JPH0564550A - ホエー蛋白質含有溶液、それを用いたホエー蛋白質ゲル化物、ホエー蛋白質粉末及び加工食品 - Google Patents

ホエー蛋白質含有溶液、それを用いたホエー蛋白質ゲル化物、ホエー蛋白質粉末及び加工食品

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JPH0564550A
JPH0564550A JP4011234A JP1123492A JPH0564550A JP H0564550 A JPH0564550 A JP H0564550A JP 4011234 A JP4011234 A JP 4011234A JP 1123492 A JP1123492 A JP 1123492A JP H0564550 A JPH0564550 A JP H0564550A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 1価又は2価塩類のイオンの作用によりゲル
化したホエー蛋白質塩類イオン誘導ゲル化物であって、
ホエー蛋白質濃度0.5〜20%、灰分1%以下、pH6
〜9の熱処理済の溶液に、塩類イオン0.02M以上を
作用させて得られる。 【効果】 ゲル化に際して加熱処理を要せず、得られる
ゲルは耐難水性に優れており、ホエー蛋白質をゲル材と
して広く食品に利用可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塩類のイオンの添加に
よりゲル化を起すホエー蛋白質含有溶液、それをゲル化
させたゲル化物及び乾燥した粉末、更にそれらを利用し
た加工食品に関する。本技術は、ゲル化性、保水性が必
要とされる食品製造分野において適用される。
【0002】
【従来の技術】ホエー蛋白質は乳中に存在する蛋白質
で、ラクトアルブミンやラクトグロブリンから構成さ
れ、72〜75℃の温度で熱変性する性質を有する。
【0003】従って、従来、ホエー蛋白質溶液をゲル化
する手段としては、加熱処理する方法が一般によく知ら
れているが、その他の手段についてはほとんど知られて
いない。
【0004】加熱によるホエー蛋白質のゲル化やホエー
蛋白質の熱凝固物については、多くの研究が行われてき
ている(JOURNAL OF FOOD SCIENCE Vol.53,No.1,1988 p.
510-521 および日本食品工業学会 Vol.32,No.9,1985 p.
639-645) 。しかし、これらゲル化物、熱凝固物は塩類
存在下で加熱されており、塩類存在量により差異はある
ものの熱凝固ゲルには共通して保水性の経時的低下、滑
らかさの不足という欠点があった。
【0005】しかも、ゲル化に際して加熱処理するた
め、加熱を静置状態で行わねばならず工業的に生産する
場合、大量のゲルを静置状態で製造することは、困難を
伴う。すなわち大きな単位のブロックを加熱処理する場
合、中心部がゲル化する温度になるまで長時間を必要と
し、その結果として周辺部の過加熱による焦げやすだち
という不都合があった。又加熱処理が必須であることか
ら、その用途も多くは食品加工の副素材として一部用い
られているにすぎない。
【0006】ホエー蛋白質ゲル化物を増量材として食品
に適用した一例としては、水産練り製品がある。例え
ば、ホエー蛋白質を増量材として用いると、水産練り製
品特有のスワリ効果を阻害し、その結果として組織を弱
くするという欠点が一般に認められているが、これに対
して、ホエー蛋白質を安定剤、例えばローカストビーン
ガムまたはキサンタンガムとを混合して85℃程度の温
度に約40分加熱し、得られた熱変性ゲル化物を粉砕し
たものをスリミに増量材として50〜60重量%程度の
高率で添加する方法(特開昭63−141566)が知られてい
る。しかし、この方法ではホエー蛋白質を大量に用いる
ため食感、風味への影響が避けられず、又、その他の安
定剤を必須成分として加えるため工程が複雑で、高コス
ト化を招く等問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の実情に鑑み、栄養的価値にも優れたホエー蛋白質を
各種食品素材として広範囲に利用可能とすべく成された
ものであって、従来の熱凝固ゲルでは得られなかった保
水性が良好で滑らかなゲルをゲル形成時に加熱処理せず
得ること、従って、工業的に大量生産が可能で高品質の
ゲル化物を形成することを可能とする新しい技術を提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、ホエー蛋白質
をゲル化主要成分とする溶液を加熱により凝固しない状
態に調製してから、これを加熱処理しホエー蛋白質分子
を凝固させることなく一定の状態(ホエー蛋白質分子か
らなる可溶性会合体)に変性させておくことによって、
塩類の添加で不可逆のゲル状組織化物を形成可能とする
技術に基づいている。
【0009】即ち、本発明は、第1にホエー蛋白質が加
熱凝固しない濃度に希釈された溶液を加熱処理してなる
ホエー蛋白質含有溶液であって、1価又は2価塩類のイ
オン(金属イオン及び/又は酸基)の添加によってのみ
ゲル化可能な前記ホエー蛋白質含有溶液である。
【0010】このように熱変性温度でも凝固しないよう
溶液を調製して加熱による変性を蛋白分子に与え、塩類
イオンの添加によりゲル化を誘導し、所望のゲル化物を
工業的規模で得るという技術は従来まったく知られてい
なかったものである。
【0011】従来の、塩類存在下で加熱してできたゲル
では蛋白質が凝集し保水性が低くなるのに対して、本発
明によるゲル(非熱凝固ゲル)では保水性が高く、滑ら
かで、かつ透明性に優れている。しかも、本発明におけ
る前処理としての加熱は、従来のゲル化のための加熱と
異なり蛋白質溶液を静置して加熱する必要がなく、攪拌
加熱で行いうるので効率が良く、大量に製造する場合で
も全体を均一に処理できる。
【0012】本発明は第2に、前記ホエー蛋白質含有溶
液に、1価又は2価塩類イオンを添加することにより得
られるホエー蛋白質ゲル化物である。
【0013】このゲルは保水性が良く、滑らかで優れた
透明性を有する特徴をもつことは、本発明者らにより明
らかにされた特性であり、食品産業においては非常に有
用なものである。
【0014】本発明は第3にホエー蛋白質濃度が0.5
〜10%に調整された前記ホエー蛋白質含有溶液を乾燥
処理して得られるホエー蛋白質含有粉末である。この粉
末は、水溶液とし1価又は2価塩類イオンを添加すると
ゲル化する性質を有しており、従来のように溶解やゲル
化に際して加熱や冷却の必要が全くない。従って、粉末
状インスタント食品類として非常に有用なものである。
【0015】更に、本発明は第4として、前記ホエー蛋
白質ゲル化物を利用した加工食品類である。
【0016】本発明によれば、従来ゲル化処理が静置状
態下での加熱手段に限られていたために付随的に生じて
いた加熱臭発生や対象食品の制限といった課題を解決す
ることができ、栄養価値の高いホエー蛋白質を広範囲の
食品、特に生のまま供卓される食品等加熱調理過程を過
ない食品類の不可逆性ゲル化材として又加熱調理食品用
のゲル材として利用することが可能となり、かつ耐離水
性等に優れた新しい加工食品を提供できるようになる。
【0017】以下、本発明を詳述する。
【0018】まず、本発明のホエー蛋白質(以下「W
P」という。)含有溶液及び前記WP含有溶液に1価又
は2価塩類イオンを添加しゲル化したゲル化物(以下、
塩類イオン誘導ゲルという。)について説明する。
【0019】蛋白質の変性を利用して食品類を製造する
技術はよく知られているが、蛋白質が変性するとは、一
般に蛋白質分子の構造が部分的に変化し、その性状が変
化することをいう。特に熱変性においては、蛋白質分子
の変形、会合、凝固が起っており、この結果熱凝固を生
じる。会合、凝固のにない手になるのは疎水結合、水素
結合、塩結合等による分子間結合であるが、これらの関
係を把握し、結果的に形成されるゲルの物性、性状等を
予測することは困難である。又、蛋白質はそれぞれ固有
のアミノ酸の種類と数をもっているので、すべての蛋白
質に一定の効果を期待することはできない。本発明者ら
は、ホエー蛋白質の非熱凝固ゲルについて鋭意研究の結
果、塩類イオン誘導ゲルの可能性を見い出し、本発明に
至ったのである。
【0020】従来技術によれば、まず熱凝固WPゲルを
形成するためのWP溶液は一定以上のWP濃度(5%以
上)、一定以上の塩濃度(灰分として0.2%以上)を
含有している必要がある。これ以下の濃度では白濁、沈
澱を生じても全体としてゲルを形成するには至らない。
しかし、通常の条件ではゲルを形成しないような低塩濃
度下においても、WP分子は加熱により変性を受けてお
り凝固させずにWP熱変性温度以上に加熱することによ
って、WP分子間に凝集を起させずに分子を変形し可溶
性の会合体を形成させ、分子表面の疎水性度を充分高い
状態にすることが可能で、その後、塩類イオンを作用さ
せ疎水結合を促進させて、網目構造を構築し均一にゲル
化させることができることが判明した。従来では、加熱
時にWP分子間で急激な凝集が起っていたのである。す
なわち、低塩濃度下での加熱においては、その一部が変
性し数珠状に連結する。その後に、塩類イオンを添加し
て疎水結合をおこさせるので、蛋白質分子はランダムに
凝集せず、適当な網目構造をとり、透明性と保水性の良
好なゲルを形成する。
【0021】このように塩類イオンによりゲル化を誘導
するためには、WP分子は充分に変形し疎水性度が高く
なっていなければならない。疎水性度の目安としては、
下記で定義される値で示せば50(FI/mg protein)以
上、更には100 以上であるとよい。
【0022】疎水性度:ホエー蛋白質を適正濃度(0.
1〜0.3g/l 程度)に希釈し、8mM の1−アニリノナ
フタレン−8−スルホン酸を蛍光ブローブとして添加
し、蛍光分光光度計にて励起波長370nm 、発光波長470n
m にて測定(蛍光量FI)し、得られた値をホエー蛋白質
(mg)当たりで示したもの。
【0023】この程度まで分子を変形させるためにはW
Pを熱凝固させずにWP熱変性温度以上に加熱する必要
があり、従って、加熱処理中は塩類イオンをなるべく存
在させず分子間の反応が起らないようにしておく必要が
ある。又、分子の荷電状態も分子の変形に影響を及ぼす
ため、熱変性でなくとも化学的変性を起すようなpH帯は
避けることも必要である。本発明の目的は、単にWPの
沈澱や白濁現象を起すことではなく、均一ゲル組織を形
成することだからである。
【0024】ここで、例えば金属イオンの存在が蛋白質
凝固に必要であることは公知事実であるが、金属イオン
なしでは凝固しないことと、金属イオン添加のみで凝固
すること、しかも均一なゲル化を生ずることとは全く別
の技術的知見であることに注意すべきである。金属イオ
ンの添加のみで再加熱することもなく、均一な蛋白質ゲ
ルが形成できるという発見は全く驚くべきことである。
更に、本発明のWP含有溶液は、金属イオン(カチオ
ン)ばかりでなく、塩類より生ずる酸基(アニオン)に
よっても均一なゲル化が起るという特徴を有する。
【0025】従来は、WPゲルでは専ら塩類存在下での
加熱処理が行われていたのである。又、本発明のWPゲ
ル化物は、その形成プロセスが従来のものと相違するだ
けでなく、物性自体に相違があることにも注目すべきで
ある。ゲル化プロセスは非常に複雑でありゲル化プロセ
スが異なれば、得られるゲルは異なるが、本発明者ら
は、この新しいゲルが食品産業において極めて有用であ
ることを見い出している。
【0026】本発明において、WP含有溶液に含有され
るWPとしては、通常入手しうるいかなるものも用いる
ことができる。例えば、バター、チーズ等、乳製品製造
過程で分離されるホエーを限外ろ過で蛋白質を濃縮して
用いることもできる。好ましいWPとしてはホエー蛋白
質濃縮物(WPC)やホエー蛋白質分離物(WPI)等
を挙げることができる。これらは灰分含量が比較的少な
く、かつ弾力あるゲルを形成しやすいためである。通常
ホエー蛋白濃縮物は蛋白質含量50%以上であり、以下
ホエー蛋白質(WP)量とは分析値上の含蛋白量をい
う。更に、WPより分離されるβ−ラクトグロブリンを
WPとして用いることもできる。
【0027】WPが加熱凝固しない濃度に希釈されたと
は、WP熱変性温度以上でも凝固を生じない濃度に調整
されたということであるが、ここで、凝固を促進する要
件としては、温度の他、pH、塩濃度、その他溶存物質等
があるので、WP濃度は一概に規定されない。但し本溶
液は1価又は2価塩類イオンの添加によりゲル化可能で
あるので、その限りにおいてWPを含有している必要が
ある。実用性を加味した好ましい態様においては、溶液
のホエー蛋白質濃度が0.5〜20%であり、灰分含量
1.0重量%以下、pH6.0〜9.0である。灰分が
1.0%を越える場合、加熱の際にWPがゲル化または
凝集沈澱してしまうため塩類イオンを添加しても滑らか
なゲルを形成することが出来ない。灰分を調整するに
は、必要により原料WPの灰分を調整しておくが、精製
されたWPでは通常1.4〜6%であり、溶液調製後は
灰分1%以下となるので特に調整は要さない。但し、W
Pを比較的高い濃度で用いる場合は、WPが変性しやす
くなるため、予め原料WPの灰分を低く調整しておく
か、又は溶液調製後、限外ろ過や電気透析等により脱塩
処理を施すとよい。灰分の中では、特にカルシウム、ナ
トリウム、カリウム、マグネシウム等、1価又は2価塩
類イオンとして存在しうるものは加熱処理中のゲル化に
影響を及ぼすため好ましくは、それら塩類イオン濃度を
低く調整しておくとよい。実用上は、カルシウム、ナト
リウム、カリウム、マグネシウムの合計含有量を500
mg/100g 以下にするとよい。又、この観点より、W
P含有溶液調製には脱イオン水を用いることが好まし
い。
【0028】WP濃度が0.5%未満の場合、塩類イオ
ンを添加した後もゲル化を生じにくい。好ましくは2.
0%以上である。一方、20%を越えると、加熱中に増
粘しゲル化を起すことがある。好ましくは15%以下で
ある。但し、該濃度を越えても灰分が極めて低いレベル
であればゲル化は生じないので、問題はない。灰分を大
幅に低減させることは可能であるが、そのレベルまでW
P濃度を上げる意味は産業上はあまりなく、又脱塩操作
も高度化するので、実用上は前記範囲が好ましい。pH
6.0未満の場合、加熱の際に蛋白質が凝集沈澱してし
まうため滑らかなゲルを形成することが出来ず、pH9.
0を越えれば、加熱により有害物質であるリジノアラニ
ンの生成がおこり、又風味が好ましくないなどの理由で
食用には適さないものになる。加熱処理後、塩を添加す
る際のpHは低ければ低いほど同一塩添加量の場合でも速
く凝固する傾向がある。
【0029】一方、WP含有溶液に直接、塩類イオンを
作用させない態様も本発明では採用できる。具体的に
は、WP含有溶液を乾燥し一旦粉末化し、これを用いて
溶液を調製し、この溶液を前記WP含有溶液と同様に扱
うというものであるが、この態様は、インスタント食品
に極めて有用である。従って、本態様においてはゲル化
物となる時点でのWP濃度が前記0.5〜20%程度で
あればよく、粉末化前のWP含有溶液中のWP濃度は前
記濃度範囲である必要はない。ゲル化物調製時に結果的
にWP濃度の調整が可能だからである。
【0030】この場合のWP含有溶液中のWP濃度は好
ましくは0.5〜10%程度である。0.5%未満では
溶液乾燥が非効率的となり、10%を越えれば、乾燥処
理中にかかる熱によりWPが不溶化する可能性がある。
乾燥処理中の加熱は、単なる溶液の加熱と異なり、加熱
中、固形分、即ちWP濃度は一定でなく、連続的に増大
しつづけることになるため、結果的にWPは熱変性を受
け易くなる。ところが、本発明のWP含有溶液では公知
技術に基づく乾燥手段を採用し、粉末化しても、WP濃
度が前記の範囲内であれば、不溶化を起しにくい。
【0031】従って、WP含有溶液からゲル化物を形成
する態様に応じてWP含有溶液中のWP濃度を決定すれ
ばよい。乾燥粉末化等を実施する態様を考慮し、WP含
有溶液中のWP濃度は0.5〜20%が好ましい範囲と
なる。
【0032】又、WP含有溶液とは通常、水系の液状態
を呈することをいうが、広義に流動性を有する液状態を
も包含する。従って、WP含有溶液は、ゲル化主要成分
としてWPを含有しているが、この他、ゲル化補助材と
してゼラチン等、呈味成分として糖類、アミノ酸等、又
着香料、着色材その他ゲル化に本質的影響を及ぼさない
範囲内で副材料を必要に応じ含有することができる。
又、粉末化する場合には、安定材あるいは賦形材として
糖類、デキストリン等を含有させてもよい。又、該溶液
は溶液の状態を呈しているため、塩類イオンを添加する
前に、油脂等を添加し、乳化状態として用いることも可
能なことは言うまでもない。即ち、WP含有溶液は場合
により乳化状態等の形態をとることができ、流動性のあ
る均一液状態であれば、粘性等を問わず本発明のWP溶
液とすることができる。
【0033】本発明において、加熱処理とは、WPの熱
変性開始温度以上の温度にすることである。WP熱変性
開始温度は一義的に定まらずpH、WP濃度、塩濃度、圧
力等との関係で定まる一種の状態量である。一般には常
圧で65℃以上ということができる。従って、熱変性に
関連のない高圧変性等の単独処理は含まない。但し、熱
変性温度をある程度の圧力下で低下させる等圧力処理を
付随的に伴う処理は包含される。熱変性と高圧変性では
分子に生じる変形状態が異なると考えられる。又、本発
明において、1価又は2価塩類イオンの添加によっての
みゲル化可能とは、WP含有溶液にそれら塩類イオンを
添加するだけの操作で基本的にゲル化を生じうるという
ことであり、現実には添加後、静置状態でゲル化が進行
しゲルを形成しうる。
【0034】ここで、1価又は2価塩類イオンとは、そ
のカチオンがカルシウムイオン、ナトリウムイオン、マ
グネシウムイオン等の1価又は2価の金属イオンである
かあるいは、そのアニオンが、硫酸イオン、リン酸水素
イオン、クエン酸イオン等の1価又は2価の酸基である
ものをいう。具体的にはそれらの金属イオン及び/又は
酸基を含有しイオン化可能な塩類をWP含有溶液に添加
するのが簡便であり好ましい。これら塩類は、本発明が
主に食品に係るものであることから食品衛生上許容され
る塩類であるのが好ましく、例えば用いうる塩類とし
て、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウ
ム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウ
ム、硫酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ジリン酸ナ
トリウム、モノリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム
などが挙げられ、これらの塩類は互いに複数組み合わせ
て使用することもできる。又、食品の呈味成分として用
いられる塩類を用いれば特にゲル化のために別途塩類を
用意することなく、通常用いられる範囲で、塩類をゲル
化の段階で添加し、後工程で総塩類を調整することもで
きる。この代表的塩類としては塩化ナトリウム、塩化カ
リウム等である。又、1価又は2価金属イオン以外でも
アルミニウムイオンを場合により用いることもできる。
【0035】前記WP含有溶液(WP含有溶液を一旦粉
末化し、再度溶液としたものを含む。)がゲル化を起す
べく塩類イオン濃度はWP濃度、WP分子の変性状態、
温度、pH、更にゲル化物の目的、用途等により異なり一
概に規定できないが、通常0.02M以上であるとよ
い。従って、WP含有溶液中にすでに存在する塩類イオ
ン量を勘案し、前記濃度となるように塩類イオンの添加
量を調整すればよい。これより少ないとゲル化は起こり
にくくなる。また上限は通常の使用範囲においては特に
問題とならないが、濃度が高ければ添加する時点で、た
だちに増粘しゲル化を起すため、取り扱いが困難となる
か、あるいは蛋白が凝集して水相と分解し保水性のある
ゲルを形成しにくくなると同時に、塩味が強くなるため
一般食品への応用が大幅に制限されてしまう。通常の範
囲としては0.02〜2.0M、好ましくは0.05〜
2.0M、更には0.1〜1.0M程度がよく、優れた
ゲルを形成することができる。便宜上は食塩を用いた場
合で0.1〜8%濃度程度である。
【0036】但し、WP含有溶液の粉末化物を用いた場
合は、再度溶液を調製する際に塩類イオンを同時に添加
する等により、その後は特別な処理を必要とせず、ゲル
化が進行するので、塩類イオン濃度が比較的大きくとも
前述した弊害は少ない。
【0037】ゲル性状は用いる塩類イオンの種類、及び
濃度により影響を受けるため、塩類イオンの選択にあた
ってはその影響を考慮する必要がある。又所定の塩類イ
オンを生じる物であれば、塩類に限らず、食品素材を発
生源として用いることができ、更に塩類イオンの発生速
度もゲル化に影響するため、食品素材を用い徐々にイオ
ンを発生させゲル性状を調節する等も可能であるが、こ
れらについては後述する。
【0038】上記WP含有溶液は、WPが加熱凝固を起
さず、かつ、加熱処理後は1価又は2価塩類イオンの添
加によりゲル化する濃度範囲でWPを含有する溶液を調
製し、溶液状態を保持しつつこれをWP熱変性開始温度
以上の温度で加熱処理することにより製造することがで
きる。
【0039】WP濃度等は前述したとおりである。加熱
処理温度も前述した通りであるが、本発明においては、
加熱処理中WP含有溶液は溶液状態を保持しゲル化しな
いため従来のように静置状態を保って加熱する必要がま
ったくない。従って、攪拌加熱等、熱効率のよい加熱手
段を自由に採用することができ、ゲルの工業的生産化を
可能とする。加熱手段に制限はないが、具体的にはフォ
ードラタンク等を例示できる。
【0040】加熱処理温度は前述したように、65℃以
上であるが、温度は高い方がWP分子の変形が促進され
るため通常70℃以上、好ましくは更に高い温度であ
り、80℃以上であるとよい。特に、WP濃度が比較的
小さい場合は、WP分子のより大きな変形が必要とな
る。又、加熱処理の圧力は常圧でよいが、場合により圧
力をかけ熱変性温度を低下させる程度の処理を実施して
もよい。実用上加えうる圧力範囲は1〜1.2atm 程度
の範囲である。
【0041】加熱処理時間は、温度に比べ影響は小さい
が、短かければ充分変性を及ぼすことができない。長け
れば変性が過剰に進行しうるが、その影響はそれほど大
きくない。当然加熱温度により適正時間は異なり、高い
温度ほど短時間で効果を奏する。実用的処理時間として
は所定の温度に達して後、2秒〜60分間程度でよい。
【0042】加熱処理後のWP含有溶液(加熱変性溶
液)を用いて最終的にWPゲル化物(塩類イオン誘導ゲ
ル)を形成する態様には大きく2つある。第1に、WP
含有溶液に塩類イオンを作用させてゲルを形成する態様
(態様S)、第2に、WP含有溶液を一旦粉末化し、こ
れに塩類イオンのソースを混合し(又は混合しない
で)、粉末状の混合物を調製しておき、これに液状物質
(又は塩類イオン含有液状物質)を添加するあるいは同
様の液状物質中へ該混合物を添加することによりゲルを
形成する態様(態様P)である。WP含有溶液の粉末化
物は、これに脱イオン水等を加えればもとのWP含有溶
液にもどる。従って再溶解溶液も前記態様Sとして利用
できる。WP含有溶液の利用態様の一例を図8に示す
(以上、利用態様の記号は図8中の記号と対応す
る。)。このように広範な展開が可能で食品産業上の有
用性は極めて高く、特に低カロリー食品、インスタント
フード、品質改良剤等の分野で有用である。
【0043】まず、態様Sには溶液に塩類イオンを添加
しゲル化を起させるもの(S−1)がある。S−1では
静置状態でゲルを形成すれば、そのまま例えばデザート
ゼリーやオードブルゼリーとなる(S−1−1)。ゲル
を形成後これを破砕すれば、例えば脂肪粒の代替物とし
て用いることができ(S−1−2)、あらびきソーセー
ジやサラミ等蓄肉、魚肉加工食品類に適用すれば低カロ
リー化を図ることができる。
【0044】次に、態様Sの溶液に脂肪、塩類イオン等
を添加して乳化混合し、W/O型又はO/W型の乳化組
織を調製し、これを静置状態に置けばゲル化するので、
水分量が比較的多くても乳化状態が高度に安定した乳化
物を得ることができる(S−2)。水分量が多くても乳
化状態が安定していることから低脂肪製品を製造でき
る。例えば、低脂肪バター、低脂肪チーズ、低脂肪アイ
スクリーム等である。
【0045】又、態様Sの溶液を塩類イオン含有原料中
に混入又は注入することによって該原料中でゲル化を起
すことができる(S−3)。例えば、生ハム、ソーセー
ジ、ミートローフなど蓄肉、魚肉加工食品類に適用し、
いずれも低脂肪でかつ、保形性のある良好な組織を形成
することができる。
【0046】以上説明した態様の他にも該溶液は食品用
の各種接着材、増量材、離水防止材、安定材等、食品用
添加物としても有効に利用することができる。この場合
は、塩類イオンの存在は、原料側でも溶液側でもどちら
でもよい。塩類イオンを添加後のゲル化はそれほど急激
ではなく、作業上の支障を招くことは少ないからであ
る。又、食品用添加物として用いる形態は、加熱変性溶
液ばかりでなく、その加熱変性溶液に塩類イオンを作用
させゲル状としたもの、またはスラリー状としたもので
もよい。加熱変性溶液は粉末化したものの再溶解物でも
又、凍結後解凍したものであってもよい。ここで特記す
べきことは、加熱変性溶液のゲル化の程度は段階的に調
整できるということで、例えば増量材、安定材等として
溶液を用いる場合、まず、事前に低濃度の塩類イオンを
作用させある程度ゲル化させておき、これを食品原料と
混合し、成型後に食品原料中や別途添加により組織中に
存在する塩類イオンによってゲル化を更に進行させ、増
量材や安定材として機能を充分に発揮させることができ
る。特に練り製品等において、ある程度ゲル化しスラリ
ー状としたものを増量材等に用いると、溶液状のものを
用いるよりも製品のゲル強度が高くなる傾向がある。
【0047】次に態様Pでは、粉末を用いてゲルを形成
するものであるから、ハンドリング、保管、運搬等に都
合がよく、ゲル化の時期に合せて粉末から溶液を調整で
きるため大変便利である。調整した溶液は前記態様Sと
同様に利用できる。粉末に予め塩類イオン供給材料やそ
の他の原料を混合し、粉状混合物(又は顆粒)とすれば
例えばインスタントデザートやオードブルゼリーを構成
することができる(P−1)。即ち、混合物に牛乳や水
等を加えまぜればムースやミルクゼリー等をつくること
ができる。又、牛乳等が含有する金属イオンを利用すれ
ば、混合物中に塩類イオン供給材料を添加しないか、少
量の添加でよい(P−2)。
【0048】いずれの態様によるゲル化物も加熱処理を
要せず、かつ、冷凍耐性、加熱耐性に優れているため、
生製品、冷凍品、加熱調理品のいずれに対しても適用可
能である。このような性質は従来知られておらず、極め
て特異的である。
【0049】以下、それぞれの態様について説明する。
【0050】まず、WP含有溶液を用いてゲル化物(態
様S)を製造するには、前記WP含有溶液を凍結温度を
越える65℃までの温度に調整し、これに1価又は2価
塩類イオンを添加し凍結温度を越える65℃までの温度
範囲で静置状態を保持しゲル化させればよい。
【0051】添加する塩類イオンは前述した通りであ
る。但し、ゲル化速度はイオンの種類に影響を受けるた
め、その点を考慮する。たとえばナトリウムイオン、カ
リウムイオンは、食塩、塩化カリウムなどの解離度の高
い形でホエー蛋白質の溶液に加えても、比較的ゆっくり
とゲル化が起きる。一方、カルシウムイオンは、蛋白質
の会合をはやめ、凝集のような状態をつくりやすいの
で、難溶性のカルシウム塩の分散液をホエー蛋白質溶液
と混合するか、あるいは、粉乳中のカルシウムのように
一部牛乳中の蛋白質と結合した形でホエー蛋白質の溶液
に添加するなどして徐々にホエー蛋白質とカルシウムイ
オンを反応させることが望ましい。このように徐々にゲ
ルを形成するとゲル組織が緻密になるため、ゲルの強
度、弾性、離水、さらに透明性の改善を図ることができ
る。
【0052】この他、塩類イオンの溶液中への供給速度
を調節するという観点から、又、ゲル自体の食品として
の価値を高めるという観点から各種塩類を含む食品素
材、たとえば全粉乳、脱脂粉乳、チーズ、濃縮乳、香辛
料、スリミなど塩類の含量が比較的高く、それを添加す
ることによって0.02M以上の塩類イオンを最終的に
供給できるものであれば、一定のWP濃度を保持する限
り制限なく用いることができる。ここで一定のWP濃度
とは、前記WP含有溶液での好ましい範囲0.5%以上
と同じであるが、上限はない。従って塩を溶解したもの
をWP含有溶液に加える等、トータルボリュームに実質
的に影響を与える場合は、WP濃度が0.5%より下が
らないようWP含有溶液を予め調整しておくとよい。
【0053】塩類イオンのモル濃度は解離率とも関係が
あり、実用的な表示ではない場合もあるので、便宜上は
塩類0.1%以上と換算してもよい。好ましい範囲とし
ては溶液中の塩類濃度で0.1〜12%である。又、脱
脂粉乳等の溶解性の良い食品素材を塩類イオンのソース
とする場合は、その灰分量を一指標とするのが便利であ
る。経験則上、脱脂粉乳では、溶液中の脱脂粉乳由来の
灰分濃度の20〜55%が前述塩類として機能するとい
える。
【0054】又、イオンの種類はゲルの強度にも影響を
及ぼすので、この点も考慮する。即ち、2価塩類イオン
は一般に1価塩類イオンよりゲル化を促進させ、強度を
付与する。従って強度の強いゲルを形成したい場合は例
えばMgSO4,CaSO4 等を用いるとよい。又、同じNa,Kでも
Na2SO4,K2SO4を用いれば NaCl,KCl を用いるより同じモ
ル濃度の塩とした場合、イオン濃度は大きくなる(イオ
ン強度が増大する)のでゲルを硬くする傾向がある。
【0055】次に、塩類イオン濃度は、ゲルの物性に影
響を与え濃度が高い方が、ゲル強度、弾力性、離水率の
いずれにおいてもよい結果が得られる。この傾向は従来
ゲルと対照的である。一般の加熱による熱凝固ゲルでは
添加した塩濃度が高くなれば、蛋白質分子間の凝集化が
過剰に促進するため適当な網目構造が形成されない結
果、ゲル強度、弾力性、離水率のいずれも劣化する。即
ち、従来のものでは加熱中に分子間の凝集化と網目構造
化が同時に起るため、充分な網目構造の成長を分子の凝
集化が妨げている。本発明のWP含有溶液では、塩、即
ち塩類イオンの存在が有意に低いためWP分子間の凝集
が過剰に進行することなく、分子がある程度数珠状に連
結している状態であり、塩の添加により網目構造が徐々
に形成されていくのである。従って、網目構造のマトリ
ックスは大きく、強いものとなると予想され、これはゲ
ルの特性として観察することができる。又、従来の熱凝
固ゲルとの比較では、塩類イオン誘導ゲルは、透明性が
極めて良好であるのも特徴である。透明性はゲル化が徐
々に行われる条件下で、向上する。例えば塩類イオン濃
度を下げる、ゲル化の際の温度を下げる、又は塩類イオ
ンの供給速度を下げる等である。透明性はゲルを食品素
材として用いる場合、大きなメリットとなるため、この
点において、従来ゲルと著しく対照的である。
【0056】次に、塩類イオンを添加する時のWP含有
溶液の温度は、65℃以下であって凍結する温度より高
いことが望ましい。
【0057】塩類イオンを添加した後の静置温度は、6
5℃以下、好ましくは60℃以下であって凍結する温度
より高ければ、いずれの温度で放置してもゲル化する。
但し、この温度範囲では、温度が高いほどゲルの形成は
速く進む。
【0058】塩類イオンの添加温度、静置温度が65℃
以上になると、塩類存在下での加熱変性が起きるため、
白濁した離水の多いゲルが生じる。
【0059】加熱処理されたWP含有溶液は、凍結温度
を越える65℃以下の温度まで冷却されるが、冷却後は
いつでも塩類イオンの添加を実施できる。即ち、加熱に
よるWP変化は不可逆的であるため、一旦変化させてお
けば、直ちに塩類イオンを作用させなくともよい。従っ
て、加熱処理WP含有溶液の状態で保存することも可能
であり、場合により、凍結状態にして保存してもよく、
それらの形態で流通過程にのせることもできる。但し凍
結保存では凍結変性を受けることもあるのでWP以外の
成分を考慮し、変性を防ぐとよい。
【0060】加熱処理WP含有溶液に使用時期に応じ塩
類イオンを添加する。添加後、均一化させて後は基本的
に静置状態を保持する。ゲル化に要する時間は、温度に
依存し、高い程速く進行するので所望により調整しう
る。但し、ゲル化の進行が速いものでは、遅いものに比
べゲルの透明性に劣ったり、弾力、強度、離水等の物性
に影響を与えるので、その点も考慮する。通常、ゲル化
には1分〜24時間程度の時間を要する。又ゲルの性状
は経時的に変化し、ゲル化後も強度が増大する傾向があ
るが、1日〜7日後には安定する。
【0061】次に、WP含有溶液を一旦粉末化し、これ
を用いてゲル化物を形成する態様(態様P)について説
明する。
【0062】この粉末化したWPはWPが実質的に不溶
化していないので、これを用いて調製した溶液は、前述
WP含有溶液と同様に扱うことができる。即ち、WP温
度と塩類イオン濃度等の関係は前述したと同様の条件で
ゲル化物を形成することができる。但し、本態様におい
ては粉末化したことにより、新しい作用効果を伴う。ま
ず、粉末処理においては、粉末化過程で通常、加熱さ
れ、WP濃度が乾燥するにともない増大し、加熱の影響
を受け易くなっていることである。従って、WP含有溶
液中のWP濃度は前述したように好ましくは0.5〜1
0%程度である。
【0063】但し、過加熱を生じない粉末化処理によれ
ばWP濃度を特に調整することを要さない。例えば凍結
乾燥手段によれば、加熱の影響を最小限に抑えることが
できる。
【0064】粉末化手段についてはWPの過加熱(概ね
90℃以上の温度)を起さないものであれば制限なく採
用し得る。例えば噴霧乾燥手段、連続式真空乾燥手段、
凍結乾燥手段を挙げることができる。噴霧乾燥手段の場
合でも、粉末自体は、90℃前後に数秒間さらされる程
度におさえる。一方、ドラムドライヤー等の手段ではW
Pの過加熱を起こしWPの熱変性、不溶化を招き易い。
【0065】乾燥に際しては、WPの過剰な変性を防止
し、再溶解し易くするために糖類、デキストリン等を予
めWP含有溶液中に添加しておくとよい。これらの添加
量はWPの単位重量当り10〜60%程度が普通であ
る。得られる粉末(WP粉末という。)の形状は用途等
に応じて任意に設計できる。粒度についても特に制限な
く顆粒状としてもよい。溶解性の点からは顆粒状とした
ものがよい。顆粒化手段も流動層、ドラム等、公知技術
を採用することができる。
【0066】なお、前述したようにWP含有溶液には予
め、種々の添加物を含有させることができるので、粉末
化したWP粉末に所望の食味、香味、色調を付与するこ
とができ、実用価値を高揚させ得る。又、WP粉末にゲ
ル化の目的を達成し得る範囲内で別途、副原料を自由に
混入することができる。このように得られたWP粉末は
WP含有溶液と異なり簡便に流通過程にのせることがで
き、ハンドリングは極めて容易である。又、品質の径時
的変化も少なく長期間の保存も可能で、包装形態を適正
化すれば更に長期間の保存ができる。
【0067】次に、得られたWP粉末は、溶液中のWP
濃度が0.5〜20%となるように水系溶媒に溶解し、
塩類イオンを作用させれば簡単にゲル化する。ゲル化の
原理は前述態様Sで述べたものと同様である。但し、本
態様ではWP粉末の希釈度が小さく高温度となっても、
技術的な問題は生じないので、目的とするゲルに応じて
20%を越える濃度に調整しても支障はない。更に砂糖
等の他の原料が希釈溶液中に溶解しているとゲル化力が
弱くなるので、この場合はWP濃度を高めにするとよ
い。本態様には2通りあり、溶液を調製した後に塩類イ
オンを添加する態様と溶液調製と塩類イオンによるゲル
化を同時進行させる態様である。前者は、全く前述の態
様Sと同じに扱うことができ、静置すれば滑かで透明感
のあるゲルを形成し得る。
【0068】後者は、ゲル化の進行がはじめから起るよ
うに設計でき又、WPを高濃度化できるので、ユニーク
なゲル様物を形成し得るが、ゲル化の速度が速すぎれば
WP粉末の溶解が阻害されたりゲル化能を低減させるこ
とになるのでこの点を考慮する。
【0069】従って、好ましくはWP粉末を充分に溶解
させた後に塩類イオンを作用させるのがよいが、顆粒化
を適正化すれば、全成分を混合し、顆粒としてもよい。
【0070】WP粉末を水系溶媒に溶解し、これに加え
る塩類イオンとしては前述したものを用い得るが、顆粒
等が適正であれば、例えば水系溶媒として牛乳を用いれ
ばWP粉末に牛乳を加えることで、ゲル様物を調製でき
る(P−2)。又、脱脂粉乳もカルシウムイオン等を供
給できるので、WP粉末と脱脂粉乳を混合し組成物と
し、これに水を加えても同様のゲル様物を調製できる
(P−1)。
【0071】態様Pはインスタントデザートに好適であ
る。即ち、加熱や冷却をせずにゲル状のデザートを容易
に調整できる。
【0072】WP粉末を用いた塩類イオン含有の組成物
のデザート用配合例を以下に挙げる。
【0073】・WP粉末(WP含有量50〜100%、
水分3〜7%)20〜65重量部 ・脱脂粉乳(灰分7.9%、乳固形分87.3%、水分
3.8%)20〜55重量部 ・糖類15〜60重量部 ・香料、着色料 少々 上記で、脱脂粉乳の代りにあるいは一緒にクエン酸ナト
リウム、燐酸塩を用いてもよく、又糖類としてはシュク
ロースが代表的であるが、この他ブドウ糖、パラチノー
ス等を用いてもよい。この他のものも必要に応じて添加
してもよい。又、ゲル補助材として、ペクチン、カラギ
ーナン、グアガム、カゼイン等のゲル化材を併用しても
よい。但し、ゲル構造の主骨格はWPであることを要
す。
【0074】態様P−2においては金属イオン含有成分
をWP粉末と一緒に混合しないが、この場合も固形分重
量当りで換算し、同様の配合比で構成すればよい。尚、
脱脂粉乳中の灰分はカルシウム、ナトリウム、マグネシ
ウム等であるが、便宜上、前述したようにその灰分量の
20〜55%が塩類であるとみなして相当量を添加すれ
ばよいとする。
【0075】このように本発明においてはゲル化過程で
加熱処理が介在しない。この点においては、ゼラチンゲ
ル、寒天ゲルと共通するが、これらゲルと本質的に異な
るのは、ゲルが不可逆的なものであって、一旦ゲル化し
たものは加熱処理を施してもゲルは変化しない点であ
る。従って、一度ゲル化したものをさらに必要により加
熱し、たとえばハム、ソーセージ等の製造工程で、加熱
したWP含有溶液を注入し塩蔵した肉と混合し、まずW
Pの塩によるゲルを形成させた後、加熱処理し肉蛋白質
を凝固させるという態様をとることができ、この結果離
水が少なく歩留りが向上するという従来技術にないメリ
ットを産む。
【0076】次に、本発明のWPゲル化物を利用した加
工食品類について説明する。これら食品は前述態様S−
1〜P−2に該当するものである。
【0077】まず、態様S−2の一例としては、WP含
有溶液に、油脂を含有させ、1価又は2価塩類イオンを
添加することにより得られた、W/O又はO/W型の乳
化物から成る加工食品が挙げられる。WP含有溶液は液
状であるため各種副原料と混合することができ、塩類イ
オンの添加によりゲル組織を構築する。これは乳化状態
の系に対して用いた場合、特有の効果を奏することが判
明している。即ち、従来技術においては離水等の問題で
製造が困難であったものでも、本発明のWP含有溶液を
用いることにより、離水等を有効に防止することが可能
となる。本WP含有溶液は静置状態でゆるやかに高分子
化しゲル化するため他原料との親和性が高い状態で固化
するためである。又、該加工食品は容易に製造できるも
のであって、例えばWP含有溶液と油脂を混合、乳化
し、1価又は2価塩類イオンを添加しさらに攪拌乳化
後、冷蔵することにより前記W/O又はO/W型の乳化
系から成る加工食品を製造することができる。
【0078】具体的には低脂肪バター、低脂肪チーズ等
の製造が可能となる。
【0079】例えば、脂肪率40%程度の低脂肪バター
の製造において、従来、脂肪率を低下させると、W/O
型の乳化系での水の分散が困難となり、リーキーな組織
になるという未解決の課題が残されていた。この高水分
低脂肪バターの系に対し、単純に、カゼインやホエー蛋
白質の添加だけでは、水をバター組織に細かく分散させ
ることは困難であったが、本発明のWP含有溶液を添加
乳化し、さらに食塩水を加え、攪拌乳化をすることによ
り、ホエー蛋白質の増粘ゲル化に伴い、保水性が増し、
リーキーのない滑らかな組織を有する低脂肪バターを得
ることが可能となる。
【0080】次に、WPゲル化物を脂肪代替成分として
含有している低脂肪低カロリー加工食品が挙げられる。
例えば、第1に低脂肪生ハムや低脂肪しもふり肉等、又
第2に低脂肪ソーセージ等であり、前者では脂肪分の代
りにWPゲルが肉組織中に入り込んでおり一体となって
いるもの(態様S−1,S−3)で、後者では脂肪粒の
代りにWPゲル砕片(態様S−1−2)が含有されてい
る。
【0081】前者タイプの加工食品は、WP含有溶液を
主原料中に注入し、その後、加熱処理を介さず冷蔵する
ことにより主原料中にゲル化固定化させることにより各
種低脂肪低カロリー加工食品を製造することができる。
又、後者タイプの加工食品は、WPゲル化物を裁断し所
望の大きさにして後、主原料と混合することにより各種
低脂肪低カロリー加工食品を製造することができる。
【0082】例えば、生肉及び生ハム等に使用する原料
肉に対し、WP含有溶液を注入することにより、加熱す
ることなく冷蔵するだけで、注入液を肉内部にゲル化固
定化することができる。このゲル化固定化肉は低脂肪低
カロリーのしもふり肉となり、またゲル化固定化生ハム
の場合も低脂肪低カロリーの生ハムとなる。また脂肪を
含有したWP液を注入すれば脂肪の風味が付与されて通
常の霜降り肉に類似した製品になる。また、このゲル化
組成物をサイレントカッターにかけて砕片化した後、ソ
ーセージに入れるとあらびきタイプ低脂肪低カロリーの
ソーセージとなる。
【0083】WPゲル化物は透明性にも優れているた
め、例えば、寒天ゲルやゼラチンゲルの代りに用いるこ
とも可能である(S−1−1)。従来の熱凝固ゲルでは
白濁が強く透明性が必要なデザート類に用いることは困
難であったのに比べ、本発明のWPゲル化物は極めて広
範囲に、ほとんど制約なく用いることができる。
【0084】更に、本発明のWPゲル化物は冷凍食品用
のハンバーグ、ミートボール類の結着材、増量材、離水
防止材としても機能し、加熱することなく生の食品中で
もゲル化するので、食品の組織形成を容易に行い得る。
【0085】従って、本発明のWPゲル化物は冷蔵食品
又は冷凍食品にも好適であり、又特に加熱調理しない生
食品のまま供卓される加工食品類に好ましく適用できる
ものである。一方、WPゲル化物は加熱耐性があり、熱
収縮等もほとんど起らないため、加熱調理し供卓される
ものにも好適である。
【0086】態様S−1において、増量材として用いる
一例としては水産練り製品を挙げることができる。水産
練り製品の製造に際し、増量材としてWP溶液等を用い
るとホエー蛋白質を高率で添加しても品質を損なうこと
無く、さらに従来の水産練り製品よりは歯触りのよいテ
クスチャーを与える水産練り製品を容易に製造すること
ができる。例えば、5〜15%のWPを70〜100℃
程度の温度に0〜30分間加熱し、疎水性度を50(FI
/mg protein)以上に上昇させ、調製したWPの加熱変
性溶液を水産練り製品の製造工程中、例えばサイレント
カッターで粉砕したスリミ(無塩スリミ)に食塩を添
加、混練(塩ずり)したのちに澱粉、卵白、味醂、砂糖
などの副原料、および水を添加、さらに混練したのちに
添加し、ついで常法に従って85℃程度の温度で40分
間程度加熱して製品とする。この場合、WP溶液には特
に塩類イオンを添加せずとも、スリミに添加する食塩が
その作用をはたすため副原料混練時にWP溶液は塩類イ
オンの作用を受けゲル化を起す。
【0087】又、溶液ではなくゲル化物やスラリー物を
増量材として用いる場合は、事前に例えば0.1〜1.
5%の塩類(1価又は2価)を溶液を添加して所望の性
状にしておけばよくあるいは、加熱変性溶液を凍結し、
解凍したもの、または0.5〜3.0%のリン酸塩、お
よび1〜20%の油脂等を加え凍結し、解凍したものを
(ゲル状〜スラリー状)を水産練り製品の増量材として
用いることもできる。このようにゲル状やスラリー状の
ものを増量材等として用いると、混練時に原料中へ均一
に分散し、その後原料中に存在する塩類により更にゲル
化が進行するため増量材等として有効に機能する。溶液
状のものを用いると混練時に他の成分との混合、希釈化
が進行しすぎ、その後のゲル化が阻害される場合がある
が、低度のゲル状やスラリー状のものでは、ある程度の
構造性をすでに有しているため、他成分中へ混練されて
もその後のゲル化が円滑に行われ得る。ゲル化が過度に
進んだものでは混練中に構造が壊れ再編成されない場合
もある。
【0088】上記のようにして、WPの加熱変性溶液を
添加して製造し得られる水産練り製品は、弾力性および
ゲル強度(足)が良好であって、従来のようなWPの添
加による品質劣化が見られない。また、WP熱凝固ゲル
を用いた場合よりも工程が簡便で原料費も安価となる。
また、このWP加熱変性溶液を水産練り製品に対して7
0重量%程度までの高率で添加しても製品の弾力性、お
よびゲル強度を損なうことがない。即ち、アクトミオシ
ン等によるネットワーク構造の形成を何ら阻害すること
はない。したがって、本態様によると良質なタンパク源
であり、かつ、安価に入手しうるWPを単独の増量材と
して、水産練り製品にかなり高率で添加、良好なテクス
チャーを得ることが出来るので、水産練り製品の栄養価
を著しく高めるとともに、生産コストをを低減し、嗜好
性の向上を図ることができる利点がある。さらに、WP
の加熱変性溶液を添加したスリミ混合物をその加熱前に
5℃前後に一夜放置して、いわゆる「坐り」を起させた
のち、加熱して製品化することにより、弾力性、および
ゲル強度の著しく改良された水産練り製品を得ることも
できる。
【0089】
【実施例】以下実施例を示して本発明を具体的に説明す
る。
【0090】実施例1 塩類イオン誘導ゲルと加熱誘導ゲル(従来ゲル)が受け
る食塩添加量の影響をゲルのテクスチャー特性、保水
性、透明さ等について以下の要領に従い比較し、それぞ
れのゲルの特徴を明らかにした。
【0091】食塩添加量は混合後0〜0.5Mの範囲で
行った。食塩は完全溶解するのでこの場合のナトリウム
イオンのモル濃度は食塩モル濃度と同じと考えることが
できる。
【0092】塩類イオン誘導ゲルの調製 WPI(BIO-ISOLATES LTD.BIPRO、蛋白質97%乾物重
量当たり、灰分2%)100gを脱イオン水に溶解し、
1000g(WP濃度10%、灰分0.2%、pH7)とし
た。これを湯浴で攪拌しながら加熱し、液温が85℃に
なってから25分間保持した。これを20℃に冷却し、
各85gをビーカーにとり、所定の濃度の食塩水15g
を混合した。底面にラップフィルムを張った内径25m
m、高さ15mmのガラス管に、食塩水を混合したWP溶
液をすばやく充填し、ガラス板で蓋をして20℃で24
時間静置してゲルを形成した。
【0093】加熱誘導ゲルの調製 と同様のWPIを10%濃度に脱イオン水に溶解し、
各85gをビーカーにとり、所定濃度の食塩水15gを
混合した。と同様のガラス管にガラス板をひいて、食
塩水を混合したWP溶液を充填し、別のガラス板を管の
上にあて、上下のガラス板を糸でしばって固定した。こ
のガラス管を40℃のウォーターバス中にいれ、湯温を
20分間で85℃に昇温させて20分間保持した後、ウ
ォーターバスに徐々に水道水を注ぎいれ約20分間で4
0℃にした。ガラス管を湯中から取り出し、20℃で2
4時間静置した。静置後ゲルを測定した。
【0094】[テクスチャー特性の測定] 測定機器 :レオメーター(不動工業(株)) ク
リアランス :5mm プランジャー径:50mm 圧縮速度 :2cm/min. 圧縮回数 :2回 測定温度 :20℃ パラメター算出方法 ゲル強度:一回目圧縮時の最大荷重(g) 弾力性 :二回目圧縮時の応力を関知してからクリアラ
ンス5mmになるまでの距離(mm) [離水量の測定]濾紙(東洋濾紙No.2,5.5cm 直径)5
枚をひいたシャーレ中にゲルを置き、20℃で3時間放
置し、濾紙に吸収された水分量から離水量を算出した。
【0095】離水量(%) =(濾紙に吸収された水分重量
/ゲル重量)×100 テクスチャー特性、離水量の測定結果を図1に示した。
食塩添加0Mでは、両者ともゲルを形成しなかった。
【0096】塩類イオン誘導ゲルでは食塩濃度の増加に
伴ってゲル強度、弾力性が上昇した。
【0097】加熱前に食塩添加をした加熱誘導ゲルでは
弾力性は食塩強度によりあまり変化がなかったが、ゲル
強度は食塩の添加濃度の増加に伴って減少した。
【0098】離水量は、塩類イオン誘導ゲルでは食塩濃
度の影響を受けず低い値を示した。これに対して、加熱
誘導ゲルでは塩濃度が増すにつれ離水量が増加し、蛋白
質の保水性が減少することが示された。 即ち、加熱誘
導ゲルでは加熱処理中にWP分子間の凝集が進むため、
塩濃度が高くなると凝集が過剰となり、この結果、緻密
なマトリックスを形成できなくなるのに対し、塩類イオ
ン誘導ゲルでは加熱処理段階でWP分子間の凝集が起ら
ず、塩添加の段階ではすでに分子がほぐれ緻密なマトリ
ックスを形成する体勢にあるので、塩濃度が高くなれ
ば、より緻密なマトリックスが形成される。
【0099】それぞれのゲルを外観対比すると、塩類イ
オン誘導ゲルでは食塩濃度の増加に伴いやや透明性が低
下したが、いずれも透明なゲルを形成していた。加熱誘
導ゲルではいずれも完全に白濁した。
【0100】以上より、塩類イオン誘導ゲルは、加熱誘
導ゲルとは異なり、保水性等に優れ、透明〜半透明なゲ
ルを形成することが示された。
【0101】実施例2 塩類イオンの種類の影響を、KCl,NaCl,MgSO47H2O,CaSO4
2H2O,Na2SO4,K2SO4 を0.2M濃度に脱イオン水に溶解
あるいは分散した溶液を用いて確認した。完全溶解しな
いものもゲル化終了までには溶解するとみなし、塩のモ
ル濃度を各イオンのモル濃度とした。但し、0.2Mの
塩から0.4Mの塩類イオンを生じるものは塩濃度の2
倍のイオン濃度である。
【0102】実施例1と同様に加熱し20℃に冷却し
たWPI溶液を80gずつビーカーにとり、上記各塩類
の水溶液あるいは分散液20gを混合した(最終WP濃
度8%、塩濃度0.2M)。底面にラップフィルムを張
った内径25mm、高さ15mmのガラス管に、塩類を混合
したWP溶液をすばやく充填し、ガラス板で蓋をして2
0℃で24時間静置してゲルを形成した。
【0103】実施例1と同様にテクスチャー特性を測定
した。
【0104】テクスチャー特性の測定結果を図2に示し
た。実施した塩類すべてで良好なゲルが得られ、ゲル強
度については塩類の種類による差異が現れた。2価塩類
イオンでは1価塩類イオンよりゲル強度の強いゲルを形
成し、又硫酸塩では Cl 塩より強いゲル強度を示したこ
とからイオン濃度が高い方が強いゲルが形成されると考
えられた。
【0105】実施例3 食塩添加時のWPI溶液温度と、食塩添加後の保持温度
がゲルのテクスチャー特性に及ぼす影響を調べた。
【0106】実施例1と同様にWPI溶液を加熱し、各
95gをビーカーにとり、WPI溶液の液温が、それぞ
れ65,35,5℃になったとき食塩水5gを添加し
た。添加後の食塩濃度は、0.2Mに相当する。
【0107】実施例1と同様にWPI溶液を充填し5℃
あるいは20℃で静置してゲルを形成した。24時間後
にゲルのテクスチャー特性を測定した。20℃に静置し
たゲルは、48時間後にもテクスチャー特性を測定し
た。
【0108】図3にテクスチャーの測定結果を示す。
【0109】5℃で24時間静置したものでは、食塩混
合時のWPI溶液の温度が高い程ゲル強度が強くなっ
た。しかし20℃で24時間、48時間静置したものは
食塩混合時の温度差の影響が少なく、いずれの混合温度
でもゲル強度が良好であった。又、静置時間は長い方が
ゲル強度が大きかった。これらより、ゲルの形成は塩添
加時の温度及び静置温度が高い方が、速く進み、又ゲル
の強度は経時的に増大していくことが示された。
【0110】塩添加温度が比較的高いときは、静置温度
を特に調節しなくともその後、ゲル化が充分進行し得る
が、塩添加温度が低目のときは静置温度を高目にすると
ゲル化を促進できる。 実施例4 低脂肪バター様スプレット WPI(実施例1と同様)を6%濃度に水道水に溶解し
(WP濃度6%、灰分0.13%、pH6.9)、95℃
で25分間加熱した。このWPI溶液を2705g、6
0℃で溶融させたバターオイル1840gを混合しTK
ホモミキサー(TOKUSHU KIKA KOGYO 社)で3000rp
m,10分間乳化した後、5℃に冷却して一晩保持し
た。
【0111】この乳化物を、ピンシャフトマシン(Schr
oder Kombinator 社)で1000回転、11分間攪拌
し、油中水型のエマルジョンに転相したことを確認後、
食塩55g(製品に対し0.2M)を投入し、さらに3
分間攪拌した。攪拌終了後、200ml容のポリエチレン
製容器に充填し、5℃に冷却して、バター様の製品を得
た。
【0112】製品の評価は、5℃で2週間貯蔵した後に
行った。
【0113】評価結果を表1に示す。尚、比較例として
以下の要領で製品を製造しその結果を合せて表1に示
す。
【0114】比較例1 加熱処理したホエー蛋白質にかえ、同濃度の無処理ホエ
ー蛋白質溶液を用いて、実施例4と同様の方法でエマル
ジョンを製造した。製品の評価は、5℃で2週間貯蔵し
た後に行った。
【0115】比較例2 40%脂肪生クリーム4545gを上記実施例4と同様
にワーキングし、食塩55g を添加してエマルジョンを
製造した。製品の評価は、5℃で2週間貯蔵した後に行
った。
【0116】[離水試験]各サンプル10g を10cm径
のシャーレ上にとり、スパチュラで10回繰り返して展
延操作を行った後、肉眼で水滴の有無を確認した。
【0117】[熱溶融性試験]食パンを230℃、5分
間天火で焼成したのち、サンプル各10g を食パンのう
えに塗って試食し、溶け具合と口どけを評価した。
【0118】
【表1】 以上の結果より、実施例の製品が、水相部が60%とい
う高水分でありながら、水滴が油相中に安定に保持さ
れ、しかも熱溶融性も良好で口どけに影響していないこ
とが示された。
【0119】実施例5 霜降り状ローストビーフ WPC( EXPRESS FOOD社 TYPE 7502, 75%蛋白質,灰
分5%)168gを水に溶解し、1866gとし(WP
濃度9%、灰分0.27%、pH6.9)、87℃、25
分間攪拌加熱を行った。これに水を加え2000gとした。
精製牛脂800gを60℃に溶融し、上記WPC溶液に
加え、予備乳化後、高圧ホモゲナイザーで均質化後、冷
却プレートでただちに5℃に冷却した。
【0120】食塩28g、三りん酸ナトリウム2gを水
に溶解し、400gとし、牛モモ肉4000gにインジ
ェクションし、2〜3℃で4時間放置した。その後、上
記WPC乳化液を肉に800gインジェクションし、ガ
ス火で表面に焼き目をつけ、5℃に冷却し、一晩放置し
た。この場合のナトリウムイオン濃度は、用いた塩が完
全溶解し、肉中にインジェクトされた後もイオンとして
存在するものとみなし、又乳化液の比容積を1として約
0.4Mと計算された。加熱の際、肉内部の加熱による
変色を避けるため、内部が50℃以下に保つようにし
た。上記加工肉を3mm厚さにスライスしたが、インジェ
クションされたWPCエマルジョン液は肉内部で凝固し
て定着し、脂肪が適度に分散した霜降り状のローストビ
ーフとなっていた。
【0121】実施例6 ハム 実施例1と同様に加熱WPI含有溶液を調製し、2%の
食塩濃度に塩蔵した肉に対し、10%添加し、ケーシン
グに充填し、一晩5℃で静置した。この際のナトリウム
イオン濃度は概略0.3Mに相当する。ホエー蛋白質が
ゲル化してから常法により乾燥、燻煙をしてハムを製造
したところ、良好なハムが得られ、かつ、ゲルの熱安定
性が高いことから加熱後歩留りが、従来法に比べ20%
上昇した。
【0122】実施例7 デザート食品 実施例1と同様に調製した加熱WPI含有液82.4kg
を45℃の温度で、脱脂粉乳6.8kg 、グラニュー糖
10.6kg、アーモンドフレーバー0.1kg を混合
し、2時間静置してゲル状物を得た。この場合の塩類イ
オンは脱脂粉乳から供給されるがその濃度は0.5%と
概算した。これを約2cm3 のサイコロ型に裁断してシロ
ップ、シロップ漬け果肉と混合し、デザート食品をえ
た。ホエー蛋白質のゲルは滑らかで風味が良好であっ
た。
【0123】実施例8 WPI粉末 WPI(ホエー蛋白質単離物、BIO−ISOLATE
S LTD,BIPRO,乾燥物重量当り蛋白質97
%,灰分2%)を脱イオン水に溶解しその濃度を3,
7,11%とした溶液を調製した。それぞれの溶液を加
熱温度72℃及び82℃の温度条件で加熱処理し、得ら
れたWPI溶液を凍結乾燥に付しWPI粉末を得た。得
られたそれぞれのWPI粉末(20g)に脱イオン水1
80gを加え溶解し、これに脱脂粉乳(灰分7.9%)
(17g)を混合し、溶解後20℃で16時間静置し
た。
【0124】以上の操作において、WPI粉末の溶解性
及びゲル化能を目視で調べた結果を表2(溶解性)及び
表3(ゲル化能)に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】 表中○は良好、×は不良△はボーダーを示す。即ち、溶
液中のWPI濃度が11%だったものの粉末は溶解性が
充分でなく、加熱中に変性が生じたものと推定された
が、3%,7%のものは良好な溶解性を示した。又、W
PI濃度が7%のものは溶液の加熱処理の温度にかかわ
らず良好なゲルを形成したが3%のものでは、加熱処理
の温度が充分でないと良好なゲルは形成されなかった。
これは濃度が低いものではより充分なWP分子の変形が
必要であることを示している。
【0127】なお、ゲルはいずれも見掛け上均一な組織
であった。
【0128】図4に本実施例のフローを示す。
【0129】実施例9 WPI粉末含有混合物 実施例8と同じ要領でWPI溶液を調製した。WPI濃
度は5%、加熱処理条件は72℃、30分間(フォード
ラタンクで攪拌加熱)であった。WPI溶液20lが2
0℃まで冷却されたところで、デキストリン(日本食糧
工業(株)、NSD230)1Kgを加え溶解し、これを
噴霧乾燥装置(ニロアトマイザー−プロダクションマイ
ナー型、ニロ社)を用いて粉末化した。
【0130】得られた粉末2Kg(WPI50%)にグラ
ニュー糖3.5Kg,フレーバー10gを加え混合物を得
た。
【0131】この混合物をWPI濃度10%となるよう
に脱イオン水に溶解し、溶解性を目視で調べた。その後
更に脱脂粉乳(灰分7.9%)を濃度10%となるよう
に加え、20℃で6時間静置しゲル化能を目視で調べ
た。その結果WPI粉末含有混合物は溶解性に優れ、か
つ脱脂粉乳の添加で良ゲルが得られた。
【0132】図5に本実施例の手順のフローを示す。
【0133】実施例10 水産練り製品 次の要領でWP加熱変性溶液等を調製し、これらを用い
て水産練り製品を製造した。
【0134】WP加熱変性溶液の調製:ホエー蛋白質濃
縮物WPC(蛋白質75%,サンラクトN−12(商品
名),太陽化学)の蛋白質量6.5%に調整した溶液
(WPC8.7%)((b)と称す)を80℃20分間
加熱し、疎水性度140(FI/mg protein)のWPC加
熱変性溶液を得た((C)と称す)。また、前記のWP
C加熱変性溶液を熱風噴霧乾燥機により粉末化したもの
を得た。同様にしてWPI溶液(蛋白質95%,サンラ
クトI−1(商品名),太陽化学)((e)と称す)を
用いてWPI加熱変性溶液(WPI6.9%)を得た
((f)と称す)。WP加熱変性スラリー、ゲル化物の
調製:WPC加熱変性溶液(c)、あるいはそれを粉末
化し蛋白質として6.5%を水に溶解したものに、食塩
1.5%を添加、30℃、4時間静置し、WPC加熱変
性スラリーとした((d)と称す)。一方、WPI加熱
変性溶液(f)を用いて同様にしてゲル化させ、粉砕し
たものを得た((g)と称す)。
【0135】水産練り製品の製造:特級スリミ(無塩)
700gをサイレントカッターで5分間粉砕したのち、
食塩を21g添加して5分間攪拌したものに、上記溶液
等((b),(c),(d),(e),(f),
(g))を210g、水210gおよび副原料としての
澱粉35g、卵白35g、味醂7.5g、砂糖7.5
g、を添加し、6分間攪拌して混合した。
【0136】ついで、得られた混合物、約160gをケ
ーシングに詰め、5℃に一晩静置した(坐りの工程)
後、85℃で40分加熱して製品とした。その結果
(c),(d),(f),(g)を用いて得られた水産
練り製品の弾力性、ゲル強度(足)は良好であり、食
感、風味等嗜好性が高いものであった。得られた製品の
ゲル強度と官能評価の結果を図6及び図7に示す。図6
のゲル強度は5個のサンプルの平均値±標準偏差(危険
率5%)を示す。図7の官能評価は5名の専門パネラー
による評価結果の平均値を示したもので、7点を基準点
(標準的品質)とする10点法で示してある。
【0137】なお、WPCよりWPIを用いた方が全体
的に優れていたがこれはWPIではホエー蛋白質の純度
が高いためと考えられる。図7の官能評価は次の要領で
実施したものである。
【0138】実施例11 水産練り製品 実施例10で調製したWPの加熱変性溶液(c),
(f)、あるいはそれを粉末化し蛋白質として6.5%
を水に溶解したものに、食塩1.5%または燐酸塩(和
光純薬工業)2.0%を添加、30℃、4時間静置し、
得られたWP加熱変性スラリーを凍結し、解凍して得ら
れるゲル化物(スラリーは凍結、解凍によりゲル化す
る)を実施例10の工程により、製品とした。得られた
水産練り製品の弾力性、ゲル強度(足)は実施例10の
(d),(g)と同様良好なものであった。
【0139】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
WPを用いたゲル形成において、加熱誘導ではなく塩類
イオンの誘導によりゲル化させることができる。又、得
られるWPゲル化物のゲル組織は不可逆的であり、耐熱
性、耐寒性があり、かつ透明性、保水性等に優れた特性
を有する。従って本発明のWPゲル化物は広い範囲にわ
たって各種食品素材として用いることができ、従来にな
い新規な食品類の製造も可能となる。更に、WP含有溶
液は、塩類の添加のみでゲル化を起す特有の性質がある
ため、液状態で自由に他の食品材と一緒に用いることが
でき静置後ゲル化固定化することにより、WPにより一
体化された新しい食品を提供することが可能となる。
又、WP含有溶液を粉末化すれば実用価値を高めること
ができ、インスタントデザート等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1において形成した塩類イオン
誘導ゲルと加熱誘導ゲルの食塩添加量の影響を示した図
であり、(a) はゲル強度、(b) は弾力性、(c) は離水率
との関係を示す。
【図2】実施例2で形成した塩類イオン誘導ゲルの塩類
による影響を示した図であり、(a) はゲル強度との関
係、(b) はゲル弾力性との関係を示す。
【図3】実施例3で形成した塩類イオン誘導ゲルの食塩
添加温度及び静置温度との関係を示す図である。
【図4】実施例8で行った手順の概略フローを示す。
【図5】実施例9で行った手順の概略フローを示す。
【図6】実施例10において得られた水産練り製品のゲ
ル強度を示す。
【図7】実施例10において得られた水産練り製品の官
能評価の結果を示す。
【図8】本発明のWP溶液の利用態様の一例を示すチャ
ートを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A23J 3/00 511 7236−4B A23L 1/0562 1/318 8931−4B 1/325 101 D 7236−4B

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホエー蛋白質が加熱凝固しない濃度に希
    釈された溶液を加熱処理してなるホエー蛋白質含有溶液
    であって、1価又は2価塩類のイオンの添加によりゲル
    化可能な前記ホエー蛋白質含有溶液。
  2. 【請求項2】 ホエー蛋白質含有溶液中のホエー蛋白質
    が、疎水性度50(FI/mg protein)以上である請求項
    1に記載のホエー蛋白質含有溶液。
  3. 【請求項3】 溶液のホエー蛋白質濃度が0.5〜20
    %であり、灰分含量1.0重量%以下、pH 6.0〜
    9.0である請求項1に記載のホエー蛋白質含有溶液。
  4. 【請求項4】 ホエー蛋白質濃度が0.5〜10%に調
    整された請求項2に記載のホエー蛋白質含有溶液を乾燥
    処理して得られるホエー蛋白質含有粉末。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載のホエー蛋白質含有溶液
    に1価又は2価塩類のイオンを添加することにより得ら
    れるホエー蛋白質ゲル化物。
  6. 【請求項6】 請求項3に記載のホエー蛋白質含有粉末
    を再溶解し、1価又は2価塩類のイオンを添加すること
    により得られるホエー蛋白質ゲル化物。
  7. 【請求項7】 1価又は2価塩類のイオンの濃度が0.
    02M以上である請求項5または6に記載のホエー蛋白
    質ゲル化物。
  8. 【請求項8】 請求項5または6に記載のホエー蛋白質
    ゲル化物を脂肪代替物、結着材、増量材、離水防止材の
    いづれかとして含有している加工食品。
  9. 【請求項9】 請求項4に記載のホエー蛋白質含有粉末
    20〜65重量%、脱脂粉乳20〜55重量%、糖類1
    5〜60重量%を少なくとも含有してなるホエー蛋白質
    含有粉末組成物。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載のホエー蛋白質含有溶
    液及び油脂を少なくとも乳化混合し、1価又は2価塩類
    のイオンの添加により得られた、W/O又はO/W型の
    乳化物からなる加工食品。
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