JPH08196271A - 生理活性物質分泌性のハイブリッド型ゲル - Google Patents

生理活性物質分泌性のハイブリッド型ゲル

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JPH08196271A
JPH08196271A JP7101475A JP10147595A JPH08196271A JP H08196271 A JPH08196271 A JP H08196271A JP 7101475 A JP7101475 A JP 7101475A JP 10147595 A JP10147595 A JP 10147595A JP H08196271 A JPH08196271 A JP H08196271A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 生理活性物質をコードする遺伝子を組込んだ
発現ベクターを保有する生理活性物質産生細胞が、生体
由来のゲルに封入または重層されている生理活性物質分
泌性のハイブリッド型ゲル。 【効果】 この発明のハイブリッド型ゲルを用いること
により、長期間安定して薬物投与が可能となり、患者に
対する苦痛も緩和でき、しかも投与量の微調整が可能
で、従来のように野生型への変異等の危険性のあるレト
ロウイルス由来のベクターを用いることなしに、体外か
らの遺伝子制御が可能な、皮膚移植による遺伝子処方が
可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、生理活性物質分泌性
のハイブリッド型ゲルに関するものである。さらに詳し
くは、この発明は、生体機能の維持に必要な生理活性物
質の長期にわたる持続的な投与を必要とする種々の難治
性疾患の治療に用いる人工皮膚等の外用処方剤に有用
な、生理活性物質分泌性の新しいハイブリッド型ゲルに
関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】生体の細胞が本来具備してい
る機能が、何らかの原因により消失あるいは低下するこ
とに起因した疾病の治療法としては、主に以下の3通り
が考えられる。すなわち、消失あるいは低下した機能
を、 1)薬物投与によって補う、 2)臓器移植・組織移植・細胞移植などによって補う、 3)遺伝子治療によって補う。
【0003】たとえばインスリン依存性糖尿病について
みると、このインスリン依存性糖尿病の場合、膵臓ラン
ゲルハンス島に存在するβ細胞(血糖値を負の方向に調
節する機能をもつインスリンを産生する細胞)が破壊さ
れている。従って、インスリン依存性糖尿病の患者は、
血糖値が高く、その結果、糖尿病の名の由来である尿中
の糖濃度も上昇する。血糖値が高い状態が続くと、生体
の種々の細胞の機能が傷害され、これが糖尿病の深刻な
合併症の原因となる。
【0004】このため、インスリン依存性糖尿病の治療
には、不足したインスリンを外から投与して血糖値を制
御しなければならない。インスリン依存性糖尿病患者は
生涯にわたって毎日数回のインスリン投与が必要であ
る。これは患者にとって肉体的・精神的に大きな苦痛で
あるばかりでなく、患者自身による薬物の投与には常に
誤投与による生命の危険性が内在している。
【0005】そこで、このインスリンの自己投与を代替
する方法として、膵臓あるいはランゲルハンス島の移植
による治療法が実施されている(窪田敬一・出月康夫、
日本臨床、48:1052,1990)。しかしなが
ら、これらの方法には、ドナー不足、移植した臓器また
は組織の患者による免疫的拒絶の制御の困難さ、さらに
は高度な技術を必要とする移植手術の困難さ、手術の危
険性など問題点が多い。
【0006】一方、1990年代に入ってから米国を中
心に臨床試験の行われている遺伝子治療は、以上を解決
する新しい医療技術である(N. M. SUMMERS. BIOTECHNO
LOGY12:42,1994)。これによる糖尿病の治療
方法のアイデアもすでに提唱されている(R. F. SELDEN
etal, THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE 317
(17):1067,1987)。この治療法の場合に
は、培養細胞にインスリン遺伝子を導入し、この細胞を
患者の体内に移植して、導入遺伝子が産生するインスリ
ンを持続的に体内に分泌させようとするものである。し
かし、この方法は、現在のところ移植したインスリン産
生細胞によるインスリン分泌を制御することが困難なこ
とや、一度体内に移植された細胞を回収できないなど、
多くの問題点をかかえている。また、この遺伝子治療
は、上記のインスリン依存性糖尿病や、重症免疫不全症
等の遺伝子病ばかりでなく、ガン、エイズなどの難治性
疾患の治療にも有望である先端医療技術であることが知
られており、そのための様々な試みが提案され、かつ、
実際にもこの遺伝子治療法が行われつつあるが、これら
の遺伝子治療においては、その多くのものは、レトロウ
イルス由来のベクターを用い、ウイルスの細胞感染を利
用して細胞内に遺伝子を導入するという手法が考慮され
ている。
【0007】しかしながら、このレトロウイルス由来の
ベクターを用いる手法においては、その遺伝子導入の効
率はウイルスの細胞への親和性に依存し、かつ、不活性
化したウイルスベクターが生体内で野生型のレトロウイ
ルスに変異する危険性を内在している。また、一般に、
従来考えられている遺伝子治療では、導入した遺伝子の
体外からの制御が困難であるという問題がある。
【0008】そこで、この発明は、従来の遺伝子治療法
の有効性を念頭に置きつつ、その問題を解決するために
なされたものであって、生理活性物質をコードする遺伝
子を導入した細胞を皮膚に移植して、導入遺伝子を体外
から制御可能とする新しい技術手段を提供することを目
的としている。さらに詳しくは、遺伝子を導入した生理
活性物質産生細胞をハイブリッド型ゲル(細胞組込み型
ゲル)として生体の皮膚に移植可能とすることで、従来
技術の欠点を解消することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、生理活性物質産生細胞と生体由
来のゲルとからなる生理活性物質分泌性のハイブリッド
型ゲルを提供する。このようなハイブリッド型ゲルにお
いては、生理活性物質産生細胞は生体由来のゲルに封入
されるか、またはゲル上に重層されるか、もしくは生理
活性物質産生細胞を封入したゲル上に重層されることを
好ましい態様とする。
【0010】またこの発明は、生理活性物質産生細胞、
皮膚細胞および生体由来のゲルからなる生理活性物質分
泌性のハイブリッド型ゲルを提供する。このようなハイ
ブリッド型ゲルにおいては、生理活性物質産生細胞を封
入した生体由来のゲル上に皮膚細胞が重層されること、
皮膚細胞を封入したゲル上に生理活性物質産生細胞が重
層されること、皮膚細胞と生理活性物質産生細胞とがゲ
ルに封入されること、もしくは皮膚細胞と生理活性物質
産生細胞とを封入したゲル上に皮膚細胞または生理活性
物質産生細胞が重層されること等を好ましい態様とす
る。
【0011】そして、上記態様のうち、生理活性物質産
生細胞がゲルに封入される場合には、細胞が網状体また
は多孔質膜と共にゲルに封入されていることを好ましい
態様としてもいる。さらに、この発明では、上記の生理
活性物質産生細胞が、インスリン等の生理活性物質をコ
ードする遺伝子を組込んだ発現ベクターを保有する皮膚
細胞(例えば、皮膚線維芽細胞、皮膚表皮細胞など)で
あり、その発現ベクターが、インスリンcDNAとネオ
マイシン耐性遺伝子を組み込んだプラスミド・ベクター
pBMG・neo・insまたは酵素フリンにより変換
可能で且つ安定性に優れたインスリンを発現する変異イ
ンスリン遺伝子を組み込んだプラスミド・ベクターpR
IS・proins・Ifur・IIfur・B10Dで
あること等をその態様としてもいる。
【0012】
【作用】この発明のハイブリッド型ゲルにおいては、ゲ
ル中に封入または重層された細胞が生体に必要な、ある
いは不足している生理活性物質を産生し、それらが持続
的に生体内に分泌される。また、生理活性物質産生細胞
が、メッシュ等の網状体または多孔質の高分子膜等と共
にゲルに封入されることによって、その生理活性物質産
生量が増加し、たとえば人工皮膚等の外用処方剤として
有効に利用することができる。生理活性物質を発現する
遺伝子は例えばプラスミド・ベクターによって細胞に導
入されるため、従来の遺伝子治療のようにレトロウイル
ス由来のベクターによる野生型レトロウイルスへの変異
の危険性はない。また、遺伝子導入細胞を皮膚に移植す
ることにより、導入した遺伝子の体外からの制御も容易
となる。
【0013】より具体的には、以下の作用が得られる。 1)移植後は、患者の意識することなく長期間安定に薬
物を投与することが可能である。このことにより従来の
反復投与による治療が患者へ与えていた肉体的、精神的
苦痛を大きく緩和することができる。 2)皮膚への移植およびその除去はきわめて簡単な手術
であるため、治療の経過を見ながら人工皮膚の量を随時
調節可能である。このことにより、治療に最適な条件を
見いだすことが容易になる。
【0014】3)生理活性物質をコードするDNA配列
を適当なプロモーターを用いて発現させ、人工皮膚移植
部位にプロモーター特異的な種々の誘導刺激(各種ホル
モン、重金属、温度など)を与えることにより、ゲル中
またはゲル上の細胞による薬物の分泌量を制御できる。
これにより、分泌量の微調整が可能である。 4)移植細胞はゲルに封入または重層されているため、
患者の免疫的拒絶を受けにくい。したがって、一般に組
織などの移植時に汎用される免疫抑制剤の量を少なくす
ることができる。このことは、免疫抑制剤による副作用
の危険性を大きく低下させることができる。もちろん患
者自身の細胞を用いる遺伝子治療では、自家移植である
ため免疫的拒絶は問題でなくなる。
【0015】5)入院の必要のない簡単な手術で行える
ため、手術にともなう危険性はなく安全である。また、
皮膚への移植であるので、移植の状態が外部から常に観
察できる。必要に応じ、移植した人工皮膚の除去も可能
である。この発明においては、各種の生理活性物質産生
細胞は、そのための遺伝子を組込んだ発現ベクターを細
胞に組込んだものとして用いることができる。例えば、
インスリンを産生する細胞は、インスリンのcDNAと
ネオマイシン耐性遺伝子(選別マーカー)を組み込んだ
プラスミドベクターpBMG・neo・insを定法に
従って動物細胞にトランスフェクトして調製することが
できる。あるいは、インスリン遺伝子が発現するプロイ
ンスリンを酵素フリンによってインスリンに変換可能
で、且つインスリンB鎖の第10番目のアミノ酸置換に
より安定性に優れたインスリンを発現する変異インスリ
ン遺伝子を組み込んだプラスミドベクターpRIS・p
roins・Ifur・IIfur・B10Dを動物細胞
にトランスフェクトしてもよい。
【0016】また、生理活性物質産生細胞を封入または
重層するゲルは、たとえば生体由来のコラーゲン、フィ
ブリン、アガロース等から定法に従って調製し、使用す
ることができる。たとえば、インスリン遺伝子を組込ん
だ細胞を封入したハイブリッド型ゲルを糖尿病治療用の
人工皮膚として使用する場合について説明すると、次の
ように考えることができる。
【0017】(1)実験動物の体表から皮膚片を採取
し、主な構成細胞である表皮細胞と線維芽細胞を分離し
培養する。 (2)インスリン遺伝子を組み込んだ発現ベクターをこ
れらの細胞に組み込み、インスリンを分泌する細胞株を
得る。 (3)コラーゲンゲル等を用いて、これらの細胞株より
インスリン分泌能を有するハイブリッド型人工皮膚を構
築する。
【0018】(4)インスリン分泌性のハイブリッド型
人工皮膚を移植する。 より具体的にさらに説明すると、この発明の、生理活性
物質分泌性のハイブリッド型ゲルは、たとえば、ASAGA
等の方法(H. ASAGA etal, EXPERIMENTAL CELLRESEARCH
193:167,1991)に準じ、以下の様にして
作製することができる。
【0019】すなわち、細胞培養液の4倍濃縮液、血
清、精製水、および例えばコラーゲン(0.5%溶液)
を、必要量に応じ、2.5:1:2.5:4の割合で氷
冷下で混合する。これに、1N水酸化ナトリウム水溶液
を滴下混合して、pH7.4に調整し、直径35mmの
疎水性のプラスチックシャーレに2mlずつ分注し、た
だちに37℃の恒温器に移る。数分以内にコラーゲンは
固化しゲルを作製することができる。生理活性物質産生
細胞はコラーゲンを固化させる直前に上記の混合液に混
合させることによりゲル内に封入できる。
【0020】また、網状体や多孔質膜を共存させる場合
には、これらを生理活性物質産生細胞と共に上記の混合
液に混合させればよい。なお、培養液、血清およびコラ
ーゲンは市販品を利用することもできる。皮膚への移植
を容易にするために、コラーゲンゲルに適当な強度を持
たせることも有効である。ゲルの適度な強度は、例えば
BELLらの方法(E. BELL etal, PROCEEDINGS OF THE NAT
IONAL ACADEMY OF SCIENCES 76(3):1274,
1979)に従い、上記ゲル内に適当数の皮膚由来線維
芽細胞を混ぜることによって得ることができる。線維芽
細胞によるゲルの収縮作用により、結果としてゲルに適
当な強度を持たせることができる。皮膚由来線維芽細胞
は、たとえば移植片初代培養法(R.I. Freshrey, Cultu
re of Animal Cells, Alan R. Liss, Inc.,New York, 1
987) に準じて、患者より採取した少量の皮膚より培養
して得ることが可能である。
【0021】ゲルの移植皮膚面への良好な活着状態を得
るために、皮膚への移植以前にゲル上にあらかじめ皮膚
由来表皮細胞を重層培養しておくことも有効である。ゲ
ルに重層する皮膚由来表皮細胞は、たとえばGREEN 等の
方法(H. GREEN, etal, PROCEEDINGS OF THE NATIONAL
ACADEMY OF SCIENCES 76:5665,1979)に準
じて、線維芽細胞と同様に患者自身の皮膚より培養して
得ることが可能である。
【0022】なお、この発明では、表皮細胞を重層しな
い状態でゲルを皮下に移植した場合にも有効であること
は言うまでもない。具体的には様々な態様が可能であ
る。以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明につい
て説明する。もちろん、この発明は、以下の例によって
限定されるものではない。
【0023】
【実施例】
実施例1 この発明のハイブリッド型ゲル(以下、単にゲルと記載
することがある)を作成し、その薬物投与法および糖尿
病治療への応用における効果を、下記に示す試験管内実
験および糖尿病モデル動物の系を用いて評価した。試験管内試験 プロインスリン産生細胞を封入または重層したゲルを培
養し、培養液中に分泌されるプロインスリンを測定し
た。 1)使用細胞 以下の細胞株3種を用いた。
【0024】マウス胎仔由来線維芽細胞(NIH3T
3) インスリン遺伝子を組み込んだラット皮膚由来線維芽
細胞(RSFins) インスリン遺伝子を組み込んだラット皮膚由来表皮細
胞(RSKins) RSFinsおよびRSKins細胞はラット皮膚より
初代培養によって得た線維芽細胞(RSF)および表皮
細胞(RFK)にインスリン遺伝子(G. I. BELL et a
l, NATURE 284,(6):26,1980)を組み
込んで作製した。インスリン遺伝子の線維芽細胞および
表皮細胞への組み込みは、ヒトインスリンcDNAを組
み込んであるプラスミド系発現ベクターpBMG・ne
o・ins(Y. KAWAKAMI et al, DIABETES 41:95
6,1992)を用いて、CHENとOKAYAMA (C. CHEN an
d OKAYAMA, MOLECURAR AND CELLULAR BIOLOGY 7
(8):2745,1987)に準じて行った。その
後、ベクターの組み込まれた細胞を400μg/ml濃
度のG418を含む培養液で選択的に増加させた。
【0025】これらの細胞は、インスリンへの変換酵素
を持たないため、インスリンの前駆物質であるプロイン
スリンを分泌する。ただし、プロインスリンもインスリ
ン作用がある(S.N. Davis et al., Journal of Clinic
al Endocrinologuy and Metabolism, 75 (5): 1282-128
8, 1992 )。 2)培養液 RSFins用には、ダルベッコ改変イーグル最小培地
(ギブコ)に牛胎仔血清(ハイクロン)を10%の割合
で添加して用いた(培養液A)。
【0026】RSKins用には、ダルベッコ改変イー
グル最小培地とMCDB152培地(極東)を7:3の
割合で混合したものに、ハイドロコルチゾン(0.4μ
g/ml)、インスリン(5μg/ml)、トランスフ
ェリン(5μg/ml)、トリヨードチロニン(2n
M)、コレラトキシン(0.1nM)、アデニン(10
0μM)および牛胎仔血清(10%)を添加して用いた
(培養液B)。
【0027】細胞をゲルに封入および重層の後は、培養
液Aを用いてハイブリッド型ゲルを培養した。 3)試験方法 50万個のRSFins細胞をゲルに封入あるいは重層
して、ゲルAおよびゲルBを得た。一方、50万個のR
FKins細胞をゲルに封入あるいは重層して、ゲルC
およびゲルDを得た。ゲルCおよびゲルD中には同時に
NIH3T3細胞を封入して収縮能を付与した。このゲ
ルの構成を要約したものが表1である。これらを、37
℃で培養した。1日後、培養液2mlを加えて培養を継
続し、その後、2日ごとに新しい培地と交換した。交換
した培養液は、凍結保存しておき、必要に応じて融解
し、培養液中のプロインスリン濃度を測定した。プロイ
ンスリン濃度は、EIAキット(三光純薬)を用いて、
免疫応答性インスリン(Immunoreactive Insurin:以
下、IRIと記載することがある)の値として測定し
た。
【0028】
【表1】
【0029】4)試験結果 試験結果を表2に示した。ゲル内に封入あるいはゲル上
に重層したいずれの細胞株からも、培養25日間にわた
って安定した量のプロインスリンを培地中に分泌した。
従って、このゲルを皮膚に移植することにより、プロイ
ンスリンを体内に投与することが可能となる。
【0030】
【表2】
【0031】動物試験1 プロインスリン産生細胞を封入または重層したハイブリ
ッド型ゲルを糖尿病モデル動物へ移植して、その治療効
果を血糖値を測定することによって評価した。 1)実験動物 Balb/cヌードマウス(5週令雄)に対し、200
mg/kgのストレプトゾトシン(シグマ)を4日間に
わたり腹腔内へ合計3回反復投与することにより糖尿病
状態を誘導し、7週令において使用した。 2)使用細胞 ラット皮膚由来の細胞株3種を用いた。
【0032】RSF RSFins RSKins 3)ゲルの作製方法 50万個のRSFins細胞をコラーゲンゲルに封入
し、これに同数のRSKins細胞を重層してゲルEを
得た。一方、50万個のRSF細胞をコラーゲンゲルに
封入し、これに同数のRSKins細胞を重層してゲル
Fを得た。これらのゲルの構成は、表3に要約した。こ
れらのゲルを、37℃で6日培養の後、移植に用いた。
この時点でのゲルのプロインスリン産生量は、ゲルEお
よびゲルF、それぞれ484μlU/日/ゲルおよび4
04μlU/日/ゲルであった。
【0033】
【表3】
【0034】4)試験方法 上記糖尿病モデル2個体(ID番号3および4)の背中
の皮膚を、それぞれ約25mm平方および約200mm
平方の範囲で除去した。ここに作製後6日間培養したゲ
ル(E、F)を同一面積(ゲル重量として、それぞれ2
4mg湿重および191mg湿重)移植した。移植後は
2日ごとに約20μlの血液を尾部より採取し血糖値を
測定した。対照動物2個体(ID番号1および2)は非
移植糖尿病モデルを用いた。血糖値の測定はグルコース
CIIテスト(和光純薬)を用いて行った。 5)試験結果 試験結果を表4に示した。ゲル移植群では対照群で見ら
れたような血糖値の持続的な上昇は抑えられ、かつ血糖
値の低下傾向が観察された。
【0035】
【表4】
【0036】動物実験2 プロインスリン産生細胞を封入したハイブリッド型ゲル
を糖尿病モデル動物へ移植して、その治療効果を血糖値
および体重を測定することによって評価した。 1)実験動物 Balb/cヌードマウス(7週令雄)に対し、200
mg/kgのストレプトゾトシン(シグマ)を2日間に
わたり腹腔内に連続投与することにより糖尿病状態を誘
導して試験に用いた。ゲルの移植はストレプトゾトシン
投与終了2日後に行った。 2)使用細胞 ラット皮膚由来の細胞株3種を用いた。
【0037】RSF RSFins RSK 3)ゲルの作製方法 100万個のRSFins細胞をコラーゲンゲルに封入
し、これに同数のRSK細胞を重層してゲルMを得た。
一方、100万個のRSF細胞をコラーゲンゲルに封入
し、これに同数のRSKins細胞を重層してゲルNを
得た。これらのゲルの構成は、表5に要約した。これら
のゲルを、37℃で7日培養の後、移植に用いた。この
時点でのゲルのプロインスリン産生量は、ゲルMおよび
ゲルN、それぞれ300.8μlU/時間/ゲルおよび
1.5μlU/時間/ゲルであった。
【0038】
【表5】
【0039】4)試験方法 上記糖尿病モデル6個体のうち3個体については、右腹
側部の皮膚を直径8〜10mmの円形に除去し、ここに
作製後7日間培養したゲルMを1個体につき1個当て移
植した。移植後は2日ごとに約5μlの血液を尾部より
採取し血糖値を測定した。体重も約2日ごとに測定し
た。糖尿病モデル動物6個体のうち残る3個体について
は、対照動物としてゲルNを同様に移植した。血糖値の
測定はグルテストE(三和化学)を用いて行った。 5)試験結果 試験結果を表6に示した。ゲルM移植群では対照群で見
られたような血糖値の上昇を抑制する傾向が認められ、
特に移植後13日目において顕著であった。また、ゲル
M移植群では対照群で見られたような体重減少を抑制す
る傾向が観察期間を通じて常に観察された。
【0040】
【表6】
【0041】実施例2 この発明の別のハイブリッド型ゲルを作成し、その効果
を、下記に示す試験管内実験および糖尿病モデル動物の
系を用いて評価した。試験管内実験1 フリンにより変換可能で、且つ安定性に優れたインスリ
ンをコードする変異インスリン遺伝子を導入したインス
リン産生細胞を封入したゲルを培養し、培養液中に分泌
されるIRI値を測定した。 1)使用細胞 ラット皮膚由来の細胞株2種を用いた。
【0042】フリンで変換可能な変異インスリン遺伝
子を導入したラット皮膚由来繊維芽細胞(RSFins
fur) RSK RSFinsfur細胞は、ラット皮膚より初代培養に
より得た繊維芽細胞(RSF)に、フリンによる変異
(プロインスリン鎖の2か所切断によるインスリン化)
が可能な変異インスリン遺伝子(D.J.GROSKREUTZ et a
l, The Jounal ofBiological Chemistry, 269 (8), 624
1, 1994 )を導入して作成した。RSFへのこのような
遺伝子導入は、上記の変異インスリン遺伝子を組み込ん
だプラスミド系発現ベクターpRIS・proins・
Ifur・IIfur・B10Dを用いて、上記CHEN-OKA
YAMAの方法に準じて行った。その後、ベクターの組み込
まれた細胞を600μg/ml濃度のG418を含む培
養液で選択的に増加させた。
【0043】これらの細胞から32株のクローンを分離
し、最もIRI値の高い細胞を選択した。この株RSF
insfurは、100万個の細胞あたり24.5μI
U/時間の免疫応答性インスリンを培養液中に分泌し
た。この細胞は、変異インスリンへの変異酵素フリンを
同時に発現するため、インスリンの前駆物質であるプロ
インスリンは、細胞の有するフリン活性に依存してイン
スリンに変換される。
【0044】また、抗フリン・モノクローナル抗体(ジ
ェネンティック)および抗インスリン・ウサギ血清(オ
ースロラル・バイオロジカル)を用い、RSFinsf
ur細胞に対する免疫組織学的な検討も行った。結果は
表7に示したとおりであり、この細胞はインスリンおよ
びフリンを産生していることが免疫組織学的にも確認さ
れた。
【0045】
【表7】
【0046】2)培養液 RSFinsfur細胞用には、実施例1の培養液A
を、またRSK細胞用に1実施例1の培養液Bを用い
た。細胞をゲルに封入および重層後は培養液Aを用いて
培養した。 3)試験方法 300万個のRSFinsfur細胞をゲルに封入し、
さらにその上に300万個のRSK細胞を重層してゲル
Gを得た。このゲルGの構成を要約したものが表8であ
る。このゲルGを37℃で6mlの培養液中で培養し
た。培養液は2日毎に新しいものと交換した。培養後8
日目のゲルを培養液で3回洗浄し、新しい培養液と交換
したのち8時間培養し、培養液中のIRI値をインスリ
ンEIAキット(三光純薬)を用いて測定した。
【0047】
【表8】
【0048】4)試験結果 この試験の結果、ゲルGは、8時間にわたり25.2μ
IUのIRIを分泌していることが確認された。すなわ
ち、このゲルGは長時間にわたり安定したインスリンの
分泌を示すため、これを皮膚へ移植することによって、
インスリンを体内へ投与することが可能となる。試験管内実験2 フリンにより変換可能で、且つ安定性に優れたインスリ
ンをコードする変異インスリン遺伝子を導入したインス
リン産生細胞を封入したゲルにおいて、ゲルからのイン
スリン分泌を高める方法を検討した。 1)使用細胞 上記の試験管内実験1と同様の細胞を使用した。 2)培養液 上記の試験管内実験1と同様の培養液を同様に使用し
た。 3)試験方法 100万個のRSFinsfur細胞をゲルに封入し、
さらにその上に100万個のRSK細胞を重層してゲル
Hを得た。一方、100万個のRSFinsfur細胞
をゲルに封入する際に、直径15cmおよび25cmの
円形に裁断したポリグリコール酸(PGA)メッシュ
(日本レダリー、デキソンメッシュ、スタイル2)を存
在させ、さらにその上に100万個のRSK細胞を重層
して、それぞれゲルIおよびJを得た。これらのゲルの
構成は表9に示したとおりである。
【0049】
【表9】
【0050】これらのゲルを37℃で2mlの培養液中
で培養した。培養液は1〜2日毎に新しいものと交換し
た。培養後8日目の各ゲルを培養液で3回洗浄し、新し
い培養液と交換したのち8時間培養し、経時的に少量
(50μl)の培養液を採取し、培養液中のIRI値を
インスリンEIAキット(三光純薬)を用いて測定し
た。 4)試験結果 この試験の結果は表10に示したとおりである。メッシ
ュと共に細胞を封入し、重層したゲルIおよびJは、細
胞のみを封入、重層したゲルHに比較してインスリン分
泌量が有意に多く、このことからゲル中にメッシュ(網
状体)を共存させることが細胞のインスリン分泌量を増
加させるのに有効であることが確認された。
【0051】
【表10】
【0052】動物実験 インスリン産生細胞を封入したゲルを糖尿病モデル動物
へ移植し、動物の体重および血糖値を測定することによ
りゲルの移植効果を検討した。 1)実験動物 Balb/cヌードマウス(7週齢雄)に対し、200
mg/Kgのストレプトゾトシン(シグマ)を2日間に
わたり腹腔内に合計2回反復投与し、高血糖状態を誘導
した。動物が高血糖を示したことを確認したのち、実験
に使用した。 2)使用細胞 ラット皮膚由来の次の細胞株3種を用いた RSF RSFinsfur RSK 3)ゲル(人工皮膚)の作成方法 300万個のRSFinsfur細胞をコラーゲンゲル
に封入し、これに同数のRSK細胞を重層してゲルKを
得た。一方、300万個のRSF細胞を同様に封入し、
これに同数のRSK細胞を重層してゲルLを得た。これ
らゲルK、Lの構成は表11に要約したとおりである。
【0053】
【表11】
【0054】4)試験方法 上記の糖尿病モデル動物の背中の皮膚を、それぞれ直径
約11mmの円形の範囲で除去し、作成後8日間培養し
て直径約10mmに収縮したゲルKを動物の皮膚除去部
に移植した。対照動物には、遺伝子を導入していない細
胞を封入したゲルLを同様に移植した。移植後は、約2
日ごとに体重を測定するとともに、約5μlの血液を尾
部より採取し、グルテストE(三和化学)を用いて血糖
値を測定した。 5)試験結果 この試験の結果は表12に示したとおりである。対照群
(ゲルL移植群)では体重の減少や血糖値上昇が認めら
れたのに対し、変異インスリン遺伝子導入細胞を封入し
たゲルK移植動物の群では体重の増加ならびに血糖値の
低下傾向が認められ、糖尿病症状の改善が確認された。
【0055】
【表12】
【0056】
【発明の効果】以上、詳しく説明した通り、この発明に
より、長期間安定して薬物投与が可能となり、患者に対
する苦痛も緩和でき、しかも投与量の微調整が可能で、
従来のように野生型への変異等の危険性のあるレトロウ
イルス由来のベクターを用いることなしに、体外からの
遺伝子制御が可能な、皮膚移植による遺伝子処方が可能
となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61L 27/00 C C12N 15/09 // A61K 35/36 35/39 ADP

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生理活性物質産生細胞と生体由来のゲル
    とからなる生理活性物質分泌性のハイブリッド型ゲル。
  2. 【請求項2】 生理活性物質産生細胞が、生体由来のゲ
    ルに封入にされている請求項1のハイブリッド型ゲル。
  3. 【請求項3】 生理活性物質産生細胞が、生体由来のゲ
    ル上に重層されている請求項1のハイブリッド型ゲル。
  4. 【請求項4】 生理活性物質産生細胞を封入した生体由
    来にゲル上に、生理活性物質産生細胞が重層されている
    請求項1のハイブリッド型ゲル。
  5. 【請求項5】 生理活性物質産生細胞、皮膚細胞および
    生体由来のゲルからなる生理活性物質分泌性のハイブリ
    ッド型ゲル。
  6. 【請求項6】 生理活性物質産生細胞を封入した生体由
    来のゲル上に皮膚細胞が重層されている請求項5のハイ
    ブリッド型ゲル。
  7. 【請求項7】 皮膚細胞を封入した生体由来のゲル上に
    生理活性物質産生細胞が重層されている請求項5のハイ
    ブリッド型ゲル。
  8. 【請求項8】 皮膚細胞および生理活性物質産生細胞
    が、生体由来のゲルに封入されている請求項5のハイブ
    リッド型ゲル。
  9. 【請求項9】 皮膚細胞および生理活性物質産生細胞を
    封入した生体由来のゲル上に、皮膚細胞または生理活性
    物質産生細胞が重層されている請求項5のハイブリッド
    型ゲル。
  10. 【請求項10】 生理活性物質産生細胞が、網状体また
    は多孔質膜と共に生体由来のゲルに封入されている請求
    項2、4、6、8または9のハイブリッド型ゲル。
  11. 【請求項11】 生体由来のゲルに封入する皮膚細胞
    が、皮膚線維芽細胞であり、生体由来のゲルに重層する
    皮膚細胞が皮膚表皮細胞である請求項5から9のいずれ
    かのハイブリッド型ゲル。
  12. 【請求項12】 生理活性物質産生細胞が、生理活性物
    質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを保有
    する培養細胞である請求項1から10のいずれかのハイ
    ブリッド型ゲル。
  13. 【請求項13】 生理活性物質産生細胞が、インスリン
    をコードする遺伝子を組込んだ発現ベクターを保有する
    皮膚線維芽細胞または皮膚表皮細胞である請求項12の
    ハイブリッド型ゲル。
  14. 【請求項14】 発現ベクターが、プラスミド・ベクタ
    ーpBMG・neo・insである請求項13のハイブ
    リッド型ゲル。
  15. 【請求項15】 発現ベクターが、プラスミド・ベクタ
    ーpRIS・proins・Ifur・IIfur・B1
    0Dである請求項13のハイブリッド型ゲル。
  16. 【請求項16】 請求項1から15のいずれかのハイブ
    リッド型ゲルを主成分とする外用処方剤。
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