JPH074214B2 - 清酒粕の熟成法 - Google Patents
清酒粕の熟成法Info
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- JPH074214B2 JPH074214B2 JP26307690A JP26307690A JPH074214B2 JP H074214 B2 JPH074214 B2 JP H074214B2 JP 26307690 A JP26307690 A JP 26307690A JP 26307690 A JP26307690 A JP 26307690A JP H074214 B2 JPH074214 B2 JP H074214B2
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- yeast
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- sake
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- Alcoholic Beverages (AREA)
Description
(産業上の利用分野) 本発明は、清酒粕の熟成法に関するものである。 清酒製造の際に副生する清酒粕は、近年清酒の高品質に
より増加の傾向にあるが、その消費は食用の需要の低下
などによりかなり低迷している。このため新しい酒粕の
利用方法の開発が望まれている。 本発明は、このような業界の要望に応えるためになされ
たものであって、温度感受性自己消化酵母を使用する全
く新しいタイプの清酒粕熟成法に関するものである。 (従来の技術及び問題点) 従来清酒粕はその用途のほとんど粕漬けである。粕漬け
用に熟成する場合には酵母の自己消化を完成させるため
に長期の熟成が必要である。しかしながら従来の熟成方
法では熟成期間中に好ましくない香りや着色をおこし現
代の食嗜好に合わなくなっている。 一方、酒粕の用途多様化を図るには好ましくない香りや
着色の変化が起こる前に短期間に酵母菌体中の有用成分
を菌体外に分泌させることが必要である。 (発明が解決しようとする課題) そこで発明者らは清酒粕中に約20%含まれている酵母菌
体をできるだけ容易な方法で自己消化させ、より短時間
で熟成を終了させることにより熟成による好ましくない
変化をともなわない熟成清酒粕を得ることを課題とし
た。 (課題を解決するための手段) 清酒粕中の酵母を自己消化させる方法としては、長時間
放置する方法があるが、長時間放置すれば、酵母は自己
消化するものの、清酒粕の品質が劣化し、更には腐敗が
生じて初期の目的を達成することができない。 そこで、酵母を短時間の間に自己消化させるためには強
制的ないし積極的に自己消化させる必要があり、そのた
めの方法としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒
を使用する方法及び細胞壁溶解酵素等酵素を使用する方
法があるが、有機溶媒法は食品衛生上の面や消費者の安
全性指向の面から好ましいものでなく、また、酵素法も
コスト及び品質の面から好ましいものではない。 そこで本発明者らは、発想の大転換を行い、このように
酵母を処理するのではなく、酵母自体に着目し、通常の
清酒酵母と同様に10〜30℃では正常に生育してアルコー
ル発酵を行うが(該温度範囲は、酵母にとって生育及び
アルコール発酵の面から許容しうるものである故、許容
温度範囲ということになる)、一定の温度以上になると
自己消化する酵母、つまり温度感受性自己消化酵母をス
クリーニングした。しかしながら、努力したにもかかわ
らず、目的とする酵母をスクリーニングするのには成功
しなかった。 そこで突然変異処理を行ったところ、許容温度範囲(10
〜30℃)では正常に生育しアルコール発酵を行うが、一
定の温度以上になると死滅して自己消化する酵母(該温
度は、酵母にとって許容し得ないものである故、非許容
温度であり、その範囲は酵母が死滅する温度以上であれ
ば良いが、エネルギーコスト、清酒粕の品質劣化防止等
の観点から、35〜40℃が好適であって、該温度範囲が非
許容温度範囲となる)、つまり温度によって上記各種の
影響を受ける酵母(すなわち、目的とする温度感受性酵
母)を造成するのに成功し、遂に本発明の完成に至っ
た。 目的とする酵母突然変異株は、サッカロミセス・セレビ
シエを常法にしたがって物理的又は化学的突然変異処理
し、YPD培地等で例えば25℃では生育できるが37℃では
生育できないコロニーを選択し、次いでこのコロニーを
YPD培地で37℃にて培養し、黄色のハローをスクリーニ
ングすることにより、目的とするところ、サッカロミセ
ス属に属する温度感受性自己消化酵母が得られる。 その例としては、サッカロミセス・セレビシエJ504を親
株とし、これを化学的突然変異剤によって突然変異処理
して造成したサッカロミセス・セレビシエJ504 K-ts8株
が挙げられる。 本菌は、10〜30℃を許容温度範囲とし、35℃以上を非許
容温度とする温度感受性自己消化株である。ここに非許
容温度とは、既述したように、酵母を突然変異処理して
造成した温度感受性自己消化酵母が自己消化する温度で
あり、また、許容温度とは、該酵母が正常に発育しアル
コール発酵を行う温度である。これらの温度は、使用す
る温度感受性自己消化酵母により、上記範囲内で、それ
ぞれ異なるものである。 なお、上記により造成した菌株は工業技術院微生物工業
技術研究所(現、生命工学工業技術研究所)にFERM P-1
1736として寄託されている。 本発明を実施するには、先ず、このようにして造成した
サッカロミセス属に属する温度感受性自己消化酵母(以
下、本酵母ということもある)を用いて常法にしたがっ
て清酒醸造を行い、清酒もろみから清酒を分離して、残
渣として清酒粕を得、これを非許容温度に貯蔵すれば、
短時間の間で充分に熟成が行われる。 したがって本発明によれば、通常の酵母とは異なり、温
度感受性自己消化酵母を使用するという特徴を有するた
め、自己消化がきわめて低温且つ短時間で終了し、その
ため、品質劣化を伴うことなく短時間にしかもエネルギ
ーコストを大巾低減した清酒粕の熟成が行われるという
著効が奏される。例えばK−ts8株の場合、35℃以上の
温度にわずか3時間保持するだけで自己消化が完了し、
短時間熟成が達成される。 以下、本発明の実施例について述べる。
より増加の傾向にあるが、その消費は食用の需要の低下
などによりかなり低迷している。このため新しい酒粕の
利用方法の開発が望まれている。 本発明は、このような業界の要望に応えるためになされ
たものであって、温度感受性自己消化酵母を使用する全
く新しいタイプの清酒粕熟成法に関するものである。 (従来の技術及び問題点) 従来清酒粕はその用途のほとんど粕漬けである。粕漬け
用に熟成する場合には酵母の自己消化を完成させるため
に長期の熟成が必要である。しかしながら従来の熟成方
法では熟成期間中に好ましくない香りや着色をおこし現
代の食嗜好に合わなくなっている。 一方、酒粕の用途多様化を図るには好ましくない香りや
着色の変化が起こる前に短期間に酵母菌体中の有用成分
を菌体外に分泌させることが必要である。 (発明が解決しようとする課題) そこで発明者らは清酒粕中に約20%含まれている酵母菌
体をできるだけ容易な方法で自己消化させ、より短時間
で熟成を終了させることにより熟成による好ましくない
変化をともなわない熟成清酒粕を得ることを課題とし
た。 (課題を解決するための手段) 清酒粕中の酵母を自己消化させる方法としては、長時間
放置する方法があるが、長時間放置すれば、酵母は自己
消化するものの、清酒粕の品質が劣化し、更には腐敗が
生じて初期の目的を達成することができない。 そこで、酵母を短時間の間に自己消化させるためには強
制的ないし積極的に自己消化させる必要があり、そのた
めの方法としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒
を使用する方法及び細胞壁溶解酵素等酵素を使用する方
法があるが、有機溶媒法は食品衛生上の面や消費者の安
全性指向の面から好ましいものでなく、また、酵素法も
コスト及び品質の面から好ましいものではない。 そこで本発明者らは、発想の大転換を行い、このように
酵母を処理するのではなく、酵母自体に着目し、通常の
清酒酵母と同様に10〜30℃では正常に生育してアルコー
ル発酵を行うが(該温度範囲は、酵母にとって生育及び
アルコール発酵の面から許容しうるものである故、許容
温度範囲ということになる)、一定の温度以上になると
自己消化する酵母、つまり温度感受性自己消化酵母をス
クリーニングした。しかしながら、努力したにもかかわ
らず、目的とする酵母をスクリーニングするのには成功
しなかった。 そこで突然変異処理を行ったところ、許容温度範囲(10
〜30℃)では正常に生育しアルコール発酵を行うが、一
定の温度以上になると死滅して自己消化する酵母(該温
度は、酵母にとって許容し得ないものである故、非許容
温度であり、その範囲は酵母が死滅する温度以上であれ
ば良いが、エネルギーコスト、清酒粕の品質劣化防止等
の観点から、35〜40℃が好適であって、該温度範囲が非
許容温度範囲となる)、つまり温度によって上記各種の
影響を受ける酵母(すなわち、目的とする温度感受性酵
母)を造成するのに成功し、遂に本発明の完成に至っ
た。 目的とする酵母突然変異株は、サッカロミセス・セレビ
シエを常法にしたがって物理的又は化学的突然変異処理
し、YPD培地等で例えば25℃では生育できるが37℃では
生育できないコロニーを選択し、次いでこのコロニーを
YPD培地で37℃にて培養し、黄色のハローをスクリーニ
ングすることにより、目的とするところ、サッカロミセ
ス属に属する温度感受性自己消化酵母が得られる。 その例としては、サッカロミセス・セレビシエJ504を親
株とし、これを化学的突然変異剤によって突然変異処理
して造成したサッカロミセス・セレビシエJ504 K-ts8株
が挙げられる。 本菌は、10〜30℃を許容温度範囲とし、35℃以上を非許
容温度とする温度感受性自己消化株である。ここに非許
容温度とは、既述したように、酵母を突然変異処理して
造成した温度感受性自己消化酵母が自己消化する温度で
あり、また、許容温度とは、該酵母が正常に発育しアル
コール発酵を行う温度である。これらの温度は、使用す
る温度感受性自己消化酵母により、上記範囲内で、それ
ぞれ異なるものである。 なお、上記により造成した菌株は工業技術院微生物工業
技術研究所(現、生命工学工業技術研究所)にFERM P-1
1736として寄託されている。 本発明を実施するには、先ず、このようにして造成した
サッカロミセス属に属する温度感受性自己消化酵母(以
下、本酵母ということもある)を用いて常法にしたがっ
て清酒醸造を行い、清酒もろみから清酒を分離して、残
渣として清酒粕を得、これを非許容温度に貯蔵すれば、
短時間の間で充分に熟成が行われる。 したがって本発明によれば、通常の酵母とは異なり、温
度感受性自己消化酵母を使用するという特徴を有するた
め、自己消化がきわめて低温且つ短時間で終了し、その
ため、品質劣化を伴うことなく短時間にしかもエネルギ
ーコストを大巾低減した清酒粕の熟成が行われるという
著効が奏される。例えばK−ts8株の場合、35℃以上の
温度にわずか3時間保持するだけで自己消化が完了し、
短時間熟成が達成される。 以下、本発明の実施例について述べる。
【実施例1:温度感受性自己消化酵母の造成】 清酒酵母の液胞内にはアルカリフォスファターゼが局在
しており、環境温度を変化させることによりこの酵素を
漏出するような突然変異株を選択した。 YPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコ
ース2%)において前培養したSaccharomyces cerevici
ae J504の一倍体である7-α‐2063を0.1Mりん酸緩衝液
(pH8.0)で洗浄後108個/mlに調整し、これにエチルメ
タンスルホン酸(EMS)を0.3%となるように添加し、30
℃で60分処理した。5%チオ硫酸ナトリウムにてEMSを
中和後滅菌水で希釈、YPD平板培地に塗沫し25℃で3日
から4日培養した。培養後2枚のYPDプレートにレプリ
カし一枚を25℃、もう一枚を37℃で一日間培養した後、
25℃で生育できるが37℃では生育できないコロニーを単
離した。 次に単離されたコロニーをYPDプレートに植菌し、その
上にp−ニトロフェニルりん酸(pNPP)を含む軟寒天
(寒天0.5%、0.05Mグリシン緩衝液(pH9.7),10mMpNP
P)を重層した。このプレートを37℃で1時間インキュ
ベイトして黄色のハローを形成するコロニーを単離し、
これを温度感受性自己消化酵母(K-ts8、微工研菌寄第1
1736号)とした。
しており、環境温度を変化させることによりこの酵素を
漏出するような突然変異株を選択した。 YPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコ
ース2%)において前培養したSaccharomyces cerevici
ae J504の一倍体である7-α‐2063を0.1Mりん酸緩衝液
(pH8.0)で洗浄後108個/mlに調整し、これにエチルメ
タンスルホン酸(EMS)を0.3%となるように添加し、30
℃で60分処理した。5%チオ硫酸ナトリウムにてEMSを
中和後滅菌水で希釈、YPD平板培地に塗沫し25℃で3日
から4日培養した。培養後2枚のYPDプレートにレプリ
カし一枚を25℃、もう一枚を37℃で一日間培養した後、
25℃で生育できるが37℃では生育できないコロニーを単
離した。 次に単離されたコロニーをYPDプレートに植菌し、その
上にp−ニトロフェニルりん酸(pNPP)を含む軟寒天
(寒天0.5%、0.05Mグリシン緩衝液(pH9.7),10mMpNP
P)を重層した。このプレートを37℃で1時間インキュ
ベイトして黄色のハローを形成するコロニーを単離し、
これを温度感受性自己消化酵母(K-ts8、微工研菌寄第1
1736号)とした。
【実施例2:温度感受性自己消化酵母の性質】 K−ts8をYPD液体培地中において許容温度で前培養し、
対数増殖期にある細胞を非許容温度に移すとK−ts8は
直ちに自己消化作用を起こし始める。この自己消化作用
の進行状況は細胞内液胞に存在する酵素の一種であるア
ルカリフォスファターゼの培地中への漏出によって調べ
ることができる。 すなわち、アルカリフォスファターゼは本来酵母の細胞
内に存在する酵素であるが、酵母細胞の自己消化に伴っ
て細胞外、即ち培地中に漏出する。したがって、細胞内
外のこの酵素活性を測定することにより、酵母の自己消
化の程度を知ることができる。この漏出パターンを図・
1に示す。 図・1から明らかなように、温度感受性自己消化酵母K
−ts8では許容温度範囲(25℃)においては自己消化が
起こらないため、アルカリフォスファターゼ活性は細胞
内(左図)に保たれているが、非許容温度範囲(37℃)
は自己消化が起きるため、培養時間の経過にしたがっ
て、この酵素活性の大部分が細胞外(右図)に漏出す
る。 これに対してK−ts8の親株である2063はいずれの温度
範囲においても自己消化がほとんど起きないため、この
酵素活性は細胞内に保たれている。 ここに図示した本酵素の漏出パターン(図・1)から考
えると、非許容温度に移した後6時間以内にほぼ自己消
化が完了したものと認められた。なお、アルカリフォス
ファターゼ活性の測定はA.Schuurらの方法により測定し
た。 また、生菌数を測定し、その変化を図・2に示した。 図・2から明らかなように、温度感受性自己消化酵母K
−ts8では許容温度範囲(25℃)においては自己消化が
ほとんど起らないため、親株である2063と同様に培養時
間が経過しても正常に生育して生菌数は増加する。それ
に対して非許容温度範囲(37℃)においては自己消化が
起きるため、培養時間の経過にしたがって急激に死滅
し、生菌数は対数的に減少した。 更にまた、自己消化には細胞内プロテアーゼが必須であ
るが、J.H.Scottの方法に従いアゾコールを基質として
その活性を測定した結果、非許容温度で本菌株を培養す
ると細胞内のプロテアーゼ活性の増加が確認された(図
・3)。 図・3の結果から明らかなように、温度感受性自己消化
酵母K−ts8は非許容温度範囲(37℃)で細胞内(左
図)のプロテアーゼ活性が培養時間にしたがって急激に
増加するが、許容温度範囲(25℃)ではその増加は親株
である2063と同様にわずかであり、自己消化の傾向と一
致する。一方、細胞外(右図)の活性はいずれの場合も
ほとんど認められない。 酵母の自己消化の産物として細胞を形成しているタンパ
ク質、核酸及びアミノ酸等が培地中に増加する。図・4
はアミノ酸の増加を調べたものである。 図・4の結果から明らかなように、温度感受性自己消化
酵母K−ts8では非許容温度範囲(37℃)で自己消化が
起こるため、培養時間にしたがって培地中に多量のアミ
ノ酸が産出されるが、許容温度範囲(25℃)では親株の
2063と同様に自己消化がほとんど起こらないため、アミ
ノ産の産出はわずかである。 このように、K−ts8株については、37℃で処理するこ
とにより、培地中のアミノ酸含量は顕著に増加し、対照
の親株の1.5倍にも達し、速やかに自己消化が起ること
が立証された。
対数増殖期にある細胞を非許容温度に移すとK−ts8は
直ちに自己消化作用を起こし始める。この自己消化作用
の進行状況は細胞内液胞に存在する酵素の一種であるア
ルカリフォスファターゼの培地中への漏出によって調べ
ることができる。 すなわち、アルカリフォスファターゼは本来酵母の細胞
内に存在する酵素であるが、酵母細胞の自己消化に伴っ
て細胞外、即ち培地中に漏出する。したがって、細胞内
外のこの酵素活性を測定することにより、酵母の自己消
化の程度を知ることができる。この漏出パターンを図・
1に示す。 図・1から明らかなように、温度感受性自己消化酵母K
−ts8では許容温度範囲(25℃)においては自己消化が
起こらないため、アルカリフォスファターゼ活性は細胞
内(左図)に保たれているが、非許容温度範囲(37℃)
は自己消化が起きるため、培養時間の経過にしたがっ
て、この酵素活性の大部分が細胞外(右図)に漏出す
る。 これに対してK−ts8の親株である2063はいずれの温度
範囲においても自己消化がほとんど起きないため、この
酵素活性は細胞内に保たれている。 ここに図示した本酵素の漏出パターン(図・1)から考
えると、非許容温度に移した後6時間以内にほぼ自己消
化が完了したものと認められた。なお、アルカリフォス
ファターゼ活性の測定はA.Schuurらの方法により測定し
た。 また、生菌数を測定し、その変化を図・2に示した。 図・2から明らかなように、温度感受性自己消化酵母K
−ts8では許容温度範囲(25℃)においては自己消化が
ほとんど起らないため、親株である2063と同様に培養時
間が経過しても正常に生育して生菌数は増加する。それ
に対して非許容温度範囲(37℃)においては自己消化が
起きるため、培養時間の経過にしたがって急激に死滅
し、生菌数は対数的に減少した。 更にまた、自己消化には細胞内プロテアーゼが必須であ
るが、J.H.Scottの方法に従いアゾコールを基質として
その活性を測定した結果、非許容温度で本菌株を培養す
ると細胞内のプロテアーゼ活性の増加が確認された(図
・3)。 図・3の結果から明らかなように、温度感受性自己消化
酵母K−ts8は非許容温度範囲(37℃)で細胞内(左
図)のプロテアーゼ活性が培養時間にしたがって急激に
増加するが、許容温度範囲(25℃)ではその増加は親株
である2063と同様にわずかであり、自己消化の傾向と一
致する。一方、細胞外(右図)の活性はいずれの場合も
ほとんど認められない。 酵母の自己消化の産物として細胞を形成しているタンパ
ク質、核酸及びアミノ酸等が培地中に増加する。図・4
はアミノ酸の増加を調べたものである。 図・4の結果から明らかなように、温度感受性自己消化
酵母K−ts8では非許容温度範囲(37℃)で自己消化が
起こるため、培養時間にしたがって培地中に多量のアミ
ノ酸が産出されるが、許容温度範囲(25℃)では親株の
2063と同様に自己消化がほとんど起こらないため、アミ
ノ産の産出はわずかである。 このように、K−ts8株については、37℃で処理するこ
とにより、培地中のアミノ酸含量は顕著に増加し、対照
の親株の1.5倍にも達し、速やかに自己消化が起ること
が立証された。
【実施例3:K−ts8株を用いた清酒小仕込試験】 本菌株の清酒醸造における性能を親株のそれと比較する
目的で65%精白の白米(品種日本晴)総米300gを用いて
小仕込試験を行った。用いた米、麹、水の仕込配合は表
1に示す。 醪の経過を炭酸ガス減量によって調査した。すなわち、
温度感受性自己消化酵母K−ts8とその親株の2063を用
いた清酒小仕込試験によって許容温度範囲(15℃)での
発酵経過を炭酸ガス減量(発酵の進行にともなって炭酸
ガスが排出されることによる醪重量の減少)で調べた。
結果を図・5に示す。 図・5の結果から明らかなように、いずれも醪日数(発
酵日数)にしたがって炭酸ガスが排出され、発酵が順調
に進行するが、温度感受性自己消化酵母K−ts8は親株
の2063に比べ炭酸ガス減量の速度が遅く比較的ゆるやか
な発酵経過を示している。
目的で65%精白の白米(品種日本晴)総米300gを用いて
小仕込試験を行った。用いた米、麹、水の仕込配合は表
1に示す。 醪の経過を炭酸ガス減量によって調査した。すなわち、
温度感受性自己消化酵母K−ts8とその親株の2063を用
いた清酒小仕込試験によって許容温度範囲(15℃)での
発酵経過を炭酸ガス減量(発酵の進行にともなって炭酸
ガスが排出されることによる醪重量の減少)で調べた。
結果を図・5に示す。 図・5の結果から明らかなように、いずれも醪日数(発
酵日数)にしたがって炭酸ガスが排出され、発酵が順調
に進行するが、温度感受性自己消化酵母K−ts8は親株
の2063に比べ炭酸ガス減量の速度が遅く比較的ゆるやか
な発酵経過を示している。
【実施例4:清酒粕の熟成方法と成分変化】 実施例3にて得られた清酒粕約300gを500ml容のプラス
チック容器に入れ、許容温度と非許容温度で貯蔵した。
清酒粕中に含まれる酵母菌の自己消化の状況を調べる目
的で、経時的に10gずつサンプリングを行い、50mlの蒸
留水に懸濁して4℃で清酒粕中の水溶性成分の抽出を一
晩行った。抽出終了後、遠心分離(8000rpm×20分)に
かけ上澄液を0.45μmのフィルターで濾過を行い濾液を
分析用のサンプルとした。サンプルは、アルカリフォス
ファターゼ活性と蓼沼らの方法に従い、S−アデノシル
メチオニン量について分析した。 すなわち、実施例3で得られた酒粕を許容温度範囲(25
℃)及び非許容温度範囲(37℃)で貯蔵することにより
各酒粕に含まれる酵母の自己消化に伴うアルカリフォス
ファターゼの活性の変化を調べた。得られた結果を図・
6に示した。 図・6の結果から明らかなように、温度感受性自己消化
酵母K−ts8を用いて得られた酒粕では非許容温度範囲
(37℃)の貯蔵でアルカリフォスファターゼが漏出して
活性が急激に上昇する。ただし、貯蔵時間が長くなるこ
とによって酒粕中に存在するプロテアーゼの作用により
アルカリフォスファターゼが分解し活性の低下が見られ
る。これに対して、許容温度範囲(25℃)の貯蔵では自
己消化の程度が低いため、アルカリフォスファターゼの
活性は親株の2063と同様に低いレベルである。 つまり、K−ts8の非許容温度での貯蔵では、YPD培地を
用いた場合と同様に、アルカリフォスファターゼ活性が
直線的に増加し自己消化が速やかに進行した(図・
6)。しかしながら対照として貯蔵した親株、あるいは
K−ts8の非許容温度貯蔵のサンプルでは、ほとんどア
ルカリフォスファターゼ活性の増加が観察されなかっ
た。K−ts8の非許容温度での貯蔵において12時間以降
に活性が減少するのは清酒粕中の麹由来のプロテアーゼ
やアルコールあるいは温度による失活が考えられる。 更に清酒酵母の液胞に蓄積するとされるS−アデノシル
メチオニンの酒粕中の含有量を測定し、図・7の結果を
得た。 図・7の結果から明らかなように、実施例3で得られた
酒粕を許容温度範囲(25℃)及び非許容温度範囲(37
℃)で貯蔵することにより、各酒粕に含まれる酵母の自
己消化に伴う成分の酒粕中への溶出の尺度としてS−ア
デノシルメチオニン含量の変化を調べた。(自己消化に
伴う酵母成分の溶出の尺度としては図・4ではアミノ酸
含量の変化を調べたが、酒粕中には既に多量のアミノ酸
が含まれているため、ここでは、酵母に特異的な成分と
してS−アデノシルメチニオン含量の変化を調べた。) 温度感受性自己消化酵母K−ts8を用いて得られた酒粕
では、非許容温度(37℃)の貯蔵により自己消化が急激
に起こってS−アデノシルメチオニン含量が急激に上昇
する。すなわち、S−アデノシルメチオニンは、非許容
温度での貯蔵後3時間で大量に清酒粕中に放出された。 これに対して、許容温度範囲(25℃)の貯蔵では自己消
化の程度が低いため、S−アデノシルメチオニン含量は
親株の2063と同様の低いレベルである。 (発明の効果) 以上の結果から本菌株(K−ts8)は清酒粕中において
非許容温度で速やかに自己消化を完了するものであっ
た。また自己消化に要する時間は最短で3時間程度と考
えられ本酵母を用いることにより非常に短時間での清酒
粕の熟成が可能となった。
チック容器に入れ、許容温度と非許容温度で貯蔵した。
清酒粕中に含まれる酵母菌の自己消化の状況を調べる目
的で、経時的に10gずつサンプリングを行い、50mlの蒸
留水に懸濁して4℃で清酒粕中の水溶性成分の抽出を一
晩行った。抽出終了後、遠心分離(8000rpm×20分)に
かけ上澄液を0.45μmのフィルターで濾過を行い濾液を
分析用のサンプルとした。サンプルは、アルカリフォス
ファターゼ活性と蓼沼らの方法に従い、S−アデノシル
メチオニン量について分析した。 すなわち、実施例3で得られた酒粕を許容温度範囲(25
℃)及び非許容温度範囲(37℃)で貯蔵することにより
各酒粕に含まれる酵母の自己消化に伴うアルカリフォス
ファターゼの活性の変化を調べた。得られた結果を図・
6に示した。 図・6の結果から明らかなように、温度感受性自己消化
酵母K−ts8を用いて得られた酒粕では非許容温度範囲
(37℃)の貯蔵でアルカリフォスファターゼが漏出して
活性が急激に上昇する。ただし、貯蔵時間が長くなるこ
とによって酒粕中に存在するプロテアーゼの作用により
アルカリフォスファターゼが分解し活性の低下が見られ
る。これに対して、許容温度範囲(25℃)の貯蔵では自
己消化の程度が低いため、アルカリフォスファターゼの
活性は親株の2063と同様に低いレベルである。 つまり、K−ts8の非許容温度での貯蔵では、YPD培地を
用いた場合と同様に、アルカリフォスファターゼ活性が
直線的に増加し自己消化が速やかに進行した(図・
6)。しかしながら対照として貯蔵した親株、あるいは
K−ts8の非許容温度貯蔵のサンプルでは、ほとんどア
ルカリフォスファターゼ活性の増加が観察されなかっ
た。K−ts8の非許容温度での貯蔵において12時間以降
に活性が減少するのは清酒粕中の麹由来のプロテアーゼ
やアルコールあるいは温度による失活が考えられる。 更に清酒酵母の液胞に蓄積するとされるS−アデノシル
メチオニンの酒粕中の含有量を測定し、図・7の結果を
得た。 図・7の結果から明らかなように、実施例3で得られた
酒粕を許容温度範囲(25℃)及び非許容温度範囲(37
℃)で貯蔵することにより、各酒粕に含まれる酵母の自
己消化に伴う成分の酒粕中への溶出の尺度としてS−ア
デノシルメチオニン含量の変化を調べた。(自己消化に
伴う酵母成分の溶出の尺度としては図・4ではアミノ酸
含量の変化を調べたが、酒粕中には既に多量のアミノ酸
が含まれているため、ここでは、酵母に特異的な成分と
してS−アデノシルメチニオン含量の変化を調べた。) 温度感受性自己消化酵母K−ts8を用いて得られた酒粕
では、非許容温度(37℃)の貯蔵により自己消化が急激
に起こってS−アデノシルメチオニン含量が急激に上昇
する。すなわち、S−アデノシルメチオニンは、非許容
温度での貯蔵後3時間で大量に清酒粕中に放出された。 これに対して、許容温度範囲(25℃)の貯蔵では自己消
化の程度が低いため、S−アデノシルメチオニン含量は
親株の2063と同様の低いレベルである。 (発明の効果) 以上の結果から本菌株(K−ts8)は清酒粕中において
非許容温度で速やかに自己消化を完了するものであっ
た。また自己消化に要する時間は最短で3時間程度と考
えられ本酵母を用いることにより非常に短時間での清酒
粕の熟成が可能となった。
図・1はアルカリフォスファターゼ活性の変化、図・2
は生菌数の変化、図・3はプロテアーゼ活性の変化、図
・4はYPD培地中のアミノ酸度の増加、図・5は醪の炭
酸ガス減量、図・6は酒粕熟成中のアルカリフォスファ
ターゼ活性の変化、図・7は同じくS−アデノシルメチ
オニン含量の変化をそれぞれ示す。
は生菌数の変化、図・3はプロテアーゼ活性の変化、図
・4はYPD培地中のアミノ酸度の増加、図・5は醪の炭
酸ガス減量、図・6は酒粕熟成中のアルカリフォスファ
ターゼ活性の変化、図・7は同じくS−アデノシルメチ
オニン含量の変化をそれぞれ示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下飯 仁 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税庁 醸造試験所内
Claims (5)
- 【請求項1】サッカロミセス属に属する温度感受性自己
消化酵母を用いて常法により製造した清酒醪由来の清酒
粕の熟成方法であって、該酵母が自己消化する温度をか
けることにより短期の熟成を行うことを特徴とする清酒
粕の熟成方法。 - 【請求項2】該温度が35℃以上であることを特徴とする
請求項1に記載の方法。 - 【請求項3】サッカロミセス属に属する温度感受性自己
消化酵母が、サッカロミセス・セレビシエJ504 K-ts8
(Saccharomyces cereviciae J504 K-ts8)であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。 - 【請求項4】サッカロミセス属に属する温度感受性自己
消化酵母が、サッカロミセス・セレビシエJ504(Saccha
romyces cereviciae J504)を突然変異処理することに
より製造したものであること、を特徴とする請求項3に
記載の方法。 - 【請求項5】サッカロミセス属に属する温度感受性自己
消化酵母が、サツカロミセス・セレビシエJ504を突然変
異処理することにより造成した温度感受性自己消化酵
母、サッカロミセス・セレビシエJ504 K-ts8(Saccharo
myces cereviciae J504 K-ts8,FERM P-11736)であるこ
とを特徴とする請求項4に記載の方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP26307690A JPH074214B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 清酒粕の熟成法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP26307690A JPH074214B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 清酒粕の熟成法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH04365467A JPH04365467A (ja) | 1992-12-17 |
| JPH074214B2 true JPH074214B2 (ja) | 1995-01-25 |
Family
ID=17384506
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP26307690A Expired - Lifetime JPH074214B2 (ja) | 1990-10-02 | 1990-10-02 | 清酒粕の熟成法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH074214B2 (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2020248962A1 (zh) * | 2019-06-11 | 2020-12-17 | 江南大学 | 一株高温敏感型啤酒酵母及其应用 |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2802718B2 (ja) * | 1994-02-28 | 1998-09-24 | 国税庁長官 | 低アルコール濃度清酒 |
| ES2190370B1 (es) * | 2001-11-16 | 2004-11-16 | Consejo Sup. Investig. Cientificas | Nuevas levaduras vinicas autoliticas termosensibles saccharomyces cerevisiae y su metodo de obtencion. |
-
1990
- 1990-10-02 JP JP26307690A patent/JPH074214B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2020248962A1 (zh) * | 2019-06-11 | 2020-12-17 | 江南大学 | 一株高温敏感型啤酒酵母及其应用 |
| US20210321654A1 (en) * | 2019-06-11 | 2021-10-21 | Jiangnan University | High-temperature Sensitive Saccharomyces pastorianus and Application thereof |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH04365467A (ja) | 1992-12-17 |
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