtan θ)が算出される。
【0054】なお、本ステップにおいては、データバン
ク32に現に保存されている移動平均値Pの数がmに達
しない間は、今回の微分値Ti が0とされるようになっ
ている。微分値Ti の算出に必要な過去の移動平均値P
全部が未だ揃っていないからである。
【0055】すなわち、本実施例においては、各加工穴
について1個ずつ取得される測定値Xi が本発明におけ
る「寸法」の一態様であり、誤差値Ri が「寸法誤差」
の一態様であり、微分値Ti が「変化傾向」の一態様な
のである。ただし、正確には、今回の測定値Xi の目標
値A0 からの外れ量が「寸法誤差」とされているのでは
なく、今回の移動平均値Pi の目標値A0 からの外れ量
が「寸法誤差」とされているのであるから、今回の移動
平均値Pi が本発明における「寸法」の一態様であると
考えることもできる。
【0056】以上のようにして今回の誤差値Ri と微分
値Ti とが算出されたならば、S7において、それらに
基づき、ファジィ推論を用いて補正値Ui が算出され
る。なお、この算出手法については周知であり、また、
本発明を理解する上で不可欠なものではないため、説明
を省略する。
【0057】その後、S8において、今回の測定値Xi
がデータバンク32に保存され、S9において、今回の
移動平均値Pi も保存され、S10において、今回の補
正値Ui も保存され、S11において、その今回の補正
値Ui が定寸装置22に対して出力される。以上で本プ
ログラムの一回の実行が終了し、続いてS2以下のステ
ップにおいて次回の実行が行われる。
【0058】したがって、本実施例においては、誤差値
Rのみならず微分値Tをも勘案して補正値Uが決定され
るため、前述の、インプロセス測定ヘッド18の信号ド
リフト等に基づく測定誤差,故障等の外乱とは無関係
に、加工穴の直径を精度よく加工することが可能となる
という効果が得られる。
【0059】さらに次のような特有の効果もいくつか得
られる。本出願人は、本実施例の性能を確認するために
次のようなシミュレーションを行った。すなわち、実際
の複数の測定値Xi に基づき、誤差値Ri と微分値Ti
とからファジィ推論を用いて補正値Ui を決定して擬似
的に加工を行うシミュレーションを行ったのである。さ
らに、本実施例との比較のために、誤差値Ri と微分値
i と積分値(過去の測定値Xの和)とをそれらの積と
してフィードバックするPID制御を用いて補正値Ui
を決定して擬似的に加工を行うシミュレーションも行っ
た。
【0060】本実施例のシミュレーション結果である複
数の測定値Xは図9に、比較例のシミュレーション結果
である複数の測定値Xは図10にそれぞれグラフで表
す。なお、それらグラフにおいては、各シミュレーショ
ン結果である複数の測定値Xの3シグマ限界の幅が「目
標値との差」として表されている。それらグラフから明
らかなように、本実施例の方が比較例より、測定値Xの
3シグマ限界の幅がむだ時間長さ全体において狭くな
り、加工穴の寸法精度が安定するという効果も得られ
る。
【0061】本実施例は、また、本出願人が本発明完成
前に使用していた加工システム、すなわち、加工機1
0,インプロセス測定ヘッド18,定寸装置22,全数
計測機14等を主体とするものに対して、設置が比較的
簡単かつ安価な制御装置28,データバンク32,通信
ケーブル等を付加することによって本発明を実施するも
のである。このように、本実施例は、加工機10等の主
要なハードはそのままにして、ソフトで定寸精度を向上
させるものであるため、本発明を簡単かつ安価に実施す
ることができるという効果も得られる。
【0062】全数計測機14は本来、ある工程の最終位
置に配置されてそこから寸法不良のワークが次の工程に
流出するのを防止することを主な目的とするものであっ
て、ポストプロセス制御に専用のポストプロセス測定具
とはやや性格を異にする。しかし、加工後のワークの寸
法を測定する点では共通するため、本実施例において
は、既存の全数計測機14をポストプロセス測定具とし
て流用することによりフィードバック式の定寸点補正が
行われるようになっている。つまり、全数計測機14に
加えてポストプロセス測定具を用いることによって本発
明を実施することは可能なのであるが、本実施例におい
ては、全数計測機14の測定結果を有効に活用すること
によってフィードバック式の定寸点補正が可能とされて
いるのであり、このことによっても、本発明の実施にか
かる負担が軽減されるという効果が得られる。
【0063】加工機10により加工されるべき加工穴
が、シリンダボア等のようにそれに別の部品が隙間なく
嵌合されるべきものである場合には、加工穴の寸法精度
と嵌合相手の寸法精度との関係が適当であることが要求
される。つまり、この場合には、加工穴の寸法精度と嵌
合相手の寸法精度とが合致することが要求されるのであ
る。従来の加工システムでは、加工穴の寸法精度のばら
つきをそれほど小さく抑えることができない。そのた
め、その対策として、加工穴を実際の寸法精度に応じて
複数のランクに分け、また、それに対応して嵌合相手も
実際の寸法精度に応じて複数のランクに分け、合致する
ランクに属するワークと嵌合相手とを選び出して互いに
組み合わせることが行われている。そのため、ランクを
識別するために加工穴周辺に刻印する装置,その刻印を
読み取る装置,その刻印に応じて加工穴を選別する装
置,選別されたワークを保管する棚等が不可欠であっ
た。しかし、本実施例においては、加工穴の寸法精度の
ばらつきを十分に抑制することができるため、ランク分
けが不要になるか、必要であるとしてもそのランクの数
が少なくて済むため、ランク分けにかかる費用,手間,
スペース等が完全にまたは部分的に省略できるという効
果も得られる。
【0064】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、定寸装置22が本発明における「加工具制
御手段」の一態様を構成し、制御装置28のうち、図3
のS1〜S6,S8およびS9を実行する部分が全数計
測機14と共同して「寸法情報取得手段」の一態様を構
成し、制御装置28のうち、同図のS7,S10および
S11を実行する部分が「加工条件補正手段」の一態様
を構成しているのである。
【0065】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明したが、本発明はその他の態様で実施するこ
とが可能である。
【0066】例えば、図3のプログラムに次のようなス
テップを追加することが可能である。すなわち、微分値
Tの絶対値がしきい値を1回または連続して複数回超え
たならば、インプロセス測定ヘッド18が故障している
可能性があると判定して、その旨を作業者に警告するス
テップを追加することが可能なのである。このようにす
れば、作業者がいちいちインプロセス測定ヘッド18の
故障の有無を診断することなく、故障を簡単かつ早期に
検出してそれに対する早期対策が可能になるという効果
が得られる。
【0067】なお、この追加されたステップは、例え
ば、複数個の測定値Xi がデータバンク32に保存され
ていることを有効に活用すべく、今回の測定値Xi と前
回の測定値Xi-1 との差、すなわち、隣接間ばらつきを
算出し、それに基づいてインプロセス測定ヘッド18の
故障を検出するステップに変更することも可能である。
【0068】これらの他にも、特許請求の範囲を逸脱す
ることなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良
を施した態様で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示すブロック図であ
る。
【図2】本発明の一実施例であるフィードバック式の定
寸点補正装置を含む加工システムの構成を示す図であ
る。
【図3】図2における制御装置のコンピュータのROM
に記憶されているプログラムを示すフローチャートであ
る。
【図4】図2における制御装置のROMにおいて誤差値
Rに関して記憶されている複数のメンバーシップ関数を
示すグラフである。
【図5】図2における制御装置のROMにおいて微分値
Tに関して記憶されている複数のメンバーシップ関数を
示すグラフである。
【図6】図2における制御装置のROMにおいて補正値
Uに関して記憶されている複数のメンバーシップ関数を
示すグラフである。
【図7】図2における制御装置のコンピュータのRAM
の構成を概念的に示す図である。
【図8】上記実施例おける測定値の一例およびそれにつ
いて取得された移動平均値をそれぞれ示すグラフであ
る。
【図9】上記実施例の性能を示すグラフである。
【図10】上記実施例との比較例の性能を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
10 加工機 14 全数計測機 18 インプロセス測定ヘッド 20 ポストプロセス測定ヘッド 22 定寸装置 28 制御装置 32 データバンク

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のワークの各々に設定された少なく
    とも1個の加工部位の各々を順に加工する加工具を加工
    条件に従って制御する加工具制御手段に接続され、(a)
    加工中と加工後との少なくとも一方において、各加工部
    位の寸法誤差とそれの変化傾向とをそれぞれ寸法情報と
    して取得する寸法情報取得手段と、(b) 取得された寸法
    誤差と寸法誤差変化傾向とに基づいて前記加工条件を実
    質的に補正する加工条件補正手段とを含むことを特徴と
    するフィードバック式加工条件補正装置。
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