JPH0565244A - 蟻酸アリールと芳香族カルボン酸の同時製造法 - Google Patents

蟻酸アリールと芳香族カルボン酸の同時製造法

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JPH0565244A
JPH0565244A JP3181982A JP18198291A JPH0565244A JP H0565244 A JPH0565244 A JP H0565244A JP 3181982 A JP3181982 A JP 3181982A JP 18198291 A JP18198291 A JP 18198291A JP H0565244 A JPH0565244 A JP H0565244A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】芳香族アルデヒドから蟻酸アリールおよび芳香
族カルボン酸を効率良く製造する。 【構成】揮発性溶媒の存在下芳香族アルデヒドを酸素含
有ガスにより反応率40〜70% に酸化して芳香族過酸とし
た後、安定化剤を加え、揮発性溶媒を留去させながら芳
香族アルデヒドと芳香族過酸を反応させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は芳香族アルデヒドから蟻
酸アリールと芳香族カルボン酸を製造する方法に関す
る。蟻酸アリールは酸化防止剤として有用なアルキルフ
ェノールの前駆体となり、また芳香族カルボン酸は塩化
ビニルの安定化剤として有用な物質である。
【0002】
【従来の技術】ケトンに過酸を作用させるとエステルが
生成することは周知であり、バイヤービリガー転位と称
されている。この反応において過酸化水素を用いること
もでき、特公昭44-10243号には砒素化合物の存在下に過
酸化水素を用いてバイヤービリガー転位を行いエステル
を製造する方法が記載されている。また過酸を製造する
方法としては米国特許第 992,017号にはアセトアルデヒ
ドを酸化して過酢酸とする方法が示されており、特公昭
55-27904号および特公昭55-46392号にはp-トルアルデヒ
ドを酸化して過パラトルアルデヒドを製造する方法が記
載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】バイヤービリガー転位
により芳香族アルデヒドと過酸を反応させれば、蟻酸ア
リールが得られるが、過酸および過酸化水素は比較的高
価であり、かつ取扱も危険である。芳香族過酸は過酸化
水素や過蟻酸や過酢酸と比べて危険性が低いので、芳香
族アルデヒドを芳香族過酸とし、芳香族アルデヒドとの
バイヤービリガー転位により蟻酸アリールと芳香族カル
ボン酸を製造する方法が考えられる。しかしながらこの
場合には次のような課題があるので、蟻酸アリールと芳
香族カルボン酸を効率良く製造することが困難である。 未反応の芳香族アルデヒドと対応する蟻酸アリールの
沸点差が小さいので、未反応の芳香族アルデヒドをでき
るだけ少なくすることが好ましい。 未反応の芳香族アルデヒドを減らすために、まず芳香
族アルデヒドを全量酸化して芳香族過酸とし、この芳香
族過酸と芳香族アルデヒドを反応させて蟻酸アリールと
芳香族カルボン酸を製造することが考えられる。この場
合には未反応の芳香族アルデヒドが減少するが、芳香族
カルボン酸の選択率が高くなり、蟻酸アリールの選択率
が著しく低下する。 溶媒を用いた芳香族アルデヒドと芳香族過酸の反応
は、反応速度が遅く、大きな反応器が必要である。
【0004】
【課題を解決するための手段】発明者等はこのような課
題を有する蟻酸アリールと芳香族カルボン酸の製造法に
ついて鋭意検討した結果、揮発性溶媒の存在下で芳香族
アルデヒドを一定範囲の反応率に酸化して芳香族過酸と
芳香族アルデヒドの溶液とした後、安定化剤を加え、揮
発性溶媒を留去させながら芳香族アルデヒドと芳香族過
酸を反応させることにより、蟻酸アリールと芳香族カル
ボン酸が同時に効率良く製造できることを見出し、本発
明に到達した。
【0005】すなわち本発明は、揮発性溶媒の存在下芳
香族アルデヒドを反応率40〜70% に酸素含有ガスで酸化
して芳香族過酸とした後、安定化剤を加え、揮発性溶媒
を留去させながら芳香族アルデヒドと芳香族過酸を反応
させることを特徴とする蟻酸アリールと芳香族カルボン
酸の同時製造法である。
【0006】本発明の原料に用いられる芳香族アルデヒ
ドとしては、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ジメ
チルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、
エチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、
クミンアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ブチルベン
ズアルデヒド、フェノキシアルデヒド、ヒドロキシベン
ズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、トリ
メチルベンズアルデヒド等が挙げられる。特にトルベン
ズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、トリメチル
ベンズアルデヒドは工業的規模の生産が行われており、
本発明に好適に用いられる。
【0007】本発明における第一工程の芳香族過酸合成
では揮発性溶媒が用いられる。この溶媒はまた酸化反応
に不活性である必要もあり、アセトン、メチルエチルケ
トン等のケトン類および、酢酸エチル、安息香酸エチル
等のエステル類が挙げられるが、特にアセトンおよび酢
酸エチルが好適に用いられる。芳香族アルデヒド溶液中
の芳香族アルデヒドの濃度は10〜40wt% 程度である。
【0008】芳香族過酸合成反応は無触媒でも実施する
ことができるが、コバルト、マンガン、鉄、白金、パラ
ジウム、バナジウム、ルテニウム、ジルコニウム、アル
ミニウム、アンチモン、ベリリウム、銅などの金属触媒
を用いることが好ましく、特にコバルト触媒が好適に用
いられる。コバルト触媒の使用量は、反応液の全重量に
対して 0.1〜50ppm 、好ましくは 0.5〜10ppm である。
コバルト触媒量が 0.1ppm 未満の場合には反応速度が小
さく、また 50ppmを超える場合には芳香族過酸への選択
率が低下する。
【0009】芳香族過酸合成に際しての酸化剤には酸素
含有ガスが用いられる。酸素含有ガスは、純酸素、空
気、酸素濃度を高めた空気、酸素と不活性ガス (二酸化
炭素、窒素等) の混合ガスなどの形態で供給されが、一
般的には空気が用いられる。芳香族過酸合成の反応温度
は原料の芳香族アルデヒドの種類や触媒により異なる
が、一般に -20〜150 ℃、好ましくは30〜80℃の範囲で
ある。反応温度が低すぎる場合には反応温度が小さく、
また反応温度が高すぎる場合には芳香族過酸の選択率が
低下する。
【0010】芳香族過酸合成の反応圧力は一般的には大
気圧から 60kg/cm2 G であり、好ましくは 20 〜50 kg/
cm2 G である。反応圧力が高くなるにつれて反応速度が
増大し、芳香族過酸の収率が高くなる傾向があり、且つ
溶媒が系外に逸散するのを防止できるので、加圧下で芳
香族過酸合成を行うことが好ましい。 しかし 60kg/cm
2 G を超えた場合には加圧の効果が現れなくなるので、
上記範囲で行うのが一般的である。
【0011】本発明において芳香族過酸合成における芳
香族アルデヒドの反応率を40〜70%の範囲とする。芳香
族過酸合成において芳香族アルデヒドの反応率を100%近
くまで行い、新たに芳香族アルデヒドを加えてバイヤー
ビリガー反応を行うこともできるが、芳香族アルデヒド
の反応率を 70%より高めると芳香族過酸以外の芳香族カ
ルボン酸の副生が多くなり、結果的に芳香族アルデヒド
から蟻酸アリールへの選択率が低下する。逆に芳香族ア
ルデヒドの反応率を 40%より低くした場合には芳香族ア
ルデヒド基準の蟻酸アリールの選択率は高くなるが、芳
香族アルデヒドの未反応量が増加する。芳香族アルデヒ
ドと対応する蟻酸アリールとの沸点差は通常非常に小さ
いので、芳香族アルデヒドと蟻酸アリールの蒸留分離が
不充分となる。本発明では芳香族過酸合成における芳香
族アルデヒドの反応率を40〜70% の範囲とすることによ
り、芳香族アルデヒドから蟻酸アリールへの選択率が高
く、効率的に芳香族アルデヒドから蟻酸アリールへの反
応が行われると共に、芳香族アルデヒドと蟻酸アリール
の蒸留分離の問題が解決される。
【0012】芳香族過酸を合成した後、得られた芳香族
過酸の安定化を図るために直ちに安定剤を添加する。用
いられる安定化剤としては、ピロリン酸ソーダ、8-オキ
シキノリン、ジピコリン酸、EDTA-2Na、イソニコチン酸
等が挙げられるが、特にジピコリン酸が好適に用いられ
る。安定化剤の添加量は、芳香族過酸合成液に対して1
〜1000ppm の範囲である。
【0013】得られた芳香族過酸合成液には未反応の芳
香族アルデヒドと合成された芳香族過酸および揮発性溶
媒が含まれており、揮発性溶媒を留去しながら芳香族ア
ルデヒドと芳香族過酸によるバイヤービリガー反応が行
われ、蟻酸アリールと芳香族カルボン酸が生成する。反
応温度は原料の芳香族アルデヒドの種類や用いられる揮
発性溶媒により異なるが、一般に -20〜150 ℃であり、
好ましくは20〜100 ℃である。アルデヒドと過酸との反
応の圧力は揮発性溶媒が留去する圧力であれば特に制限
されないが、一般に絶対圧 200mmHg〜 0.5気圧の範囲で
行われる。
【0014】揮発性溶媒を留去しながらアルデヒドと過
酸との反応を行うことは反応速度および蟻酸アリールの
選択性を高める効果がある。反応雰囲気は窒素、酸素、
空気の何れの雰囲気でも良い。攪拌により芳香族過酸の
分解が生じ易く、蟻酸アリールの選択性を低下させるお
それがあるので、攪拌の無い状態でアルデヒドと過酸と
の反応を行うことが好ましい。反応液は揮発性溶媒を留
去した後、蒸留により芳香族カルボン酸と蟻酸アリール
が分離される。本発明の方法は、回分式、連続式のいず
れの方法によっても行うことができる。
【0015】
【実施例】次に実施例により本発明を更に具体的に説明
する。但し本願はこれらの実施例により制限されるもの
ではない。なお下記の実施例および比較例において、特
記しない限り「%」は「モル%」、「ppm」は「重量
%」である。また反応率および選択率は次の計算値によ
る数値である。 反応率=〔アルデヒド反応量(モル)〕/〔アルデヒド
供給量(モル)〕100 % 選択率=〔生成量(モル)〕/〔アルデヒド反応量(モ
ル)〕・100 %
【0016】実施例1 内容積 600ミリリットル、攪拌機および還流冷却器付の
SUS316製高圧反応器に、CoBr2 (6水塩) 0.97mg、アセト
ン 250g を仕込み、 N2 加圧下 25kg/cm2 G 、温度35℃
に保ち、2,4-ジメチルベンズアルデヒド 90g/H(0.672モ
ル/H) で供給開始後、空気を導入し、排出ガスの酸素濃
度10% として45分間2,4-ジメチルベンズアルデヒドの供
給を継続した。2,4-ジメチルベンズアルデヒドを供給停
止した後、落圧し、ジピコリン酸が 3900ppm含有するア
セトン溶液を 10g添加した。過酸合成液を組成分析した
結果、アルデヒド反応率 51%、過ジメチル安息香酸選択
率 92%、ジメチル安息香酸選択率4%、蟻酸キシレノール
選択率3%であった。得られた過酸合成液を70℃に保持し
た水浴に漬け、常圧下無攪拌の状態でアセトンを留去し
ながらアルデヒドと過酸の反応を 2時間継続した。液温
が約70℃になるまでアセトンの留出が続いた。得られた
反応液の組成分析の結果、アルデヒド反応率 88%、過ジ
メチル安息香酸選択率1%、ジメチル安息香酸選択率 56
%、蟻酸キシレノール選択率 42%であった。
【0017】実施例2〜3 実施例1と同じ条件で、2,4-ジメチルベンズアルデヒド
の代わりに、p-トルアルデヒドまたはトリメチルベンズ
アルデヒドを用いて反応を行った。得られた各工程のア
ルデヒド反応率および各選択率を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】実施例4 実施例1と同じ条件でアセトンの代わりに酢酸エチルを
溶媒に用いて反応を行った。過酸合成液時の反応成績
は、アルデヒド反応率 48%、過ジメチル安息香酸選択率
88%、ジメチル安息香酸選択率7%、蟻酸キシレノール選
択率4%であった。アルデヒドと過酸の反応の成績は、ア
ルデヒド反応率 85%、過ジメチル安息香酸選択率2%、ジ
メチル安息香酸選択率 55%、蟻酸キシレノール選択率 4
1%であった。
【0020】比較例1 実施例1と同じ条件で、芳香族過酸合成時のアルデヒド
反応率を高めるため、アルデヒドの供給を停止した後、
空気導入を1.25時間継続した。過酸合成液を組成分析し
た結果、アルデヒド反応率 89%、過ジメチル安息香酸選
択率 65%、ジメチル安息香酸選択率 28%、蟻酸キシレノ
ール選択率6%であった。実施例1と比較すると過ジメチ
ル安息香酸選択率が著しく低下している。
【0021】実施例5 実施例1と同じ条件で芳香族過酸を合成し、アルデヒド
と過酸の反応は50℃で反応を行い絶対圧 410mmHgの減圧
下でアセトンを留去させた以外は実施例1と同様とし
た。反応液の組成分析の結果、アルデヒド反応率 86%、
過ジメチル安息香酸選択率2%、ジメチル安息香酸選択率
57%、蟻酸キシレノール選択率 40%であった。
【0022】比較例2 実施例5と同じ条件でアルデヒドと過酸の反応は50℃
で、常圧下でアセトンの留去を行わずに実施した。得ら
れた反応液の組成分析の結果、アルデヒド反応率70%、
過ジメチル安息香酸選択率 29%、ジメチル安息香酸選択
率 43%、蟻酸キシレノール選択率 27%であった。実施例
5と比較するとアルデヒド反応率と蟻酸キシレノール選
択率が低いことから、アセトンの留去を行わない場合に
は反応速度が低く、また蟻酸キシレノール選択率が低下
することが分かる。
【0023】
【発明の効果】本発明の方法においては、芳香族過酸
を合成するに際し芳香族アルデヒドの反応率を特定の範
囲とすることにより、蟻酸アリールおよび芳香族カルボ
ン酸が高選択率で得られること、溶媒を留去しながら
アルデヒドと過酸の反応を行うことにより、高い反応器
の空時収率が得られる等の特性がある。また芳香族過
酸は比較的安定であり、安全に工業的製造ができるこ
と、芳香族アルデヒドの利用効率が高いこと等の特性
もあり、本発明の工業的意義が大きい。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年5月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は芳香族アルデヒドから蟻
酸アリールと芳香族カルボン酸を製造する方法に関す
る。蟻酸アリールは酸化防止剤として有用なアルキルフ
ェノールの前駆体となり、また芳香族カルボン酸は塩化
ビニルの安定化剤として有用な物質である。
【0002】
【従来の技術】ケトンに過酸を作用させるとエステルが
生成することは周知であり、バイヤービリガー転位と称
されている。この反応において過酸化水素を用いること
もでき、特公昭44-10243号には砒素化合物の存在下に過
酸化水素を用いてバイヤービリガー転位を行いエステル
を製造する方法が記載されている。また過酸を製造する
方法としては英国特許第 992,017号にはアセトアルデヒ
ドを酸化して過酢酸とする方法が示されており、特公昭
55-27904号および特公昭55-46392号にはp-トルアルデヒ
ドを酸化して過パラトルイル酸を製造する方法が記載さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】バイヤービリガー転位
により芳香族アルデヒドと過酸を反応させれば、蟻酸ア
リールが得られるが、過酸および過酸化水素は比較的高
価であり、かつ取扱も危険である。芳香族過酸は過酸化
水素や過蟻酸や過酢酸と比べて危険性が低いので、芳香
族アルデヒドを芳香族過酸とし、芳香族アルデヒドとの
バイヤービリガー転位により蟻酸アリールと芳香族カル
ボン酸を製造する方法が考えられる。しかしながらこの
場合には次のような課題があるので、蟻酸アリールと芳
香族カルボン酸を効率良く製造することが困難である。
【0004】未反応の芳香族アルデヒドと対応する蟻
酸アリールの沸点差が小さく蒸留による分離が困難なの
、未反応の芳香族アルデヒドをできるだけ少なくする
ことが好ましい。即ち未反応の芳香族アルデヒドを少な
くすることにより、芳香族アルデヒドと蟻酸アリールの
分離における還流量が著しく減少し、この分離工程にお
ける熱消費量を著しく削減できる。
【0005】未反応の芳香族アルデヒドを減らすため
に、まず芳香族アルデヒドを全量酸化して芳香族過酸と
し、この芳香族過酸と芳香族アルデヒドを反応させて蟻
酸アリールと芳香族カルボン酸を製造することが考えら
れる。この場合には未反応の芳香族アルデヒドが減少す
るが、芳香族カルボン酸の選択率が高くなり、蟻酸アリ
ールの選択率が著しく低下する。
【0006】芳香族アルデヒドから得られる芳香族過
酸および芳香族カルボン酸は結晶化するので、溶媒を用
いない場合には反応速度の制御が充分でないと結晶性の
芳香族過酸と芳香族カルボン酸が多量に生成して危険な
状態、或いは反応を阻害する物質が生成して反応が停止
する状態となる可能性がある。溶媒を用いることにより
結晶析出が抑制され、均一溶液の状態で酸化反応が行わ
れ、被酸化物が希釈されるので緩やかな反応となる。し
かしながら溶媒を用いた芳香族アルデヒドと芳香族過酸
の反応では反応速度が遅く、大きな反応器が必要であ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者等はこのような課
題を有する蟻酸アリールと芳香族カルボン酸の製造法に
ついて鋭意検討した結果、揮発性溶媒の存在下で芳香族
アルデヒドを一定範囲の反応率に酸化して芳香族過酸と
芳香族アルデヒドの溶液とした後、安定化剤を加え、揮
発性溶媒を留去させながら芳香族アルデヒドと芳香族過
酸を反応させることにより、蟻酸アリールと芳香族カル
ボン酸が同時に効率良く製造できることを見出し、本発
明に到達した。
【0008】すなわち本発明は、揮発性溶媒の存在下芳
香族アルデヒドを反応率40〜70% に酸素含有ガスで酸化
して芳香族過酸とした後、安定化剤を加え、揮発性溶媒
を留去させながら芳香族アルデヒドと芳香族過酸を反応
させることを特徴とする蟻酸アリールと芳香族カルボン
酸の同時製造法である。
【0009】本発明の原料に用いられる芳香族アルデヒ
ドとしては、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ジメ
チルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、
エチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、
クミンアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ブチルベン
ズアルデヒド、フェノキシベンズアルデヒド、ヒドロキ
シベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド
等が挙げられる。特にトルベンズアルデヒド、ジメチル
ベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒドは工業
的規模の生産が行われており、本発明に好適に用いられ
る。
【0010】本発明における第一工程の芳香族過酸合成
では揮発性溶媒が用いられる。この溶媒はまた酸化反応
に不活性である必要もあり、アセトン、メチルエチルケ
トン等のケトン類および、酢酸エチル、安息香酸エチル
等のエステル類が挙げられるが、特にアセトンおよび酢
酸エチルが好適に用いられる。芳香族アルデヒド溶液中
の芳香族アルデヒドの濃度は10〜40wt% 程度である。
【0011】芳香族過酸合成反応は無触媒でも実施する
ことができるが、コバルト、マンガン、鉄、白金、パラ
ジウム、バナジウム、ルテニウム、ジルコニウム、アル
ミニウム、アンチモン、ベリリウム、銅などの金属触媒
を用いることが好ましく、特にコバルト触媒が好適に用
いられる。コバルト触媒の使用量は反応液の全重量に対
して 0.1〜50ppm 、好ましくは 0.5〜10ppm である。コ
バルト触媒量が0.1ppm未満の場合には反応速度が小さ
く、また 50ppmを超える場合には芳香族過酸への選択率
が低下する。
【0012】芳香族過酸合成に際しての酸化剤には酸素
含有ガスが用いられる。酸素含有ガスは、純酸素、空
気、酸素濃度を高めた空気、酸素と不活性ガス (二酸化
炭素、窒素等) の混合ガスなどの形態で供給されが、一
般的には空気が用いられる。芳香族過酸合成の反応温度
は原料の芳香族アルデヒドの種類や触媒により異なる
が、一般に -20〜150 ℃、好ましくは30〜80℃の範囲で
ある。反応温度が低すぎる場合には反応速度が小さく、
また反応温度が高すぎる場合には芳香族過酸の選択率が
低下する。
【0013】芳香族過酸合成の反応圧力は一般的には大
気圧から 60kg/cm2 G であり、好ましくは 4〜50 kg/cm
2 G である。反応圧力が高くなるにつれて反応速度が増
大し、芳香族過酸の収率が高くなる傾向があり、且つ溶
媒が系外に逸散するのを防止できるので、加圧下で芳香
族過酸合成を行うことが好ましい。しかし 60kg/cm2 G
を超えた場合には加圧の効果が現れなくなるので、上記
範囲で行うのが一般的である。
【0014】本発明において芳香族過酸合成における芳
香族アルデヒドの反応率を40〜70%の範囲とする。芳香
族過酸合成において芳香族アルデヒドの反応率を100%近
くまで行い、新たに芳香族アルデヒドを加えてバイヤー
ビリガー反応を行うこともできるが、芳香族アルデヒド
の反応率を 70%より高めると芳香族過酸以外の芳香族カ
ルボン酸の副生が多くなり、結果的に芳香族アルデヒド
から蟻酸アリールへの選択率が低下する。逆に芳香族ア
ルデヒドの反応率を 40%より低くした場合には芳香族ア
ルデヒド基準の蟻酸アリールの選択率は高くなるが、芳
香族アルデヒドの未反応量が増加する。芳香族アルデヒ
ドと対応する蟻酸アリールとの沸点差は通常非常に小さ
いので、芳香族アルデヒドと蟻酸アリールの蒸留分離が
不充分となる。本発明では芳香族過酸合成における芳香
族アルデヒドの反応率を40〜70% の範囲とすることによ
り、芳香族アルデヒドから蟻酸アリールへの選択率が高
く、効率的に芳香族アルデヒドから蟻酸アリールへの反
応が行われると共に、芳香族アルデヒドと蟻酸アリール
の蒸留分離の問題が解決される。
【0015】芳香族過酸を合成した後、得られた芳香族
過酸の安定化を図るために直ちに安定剤を添加する。用
いられる安定化剤としては、ピロリン酸ソーダ、8-オキ
シキノリン、ジピコリン酸、EDTA-2Na、イソニコチン酸
等が挙げられるが、特にジピコリン酸が好適に用いられ
る。安定化剤の添加量は、芳香族過酸合成液に対して1
〜1000ppm の範囲である。
【0016】得られた芳香族過酸合成液には未反応の芳
香族アルデヒドと合成された芳香族過酸および揮発性溶
媒が含まれており、揮発性溶媒を留去しながら芳香族ア
ルデヒドと芳香族過酸によるバイヤービリガー反応が行
われ、蟻酸アリールと芳香族カルボン酸が生成する。反
応温度は原料の芳香族アルデヒドの種類や用いられる揮
発性溶媒により異なるが、一般に -20〜150 ℃であり、
好ましくは20〜100 ℃である。アルデヒドと過酸との反
応の圧力は揮発性溶媒が留去する圧力であれば特に制限
されないが、一般に絶対圧で 200〜1200mmHgの範囲で行
われる。
【0017】揮発性溶媒を留去しながらアルデヒドと過
酸との反応を行うことは反応速度および蟻酸アリールの
選択性を高める効果がある。反応雰囲気は窒素、酸素、
空気の何れの雰囲気でも良い。攪拌により芳香族過酸の
分解が生じ易く、蟻酸アリールの選択性を低下させるお
それがあるので、攪拌の無い状態でアルデヒドと過酸と
の反応を行うことが好ましい。反応液は揮発性溶媒を留
去した後、蒸留により芳香族カルボン酸と蟻酸アリール
が分離される。本発明の方法は、回分式、連続式のいず
れの方法によっても行うことができる。
【0018】
【実施例】次に実施例により本発明を更に具体的に説明
する。但し本願はこれらの実施例により制限されるもの
ではない。なお下記の実施例および比較例において、特
記しない限り「%」は「モル%」、「ppm」は重量比
である。また反応率および選択率は次の計算値による数
値である。 反応率=〔アルデヒド反応量(モル)〕/〔アルデヒド
供給量(モル)〕・100% 選択率=〔生成量(モル)〕/〔アルデヒド反応量(モ
ル)〕・100 %
【0019】実施例1 内容積 600ミリリットル、攪拌機および還流冷却器付の
SUS316製高圧反応器に、CoBr2 (6水塩) 0.97mg、アセト
ン 250g を仕込み、 N2 加圧下 25kg/cm2 G 、温度35℃
に保ち、2,4-ジメチルベンズアルデヒド 90g/H(0.672モ
ル/H) で供給開始後、空気を導入し、排出ガスの酸素濃
度10% として45分間2,4-ジメチルベンズアルデヒドの供
給を継続した。2,4-ジメチルベンズアルデヒドを供給停
止した後、落圧し、ジピコリン酸が 3900ppm含有するア
セトン溶液を 10g添加した。過酸合成液を組成分析した
結果、アルデヒド反応率 51%、過ジメチル安息香酸選択
率 92%、ジメチル安息香酸選択率4%、蟻酸キシレノール
選択率3%であった。得られた過酸合成液を70℃に保持し
た水浴に漬け、常圧下無攪拌の状態でアセトンを留去し
ながらアルデヒドと過酸の反応を 2時間継続した。液温
が約70℃になるまでアセトンの留出が続いた。得られた
反応液の組成分析の結果、アルデヒド反応率 88%、過ジ
メチル安息香酸選択率1%、ジメチル安息香酸選択率 56
%、蟻酸キシレノール選択率 42%であった。
【0020】実施例2〜3 実施例1と同じ条件で、2,4-ジメチルベンズアルデヒド
の代わりに、p-トルアルデヒドまたはトリメチルベンズ
アルデヒドを用いて反応を行った。得られた各工程のア
ルデヒド反応率および各選択率を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】実施例4 実施例1と同じ条件でアセトンの代わりに酢酸エチルを
溶媒に用いて反応を行った。過酸合成液時の反応成績
は、アルデヒド反応率 48%、過ジメチル安息香酸選択率
88%、ジメチル安息香酸選択率7%、蟻酸キシレノール選
択率4%であり、アルデヒドと過酸の反応の成績は、アル
デヒド反応率 85%、過ジメチル安息香酸選択率2%、ジメ
チル安息香酸選択率55%、蟻酸キシレノール選択率 41%
であった。
【0023】比較例1 実施例1と同じ条件で、芳香族過酸合成時のアルデヒド
反応率を高めるため、アルデヒドの供給を停止した後、
空気導入を1.25時間継続した。過酸合成液を組成分析し
た結果、アルデヒド反応率 89%、過ジメチル安息香酸選
択率 65%、ジメチル安息香酸選択率 28%、蟻酸キシレノ
ール選択率6%であった。実施例1と比較すると過ジメチ
ル安息香酸選択率が著しく低下している。
【0024】実施例5 実施例1と同じ条件で芳香族過酸を合成し、アルデヒド
と過酸の反応は50℃で反応を行い絶対圧 410mmHgの減圧
下でアセトンを留去させた以外は実施例1と同様とし
た。反応液の組成分析の結果、アルデヒド反応率 86%、
過ジメチル安息香酸選択率2%、ジメチル安息香酸選択率
57%、蟻酸キシレノール選択率 40%であった。
【0025】比較例2 実施例5と同じ条件でアルデヒドと過酸の反応は50℃
で、常圧下でアセトンの留去を行わずに実施した。得ら
れた反応液の組成分析の結果、アルデヒド反応率70%、
過ジメチル安息香酸選択率 29%、ジメチル安息香酸選択
率 43%、蟻酸キシレノール選択率 27%であった。実施例
5と比較するとアルデヒド反応率と蟻酸キシレノール選
択率が低いことから、アセトンの留去を行わない場合に
は反応速度が低く、また蟻酸キシレノール選択率が低下
することが分かる。
【0026】
【発明の効果】本発明の方法においては、芳香族過酸
を合成するに際し芳香族アルデヒドの反応率を特定の範
囲とすることにより、蟻酸アリールおよび芳香族カルボ
ン酸が高選択率で得られること、溶媒を留去しながら
アルデヒドと過酸の反応を行うことにより、高い反応器
の空時収率が得られる等の特性がある。また芳香族過
酸は比較的安定であり、安全に工業的製造ができるこ
と、芳香族アルデヒドの利用効率が高いこと等の特性
もあり、本発明の工業的意義が大きい。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】揮発性溶媒の存在下芳香族アルデヒドを反
    応率40〜70%に酸素含有ガスで酸化して芳香族過酸とし
    た後、安定化剤を加え、揮発性溶媒を留去させながら芳
    香族アルデヒドと芳香族過酸を反応させることを特徴と
    する蟻酸アリールと芳香族カルボン酸の同時製造法
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