JPH08163991A - タキサン型ジテルペンの製造方法 - Google Patents

タキサン型ジテルペンの製造方法

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JPH08163991A
JPH08163991A JP31225894A JP31225894A JPH08163991A JP H08163991 A JPH08163991 A JP H08163991A JP 31225894 A JP31225894 A JP 31225894A JP 31225894 A JP31225894 A JP 31225894A JP H08163991 A JPH08163991 A JP H08163991A
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JP
Japan
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acid
group
taxane
type diterpene
carbon atoms
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Application number
JP31225894A
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English (en)
Inventor
Takahito Yukimune
敬人 行宗
Yasuhiro Hara
康弘 原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Publication date
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 タキサン型ジテルペンを産生する植物の組織
または細胞を特定の脂肪酸および/またはその誘導体を
含む培地で培養し、得られる培養物および/または培地
からタキサン型ジテルペンを回収することを特徴とする
タキサン型ジテルペンの製造方法。 【効果】 本発明の方法は、タキサン型ジテルペンの生
産性の向上を可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、卵巣癌、乳癌、肺癌等
の治療薬として有用であるタキソールを含むタキサン型
ジテルペンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】卵巣癌、乳癌、肺癌等の治療薬として有
用であるタキソール(Taxol)は、イチイ科イチイ属植物
であるタイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia NUTT)よ
り単離同定されたタキサン型ジテルペンであり、活性と
関連する複雑なエステルグループを有している。タキソ
ールはタイヘイヨウイチイ植物体中のどの部位にも存在
し、その含量は樹皮で最も高いことが報告されている。
現在、タキソールは天然のまたは栽培された植物体中か
ら採取されているが、イチイ属植物は地上20cmの高さに
生長するのに10年以上かかる生育の遅い植物であり、ま
た樹皮を剥ぐと木が枯れてしまうことから容易に大量の
タキソールを得ることは困難である。もし、タキソール
またはタキソールの前駆物質であるバッカチンIII等の
タキサン型ジテルペンを組織培養を利用して生産するこ
とができれば、樹木を伐採する事なく、大量のタキソー
ルを容易に得ることができるので有利である。
【0003】これまでの植物の培養細胞を利用したタキ
ソール生産方法については、タイヘイヨウイチイ(Taxu
s brevifolia NUTT)培養細胞によるタキソール生産が
米国で特許〔US Patent:5019504〕になっているが、そ
のタキソール生産量は1〜3mg/lと記載されており、工業
的生産には不十分である。また、細胞培養によるタキソ
ールの生産性は不安定であり、選抜で一時的に生産性の
高い細胞が得られても、継代培養してその含量を維持す
ることは難しい〔E.R.M.Wickremesine et al.,World Co
ngress on Cell and Tissue Culture(1992)〕。
【0004】また、タキソール生産法の先行技術として
は、タキソール生合成前駆体であるバッカチンIII(bacc
atin III) からの半合成法がHoltonらの米国特許に開示
されている〔US Patent:5015744〕。植物の組織培養法
を用いれば、バッカチンIII等の半合成原料の生産も可
能であり、本法によるタキソール生産にも有利である。
【0005】かかる状況下、植物組織培養においてタキ
サン型ジテルペンの生産性の向上が望まれるところであ
る。
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、植物
組織培養により、効率よくタキサン型ジテルペンを製造
する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究の結果、タキサン型ジテルペンを
産生する植物の組織および/または細胞を培養するに当
たって、脂肪酸類を培地に添加することによって、顕著
にタキサン型ジテルペンの生産量が増加することを見い
だし、本発明を完成するに至った。
【0007】これまで、特定の二次代謝産物の生産性向
上に脂肪酸類が効果を及ぼすことは全く報告されておら
ず、培地への脂肪酸類の添加によって、タキサン型ジテ
ルペンの生産性が向上することは予想外のことであっ
た。
【0008】すなわち、本発明はタキサン型ジテルペン
を産生する植物の組織および/または細胞を、特定の脂
肪酸類および/または植物性天然油を含む培地で培養
し、得られる培養物およびまたは培地からタキサン型ジ
テルペンを回収することを特徴とするタキサン型ジテル
ペンの製造方法に関する。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
製造方法の対象となるタキサン型ジテルペンとしては、
タキサン骨格を有するジテルペンであれば特に制限はな
く、例えばタキソール、10−デアセチルタキソール、7
−エピタキソ−ル、バッカチンIII、10−デアセチルバ
ッカチンIII、7−エピバッカチンIII、セファロマニ
ン、10−デアセチルセファロマニン、7−エピセファロ
マニン、タキサギフィンおよびその類縁体、タキサン1
aおよびその類縁体、キシロシルセファロマニン、キシ
ロシルタキソール等が挙げられる。
【0010】本発明の組織培養に用いられるタキサン型
ジテルペンを産生する植物としては、例えばセイヨウイ
チイ(Taxus baccata LINN)、イチイ(T. cuspidata SIE
B.etZUCC)、キャラボク(T. cuspidata SIEB.et ZUCC va
r. nana REHDER)、タイヘイヨウイチイ(T. brevifolia
NUTT)、カナダイチイ(T. canadiensis MARSH)、中国イ
チイ(T. chinensis)、T.media等のイチイ属植物を挙げ
ることができる。本発明では、これらの中でもセイヨウ
イチイおよびT.mediaが特に好ましい。
【0011】前記植物組織または細胞の培養は、本発明
により、特定の脂肪酸類を含む培地で培養すること以外
は、従来から知られている方法によって行うことができ
る。
【0012】本発明に使用する脂肪酸類としては、主鎖
の炭素数が10〜22の合成または天然脂肪酸を例示するこ
とができ、これらの中でも、主鎖の炭素数が偶数の脂肪
酸が好ましい。これらの脂肪酸は飽和であってもよい
し、また炭素鎖中に1個または2個以上の二重結合を含
む不飽和脂肪酸であってもよい。また、炭素鎖に結合し
ている水素原子のうち、1個または2個以上が炭素数1
〜6の炭化水素基、水酸基またはアミノ基に置換されて
いてもよい。さらに、当該不飽和脂肪酸に含まれる二重
結合は、シス型、トランス型、また両者の混合でもかま
わないが、シス型二重結合を含む脂肪酸が好ましい。
【0013】上記の脂肪酸の具体的な例としては、カプ
リン酸、デセン酸、ラウリン酸、ドデセン酸、ミリスチ
ン酸、ミリストオレイン酸、パルミチン酸、パルミトオ
レイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リ
ノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、テトラオ
クタデセン酸、アラキン酸、アラキドン酸、エイコサテ
トラエン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサ
ヘキサエン酸などの直鎖脂肪酸、リシノール酸などのヒ
ドロキシ脂肪酸、14-メチルパルミチン酸などの分岐脂
肪酸を挙げることができが、これらの中でもオレイン
酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸が好まし
く、特にα−リノレン酸が好ましい。
【0014】また、置換基のうち、炭素数1〜6の炭化
水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シ
クロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル
基、ヘキシル基等が挙げられる。また、置換基のうち、
アミノ基としては、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジ
メチルアミノ基などを例示することができる。
【0015】また、培地に添加する脂肪酸類は、下記の
一般式(I):
【0016】
【化2】
【0017】{式中、R1−COは前記の脂肪酸に由来
する原子団を表し;R2は、OR3(ここでR3は、炭素
数1〜6のアルキル基または炭水化物残基を表す)、O
M(ここでMはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原
子またはNH 4を表す)、またはNR4a4b(ここで、
4a、R4bは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6
のアルキル基、アミノ酸残基を表す)を表す。}で示さ
れる脂肪酸誘導体であってもかまわない。
【0018】前記一般式(I)において、R3、R4a
4bで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例
えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピ
ル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t
−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペ
ンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキ
シル基等が挙げられる。R2がOMである場合におい
て、Mで表されるアルカリ金属原子又はアルカリ土類金
属原子としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシ
ウムが挙げられる。R2がNR4a4bである場合におい
て、R4a、R4bで表されるアミノ酸残基としては、例え
ばグリシル基、ロイシル基、グルタミル基、リジル基、
フェニルアラニル基、イソロイシル基、チロシル基、ト
リプトフィル基が挙げられる。R2がOR3である場合に
おいて、R3 で表される炭水化物残基としては、例えば
グルコピラノシル基が挙げられる。
【0019】本発明に使用される脂肪酸および/または
その誘導体は、0.01〜1000μMの濃度範囲で培地に添加
することが好ましく、さらに0.1〜500μMの濃度範囲で
添加することが、タキサン型ジテルペンの生産性向上に
対する効果の点で特に好ましい(ここで示した濃度範囲
は、2種以上の脂肪酸および/または誘導体を組み合わ
せて使用する際には、合計の添加濃度を表す)。
【0020】また、本発明では、前記の脂肪酸類とし
て、脂肪酸を含む天然油またはその酵素加水分解産物を
使用することもできる。ここで、天然油としては、ナタ
ネ油、ダイズ油、アマニ油、ベニバナ油などの植物油が
例示され、酵素加水分解物としては、上記植物油のリパ
ーゼ分解物などを例示することができる。また、当該天
然油またはその酵素加水分解物の培地への添加濃度とし
ては、1〜1000mg/lが好ましい。
【0021】さらに、脂肪酸類を系外から添加するほか
に、培地に脂質分解酵素を添加することによって、当該
組織および/または細胞を構成するグリセロ脂質などの
脂質を一部加水分解し、脂肪酸を培地に遊離させること
も可能である。ここで、脂質分解酵素としては、リパー
ゼ、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリ
パーゼBが例示され、特に酸性領域に至適pHを有する
ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパー
ゼBが好ましい。また、本発明では、上記酵素の添加濃
度は、培地容量当たり0.1〜100mg/lが好ましい。
【0022】本発明では、以上の条件を満たす脂肪酸ま
たはその誘導体、天然油、脂質分解酵素を単独で使用し
てもよいし、また、それぞれを任意に組み合わせて使用
してもよい。
【0023】これらの脂肪酸またはその誘導体、天然油
あるいは脂質分解酵素は、培養初期から培地に添加して
もよいし、培養途中に添加してもよい。また、培養中任
意の時期に一括して添加してもよいし、複数回に分けて
添加してもよい。
【0024】また、上記の脂肪酸類および天然油の培地
への添加方法としては、エタノールなどの有機溶媒に溶
解させて添加する方法、オクチル−β−D−グルコシド
などの界面活性剤とともに添加する方法、あるいは培地
にそのまま添加した後、超音波処理などによってミセル
化する方法などが例示できる。また、培地にそのまま添
加し、油水分離した状態で培養を実施することも可能で
ある。
【0025】本発明の組織培養に使用される培地として
は、従来から知られている植物の組織培養に用いられる
培地、例えばムラシゲ・スクーグ(1962年)〔Murashige
& Skoog〕の培地、リンスマイヤー・スクーグ(1965年)
〔Linsmaier Skoog〕の培地、ウッディー・プラント・
メディウム(1981年) 〔Woody Plant〕の培地、ガンボル
グ〔Gamborg〕のB−5培地、三井のM−9培地等が挙
げられる。
【0026】これら培地に植物ホルモンを添加し、更に
必要に応じて炭素源、無機成分、ビタミン類、アミノ酸
等を添加することもできる。
【0027】炭素源としては、グルコース、フルクトー
スなどの単糖類、シュクロース、マルトースなどの二糖
類、またはデンプンなどの多糖類を使用することができ
る。
【0028】無機成分としては、例えば硝酸塩および/
またはアンモニウム塩などの窒素源、リン、カリウム、
カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マンガン、亜
鉛、ホウ素、銅、モリブデン、塩素、ナトリウム、ヨウ
素、コバルト等があげられ、これらの成分は例えば硝酸
カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、塩化カリ
ウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリウム、
塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、
硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、ホ
ウ酸、硫酸銅、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブ
デン、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等の化合物として
添加できる。
【0029】植物ホルモンとしては、例えばインドール
酢酸(IAA)、ナフタレン酢酸(NAA)、2,4-ジクロロフェノ
キシ酢酸(2,4-D)等のオーキシン類、カイネチン、ゼア
チン、ジヒドロゼアチン等のサイトカイニン類が用いら
れる。
【0030】ビタミン類としては、例えばビオチン、チ
アミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB
6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が用
いられる。
【0031】アミノ酸類としては、例えばグリシン、フ
ェニルアラニン、ロイシン、グルタミン、システイン等
を添加できる。
【0032】一般に前記の各成分は、炭素源が約1〜約3
0g/l、無機成分が約0.1μM〜100mM、植物ホルモン類が
約0.01〜約10μM、ビタミン類およびアミノ酸類がそれ
ぞれ約0.1〜約100mg/lの濃度で用いられる。
【0033】なお、本発明は液体培地および寒天やゲラ
ンガム等を通常0.1〜1%含有する固形培地のいずれにも
使用できるが、液体培地を用いる方がより効果的であ
る。
【0034】本発明の組織培養においては、上記植物の
根、生長点、葉、茎、種子、花粉、葯、がく等の組織片
または細胞、あるいはこれらを上記培地あるいは他の従
来の培地によって組織培養して得られる培養細胞を使用
することができる。
【0035】また本発明は、Agrobacterium tumefacien
s或いはAgrobacterium rhizogenesを植物組織に感染す
ることによって得られる腫瘍細胞および/または毛状根
にも使用できる。
【0036】本発明の効果を高める方法として、特願平
6−36156、6−104211、6−10421
2、6−104213号明細書にタキサン系化合物の生
産促進物質として開示されている、ジャスモン酸及びそ
の誘導体の存在下に培養する方法との併用が挙げられ
る。ジャスモン酸類としては、例えば、一般式(II) :
【0037】
【化3】
【0038】[式中、R0 は次式: −(CH2n −CO−R10 {式中、R10は水酸基、OM’(ここで、M’はアルカ
リ金属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表
す。)、NR11a 11b (ここで、R11a, R11b は、
それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭
素数1〜6のアルキル基又はアミノ酸残基を表す。)、
OR12(ここで、R12は、炭素数1〜6のアルキル基又
は炭水化物残基を表す。)又は炭素数1〜6のアルキル
基を表し、nは1〜7の整数を表す。}で示される基を
表し;R1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びR1fは、それ
ぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又
は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;R5、R6
7、R8及びR9aは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜
6のアルキル基を表し;C1 −C2 −C3 −C4 −C5
−C6 からなる側鎖は、1個又は2個以上の二重結合を
含んでいてもよく;R9bは、水酸基又は−O−炭水化物
残基を表し;前記5員環は隣接する環員炭素原子間で二
重結合を形成してもよい。]で示される化合物、または
一般式(III):
【0039】
【化4】
【0040】[式中、R0 は次式: −(CH2n −CO−R10 {式中、R10は水酸基、OM’(ここで、M’はアルカ
リ金属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表
す。)、NR11a 11b (ここで、R11a, R11b は、
それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭
素数1〜6のアルキル基又はアミノ酸残基を表す。)、
OR12(ここで、R12は、炭素数1〜6のアルキル基又
は炭水化物残基を表す。)又は炭素数1〜6のアルキル
基を表し、nは1〜7の整数を表す。}で示される基を
表し;R1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びR1fは、それ
ぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又
は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;R5、R6
7、R8及びR9は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜
6のアルキル基を表し;C1 −C2 −C3 −C4 −C5
−C6 からなる側鎖は、1個又は2個以上の二重結合を
含んでいてもよく;前記5員環は隣接する環員炭素原子
間で二重結合を形成してもよい。]で示される化合物、
又は一般式 (IV) :
【0041】
【化5】
【0042】[式中、R0 は次式: −(CH2n −CO−R10 {式中、R10は水酸基、OM’(ここで、M’はアルカ
リ金属原子、アルカリ土類金属原子又はNH4 を表
す。)、NR11a 11b (ここで、R11a, R11b は、
それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭
素数1〜6のアルキル基又はアミノ酸残基を表す。)、
OR12(ここで、R12は、炭素数1〜6のアルキル基又
は炭水化物残基を表す。)又は炭素数1〜6のアルキル
基を表し、nは1〜7の整数を表す。}で示される基を
表し;R1a、R1b、R1c、R1d、R1e及びR1fは、それ
ぞれ水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又
は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し;R5、R6
7、R8及びR9は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜
6のアルキル基を表し;C1 −C2 −C3 −C4 −C5
−C6 からなる側鎖は、1個又は2個以上の二重結合を
含んでいてもよく;前記5員環は隣接する環員炭素原子
間で二重結合を形成してもよい。]で示される化合物等
が挙げられる。
【0043】前記一般式(II)、(III)及び (IV) に
おいて、R0、R1a、R1b、R1c、R 1d、R1e、R1f
5、R6、R7、R8、R9、R9a、R10、R11a
11b、又はR12で表される炭素数1〜6のアルキル基
としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、se
c-ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペン
チル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシ
ル基、イソヘキシル基等が挙げられる。前記一般式(I
I)、(III)及び (IV) において、R1a、R1b、R1c
1d、R1e又はR1fで表される炭素数1〜6のアルコキ
シ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プ
ロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソ
ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペ
ンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチル
オキシ基、t−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ
基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0044】R10がOM’である場合において、M’で
表されるアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子と
しては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムが挙
げられる。R10がNR11a 11b である場合において、
11a, R11b で表される炭素数1〜6のアシル基は、
直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、例えばホルミル基、ア
セチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、
ヘキサノイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0045】R10がNR11a 11b である場合におい
て、R11a, R11bで表されるアミノ酸残基としては、例
えばイソロイシル基、チロシル基、トリプトフィル基が
挙げられる。R10がOR12である場合において、R12
表される炭水化物残基としては、例えばグルコピラノシ
ル基が挙げられる。前記一般式(II)において、R6b
−O−炭水化物残基である場合における炭水化物残基と
しては、例えばグルコピラノシル基が挙げられる。
【0046】前記一般式(II)、(III)又は (IV) で示
される化合物の好ましいものとしては、R0が−(CH2
n COOH又は−(CH2n COOCH3であり、
0、R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R5
6、R7、R8、R9a、R9が、それぞれ水素原子を表す
か、或いはC1とC2、C3とC4、又はC3とC4の間で二
重結合を含んでいる化合物が挙げられる。
【0047】前記一般式(II) で示されるジャスモン酸
類の好ましい具体例としては、例えば、以下に示す化合
物が挙げられる。 (化合物A)
【0048】
【化6】
【0049】(化合物B)
【0050】
【化7】
【0051】(化合物C)
【0052】
【化8】
【0053】(化合物D)
【0054】
【化9】
【0055】前記一般式 (III)で示されるジャスモン酸
類の好ましい具体例としては、例えば、以下に示す化合
物が挙げられる。 (化合物E)
【0056】
【化10】
【0057】(化合物F)
【0058】
【化11】
【0059】(化合物G)
【0060】
【化12】
【0061】(化合物H)
【0062】
【化13】
【0063】前記一般式(IV) で示されるジャスモン酸
類の好ましい具体例としては、例えば、以下に示す化合
物が挙げられる。 (化合物I) R0 :−(CH2n COOH又は−(CH2n CO
OCH3 (n=1〜3) R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R5,R6
7,R8,R9:H C3 −C4 間:二重結合 (化合物J) R0 :−CH2 COOH R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f,R5,R6
7,R8,R9:H また、前記一般式(IV) で示される化合物は、5員環
が、更に水酸基で置換されていてもよく、隣接する環員
炭素原子間で二重結合を形成してもよい。
【0064】5員環が、更に水酸基で置換された化合
物、又は隣接する環員炭素原子間で二重結合が形成され
た化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物
が挙げられる。 (化合物K)
【0065】
【化14】
【0066】(化合物L)
【0067】
【化15】
【0068】(化合物M)
【0069】
【化16】
【0070】(化合物N)
【0071】
【化17】
【0072】前記ジャスモン酸類には種々の立体異性体
(シストランス異性体、光学異性体)が存在するが、そ
れぞれの異性体を単独で用いても、混合物の形で用いて
もよい。以上のジャスモン酸類は、全てタキサン型ジテ
ルペンの生産性向上に効果を有するが、中でも前記一般
式(II)、(III) 、及び(IV)においてR0 が−CH2
OOH又は−CH2 COOCH3 であり、R1a、R1b
1c、R1d、R1e、R1f、R5、R6、R7、R8、R9
9aが水素原子であり、C3とC4の間で二重結合を形成
している化合物であるジャスモン酸又はジャスモン酸メ
チル、ツベロン酸又はツベロン酸メチル、及びククルビ
ン酸又はククルビン酸メチルが生産性向上に対する効果
の大きさの点から特に好ましい。
【0073】これらジャスモン酸類は、合成により、又
は植物からの抽出等により調製される(H. Yamane et a
l., Agric. Biol. Chem., 44, 2857-2864(1980) )。一
方、ジャスモン酸類は、生長促進や組織の成熟、病害抵
抗性の発現にかかわる諸反応を誘起する植物ホルモン様
物質として、種々の植物が自ら生産することが、吉原照
彦著、植物細胞工学第2巻第4号523〜531頁(1990年)
に記載されている。
【0074】従って、前記ジャスモン酸類は、培養系外
から添加するほかに、使用する培養細胞又は培養組織に
自ら生産させることもできる。この内在性ジャスモン酸
類の培養細胞又は培養組織による生産を促進する方法と
しては、微生物の培養物又はその抽出物、熱処理物或い
は植物抽出物などの培地への添加を例示することがで
き、具体的にはM.J.Mueller et al., Proc. Natl. Aca
d. Sci. U.S.A.,90(16),7490-7494 (1993) に記載の、
カビ細胞壁画分を添加する方法を例示することができ
る。更に、使用する培養細胞又は培養組織に、機械的に
又は紫外線、熱などによって部分的に傷害を与えること
によっても、内在性ジャスモン酸の生産量を高めること
が可能であり、具体的には、R.A.Cleeman et al., Pro
c. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,89(11), 4938-4941 (198
9) に記載の、機械的に一部の細胞を破壊する方法を例
示することができる。
【0075】ジャスモン酸類は、水に対して難溶性のた
め、通常エタノール、メタノール等の有機溶媒、又は界
面活性剤等に溶解した後、培地に添加する。また、遊離
形のジャスモン酸類は、そのまま用いてもよいし、アル
カリで中和して塩にして用いてもよい。ジャスモン酸類
は、5員環カルボニル基のα位が、酸、アルカリ、熱に
よってエピマー化を起こすため、不安定なシス型より安
定なトランス型になりやすい。天然又は合成ジャスモン
酸を用いた平衡実験では、トランス型が90%、シス型が
10%の状態で存在する。一般にはシス型の方が活性が強
いとされているが、本発明で使用することができるジャ
スモン酸類は、前記式(II)(III)(IV)で示される全ての
立体異性体化合物及びその混合物を包含する。
【0076】ジャスモン酸類は、培地における濃度が0.
01〜1000μMとすることが必要であり、この中でも特に
ジャスモン酸類の濃度を0.1〜500μMの範囲に調整する
ことが好ましい。ジャスモン酸類は、培養細胞の増殖期
ないし定常期に添加することが効果的であり、この中で
も特に増殖期から定常期に移行する時期にジャスモン酸
類を添加することが好ましい。また、内在性ジャスモン
酸類の生産量を高めるための処理の時期についてもこれ
と同様である。例えば、21日おきに細胞を移植している
場合には7〜16日目がジャスモン酸類の添加又は内在性
ジャスモン酸類の生産量を高めるための処理の適期にあ
たる。また、ジャスモン酸類の添加及び内在性ジャスモ
ン酸類の生産量を高める処理は、一度に行ってもよい
し、複数回に分けて行ってもよい。
【0077】また本発明は、特願平6−301179号
明細書に開示されているコロナチン類、コロナチン類産
生菌、それら菌類の培養液、またはそれら菌類の培養抽
出物の存在下に培養を行う方法とも併用することができ
る。ここで、コロナチン類化合物としては、下記の一般
式(V):
【0078】
【化18】 または一般式(VI) :
【0079】
【化19】
【0080】[式中R13は、水酸基、OR14(ここでR
14は、炭素数1〜6のアルキル基または炭水化物残基を
表す。)、OM1 (ここでM1 は、アルカリ金属原子、
アルカリ土類金属原子またはNH4を表す。)、または
NR15a 15b (ここで、R15a15b は、それぞれ独
立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜
6のアルキル基、アミノ酸残基、または一般式(VII):
【化20】 (ここで、R16は、水素原子、水酸基、炭素数1〜6の
アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または、次
式 −CO−R19 (式中R19は、水酸基、OM2 (ここでM2 は、アルカ
リ金属原子、アルカリ土類金属原子またはNH4を表
す。)、NR20a 20b (ここで、R20a、R20b は、
それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアシル基、
炭素数1〜6のアルキル基、アミノ酸残基を表す。)、
またはOR21(ここでR21は、炭素数1〜6のアルキル
基、または炭水化物残基を表す。)を表す。)で示され
る基を表し;R17a、R17b、R18a、およびR18b は、
それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜6のア
ルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表
す。)で示される基を表す。)を表し;R22a、R22b
23a、R23b、R24、R25、R26a、R26b、R27a、R
27b、R28 a、R28b、R29、およびR31は、水素原子、
水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜
6のアルコキシ基を表し;R30は、水素原子、炭素数1
〜6のアルキル基、または炭水化物残基を表し;式中の
五員環および六員環は、隣接する炭素原子間で二重結合
を形成してもよい。]で示される化合物等が挙げられ
る。
【0081】前記一般式(V)、(VI)、(VII) において、
14、R15a、R15b、R16、R17a、R17b、R18a、R
18b、R20a、R20b、R21、R22a、R22b、R23a、R
23b、R24、R25、R26a、R26b、R27a、R27b
28a、R28b、R29、R30、R31で表される炭素数1〜
6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル
基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、
イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペ
ンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキ
シル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0082】前記一般式(V)、(VI)、(VII) において、
16、R17a、R17b、R18a、R18b、R22a、R22b、R
23a、R23b、R24、R25、R26a、R26b、R27a
27b、R 28a、R28b、R29、またはR31で表される炭
素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ
基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ
基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ
基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチル
オキシ基、t-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、
イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0083】R13またはR19がOM1 またはOM2 であ
る場合において、M1 またはM2 で表されるアルカリ金
属原子又はアルカリ土類金属原子としては、例えばナト
リウム、カリウム、カルシウム等が挙げられる。
【0084】R13またはR19が、NR15a 15b または
NR20a 20b である場合において、R15a、R15b、R
20a、またはR20b で表される炭素数1〜6のアシル基
は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、例えばホルミル
基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリ
ル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基等が挙げられ
る。
【0085】R13またはR19がNR15a 15b またはN
20a 20b である場合において、R15a、R15b、R
20a、R20b で表されるアミノ酸残基としては、例えば
イソロイシル基、バリル基、グルタミル基、リジル基を
例示することができる。
【0086】R13またはR19がOR14またはOR21であ
る場合において、R14、R21で表される炭水化物残基と
しては、グルコピラノシル基が挙げられる。
【0087】前記一般式(VI) においてR30が炭水化物
残基である場合としては、例えばグルコピラノシル基が
挙げられる。
【0088】コロナチン類の好ましい化合物としては、
コロナチン(式VIII) 、あるいはコロナファシック酸
(式IX) が挙げられる。なかでもコロナチンは、式 (V)
のなかでも活性がもっとも強く、その構造は、コロナフ
ァッシック酸と2−エチル−1−アミノシクロプロパン
−1−カルボン酸のエチル誘導体とがアミド結合したも
のである。
【0089】
【化21】
【0090】
【化22】
【0091】本発明で使用されるコロナチン類には種々
の立体異性体(シストランス異性体、光学異性体)が存
在するが、それぞれの異性体を単独で用いても、混合物
の形で用いてもよい。
【0092】コロナチン類、コロナチン類産生菌、それ
ら菌類の培養液、またはそれら菌類の培養抽出物を培地
に添加する場合は、コロナチン類の培地における濃度は
通常0.001〜1000μMとすることが必要であり、特に0.0
1〜100μMの範囲に調整することが本発明の方法にとっ
て好ましい。
【0093】また、本発明は、特願平6−201150
号明細書に記載されている、重金属を含む化合物類、重
金属イオンを含む錯イオン類、及び重金属イオンから選
ばれた少なくとも一つの存在下に培養する方法との併用
が挙げられる。ここで、重金属としては、銀に代表され
る銅族、コバルトに代表的される鉄族を使用することが
好ましく、当該重金属を含む化合物、当該重金属を含む
錯イオン類、又は当該金属イオンの形で使用することが
好ましい。銀を含む化合物としては、具体的には硝酸
銀、硫酸銀などの銀化合物および/または[Ag(S2O3)2]
3-、[Ag(S2O3)3]5-などの銀を含む錯イオンが挙げられ
る。また、コバルトを含む化合物としては、具体的には
塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルトなどのコバ
ルト化合物が挙げられる。本発明において、これらの銀
ないしコバルトを含む化合物を使用する際の培地中の濃
度としては、10-6M〜10-1Mの範囲を例示することができ
る。
【0094】また、本発明は、特願平6−201151
号明細書に記載されている、アミン類の存在下に培養す
る方法との併用が挙げられる。ここでアミン類として
は、ポリアミン類、具体的にはプトレッシン、カダベリ
ン、スペルミジン、スペルミン、エチレンジアミン、N,
N-ジエチル-1,3- プロパンジアミン、ジエチレントリア
ミン、及びこれらの化合物の塩より成る群から選ばれる
少なくとも一種以上を使用することが好ましい。
【0095】また本発明は、特願平6−146826号
明細書に開示されている、抗エチレン剤の存在下に培養
を行う方法とも併用することができる。ここで、抗エチ
レン剤としては、アミノオキシン酢酸、アセチルサリチ
ル酸、リゾビトキシン、アミノエトキシビニルグリシ
ン、メトキシビニルグリシン、α−アミノイソ酪酸また
は当該化合物類の塩、エステル、もしくはアミノ酸或い
は炭水化物誘導体などの、植物細胞中におけるS-アデ
ノシルメチオニンから1-アミノシクロプロパン-1-カル
ボン酸への変換を触媒する酵素の活性を阻害する化合物
群、没食子酸プロピルまたは当該化合物の塩、エステ
ル、もしくはアミノ酸或いは炭水化物誘導体などの、植
物細胞中における1-アミノシクロプロパン-1-カルボン
酸からエチレンへの変換を触媒する酵素の活性を阻害す
る化合物群、および1,5ーシクロオクタジエン、イソ
チアン酸化合物類、または当該化合物類の塩、エステ
ル、もしくはアミノ酸或いは炭水化物誘導体などの、培
養物内に貯留するか、または該培養物を含む培養器内の
気相中或いは培地中に存在するエチレンを除去する物質
群を例示することができる。
【0096】また本発明は、特願平6−146826号
明細書に開示されている、培養器内の気相中の酸素濃度
を培養初期より大気中の酸素濃度未満の条件下に制御し
て培養を行うか、或いは組織及び/又は細胞と接する流
動性の培地中の溶存酸素濃度を培養初期よりその温度に
於ける飽和溶存酸素濃度未満である条件下に制御して培
養する方法とも併用することができる。
【0097】ここで、培養初期とは、培養開始時ないし
培養開始後7日目をいい、培養器内の気相中の酸素濃
度、又は組織及び/又は細胞と接する流動性の培地中の
溶存酸素濃度の制御は、培養開始時から行うことが好ま
しい。また、制御の期間としては、培養全期間を通して
該条件に制御してもよいし、培養全期間中の一部期間の
みを制御してもよく、特に限定するものではないが、全
培養期間中の、少なくとも3日間制御することが好まし
い。
【0098】培養器内の気相中の酸素濃度は、4ないし
15%に制御することが必要であり、特に6ないし12%に
制御することが好ましい。また、流動性の培地中の溶存
酸素濃度は、その温度における飽和溶存酸素濃度値の1
ないし75%に制御することが必要であり、特に10ないし
75%に制御することが好ましい。
【0099】さらに本発明は、特願平5−284893
に開示されている、細胞を比重の違いにより複数の層に
分け、少なくとも1つの層に含まれる細胞を培養する方
法とも併用することができる。
【0100】また、本発明は、特願平5−284893
号、同6−104213号明細書に開示されている、細
胞を比重の違いにより複数の層に分け、少なくとも1つ
の層に含まれる細胞を培養する方法と併用することもで
きる。細胞を比重によって分離する方法としては、一般
に遠心分離用媒体を用いて密度勾配を作成し、細胞を重
層した後、遠心分離する方法が知られている。
【0101】遠心分離用媒体としては、Ficoll、Percol
l (共にPharmacia LKB Biotechnology 社製)、ショ
糖、塩化セシウム等が用いられる。密度勾配を形成する
層の数に特に制限はない。各層の比重差は、特に限定さ
れるものではなく、また各比重差は同じであっても異な
っていてもよい。従って、この密度勾配の定義には勾配
が連続的に変化する場合(密度勾配を形成する層の数が
無限大、各層の比重差が0に近い状態)も含む。
【0102】このようにして密度勾配を形成し、細胞を
重層、遠心分離することにより細胞を比重の違いにより
複数の層に分けることができる。作成する層の比重は、
通常1.00〜1.20g/ml、好ましくは1.03〜1.11g/mlの範囲
である。培養の対象となる層としては、少なくとも1つ
の層を選択し、また全ての層を選択して培養してもよ
い。
【0103】複数の層を選択して培養する場合、これら
の複数の層は、それぞれ個別に培養することもできる
が、選択した複数の層のうちの2層以上の層を混合して
培養することもできる。タキサン型ジテルペン産生能の
高い培養細胞は、通常、比重が1.07以下の層に含まれる
細胞を培養して得られるが、培養する細胞や培養の条件
により変動する場合があり、必ずしもこの範囲に限定さ
れるものではない。また、単に比重の違いによって分画
しただけでは、比重の高い層の細胞の方がタキサン型ジ
テルペン含量が高くなる傾向が認められる。従って、よ
り確実にタキサン型ジテルペン高産生培養細胞を取得す
るためには、分画された全ての層の細胞を一定期間培養
した後、各層の細胞に含まれるタキサン型ジテルペン濃
度を測定し、それらの中からタキサン型ジテルペン高産
生細胞を含む層を選択することが望ましい。
【0104】また、例えば1.07g/mlのように、ある1つ
の特定の比重の遠心分離媒体を作成し、前述の方法で遠
心分離することによっても、培養細胞を比重の違いによ
り複数の層に分けることができる。
【0105】さらに本発明は、特願平6−301178
号明細書に開示されている、高密度培養のために流加培
養または潅流培養を実施する方法、特願平6−2976
10号明細書に開示されている連続培養方法および特願
平6−304089号に開示されている通気ガス中の炭
酸ガス濃度を高めて培養する方法とも組み合わせること
が可能である。
【0106】また、本発明にかかる方法と、上述の先願
特許に記載の方法を任意に組み合わせることも可能であ
る。
【0107】以上のようにして得られた培養組織または
培養細胞から、メタノール等の有機溶媒による抽出によ
ってタキサン型ジテルペンをを分離することができる。
また、培地中に適当な吸着剤や有機溶媒を共存させ、培
養中に連続的にタキサン型ジテルペンを回収することも
できる。
【0108】本発明の組織培養の好ましい一例として
は、次の方法が挙げられる。
【0109】先ずイチイ属に属する植物の植物体、例え
ば根、生長点、葉、茎、種子などから採取される植物片
を殺菌処理後、ゲランガムで固めたウッディー・プラン
ト・メディウムの固体培地上に置床し、10〜35℃で14〜
60日程度経過させて組織片の一部をカルス化させる。こ
のようにして得られたカルスを継代培養すると生育速度
が漸次高まり安定化したカルスが得られる。ここで、安
定化したカルスとは、培養中にカルスの一部がシュート
や根に分化しないでカルスの状態を保持する性質をもち
細胞の生育速度が均質であるものをいう。
【0110】この安定化したカルスを増殖に適した液体
培地、例えばウッディー・プラント液体培地に移して増
殖させる。液体培地においてさらに生育速度が高められ
る。本発明では、この安定化したカルスまたは該カルス
を構成する細胞は、前記の脂肪酸および/または脂肪酸
誘導体の存在下で培養される。
【0111】本発明の組織培養における培養温度として
は、通常は約10〜約35℃、特に約23〜28℃が増殖速度が
大きいので好適である。また、培養期間としては、14〜
42日間が好適である。
【0112】本発明の培養方法において液体培地を用い
た場合には、培養終了後に培養細胞をデカンテーション
または濾過等の方法によって培地から分離し、培養細胞
および/または培地から目的とする代謝産物を有機溶媒
による抽出等の方法によって分離することができる。
【0113】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明を更
に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例
に限定されるものではない。
【0114】[実施例1]ナフタレン酢酸を10-5Mの濃
度になるように添加したウッディー・プラント固体培地
(ゲランガム0.25重量%)に、前もって2%アンチホル
ミン溶液または70%エタノール溶液等で滅菌処理したセ
イヨウイチイ(Taxus baccata LINN)の茎の一部を置床
し、25℃で暗所にて静置培養してカルスを得た。次にこ
のカルス1g(新鮮重)を、ウッディー・プラント液体
培地20ml入りの三角フラスコに移し、ロータリーシェー
カー上で旋回培養(振幅25mm、100rpm)し、21日毎に植
えつぎ、該カルスの生育速度を速めた。
【0115】こうして得られた液体培養細胞2g新鮮重
を、0.01〜1000μMのα−リノレン酸(エタノールに溶
解して添加)を添加したウッディー・プラント液体培地
20ml(容器:100ml三角フラスコ)に移植して、25℃、
暗所下、ロータリーシェーカー上で旋回培養(振幅25m
m、100rpm)した。
【0116】14日間の培養後、培養細胞を濾過により採
取し、凍結乾燥した後その乾燥重量を測定し、生育倍率
を求めた。得られた乾燥カルスおよび培地からメタノー
ル等を用いてタキサン型ジテルペンを抽出し、高速液体
クロマトグラフィーを用いて標準品タキソールと比較定
量することによってタキソール収量を測定した。その結
果を表1に示す。
【0117】[実施例2]実施例1において、α−リノ
レン酸の代わりに、100μMのオレイン酸を使用するこ
と以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示
す。
【0118】[実施例3]実施例1において、α−リノ
レン酸の代わりに、100μMのリノール酸を使用するこ
と以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示
す。
【0119】[実施例4]実施例1において、α−リノ
レン酸の代わりに、100μMのアラキドン酸を使用する
こと以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示
す。
【0120】[実施例5]実施例1において、α−リノ
レン酸の代わりに、100mg/lのナタネ油を使用すること
以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0121】[実施例6]実施例1において、植物種が
タキサス・メディア(T. media)(カルス誘導に使用し
た部位:種子)であること以外は、実施例1と同様に実
施した。結果を表3に示す。
【0122】[比較例1]実施例1において、α−リノ
レン酸を添加しないこと以外は実施例1と同様に実施し
た。結果を表1に示す。
【0123】[比較例2]実施例6において、α−リノ
レン酸を添加しないこと以外は、実施例6と同様に実施
した。結果を表3に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【発明の効果】本発明によれば、タキサン型ジテルペン
を産生する植物の組織または細胞を特定の脂肪酸および
/またはその誘導体を含む培地で培養することにより、
タキサン型ジテルペンを大量に且つ簡便に得ることが可
能となった。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タキサン型ジテルペンを産生する植物の
    組織および/または細胞を脂肪酸類を含む培地で培養
    し、得られる培養物からタキサン型ジテルペンを回収す
    ることを特徴とするタキサン型ジテルペンの製造方法。
  2. 【請求項2】 脂肪酸類が、主鎖の炭素数が10〜22の直
    鎖飽和脂肪酸または直鎖不飽和脂肪酸であることを特徴
    とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 脂肪酸類が、主鎖の炭素数が10〜22であ
    って、かつ置換基として、炭素数1〜6の炭化水素基、
    水酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種以上を、
    1個または2個以上有する脂肪酸であることを特徴とす
    る請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 脂肪酸類が、主鎖の炭素数が10〜22であ
    って、主鎖中に1個または2個以上のシス型二重結合を
    含む不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1に記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 脂肪酸類が、オレイン酸、リノール酸、
    リノレン酸、アラキドン酸から選ばれる少なくとも1種
    以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 脂肪酸類が、カプリン酸、デセン酸、ラ
    ウリン酸、ドデセン酸、ミリスチン酸、ミリストオレイ
    ン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン
    酸、バクセン酸、テトラオクタデセン酸、アラキン酸、
    エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン
    酸、ドコサヘキサエン酸から選ばれる少なくとも1種以
    上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】 脂肪酸類が、下記の一般式(I) 【化1】 {式中、R1−COは請求項1〜請求項6に記載の脂肪
    酸に由来する原子団を表し;R2は、OR3(ここでR3
    は、炭素数1〜6のアルキル基または炭水化物残基を表
    す)、OM(ここでMはアルカリ金属原子、アルカリ土
    類金属原子またはNH 4を表す)、またはNR4a
    4b(ここで、R4a、R4bは、それぞれ独立に水素原子、
    炭素数1〜6のアルキル基、アミノ酸残基を表す)を表
    す}で示される脂肪酸誘導体であることを特徴とする請
    求項1に記載の方法。
  8. 【請求項8】 脂肪酸類の培地への添加濃度が、0.01〜
    1000μMであることを特徴とする請求項1に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 脂肪酸類の培地への添加濃度が、0.1〜5
    00μMであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 タキサン型ジテルペンを産生する植物
    がイチイ属植物であることを特徴とする請求項1に記載
    の方法。
  11. 【請求項11】 タキサン型ジテルペンを産生する植物
    がTaxus baccataであることを特徴とする請求項1に記
    載の方法。
  12. 【請求項12】 タキサン型ジテルペンを産生する植物
    がTaxus mediaであることを特徴とする請求項1に記載
    の方法。
  13. 【請求項13】 タキサン型ジテルペンが、タキソー
    ル、10−デアセチルタキソール、7−エピタキソ−ル、
    バッカチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、7−エ
    ピバッカチンIII、セファロマニン、10−デアセチルセ
    ファロマニン、7−エピセファロマニン、タキサギフィ
    ン及びその類縁体、タキサン1a及びその類縁体、キシ
    ロシルセファロマニン、及びキシロシルタキソールより
    なる群から選ばれる少なくとも1種類以上であることを
    特徴とする請求項1に記載のタキサン型ジテルペンの製
    造方法。
  14. 【請求項14】 タキサン型ジテルペンを産生する植物
    の組織および/または細胞を、培地容量に対して1〜10
    00mg/lの植物性天然油を含む培地で培養し、得られる培
    養物からタキサン型ジテルペンを回収することを特徴と
    するタキサン型ジテルペンの製造方法。
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