JPH0753738A - 極微量試料による蛋白質の超薄膜作成法 - Google Patents

極微量試料による蛋白質の超薄膜作成法

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JPH0753738A
JPH0753738A JP21900793A JP21900793A JPH0753738A JP H0753738 A JPH0753738 A JP H0753738A JP 21900793 A JP21900793 A JP 21900793A JP 21900793 A JP21900793 A JP 21900793A JP H0753738 A JPH0753738 A JP H0753738A
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protein
ferritin
surfactant
film
water
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JP21900793A
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Yoshinori Fujiyoshi
好則 藤吉
Mutsuo Matsumoto
陸朗 松本
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TANPAKU KOGAKU KENKYUSHO KK
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TANPAKU KOGAKU KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 対象とする蛋白質が不溶となる条件に設定し
たサブフェーズの表面に界面活性剤を含有する蛋白質試
料溶液を添加することからなる蛋白質の超薄膜作成法。 【効果】 本発明方法に従ってサブフェーズ表面に添加
されたタンパク質はその表面に瞬時に直接展開して蛋白
質の超薄膜、二次元結晶または三次元結晶を形成するの
で、極微量の蛋白質試料を用いて短時間内にタンパク質
超薄膜を作成することが可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は蛋白質の超薄膜を作成す
る方法に関し、具体的には水相、グリセロール相、有機
溶媒/水混合溶媒相またはゲル相(以下これらを総合し
てサブフェーズという)の表面に蛋白質を超薄膜状に直
接展開する方法に関する。ここに超薄膜とは単分子膜ま
たは数分子の厚さを有する薄膜をいう。本発明方法は二
次元または三次元結晶を含む蛋白質超薄膜の作成を極め
て容易にするので、立体構造の解析に利用できる蛋白質
結晶試料や蛋白質の特性を利用した機能性有機超薄膜の
調製、開発に有用である。
【0002】
【従来の技術とその課題】極めて多様かつ精巧な構造と
機能を有する蛋白質を人工的に応用するためには、その
立体構造を解析し、構造と機能の相関を明らかにするこ
とが欠かせないが、40〜50万種とも言われる蛋白質
のなかで現在までに機能との関連でその立体構造が明ら
かにされているものは500〜600種に過ぎない。従
来の立体構造解析は主としてX線結晶学的に行われてお
り、そのための三次元結晶試料の調製は溶液中でなされ
るのが通例である。この伝統的な三次元結晶調製法は本
来微量にしか存在しない蛋白質を大量に必要とし、その
方法も確立していないため、条件の検討には多大な時間
と労力を要する。しかし、蛋白質には大量使用が不可能
であって、しかも機能的に極めて重要なものが少なくな
い。また、膜蛋白質のように水溶液中での単離・結晶化
が不可能なものや、水溶液中以外ではその立体構造を保
ち得ないものも多い。三次元結晶試料を溶液中で作成す
る従来法の上記問題点はX線回折法による蛋白質立体構
造の解析を著しく困難にしている。
【0003】蛋白質の超薄膜を作成する技術は蛋白質の
機能を利用する様々な分子素子(いわゆるバイオチップ)
の開発には不可欠な基礎技術である。また、蛋白質を二
次元または三次元結晶として超薄膜化することができれ
ば、例えば電子顕微鏡による立体構造解析のための試料
作成法としても有用である。
【0004】水溶性蛋白質の超薄膜を作成する技術とし
て、脂質などからなる水面膜に水溶液中の蛋白質を吸着
させる方法がある。この技術の一例を簡単に述べると、
累積膜(LB膜)作成トラフ内の水面に界面活性剤を使用
してアンカー膜を形成し、水溶液中を拡散する蛋白質が
このアンカー膜に吸着するのを待つ。しかし、蛋白質は
一般に拡散速度が遅いため、溶液バルクから水面のアン
カー膜に吸着するまでにはかなりの時間を必要とする。
このことはこの技術を変性しやすい蛋白質に適用する際
に問題となり得る。また熱力学的理由により超薄膜形成
に利用される表面の蛋白質量はバルク中の量より非常に
少ないのが通例であるから、水溶性であっても極微量し
か利用できない貴重な蛋白質試料の超薄膜化・結晶化に
は、量的制約からこの方法を使用できないことも多い。
【0005】これらの理由から、試料となる蛋白質の必
要量が従来法に比べて格段に少なく、かつ短時間で薄膜
化・結晶化できる汎用性に富む技術が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本研究者らは、微量の試
料で短時間内に蛋白質の超薄膜または二次元/三次元結
晶を作成することができる汎用性と至便性に優れた新し
い技術を開発すべく種々検討した結果、界面活性剤を含
有する蛋白質試料水溶液を該蛋白質が不溶となる条件に
設定したサブフェーズ表面に添加すると、該蛋白質が瞬
時にサブフェーズ表面に直接展開して超薄膜化さらには
二次元/三次元結晶化することを見いだし、本発明を完
成するに至った。即ち本発明は、対象とする蛋白質が不
溶となる条件に設定したサブフェーズ表面に界面活性剤
を含有する蛋白質水溶液を添加することを特徴とする蛋
白質の超薄膜作成法を提供する。この方法では水相だけ
でなく、例えば純グリセロール、グリセロール/水混合
溶媒、エタノール、メタノールまたはジオキサンに代表
される水溶性有機溶媒/水混合系、あるいは寒天、アガ
ロースまたはポリアクリルアミドゲルなどのゲル相をサ
ブフェーズとして用いることもできる。
【0007】本発明方法に従ってサブフェーズ表面に添
加された蛋白質は同時に添加される界面活性剤を展開助
剤として、該界面活性剤と共に瞬時にかつ均一に超薄膜
展開する。界面活性剤の種類・濃度とサブフェーズの条
件を適当に選択することによって、蛋白質と共にサブフ
ェーズ表面に展開した界面活性剤をサブフェーズ表面上
に留めることもできるし、また界面活性剤のみをサブフ
ェーズ中に溶解させて純粋な蛋白質超薄膜を得ることも
できる。このことは水面をサブフェーズ表面とする場合
に限らず、表面張力が約60mN/m以上の純グリセロ
ール、グリセロール/水混合溶媒、エタノール、メタノ
ールまたはジオキサンと水の混合系、あるいは寒天、ア
ガロースまたはポリアクリルアミドに多量の水を含浸し
たゲル相表面についても同様である。
【0008】水溶液中の蛋白質が水中で結晶化するか、
あるいは水面膜に吸着するのを待つ上記従来法とは異な
り、本発明方法では蛋白質試料をサブフェーズ表面に直
接展開させるので、極微量の試料でかつ短時間内に蛋白
質の超薄膜を作成することができる。例えば後述する蛋
白質フェリチンの例では、結晶化に要する蛋白質量は展
開しようとする水面の面積1cm2あたり0.78μgに過
ぎず、また結晶化は100〜200秒以内に完了する。
脂質などの水面膜への水溶液からの吸着による従来法で
は、これらの値は1cm2あたり20mg濃度程度で、結晶
化には約15分以上が必要である。
【0009】本発明方法は水溶性蛋白質だけでなく、難
水溶性蛋白質あるいは膜蛋白質のように可溶化に界面活
性剤を必要とするため、これが邪魔となって従来の界面
吸着法による結晶化が不可能なものにも適用可能であ
る。難水溶性蛋白質の場合、従来の展開単分子膜作成法
では純または高濃度の有機液体(例えばアルコール)に蛋
白質を溶かし、これを水または水溶液に展開する。しか
し、この方法は蛋白質そのものを変性させる恐れがあ
る。これに対し、本発明の方法では水溶性または難水溶
性の界面活性剤を用い、それがタンパク質を変性させな
いものであれば、界面活性剤ミセル中に難水溶液蛋白質
または生体膜を含んだ膜タンパク質をそのまま可溶化
し、その状態で展開することができる。必要に応じてサ
ブフェーズに可溶な界面活性剤を選べば、展開後は界面
活性剤の影響を除き結晶化試料を得ることができる。
【0010】本発明方法によって形成される蛋白質超薄
膜には蛋白質二次元結晶および蛋白質三次元結晶も含ま
れる。形成される超薄膜が結晶構造をとるか否かは、サ
ブフェーズに含有される成分、pH、温度、界面活性剤
の濃度と種類、蛋白質濃度などの因子による。また結晶
が二次元結晶となるか、三次元結晶となるかは、サブフ
ェーズ表面に展開する蛋白質試料の量、展開速度および
サブフェーズの組成によって調節できる。
【0011】本発明方法には目的とする蛋白質の性質に
応じて様々な実施態様が考えられるが、上記の特徴を満
たし、蛋白質がサブフェーズに不溶で、サブフェーズ表
面上に直接展開が可能である限りあらゆる態様は本発明
に包含される。以下、主に蛋白質フェリチンの超薄膜化
を例に挙げて本発明方法を説明するが、本発明方法の上
記特徴を満たすための条件は、従来の一般的な蛋白質精
製法および結晶化法に関する知識に基づいて検索するこ
とができるので、当業者は他の蛋白質についても容易に
至適条件を見つけることができよう。
【0012】展開水相 本発明方法において蛋白質を展開する水相(蛋白質を展
開しようとする水面を持つサブフェーズ)は、対象とす
る蛋白質が不溶となる条件に設定されなければならな
い。難水溶性蛋白質は元来水に難溶であるから、適切な
界面活性剤種と濃度を選択して可溶化させる点以外、そ
の展開には特に工夫を要さない。水溶性蛋白質の場合、
水相のpH、塩濃度またはその両方を調節することによ
って蛋白質が水相に不溶の条件を作ることができる。こ
の時、pHおよび塩濃度の調整に用いる試薬の種類に制
限はない。
【0013】例えば水溶性蛋白質フェリチンはpH5.
8の純水からpH3.6までの酢酸緩衝液に溶解し、バ
ルク中に容易に分散する。しかし、0.15M NaCl
を加えるとpH4.3付近から難溶となり、pH4.1の
0.15M NaCl中では不溶となる(図1)。したがっ
てこの不溶条件を満たす水相を用いると、水面に展開後
のフェリチン超薄膜は水中に溶解することなく水面上に
留まる。
【0014】水相に代わるその他のサブフェーズ 本発明方法の特徴のひとつは、それ自身で十分な展開圧
を持たない水溶性蛋白質を界面活性剤を助剤として展開
することにある。したがって、蛋白質に不溶で展開可能
なサブフェーズであれば、水相と同様に蛋白質を超薄膜
展開することができる。ここでは例えば、純グリセロー
ルまたはその混合水相、ジオキサン、メタノールまたは
エタノールなどの低界面活性有機溶媒と水との混合系、
およびアガロースやポリアクリルアミドなどのゲル相が
考えられる。
【0015】界面活性剤 一般に蛋白質は上記不溶条件を満たすサブフェーズであ
ってもその表面に自発的かつ均一に超薄膜展開すること
はできない。そこでサブフェーズ表面に添加する蛋白質
溶液に展開助剤として界面活性剤を加える。界面活性剤
の種類は対象とする蛋白質を変性させない限りカチオ
ン、アニオン、非イオン性および両性界面活性剤のいず
れであってもよく、この条件を満たす界面活性剤は蛋白
質科学の分野で数多く知られている。これら界面活性剤
の例は、例えばカチオン性界面活性剤については長鎖ア
ルキル基またはフッ素化アルキル基付アミンまたはジア
ミン並びにそれらの塩、四級アンモニウム塩とアミン酸
化物などである。アニオン性界面活性剤については長鎖
アルキル基またはフッ素化アルキル基付カルボン酸塩、
スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸とその塩およびポリリン
酸エステルなどがある。非イオン性界面活性剤の例とし
ては、長鎖アルキル基付またはフッ素化アルキル基付ポ
リオキシエチレンフェノール、ポリオキシエチレンフェ
ノールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルコー
ル、ポリオキシエチレンアルコールエトキシレート、ポ
リオキシエチレンプロピレングリコール、カルボン酸エ
ステルなどがある。両性界面活性剤については長鎖アル
キル基またはフッ素化アルキル基付ベタイン、イミダゾ
リンカルボン酸塩、イミノプロピオン酸およびアミノプ
ロピオン酸などを挙げることができる。
【0016】蛋白質試料溶液に混合する界面活性剤の濃
度は、その種類にもよるが一般に低濃度から高濃度まで
広範囲で使用できる。例えばフェリチン130μgを1
67cm2の水面(pH4.1+0.15M NaClサブ
フェーズ上)に展開する場合、非イオン性界面活性剤C
H3(CH2)7(CH2CH2O)4OH[以下C8(EO)4と略
記する]の濃度は0.0036%以上でよい。この濃度
条件は対象とする蛋白質種によって異なり、また二種類
以上の界面活性剤の混合、あるいは有機物質、塩などの
混合によってさらに低濃度化できる。本発明方法で選択
する界面活性剤濃度の必要条件は、蛋白質試料を含む界
面活性剤溶液が、サブフェーズ表面に接触した時に該表
面の表面張力を著しく下げ、拡張圧を得て自発的に該表
面全体に該蛋白質と共に均質拡張展開することである。
【0017】図2の曲線Bにその一例を示す(実験条件
の詳細については後述の実施例1を参照のこと)。展開
前のサブフェーズの表面圧はゼロであるが、界面活性剤
C8(EO)40.38%を含有するフェリチン(130μ
g)水溶液を水相(面積167cm2)上に展開すると、表
面圧が瞬時に10.3mN/mとなり、この圧力差によ
りフェリチン粒子は水面に超薄膜均一展開された。
【0018】本発明の一態様では、水面上に展開後不要
となった界面活性剤がサブフェーズのバルクに溶解し、
ある時間後には界面活性剤が表面にはほとんど存在しな
くなる。例えば図2Aは、界面活性剤C8(EO)4が展開
後直ちにサブフェーズ中に溶け始め、これによって表面
圧がゼロに近づくことを示している。この界面活性剤の
溶解速度は使用する界面活性剤種に依存する。例えばグ
ルコシド系の界面活性剤の場合、約3〜5分で表面圧が
10mN/m(展開直後)から0.5mN/m程度とな
る。この場合5分後でもフェリチン粒子は水面上に展開
されたままである。このように蛋白質展開後界面活性剤
がサブフェーズに溶解することは、展開後の蛋白質が展
開助剤として添加した界面活性剤によって変性を受ける
危険性を最小にし、活性かつ純粋な蛋白質超薄膜を与え
るという利点を有する。
【0019】別の態様として、蛋白質試料水溶液中では
可溶性ではあるが、pHや塩濃度の異なるサブフェーズ
に展開後不溶となる界面活性剤種を使用することもでき
る。図6はその一例を示す。この実験で使用したフッ素
系非イオン性界面活性剤:C9F19CH2CH(OH)CH
2(OCH2CH2)9OCH3は、ここで使用したフェリチ
ン水溶液には可溶性を示す。このフッ素系非イオン性界
面活性剤を含むフェリチン水溶液を図2の場合と同様の
条件下でサブフェーズ上に展開すると(曲線B)、表面圧
πは直ちに2.5mN/mまで上昇するが、その後も徐
々に上昇を続けて8mN/mで一定となり、その後πは
一定のままである。即ち、この界面活性剤はこの条件下
でサブフェーズ中に溶解しない。この場合もフェリチン
は二次元展開されており、その状態は展開位置からの遠
近を問わず均一であった(図7)。
【0020】水相以外のサブフェーズでの展開 例えば純粋なグリセロールの表面張力は25℃で62.
5mN/mである。このサブフェーズ約150cm2に
0.15M NaClを含む0.38%濃度のC8(EO)4
を10μl展開すると、表面張力は46.3mN/m(π
=16.2mN/m)に低下する。即ち、界面活性剤を助
剤とすると、グリセロール表面にも水表面の場合と同様
に蛋白質の展開が可能である。この表面圧は約1時間後
には1mN/mとなり、グリセロールに展開後のC8(E
O)4は溶解する。このことは、水と塩を多量に含む、例
えばアクリルアミドやアガロースゲルをサブフェーズと
した場合にも、界面活性剤による展開が可能な限り、同
様である。
【0021】以下、実施例により本発明方法をさらに具
体的に例示する。
【0022】
【実施例】実施例1 :炭化水素系非イオン性界面活性剤を用いるフ
ェリチンの超薄膜展開 サブフェーズを入れる水槽は材質と形状を問わないが、
サブフェーズをぬらさない疎水性加工されたものが望ま
しい、ここではステンレススチールにテフロン皮膜加工
を施し、水体積一定(1L)で面積を円形的に170〜5
0cm2まで自由に変えられる装置を考案して用いてい
る。この装置の代わりにガラスシャーレをシランカップ
リング処理で疎水化した容器を用いてもよい。サブフェ
ーズの面積は特に制限を持たない。この装置に0.15
M NaClを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.1)から
なるサブフェーズ1000mlを充填した。サブフェー
ズの水温は室温である。フェリチン130μg、0.3
6% C8(EO)4および0.15M NaClからなる全
量10μlのフェリチン水溶液をマイクロピペットに入
れ、それを緩やかに押し出してピペットの先端に滴を作
り、その滴をサブフェーズ水面(面積167cm2)の中
央部分に接触させると滴が瞬間的に拡がり、上記サブフ
ェーズ上に全量展開できた。
【0023】フェリチンの展開状態を次の方法で確認し
た。水面上のフェリチン膜を細いガラス棒の先端に固定
したカーボン支持膜付電子顕微鏡用グリッド(直径3m
m,400メッシュ)に水平付着法で転写した。水平付
着法とはグリッド上支持膜面を水面フェリチン膜と空気
中で平行に向かい合わせたのち、水面に押し付けてフェ
リチン膜を付着させ、水面から引き離す方法である。例
えば膜展開後250秒、500秒、1000秒、250
0秒の各段階で転写試料を作成し、転写後直ちに膜面の
水滴を濾紙で吸い取り、飽和酢酸ウラニウムで約60秒
間染色し、固定した。図3はこの方法によって調製した
フェリチン展開後500秒で転写した試料の電子顕微鏡
写真である。電子顕微鏡には日立H300を用い、加速
電圧は70kV、直接倍率は3万倍である。図3より、
上記方法に従って水面に添加されたフェリチンが超薄膜
(主として二次元)展開されていることがわかる。またこ
の展開状態は水面の試料転写位置に依存せず、全水面域
で均一であった。
【0024】同じ条件下で種々の炭化水素系またはフッ
素系アニオン、非イオン性または両性界面活性剤を用い
た場合にも同様の展開が認められた。
【0025】実施例2:フェリチンの二次元・三次元結
晶作成 下記条件下で実施例1に記載の操作を行った。 サブフェーズ:0.1M酢酸緩衝溶液+1M NaCl+
5%CdSO4でpHは4.1。表面積167cm2。 フェリチン水溶液(10μl):フェリチン130μg+
0.36%C8(EO)4+0.15M NaCl
【0026】フェリチンは比較的高濃度のCdSO4溶
液中で結晶化することが知られている。これはカドミウ
ムの大部分がサブユニット構造を持つフェリチン分子内
の空孔部分に可溶化されるためで、残りのカドミウムが
可逆的な結合を保ちつつフェリチン分子をつなぎ結晶化
させると考えられている。このカチオンの効果は特異的
で、これよりイオン半径の小さい、例えば亜鉛イオンで
は結晶化しにくくなる。得られたフェリチン超薄膜の電
子顕微鏡写真を図4に示す。図4から明らかなように、
本発明方法に従って上記条件下で展開されたフェリチン
は二次元・三次元結晶を形成しており、その結晶化に要
する時間は100〜200秒以下であった。
【0027】この方法で作った結晶の二次元部分はもっ
ぱら結晶の外周辺に多く生成し、大きな結晶ドメインの
内部は主として三次元である。この外周辺部が二次元で
あることは原子間力顕微鏡(AFM)的に調べた結晶超薄
膜の厚さの測定から明らかになった。図5(倍率7千倍)
は図4と同じ条件で作った試料のAFM低倍像である。
結晶内部は100〜200nmと厚い。図5の四角で区
切った結晶周辺部をさらに2万倍に拡大して測定したと
ころ、裸の支持膜面から結晶の厚さが約11nmで、そ
れは丁度フェリチンの直径11nmに等しく、二次元で
あることがわかった。
【0028】フェリチンはカドミウム濃度が減少すると
二次元・三次元ともに結晶性が低下する。二次元結晶と
三次元結晶の生成条件の詳細は不明であるが、フェリチ
ン量を増加し、カドミウムイオン濃度を増加すると二次
元から三次元になる割合が増加する。
【0029】実施例3:フッ素系非イオン性界面活性剤
を用いるフェリチンの超薄膜展開 0.36%C8(EO)4の代わりに0.048%パーフルオ
ロポリオキシエチレン[C9F19CH2CH(OH)CH
2(OCH2CH2)9OCH3]を用いる点を除いて、上記
実施例1に記載の条件と同一の条件下でフェリチンの超
薄膜を作成した。
【0030】上述のようにこの実施態様では、上記実施
例1〜3とは異なり、展開助剤としてフェリチンと共に
添加された界面活性剤がサブフェーズに溶解しないこと
が図6からわかる。この場合にもフェリチンは二次元展
開されており、その状態は展開位置からの遠近を問わず
均一であった(図7)。
【0031】
【発明の効果】本発明方法は極微量の試料による短時間
での蛋白質の超薄膜化(二次元/三次元結晶化を含む)を
可能にする。また本発明方法は水溶性、難水溶性、膜蛋
白質など多くの種類の蛋白質に広く適用可能である。こ
れらの効果は二次元/三次元結晶化を含む蛋白質の超薄
膜化操作を極めて容易にするので、本発明方法を用いれ
ば、様々な蛋白質種についてそれぞれの至適条件を求め
るために数多くの実験を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水溶性蛋白質フェリチンの溶解と凝集沈降
(不溶化)を表すグラフである。Aでは0.1M酢酸緩衝
液中(pH4.1)にフェリチンが溶けている。Bで0.1
5M NaClを加えて撹拌すると、Cのようにフェリ
チンは凝集して沈降する。ここで縦軸は透過率であり、
使用した波長700nmではフェリチンによる吸収は殆
どない。
【図2】 実施例1に記載の条件下で水面にフェリチン
水溶液を展開した際の表面圧の変化を表すグラフであ
る。曲線AとBはそれぞれフェリチンを含まない場合と
含む場合に対応する。界面活性剤C8(EO)40.36%
と0.15M NaClのみからなる溶液の展開(曲線A)
は約2000秒後で表面圧0.5mN/mとなり、サブ
フェーズに溶けて表面には殆ど残らないことがわかる。
これに対し、フェリチンを含む溶液の場合(曲線B)には
界面活性剤の溶解と共に表面圧が減少するが、1000
秒後に4〜5mN/mの値を保持する。
【図3】 実施例1に記載の方法で作成したフェリチン
超薄膜の状態を表す電子顕微鏡写真である。
【図4】 実施例2に記載の方法で作成したフェリチン
二次元・三次元結晶の構造を表す電子顕微鏡写真であ
る。矢印は二次元結晶部分を示す。
【図5】 実施例2に記載の方法で作成したフェリチン
二次元・三次元結晶の構造を表す原子間力顕微鏡(AF
M)写真である(7000倍)。図の右隅の棒グラフは左
側のX−Y平面図の厚さ(Z方向)を白黒の濃淡で表すも
のであり、単位はnmである。
【図6】 実施例3に記載の条件下で水面にフェリチン
水溶液を展開した際の表面圧の変化を表すグラフであ
る。曲線AとBはそれぞれフェリチンを含まない場合と
含む場合に対応する。界面活性剤C9F19CH2(OH)C
H2(OCH2CH2)9OCH30.048%と0.15N N
aClのみからなる溶液の展開(曲線A)では表面圧が瞬
時に約8mN/mに達し、以後一定であり、この界面活
性剤は水中に溶けず、表面に残る。含フェリチン溶液の
場合(曲線B)には、界面活性剤と共にフェリチンがゆっ
くりと展開され、約2500秒で展開が終わる。
【図7】 実施例3に記載の方法で作成したフェリチン
超薄膜の状態を表す電子顕微鏡写真である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛋白質が不溶となる条件に設定した溶媒
    相またはゲル相の表面に、界面活性剤を含有する該蛋白
    質の水溶液を添加することを特徴とする蛋白質の超薄膜
    作成法。
  2. 【請求項2】 水溶液からなる溶媒相を用いる請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 該超薄膜が該界面活性剤を実質上含有し
    ない請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 該超薄膜が蛋白質の二次元結晶である請
    求項1または請求項2に記載の方法。
  5. 【請求項5】 該超薄膜が蛋白質の三次元結晶である請
    求項1または請求項2に記載の方法。
JP21900793A 1993-08-10 1993-08-10 極微量試料による蛋白質の超薄膜作成法 Pending JPH0753738A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2004012841A1 (de) * 2002-07-30 2004-02-12 Kurt Hoffmann Proteinkristallisationsverfahren
WO2020080377A1 (ja) 2018-10-17 2020-04-23 ヤンマー株式会社 薬剤散布装置

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