JPH08154672A - フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ及びその製造方法 - Google Patents

フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ及びその製造方法

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JPH08154672A
JPH08154672A JP7249421A JP24942195A JPH08154672A JP H08154672 A JPH08154672 A JP H08154672A JP 7249421 A JP7249421 A JP 7249421A JP 24942195 A JP24942195 A JP 24942195A JP H08154672 A JPH08154672 A JP H08154672A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新たな臨床分析及び食品分析法の開発に有用
であり、特に糖尿病の病状の診断及び症状の管理、食品
の品質管理の促進に寄与し得るフルクトシルアミノ酸オ
キシダーゼを提供する。 【解決手段】 フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産
能を有するフサリウム属(Fusarium)の菌をフルクトシ
ルリジン及び/又はフルクトシルNα−Z−リジン含有
培地で培養することにより生産されるFAOD及びフサ
リウム属の菌を培養し、培養物から酵素を分離すること
からなるFAODの生産方法、それを用いるアマドリ化
合物の分析法、該分析法のための試薬及びキット。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なフルクトシ
ルアミノ酸オキシダーゼに関し、さらに詳しくは、フサ
リウム属(Fusarium)の菌由来のフルクトシルアミノ酸
オキシダーゼ、該酵素の生産方法、該酵素を用いたアマ
ドリ化合物の分析法、及び該酵素を含有する試薬及びキ
ットに関する。
【0002】
【従来技術】アマドリ化合物は、タンパク質、ペプチド
及びアミノ酸のようなアミノ基を有する物質と、アルド
ースのような還元性の糖が共存する場合、アミノ基とア
ルデヒド基が非酵素的かつ非可逆的に結合し、アマドリ
転移することにより生成される。アマドリ化合物の生成
速度は、反応性物質の濃度、接触時間、温度などの関数
で表される。従って、その生成量から、それら反応性物
質を含有する物質に関する様々な情報を得ることができ
ると考えられている。アマドリ化合物を含有する物質と
しては、醤油等の食品、及び血液等の体液がある。生体
では、グルコースとアミノ酸が結合したアマドリ化合物
であるフルクトシルアミン誘導体が生成している。例え
ば、血液中のヘモグロビンが糖化されたフルクトシルア
ミン誘導体はグリコヘモグロビン、アルブミンが糖化さ
れた誘導体はグリコアルブミン、血液中のタンパクが糖
化された誘導体はフルクトサミンと呼ばれる。これらの
血中濃度は、過去の一定期間の平均血糖値を反映してお
り、その測定値は、糖尿病の症状の診断及び症状の管理
の重要な指標となり得るために、測定手段の確立は臨床
上、極めて有用である。また、食品中のアマドリ化合物
を定量することにより、その食品の製造後の保存状況や
期間を知ることができ、品質管理に役立つと考えられ
る。このように、アマドリ化合物の定量分析は医学及び
食品を含む広範な分野で有用である。
【0003】従来、アマドリ化合物の定量法としては、
高速液体クロマトグラフィーを利用する方法[Chromato
gr.Sci.10:659(1979)]、ホウ酸を結合させた固体をつ
めたカラムを用いる方法[Clin.Chem.28:2088-2094(198
2)]、電気泳動[Clin.Chem.26:1598-1602(1980)]、抗
原−抗体反応を利用する方法[JJCLA 18: 620(199
3),機器・試薬 16: 33-37(1993)], フルクトサミンの測
定法 [Clin.Chim.Acta 127: 87-95 (1982)], チオバル
ビツール酸を用いて酸化後比色定量する方法[Clin.Chi
m.Acta 112: 197-204 (1981)]などが知られているが、
高価な機器が必要であったり、必ずしも正確で迅速な方
法ではなかった。
【0004】近年、酵素の有する特性(基質、反応、構
造、位置などの特異性)に起因して、選択的に目的物質
を迅速かつ正確に分析することができることから、酵素
反応を利用する方法が臨床分析や食品分析の分野で普及
してきた。既に、アマドリ化合物に酸化還元酵素を作用
させ、その反応における酸素の消費量又は過酸化水素の
発生量を測定することにより、アマドリ化合物を定量す
る分析法が提案されている(例えば、特公平5−339
97号公報、特公平6−65300号公報、特開平2−
195900号公報、特開平3−155780号公報、
特開平4−4874号公報、特開平5−192193号
公報、特開平6−46846号公報)。さらに、糖尿病
の診断のための糖化タンパクの定量法も開示されている
(特開平2−195899号公報、特開平2−1959
00号公報、特開平5−192193号公報、特開平6
−46846号公報)。
【0005】アマドリ化合物の酸化還元酵素による分解
反応は下記の一般式で表すことができる。 R1−CO−CH2−NH−R2 + O2 + H2O→
1−CO−CHO + R2−NH2 + H22 (式中、R1はアルドース残基、R2はアミノ酸、タンパ
ク質又はペプチド残基を表す) 上記の反応を触媒する酵素として以下のものが知られて
いる。 1.フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ:コリネバクテ
リウム(Corynebacterium)属(特公平5−33997
号公報、特公平6−65300号公報)、アスペルギル
ス属(Aspergillus)(特開平3−155780号公
報)。 2.フルクトシルアミンデグリカーゼ:カンジダ属(Ca
ndida)(特開平6−46846号公報)。 3.フルクトシルアミノ酸分解酵素:ペニシリウム属
Penicillium)(特開平4−4874号公報)。 4.ケトアミンオキシダーゼ:コリネバクテリウム属、
フサリウム属、アクレモニウム属又はデブリオマイセス
属(特開平5−192193号公報) 5.アルキルリジナーゼ:J.Biol.Chem.239巻、第 379
0−3796頁 (1964年) 記載の方法で調製。
【0006】
【発明が解決すべき課題】しかしながら、これらの酵素
による方法には、下記の問題点があった。即ち、糖尿病
の診断における指標となる、血中の糖化タンパクは糖化
アルブミン、糖化ヘモグロビン及びフルクトサミンであ
る。糖化アルブミンはタンパク分子中のリジン残基のε
位にグルコースが結合して生成される[J.Biol.Ch
em.261:13542-13545(1986)]。糖化ヘモグロビンは
[J.Biol.Chem.254:3892-3898(1979)]、ヘモグ
ロビンβ鎖のN末端バリンにもグルコースが結合してい
る。従って糖尿病の指標となる糖化タンパクの測定に
は、フルクトシルリジン及びフルクトシルバリンに対す
る特異性の高い酵素を用いる必要があった。しかし、既
存のコリネバクテリウム属由来の酵素はフルクトシルリ
ジンには作用せず、アスペルギルス属由来の酵素は、糖
化タンパク又はその加水分解物に対する作用については
明らかにされていない。他方、特開平5−192193
号公報記載のケトアミンオキシダーゼはフルクトシルバ
リンは分解し得るが、リジン残基に糖が結合している糖
化タンパクを正確に測定することはできない。フルクト
シルアミンデグリガーゼは、ジフルクトシルリジンに高
い活性があるのでリジン残基のε位の糖化物を特異的に
測定することができず、またバリン残基の糖化物を特異
的に測定することもできない。さらにアルキルリジナー
ゼを用いる方法は糖類以外がリジンに結合した物質に対
しても作用し、糖化物に対する特異性が低いという問題
があり、正確な測定が期待できなかった。特開平4−4
874号記載のペニシリウム属由来の酵素はフルクトシ
ルリジンとフルクトシルアラニンに作用する酵素であ
る。このように、従来の酵素は糖化タンパクの正確な定
量には適さず、フルクトシルリジン及びフルクトシルバ
リンに対する特異性が高い酵素の開発が待たれていた。
【0007】一般的に、酵素を用いる分析法が正確かつ
有用となるためには、分析の目的に最適な酵素を選択す
る必要がある。即ち、酵素の基質である被検物質の種
類、測定試料の状態、測定条件など、種々の条件を考慮
して適切な酵素を用いなければ、再現性のある正確な分
析を行う事ができない恐れがある。そのような酵素を選
択するためには、予め様々な酵素について、活性、基質
特異性、温度安定性、pH安定性などが特定されていな
ければならない。従って、より多くのフルクトシルアミ
ノ酸オキシダーゼを生産し、それらの特性を明らかにし
ておくことが望ましい。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アマドリ
化合物、特に糖化タンパクに特異的に作用する新規なフ
ルクトシルアミノ酸オキシダーゼを提供することを目的
として鋭意研究を重ねた結果、フサリウム属(Fusariu
m)の菌をフルクトシルリジン及び/又は、フルクトシ
ルNα−Z−リジンの存在下で培養すると、目的の活性
を有する酵素が誘導されることを見いだし、本発明を完
成するに至った。即ち、本発明は、フサリウム属(Fusa
rium)の菌を、フルクトシルリジン及び/又は、フルク
トシルNα−Z−リジン含有培地で培養することにより
生産されるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを提供す
るものである。
【0009】本発明のフルクトシルアミノ酸オキシダー
ゼ生産菌の培養に用いるフルクトシルリジン及び/又
は、フルクトシルNα−Z−リジン含有培地は、グルコ
ースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを温度100
〜150℃において3〜60分間、オートクレーブ処理
することにより得られるフルクトシルリジン及び/又
は、フルクトシルNα−Z−リジン(以下、FZLと略
称することもある。)を含有する。後述するように、本
発明のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼはフルクトシ
ルリジン及びフルクトシルバリンの両者に活性がある
が、その活性は、前者に対する活性が後者に対する活性
と同等かより高いという特徴を有する。なお、本明細書
中では、本発明のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを
FAODと称することもある。
【0010】本発明の酵素は、フルクトシルアミノ酸オ
キシダーゼ生産能を有するフサリウム属の菌をフルクト
シルリジン及び/又はフルクトシルNα−Z−リジン含
有培地で培養することにより生産することができる。そ
のような菌として、フサリウム・オキシスポルム・f.s
p.リニ(IFO NO.5880)(Fusarium oxysporum f.sp.lin
i)、フサリウム・オキシスポルム・f.sp.バタタス(IFO
NO.4468)(Fusarium oxysporum f.sp.batatas)、フサリ
ウム・オキシスポルム・f.sp.ニベウム(IFO NO.4471)(F
usarium oxysporum f.sp.niveum)、フサリウム・オキシ
スポルム・f.sp.ククメリニウム(IFO NO.6384)(Fusariu
m oxysporum f.sp.cucumerinum)、フサリウム・オキシ
スポルム・f.sp.メロンゲナエ(IFO NO.7706)(Fusarium
oxysporum f.sp.melongenae)、フサリウム・オキシスポ
ルム・f.sp.アピ(IFO NO.9964)(Fusarium oxysporum f.
sp.apii)、フサリウム・オキシスポルム・f.sp.ピニ(IF
O NO.9971)(Fusarium oxysporum f.sp.pini)及びフサリ
ウム・オキシスポルム・f.sp.フラガリエ(IFO NO.3118
0)(Fusarium oxysporum f.sp.fragariae)などの種を挙
げることができる。
【0011】本発明のFAOD類は、一般に、下記の理
化学的特性を有する。 1)酸素の存在下でアマドリ化合物を酸化し、α−ケト
アルデヒド、アミン誘導体及び過酸化水素を生成する反
応を触媒し; 2)安定pHは4.0〜13.0、至適pHは8.5であ
り; 3)安定温度は20〜50℃、至適温度は30〜35℃
であり; 4)スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過法で
測定した場合、分子量は約106,000(106kD
a)である。
【0012】本発明のFAODの生産に用いるフルクト
シルリジン及び/又はFZLは、グルコース0.01〜
50重量%とリジン及び/又はNα−Z−リジン0.0
1〜20重量%とを溶液中で、100〜150℃におい
て3〜60分間オートクレーブ処理する方法で製造され
る。具体的には、全量1000mlの溶液中にグルコー
ス200g、Nα−Z−リジン10gを溶解させ、通常
120℃、20分間オートクレーブ処理することによっ
て製造することができる。また、本発明のFAODの生
産に用いるフルクトシルリジン及び/又はFZL含有培
地(以下、FZL培地と称する)は、上記の方法で得ら
れたフルクトシルリジン及び/又はFZLを通常の培地
に添加するか、例えば、グルコース0.01〜50重量
%、リジン及び/又はNα−Z−リジン0.01〜20
重量%、K2HPO4 0.1重量%、NaH2PO4 0.1
重量%、MgSO4・7H2O 0.05重量%、CaCl
2・2H2O 0.01重量%及び酵母エキス0.2重量%
を含有する混合物(好ましくはpH5.6−6.0)を1
00〜150℃において3〜60分間オートクレーブ処
理することによって得ることができる。
【0013】本発明のFAODの生産に用いる培地は、
炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養源を含有する通
常の合成あるいは天然の培地であってよく、炭素源とし
ては、例えば、グルコース、キシロース、グリセリン
等、窒素源としては、ペプトン、カゼイン消化物、酵母
エキス、等を用いることができる。さらに無機物として
はナトリウム、カリウム、カルシウム、マンガン、マグ
ネシウム、コバルト等、通常の培地に含有されるものを
用いることができる。本発明のFAODは、フルクトシ
ルリジン及び/又はFZLを含有する培地で培養したと
き、最もよく誘導される。好ましい培地の例として、上
記の方法で得られたFZLを単一の窒素源とし、炭素源
としてグルコースを用いるFZL培地(1.0%グルコ
ース、0.5%FZL、1.0%K2HPO4、0.1%N
aH2PO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.01%
CaCl2・2H2O及び0.01%ビタミン混合物)を
挙げることができる。特に好ましい培地は、全量1,0
00ml中にグルコース20g(2%)、FZL 10g
(1%)、K2HPO4 1.0g(0.1%)、NaH2
41.0g(0.1%)、MgSO4・7H20 0.5g
(0.05%)、CaCl2・2H2O 0.1g(0.01
%)及び酵母エキス2.0g(0.2%)を含有する培地
(pH5.6−6.0)である。FZL培地は、通常の培
地にFZLを添加するか、グルコースとNα−Z−リジ
ンとを含有する培地をオートクレーブ処理することによ
って調製することができる。いずれの方法によっても得
られる培地はフルクトシルリジン及び/又はFZLの存
在によって褐色を呈しており、FZL褐変化培地又はG
L(グリケーテッドリジン及び/又はグリケーテッドN
α−Z−リジン)褐変化培地と称する。
【0014】培養は、通常、25〜37℃、好ましくは
28℃で行われる。培地のpHは4.0〜8.0の範囲で
あり、好ましくは5.5〜6.0である。しかしながら、
これらの条件はそれぞれの菌の状態に応じて適宜調製さ
れるものであり上記に限定されない。例えばフサリウム
・オキシスポルム・f.sp.リニをこの条件下、20〜
100時間、好ましくは80時間培養すると、FAOD
が培養培地に蓄積される(図1)。このようにして得ら
れた培養物は、常法に従い、核酸、細胞壁断片等を除去
し、酵素標品を得ることができる。本発明のFAODの
酵素活性は菌体中に蓄積されるので、培養物中の菌体を
破砕し、酵素生産に用いる。細胞の破砕は、機械的手段
又は溶媒を利用した自己消化、凍結、超音波処理、加圧
などのいずれでもよい。酵素の分離精製方法も既知であ
り、硫安などを用いる塩析、エタノール等の有機溶媒に
よる沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマ
トグラフィーやゲルろ過、アフィニティークロマトグラ
フィーなどを組み合わせて精製する。例えば、培養物
を、遠心又は吸引ろ過して菌糸体を集め、洗浄後、0.
1Mトリス−塩酸(pH8.5)に懸濁し、Dino-Millに
よって菌糸体を破砕する。次いで、遠心分離して得た上
清を無細胞抽出液として、硫安分画、フェニル−セファ
ロ−ス疎水クロマトグラフィーで処理することにより精
製する。
【0015】しかしながら、本発明の目的から、FAO
Dは、その精製度にかかわらず、アマドリ化合物の酸化
反応を触媒することができる限り、培養液をはじめとす
る、あらゆる精製段階の酵素含有物及び溶液を包含す
る。また、酵素分子の内、触媒活性に関与する部位のみ
でも、本発明目的を達成することができることから、任
意の、アマドリ化合物酸化活性を有するフラグメントを
も包含するものとする。このようにして得られたFAO
Dは、アマドリ化合物の定量、特に糖尿病の診断のため
の糖化タンパクの定量に有用である。従って、本発明
は、遊離又は保護基を有するアミノ酸の糖化物及び/又
はタンパクの糖化物を含有する培地で、真菌類を培養す
ることによって該真菌類にフルクトシルアミノ酸オキシ
ダーゼを生産させることを特徴とする、フルクトシルア
ミノ酸オキシダーゼの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、フサリウム属の、フルクトシルアミ
ノ酸オキシダーゼを生産することができる菌株をフルク
トシルリジン及び/又はフルクトシルNα−Z−リジン
含有培地で培養し、培養物からフルクトシルアミノ酸オ
キシダーゼを回収することを特徴とする、フルクトシル
アミノ酸オキシダーゼの生産方法を提供するものであ
る。これらの属の菌株が生産するFAODはいずれも本
発明が解決すべき技術的な課題の解決に有用である。本
明細書では、適宜、必要に応じてフサリウム・オキシス
ポルム・f.sp.リニ由来のFAODをFAOD−Lと
呼称することもある。
【0016】以下に本発明のFAODの特性を詳細に説
明する。 1.一般的な誘導特性 本発明のFAODはフルクトシルリジン及び/又はFZ
Lによって誘導される誘導酵素であり、フルクトシルリ
ジン及び/又はFZLを窒素源とし、グルコースを炭素
源とするフルクトシルリジン及び/又はFZL培地で、
フサリウム属のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産
菌を培養することにより生産される。FAODは、グル
コースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを共にオー
トクレーブして得られるGL褐変化培地で誘導される
が、グルコースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを
別々にオートクレイブ処理して調製した培地では誘導さ
れないことから、該酵素はアマドリ化合物に特異的に作
用するものである。
【0017】2.反応特異性及び基質特異性 本発明のFAODは、式: R1−CO−CH2−NH−R2 + O2 + H2O →
1−CO−CHO + R2−NH2 + H22 (式中、R1はアルドース残基、R2はアミノ酸、タンパ
ク質又はペプチド残基を表す)で示される反応における
触媒活性を有する。上記の反応式において、R1が−O
H、−(CH2n−又は−[CH(OH)]n−CH2
H(式中、nは0−6の整数)であり、R2が−CHR3
−[CONHR3mCOOH(式中、R3はα−アミノ
酸側鎖残基、mは1−480の整数を表す)で示される
アマドリ化合物が基質として好ましい。中でも、R3
リジン、ポリリジン、バリン、アスパラギンなどから選
択されるアミノ酸の側鎖残基であり、またnが5〜6、
mが55以下である化合物が好ましい。
【0018】本発明のFAODの各基質に対する活性を
以下の表1に示す。表1 精製されたFAOD−Lの基質特異性
【表1】 *1:検出されず *2:フルクトシル牛血清アルブミン *3:フルクトシルヒト血清アルブミン 表1から、フルクトシルNα−Z−リジン及びフルクト
シルバリンに対して高い特異性を有する。また、本発明
のFAODはフルクトシルポリリジンに対する活性を有
し、さらに糖化タンパクのプロテアーゼ消化物に対する
活性もある。フサリウム属のFAOD生産能力を有する
菌株を下記表2に例示する。表2 FZL褐変化培地で培養したフザリウム属の菌か
ら精製したFAODの基質特異性
【表2】 1):(フルクトシルNα-Z-リジンに対する活性)/
(フルクトシルバリンに対する活性)
【0019】表2に示されているように、本発明のFA
ODは、フルクトシルリジン及びフルクトシルバリンの
両者に対して活性を有しており、このことは該FAOD
が糖化ヘモグロビンの測定にも有用であることを示唆す
るものである。
【0020】3.pH及び温度条件pH条件の検討 至適pHは、通常のFAOD活性測定法(後述の4.力
価の測定法参照)で使用する緩衝液をpH4〜13の各
種緩衝液(0.1Mリン酸カリウム緩衝液(KPB)、
トリス−塩酸緩衝液及びグリシン(Gly)−NaOH緩
衝液)に置き換えて酵素反応を行い検討した。また、前
記の各種緩衝液にFAODを添加し、30℃で10分間
インキュベートした後、 通常の条件(30℃、pH8.
0)で活性を測定する事によりpHによる安定性を検討
した。温度条件の検討 至適温度を検討するために、反応温度を20〜60℃ま
で変化させて酵素活性を測定した。温度安定性について
は、0.1Mトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し
たFAODを20〜60℃の各温度で10分間インキュ
ベートし、その酵素液を用いて通常の条件で残存活性を
測定した。上記方法で測定した結果、本発明のFAOD
の至適pHは、7.5〜9.0、より好ましくは8.5で
あり(図2)、安定なpH域は、4.0〜13.0であっ
た。また、FAOD酵素反応は20〜50℃、好ましく
は25〜40℃、より好ましくは35℃で効率よく進行
した(図3)。安定な温度領域は20〜50℃であっ
た。
【0021】4.力価の測定 酵素の力価測定は下記の方法で行った。 (1)生成する過酸化水素を比色法により測定する方
法。 A.速度法 100mM FZL溶液はあらかじめ得られたFZLを
蒸留水で溶解することによって調製した。45mM 4−
アミノアンチピリン、60ユニット/mlパーオキシダ
ーゼ溶液、及び60mM フェノール溶液それぞれ10
0μlと、0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)
1ml、及び酵素溶液50μlを混合し、全量を蒸留水
で3.0mlとする。30℃で2分間インキュベートし
た後、100mM FZL溶液50μlを添加し、50
5nmにおける吸光度を経時的に測定した。生成するキ
ノン色素の分子吸光係数(5.16×103-1cm-1)か
ら、1分間に生成する過酸化水素のマイクロモルを算出
し、この数字を酵素活性単位(ユニット:U)とする。
【0022】B.終末法 上記A法と同様に処理し、基質添加後、30分間30℃
でインキュベートした後の505nmにおける吸光度を
測定し、あらかじめ標準過酸化水素溶液を用いて作成し
た検量線から生成した過酸化水素量を算出することによ
り、酵素活性を測定する。 (2)酵素反応による酸素吸収を測定する方法 0.1M トリス-塩酸緩衝液(pH8.0)1mlと酵素溶
液50μlを混合し、蒸留水で全量を3.0mlとし、
ランク ブラザーズ社の酸素電極のセルに入れる。30
℃で攪拌し、溶存酸素と温度を平衡化した後、50mM
FZL 100μlを添加し、酸素吸収を記録計で連続
的に計測し、初速度を得る。標準曲線から1分間に吸収
された酸素量を求め、これを酵素単位とする。
【0023】5.酵素の阻害、活性化及び安定化 (1)金属の影響 0.1M トリス-塩酸緩衝液(pH8.0)に、各種金属
イオンを終濃度1mMとなるように添加し、30℃で5
分間インキュベートした後、活性を測定した。結果を下
記の表3に示す。表3 金属イオンのFAOD−L活性への影響
【表3】 表3から明らかなように、本発明のFAODの活性に対
し、銅イオン、亜鉛イオンが阻害的であり、銀イオン及
び水銀イオンは完全に阻害する。
【0024】(2)各種阻害物質の影響 上記(1)の金属イオンの影響に関する試験と同様の方
法で試験した。ただし、パラクロロ安息香酸第二水銀は
終濃度0.1mM、それ以外は1mMとした。結果を表4
に示す。また安定化の検討は、50mM トリス-塩酸緩
衝液(pH8.5)に2mMジチオスレイトール(DTT)
を添加したものに対して精製酵素を一晩透析した後、活
性を測定することにより行った。表4 各種物質のFAOD活性への影響
【表4】 *1:PCMB,パラクロロ安息香酸第二水銀 *2:DTNB,5,5'−ジチオビス(2−ニトロ安
息香酸) *3:検出できず 表4から明らかに、FAOD活性はPCMB、DTN
B、ヒドラジン、フェニルヒドラジンにより、強く阻害
された。これより、酵素反応にはSH基及びカルボニル
基が重要な働きをしていることが予想される。他方、ジ
チオスレイトールによって安定化され、保存に適した溶
媒はジチオスレイトール2mMを添加した50mM トリ
ス−塩酸緩衝液(pH8.5)である。
【0025】6.分子量 SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアク
リルアミドゲル電気泳動)は、デービスの方法に従い、
10%ゲルを用いて、40mAで、3時間泳動し、タン
パク染色は、クマシーブリリアントブルーG−250で
行った。標準タンパクとしてホスホリラーゼB、牛血清
アルブミン、オボアルブミン、カルボニックアンヒドラ
ーゼ、大豆トリプシンインヒビターを同様に泳動し、検
量線を作成して分子量を求めた。その結果、サブユニッ
トの分子量は、約51,000(51kDa)であった
(図4)。スーパーデックス200pgによるゲルろ過
では、分子量は約106,000(106kDa)と求
められ(図5)、本発明のFAODは二量体であること
が示唆された。
【0026】7.等電点 ディスク焦点電気泳動法によって測定した結果、FAO
DはpI=6.8であった。
【0027】8.既知の酵素との比較 既存の菌由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼと、本
発明のFAODとを比較した。表5 種々の微生物由来のフルクトシルアミノ酸オキシ
ダーゼの比較
【表5】 1): ホリウチら(T.Horiuchi et al.) Agric.Biol.Che
m., 53(1), 103-110 (1989) 2): ホリウチら(T.Horiuchi et al.) Agric.Biol.Che
m., 55(2), 333-338 (1991) 3): フルクトシルNα−Z−リジンに対する比活性 4): Nε−D−フルクトシルNα−ホルミルリジンに対
する比活性 表5から、本発明のFAODと他の2種の菌株由来のフ
ルクトシルアミノ酸オキシダーゼとの間に、下記の相違
点が認められる。 (1)分子量の相違:本発明のFAODは他の2種の酵
素よりも明らかに分子量が大きい。 (2)補酵素:本発明のFAODは補酵素として共有結
合的に結合したFADを有するのに対し、他の酵素はい
ずれも非共有結合的に結合したFADを有する。 (3)基質特異性:本発明のFAODは、フルクトシル
バリンよりもフルクトシルリジンに対する特異性が高い
が、コリネバクテリウム属由来の酵素はフルクトシルリ
ジンには作用せず、アスペルギルス属由来の酵素はフル
クトシルリジンに作用するものの、フルクトシルバリン
に対する活性に比べて、その活性が低い。 (4)ミハエリス定数:本発明のFAODの基質フルク
トシルリジンに対する親和性が、他の酵素のそれよりも
高いことを示している。 (5)至適pH、至適温度、及びSH試薬による阻害:
本発明のFAODと他の2酵素との相違を示している。
【0028】既述のごとく、本発明の酵素FAODは、
アマドリ化合物の定量に有用である。従って、本発明
は、アマドリ化合物を含有する試料と、本発明のFAO
Dとを接触させ、酸素の消費量又は過酸化水素の発生量
を測定することを特徴とする、試料中のアマドリ化合物
の分析法を提供するものである。本発明の分析法は、生
体成分中の糖化タンパクの量及び/又は糖化率の測定、
あるいはフルクトサミンの定量に基づいて行われる。F
AODの酵素活性は下記の反応に基づいて測定される。 R1−CO−CH2−NH−R2 + O2 + H2
→R1−CO−CHO + R2−NH2 + H22 (式中、R1はアルドース残基、R2はアミノ酸、タンパ
ク質又はペプチド残基を表す) 被検液としては、アマドリ化合物を含有する任意の試料
溶液を用いることができ、例えば、血液(全血、血漿又
は血清)、尿等の生体由来の試料の外、醤油等の食品が
挙げられる。
【0029】本発明のFAODをアマドリ化合物含有溶
液に、適当な緩衝液中で作用させる。反応溶液のpH、
温度は、上記の条件を満たす範囲、即ち、pH4.0〜
13.0、好ましくは8.5、温度は20〜50℃、好ま
しくは35℃である。緩衝液としてはトリス-塩酸等を
用いる。FAODの使用量は、終点分析法においては通
常、0.1ユニット/ml以上、好ましくは1〜100ユ
ニット/mlである。
【0030】本発明の分析法では、下記のいずれかのア
マドリ化合物の定量法を用いる。 (1)過酸化水素発生量に基づく方法 当該技術分野で既知の過酸化水素の定量法、例えば、発
色法、過酸化水素電極を用いる方法等で測定し、過酸化
水素及びアマドリ化合物の量に関して作成した標準曲線
と比較することにより、試料中のアマドリ化合物を定量
する。具体的には、上記4の力価の測定に準じる。ただ
し、FAOD量は1ユニット/mlとし適当に希釈した
試料を添加し、生成する過酸化水素量を測定する。過酸
化水素の発色系としては、パーオキシダーゼの存在下で
4−アミノアンチピリン、3−メチル−2−ベンゾチア
ゾリノンヒドラゾン等のカップラーとフェノール等の色
原体との酸化縮合により発色する系を用いることができ
る。色原体として、フェノール誘導体、アニリン誘導
体、トルイジン誘導体等があり、例えば、N−エチル−
N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−ト
ルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチル
アニリン、2,4−ジクロロフェノール、N−エチル−
N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5
−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホ
プロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−
N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5
−ジメチルアニリン等が挙げられる。又パーオキシダー
ゼの存在下で酸化発色を示すロイコ型発色試薬も用いる
ことができ、そのようなロイコ型発色試薬は、当業者に
既知であり、o−ジアニシジン、o−トリジン、3,3
−ジアミノベンジジン、3,3,5,5−テトラメチルベ
ンジジン、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)
−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン、
10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7
−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン等が挙げられ
る。 (2)酸素の消費量に基づく方法 反応開始時の酸素量から反応終了時の酸素量を差し引い
た値(酸素消費量)を測定し、酸素消費量とアマドリ化
合物の量に関して作成した標準曲線と比較することによ
り、試料中のアマドリ化合物を定量する。具体的には、
上記4の力価の測定に準じて行う。但し用いるFAOD
量は1ユニット/mlとし、適当に希釈した試料を添加し
消費される酸素量を求める。
【0031】本発明方法は試料溶液をそのまま用いて行
うこともできるが、対象となる糖化タンパクによって
は、あらかじめ糖が結合したリジン及び/又はバリン残
基を遊離させてから行うことが好ましい。そのような目
的には、タンパク質分解酵素を用いる場合(酵素法)
と、塩酸等の化学物質を用いる場合(化学法)がある
が、前者が好ましい。その場合、本発明方法には当業者
に既知である、エンド型及びエキソ型のタンパク質分解
酵素(プロテアーゼ)を用いることができる。エンド型
のプロテアーゼには、例えばトリプシン、α−キモトリ
プシン、スブチリシン、プロティナーゼK、パパイン、
カテプシンB、ペプシン、サーモリシン、プロテアーゼ
XIV、リジルエンドペプチダーゼ、プロレザー、ブロ
メラインF等がある。一方、エキソ型のプロテアーゼに
はアミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等が挙
げられる。酵素処理の方法も既知であり、例えば下記実
施例に記載の方法で行うことができる。
【0032】上記のごとく、本発明のFAODは、糖化
タンパクに含まれるフルクトシルリジンに高い基質特異
性を有するものであることから、血液試料中の糖化タン
パクを測定することを含む、糖尿病の診断などに有用で
ある。また、フルクトシルバリンにも特異性を有するこ
とから、糖化ヘモグロビンの測定にも有用である。な
お、検体として血液試料(全血、血漿又は血清)を用い
る場合、採血した試料をそのまま、あるいは透折等の処
理をした後用いる。さらに、本発明方法に用いるFAO
D、パーオキシダーゼ等の酵素は、溶液状態で用いても
よいが、適当な固体支持体に固定化してもよい。例え
ば、ビーズに固定化した酵素をカラムに充填し、自動化
装置に組み込むことにより、臨床検査など、多数の検体
の日常的な分析を効率的に行うことができる。しかも、
固定化酵素は再使用が可能であることから、経済効率の
点でも好ましい。さらには、酵素と発色色素とを適宜組
み合わせ、臨床分析のみならず、食品分析にも有用なア
マドリ化合物の分析のためのキットを得ることができ
る。
【0033】酵素の固定化は当該技術分野で既知の方法
により行うことができる。例えば、担体結合法、架橋化
法、包括法、複合法等によって行う。担体としては、高
分子ゲル、マイクロカプセル、アガロース、アルギン
酸、カラギーナン、などがある。結合は共有結合、イオ
ン結合、物理吸着法、生化学的親和力を利用し、当業者
既知の方法で行う。固定化酵素を用いる場合、分析はフ
ロー又はバッチ方式のいずれでもよい。上記のごとく、
固定化酵素は、血液試料中の糖化タンパクの日常的な分
析(臨床検査)に特に有用である。臨床検査が糖尿病診
断を目的とする場合、診断の基準としては、結果を糖化
タンパク濃度として表すか、試料中の全タンパク質濃度
に対する糖化タンパク質の濃度の比率(糖化率)又はフ
ルクトサミン値で表す。全タンパク質濃度は、通常の方
法(280nmの吸光度、ブラッドフォード法、Lowry
法、ビュレット法、アルブミンの自然蛍光、ヘモグロビ
ンの吸光度など)で測定することができる。
【0034】本発明はまた、本発明のFAODを含有す
るアマドリ化合物の分析試薬又はキットを提供するもの
である。本発明のアマドリ化合物の定量のための試薬
は、本発明のFAODと好ましくはpH7.5〜8.5、
より好ましくはpH8.0の緩衝液からなる。該FAO
Dが固定化されている場合、固体支持体は高分子ゲルな
どから選択され、好ましくはアルギン酸である。試薬中
のFAODの量は、終点分析を行う場合、試料あたり、
通常1〜100ユニット/ml、緩衝液はトリス-塩酸
(pH8.0)が好ましい。過酸化水素の生成量に基づ
いてアマドリ化合物を定量する場合、発色系としては、
先述の「(1)過酸化水素発生量に基づく方法」に記載
の酸化縮合により発色する系、並びにロイコ型発色試薬
等を用いることができる。本発明のアマドリ化合物の分
析試薬と、適当な発色剤ならびに比較のための色基準あ
るいは標準物質を組み合わせてキットとすることもでき
る。そのようなキットは、予備的な診断、検査に有用で
あると考えられる。上記の分析試薬及びキットは生体成
分中の糖化タンパク量及び/又は糖化率の測定、あるい
は、フルクトサミンを定量するために、用いられるもの
である。以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説
明する。
【0035】
【実施例】実施例1 フサリウム・オキシスポルム・f.sp.・リニ
の培養とFAOD−Lの精製 1)培養 フサリウム・オキシスポルム・f.sp.・リニ(IFO NO.58
80;Fusarium oxysporum f.sp.lini)をFZL 0.5
%、グルコース 1.0%、リン酸二カリウム0.1%、
リン酸一ナトリウム 0.1%、硫酸マグネシウム 0.0
5%、塩化カルシウム 0.01%、イーストエキス 0.
2%を含有した培地(pH6.0)10Lに植菌し、ジャ
ーファーメンターを用いて通気量2L/分、攪拌速度4
00rpmの条件で28℃、80時間攪拌培養した。培
養物は瀘過して集めた。 2)粗酵素液の調製 菌糸体270g(湿重量)を、2mMのDTTを含む、
0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)800mlに懸
濁し、Dino−Millにより菌糸体を破砕した。破砕液を
9,500rpmで20分間遠心分離し、得られた上清
(無細胞抽出液)を粗酵素液として、以下の方法で精製
した。 3)精製ステップ1 :硫安分画 粗酵素液に40%飽和になるように硫酸アンモニウム
(以下、硫安と略す)を加え、遠心分離(4℃,12,
000rpm)して余分なタンパクを除去した。さら
に、上清に硫安を75%飽和になるように添加して沈殿
を回収した。ステップ2 :疎水クロマトグラフィー(バッチ法) ステップ1で得られた沈殿を、2mMのDTTを含有す
る50mM トリス−塩酸緩衝液(pH8.5)(以下、
緩衝液Aと略す)に溶解し、等量の硫安40%を含む緩
衝液Aを添加した。同粗酵素液にブチルトヨパール(bu
tyl-TOYOPEARL)樹脂200mlを加えて、バッ
チ法による吸着を行った。溶出も、緩衝液Aを用いたバ
ッチ法で行い、活性画分は硫安沈殿により濃縮した。ステップ3 :疎水クロマトグラフィー 25%硫安を含む緩衝液Aで平衡化したフェニルトヨパ
ール(phenyl-TOYOPEARL)カラムに濃縮した
活性画分を吸着させ、同緩衝液で洗浄後、25〜0%硫
安の直線勾配で溶出した。回収した活性画分は硫安沈殿
により濃縮し、次のステップに用いた。ステップ4 :疎水クロマトグラフィー(カラム法) 回収した活性画分をブチルトヨパールカラム(40%硫
安を含む緩衝液Aで平衡化)に用いた。濃縮液を吸着さ
せ、同緩衝液で洗浄した。活性画分は40〜0%硫安の
直線勾配で得られた。ステップ5 :イオン交換クロマトグラフィー 次に、DEAE−トヨパール(DEAE-TOYOPE
ARL)カラムクロマトグラフィーを行った(緩衝液A
で平衡化)。洗浄画分にFAOD活性が認められたた
め、これを回収して硫安で濃縮してから、次のステップ
に用いた。ステップ6 :ゲル濾過 最後にセファクリル−300によるゲル瀘過をおこなっ
た(0.1M NaCl,2mM DTTを含む0.1Mトリ
ス−塩酸緩衝液(pH8.5)で平衡化)。これによ
り、70〜100ユニットの酵素標品を得た。
【0036】精製酵素のUV吸収スペクトルを図6に示
す。図6は、本酵素がフラビン酵素であることを示して
いる。またSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム
・ポリアクリルアミド電気泳動)及びスーパーデックス
200pgを用いたゲル濾過により得られた精製酵素の標
品の分子量の決定を行った。SDS−PAGEは、デー
ビスの方法に従い、10%ゲルを用いて、40mAで3
時間泳動し、タンパク染色はクマシーブリリアントブル
ーG−250でおこなった。標準タンパクとしてホスホ
リラーゼB、牛血清アルブミン、オボアルブミン、カル
ボニックアンヒドラーゼ、大豆トリプシンインヒビター
を同様に泳動して検量線を作成した。その結果、精製酵
素のサブユニット分子量は約51,000(51kD
a)であった。一方、ゲルろ過は0.1M NaCl含有
0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)を用いて行っ
た結果、図5に示すように、約106,000(106
kDa)であった。さらに、本実施例で精製したFAO
D−Lの酵素活性、至適pH及び温度、pH及び温度安
定性、金属及び阻害剤の影響等に関しては、前記に示し
た通りである。
【0037】実施例2 糖化ヒト血清アルブミン濃度の
測定 糖化ヒト血清アルブミン(シグマ社)を0.9%塩化ナ
トリウム水溶液で溶解させ、0〜10%の範囲で濃度の
異なる糖化ヒト血清アルブミン溶液を調製した。これら
の溶液を用いて以下の操作を行った。 1)プロテアーゼ処理 糖化アルブミン溶液 60μl 12.5mg/ml プロテアーゼXIV(シグマ社)溶液 60μl この混合液を37℃で30分間インキュベートし、その
後、約90℃で5分間、加熱して反応を停止させた。 2)活性測定 FAOD反応液は以下のようにして調製した。 45mM 4−アミノアンチピリン溶液 30μl 60mM N−エチル−N−(2−ヒドロキシ− 3−スルホプロピル)−m−トルイジン溶液 30μl 60ユニット/ml パーオキシダーゼ溶液 30μl 0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 300μl 6ユニット/ml FAOD−L溶液 50μl 蒸留水で全量を1mlとした。6ユニット/ml FAOD
−L溶液は、実施例1の方法で得たFAOD−Lを6ユ
ニット/mlになるよう、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(p
H8.0)で希釈して調製した。FAOD反応液を30
℃で2分間インキュベートした後、上記の各プロテアー
ゼ処理溶液を100μl加え、30分後の555nmにお
ける吸光度を測定した。この方法で得られる糖化アルブ
ミンの濃度と吸光度との関係を図7に示す。図中の縦軸
は555nmの吸光度(過酸化水素の量に対応)、横軸は
糖化アルブミンの濃度を表す。図は、糖化アルブミンの
濃度と過酸化水素発生量が相関関係にあることを示して
いる。
【0038】実施例3 ヒト血清アルブミンの糖化率の
測定 0.9%塩化ナトリウム水溶液3mlに、糖化ヒト血清ア
ルブミン(シグマ社)150mg、ヒト血清アルブミン
(シグマ社)150mgをそれぞれ溶解した。これらの溶
液を混合することにより、糖化率の異なる溶液を作製
し、自動グリコアルブミン測定装置(京都第一科学)を
用いて検定したところ、その糖化率は、24.6%〜6
1.1%であった。これらの溶液を用いて以下の操作を
行った。 1)プロテアーゼ処理 糖化アルブミン溶液 60μl 12.5mg/ml プロテアーゼXIV(シグマ社)溶液 60μl この溶液を37℃で30分間インキュベートし、その
後、約90℃で5分間加熱して反応を停止させた。 2)活性測定 FAOD反応液は以下のようにして調製した。 45mM 4−アミノアンチピリン溶液 30μl 60mM N−エチル−N−(2−ヒドロキシ− 3−スルホプロピル)−m−トルイジン溶液 30μl 60ユニット/ml パーオキシダーゼ溶液 30μl 0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 300μl 6ユニット/ml FAOD−L溶液 50μl 蒸留水で全量を1mlとした。6ユニット/ml FAOD
−L溶液は、実施例1の方法で得たFAOD−Lを6ユ
ニット/mlになるよう、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(p
H8.0)で希釈して調製した。FAOD反応液を30
℃で2分間インキュベートした後、上記の各プロテアー
ゼ処理溶液を100μl加え、30分後の555nmにお
ける吸光度を測定した。この方法で得られるアルブミン
の糖化率と吸光度との関係を図8に示す。図中の縦軸は
555nmの吸光度(過酸化水素の量に対応)、横軸はア
ルブミンの糖化率を表す。図は、アルブミンの糖化率と
過酸化水素発生量が相関関係にあることを示している。
【0039】実施例4 糖化ヘモグロビン濃度の測定 グリコヘモグロビンコントロール(シグマ社)を蒸留水
で溶解させ、0〜30%の範囲で濃度の異なる糖化ヘモ
グロビン溶液を調製した。これらの溶液を用いて以下の
操作を行った。 1)プロテアーゼ処理 糖化ヘモグロビン溶液 25μl 500ユニット/ml アミノペプチダーゼ溶液 5μl 0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 20μl この混合液を30℃で30分間インキュベートした。そ
の後、10%トリクロロ酢酸を50μl加えて撹拌し、
0℃で30分間静置した後12000rpmで10分間遠
心分離を行った。得られた上清に2M NaOHを約5
0μl加え中性溶液にした。 2)活性測定 FAOD反応液は以下のようにして調製した。 3mM N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4− ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン溶液 30μl 60ユニット/ml パーオキシダーゼ溶液 30μl 0.1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0) 300μl 4ユニット/ml FAOD−L溶液 10μl 蒸留水で全量を1mlとした。4ユニット/ml FAOD
−L溶液は、実施例1の方法で得たFAOD−Lを4ユ
ニット/mlになるよう、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(p
H8.0)で希釈して調製した。FAOD反応液を30
℃で2分間インキュベートした後、上記の各プロテアー
ゼ処理溶液を80μl加え、30分後の727nmにおけ
る吸光度を測定した。この方法で得られる糖化ヘモグロ
ビンの濃度と吸光度との関係を図9に示す。図中の縦軸
は727nmの吸光度(過酸化水素の量に対応)、横軸は
糖化ヘモグロビンの濃度を表す。図は、糖化ヘモグロビ
ンの濃度と過酸化水素発生量が相関関係にあることを示
している。
【0040】
【発明の効果】本発明のFAODは、従来の同種の酵素
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼと異なり、フルクト
シルリジン及びフルクトシルバリンのいずれにも特異的
に作用し、また、前者に対する特異性がより高い。従っ
て、新たな臨床分析及び食品分析法の開発に有用であ
り、糖尿病の診断や食品の品質管理の面で寄与するとこ
ろが大きい。特に、血中の糖化タンパク量及び/又は糖
化率あるいはフルクトサミン量を指標として、糖尿病の
病状の診断に役立つと考えられる。また、本発明のFA
ODを用いるアマドリ化合物の分析試薬及び分析方法に
よって、正確に糖化タンパクを定量することができ、糖
尿病の診断、症状管理に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 培養培地でのFAODの生産量と培養時間の
関係を示すグラフ。
【図2】 FAODの溶媒中での活性と至適pHの関係
を示すグラフ。
【図3】 FAODの溶媒中での活性と至適温度の関係
を示すグラフ。
【図4】 SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム
・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)におけるFAOD
−Lの泳動パターンを示す写真の模写図。
【図5】 スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過
によるFAOD−Lの分子量測定の結果を示すグラフ。
【図6】 FAOD−Lの吸収スペクトル。
【図7】 糖化ヒト血清アルブミンの濃度とFAOD作
用により生成された過酸化水素量との関係を示すグラ
フ。
【図8】 ヒト血清アルブミンの糖化率とFAOD作用
により生成された過酸化水素量との関係を示すグラフ。
【図9】 糖化ヘモグロビンの濃度とFAOD作用によ
り生成された過酸化水素量との関係を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:77) (72)発明者 酒井 敏克 京都府京都市左京区聖護院山王町28番地 (72)発明者 石丸 香 京都府京都市伏見区北端町23番地2号 セ ント・アミュー302号

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ生産
    能を有するフサリウム属(Fusarium)の菌をフルクトシ
    ルリジン含有培地で培養することにより生産されるフル
    クトシルアミノ酸オキシダーゼであって、フルクトシル
    リジン及びフルクトシルバリンに対する活性を有するフ
    ルクトシルアミノ酸オキシダーゼ。
  2. 【請求項2】 フルクトシルリジンに対する活性がフル
    クトシルバリンに対する活性と同等かより高いことを特
    徴とする請求項1記載のフルクトシルアミノ酸オキシダ
    ーゼ。
  3. 【請求項3】 フルクトシルリジン含有培地が、グルコ
    ースとリジン及び/又はNα−Z−リジンを温度100
    〜150℃において3〜60分間オートクレーブ処理す
    ることにより得られる、フルクトシルリジン及び/又は
    フルクトシルNα−Z−リジンを含有するものである請
    求項1記載のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ。
  4. 【請求項4】 フサリウム属の菌が、フサリウム・オキ
    シスポルム・f.sp.リニ(IFO NO.5880)(Fusarium oxyspo
    rum f.sp.lini)、フサリウム・オキシスポルム・f.sp.
    バタタス(IFO NO.4468)(Fusarium oxysporum f.sp.bata
    tas)、フサリウム・オキシスポルム・f.sp.ニベウム(IF
    O NO.4471)(Fusarium oxysporum f.sp.niveum)、フサリ
    ウム・オキシスポルム・f.sp.ククメリニウム(IFO NO.6
    384)(Fusarium oxysporum f.sp.cucumerinum)、フサリ
    ウム・オキシスポルム・f.sp.メロンゲナエ(IFO NO.770
    6)(Fusarium oxysporum f.sp.melongenae)、フサリウム
    ・オキシスポルム・f.sp.アピ(IFO NO.9964)(Fusarium
    oxysporum f.sp.apii)、フサリウム・オキシスポルム・
    f.sp.ピニ(IFO NO.9971)(Fusarium oxysporumf.sp.pin
    i)及びフサリウム・オキシスポルム・f.sp.フラガリエ
    (IFO NO.31180)(Fusarium oxysporum f.sp.fragariae)
    からなる群から選択されるものである請求項1記載のフ
    ルクトシルアミノ酸オキシダーゼ。
  5. 【請求項5】 下記の理化学的特性を有するものである
    請求項1〜4のいずれかに記載のフルクトシルアミノ酸
    オキシダーゼ: 1)酸素の存在下でアマドリ化合物を酸化し、α−ケト
    アルデヒド、アミン誘導体及び過酸化水素を生成する反
    応を触媒し; 2)安定pHは4.0〜13.0、至適pHは8.5であ
    り; 3)安定温度は20〜50℃、至適温度は30〜35℃
    であり; 4)スーパーデックス200pgを用いたゲルろ過法で
    測定した場合、分子量は約106,000(106kD
    a)である。
  6. 【請求項6】 遊離又は保護基を有するアミノ酸の糖化
    物及び/又はタンパクの糖化物を含有する培地で、真菌
    類を培養することによって該真菌類にフルクトシルアミ
    ノ酸オキシダーゼを生産させることを特徴とする、請求
    項1記載のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの生産方
    法。
  7. 【請求項7】 フサリウム属に属し、フルクトシルアミ
    ノ酸オキシダーゼを生産することができる菌株をフルク
    トシルリジン及び/又はフルクトシルNα−Z−リジン
    含有培地に培養し、培養物からフルクトシルアミノ酸オ
    キシダーゼを回収することを特徴とする請求項6記載の
    方法。
  8. 【請求項8】 アマドリ化合物を含有する試料と、請求
    項1記載のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを接触さ
    せ、酸素の消費量又は過酸化水素の発生量を測定するこ
    とを特徴とする、試料中のアマドリ化合物の分析法。
  9. 【請求項9】 試料が生体成分であり、アマドリ化合物
    の分析が、該生体成分中の糖化タンパクの量及び/又は
    糖化率の測定、あるいはフルクトサミンの定量によりな
    されることを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 請求項1記載のフルクトシルアミノ酸
    オキシダーゼを含有するアマドリ化合物の分析試薬又は
    キット。
  11. 【請求項11】 生体成分中の糖化タンパクの量及び/
    又は糖化率の測定、あるいはフルクトサミンの定量のた
    めに用いられることを特徴とする請求項10記載の分析
    試薬又はキット。
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