JPH0686676A - ウイルスの複製を防止する方法 - Google Patents

ウイルスの複製を防止する方法

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JPH0686676A
JPH0686676A JP5045160A JP4516093A JPH0686676A JP H0686676 A JPH0686676 A JP H0686676A JP 5045160 A JP5045160 A JP 5045160A JP 4516093 A JP4516093 A JP 4516093A JP H0686676 A JPH0686676 A JP H0686676A
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dna
virus
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hbv
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Hubert E Blum
ハバート・イー・ブルム
Tsanyang Liang
ツァニヤング・リアング
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イーザン・ガラン
Jack R Wands
ジャック・アール・ワンズ
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 肝炎ウイルスゲノムのポリメラーゼ遺伝子領
域に相補的なアンチセンスRNAをコード化するDNA
を細胞中に導入することによってその細胞内での肝炎ウ
イルスの複製を阻害する方法、並びに該方法に利用され
る組換えDNA分子、ベクター及び形質転換細胞を提供
する。 【効果】 上記方法により、肝炎ウイルスに感染した細
胞中での肝炎ウイルスの複製が阻害されるので、本発明
は肝炎ウイルス感染症の治療に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はウイルス性疾患の予防お
よび治療に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】ウイルス感染の結果はウイル
スと宿主の両方のいくつかの因子に依存する。病理発生
に影響を及ぼすこれらの因子には感染性ウイルス粒子の
数、感受性細胞へのそれらの経路、ウイルスの増殖速度
および蔓延速度、細胞機能に対するそのウイルスの効
果、細胞損傷に対する宿主の二次的応答、およびその宿
主の免疫学的および非特異的防御が含まれる。一般にウ
イルス感染の効果には急性の臨床的疾患、無症候性感
染、様々な癌の誘発、および慢性の進行性神経系障害が
含まれる。1細胞で生産されたウイルス粒子は他の細胞
に侵入することができ、それによって蔓延する感染をも
たらすので、ウイルスは強力な感染性の病原物質であ
る。ウイルスは侵入した細胞に重要な機能的変化を引き
起こし、これがしばしばその細胞を死に至らしめる。
【0003】ウイルス感染は現在も世界中で主要な医学
的課題となっている。例えば急性および慢性の肝炎ウイ
ルス感染およびその続発症は主要な課題の一つである。
実際、世界中でおそらく4億人の人々が現在B型肝炎ウ
イルスに感染している。この設定下では、急性および劇
症肝炎、ならびにこのウイルスの慢性キャリアー(保有
者)のままである個体における硬変、慢性活動性肝炎お
よび肝細胞癌腫の最終的な発生を含む慢性肝臓疾患の危
険が高い。
【0004】ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の劇的な効
果はウイルス性疾患の結果のもう1つの例である。現在
米国ではAIDSの診断例が27700例以上あり、米
国公衆衛生局は1991年の終わりまでに179000
人以上がこの疾患に罹るであろうと予測している。した
がって、HIV用の診断手段やワクチンの開発を目指し
て活発な医学的研究が行われている。AIDSと肝炎は
ウイルス感染が引き起こす様々な疾患の2例に過ぎな
い。
【0005】現在、ウイルスの複製を停止させ他の細胞
へのウイルスの蔓延を防止するための方法が求められて
いる。しかしながら、この目的の達成にはかなりの困難
が伴う。主な課題の1つは宿主細胞を傷つけることなく
ウイルスを抑制するという課題である。ウイルス増殖の
細胞遺伝子に対する依存性が弁別的な攻撃点を制限して
いる。最も大きいウイルスでさえ、ウイルス自身が有す
る生化学的反応であって宿主の細胞との関連で独自性の
あるものはかなり少ない。さらに、ウイルス感染が明ら
かになるのは大量のウイルス増殖と細胞変化が起こった
後に限られる。したがってほとんどの一般的制御法は予
防である。治療はほとんどの場合、その損傷が後に修復
されるという条件下でいくらかの未感染細胞の殺傷が許
容され得る状況に限られる。
【0006】抗ウイルス療法のもう1つの重要な限界は
耐性突然変異体の出現である。それらの選択を避けるた
めには、細菌に関して有効な原理(妥当な投与量、複数
薬剤治療および明確に示されない限り治療を避けるこ
と)をウイルスにも同等に適用することができる。した
がって、ウイルス感染の危険な性質および感染性ウイル
スの性質が提供する障害ゆえに、ウイルスの複製を制御
する方法が差し迫って必要とされている。RNAウイル
スおよびDNAウイルスに適用可能な方法は広範囲にわ
たる適用可能性を有するであろう。
【0007】B型肝炎ウイルスの複製機序についての記
述は、Seegerら,Science 232:477-484(1986);Khudyako
vら,FEBS Letters 243:115-118(1989);Willら,J.of Vi
rol.61:904-911(1987);Hirschら,Nature 344:552-555(1
990)に認めることができる。また、レトロウイルスおよ
びレトロウイルス組込みについては、Varmus,H.,Scienc
e 240:1427-1435(1988);Grandgenettら,Cell 60:3-4(1
990)に議論されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】ウイルスのポリメラーゼ
遺伝子の特定の領域に少なくとも1つの突然変異を導入
することによって、ウイルスポリメラーゼを含有するウ
イルスの複製の完全かつ不可逆的な停止が達成される。
この突然変異型遺伝子または突然変異型遺伝子産物(D
NA、RNAまたはタンパク質)をそのウイルスに供給
することによって欠陥のある複製をもたらすことができ
る。この方法はウイルス性疾患の予防と治療に有効であ
る。本発明の方法によって、ポリメラーゼ遺伝子産物を
複製に利用するDNAウイルスおよびRNAウイルスを
共に抑制することができる。
【0009】添付の図面について説明する。図1Huh7肝癌細胞中で突然変異型HBVゲノム5
-15が効率的に転写される。 10%FBSを補足したMEM培地中でHuh7細胞(N
akabayashi,H.ら,Cancer Res.42:3858-3863(1982))を生
育させた。約90%全面成長に達した時に、リン酸カル
シウム法(Chen,C.ら,Mol Cell.Biol.7:2745-2752(198
7))を用いて、この細胞をクローン化DNA(20μg/
100mmディッシュ)でトランスフェクトした。使用し
たHBV DNAは不完全ゲノム1-8(陰性対照:表I
を参照のこと)、“野生型"adwの頭-尾型二量体および
突然変異型ウイルスゲノム5-15の頭-尾型二量体であ
る。トランスフェクションの48時間後、グアニジンイ
ソチオシアネート法(Sambrook,J.ら,Molecular clonin
g:A laboratory manual,第2版,Cold Spring Harbor,N
Y,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))を用い
て全RNAを細胞から調製し、ホルムアルドヒド1.2
5%アガロースゲル電気泳動によって分画し、Nytran膜
(Schleicher & Schuell,Keene,NH)に移し、ニックトラ
ンスレーションによって32Pラベルした全長HBV
DNAプローブとハイブリッド形成(ハイブリダイズ)さ
せた。オートラジオグラフィー暴露を−80℃で12時
間行った。
【0010】図2突然変異型HBVゲノム5-15は
複製欠損性である。 図1の説明で記述したようにHuh7細胞を生育させ、
これをトランスフェクトした。トランスフェクションの
5日後に細胞培養培地を集め、NP40中で細胞を溶解
した(Hirsch,R.ら,Virology 167:136-142(1988))。この
細胞溶解液を50000xg(20℃)で30分間遠心分
離した。投入(インプット)DNAを消化するために、上
清にDNase I(1μg/ml;Worthington)を加え
た。この溶液をショ糖クッション(30%ショ糖、20m
M Tris-HCl(pH7.4)、100mM NaCl、
0.1% 2-メルカプトエタノール、0.1%ウシ血清ア
ルブミン)に重層し、178000xg(4℃)で12時
間遠心分離した。20mM Tris-HCl(pH8)、1
0mM EDTA、1%SDSの存在下でプロテイナーゼ
K(500μg/ml)を用いてペレットを55℃で3時間
消化した。フェノール抽出の後、核酸をエタノールで沈
殿させた。凍結乾燥の後、沈殿物を10mM Tris-H
Cl(pH7.4)、1mM EDTA、1μg DNAas
e非含有RNase A/mlに溶解し、1.25%アガロ
ースゲル電気泳動で分画し、Nytran膜に移し、ニックト
ランスレーションで32Pラベルした全長HBV DN
Aプローブにハイブリダイズさせた。100mmディッシ
ュ1枚から得られる細胞質DNAを各レーンに適用し
た。オートラジオグラフィー暴露を−80℃で4時間行
った。
【0011】図3HBV突然変異体5-15の複製欠
損性の原因となるDNA配列はヌクレオチド位置260
6(Apa1)と2823(BstEII)の間に位置する。 “野生型"adwの頭-尾型二量体(adw HTD、pG
EM-7のEcoRI部位中にクローニングしたもの)を
AatII(1419)およびDraI(2186)断片とし
てサブクローニングすることにより、複製能を有する先
端欠失型構築物adw R9を得た。adw R9と突然
変異型HBVゲノム5-15の特定の領域を交換するこ
とにより、表示のサブクローンを得た。黒く塗り潰した
領域はadw R9中へのHBV5-15挿入を表す。こ
れらの構築物の複製能力を図2の説明に記述したように
して分析した。
【0012】図4ヌクレオチド2798はHBV D
NAの複製能力にとって極めて重要である。 図1の説明に記述してようにHuh7細胞を生育させ、
これをトランスフェクトした。感染の5日後に細胞培養
培地を集め、細胞をNP40中で溶解した(Hirschら,Vi
rology 167:136-142(1988))。培地を50000xg(2
0℃)で30分間遠心分離した。その上清を10mM Mg
Cl2にした。インプットDNAを消化するためにDN
ase I(1μg/ml;Worthington)を添加した後、そ
の溶液をショ糖クッションに重層し、図2の説明に記述
したように処理した。100mmディッシュ1枚から得ら
れる細胞培養培地(10ml)に相当する量を各レーンに適
用した。オートラジオグラフィー暴露を−80℃で12
時間行った。複製性HBVDNAに関して陰性を示す細
胞培養培地はすべてそれぞれの細胞溶解液調製物中でも
陰性であった(非開示データ)。各構築物の構造とDNA
配列をそれぞれ図3および表2に示す。
【0013】ウイルスの複製を停止させるための方法お
よび組成物を提供する。本法にはポリメラーゼ反応の開
始に必要な欠陥タンパク質が関与する。この必須タンパ
ク質をコード化するポリメラーゼ遺伝子領域に特定の変
化を導入することができる。この突然変異はそのウイル
スの複製の完全かつ不可逆的な停止をもたらす。さら
に、この欠陥タンパク質をウイルスに供給することによ
り、正常なウイルス複製を中断させることができる。
【0014】ポリメラーゼ遺伝子のある領域中に突然変
異を導入または挿入することによって、欠陥タンパク質
の生産がもたらされる。この欠陥タンパク質は複製のた
めのプライマーとして作用するのでウイルスの複製にと
って必須であるとの仮説を立てているが、これに限定さ
れるわけではない。しかし、この欠陥タンパク質はRN
AおよびDNAポリメラーゼによる転写をプライムする
ことができない。あるいは、この欠陥タンパク質がプレ
ゲノムRNAの包膜化を許さないのかもしれない(Hirsc
hら,Nature 344:552-555(1990))。本抑制法にはウイル
ス複製の他の側面も関与し得るので、その特許性は提案
されるいかなる機構にも属さないことを注記しておく。
【0015】ウイルス複製の詳細な細部はウイルス間で
異なるものの、その機構のある側面は共通している。例
えば、レトロウイルスについて最初に記述されたRNA
依存性DNA合成は、現在では他の様々な設定下におけ
る遺伝情報の転移の手段であろうと認識されている。こ
れには肝炎ウイルスおよびカリフラワーモザイクウイル
スの複製が含まれる。一本鎖RNA鋳型から二本鎖DN
Aを合成するためには、RNA鋳型から第1DNA鎖を
合成してその第1DNA鎖から第2DNA鎖を合成する
ための酵素、これらの2本の鎖のそれぞれについてのプ
ライマー、および第2DNA鎖の合成を可能にすべく逆
転写後にRNA鋳型を除去するための手段が必要であ
る。
【0016】本発明の目的のために、ウイルス複製にお
けるポリメラーゼ遺伝子産物の役割に注目する。ポリメ
ラーゼ遺伝子中に特定の変化を導入することによって、
そのウイルスの複製を効果的に停止させることができ
る。したがってRNAウイルスとDNAウイルスの両
方、具体的にはRNAおよびDNAポリメラーゼのため
に転写をプライムするべくポリメラーゼ遺伝子産物を利
用するウイルスに、本法を適用することができる。本発
明の方法の対象となるウイルスには、肝炎ウイルスなど
のヘパドナウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイル
ス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、オルトミク
ソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ペ
スチウイルス、フラビウイルス、HIVなどのレトロウ
イルスが含まれる。
【0017】本法にはポリメラーゼ遺伝子のある領域へ
の突然変異の導入が含まれる。“突然変異の導入"とは遺
伝子中のヌクレオチドの置換、欠失、または付加(好ま
しくは置換)を意味する。突然変異を挿入するための領
域を数種の方法で同定することができる。様々なウイル
ス株のポリメラーゼ遺伝子またはポリメラーゼ遺伝子産
物間で保存されているアミノ酸位置を比較することによ
って、この領域を同定することができる。例えば種々の
HBV株のポリメラーゼ遺伝子を比較したところ、アミ
ノ酸位置164が高度に保存されていることがわかった
(表1を参照のこと)。残基164に対応するヌクレオチ
ド2798に単一の点突然変異を導入したところ、ウイ
ルスの複製を中断させる欠陥タンパク質が生産された。
【0018】この方法で、他のウイルスのポリメラーゼ
遺伝子領域を重要なアミノ酸位置について精査すること
ができる。これらの位置に突然変異を挿入し、得られた
遺伝子産物をウイルス複製に対する効果について試験す
ることができる。もう1つの方法は、RNAウイルスお
よびDNAウイルスのポリメラーゼ遺伝子中に無作為に
突然変異を導入することである。次いで、このような変
化によって得られたタンパク質をウイルスDNA複製に
対するそれらの効果について試験する。
【0019】B型肝炎ウイルスを用いた研究から、ウイ
ルス複製の停止機構にはプレゲノムRNAの包膜化に必
要なタンパク質あるいはポリメラーゼ反応の開始に必要
な結合性タンパク質の不完全な(欠陥のある)産出が関与
すると思われる。このタンパク質は、HBVを含むすべ
てのヘパドナウイルスの複製生活環において重要な段階
であるDNAの(−)鎖の逆転写のためのプライマーとし
て機能する。このことは、ポリメラーゼ反応の開始に必
要なこのタンパク質中に突然変異を導入することによっ
てウイルスの複製を抑制し得ることを示している。ヘパ
ドナウイルスの場合、これには、プレゲノムRNAの包
膜化および(−)鎖DNAの逆転写に必要なタンパク質中
に突然変異を導入することが含まれる。
【0020】レトロウイルスの場合、逆転写酵素に付随
するRNA-DNAハイブリッドに特異的なリボヌクレ
アーゼ活性であるリボヌクレアーゼH(RNase H)
によってポリプリン領域から生産されるウイルスRNA
オリゴマーによって第2鎖合成がプライムされる。リボ
ヌクレアーゼHはレトロウイルスポリメラーゼ遺伝子の
タンパク質産物である。したがって、部位特異的突然変
異誘発法によってRNase H遺伝子領域に突然変異
を誘発し、次いでウイルス複製に対するその欠陥タンパ
ク質産物の効果を試験することができる。
【0021】突然変異誘発処理の方法は当該技術分野で
よく知られている。とりわけ部位特異的突然変異誘発法
を用いれば、標的タンパク質中のほとんどすべてのアミ
ノ酸位置を意のままに操作することができる。Smith,
M.,Ann.Rev.Genet.19:423(1985)(この文献は本明細書の
一部を構成する)を参照のこと。また、“PCR Technolog
y"(Stockton Press,New York(1989))の61-70頁のHiguch
i,R.,“Using PCR to Engineer DNA"をも参照のこと。
【0022】ポリメラーゼ遺伝子中に突然変異を挿入す
るもう1つの手段は、ポリメラーゼ遺伝子の核酸断片を
構築することである。核酸合成法は知られている。一般
的事項については“Synthesis and Applications of DN
A and RNA"(Narang,S.編,Academic Press(1987))および
この本に引用されている文献を参照のこと。したがっ
て、そのウイルスの核酸配列あるいは少なくともそのウ
イルスのポリメラーゼ遺伝子の核酸配列がわかっている
場合には、合成構築物を作成することができる。この合
成構築物は天然の配列と比較して特定の部位に突然変異
または変化を含有するであろう。次に、発現したタンパ
ク質をウイルス複製に対するその効果について試験する
ことができる。
【0023】数種のウイルスゲノムのヌクレオチド配列
が公表されている。例えば、HIVのヌクレオチド配列
はRatnerら,Nature 313:277-284(1985)に認められる。
肝炎ウイルスのヌクレオチド配列はOkamotoら,J.Gen.Vi
rol.69:2575-2583(1988)に認めることができ、ジェンバ
ンク(Genbank)を通して利用できる。
【0024】同定した標的ポリメラーゼ遺伝子領域の突
然変異誘発処理後、ウイルスの複製に対するその突然変
異の効果を試験することができる。ウイルスの複製は、
複製産物またはウイルス転写物の存在を決定することに
よって検定できる。この方法で、細胞溶解液と細胞培養
培地をウイルス転写物、タンパク質、および複製型ウイ
ルスDNAの存在について分析することができる。ウイ
ルスに特異的な転写物を検出するために、固相放射線免
疫検定法を用いて、ウイルスがコード化しているタンパ
ク質を細胞溶解液および培養培地の両方で同定すること
ができる。具体的には、突然変異型ウイルスで細胞をト
ランスフェクトした後、細胞質DNAのサザンブロット
ハイブリッド形成を用いて、突然変異型ウイルスゲノム
の複製能力を評価することができる。詳細については実
験項を参照のこと。またハイブリッド形成の詳細につい
ては“Nucleic Acid Hybridization.A Practical Appro
ach"(IRL Press,Washington,DC(1985))にも認められ
る。
【0025】特定の突然変異型タンパク質が同定された
ら、それを用いていくつかの方法でウイルスの複製を停
止させることができる。この突然変異をDNA、RNA
あるいはタンパク質レベルで供給することができる。
【0026】欠陥タンパク質との接触はウイルスの複製
を中断させるので、欠損性の複製を達成するためにこの
タンパク質を投与することができる。より魅力的な方法
は、ウイルスに感染した宿主細胞あるいはウイルス感染
に対して感受性の宿主細胞中でこのタンパク質を発現さ
せることである。この方法として、その宿主細胞を形質
転換することができるベクター中に突然変異したポリメ
ラーゼ遺伝子またはポリメラーゼ遺伝子領域を入れるこ
とができる。組織特異的もしくは普遍的に発現させるの
に適したプロモーターの下流にこの遺伝子を置く。肝炎
の場合、ウイルスDNAを肝炎特異的プロモーターの下
流に置くことによって肝炎中で発現させる。他のウイル
スについては、構成的プロモーターを使用することがで
きる。
【0027】宿主細胞中で発現させる場合、突然変異型
遺伝子を発現ベクター中に機能的に連結し、これを宿主
細胞中に導入することにより、その細胞による欠陥タン
パク質の発現を可能にすることができる。適当な調節領
域を伴う遺伝子を適切な配向と読み枠で提供することに
よって発現が可能になる。遺伝子構築法は当該技術分野
で知られている。具体的には、“Molecular Cloning,A L
aboratory Manual"(Sambrookら編,Cold Spring Harbor
Laboratory,第2版,Cold Spring Harbor,NY(1989))を参
照のこと。
【0028】極めて多様な転写および翻訳調節配列を使
用することができる。調節シグナルが高レベルに発現す
る特定の遺伝子に付随しているアデノウイルス、ウシパ
ピローマウイルス、シミアンウイルスなどのウイルス供
給源からこれらのシグナルを誘導することができる。あ
るいは、アクチン、コラーゲン、ミオシンなどの哺乳類
発現産物のプロモーターを使用することもできる。
【0029】真核宿主における突然変異型ウイルスDN
Aの発現には真核性調節領域の使用が要求される。一般
にこのような領域にはRNA合成の開始を指示するに足
るプロモーター領域が含まれる。代表的なプロモーター
にはマウス・メタロチオネインI遺伝子のプロモーター
(Hammer,D.ら,J.Mol.Appl.Gen.1:273-288(1982))、ヘル
ペスウイルスのTkプロモーター(McKnight,S.,Cell 3
1:355-365(1982))、SV40初期プロモーター(Benoist
ら,Nature 290:304-310(1981))などが含まれる。他の有
用なプロモーターにはアルブミン、アルファ・フェトプ
ロテイン、アルファ・アンチトリプシン、レチノール結
合性タンパク質などの肝臓特異的プロモーターが含まれ
る(Fang,X.J.ら,Hepatology 10:781-787(1989))。
【0030】望ましい突然変異型ウイルスDNAおよび
機能的に連結されたプロモーターを受容細胞中に、直線
分子あるいはより好ましくは閉環共有結合環状分子でも
あり得る非複製DNAまたはRNA分子として導入する
ことができる。このような分子は自律的に複製すること
ができないので、目的のレセプター分子の発現は導入さ
れた配列の一時的発現を介して起こり得る。あるいは、
所望により、導入した配列の宿主染色体への組込みを介
して永続的な発現も起こり得る。
【0031】導入される配列を、受容宿主中で自律的に
複製することができるプラスミドまたはウイルスベクタ
ー中に組込むこともできる。cDNA発現ベクターには
Okayama,H.,Mol.Cell.Biol.3:280(1983)などに記述され
ているものが含まれる。ウイルスベクターにはWO89
/07136およびその引用文献に開示されているレト
ロウイルスベクター(特に肝細胞中での発現用)が含まれ
る。
【0032】この方法では、特定の突然変異をコード化
している対応する核酸配列またはその一部分をウイルス
性疾患に罹っている宿主の細胞中に導入する。その核酸
配列の発現はそのウイルスの複製を妨害するタンパク質
をもたらす。
【0033】ウイルスの複製を破壊するもう1つの手段
は、宿主細胞にアンチセンスRNAを提供することであ
る。アンチセンスRNAをウイルスに提供することもま
た、複製を妨害する。アンチセンス調節については、Ro
senbergら,Nature 313:703-706(1985);Preissら,Natur
e 313:27-32(1985);Melton,Proc.Natl.Acd.Sci.USA82:
144-148(1985);Kimら,Cell 42:129-138(1985);Izant
ら,Science 229:345-352(1985)に記述されている。アン
チセンスRNAを供給することにより、天然に存在する
RNAの作用が減少する。したがってアンチセンス調節
は、転写されるDNA配列がそのウイルスの目的のポリ
メラーゼ遺伝子またはポリメラーゼ遺伝子領域に対して
少なくとも部分的には相補的であるような遺伝子からな
るDNA配列を細胞中に導入することによって達成され
得る。上述のように、導入されるDNAはその宿主細胞
によって認識される転写開始領域の転写制御下にあるで
あろう。導入されたDNAの転写はウイルスのRNAと
相補的なアンチセンスRNAの複数コピーをもたらし、
そして天然に存在するRNAの作用の減少をもたらすで
あろう。さらに、特定のウイルス遺伝子領域をまたぐリ
ボザイムも治療剤として機能し得る(Sarver,N.ら,Scien
ce 247:1222-1225(1990))。
【0034】突然変異型ウイルスゲノムを構築し、それ
を用いて宿主細胞をトランスフェクトおよび感染させ得
ることも理解される。この突然変異型ウイルスは欠陥タ
ンパク質を発現させることができる。したがって、この
細胞はウイルスの攻撃を効果的に撃退することができ
る。宿主が既に非改変型のウイルスに感染している場合
には、欠陥タンパク質を発現する突然変異型ウイルスに
宿主を感染させることにより、非改変型ウイルスの複製
の停止を導くことができる。
【0035】本発明の方法はウイルス感染に対処するた
めだけでなく、ウイルス感染を予防するためにも利用で
きる。ウイルス感染を予防したり、あるいは宿主にウイ
ルスが侵入した途端にそのウイルスを撃退するために、
欠陥タンパク質または欠陥タンパク質をコード化する核
酸を含有するベクターからなる組成物を投与することが
できる。
【0036】複製を抑制するために欠陥ポリメラーゼタ
ンパク質を使用することを総論的に議論しているが、欠
陥タンパク質がそれ自身のウイルスに特異的であること
は理解される。すなわち、B型肝炎ウイルスポリメラー
ゼ遺伝子中の突然変異はB型肝炎ウイルスの複製を抑制
もしくは停止させる欠陥タンパク質をもたらすであろ
う。
【0037】上述のように、本発明の組成物および方法
を用いることにより、極めて多様なRNAウイルスおよ
びDNAウイルスのウイルス複製を停止させることがで
きる。
【0038】本発明の一態様として、肝炎ウイルス、具
体的にはB型肝炎ウイルスの複製を停止させるために本
発明の方法および組成物を利用する。部位特異的突然変
異誘発法により、少なくとも1つの突然変異をこのウイ
ルスのゲノム中に挿入することができる。ヌクレオチド
2606付近からヌクレオチド2823付近までの範
囲、一般的にはヌクレオチド2700付近からヌクレオ
チド2900付近の範囲、好ましくはヌクレオチド27
98付近にあるヌクレオチド位置にこの突然変異を導入
することができる。位置2798に突然変異を挿入する
場合、その突然変異はAからCあるいはTからCへの変
化を伴うであろう。この特定の突然変異はThrまたはSer
からProへの対応するアミノ酸変化をもたらすであろう
(表1を参照のこと)。これによって得られる突然変異
は、B型肝炎ウイルスの複製を完全かつ不可逆的に停止
させる。
【0039】HBV複製を停止させるためには、次い
で、突然変異を有するDNA種が逆転写酵素反応におけ
る欠陥3.5プレゲノムRNAをプライムするために用
いられる。あるいは、欠陥タンパク質をコード化するウ
イルスDNAの特定の断片を肝臓特異的プロモーターの
制御下で宿主細胞に供給することができる。さらに、肝
臓特異的プロモーターによって駆動される突然変異を含
有するヒトHBVゲノムを、野生型肝炎ウイルスの複製
の停止を導く感染性の妨害ウイルス粒子を生産するよう
に構築することができる。
【0040】もう1つの態様として、HIV複製を抑制
することができる。つまり、このウイルスのゲノム中に
少なくとも1つの突然変異を挿入する。この突然変異を
HIVポリメラーゼ遺伝子のヌクレオチド領域中に導入
する。一般的には、ヌクレオチド1200付近からヌク
レオチド5500付近までの範囲、より一般的にはヌク
レオチド1500付近からヌクレオチド4700付近ま
での範囲にあるヌクレオチド位置に突然変異を導入す
る。得られた突然変異を、本明細書に開示する方法を用
いて、ウイルスの複製に対する効果について調べるであ
ろう。
【0041】ウイルス複製停止の機構にはプレゲノムR
NAの包膜化に必要なタンパク質あるいはポリメラーゼ
反応の開始に必要な結合性タンパク質の不完全な(欠陥
のある)産生が関与すると考えられる。このタンパク質
は(−)鎖DNAの逆転写のためのプライマーとして機能
する。しかしこのウイルス複製の抑制が、ポリメラーゼ
遺伝子内に突然変異を挿入すること以外には、本明細書
に開示する特定の方法に依存しないことは理解される。
したがって、実際には他の機構あるいは別個の機構がウ
イルス複製の停止に関与していることもあり得る。
【0042】以下の実施例は例示のために提供するので
あって、限定を意図するものではない。
【0043】
【実施例】実施例1 HBV感染に対して血清学的に免疫性である個体の肝臓
中のエピソームHBVDNAが過去に同定されている(B
lum,H.E.ら,Liver 8:307-316(1988))。この個体の肝臓
から得たウイルスゲノムのクローニング、微細構造分
析、および生物学的特性化が行われた。クローン化した
ゲノムは、最も密接に関連する血清型adw2の感染性
HBV(B.N.Fields,R.Jaenisch及びC.F.Fox編,“Animal
virus genetics"(Academic Press Inc.,New York(198
0))中57-70頁のValenzuela,P.ら,“The nucleotide seq
uence of the hepatitis B viral genome and the iden
tification of the major viral genes")と比較して4
8塩基変化を示した。これらの突然変異のうちの1つは
ウイルスゲノムの前核(pre-core)領域の末端に終止コド
ンを作っており、これが肝炎B e抗原(HBeAg)の
形成を妨げていた。Huh7肝癌細胞中へのトランスフ
ェクションによるこのクローン化DNAの機能分析は、
ウイルスDNA複製を遮断する欠陥を除き、すべての主
要なウイルス転写物、ウイルス核およびエンベロープタ
ンパク質の合成能力を示した。DNA合成に関するこの
欠陥の遺伝的根拠が、スレオニンまたはセリンのプロリ
ンによる置換をもたらす位置2798の一つのミスセン
ス突然変異であることがわかった。この発見はこのポリ
メラーゼ遺伝子領域の(おそらく末端タンパク質かある
いはプレゲノムRNAの包膜化に必要なタンパク質をコ
ード化するという)ウイルスの生活環における重要な役
割を示唆すると共に、ウイルスの複製を停止させるため
の特定の治療戦略を示唆している。
【0044】この患者の肝臓中のエピソームHBV D
NAの微細構造を明らかにするため、3対のHBV特異
的プライマー(表1)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(P
CR)によって全肝臓DNAからウイルスゲノムを増幅
した。増幅したウイルスDNA断片をpGEM-7中に
クローン化することにより、予期される3種の重複HB
Vクローン1-8、2-13および3-1(表1)を得た。
これらのクローンを用いてHBV DNA分子を再構築
し、pGEM-7中にクローン化することにより、全長
HBVゲノム5-15を得た。これらのクローンの直接
配列決定を行うことにより、HBVゲノム5-15の完
全なヌクレオチド配列を決定した(データはGenbankに提
出した)。このゲノムは3221塩基の長さを有し、既
知のHBV DNAと同一の遺伝的構成である。公表さ
れたDNA配列との比較により、HBsAgサブタイプ
adw2(B.N.Fields,R.Jaenisch及びC.F.Fox編,“Anim
al virusgenetics"(Academic Press Inc.,New York(198
0))中57-70頁のValenzuela,P.ら,“The nucleotide seq
uence of the hepatitis B viral genome and the iden
tification of the major viral genes")と最も密接な
相同性を有することが明らかになった。このサブタイプ
と比較したところ、HBV5-15中に合計63個の突
然変異が検出され、そのうち48個はアミノ酸置換をも
たらすものであった。PCR増幅によって誘発された突
然変異を排除するために、別個のPCR増幅産物のクロ
ーニングと配列決定を行うことにより、アミノ酸変化を
導く突然変異を確認した。突然変異はすべての読み取り
枠中に同定され、この突然変異体を除けば異なるHBV
DNAと他のヘパドナウイルスの間で最も高度な相同
性を示す領域(参考文献3およびGenbankから入手できる
データ)であるプレC/C領域中に最も高い頻度(100
0塩基あたり26塩基)で同定された。これらの突然変
異はプレC読み枠の末端に枠内終止コドンをもたらし、
それゆえに肝炎B e抗原(HBeAg)への前駆体であ
るプレC/Cタンパク質をコード化することができなく
なったのである。プレC読み枠の末端の終止コドンは患
者の肝細胞性癌腫中に組み込まれたウイルスDNA中に
は認められず(非開示データ)、このことはこの突然変異
が感染性ウイルス中に存在したのではなく、むしろウイ
ルスDNAの組込み後、非腫瘍性の肝臓におけるウイル
ス複製の進行中に起こったことを示唆している。
【0045】上述した構造上の特徴からこのウイルスの
生物学に関して直接的な結論を引き出すことができなか
ったので、この突然変異ウイルスゲノムの機能的な能力
をインビトロで分析した。Huh7肝癌細胞(Nakabayas
hi,H.ら,Cancer Res.42:3858-3863(1982))のトランスフ
ェクション後、細胞溶解液および細胞培養培地をウイル
ス転写物、タンパク質および複製型ウイルスDNAの存
在について分析した。図1に示すように、HBV特異的
プローブとのハイブリッド形成実験によって、頭-尾型
(HTD)adw(“野生型")でトランスフェクションし
た細胞およびHTD5-15(“突然変異型")でトランス
フェクションした細胞の両方に、それぞれ2.2および
3.6kb長の2つの主要な転写物が存在することが明ら
かになった。トランスフェクションしなかった細胞(非
開示データ)中、あるいは不完全HBVクローン1-8
(表I)でトランスフェクションした細胞中にはウイルス
転写物が存在しなかった。メッセージのレベルはHTD
5-15でトランスフェクションした細胞中よりHTD
adwでトランスフェクションした細胞中のほうが高か
ったが、2.2kbサブゲノムメッセージに対する3.6kb
プレゲノムメッセージの比率は極めて類似しているよう
である。これらの発見は突然変異型ウイルスゲノムがす
べての主要なHBV転写物を合成する能力を有すること
を示している。
【0046】HBVがコード化しているタンパク質を、
細胞溶解液および培養培地の両方で、固相放射線免疫検
定法によって同定した。HTD adwでトランスフェ
クションしたHuh7細胞およびHTD 5-15でトラ
ンスフェクションしたHuh7細胞は共にかなりの量の
HBsAgおよびHBc/eAgを培地中に分泌し、一
方、不完全クローンHBV 1-8でトランスフェクシン
した細胞はウイルス抗原を生産しない(非開示データ)。
位置1899の終止コドン突然変異から予期されるよう
に、代謝的ラベル化および免疫沈降研究により、HTD
5-15でトランスフェクションした細胞が大きいプレ
C/Cタンパク質とその小さいプロセシングされた生成
物(通常HBeAgとして細胞培養培地中に分泌される)
を合成する能力を有さないことが明らかになった(非開
示データ)。
【0047】突然変異型ゲノム5-15の複製能力を評
価するために、トランスフェクション後のHhu7細胞
から単離した細胞質DNAのサザンブロットハイブリッ
ド形成によってHBV DNA種を分析した。図2に示
すように、複製性のHBV DNA種がHTD adwで
トランスフェクションした細胞中にのみ検出され、不完
全クローンHBV 1-8(陰性対照)またはHTD 5-1
5でトランスフェクションした細胞中にはウイルスDN
Aが存在しなかった。HTD adwでトランスフェク
ションした細胞中のウイルスDNA配列は一本鎖で部分
的に二本鎖の複製型中間体ならびに完全な弛緩環状分子
である(Blum,H.E.ら,Virology 139:87-96(1984))。
【0048】HTD adwまたはHTD 5-15でト
ランスフェクションされた細胞の細胞溶解液および培養
培地中のウイルス抗原およびDNA種を、CsCl密度
勾配遠心分離した後、HBsAgおよびHBc/eAg
ならびにHBV DNA配列について個々の分画を分析
することによってさらに特徴づけた。HTD adwで
トランスフェクションした細胞中ではウイルスDNAが
HBc/eAg(核粒子)に結合しており、培養培地中で
はHBsAg(ウイルス粒子)およびHBc/eAg(核
粒子)に結合している。予想どおり、HTD 5-15で
トランスフェクションしたHuh7細胞から得られる細
胞溶解液または培養培地のCsCl分画中では、HBs
AgおよびHBcAgについては陽性であったものの、
ウイルスDNA種は検出不能であった。これらの発見
は、Huh7細胞はウイルス複製を支持するが、突然変
異型HBVゲノム5-15はこの系中で複製できないと
いうことを立証している。
【0049】先端欠失型複製可能adwHTD構築物a
dw R9中にこの突然変異型ウイルスゲノムの特定の
領域をサブクローニングすることにより、この複製欠損
性の分子的根拠を決定した(図3)。特定のDNA断片を
交換し、クローニングし、Huh7肝癌細胞をトランス
フェクションすることにより、複製欠損性の原因である
突然変異の位置を突然変異型ウイルスゲノムマッピング
の位置2606(Apa1)と2823(BstEII;図
3および図4)の間の領域に特定することができた。突
然変異型ウイルスゲノムはこの領域内でadw2(B.N.F
ields,R.Jaenisch及びC.F.Fox編,“Animal virus genet
ics"(Academic Press Inc.,New York(1980))中57-70頁
のValenzuela,P.ら,“The nucleotide sequence of the
hepatitis B viral genome and the identification o
f the major viral genes")と比較してミスセンス突然
変異を2つだけ有する(ヌクレオチド位置2798およ
び2820)。adw R9またはR9 RB 5-15(図
3)の部位特異的突然変異誘発処理と上記2798また
は2820突然変異のいずれかを保持するプライマーに
よって、PCR増幅で4種のクローンを作成した(表
3):位置2798にAからCへの突然変異を有するa
dw R9(クローン2-6)、位置2820にGからCへ
の突然変異を有するadw R9(クローン5-3)、位置
2798にCからAへの突然変異を有するAva Ia
(クローン6-6)、および位置2820にCからGへの
突然変異を有するAva Ia(クローン3-3)。Huh
7肝癌細胞をこれらのクローンでトランスフェクション
した後、クローンadw R9の位置2798における
AからCへの突然変異がウイルスDNAを複製欠損型に
し、一方、同じ位置におけるAva 1aのCからAへ
の突然変異が複製能力を回復させることを立証すること
ができた(図4)。対照的に、位置2820における突然
変異は親構築物(クローン3-3およびクローン6-6)の
複製能力や複製欠損性に影響を与えなかった。これらの
発見は、ウイルスゲノムの位置2798におけるAから
Cへの突然変異(これはThrからProへの置換を導く)が上
記患者の肝臓から単離されたこの突然変異型ウイルスゲ
ノムの複製欠損の分子的根拠であることを明確に立証し
ている。
【0050】ヘパドナウイルスポリメラーゼの構造およ
びハイドロパシー比較分析(Khudyakov,Y.
E.ら,FEBS Letters 243:115-118(1989))ならびに実験
的研究(Bosch,V.ら,Virology 166:474-485(1988);Bart
enschlager,R.ら,EMBO J.7:4185-4192(1988);Schlich
t,H.-J.ら,Cell 56:85-92(1989))は、ウイルスポリメラ
ーゼ遺伝子の5'プライム領域が“末端タンパク質"(T
P)をコード化していることを示唆している。このタン
パク質は(−)鎖DNAの5'末端に結合し、おそらくヘ
パドナウイルスの複製戦略の中心的な特徴である逆転写
のプライマーとして機能すると思われる(Seeger,C.ら,S
cience 232:477-484(1986);Will,H.ら,J.Virol.61:904
-911(1987))。カモB型肝炎ウイルスポリメラーゼ遺伝
子の突然変異分析は、この遺伝子の5'領域への枠内挿
入が活性ポリメラーゼの生産を実際に除去することを立
証した(Schlicht,H.-J.ら,Cell 56:85-92(1989))。この
データは、ポリメラーゼ遺伝子のTP領域がウイルスの
複製に重要であることを強く示唆している。さらに、プ
レゲノムRNAのパッケージング(ゲノム詰め込み)には
機能的に無傷のポリメラーゼ遺伝子が必要であると思わ
れる。この解釈と合致して、筆者らの突然変異体中のヌ
クレオチド位置2798に同定された突然変異、あるい
は“野生型"ウイルスの突然変異誘発処理によって作成
した突然変異は、ウイルスの複製を停止させる。この突
然変異の意義は、公表されたHBV DNA配列(Okamot
oら,J.Gen.Virol.69:2575-2583(1988))およびGenbankを
通して利用できる配列との比較によって示されるよう
に、ポリメラーゼ遺伝子産物の位置164のアミノ酸が
すべてのHBV株において高度に保存されている(11
/14Thr、3/14Ser)という事実によって強調され
る。この停止の機構はおそらくTPまたはゲノムRNA
の包膜化に関与するタンパク質のThrまたはSerからPro
への置換による立体配座の変化を介して媒介されると思
われる。これらのタンパク質の機能に対するこのポリメ
ラーゼ遺伝子領域の寄与を明確にするための研究が現在
行われている。
【0051】野生型HBV DNAおよび突然変異型H
BV DNAによるHuh7肝癌細胞の同時トランスフ
ェクションは、この突然変異体が野生型HBVの複製を
停止させる能力を有することを立証した。表4を参照の
こと。HBVおよび非関連DNAをHuh7細胞のトラ
ンスフェクションに使用した場合、HBVウイルスDN
Aと全細胞DNAとのハイブリッド形成実験によって立
証されるように、肝炎ウイルスの複製は妨害されなかっ
た。突然変異型ウイルスDNAと同時トランスフェクシ
ョンした細胞中にはウイルスDNAが検出されず、この
ことはこの突然変異体が野生型肝炎ウイルスの複製を停
止させ得ることを示している。
【0052】非突然変異型ウイルスの複製を停止させる
という突然変異型ウイルスの能力は重要な含意を有す
る。ウイルスに感染している個体または宿主において、
この突然変異型ウイルスは感染細胞におけるウイルスの
複製を停止させることができ、ウイルスが他の細胞に蔓
延することを防止することができる。
【表1】
【0053】表 2患者の肝臓から得たHBV DN
AのPCR増幅とクローニングに用いたHBV特異的オ
リゴヌクレオチドプライマーの位置と配列 ウイルス性肝炎の経歴を有する73才の白人男性から転
移性肝細胞性癌腫(HCC)が提供された。放射線免疫検
定法で決定したところ、HBV血清学はHBsAgおよ
び抗HBc IgMに関して陰性であり、抗HBc Ig
G、抗HBeおよび抗HBsに関して陽性であった(Abb
ott,North Chicago,IL)。スポット・ブロット・ハイブ
リッド形成によれば、血清中にHBV DNAは検出さ
れなかった。検屍解剖で得た肝臓およびHCC組織を、
使用するまで−80℃で保存した。Taqポリメラーゼ
ならびに5'および3'末端に制限酵素部位を保持するプ
ライマー(表2)を用いて肝臓DNAを増幅した。Saiki
ら(Saiki,R.ら,Science 239:487-4491(1988))に従って
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。簡単に述べる
と、DNA 50ng、Taqポリメラーゼ(Perkin-Elmer
Cetus)2.5単位、各dNTP 200μM、各プライマ
ー 1μM、50ml/l KCl、10mM Tris-HCl
(pH8.3)、1.5mM MgCl2、および0.01%(wt
/vol)ゼラチンを含有する50μl反応体積中で標的配
列を増幅した。プログラマブルDNAサーマルサイクラ
ー(Perkin-Elmer Cetus)中で40サイクルこの反応を行
った。試料を1.5分間94℃に加熱し(DNAの変
性)、1.5分間50℃に冷却し(プライマーとのハイブ
リッド形成)、72℃で3分間インキュベートした(ポリ
メラーゼ反応)。PCR後、鎖の合成を完結させ、適当
な制限エンドヌクレアーゼによる切断を保証するため
に、クレノーポリメラーゼ5単位を添加した。このPC
R混合物をエチジウムブロミドの存在下1.25%アガ
ロースゲルで分画した。標的配列を含有するバンドを取
り出し、ガラスビーズ(Geneclean,Bio 101 Inc.,La Jol
la,CA)によってDNAを単離した。精製した断片をpG
EM-7Zf(+)(Promega)中に連結し、DH5αF'細
胞(BRL)中にクローン化した。クローン化したDNAを
標準的なプラスミド調製法によって調製した。3種のク
ローン1-8、2-13および3-1(表2)を用いて完全
なサイズのウイルスゲノム(クローン5-15)を再構築
した。トランスフェクション実験のために、HBV D
NAHBsAgサブタイプadw(“野生型")の頭-尾型
二量体とHBV DNA 5-15の頭-尾型二量体をpG
EM-7Zf(+)中に再構築し、上述のようにクローン
化した。Gem Seq RT系(Promega)またはT7ポ
リメラーゼ系(Pharmacia)を用いて記述されているよう
にして(Mierendorf,R.C.ら,Meth.Enzymol.152:556-562
(1987))、DNA配列分析を行った。
【表2】
【0054】表 3インビトロで突然変異誘発処理し
たHBV DNAクローンおよびそれらの親構築物のD
NA配列 2312から2333までの領域にまたがる属プライマ
ー(CC-22)と、位置2798におけるTからGへの
突然変異(ATC-40)または位置2820におけるC
からGへの突然変異(ACC-40)のいずれかを保持す
る2833から2794までの領域にまたがるプライマ
ーを用いて、クローンadw R9およびR9 5-15
(図3参照)をPCRで増幅した(表1参照)。増幅した断
片をアガロースゲル電気泳動およびGeneclean(Bio 101
Inc.,La Jolla,CA)で精製した。ApaIおよびBst
EIIで消化した後、その断片をadw R9(図3参照)
中にクローニングすることにより、期待通り単一の点突
然変異を保持する4種のクローン2-6、3-3、5-3
および6-6を得た。
【表3】
【0055】表 4突然変異型HBVとの同時トラン
スフェクション Huh7細胞を、1)野生型HBVおよび非関連DN
A、ならびに2)野生型HBVおよび変異型HBV DN
Aで同時トランスフェクションした。同時トランスフェ
クションに使用した非関連DNAはネオマイシン耐性保
持ベクターである。 同時トランスフェクション後、全
細胞DNAを抽出し、次いでラベルしたHBV DNA
とハイブリッド形成させることにより、ウイルスの複製
を決定した。抽出後、全細胞DNAをDNaseおよび
RNaseで消化し、次いでショ糖混合物中で遠心分離
した。このショ糖勾配からウイルスDNAを取り出し、
ゲル電気泳動にかけた。電気泳動後、DNAをニトロセ
ルロースに移し、ラベルしたウイルスDNAで処理し
た。得られたオートラジオグラフは、野生型HBVおよ
び非関連DNAで同時トランスフェクションした細胞中
にウイルスDNAが存在することを示した。野生型HB
Vおよび突然変異型HBV DNAでトランスフェクシ
ョンした細胞中にはウイルスDNAが検出されなかっ
た。
【表4】 同時トランスフェクション 複 製 1.野生型HBVおよび非関連DNA + 2.野生型HBVおよび突然変異型DNA − +はウイルスDNAとのハイブリッド形成によって立証
されたHBVの複製を示す。 −は複製が検出されなかったことを示す。
【0056】実施例2アンチセンスオリゴデオキシヌ
クレオチドによるB型肝炎ウイルスの阻害 HBV遺伝子の発現と複製に対するアンチセンスオリゴ
デオキシヌクレオチドの効果を分析した。HBV-DN
Aによるヒト肝癌細胞のトランスフェクション(Blumら,
J.Virol. 682:1836-42(1991))(対照)は、B型肝炎表面
抗原(HBsAg)とB型肝炎e抗原(HBeAg)の合成と
分泌をもたらした。HBV-DNAとアンチセンス極性
のオリゴデオキシヌクレオチド(ATC-40:下記参
照)との同時トランスフェクションはHBsAgとHBe
Agの合成を完全に遮断すると共にHBVの複製をも完
全に遮断した(図5)。センス極性の同じオリゴデオキシ
ヌクレオチド(GAT-40)はウイルス抗原の生産また
は複製に対して効果を有さなかった。
【0057】これらのデータは、HBV-特異的アンチ
センスオリゴデオキシヌクレオチドがウイルス遺伝子の
発現と複製を遮断できることを示している。
【0058】オリゴヌクレオチド調製 1.adw 2833-2794(2798 5-15 TからGへの突然変異) ATC-40 5' ATATGGTGAC CCGCAAAATG ATGCGCTACG TGTGGGTTCC 3' 2.adw 2833-2794(2820 5-15 CからGへの突然変異) ACC-40 5' ATATGGTGAC CCGGAAAATG ATGCGCTACG TGTGGTTTCC 3'
【表5】 260280260/280 ng/μl μg合計 ATC-40 0.132 0.084 1.57 2.64 1.32 ACC-40 0.259 0.149 1.67 5.18 2.59
【0059】なお、本明細書で言及したすべての特許出
願および刊行物は本発明が関連する技術分野の当業者の
技術水準を示している。すべての刊行物と特許出願は本
明細書の一部を構成する旨を特に個別に示したかの如く
に本明細書の一部を構成する。また、明瞭な理解を目的
として明示および例示のために上述の発明をいくらか詳
細に記述したが、添付の請求の範囲の範囲内でいくらか
の改変および修飾を行い得ることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 突然変異型HBVゲノム5-15がHuh7
肝癌細胞中で転写されることを示すノーザンブロット。
【図2】 突然変異型HBVゲノム5-15が複製欠損
性であることを示すサザンブロット。
【図3】 突然変異型HBVゲノムの構造を表す模式
図。
【図4】 ヌクレオチド2798がHBV DNAの複
製にとって重要であることを示すサザンブロット。
【図5】 アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドA
TC-40によるB型肝炎ウイルスの複製阻害を表すグ
ラフ。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 15/51 //(C12N 5/10 C12R 1:91) (72)発明者 ツァニヤング・リアング アメリカ合衆国02146マサチューセッツ州 ブルックリン、ポンド・アベニュー・シィ ー77番 ナンバー805 (72)発明者 イーザン・ガラン アメリカ合衆国02146マサチューセッツ州 ブルックリン、スターンズ・ロード20番 アパートメント・ナンバー30 (72)発明者 ジャック・アール・ワンズ アメリカ合衆国02168マサチューセッツ州 ワーバン、バリック・ロード210番

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞における肝炎ウイルスの複製を阻害
    する方法であって、該肝炎ウイルスのウイルスゲノムの
    ポリメラーゼ遺伝子領域に対して相補的なアンチセンス
    RNA(aRNA)をコード化するDNAを該細胞に導入
    することからなる方法。
  2. 【請求項2】 該肝炎ウイルスがB型肝炎ウイルスであ
    る請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 該ポリメラーゼ遺伝子に対する該aRN
    Aをコード化するDNAが細胞特異的プロモーターによ
    って制御される請求項1の方法。
  4. 【請求項4】 該細胞が肝組織細胞である請求項1の方
    法。
  5. 【請求項5】 ウイルスポリメラーゼ蛋白質に相補的な
    アンチセンスRNA(aRNA)をコード化する組換えD
    NA分子であって、該aRNAの発現によって該分子の
    宿主細胞におけるウイルスの複製が阻害され得ることを
    特徴とする組換えDNA分子。
  6. 【請求項6】 請求項5のDNA分子を含有するベクタ
    ー。
  7. 【請求項7】 請求項6のベクターによって形質転換さ
    れた宿主細胞。
  8. 【請求項8】 動物の肝炎ウイルス感染症を治療する方
    法であって、該肝炎ウイルスのウイルスゲノムのポリメ
    ラーゼ領域に相補的なアンチセンスRNAをコード化す
    るDNAで形質転換された細胞を該動物に与えることか
    らなる方法。
  9. 【請求項9】 該ウイルスがB型肝炎ウイルスである請
    求項8の方法。
JP5045160A 1992-03-05 1993-03-05 ウイルスの複製を防止する方法 Pending JPH0686676A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US846328 1986-03-31
US84632892A 1992-03-05 1992-03-05

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002083881A1 (en) * 2001-03-15 2002-10-24 Fudan University Methods for detecting and adjusting replication of hepatitis b virus and for preparing mutated virus strains with altered replication efficiency

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WO2002083881A1 (en) * 2001-03-15 2002-10-24 Fudan University Methods for detecting and adjusting replication of hepatitis b virus and for preparing mutated virus strains with altered replication efficiency

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