JPH08117323A - アパタイト被覆基材とその製造法 - Google Patents

アパタイト被覆基材とその製造法

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JPH08117323A
JPH08117323A JP6282753A JP28275394A JPH08117323A JP H08117323 A JPH08117323 A JP H08117323A JP 6282753 A JP6282753 A JP 6282753A JP 28275394 A JP28275394 A JP 28275394A JP H08117323 A JPH08117323 A JP H08117323A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生体アパタイトと物理化学的性質が類似する
アパタイト被覆基材を製造し、これを合成骨材や培養基
材などとして用いる。 【構成】 所望の形状である有機高分子の表面をリン酸
カルシウム化合物で被覆し、この有機高分子が蛋白質又
はポリアミノ酸などであって、該リン酸カルシウム化合
物が有機高分子と実質的に化学結合している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、骨補填材や骨置換材の
ような合成骨材、組織培養用の容器,膜,スポンジ,ビ
ーズ,凍結乾燥品のような培養基材などとして有用なア
パタイト被覆基材及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】アパタイトは、一般に生体内に存在する
無機のリン酸カルシウム化合物である。歯や骨の生体ア
パタイトはハイドロキシアパタイトに近い組成であり、
人工歯根,人工骨や骨補填材として合成アパタイトの有
用性が広く認められている。合成アパタイトは、緻密
体,顆粒状体,任意の気孔率を有する多孔体などに成形
されて臨床応用している。合成アパタイトは、それ自体
には自硬性がないため、固形化するために焼結すること
が必要である。
【0003】 焼結アパタイトは、成形のための焼結処
理によって物理化学的諸性質が著しく向上し且つ生体親
和性を有するけれども、生体内において細胞が関与する
吸収は殆ど受けなくなる。このような性質は、焼結アパ
タイトを人工歯根などに適用する際には、組織内に吸収
されず、半永久的に堅持されることになるので好適であ
る。一方、焼結アパタイトは、生体内で細胞関与の吸収
を受けなくても、その表面が生体内で融解して骨との間
に化学的結合を生じ、骨形成を誘導するという生体内活
性を有する。焼結アパタイトは、このように生体内活性
を有するために骨補填材としても使用されている。
【0004】 従来から、アパタイトを各種の高分子と
複合化することにより、該アパタイトを改良する研究が
数多く報告されている。例えば、焼結アパタイトをゲル
状コラーゲン,フィブリン,キチンやアルギン酸ナトリ
ウムなどの有機高分子と混合し、この混合物を単に乾燥
したり又はシート状や繊維状に加工してから乾燥するこ
とが提案されている。この混合物は、生体材料として臨
床応用されており、実際に顆粒状のアパタイトを歯周骨
欠損又は顎堤造成への骨補填材として利用している。こ
の骨補填材では、ゲル状コラーゲン,フィブリン糊は補
填材の挿入時及び術後の初期固定を目的とする助結剤と
して機能する。
【0005】 前記の骨補填材では、焼結アパタイトと
高分子との間に何らの結合関係もなく、これらの成分は
単に混在しているにすぎず、有機高分子が基材として必
要な機械的強度を担うことになる。このため、この骨補
填材は、生理食塩水や血液などで湿潤すると崩壊しやす
く、補填材の挿入時及び術後の初期固定の際の安定性に
ついて問題を残している。この骨補填材中の焼結アパタ
イトは、高結晶性であるので生体内で吸収されず、本来
の意味における骨補填材又は骨置換材になっていないの
が現状である。
【0006】 また、アパタイトに対して、高密度ポリ
エチレンフィルムにリン酸基をグラフト重合したポリマ
ーには、生体組織液中でアパタイトが沈着するという研
究が報告されている(例えば、英加善広,O.N.Tretinn
i,富山直秀,筏義人、高分子表面へのアパタイトの沈
着、第9回アパタイト研究会、予稿集第29頁、199
3年)。この研究報告では、アパタイトの沈着に約1ヵ
月以上を必要とし、高分子であるポリエチレンをグラフ
ト重合前にイオンスパッタリングしなければならない。
この研究について、アパタイトがポリエチレンに付着し
たリン酸基と化学結合しているか否かは依然として不明
である。その理由は、リン酸基をグラフト重合せずにイ
オンスパッタリングを施しただけのポリエチレンフィル
ムでもほぼ同様にアパタイトが沈着することを本発明者
らが確認しているからである。いずれにしても、こうし
て得たアパタイトとポリマーとの複合体は、生体材料と
して利用するものでなくて工業材料としての応用が主眼
であり、アパタイトの沈着に約1ヵ月以上も要すれば実
用化は実際上困難である。また、用いるポリエチレンの
形状は、イオンスパッタリング処理を行なうために比較
的単純であることを要するため、仮にこのポリマーを生
体材料として利用としても、その適用範囲は極めて限定
されてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】合成アパタイトを骨補
填材や骨置換材として使用する場合、生理食塩水や血液
などで湿潤しても崩壊せず、骨補填材の挿入時及び術後
の初期固定の際に安定していることが望ましい。合成ア
パタイトは、生体内で吸収されるために物理化学的性質
が生体アパタイトと類似することを要し、本来の意味に
おいて骨補填材又は骨置換材となることが不可欠であ
り、しかもアパタイトの製造を可能な限り短時間で達成
することも実用化のために必要である。また、用いる有
効分子の形状は、緻密体,顆粒状体,多孔体,シート状
体,繊維状体などを任意に選択できる必要もある。
【0008】 一般に、カルシウムとリン酸イオンを含
む溶液中でアパタイトが無機物及び有機物の表面に析出
することは、アパタイト析出実験後にアパタイトがガラ
ス,プラスチック反応容器などに付着することなどから
日常良く経験している。この際に、カルシウム及びリン
酸イオンの供給源は試薬であっても、他の可溶性のリン
酸カルシウム化合物又はバイオガラスなどでもよい。ア
パタイトが容器に付着する場合、ガラスやプラスチック
類がアパタイトの核としての働きをすることが稀であっ
て、主にアパタイトを種とする結晶成長反応が先行する
ことが判明している。
【0009】 カルシウムとリン酸イオンを含む溶液か
らアパタイトを析出させる場合、通常、蛋白質などの有
機物は析出に対して阻害作用を有する。つまり、有機物
はカルシウムとリン酸イオンと錯体を形成しやすく、溶
液中のカルシウムとリン酸イオン濃度の実質的な低下を
招き、アパタイトに対する過飽和度が減少してアパタイ
トの析出が遅延する。さらに有機物は析出アパタイトに
吸着されやすく、アパタイトの結晶成長を阻害する作用
を有する。有機物のこれらの阻害作用は、溶液中で有機
物がどの程度自由に並進拡散できるかに依存し、有機物
の並進拡散を抑制すればアパタイトの析出を促進すると
推定できる。
【0010】 一方、有機物の石灰化機構の解明に関す
る研究では、象牙質から抽出したリン蛋白質は、μモル
程度の極微量の濃度であってもリン酸カルシウム塩の析
出及び成長を阻害することが報告されている。しかしな
がら、リン蛋白質をセファロースに架橋結合して並進拡
散を抑制すると、リン酸カルシウム塩の析出に対する阻
止効果が消失し、反対にリン酸カルシウム塩の析出を助
長することも確認されている。析出するリン酸カルシウ
ム塩の量は、架橋結合したリン蛋白質の量に比例して増
大し、リン酸カルシウム塩がエピタキシャル的に析出す
ることが判明している。
【0011】 本発明者らは、アパタイトの合成という
観点から前記の研究に注目し、この研究におけるリン酸
カルシウム塩の析出操作を改良すると、有機高分子上に
アパタイトを析出させることが可能になることを知見し
た。有機高分子の表面を被覆したハイドロキシアパタイ
トは、その物理化学的性質が生体アパタイトに酷似して
おり、合成骨材などとして用いると有益である。
【0012】 また、組織培養用の培養基材は、ゼラチ
ンやコラーゲンのような蛋白質の膜,スポンジ,ビー
ズ,凍結乾燥品などの培養床からなり、ディッシュやプ
レートである培養容器には、その内底面においてゼラチ
ンやコラーゲンなどをコーティングするのが普通であ
る。この種の培養基材では、ゼラチンやコラーゲンなど
の蛋白質をアパタイトで被覆すると、細胞との親和性を
いっそう高くすることが可能になる。
【0013】 したがって、本発明は、物理化学的性質
が生体アパタイトに酷似しているアパタイト被覆基材を
提供することを目的としている。本発明の他の目的は、
骨補填材や骨置換材として実用的価値が高い合成骨材を
提供することである。本発明のさらに他の目的は、生体
にいっそう近い状態で細胞培養ができる培養基材を提供
することである。本発明の別の目的は、アパタイトを有
機高分子の表面に効率よく析出させるアパタイト被覆基
材の製造法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るアパタイト被覆基材は、所望の形状で
ある有機高分子の表面をリン酸カルシウム化合物で被覆
し、該リン酸カルシウム化合物が有機高分子と実質的に
化学結合している。被覆するリン酸カルシウム化合物と
しては、生体アパタイトに近い組成のハイドロキシアパ
タイトが一般的であるけれども、用途に応じてリン酸カ
ルシウム二水塩又はリン酸八カルシウム塩なども被覆可
能である。このリン酸カルシウム化合物は、図3から図
6の写真に示すように有機高分子の表面を被覆すること
により、有機高分子とファン・デル・ワールス力による
結合よりも遥かに強く結合し、未確認であるが実質的に
化学結合であると推定できる。
【0015】 本明細書において、アパタイト被覆基材
とは有機高分子の表面がアパタイトつまり種々のリン酸
カルシウム化合物で被覆された基材を意味し、この基材
自体が所望の形状を有する場合と、該有機高分子をさら
にガラス容器やビーズなどにコーティングしている場合
とがある。本発明のアパタイト被覆基材は、合成骨材,
培養基材又は他の生体材料として用いることができ、適
用する有機高分子は、セファロース,コラーゲン,フィ
ブリン,キチン,ゼラチン,ポリ−D−リジン又はポリ
−L−リジンのような蛋白質やポリアミノ酸、メチルメ
タクリレートのような合成高分子、レジンのような天然
高分子などである。
【0016】 本発明のアパタイト被覆基材は、緻密
体,顆粒状体,多孔体,シート状体,繊維状体などの所
望の形状にすることができる。このアパタイト被覆基材
を培養基材として用いる場合、培養床が蛋白質又はポリ
アミノ酸の膜,スポンジ,ビーズ,凍結乾燥品などであ
っても、蛋白質又はポリアミノ酸を内底面にコーティン
グした培養器であってもよい。この培養器は、ガラス又
はプラスチック製のシャーレ,ディッシュ,プレート,
フラスコ,トレイ,セルデスクのいずれでもよい。
【0017】 本発明において、合成骨材とは従来の人
工骨材料と異なる化学組成であることを意味し、骨補填
材や骨置換材が主たる用途対象であるけれども、人工骨
材料としての用途だけに限定されるものではない。この
合成骨材を生体内で吸収させる場合には、有機高分子と
して生体内で吸収される蛋白質又はポリアミノ酸を選択
する必要がある。また、この合成骨材を骨補填材や骨置
換材として用いる場合には有機高分子に生体親和性が要
求され、この意味ではコラーゲンが適している。ゼラチ
ンはコラーゲンの変性体であって化学組成は同一である
から、コラーゲンと同様の処理によってハイドロキシア
パタイトを析出させることができる。
【0018】 本発明方法では、有機高分子をリン酸カ
ルシウム化合物の過飽和溶液に浸漬することにより、ハ
イドロキシアパタイトを有機高分子の表面に析出させ
る。このリン酸カルシウム化合物の過飽和溶液は、例え
ば、カルシウム塩とリン酸塩又はリン酸モノエステルの
カルシウム塩などを含み、リン酸モノエステルのカルシ
ウム塩の場合には加水分解酵素も加えておく。用いる有
機高分子は、リン酸カルシウム化合物の過飽和溶液中で
錯体を形成しないようにあらかじめ架橋させ、その並進
拡散を抑制することにより、該溶液からのアパタイトの
析出を促進させることが必要である。有機高分子である
蛋白質の並進拡散を抑制するには、架橋処方が比較的容
易で好ましいけれども、この他にカルシウムとリン酸イ
オンを含む溶液へ抑制物質を添加する処方なども実施可
能である。
【0019】 有機高分子に蛋白質を架橋させるには、
例えば、有機高分子としてセファロース,コラーゲン,
フィブリン,キチン,ゼラチンなどの蛋白質又はポリア
ミノ酸を用い、これにリン蛋白質を架橋させる。このリ
ン蛋白質は、卵黄由来のホスビチン,カゼイン,ビテリ
ン又は硬組織由来などのリン蛋白質などであればよい。
適用可能な架橋剤は、ジメチルスベロイミデート,ジエ
チルマロニミデート2塩化物,ジイシシアン酸ヘキサメ
チレン,グルタールアルデヒド,ヒドラジン,ジフェニ
ルホスフォリアザイド,N−エチル−N’−(3−ジメ
チル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸などであ
る。架橋剤はアパタイトの析出と成長を阻害するので、
あらかじめ十分に洗浄することが望ましい。
【0020】 リン酸カルシウム化合物の過飽和溶液を
調製するには、硝酸カルシウムなどのカルシウム化合物
及びリン酸二水素カリウムなどのリン酸化合物を別々に
緩衝液に溶解し、液温37℃でpH6.5〜10に調整
すると好ましい。この際に、pHが約6以下であると、
第二リン酸カルシウム塩又はリン酸八カルシウム塩が析
出しやすくなる。一方、pHが11以上になると、水酸
化カルシウムが安定相になってアパタイトの析出効率が
悪くなる。また、ヘペスやトリスなどの緩衝液の代り
に、公知のpHスタット(自動pH調節装置)を使用し
てもよく、この場合にはカルシウム化合物及びリン酸化
合物を水に溶解すればよい。
【0021】 他のリン酸カルシウム化合物の過飽和溶
液として、カルシウム化合物及びリン酸化合物の代り
に、β−グリセロリン酸カルシウムなどのリン酸モノエ
ステルのカルシウム塩を用いてもよく、この際にはアル
カリホスファターゼなどのホスホモノエストラーゼも使
用する。ホスホモノエストラーゼは、リン酸モノエステ
ルを加水分解する酵素の総称である。リン酸モノエステ
ルのカルシウム塩及びアルカリホスファターゼは、液温
37℃でpH5.5〜10.5に調整し、好ましくはアル
カリホスファターゼの活性に適したpH8.5〜9.5に
調整する。
【0022】 また、得た合成骨材を生体内でより速く
吸収させるには、骨アパタイトと同様に6重量%前後の
炭酸イオンを結晶格子内に含有するように、リン酸カル
シウム化合物の過飽和溶液に炭酸化合物を添加し、析出
アパタイトの結晶格子内に含有される炭酸イオン量を増
加させればよい。添加する炭酸化合物の濃度は、使用す
る有機高分子によって変動し、一般に0〜20ミリモル
/リットルの範囲であって、好ましくは4ミリモル/リ
ットル前後である。この炭酸化合物の種類は特に限定さ
れないが、炭酸化合物のカルシウム塩又はリン酸塩を使
用すると、リン酸カルシウム化合物におけるカルシウム
塩及びリン酸塩濃度が変動することになる。
【0023】
【作用】本発明のアパタイト被覆基材では、被覆アパタ
イトが低結晶性であって生体アパタイトと極めて類似し
ている。この合成骨材を超音波洗浄してもハイドロキシ
アパタイトは脱離せず、該ハイドロキシアパタイトが極
めて強固に有機高分子に結合している。また、この合成
骨材を生理食塩水や血液などに湿潤しても崩壊せず、ハ
イドロキシアパタイトは実質的に化学結合しているもの
と推定できる。
【0024】 本発明方法では、析出するアパタイト量
を一般に反応時間で調整するが、あらかじめ適当なカル
シウム塩及びリン酸塩を緩衝液に添加しておくと析出反
応をいっそう促進できる。リン酸カルシウム化合物の溶
液中のカルシウム塩及びリン酸塩の量は、ハイドロキシ
アパタイトに対して過飽和であっても通常飽和前後に定
めることが好ましい。カルシウム塩及びリン酸塩などの
添加物濃度を過度に高くすると、溶液中でハイドロキシ
アパタイトの析出が開始し、蛋白質上にハイドロキシア
パタイトが効率よく析出しない。
【0025】 本発明方法では、有機高分子へのリン蛋
白質の架橋反応に蛋白質又はポリアミノ酸のアミノ基,
イミノ基,カルボキシル基などが関与し、架橋剤を変更
すればさらに多くの官能基が関与しうる可能性がある。
このため、現状においては前記の架橋反応に関与する官
能基を完全には特定しにくく、広範囲の有機高分子につ
いて適用可能性を保有している。
【0026】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明する。 実施例1 緩衝液として、20〜100ミリモルのN−(2−ヒド
ロキシエチル)ピペラジン−N’−2−エタンスルホン
酸(商品名:トリス、丸石化学製)を蒸留水に溶解す
る。次に硝酸カルシウムが濃度0.5〜2.6ミリモル/
リットルに、及びリン酸二水素カリウム(岸田化学製)
が濃度0.3〜1.6ミリモル/リットルになるように前
記の緩衝液に別々に溶解し、37℃でpH6.5〜10
に調整する。これらの溶液は、それぞれ長期保存のため
に4℃に設定した冷蔵庫中で保管する。
【0027】 一方、ホスビチンをセファロース(商品
名:EHAH−セファロース4B、フォルマシア社製)
単位mg当り5μg以下で架橋させるため、架橋剤とし
てN−エチル−N’−(3−ジメチル−アミノプロピ
ル)カルボジイミド塩酸(ナカライテスク製)を用い、
水1ミリリットルに対して濃度3mgの水溶液とする。
ホスビチン及びセファロースを架橋剤の水溶液中で1日
放置する。放置完了後、ガラスフィルタ上においてホス
ビチン架橋のセファロースを洗浄し、未反応のホスビチ
ン及び反応副生物を除去する。洗浄後のホスビチン架橋
のセファロースは、4℃に設定した冷蔵庫中で保管す
る。
【0028】 前記の硝酸カルシウム及びリン酸カリウ
ム溶液を37℃に昇温させ、等量混合した溶液にホスビ
チン架橋のセファロースを浸漬する。溶液の過飽和度に
依存するが、好適な過飽和溶液の場合には約半日程度で
アパタイトがセファロース上に析出する。アパタイトを
セファロース上に多量に析出させるには、前記の浸漬操
作を繰り返せばよい。
【0029】 ハイドロキシアパタイト結合セファロー
スをX線解析及び赤外共鳴吸収スペクトル解析すると、
析出アパタイトは低結晶性であり、比較として用いた牛
骨(生後約4年)大腿骨のX線解析と極めて類似してい
る。このアパタイト結合セファロースは、超音波洗浄し
てもハイドロキシアパタイトが脱離せず、ハイドロキシ
アパタイトが極めて強固にセファロースに結合してい
る。また、これを生理食塩水や血液などに湿潤しても崩
壊しないので、合成骨材として使用すると有効である。
【0030】実施例2 実施例1で製造したハイドロキシアパタイト結合セファ
ロースは顆粒状であり、そのままで生体内に似た培養基
材としても使用できる。また、実施例1で製造したハイ
ドロキシアパタイト結合セファロースを熱水に溶解さ
せ、シャーレ,プレートなどの培養器の内底面にコーテ
ィングする。得た培養基材は、組織培養用の培養器とし
て使用できる。
【0031】実施例3 緩衝液として、20〜200ミリモルのトリス(ヒドロ
キシメチル)アミノメタンを蒸留水に溶解する。この緩
衝溶液を37℃で保温し、pH5.5〜10.5好ましく
はpH8.5〜9.5に調整する。まずβ−グリセロリン
酸カルシウムを濃度2〜12ミリモル/リットルになる
ように前記の緩衝溶液に溶解する。
【0032】 一方、リン蛋白質のホスビチンが濃度
0.04%前後に、加水分解酵素のアルカリホスファタ
ーゼ(リン酸モノエステラーゼI型)(SIGMA社
製)が濃度0.04%前後に、及び架橋剤のジメチルス
ベロイミデート(SIGMA社製)が濃度0.03%前
後になるように前記の緩衝液に別々に溶解し、これらは
長期保存のために4℃に設定した冷蔵庫中で保管する。
【0033】 コラーゲンへのホスビチン及びアルカリ
ホスファターゼの架橋 湿潤状態で30mgである再線維化コラーゲンゲル(S
IGMA社製),該ゲルの乾燥体及びコラーゲンシート
(全てアテロコラーゲンのタイプI)(明治製菓製)を
ガラス容器に入れる。コラーゲンシートは、拡大すると
図1及び図2に示すような形状を有する。このガラス容
器について、前記のホスビチン溶液,酵素溶液及び架橋
剤溶液をそれぞれ10ミリリットル添加する。これを3
7℃で6日間放置し、放置完了後に上澄み液を流し去
り、前記の緩衝溶液で軽く洗浄する。
【0034】 架橋コラーゲン線維へのアパタイトの析
架橋処理したコラーゲンに対して、前記のホスビチン溶
液及び酵素溶液をそれぞれ10ミリリットル添加する。
これを室温で3時間前後放置し、放置完了後に上澄み液
を流し去って余剰液を速やかに除去する。次に、前記の
β−グリセロリン酸カルシウム溶液を40ミリリットル
加え、37℃で約20時間放置する。
【0035】 ハイドロキシアパタイトをコラーゲン線
維上に十分に析出させるために、ホスビチン溶液と酵素
溶液の添加並びβ−グリセロリン酸カルシウム溶液の添
加を14〜28回繰り返す。肉眼による白色のハイドロ
キシアパタイトの確認は、反応開始後4〜5日である繰
り返し操作4〜5回で可能である。反応開始から2週間
後のコラーゲンシートを図3及び図4に、且つ4週間後
のコラーゲンシートを図5及び図6に拡大して示し、図
3から図6によって白色のハイドロキシアパタイトの析
出が明確に確認できる。アパタイトが析出したコラーゲ
ンを蒸留水で十分に洗浄し、凍結乾燥をした後に冷蔵庫
に保存する。これを骨補填材などに使用する時には、必
要に応じてガス滅菌する。
【0036】 アパタイト結合コラーゲンをX線回析す
ると、析出アパタイトは骨アパタイトとほぼ同じ結晶性
を有し、赤外共鳴吸収によってアパタイトは1%弱の炭
酸イオンを結晶格子内に含有することを示している。熱
重量分析により、再線維コラーゲン又はコラーゲンシー
トを問わず、2週間の反応で析出したアパタイト量はコ
ラーゲン重量の約2倍程度である。そして4週間の反応
では、析出アパタイト量は2〜3割程度増加する。
【0037】 再線維化コラーゲンを用いて製造した骨
補填材は、若干の弾力性を有し、指圧やピンセットなど
によって変形可能であり、徐変形下でも該骨補填材は剥
離したり脱離したりしない。この骨補填材は、生理食塩
水や血液などで容易に湿潤でき、その際に崩壊せずに任
意の形状の骨欠損部に容易に充填できる。
【0038】 実施例3で製造した骨補填材を、図7に
示すようにイヌ下顎臼歯部に作製した2壁性骨欠損部に
充填する。この充填から1ヵ月後の経過を図8の顕微鏡
写真で示し、図8から2壁性骨欠損部においてセメント
質,歯槽骨及び歯根膜の再生を認めることができる。
【0039】実施例4 湿潤状態で30mgである均一なポア径のコラーゲン膜
(タイプIとIIIの等量混合物)(COSTAR社製)
をガラス容器に入れ、さらに実施例3で得たホスビチン
溶液,酵素溶液及び架橋剤溶液をそれぞれ10ミリリッ
トル添加する。これを37℃で6日間放置し、放置完了
後に上澄み液を流し去り、実施例3で得た緩衝溶液で軽
く洗浄することにより、ホスビチン及びアルカリホスフ
ァターゼをコラーゲンに架橋させる。
【0040】 架橋処理したコラーゲン膜は、以下、実
施例3と同様に処理して、ハイドロキシアパタイトをコ
ラーゲン線維上に十分に析出させる。反応後2週間で得
たアパタイト結合コラーゲンは、ポリカーボネート製の
膜フィルター式培養器(商品名:トランスウェル)の内
底面部に取付けると、この培養器は細胞との親和性がい
っそう高くなり、細胞培養時の代謝物の移動研究などに
適している。
【0041】実施例5 コラーゲン(タイプI,タイプIV)を内底面にコーテ
ィングしたガラスシャーレ(商品名:セルタイトC−
4、住友ベークライト製)を用い、該シャーレに実施例
3で得たホスビチン溶液,酵素溶液及び架橋剤溶液を適
量添加する。これを37℃で6日間放置し、さらに実施
例3で得た緩衝溶液で洗浄することにより、ホスビチン
及びアルカリホスファターゼをコラーゲンコートに架橋
させる。
【0042】 架橋処理したコラーゲンコートは、以
下、実施例3と同様に処理して、ハイドロキシアパタイ
トをシャーレ内のコラーゲンコート上に十分に析出させ
る。反応後2週間で得たコラーゲンコートのシャーレ
は、細胞との親和性がいっそう高くなり、上皮細胞の初
代培養などに適している。
【0043】実施例6 実施例3と同様に処理して、リン酸カルシウム二水塩又
はリン酸八カルシウム塩をコラーゲン線維上に析出させ
るために、酵素としてリン酸モノエストラーゼII型又
はIV型(SIGMA社製)を用いる。反応溶液のpH
は、酸性領域好ましくはpH4.5〜6.2に定める。
【0044】 リン酸カルシウム二水塩又はリン酸八カ
ルシウム塩をコラーゲン線維上に析出させて得た骨補填
材は、実施例3で製造した骨補填材と同様に若干の弾力
性を有し、指圧やピンセットなどによって変形可能であ
り、徐変形下でも該骨補填材は剥離したり脱離したりし
ない。この骨補填材は、生理食塩水や血液などで容易に
湿潤でき、その際に崩壊せずに任意の形状の骨欠損部に
容易に充填できる。
【0045】
【発明の効果】本発明のアパタイト被覆基材は、生体ア
パタイトと物理化学的性質が類似し、且つ任意の形状に
選択でき、本来の意味における合成骨材,培養基材など
として実用的価値が高い。このアパタイト被覆基材は、
骨補填材や骨置換材などの合成骨材として使用する場合
に超音波洗浄してもハイドロキシアパタイトは脱離せ
ず、且つ生理食塩水や血液などに湿潤しても崩壊せず、
骨補填材の挿入時及び術後の初期固定の際などにきわめ
て安定している。また、このアパタイト被覆基材を組織
培養用の培養基材として用いると、従来の培養基材より
も細胞との親和性がいっそう高くなる。
【0046】 本発明方法は、有機高分子をリン酸カル
シウム化合物の過飽和溶液に浸漬するだけで容易にアパ
タイト被覆基材を製造でき、所望の合成骨材又は培養基
材などを製造するために、有機高分子として生体内で吸
収される蛋白質又はポリアミノ酸を選択することが可能
である。また、本発明方法は、合成骨材について機械的
強度や弾力性などが求められる場合に、有機高分子の品
質や形状又はコーティング源を適宜変更することによ
り、所望の特性を有するアパタイト被覆基材を製造でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2で用いるコラーゲンシートを示す2
00倍の弱拡電子顕微鏡写真である。
【図2】 図1の600倍の強拡電子顕微鏡写真であ
る。
【図3】 実施例2において、ハイドロキシアパタイト
を2週間析出させたコラーゲンシートを示す200倍の
弱拡電子顕微鏡写真である。
【図4】 図3の600倍の強拡電子顕微鏡写真であ
る。
【図5】 実施例2において、ハイドロキシアパタイト
を4週間析出させたコラーゲンシートを示す200倍の
弱拡電子顕微鏡写真である。
【図6】 図5の600倍の強拡電子顕微鏡写真であ
る。
【図7】 イヌ下顎臼歯部に2壁性骨欠損部を作製した
状態を示す写真である。
【図8】 イヌ下顎臼歯部に2壁性骨欠損部を作製し、
ここに本発明の合成骨材を充填した後1ヵ月の経過を示
す顕微鏡写真である。
【手続補正書】
【提出日】平成7年7月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所望の形状である有機高分子の表面をリ
    ン酸カルシウム化合物で被覆し、該リン酸カルシウム化
    合物が有機高分子と実質的に化学結合しているアパタイ
    ト被覆基材。
  2. 【請求項2】 所望の形状である有機高分子が蛋白質又
    はポリアミノ酸であり、その表面をハイドロキシアパタ
    イトで被覆し、該ハイドロキシアパタイトが蛋白質又は
    ポリアミノ酸と実質的に化学結合している合成骨材。
  3. 【請求項3】 蛋白質又はポリアミノ酸としてゼラチ
    ン,セファロース,コラーゲン,フィブリン,キチン,
    ポリ−D−リジン又はポリ−L−リジンを用い、リン酸
    カルシウムの過飽和溶液へ浸漬する前にリン蛋白質を架
    橋結合させる請求項2記載の合成骨材。
  4. 【請求項4】 培養床は所望の形状である有機高分子で
    あり、該有機高分子をハイドロキシアパタイトで被覆
    し、該ハイドロキシアパタイトが蛋白質又はポリアミノ
    酸と実質的に化学結合している培養基材。
  5. 【請求項5】 培養床が有機高分子をコーティングした
    ガラス又はプラスチック製の培養器からなり、該有機高
    分子がゼラチン,セファロース,コラーゲン,フィブリ
    ン,キチン,ポリ−D−リジン又はポリ−L−リジンな
    どの蛋白質又はポリアミノ酸である請求項4記載の培養
    基材。
  6. 【請求項6】 有機高分子をリン酸カルシウム化合物の
    過飽和溶液に浸漬し、リン酸カルシウム化合物を有機高
    分子の表面に析出させるアパタイト被覆基材の製造法。
  7. 【請求項7】 リン酸化合物及びカルシウム化合物の溶
    液をpH6.5〜10に調整し、一方、架橋剤によって
    リン蛋白質をセファロースに架橋させ、これをリン酸カ
    ルシウム化合物の過飽和溶液に浸漬してハイドロキシア
    パタイトをセファロースの表面に析出させるアパタイト
    被覆基材の製造法。
  8. 【請求項8】 リン酸モノエステルカルシウム塩をpH
    5.5〜10.5に調整し、一方、架橋剤によってリン蛋
    白質及びホスホモノエストラーゼをコラーゲン又はゼラ
    チンに架橋させ、これをリン酸モノエステルカルシウム
    塩の過飽和溶液に浸漬してハイドロキシアパタイトをコ
    ラーゲン又はゼラチンの表面に析出させるアパタイト被
    覆基材の製造法。
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