JPH07165776A - コバルトシッフベース錯体と酸素分離用錯体溶液及び酸素分離方法 - Google Patents

コバルトシッフベース錯体と酸素分離用錯体溶液及び酸素分離方法

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JPH07165776A
JPH07165776A JP6011979A JP1197994A JPH07165776A JP H07165776 A JPH07165776 A JP H07165776A JP 6011979 A JP6011979 A JP 6011979A JP 1197994 A JP1197994 A JP 1197994A JP H07165776 A JPH07165776 A JP H07165776A
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Japan
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oxygen
complex
solvent
solution
schiff base
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JP6011979A
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Hiroshi Okamoto
宏 岡本
Yoko Okada
陽子 岡田
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Japan Oxygen Co Ltd
Taiyo Nippon Sanso Corp
Original Assignee
Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 常温且つ小さい温度差での温度変動方式で酸
素分離を可能ならしめる酸素分離用錯体溶液の提供。 【構成】 一般式(A) 【化1】 (式中R1,R2,R3,R4はそれぞれ水素、アルキ
ル基またはアルコキシ基を表し、R5,R6,R7,R
8はメチル基を表す。)で表されるコバルトシッフベー
ス錯体と該錯体の軸方向の第5座に配位する軸配位子と
を溶媒に溶かしてなり、酸素の吸収によって該錯体が酸
素と結合し固相として析出する相分離を生じることを特
徴とする酸素分離用錯体溶液である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コバルトシッフベース
錯体とそれを用いた酸素分離用錯体溶液及び酸素分離方
法に関し、詳しくは酸素錯体の溶液を利用して空気等の
酸素含有ガスから酸素を分離するにあたり、常温且つ小
さい温度差での温度変動方式で酸素分離を可能ならしめ
る錯体とその溶液及びこれを用いた酸素分離方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、工業的規模で空気中の酸素を分離
製造する方法としては、空気を加圧、冷却、膨張して液
化し、多段の精留工程を経て、沸点差によって窒素と酸
素とを分離する深冷分離方法がある。しかしこの方法で
は、多量のエネルギーを投入する必要がある。また高純
度の酸素または窒素を大量に製造する目的には適する
が、少量生産には適さない。また近年、ゼオライトまた
はカーボンモレキュラーシーブス等の吸着剤を用いて、
該吸着剤に窒素または酸素を選択的に吸着させることに
より、酸素または窒素を分離製造する吸着分離方法があ
る。この方法は運転操作が簡便で起動時間が短いという
利点を有しており比較的小容量の酸素や窒素の製造には
適している。しかし、この吸着分離方法は大容量の製造
には不適である。さらに、製品の製造量に比較して装置
が大きくなる欠点がある。特に酸素を製造する場合に
は、最大酸素濃度が95%に過ぎないという欠点があ
る。
【0003】これらの欠点を克服するために、最近で
は、酸素とのみ可逆的に反応する錯体を利用して酸素を
分離する方法が幾つか提案されている。この方法は例え
ば、特開昭58−20296号公報に記載されているよ
うに、5℃以下の低温で錯体溶液と空気を接触させて、
空気中の酸素を錯体溶液に吸収させて、次いで25℃以
上の高温で酸素を錯体溶液から放出させ、これを製品酸
素として採取するもので、錯体溶液は再び5℃以下の低
温に冷却して酸素を吸収させる。以下同じ工程を繰り返
して酸素を連続的に採取し得るものである(温度変動式
化学吸収法)。また、この酸素分離方法のもう一つの方
法は、錯体への酸素結合割合が気相中の酸素分圧の大き
さにより変化することにより、錯体溶液を温度一定条件
下にして、高酸素分圧下において酸素を吸収し、低酸素
分圧下で吸収していた酸素を脱離させて酸素を分離採取
する圧力変動式化学吸収法がある。いずれにしても、こ
の種の方法では錯体溶液を常に均一な液状として処理し
ていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の化学吸収法に用いられる錯体溶液には次のような欠点
がある。従来の錯体溶液は酸素親和力が小さいため、錯
体溶液を0℃前後の温度に冷却する必要があり、その結
果多大の冷却エネルギーが必要となる。また、錯体の利
用効率が低く、錯体溶液を0℃に冷却しても大気圧の空
気から酸素を吸収する時、錯体への酸素結合割合は20
〜40%に過ぎなかった。更に、温度0℃の吸収塔にお
いて大気圧の空気から酸素を吸収し、放散塔において大
気圧の酸素を発生する時、放散塔の錯体溶液を少なくと
も60℃以上の温度に加熱する必要があり、ここでも多
大の熱エネルギーが必要であった。更に、錯体溶液はそ
の組成を決めると、酸素吸収温度と酸素放出温度も同時
に定まり、これらの温度を変更することができなかっ
た。この為、環境熱や排熱を十分に利用することができ
なかった。また従来の上記酸素分離法で利用した錯体溶
液は、酸素の吸収・脱離を繰り返し行うに従って錯体が
二量化し、吸収能の劣化が起こり、その二量化反応を防
ぐため、錯体に立体障害基を付与する対策を行ってき
た。しかし錯体の二量化を完全に防止することができ
ず、その為に長時間にわたって錯体溶液を使用すること
ができなかった。また錯体溶液の錯体濃度は、溶媒に対
する錯体の溶解度より大きくすることができなかった
為、吸収塔から放散塔への酸素運搬量(酸素分離量)が
実用的水準に到達していなかった。またその上錯体溶液
の溶媒は、酸素の吸収速度を速くするため、極性が大き
い、例えば1-メチル-2-ピロリジノン(双極子モーメ
ント4.09デバイ)の如きものを選択する必要があ
り、それらの多くは親水性であった。従って酸素分離装
置には、原料ガス中の水分を除去する設備が必要であっ
た。なお、上記双極子モーメントの単位デバイ(Deby
e)は3.34×10-30C-m(MKS)である。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、従来の温度変動式化学吸収法又は圧力変動式化学吸
収法における欠点を解決できる錯体及び酸素分離用錯体
溶液の提供と前記錯体溶液を用いた酸素分離方法を提供
することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解消するた
めに、本発明のコバルトシッフベース錯体は、溶媒に溶
解して酸素の吸収によって酸素と結合し固相として析出
する相分離を生じる錯体であって、一般式(A)
【0007】
【化2】
【0008】(式中R1,R2,R3,R4はそれぞれ
水素、アルキル基またはアルコキシ基を表し、R5,R
6,R7,R8はメチル基を表す。)で表されるもので
ある。また、本発明の酸素分離用錯体溶液は、上記コバ
ルトシッフベース錯体と該錯体の軸方向の第5座に配位
する軸配位子とを溶媒に溶かしてなり、酸素の吸収によ
って酸素と結合し固相として析出する相分離を生じるこ
とを特徴とするものである。このコバルトシッフベース
錯体は、N,N′−ビス(サリチリデン)1,1,2,
2−テトラメチルエチレンジアミノコバルト(II)、
N,N′−ビス(3−エトキシサリチリデン)1,1,
2,2−テトラメチルエチレンジアミノコバルト(I
I)、N,N′−ビス(4,6−ジメトキシサリチリデ
ン)1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミノコ
バルト(II)、N,N′−ビス(3,5−ターシャリー
ブチルサリチリデン)1,1,2,2−テトラメチルエ
チレンジアミノコバルト(II)のうちから選択されたも
のが望ましい。また、上記コバルトシッフベース錯体の
軸方向の第5座に配位する軸配位子としては塩基性の窒
素原子を含むピリジン系の化合物または塩基性の窒素原
子を含むアルキルアミン系の化合物または塩基性の窒素
原子を含むイミダゾール系の化合物が望ましい。また、
コバルトシッフベース錯体と軸配位子を溶かす溶媒は、
双極子モーメント3.5デバイ以下の溶媒であり、1,
2−ジクロロベンゼン、3,4−ジクロロトルエン、
2,4−ジクロロトルエン、2,3−ジクロロトルエ
ン、2,6−ジクロロトルエン、1,2−ジブロモベン
ゼン、2−クロロパラキシレン、4−クロロパラキシレ
ン、1−クロロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒ
ドロナフタレン、1−メチルナフタレン、1,2,3−
トリメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベ
ンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、4−ターシ
ャリーブチルトルエン、ターシャリーアミルベンゼン、
ノルマルアミルベンゼン、フェニルシクロヘキサン、メ
チルベンゾエイト、ノルマルプロピルベンゾエイト、チ
オアニソール、インダンのうちから選択される1種また
は2種以上、特にこれらのうち1,2−ジクロロベンゼ
ン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、インダ
ン、2,6−ジクロロトルエンのうちから選択される1
種または2種以上が好ましい。さらに、上記各溶媒のう
ち1,2−ジクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラ
ヒドロナフタレン、インダン、2,6−ジクロロトルエ
ンのうちから選択される1種または2種以上の第1の溶
媒と、上記各溶媒のうちこれら以外の第2の溶媒とを混
合して用いることもできる。また、コバルトシッフベー
ス錯体の濃度は0.1Mより高くすることが望ましく、
該錯体の溶解度以上の濃度として良い。さらに、本発明
の酸素分離方法は、上記いずれかの酸素分離用錯体溶液
に、空気または酸素を含む混合ガスを接触させて、酸素
と結合した前記錯体を固相として析出させる酸素吸収工
程と、析出した酸素結合錯体を加熱して酸素を放出させ
る酸素放出工程とを備えたことを特徴としている。この
酸素吸収工程は、0〜40℃の温度条件で行うことが望
ましい。また酸素放出工程を20〜60℃の温度条件で
行うことが望ましい。さらに酸素吸収工程における空気
または窒素を含む混合ガスの酸素分圧は99Torr以上と
するのが望ましい。
【0009】
【作用】本発明のコバルトシッフベース錯体は、溶媒に
溶解して酸素の吸収によって酸素と結合し固相として析
出する相分離を生じ、極めて高い酸素吸収能を有する酸
素分離用錯体溶液の原料として好適である。本発明の酸
素分離用錯体溶液は、上記コバルトシッフベース錯体と
該錯体の軸方向の第5座に配位する軸配位子とを溶媒に
溶かしてなるもので、このコバルトシッフベース錯体が
酸素と結合すると固相となって溶液中に析出し、それを
加熱して酸素を脱離させると液相化する相分離現象を生
じる。即ち、コバルトシッフベース錯体と特定の軸配位
子と溶媒とからなる錯体溶液に空気又は酸素含有ガスを
接触させ、該錯体溶液に酸素を吸収させた時、酸素が結
合した酸素結合錯体が固相となって溶液より析出して固
化沈澱し、これを加熱により液相化することにより吸収
していた酸素を脱離させ、酸素を得るとともに錯体溶液
が再生される。酸素分離の際に、相分離現象を利用する
と、例えば20℃の温度で大気圧の空気から酸素を吸収
させた時、90%以上の錯体に酸素が結合して固相化
し、この固相体を40〜50℃の温度に加熱すると吸収
されていたほとんどの酸素を放出して液相となる。この
結果、錯体溶液の冷却用エネルギーの低減、錯体の利用
効率が向上できる。更に、相分離現象を起こしやすい良
溶媒と、起こし難い貧溶媒との混合溶媒を錯体溶液の溶
媒とした場合、それらの組成を変えることにより相分離
解消温度が変えられるので、環境熱や排熱を利用するこ
とが可能となり、酸素分離のエネルギー効率が格段に向
上できる。又、相分離により固化沈澱した酸素結合錯体
は、溶液中に溶けている酸素結合錯体より反応性が低下
して、二量化の反応速度も無視できる程度に遅くなる。
この結果、長期にわたって繰り返し錯体溶液を使用でき
るのである。相分離現象により酸素結合錯体が固化沈澱
するということは、酸素結合の反応系の外に排除される
ということであり、そして錯体溶液中の酸素未結合の錯
体も、酸素結合により相分離し系外に排除される。従っ
て酸素未結合錯体の溶解度を超える固相の酸素未結合錯
体があると、この酸素未結合の錯体は溶液に順次溶解し
て酸素と反応することができる。このため、錯体濃度を
溶解度以上の濃度として反応に使用することが可能とな
り、酸素運搬量を所望の量に増加させることができる。
更に、溶媒の溶解度に関する条件が緩和されて疎水性の
溶媒を採用することができる。
【0010】以下、本発明の詳細を説明する。本発明に
係る酸素分離用錯体溶液は、上記一般式(A)で表され
るコバルトシッフベース錯体と、軸配位子と、溶媒とか
らなり、相分離が起こるようなものである。一般式
(A)の錯体を溶媒に溶かした錯体溶液に軸配位子を添
加すると、この軸配位子は下記式(1),(2)に示す
ように、錯体の軸方向の第5座に配位する。
【0011】
【数1】
【0012】
【数2】
【0013】(式中、Coはコバルトシッフベース錯
体、Bは軸配位子を表す。またKBはコバルトシッフベ
ース錯体と軸配位子の平衡結合常数である。また[ ]
はそれぞれの化学種の濃度を表す。)軸配位子(B)が
配位した錯体は酸素に対して活性な錯体となり、次式
(3)のように酸素(O2)と反応する。
【0014】
【数3】
【0015】ここでlは液相、gは気相を示し、極性の
大きい溶媒を使用した場合は、酸素の結合は相変化を起
こさず液相を保ったまま錯体溶液中で行われる。そして
この時の真の酸素結合平衡常数(酸素親和力という)K
i(Torr-1)は式(4)で示される。
【0016】
【数4】
【0017】
【数5】
【0018】
【数6】
【0019】なおここで、Pは酸素分圧(Torr)、Cl
は酸素結合錯体の濃度[B-Co-O2(l)](mol/l)、CB
は酸素未結合錯体の濃度[B-Co(l)](mol/l)、CTは
全錯体濃度(mol/l)、Yは全錯体のうち酸素が結合した
錯体の割合、Kiは相分離が起こらない時の真の酸素結
合平衡常数(酸素親和力)(Torr-1)、P1/2は全錯体
のうち半分の錯体に酸素が結合するのに必要な酸素分圧
(Torr)、nはヒル係数を表す。ここで言うヒル係数nと
は、真の酸素親和力を求める時に、縦軸にlog(Y/
Y−1)、横軸にlogPをプロットして、得られる直
線の傾きのことである。
【0020】相分離は次に述べる機構によって起こるも
のと考えられる。コバルトシッフベース錯体は酸素が結
合するとコバルト上の電荷密度が酸素分子の方に移動す
ることが知られている。この結果、双極子モーメントが
発生しCo-O2間の結合の極性が大きくなる。このよう
な酸素結合に伴う錯体の極性変化は、錯体の溶媒への溶
解度に大きな影響を与える。錯体溶液の溶媒の極性が小
さい場合、酸素が結合した錯体の極性が大きいのでその
溶解度は酸素未結合の錯体より溶解度が小さくなる。錯
体溶液が酸素を吸収した時の酸素結合錯体の生成量はそ
の錯体の酸素親和力と酸素分圧から定まる。この場合、
(真の)酸素親和力が十分に大きく、また酸素結合錯体
の溶解度Sが十分に小さくて、酸素結合錯体の溶解度
が、錯体溶液が酸素を吸収した時の酸素結合錯体の生成
量Clより小さい時(S<Cl)、生成した酸素結合錯
体は溶解した状態で存在できないから次式(7)に示す
ように固化沈澱すると考えられている。
【0021】
【数7】
【0022】なお、l, g は前記した如く液相、気相を
示し、s は固相を示す。
【0023】このような相分離現象が起こる時反応の平
衡点が右側に移動するので、上式の反応は一方的に右側
に向って進行する。この結果、錯体溶液のみかけの酸素
親和力Kaは、真の酸素親和力Kiより大きくなる。相
分離して固化沈澱した酸素結合錯体の量を濃度に換算し
たものをCs(mol/l)とすると、見かけの酸素親和力K
aは次式(8)で表すことができる。
【0024】
【数8】
【0025】
【数9】
【0026】上記式(8)より、相分離によるみかけの
酸素親和力Kaは全錯体の濃度CTと酸素分圧Pに依存
する量であることがわかる。錯体の濃度が高いほど、ま
た酸素分圧が高いほど相分離は起こりやすい。錯体溶液
の温度が上昇すると、酸素結合錯体の溶液への溶解度S
は大きくなり、一方酸素結合錯体の濃度Clは小さくな
り、前記の相分離の条件(S<Cl)が満足されなくな
ると相分離現象が解消され、錯体溶液は均一になる。全
錯体濃度CTが、相分離が起こらない低濃度の時、この
錯体溶液から、真の酸素親和力Kiを求めることができ
る。この真の酸素親和力Kiと相分離が起こる高濃度の
錯体溶液から得られるみかけの酸素親和力Kaとから酸
素錯体の溶解度S、相分離量Csは(10),(11)
式で求めることができる。
【0027】
【数10】
【0028】
【数11】
【0029】酸素結合錯体の溶媒への溶解度Sと濃度C
lが同じ時(S=Cl)の錯体溶液の温度Tpを相分離
温度と定義する。前記相分離温度Tpより低い温度で相
分離が起こると、みかけの酸素親和力Kaが大きいため
大量の酸素が吸収される。次に、錯体溶液の温度が相分
離温度を超えると、錯体溶液の酸素親和力は真の値にま
で低下し、吸収されていた酸素が一気に脱離する。この
ように相分離温度近傍の小さい温度差で酸素分離が可能
となる。また、相分離が起こる錯体溶液では、溶解度以
上の過剰の固相状態にある酸素未結合錯体も、順次溶媒
に溶解して酸素と反応することができる。これは、溶媒
に溶解している錯体Co(l)が酸素と反応して消費さ
れると、溶液中の酸素未結合錯体の濃度CBが低下す
る。そして溶媒に溶解していない固相状態にある酸素未
結合錯体Co(s)が溶けて、溶媒に溶けた酸素未結合
錯体になり、酸素O2と反応し、これを化学反応式で表
すと(12)式となる。そして、これが繰り返されるか
らである。そして、これが繰り返されるから過剰の固相
状態にある酸素未結合錯体が順次溶媒に溶解して酸素と
反応することができる。
【0030】
【数12】
【0031】それ故、相分離が起こる錯体溶液では、上
記式(12)の反応が起こるため、溶解度以上の錯体を
加えて酸素吸収液とすることができる。従って吸収塔か
ら放散塔への酸素運搬量を所望の量に増加させることが
できる。更に溶解度に関する溶媒の条件が緩和されて、
疎水性の溶媒を採用することができる。
【0032】本発明は、上記した相分離を利用して酸素
を効率よく分離採取するものであり、相分離の条件を満
足させるためには、酸素結合錯体の溶解度が小さく、真
の酸素親和力が大きくなるような錯体と軸配位子及び溶
媒の組み合わせを選ぶ必要がある。本発明に係るコバル
トシッフベース錯体としては、一般式(A)で表される
中心金属がコバルトであるサリチルアルデヒド系シッフ
ベース錯体である。この一般式(A)で表される錯体は
4配位構造であるが、中心金属がコバルトの場合、6配
位構造で安定な錯体となるものである。すなわち、シッ
フベース平面の軸方向にある第5番目の配位座に軸配位
子が配位すると第6番目の配位座の酸素結合能力が高め
られ、ここに酸素が結合することにより酸素を吸収す
る。酸素結合錯体には、錯体1分子に酸素1分子が結合
した一量体と、錯体2分子に酸素が1分子結合した二量
体の二種類がある。一量体は、可逆的に酸素を結合又は
脱離できるが、二量体は可逆的に酸素を結合又は脱離で
きない。そこで錯体の二量化を防ぐため、錯体が互いに
接近できないようにシッフベースに立体障害基を付与す
ることがある。本発明に係るコバルトシッフベース錯体
では、R5,R6,R7,R8をメチル基とするのが効
果的である。以後、ジアミン部に4つのメチル基が付与
されたテトラメチルエチレンジアミンをTmenと表記
する。
【0033】軸配位子としては塩基性の窒素原子を含む
イミダゾール系の化合物、ピリジン系の化合物、アルキ
ルアミン系の化合物があり、イミダゾール系の化合物と
しては1-メチルイミダゾール、ピリジン系の化合物と
しては4-ジメチルアミノピリジン、4-ピペリジノピリ
ジン、4-ピロリジノピリジンが好適に使用できる。こ
れら軸配位子のうち本発明において好適なものは4-ジ
メチルアミノピリジンである。
【0034】前記錯体および軸配位子を溶解させて錯体
溶液とするための溶媒としては、双極子モーメントが
3.5デバイ以下の極性が小さい又は極性がない溶媒
で、前記錯体と軸配位子を溶解可能なものであり、しか
も安全性の観点から沸点と引火点が高い溶媒の使用が望
ましい。また、錯体の酸化を防ぐため非プロトン系の溶
媒であることが望ましい。このような溶媒としては1,2-
ジクロロベンゼン、3,4-ジクロロトルエン、2,4-ジクロ
ロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,6-ジクロロトル
エン、1,2-ジブロモベンゼン、2-クロロパラキシレン、
4-クロロパラキシレン、1-クロロナフタレン、1,2,3,4-
テトラヒドロナフタレン、1-メチルナフタレン、1,2,3-
トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、
1,4-ジイソプロピルベンゼン、4-ターシャリーブチルト
ルエン、ターシャリーアミルベンゼン、ノルマルアミル
ベンゼン、フェニルシクロヘキサン、メチルベンゾエイ
ト、ノルマルプロピルベンゾエイト、チオアニソール、
インダンなどが有効に使用し得る。これらの溶媒のうち
相分離を最も起こし易い良溶媒は1,2-ジクロロベンゼン
(双極子モーメント2.14デバイ)、1,2,3,4-テトラ
ヒドロナフタレン(双極子モーメント0.6デバイ)、
インダン、2,6-ジクロロトルエンである。これら以外の
溶媒は、20℃以下の温度にするか、400Torr以上の酸
素分圧がなければ相分離が起こらない貧溶媒である。又
上記溶媒のうち1,2,3-トリメチルベンゼン及びターシャ
リーアミルベンゼンは極性がほとんど無い溶媒である。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)この実施例において使用するコバルトシッ
フベース錯体は、常法に従い、シッフベースの合成及び
コバルトとの錯形成反応を行い合成した。合成した錯体
を前記一般式(A)に従って錯体記号と共に表1に示
す。
【0036】
【表1】
【0037】上記表において、H,CH3,CH3O,tBu はそ
れぞれ水素原子、メチル基、メトキシ基、ターシャリー
ブチル基を表す。軸配位子として4-ジメチルアミノピ
リジンまたは4-ピペリジノピリジンを使用した。これ
らを溶解する溶媒としては3,4-ジクロロトルエン(双極
子モーメント;2.95デバイ)、2,4-ジクロロトルエ
ン(双極子モーメント;1.70デバイ)、ノルマルプ
ロピルベンゾエイト、1,2-ジクロロベンゼン(双極子モ
ーメント;2.14デバイ)等の双極子モーメントが3.
5デバイ以下の溶媒を使用して、所定濃度に溶解せしめ
た。
【0038】・評価試験 前記錯体、軸配位子および溶媒から所定濃度の錯体溶液
8mlをバイアル容器内に調製した。これを恒温槽に入
れ、バイアル容器の気相に酸素を導入し、錯体溶液に酸
素を吸収させた。この時酸素を吸収結合した錯体は固化
析出し溶液は懸濁した。そして、予め求めておいたバイ
アル容器の気相の体積と、バイアル容器の気相の酸素分
圧の変化量から吸収された酸素量AO2(mol)を求め
た。そして前記酸素吸収量AO2(mol)と錯体濃度CT
(mol/l)、平衡酸素分圧P(Torr)から前記計算式
(8)に従い酸素親和力Kaを求めた。これを表2に表
示する。表2に示された4種の錯体は、 錯体1:N,N′-ビス(サリチリデン)1,1,2,2-
テトラメチルエチレンジアミノコバルト(II)(以下、
CoSalTmenと記す) 錯体2:N,N′-ビス(3-エトキシサリチリデン)
1,1,2,2-テトラメチルエチレンジアミノコバルト
(II)(以下、Co3MeOSalTmenと記す) 錯体3:N,N′-ビス(4,6-ジメトキシサリチリデ
ン)1,1,2,2-テトラメチルエチレンジアミノコバル
ト(II)(以下、Co4,6DMeOSalTmenと
記す) 錯体4:N,N′-ビス(3,5-ジターシャリーブチル
サリチリデン)1,1,2,2-テトラメチルエチレンジア
ミノコバルト(II)(以下、Co3,5DtBuSal
Tmenと記す) である。
【0039】
【表2】
【0040】次に、吸収されていた酸素を錯体溶液から
脱離させる時は恒温槽の温度を徐々に上げた。そしてあ
る温度に達すると、先に析出した固相が解かれて溶液と
なるとともに酸素が脱離して、バイアル容器の気相の酸
素分圧が酸素吸収前の酸素分圧になり、このときの温度
を相分離解消温度とした。錯体溶液が相分離すると溶液
は懸濁して固液二相になった。相分離しない時は、酸素
を吸収しても均一の液相のままであった。
【0041】表2で明らかなように、本発明による酸素
結合相分離錯体は常温で酸素と結合し固化沈澱し、その
みかけの酸素親和力は、錯体がCo3,5DtBuSa
lTmen 0.1M、軸配位子はDMAP(4-ジメチルア
ミノピリジン)1.5当量、溶媒は1,2-ジクロロベンゼン
(双極子モーメント;2.14デバイ)の時、15℃でK
a=1/47(Torr-1)であった。錯体がCo4,6DMe
OSalTmen(0.1M)、軸配位子が4PRP(4-ピ
ロリジノピリジン)1.5当量、溶媒がノルマルプロピル
ベンゾエイトの場合、0℃にまで錯体溶液を冷却すると
相分離が起こり、Ka=1/381(Torr-1)となった。
【0042】次に本発明の相分離によって酸素を吸収す
る錯体溶液の酸素親和力の大きさを評価するために、従
来より用いられている相分離が生じない液相で酸素を吸
収する錯体溶液についての真の酸素親和力Kiを比較例
として以下に示す。 (比較例)相分離しない錯体溶液の真の酸素親和力Ki
を酸素吸収量、錯体溶液濃度、酸素吸収平衡圧を測定し
て求めた。これらの結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】コバルトシッフベース錯体は、前記実施例
1で使用した錯体と同様、CoSalTmen、Co3
MeOSalTmen、Co4,6DMeOSalTm
en、Co3,5DtBuSalTmenを使用し、軸
配位子としてMeIm(メチルイミダゾール)をそれぞ
れ錯体の1.5当量を加え、これを双極子モーメントが4.
09デバイと3.5デバイより大きい極性を有する1-メ
チル-2-ピロリジノン(NMP)の溶媒で、0.1Mの濃度
に調製して錯体溶液とした。上記表3の比較例として試
験した上記錯体溶液は、酸素を吸収させた時、酸素結合
錯体が固化沈澱しない。このような錯体は酸素親和力が
小さいので、吸収温度を0℃の低温で試験を行った。そ
の時の酸素親和力Kiは、表3に示した通り、錯体がC
o4,6DMeOSalTmen(0.1M)、軸配位子M
eIm(1.5当量)、溶媒NMPの時が一番大きく、K
i=1/480(Torr-1)であり、錯体Co3,5DtBuS
alTmen(0.1M)、軸配位子(1.5当量)、溶媒N
MPの時が一番小さく、Ki=1/2060(Torr-1)であっ
た。この比較例と上記本発明の上記表2の酸素結合によ
る固化沈澱する錯体溶液の酸素親和力を比較すると、明
らかに本発明の相分離する錯体溶液の酸素親和力の方が
比較例より大きく、本発明の相分離が起こり難かった錯
体溶液の酸素親和力のものでも比較例の錯体とほぼ同じ
値を示した。
【0045】(実施例2)錯体Co3,5DtBuSa
lTmen(錯体4)を用い、軸配位子として4-ジメチ
ルアミノピリジン(1.5当量)を使用し、これを溶媒1,2
-ジクロロベンゼン(双極子モーメント;2.14デバ
イ)に溶解した錯体溶液を用い、気相の酸素量を一定に
して、錯体の濃度を変えて、酸素親和力Kaを測定し
た。この結果を表4に示す。温度が20℃の時、錯体濃
度が0.05Mの時は相分離が起きなかった。濃度が0.
10Mのとき20℃では相分離は起こらなかったが、温
度15℃の時に相分離した。
【0046】
【表4】
【0047】そしてみかけの酸素親和力Kaは0.20
Mまでは濃度が高くなるに従い大きくなるが、0.20
M以上ではほぼ同じような値が得られた。又、濃度は、
0.1M以上が好ましいことが明らかとなった。なお、
濃度0.35Mの錯体溶液は、酸素吸収後50℃に昇温
すると相分離が解消されて酸素を脱離し、均一の溶液と
なった。次に、上記錯体溶液を用いて温度20℃で平衡
酸素分圧が大気中の酸素分圧に相当する160Torrにな
るまで酸素を供給し吸収させると、みかけの酸素親和力
Kaは1/6Torr-1となり、全錯体のうち酸素が結合した
錯体の割合は96%にまで達した。
【0048】(実施例3)錯体としてCo3,5DtB
uSalTmen(0.2M)、軸配位子として4-ジメチル
アミピリジン(1.5当量)、溶媒として1,2-ジクロロベ
ンゼンを用いて溶解し、温度20℃で酸素吸収開始直前
の酸素分圧Piを変えて酸素親和力Kaを測定した。こ
の結果を表5に示した。酸素吸収開始直前の酸素分圧が
51Torrの時は相分離しなかったが、99Torr以上の酸
素分圧の時に相分離した。このことによりこの錯体溶液
が相分離するためには吸収初期酸素分圧は99Torr以上
必要であることが判った。
【0049】
【表5】
【0050】(実施例4)錯体としてCo3,5DtB
uSalTmen(0.40M)、軸配位子として4-ジ
メチルアミノピリジン(1.5当量)、溶媒として1,2-
ジクロロベンゼンを用い、錯体溶液を調製した。錯体C
o3,5DtBuSalTmenの一部が溶液に溶ける
ことができず、固相状態にある錯体溶液の酸素親和力を
温度20℃で測定した。平衡酸素分圧が126Torrの
時、みかけの酸素親和力Kaは1/13Torr-1、全錯体に対
する酸素結合割合は91%であった。即ちこれは0.3
6Mの錯体が反応、使用されているに相当する。Co
3,5DtBuSalTmenの1,2-ジクロロベンゼン
への溶解度は0.21Mであるから、固相の状態で残っ
ていた錯体Co3,5DtBuSalTmenが溶液に
溶けて酸素と反応したのは明らかである。即ち使用初
期、溶媒への錯体溶解度以上溶媒に錯体を投入しても、
反応の進行とともに錯体に酸素が結合されて使用され、
過剰な錯体が順次溶媒に溶け込み、錯体溶液として使用
されていることが認められた。
【0051】(実施例5)錯体としてCo3,5DtB
uSalTmen、軸配位子として4-ジメチルアミノピ
リジンを用い、これらを溶媒1,2-ジクロロベンゼン(1,
2-DCB)と2,3-ジクロロトルエン(2,3-DCT)の混
合溶媒を用いて溶解して錯体溶液とし、この混合溶媒の
混合比を変化させて相分離解消温度を測定した。2,3-ジ
クロロトルエンの割合が増加するほど相分離解消温度が
低下することを表6に示す。
【0052】
【表6】
【0053】(実施例6)錯体Co3,5DtBuSa
lTmenと、軸配位子として4-ジメチルアミノピリジ
ンを、溶媒1,2-ジクロロベンゼン(1,2-DCB)に溶か
し、錯体濃度0.02M、軸配位子2.5当量の錯体溶液
を調製した。この錯体溶液の相分離が起こらない領域
(錯体濃度と酸素分圧の低い領域)で真の酸素親和力K
iを測定した。又、同じ錯体、軸配位子及び溶媒で、錯
体濃度0.27M、軸配位子2.5当量の錯体溶液を調製
し、この錯体溶液の相分離現象の起こる領域でみかけの
酸素親和力Kaを測定した。この測定では酸素を一定量
にして、温度20℃〜40℃の間を5℃間隔で測定し
た。更に、真の酸素親和力Kiとみかけの酸素親和力K
aから(10),(11)式を用いて酸素結合錯体の溶
解度S及び相分離量Csを求めた。この結果を表7に示
す。
【0054】
【表7】
【0055】20℃におけるこの錯体溶液のみかけの酸
素親和力Kaは、5.63×10-2Torr-1、真の酸素親
和力Kiは6.10×10-4Torr-1であり、みかけの酸
素親和力Kaは真の酸素親和力Kiの約100倍の大き
さであった。また20℃における酸素結合錯体Co3,
5DtBuSalTmen(DMAP)O2の溶解度は
1.11×10-3Mであり、酸素が結合していない錯体
Co3,5DtBuSalTmen(DMAP)の溶解
度0.27Mの約250分の1となった。即ち酸素結合
錯体の溶液への溶解度が十分に小さいことがわかり、相
分離を起こしていることが認められる。また、相分離量
が1.01×10-1Mという結果より、全錯体のうち3
7%の錯体が沈澱していることがわかった。さらに酸素
分圧を高めて行けば、酸素を吸収して相分離し、先の実
施例4で示した通り90%以上の錯体に酸素が結合吸収
される。
【0056】(実施例7)錯体Co4,6DMeOSa
lTmenと、軸配位子4-ピペリジノピリジンを、溶媒
ノルマルプロピルベンゾエイトに溶かし、錯体濃度0.
1M、軸配位子1.5当量の錯体溶液をガラス製容器に
調製し、気相に酸素を封入しこれを密閉した後、約30
℃の恒温槽に保存し、この錯体溶液の0℃の酸素親和力
の経時変化を調べた。その結果を表8に示す。この錯体
溶液は、340日経過した後でもみかけの酸素親和力K
aと、ヒル係数nが安定しており、二量化反応の形跡は
認められなかった。
【0057】
【表7】
【0058】(実施例8)各種の溶媒中に、錯体CoS
alTmenと、軸配位子4−ジメチルアミノピリジン
を、錯体濃度0.25M、軸配位子1.5当量となるよう
に溶かし、20℃で相分離現象が起こる溶媒を実験によ
り確かめた。20℃で相分離現象が起こる溶媒は、1,2-
ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、3,4-ジクロ
ロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,3-ジクロロトル
エン、トランス-1,2-ジクロロシクロヘキサン、2,6-ジ
クロロアニソール、2-クロロパラキシレン、1-クロロナ
フタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、インダ
ン、1-メチルナフタレン、ジメチルナフタレン(異性体
混合物)、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラ
メチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、4-ター
シャリーブチルトルエン、ターシャリーアミルベンゼ
ン、ノルマルアミルベンゼン、ターシャリーブチルベン
ゼン、ノルマルヘキシルベンゼン、メチルベンゾエイ
ト、チオアニソール等の溶媒が相分離用として適してい
ることが判った。これらの溶媒はいずれも双極子モーメ
ントが3.5デバイ以下の溶媒または極性のない溶媒
で、上記コバルトシッフベース錯体および軸配位子を溶
解可能なものである。また、これらの溶媒は極めて少量
の水だけ混入できるが、大量の水とは混合できない疎水
性の溶媒である。相分離が起こらない時はこれらの疎水
性溶媒を錯体溶液の溶媒として使用することができなか
った。
【0059】(実施例9)各種の溶媒中に、前記実施例
8と異なる錯体Co3,5DtBuSalTmenと、
軸配位子4-ジメチルアミノピリジン、錯体濃度0.20
M、軸配位子1.5当量となるように溶かし、20℃で
相分離現象が起こる溶媒を検索した。相分離現象が起こ
る溶媒は、1,2-ジクロロベンゼン、1,2-ジブロモベンゼ
ン、3,4-ジクロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、1-
クロロナフタレン、4-ブロモオルトキシレン、N,N,3,5-
テトラメチルアニリン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレ
ン、インダン、1-メチルナフタレン、1,2,3-トリメチル
ベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソ
プロピルベンゼン、ターシャリーアミルベンゼン、ノル
マルアミルベンゼン、フェニルシクロヘキサン、パラメ
チルイソプロピルベンゼン、4-ターシャリーブチルトル
エン、チオアニソールであった。これらの溶媒はいずれ
も双極子モーメントが3.5デバイ以下の溶媒または極
性のない溶媒で、上記コバルトシッフベース錯体および
軸配位子を溶解可能なものである。また、これらの溶媒
は極めて少量の水だけ混入できるが、大量の水とは混合
できない疎水性の溶媒である。相分離が起こらない時は
これらの疎水性溶媒を錯体溶液の溶媒として使用するこ
とができなかった。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の酸素分離
用錯体溶液は、コバルトシッフベース錯体が酸素と結合
すると固相となって溶液中に析出し、それを加熱して酸
素を脱離させると液相化する相分離現象を生じる。即
ち、コバルトシッフベース錯体と特定の軸配位子と溶媒
とからなる錯体溶液に空気又は酸素含有ガスを接触さ
せ、該錯体溶液に酸素を吸収させた時、酸素が結合した
酸素結合錯体が固相となり溶液より析出して固化沈澱
し、これを加熱により液相化することによって吸収して
いた酸素を脱離させ、酸素を得るとともに錯体溶液が再
生される。このような相分離現象を利用すると、例えば
20℃の温度の時大気圧の空気と接触させた時、90%
以上の錯体に酸素が結合し、この錯体溶液を40〜50
℃程度の温度に加熱すると吸収されていたほとんどの酸
素を放出できる。この結果、錯体溶液の冷却用エネルギ
ーの低減、錯体の利用効率が大幅に向上でき、効率良く
酸素を製造することができる。またこの錯体溶液を用い
た酸素製造システムの装置構成の簡略化と小型化を図る
ことができる。また、相分離現象を起こしやすい良溶媒
と、起こし難い貧溶媒との混合溶媒を錯体溶液の溶媒と
した場合、それらの組成を変えることにより相分離解消
温度が変えられるので、環境熱や排熱を利用することが
可能となり、酸素分離のエネルギー効率が格段に向上で
き、製造コストを低減することができる。また、相分離
により固化沈澱した酸素結合錯体は、溶液中に溶けてい
る酸素結合錯体より反応性が低下して、二量化の反応速
度も無視できる程度に遅くなる。この結果、長期にわた
って錯体溶液を使用することができ、錯体の交換が不要
となり、製造コストを低減することができる。さらに、
相分離現象を用いることによって、錯体濃度をその溶解
度以上の濃度とすることが可能となり、この錯体溶液を
用いた酸素製造システムにおける酸素運搬量を所望の量
に増加させることができる。また、溶媒の溶解度に関す
る条件が緩和され、疎水性の溶媒を採用することが可能
となり、原料ガス中の水分を除去する設備も不要とな
り、この錯体溶液を用いた酸素製造システムの運転条件
の適用範囲を広げることができる。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶媒に溶解して酸素の吸収によって酸素
    と結合し固相として析出する相分離を生じる錯体であっ
    て、一般式(A) 【化1】 (式中R1,R2,R3,R4はそれぞれ水素、アルキ
    ル基またはアルコキシ基を表し、R5,R6,R7,R
    8はメチル基を表す。)で表されることを特徴とするコ
    バルトシッフベース錯体。
  2. 【請求項2】 請求項1のコバルトシッフベース錯体と
    該錯体の軸方向の第5座に配位する軸配位子とを溶媒に
    溶かしてなり、酸素の吸収によって錯体が酸素と結合し
    固相として析出する相分離を生じることを特徴とする酸
    素分離用錯体溶液。
  3. 【請求項3】 コバルトシッフベース錯体が、N,N′
    −ビス(サリチリデン)1,1,2,2−テトラメチル
    エチレンジアミノコバルト(II)、N,N′−ビス(3
    −エトキシサリチリデン)1,1,2,2−テトラメチ
    ルエチレンジアミノコバルト(II)、N,N′−ビス
    (4,6−ジメトキシサリチリデン)1,1,2,2−
    テトラメチルエチレンジアミノコバルト(II)、N,
    N′−ビス(3,5−ターシャリーブチルサリチリデ
    ン)1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミノコ
    バルト(II)のうちから選択されたものであることを特
    徴とする請求項2の酸素分離用錯体溶液。
  4. 【請求項4】 コバルトシッフベース錯体の軸方向の第
    5座に配位する軸配位子が塩基性の窒素原子を含むピリ
    ジン系の化合物または塩基性の窒素原子を含むアルキル
    アミン系の化合物または塩基性の窒素原子を含むイミダ
    ゾール系の化合物であることを特徴とする請求項2また
    は3の酸素分離用錯体溶液。
  5. 【請求項5】 コバルトシッフベース錯体と軸配位子を
    溶かす溶媒が、双極子モーメント3.5デバイ以下の溶
    媒であることを特徴とする請求項2,3または4の酸素
    分離用錯体溶液。
  6. 【請求項6】 コバルトシッフベース錯体と軸配位子を
    溶かす溶媒が、1,2−ジクロロベンゼン、3,4−ジ
    クロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,3−
    ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、1,2
    −ジブロモベンゼン、2−クロロパラキシレン、4−ク
    ロロパラキシレン、1−クロロナフタレン、1,2,
    3,4−テトラヒドロナフタレン、1−メチルナフタレ
    ン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,3,5
    −テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベン
    ゼン、4−ターシャリーブチルトルエン、ターシャリー
    アミルベンゼン、ノルマルアミルベンゼン、フェニルシ
    クロヘキサン、メチルベンゾエイト、ノルマルプロピル
    ベンゾエイト、チオアニソール、インダンのうちから選
    択される1種または2種以上であることを特徴とする請
    求項2,3または4の酸素分離用錯体溶液。
  7. 【請求項7】 コバルトシッフベース錯体と軸配位子を
    溶かす溶媒が、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,
    3,4−テトラヒドロナフタレン、インダン、2,6−
    ジクロロトルエンのうちから選択される1種または2種
    以上であることを特徴とする請求項2,3または4の酸
    素分離用錯体溶液。
  8. 【請求項8】 コバルトシッフベース錯体と軸配位子を
    溶かす溶媒が、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,
    3,4−テトラヒドロナフタレン、インダン、2,6−
    ジクロロトルエンのうちから選択される1種または2種
    以上である第1の溶媒と、3,4−ジクロロトルエン、
    2,4−ジクロロトルエン、2,3−ジクロロトルエ
    ン、1,2−ジブロモベンゼン、2−クロロパラキシレ
    ン、4−クロロパラキシレン、1−クロロナフタレン、
    1−メチルナフタレン、1,2,3−トリメチルベンゼ
    ン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,4−
    ジイソプロピルベンゼン、4−ターシャリーブチルトル
    エン、ターシャリーアミルベンゼン、ノルマルアミルベ
    ンゼン、フェニルシクロヘキサン、メチルベンゾエイ
    ト、ノルマルプロピルベンゾエイト、チオアニソールの
    うちから選択される1種または2種以上である第2の溶
    媒とを混合したものであることを特徴とする請求項2,
    3または4の酸素分離用錯体溶液。
  9. 【請求項9】 コバルトシッフベース錯体の濃度を0.
    1Mより高くしたことを特徴とする請求項2から8のい
    ずれか1項記載の酸素分離用錯体溶液。
  10. 【請求項10】 コバルトシッフベース錯体の濃度を該
    錯体の溶解度以上の濃度としたことを特徴とする請求項
    2から8のいずれか1項記載の酸素分離用錯体溶液。
  11. 【請求項11】 請求項2から10のいずれか1項に記
    載された酸素分離用錯体溶液に、空気または酸素を含む
    混合ガスを接触させて、酸素と結合した前記錯体を固相
    として析出させる酸素吸収工程と、析出した酸素結合錯
    体を加熱して酸素を放出させる酸素放出工程とを備えた
    酸素分離方法。
  12. 【請求項12】 酸素吸収工程を、0〜40℃の温度条
    件で行うことを特徴とする請求項11の酸素分離方法。
  13. 【請求項13】 酸素放出工程を20〜60℃の温度条
    件で行うことを特徴とする請求項11または12の酸素
    分離方法。
  14. 【請求項14】 酸素吸収工程における空気または酸素
    を含む混合ガスの酸素分圧を99Torr以上としたことを
    特徴とする請求項11,12または13の酸素分離方
    法。
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