JPH07278331A - ポリテトラフルオロエチレン多孔質体とその製造方法 - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレン多孔質体とその製造方法

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JPH07278331A
JPH07278331A JP6096880A JP9688094A JPH07278331A JP H07278331 A JPH07278331 A JP H07278331A JP 6096880 A JP6096880 A JP 6096880A JP 9688094 A JP9688094 A JP 9688094A JP H07278331 A JPH07278331 A JP H07278331A
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章 原田
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敦史 宇野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 透過性に優れ、しかも機械的強度、寸法安定
性、耐熱性が良好なPTFE多孔質体を提供すること。 【構成】 ポリテトラフルオロエチレン・ファインパウ
ダーのペースト押出によって得られる未燒結成形体を、
該樹脂の融点未満の温度で、延伸後の成形体の縦方向と
横方向の引張強度比が1:3〜3:1の範囲となるよう
な縦横の延伸比率で、かつ、全延伸倍率が40倍(面積
比)以上となるように二軸延伸した後、完全燒結するこ
とを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質体の
製造方法。IPAバブルポイント(A)とIPA流量
(B)とが、下記の関係式〔I〕を満足することを特徴
とするポリテトラフルオロエチレン多孔質体。 log(B)≧−1.528×log(A)+1.78 〔I〕 IPAバブルポイント(A)と空気流量(C)とが、下
記の関係式〔II〕を満足することを特徴とするポリテ
トラフルオロエチレン多孔質体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、メンブランフィルタ
ー、電池用隔膜、電線被覆用材料等として有用なポリテ
トラフルオロエチレン(以下、PTFEと略記)多孔質
体に関し、さらに詳しくは、透過性、機械的強度、及び
寸法安定性に優れたPTFE多孔質体とその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】PTFE多孔質体は、例えば、燃料電池
用隔膜、メンブランフィルター、分析装置、電線、人工
血管など広範な分野で使用されている。近年、精密濾過
フィルターや高機能膜用支持体、エアフィルター等の分
野において、従来品よりも一段と高い透過性、機械的強
度、及び寸法安定性に優れたPTFE多孔質体が求めら
れている。
【0003】従来、PTFE多孔質体を製造する方法と
しては、例えば、(1)PTFEのペースト押出により
得られる未燒結成形体を融点以下の温度で延伸し、しか
る後に燒結する方法(特公昭42−13560号公
報)、(2)燒結されたPTFE成形体を徐冷し、結晶
化を高めた後、延伸倍率1.5〜4倍に一軸延伸する方
法(特公昭53−42794号公報)、(3)PTFE
ファインパウダーのペースト押出によって得られる未燒
結成形体を、そのファインパウダーの粉末の融点以下で
あって、該ファインパウダーから得られる成形品(燒結
体)の融点以上の温度において、示差走査熱量計におけ
る結晶融解図上前記ファインパウダーの吸熱ピークの変
化を生ぜず、かつ、該成形体の比重が2.0以上となる
ように加熱処理した後、該粉末の融点以下の温度で延伸
する方法(特開昭58−145735号公報)、(4)
数平均分子量が100万以下であるPTFEファインパ
ウダーのペースト押出によって得られる成形体を、燒結
後熱処理して結晶化度を高めた後、次いで少なくとも1
軸方向に延伸を行なう方法(特開昭64−78823号
公報)等が知られている。
【0004】しかしながら、前記(1)の未燒結成形体
を延伸する方法では、透過性に優れた多孔質体を得るに
は限度があった。(2)の燒結品を延伸する方法では、
延伸倍率が高くとれないことから、気孔率が低く、透過
性の低い膜しか得られない。(3)の加熱処理した後、
延伸する方法では、比較的小孔径を得やすいものの未だ
不充分であり、また、耐熱性も充分ではない。(4)の
数平均分子量が100万以下のPTFEの燒結体を延伸
する方法では、比較的高い気孔率が得られるものの、延
伸倍率を高くとれないことから、透過性の点で充分では
ない。
【0005】また、PTFEファインパウダーのペース
ト押出によって得られる成形体を圧縮して緻密化処理し
た後、一軸または二軸延伸することにより、高い強さと
粗い微小構造のPTFE多孔質体を得ることが提案され
ている(特開昭59−145124号公報)。しかし、
このPTFE多孔質体は、透過性が充分ではなく、耐熱
性や寸法安定性も不充分である。
【0006】最近、数平均分子量が200万程度のやや
低分子量のPTFEを使用することにより、薄く高通気
性のPTFE多孔質体を得ることが提案されているが
(特表平3−504876号公報)、例えば、その実施
例3に示されているように、引張強度が45g/cm2
程度であり、強度的には不充分なものである。
【0007】PTFEファインパウダーのペースト押出
によって得られる未燒結成形体を、示差走査熱量計によ
る結晶融解図上該ファインパウダーの吸熱ピーク位置
と、その燒結体の吸熱ピーク位置との間に少なくとも1
つのピークが生じるように加熱処理した後、少なくとも
1方向に延伸することにより、小孔径で、透過性及び耐
熱性に優れたPTFE多孔質体を得る方法が提案されて
いる(特開平3−174452号公報)。この方法によ
れば、優れた透過性を有するPTFE多孔質体を得るこ
とができるが、透過性、強度、寸法安定性、耐熱性など
のさらなる改善が求められる。
【0008】PTFE半焼成体を二軸方向に伸長面積倍
率で少なくとも50倍、好ましくは少なくとも100
倍、さらに好ましくは少なくとも250倍延伸し焼成す
ることにより、空気及び気体の圧力損失の小さいエアフ
ィルター用PTFE多孔膜を得ることが提案されている
(特開平5−202217号公報)。しかし、この多孔
膜は、高流量ではあるが、強度が弱く、耐熱性も充分で
はない。
【0009】このように、従来の技術では、透過性に優
れ、しかも強度、寸法安定性、耐熱性が良好なPTFE
多孔質体を得る点では、不充分である。また、従来のP
TFE多孔質体は、溶媒に浸漬した後の収縮率(溶媒収
縮率)が大きく、例えば、濾過材として、有機溶剤蒸気
の濾過に使用したり、あるいは有機溶剤で洗浄した場合
に、厚さ方向に収縮して、気体流量が低下するという問
題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、透過
性に優れ、しかも機械的強度、寸法安定性、耐熱性が良
好なPTFE多孔質体を提供することにある。本発明者
らは、従来技術の有する問題点を克服するために鋭意研
究した結果、PTFEファインパウダーのペースト押出
によって得られる未燒結成形体を、PTFE樹脂の融点
(約327℃)未満の温度で、延伸後の縦横両方向の引
張強度比が1:3〜3:1となるような延伸比率で、全
延伸倍率40倍(面積比)で二軸延伸した後、それを完
全燒結することにより、従来品と比べて、同じ孔径(バ
ブルポイント)で高い透過性を有し、しかも完全燒結す
ることにより、繊維が溶融して繊維径が太くなり、高強
度化すると共に、熱収縮や溶剤収縮がなくなるという優
れた諸特性を有するPTFE多孔質体の得られることを
見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0011】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、ポリテトラフルオロエチレン・ファインパウダーの
ペースト押出によって得られる未燒結成形体を、該樹脂
の融点未満の温度で、延伸後の成形体の縦方向と横方向
の引張強度比が1:3〜3:1の範囲となるような縦横
の延伸比率で、かつ、全延伸倍率が40倍(面積比)以
上となるように二軸延伸した後、完全燒結することを特
徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質体の製造方
法が提供される。(ただし、「完全燒結」とは、示差走
査熱量計で燒結試料を昇温速度10℃/分で昇温した際
に、約327℃に吸熱ピークが現れ、かつ、その吸熱量
が20J/g未満となるまで燒結することを意味す
る。)
【0012】また、本発明によれば、下記で定義される
IPAバブルポイント(A)とIPA流量(B)とが、
下記の関係式〔I〕を満足することを特徴とするポリテ
トラフルオロエチレン多孔質体が提供される。 log(B)≧−1.528×log(A)+1.78 〔I〕 〔ただし、IPAバブルポイント(A)は、イソプロピ
ルアルコールを使用し、ASTM−F−316の方法に
より測定したバブルポイント(kg/cm2)である。
IPA流量(B)は、イソプロピルアルコールを使用
し、ASTM−F−317の方法により測定した流量
(ml/cm2/min)である。〕
【0013】さらに、本発明によれば、下記で定義され
るIPAバブルポイント(A)と空気流量(C)とが、
下記の関係式〔II〕を満足することを特徴とするポリ
テトラフルオロエチレン多孔質体が提供される。 log(C)≧−1.415×log(A)+2.60 〔II〕 〔ただし、IPAバブルポイント(A)は、イソプロピ
ルアルコールを使用し、ASTM−F−316の方法に
より測定したバブルポイント(kg/cm2)である。
空気流量(C)は、ASTM−D−726の方法で測定
したガレー秒から「空気流量(C)=930/ガレー秒
(sec)」の式により換算される流量(ml/cm2
/min)である。〕
【0014】以下、本発明について詳述する。 (PTFEファインパウダー)本発明で使用するPTF
Eは、ファインパウダーであり、通常、数平均分子量が
50万以上、好ましくは200万〜2000万のものが
用いられる。
【0015】(ペースト押出)本発明におけるペースト
押出は、従来から未燒結PTFE成形体の製造法として
知られているペースト押出法による。ペースト押出法で
は、通常、PTFE100重量部に対して、液状潤滑剤
15〜40重量部、好ましくは20〜30重量部を配合
して押出成形を行なう。液状潤滑剤としては、従来から
ペースト押出法で用いられている各種の潤滑剤が使用で
き、具体例として、ソルベントナフサ、ホワイトオイル
などの石油系溶剤・炭化水素油、トルオール類、ケトン
類、エステル類、シリコーンオイル、フルオロカーボン
オイル、これらの溶剤にポリイソブチレン、ポリイソプ
レンなどのポリマーを解かした溶液、これら2つ以上の
混合物、表面活性剤を含む水または水溶液などを挙げる
ことができる。
【0016】ペースト押出による成形は、PTFEファ
インパウダー及び液状潤滑剤を含む混合物を、PTFE
の燒結温度以下(約327℃以下)、通常は室温付近
で、所定形状に成形することにより行われる。ペースト
押出に先立って予備成形を行ってもよい。したがって、
一般には、上記混合物を例えば1〜50kg/cm2
度の圧力で予備成形(加圧予備成形)してから、ペース
ト押出機により押出し、またはカレンダーロールなどに
より圧延し、あるいは押出した後圧延するなどして所定
形状の成形体を製造する。
【0017】成形体の形状は、シート、チューブ、ロッ
ド、ストリップ、フィルムなどがあり、圧延すれば薄い
シートを得ることができる。成形体の形状は、特に限定
されず、後述する加熱処理の後、延伸し得るものであれ
ばよい。液状潤滑剤は、ペースト押出による成形体を抽
出、溶解または加熱蒸発などにより成形体から除去す
る。シリコーンオイルやフルオロカーボンなどの比較的
沸点が高い液状潤滑剤を使用するときは、抽出による除
去が好ましい。
【0018】なお、液状潤滑剤のほかに目的に応じて他
の物質を含ませることができる。例えば、着色のための
顔料、耐摩耗性の改良、低温流れの防止や気孔の生成を
容易にする等のためのカーボンブラック、グラファイ
ト、シリカ粉、アスベスト粉、ガラス粉、ガラス繊維、
ケイ酸塩類や炭酸塩類などの無機充填剤、金属粉、金属
酸化物粉、金属硫化物粉などを添加することができる。
また、多孔構造の生成を助けるために、加熱、抽出、溶
解等により除去または分解され得る物質、例えば、塩化
アンモニウム、塩化ナトリウム、他のプラスチック、ゴ
ム等を粉末または溶液の状態で配合することができる。
【0019】(延 伸)本発明では、PTFEファイン
パウダーのペースト押出によって得られる未燒結成形体
を、該樹脂の融点未満の温度で、延伸後の成形体の縦方
向と横方向の引張強度比が1:3〜3:1の範囲となる
ような縦横の延伸比率で、かつ、全延伸倍率が40倍
(面積比)以上となるように二軸延伸する。延伸は、シ
ートやロッド、チューブなどの所定形状に成形し、得ら
れた成形体を通常の方法で機械的に引き伸ばして行うこ
とができる。例えば、シートの場合には、1つのロール
から他のロールへと巻き取る際に、巻き取り速度を送り
速度より大きくしたり、あるいはシートの相対する2辺
をつかんでその間隔を広げるように引き伸ばしたりして
延伸することができる。また、逐次二軸延伸、同時二軸
延伸など各種の延伸法が採用できる。
【0020】延伸温度は、通常、PTFE樹脂の融点未
満の温度(約327℃未満)、好ましくは0〜300℃
の範囲である。低い温度での延伸は、比較的孔径の大き
い、気孔率の高い多孔質体などを生じ易く、高い温度で
の延伸は、孔径の小さい、緻密な多孔質体を生じ易い。
そこで、これらの条件を組み合わせることにより、孔径
や気孔率をコントロールすることができる。
【0021】ペースト押出による未燒結成形体は、押
出、圧延工程において、すでに縦(長さ方向)及び横
(幅方向)に配向しており、特に長さ方向の強度が強
い。圧延厚みを薄くすればするほど、長さ方向の強度は
増す。本発明では、延伸工程において、延伸後の成形体
(完全燒結品)の縦横の引張強度比が1:3〜3:1、
好ましくは1:2〜2:1の範囲となるように延伸する
点に特徴を有する。このように縦横の強度比を調整する
ことにより、縦方向及び横方向の繊維長さが等しくな
り、丸い孔形状となる。
【0022】延伸倍率を高くすると、繊維化が進むと同
時に、繊維径は細く緻密となり、見掛け上の孔径は小さ
くなり、IPAバブルポイントは上がる。延伸倍率は、
少なくとも40倍(面積比)とするが、気孔率を高く、
また、薄膜化するためには、好ましくは100倍以上、
より好ましくは1000倍以上延伸することが望まし
い。延伸は、200℃程度の高温で一段延伸した後、さ
らに高温条件下で二段目の延伸を行ってもよい。二軸延
伸する場合、通常、一方向に各2〜50倍(長さ比)延
伸し、縦横延伸比は1:10〜10:1の範囲が適当で
ある。
【0023】(燒 結)本発明では、二軸延伸した成形
体を完全燒結する点に特徴を有する。ここで、完全燒結
とは、示差走査熱量計(DSC)で燒結試料を昇温速度
10℃/分で昇温した際に、約327℃(327℃±1
℃)に吸熱ピークが現れ、かつ、その吸熱量が20J/
g未満となるまで燒結することを意味する。
【0024】PTFEファインパウダーは、DSCによ
る結晶融解図(DSCチャート)上で、347℃付近
(347℃±2℃)に吸熱ピークを示す。この吸熱ピー
クは、PTFEファインパウダーのペースト押出による
未燒結の成形体及び延伸品にも現れる。これをDSCチ
ャートにおけるPTFEファインパウダーの融点または
吸熱ピーク位置という。この347℃付近の吸熱ピーク
は、通常、338℃付近にショルダーまたは他の低いピ
ークを伴うが、ファインパウダーの種類によっては、こ
れらのショルダーや他のピークが現れないものもある。
【0025】PTFEファインパウダーのペースト押出
によって得られる未燒結成形体の延伸品を、ファインパ
ウダーの融点以上の温度、通常は350〜500℃に保
った加熱炉中で、一般に数分間以内の時間、加熱する
と、DSCチャート上347℃付近のピークが消失して
行き、次第に327℃付近に吸熱ピークが現れてくる。
加熱時間を充分に長くとり、例えば、10分間以上高温
で加熱すると、成形体を完全燒結することができる。表
1に、DSCで成形体を昇温速度10℃/分で昇温した
際に現れる吸熱ピークと吸熱量について、成形体の燒結
状態との関連で示す。
【0026】
【表1】
【0027】本発明では、二軸延伸した成形体を、約3
27℃に吸熱ピークが現れ、かつ、その吸熱量が20J
/g未満となるまで完全燒結することが必要である。吸
熱ピークが327℃付近に現れ、延伸成形体が燒結され
ていても、吸熱量が20J/g以上ある場合には、溶媒
収縮率及び熱収縮率がゼロとはならず、両方の条件を満
足する場合においてのみ達成される。
【0028】また、このように完全燒結を行うことによ
り、延伸成形体の引張強度が急激に高くなり、PTFE
多孔質体の単体膜でフィルター化できる強度が付与され
る。PTFEファインパウダーのペースト押出によって
得られる未燒結成形体を高延伸倍率で二軸延伸すると、
PTFEの塊りである結節がなくなり、通常の繊維−結
節構造の多孔質体ではなく、実質的に繊維のみからなる
微細構造を有する多孔質体が形成される。このように多
孔質体を繊維化させ、その繊維を緻密かつ細くすること
で、高気孔率化させ、高流量化を達成することができ
る。このような繊維化した延伸成形体を完全燒結する
と、繊維が溶融し合って繊維径が太くなり、高強度化す
ると同時に、熱収縮及び溶剤収縮が防止されたPTFE
多孔質体が得られる。
【0029】(PTFE多孔質体)本発明の製造方法に
より得られるPTFE多孔質体は、未燒結成形体を高延
伸倍率で二軸延伸し、かつ、完全燒結されているため、
繊維化が進み、ほぼ繊維のみの微細構造を有するものと
なる。図1に、本発明のPTFE多孔質体表面の走査型
電子顕微鏡(SEM)写真を示す(約3000倍で写真
を撮り、それを拡大して示す)。図1中、白い線状のも
のが繊維を示し、黒い部分は、孔である。これに対し
て、図2に、結節−繊維の微細構造を有する従来のPT
FE多孔質体(例えば、特公昭42−13560号公報
記載の方法で得られたもの)表面のSEM写真を示す
が、白い部分に塊り(結節)のあることが分かる。
【0030】本発明の製造方法により得られるPTFE
多孔質体は、ペースト押出によって得られる成形体の形
状により、例えば、シート状、チューブ状など各種の形
状をとることができ、高い気孔率をもち、透過性に優れ
る。また、本発明のPTFE多孔質体は、従来品と比べ
て、高度の耐熱性(低熱収縮率)と寸法安定性(低溶媒
収縮率)を有している。本発明のPTFE多孔質体の孔
径は、PTFE成形体の結晶化度や延伸倍率などにより
変化するが、通常、0.01〜10μm程度である。
【0031】また、本発明の方法では、延伸倍率を大き
くすることができるので、微細孔であるとともに、気孔
率を80〜95%程度と高くすることが可能である。な
お、後で定義するように、孔径についてはバブルポイン
トで、透過性についてはガレー秒で評価することができ
る。PTFE多孔質体の厚さは、延伸倍率を変化させる
ことにより、種々のものを作成することができ、例え
ば、厚さ50μm以下、さらには10〜30μm程度の
薄膜でも容易に得ることができる。
【0032】より具体的に、本発明のPTFE多孔質体
は、(1)膜厚50μm以下の薄膜とすることが可能で
あり、(2)IPAバブルポイントは、通常、1.0k
g/cm2以上であり、(3)IPA流量は、通常、3
0ml/cm2/minで、従来品と比較して、同一孔
径(バブルポイント)で流量が向上しており、(4)ガ
レー秒は、通常、8.0sec以下であり、(5)後記
する測定法による熱収縮率及びIPAを用いた溶媒収縮
率が共にゼロ%であり、(6)縦方向と横方向の引張強
度比が1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1であ
り、かつ、高強度である。
【0033】本発明のPTFE多孔質体は、溶媒に対し
て安定している。従来のPTFE多孔質体は、イソプロ
パノール(IPA)などの溶媒に浸漬後、拘束して乾燥
すると、厚さ方向に収縮して厚さが薄くなるという問題
点を有していた。溶媒収縮率は、気体流量(ガレー秒:
気体流量の逆数)と強い相関がある。特に、厚さが薄く
なることにより、PTFE多孔質体の気体流量が著しく
悪くなり、ひどい場合には、溶媒浸漬前の気体流量の1
/2〜1/4となる。
【0034】そこで、従来のPTFE多孔質体を、例え
ば、濾過材(フィルター)として空気および有機溶剤蒸
気の濾過に使用すると、経時により厚み方向に収縮して
気体流量が低下する。また、多量濾過を行うために、フ
ィルターの表面積を増やすべくプリーツ状に加工して、
小型容器内に収納した濾過装置(カートリッジ)は、洗
浄を行なう際、溶媒を使用するので、洗浄後に厚み方向
に収縮して気体流量が低下する。ところが、本発明のP
TFE多孔質体は、完全燒結しているので、溶媒収縮し
ない。
【0035】本発明のPTFE多孔質体の優れた寸法安
定性及び透過性などの特性は、そのミクロな構造による
ものと考えることができる。第2図に示したように、従
来のPTFE多孔質体の構造は、樹脂の塊りである結節
と、それを結ぶ繊維と、これらに囲まれた微細な空孔か
らなっている。ところが、第1図に示した本発明のPT
FE多孔質体は、結節部がほとんどなく、本質的に繊維
のみからなる構造を有しており、この構造により、溶媒
による収縮が起こりにくくなり、したがって気体流量の
悪化が最小限に抑えられるものと考えられる。
【0036】本発明のPTFE多孔質体が繊維のみから
なる構造を有している理由は、延伸後の成形体の縦横引
張強度比が1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1
になるような延伸比率で、かつ、延伸倍率40倍(面積
比)以上の二軸延伸を行うことにより、PTFEの繊維
化が進み易い構造になるためと推定される。この繊維化
は、延伸すればするほど促進され、本質的に繊維のみか
らなる構造となる。本発明による多孔質膜は、微細な孔
と高い気孔率を有し、液体、気体の透過性に優れるとと
もに、均一度が高く、平滑な面を有し、機械的強度が高
く、非粘着性で、低摩擦性を備え、しかも柔軟性を有し
ている。さらに、熱収縮率及び溶媒収縮率が小さく、耐
熱性や寸法安定性が良好である。
【0037】本発明のPTFE多孔質体は、実施例で詳
述するように、下記の関係式〔I〕及び〔II〕を満足
するものであり、同一孔径(同一バブルポイント)の従
来品と比較して、流量に優れるものである。即ち、本発
明のPTFE多孔質体は、IPAバブルポイント(A)
とIPA流量(B)とが、下記の関係式〔I〕を満足す
る。 log(B)≧−1.528×log(A)+1.78 〔I〕 また、本発明のPTFE多孔質体は、IPAバブルポイ
ント(A)と空気流量(C)とが、下記の関係式〔I
I〕を満足する。 log(C)≧−1.415×log(A)+2.60 〔II〕 勿論、本発明のPTFE多孔質体は、これら両式の関係
を同時に満足する。
【0038】そこで、本発明のPTFE多孔質体は、例
えば、濾過材、隔膜、摺動材、非粘着材等として広い用
途範囲をもつものであるが、特に前記のような特徴点を
生かし、精密濾過用フィルター、高機能膜用支持体、エ
アフィルターなどとして好適である。そして、半導体、
医療、バイオなどの分野で、薬品の濾過フィルター、血
奨成分の分離膜、人工肺用隔膜など広範な用途に利用で
きる。
【0039】
【実施例】以下、本発明について、実施例を挙げて具体
的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定さ
れるものではない。 <物性の測定方法>本発明における物性の測定方法は、
次のとおりである。 (1)DSCにおける吸熱ピーク温度(℃)と吸熱量
(J/g) 示差走査熱量計(DSC)により、試料約10mgを用
い、昇温速度10℃/分で測定した。 (2)IPAバブルポイント(kg/cm2) イソプロピルアルコールを用いて、ASTM−F−31
6の方法により測定したもので、この数値が大きい程小
さい孔径であることを示す。 (3)IPA流量(ml/cm2/min) イソプロピルアルコールを用いて、ASTM−F−31
7の方法により測定したもので、差圧は70cmHgと
した。この流量が大きい程透過性が良好であることを示
す。
【0040】(4)熱収縮率(%) シート状の試料を150℃で30分放置後、その収縮率
を測定した。 (5)溶媒収縮率(%) シート状の試料を溶媒(IPA)に浸漬した後、拘束し
て乾燥し、浸漬前後の厚さの収縮率を以下の式で求め
た。 収縮率(%)=[(T−t)/T]×100 (式中、Tは、溶媒浸漬前の厚さで、tは、溶媒浸漬後
の厚さである。) (6)ガレー秒(sec) ガレー秒は、差圧12.4mmH2Oで、試料1平方イ
ンチ(6.45cm2)を100ccの空気が流れるの
に要する時間であり、ASTM−D−726の方法にて
測定した。 (7)引張強度(kg/cm2) 引張強度は、ASTM−D−882に準拠して、縦横両
方向から測定した。
【0041】[実施例1]ダイキン工業社製PTFEフ
ァインパウダーF−104(分子量400〜500万)
1000gに、液状潤滑剤としてホワイトオイル230
gを加えて均一に混和し、圧力50kg/cm2で加圧
して予備成形後、ペースト押出機により押出し、圧延に
より0.2mm厚のシート状に成形した。これを、トリ
クロロエチレン中に浸漬し、液状潤滑剤を抽出除去し
た。このシートを200℃に加熱し、シートの長手方向
に500%、幅方向に1200%に延伸した。次に、延
伸したシートを収縮しないように固定し、雰囲気温度3
50℃で時間を1、3、5、及び10分と変化させて保
持した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】表2から明らかなように、DSCチャート
で、吸熱ピーク温度が327℃で、吸熱量が15J/g
と完全燒結したとき、PTFE多孔質シートの熱収縮率
及びIPA溶媒収縮率が共に0%となった。引張強度も
完全燒結することで、非常に強くなっている。
【0044】[実施例2]ダイキン工業社製PTFEフ
ァインパウダーF−104(分子量400〜500万)
1000gに、液状潤滑剤としてホワイトオイル230
gを加えて均一に混和し、圧力50kg/cm2で加圧
して予備成形後、ペースト押出機により押出し、圧延に
より0.3mm厚のシート状に成形した。これを、トリ
クロロエチレン中に浸漬し、液状潤滑剤を抽出除去し
た。このシートを200℃に加熱したロールで、一軸方
向(長手方向)に100、300、及び500%と延伸
倍率を変えて延伸した。この延伸シートを横方向に10
00及び2000%と延伸倍率を変えて延伸した。二軸
延伸シートは、収縮しないように束縛して、350℃の
雰囲気下に15分間保持した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】表3に示すように、各試料は、ほぼ同様の
孔径(IPAバブルポイント)であるにもかかわらず、
縦横の引張強度比が1:3〜3:1の範囲にあり、か
つ、全延伸倍率が40倍以上になると、高性能となるこ
とが分かる。延伸倍率を増大させると、繊維化が進み、
繊維径は細く緻密になり、見掛けの孔径は小さくなる。
これを完全燒結すると引張強度が高くなる。延伸倍率を
増大させても引張強度の低下が小さいのは、繊維径がよ
り細く緻密になっているためと推定される。
【0047】[実施例3]前記したとおり、延伸条件を
変えて、低い温度で延伸すると大孔径の多孔質体が、高
い温度で延伸すると小孔径の多孔質体が得られる。そこ
で、実施例1で使用したPTFEファインパウダーを用
いて、全延伸倍率を40倍で一定にし、延伸条件を変え
て、具体的には、延伸時のロール温度を100℃、15
0℃、200℃及び320℃と変化させて、各種孔径
(IPAバブルポイント)を有するPTFE多孔質体を
作成した。得られた各試料について、IPAバブルポイ
ントとIPA流量との関係を図3(白丸)に、また、I
PAバブルポイントと空気流量との関係を図4(白丸)
に示す。
【0048】(1)図3のデータ(白丸)から、log
(IPAバブルポイント)とlog(IPA流量)との
関係について一次回帰直線を作成すると、次式が得られ
る。 log(B)=−1.528×log(A)+1.78 ただし、(A)は、IPAバブルポイントであり、
(B)は、IPA流量である。この式に基づく直線は、
図3の1の直線である。全延伸倍率を40倍より大きく
すると、さらにIPA流量を増大させることができる。
したがって、本発明のPTFE多孔質体は、式〔I〕を
満足する高性能のものが得られる。 log(B)≧−1.528×log(A)+1.78 〔I〕 つまり、図3の右上の斜線部分をカバーする領域であ
る。
【0049】ところで、図3には、最も近い先行技術
(特開平2−236284号公報)の方法に基づいて、
同様に各種孔径(IPAバブルポイント)を有するPT
FE多孔質体を作成し、同様に、IPAバブルポイント
とIPA流量との関係を示すデータ(黒丸)から次式を
算出した。 log(B)=−1.528×log(A)+1.43 この式に基づく直線は、図3の2の直線である。
【0050】図3より、IPAバブルポイントとIPA
流量との関係から、次の一般式で表される関係が成立す
ることが分かる。 log(B)=a×log(A)+b (ただし、aは、傾きであり、bは、切片である。) ここで、本発明品と従来品とを対比すると、aは、−
1.528で一定であることが分かる。従来品では、切
片bが1.43であるのに対して、本発明品では1.7
8であり、膜性能に優れているが、さらに延伸倍率を増
大させれば、高性能品が得られる。
【0051】(2)図4のデータ(白丸)から、log
(IPAバブルポイント)とlog(空気流量)との関
係について一次回帰直線を作成すると、次式が得られ
る。 log(C)=−1.415×log(A)+2.60 ただし、(A)は、IPAバブルポイントであり、
(C)は、ガレー秒から「空気流量(C)=930/ガ
レー秒(sec)」の式により換算される空気流量であ
る。この式に基づく直線は、図4の3の直線である。本
発明品は、延伸倍率を増大させると、より空気流量を高
めることができるから(例えば、切片が2.60〜3.
00)、式〔II〕を満足する高性能品が得られる。 log(C)≧−1.415×log(A)+2.60 〔II〕
【0052】ところで、図4には、最も近い先行技術
(特開平2−236284号公報)の方法に基づいて、
同様に各種孔径(IPAバブルポイント)を有するPT
FE多孔質体を作成し、同様に、IPAバブルポイント
と空気流量との関係を示すデータ(黒丸)から次式を算
出した。 log(C)=−1.415×log(A)+2.25 これを図4の直線4として示す。
【0053】また、他の先行技術(特開平59−145
124号公報)の方法に基づいて、同様に各種孔径(I
PAバブルポイント)を有するPTFE多孔質体を作成
し、同様に、IPAバブルポイントと空気流量との関係
を示すデータ(三角)から次式を算出した。 log(C)=−1.415×log(A)+1.16 これを図4の直線5として示す。
【0054】図4より、IPAバブルポイントと空気流
量との関係から、次の一般式で表される関係が成立する
ことが分かる。 log(C)=c×log(A)+d (ただし、cは、傾きであり、dは、切片である。) ここで、本発明品と従来品とを対比すると、cは、−
1.415で一定であることが分かる。従来品では、切
片dが1.16〜2.25であるのに対して、本発明品
では2.60であり、膜性能に優れているが、さらに延
伸倍率を増大させれば、高性能品が得られる。
【0055】以上の結果から、本発明のPTFE多孔質
体は、従来品と比較して、同一孔径(即ち、同一バブル
ポイント)で比較した場合、流量において優れているこ
とが分かる。したがって、本発明品は、特にフィルター
性能に優れている。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、高透過性(高気孔率)
で、高い機械的強度と、高度の耐熱性(低熱収縮率)、
寸法安定性(低溶媒収縮率)を有するPTFE多孔質体
を提供することができる。本発明のPTFE多孔質体
は、精密濾過用フィルター、高機能膜用支持体、エアフ
ィルターなどとして、広範な分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のPTFE多孔質体表面の走査型電子顕
微鏡写真に基づく繊維構造を示す図である。
【図2】従来のPTFE多孔質体表面の走査型電子顕微
鏡写真に基づく繊維−結節構造を示す図である。
【図3】本発明のPTFE多孔質体(1)及び先行技術
のPTFE多孔質体(2)のIPAバブルポイントとI
PA流量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明のPTFE多孔質体(3)、先行技術の
PTFE多孔質体(4)、及び他の先行技術のPTFE
多孔質体(5)のIPAバブルポイントと空気流量との
関係を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリテトラフルオロエチレン・ファイン
    パウダーのペースト押出によって得られる未燒結成形体
    を、該樹脂の融点未満の温度で、延伸後の成形体の縦方
    向と横方向の引張強度比が1:3〜3:1の範囲となる
    ような縦横の延伸比率で、かつ、全延伸倍率が40倍
    (面積比)以上となるように二軸延伸した後、完全燒結
    することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔
    質体の製造方法。(ただし、「完全燒結」とは、示差走
    査熱量計で燒結試料を昇温速度10℃/分で昇温した際
    に、約327℃に吸熱ピークが現れ、かつ、その吸熱量
    が20J/g未満となるまで燒結することを意味す
    る。)
  2. 【請求項2】 下記で定義されるIPAバブルポイント
    (A)とIPA流量(B)とが、下記の関係式〔I〕を
    満足することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン
    多孔質体。 log(B)≧−1.528×log(A)+1.78 〔I〕 〔ただし、IPAバブルポイント(A)は、イソプロピ
    ルアルコールを使用し、ASTM−F−316の方法に
    より測定したバブルポイント(kg/cm2)である。
    IPA流量(B)は、イソプロピルアルコールを使用
    し、ASTM−F−317の方法により測定した流量
    (ml/cm2/min)である。〕
  3. 【請求項3】 下記で定義されるIPAバブルポイント
    (A)と空気流量(C)とが、下記の関係式〔II〕を
    満足することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン
    多孔質体。 log(C)≧−1.415×log(A)+2.60 〔II〕 〔ただし、IPAバブルポイント(A)は、イソプロピ
    ルアルコールを使用し、ASTM−F−316の方法に
    より測定したバブルポイント(kg/cm2)である。
    空気流量(C)は、ASTM−D−726の方法で測定
    したガレー秒から「空気流量(C)=930/ガレー秒
    (sec)」の式により換算される流量(ml/cm2
    /min)である。〕
  4. 【請求項4】 イソプロピルアルコール中での収縮率が
    実質的にゼロである請求項2または3記載のポリテトラ
    フルオロエチレン多孔質体。
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WO2024241784A1 (ja) * 2023-05-22 2024-11-28 住友電工ファインポリマー株式会社 積層体及びフィルターエレメント

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