JPH07127744A - ピストンリング - Google Patents

ピストンリング

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Publication number
JPH07127744A
JPH07127744A JP29893693A JP29893693A JPH07127744A JP H07127744 A JPH07127744 A JP H07127744A JP 29893693 A JP29893693 A JP 29893693A JP 29893693 A JP29893693 A JP 29893693A JP H07127744 A JPH07127744 A JP H07127744A
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JP
Japan
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sliding surface
flank
sliding
forming area
crystal
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Application number
JP29893693A
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English (en)
Inventor
Kenji Hirose
謙治 広瀬
Takahiro Gunji
貴浩 郡司
Katsumune Tabata
勝宗 田畑
Kenji Dousaka
健児 堂坂
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Publication date
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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐焼付き性の優れたピストンリングを提供す
る。 【構成】 ピストンリング1は、テーパ状外周面4を有
するリング本体3と、そのリング本体3の前記テーパ状
外周面4に形成された摺動部構成層5とを有する。摺動
部構成層5は、テーパ状外周面4の大径環状端縁部6を
覆う摺動面形成域8と、摺動面形成域8に、その摺動面
形成域8より後退するように連なる逃げ面形成域9とを
備える。摺動面形成域8および逃げ面形成域9はFe結
晶の集合体より構成される。集合体は、摺動面形成域8
ではその摺動面a側に、また前記逃げ面形成域9ではそ
の逃げ面b側にそれぞれ{222}面を向け、且つ存在
率SがS≧40%である配向性Fe結晶10を含む。摺
動面aは平坦に形成され、また逃げ面bに存する多数の
配向性Fe結晶10は角錐状をなす。摺動面aはオイル
に対する濡れ性が良く、また逃げ面bはオイル溜め機能
と摺動面aへの給油機能とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関等に用いられ
るピストンリング、特に、テーパ状外周面を有するリン
グ本体と、そのリング本体のテーパ状外周面に形成され
た摺動部構成層とを有するピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種摺動部構成層としては、例
えば、内燃機関用ピストンリング外周面を形成するクロ
ムメッキ層が知られている。このクロムメッキ層の主た
る目的はピストンリングの耐摩耗性向上にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、クロム
メッキ層は、その表面が平滑であり、またオイルに対す
る濡れ性が悪いため、オイル保持性、つまり保油性が十
分でなく、その上初期なじみ性も悪い、ということもあ
って、内燃機関が高速、且つ高出力化の傾向にある現在
の状況下では耐焼付き性が乏しい。また前記濡れ性の悪
さに起因して、クロムメッキ層およびシリンダ内壁面間
にシール性の高い油膜を十分に形成することができない
ので、前記状況下ではブローバイガス量が多い、という
問題もある。
【0004】本発明は前記に鑑み、オイルに対する濡れ
性および相手部材に対するなじみ性が良好であり、また
オイル溜め機能および摺動面側への給油機能をそれぞれ
具備し、これにより、耐焼付き性を大幅に向上させるこ
とができ、その上相手部材との間にシール性の高い油膜
を十分に形成することのできる摺動部構成層を備えた前
記ピストンリングを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、テーパ状外周
面を有するリング本体と、そのリング本体の前記テーパ
状外周面に形成された摺動部構成層とを有するピストン
リングにおいて、前記摺動部構成層は、前記テーパ状外
周面の大径環状端縁部を覆う摺動面形成域と、その摺動
面形成域に、その摺動面形成域より後退するように連な
る逃げ面形成域とを備え、前記摺動面形成域および逃げ
面形成域は金属結晶の集合体より構成され、その集合体
は、前記摺動面形成域ではその摺動面側に、また前記逃
げ面形成域ではその逃げ面側にそれぞれ結晶面を向け、
且つ存在率SがS≧40%である配向性金属結晶を含
み、前記摺動面は平坦に形成され、また前記逃げ面に存
する多数の前記配向性金属結晶は角錐状または角錐台状
の少なくとも一方の形態を有することを特徴とする。
【0006】
【作用】摺動面形成域に、配向性金属結晶を前記存在率
Sで存在させ、また摺動面を平坦に形成すると、オイル
に対する摺動面の濡れ性および相手部材に対する摺動面
のなじみ性が良好となる。
【0007】また逃げ面に存する多数の配向性金属結晶
が角錐状等の形態を備えていると、相隣る両配向性金属
結晶間の谷部がオイル溜りとなり、そのオイルは摺動面
に逐次供給される。
【0008】このように摺動面のなじみ性を向上させる
と共に逃げ面側から摺動面にオイルを供給し得るので、
その摺動面のオイルに対する濡れ性が良好であることか
ら摺動面が十分な保油性を持ち、これにより摺動面の耐
焼付き性を向上させることができる。
【0009】また前記保油性の向上に伴い相手部材と摺
動面との間にシール性の高い油膜を十分に形成すること
が可能である。
【0010】なお、配向性金属結晶の存在率SがS<4
0%では、オイルに対する摺動面の濡れ性および相手部
材に対する摺動面のなじみ性が低下し、また逃げ面形成
域において、配向性金属結晶に角錐状等の形態を持たせ
ることが困難となる。
【0011】
【実施例】図1,2において、内燃機関用ピストンリン
グ1は、合い口2を有すると共にテーパ状外周面4を有
する鋳鉄製リング本体3と、そのリング本体3のテーパ
状外周面4に形成された摺動部構成層5とよりなる。
【0012】摺動部構成層5はリング本体3のテーパ状
外周面4にメッキ処理を施すことによって形成される。
その摺動部構成層5は、テーパ状外周面4の大径環状端
縁部6を覆う摺動面形成域8と、その摺動面形成域8
に、それ8より後退するように連なる逃げ面形成域9と
を備えている。摺動面形成域8におけるリング本体半径
方向の肉厚t1 は、逃げ面形成域9における前記と同一
方向の肉厚t2 よりも大に設定されており(即ち、t1
>t2 )、したがって摺動面形成域8は逃げ面形成域9
よりもリング本体半径方向外方へ突出している。
【0013】摺動面形成域8および逃げ面形成域9は金
属結晶の集合体より構成される。その集合体は、摺動面
形成域8ではその摺動面a側に、また逃げ面形成域9で
はその逃げ面b側にそれぞれ特定の結晶面を向け、且つ
存在率SがS≧40%である配向性金属結晶を含む。摺
動面aは平坦に形成され、また逃げ面bに存する多数の
配向性金属結晶10は角錐状または角錐台状の少なくと
も一方の形態を有し、図示例では三角錐状をなす。
【0014】このような摺動部構成層5は、リング本体
3のテーパ状外周面4全体に多数の三角錐状配向性金属
結晶10を有するメッキ層を、大径環状端縁部6で厚く
なるように形成し、次いで大径環状端縁部6を覆う摺動
面形成域8に対応するメッキ層表面を研磨加工により平
坦に形成して摺動面aを得る、といった方法で製作され
る。
【0015】摺動面形成域8に、配向性金属結晶を前記
存在率Sで存在させ、また摺動面aを平坦に形成する
と、オイルに対する摺動面aの濡れ性およびシリンダ内
壁面11に対する摺動面aのなじみ性が良好となる。
【0016】一方、逃げ面bに存する多数の配向性金属
結晶10が三角錐状の形態を備えていると、図3に示す
ように相隣る両配向性金属結晶10間の谷部12がオイ
ル溜りとなり、また摺動面形成域8および逃げ面形成域
9間の段付部13もオイル溜りとなる。そして、それら
オイル溜りのオイルは摺動面aに逐次供給される。
【0017】このように摺動面aのなじみ性を向上させ
ると共に逃げ面b側から摺動面aにオイルを供給し得る
ので、その摺動面aのオイルに対する濡れ性が良好であ
ることから摺動面aが十分な保油性を持ち、これにより
摺動面aの耐焼付き性を向上させることができる。
【0018】また前記保油性の向上に伴いシリンダ内壁
面11と摺動面aとの間にシール効果の高い油膜を十分
に形成することが可能であり、これによりブローバイガ
ス量を低減することができる。
【0019】配向性金属結晶10が体心立方構造(bc
c構造)を持つ場合、前記結晶面は、図4に示すように
ミラー指数で(hhh)面であり、この(hhh)面を
有する摺動面aはオイルに対する濡れ性が良好である。
【0020】図5に示すように、逃げ面bに沿う仮想面
14に対する(hhh)面の傾きは三角錐の傾きとなっ
て現れるので、逃げ面形成域9のオイル溜め機能に影響
を与える。そこで、(hhh)面が仮想面14に対して
なす傾き角θは0°≦θ≦15°に設定される。この場
合、(hhh)面の傾き方向については限定されない。
傾き角θがθ>15°になると、逃げ面形成域9のオイ
ル溜め機能が低下する。また摺動面aにおける(hh
h)面の傾き角θも、オイルに対する濡れ性を良好に保
持するため、0°≦θ≦15°に設定される。
【0021】bcc構造を持つ金属結晶としては、F
e、Cr、Mo、W、Ta、Zr、Nb、V等の単体ま
たは合金の結晶を挙げることができる。
【0022】一方、配向性金属結晶10が面心立方構造
(fcc構造)を持つ場合、摺動面形成域8における前
記結晶面は図6に示すようにミラー指数で(hh0)面
である。この(hh0)面を有する摺動面aはオイルに
対する濡れ性が良好である。このような(hh0)配向
性金属結晶は、メッキ後の摺動面aにおいて四角錐状を
なすが、その摺動面aを平坦に研磨する際除去される。
また逃げ面形成域9における前記結晶面は、図6に示す
ようにミラー指数で(3hhh)面である。このような
(3hhh)配向性金属結晶10は、図7に示すように
逃げ面bにおいて四角錐状をなす。
【0023】図8に示すように、逃げ面bに沿う仮想面
14に対する(3hhh)面の傾きは四角錐の傾きとな
って現れるので、逃げ面形成域9のオイル溜め機能に影
響を与える。そこで、(3hhh)面が仮想面14に対
してなす傾き角θは、前記同様に0°≦θ≦15°に設
定される。この場合、(3hhh)面の傾き方向につい
ては限定されない。傾き角θがθ>15°になると、逃
げ面形成域9のオイル溜め機能が低下する。また摺動面
aにおける(hh0)面の傾き角θも、オイルに対する
濡れ性を良好に保持するため、0°≦θ≦15°に設定
される。
【0024】fcc構造を持つ金属結晶としては、P
b、Ni、Cu、Pt、Al、Ag、Au等の単体また
は合金の結晶を挙げることができる。
【0025】bcc構造を持つ金属結晶の集合体よりな
る摺動部構成層5を形成するためのメッキ処理におい
て、電気Feメッキ処理を行う場合の基本的条件は、表
1,2の通りである。
【0026】通電法としては、直流法またはパルス電流
法が適用される。パルス電流法においては、図9に示す
ように最大電流密度CDmaxは1A/dm2 ≦CDma
x≦40A/dm2 、出力の立上り開始時から下降開始時
までの出力時間TONは0.1msec≦TON≦6msec、先の
立上り開始時から次の立上り開始時までを1サイクルと
して、そのサイクル時間をTc としたとき、時間比TON
/Tc はTON/Tc ≦0.45であり、したがって表2
における陰極電流密度はパルス電流法においては平均陰
極電流密度CDmである。
【0027】
【表1】
【0028】有機系添加剤としては、尿素、サッカリン
等が用いられる。
【0029】
【表2】
【0030】前記条件下で行われる電気Feメッキ処理
において、陰極電流密度、メッキ浴pH等によって前記
結晶面が(hhh)面である(hhh)配向性Fe結晶
の析出、その存在量等を制御する。この場合、直流法の
適用下では、(hhh)配向性Fe結晶10は柱状に成
長して逃げ面bにおいて、通常三角錐状をなす。一方、
パルス電流法の適用下では(hhh)配向性Fe結晶1
0は柱状に成長し、逃げ面bには、図10に示すように
三角錐状および六角錐状Fe結晶が存在するか、六角錐
状Fe結晶のみが存在する。
【0031】また本発明に係る摺動部構成層5を電気C
rメッキ処理により形成する場合の基本的条件は表3,
4の通りである。通電法はFeメッキ処理の場合と同じ
である。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、例えば気相メッキ法であるPVD法、CVD法、ス
パッタ法、イオンプレーティング等を挙げることができ
る。スパッタ法によりW、Moメッキを行う場合の条件
は、例えばAr圧力 0.2〜1Pa、Ar加速電力
直流1〜1.5kW、母材温度 150〜300℃であ
る。CVD法によりWメッキを行う場合の条件は、例え
ば原材料 WF6 、WF6 ガス流量 2〜15cc/min
、チャンバ内圧力 50〜300Pa、母材温度 4
00〜600℃である。
【0035】fcc構造を持つ金属結晶の集合体よりな
る摺動部構成層5を形成するためのメッキ処理におい
て、電気Niメッキ処理を行う場合の基本的条件は、表
5,6の通りである。通電法はFeメッキ処理の場合と
同じである。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】前記条件下で行われる電気Niメッキ処理
において、陰極電流密度、メッキ浴pH等によって(h
h0)、(3hhh)配向性Ni結晶の析出、その存在
量を制御する。
【0039】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、前記同様の気相メッキ法を挙げることができる。例
えば、スパッタ法によりPt、Alメッキを行う場合の
条件は、Ar圧力 0.8〜1Pa、Ar加速電力 直
流200〜1000W、母材温度 80〜300℃であ
る。またCVD法によりAlメッキを行う場合の条件
は、原材料 Al(CH3 3 、Al(CH3 3 ガス
流量 1〜10cc/min、チャンバ内圧力 50〜30
0Pa、母材温度 300〜600℃である。
【0040】〔実施例I〕複数のステンレス鋼製リング
本体3のテーパ状外周面4に、直流法またはパルス電流
法を適用した電気Feメッキ処理を施すことにより、F
e結晶の集合体より構成されたメッキ層を形成した。各
メッキ層において、摺動面形成域8に対応する部分の肉
厚は30μmに、また逃げ面形成域9に対応する部分の
肉厚は15μmにそれぞれ設定された。このリング本体
3とメッキ層とからなるものを、便宜上、ピストンリン
グ1とする。
【0041】表7,8は、メッキ層の例1〜5における
電気Feメッキ処理条件を示す。なお、メッキ処理時間
は、例1〜5における厚さを前記のように30μmまた
は15μmに設定すべく、10〜240分間の範囲内で
種々変化させた。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】表9は、メッキ層の例1〜5における表面
の結晶形態、Fe結晶の平均粒径、各配向性Fe結晶の
存在率Sならびに硬さをそれぞれ示す。
【0045】
【表9】
【0046】三角錐状Fe結晶の平均粒径は、各角部か
ら頂点を通って各対向辺に至る距離、即ち、三つの距離
の平均値であり、また六角錐状Fe結晶の平均粒径は、
頂点を挟んで相対向する両角部間の距離、即ち、三つの
距離の平均値である。
【0047】存在率Sは、例1〜5のX線回折図(X線
照射方向はメッキ層表面に対して直角方向)に基づいて
次のような方法で求められたものである。一例として、
例1について説明すると、図11は例1のX線回折図で
あり、各配向性Fe結晶の存在率Sは次式から求められ
た。なお、例えば{110}配向性Fe結晶とは、{1
10}面を表面側に向けた配向性Fe結晶を意味する。 {110}配向性Fe結晶:S110 ={(I110 /IA
110 )/T}×100、 {200}配向性Fe結晶:S200 ={(I200 /IA
200 )/T}×100、 {211}配向性Fe結晶:S211 ={(I211 /IA
211 )/T}×100、 {310}配向性Fe結晶:S310 ={(I310 /IA
310 )/T}×100、 {222}配向性Fe結晶:S222 ={(I222 /IA
222 )/T}×100 ここで、I110 、I200 、I211 、I310 、I222 は各
結晶面のX線反射強度の測定値(cps)であり、また
IA110 、IA200 、IA211 、IA310 、IA222
ASTMカードにおける各結晶面のX線反射強度比で、
IA110 =100、IA200 =20、IA211 =30、
IA310 =12、IA222 =6である。さらにTは、T
=(I110 /IA110 )+(I200 /IA200 )+(I
211 /IA211 )+(I310 /IA310 )+(I222
IA222 )である。
【0048】図12は、例1における表面の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。図12において、多数の三角錐
状Fe結晶が観察される。この三角錐状Fe結晶は(h
hh)面、したがって{222}面を表面側に向けた
{222}配向性Fe結晶である。この場合、{22
2}配向性Fe結晶の存在率Sは、表9,図11に示す
ように、S=43%である。
【0049】図13は、例3のX線回折図であり、図1
4は例3における表面の結晶構造を示す顕微鏡写真であ
る。図14において、多数の六角錐状Fe結晶が観察さ
れる。これら六角錐状Fe結晶は{222}面を表面側
に向けた{222}配向性Fe結晶であり、その存在率
Sは、表9、図13に示すようにS=94%である。
【0050】次に、例1〜3のメッキ層を有するピスト
ンリング1において、そのメッキ層の摺動面形成域8に
対応する表面を研磨加工により平坦に形成して摺動面a
を得た。この加工後のメッキ層よりなる摺動部構成層5
を持つピストンリング1を実施例1〜3とする。この実
施例1の摺動部構成層5は、図2に示すように平坦な摺
動面aに連なって、多数の三角錐状{222}配向性F
e結晶を有する逃げ面bを備えている。この逃げ面b
は、実施例2では、六角錐状および三角錐状{222}
配向性Fe結晶を有し、また実施例3では六角錐状{2
22}配向性Fe結晶を有する。
【0051】また、例4,5のメッキ層を有するピスト
ンリングにおいて、そのメッキ層に全然研磨加工を施さ
ない、したがって摺動面aおよび逃げ面bに多数の粒状
Fe結晶を有する、未加工のメッキ層よりなる摺動部構
成層を持つピストンリングを比較例1,2とする。
【0052】次に、実施例1〜3および比較例1,2に
ついて、チップオンディスク方式による焼付きテストを
行ったところ、表10、図15の結果を得た。テスト条
件は次の通りである。ディスクの材質 鋳鉄、ディスク
の回転速度 15m/sec 、給油量 0.3ml/min 、
ピストンリングより製作されたチップにおいて、ディス
クに押当てられる摺動面aの面積 0.5cm2
【0053】
【表10】
【0054】図15は、表9,10に基づいて、{22
2}配向性Fe結晶の存在率Sと焼付き発生荷重との関
係をグラフ化したものである。表9,10,図15から
明らかなように、実施例1〜3の摺動部構成層5におい
ては、{222}配向性Fe結晶の存在率SがS≧40
%であり、且つ摺動面aが平坦であることに起因してオ
イルに対する摺動面aの濡れ性およびディスクに対する
摺動面aのなじみ性が良好となり、また逃げ面bの三角
錐状および/または六角錐状{222}配向性Fe結晶
によるオイル溜りおよび段付部13によるオイル溜りか
ら摺動面aへの給油がなされるので、比較例1,2の摺
動部構成層に比べて焼付き発生荷重が大幅に向上する。
オイル溜め機能および給油機能は六角錐状Fe結晶集合
体の方が三角錐状Fe結晶集合体よりも優れている。
【0055】比較例1,2の摺動部構成層は、{22
2}配向性Fe結晶の存在率SがS<40%であって、
摺動面aのオイルに対する濡れ性およびディスクに対す
るなじみ性が悪く、その上、前記のようなオイル溜め機
能および給油機能を備えていないので、耐焼付き性が極
端に低い。
【0056】次に、三角錐状{222}配向性Fe結晶
によるオイル溜め機能等およびオイルに対する{22
2}配向性Fe結晶の濡れ性等を調べるため、次のよう
な実験を行った。
【0057】例1のメッキ層を有するピストンリングに
おいて、そのメッキ層に全然機械加工を施さない、した
がって摺動面aおよび逃げ面bに多数の三角錐状{22
2}配向性Fe結晶を有する、未加工のメッキ層よりな
る摺動部構成層を持つピストンリングを比較例3とす
る。
【0058】また例1のメッキ層を有するピストンリン
グにおいて、そのメッキ層表面全体に研磨加工を施して
摺動面aおよび逃げ面bを平坦に形成した。この加工後
のメッキ層よりなる摺動部構成層を持つピストンリング
を比較例4とする。
【0059】次に、比較例3,4について前記と同一条
件にてチップオンディスク方式による焼付きテストを行
ったところ、表11,図16の結果を得た。比較のた
め、表11,図16には前記実施例1および比較例1に
関する測定値も示されている。
【0060】
【表11】
【0061】図16は、表11をグラフ化したものであ
る。表11,図16から明らかなように、比較例3の摺
動部構成層は摺動面aに三角錐状{222}配向性Fe
結晶が存在することによりオイル溜め機能が得られるの
で、実施例1の摺動部構成層5と同等の耐焼付き性を有
する。比較例4の摺動部構成層は、逃げ面bが平坦であ
るためオイル溜め機能は持たないが、存在率S≧40%
の{222}配向性Fe結晶により、前記のように良好
な濡れ性およびなじみ性が得られるので、比較例1の摺
動部構成層よりも耐焼付き性が向上する。
【0062】次に、実施例1、比較例1,3,4をセカ
ンドリングとして用い、それを2000ccの直列四気筒
内燃機関に組込んで、機関回転数 6000rpm (一
定)、外気温 室温の条件下にてブローバイガス量を測
定したところ、表12,図17の結果を得た。
【0063】
【表12】
【0064】図17は、表12をグラフ化したものであ
る。表12,図17から明らかなように、実施例1の摺
動部構成層5においては、摺動面aのオイルに対する濡
れ性が良好であることからその保油性が向上し、それに
伴いシリンダ内壁面11との間にシール性の高い油膜が
十分に形成されるので、比較例1,3の摺動部構成層に
比べてブローバイガス量が大幅に減少する。
【0065】比較例1の摺動部構成層は、前記のように
オイルに対する濡れ性が悪い等の理由からブローバイガ
ス量が多い。比較例3の摺動部構成層は摺動面aに多数
の三角錐状{222}配向性Fe結晶が存在することか
らシール性が悪く、その結果、ブローバイガス量が最も
多くなる。比較例4における摺動部構成層の摺動面aは
実施例1と同様の性状を有するので、ブローバイガス量
も実施例1と同様となる。
【0066】〔実施例II〕複数のステンレス鋼製リング
本体3のテーパ状外周面4に、直流法を適用した電気N
iメッキ処理を施すことにより、Ni結晶の集合体より
構成されたメッキ層を形成した。各メッキ層において、
摺動面形成域8に対応する部分の肉厚は30μmに、ま
た逃げ面形成域9に対応する部分の肉厚は15μmにそ
れぞれ設定された。このリング本体3とメッキ層とから
なるものを、便宜上、ピストンリング1とする。
【0067】表13,14は、メッキ層の例1〜4にお
ける電気Niメッキ処理条件を示す。なお、例1におい
ては、摺動面形成域8と逃げ面形成域9では電気Niメ
ッキ処理条件が異なる。またメッキ処理時間は、例1〜
4における厚さを前記のように30μmまたは15μm
に設定すべく、10〜240分間の範囲内で種々変化さ
せた。
【0068】
【表13】
【0069】
【表14】
【0070】表15は、メッキ層の例1〜4における表
面の結晶形態、Ni結晶の平均粒径、各配向性Ni結晶
の存在率Sおよび硬さをそれぞれ示す。
【0071】
【表15】
【0072】四角錐状Ni結晶の平均粒径は、各角部か
ら頂点を通って各対向角部に至る距離、即ち、二つの距
離の平均値である。
【0073】存在率Sは、例1〜4のX線回折図(X線
照射方向はメッキ層表面に対して直角方向)に基づいて
次式から求められた。なお、例えば{111}配向性N
i結晶とは、{111}面を表面側に向けた配向性Ni
結晶を意味する。 {111}配向性Ni結晶:S111 ={(I111 /IA
111 )/T}×100、 {200}配向性Ni結晶:S200 ={(I200 /IA
200 )/T}×100、 {220}配向性Ni結晶:S220 ={(I220 /IA
220 )/T}×100、 {311}配向性Ni結晶:S311 ={(I311 /IA
311 )/T}×100 ここで、I111 、I200 、I220 、I311 は各結晶面の
X線反射強度の測定値(cps)であり、またI
111 、IA200 、IA220 、IA311 はASTMカー
ドにおける各結晶面のX線反射強度比で、IA111 =1
00、IA200 =42、IA220 =21、IA311 =2
0である。さらにTは、T=(I111 /IA111 )+
(I200 /IA200 )+(I220 /IA220 )+(I
311 /IA311 )である。
【0074】次に、例1のメッキ層を有するピストンリ
ング1において、そのメッキ層の摺動面形成域8に対応
する表面を研磨加工により平坦に形成して摺動面aを得
た。この加工後のメッキ層よりなる摺動部構成層5を持
つピストンリング1を実施例とする。この実施例の摺動
部構成層5は、図2に示すように平坦な摺動面aに連な
って、多数の四角錐状{311}配向性Ni結晶を有す
る逃げ面bを備えている。
【0075】また例2のメッキ層を有するピストンリン
グ1において、そのメッキ層表面全体に研磨加工を施し
て摺動面aおよび逃げ面bを平坦に形成した。この加工
後のメッキ層よりなる摺動部構成層を持つピストンを比
較例1とする。
【0076】例3のメッキ層を有するピストンリング1
において、そのメッキ層に全然研磨加工を施さない、し
たがって摺動面aおよび逃げ面bに多数の四角錐状{3
11}配向性Ni結晶を有する、未加工のメッキ層より
なる摺動部構成層を持つピストンリングを比較例2とす
る。
【0077】また、例4のメッキ層を有するピストンリ
ング1において、そのメッキ層に全然研磨加工を施さな
い、したがって摺動面aおよび逃げ面bに多数の粒状N
i結晶を有する、未加工のメッキ層よりなる摺動部構成
層を持つピストンリングを比較例3とする。
【0078】次に、実施例および比較例1〜3につい
て、実施例Iと同一条件にてチップオンディスク方式に
よる焼付きテストを行ったところ、表16,図18の結
果を得た。
【0079】
【表16】
【0080】図18は、表16をグラフ化したものであ
る。表16,図18から明らかなように、実施例の摺動
面形成域8においては、{220}配向性Ni結晶の存
在率SがS≧40%であり、且つ摺動面aが平坦である
ことに起因してオイルに対する摺動面aの濡れ性および
ディスクに対する摺動面aのなじみ性が良好となり、ま
た逃げ面bの四角錐状{311}配向性Ni結晶による
オイル溜りおよび段付部13によるオイル溜りから摺動
面aへの給油がなされるので、比較例1,3の摺動部構
成層に比べて焼付き発生荷重が大幅に向上する。
【0081】比較例2の摺動部構成層は摺動面aに四角
錐状{311}配向性Ni結晶が存在することによりオ
イル溜め機能が得られるので、実施例と同等の耐焼付き
性を有する。比較例1の摺動部構成層は、逃げ面bが平
坦であるためオイル溜め機能は持たないが、存在率S≧
40%の{220}配向性Ni結晶により、前記のよう
に良好な濡れ性およびなじみ性が得られるので、比較例
3の摺動部構成層よりも耐焼付き性が向上する。
【0082】次に、実施例、比較例1〜3をセカンドリ
ングとして用い、それを実施例Iと同様の直列四気筒内
燃機関に組込んで、同一条件下にてブローバイガス量を
測定したところ、表17,図19の結果を得た。
【0083】
【表17】
【0084】図19は表17をグラフ化したものであ
る。表17,図19から明らかなように、実施例の摺動
部構成層5においては、摺動面aのオイルに対する濡れ
性が良好であることから、その保油性が向上し、それに
伴いシリンダ内壁面11との間にシール性の高い油膜が
十分に形成されるので、比較例2,3の摺動部構成層に
比べてブローバイガス量が大幅に減少する。
【0085】比較例1における摺動部構成層の摺動面a
は実施例と同様の性状を有するので、ブローバイガス量
も実施例と同様となる。比較例2の摺動部構成層は摺動
面aに多数の四角錐状{311}配向性Ni結晶が存在
することからシール性が悪く、その結果、ブローバイガ
ス量が最も多くなる。比較例3の摺動部構成層は、前記
のようにオイルに対する濡れ性が悪い等の理由からブロ
ーバイガス量が多い。
【0086】
【発明の効果】本発明によれば、リング本体のテーパ状
外周面に形成される摺動部構成層において、その摺動面
形成域および逃げ面形成域を前記のように構成すること
によって、優れた耐焼付き性を有すると共に相手部材と
の間にシール性の高い油膜を十分に形成し得るピストン
リングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピストンリングの平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】逃げ面の一例を示す斜視図である。
【図4】体心立方構造およびその(hhh)面を示す斜
視図である。
【図5】体心立方構造における(hhh)面の傾きを示
す説明図である。
【図6】面心立方構造およびその(3hhh)面、(h
h0)面を示す斜視図である。
【図7】逃げ面の他例を示す平面図である。
【図8】面心立方構造における(3hhh)面の傾きを
示す説明図である。
【図9】電気メッキ用電源の出力波形図である。
【図10】逃げ面のさらに他例を示す斜視図である。
【図11】メッキ層の一例におけるX線回折図である。
【図12】メッキ層表面の一例における結晶構造を示す
顕微鏡写真である。
【図13】メッキ層の他例におけるX線回折図である。
【図14】メッキ層表面の他例における結晶構造を示す
顕微鏡写真である。
【図15】{222}配向性Fe結晶の存在率と焼付き
発生荷重との関係を示すグラフである。
【図16】実施例1等の焼付き発生荷重を示すグラフで
ある。
【図17】実施例1等を用いた場合におけるブローバイ
ガス量を示すグラフである。
【図18】実施例等の焼付き発生荷重を示すグラフであ
る。
【図19】実施例等を用いた場合におけるブローバイガ
ス量を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ピストンリング 3 リング本体 4 外周面 5 摺動面構成層 6 大径環状端縁部 8 摺動面形成域 9 逃げ面形成域 10 配向性金属結晶 a 摺動面 b 逃げ面 t1 ,t2 肉厚
フロントページの続き (72)発明者 堂坂 健児 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テーパ状外周面(4)を有するリング本
    体(3)と、そのリング本体(3)の前記テーパ状外周
    面(4)に形成された摺動部構成層(5)とを有するピ
    ストンリングにおいて、前記摺動部構成層(5)は、前
    記テーパ状外周面(4)の大径環状端縁部(6)を覆う
    摺動面形成域(8)と、その摺動面形成域(8)に、そ
    の摺動面形成域(8)より後退するように連なる逃げ面
    形成域(9)とを備え、前記摺動面形成域(8)および
    逃げ面形成域(9)は金属結晶の集合体より構成され、
    その集合体は、前記摺動面形成域(8)ではその摺動面
    (a)側に、また前記逃げ面形成域(9)ではその逃げ
    面(b)側にそれぞれ結晶面を向け、且つ存在率SがS
    ≧40%である配向性金属結晶(10)を含み、前記摺
    動面(a)は平坦に形成され、また前記逃げ面(b)に
    存する多数の前記配向性金属結晶(10)は角錐状また
    は角錐台状の少なくとも一方の形態を有することを特徴
    とするピストンリング。
  2. 【請求項2】 前記摺動面形成域(8)におけるリング
    本体半径方向の肉厚(t1 )は、前記逃げ面形成域
    (9)における前記と同一方向の肉厚(t2 )よりも大
    に設定されている、請求項1記載のピストンリング。
  3. 【請求項3】 前記配向性金属結晶(10)は体心立方
    構造を持ち、前記結晶面はミラー指数で(hhh)面で
    ある、請求項1または2記載のピストンリング。
  4. 【請求項4】 前記配向性金属結晶(10)は面心立方
    構造を持ち、前記摺動面形成域(8)における前記結晶
    面はミラー指数で(hh0)面であり、また前記逃げ面
    形成域(9)における前記結晶面はミラー指数で(3h
    hh)面である、請求項1または2記載のピストンリン
    グ。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107407412A (zh) * 2015-03-12 2017-11-28 株式会社理研 侧轨

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN107407412A (zh) * 2015-03-12 2017-11-28 株式会社理研 侧轨

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