JPH0733601A - 組織保存用組成物 - Google Patents

組織保存用組成物

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JPH0733601A
JPH0733601A JP12403692A JP12403692A JPH0733601A JP H0733601 A JPH0733601 A JP H0733601A JP 12403692 A JP12403692 A JP 12403692A JP 12403692 A JP12403692 A JP 12403692A JP H0733601 A JPH0733601 A JP H0733601A
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Ho Chen Chun
− ホ チェン チュン
C Chen Sumi
シー.チェン スミ
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は手術時の単離された組織のエネルギ
ー源となり、同時に乳酸の産生と蓄積を抑制する組成物
に関し、このものは特に目の手術において使用される。 【構成】 ケトン体および/またはその前駆体、グルコ
ース、およびリン酸塩緩衝化バランスト塩水溶液よりな
る組成物、およびその製造法が開示される。開示された
組成物は、単離された組織の保存と手術時の抹消組織の
豊富なエネルギー源として特に有用であり、同時に細胞
内の乳酸の生成と蓄積を抑制する。これは目の手術や手
術一般に利用できるが、他の利用法(例えば局所投与や
移植前のドナー組織の保存と洗浄)も可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の背景】
1.技術分野 本発明は、単離された組織の保存と手術時の組織の豊富
なエネルギー源として特に有用であり、同時に細胞内の
乳酸の生成と蓄積を抑制する、新規組成物に関する。こ
れは目の手術や手術一般に利用できるが、他の利用法
(例えば局所投与や移植前のドナー組織の保存と洗浄)
も可能である。
【0002】2.背景情報 一般に潅流液(irrigating solutio
n)は目の外表面や皮膚への局所投与、および手術時の
組織の洗浄と手術された組織を湿潤状態に維持するため
に使用される。しかし目の手術においては、手術(角膜
移植(貫通性角膜形成術)、白内障摘出、眼内水晶体移
植および硝子体切除など)の結果として、潅流液による
房水および/または硝子液の置換が起きる。これらの場
合潅流液の成分が回りの組織に吸収されるか溶液が最終
的に体液と平行に達し血液循環中にクリアランスされる
まで、潅流溶液は目の中に留まる。従って使用される潅
流液は生理的(張性(tonicity)やpHなど)
に融和性であるばかりでなく、少なくとも前眼房(an
terior chamber)と硝子体(vitre
ous)が生理的体液と充分に平衡に達するまで、細胞
が生存活性(viability)と生理的機能を果た
す能力を維持させることができる成分を含有する必要も
ある。
【0003】目の手術においては、潅流液の成分は角膜
と水晶体に対して特に重要である。いずれの組織も血管
がない。角膜はその栄養を主に前眼房より得て、多少で
はあるが涙と縁血管(limbal vessel)か
ら得る。水晶体はその栄養を前眼房および硝子体の液か
ら得る。網膜、毛様体および虹彩は血管のある組織であ
る;これらはその栄養を血管網の循環している血漿から
得る。従って潅流溶液の成分はこれらの組織に対して
は、角膜と水晶体に対するほど重要な影響を及ぼさな
い。
【0004】角膜においては後表面をおおう単一層の内
皮が、角膜の洗浄性と従って透明性を維持するのを助け
る液体とイオン輸送部位を含む。水晶体ではイオン輸送
部位は水晶体嚢(capsule)下の表皮中に位置す
る。一般にNa+−K+ATPaseは細胞質膜に存在
し細胞内Na+とK+含量をそれぞれ10mMと100
mMに維持するのを助けており、約120mMのNa+
と10mMのK+の細胞外塩濃度勾配に逆らって輸送す
るのを促進している。この液体および/またはイオン輸
送活動を行うには、細胞(および組織)に充分なエネル
ギーが必要である。
【0005】グルコースは哺乳動物の主要なエネルギー
源である。角膜、水晶体および網膜は非常に活性の高い
解糖系の組織であり、好気的条件下においてもグルコー
スを利用して乳酸を産生している。単離された角膜がグ
ルコースを含む培地中で保存される時、過剰の乳酸が生
成および蓄積されて酸性になり、組織の代謝活性が阻害
される。インビボでは、血管のある組織で生成される乳
酸は血液循環を介して除去され、血管のない組織で生成
される乳酸は前眼房に放出され、血液循環のクリアラン
ス機構により除去される。ヒトにおいては、前眼房の乳
酸は約4.0−4.5mMの一定の低レベルで維持され
る。
【0006】インビボ投与用の溶液中に存在する時、グ
ルコースは組織の重要かつ有用なエネルギー源である。
解糖系によるグルコースの利用により高速度でATPが
産生され、これはOには依存しない。しかし、これは
有効なエネルギー産生経路ではなく、グルコース1モル
が利用される時2モルのATPが産生されるのみであ
る。この時2モルの乳酸も産生される。手術された目の
組織のクリアランス機構が充分に有効でないとき、乳酸
が蓄積しpHが低下して、その結果組織の代謝活性が阻
害される。これに対してミトコンドリアの量が多い組織
ではミトコンドリアを介してCOとHOへのグルコ
ースの完全な酸化が起き、グルコース1モルの消費に対
して38モルのATPが産生される(解糖系で生成され
る2モルのNADHの酸化を含む)。従って酸素が利用
できる場合、ミトコンドリアでの酸化による基質の利用
は有効なエネルギー産生経路であることは明らかであ
る。この条件下では乳酸は生成しない。さらに呼吸の亢
進によりパスツール効果を介して嫌気的解糖系が阻害さ
れる時、乳酸の蓄積は低下しているかまたは最少となっ
ている(クレブス(Krebs,H.A.)、エッセイ
ズ・ビオケム(Essays Biochem.)第8
巻、1頁(1972年))。
【0007】グルコースはミトコンドリア中では直接基
質としては利用されず、まず解糖系でピルビン酸に変換
されなければならない。ケトン体およびその前駆体(例
えば短鎖脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸)はミトコン
ドリア中で直ちに酸化され、1モルのアセチル分子の利
用に対して32モルのATPが産生される。従ってケト
ン体およびその前駆体はエネルギーの豊富なまたはエネ
ルギー効率的な分子である。さらにケトン体およびその
前駆体の酸化により呼吸が亢進し、これがパスツール効
果を介して嫌気的解糖系を阻害する。
【0008】ケトン体はアセトン(CH3COCH
3)、アセトアセテート(CH3COCH2COO−)
およびβ−ヒドロキシブチレート(CH3CHOHCH
2COO−)の総称である。脂肪酸とケトン生成性のア
ミノ酸からのケトン体の生成の経路は図1に記載されて
いる。ケトン体は組織における脂肪酸とケトン生成性の
アミノ酸(ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロ
シンそしてトリプトファンを含む)の代謝産物である。
自然界では脂肪酸は一般式CH3(CH2)nCOOH
(nは偶数の整数である)で表される。酢酸はn=0で
ある最小の脂肪酸分子である。ケトン体は体内の保存と
放出のためのアセチルCoAの安定な型の高エネルギー
代謝産物である。すなわちケトン体はインビボで脂肪酸
とケトン生成性のアミノ酸から直ちに産生される。さら
にβ−ヒドロキシブチレートとアセトアセテートは、N
AD+−連結β−ヒドロキシブチレート脱水素酵素の触
媒作用を介して相互に変換される:
【化1】
【0009】これらはケトン体、脂肪酸、およびケトン
生成性のアミノ酸は相互に関連した分子であることを示
している。エネルギーが必要な時、ケトン体およびその
前駆体は組織中で利用されてアセチルCoAが生成し、
これはさらにミトコンドリア中でクレブス回路を介して
COとHOに酸化され、ATPの形の高エネルギー
を産生する。
【0010】ケトン体の前駆体(脂肪酸とケトン生成性
のアミノ酸)が(ヒトや動物に)投与される時アセチル
CoAが生成され、これはさらに酸化されて高レベルの
ATPが産生される。アセチルCoAの産生が過剰な場
合、ケトン体が生成され、その主要な代謝部位は肝臓で
ある。生成されるこれらのケトン体のうち、アセトンは
利用されず、息、汗および尿から排泄される。一方アセ
トアセテートとβ−ヒドロキシブチレートは抹消組織に
放出され、そこでアセチルCoAに変換され、さらにミ
トコンドリア中でアセチルCoAとクエン酸回路を介し
てCOとHOに酸化され、抹消組織に豊富なエネル
ギーを供給する。
【0011】抹消組織では、ケトン生成性のアミノ酸か
らのアセトアセテートの生成も起きる。ここでアセトア
セテートが過剰に存在する場合、アセトアセテートは保
存のためβ−ヒドロキシブチレートに変換されるか、ま
たはアセチルCoAに変換されてミトコンドリア中でさ
らにCOとHOに酸化されて高レベルのATPを産
生する。抹消組織では脂肪酸はβ−酸化を介してアセチ
ルCoAに分解され(図1参照)、これはさらにミトコ
ンドリア中でCOとHOに酸化されて高レベルのA
TPを産生する。
【0012】角膜、水晶体および網膜は解糖系の活性が
高く、グルコースを代謝して多量の乳酸を産生する。通
常の条件下でグルコースはインビボで目の組織のエネル
ギー源である。生成される乳酸は血液循環を介してクリ
アランス機構により除去される。目の手術の間またはそ
の直後は、血液循環による乳酸の除去機構は有効でな
い。目の手術において目の組織のエネルギー源として潅
流溶液中にグルコースが含まれている時、前眼房および
硝子体中に過剰の乳酸が蓄積される。グルコースの利用
が細胞外pHを下げ、これが細胞(および組織)中に乳
酸の蓄積を起こして代謝活性を阻害する(チェンとチェ
ン(Chen,C.H.and Chen,S.
C.)、アーチ・ビオケム・ビオフィズ(Arch.B
iochem.Biophys.)第276巻、70頁
(1990年))。この問題は、目の組織の代替エネル
ギー源として潅流溶液中にケトン体およびその前駆体を
添加することにより解決される。目の組織中でケトン体
およびその前駆体は直ちに利用されてアセチルCoAに
なり、ミトコンドリア中でクレブス回路を介してCO
とHOに酸化されて高レベルのATPを産生する。こ
の過程はパスツール効果により解糖系を阻害し、乳酸産
生を抑制する。
【0013】さらにケトン体は飢餓中の脳、筋肉および
腎臓の好適なエネルギー源であることが知られている
(オルソン(Olaon R.E.)、ネーチャー(N
ature) 第195巻、597頁、1962年;バ
センジ(Bassenge,E.)ら、アメリカン・ジ
ャーナル・オブ・フィジオロジー(Am.J.Phus
iol.)第208巻、162頁、1965年;オーエ
ン(Owen,O.E.)ら、ジャーナル・オブ・クリ
ニカル・インベスティゲーション(J.Clin.In
vest.)第46巻、1589頁、1967年;およ
びホーキンズ(Howkins,R.A.)ら、バイオ
ケミストリージャーナル(Biochem.J.)第1
22巻、13頁、1971年、および第125巻、54
1頁、1971年)。
【0014】本発明の組成物は、単に目の手術において
目の液または一般の手術における体液を代替する人工の
液、または潅流溶液自体として機能することのみを目的
とするものではない。それよりも本発明の目的は、単離
された組織の保存中の、そして手術中や手術後の一時的
な組織の高エネルギー源としての、ケトン体およびその
前駆体を与え、少なくとも前眼房と硝子体が生理的体液
と充分に平衡に達するまで、細胞が生存活性と生理的お
よび生物学的機能を果たすことを可能にさせることにあ
る。
【0015】すなわちバランスト製剤中のケトン体およ
びその前駆体とグルコースは、保存中の単離された組織
や手術中の抹消組織に特に有用である。グルコースは、
ミトコンドリアがほとんどないかまたは全然ない組織
(例えば角膜間質(corneal stroma)や
水晶体)のエネルギー源として与えられる。ケトン体お
よびその前駆体はエネルギーが豊富である。これらはク
レブス回路を介してミトコンドリア中でCOとH
に直ちに酸化され、他の代謝上の廃棄物は産生されな
い。生成される二酸化炭素は、水和されて炭酸となり、
これはさらに酸化されてpH7.4で重炭酸塩になる。
重炭酸塩は角膜内皮を通過するイオン輸送過程に必要で
あることが示唆されている(ホドソン(Hodosi
n,S.)ら、ジャーナル・オブ・フィジオロジー
(J.Physiol.)第263巻、563頁、19
76年)。さらにケトン体およびその前駆体の酸化は高
レベルのATPを産生するのみでなく、パスツール効果
を介して解糖系を抑制し、その結果乳酸の産生を阻害す
る。
【0016】本発明において、バランスト塩(bala
nced salts)は成分中に含まれて、インビボ
投与用の生理的に融和性のある溶液を生成する。成分中
のリン酸塩はケトン体およびその前駆体が酸化される時
のATP産生過程の酸化的リン酸化の要素である。さら
にリン酸はpH7.2−7.4の生理的pH範囲で高度
の緩衝能を有する緩衝液として働く。
【0017】本発明の理論と目的とする応用は、米国特
許第4,663,289号に記載のビーチ(Veec
h)の理論とは異なる。ビーチ(Veech)の発明
は、生きている動物細胞の代謝過程は1つまたはそれ以
上の一定比率の[HCO−]/[CO]、[L−乳
酸塩−]/[ピルビン酸塩−]、および[β−ヒドロキ
シブチレート]/[アセトアセテート]対により制御さ
れることができるという理論に基づいており、これはp
Hを調整するための「弱酸/共役塩基」対の緩衝系に類
似の効果である。
【0018】ビーチ(Veech)の理論はいくつかの
仮説に基づいている: 1.一定比率の対の基質の両方が細胞または組織に摂取
される。 2.(組織に)蓄積される一定比率の基質は、次に代謝
活性を制御するために生きている細胞中に留まる。 3.これらの基質対による基質の摂取と代謝制御はすべ
ての組織で類似している。
【0019】ビーチ(Veech)の発明の基礎となっ
ている多くの実験はラットの肝臓で実施された(ビーチ
(Veech)ら、バイオケミストリージャーナル(B
iochem.J.)第115巻、609頁、1969
年;およびビーチ(Veech)ら、ジャーナルオブバ
イオロジカルケミストリー(J.Biol.Che
m.)第254巻、6538頁、1979年)。肝臓は
ヒトおよび動物において代謝の中心である。肝臓におけ
る代謝過程は抹消組織でのそれとは異なる。従って代謝
過程を制御する仕組みは肝臓で働くかも知れないが、そ
れは必ずしも抹消組織で働くとは限らない。例えば肝臓
では脂肪酸のβ−酸化を通してケトン体が生成される。
生成されたケトン体は肝臓で使用されないが、血液循環
を介して抹消組織に移動される。ここでそれらはクレブ
ス回路を介して高レベルのATPの産生と共役してCO
とHOに酸化される(生化学の原理(Phncip
lesof Biochemistry)、レーニンジ
ャー(Lehninger)、ワースパブリッシャーズ
社(Worth Publishers,In
c.))。すなわちβ−ヒドロキシブチレートは抹消組
織の効率的な代替エネルギー源であるが、肝臓の代替エ
ネルギー源ではない。本発明は、アセトアセテートと共
役することなくβ−ヒドロキシブチレートを抽出し代謝
してATPを産生し、同時に細胞での乳酸の生成と蓄積
を抑制する、角膜と水晶体のような抹消組織の高い活性
を利用する。
【0020】生成される乳酸は、活発に糖を分解してい
る正常な細胞(例えば赤血球、骨格筋、角膜および網
膜)により血液中に放出され、次に肝臓と心臓により血
液から抽出されて代謝される。乳酸は細胞質膜を通し
て、競合的インヒビターとしてのピルビン酸とともに移
動される(スペンサーとレーニンジャー(Spence
rand Lehninger)、バイオケミストリー
ジャーナル(Biochem.J.)第154巻、40
5頁、1976年)。ケトン体は肝臓で生成されて血液
中に放出され、次に抹消組織(例えば角膜と水晶体)に
より血液から抽出され代謝される(生化学の原理(Pr
inciples of Biochemistr
y)、レーニンジャー(Lehninger)、ワース
パブリッシャーズ社(Worth Publisher
s,Inc.))。細胞質膜を通してのケトン体の輸送
機構はまだ確率していない。
【0021】ピルビン酸、乳酸、アセトアセテート、お
よびβ−ヒドロキシブチレートの代謝は細胞または組織
により異なる。心臓と肝臓の乳酸脱水素酵素(LDH)
アイソザイムは低濃度の乳酸のピルビン酸への酸化を促
進し;角膜、水晶体および網膜のLDHアイソザイムは
低濃度のピルビン酸を乳酸に還元するのを促進する。肝
臓中のβ−ヒドロキシブチレート脱水素酵素(BDH)
アイソザイムは、低濃度のアセトアセテートのβ−ヒド
ロキシブチレートへの還元を促進し;抹消組織(例えば
角膜)中のBDHアイソザイムは低濃度のβ−ヒドロキ
シブチレートのアセトアセテートへの酸化を促進する。
異なる組織での種々のLDHやBDHアイソザイムが異
なること、基質−対(例えば[乳酸塩]/[ピルビン酸
塩]や[β−ヒドロキシブチレート]/[ピルビン酸
塩]そして[β−ヒドロキシブチレート]/[アセトア
セテート])のすべての組織についての一般的な比率の
確立を困難にしている。食物摂取および他の代謝反応似
よる基質摂取、これらの化学物質の連続的な流入、およ
びこれらの化学物質の流出や他の代謝反応による除去に
より、基質一対の一般的な比率の確立は一層困難になっ
ている。
【0022】組織保存用の培地の応用において、リンド
ストローム(Lindstrom)らの理論(米国特許
第4,695,536号)は、基本的に組織培養の分野
の科学者が何年も使用している組織培養技術である。具
体的にはリンドストローム(Lindstrom)ら
は、以下の方法よりなる角膜保存法を教えている:
【0023】(a)アールズ塩(Earls salt
s)を含む50mlの基本培地のギブコ(Gibco’
s)の最少基本培地、L−グルタミンを含まない25m
MのHEPES緩衝液、培地の最終容量の最終濃度が1
%である5mlのL−グルタミン(200mM)、およ
び50−100μgのガラマイシン(garamyci
n)を含む抗生物質を含む角膜保存培地;ウシ血清、胎
児ウシ血清またはヒト血清の群からの血清;そしてコン
ドロイチン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ケラタン硫
酸、ポリビニル−ピロリドン、メチルセルロース、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース、セルロースガムおよ
びデキストランよりなる群から選択される有効量の高分
子量分子を混合し; (b)角膜保存容器に混合培地を充填し;そして (c)培地を含む容器中で角膜−強膜輪(cornea
l−scleralrim)を維持して、培地を4−3
4℃の温度に維持することにより中期間の保存と長期間
の保存を可能にし、そしてこの系は温度の変化を可能に
して組織の輸送の準備ができる。
【0024】この理論は単離された角膜がマクカレイ−
カウフマン(MacCarey−Kaufmann)培
地(組織培養培地199プラス5%デキストラン;マク
カレイとカウフマン(MacCarey,B.and
Kaufman,H.)、インベスト・オフサルモル
(Invest.Ophthalmol.)第13巻、
165頁、1974年)中で、ウシ血清の補足が有りま
たはなし(リンドストローム(Lindstrom)
ら、アメリカンジャーナルオブオフサルモロジー(A
m.J.Ophthalmol.)第95巻、869
頁、1977年)で培養または保存される時、乳酸の産
生と蓄積が阻害される機構について何も記載していな
い。マクカレイ(MacCarey)ら(インベスト・
オフサルモル(Invest.Ophthalmo
l.)第13巻、165頁、1974年)の理論では、
デキストランは組織培養培地(TC199)は脱水剤と
して添加され、これにより培地の活性オスモル濃度はや
や高張(約305−340mOsM)となる。このやや
高張溶液におけるデキストランは保存された角膜に対し
てコロイド浸透圧を及ぼし、人工的脱水効果を与える。
しかし培地中のデキストランの存在は乳酸の産生と蓄積
に阻害作用を示さない。
【0025】これとは全く対照的に、チェン(Che
n)らの理論(米国特許第4,873,186号)は、
単離された角膜がβ−ヒドロキシブチレートを含むダル
ベッコーのリン酸緩衝化塩溶液(PBS)でインキュベ
ートされるか、またはβ−ヒドロキシブチレートを含む
TC199(培地199としても知られている)中で保
存される時、組織中で高レベルのATPが同時に産生さ
れ乳酸の産生と蓄積が阻害される機構について記載して
いる。具体的には、チェン(Chen)らは、手術的性
質の単離された角膜が保存される時間を延長する方法を
開示しており、この方法は保存された角膜を含む角膜保
存培地中に、(1)短鎖脂肪酸、(2)ケトン体、およ
び(3)乳酸産生を阻害するのに充分な量の、単離され
た角膜による乳酸産生を阻害することができるケトン生
成性のアミノ酸またはケトン体前駆体よりなる群から選
択される少なくとも1つの化合物のある量を含有させる
ことよりなる。
【0026】角膜保存培地は、ハンクス塩を含むTC1
99のような組織保存培地の重炭酸塩バランスト塩溶液
部分を、本発明の組成物で置換することにより製剤化さ
れる。この場合、陰イオンと陽イオンの合計濃度が生理
的に融和性があるように維持するために、NaCl濃度
は減少させなければならない。その結果NaCl以外の
組織培養培地中の成分は完全には分解されないため、活
性オスモル濃度はやや低張となる。溶液の活性オスモル
濃度は290mOsMの等張、または285−300m
OsMの範囲でなければならない。オスモル濃度調整に
は細胞質膜透過性の糖(例えばマンニトール、ショ糖お
よびデキストラン)が使用される。これらを利用すると
溶液が等張であるため、保存された角膜にコロイド浸透
圧を及ぼさない。従ってマクカレイ(MacCare
y)らの理論(マクカレイ(MacCarey)ら、イ
ンベスト・オフサルモル(Invest.Ophtha
lmol.)第13巻、165頁、1974年)におけ
るデキストランの目的の応用とが完全に異なる。
【0027】β−ヒドロキシブチレートは還元剤であ
る。溶液中では、特に高温でOにより酸化される。従
って本発明の組成物を作成するためには脱気した水を使
用する必要がある。得られた溶液は真空下で保存してβ
−ヒドロキシブチレートがOにより酸化されるのを防
ぎ、その結果寿命を延ばすことができる。臨床応用のた
めにビンを開くとき溶液を空気と平衡化させれば、組織
(または細胞)の生物学的機能のためにOを利用する
ことができる。
【0028】あるいはβ−ヒドロキシブチレートがO
により酸化されるのを防ぐために、クエン酸、フェニル
アラニンおよびビタミンEよりなる群の抗酸化剤を使用
してもよい。好ましい抗酸化剤はクエン酸であり、溶液
中のクエン酸の濃度は8−12mMの範囲である。しか
し長期間保存すると、溶液中のOも抗酸化剤を酸化し
て、β−ヒドロキシブチレートがOにより酸化される
のを防ぐ抗酸化剤の効力を低下させてしまう。従って本
発明の組成物の作成には脱気した水の使用が好ましい方
法である。
【0029】
【発明の要約】本発明は、ケトン体および/またはその
前駆体、グルコース、リン酸塩緩衝化バランスト塩水溶
液よりなる新規組成物に関する。本発明はまた、ケトン
体および/またはその前駆体、グルコース、リン酸塩緩
衝液化バランスト塩水溶液を、前記した単離された組織
の保存と、手術時の組織の効率的な生理的および生化学
的機能のための要求を有効に満たす組成物を形成するの
に充分な量で混合することよりなる、組成物の調製方法
に関する。
【0030】図1は、脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸
からのケトン体生成の経路を示す。
【0031】図2は、実施例1に記載されたように、B
SSで前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕微鏡
(specular microscope)による写
真の複製である。
【0032】図3は、実施例1に記載されたように、B
SS−プラスで前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反
射顕微鏡による写真の複製である。
【0033】図4は、実施例1に記載されたように、本
発明の組成物で前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反
射顕微鏡による写真の複製である。
【0034】図5は、実施例2に記載されたように、本
発明の組成物の存在下での単離された角膜のインビトロ
での収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時
間」をプロットしたものである。
【0035】図6は、実施例2に記載されたように、B
SS−プラスの存在下での単離された角膜のインビトロ
での収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時
間」をプロットしたものである。
【0036】図7は、実施例3に記載されたように、本
発明の組成物を含む培地中で4℃で7日間と11日間前
もって保存した、移植されたドナーの角膜のインビボで
の収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時
間」をプロットしたものである。図8は、実施例3に記
載されたように、本発明の組成物を含む培地中で4℃で
7日間と11日間前もって保存した移植されたドナーの
角膜のインビボでの収縮(deswelling)の
「角膜の厚さ対時間」をプロットしたものである。
【0037】おおまかに記載すると、本発明の組成物
は、ケトン体および/またはその前駆体、グルコース、
およびリン酸塩緩衝液化バランスト塩水溶液よりなる。
本発明の組成物は、目および他の抹消組織の効率的な生
理的および生化学的機能のための要求を有効に満たすこ
とができるように、その成分(特に前述したケトン体お
よび/またはその前駆体、グルコース、およびリン酸塩
緩衝液化バランスト塩水溶液)の特別な性質のいくつか
を利用する。
【0038】従ってケトン体および/またはその前駆
体、グルコース、およびリン酸塩緩衝液化バランスト塩
水溶液よりなる本発明の組成物は、高密度のミトコンド
リアがある場合またはない場合(または全くミトコンド
リアがない場合)、または一般に他の組織がある場合ま
たはない場合も、目の組織の最小の必須の栄養要求を満
たす。例えば手術後に本発明の組成物で潅流された目お
よび他の抹消組織は、エネルギー源依存性代謝機能(例
えば液体およびイオン輸送および蛋白合成)や、薄く透
明な角膜を維持するような生理的機能を実行することが
できる。
【0039】従って本発明の組成物は、例えば角膜の3
つの異なる組織の層に代表される抹消組織のバランスの
取れた豊富なエネルギー源を与える。すなわち本発明の
組成物は、内皮の高呼吸活性に対するニーズ、内皮と間
質(stroma)の高解糖系活性に対するニーズ、お
よび角膜液の基本的な細胞内エネルギーレベルとイオン
輸送の達成のニーズを満たすことができる。
【0040】潅流溶液としての使用に適した本発明の代
表的な組成物を、その成分の範囲とともに、以下の表1
に記載する。
【0041】
【表1】
【0042】本発明の組成物に含まれる代表的な陰イオ
ンと陽イオンは以下の表2に記載されている。表2はま
た、本発明の組成物中のこれらのイオンの濃度を示す。
本発明の組成物の計算されるオスモル濃度は、すべての
塩が完全に溶解している場合約300から約320mO
sMの範囲である。本発明の組成物の調製された溶液の
実際のオスモル濃度は、約285から約300mOsM
の範囲である。
【0043】
【表2】
【0044】本発明の1つの態様によれば、本発明の組
成物のケトン体はβ−ヒドロキシブチレートイオンとア
セトアセテートイオンである。β−ヒドロキシブチレー
トイオンはβ−ヒドロキシブチレートのD−異性体、β
−ヒドロキシブチレートのD−ラセミ体とL−ラセミ体
の混合物、およびβ−ヒドロキシブチレートのD−異性
体とL−異性体の混合物よりなる群から選択され、最も
好ましくはβ−ヒドロキシブチレートのD−異性体であ
る。β−ヒドロキシブチレートの濃度は好ましくは5−
30mMの範囲である本発明の組成物の好適なケトン体
の前駆体は酢酸と酪酸よりなる群から選択される脂肪酸
であり、好適なケトン生成性のアミノ酸はロイシン、リ
ジン、フェニルアラニン、チロシンそしてトリプトファ
ンよりなる群から選択される。
【0045】ケトン体の前駆体の濃度は好ましくは0.
1−25mMの範囲である。ケトン生成性のアミノ酸の
濃度は好ましくは、0.1−5.0mMの範囲であり、
最も好ましくは1−2mMの範囲である。ケトン生成性
のアミノ酸は好ましくは、合計濃度は7.5−12.5
mMであり、最も好ましくは合計濃度は10mMであ
る。
【0046】好適な脂肪酸は酢酸であり、好ましくは1
5−25mMの範囲の濃度であり、または酪酸であり、
好ましくは5−15mMの範囲の濃度である。酢酸の濃
度は最も好ましくは20mMであり、酪酸の濃度は最も
好ましくは10mMである。
【0047】本発明の組成物のpHは好ましくは7.3
−7.5に調整される。
【0048】β−ヒドロキシブチレートのOによる酸
化を防ぎ、室温での溶液の寿命を延ばすために、本発明
の組成物を作成するには脱気した水を使用することが好
ましい。
【0049】好ましくは15−35mM、または最も好
ましくは25−30mMの量のNaClの一部は、D−
グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌロン酸、
D−グルコン酸およびD−グルカリック酸よりなる群か
ら選択される1つまたはそれ以上の糖酸(sugar
acids)の当量のNa+塩で置換される。
【0050】目の手術において起きる癒着を同時に防い
で、目の組織の効率的な生理的および生化学的機能のた
めの要求を有効に満たす組成物を形成するのに充分な量
の、40−500キロダルトンの範囲の量の中性の多糖
デキストランの添加により、本発明の組成物の粘度は上
昇している。中性の高分子量デキストランの好適な濃度
は2%−20%の範囲である。
【0051】別の態様において本発明は、本発明の組成
物、イーグル(Eagle’s)培地、ダルベッコー
(Dulbecco’s)培地およびダニエル(Dan
iel’s)培地よりなる群から選択される一員の最少
の必須アミノ酸、および最少の必須ビタミンよりなる、
角膜保存培地に関する。この溶液は市販されており、当
業者に明らかなように、添加される量は特定の条件に依
存して変化する。
【0052】別の態様において、本発明は、組織培養培
地のバランスト塩溶液が本発明の組成物で置換されてい
る角膜保存培地に関する;溶液中の陽イオンと陰イオン
の合計濃度がバランスト塩水溶液と同じ濃度を維持する
ために、NaCl濃度は好ましくは70−100mMの
範囲内、または最も好ましくは85mMに減少されてい
る;溶液の活性オスモル濃度(osmolarity)
は285−300mOsMの等張または最も好ましくは
290mOsMに調整されており;必要があれば必要に
応じてマンニトール、ショ糖およびデキストランが添加
される。組織培養培地は、好ましくはハンクス塩を含む
TC199、またはハンクス塩を含むイーグル最小最少
培地である。
【0053】角膜保存培地のpHは好ましくは7.10
−7.50の範囲であり、最も好ましくは7.25−
7.40の範囲である。
【0054】15−35mM、または最も好ましくは2
5−30mMの量のNaClの一部は、D−グルクロン
酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌロン酸、D−グルコ
ン酸およびD−グルカリック酸よりなる1つまたはそれ
以上の糖酸の等量のNa+塩で置換されている。
【0055】別の態様において本発明は、本発明の組成
物のリン酸塩緩衝化バランスト塩溶液が、角膜の保存に
適しているが好ましくない乳酸の産生が普通に起きる組
織培養培地よりなる角膜保存用組成物の重炭酸塩緩衝化
バランスト塩溶液に取って代わっている、角膜保存培地
に関する。さらに角膜保存培地は、角膜による乳酸の産
生を阻害することができる短鎖脂肪酸とケトン体よりな
る群から選択される、乳酸産生を阻害するのに充分な量
で存在する、少なくとも1つの化合物を含む。
【0056】さらに別の態様において本発明は、本発明
の角膜保存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジン
および血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、
角膜保存組成物に関する。
【0057】さらに別の態様において本発明は、本発明
の組成物、およびVEGF、ウリジン、チミジンおよび
血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、臓器移
植(例えば角膜移植)用組織の調製のための製剤に関す
る。さらに別の態様において本発明は、本発明の角膜保
存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジンおよび血
清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、例えば局
所投与用の潅流溶液に関する。
【0058】さらに別の態様において本発明は、本発明
の角膜保存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジン
および血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、
例えば投与用の臓器用培地に関する。
【0059】本発明の溶液の調製方法は、前述した目お
よび他の抹消組織の効率的な生理的および生化学的機能
のための要求を有効に満たす組成物を形成するのに充分
な量の、脱気したリン酸塩緩衝化塩水溶液中で、グルコ
ース、およびケトン体および/またはその前駆体を混合
することよりなる。この溶液は室温で長期間保存した場
合、β−ヒドロキシブチレートがOにより酸化される
のを防ぐためOを完全に除去するように真空下でビン
に詰められる。もしこの溶液を直ちにまたは短期間の間
に使用する場合、真空下でのビン詰めは有用であるが、
必ずしも必要でない。
【0060】高濃度のCa2+とMg2+はリン酸塩沈
澱物を作るため、CaClとMgCl以外のすべて
の成分は、まず充分な脱気した水(好ましくは全容量の
90−95%)で溶解することが好ましい。溶液を完全
に混合し、1NのD−グルクロン酸またはNaOHでP
Hを7.3−7.5の範囲に調整する。次に0.5Mの
保存液(または0.2−1.0Mの範囲)のCaCl
とMgClを加える。pHをチェックして必要であれ
ば7.3−7.5、好ましくは7.4に調整する。最後
に水を加えて容量を調整する。この溶液の調製には脱イ
オン化2回蒸留水を使用することが好ましい。使用され
るすべての成分は、特級(reagent grad
e)である。
【0061】本発明の潅流溶液の調製にはいくつかの変
更が可能である。そのいくつかを以下に記載する。
【0062】1.リン酸緩衝液はリン酸二カリウムとリ
ン酸一カリウムを用いて調製される。この場合総カリウ
ムイオン濃度は15mMに増加する。
【0063】2.リン酸緩衝液はリン酸二ナトリウムと
リン酸一ナトリウムを用いて調製される。この場合8−
12mMのKClを加えなければならず、NaClは5
mM引かれる。
【0064】3.リン酸緩衝液は任意の他のリン酸塩と
リン酸を用いて調製され、pHを適当に7.4に調整す
る。いずれの場合も、K+の最終濃度は8−12mMで
なければならない。pHは7.3−7.5の範囲で変化
し得る。
【0065】4.NaClの一部を、D−グルクロン
酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌロン酸、D−グルコ
ン酸およびD−グルカリック酸を含む1つまたはそれ以
上の糖酸のNa+塩でで置換して、塩素濃度は生理的濃
度の90−105mMの範囲内に維持しなければならな
い。
【0066】5.0.1−5.0mM、好ましくは1−
2mMのロイシン、リジン、フェニルアラニン、トリプ
トファンそしてチロシンよりなる1つまたはそれ以上の
ケトン生成性のアミノ酸を、潅流溶液の成分として添加
することができる。Na濃度を調整するために等量の
NaClを差し引く。
【0067】6.β−ヒドロキシブチレートの一部を2
倍量の酢酸(ケトン体前駆体短鎖脂肪酸の最も小さい分
子)で置換することができる。
【0068】7.10mM、または5−15mMの範囲
の他の短鎖脂肪酸(例えば酪酸やカプロン酸)のナトリ
ウム塩を使用することもできる。しかしこれらの水溶液
は溶解度が低いためその使用が限定される。
【0069】8.β−ヒドロキシブチレートは、アセテ
ートまたはアセトアセテートで置換することができる
が、β−ヒドロキシブチレートが好ましい。β−ヒドロ
キシブチレートは安定で低価格である。これはまた細胞
により直ちに利用され、アセトアセテートよりエネルギ
ー効率が高い。1モルのβ−ヒドロキシブチレートから
64モルのATPと1モルのNADHが産生され、これ
がさらに3モルのATPを産生する。
【0070】9.細胞ではD−異性体のみが使用される
ため、β−ヒドロキシブチレートのD−異性体が本発明
の組成物として好ましい。しかしD−、L−ラセミ体ま
たはD−、L−異性体混合物も低価格であり、市販品が
すぐ入手可能であり、これらも使用することができる。
【0071】10.必要な場合は、溶液のオスモル濃度
を290mOsM、または約285−300mOsMの
範囲に調整するために、マンニトールやショ糖のような
糖類またはデキストランのような中性多糖類を使用する
ことができる。このような調整ではNa濃度やCl
濃度は変化しない。もしNa濃度やCl濃度がいず
れも高すぎる場合は、NaClの代わりに等量の糖類を
使用するべきである。
【0072】11.溶液の粘度を増加させるために、5
%または2−20%の範囲の中性の高分子量デキストラ
ン(好ましくは70−500キロダルトン)を使用する
ことができる。非常に高粘度の組成物は、水晶体または
虹彩が角膜の内皮に吸着したり、虹彩が水晶体に吸着し
たりするような、目の手術における手術の傷に起因する
癒着を防ぐために適用するのに有用である。この場合、
NaClは添加されるデキストラン1%につき2.5m
Mだけ差し引かれる。
【0073】本発明の組成物は主に、目の中の手術(例
えば角膜移植、眼内水晶体移植、白内障摘出、および硝
子体切除など)の後の暫定期間の間に、目や他の抹消組
織(または細胞)が、その生存活性と生理的機能を果た
す能力を維持させることができるようにするために使用
される、最少の必須成分で製剤化される。暫定期間と
は、手術してから、前眼房および/または硝子体中の溶
液が体の生理的溶液と充分に平衡に達するまでの時間を
意味する。前述したように本発明の組成物は、例えば皮
膚や目への局所投与、移植前のドナー組織の保存と洗
浄、そして手術一般に使用することができる。
【0074】本発明の組成物は、その濃度範囲が血漿中
に見いだされるものに類似の、生理的に融和性のある塩
溶液を含有する。本発明においてリン酸塩(代表的には
10mM)は、緩衝液としてもまたエネルギー代謝にお
けるATPの産生のためのADPのリン酸化の基質とし
ても使用することができる。リン酸塩はpH7.2−
7.4で強い緩衝能力を有する。重炭酸塩は現在市販さ
れている他の潅流溶液で使用されている(例えばテキサ
ス州、フォートワースのアルコン社製BSS−プラ
ス)。しかし重炭酸塩緩衝液を使用するとCO分圧
(Pco2)により溶液のpHが変化するため、本発明
の組成物の成分として重炭酸塩は使用されない。さらに
外から重炭酸塩を加えなくても、組織自身の呼吸(すな
わち酸化的リン酸化)により重炭酸塩が生成する。この
場合、この基質が(ミトコンドリア中で)酸化されてC
とHOが生成される。次に生成されたCOは水
和されてHCOとなり、これがさらに分解されてH
CO が 生成される。ウサギの角膜では約1.3μ
モル/cm/時間の速度でCOが産生される。ヒト
の角膜ではこの速度は30−50%高い。
【0075】ミトコンドリア中ではβ−ヒドロキシブチ
レートはβ−ヒドロキシブチレート脱水素酵素による触
媒作用により、直ちにアセトアセテートとNADHに酸
化される。アセトアセテートはさらにサクシニルCoA
と反応してアセトアセチルCoAを生成し、これはチオ
フォラーゼ(thiophorase)によりさらに分
解されてアセチルCoAを生成する。細胞中で脂肪酸は
β−酸化により利用されてアセチルCoAを生成する。
ケトン生成性のアミノ酸もまた細胞中で資化されてアセ
トアセテートまたはアセトアセチルCoAを生成し、次
にアセチルCoAを生成する。これらの反応からのアセ
チルCoAは、次にミトコンドリア中でクエン酸回路を
介してCOとHOに酸化される。脂肪酸とケトン生
成性のアミノ酸からのケトン体の生成経路は図1に簡単
に記載されている。アセチルCoAの酸化はエネルギー
効率の高い過程であり、アセチルCoAlモルの使用に
対して30モルのATPと2モルのGTP(すなわち合
計で32モルのATP)が生成する。無機リン酸は酸化
的リン酸化(これは電子伝達系に共役してADPと反応
してATPを産生する)の源となる。
【0076】下記の表から明らかなように、角膜で消費
されるグルコースのうち、約47%は解糖系を介してお
り、53%は呼吸を介している(チェンとチェン(Ch
enand Chen)、アーク・ビオケム・ビオフィ
ズ(Arch.Biochem.Biophys.)第
276巻、70頁、1990年)。
【0077】
【表3】
【0078】角膜組織層でのグルコースの消費%は上記
表3の括弧内に示してある。間質は呼吸よりも2倍速い
速度で解糖系によりグルコースを消費する。水晶体では
ミトコンドリアは表皮にのみ存在している。従って間質
と水晶体(特に水晶体の核内の細胞)では、グルコース
は重要なエネルギー源である。これらの細胞ではアセチ
ルCoAを利用するミトコンドリアはほとんどまたは全
くない。他の目の組織(例えばミトコンドリア密度の高
い角膜の内皮や光受容体)では、ケトン体およびその前
駆体はエネルギー効率的な基質である。さらにこれらの
組織では、アセチルCoAの酸化が呼吸の増加を引き起
こし、これがパスツール効果により嫌気的解糖系を阻害
する。
【0079】すなわちケトン体および/またはその前駆
体、グルコース、およびリン酸塩緩衝化バランスト塩溶
液よりなる本発明の組成物は、高密度のミトコンドリア
がある場合もない場合も、または全くミトコンドリアが
ない場合の目の組織、または一般に他の抹消組織の最少
の必須の栄養要求性を満たす。
【0080】本発明の組成物は、チェン(Chen)ら
(米国特許第4,873,186号、前述)の開示し
た、短期間の投与に適した、角膜保存組成物の単純なも
のとして使用することができる。チェン(Chen)ら
の理論では、短鎖脂肪酸とケトン体よりなる群から選択
される少なくとも1つの化合物を、組織培養培地と混合
して、角膜からにより起きる乳酸産生を同時に阻害して
高エネルギーを産生するために単離された角膜の保存に
使用される。
【0081】本発明の1つの態様によれば、本発明の組
成物、必須アミノ酸、およびイーグル培地(サイエンス
(Science)第130巻、432頁、1959
年;プロク・ソク・エクスペ・ビオル(Proc.So
c.Exp.Biol.)第89巻、362頁、195
5年)、ダルベッコー培地(ビロロジー(Virolo
gy)第8巻、396頁、1959年および第12巻、
185頁、1960年)またはダニエル培地(プロク・
ソク・エクスペ・ビオル(Proc.Soc.Exp.
Biol.)第127巻、919頁、1968年)のい
ずれかの必須ビタミンよりなる角膜保存培地が調製され
る。Hepes(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン
−N−2−エタンスルホン酸)緩衝液を20−30mM
で添加すると、緩衝力を増強するのに有効である。あら
かじめ調製された最少必須アミノ酸と必須ビタミンが市
販されている。溶液中の必須アミノ酸とビタミンは一般
に、比較的寿命が短く冷所で保存し短期間(通常6−1
2カ月)のうちに使用しなければならないため、角膜保
存培地として使用される本発明の組成物の作成には脱気
した水の使用は有効ではあるが必ずしも必要ではない。
【0082】本発明の第2の態様において、ハンクス塩
を含むTC199やハンクス塩を含むイーグル最少基本
培地のような組織培養培地のバランスト塩溶液を、本発
明の組成物で置換することにより角膜保存培地が製剤化
される。培地中の陽イオンと陰イオンの合計濃度が生理
的に融和性のあるレベルに維持されるように、NaCl
濃度は70−100mMの範囲内に減少されている。溶
液は290mOsMの等張、または活性オスモル濃度約
285−300mOsMの範囲内に維持されなければな
らない。活性オスモル濃度は、マンニトールやショ糖の
ような糖類、または40および70キロダルトンのデキ
ストランのような中性高分子量多糖類で調整される。
【0083】第3の態様において、チェン(Chen)
ら(米国特許第4,873,186号、前述)の理論の
角膜保存組成物の重炭酸塩バランスト塩溶液を、本発明
の組成物のリン酸塩緩衝化バランスト塩溶液で置換する
ことにより、角膜保存培地が調製される。15−35m
M、好ましくは25−30mMの量のNaClの一部
を、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌ
ロン酸、D−グルコン酸およびD−グルカリック酸を含
む1つまたはそれ以上の糖酸のナトリウム塩で置換する
ことにより、Cl濃度を90−105mMの生理的範
囲に維持することが好ましい。チェン(Chen)らの
理論では、短鎖脂肪酸とケトン体よりなる群から選択さ
れる少なくとも1つの化合物が組織培養培地と混合され
て、角膜保存に使用される。重炭酸塩緩衝化バランスト
塩溶液は組織培養培地成分の一部である。
【0084】第4の態様において、好適な角膜保存組成
物は、チェン(Chen)ら(米国特許第5,073,
492号)の記載する相乗的組成物と組合せた、前記の
第1、第2または第3の態様の製剤よりなる。チェン
(Chen)らの理論では、相乗的組成物は基本的に、
血管内皮増殖因子(VEGF)、ウリジン、チミジンお
よび血清由来因子(SDF)の相乗的に有効な混合物よ
りなる。ウリジンとチミジンの化学量論比は、ウリジン
10μM対チミジン0.5μMである。代表的には、透
析した胎児ウシ網膜抽出物(0.1mg/ml)と胎児
ウシ血清(3mg/ml)が、それぞれVEGFとSD
Fの供給源として使用される。
【0085】第5の態様において、本発明の組成物は第
4の態様で記載したチェン(Chen)ら(米国特許第
5,073,492号)の相乗的組成物と一緒にされ
て、臓器移植(角膜移植を含む)用の組織の調製のため
の製剤が作成される。
【0086】第6の態様において、前述した第1または
第2の態様の角膜保存培地は、第4の態様で記載したチ
ェン(Chen)ら(米国特許第5,073,492
号)の相乗的組成物と一緒にされて、内皮細胞再生を刺
激するための局所投与用の潅流溶液が作成される。
【0087】第7の態様において、前述した第1または
第2の態様の角膜保存培地は、第4の態様で記載したチ
ェン(Chen)ら(米国特許第5,073,492
号)の相乗的組成物と一緒にされて、角膜を移植する前
の角膜の内皮細胞再生過程を促進するための投与用の組
織培養培地が作成される。
【0088】本発明の溶液は、Ca2+とMg2+塩以
外は、総容量の約95%に等しい容量の脱気した2回蒸
留水中で、すべての成分を調製法に示された正確な量で
溶解させることにより調製される。必要な場合は溶液の
pHは、D−グルコン酸またはNaOHで7.4に調製
される。次にCa2+とMg2+塩を加えて、脱気した
2回蒸留水で容量を調整する。pHを再チェックして必
要な場合は調整する。次に溶液を適当な手段(例えばオ
ートクレーブまたは0.22μmフィルター(ナルゲ社
(Nalge Co.)、ニューヨーク州、ローチェス
ター)の使用)で滅菌する。次にβ−ヒドロキシブチレ
ートがOにより酸化されるのを防ぐため溶液からO
を完全に除去するため、真空下でビンに詰める。
【0089】本発明の組成物を(例えば前述した第1、
2、4、5および7の態様のように)製剤の一部として
使用する場合、まずCa2+とMg2+を含まない濃縮
した保存溶液を調製することが好ましい。次に正確な計
算された量を測り、成分の別の部分と一緒にし2回蒸留
水を加え約95%の容量にする。Ca2+とMg2+
加え、pHを再チェックし、必要な場合は再調整する。
保存溶液は好ましくは2倍から10倍濃縮液であり、さ
らに好ましくは2倍から5倍の濃縮液である。直ちに使
用しない場合は、保存溶液をナルゲン(Nalgen
e)(ナルゲ社(Nalge Co.)、ニューヨーク
州、ローチェスター)のような0.22または0.45
μmフィルターに通して滅菌する。滅菌した溶液を4℃
の冷蔵庫中で保存する。溶液は、比較的寿命の短い必須
アミノ酸、ビタミンおよび他の成分を含むため、4℃に
保存して短期間の間(通常約6−12カ月)に使用しな
ければならない。従ってこれらの溶液の調製に、脱気し
た水を使用することは有用ではあるが必ずしも必要では
ない。
【0090】相乗的組成物は充分な量のMg2+を含む
ため、本発明の組成物を相乗的組成物と組合わせる場合
はMg2+を加えてはならない。
【0091】本発明を以下の実施例で詳細に説明する。
ここに記載する実施例は例示のためであり、決して本発
明を限定するものではない。
【0092】実施例1 バランスの取れたエネルギー源としての本発明の組成物
の有効性を、現在最もよく使用されている2つの潅流溶
液であるBSSとBSS−プラス(アルコンラボラトリ
ーズ社(Alcon Laboraories,In
c.)、テキサス州、フォートワース)と比較した(B
SS−プラスの方が、BSSよりも有効であると報告さ
れている)。BSS−プラスにはトリペプチドである、
酸化型グルタチオンが存在する。ディクスタイン(Di
kstein)ら(ジェイ・フィジオル(J.Phys
iol.)第221巻、29頁、1972年)によれ
ば、グルタチオンは角膜の液体輸送に有効であるとされ
ている。
【0093】本発明の組成物は表1に示してあるが、本
例では10mMのβ−ヒドロキシブチレートの代わりに
20mMのアセテートを使用し、抗酸化剤としてクエン
酸を使用した。表1に示した範囲のこれらの成分の濃度
の変更も同様に有効である。しかし溶液の活性オスモル
濃度は約285−300mOsMの範囲、好ましくは2
90mOsMに維持しなければならない。塩の純度はロ
ット毎に変わるため溶液の活性オスモル濃度は調製した
もの毎に変わる。オスモル濃度が低すぎる場合はマンニ
トールを添加して調整するか、または高すぎる場合はN
aClの代わりにD−グルクロン酸ナトリウムまたは糖
酸のNa塩を用いる。
【0094】本実験では6個のネコの目の角膜に対し
て、それぞれ約2mmの長さの2つの切れ目を入れた。
各角膜の切れ目の1つを通して前眼房に、25ゲージの
カニューレを差し込んだ。10mMのβ−ヒドロキシブ
チレートの代わりに20mMのアセテートを使用し抗酸
化剤としてクエン酸を使用した以外は、上記表1に示し
た本発明の溶液を約15mmHgの圧力で約7ml/分
の速度で、角膜1個当り合計1リットル注入した。
【0095】比較のため、本溶液の代わりに、ある場合
はBSSを、別の場合はBSS−プラスを使用して同じ
方法を実施した。
【0096】注入後1、2そして6日後にすべての角膜
を調べた。反射顕微鏡を使用して内皮の形態を調べ、デ
ィジタル測厚器を使用して角膜の厚さを測定した。
【0097】図2に示したように、BSSを注入された
角膜は広範囲にわたって内皮細胞が失われており、内皮
の多形態性が見られ、また注入後1日目に角膜の膨潤が
見られた。図3と4に示したように、BSS−プラスま
たは本発明の潅流溶液の注入後1日目に、内皮細胞の形
は多角形(正常な形)のままであり、角膜の厚さも正常
であった。注入後6日目に観察すると、本発明の溶液を
注入した角膜(図4)は、内皮の多形態性と角膜の厚さ
の面でBSS−プラスを注入した角膜(図5)と同定度
かやや良好であった。
【0098】上記の結果は、内皮や薄く透明な角膜を維
持するという点から、本発明の灌流溶液はBSS−プラ
スより優れていることを示している。
【0099】この動物実験で前眼房への試験溶液の注入
は、通常の目の手術で行われるよりもはるかに長い期間
実施された。従って本発明の組成物は臨床応用において
も、目の組織に対して有効な作用を示すと結論された。
【0100】実施例2 イオンポンプと液体ポンプを含む内皮は、角膜を高度の
水和状態に維持するのを助け、従って透明度を維持する
ことを助けることは、よく知られている。内皮の液体と
イオン輸送はエネルギー依存性過程である。ドナーが死
んで(または角膜が単離されて)ある期間4℃に維持さ
れると、角膜の洗浄には4℃でエネルギーの産生が不充
分なため角膜は膨潤する。溶液の温度を上昇させるとエ
ネルギー産生が増加して角膜は収縮する。この過程は温
度逆転(temperaturereversal)と
呼ばれる。従って温度逆転を基礎とするこの単離された
角膜の洗浄活性は、角膜の障壁(barrier)、液
体ポンプおよび代謝機能の尺度であり、角膜がこれらの
機能を果たすための外来性代謝物の効率の尺度である。
【0101】本発明の方法では、体重が2.5−3.0
kgの雄のニュージーランドアルビノ(New Zea
land albino)ウサギにペントバルビタール
を過剰に心臓内投与して殺し、4℃の冷室に維持し、あ
る場合には目をテープで24時間閉じ、別の場合には4
8時間閉じて角膜の膨潤を誘導し、代謝活性の低下を誘
導した。1.5mmの強膜輪(scleral ri
m)を有する角膜を切り出し、ダルベッコーのPBS中
で軽く洗浄し、表1に示す本発明の溶液22mlを含む
クーβ−ビジョンビューイングチェンバー(Coope
r VisionViewing Chamber)中
に入れた。反射顕微鏡に接続したディジタル測厚器で角
膜の厚さを測定した。「角膜の厚さ対時間」をプロット
し、組織の収縮速度による角膜の洗浄活性を求めた。
【0102】比較のため、本溶液の代わりに、BSS−
プラスを使用して同じ方法を実施した。
【0103】この実験方法は、ドナーの角膜が受容者に
移植された後のインビボの洗浄過程に類似していること
が注目される。
【0104】図5は、上記表5に示す本発明の溶液中で
インビトロで室温(22−23℃)で膨潤させたウサギ
の典型的な「角膜の厚さ対時間」プロットを示す。ウサ
ギの死後24または48時間後にウサギから組織を単離
した。死後24および48時間後に測定した角膜(それ
ぞれ6個ずつ)の収縮速度による洗浄活性は、それぞれ
137.3±5.4μm/時間と63.3±6.7μm
/時間であった。
【0105】図6に示すように、BSS−プラスの存在
下では単離された角膜(それぞれ6個ずつ)の収縮速度
は、死後24および48時間後に、それぞれ89.7±
6.4μm/時間と30.3±3.8μm/時間であっ
た。この速度は本発明の溶液の存在下で観察されたもの
(図5)と比較して、それぞれ35%と50%低かっ
た。
【0106】上記の結果は、組織(および細胞)の生理
的および生化学的機能を果たすためのエネルギー源とし
ての効率という点で、本発明の組成物はBSS−プラス
より優れていることを示している。この結果は、実施例
1で記載した実験の結果をさらに支持している。
【0107】実施例3 チェン(Chen)ら(米国特許第4,873,186
号、前述)の理論は、β−ヒドロキシブチレートを組織
培養培地に混合し、単離された角膜、抹消組織の保存に
使用される時、保存された組織中での乳酸の産生と蓄積
を同時に阻害してATPとしての高レベルのエネルギー
が産生されることを明らかにした。インビボでのドナー
角膜の生存活性と内皮のポンプ機能を保存するための、
本発明の組成物を含有する角膜保存培地の有効性を、オ
プチゾール(Optisol、カリホルニア州、アーバ
イン(Irvine)、カイロン社(Cmiron)が
製造)と比較した(オプチゾールは現在市販されている
最も優れた角膜保存培地の1つである)。オプチゾール
中にはコンドロイチン硫酸とデキストランが脱水剤とし
て、組織に対するコロイド浸透圧を及ぼすのに充分な量
で含まれている。
【0108】本実験のために、TC199の重炭酸塩と
バランスト塩溶液を本発明の組成物で置換した角膜保存
培地を調製した。その典型的なものは表1に示してある
が、グルコースを除外し、NaClを15mMだけ減少
させた。TC199はすでにグルコースを含んでいるた
めグルコースを余分に添加する必要はない。15mMの
NaClの減少は、TC199の重炭酸塩とバランスト
塩溶液を本発明の組成物で置換したあとの、陽イオンと
陰イオンの合計濃度が同じになるようにするためであ
る。表1に示した範囲内でこれらの成分の濃度を変更し
ても同様に有効である。しかし溶液の活性オスモル濃度
は290mMの等張、または約285−300mOsM
の範囲に維持して、溶液が組織に対して浸透圧作用を示
す用にしなければならない。活性オスモル濃度はマンニ
トールやショ糖のような糖類、またはデキストランのよ
うな中性多糖で調整される。
【0109】溶液を0.22μmのナルゲンフイルター
メンブラン(Nalgene filter memb
rane)(ナルゲ社(Nalge Co.)、ニュー
ヨーク州、ローチェスター)で濾過して滅菌し、25m
lのシンチレーションバイアル中に入れ4℃で冷蔵保存
する。
【0110】本実験の方法では、体重が3.0−3.5
kgの雄のニュージーランドアルビノ(New Zea
land albino)ウサギにペントバルビタール
を過剰に心臓内投与して殺し、1.5mの強膜輪を有す
る角膜を単離した。比較のため同じドナーからの1対の
角膜の1個を、本発明の組成物を含有する角膜保存培地
中に保存し、別の1個をオプチゾール中で保存した。あ
る場合は7日間、別の場合は11日間保存した後、保存
培地からドナーの角膜を取り出し、ダルベッコーのPB
Sで軽く洗浄した。トレフィン(trephine)で
ドナーの角膜の7.5mmの先端(button)を切
り、受容者のウサギに移植した。移植操作に約30−4
5分間要した。移植後直ちにドナーの角膜の厚さを測定
し、次に7時間後までは30−60分毎に、1週間目ま
では毎日1回か2回測定し、4週間目までは週に1回測
定した。
【0111】一般に単離された角膜は4℃での保存中に
膨潤するが、これは保存された角膜の生存活性、細胞の
代謝活性そして内皮の液体ポンプ機能が保持されていれ
ば可逆的である。受容者に移植された時、生物学的機能
が充分保持されたドナーの角膜は急速に洗浄され、移植
片の清澄性は直ちに達成される。充分に保持されていな
い場合は、ドナーの角膜の洗浄速度は遅く、移植後に膨
潤さえする。
【0112】図7に示すように、本発明の組成物を含有
する培地中で移植後7日間保存されたドナー角膜は、急
速に(約16.2μm/時間、4個の移植角膜の平均)
洗浄され、11日間保存された角膜はもっと遅い速度
(約1.4μm/時間、4個の移植角膜の平均)で洗浄
される。移植後7日間と11日間保存された角膜が、約
340−370μmの正常な厚さに戻るための半減期
(t1/2)は、それぞれ2.4と33.6時間(各4
個の移植片)である(表4)。
【0113】図8に示したように、これとは全く対照的
にオプチゾール中で7日間保存したドナー角膜は移植後
約3時間緩やかに膨潤し、その後約0.5μm/時間
(4個の移植角膜の平均)の推定速度で膨潤した。オプ
チゾール中で11日間保存したドナー角膜は、移植後5
時間著しく膨潤し、その後約0.4μm/時間(4個の
移植角膜の平均)の推定速度で膨潤した。移植後7日間
と11日間保存された角膜が、約340−370μmの
正常な厚さに戻るための半減期(t1/2)は、それぞ
れ133と311時間(各4個の移植片)であると推定
される(表4)。
【0114】
【表4】
【0115】これらのインビボの実験で得られた結果
は、角膜組織の生存活性と角膜内皮の液体ポンプ機能の
保持の点から、本発明の組成物を含有する角膜保存培地
はオプチゾールよりも有意に優れていることを明白に示
している。
【0116】すなわち、実施例1、2および3に記載し
た実験は、本発明がユニークな組成物であることを示し
ている。抹消組織がその生理的および生化学的機能を果
たし、組織の生存活性を維持するためのエネルギー源と
して、本発明の組成物がインビトロおよびインビボでの
応用に特に有用であることは、明白である。
【0117】その臨床的性質に加えて、本発明の組成物
は、BSS−プラスなどの他の潅流溶液が有していない
以下の性質を有している:
【0118】1) 本発明の組成物は細胞の豊富なエネ
ルギー源となる一方で、乳酸の産生と蓄積を抑制する機
構を有している。 2) 本発明の組成物は化学的にBSS−プラスよりも
安定であり、寿命が長い。 3) 本発明の組成物はBSS−プラスよりも製造コス
トが低い。 4) 本発明の組成物の緩衝液(リン酸緩衝液)は安定
であり、能力が大きい。一方BSS−プラスは重炭酸ナ
トリウムの緩衝液系を使用しており、CO分圧により
pHが変化する。 5) 本発明の組成物は投与前の混合段階を必要とせ
ず、従って使用が簡単である。
【0119】いくつかの具体的な態様について本発明を
説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく多くの
変更が可能であることは当業者には明らかであろう。従
ってそれらの変更も本請求の範囲に含まれると理解する
べきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸から
のケトン体生成の経路を示す。
【図2】図2は、実施例1に記載されたように、BSS
で前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕微鏡(s
pecular microscope)写真である。
【図3】図3は、実施例1に記載されたように、BSS
−プラスで前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕
微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例1に記載されたように、本発明
の組成物で前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕
微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例2に記載されたように、本発明
の組成物の存在下での単離された角膜のインビトロでの
収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」
をプロットしたものである。
【図6】図6は、実施例2に記載されたように、BSS
−プラスの存在下での単離された角膜のインビトロでの
収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」
をプロットしたものである。
【図7】図7は、実施例3に記載されたように、本発明
の組成物を含む培地中で4℃で7日間と11日間前もっ
て保存した、移植されたドナーの角膜のインビボでの収
縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」を
プロットしたものである。
【図8】図8は、実施例3に記載されたように、本発明
の組成物を含む培地中で4℃で7日間と11日間前もっ
て保存した移植されたドナーの角膜のインビボでの収縮
(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」をプ
ロットしたものである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年6月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 組織保存用組成物
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の背景】 1.技術分野 本発明は、単離された組織の保存と手術時の組織の豊富
なエネルギー源として特に有用であり、同時に細胞内の
乳酸の生成と蓄積を抑制する、新規組成物に関する。こ
れは目の手術や手術一般に利用できるが、他の利用法
(例えば局所投与や移植前のドナー組織の保存と洗浄)
も可能である。
【0002】2.背景情報 一般に潅流液(irrigating solutio
n)は目の外表面や皮膚への局所投与、および手術時の
組織の洗浄と手術された組織を湿潤状態に維持するため
に使用される。しかし目の手術においては、手術(角膜
移植(貫通性角膜形成術)、白内障摘出、眼内水晶体移
植および硝子体切除など)の結果として、潅流液による
房水および/または硝子液の置換が起きる。これらの場
合潅流液の成分が回りの組織に吸収されるか溶液が最終
的に体液と平行に達し血液循環中にクリアランスされる
まで、潅流溶液は目の中に留まる。従って使用される潅
流液は生理的(張性(tonicity)やpHなど)
に融和性であるばかりでなく、少なくとも前眼房(an
terior chamber)と硝子体(vitre
ous)が生理的体液と充分に平衡に達するまで、細胞
が生存活性(viability)と生理的機能を果た
す能力を維持させることができる成分を含有する必要も
ある。
【0003】目の手術においては、潅流液の成分は角膜
と水晶体に対して特に重要である。いずれの組織も血管
がない。角膜はその栄養を主に前眼房より得て、多少で
はあるが涙と縁血管(limbal vessel)か
ら得る。水晶体はその栄養を前眼房および硝子体の液か
ら得る。網膜、毛様体および虹彩は血管のある組織であ
る;これらはその栄養を血管網の循環している血漿から
得る。従って潅流溶液の成分はこれらの組織に対して
は、角膜と水晶体に対するほど重要な影響を及ぼさな
い。
【0004】角膜においては後表面をおおう単一層の内
皮が、角膜の洗浄性と従って透明性を維持するのを助け
る液体とイオン輸送部位を含む。水晶体ではイオン輸送
部位は水晶体嚢(capsule)下の表皮中に位置す
る。一般にNa+−K+ATPaseは細胞質膜に存在
し細胞内Na+とK+含量をそれぞれ10mMと100
mMに維持するのを助けており、約120mMのNa+
と10mMのK+の細胞外塩濃度勾配に逆らって輸送す
るのを促進している。この液体および/またはイオン輸
送活動を行うには、細胞(および組織)に充分なエネル
ギーが必要である。
【0005】グルコースは哺乳動物の主要なエネルギー
源である。角膜、水晶体および網膜は非常に活性の高い
解糖系の組織であり、好気的条件下においてもグルコー
スを利用して乳酸を産生している。単離された角膜がグ
ルコースを含む培地中で保存される時、過剰の乳酸が生
成および蓄積されて酸性になり、組織の代謝活性が阻害
される。インビボでは、血管のある組織で生成される乳
酸は血液循環を介して除去され、血管のない組織で生成
される乳酸は前眼房に放出され、血液循環のクリアラン
ス機構により除去される。ヒトにおいては、前眼房の乳
酸は約4.0−4.5mMの一定の低レベルで維持され
る。
【0006】インビボ投与用の溶液中に存在する時、グ
ルコースは組織の重要かつ有用なエネルギー源である。
解糖系によるグルコースの利用により高速度でATPが
産生され、これはOには依存しない。しかし、これは
有効なエネルギー産生経路ではなく、グルコース1モル
が利用される時2モルのATPが産生されるのみであ
る。この時2モルの乳酸も産生される。手術された目の
組織のクリアランス機構が充分に有効でないとき、乳酸
が蓄積しpHが低下して、その結果組織の代謝活性が阻
害される。これに対してミトコンドリアの量が多い組織
ではミトコンドリアを介してCOとHOへのグルコ
ースの完全な酸化が起き、グルコース1モルの消費に対
して38モルのATPが産生される(解糖系で生成され
る2モルのNADHの酸化を含む)。従って酸素が利用
できる場合、ミトコンドリアでの酸化による基質の利用
は有効なエネルギー産生経路であることは明らかであ
る。この条件下では乳酸は生成しない。さらに呼吸の亢
進によりパスツール効果を介して嫌気的解糖系が阻害さ
れる時、乳酸の蓄積は低下しているかまたは最少となっ
ている(クレブス(Krebs,H.A.)、エッセイ
ズ・ビオケム(Essays Biochem.)第8
巻、1頁(1972年))。
【0007】グルコースはミトコンドリア中では直接基
質としては利用されず、まず解糖系でピルビン酸に変換
されなければならない。ケトン体およびその前駆体(例
えば短鎖脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸)はミトコン
ドリア中で直ちに酸化され、1モルのアセチル分子の利
用に対して32モルのATPが産生される。従ってケト
ン体およびその前駆体はエネルギーの豊富なまたはエネ
ルギー効率的な分子である。さらにケトン体およびその
前駆体の酸化により呼吸が亢進し、これがパスツール効
果を介して嫌気的解糖系を阻害する。
【0008】ケトン体はアセトン(CH3 COCH
3)、アセトアセテート(CH3 COCH2 COO
−)およびβ−ヒドロキシブチレート(CH3 CHO
HCH2 COO−)の総称である。脂肪酸とケトン生
成性のアミノ酸からのケトン体の生成の経路は図1に記
載されている。ケトン体は組織における脂肪酸とケトン
生成性のアミノ酸(ロイシン、リジン、フェニルアラニ
ン、チロシンそしてトリプトファンを含む)の代謝産物
である。自然界では脂肪酸は一般式CH3(CH2)n
COOH(nは偶数の整数である)で表される。酢酸は
n=0である最小の脂肪酸分子である。ケトン体は体内
の保存と放出のためのアセチルCoAの安定な型の高エ
ネルギー代謝産物である。すなわちケトン体はインビボ
で脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸から直ちに産生され
る。さらにβ−ヒドロキシブチレートとアセトアセテー
トは、NAD+−連結β−ヒドロキシブチレート脱水素
酵素の触媒作用を介して相互に変換される:
【化1】アセトアセテート+NADH+H+= D−β−ヒドロキシブチレート+NAD+
【0009】これらはケトン体、脂肪酸、およびケトン
生成性のアミノ酸は相互に関連した分子であることを示
している。エネルギーが必要な時、ケトン体およびその
前駆体は組織中で利用されてアセチルCoAが生成し、
これはさらにミトコンドリア中でクレブス回路を介して
COとHOに酸化され、ATPの形の高エネルギー
を産生する。
【0010】ケトン体の前駆体(脂肪酸とケトン生成性
のアミノ酸)が(ヒトや動物に)投与される時アセチル
CoAが生成され、これはさらに酸化されて高レベルの
ATPが産生される。アセチルCoAの産生が過剰な場
合、ケトン体が生成され、その主要な代謝部位は肝臓で
ある。生成されるこれらのケトン体のうち、アセトンは
利用されず、息、汗および尿から排泄される。一方アセ
トアセテートとβ−ヒドロキシブチレートは抹消組織に
放出され、そこでアセチルCoAに変換され、さらにミ
トコンドリア中でアセチルCoAとクエン酸回路を介し
てCOとHOに酸化され、抹消組織に豊富なエネル
ギーを供給する。
【0011】抹消組織では、ケトン生成性のアミノ酸か
らのアセトアセテートの生成も起きる。ここでアセトア
セテートが過剰に存在する場合、アセトアセテートは保
存のためβ−ヒドロキシブチレートに変換されるか、ま
たはアセチルCoAに変換されてミトコンドリア中でさ
らにCOとHOに酸化されて高レベルのATPを産
生する。抹消組織では脂肪酸はβ−酸化を介してアセチ
ルCoAに分解され(図1参照)、これはさらにミトコ
ンドリア中でCOとHOに酸化されて高レベルのA
TPを産生する。
【0012】角膜、水晶体および網膜は解糖系の活性が
高く、グルコースを代謝して多量の乳酸を産生する。通
常の条件下でグルコースはインビボで目の組織のエネル
ギー源である。生成される乳酸は血液循環を介してクリ
アランス機構により除去される。目の手術の間またはそ
の直後は、血液循環による乳酸の除去機構は有効でな
い。目の手術において目の組織のエネルギー源として潅
流溶液中にグルコースが含まれている時、前眼房および
硝子体中に過剰の乳酸が蓄積される。グルコースの利用
が細胞外pHを下げ、これが細胞(および組織)中に乳
酸の蓄積を起こして代謝活性を阻害する(チェンとチェ
ン(Chen,C.H.and Chen,S.
C.)、アーチ・ビオケム・ビオフィズ(Arch.B
iochem.Biophys.)第276巻、70頁
(1990年))。この問題は、目の組織の代替エネル
ギー源として潅流溶液中にケトン体およびその前駆体を
添加することにより解決される。目の組織中でケトン体
およびその前駆体は直ちに利用されてアセチルCoAに
なり、ミトコンドリア中でクレプス回路を介してCO
とHOに酸化されて高レベルのATPを産生する。こ
の過程はパスツール効果により解糖系を阻害し、乳酸産
生を抑制する。
【0013】さらにケトン体は飢餓中の脳、筋肉および
腎臓の好適なエネルギー源であることが知られている
(オルソン(Olamn R.E.)、ネーチャー(N
ature) 第195巻、597頁、1962年;バ
センジ(Bassenge,E.)ら、アメリカン・ジ
ャーナル・オブ・フィジオロジー(Am.J.Phus
iol.)第208巻、162頁、1965年;オーエ
ン(Owen,O.E.)ら、ジャーナル・オブ・クリ
ニカル・インベスティゲーション(J.Clin.In
vest.)第46巻、1589頁、1967年;およ
びホーキンズ(Howkins,R.A.)ら、バイオ
ケミストリージャーナル(Biochem.J.)第1
22巻、13頁、1971年、および第125巻、54
1頁、1971年)。
【0014】本発明の組成物は、単に目の手術において
目の液または一般の手術における体液を代替する人工の
液、または潅流溶液自体として機能することのみを目的
とするものではない。それよりも本発明の目的は、単離
された組織の保存中の、そして手術中や手術後の一時的
な組織の高エネルギー源としての、ケトン体およびその
前駆体を与え、少なくとも前眼房と硝子体が生理的体液
と充分に平衡に達するまで、細胞が生存活性と生理的お
よび生物学的機能を果たすことを可能にさせることにあ
る。
【0015】すなわちバランスト製剤中のケトン体およ
びその前駆体とグルコースは、保存中の単離された組織
や手術中の抹消組織に特に有用である。グルコースは、
ミトコンドリアがほとんどないかまたは全然ない組織
(例えば角膜間質(corneal stroma)や
水晶体)のエネルギー源として与えられる。ケトン体お
よびその前駆体はエネルギーが豊富である。これらはク
レブス回路を介してミトコンドリア中でCOとH
に直ちに酸化され、他の代謝上の廃棄物は産生されな
い。生成される二酸化炭素は、水和されて炭酸となり、
これはさらに酸化されてpH7.4で重炭酸塩になる。
重炭酸塩は角膜内皮を通過するイオン輸送過程に必要で
あることが示唆されている(ホドソン(Hodosi
n,S.)ら、ジャーナル・オブ・フィジオロジー
(J.Physiol.)第263巻、563頁、19
76年)。さらにケトン体およびその前駆体の酸化は高
レベルのATPを産生するのみでなく、パスツール効果
を介して解糖系を抑制し、その結果乳酸の産生を阻害す
る。
【0016】本発明において、バランスト塩(bala
nced salts)は成分中に含まれて、インビボ
投与用の生理的に融和性のある溶液を生成する。成分中
のリン酸塩はケトン体およびその前駆体が酸化される時
のATP産生過程の酸化的リン酸化の要素である。さら
にリン酸はpH7.2−7.4の生理的pH範囲で高度
の緩衝能を有する緩衝液として働く。
【0017】本発明の理論と目的とする応用は、米国特
許第4,663,289号に記載のビーチ(Veec
h)の理論とは異なる。ビーチ(Veech)の発明
は、生きている動物細胞の代謝過程は1つまたはそれ以
上の一定比率の[HCO−]/[CO]、[L−乳
酸塩−]/[ピルビン酸塩−]、および[β−ヒドロキ
シブチレート]/[アセトアセテート]対により制御さ
れることができるという理論に基づいており、これはp
Hを調整するための「弱酸/共役塩基」対の緩衝系に類
似の効果である。
【0018】ビーチ(Veech)の理論はいくつかの
仮説に基づいている: 1.一定比率の対の基質の両方が細胞または組織に摂取
される。 2.(組織に)蓄積される一定比率の基質は、次に代謝
活性を制御するために生きている細胞中に留まる。 3.これらの基質対による基質の摂取と代謝制御はすべ
ての組織で類似している。
【0019】ビーチ(Veech)の発明の基礎となっ
ている多くの実験はラットの肝臓で実施された(ビーチ
(Veech)ら、バイオケミストリージャーナル(B
iochem.J.)第115巻、609頁、1969
年;およびビーチ(Veech)ら、ジャーナルオブバ
イオロジカルケミストリー(J.Biol Che
m.)第254巻、6538頁、1979年)。肝臓は
ヒトおよび動物において代謝の中心である。肝臓におけ
る代謝過程は抹消組織でのそれとは異なる。従って代謝
過程を制御する仕組みは肝臓で働くかも知れないが、そ
れは必ずしも抹消組織で働くとは限らない。例えば肝臓
では脂肪酸のβ−酸化を通してケトン体が生成される。
生成されたケトン体は肝臓で使用されないが、血液循環
を介して抹消組織に移動される。ここでそれらはクレブ
ス回路を介して高レベルのATPの産生と共役してCO
とHOに酸化される(生化学の原理(Princi
ples of Biochemistry)、レーニ
ンジャー(Lehninger)、ワースパブリッシャ
ーズ社(Worth Publishers,In
c.))。すなわちβ−ヒドロキシブチレートは抹消組
織の効率的な代替エネルギー源であるが、肝臓の代替エ
ネルギー源ではない。本発明は、アセトアセテートと共
役することなくβ−ヒドロキシブチレートを抽出し代謝
してATPを産生し、同時に細胞での乳酸の生成と蓄積
を抑制する、角膜と水晶体のような抹消組織の高い活性
を利用する。
【0020】生成される乳酸は、活発に糖を分解してい
る正常な細胞(例えば赤血球、骨格筋、角膜および網
膜)により血液中に放出され、次に肝臓と心臓により血
液から抽出されて代謝される。乳酸は細胞質膜を通し
て、競合的インヒビターとしてのピルビン酸とともに移
動される(スペンサーとレーニンジャー(Spence
rand Lehninger)、バイオケミストリー
ジャーナル(Biochem.J.)第154巻、40
5頁、1976年)。ケトン体は肝臓で生成されて血液
中に放出され、次に抹消組織(例えば角膜と水晶体)に
より血液から抽出され代謝される(生化学の原理(Pr
inciples of Biochemistr
y)、レーニンジャー(Lehninger)、ワース
パブリッシャーズ社(Worth Publisher
s,Inc.))。細胞質膜を通してのケトン体の輸送
機構はまだ確率していない。
【0021】ピルビン酸、乳酸、アセトアセテート、お
よびβ−ヒドロキシブチレートの代謝は細胞または組織
により異なる。心臓と肝臓の乳酸脱水素酵素(LDH)
アイソザイムは低濃度の乳酸のピルビン酸への酸化を促
進し;角膜、水晶体および網膜のLDHアイソザイムは
低濃度のピルビン酸を乳酸に還元するのを促進する。肝
臓中のβ−ヒドロキシブチレート脱水素酵素(BDH)
アイソザイムは、低濃度のアセトアセテートのβ−ヒド
ロキシブチレートへの還元を促進し;抹消組織(例えば
角膜)中のBDHアイソザイムは低濃度のβ−ヒドロキ
シブチレートのアセトアセテートへの酸化を促進する。
異なる組織での種々のLDHやBDHアイソザイムが異
なること、基質−対(例えば[乳酸塩]/[ピルビン酸
塩]や[β−ヒドロキシブチレート]/[ピルビン酸
塩]そして[β−ヒドロキシブチレート]/[アセトア
セテート])のすべての組織についての一般的な比率の
確立を困難にしている。食物摂取および他の代謝反応似
よる基質摂取、これらの化学物質の連続的な流入、およ
びこれらの化学物質の流出や他の代謝反応による除去に
より、基質−対の一般的な比率の確立は一層困難になっ
ている。
【0022】組織保存用の培地の応用において、リンド
ストローム(Lindstrom)らの理論(米国特許
第4,695,536号)は、基本的に組織培養の分野
の科学者が何年も使用している組織培養技術である。具
体的にはリンドストローム(Lindstrom)ら
は、以下の方法よりなる角膜保存法を教えている:
【0023】(a)アールズ塩(Earls salt
s)を含む50mlの基本培地のギブコ(Gibco’
s)の最少基本培地、L−グルタミンを含まない25m
MのHEPES緩衝液、培地の最終容量の最終濃度が1
%である5mlのL−グルタミン(200mM)、およ
び50−100μgのガラマイシン(garamyci
n)を含む抗生物質を含む角膜保存培地;ウシ血清、胎
児ウシ血清またはヒト血清の群からの血清;そしてコン
ドロイチン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ケラタン硫
酸、ポリビニル−ピロリドン、メチルセルロース、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース、セルロースガムおよ
びデキストランよりなる群から選択される有効量の高分
子量分子を混合し; (b)角膜保存容器に混合培地を充填し;そして (c)培地を含む容器中で角膜−強膜輪(cornea
l−scleralrim)を維持して、培地を4−3
4℃の温度に維持することにより中期間の保存と長期間
の保存を可能にし、そしてこの系は温度の変化を可能に
して組織の輸送の準備ができる。
【0024】この理論は単離された角膜がマクカレイ−
カウフマン(MacCarey−Kaufmann)培
地(組織培養培地199プラス5%デキストラン;マク
カレイとカウフマン(MacCarey,B.and
Kaufman,H.)、インベスト・オフサルモル
(Invest.Ophthalmol.)第13巻、
165頁、1974年)中で、ウシ血清の補足が有りま
たはなし(リンドストローム(Lindstrom)
ら、アメリカンジャーナルオブオフサルモロジー(A
m.J.Ophthalmol.)第95巻、869
頁、1977年)で培養または保存される時、乳酸の産
生と蓄積が阻害される機構について何も記載していな
い。マクカレイ(MacCarey)ら(インベスト・
オフサルモル(Invest.Ophthalmo
l.)第13巻、165頁、1974年)の理論では、
デキストランは組織培養培地(TC199)は脱水剤と
して添加され、これにより培地の活性オスモル濃度はや
や高張(約305−340mOsM)となる。このやや
高張溶液におけるデキストランは保存された角膜に対し
てコロイド浸透圧を及ぼし、人工的脱水効果を与える。
しかし培地中のデキストランの存在は乳酸の産生と蓄積
に阻害作用を示さない。
【0025】これとは全く対照的に、チェン(Che
n)らの理論(米国特許第4,873,186号)は、
単離された角膜がβ−ヒドロキシブチレートを含むダル
ベッコーのリン酸緩衝化塩溶液(PBS)でインキュベ
ートされるか、またはβ−ヒドロキシブチレートを含む
TC199(培地199としても知られている)中で保
存される時、組織中で高レベルのATPが同時に産生さ
れ乳酸の産生と蓄積が阻害される機構について記載して
いる。具体的には、チェン(Chen)らは、手術的性
質の単離された角膜が保存される時間を延長する方法を
開示しており、この方法は保存された角膜を含む角膜保
存培地中に、(1)短鎖脂肪酸、(2)ケトン体、およ
び(3)乳酸産生を阻害するのに充分な量の、単離され
た角膜による乳酸産生を阻害することができるケトン生
成性のアミノ酸またはケトン体前駆体よりなる群から選
択される少なくとも1つの化合物のある量を含有させる
ことよりなる。
【0026】角膜保存培地は、ハンクス塩を含むTC1
99のような組織保存培地の重炭酸塩バランスト塩溶液
部分を、本発明の組成物で置換することにより製剤化さ
れる。この場合、陰イオンと陽イオンの合計濃度が生理
的に融和性があるように維持するために、NaCl濃度
は減少させなければならない。その結果NaCl以外の
組織培養培地中の成分は完全には分解されないため、活
性オスモル濃度はやや低張となる。溶液の活性オスモル
濃度は290mOsMの等張、または285−300m
OsMの範囲でなければならない。オスモル濃度調整に
は細胞質膜透過性の糖(例えばマンニトール、ショ糖お
よびデキストラン)が使用される。これらを利用すると
溶液が等張であるため、保存された角膜にコロイド浸透
圧を及ぼさない。従ってマクカレイ(MacCare
y)らの理論(マクカレイ(MacCarey)ら、イ
ンベスト・オフサルモル(Invest.Ophtha
lmol.)第13巻、165頁、1974年)におけ
るデキストランの目的の応用とが完全に異なる。
【0027】β−ヒドロキシブチレートは還元剤であ
る。溶液中では、特に高温でOにより酸化される。従
って本発明の組成物を作成するためには脱気した水を使
用する必要がある。得られた溶液は真空下で保存してβ
−ヒドロキシブチレートがOにより酸化されるのを防
ぎ、その結果寿命を延ばすことができる。臨床応用のた
めにビンを開くとき溶液を空気と平衡化させれば、組織
(または細胞)の生物学的機能のためにOを利用する
ことができる。
【0028】あるいはβ−ヒドロキシブチレートがO
により酸化されるのを防ぐために、クエン酸、フェニル
アラニンおよびビタミンEよりなる群の抗酸化剤を使用
してもよい。好ましい抗酸化剤はクエン酸であり、溶液
中のクエン酸の濃度は8−12mMの範囲である。しか
し長期間保存すると、溶液中のOも抗酸化剤を酸化し
て、β−ヒドロキシブチレートがOにより酸化される
のを防ぐ抗酸化剤の効力を低下させてしまう。従って本
発明の組成物の作成には脱気した水の使用が好ましい方
法である。
【0029】
【発明の要約】本発明は、ケトン体および/またはその
前駆体、グルコース、リン酸塩緩衝化バランスト塩水溶
液よりなる新規組成物に関する。本発明はまた、ケトン
体および/またはその前駆体、グルコース、リン酸塩緩
衝液化バランスト塩水溶液を、前記した単離された組織
の保存と、手術時の組織の効率的な生理的および生化学
的機能のための要求を有効に満たす組成物を形成するの
に充分な量で混合することよりなる、組成物の調製方法
に関する。
【0030】図1は、脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸
からのケトン体生成の経路を示す。
【0031】図2は、実施例1に記載されたように、B
SSで前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕微鏡
(specular microscope)による写
真の複製である。
【0032】図3は、実施例1に記載されたように、B
SS−プラスで前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反
射顕微鏡による写真の複製である。
【0033】図4は、実施例1に記載されたように、本
発明の組成物で前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反
射顕微鏡による写真の複製である。
【0034】図5は、実施例2に記載されたように、本
発明の組成物の存在下での単離された角膜のインビトロ
での収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時
間」をプロットしたものである。
【0035】図6は、実施例2に記載されたように、B
SS−プラスの存在下での単離された角膜のインビトロ
での収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時
間」をプロットしたものである。
【0036】図7は、実施例3に記載されたように、本
発明の組成物を含む培地中で4℃で7日間と11日間前
もって保存した、移植されたドナーの角膜のインビボで
の収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時
間」をプロットしたものである。図8は、実施例3に記
載されたように、本発明の組成物を含む培地中で4℃で
7日間と11日間前もって保存した移植されたドナーの
角膜のインビボでの収縮(deswelling)の
「角膜の厚さ対時間」をプロットしたものである。
【0037】おおまかに記載すると、本発明の組成物
は、ケトン体および/またはその前駆体、グルコース、
およびリン酸塩緩衝液化バランスト塩水溶液よりなる。
本発明の組成物は、目および池の抹消組織の効率的な生
理的および生化学的機能のための要求を有効に満たすこ
とができるように、その成分(特に前述したケトン体お
よび/またはその前駆体、グルコース、およびリン酸塩
緩衝液化バランスト塩水溶液)の特別な性質のいくつか
を利用する。
【0038】従ってケトン体および/またはその前駆
体、グルコース、およびリン酸塩緩衝液化バランスト塩
水溶液よりなる本発明の組成物は、高密度のミトコンド
リアがある場合またはない場合(または全くミトコンド
リアがない場合)、または一般に他の組織がある場合ま
たはない場合も、目の組織の最小の必須の栄養要求を満
たす。例えば手術後に本発明の組成物で潅流された目お
よび他の抹消組織は、エネルギー源依存性代謝機能(例
えば液体およびイオン輸送および蛋白合成)や、薄く透
明な角膜を維持するような生理的機能を実行することが
できる。
【0039】従って本発明の組成物は、例えば角膜の3
つの異なる組織の層に代表される抹消組織のバランスの
取れた豊富なエネルギー源を与える。すなわち本発明の
組成物は、内皮の高呼吸活性に対するニーズ、内皮と間
質(stroma)の高解糖系活性に対するニーズ、お
よび角膜液の基本的な細胞内エネルギーレベルとイオン
輸送の達成のニーズを満たすことができる。
【0040】潅流溶液としての使用に適した本発明の代
表的な組成物を、その成分の範囲とともに、以下の表1
に記載する。
【0041】
【表1】
【0042】本発明の組成物に含まれる代表的な陰イオ
ンと陽イオンは以下の表2に記載されている。表2はま
た、本発明の組成物中のこれらのイオンの濃度を示す。
本発明の組成物の計算されるオスモル濃度は、すべての
塩が完全に溶解している場合約300から約320mO
sMの範囲である。本発明の組成物の調製された溶液の
実際のオスモル濃度は、約285から約300mOsM
の範囲である。
【0043】
【表2】
【0044】本発明の1つの態様によれば、本発明の組
成物のケトン体はβ−ヒドロキシブチレートイオンとア
セトアセテートイオンである。β−ヒドロキシブチレー
トイオンはβ−ヒドロキシブチレートのD−異性体、β
−ヒドロキシブチレートのD−ラセミ体とL−ラセミ体
の混合物、およびβ−ヒドロキシブチレートのD−異性
体とL−異性体の混合物よりなる群から選択され、最も
好ましくはβ−ヒドロキシブチレートのD−異性体であ
る。β−ヒドロキシブチレートの濃度は好ましくは5−
30mMの範囲である本発明の組成物の好適なケトン体
の前駆体は酢酸と酪酸よりなる群から選択される脂肪酸
であり、好適なケトン生成性のアミノ酸はロイシン、リ
ジン、フェニルアラニン、チロシンそしてトリプトファ
ンよりなる群から選択される。
【0045】ケトン体の前駆体の濃度は好ましくは0.
1−25mMの範囲である。ケトン生成性のアミノ酸の
濃度は好ましくは、0.1−5.0mMの範囲であり、
最も好ましくは1−2mMの範囲である。ケトン生成性
のアミノ酸は好ましくは、合計濃度は7.5−12.5
mMであり、最も好ましくは合計濃度は10mMであ
る。
【0046】好適な脂肪酸は酢酸であり、好ましくは1
5−25mMの範囲の濃度であり、または酪酸であり、
好ましくは5−15mMの範囲の濃度である。酢酸の濃
度は最も好ましくは20mMであり、酪酸の濃度は最も
好ましくは10mMである。
【0047】本発明の組成物のpHは好ましくは7.3
−7.5に調整される。
【0048】β−ヒドロキシブチレートのOによる酸
化を防ぎ、室温での溶液の寿命を延ばすために、本発明
の組成物を作成するには脱気した水を使用することが好
ましい。
【0049】好ましくは15−35mM、または最も好
ましくは25−30mMの量のNaClの一部は、D−
グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌロン酸、
D−グルコン酸およびD−グルカリック酸よりなる群か
ら選択される1つまたはそれ以上の糖酸(sugar
acids)の当量のNa+塩で置換される。
【0050】目の手術において起きる癒着を同時に防い
で、目の組織の効率的な生理的および生化学的機能のた
めの要求を有効に満たす組成物を形成するのに充分な量
の、40−500キロダルトンの範囲の量の中性の多糖
デキストランの添加により、本発明の組成物の粘度は上
昇している。中性の高分子量デキストランの好適な濃度
は2%−20%の範囲である。
【0051】別の態様において本発明は、本発明の組成
物、イーグル(Eagle’s)培地、ダルベッコー
(Dulbecco’s)培地およびダニエル(Dan
iel’s)培地よりなる群から選択される一員の最少
の必須アミノ酸、および最少の必須ビタミンよりなる、
角膜保存培地に関する。この溶液は市販されており、当
業者に明らかなように、添加される量は特定の条件に依
存して変化する。
【0052】別の態様において、本発明は、組織培養培
地のバランスト塩溶液が本発明の組成物で置換されてい
る角膜保存培地に関する;溶液中の陽イオンと陰イオン
の合計濃度がバランスト塩水溶液と同じ濃度を維持する
ために、NaCl濃度は好ましくは70−100mMの
範囲内、または最も好ましくは85mMに減少されてい
る;溶液の活性オスモル濃度(osmolarity)
は285−300mOsMの等張または最も好ましくは
290mOsMに調整されており;必要があれば必要に
応じてマンニトール、ショ糖およびデキストランが添加
される。組織培養培地は、好ましくはハンクス塩を含む
TC199、またはハンクス塩を含むイーグル最小最少
培地である。
【0053】角膜保存培地のpHは好ましくは7.10
−7.50の範囲であり、最も好ましくは7.25−
7.40の範囲である。
【0054】15−35mM、または最も好ましくは2
5−30mMの量のNaClの一部は、D−グルクロン
酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌロン酸、D−グルコ
ン酸およびD−グルカリック酸よりなる1つまたはそれ
以上の糖酸の等量のNa+塩で置換されている。
【0055】別の態様において本発明は、本発明の組成
物のリン酸塩緩衝化バランスト塩溶液が、角膜の保存に
適しているが好ましくない乳酸の産生が普通に起きる組
織培養培地よりなる角膜保存用組成物の重炭酸塩緩衝化
バランスト塩溶液に取って代わっている、角膜保存培地
に関する。さらに角膜保存培地は、角膜による乳酸の産
生を阻害することができる短鎖脂肪酸とケトン体よりな
る群から選択される、乳酸産生を阻害するのに充分な量
で存在する、少なくとも1つの化合物を含む。
【0056】さらに別の態様において本発明は、本発明
の角膜保存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジン
および血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、
角膜保存組成物に関する。
【0057】さらに別の態様において本発明は、本発明
の組成物、およびVEGF、ウリジン、チミジンおよび
血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、臓器移
植(例えば角膜移植)用組織の調製のための製剤に関す
る。さらに別の態様において本発明は、本発明の角膜保
存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジンおよび血
清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、例えば局
所投与用の潅流溶液に関する。
【0058】さらに別の態様において本発明は、本発明
の角膜保存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジン
および血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、
例えば投与用の臓器用培地に関する。
【0059】本発明の溶液の調製方法は、前述した目お
よび他の抹消組織の効率的な生理的および生化学的機能
のための要求を有効に満たす組成物を形成するのに充分
な量の、脱気したリン酸塩緩衝化塩水溶液中で、グルコ
ース、およびケトン体および/またはその前駆体を混合
することよりなる。この溶液は室温で長期間保存した場
合、β−ヒドロキシブチレートがOにより酸化される
のを防ぐためOを完全に除去するように真空下でビン
に詰められる。もしこの溶液を直ちにまたは短期間の間
に使用する場合、真空下でのビン詰めは有用であるが、
必ずしも必要でない。
【0060】高濃度のCa2+とMg2+はリン酸塩沈
澱物を作るため、CaClとMgCl以外のすべて
の成分は、まず充分な脱気した水(好ましくは全容量の
90−95%)で溶解することが好ましい。溶液を完全
に混合し、1NのD−グルクロン酸またはNaOHでp
Hを7.3−7.5の範囲に調整する。次に0.5Mの
保存液(または0.2−1.0Mの範囲)のCaCl
とMgClを加える。pHをチェックして必要であれ
ば7.3−7.5、好ましくは7.4に調整する。最後
に水を加えて容量を調整する。この溶液の調製には脱イ
オン化2回蒸留水を使用することが好ましい。使用され
るすべての成分は、特級(reagent grad
e)である。
【0061】本発明の潅流溶液の調製にはいくつかの変
更が可能である。そのいくつかを以下に記載する。
【0062】1.リン酸緩衝液はリン酸二カリウムとリ
ン酸一カリウムを用いて調製される。この場合総カリウ
ムイオン濃度は15mMに増加する。
【0063】2.リン酸緩衝液はリン酸二ナトリウムと
リン酸一ナトリウムを用いて調製される。この場合8−
12mMのKClを加えなければならず、NaClは5
mM引かれる。
【0064】3.リン酸緩衝液は任意の他のリン酸塩と
リン酸を用いて調製され、pHを適当に7.4に調整す
る。いずれの場合も、K+の最終濃度は8−12mMで
なければならない。pHは7.3−7.5の範囲で変化
し得る。
【0065】4.NaClの一部を、D−グルクロン
酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌロン酸、D−グルコ
ン酸およびD−グルカリック酸を含む1つまたはそれ以
上の糖酸のNa+塩でで置換して、塩素濃度は生理的濃
度の90−105mMの範囲内に維持しなければならな
い。
【0066】5.0.1−5.0mM、好ましくは1−
2mMのロイシン、リジン、フェニルアラニン、トリプ
トファンそしてチロシンよりなる1つまたはそれ以上の
ケトン生成性のアミノ酸を、潅流溶液の成分として添加
することができる。Na濃度を調整するために等量の
NaClを差し引く。
【0067】6.β−ヒドロキシブチレートの一部を2
倍量の酢酸(ケトン体前駆体短鎖脂肪酸の最も小さい分
子)で置換することができる。
【0068】7.10mM、または5−15mMの範囲
の他の短鎖脂肪酸(例えば酪酸やカプロン酸)のナトリ
ウム塩を使用することもできる。しかしこれらの水溶液
は溶解度が低いためその使用が限定される。
【0069】8.β−ヒドロキシブチレートは、アセテ
ートまたはアセトアセテートで置換することができる
が、β−ヒドロキシブチレートが好ましい。β−ヒドロ
キシブチレートは安定で低価格である。これはまた細胞
により直ちに利用され、アセトアセテートよりエネルギ
ー効率が高い。1モルのβ−ヒドロキシブチレートから
64モルのATPと1モルのNADHが産生され、これ
がさらに3モルのATPを産生する。
【0070】9.細胞ではD−異性体のみが使用される
ため、β−ヒドロキシブチレートのD−異性体が本発明
の組成物として好ましい。しかしD−、L−ラセミ体ま
たはD−、L−異性体混合物も低価格であり、市販品が
すぐ入手可能であり、これらも使用することができる。
【0071】10.必要な場合は、溶液のオスモル濃度
を290mOsM、または約285−300mOsMの
範囲に調整するために、マンニトールやショ糖のような
糖類またはデキストランのような中性多糖類を使用する
ことができる。このような調整ではNa濃度やCl
濃度は変化しない。もしNa濃度やCl濃度がいず
れも高すぎる場合は、NaClの代わりに等量の糖類を
使用するべきである。
【0072】11.溶液の粘度を増加させるために、5
%または2−20%の範囲の中性の高分子量デキストラ
ン(好ましくは70−500キロダルトン)を使用する
ことができる。非常に高粘度の組成物は、水晶体または
虹彩が角膜の内皮に吸着したり、虹彩が水晶体に吸着し
たりするような、目の手術における手術の傷に起因する
癒着を防ぐために適用するのに有用である。この場合、
NaClは添加されるデキストラン1%につき2.5m
Mだけ差し引かれる。
【0073】本発明の組成物は主に、目の中の手術(例
えば角膜移植、眼内水晶体移植、白内障摘出、および硝
子体切除など)の後の暫定期間の間に、目や他の抹消組
織(または細胞)が、その生存活性と生理的機能を果た
す能力を維持させることができるようにするために使用
される、最少の必須成分で製剤化される。暫定期間と
は、手術してから、前眼房および/または硝子体中の溶
液が体の生理的溶液と充分に平衡に達するまでの時間を
意味する。前述したように本発明の組成物は、例えば皮
膚や目への局所投与、移植前のドナー組織の保存と洗
浄、そして手術一般に使用することができる。
【0074】本発明の組成物は、その濃度範囲が血漿中
に見いだされるものに類似の、生理的に融和性のある塩
溶液を含有する。本発明においてリン酸塩(代表的には
10mM)は、緩衝液としてもまたエネルギー代謝にお
けるATPの産生のためのADPのリン酸化の基質とし
ても使用することができる。リン酸塩はpH7.2−
7.4で強い緩衝能力を有する。重炭酸塩は現在市販さ
れている他の潅流溶液で使用されている(例えばテキサ
ス州、フォートワースのアルコン社製BSS−プラ
ス)。しかし重炭酸塩緩衝液を使用するとCO分圧
(Pco2)により溶液のpHが変化するため、本発明
の組成物の成分として重炭酸塩は使用されない。さらに
外から重炭酸塩を加えなくても、組織自身の呼吸(すな
わち酸化的リン酸化)により重炭酸塩が生成する。この
場合、この基質が(ミトコンドリア中で)酸化されてC
とHOが生成される。次に生成されたCOは水
和されてHCOとなり、これがさらに分解されてH
CO が生成される。ウサギの角膜では約1.3μモ
ル/cm/時間の速度でCOが産生される。ヒトの
角膜ではこの速度は30−50%高い。
【0075】ミトコンドリア中ではβ−ヒドロキシブチ
レートはβ−ヒドロキシブチレート脱水素酵素による触
媒作用により、直ちにアセトアセテートとNADHに酸
化される。アセトアセテートはさらにサクシニルCoA
と反応してアセトアセチルCoAを生成し、これはチオ
フォラーゼ(thiophorase)によりさらに分
解されてアセチルCoAを生成する。細胞中で脂肪酸は
β−酸化により利用されてアセチルCoAを生成する。
ケトン生成性のアミノ酸もまた細胞中で資化されてアセ
トアセテートまたはアセトアセチルCoAを生成し、次
にアセチルCoAを生成する。これらの反応からのアセ
チルCoAは、次にミトコンドリア中でクエン酸回路を
介してCOとHOに酸化される。脂肪酸とケトン生
成性のアミノ酸からのケトン体の生成経路は図1に簡単
に記載されている。アセチルCoAの酸化はエネルギー
効率の高い過程であり、アセチルCoA1モルの使用に
対して30モルのATPと2モルのGTP(すなわち合
計で32モルのATP)が生成する。無機リン酸は酸化
的リン酸化(これは電子伝達系に共役してADPと反応
してATPを産生する)の源となる。
【0076】下記の表から明らかなように、角膜で消費
されるグルコースのうち、約47%は解糖系を介してお
り、53%は呼吸を介している(チェンとチェン(Ch
enand Chen)、アーク・ビオケム・ビオフィ
ズ(Arch.Biochem.Biophys.)第
276巻、70頁、1990年)。
【0077】
【表3】
【0078】角膜組織層でのグルコースの消費%は上記
表3の括弧内に示してある。間質は呼吸よりも2倍速い
速度で解糖系によりグルコースを消費する。水晶体では
ミトコンドリアは表皮にのみ存在している。従って間質
と水晶体(特に水晶体の核内の細胞)では、グルコース
は重要なエネルギー源である。これらの細胞ではアセチ
ルCoAを利用するミトコンドリアはほとんどまたは全
くない。他の目の組織(例えばミトコンドリア密度の高
い角膜の内皮や光受容体)では、ケトン体およびその前
駆体はエネルギー効率的な基質である。さらにこれらの
組織では、アセチルCoAの酸化が呼吸の増加を引き起
こし、これがパスツール効果により嫌気的解糖系を阻害
する。
【0079】すなわちケトン体および/またはその前駆
体、グルコース、およびリン酸塩緩衝化バランスト塩溶
液よりなる本発明の組成物は、高密度のミトコンドリア
がある場合もない場合も、または全くミトコンドリアが
ない場合の目の組織、または一般に他の抹消組織の最少
の必須の栄養要求性を満たす。
【0080】本発明の組成物は、チェン(Chen)ら
(米国特許第4,873,186号、前述)の開示し
た、短期間の投与に適した、角膜保存組成物の単純なも
のとして使用することができる。チェン(Chen)ら
の理論では、短鎖脂肪酸とケトン体よりなる群から選択
される少なくとも1つの化合物を、組織培養培地と混合
して、角膜からにより起きる乳酸産生を同時に阻害して
高エネルギーを産生するために単離された角膜の保存に
使用される。
【0081】本発明の1つの態様によれば、本発明の組
成物、必須アミノ酸、およびイーグル培地(サイエンス
(Science)第130巻、432頁、1959
年;プロク・ソク・エクスペ・ビオル(Proc.So
c.Exp.Biol.)第89巻、362頁、195
5年)、ダルベッコー培地(ビロロジー(Virolo
gy)第8巻、396頁、1959年および第12巻、
185頁、1960年)またはダニエル培地(プロク・
ソク・エクスペ・ビオル(Proc.Soc.Exp.
Biol.)第127巻、919頁、1968年)のい
ずれかの必須ビタミンよりなる角膜保存培地が調製され
る。Hepes(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン
−N−2−エタンスルホン酸)緩衝液を20−30mM
で添加すると、緩衝力を増強するのに有効である。あら
かじめ調製された最少必須アミノ酸と必須ビタミンが市
販されている。溶液中の必須アミノ酸とビタミンは一般
に、比較的寿命が短く冷所で保存し短期間(通常6−1
2カ月)のうちに使用しなければならないため、角膜保
存培地として使用される本発明の組成物の作成には脱気
した水の使用は有効ではあるが必ずしも必要ではない。
【0082】本発明の第2の態様において、ハンクス塩
を含むTC199やハンクス塩を含むイーグル最少基本
培地のような組織培養培地のバランスト塩溶液を、本発
明の組成物で置換することにより角膜保存培地が製剤化
される。培地中の陽イオンと陰イオンの合計濃度が生理
的に融和性のあるレベルに維持されるように、NaCl
濃度は70−100mMの範囲内に減少されている。溶
液は290mOsMの等張、または活性オスモル濃度約
285−300mOsMの範囲内に維持されなければな
らない。活性オスモル濃度は、マンニトールやショ糖の
ような糖類、または40および70キロダルトンのデキ
ストランのような中性高分子量多糖類で調整される。
【0083】第3の態様において、チェン(Chen)
ら(米国特許第4,873,186号、前述)の理論の
角膜保存組成物の重炭酸塩バランスト塩溶液を、本発明
の組成物のリン酸塩緩衝化バランスト塩溶液で置換する
ことにより、角膜保存培地が調製される。15−35m
M、好ましくは25−30mMの量のNaClの一部
を、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌ
ロン酸、D−グルコン酸およびD−グルカリック酸を含
む1つまたはそれ以上の糖酸のナトリウム塩で置換する
ことにより、Cl濃度を90−105mMの生理的範
囲に維持することが好ましい。チェン(Chen)らの
理論では、短鎖脂肪酸とケトン体よりなる群から選択さ
れる少なくとも1つの化合物が組織培養培地と混合され
て、角膜保存に使用される。重炭酸塩緩衝化バランスト
塩溶液は組織培養培地成分の一部である。
【0084】第4の態様において、好適な角膜保存組成
物は、チェン(Chen)ら(米国特許第5,073,
492号)の記載する相乗的組成物と組合せた、前記の
第1、第2または第3の態様の製剤よりなる。チェン
(Chen)らの理論では、相乗的組成物は基本的に、
血管内皮増殖因子(VEGF)、ウリジン、チミジンお
よび血清由来因子(SDF)の相乗的に有効な混合物よ
りなる。ウリジンとチミジンの化学量論比は、ウリジン
10μM対チミジン0.5μMである。代表的には、透
析した胎児ウシ網膜抽出物(0.1mg/ml)と胎児
ウシ血清(3mg/ml)が、それぞれVEGFとSD
Fの供給源として使用される。
【0085】第5の態様において、本発明の組成物は第
4の態様で記載したチェン(Chen)ら(米国特許第
5,073,492号)の相乗的組成物と一緒にされ
て、臓器移植(角膜移植を含む)用の組織の調製のため
の製剤が作成される。
【0086】第6の態様において、前述した第1または
第2の態様の角膜保存培地は、第4の態様で記載したチ
ェン(Chen)ら(米国特許第5,073,492
号)の相乗的組成物と一緒にされて、内皮細胞再生を刺
激するための局所投与用の潅流溶液が作成される。
【0087】第7の態様において、前述した第1または
第2の態様の角膜保存培地は、第4の態様で記載したチ
ェン(Chen)ら(米国特許第5,073,492
号)の相乗的組成物と一緒にされて、角膜を移植する前
の角膜の内皮細胞再生過程を促進するための投与用の組
織培養培地が作成される。
【0088】本発明の溶液は、Ca2+とMg2+塩以
外は、総容量の約95%に等しい容量の脱気した2回蒸
留水中で、すべての成分を調製法に示された正確な量で
溶解させることにより調製される。必要な場合は溶液の
pHは、D−グルコン酸またはNaOHで7.4に調製
される。次にCa2+とMg2+塩を加えて、脱気した
2回蒸留水で容量を調整する。pHを再チェックして必
要な場合は調整する。次に溶液を適当な手段(例えばオ
ートクレーブまたは0.22μmフィルター(ナルゲ社
(Nalge Co.)、ニューヨーク州、ローチェス
ター)の使用)で滅菌する。次にβ−ヒドロキシブチレ
ートがOにより酸化されるのを防ぐため溶液からO
を完全に除去するため、真空下でビンに詰める。
【0089】本発明の組成物を(例えば前述した第1、
2、4、5および7の態様のように)製剤の一部として
使用する場合、まずCa2+とMg2+を含まない濃縮
した保存溶液を調製することが好ましい。次に正確な計
算された量を測り、成分の別の部分と一緒にし2回蒸留
水を加え約95%の容量にする。Ca2+とMg2+
加え、pHを再チェックし、必要な場合は再調整する。
保存溶液は好ましくは2倍から10倍濃縮液であり、さ
らに好ましくは2倍から5倍の濃縮液である。直ちに使
用しない場合は、保存溶液をナルゲン(Nalgen
e)(ナルゲ社(Nalge Co.)、ニューヨーク
州、ローチェスター)のような0.22または0.45
μmフィルターに通して滅菌する。滅菌した溶液を4℃
の冷蔵庫中で保存する。溶液は、比較的寿命の短い必須
アミノ酸、ビタミンおよび他の成分を含むため、4℃に
保存して短期間の間(通常約6−12カ月)に使用しな
ければならない。従ってこれらの溶液の調製に、脱気し
た水を使用することは有用ではあるが必ずしも必要では
ない。
【0090】相乗的組成物は充分な量のMg2+を含む
ため、本発明の組成物を相乗的組成物と組合わせる場合
はMg2+を加えてはならない。
【0091】本発明を以下の実施例で詳細に説明する。
ここに記載する実施例は例示のためであり、決して本発
明を限定するものではない。
【0092】実施例1 バランスの取れたエネルギー源としての本発明の組成物
の有効性を、現在最もよく使用されている2つの潅流溶
液であるBSSとBSS−プラス(アルコンラボラトリ
ーズ社(Alcon Laboraories,In
c.)、テキサス州、フォートワース)と比較した(B
SS−プラスの方が、BSSよりも有効であると報告さ
れている)。BSS−プラスにはトリペプチドである、
酸化型グルタチオンが存在する。ディクスタイン(Di
kstein)ら(ジェイ・フィジオル(J.Phys
iol.)第221巻、29頁、1972年)によれ
ば、グルタチオンは角膜の液体輸送に有効であるとされ
ている。
【0093】本発明の組成物は表1に示してあるが、本
例では10mMのβ−ヒドロキシブチレートの代わりに
20mMのアセテートを使用し、抗酸化剤としてクエン
酸を使用した。表1に示した範囲のこれらの成分の濃度
の変更も同様に有効である。しかし溶液の活性オスモル
濃度は約285−300mOsMの範囲、好ましくは2
90mOsMに維持しなければならない。塩の純度はロ
ット毎に変わるため溶液の活性オスモル濃度は調製した
もの毎に変わる。オスモル濃度が低すぎる場合はマンニ
トールを添加して調整するか、または高すぎる場合はN
aClの代わりにD−グルクロン酸ナトリウムまたは糖
酸のNa塩を用いる。
【0094】本実験では6個のネコの目の角膜に対し
て、それぞれ約2mmの長さの2つの切れ目を入れた。
各角膜の切れ目の1つを通して前眼房に、25ゲージの
カニューレを差し込んだ。10mMのβ−ヒドロキシブ
チレートの代わりに20mMのアセテートを使用し抗酸
化剤としてクエン酸を使用した以外は、上記表1に示し
た本発明の溶液を約15mmHgの圧力で約7ml/分
の速度で、角膜1個当り合計1リットル注入した。
【0095】比較のため、本溶液の代わりに、ある場合
はBSSを、別の場合はBSS−プラスを使用して同じ
方法を実施した。
【0096】注入後1、2そして6日後にすべての角膜
を調べた。反射顕微鏡を使用して内皮の形態を調べ、デ
ィジタル測厚器を使用して角膜の厚さを測定した。
【0097】図2に示したように、BSSを注入された
角膜は広範囲にわたって内皮細胞が失われており、内皮
の多形態性が見られ、また注入後1日目に角膜の膨潤が
見られた。図3と4に示したように、BSS−プラスま
たは本発明の潅流溶液の注入後1日目に、内皮細胞の形
は多角形(正常な形)のままであり、角膜の厚さも正常
であった。注入後6日目に観察すると、本発明の溶液を
注入した角膜(図4)は、内皮の多形態性と角膜の厚さ
の面でBSS−プラスを注入した角膜(図5)と同定度
かやや良好であった。
【0098】上記の結果は、内皮や薄く透明な角膜を維
持するという点から、本発明の潅流溶液はBSS−プラ
スより優れていることを示している。
【0099】この動物実験で前眼房への試験溶液の注入
は、通常の目の手術で行われるよりもはるかに長い期間
実施された。従って本発明の組成物は臨床応用において
も、目の組織に対して有効な作用を示すと結論された。
【0100】実施例2 イオンポンプと液体ポンプを含む内皮は、角膜を高度の
水和状態に維持するのを助け、従って透明度を維持する
ことを助けることは、よく知られている。内皮の液体と
イオン輸送はエネルギー依存性過程である。ドナーが死
んで(または角膜が単離されて)ある期間4℃に維持さ
れると、角膜の洗浄には4℃でエネルギーの産生が不充
分なため角膜は膨潤する。溶液の温度を上昇させるとエ
ネルギー産生が増加して角膜は収縮する。この過程は温
度逆転(temperaturereversal)と
呼ばれる。従って温度逆転を基礎とするこの単離された
角膜の洗浄活性は、角膜の障壁(brrier)、液体
ポンプおよび代謝機能の尺度であり、角膜がこれらの機
能を果たすための外来性代謝物の効率の尺度である。
【0101】本発明の方法では、体重が2.5−3.0
kgの雄のニュージーランドアルビノ(New Zea
land albino)ウサギにペントバルビタール
を過剰に心臓内投与して殺し、4℃の冷室に維持し、あ
る場合には目をテープで24時間閉じ、別の場合には4
8時間閉じて角膜の膨潤を誘導し、代謝活性の低下を誘
導した。1.5mmの強膜輪(Scleral ri
m)を有する角膜を切り出し、ダルベッコーのPBS中
で軽く洗浄し、表1に示す本発明の溶液22mlを含む
クーパービジョンビューイングチェンバー(Coope
r VisionViewing Chamber)中
に入れた。反射顕微鏡に接続したディジタル測厚器で角
膜の厚さを測定した。「角膜の厚さ対時間」をプロット
し、組織の収縮速度による角膜の洗浄活性を求めた。
【0102】比較のため、本溶液の代わりに、BSS−
プラスを使用して同じ方法を実施した。
【0103】この実験方法は、ドナーの角膜が受容者に
移植された後のインビボの洗浄過程に類似していること
が注目される。
【0104】図5は、上記表5に示す本発明の溶液中で
インビトロで室温(22−23℃)で膨潤させたウサギ
の典型的な「角膜の厚さ対時間」プロットを示す。ウサ
ギの死後24または48時間後にウサギから組織を単離
した。死後24および48時間後に測定した角膜(それ
ぞれ6個ずつ)の収縮速度による洗浄活性は、それぞれ
137.3±5.4μm/時間と63.3±6.7μm
/時間であった。
【0105】図6に示すように、BSS−プラスの存在
下では単離された角膜(それぞれ6個ずつ)の収縮速度
は、死後24および48時間後に、それぞれ89.7±
6.4μm/時間と30.3±3.8μm/時間であっ
た。この速度は本発明の溶液の存在下で観察されたもの
(図5)と比較して、それぞれ35%と50%低かっ
た。
【0106】上記の結果は、組織(および細胞)の生理
的および生化学的機能を果たすためのエネルギー源とし
ての効率という点で、本発明の組成物はBSS−プラス
より優れていることを示している。この結果は、実施例
1で記載した実験の結果をさらに支持している。
【0107】実施例3 チェン(Chen)ら(米国特許第4,873,186
号、前述)の理論は、β−ヒドロキシブチレートを組織
培養培地に混合し、単離された角膜、抹消組織の保存に
使用される時、保存された組織中での乳酸の産生と蓄積
を同時に阻害してATPとしての高レベルのエネルギー
が産生されることを明らかにした。インビボでのドナー
角膜の生存活性と内皮のポンプ機能を保存するための、
本発明の組成物を含有する角膜保存培地の有効性を、オ
プチゾール(Optisol、カリホルニア州、アーバ
イン(Irvine)、カイロン社(Chiron)が
製造)と比較した(オプチゾールは現在市販されている
最も優れた角膜保存培地の1つである)。オプチゾール
中にはコンドロイチン硫酸とデキストランが脱水剤とし
て、組織に対するコロイド浸透圧を及ぼすのに充分な量
で含まれている。
【0108】本実験のために、TC199の重炭酸塩と
バランスト塩溶液を本発明の組成物で置換した角膜保存
培地を調製した。その典型的なものは表1に示してある
が、グルコースを除外し、NaClを15mMだけ減少
させた。TC199はすでにグルコースを含んでいるた
めグルコースを余分に添加する必要はない。15mMの
NaClの減少は、TC199の重炭酸塩とバランスト
塩溶液を本発明の組成物で置換したあとの、陽イオンと
陰イオンの合計濃度が同じになるようにするためであ
る。表1に示した範囲内でこれらの成分の濃度を変更し
ても同様に有効である。しかし溶液の活性オスモル濃度
は290mMの等張、または約285−300mOsM
の範囲に維持して、溶液が組織に対して浸透圧作用を示
す用にしなければならない。活性オスモル濃度はマンニ
トールやショ糖のような糖類、またはデキストランのよ
うな中性多糖で調整される。
【0109】溶液を0.22μmのナルゲンフィルター
メンブラン(Nalgene filter memb
rane)(ナルゲ社(Nalge Co.)、ニュー
ヨーク州、ローチェスター)で濾過して滅菌し、25m
lのシンチレーションバイアル中に入れ4℃で冷蔵保存
する。
【0110】本実験の方法では、体重が3.0−3.5
kgの雄のニュージーランドアルビノ(New Zea
land albino)ウサギにペントバルビタール
を過剰に心臓内投与して殺し、1.5mの強膜輪を有す
る角膜を単離した。比較のため同じドナーからの1対の
角膜の1個を、本発明の組成物を含有する角膜保存培地
中に保存し、別の1個をオプチゾール中で保存した。あ
る場合は7日間、別の場合は11日間保存した後、保存
培地からドナーの角膜を取り出し、ダルベッコーのPB
Sで軽く洗浄した。トレフィン(trephine)で
ドナーの角膜の7.5mの先端(button)を切
り、受容者のウサギに移植した。移植操作に約30−4
5分間要した。移植後直ちにドナーの角膜の厚さを測定
し、次に7時間後までは30−60分毎に、1週間目ま
では毎日1回か2回測定し、4週間目までは週に1回測
定した。
【0111】一般に単離された角膜は4℃での保存中に
膨潤するが、これは保存された角膜の生存活性、細胞の
代謝活性そして内皮の液体ポンプ機能が保持されていれ
ば可逆的である。受容者に移植された時、生物学的機能
が充分保持されたドナーの角膜は急速に洗浄され、移植
片の清澄性は直ちに達成される。充分に保持されていな
い場合は、ドナーの角膜の洗浄速度は遅く、移植後に膨
潤さえする。
【0112】図7に示すように、本発明の組成物を含有
する培地中で移植後7日間保存されたドナー角膜は、急
速に(約16.2μm/時間、4個の移植角膜の平均)
洗浄され、11日間保存された角膜はもっと遅い速度
(約1.4μm/時間、4個の移植角膜の平均)で洗浄
される。移植後7日間と11日間保存された角膜が、約
340−370μmの正常な厚さに戻るための半減期
(t1/2)は、それぞれ2.4と33.6時間(各4
個の移植片)である(表4)。
【0113】図8に示したように、これとは全く対照的
にオプチゾール中で7日間保存したドナー角膜は移植後
約3時間緩やかに膨潤し、その後約0.5μm/時間
(4個の移植角膜の平均)の推定速度で膨潤した。オプ
チゾール中で11日間保存したドナー角膜は、移植後5
時間著しく膨潤し、その後約0.4μm/時間(4個の
移植角膜の平均)の推定速度で膨潤した。移植後7日間
と11日間保存された角膜が、約340−370μmの
正常な厚さに戻るための半減期(t1/2)は、それぞ
れ133と311時間(各4個の移植片)であると推定
される(表4)。
【0114】
【表4】
【0115】これらのインビボの実験で得られた結果
は、角膜組織の生存活性と角膜内皮の液体ポンプ機能の
保持の点から、本発明の組成物を含有する角膜保存培地
はオプチゾールよりも有意に優れていることを明白に示
している。
【0116】すなわち、実施例1、2および3に記載し
た実験は、本発明がユニークな組成物であることを示し
ている。抹消組織がその生理的および生化学的機能を果
たし、組織の生存活性を維持するためのエネルギー源と
して、本発明の組成物がインビトロおよびインビボでの
応用に特に有用であることは、明白である。
【0117】その臨床的性質に加えて、本発明の組成物
は、BSS−プラスなどの他の潅流溶液が有していない
以下の性質を有している:
【0118】1) 本発明の組成物は細胞の豊富なエネ
ルギー源となる一方で、乳酸の産生と蓄積を抑制する機
構を有している。 2) 本発明の組成物は化学的にBSS−プラスよりも
安定であり、寿命が長い。 3) 本発明の組成物はBSS−プラスよりも製造コス
トが低い。 4) 本発明の組成物の緩衝液(リン酸緩衝液)は安定
であり、能力が大きい。一方BSS−プラスは重炭酸ナ
トリウムの緩衝液系を使用しており、CO分圧により
pHが変化する。 5) 本発明の組成物は投与前の混合段階を必要とせ
ず、従って使用が簡単である。
【0119】いくつかの具体的な態様について本発明を
説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく多くの
変更が可能であることは当業者には明らかであろう。従
ってそれらの変更も本請求の範囲に含まれると理解する
べきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、脂肪酸とケトン生成性のアミノ酸から
のケトン体生成の経路を示す。
【図2】図2は、実施例1に記載されたように、BSS
で前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕微鏡(s
pecular micrscope)による写真の複
製である。
【図3】図3は、実施例1に記載されたように、BSS
−プラスで前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕
微鏡による写真の複製である。
【図4】図4は、実施例1に記載されたように、本発明
の組成物で前眼房を潅流した後の、ネコの内皮の反射顕
微鏡による写真の複製である。
【図5】図5は、実施例2に記載されたように、本発明
の組成物の存在下での単離された角膜のインビトロでの
収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」
をプロットしたものである。
【図6】図6は、実施例2に記載されたように、BSS
−プラスの存在下での単離された角膜のインビトロでの
収縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」
をプロットしたものである。
【図7】図7は、実施例3に記載されたように、本発明
の組成物を含む培地中で4℃で7日間と11日間前もっ
て保存した、移植されたドナーの角膜のインビボでの収
縮(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」を
プロットしたものである。
【図8】図8は、実施例3に記載されたように、本発明
の組成物を含む培地中で4℃で7日間と11日間前もっ
て保存した移植されたドナーの角膜のインビボでの収縮
(deswelling)の「角膜の厚さ対時間」をプ
ロットしたものである。
フロントページの続き (72)発明者 スミ シー.チェン アメリカ合衆国メリーランド州,フェニッ クス,キラーニィ コート 13704

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目および他の抹消組織の効率的な生理的
    および生化学的機能のための要求を有効に満たす組成物
    を形成するのに充分な量の、リン酸塩緩衝化バランスト
    塩水溶液、グルコース、および少なくとも1つのケトン
    体およびその前駆体よりなる組成物。
  2. 【請求項2】 ケトン体はβ−ヒドロキシブチレートイ
    オンおよびアセトアセテートイオンである、請求項1に
    記載の組成物。
  3. 【請求項3】 β−ヒドロキシブチレートイオンは、β
    −ヒドロキシブチレートのD−異性体、β−ヒドロキシ
    ブチレートのD−ラセミ体とL−ラセミ体の混合物、お
    よびβ−ヒドロキシブチレートのD−異性体とL−異性
    体の混合物よりなる群から選択される、請求項2に記載
    の組成物。
  4. 【請求項4】 β−ヒドロキシブチレートの濃度は5−
    30mMの範囲である、請求項2に記載の組成物。
  5. 【請求項5】 ケトン体の前駆体は、酢酸および酪酸よ
    りなる群から選択される短鎖脂肪酸、およびロイシン、
    リジン、フェニルアラニン、チロシンそしてトリプトフ
    ァンよりなる群から選択されるケトン生成性のアミノ酸
    である、請求項1に記載の組成物。
  6. 【請求項6】 ケトン体の前駈体の濃度は0.1−25
    mMの範囲である、請求項5に記載の組成物。
  7. 【請求項7】 それぞれ0.1−5.0mMの範囲の濃
    度である1つまたはそれ以上のケトン生成性のアミノ酸
    よりなる、請求項5に記載の組成物。
  8. 【請求項8】 ケトン生成性のアミノ酸の台計濃度は
    7.5−12.5mMである、請求項5に記載の組成
    物。
  9. 【請求項9】 短鎖脂肪酸は、15−25mMの範囲の
    濃度である酢酸、または5−15mMの範囲の濃度であ
    る酪酸である、請求項5に記載の組成物。
  10. 【請求項10】 pHは7.3−7.5に調整されてい
    る、請求項1に記載の組成物。
  11. 【請求項11】 15−35mMの量のNaClの一部
    は、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌ
    ロン酸(D−mannuronic acid)、 D
    −グルコン酸およびD−グルカリック酸(D−gluc
    aric acid) よりなる群から選択される1つ
    またはそれ以上の糖酸(sugaracids) の等
    量のNa塩で置換されている、請求項1に記載の組成
    物。
  12. 【請求項12】 目の手術において同時に癒着を防い
    で、目の組織の効率的な生理的および生化学的機能のた
    めの要求を有効に満たす組成物を形成するのに充分な量
    の、40−500キロダルトンの範囲の量の中性の多糖
    デキストランの添加により組成物の粘度は上昇してい
    る、請求項1に記載の組成物。
  13. 【請求項13】 中性の高分子量デキストランの濃度は
    2%−20%の範囲である、請求項12に記載の組成
    物。
  14. 【請求項14】 請求項1に記載の組成物、イーグル
    (Eagle’s)培地、ダルベッコー(Dulbec
    co’s)培地およびダニエル(Daniel’s)培
    地よりなる群から選択される一員の最少の必須アミノ
    酸、および最少の必須ビタミンよりなる、角膜保存培
    地。
  15. 【請求項15】 組織培養培池のバランスト塩水溶液は
    請求項1の組成物で置換され、かつ陽イオンと陰イオン
    の合計濃度がバランスト塩水溶液と同じ濃度になるよう
    にNaCl濃度は70−100mMの範囲内に減少され
    ており、溶液の活性オスモル濃度(osmolarit
    y)は285−300mOsMの範囲内の等張性(is
    ostonicity)に調整されている、角膜保存培
    地。
  16. 【請求項16】 組織培養培地はハンクス塩を含むTC
    199(TC 199 with Hank’s sa
    lts)である、請求項15に記載の角膜保存培地。
  17. 【請求項17】 組織培養培池はハンクス塩を含むイー
    グル最少基本地(Eagle’s minimum e
    ssential medium withHank’
    s salts)である、請求項15に記載の角膜保存
    培地。
  18. 【請求項18】 NaCl溶液は85mMに減少されて
    いる、請求項15に記載の角膜保存培地
  19. 【請求項19】 溶液のオスモル濃度は290mOsM
    の等張性に調整されている、請求項15に記載の角膜保
    存培地。
  20. 【請求項20】 マンニトール、ショ糖およびデキスト
    ランよりなる群の少なくとも一員をさらに含む、請求項
    15に記載の角膜保存培地。
  21. 【請求項21】 pHは7.10−7.50の範囲であ
    る、請求項15に記載の角膜保存培地。
  22. 【請求項22】 15−35mMの量のNaClの一部
    は、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マヌ
    ロン酸、D−グルコン酸およびD−グルカリック酸より
    なる群から選択される1つまたはそれ以上の糖酸の等量
    のNa塩で置換されている、請求項15に記載の角膜
    保存培地。
  23. 【請求項23】 (1)角膜の保存に適しているが好ま
    しくない乳酸の産生が普通に起きる組織培養培地よりな
    る角膜保存用組成物の重炭酸塩緩衝化バランスト塩溶液
    が、請求項1に記載の組成物のリン酸塩緩衝化バランス
    ト塩溶液で置換されており、(2)乳酸産生を阻害する
    のに充分な量で存在する、角膜による乳酸の産生を阻害
    することができる短鎖脂肪酸とケトン体よりなる群から
    選択される少なくとも1つの化合物よりなる、角膜保存
    培地。
  24. 【請求項24】 請求項14、15または23に記載の
    角膜保存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジンお
    よび血清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、角
    膜保存組成物。
  25. 【請求項25】 請求項1に記載の組成物、およびVE
    GF、ウリジン、チミジンおよび血清由来因子の相乗的
    に有効な混合物よりなる、臓器移植用組織の調製のため
    の製剤。
  26. 【請求項26】 角膜移植用組織の調製のための請求項
    25に記載の製剤。
  27. 【請求項27】 請求項14または15に記載の角膜保
    存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジンおよび血
    清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、灌流溶液
    (irrigation solution)。
  28. 【請求項28】 請求項14または15に記載の角膜保
    存培地、およびVEGF、ウリジン、チミジンおよび血
    清由来因子の相乗的に有効な混合物よりなる、臓器用培
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6495598B1 (en) 1997-04-22 2002-12-17 Ophtecs Corporation Perfusate preparation for ophthalmic operation
JPWO2014017267A1 (ja) * 2012-07-25 2016-07-07 国立大学法人大阪大学 組織保存液および組織保存方法
JP2017522315A (ja) * 2014-07-18 2017-08-10 ユービジョン バイオテック カンパニー リミテッド 層状角膜保存液

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