JPH07299084A - 人工補綴物 - Google Patents

人工補綴物

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JPH07299084A
JPH07299084A JP9678494A JP9678494A JPH07299084A JP H07299084 A JPH07299084 A JP H07299084A JP 9678494 A JP9678494 A JP 9678494A JP 9678494 A JP9678494 A JP 9678494A JP H07299084 A JPH07299084 A JP H07299084A
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裕樹 小原井
Yuzo Ezaki
祐造 江嵜
Yoshihito Takano
良仁 高野
Souhee Wakabayashi
惣兵衛 若林
Tomoko Hashimukai
知子 橋向
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生体組織に類似した弾性を保持し、穿刺後す
みやかに穴を塞ぐ機能を有しながらも、生体組織を誘導
するための多孔質部分を有する人工補綴物を提供する。 【構成】 弾性を有するポリエステル系樹脂製多孔体を
支持体とし、少なくとも該支持体の一部に、弾性に富む
多孔質樹脂層を付与した複合構造部分を有することを特
徴とする人工補綴物である。 【効果】 生体組織に類似した弾性を保持し、穿刺後す
みやかに穴を塞ぐ機能を有する人工補綴物を実現でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な人工補綴物に関
する。また、本発明は、主として縫合針、注射針等によ
る穿刺を行なった際の血液漏出が少なく、また、組織侵
入性に優れること等による生体内長期安定性を持つ人工
血管などに使用し得る人工補綴物に関する。
【0002】さらに詳しくは、上記特性により、過酷な
条件下においての開存が要求されるブラッドアクセス用
グラフトのように縫合後の穿刺を必要とする全ての人工
血管に使用可能な人工補綴物に関する。また、生体内長
期安定性に加え、縫合後のシール性が要求される人工心
膜等、生体内の種々の組織の補綴物としても使用可能な
人工補綴物に関する。
【0003】
【従来の技術】現在一般に使用されている人工血管、特
に内径6mm以下の中・小口径の人工血管のほとんど
は、弾性に乏しく固いため、柔軟性(コンプライアン
ス)が生体血管と大きく異なり、生体血管との吻合部に
内膜肥厚を生じやすいことが報告されている(Trans.A
m.Soc.Artif.Int.Organs 35:556,1989 )。そこで本発
明者らは先に、外部補強を施し、耐つぶれ、耐キンク性
を持ちながらも弾性に富む人工血管を提供した(特開平
5−337143号)。
【0004】また、腎機能不全症の治療で長期間に渡り
人工透析を行なう場合、採血・返血のために、患者の自
家動・静脈吻合による内シャントの形成を行なっている
が、種々の要因でこれら自家血管による内シャントが使
用不能となった場合は、人工血管による内シャント形成
術を行なうのが一般的である。
【0005】しかしながら、これらの人工血管は、注射
針で頻回穿刺することを想定しておらず、数年後には強
度劣化をきたし、瘤形成や破裂を起こしてしまう問題が
あった。
【0006】弾性のある人工補綴物としてはポリウレタ
ンを用いたものがあり、穿刺後も比較的良好に塞がる
が、生体内劣化のため、長期の移植に用い得ない。一
方、シリコーンゴム等のエラストマーを単独で用いて
も、耐穿刺性の目的は達しうるが、穿刺による亀裂が拡
がりやすく、また、人工補綴材として必要な強度を得る
ことが難しい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は
新規な人工補綴物を提供することを目的とするものであ
る。
【0008】本発明はまた、生体組織に類似した弾性を
保持し、穿刺後すみやかに穴を塞ぐ機能を有しながら
も、生体組織を誘導するための多孔質部分を有する人工
補綴物を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、生体親和
性に優れた人工補綴物に関して鋭意検討した結果、弾性
のあるポリエステル系樹脂製多孔体を人工補綴物の支持
体とし、少なくとも該人工補綴物の一部に、前記支持体
と弾性樹脂多孔質層による複合構造部分、あるいは、前
記支持体と弾性樹脂多孔質層および弾性樹脂無孔質層に
よる複合構造部分を有することで、上記目的が達成され
ることを知り、この知見に基づいて本発明を完成するに
至った。
【0010】すなわち、本発明は、(1) 弾性を有す
るポリエステル系樹脂製多孔体を支持体とし、少なくと
も該支持体の一部に、弾性樹脂多孔質層を付与した複合
構造部分を有することを特徴とする人工補綴物により達
成される。
【0011】また本発明は、(2) 上記(1)記載の
支持体と弾性樹脂多孔質層との間に弾性樹脂無孔質層を
含む複合構造部分を有する人工補綴物により達成され
る。
【0012】また、本発明は、(3) 上記(1)また
は(2)記載の人工補綴物の支持体が、弾性を有するポ
リエステル系樹脂製の繊維を織り、編み、組み処理のい
ずれか、またはこれら二つ以上を併用した多孔体構造を
持ってなる上記(1)または(2)に記載の人工補綴物
によって達成される。
【0013】
【作用】以下、本発明に用いられる人工補綴物の支持体
および複合構造部を実施態様に基づき順次詳細に説明す
る。
【0014】まずはじめに、本発明に係る人工補綴物の
支持体たる弾性を有するポリエステル系樹脂製多孔体
は、構造体として弾性を備えていれば良く、その一部に
非弾性材料を含んでいても良い。
【0015】上記ポリエステル系樹脂としては、例え
ば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレート、ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合
体およびポリエステル−ポリエステル共重合体などを用
いることができる。
【0016】上記ポリエステル−ポリエーテルブロック
共重合体としては、ハードセグメントがポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチ
レンイソフタレートとからなる共重合体、ポリ(1,4
−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)などの芳
香族ポリエステル、ソフトセグメントがポリエチレング
リコールなどの脂肪族ポリエーテルよりなるものがあ
り、具体的には、例えば、ペルプレン−P−タイプ[Pel
prene-P-type] (東洋紡績株式会社製)、アーニテル(A
rnitel) E,P(アクゾ(Akzo) 社製)などが挙げられ
る。
【0017】また上記ポリエステル−ポリエステル共重
合体としては、ハードセグメントがポリエチレンテレフ
タレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン
イソフタレートとからなる共重合体、ポリ(1,4−シ
クロヘキサンジメチレンテレフタレート)などの芳香族
ポリエステル、ソフトセグメントがエチレンセバケート
などの脂肪族ポリエステルからなるものがあり、具体的
には、例えば、ペルプレン−S−タイプ[Pelprene-S-ty
pe] (東洋紡績株式会社製)などが挙げられる。
【0018】次に、ポリエステル系樹脂製多孔体として
は、上記ポリエステル系樹脂の繊維を用いて、例えば、
織り、編み、組み処理、より詳しくは、例えば、たて
編、よこ編、三軸編、袋織りおよび組紐などが例示でき
るが、特にこれらに何ら限定されるものではなく、これ
らのいずれかまたはこれらの2つ以上を併用する構造と
することにより、該繊維間の隙間が孔に相当するポリエ
ステル系樹脂製多孔体を作製することができる。さら
に、ポリエステル系樹脂製多孔体としては、上記ポリエ
ステル系樹脂により所望の形状に一体成形した成形体を
熱処理後延伸し、さらに熱処理することで、多孔性の成
形体を形成する延伸法、または該成形体を成形する際に
一緒に充填剤等を含有して成形し、成形後に該充填剤の
みを溶解しうる溶剤等を用いて抽出分離することにより
多孔性の成形体を形成する溶剤抽出法などにより多孔化
し、孔径および多孔度を任意に付与してなるポリエステ
ル系樹脂製多孔体を作製することができるものである。
【0019】なお、上記ポリエステル系樹脂製多孔体
が、ポリエステル系樹脂の繊維を用いて構成されたもの
である場合には、モノフィラメント繊維で構成されたも
のに限定されるものでなく、性質の異なる2種類以上の
ポリエステル系樹脂を同時に紡糸した複合繊維により形
成加工されたものでも良い。こうした複合繊維として
は、紡糸の際の各成分の複合のしかたにより、種々の形
態に加工できるものであり、例えば、接合型:2成分が
張り合わされた状態で接合したもの、芯鞘型:1成分を
芯として他成分がこれを取り囲んだもの、多芯鞘型:1
成分を多数の芯層として形成し、他成分がこれらの芯成
分の全部あるいは大多数を取り囲んだもの、多層接合
型:2成分が交互に接合された形式で多層を形成したも
の、軸方向複合型:2成分が繊維軸方向で交互に積層配
置された状態で接合したものなどを用いることができ
る。こうした複合状態のうち、弾性および弾性回復性の
保持並びに捲縮発現の観点から、上記接合型が特に優れ
ている。さらに、2種類以上のモノフィラメント、複合
繊維、またはモノフィラメントと複合繊維とで構成した
ものであっても良い。これらの繊維は、弾性回復性の改
良を目的に繊維化を行ったものが好ましく、必要に応じ
て繊維を形成後に潜在捲縮性を付与させたものが人工補
綴物の支持体の構造の安定化のためにより好ましいもの
である。
【0020】また、上記ポリエステル系樹脂製多孔体
が、ポリエステル系樹脂の繊維を用いて構成されたもの
である場合には、該繊維は、嵩高処理が行われているこ
とが望ましい。該崇高処理としては、例えば、加撚し、
熱固定して解撚する方法、連続して加撚−熱固定−解撚
する仮撚り法、糸を一定容積内へ押込み熱処理を行いな
がら取り出す押込み法、加熱した繊維をこする擦過法、
高温高圧のエアーで糸を衝突体に打ち当てて巻縮を付与
する空気噴射法および一対の加熱ギアの間に糸を通過さ
せ歯型を糸に付与する賦形法などの従来公知の方法を用
いることができる。
【0021】さらに、上記ポリエステル系樹脂の繊維の
太さは、通常20〜150デニール、好ましくは20〜
75デニール、より好ましくは20〜50デニールであ
る。該ポリエステル系樹脂の繊維の太さが150デニー
ルを越える場合には、該繊維による壁厚が厚くなりすぎ
て柔軟性を損なうため好ましくない。該ポリエステル系
樹脂の繊維の太さが20デニール未満の場合には、強度
的に不十分となり好ましくない。
【0022】さらに、本発明の係る人工補綴物を人工血
管に用いる場合に、ポリエステル系樹脂製多孔体として
上記ポリエステル系樹脂の繊維を用いた場合、該多孔体
の表面(内面側および/または外面側)に微細な捲縮形
状が無数に形成され、生体血管に近似した伸縮性を有す
ることが望ましい。こうした微細な捲縮形状は、たとえ
ば、該繊維を織り、編みまたは組み処理に先立ちエアー
ジェット交絡にて付与することができるものである。該
微細な捲縮形状が形成されてなる人工補綴物の支持体の
伸縮性は、150mmHgの内圧を負荷したときの径方
向の伸び率が通常2〜15%、好ましくは5〜15%、
より好ましくは8〜15%であり、軸方向の伸び率が通
常2〜20%、好ましくは5〜20%、より好ましくは
8〜15%であるという条件を満たすものである。本発
明の人工補綴物の支持体が、上記に示すような伸び率を
有するものである場合には、生体に移植された際、生体
血管などの拍動に対する追従性が良好となるので、優れ
た抗血栓性などを発揮することができるため好ましいも
のである。
【0023】またポリエステル系樹脂製多孔体(支持
体)の形状については、生体内の種々の組織の使用部位
や種類に応じて任意に設定することができ、たとえば、
チューブ状、フィルム状、メッシュ状およびスポンジ状
などの形状に形成することができる。たとえば、人工補
綴物を人工血管として用いる場合、該多孔体の形状は、
使用される部位、種類に応じて内径が2〜40mm程度
の幅広い範囲のチューブ状(管状)体として任意に作製
することができる。特に人工血管に用いる場合には、ポ
リエステル系樹脂製多孔体としたことで生体親和性に優
れ、その開存性が極めて良好なものであるために、管内
径6mm程度の中口径のものであっても十分に対応でき
るものとすることができる。また、縫合後のシール性が
要求される心膜、気管、胸壁等の生体組織の一部が欠損
した場合に、該欠損した種々の組織部位の補綴物として
用いる場合には、該欠損した組織の使用部位や種類に応
じて、チューブ状、フィルム状、メッシュ状、ヤーン状
およびスポンジ状、あるいはこれらの組み合わせによる
多孔体として任意に作製することができる。
【0024】また、ポリエステル系樹脂製多孔体の厚さ
についても、生体内の種々の組織の使用部位や種類に応
じて任意に設定することができるが、通常100〜15
00μm、好ましくは150〜700μm、より好まし
くは150〜500μmの範囲である。該多孔体の厚さ
が、100μm未満の場合には、支持強度が十分でな
く、生体内に埋入後、生体拍動流による内圧または運動
性のある部位における外圧に対し、縫合後のシール性が
十分でないなど好ましくない。他方、該多孔体の厚さ
が、1500μmを越える場合には、対象となる補綴物
たる血管の管厚や生体膜などの膜厚に比して、厚くなり
すぎるため縫合が困難になるなど好ましくないものであ
る。
【0025】上記ポリエステル系樹脂製多孔体の孔の大
きさについては、生体内の種々の組織の使用部位や種類
に応じて任意に設定することができるが、通常5〜50
0μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは
50〜100μmである(なお、ここでの孔径には、上
記繊維間の間隔(隙間)を孔とした場合も含む)。ま
た、同様に多孔度は、通常10〜90%、好ましくは4
0〜80%、より好ましくは50〜80%である。ここ
で多孔度とは、前記多孔体のもつ孔だけの全体積V1 と
孔を含めた多孔体の全体積V2 との比の百分率[(V1
/V2 )×100]で示されるものをいう(以下、同
様)。該ポリエステル系樹脂製多孔体の孔の大きさが、
5μm未満の場合には、生体組織側から繊維芽細胞や内
皮細胞が該孔内部に侵入しにくいため、器質化が遅れ、
素早く内皮細胞などが育成することができにくくなり、
生体適合性の改善が十分でなく、組織治療が十分に高め
られないなど好ましくない。また該ポリエステル系樹脂
製多孔体の孔の大きさが、500μmを越える場合に
は、支持体としての強度が弱くなりすぎたり、血液の流
れが乱されて、抗血栓性が低下する傾向が生ずるなど好
ましくない。また、ポリエステル系樹脂製多孔体の多孔
度が、10%未満の場合には、生体組織側から繊維芽細
胞や内皮細胞が該孔内部に侵入するための手掛かりが少
ないため、内皮細胞などの増殖が遅れることとなり、生
体適合性の改善が十分でなく、組織治療が十分に高めら
れないなど好ましくない。また、ポリエステル系樹脂製
多孔体の多孔度が、90%を越える場合には、支持体と
しての強度が弱くなりすぎたり、血液の流れが乱され
て、抗血栓性が低下する傾向が生ずるなど好ましくな
い。
【0026】さらに、上記人工補綴物の支持体が構造体
として備えている弾性は、具体的には伸長弾性回復率が
90%以下となるための伸長率が通常2%以上、好まし
くは5%以上、より好ましくは10%以上である。ここ
で、人工補綴物の支持体の「伸長弾性回復率」とは、 {(一定荷重での伸び−除重後の伸び)/一定荷重での
伸び}×100 と、また、「伸長率」とは、 {(荷重後の全長の長さ−もとの全長の長さ)/もとの
全長の長さ}×100 と、定義されるものである。該伸長弾性回復率が90%
以下となるための伸長率が、2%未満の場合には、十分
な弾性が備わっていないために、生体内に移植した場合
には、縫合後の生体拍動流による内圧または運動性のあ
る部位における外圧に追従した伸縮運動ができないため
好ましくない。
【0027】次に本発明に用いられる弾性樹脂多孔質層
および弾性樹脂無孔質層の弾性は、いずれも伸長弾性回
復率が90%以下となるための伸長率が通常2%以上、
好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であ
る。該伸長弾性回復率が90%以下となるための伸長率
が、2%未満の場合には、十分な弾性が備わっていない
ために、生体内に移植した場合には、上記支持体の弾性
による伸縮に追従できず、支持体との層間で剥離やクラ
ックなどが生じやすいほか、耐穿刺性の目的を達し得
ず、穿刺による亀裂が拡がりやすくなるなどの問題を解
決できない。
【0028】上記弾性条件を満足できる本発明に係る弾
性多孔質樹脂層および弾性樹脂無孔質層に使用し得る樹
脂としては、たとえば、ポリエステル系エラストマー、
オレフィン系エラストマーおよびシリコーンゴムなどが
挙げられる。
【0029】次に、本発明に用いられる弾性樹脂多孔質
層は、生体に埋入後、生体組織側から繊維芽細胞や内皮
細胞が該弾性樹脂多孔質層の孔内部に侵入し、安定に器
質化し、素早く内皮細胞などが育成することで生体適合
性を良くして、組織治療を高めるためには多孔面が組織
に接触することが望ましいが、生分解性物質により、一
定期間孔を塞いでもかまわない。これは、コラーゲンな
どの該生分解性物質の生体組織や細胞に対する親和性が
大きいことに着目し、これを血管や心膜などの欠損部位
に用いると、該生分解性物質に対して生体から血管、組
織芽細胞、内皮細胞などが進入、接着し易くなると共
に、経時的に分解され、空孔内部にも組織芽細胞などが
侵入し、強く結合して成育することができるものであ
る。なお、ここで言う生分解性物質は、生体埋入後、徐
々に分解されるものを指し、ポリ乳酸などの合成物、コ
ラーゲン、アルブミン、フィブリンなどのタンパク質、
ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などのム
コ多糖類などの生体由来材料に代表される。もちろん、
これらに限るものではない。なお、該生体由来材料は、
一般に変質、変性しやすく、変性すれば目的とする生理
的機能を失うことが多いので取扱いに十分注意する必要
があり、また、化学的、生理学的に汚染せずに調製する
ことが望ましい。また、各種の溶菌性酵素や抗生物質を
添加固定しても良い。これは、使用部位、例えば、気管
や食道のように、片面が常に外界に接している場合に
は、細菌による汚染が問題になるため、生体に移植後、
組織の創傷が治癒し、人工補綴物の表面に上皮細胞が生
着して、組織が再生するまで、細菌の生着増殖を防ぐ必
要があり、この点を考慮したものである。
【0030】また、上記弾性樹脂多孔質層の作製方法と
しては、たとえば、所望の形状に形成加工された上記支
持体上または該支持体上に形成された弾性樹脂無孔質層
上に、適当な溶剤に上述の弾性樹脂および充填剤等(た
とえば、無機塩に代表される水溶性物質、またアルコー
ルにて可溶な脂肪酸など、該弾性樹脂を侵さない溶媒に
て可溶な物質および上記生分解性物質など)を溶解し、
これを塗布し乾燥させて弾性樹脂層を成形し、成形後に
該充填剤のみを溶解しうる溶剤等を用いて抽出分離する
かあるいはそのまま使用し、生体埋入後、該充填剤(生
分解性物質などの場合には、上述したと同様にその取扱
いや上記溶剤の選択などに十分留意する必要がある。)
を徐々に分解することにより多孔質の成形体を形成する
溶剤等抽出法などにより多孔化し、後述する孔径および
多孔度を任意に付与してなる弾性樹脂多孔質層を作製す
ることができるものである。
【0031】また、上記弾性樹脂多孔質層の層厚として
は、生体内の種々の組織の使用部位や種類に応じて任意
に設定することができ、たとえば、筒状形状およびシー
ト形状などの支持体あるいは弾性樹脂無孔質層の表面
に、通常20〜2000μm、好ましくは50〜100
0μm、より好ましくは100〜500μmの範囲で形
成されるものである。該多孔質層の層厚が、20μm未
満の場合には、人工補綴物を人工血管として用いる場合
には、生体内に埋入後、注射針等による穿刺での漏血防
止作用が十分に得られず、また縫合後のシール性が要求
される人工心膜等、生体内の種々の組織の人工補綴物と
して用いる場合には、漏血防止作用が十分出ないほか
に、生体組織との馴染みが不十分となり、縫合糸による
固定のみでは運動性のある部位において、特にシール性
が十分でないなど好ましくない。他方、該多孔質層の層
厚が、2000μmを越える場合には、補綴対象物とな
る血管の管厚や生体膜などの膜厚に比して、厚くなりす
ぎるため縫合が困難になるなど好ましくないものであ
る。
【0032】さらに、上記弾性樹脂多孔質層の孔の大き
さについても、生体内の種々の組織の使用部位や種類に
応じて任意に設定することができるが、通常5〜500
μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは5
0〜100μmである。また、同様に弾性樹脂多孔質層
の多孔度は、通常10〜90%、好ましくは40〜80
%、より好ましくは50〜80%である。該弾性樹脂多
孔質層の孔の大きさが5μm未満の場合には、生体組織
側から繊維芽細胞や内皮細胞が該孔内部に侵入しにくい
ため、素早く内皮細胞などが育成することができにくく
なり、生体適合性の改善が十分でなく、組織治療が十分
に高められないなど好ましくない。また該弾性樹脂多孔
質層の孔の大きさが500μmを越える場合には、生体
内に埋入後、注射針等による穿刺で、該孔部分に注射針
がきた場合、弾性樹脂無孔質層がないと、穿刺後の漏血
防止作用が十分に得られないことにより好ましくない。
また、弾性樹脂多孔質層の多孔度が10%未満の場合に
は、生体組織側から繊維芽細胞や内皮細胞が該孔内部に
侵入するための手掛かりが少ないため、内皮細胞などの
増殖が遅れることとなり、生体適合性の改善が十分でな
く、組織治療が十分に高められないなど好ましくない。
また、弾性樹脂多孔質層の多孔度が90%を越える場合
には、穿刺後の漏血防止効果が十分に得られなかった
り、物性強度が著しく低下するなど好ましくない。
【0033】なお、上記弾性樹脂多孔質層は、少なくと
も上記支持体の一部に、該弾性多孔質樹脂層を付与した
複合構造部分を有するように形成されておれば良く、た
とえば、本発明に係る人工補綴物を人工透析用内シャン
ト形成のための人工血管として用いるような場合には、
これらの人工血管のうち注射針で頻回穿刺する部位に上
記弾性樹脂多孔質層を形成することにより、本発明の目
的とする穿刺後すみやかに穴を塞ぐ機能を十分に付与す
ることができる。
【0034】また、上記弾性樹脂多孔質層は、上記複合
構造部分において、弾性樹脂多孔質層の一部が、上述の
支持体の内部に存在しても良い。すなわち、支持体たる
ポリエステル系樹脂製多孔体上に該弾性樹脂多孔質層を
形成する段階で、該弾性樹脂を塗布した際に、該弾性樹
脂の一部が該多孔体の空孔内部に進入し、そのまま弾性
樹脂多孔質層が形成されたような状態を、ここでは「支
持体の内部に存在する」としている。このような状態で
支持体と弾性樹脂多孔質層が接合される場合には、両者
の密着度が良好となり、生体内での支持体と弾性樹脂多
孔質層との弾性性能の相違による若干の伸縮度の差異に
よっては、何ら支持体と弾性樹脂多孔質層との層間で隔
離や剥離などが生じないため、生体内長期安定性を持つ
人工血管などに使用し得る人工補綴物を提供することが
できるなどの利点がある。
【0035】一方、上記弾性樹脂無孔質層は、上記支持
体と弾性樹脂多孔質層との間に挟まれた位置に形成され
ることで、所望の複合構造部分を構成するものであり、
該弾性樹脂無孔質層を有する本発明に係る人工補綴物を
人工透析用内シャント形成のための人工血管として用い
るような場合には、これらの人工血管に注射針で頻回穿
刺しても、該弾性樹脂無孔質層を形成することにより、
穿刺後すみやかに穴を塞ぐ機能をより良く発揮でき、よ
り素早く漏血を防止することがきるものである。ここ
で、「無孔質層」とは、上記の「多孔質層(有孔質
層)」に対応するものであり、層内に連続した(連通し
た)孔を有し得ない構造と定義することができる。すな
わち、本来、樹脂よりなる層であるため、極めて微視的
(例えば、分子レベル)に見れば、微細な孔は存在する
ものであるが、ここでは、あくまで上記「多孔質層」で
言うような5μm以上の大きさの孔を有しない構造であ
ることを意味する。
【0036】したがって、上記のような使用目的で本発
明の人工補綴物を用いる場合には、上記弾性樹脂無孔層
は、少なくとも上記支持体の一部に、該弾性無孔質樹脂
層を付与した複合構造部分を有するように形成されてお
れば良く、たとえば、上記場合には、人工透析用内シャ
ント形成用人工血管として用いるような場合には、これ
らの人工血管のうち注射針で頻回穿刺する部位に上記弾
性樹脂多孔質層を形成することにより、本発明の目的と
する穿刺後すみやかに穴を塞ぐ機能を十分に付与するこ
とができるものである。
【0037】上記弾性樹脂無孔質層の作製方法として
は、たとえば、所望の形状に形成加工された上記支持体
上に、適当な溶剤に上述の弾性樹脂を溶解し、これを塗
布し乾燥させて弾性樹脂層を成形して無孔質の成形体を
形成する方法などにより弾性樹脂無孔質層を作製するこ
とができるものである。
【0038】また、上記弾性樹脂無孔質層の層厚として
は、より素早い漏血防止を目的とすることから、通常5
〜1000μm、好ましくは50〜500μm、より好
ましくは50〜300μmの範囲で形成されるものであ
る。該無孔質層の層厚が、5μm未満の場合には、人工
補綴物を人工血管として用いる場合には、生体内に埋入
後、注射針等による穿刺での漏血防止作用が十分に得ら
れず、また縫合後のシール性が要求される人工心膜等、
生体内の種々の組織の人工補綴物として用いる場合、生
体組織との馴染みが不十分となり、縫合糸による固定の
みでは運動性のある部位において、特にシール性が十分
でないなど好ましくない。他方、該無孔質層の層厚が、
1000μmを越える場合には、層厚増加に伴うだけの
漏血防止効果が得られず、補綴対象物となる血管の管厚
や生体膜などの膜厚に比して、厚くなりすぎるため縫合
が困難になるなど好ましくないものである。
【0039】さらに、上記弾性樹脂無孔層は、該複合構
造部分において、弾性樹脂多孔層の内部および支持体の
内部に存在しても良い。すなわち、支持体たるポリエス
テル系樹脂製多孔体上に該弾性樹脂無孔質層を形成する
段階で、無孔質層用の弾性樹脂を塗布した際に、該弾性
樹脂の一部が該多孔体の空孔内部に進入し、そのまま弾
性樹脂多孔質層が形成されたような状態および該弾性樹
脂無孔質層上に該弾性樹脂無孔質層を形成する段階で、
多孔質層用の弾性樹脂を塗布した際に、無孔質層用の弾
性樹脂の一部が再び溶剤により一部溶解し、多孔質層用
の弾性樹脂と混ざって弾性樹脂多孔質層が形成され、両
層間の境界が明確でなくなるような状態を、ここでは
「弾性樹脂多孔層の内部および支持体の内部に存在す
る」としている。このような状態で支持体と弾性樹脂無
孔質層および弾性樹脂無孔質層と弾性樹脂多孔質層がそ
れぞれ接合されている場合には、それぞれの層間の密着
度が良好となり、生体内での支持体と弾性樹脂無孔質層
および弾性樹脂無孔質層と弾性樹脂多孔質層との各々の
弾性性能の相違による若干の伸縮度の差異によっては、
何ら支持体および各層間で隔離や剥離などが生じないた
め、生体内長期安定性を持つ人工血管などに使用し得る
人工補綴物を提供することができるなどの利点がある。
【0040】次に、強度補強、その他の目的で、本発明
に係る人工補綴物の全面、あるいは一部に補強材を複合
させても良い。ただし、補強材による複合構造部分にお
いても、補強後に上記人工補綴物が、先述した範囲の弾
性を保っていなければならないことから、補強材も上記
人工補綴物とほぼ同様な弾性性能を有している必要があ
る。そのため、具体的には、補強材による複合構造部分
における該補強材自身の伸長弾性回復率が90%以下と
なるための伸長率が通常2%以上、好ましくは5%以
上、より好ましくは10%以上である必要がある。
【0041】なお、上記補強材およびその製造方法とし
ては、例えば、本発明者らが先に、耐つぶれ、耐キンク
性を持ちながらも弾性に富む人工血管とするために提供
した外部補強材、具体的には、弾性を有する人工血管本
体に好ましくは螺旋状に取り付けられる弾性を有する補
強部であって、該補強部の好適な材質がオレフィン系エ
ラストマーであるとする外部補強材(特開平5−337
143号)などを用いることができる。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例により、さらに具体的
に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限される
ものではない。
【0043】比較例1 ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフ
タレートよりなる接合型の弾性複合繊維(複合重量比5
0:50、30デニール/18フィラメントの複合繊
維)を使用し、30ゲージダブルラッセル機により逆ハ
ーフ編みして弾性を有するポリエステル系樹脂製多孔体
たる管状の布はくを作製した。これを裏返した後、精練
処理し、内径4mmの管状体を得た。ウェル61本/イ
ンチ、コース96本/インチ、カバーファクター860
であった。また、管状体が構造体として備えている弾性
は、伸長弾性回復率が90%以下となるための伸長率が
5%であった。
【0044】得られた管状体にプレクロッティング操作
を施し、家兎の頚動脈と頚静脈との間に、コネクターに
より接続し、血液循環を3時間の間、継続して行った。
【0045】その結果、脈動流に応じて拡張、収縮を繰
り返す柔軟性は示したものの、該管状体を17G注射針
で穿刺すると、抜針後、激しく出血し、穿刺跡を圧迫し
て10分後にようやく止血できた。
【0046】実施例1 比較例1と同様にして作製した弾性を有するポリエステ
ル系樹脂製多孔体たる管状体の外面に一液性シリコーン
ゴム(サイラスティック、ダウ コーニングアジア株式
会社製)原液と塩化ナトリウム(試薬特級、ナカライテ
スク株式会社製)とを混合したものを塗布し、風乾して
層厚100μmのシリコーンゴム層を形成した。さら
に、水中にて塩化ナトリウムを十分に抽出し、シリコー
ンゴム層を多孔化し、該管状体の外面全体に弾性樹脂多
孔質層を付与した複合構造部分を形成した。弾性樹脂多
孔質層の弾性は、伸長弾性回復率が90%以下となるた
めの伸長率が12%であった。また、形成された弾性樹
脂多孔質層は、上記複合構造部分において、該弾性樹脂
多孔質層の一部が、上記管状体の内部に存在する状態で
形成されていた。
【0047】これにより、内面にはポリエステル系樹脂
製多孔体を構成するポリエステル繊維による多孔面、外
面にはシリコーンゴムによる多孔面が存在する管状体が
得られた。
【0048】得られた管状体にプレクロッティング操作
を施し、家兎の頚動脈と頚静脈との間に、コネクターに
より接続し、血液循環を3時間の間、継続して行った。
【0049】その結果、脈動流に応じて拡張収縮する柔
軟性を示すと共に生体内での長期安定性を向上させるこ
とができた。また、17G注射針による穿刺を行った
後、抜針途中で多少出血が見られるものの、圧迫操作な
どを行わなくとも直ちに止血した。
【0050】実施例2 比較例1、実施例1と同様にして作製した弾性を有する
ポリエステル系樹脂製多孔質管状体の外面に実施例1で
用いた一液性シリコーンゴム原液を塗布した。これを生
乾きの状態になるまで風乾し、実施例1で調整したもの
と同様なシリコーンゴムと塩化ナトリウムの混合液をさ
らに外側に塗布した。これを完全に硬化するまで風乾
し、層厚150μmのシリコーンゴム層を形成させた。
さらに水中にて塩化ナトリウムを抽出することで層の一
部を多孔化させた。
【0051】これにより該管状体の外面に弾性樹脂無孔
質層および弾性樹脂多孔質層を付与した複合構造部分を
形成させた。上記複合構造部分において該弾性樹脂無孔
質層の一部が上記管状体の内部に存在する状態で形成さ
れていた。
【0052】実施例3 実施例2で得られた人工補綴物について、エチレンオキ
サイドガスにて滅菌した後、犬気管へ輪状置換した。そ
の結果、吻合は容易に行え、また空気の漏れは観察され
なかった。置換後の4週間後に摘出したところ、本発明
の人工補綴物の周囲には漿膜および粘膜上皮が形成され
ており、結合性も良好であった。
【0053】実施例4 本発明による人工補綴物、および対照として透析用グラ
フトとして用いられているゴアテックス[Gore−T
ex](ゴア[Gore]社製)を用いて、動物実験に
よる効果確認を行った。内径6mm、長さ20cmの実
施例1で得られた人工補綴物および同サイズのゴアテッ
クスを犬大腿動静脈にループ状に移植した。移植3週間
後に17ゲージの注射針にて1日20回、5日を1クー
ルとして4クールの穿刺を行った。その後、摘出し観察
を行ったところ、ゴアテックスは外膜周囲に血腫が形成
されており、一部化膿巣が存在し、組織修復が遅延して
いたのに対し、本発明による人工補綴物は器質化が良好
に行われており、安定した組織修復が達成されることが
判明した。
【0054】
【発明の効果】以上、述べたように、本発明により、生
体組織に類似した弾性を保持し、主として縫合針、注射
針等による穿刺を行なった後、すみやかに穴を塞ぐ機能
を有する人工補綴物を実現できる。
【0055】また、本発明による人工補綴物は、多孔質
部分を持つことで組織侵入を促し、生体内での長期安定
性を向上させることができる。
【0056】さらに、本発明による人工補綴物は、支持
体と多孔質部分との間に無孔質部分を持つことで、穿刺
後すみやかに穴を塞ぐ機能をより高めることができ、よ
り血液の漏出を少なくすることができる。
【0057】さらにまた、本発明による人工補綴物は、
支持体に弾性を有するポリエステル系樹脂製の繊維を織
り、編み、組み処理のいずれか、またはこれら二つ以上
を併用した多孔体構造を用いることで生体内長期安定性
に優れるため、過酷な条件下においての開存が要求され
るブラッドアクセス用グラフトのように縫合後の穿刺を
必要とする全ての人工血管などに好適に使用し得る人工
補綴物が得られる。
【0058】また、本発明による人工補綴物は、多孔質
部分、さらには無孔質部分を持つことで、生体内長期安
定性に加え、縫合後のシール性を付与することができる
ため、人工血管以外にも、人工心膜、人工気管、人工胸
壁等の生体内の種々の組織の人工補綴物として使用する
ことができる。
【0059】さらに、本発明による人工補綴物は、補強
材を持つことで、耐つぶれ、耐キンク性を持ちながらも
弾性に富む人工血管などに好適に用いることのできる人
工補綴物とすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高野 良仁 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内 (72)発明者 若林 惣兵衛 福井県福井市毛矢1丁目10−1 セーレン 株式会社内 (72)発明者 橋向 知子 福井県福井市毛矢1丁目10−1 セーレン 株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 弾性を有するポリエステル系樹脂製多孔
    体を支持体とし、少なくとも該支持体の一部に、弾性樹
    脂多孔質層を付与した複合構造部分を有することを特徴
    とする人工補綴物。
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