JPH0549890A - 攪拌装置 - Google Patents

攪拌装置

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JPH0549890A
JPH0549890A JP3193003A JP19300391A JPH0549890A JP H0549890 A JPH0549890 A JP H0549890A JP 3193003 A JP3193003 A JP 3193003A JP 19300391 A JP19300391 A JP 19300391A JP H0549890 A JPH0549890 A JP H0549890A
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一貴 高田
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雅彦 菊池
Hisayoshi Ito
久善 伊藤
Yukimichi Okamoto
幸道 岡本
Eisuke Sato
栄祐 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複数のパドル翼を上下多段に配置した攪拌装
置において、上下で隣接するパドル翼間の交差角度を混
合上最適な角度関係におくことで、これら翼から吐出さ
れる液の流れを繋ぎ、攪拌槽内全体に及ぶフローパタン
を形成せしめて、攪拌効率を高める。 【構成】 上段に位置するパドル翼(4) を上下で隣接す
る下段のパドル翼(3) に対して、45度〜75度の交差角度
αで回転方向に先行させて配置する。また、最下段のパ
ドル翼(3) の外端部を後退翼に形成する。また、上下で
隣接するパドル翼(3),(4) それぞれの少なくとも外端部
において上下方向にオーバラップさせる。 【効果】 上下段のパドル翼を、90度未満の交差角度で
配置するという実施上容易な攪拌翼構成を採ることで、
遷移流から層流域に至る攪拌操作条件下における液の攪
拌効率を大幅に向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は攪拌装置に関し、特に、
乱流域から層流域に至る攪拌操作条件下における液の混
合、溶解、晶析、反応、スラリー懸濁などの攪拌処理を
効率良く行うための攪拌装置に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、攪拌装置には、その目的
に応じ種々の形態の攪拌翼が用いられており、例えば、
低粘度用翼としてのタービン型翼などや、高粘度用翼と
してのダブルヘリカル翼などがあるが、比較的単純な翼
構成で、低粘度液から高粘度液の攪拌混合、すなわち乱
流域から層流域に至る広範囲の攪拌操作条件下における
攪拌混合を達成するものとして、2葉翼形のパドル翼を
上下2段または3段以上に組み合わせて設けた多段攪拌
翼構成が多く採用されている。
【0003】そして、これら多段攪拌翼構成を採る攪拌
装置においては、翼の回転バランスと翼面に働く流体圧
変動に対する回転軸の機械的強度上の見地から、各翼を
90度の交差角度で互いに交差させて配置する方法が圧倒
的に多く採用されており、また、一般に、消費動力の観
点から、翼幅を小さくし、各翼間の距離を大幅にあけた
状態で上下多段に配置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年において
は、攪拌装置の性能に対する要求は高度化・多様化して
おり、より広範囲な攪拌条件に対応できる攪拌装置が求
められている。特に、バッチプロセスでは、次のように
多様かつ高度な攪拌混合条件を満たす攪拌装置が望まれ
ている。 均一混合;広い粘度範囲での良好な混合と、液量と粘
度の変化に対応して良好な均一混合が果たせる。 伝熱性能;低動力攪拌時において良好な伝熱能力が得
られる。 固液攪拌;比較的沈降速度の大きな粒子の分散や、高
濃度スラリーの均一混合および低剪断(低回転)での均
一混合などの広範囲の固液攪拌が果たせる。 液液分散;シャープな液滴径分布が得られ、かつ低剪
断と、攪拌で粘度が増加する液中への軽液分散とを両立
させた液液分散が果たせる。 翼形状の単純性;各翼形状がシンプルでグラスライニ
ング製の反応機類にも適用可能である。
【0005】本発明者等は、これら要請に対応するため
に、多段攪拌翼構成を採る従来の攪拌装置について、多
方面から検討を加えた。その結果、上記の各条件を個々
に満たす攪拌装置の選定はさほど難しくはないが、これ
ら従来の攪拌装置には以下の問題点があるため、多項目
を同時に満足させる仕様選定は非常に困難であり、上記
の要請に対応するには、新たな観点のもとで改善または
開発されたものが必要であることが分かった。
【0006】各パドル翼の交差角度を90度とした前記従
来の攪拌装置では、各翼から吐出される流体の流れによ
って各翼の周りに形成されるフローパタンの繋がりが不
十分である。そのため流体が攪拌槽内で上下多層に分離
する要因となり、かつ槽内にデッドスペースを生じる原
因にもなり混合性能に悪影響を及ぼす。また、デッドス
ペースの発生は、流体の伝熱性能を低下させる要因とな
るばかりでなく、槽内壁面でのこげつきやコンタミを生
じ易くし、攪拌効率を低下させる。
【0007】また、パドル翼等の平板形攪拌翼を上下多
段に配置した場合、攪拌槽内には、各翼の回転によって
各翼の周りに複数の独立した循環流が形成される。そし
て、この傾向は〔図6〕の (a)図に示すように、上段翼
(61)と下段翼(62)との翼間距離Lを大きくあけた場合に
より顕著となり、また、このような場合には、翼間にお
いて循環流同志が干渉しあって流れの境界Bを生じさ
せ、この境界Bで上下の流体の混合が抑制される。逆
に、翼間における循環流同志の干渉を防止するため(b)
図に示すように、一方の翼を移動させて翼間距離Lを小
さくすることが考えられるが、しかし、この場合には、
総翼高を確保するために、いずれかの翼の翼高を、翼間
距離Lを小さくした分だけ高く(図中のh'分)する必要
があり、消費動力の増加の要因となる。また、この場合
には、翼高を拡大した翼の中央で循環流が分かれ、翼間
を大きくあけた場合にみられるような循環流同志の干渉
に基づく流れの境界B’が生じ、結果として、攪拌槽内
全体の流れの繋がりを乱す要因となったりする。
【0008】しかしながら、これら問題点を解決するた
めに、各翼の最適交差角度や翼間距離を、各翼から吐出
される流体の流れによって形成される攪拌槽内全体のフ
ローパタンの観点から、理論的・定量的に開示したもの
はこれまで知られてなく、これが近来の要請を満たすた
めの仕様選定を困難なものとしていた。
【0009】本発明は、上記従来技術の問題点の解決を
目的とするもので、上下多段のパドル翼を混合上最適な
位置関係に配置した攪拌翼構成として、各パドル翼間で
適切な圧力勾配に起因する流れの繋がりを形成し、この
流れが攪拌槽内全体に及ぶ1つの大きな循環流を形成し
て乱流域から遷移流および層流域に至る攪拌操作条件下
における液の攪拌効率を高め得る攪拌装置の提供を目的
とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る攪拌装置は以下の構成としている。す
なわち、請求項1記載の攪拌装置は、竪型円筒状の攪拌
槽内中心部に回転軸を垂設し、この回転軸に複数のパド
ル翼を上下多段に装着すると共に、最下段のパドル翼を
攪拌槽の底面に近接させて配設し、かつ、上段に位置す
る各パドル翼を上下で隣接する下段のパドル翼に対して
90度未満の交差角度で回転方向に先行させて配置したこ
とを特徴とする。
【0011】請求項2記載の攪拌装置は、上記交差角度
を45度〜75度としたことを特徴とする。
【0012】請求項3記載の攪拌装置は、最下段のパド
ル翼の外端部を後退翼に形成したことを特徴とする。
【0013】請求項4記載の攪拌装置は、最下段のパド
ル翼をその上段に位置する他のパドル翼よりも大スパン
としたことを特徴とする。
【0014】請求項5記載の攪拌装置は、上下で隣接す
るパドル翼それぞれの翼間距離を攪拌槽の内径寸法の20
%以下の寸法としたことを特徴とする。
【0015】請求項6記載の攪拌装置は、上下で隣接す
るパドル翼それぞれを少なくとも外端部において互いに
上下方向にオーバーラップさせたことを特徴とする。
【0016】
【作用】攪拌槽内の流体は攪拌翼の回転によって半径方
向に吐出される。パドル翼を上下多段に配置した攪拌装
置では、各パドル翼それぞれから流体が吐出されるの
で、これらパドル翼からの吐出流同志を干渉させること
なく、流れをスムーズに繋ぐことが混合効率を上げるに
重要なポイントとなる。
【0017】ところで、上下多段のパドル翼の回転によ
る流体の攪拌に際し、各翼それぞれの翼端部には、〔図
6〕の (a)図に示したように、半径方向への吐出流が形
成されると同時に、その上下方向に分かれて再びそれぞ
れの翼中心部に向かう循環流も形成される。そして、こ
れら翼で形成された吐出流は、隣接する他方の翼の吐出
流と干渉し合って流体を上下多層に分離させたり、他方
の翼の半径方向への吐出流に影響を及ぼしたりして、攪
拌槽内全体の流れの繋がりを乱す要因となる。更にま
た、各翼の交差角度を従来技術で常用される90度とした
場合には、回転バランスは取れるものの、粘度域によっ
ては上下の翼間の流れをスムーズに繋ぐことが困難とな
り、攪拌槽内全体の流れの繋がりを乱す要因となる。
【0018】そこで本発明者らは、先ず、翼間距離が小
さくて上下の翼で形成された吐出流同志が繋がり易い配
置関係において、各翼で形成された循環流の動きと交差
角度との関連について詳細に検討した結果、これら循環
流は翼に対して、ある回転遅れ位相をもって他方の翼に
影響を及ぼしており、その回転遅れ位相と交差角度との
相関が槽内の循環流の形成に大きく影響することを知見
した。すなわち、上下のパドル翼の交差角度を変える
と、これらパドル翼の前面に発生する圧力上昇部と後面
に発生する圧力降下部の上下方向の位置関係も、その交
差角度に応じて変化することになり、ある範囲内の交差
角度を選択する時、上下のパドル翼からの吐出流の繋が
り方が最も安定するとの知見を得た。
【0019】そして、これらの関係を更に詳細に検討し
た結果、一方のパドル翼が形成する吐出流が、他方のパ
ドル翼前面の高圧側に流れた場合、これら吐出流同志が
干渉するため攪拌槽全体に及ぶ循環流が形成され難くな
る。逆に、他方のパドル翼後面の低圧側に流れた場合に
は、互いの吐出流を乱すことなく上下の翼の間に高圧側
から低圧側に向かう選択的な流れが形成され、これら翼
から吐出される流れをうまく繋ぐことができ、これによ
り最適な圧力勾配に起因して攪拌槽内全体に及ぶ1つの
大きな循環流が形成され、流体の攪拌効率を高め得ると
の結論を得た。そしてまた、このような圧力勾配に起因
する混合上最適なフローパターンを生じさせるには、上
段のパドル翼を下段のパドル翼に対して90度未満で先行
させれば良いとの推論に達した。
【0020】本発明者らは、この推論を確認するため
に、パドル翼を上下2段に交差させて配置した攪拌装置
を基本形態のモデルとして選び、このモデル攪拌装置を
基に、上段翼と下段翼の交差角度α(下段翼を基準と
した上段翼の回転方向への先行角度)、上段翼と下段
翼の翼間距離L、上段翼と下段翼の吐出力バランスの
3因子の混合への影響を、数値実験および混合実験によ
り検討した。
【0021】数値実験は、流動の数値解析とその解析結
果を利用する混合のシュミレーションからなる。まず攪
拌槽内の3次元流速分布を求め、次にその結果を用いて
液面から投入した拡散物質の濃度分布の経時変化をシュ
ミレーションで求めた。なお、この数値実験の適用は、
流体数値解析結果の信頼性の高い層流域に限定した。
【0022】一方、混合実験では、内径 400mm、高さ 8
00mm、容量80Ltおよび内径 200mm、高さ 400mm、容量10
Ltの大小2種類の攪拌槽を使用し、混合時間の測定に
は、ヨード澱粉の呈色をチオ硫酸ナトリウムで還元脱色
する脱色法を利用した。また、ヨード溶液およびチオ硫
酸ナトリウム溶液は、攪拌液と同じ粘度に調整したもの
を用い、混合時間は脱色過程の連続写真から決定した。
【0023】先ず、上段翼と下段翼の交差角度αの違
いが攪拌槽内の流動と混合過程に及ぼす影響を数値実験
法により評価した。この実験では、内径D 200mmの攪拌
槽内に、翼径d 120mm(0.6D)のパドル翼を翼間距離L
20mm(0.1D)で上下2段に配置し、粘度μ 5Pa・s 、密
度ρ1400kg/m3 、攪拌レイノズル数Re 8.4の攪拌液
を、液深H 200mm(1.0D) 、翼の回転数 2.08 1/s の共
通条件にて、上下段翼の交差角度αを零度(上下翼を同
一平面配置)から90度に変化させて攪拌した。その実験
による流速分布および混合過程の代表例を〔図7〕に示
す。なお、〔図7〕は攪拌槽の 1/2縦断面における流速
ベクトルと拡散物質の混合進展を表す濃度等高線とを示
すグラフであって、 (a)図のグラフは交差角度αを45度
とした例を、 (b)図のグラフは交差角度αを零度とした
例をそれぞれ示す。
【0024】交差角度αを零度とした時、 (b)図のグラ
フに示すように上段パドル翼および下段パドル翼から吐
出された流体は翼間において互いに衝突し、攪拌槽上部
と下部との間の円滑な液体輸送を阻害する。一方、交差
角度αを45度とした時には、(a)図のグラフに示すよう
に攪拌槽上部から下部への液体輸送が盛んである。ま
た、これに対応する混合過程の相違は、交差角度αが零
度では投入後30秒経過しても下段翼部まで拡散物質は輸
送されないに対して、交差角度αが45度では投入後30秒
で槽底部まで拡散物質が輸送される。すなわち上下のパ
ドル翼を同一平面に配置するよりも、これら翼を45度の
交差角度で配置する方が、上段翼と下段翼の流れが繋が
り、速やかな混合が達成される。また、本手法を用いて
種々の交差角度αを検討した結果、交差角度αは30度以
上90度未満の範囲内、望ましくは45度から75度が適切な
角度範囲として見いだされ、これにより前述した推論が
成立することが確認された。
【0025】続いて、上段翼と下段翼の翼間距離Lの
最適範囲を把握するために、上下段翼の交差角度αを45
度に設定する一方で、翼間距離Lを攪拌槽の内径Dの10
%から30%の範囲に変化させ、上記と同条件の攪拌よる
実験を行った。その実験による流速分布を〔図8〕に示
す。なお、〔図8〕は攪拌槽の 1/2縦断面における流速
ベクトルを示すグラフであって、 (a)図のグラフは翼間
距離Lを 0.1D(10%) に設定した例を、 (b)図のグラフ
は翼間距離Lを 0.2D(20%) に設定した例を、 (c)図の
グラフは翼間距離Lを 0.3D(30%) に設定した例をそれ
ぞれ示す。
【0026】翼間距離Lが 0.1Dから 0.3Dまでに増加
するに従い〔図8〕に示すように、上段パドル翼の吐出
流が、下段パドル翼の回転域に進入する度合いが減少し
て行き、 0.3Dではほとんど進入することなく下段パド
ル翼の吐出流に押し返されている。一方、 0.2D以下で
は下段パドル翼の回転域に進入して流れが繋がってい
る。従って、翼間距離Lを0.2D以下、好ましくは 0.1
Dに設定することによって、攪拌槽内での流れが繋がり
効率の良い混合を実現することができる。
【0027】更にまた、多段翼構成で効率良い攪拌混合
を行うには、上段翼と下段翼の吐出力バランスが重要
であり、本実験では、層流域と乱流域での吐出力バラン
スを検討し、最下段のパドル翼に後退翼を採用して攪拌
槽下部の吐出力を強化し粘度対応性と動力効率の向上を
図った。3葉翼形について、層流時における通常の直線
状パドル翼と後退翼周囲の半径方向吐出流速解析結果を
〔図9〕に例示する。なお、〔図9〕の (a)図は後退翼
周囲の半径方向の吐出流速分布を、 (b)図は直線状パド
ル翼周囲の半径方向の吐出流速分布をそれぞれ示すグラ
フである。
【0028】〔図9〕に示すように、後退翼では、直線
状パドル翼に認められる翼端後面での液体の吸込みSが
がなく、広い角度範囲にわたり液体が吐出されており、
また最大吐出流速度も、同一外径の直線状パドル翼のそ
れに比べて30%大きい。一方、パドル翼の吐出流速度は
その外径(翼スパン)に左右されるので、攪拌槽下部の
吐出力を強化するには、最下段のパドル翼をその上段に
位置する他のパドル翼よりも大スパンとすることでも対
応できる。
【0029】以上にて把握された最適条件より、交差角
度αを45度、翼間距離Lを 0.1Dに組み合わせた多段パ
ドル翼を用いると、粘度 2Pa・s 以上の層流域では攪拌
槽内全体が良好に混合された。しかし、粘度 2Pa・s 以
下の層流から乱流へ遷移する状態では、上下翼の流れの
繋がりが不安定になり、混合がやや遅れ気味になる傾向
が認められた。
【0030】この問題を解決するために種々検討を加え
た結果、上下で隣接するパドル翼それぞれを少なくとも
外端部において互いに上下方向にオーバーラップさせる
とき、これらパドル翼から吐出される流れを、隣接する
パドル翼の回転域に進入させてうまく繋ぐことができ、
これにより最適な圧力勾配に起因するフローパターンが
形成され、遷移域の流体についても攪拌効率を高め得る
との結論を得た。
【0031】そして、その効果を確認するために、上段
パドル翼の両外側下端部に下方に向けて突出して下段パ
ドル翼にオーバーラップする短冊形のフィン部を設け、
この構成のもとで、粘度 2Pa・s 以下の攪拌液を、上記
条件にて攪拌した。その結果、上段パドル翼の両外側下
端部に設けたフィン部により、上下段パドル翼の流れの
繋がりが安定して速やかな混合が実現した。また、フィ
ン部を設けたことにより、遷移域や乱流域において良好
な均一混合を得ることができるばかりでなく、層流域に
おいてもフィン部のないものに比べて一層良好な混合が
可能であることが確認された。
【0032】本発明は、以上に述べた調査で確認された
諸条件を把握した上でなされたものである。すなわち、
回転軸に上下多段に装着させた複数のパドル翼の、上段
に位置する各パドル翼を上下で隣接する下段のパドル翼
に対して90度未満の交差角度で回転方向に先行させて配
置することで、上段翼と下段翼の流れを繋がらせて、速
やかな混合を実現する。また、上記交差角度を45度〜75
度とすることで、上段翼と下段翼の流れの繋がりをより
安定なものとし、より確実に速やかな混合を実現する。
また、最下段のパドル翼の外端部を後退翼に形成するこ
とで、攪拌槽下部の吐出力を強化して、攪拌槽内全体の
フローパタンを安定化させると共に、粘度対応性と動力
効率を向上させる。また、最下段のパドル翼をその上段
に位置する他のパドル翼よりも大スパンとすることで
も、攪拌槽下部の吐出力を強化して、乱流域での攪拌槽
内全体のフローパタンを安定化させると共に、粘度対応
性と動力効率を向上させる。また、上下で隣接するパド
ル翼それぞれの翼間距離を攪拌槽の内径寸法の20%以下
の寸法とすることで、上段翼と下段翼の流れの繋がりを
より安定なものとし、より効率の良い混合を実現する。
また、上下で隣接するパドル翼それぞれを少なくとも外
端部において互いに上下方向にオーバーラップさせるこ
とで、遷移域の流体についても、上段翼と下段翼の流れ
の繋がりを確実かつ安定なものとして、良好な均一混合
を実現する。
【0033】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面を参照して説
明する。
【0034】〔図1〕は本発明の1実施例の攪拌装置を
示す図面であって、 (a)図は一部を切り欠いた斜視図、
(b)図は (a)図のB−B横断面図である。なお、本実施
例は、本発明の攪拌翼構成をグラスライニング型機器に
適用した例である。
【0035】〔図1〕において、(1) は攪拌槽であっ
て、この攪拌槽(1) は、外周に熱交換用のジャケット(1
a)を装着した竪型円筒容器に形成されている。また、こ
の攪拌槽(1) の内周面寄りには、2枚の邪魔板(6) が円
周方向に等ピッチに槽上部から垂設されている。
【0036】(2) は回転軸であって、この回転軸(2)
は、攪拌槽(1) の中心部に垂設され、攪拌槽(1) の上方
中央部に装着された駆動装置(5) により (b)図中の矢印
Aで示す方向に回転駆動される。
【0037】(3) は下段翼であって、この下段翼(3)
は、下縁部を攪拌槽(1) 底の曲面に沿う形状に形成する
と共に、両外側部を (b)図中の矢印Aに示す回転方向に
対して後退翼に形成したパドル形翼で、回転軸(2) の下
端部に装着されて攪拌槽(1) の底面に近接して配されて
いる。
【0038】(4) は上段翼であって、この上段翼(4)
は、その翼径を下段翼(3) の翼径と略同径とし、その両
外側下端部に下方に向けて突出する短冊形のフィン部(4
a)を設けたパドル形翼で、下段翼(3) の上方の回転軸
(2) に装着されている。また、この上段翼(4) は、 (b)
図に示す交差角度α、すなわち下段翼(3) に対して矢印
Aで示す回転方向に先行する交差角度を45度に設定する
と共に、その両外側のフィン部(4a)の下端縁を、下段翼
(3) の両外側の上端縁より所定寸法Δhだけ低く位置さ
せて、下段翼(3) と上下方向にオーバーラップさせて配
されている。
【0039】上記のような構成の攪拌装置について、中
高粘度域での混合効率の向上効果を確認するため、2枚
のパドル翼を交差角度90度で上下2段に配した従来の攪
拌との対比において、攪拌レイノズル数Re 11.7の層流
状態で流速ベクトル分布と拡散物質の液面および槽底で
の濃度曲線を数値実験で求めた。この実験では、内径D
200mmの攪拌槽内に、翼径d 120mm(0.6D)のパドル翼
を交差角度αを45度として上下2段に配置し、液深Hを
250mm(1.25D) 、翼の回転数を 2.08 1/s に設定するこ
と共通条件とした。また、本実施例の装置の上段翼フィ
ン部の下段翼に対するオーバーラップ寸法Δhは0.05D
とした。その結果を〔図2〕に示す。なお、〔図2〕は
攪拌槽内の流速ベクトルと、濃度応答曲線とを示すグラ
フであって、 (a)図のグラフは本実施例の攪拌装置によ
るもの、 (b)図のグラフは比較例として交差角度αを90
度とした従来の攪拌装置によるものをそれぞれ示す。
【0040】従来の攪拌装置では (b)図のグラフに示す
ように、上下段パドル翼の流れの繋がりがあるものの、
約 180秒経過しても液面部と槽底部での濃度に若干の差
が残り混合が終わっていない。これに対し本実施例の攪
拌装置では (a)図のグラフに示すように、上下段翼の流
れが良好に繋がり、約90秒後に液面部と槽底部の濃度が
一致して混合が終わった。
【0041】以上により本実施例の攪拌装置は、従来の
攪拌装置による混合時間に比べて半分以下と、大幅に短
時間で攪拌混合を達成できることが確認できた。また、
その上下段翼ともに形状がシンプルであり、回転軸と一
体化させて外面にガラス被覆する際に、高温焼成によっ
て生じる変形の問題が少なく、本実施例のようなグラス
ライニング型機器への適用が容易である。
【0042】なお、〔図1〕に示した例の攪拌装置で
は、上下2段の攪拌翼構成としたが、これは一例であっ
て、例えば、〔図3〕に示すように、パドル形翼を上下
3段に配した構成の攪拌翼とされても良く、また、本発
明の要旨を逸脱しない限り、装置規模や液深に対応して
3段以上の攪拌翼構成を採用されても良い。また、攪拌
槽の内周面寄りに2枚の邪魔板を配置したが、これら邪
魔板は高粘度液の攪拌混合には不要である。
【0043】〔図3〕は本発明の別の実施例の攪拌装置
の一部を切り欠いた斜視図である。なお、同図において
〔図1〕と同符号を付したものは等価のもので、ここで
は説明を省略する。
【0044】この実施例の攪拌装置では、下段翼(3) の
上方の回転軸(2) に、〔図1〕と同様に両外側下端部に
フィン部(4a)を設けた上段翼(4) が上下2段に装着さ
れ、全体として3段の攪拌翼構成とされている。また、
下段翼(3) および2枚の上段翼(4) は、互いの交差角度
を45度に設定して配置され、また、2枚の上段翼(4)
は、それぞれのフィン部(4a)を隣接する下方の翼と上下
方向にオーバーラップさせて配されている。
【0045】この実施例のような攪拌翼構成によれば、
液深変化に対応して槽内全域を均等に攪拌でき、装置の
大型化および攪拌能力の増大にも容易に対応できる。
【0046】なお、〔図1〕および〔図3〕に示した例
の攪拌装置では、上段翼(4) の両外側下端部に短冊状の
フィン部(4a)を設け、そのフィン部(4a)を下方に位置す
る他の翼と上下方向にオーバーラップさせることで、上
下で隣接するパドル翼間の流れの繋がりを安定化させる
ものとしたが、これは一例であって、上下で隣接するパ
ドル翼それぞれを少なくとも外端部において互いに上下
方向にオーバーラップさせる本発明の要旨を逸脱しない
限り、例えば、〔図4〕の (a)図に示すように下段翼
(3) と上段翼(4) それぞれの一方の外側端部に短冊状の
フィン部を設けて、また、〔図4〕の (b)図に示すよう
に上段翼(4) の両外側下端部にフイッシュテイル状に突
出するフィン部を設けて、更にまた、〔図4〕の (c)図
に示すように下段翼(3) と上段翼(4) それぞれの両外側
端部にフイッシュテイル状に突出するフィン部を設け等
して、これらを互いに上下方向にオーバーラップさせる
こともできる。
【0047】また、〔図1〕および〔図3〕に示した例
の攪拌装置では、攪拌槽下部の吐出力を強化して粘度対
応性と動力効率の向上を図るため、最下段翼を後退翼に
形成したが、これは必ずしも後退翼とする必要はなく、
槽底部の吐出力を強化するには、最下段翼をその上段に
位置する他の翼よりも大スパンのパドル形翼とすること
でも対応できる。
【0048】〔図5〕は本発明のまた他の実施例の攪拌
装置を示す図面であって、 (a)図は正断面図、 (b)図は
(a)図のB−B横断面図である。
【0049】〔図5〕において、(11)は攪拌槽であっ
て、この攪拌槽(11)は、外周に熱交換用のジャケット(1
1a) を装着した竪型円筒容器に形成されている。また、
この攪拌槽(11)の内周面上には、その軸方向に沿う上下
方向に4枚の邪魔板(16)が円周方向に等ピッチに装着さ
れている。
【0050】(12)は回転軸であって、この回転軸(12)
は、攪拌槽(11)の中心部に垂設され、攪拌槽(11)の上方
中央部に装着された駆動装置(15)により (b)図中の矢印
Aで示す方向に回転駆動される。
【0051】(13)は下段翼、(14)は上段翼であって、こ
れら上・下段翼(14),(13) は、翼径dおよび翼高hを同
寸としたパドル形翼で、所定間隔を隔てて上下2段に回
転軸(12)に装着されている。また、下段翼(13)は、下縁
部を攪拌槽(11)底の曲面に沿う形状に形成されて攪拌槽
(11)の底面に近接して配され、一方、上段翼(14)は、
(b)図に示す交差角度α、すなわち下段翼(13)に対して
矢印Aで示す回転方向に先行する交差角度を90度未満に
設定すると共に、下段翼(13)との翼間距離Lを、攪拌槽
(11)内径Dの20%以下に設定して配される。
【0052】上記のような構成の攪拌装置による上下翼
の交差角度αを変えて行った具体的な混合・攪拌例につ
いて、以下に述べる。
【0053】上記構成のもとで、攪拌槽(11)の内径Dを
200mmとし、上・下段翼(14),(13)の翼径dを 120mm(0.
6D) 、翼高hを70mm(0.6D) 、翼間距離Lを20mm(0.1
D)とする一方で、上・下段翼(14),(13) の交差角度α
を45度、60度および75度に設定した3種の攪拌装置を準
備した。また、比較のために、上・下段翼の交差角度α
を90度、翼間距離Lを60mm(0.3D) とし点以外は本実施
例のものと同一構成とした従来型の攪拌装置も準備し
た。
【0054】そして、これら4種の攪拌装置を用い、翼
回転数を125rpmとする同一条件で、粘度μ= 5Pa・s 、
密度ρ= 1400kg/m3の液を混合・攪拌して、それぞれに
よる液の完全混合時間を比較調査した。
【0055】その結果、液の完全混合時間は、交差角度
を90度とした比較例のものでは 150秒要したのに対し
て、本実施例のものでは、交差角度を45度とした例で 1
04秒、60度とした例で 102秒、75度とした例で 114秒で
あり、従来型の比較例のものと比べて、液の混合・攪拌
効率を約25%〜30%と大幅に高めることができ、本発明
装置の優れた混合効果を確認することができた。
【0056】なお、本実施例では、上・下段翼の翼間距
離Lを20mmとしたが、これは一例であって、この翼間距
離Lは攪拌槽内径Dの20%以下の寸法に設定されれば良
い。但し、翼間距離を小さくするについては、〔従来技
術〕の項で述べたように、液深に対応するための総翼高
の増大に伴う消費動力の増加はあるが、混合時間短縮の
点から、この翼間距離は攪拌槽内径の20%以下(望まし
くは10%前後)において装置規模および経済性から選択
されることになる。
【0057】また、本実施例では、下段翼を上段翼と同
じ翼径および翼高のパドル形翼としたが、これは一例で
あって、第1実施例のように下段翼を後退翼に形成した
り、または上段翼よりも大スパンな翼径とされること
も、攪拌槽下部の吐出力を強化して槽内全体の流れをス
ムースに繋がらせるに効果的である。
【0058】また、本実施例では、上下2段の攪拌翼構
成としたが、これは本発明構成の効果を評価・説明する
ことを容易にするためであって、本発明の要旨を逸脱し
ない限り、装置規模や液深に対応して2段以上の多段攪
拌翼構成を採られても同様な混合・攪拌効率の向上が図
れることは言うまでもない。
【0059】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明に係る攪拌
装置は、上下多段のパドル翼を、明確で混合上最適な位
置関係に配置した攪拌翼構成として、各パドル翼間で適
切な圧力勾配に起因する流れを形成して攪拌槽内全体に
おけるフローパタンの繋がりがとれ、乱流域から層流域
に至る攪拌操作条件下における流体の攪拌効率を大幅に
向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例の攪拌装置を示す図面であっ
て、 (a)図は一部を切り欠いた斜視図、 (b)図は (a)図
のB−B横断面図である。
【図2】本発明の1実施例に関わる攪拌槽内の流速ベク
トルと、濃度応答曲線とを示すグラフである。
【図3】本発明の別の実施例の攪拌装置の一部を切り欠
いた斜視図である。
【図4】本発明に関わる翼のオーバーラップ形態の説明
図である。
【図5】本発明のまた他の実施例の攪拌装置を示す図面
であって、 (a)図は正断面図、(b)図は (a)図のB−B
横断面図で図面である。
【図6】パドル翼を上下多段に配置した攪拌装置におけ
る翼間距離と循環流との関係を説明するための模式図で
ある。
【図7】本発明に関わる交差角度との関係における攪拌
槽内の流速ベクトルと、還元脱色の進展を表す濃度等高
線とを示すグラフである。
【図8】本発明に関わる翼間距離との関係における攪拌
槽内の流速ベクトルを示すグラフである。
【図9】本発明に関わる後退翼周囲の半径方向の吐出流
速分布と、通常のパドル翼周囲の半径方向の吐出流速分
布とを示すグラフである。
【符号の説明】
(1) --攪拌槽 (2) --回転軸 (3) --下段翼 (4) --上段翼 (5) --駆動装置 α -- 交差角度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 栄祐 神戸市西区糀台4丁目14−31

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 竪型円筒状の攪拌槽内中心部に回転軸を
    垂設し、この回転軸に複数のパドル翼を上下多段に装着
    すると共に、最下段のパドル翼を攪拌槽の底面に近接さ
    せて配置し、かつ、上段に位置する各パドル翼を上下で
    隣接する下段のパドル翼に対して90度未満の交差角度で
    回転方向に先行させて配置したことを特徴とする攪拌装
    置。
  2. 【請求項2】 上記交差角度を45度〜75度としたことを
    特徴とする請求項1記載の攪拌装置。
  3. 【請求項3】 最下段のパドル翼の外端部を後退翼に形
    成したことを特徴とする請求項1記載の攪拌装置。
  4. 【請求項4】 最下段のパドル翼をその上段に位置する
    他のパドル翼よりも大スパンとしたことを特徴とする請
    求項1記載の攪拌装置。
  5. 【請求項5】 上下で隣接するパドル翼それぞれの翼間
    距離を攪拌槽の内径寸法の20%以下の寸法としたことを
    特徴とする請求項1、2、3又は4記載の攪拌装置。
  6. 【請求項6】 上下で隣接するパドル翼それぞれを少な
    くとも外端部において互いに上下方向にオーバーラップ
    させたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の
    記載の攪拌装置。
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