JPH0751076B2 - ブラシノステロイドの生産方法 - Google Patents

ブラシノステロイドの生産方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、植物細胞を培養してブラシノステロイドを生
産する方法に関する。
〔従来の技術と問題点〕
ブラシノステロイドは、ステロイド骨格を有する植物成
長調節物質であり、各種の植物体、例えば、アブラナ花
粉、クリの虫嬰、チャの葉、イスノキ虫嬰、フジマメ未
熟種子、インゲン未熟種子、イネ茎葉、トウモロコシ花
粉等から単離されている。ブラシノステロイドは、ブラ
シノライド及びその同族体を総称するもので、その同族
体は現在までに22種のものが明らかにされている。
ブラシノステロイドは、広く高等植物が生産しているも
ので、前記のように各種の植物体に含有されるが、その
植物体中の含量は1μg〜100μg/kg生体重と極めて微
量である。そして、このブラシノステロイドは、植物に
対する生理作用として、イネラミナジョイント試験にお
いて0.0001ppmの濃度で活性を示すほか、エンドウ上胚
軸、キュウリ下胚軸などに対して伸長促進作用を示す。
従来、ブラシノステロイドの各種同族体が化学合成さ
れ、その農業作物に対する生理作用が広範囲にわたって
調べられるにいたっている。現在までに次のような効果
のあることが確められた。すなわち、コムギ、トウモロ
コシ、キュウリに対する増収効果、イネ、キュウリ、ナ
スに対する耐冷性の増強、ハクサイに対する耐病性の強
化のほか、薬剤耐性、耐塩性の増強などの有用な効果の
あることが明らかにされた〔「化学と生物」、23、717
(1985)〕。
ブラシノステロイドは、上記のように農業用薬剤として
の有用性が実証されつつあるが、その製造法に関しては
今のところ化学合成による手段しかない。ブラシノステ
ロイドの化学合成は、複雑な化学反応の組み合わせから
成り立っており、副成する異性体の分離など高度の技術
を要する。試験用の試料調製は可能となっているもの
の、化学合成は農業用薬剤の製造法としては限界がある
とされている。そこで、生物生産による調製が試みられ
ていて、例えば、ブラシノステロイドを生産する微生物
の探索などが行なわれているが未だ成功するには至って
いない。
本発明者らは、先に、植物細胞にアグロバクテリウム属
細菌を感染させ、細菌が保持しているプラスミド遺伝子
の一部を植物細胞に導入して、腫瘍細胞へ形質転換を行
なった植物細胞(クラウンゴール細胞)が、ブラシノラ
イドを生産していることを見出し、培養した細胞を抽出
し、精製の後、質量分析計を用いてブラシノステロイド
とカスタステロンの存在を確認した。そして、この知見
をもとにクラウンゴール細胞の培養によるブラシノステ
ロイドの製造方法を提案した(特願昭63−99549号)。
しかし、クラウンゴール細胞のブラシノステロイド生産
量は、1〜100μg/kg生体重と低く、経済的なブラシノ
ステロイドの製造方法とするには、さらに生産性を向上
させる必要がある。
〔発明の課題〕
本発明はクラウンゴール細胞の培養によるブラシノステ
ロイドの生産方法において、そのブラシノステロイドの
生産性を向上する方法を提供することをその課題とす
る。
〔課題を解決するための手段〕
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために、ク
ラウンゴール細胞の培養条件を種々検討した結果、培地
中に添加するとクラウンゴール細胞のブラシノステロイ
ド生産量を増加させる物質を、幾つか見出した。また、
クラウンゴール細胞の培養に際し、赤色光又は黄色光を
照射すると、そのブラシノステロイドの生産量が向上す
ることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完
成されたものである。
すなわち、本発明によれば、ブラシノステロイド生産性
クラウンゴール細胞を培養してブラシノステロイドを生
産する方法において、該クラウンゴール細胞を培養する
培地に、オーキシン類、ステロール類、スクアレン及び
カザミノ酸の中から選ばれる少なくとも1種の培養助剤
を添加することを特徴とするブラシノステロイドの生産
方法が提供される。
また、本発明によれば、ブラシノステロイドを生産する
クラウンゴール細胞を培養してブラシノステロイドを生
産する方法において、該クラウンゴール細胞を培養する
培地に赤色光又は黄色光を照射することを特徴とするブ
ラシノステロイドの生産方法が提供される。
本発明で培養基盤として用いるクラウンゴール細胞は、
ブラシノステロイド生産性のもので、常法によって得る
ことができる。即ち、ブラシノステロイド生産性の植物
細胞に植物腫瘍病菌、たとえばアグロバクテリウム(Ag
robacterium)属細菌を感染させ、細菌が保持している
プラスミド遺伝子の一部を植物細胞に導入して、腫瘍細
胞へ形質転換させることによって容易に得ることができ
る。植物体としては、例えば、ニチニチソウ、タバコ、
キクイモ、ヒマワリ、カブ、カランコエ、ヒナギク等の
双子葉植物および一部の単子葉植物(ユリ科、サトイモ
科、イネ科)が用いられる。
本発明においては、培養助剤として、オーキシン類、ス
テロール類、スクアレン及びカザミノ酸の中から選ばれ
る少なくとも1種を用いる。オーキシン類としては従来
公知のものが用いられる。このようなものとしては、例
えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、イン
ドール酢酸(IAA)、ナフタレン酢酸(NAA)等が挙げら
れる。
クラウンゴール細胞は増殖に必要なオーキシンとサイト
カイニンを自ら生産できるので、通常の培養細胞とは異
なり、植物ホルモンの添加しない培地で増殖し得るもの
である。従って、クラウンゴール細胞の培養にオーキシ
ンが添加されることはない。本発明のクラウンゴール細
胞の培養において、オーキシンの添加によりブラシノス
テロイドの生産性が向上するのは予想外のことである。
本発明で培養助剤として用いるステロール類は、ステロ
イド骨格を有するアルコールで、従来公知の各種のもの
が挙げられる。このようなものとしては、例えば、コレ
ステロール、デスモステロール、チモステロール、ラノ
ステロール等が挙げられる。
本発明で用いる培養助剤は、培地に対して添加される
が、その添加量は、培養助剤の具体的種類により異な
る。培地中濃度で表わして、オーキシン類では0.01〜10
0mg/、好ましくは0.1〜10mg/、ステロール類とスク
アレンは、0.1〜1000mg/、好ましくは1〜100mg/、
カザミノ酸は、0.1〜100g/、好ましくは0.1〜10g/
の割合である。この培養助剤は、培地に対して最初から
添加し得る他、培養途中において添加することができ、
特に、クラウンゴール細胞の対数増殖期以降の時点で添
加するのが好ましい。培養助剤がクラウンゴール細胞の
生育阻害を示す時には、細胞の対数増殖期以降の時点で
添加することにより、良好な結果を得ることができる。
本発明においては、クラウンゴール細胞の培養に際し、
培地に対して赤色光(波長600〜900nmの光)又は黄色光
(波長500〜900nmの光)を照射することによって、ブラ
シノステロイドの生産性を向上させることができる。こ
の場合、前記培養助剤を添加することによってブラシノ
ステロイドの生産性をさらに向上させることもできる。
クラウンゴール細胞の培養は、通常の方法、例えばMS培
地等で振とう培養により行うことができる。そして、培
養後、増殖した細胞をホモジナイザー等で磨砕し、メタ
ノール、クロロホルム等の溶剤により抽出し、粗抽出物
をクロマトグラフィー等の常とう手段により分離精製
し、目的のブラシノステロイドを得る。
〔発明の効果〕
本発明によれば、ブラシノステロイド生産性クラウンゴ
ール細胞の培養に際し、特定の培養助剤を添加したこと
によって及び/又は特定の波長の光を照射したことによ
って、ブラシノステロイドを高生産性で生産することが
できる。
〔実施例〕
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(1)ニチニチソウのクラウンゴール細胞(VNC′)の
調製 Agrobacterium tumefaciens A208をNutrient broth寒天
上に16時間培養して生じたコロニーをかきとり、これ
を、ニチニチソウ苗木(茎長15〜20cm)の茎にメスで1
〜2mmの傷をつけたところに塗布した。この苗木をガラ
ス温室中、27〜28℃で1月間栽培した。接種部に約1cm
の腫瘍、クラウンゴール、が生じた。
このクラウンゴールを切り出し、10%サラシコ溶液で表
面を殺菌後、腫瘍組織の内部より約3mm角の切片をと
り、抗生物質(200mg/カルベニシリンと100mg/バン
コマイシン)を含んだ下記組成のMS液体培地に入れ、振
とう培養した(26℃、100rpm、暗所)。
MS培地組成(Murashige−Skoog培地) (mg/) MgSO4・7H2O 370 CaCl2・2H2O 440 KNO3 1900 NH4NO3 1650 KH2PO4 170 FeSO4・7H2O 27.8 Na2EDTA 37.3 MnSO4・4H2O 22.3 ZnSO4・7H2O 8.6 CuSO4・5H2O 0.024 CoCl2・6H2O 0.025 KI 0.83 H3BO3 6.2 Na2MoO4・2H2O 0.25 シュクロース 30000 ミオイノシトール 100 ニコチン酸 0.5 塩酸ピリドキシン 0.5 塩酸チアミン 0.1 グリシン 2 1週間後、無菌化された液体培地に増殖した組織をとり
だし、上記のMS培地に寒天2%を加えてなるMS寒天培地
上に移殖した。このようにして培養細胞V208はMS寒天培
地上で急速に増殖し、同じ寒天培地上で20日毎に継代培
養した。V208細胞を、MS液体培地に移植して振とう培養
し1週間毎に継代培養して、液内懸濁細胞としたV208株
(VNC′)細胞を得た。
このVNC′細胞のブラシノステロイド生産機能は安定し
ており、継代培養を続けて一年後においても再現性の在
ることを確認した。
(2)VNC′細胞の培養 前記のようにして得たニチニチソウのクラウンゴール細
胞VNC′株を前記したMS培地(シュークロースは3%、p
Hは6.7とした)150mlを含む500ml容の三角フラスコで、
27℃、暗所で振盪培養した(100rpm)。培養の最初か
ら、また培養10日目に、培地中に、2,4−ジクロロフェ
ノキシ酢酸(2,4−D)の水溶液を濃度を変えて添加し
た。2,4−Dの添加量は、培地1あたり、0.1mg、0.5m
g、1mg、5mg、10mg、50mgとした。2,4−D添加後さらに
培養を続け、14日目に細胞を濾過して細胞と培養濾液を
収穫した。収穫した細胞約50gは、200mlのメタノールを
添加してホモジナイザーで粉砕し、ガラスフィルターで
濾過した。これを3回繰り返し、合わせたメタノール抽
出液をエバポレーターで減圧濃縮し、約40mlの水溶性濃
縮物とし、0.3gの炭酸水素ナトリウムを添加してpHを弱
アルカリ性とし、40mlの酢酸エチルで3回抽出した。酢
酸エチル溶液は無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧濃縮
し、酢酸エチル可溶性中性区(NE区)を得た。収穫した
培養濾液約100mlに0.5gの炭酸水素ナトリウムを添加し
てpHを弱アルカリ性とし、60mlの酢酸エチルで3回抽出
した。酢酸エチル溶液は無水硫酸ナトリウムで脱水後、
減圧濃縮しNE区を得た。このNE区はイネラミナジョイン
ト試験において、ブラシノライド(BL)標品の活性を強
さと比較することにより、ブラシノステロイド(BS)の
定量を行った。
前記の実験結果を表−1及び表−2に示す。
表−1、表−2に示したように、2,4−Dを培地に添加
すると添加量に従ってBS量も増加した。但し、添加量に
従って植物細胞に対する生育阻害が大きくなり、細胞の
収穫量が減少した。そこで、ある程度、植物細胞を増殖
させた後に2,4−Dを添加することで良い結果を得た。
また、2,4−Dの代りに、インドール酢酸(IAA)及びナ
フタレン酢酸(NAA)を用いても同様の結果を得た。
実施例2 前記実施例1で得たニチニチソウのクラウンゴール細渡
VNC′株を実施例1と同様にして培養した。但し、この
場合、2,4−Dは添加しないで、培養10日目に、培養物
中にコレステロール又はスクアレンを添加した。コレス
テロール又はスクアレンの添加量は、培地1あたり、
100mg/とした。コレステロール又はスクアレンの添加
後さらに培養を続け、14日目に細胞を濾過して細胞と培
養濾液を収穫した。収穫した細胞と培養濾液から、実施
例1と同様にして抽出を行ってNE区を得た。NE区はイネ
ラミナジョイント試験において、ブラシノライド(BL)
標品の活性の高さと比較することにより、ブラシノステ
ロイド(BS)の定量を行った。なお、コレステロール又
はスクアレンは、NE区に回収されるが、イネラミナジョ
イント試験において、BS活性を持たない。
前記の実験結果を表−3に示す。
なお、コレステロールとスクアレンの添加濃度を変え
て、検討した結果、1〜100mg/が良い結果を得た。
実施例3 前記実施例1で得たニチニチソウのクラウンゴール細胞
VNC′株を実施例1と同様にして培養した。培養の最初
から、培地中にカザミノ酸を濃度を変えて添加した。添
加量は、培地1あたり、0.07g、0.7g、7gとした。14
日目に細胞を濾過して細胞と培養濾液を収穫した。収穫
した細胞と培養瀘液から、実施例1と同様にして抽出を
行ってNE区を得た。NE区はイネラミナジョイント試験に
おいて、ブラシノライド(BL)標品の活性の強さと比較
することにより、ブラシノステロイド(BS)の定量を行
った。
前記実験結果を表−4に示す。
表−4に示したように、カザミノ酸を添加した場合に、
ブラシノステロイドの生産量が顕著に増加した。また、
カザミノ酸は、培地に添加した場合に、7g/以下の添
加量では、細胞の生育を阻害しなかった。
実施例4 実施例1で得たニチニチソウのクラウンゴール細胞VN
C′株を実施例1と同様にして培養した。培養の最初か
ら、培養フラスコを色付きセロファンで包み、約16000l
uxの白色光を照射し、培養を行った。比較例として、ア
ルミ箔で包んだものと、何も包まないものを用いた。14
日目に細胞を濾過して細胞と培養濾液を収穫した。収穫
した細胞と培養濾液から、実施例1と同様にして抽出を
行ってNE区を得た。NE区はイネラミナジョイント試験に
おいて、ブラシノライド(BL)標品の活性の強さと比較
することにより、ブラシノステロイド(BS)の定量を行
った。
前記実験結果を表−5に示す。
光を照射して培養すると、一般に、細胞の生育は阻害さ
れる。しかし、黄色光又は赤色光を照射して培養した場
合には、ブラシノステロイドの生産量が顕著に増加し
た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 美文 東京都中央区銀座4丁目11番2号 ソマー ル株式会社内 (72)発明者 川島 征夫 東京都中央区銀座4丁目11番2号 ソマー ル株式会社内 (72)発明者 藤岡 昭三 埼玉県上福岡市武蔵野7番1号 (72)発明者 桜井 成 東京都杉並区南荻窪4丁目27番2号 (72)発明者 横田 孝雄 東京都中野区本町4丁目5番6号 (72)発明者 庄野 邦彦 神奈川県藤沢市亀井野4丁目12番12号

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ブラシノステロイド生産性クラウンゴール
    細胞を培養してブラシノステロイドを生産する方法にお
    いて、該クラウンゴール細胞を培養する培地に、オーキ
    シン類、ステロール類、スクアレン及びカザミノ酸の中
    から選ばれる少なくとも1種の培養助剤を添加すること
    を特徴とするブラシノステロイドの生産方法。
  2. 【請求項2】該培養助剤が、2,4−ジクロロフェノキシ
    酢酸、インドール酢酸及びナフタレン酢酸の中から選ば
    れる少なくとも1種のオーキシンである請求項1の方
    法。
  3. 【請求項3】該培養助剤を、培養細胞の対数増殖期以降
    の時点で添加する請求項1又は2の方法。
  4. 【請求項4】該クラウンゴール細胞を培養する培地に、
    赤色光又は黄色光を照射する請求項1〜3のいずれかの
    方法。
  5. 【請求項5】ブラシノステロイド生産性クラウンゴール
    細胞を培養してブラシノステロイドを生産する方法にお
    いて、該クラウンゴール細胞を培養する培地に、赤色光
    又は黄色光を照射することを特徴とするブラシノステロ
    イドの生産方法。
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US5084388A (en) 1992-01-28
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