JPH07264946A - 病害抵抗性を持つ体細胞雑種ばれいしょおよびその作出方法 - Google Patents

病害抵抗性を持つ体細胞雑種ばれいしょおよびその作出方法

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JPH07264946A
JPH07264946A JP6083710A JP8371094A JPH07264946A JP H07264946 A JPH07264946 A JP H07264946A JP 6083710 A JP6083710 A JP 6083710A JP 8371094 A JP8371094 A JP 8371094A JP H07264946 A JPH07264946 A JP H07264946A
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somatic
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JP6083710A
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Yukio Irikura
幸雄 入倉
Akikimi Arihara
章公 在原
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HOKUREN FEDERATION OF AGRICULT COOP
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 カルス段階又は幼植物段階で病害抵抗性個体
を選抜する病害抵抗性を持つ体細胞雑種植物の作出方
法、及び病害抵抗性を持ちばれいしょ栽培種の良好な特
性を保持する体細胞雑種植物。 【効果】 ばれいしょとソラヌム属との病害抵抗性非対
称体細胞雑種を効率よく得ることができ、また、有用な
体細胞雑種植物を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、病害抵抗性を持つナス
科 (Solanaceae) 植物のプロトプラストと病害抵抗性を
持たないばれいしょ栽培種のプロトプラストを細胞融合
して得られる病害抵抗性を持つ体細胞雑種植物、および
その体細胞雑種植物を作出する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】伝統的な育種は、交配によって有用形質
を導入してきたが、遠縁あるいは不稔などで交配できな
い場合は有用形質を導入することは不可能であった。こ
れに対して、近年細胞融合技術が開発され体細胞雑種を
作出することにより、有用形質を導入することが試みら
れている。
【0003】ばれいしょにおいても、栽培種とその栽培
種と交配不能な野生種との細胞融合により葉巻ウイルス
抵抗性の個体を作出した例、栽培種とその栽培種と交配
不能なトマトの野生種との雑種植物を作出した例(公開
平1−104161号公報)などがある。しかし、この
方法により作出された体細胞雑種植物は導入しようとす
る有用形質の遺伝子のみならず、融合に用いた両方の植
物の全ての遺伝子を含んでいるため、野生種を一方に用
いた場合などではそのままでは育種の材料にはなりえな
いものである。実用的な品種あるいは育種母本として使
用するには、戻し交雑を繰り返す必要があり、希望する
形質を持つ植物を作るためには従来の育種と同様の期間
が必要である。また、融合植物が不稔となる例もあり育
種上の使用が困難な場合が多い。
【0004】融合植物におけるこれらの問題を解決する
ため、ばれいしょにおいても一方の細胞を放射線処理し
てから細胞融合し、その染色体のうち数本のみを導入す
る非対称融合法が開発されている。この方法によれば、
作出した雑種植物は対称融合法で作出した雑種植物より
も望ましい形態を示すものが多いと考えられる。しか
し、依然として染色体数が多く、戻し交配の必要性があ
る。また、戻し交配の途中で導入した染色体が早期に脱
落する可能性も高く、育種への使用を考えた場合必ずし
も十分とはいえない。更に、植物体に成長するまでは、
有用形質の遺伝子を持つ染色体の入った雑種植物かどう
かは不明であるため、融合植物のうち形態的に異常がな
い個体は、すべて植物体とした上で特性検定をしなけれ
ばならず、実用育種を目指し多数の材料を扱う場合は多
大の労力とスペースを必要とすることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第一の目的
は、病害抵抗性を持った体細胞雑種植物を効率的に作出
する方法を提供することであり、第二の目的は、病害抵
抗性を持ち栽培種の特性を保持した体細胞雑種植物及び
その作出方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、細胞融合
技術により病害抵抗性を持つ体細胞雑種植物を効率的に
作出する方法について鋭意検討を行った結果、病害抵抗
性を持つ体細胞雑種は、カルス及び幼植物の段階で病原
菌の産出毒素に抵抗性があり、かつそのようなカルス及
び幼植物は植物体になっても強度の抵抗性を示すことを
見いだし、本発明を完成した。更に、本発明者は、カル
ス又は幼植物の段階で病害抵抗性を示す個体の中には、
染色体数が栽培種と近似し、栽培種の特性を保持した個
体が含まれていることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明の第一は、病害抵抗性を持つ
ナス科 (Solanaceae) 植物のプロトプラストに放射線を
照射した後、これを前記病害に対し抵抗性を持たないば
れいしょ栽培種のプロトプラストと細胞融合させ、得ら
れた非対称融合細胞をカルスに誘導してから前記病害を
発病させる病原菌の産出する毒素を含む培地で培養し、
増殖するカルスのみを再分化培地に移植して体細胞雑種
植物を作出することを特徴とする、病害抵抗性を持つ体
細胞雑種植物の作出方法、及び、病害抵抗性を持つナス
科 (Solanaceae) 植物のプロトプラストに放射線を照射
した後、これを前記病害に対し抵抗性を持たないばれい
しょ栽培種のプロトプラストと細胞融合させ、得られた
非対称融合細胞をカルスに誘導した後、更に再分化培地
に移植して幼植物に再分化し、この幼植物に前記病害を
発病させる病原菌を接種し、その病原菌に対し抵抗性を
持つ幼植物のみを選抜して体細胞雑種植物を作出するこ
とを特徴とする、病害抵抗性を持つ体細胞雑種植物の作
出方法である(以下、「第一発明」という。)。
【0008】本発明の第二は、病害抵抗性を持つナス科
(Solanaceae) 植物のプロトプラストに40〜80KR
の放射線を照射した後、これを前記病害に対し抵抗性を
持たないばれいしょ栽培種のプロトプラストと細胞融合
させ、得られた非対称融合細胞をカルスに誘導した後幼
植物に再分化して親植物にまで成長させる体細胞雑種植
物の作出方法であって、カルスの段階、及び/又は幼植
物の段階、並びに親植物の段階で病害抵抗性を示す個体
だけを選抜し、幼植物の段階及び親植物の段階で栽培種
に近似した形態を示す個体だけを選抜し、それらの中か
ら、染色体中に含まれている前記ナス科由来の染色体が
病害抵抗性を付与する染色体断片を含む少数の染色体断
片からなる個体を選抜することを特徴とする、病害抵抗
性を持ち、かつ栽培種の特性を保持する体細胞雑種植物
の作出方法、及び病害抵抗性を持つナス科(Solanaceae)
植物と、この病害に対し抵抗性をもたないばれいしょ栽
培種との体細胞雑種植物であって、染色体中に含まれる
前記ナス科植物由来の染色体が病害抵抗性を付与する染
色体断片を含む少数の染色体断片からなる個体を選抜す
ることを特徴とする、病害抵抗性を持ち、かつ栽培種の
特性を保持する体細胞雑種植物である(以下、「第二発
明」という。)。
【0009】最初に第一発明について説明する。 (1)対象植物、対象病害等 本発明のナス科植物としては、特に制限はなく、例えば
ソラヌム・ニグラム(S.nigrum) 、ソラヌム・ピンナチ
セクタム(S.pinnatisectum) 、ソラヌム・ムリカータム
(S.muricatum) 等を用いることができる。これらの中で
も特にソラヌム・ニグラム(S.nigrum) 、ソラヌム・ピ
ンナチセクタム(S.pinnatisectum) 等を用いるのが好ま
しい。ばれいしょの栽培種としては、ソラナム・ツベロ
スム(S.tuberosum) に属する植物であれば、特に限定
されない。抵抗性付与の対象とする病害は、ばれいしょ
の栽培種に発生する病害であれば特に限定されず、例え
ば、疫病菌による疫病、乾腐病菌による乾腐病等を対象
とすることができる。 (2)融合細胞の調製 融合細胞は、プロトプラスト化した2種類の細胞を融合
させることにより調製する。この際、一方のプロトプラ
ストに放射線を照射し、染色体を断片化しておく。プロ
トプラストの調製は、特別の方法を用いる必要はなく、
セルラーゼやペクチナーゼ等の細胞壁分解酵素等を用い
た公知の方法により行うことができる。放射線の照射量
は、細胞中の染色体を有効に断片化できる量であれば特
に限定されないが、X線の場合であれば40〜80KR
が適当である。プロトプラストを融合させる方法につい
ても、特別な方法を用いる必要はなく、例えば、ポリエ
チレングリコール法、電気融合法などの公知の方法に従
って行えばよい。 (3)カルスの誘導 上記の方法により得られた非対称融合細胞を、適当な植
物ホルモン、炭素源等を含む培地中で3〜4週間程度培
養する。これにより上記融合細胞は、2mm程度の大き
さのカルスに誘導される。ここで用いる植物ホルモンと
しては、NAA、IAA、カイネチン、BAP、GA3
等を挙げることができ、炭素源としては、シュクロー
ス、グルコース等を挙げることができるが、これらに限
定されるものではない。 (4)毒素培地での培養 上記方法により得られたカルスを前記病原菌が産生する
毒素を含む培地(以下単に「毒素培地」という。)に置
床し、培養する。毒素培地は、疫病菌、乾腐病菌等の病
原菌を一ヵ月程度培養して得られる培養濾液などに適当
な植物ホルモン、炭素源、無機塩類等を添加して調製さ
れる。ここで用いる植物ホルモンとしては、2,4−
D、NAA、IAA、カイネチン、BAP等を挙げるこ
とができ、炭素源としては、シュークロース等を挙げる
ことができ、無機塩類としては、MS無機塩類を挙げる
ことができるがこれらに限定されるものではない。培地
における前記培養濾液の割合は、用いる病原菌の種類に
より異なるが、40〜80%とするのが適当である。毒
素培地中では、毒素に対して抵抗性を有するカルスのみ
が生長することができ、抵抗性を有するカルスは、一ヵ
月程度培養することにより直径5mm程度にまで生長す
る。この段階まで生長したカルスは、再分化培地に移植
される。 (5)幼植物への再分化 幼植物への再分化は、カルスを再分化培地に移植し、1
月に1〜2回程度新しい培地に植継きながら培養するこ
とにより行う。再分化培地は、特別なものを用いる必要
はなく、適当な植物ホルモン、炭素源等を含む公知の培
地、例えば、S−D培地、MS培地等を用いることがで
きる。また、ホルモンの量及び種類は、幼植物の生長段
階に応じて任意に変更することができる。通常、再分化
培地に移植後、1/2〜5ヵ月程度でシュートが形成さ
れ、更に1〜2週間後に発根が観察される。発根した幼
植物を、そのまま順化させた後鉢上げすることもできる
が、病原菌を接種し、再度の選抜に供するのが好まし
い。 (6)病原菌を用いた選抜 発根した幼植物のうち接種された病原菌に対し抵抗性を
示すものだけを選抜する。病原菌として疫病菌を用いる
場合であれば、病原菌の接種は、例えば、幼植物をMS
培地等が入った容器内に植えつけ、3〜4週間培養後に
濃度1×103個/ml〜5×103 個/mlの疫病菌
遊走子懸濁液を散布することにより行う。散布量は、遊
走子懸濁液の濃度に応じて任意に定めることができる
が、幼植物当たり50μl程度とするのが適当である。
選抜された幼植物は、順化させた後、鉢上げされ、親植
物になるまで栽培される。
【0010】野生種のプロトプラストに一定時間放射線
を照射して、染色体を断片化あるいは一部を不活化して
から細胞融合する非対称融合では、有用な遺伝子を含む
少数の染色体、特定の染色体のみを残す放射線照射条件
はない。このため病害抵抗性を持ち栽培種の特性をより
多く持っている融合植物を得るためには、多数の細胞融
合を行い、植物体とした上で特性を検定しなければなら
ない。これに対し、本発明は、早期に病害抵抗性のある
個体のみを選抜するため従来の方法に比較し、より効率
的に病害抵抗性体細胞雑種を作出することができる。
【0011】次に第二発明について説明する。ナス科植
物、及びばれいしょの栽培種は、第一発明と同様のもの
を用いることができる。また、病害抵抗性の付与の対象
とする病害についても第一発明と同様である。本発明の
体細胞雑種植物は、染色体中に含まれるナス科植物由来
の染色体が病害抵抗性を付与する染色体断片を含む少数
の染色体断片からなるという特徴を有する。ここで「少
数の」とは、作出される体細胞雑種植物が病害抵抗性以
外はナス科植物の特性を保持せず、実質的にばれいしょ
栽培種の特性を保持し得るに足る程度に少数であること
を意味し、例えば、作出された体細胞雑種の染色体が、
図5に示すDNAプローブで10%以下の多型を示す場
合は、この「少数の」に該当する。
【0012】また、本発明の体細胞雑種植物の染色体数
は、ばれいしょ栽培種の染色体数である48に近似した
45〜48である。このように染色体の構成がばれいし
ょ栽培種に近似しているため、本発明の体細胞雑種植物
の特性もばれいしょ栽培種に近似したものである。具体
的には、ばれいしょ栽培種と同様に、地上部は良好な生
態を示し、地下部では比較的良好な塊茎をつけるもので
ある。
【0013】本発明の体細胞雑種植物は、病害抵抗性を
持つナス科 (Solanaceae) 植物のプロトプラストに40
〜80KRの放射線を照射した後、病害抵抗性を持たな
いばれいしょ栽培種のプロトプラストと細胞融合して、
まず、病原菌の産出する毒素を含む培地でカルスを培養
して、抵抗性カルスのみを選抜して植物体を再分化させ
る。さらに得られた幼植物に病原菌を接種して抵抗性を
持つ植物を選抜する。但し、カルス段階及び幼植物段階
での選抜は、必ずしも両段階で行う必要はなく、いずれ
か一方の段階だけでもよい。次に、栽培器内の幼植物の
段階で形態的に栽培種に近似した植物のみを選抜し、さ
らに順化した後鉢上げし、親植物について病害抵抗性を
確認しつつ塊茎の良否について選抜を加えた後、染色体
数を決定し、RFLPで同定し、栽培種に染色体数及び
RELPのパターンが近似したものを選抜することによ
り得られる。
【0014】
〔実施例1〕
(1)プロトプラストの調製 ばれいしょの栽培種(S.tuberosum )と野生種(S.nigr
um, S.pinnatisectum)を無菌の条件下で、4週間生育
させた後、葉を細断し、0.5Mマニトール液に入れ、
4℃で16時間暗条件下に保持した。
【0015】次いで、栽培種では1.5%メイセラーゼ
P−1および0.2%マセロチームR−10を含む0.
5Mマニトール液(pH5.5)、野生種では同上液あ
るいは1.0%セルラーゼR−10および0.25%マ
セロチームR−10を含む0.5Mマニトール液(pH
5.5)にそれぞれ葉を移して、23℃、40rpmの
条件で16時間処理した。
【0016】酵素処理液を濾過して未消化物を取除き、
濾液を800rpmで5分間遠心分離して沈殿物を集
め、次いで0.57Mシュークロース溶液(pH5.
5)に懸濁して800rpmで10分間遠心分離して上
層画分を集め、さらに0.5Mマニトール液で800r
pmで5分間遠心分離を2回繰返して精製し、それぞ
れ、約1×106 個/g(f.w)の収率でプロトプラ
ストを得た。 (2)X線照射処理 上記(1)で調製した野生種のプロトプラストをシュー
クロースで浮上させ、0.5Mマニトールで1回洗浄後
1mM塩化カルシウムを含む0.5Mマニトール液に懸
濁し、¢6cmのシャーレに深さ1mmとなる程度に入
れ、氷冷皿上で、下記条件で5〜120KRのX線を照
射した。
【0017】
【0018】X線照射処理したプロトプラストは0.5
Mマニトール液で2回洗浄して融合に供した。 (3)細胞融合 上記(1)および(2)で調製した栽培種と野生種のプ
ロトプラストをそれぞれ等密度で合計が2×105 個/
mlとなるよう1mM塩化カルシウムを含む0.5Mマ
ニトール液に懸濁して混合し、¢6cmのシャーレに1
mlの量で置いて5分間放置した。次いで電気融合装置
を用い、電極間隔2mmで、周波数1MHz.、高周波
出力電圧20Vの交流を10秒間印加して、プロトプラ
ストを配列させた後、パルス幅50μs、電解強度1K
V/cmの直流パルス電流を3回印加して細胞融合し
た。 (4)融合細胞の培養 上記(3)で得た融合細胞を1.5mg/lのNAA、
0.5mg/lのゼアチン、1,220mg/lの塩化
カルシウム、63g/lのマニトールおよび1g/lの
シュークロースを含む1/2濃度のST−C培地(Shep
ard & Totten:Plant Physiol.60:313 〜316,1977)に、
5×104 個/mlの密度で懸濁し、20℃、300l
ux(16時間日長)下で培養を行った。2週後に新し
い培地を追加しながらさらに培養を続けたところ、約4
週間で0.3〜0.5mm¢のコロニーが形成された。
【0019】ついで、得られたコロニーを、20℃、
1,000〜2000luxの条件下で、2.0mg/
lのNAA、0.1mg/lのIAA、0.1mg/l
のkinetin、0.5mg/lのBAP、0.2m
g/lのGA3 、10g/lのシュークロース、10g
/lのグルコース、40g/lのマニトールおよび0.
6%寒天を含むS−C培地(Shepard:Plant Sci.Lett.1
8 327〜333,1982)に移し、3〜4週間培養したとこ
ろ、2mm程度のカルスに生長した。
【0020】これらのカルスを(5)の毒素培地による
選抜に用いるが、その対照として毒素培地を用いない、
次のような形態選抜法を行った。緑色の濃い生育旺盛な
カルス6,782コを選抜し、これらを0.1mg/l
のIAA、2.5mg/lのゼアチン、2,396mg
/lのシュークロース、36,434mg/のマニトー
ルおよび0.7%寒天を含むS−D培地(Shepard:Plan
t Sci.Lett.18 327〜333,1982 )に移して、1ヵ月毎に
2回新しい培地に植継ぎながら培養を続けた。2ヵ月後
頃に、形態形成の徴候が認められたら、1.0mg/l
のIAA、1.0mg/lのBAP、10.0mg/l
のGA3 、10g/lのシュークロース、15g/lの
マニトールおよび0.7%寒天を含むMS培地に移し
て、1ヵ月毎に新しい培地に植継ぎながら培養を続け
た。培養後2〜5ヵ月にわたってシュートが形成され、
最終的には447系統を再分化させた。
【0021】形成されたシュートは2%シュークロース
および1%寒天を含むMS培地に移し、20℃、3,0
00lux(16時間日長)の条件下で発根させた。発
根生育した植物体は節ごとに切断して、8個体以上に増
殖し、一部はinvitroの疫病抵抗性検定に供し、
一部はバーミキュライトに植付けて順化した後、培土に
植え継いで植物体を育てた。 (5)毒素培地による選抜 疫病菌(Phytophthora infestans)のrace1,2,
3,4の菌糸をHenigerの合成液体培地(Z.Allg.Microb
iol.3(2):126〜135 1963)上に浮遊させ、20℃で1ヵ
月培養し、菌糸が上層一面に発育した状態の液体培地を
毒素培地の調製に用いた。
【0022】次いで、ガーゼでまず菌糸を除去し、次に
濾紙で胞子嚢を除去し、pHを5.6に調節してから、
0.22μmのメンブランフィルターで無菌濾過して培
養濾液を調製した。この培養濾液80%容と、0.25
mg/lの2.4−D、1.0mg/lのNAA、0.
05mg/lのIAA、0.05mg/lのkinet
in、0.25mg/lのBAP、30g/lのシュー
クロースおよび6g/lの寒天を添加した20%容の滅
菌したMS無機塩液を50℃で混合し、¢9cmのシャ
ーレに30mlづつ分注し、毒素培地として用いた。
【0023】上記(4)で得た¢2mmの揃ったカルス
を毒素培地上に100個宛置床し、20℃、1,000
〜2,000lux(16時間日長)で培養を続けたと
ころ、約1ヵ月で図1に示すような¢5mm程の抵抗性
カルスが発育した。図には、増殖したカルスが3個示さ
れているが、これらが抵抗性カルスとされる。103,
548個のカルスを置床し抵抗性を示した1,896個
のカルスを選抜した。選抜率は1.8%であった。
【0024】抵抗性カルスは(4)と同様の再分化培地
で継代して、200系統を再分化させ、生育した植物体
を1節ごとに切断し、8個体以上に増殖してから、in
vitroの疫病抵抗性検定と鉢上げに用いた。 (6)疫病菌を用いた選抜 毒素培地利用による選抜、対照としての形態選抜法とも
に、再分化植物各2個体を供試し、¢3cm、高さ12
cmの試験管に植付け(培地はMS)、20℃、3,0
00lux(16時間日長)で4週間培養した植物体に
疫病菌(Phytophthora infestans)のrace1の遊走
子懸濁(3×103 個/ml)50μlを無菌的(疫病
菌以外)に噴霧接種して1晩90%の加湿をした後、2
0℃、3,000luxの培養室に戻し、7〜14日後
に、罹病性栽培種(R1 )、抵抗性野生種、圃場抵抗性
品種「リシリ」と対比して抵抗性系統を選抜した。
【0025】この結果、形態識別法を利用した非対称融
合植物の疫病抵抗性系統の選抜率は34.1%であった
が、毒素培地を利用した非対称融合植物の疫病抵抗性系
統の選抜率は59.3%を示し、毒素培地の利用の有効
性が認められた。 (7)鉢上げ後の接種検定 in vitroの疫病菌接種検定で抵抗性を示した系
統のみを供試し、各系統3個体を¢18cm素焼ポット
に鉢上げし、約20℃、日長は16時間に補光した温室
内で1ヵ月栽培した茎長30〜50cmの植物体に、ま
ず、疫病菌のrace1の遊走子懸濁液(5×103 個
/ml)を幼植物当たり50μlの割合で噴霧接種し
て、1晩加湿し、接種後7日目に、個体当り病斑数と病
斑型(罹病性拡大病斑型と抵抗性非拡大性病斑型)を調
査し、以後1週間ごとに疫病罹病度(0:無〜6:枯死
の7段階区分)の推移を調査し、抵抗性野生種、罹病性
栽培種、圃場抵抗性品種「リシリ」と対比して抵抗性を
判定した。その結果、疫病菌の侵入抵抗性を示すタイプ
と病斑の拡大抵抗性を示すタイプが認められたが、両者
のタイプを併せ持つ高度の抵抗性系統を選抜することが
できた。
【0026】疫病抵抗性系統の選抜率は34.7%であ
った。次いで、疫病菌のrace1接種検定で抵抗性を
示した68系統を上と同様の方法により供試し、疫病菌
のrace1,2,3,4の遊走子懸濁液(5×103
個/ml)を幼植物当たり50μlの割合で噴霧接種
し、上と同様の方法で抵抗性を検定した結果、いづれも
程度の差はあるものの抵抗性を示した。とくに13系統
は高度の抵抗性をもつと判定した。高度抵抗性系統の選
抜率は19.1%であった。
【0027】疫病抵抗性系統の疫病菌接種4週間後の状
態を図2に示した。図中の右2系統が疫病抵抗性非対称
融合植物であり、左1系統が融合親であるワセシロを示
す。 (8)疫病抵抗性の遺伝性の検定 非対称融合で得られた雑種系統のうち、疫病菌の人為接
種により抵抗性の認められた一部の系統について、疫病
に罹病性のばれいしょ栽培品種を交配し、その後代につ
いて(7)に示した人為接種により疫病菌のrace
1,2,3,4を接種して抵抗性を調べた。この結果を
表1に示す。 表1 非対称細胞融合によって得られた雑種系統の戻し交雑第1代の実生個体に おける疫病抵抗性検定結果 ──────────────────────────────────── 組み合わせ 検定 抵抗性検定結果 抵抗性個体 (♀×♂) 個体数 ───────── 出現頻度 抵抗性 罹病性 (%) ──────────────────────────────────── 系統A×コナフブキ 143 61 82 42.7 系統B×コナフブキ 223 49 174 22.0 系統C×コナフブキ 282 64 218 22.7 ワセシロ×コナフブキ 202 9 193 4.5 リシリ自殖 101 16 85 15.8 ──────────────────────────────────── 表1に示すように、雑種系統の後代は22.0〜42.
7%と高い頻度で抵抗性個体が出現した。これに対して
疫病に罹病性のばれいしょ栽培品種どうしの交配では、
抵抗性個体の出現率が4.5%と低く、また圃場抵抗性
のばれいしょ栽培品種リシリの自殖後代でも15.8%
しか抵抗性の個体が出現しなかった。
【0028】これらの結果から、非対称融合で得られた
疫病抵抗性系統の疫病抵抗性は明確に遺伝することが明
らかである。 (9)雑種検定 これまでに示した方法で作出した非対称細胞融合系統
で、高度に疫病抵抗性を示した系統について、染色体数
を測定すると共に、RFLP法による解析を行い雑種性
の検定をした。
【0029】染色体数はFeulgenの核染色による押しつ
ぶし法により測定し、RFLP法は連鎖関係が既知であ
るDNAプローブを用いて、抽出した核DNAのサザン
ハイブリダイゼーションにより行った。この結果、植物
体の形態は全て栽培種型を示すと共に、染色体数はばれ
いしょ栽培種(染色体数12組・48本)と同等か、ご
く近い45〜48本であった。また、Cornell 大学のS.
D.Tanksleyらのグループが開発した113個のプローブ
(図5に示す。)を用いてRFLP法により染色体構成
を調べたが、表2、図3に示すようにどの系統も少数の
プローブとのみで野生種との雑種性が認められた。 表2 非対称細胞融合によって得られた系統の雑種検定(RFLP)結果 ──────────────────────────────────── 系統名 形態 染色体数 113プローブ中 雑種性を示したプローブ数 ──────────────────────────────────── 系統E 栽培種型 48 2 系統F 〃 47 6 系統G 〃 46 5 系統H 〃 47 4 系統I 〃 47 3 系統J 〃 45 3 ──────────────────────────────────── これらの結果から、本発明の非対称細胞融合によって得
られた系統は、従来の発明にあるような栽培種に野生種
の染色体が数本入った非対称体細胞雑種とは異なり、断
片化されていない大きな染色体は含まれず、栽培種の染
色体に野生種の染色体断片が一部挿入された、ばれいし
ょ栽培種にごく近い非対称雑種系統であることが明確に
なった。
【0030】このことは、図4に示すように塊茎を形成
しないソラヌム・ニグラムとワセシロの非対称体細胞雑
種が栽培種並みの塊茎を形成することからも明らかであ
る。なお、図中の上段左がワセシロ、上段右がソナヌム
・ニグラム、下段が非対称融合植物の3系統である。
【0031】
【発明の効果】本発明の方法によれば、ばれいしょ(S.
tuberosum )とナス科 (Solanaceae)植物との病害抵抗
性非対称体細胞雑種を効率よく得ることができる。ま
た、本発明の体細胞雑種植物は、病害抵抗性を持ち、か
つ、ばれいしょ栽培種の良好な特性を保持するため、産
業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 毒素培地における抵抗性非対称融合カルスの
選抜を示す写真である。
【図2】 疫病菌接種4週間後の疫病抵抗性非対称融合
植物と融合親ワセシロを示す写真である。
【図3】 DNAプローブによる非対称融合系統RFL
P解析を示す写真である。
【図4】 融合親の塊茎および地下部と非対称融合植物
の塊茎を示す写真である。
【図5】 Cornell 大学のS.D.Tanksleyらのグループが
開発した113個のプローブを示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年8月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】 毒素培地における抵抗性非対称融合カルスの
生物の形態を示す写真である。
【図2】 疫病菌接種4週間後の疫病抵抗性非対称融合
植物と融合親ワセシロの生物の形態を示す写真である。
【図3】 DNAプローブによる非対称融合系統RFL
P解析の電気泳動を示す写真である。
【図4】 融合親の塊茎および地下部と非対称融合植物
の塊茎の生物の形態を示す写真である。
【図5】 Cornell大学のS.D.Tanksleyらのグループが
開発した113個のプローブを示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 病害抵抗性を持つナス科 (Solanaceae)
    植物のプロトプラストに放射線を照射した後、これを前
    記病害に対し抵抗性を持たないばれいしょ栽培種のプロ
    トプラストと細胞融合させ、得られた非対称融合細胞を
    カルスに誘導してから前記病害を発病させる病原菌の産
    出する毒素を含む培地で培養し、増殖するカルスのみを
    再分化培地に移植して体細胞雑種植物を作出することを
    特徴とする、病害抵抗性を持つ体細胞雑種植物の作出方
    法。
  2. 【請求項2】 病害抵抗性を持つナス科 (Solanaceae)
    植物のプロトプラストに放射線を照射した後、これを前
    記病害に対し抵抗性を持たないばれいしょ栽培種のプロ
    トプラストと細胞融合させ、得られた非対称融合細胞を
    カルスに誘導した後、更に再分化培地に移植して幼植物
    に再分化し、この幼植物に前記病害を発病させる病原菌
    を接種し、その病原菌に対し抵抗性を持つ幼植物のみを
    選抜して体細胞雑種植物を作出することを特徴とする、
    病害抵抗性を持つ体細胞雑種植物の作出方法。
  3. 【請求項3】 病害抵抗性を持つナス科 (Solanaceae)
    植物のプロトプラストに40〜80KRの放射線を照射
    した後、これを前記病害に対し抵抗性を持たないばれい
    しょ栽培種のプロトプラストと細胞融合させ、得られた
    非対称融合細胞をカルスに誘導した後幼植物に再分化し
    て親植物にまで成長させる体細胞雑種植物の作出方法で
    あって、カルスの段階、及び/又は幼植物の段階、並び
    に親植物の段階で病害抵抗性を示す個体だけを選抜し、
    幼植物の段階及び親植物の段階で栽培種に近似した形態
    を示す個体だけを選抜し、それらの中から、染色体中に
    含まれている前記ナス科由来の染色体が病害抵抗性を付
    与する染色体断片を含む少数の染色体断片からなる個体
    を選抜することを特徴とする、病害抵抗性を持ち、かつ
    栽培種の特性を保持する体細胞雑種植物の作出方法。
  4. 【請求項4】 病害抵抗性を持つナス科 (Solanaceae)
    植物と、この病害に対し抵抗性をもたないばれいしょ栽
    培種との体細胞雑種植物であって、染色体中に含まれる
    前記ナス科植物由来の染色体が病害抵抗性を付与する染
    色体断片を含む少数の染色体断片からなる病害抵抗性を
    持ち、かつ栽培種の特性を保持する体細胞雑種植物。
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