JPH08196284A - 酵素反応素子およびその製造方法、酵素反応器ならびに酵素反応方法 - Google Patents

酵素反応素子およびその製造方法、酵素反応器ならびに酵素反応方法

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JPH08196284A
JPH08196284A JP638295A JP638295A JPH08196284A JP H08196284 A JPH08196284 A JP H08196284A JP 638295 A JP638295 A JP 638295A JP 638295 A JP638295 A JP 638295A JP H08196284 A JPH08196284 A JP H08196284A
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energy donor
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Masanori Sakuranaga
昌徳 桜永
Yasuko Tomita
康子 富田
Junji Oyama
淳史 大山
Takeshi Nomoto
毅 野本
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 (1)2つの異なる酵素の共役反応を実現す
る酵素固定素子、(2)物理的エネルギーを利用してエ
ネルギー供与体の再生を行って酵素反応を同時連続的に
行なわせる素子および反応器、さらに(3)再生のため
の原料となる高エネルギーリン酸供与体を必要としない
簡便な酵素反応方法を提供する。 【構成】 異なる酵素(エネルギー供与体合成酵素およ
びエネルギー供与体利用酵素)を固定した2種のプロテ
オリポソームを融合させて得た酵素反応素子あるいはそ
れらのいずれかの酵素の固定された2種の素子が分散さ
れ、リン酸供与体、エネルギー供与体前駆体ならびに基
質の含まれた液媒体の入った反応器に、電気的エネルギ
ー、光エネルギーなどの物理的エネルギーを印加してin
situで連続的に酵素反応を行わせる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の蛋白質を保持し
た脂質2分子膜を利用して複数の反応を同一系内で行な
う酵素反応に関するもので、特に、高エネルギーリン酸
供与体を再生しながら行なう酵素反応に関する。
【0002】
【従来の技術】酵素を用いた生合成反応は、酵素、基質
以外にアデノシン−5’−三リン酸(ATP)のような
高エネルギーリン酸化合物もしくはNAD(P)やNA
D(P)Hなどの補酵素を必要とする。その際、これら
補酵素は一般に高価であることから、実用的な生合成反
応系を構築するには、使用済みの補酵素の再生が不可欠
と考えられてきた。そこで、生合成反応より生化学物質
を安価に合成するためには、主合成反応と、補酵素再生
反応の両者を効率よく実施することのできる反応方法お
よび反応器が望まれている。
【0003】ATPを利用して合成反応を行ない生成さ
れる生化学物質としては、CDP−コリン(苅谷ら;発
酵工学,53,278,1975)、グラミシジン(St
ramondoら;AIChE Symp. Ser 74 No.172, 1, 1976/7
7)、グルコース−6−リン酸(Pollokら;J. Am. Che
m. Soc., 99, 2366, 1977)、グルタチオン(Murata
ら;Enzyme Microbio Tech, 3, 233, 1981)、NADP
(Miyawakiら;Agrio. Biol.Chem. 46, 2725, 1982)な
どを挙げることができる。もちろん、ATPの利用がこ
れらの物質の合成反応にとどまるものではなく、むしろ
ほとんどの合成反応がATP等を要求し、しかもその反
応過程が複数段よりなるのが一般的である。こうした多
段の合成反応には、動植物細胞や菌体を用いたリアクタ
ーを利用するのが現状である。
【0004】しかし、細胞や菌体の操作は煩雑であり、
品質の画一性および制御性に欠ける等の欠点がある。従
って、ATPの再生と連続する合成反応の簡便で小型化
できる方法を開発することは、単に一段の合成反応ばか
りでなく、多段の酵素による合成反応を工業的に利用し
ていく上で期待の大きいものである。さらに、このよう
な期待は、合成反応に限られるのものではなく、リン酸
化反応や分解反応の利用においても同様である。
【0005】ATPを再生しながら合成反応を行なわせ
る方法としては、再生反応と合成反応を別々の反応容器
で行なわせる分離再生方式が最も代表的である。この場
合、ATP再生方法を最適化することが重要となる。現
在のところ、種々提案されているATP再生法の中で、
再生部分を単独に考えると、酵素法が有利と考えられて
おり、特にADPからATPへの変換の反応にはアセテ
ートキナーゼ、リン酸供与体としてはアセチルリン酸が
有力と考えられている(Langerら;AIChE J.,22, 1079,
1976)。好熱菌からアデニレートキナーゼおよびアセ
テートキナーゼを抽出し、分離再生方法の安定なATP
再生系を構築した例もある(Kondoら;J. Appl. Bioche
m., 6, 29-38, 1984)。
【0006】一方、分離再生方式の他に補酵素の再生と
それに続く合成反応を同時に行なわせる連続in situ方
式が提唱されてきた(Finkら;Biotech. Bioeng. 17, 1
029,1975)。この方式は、動的再生系であり、(1)合
成反応に必要なATP量が微量でも使用でき、ATPの
利用効率が高く、反応槽を小型化できること、(2)再
生系と合成系の条件設定が容易なため反応の平衡を所望
方向へシフトできるなど、融通性および多様性が高いこ
と、(3)さらに中間産物であるATPの液送および分
離等を省略することができ、装置の簡略化が図れるな
ど、工業的利用には分離再生方式より利点が多いと期待
されている。しかし、それが検討された例は少なく、N
ADに関してはその再生とホローファイバーに固定した
デヒドロゲナーゼの共役反応(Miyawakiら;J. Chem. E
ng. Jap., 15, 224-228, 1982)、またATPに関して
は、アセトキナーゼによる再生とグルコキナーゼによる
グルコース−6−リン酸の合成(Ishikawaら;MEMBRAN
E, Vol.14, 186-195, 1987)をホローファイバー型反応
器で行なわせた例などにとどまっている。
【0007】ATP再生に関しては、そのエネルギー源
を有機物とせずに、電気的エネルギーや物理的エネルギ
ーとする方法の提案がなされてきている。例えば、光リ
ン酸化系は、光合成生物による明反応過程の一部として
光化学反応および電子伝達系と連動して光エネルギーに
よるATP生成を行なうことができる。光合成のこの反
応は効率が高いとされており、エネルギーを太陽光に求
めることが期待される。光リン酸化の試みとしては、Rh
odospirillumあるいはRhodopseudomonasなどのクロマト
フォアや好熱性藍藻を利用することが提案されている
(Yangら:Biotechnol. Bioeng., 18, 1413, 1425, 197
6; Paul and Vignais: Enzyme Microb. Technol., 2, 2
81, 1980; Gardeら: Eur. J. Appl. Microbiol. Biotec
hnol., 11,133, 1981; Sawaら: Agr. Biol. Chem. 44,
1967, 1980)。さらに、クロマトフォア等のオルガネラ
や細胞自体のサンプルを利用するだけでなく、ミトコン
ドリアあるいは好熱菌のATP合成酵素とその駆動源で
あるプロトン輸送蛋白質バクテリオロドプシンを再構成
して光リン酸化を実証した例が知られており(J. Biol.
Chem., 49, 1974; J. Biochem., 82, 1977)、このよ
うな酵素を用いたATP再生リアクターの構築も開示さ
れている(特開昭61−124384)。また、電気的
再生法にセラミクスや鉄触媒を用いた簡便なATP生成
法が報告されている(特開昭64−39390)。
【0008】特に、上記特開昭61−124384で用
いられているような、脂質2分子膜上へ酵素を固定した
酵素反応素子を利用する手法が注目されている。
【0009】生体膜が脂質2分子膜を基本構造として、
その膜内あるいは膜面上に各種の蛋白質を混在させるこ
とにより、多種多様な機能を果たしていることはよく知
られている。リポソームは、生体膜と同様な基本構造を
有し、閉鎖小胞内外の隔壁を提供することから、マイク
ロカプセルとしての利用が考えられ、近年その研究が活
発に行なわれている。例えば、薬剤等を小胞内に固定も
しくは貯蔵するようにしたものから、生理活性物質やD
NAのような物質を小胞内に包封して薬物を移送させ、
生体内や特定の細胞のような標的部位において薬物を徐
放するような利用が多く見られる。近年はまた、小胞内
にマーカーを封入した小胞膜に抗体あるいは抗原を組み
込み、標的抗体との結合で小胞を破壊させ、マーカーを
放出するようにした免疫検出試薬も種々考案されてい
る。
【0010】リポソームの脂質2分子膜中に蛋白質が組
み込まれているものは、プロテオリポソームと呼ばれて
いる。このプロテオリポソームは生体における主要な機
能性物質である蛋白質を含むため、単に生体膜研究の対
象となるだけでなく、多種多様な特性を付与することが
できる。特に、生体の細胞膜や細胞内小器官の膜等に存
在する膜蛋白質は、エネルギー産生、物質合成、物質認
識等の様々な代謝過程で重要な役割を果たしており、そ
のような膜蛋白質を組み込んだプロテオリポソームは生
体中の高度機能を人工的に再現させて利用する人工細胞
素子に道を開くものと期待されている。
【0011】プロテオリポソームの製法には種々の方法
が考案されており、それぞれの使用目的や蛋白質の種類
などに応じて使い分けられている。主なものとしては、
透析法、超音波処理法、凍結融解法などを挙げることが
できる。
【0012】透析法は、蛋白質を脂質とともに界面活性
剤を用いて可溶化した後に、透析して界面活性剤を除去
するもので、直径100nm以下の小さなプロテオリポ
ソームが生成する。また、超音波処理法は、蛋白質を脂
質リポソームとともに超音波処理するもので、やはり直
径100nm以下の小さなプロテオリポソームが生成す
る。さらに、凍結融解法は、蛋白質とリポソームの混合
液の凍結・融解を繰り返して蛋白質を脂質膜に組に込む
方法であり、直径が数100nmの比較的大きなプロテ
オリポソームが生成する。
【0013】また、リポソーム表面に酵素を固定する方
法として、吸着法、共存超音波法および共有結合法など
が提案されてきており、目的に応じて利用されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ATPなどの高エネル
ギーリン酸化合物の再生と共役させて酵素反応を行わせ
る系を実用化していくには、系全体をより単純化して反
応効率を高めていくことが必要である。中でも、連続in
situ方式は反応効率上の利点があるにもかかわらず、
従来法ではATP再生が、同じく高エネルギーリン酸化
合物であるアセチルリン酸をリン酸供与体として用いる
ものであった。このような系では、高価なアセチルリン
酸が消費されるだけでなく、連続反応を達成するにはア
セチルリン酸の補給系を反応槽に設ける必要があり、装
置簡略化の面からは好ましくない。また、アセチルリン
酸およびその分解産物である酢酸存在下で酵素反応を行
なわなければならないため、利用できる酵素反応に制限
が生じること、および生成物の分離工程が複雑となるな
どの短所がある。
【0015】また、上記の脂質2分子膜の利用について
もプロテオリポソームの調製法が種々検討されている
が、それらの調製法は、組み込む蛋白質として膜蛋白質
のような膜内在型の蛋白質を想定したもので、通常蛋白
質になんらの修飾を施さなくとも組み込める方法となっ
ている。従って、このプロテオリポソームに膜蛋白質と
は別に、水溶性の酵素を付加させて共役的に酵素反応を
行わせようとすると、膜蛋白質の組み込みとは別の工程
で水溶性蛋白質をリポソームに固定する必要が生じる。
【0016】現在のところ、膜蛋白質のリポソームへの
組み込みと水溶性蛋白質の脂質への固定を同時に達成す
る方法は知られていない。水溶性の蛋白質をリポソーム
表面に固定する最も安定な方法は共有結合法であるが、
この方法は脂質親水基の活性化あるいは蛋白質の官能基
と脂質官能基間の結合を形成しなければならず、この処
理に先立って組み込まれた膜蛋白質の失活の原因とな
り、好ましくない。
【0017】このような問題から、酵素の多段反応系の
実現に期待が持たれているにも拘らず、膜蛋白質および
その蛋白質と共役反応を行う水溶性の蛋白質を同一の脂
質カプセルに固定した反応素子は実現されていない。
【0018】そこで本発明の目的は、膜蛋白質と水溶性
の蛋白質の2種の酵素を固定したリポソームにより2つ
の異なる酵素の共役反応を実現する酵素固定素子を提供
し、さらに、エネルギー供与体とその脱リン酸体を駆動
源とする酵素反応において、消費されるエネルギー供与
体の再生を物理的エネルギーをエネルギー源として同時
連続的に行なわせることにより、再生のための原料とな
る高エネルギーリン酸供与体を必要としない簡便な酵素
反応方法、反応器および反応素子を提供することにあ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)脂質と
第一の蛋白質から成るプロテオリポソームと、表面に第
二の蛋白質を固定したリポソームとを融合することを特
徴とする酵素反応素子の製造方法およびその方法で製造
される酵素反応素子、特に、表面が親水性で内部が疎水
性の膜からなるマイクロカプセルであって、第一の蛋白
質分子の一部が該膜内部の疎水部に埋め込まれて担持さ
れ、第二の蛋白質分子が該膜の親水性表面に固定されて
いる酵素反応素子、とりわけ、物理的エネルギーで生じ
るイオン濃度勾配を利用してエネルギー供与体前駆体と
リン酸供与体からエネルギー供与体を生成するエネルギ
ー供与体合成酵素および該エネルギー供与体の脱リン酸
化を行なうエネルギー供与体利用酵素が同一膜上に保持
されている酵素反応素子、ならびに(2)リン酸供与
体、エネルギー供与体前駆体、該物理的エネルギーで生
じるイオン濃度勾配を利用して該エネルギー供与体前駆
体と該リン酸供与体からエネルギー供与体を生成するエ
ネルギー供与体合成酵素および該エネルギー供与体の脱
リン酸化を行なうエネルギー供与体利用酵素を含む液媒
体と物理的エネルギーの印加手段とを有して成ることを
特徴とする酵素反応器、およびその酵素反応器を用い、
物理的エネルギー印加手段から物理的エネルギーを印加
して液媒体にイオン濃度勾配を生ぜしめ、エネルギー供
与体合成酵素によるエネルギー供与体合成の反応、およ
びエネルギー供与体利用酵素により該エネルギー供与体
から得られるエネルギーを利用する系内に存在する基質
の反応を連続的に進行させる酵素反応方法を提供する。
【0020】本発明の酵素反応素子製造方法で製造され
る酵素反応素子の構成は例えば図4のようなものであ
る。図中、53は表面が親水性で内部が疎水性である膜
を示し、この膜に膜内の疎水部に一部分を埋め込まれた
蛋白質51と、これとは別の第二の蛋白質52が膜53
の表面親水部に固定されている。
【0021】図では素子の形状として球面形状の一部と
して示されているが、特に球形である必要はなく、閉鎖
形状のマイクロカプセルであればよい。
【0022】担持させる2種の蛋白質は、一方が膜内在
性の蛋白質で他方が水溶性であり、両蛋白質の反応が共
役しているものであれば特に制限はなく、そのような構
造の素子は、特に内外のイオン濃度差によってATP合
成活性を示すATP合成酵素とATP要求性の反応をす
る酵素の組み合わせには好適である。
【0023】合成酵素の作用は、一般に適当なエネルギ
ー供与体の脱エネルギー過程をエネルギー源として起こ
っている。このようなエネルギー供与体として、最も代
表的なものがATPである。本発明は、このようなエネ
ルギー供与体の再生を、無機リン酸(Pi)をリン酸供
与体として外部物理的エネルギーを使って行なわせ(前
段反応)、それによって再生されたエネルギー供与体を
利用する酵素系の作用(後段反応)を同一の反応器内で
同時連続的に進行させる酵素反応器、および反応素子を
提供するものである。
【0024】本発明の酵素反応方法の流れを図示する
と、図1のように表わすことができる。この図をもとに
酵素反応方法を説明すると、次のようである。物理エネ
ルギー印加手段1はエネルギー供与体合成酵素2を活性
化する。活性化された2はエネルギー供与体前駆体(化
合物B)をリン酸化しエネルギー供与体Aに変換する。
エネルキー供与体Aは拡散により移動し、エネルギー供
与体利用酵素3に到達し、これを活性化する。活性化さ
れた酵素3はエネルギー供与体Aの脱リン酸化により化
合物Bを生成すると同時に基質aを生成物bに変換す
る。以上の反応は、実質的に同時連続的に進行するもの
である。
【0025】以上の反応がどのような機構で達成される
かを以下に記す。まず、本発明で言うところの反応素子
とは、図2に示すように、エネルギー供与体合成酵素1
1あるいは21とエネルギー供与体利用酵素12あるい
は22がイオン透過性の膜13あるいは23に担持され
ている構成となっているものである。図では素子の形状
として平面形状の例(1)と球面形状の例(2)の2つ
を断面で示しているが、形状は特にそれらに限定される
ものではない。
【0026】次に、エネルギー供与体合成酵素11ある
いは21について説明する。本発明の第一の要件となっ
ている前段反応は、高エネルギーリン酸化合物をリン酸
供与体として用いずに、無機リン酸(Pi)をリン酸供
与体とすることにより、電気あるいは可視光のような外
部物理エネルギーを印加することで下記式のATP再生
反応を行なわせようとするものである。
【0027】
【化1】ADP+Pi+E → ATP 前段反応は、イオン透過と共役してATP合成活性を示
すATP合成酵素を用いることにより実現することがで
きる。図3は、本発明の酵素反応素子をより具体的に例
示したものであり、この図において、ATP(エネルギ
ー供与体)合成酵素は31あるいは41aで示されてい
る。
【0028】ATP合成酵素の例としては、一価陽イオ
ンに関わるものとして、H+-ATPase、Na+-ATPaseなどが
挙げられるが、これらに限定されず、二価陽イオンに関
わるもの、あるいは例えばCl-のような陰イオンに関
わるものでもよい。簡便なものとしては、プロトン濃度
勾配を外部物理的エネルギーで制御することによって生
じる自由エネルギーにてADPのリン酸化をすることの
できるH+-ATP合成酵素がある。この酵素は、ミトコンド
リア、クロロプラスト、光合成細菌等から容易に抽出精
製することができる。
【0029】図3(1)の反応素子は、入力源を電気的
エネルギーにする場合のもので、その場合、駆動したい
イオン種に応じて、後述するイオノフォアを膜に共存さ
せて使用することができる。
【0030】エネルギー源を光入力とする場合には、図
3(2)に示すように、前段反応はATP合成酵素41
aだけでなく、光受容によりイオン輸送を行なう物質4
1bを共存させなければならない。このようなイオン輸
送物質41bとして、ロドプシン等の視物質を使用して
よいが、高度好塩菌から抽出されるバクテリオロドプシ
ン(bR)を用いるのが簡便である。言うまでもない
が、bRの発色団を人工的な発色団に変更して、光吸収
極大波長を天然型から変化させて用いても構わない。ま
た、bRの化学修飾体やbR遺伝子の組換え体の発現産
物などを用いても構わない。bRは光照射によりプロト
ン輸送を行なう蛋白質であることから、共役するATP
合成酵素はH+-ATP合成酵素が簡便であるが、イオノフォ
アと共存させることにより、各種イオンのATP合成酵
素と共役させることが可能である。
【0031】イオノフォアとしては例えば、グラミシジ
ン、バリノマイシン、ノナクチン、モナクチン、ナイジ
ェリン、アラメシン、モネンジン、A23187、X-5374等の
微生物由来の天然オリゴペプチドだけでなく、合成品の
環状オリゴペプチド等でもよい。また、環状もしくは鎖
状ポリエーテル誘導体、18−クラウンエーテルに代表
されるクラウンエーテル類あるいはクリプタンド類等の
有機化合物でも構わない。
【0032】また、光照射によるイオン輸送の手段とし
ては、上述したbRのような生体由来の物質に限るもの
でもない。例えば、ベンゾスピロピラン等のスピロピラ
ン化合物を主鎖もしくは側鎖に持つ親水性ポリマーある
いはオリゴマーで作製した膜は、光照射により膜電位を
発生させることができる。このようなポリマー膜にAT
P合成酵素を共存させるかあるいは、オリゴマーを脂質
2分子膜に修飾させてもよい。この場合にも、利用する
イオン種に応じてイオノフォアを混在させてもよい。
【0033】反応素子内のATP合成酵素および光受容
性のイオン輸送物質は、関連するイオン種の透過性を制
御し得る膜33あるいは43に担持して用いる。そのよ
うな膜として、脂質の2分子膜を用いるのが簡便である
が、脂質2分子膜と同様の機能を示すものであれば、他
の構造のものでも構わない。また、例えば、ナイロン等
の多孔性ポリマー等に脂質2分子膜を充填した複数種の
材料を使用しても良い。脂質2分子膜は、生体膜と類似
の構造および機能を持っており、ATP合成酵素の担持
マトリクスとすることができる。一般に脂質2分子膜
は、形状から閉鎖小胞(ベジクル)と平面膜に大別する
ことができるが、既に述べたように、本発明ではいずれ
の形状も利用することができる。
【0034】脂質材料としては、炭素が8個以上の長鎖
アルキル基と親水基を有して構成されているもので、親
水基がカチオン性、アニオン性、ノニオン性のいずれで
もよい。例えば、ホスファジルコリン、ホスファチジル
エタノールアミン、ジホスファチジルグリセロールなど
のグリセロリン脂質;スフィンゴミエリン、セラミドシ
リアチン等のスフィンゴリン脂質;セレブロシド、スル
ファチド、セラミドオリゴヘキソシド等のスフィンゴ糖
脂質;親水基として炭水化物を含むグリコシルジアシル
グリセロール等のグリセロ糖脂質などを挙げることがで
きる。本発明で言う脂質はこれらに限定されるものでは
なく、閉鎖小胞あるいは平面膜を形成できるものであれ
ば材質の如何を問わない。
【0035】閉鎖小胞の作製方法は、通常使用されてい
る方法で良く、特別な工夫を必要としない。例えば、界
面活性剤で脂質を可溶化して作った混合液から透析によ
り界面活性剤を除去する方法(透析法);水溶液に脂質
を加え適当な温度で懸濁し、ボルテックスなどにより機
械的振動を与えた後、その懸濁液を急速冷却し徐々に融
解させる方法(凍結融解法);懸濁液を超音波処理する
方法(超音波処理法);脂質の有機溶媒溶液を水と混和
させた後、有機溶媒を除去する方法(逆相蒸発法);作
製した閉鎖小胞懸濁液に交流電場を与えるなどして融合
する方法(膜融合法)などを使用することができる。
【0036】これらの方法を組み合わせたり、その他の
変法も使用することができる。閉鎖小胞の粒径は作製方
法により多様であるが、容易に100nm〜100μm
の範囲で分布させることができる。
【0037】さらに、中空の閉鎖小胞だけでなく、中心
の基材を脂質2分子膜で被覆した形態を取ってもよい。
このような基材として、アガロース、セルロース、コラ
ーゲン等やあるいは樹脂、ゲル、ガラス、金属等を使用
しても構わない。例えば、ポリメチルメタクリレートの
微粒子を脂質2分子膜で被覆した構造などが便利であ
る。
【0038】平面膜の作製方法としては、黒膜法やLang
miur-Blodgett(LB)膜法などを利用することができ
る。黒膜法は、テフロン(商品名;デュポン社)等の薄
いシートに直径数100μmの細孔を開けたものを水溶
液中に浸し、細孔に有機溶剤に溶かした脂質を塗ると、
溶剤が細孔の周辺部に移動して中心部に脂質2分子膜が
形成されることを利用するものである。LB法とは、分
子内に親水基部位と疎水基部位とを有する構造の分子あ
るいは親水基性に顕著な差がある部位を有する構造の分
子において、分子は水面上で親水基を単分子層を形成す
ることを利用して単分子膜を形成させ、基盤面上にこの
単分子膜を付着させる方法である。
【0039】上述したATP合成酵素や光感受性イオン
輸送蛋白質は、生体中では膜中に高密度で分布してい
る。例えば、bRは紫膜中で2次元結晶を形成してお
り、このような蛋白質の配向法などが提案されている
(J.I.Korenbrot and S.B.Hwang, J. Gen. Physiol., 7
6, 649-682, 1980)。また、H+-ATPは人為的に2次元結
晶構造を形成させることが可能となっており(K.Nagaya
ma, Nanobiology 1, 25-37,1992; H.Yoshimura et al.,
J. Biochem. 106, 958-960, 1989)、このような方法
により、脂質膜に高密度で担持させることが好ましい。
【0040】本発明の反応方法では、第二の要件となる
後段反応は、再生されたエネルギー供与体とこの利用酵
素の作用を同一の場所でエネルギー供与体の拡散のみに
よる移動で実現される。この課題を解決するのが、本発
明で言うところの反応素子であり、図2および図3に示
したように、同一の担持膜にエネルギー供与体合成酵素
とエネルギー供与体利用酵素(図2の12あるいは22
および図3の32あるいは42)を保持させるものであ
る。
【0041】エネルギー供与体合成酵素を構成するもの
は、高エネルギー供与体もしくはリン酸供与体の共存下
で酵素活性を示すものが挙げられる。このようなものと
して、各種のリン酸転移酵素、アミノアシル−tRNA
シンターゼ、CoAシンターゼ、アミノ酸合成酵素、N
TPシンターゼ、カルボキシラーゼ、リガーゼなどの各
種合成酵素を挙げることができるが、例えばDNAas
eに見られるような分解酵素を使用してもよい。もちろ
ん、使用できる酵素であればこれらに限定されるもので
はなく、高エネルギーリン酸供与体存在下で活性を示す
酵素であれば構わない。さらに、複数種の酵素を共存さ
せて、より多段の反応を行なわせても構わない。
【0042】図3で示したように、反応素子は上記のエ
ネルギー供与体利用酵素がATP合成酵素と同一の脂質
2分子膜等の担持膜に固定されたものである。脂質膜に
固定する方法は、特別な手法を必要とするものではな
く、通常の方法でよい(Torchilin, VP & Klibanov, A
L; Enzyme Microb. Technol., 3, 297, 1981)。例え
ば、物理的吸着法、共存超音波(joint sonication)
法、共有結合法等を使用することができる。また、膜蛋
白質のような脂質疎水部に組み込まれる物質を抗原とす
る抗体を介して結合してもよい。また、閉鎖小胞形状の
脂質マトリクスを使用する場合には、これを基板に固定
することで溶媒流速の影響を回避することが可能であ
る。
【0043】後段反応は、本発明で言う反応素子によっ
てのみ実現されるものではなく、エネルギー供与体合成
酵素とエネルギー供与体利用酵素の両者が共存していれ
ばよい。図5に、この共存の実施態様を示す。図5の
(2)は、反応器内の反応素子において、すでに両酵素
が同一素子上に共存している場合(素子60)であり、
図5の(3)は、エネルギー供与体合成酵素とエネルギ
ー供与体利用酵素が反応器内で共存する別々の担体ある
いは基材に固定されている場合(それぞれ素子61およ
び62)である。
【0044】図5(3)のエネルギー供与体利用酵素を
固定する担体あるいは基材の材料としては、樹脂、ガラ
ス、金属、ゲル、アガロース、コラーゲン、セルロース
等を用いることができ、形状として特に制限はない。担
体および基材への固定は、特別の手法を必要とするもの
ではなく、通常用いられる方法(千畑一郎編:固定化酵
素,講談社サイエンティフィック,1975)でよい。例え
ば、臭化シアン処理したアガロースビーズに酵素固定す
る方法などが便利である。
【0045】図5では、エネルギー供与体合成酵素とエ
ネルギー供与体利用酵素との容器内での関係を特に示し
ていないが、反応素子をさらに固定化してもよい。ま
た、図5(3)のように、エネルギー供与体合成酵素と
エネルギー供与体利用酵素が別々の担体に存在する場合
にも、それぞれの担体を固定することもできる。また図
6に示すように、エネルギー供与体合成酵素71が固定
されている基材74にエネルギー供与体利用酵素72を
有する素子73が固定されていても構わない。
【0046】外部物理的エネルギーとしては、その印加
に伴って、後段反応に不必要な添加剤、反応副産物、溶
出物のないものが好ましい。本発明の実施態様では、A
TP再生のエネルギー源として電気的あるいは光エネル
ギーを入力する方式を示しているが、もちろん、同様の
効果を誘起できればこれらの入力法に限定されるもので
はなく、また複数の入力法を併用しても構わない。
【0047】図7に電気的エネルギーの印加により反応
素子を駆動する場合を示す。この図において、反応容器
81は両端に電極82、83を有し外部電源84からこ
の電極間に電圧を印加できるようになっている。容器内
の溶媒中に図7(2)に示した反応素子85が懸濁され
ており、反応の開始は電圧の印加によって行なわれる。
【0048】図8には、光を入力エネルギー源とする構
成を示す。この図において、反応容器92は、例えばガ
ラスのような可視光入力を透過する透明な材質で構成さ
れ、容器内の溶媒中に図8(2)の反応素子91が懸濁
されている。言うまでもなく、不透明な容器を用いて光
ガイドを容器内に導入しても構わない。また、図7ある
いは図8の反応器に、溶媒を攪拌するための手段や、基
質を補給したり生成物を取り出す等の目的で、送液系を
設けてよいことは言うまでもない。
【0049】以上の説明では、高エネルギー供与体をA
TPに想定して述べてきた。しかし、合成反応系が共役
する高エネルギーリン酸化合物はATPに限ったもので
はなく、グアノシン−5’−三リン酸(GTP)などの
ヌクレオチド三リン酸もまた共役する。最後に、このよ
うなATP以外の高エネルギーリン酸化合物の再生を前
段反応とする場合について説明する。
【0050】このような高エネルギーリン酸化合物は通
常ATPの再生と共役して再生することが可能である。
例えばGTPの再生は、ヌクレオチド二リン酸キナーゼ
を固定することにより、下記式の反応に従って、ATP
の再生と共役させて行なうことができる。
【0051】
【化2】ATP + GDP → ADP + GTP この場合、図3に示した32あるいは42を2種の酵素
系になるように固定し、そのうちの一種をヌクレオチド
二リン酸キナーゼとすることにより、外部物理的エネル
ギーでGTPを再生し、もう一種の酵素でGTPを利用
することができる。
【0052】
【実施例】以下に、実施例をもって本発明を詳細に説明
するが、これらは本発明の範囲をなんら制限するもので
はない。
【0053】(実施例1)Kagawaら(The Journal of B
iological Chemistry, Vol.250, No.19, p.7910-7916お
よびp.7917-7923(1975))の方法に準じて好熱性細菌で
あるPS3の培養ならびにATP分解酵素の抽出・精製
を行った。
【0054】20mgのアゾレクチン(大豆フォスファ
チジルコリン、タイプIV−S:Sigma社)のクロ
ロホルム溶液1mlをナス型フラスコに入れ、ロータリ
ーエバポレータを用いて溶媒を留去したのち、デシケー
タに入れ真空ポンプにて溶媒を完全に除いて脂質薄膜を
作成した。次いで、2%のコール酸ナトリウム、10m
Mの塩化カリウム、10mMのトリス緩衝液(塩酸にて
pH8に調整)を含む溶液1mlを加え、ボルテックス
ミキサーにて2分間処理して脂質薄膜を分散させた後、
水浴型超音波発振装置(ソニファイアーB−15型、ホ
ップホーン使用:Branson社製)で30分間処理した。
続いて、前記ATP分解酵素250μgを加え、1分間
ボルテックスミキサーにて処理した後、2リットルの1
0mM塩化カリウム、10mMトリス緩衝液(塩酸にて
pH8に調整)に対して24時間、次いで10mM塩化
カリウム水溶液2リットルに対して24時間透析を行
い、ATP分解酵素を含むプロテオリポソームを調製し
た。
【0055】一方、20mgのアゾレクチン、1mgの
ジチオピリジル化ジバルミトイルホスファチジルエタノ
ールアミン(Sigma社製)のクロロホルム溶液を前記と
同様に処理して脂質薄膜を作成し、10mM塩化カリウ
ム水溶液1mlを加えて超音波処理してリポソーム分散
液を調製した。
【0056】次に、グルコキナーゼ(EC 2.7.1.2: 生化
学工業社製)100μgを20mMのN−スクシンイミ
ジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SP
DPと略す)溶液1mlに加え、室温にて30分間反応
させた。過剰のSPDPを除去するために0.1M酢酸
緩衝液(0.15Mの塩化ナトリウム含有、pH4.
5)で平衡化したセファデックスG−25カラム(1*
25cm)でゲル瀘過した。得られた蛋白質分画にジチ
オスレイトール(DTTと略す)でゲル瀘過して、過剰
のDTTと蛋白質分画を分離した。この蛋白質分画を前
記リポソーム分散液に加えて、ゆっくり攪拌しながら4
℃にて24時間反応させ、グルコキナーゼを保持したリ
ポソームを調製した。
【0057】ATP分解酵素を含むプロテオリポソーム
分散液1mlとグルコキナーゼを保持したリポソーム分
散液1mlを混合し、ポリエチレングリコール(平均分
子量5000、Sigma社製)を重量濃度30%となるよ
うに加え、室温にて2時間反応させた。この過程におい
て、リポソームの融合によってATP分解酵素とグルコ
キナーゼを保持したりリポソームが調製された。
【0058】調製されたリポソームの確認は、電圧印加
によりグルコースとADPから、グルコース−6−リン
酸が合成されることにより行った。
【0059】(実施例2)実施例1と同様にして、AT
P分解酵素を含むプロテオリポソームを調製した。
【0060】次に、P. OesterheltおよびW. Stoeckeniu
sの方法(Method. Enzymol., 31, 667-678(1974))によ
って高度好塩菌Halobacterium halobium RJ株から抽出
した紫膜を、K. Huangの方法(Proc. Natl. Acad. Sc
i., USA, 77, 323(1980))に従って界面活性剤Triton X
-100(和光純薬工業社製)で処理し、紫膜を脱脂質した
状態の膜蛋白質バクテリオロドプシン(bRと略す)を
得た。このbRを実施例1と同様にしてリポソームに再
構成して、bRを含むプロテオリポソームを調製した。
【0061】続いて、ATP分解酵素を含むプロテオリ
ポソーム分散液1mlとbRを含むプロテオリポソーム
分散液1mlを混合し、ポリエチレングリコール500
0を重量濃度30%となるように加え、室温にて2時間
放置した。この過程において、リポソームの融合によ
り、ATP分解酵素とbRを含むプロテオリポソームが
調製された。
【0062】調製されたリポソームの確認は、光照射に
伴うATP合成によって行った。すなわち、560nm
の光照射によってbRがリポソームの内部にプロトンを
汲み入れ、その結果、リポソーム膜の内外にプロトンの
電気化学ポテンシャル差が形成され、このポテンシャル
差を利用してATP合成酵素がADPと無機リン酸から
ATPを合成することを利用して、ATP合成酵素とb
Rが同一リポソーム内に再構成されたことを確認した。
【0063】具体的には、ATP合成酵素とbRを含む
プロテオリポソーム200μlに10mMのATPと2
mMの塩化マグネシウムを混合し、ルミノメーター用透
明キュベット(容量3ml)に入れ、バンドバスフィル
ター(多層膜フィルター、朝日分光社製、中心波長55
5nm、半値幅30nm)と熱カットフィルターを通し
たハロゲン光(Technolight KLS-2150, Kenko社製)を
照射し、ATP合成を測定した。合成されたATPは、
それを基質として分解するルシフェリン/ルシフェラー
ゼ系試薬(ATP Assay Kit, LKB社製)を利用し、発
光強度をルミノメーター(1251、Bio-Orbit社製)
で測定することにより定量した。
【0064】光照射に伴い、ATP合成酵素1モル当
り、ATP4モルが合成されたことより、ATP合成酵
素とbRが同一リポソーム内に再構成されたことを確認
した。
【0065】(実施例3)試験管にアゾレクチンのクロ
ロホルム溶液(30mg/ml)1mlを入れ、ロータ
リーエバポレーターを用いて溶媒を留去した後、デシケ
ータに入れ、真空ポンプを用いて溶媒を完全に除いた。
これに2mlの緩衝液(20mMリン酸カリウム、1.
25mM硫酸マグネシウム、2%コール酸ナトリウム)
を加え、ボルテックスミキサーで30秒処理して脂質薄
膜を分散させた後、プローブ型超音波発振装置で30分
間処理して一枚膜のリポソーム懸濁液を得た。
【0066】好熱菌P3SよりATP合成酵素TF01
を前記のKagawaらの方法によって調製した。遠心分離と
ゲル瀘過(バイオゲル、A-5m, BIO RAD)を行った精製
TF01を脂質/蛋白質の比率(重量比)が10〜20
0となるように予め調製してあった懸濁液に加えて、1
分間超音波処理した。この懸濁液を液体窒素またはドラ
イアイス・アセトンで凍結、室温で融解、ボルテックス
ミキサーで30秒処理する操作を3回繰り返し、TF0
1再構成ベクシルを得た。
【0067】調製後の懸濁液にグルコキナーゼ(EC
2.7.1.2;生化学工業)をTF01とほぼ等重量
部加え、約10秒間ボルテックスミキサーで処理した
後、1分間超音波処理した。
【0068】直径5mm程度のガラス容器の開口部か
ら、一対の薄いPt板電極を互いに平行になるように固
定して反応容器とした。上記のように調製した懸濁液を
アルゴンで脱気置換した後、グルコース10mmol、
ADP1mmolを加えて軽く振とうした。この試料を
ガラス容器に移し、両電極間に約1.5Vの定電圧の3
0分間印加を断続的に繰り返し、合計8時間通電した。
【0069】処理した試料内のグルコース−6−リン酸
は、Pollakらの方法(J. Amer. Chem. Soc., 99:7, 236
6-2367, 1977)に従って定量すると、転換率80%であ
ることがわかった。
【0070】(実施例4)実施例3同様に調製したリポ
ソーム懸濁液に膜蛋白質バクテリオロドプシン(bR)
を加えてプロテオリポソームを形成した。次に、前記の
P. OesterheltおよびW. Stoeckeniusの方法によって高
度好塩菌Halobacterium halobium RJ株から抽出した紫
膜を、K. Huangの方法(Proc. Natl. Acad. Sci., USA,
77, 323(1980))を用いて、脂質を脱脂質してバクテリ
オロドプシンを得た。この懸濁液を2分間超音波処理し
て、ミセル溶液とした。
【0071】実施例3同様に精製したTF01を、TF
01/bRの比率が2となるように加えて懸濁し、1分
間超音波処理した。これを3リットルの緩衝液(20m
Mリン酸カリウム、1.25mM硫酸マグネシウム)で
約48時間透析すると、bR−TF01の再構成ベクシ
ルを得た。
【0072】こうして得られたbR−TF01−ベクシ
ルがATP合成活性を示すことを、予め前記のルシフェ
リン/ルシフェラーゼ系試薬で調べた。光照射後、試薬
を素早く加え、ルミノメーター測定すると、光照射の約
15分後にATP合成活性はピークを示すことがわかっ
た。
【0073】この試料に実施例3と同様にして超音波を
用いてグルコキナーゼの修飾を施した。さらに、脱気
後、グルコース10mmol、ADP1mmolを加え
て軽く振とうする。
【0074】角型のガラスセルを反応容器とし、それに
上記試料を入れて、ハロゲンランプ(150W×2台;
Kenko TechnoLight)の光源を光ガイドで導き、波長フ
ィルターおよび熱カットフィルターを通して反応器に1
時間照射した。
【0075】実施例3と同様にして定量を行い、その試
料内に生成したG−6−Pの確認を行った。
【0076】(実施例5)実施例4同様に脱脂質したバ
クテリオロドプシンのカルボキシル末端に特異的に結合
するモノクローナル抗体をKimuraらの方法(J. Biol. C
he., 257, 2859(1980))に従って作製した。この抗体と
グルコキナーゼの両者を粒子径100μmのアガロース
ゲル(ファルマシア社製;CNBr-activated Sepharose 4
B)に共有結合で固定した。膨潤ゲル1ml当り抗体
0.5mg、グルコキナーゼ5mgにて、カップリング
バッファ、0.5MNaCl、0.2MNaCO3を用
い、4℃で一晩反応させた。未反応活性基をブロック
し、過剰の抗体およびグルコキナーゼを洗い流した後、
それらを結合したゲルを0.1MNaClで洗浄した。
【0077】精製したバクテリオロドプシン0.2mg
を含む0.1MNaCl溶液に前記のゲルを加え、バク
テリオロドプシンをゲルに固定したモノクローナル抗体
に結合させた。
【0078】bR−TF01再構成プロテオリポソーム
を実施例4に従って調製した。このプロテオリポソーム
を上記のゲルに加えて1時間インキュベートし、抗体に
結合したバクテリオロドプシンをプロテオリポソームに
組み込ませた。
【0079】この試料を実施例4と同様にして、光照射
用ガラスセルに移し、グルコース、ADPを加え、1時
間光照射した。反応生成物を実施例3と同様に定量し、
G−6−Pの存在を確認した。
【0080】(実施例6)実施例4同様に、bR−TF
01の再構成ベクシルを調製した。次に、実施例5同様
にして、アガロースゲルにグルコキナーゼを修飾した。
この2種類の粒子を実施例4に示したガラスセルに入れ
て光照射し、実施例3と同様にして、生成したG−6−
Pの確認を行った。
【0081】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明により、膜蛋
白質と水溶性蛋白質の2種の酵素を固定したリポソーム
により2つの個となる酵素の共役反応を実現させる酵素
固定素子を提供することが可能となる。さらに、エネル
ギー供与体の脱リン酸化を駆動源とする酵素反応におい
て、エネルギー供与体の再生を物理的エネルギーによっ
て同時連続的に行わせることが可能となる。それによ
り、リン酸供与体として高エネルギーリン酸化合物を使
用する必要がなく、反応副産物あるいは溶出物が生じる
ことがなく、安定剤などの添加剤を溶媒中に加える必要
もない。従って、ATP再生と連続して行わせる酵素反
応に制限が少なくなり、より広範な酵素反応にその方法
を適用することができるようになる。また、高エネルギ
ー供与体の再生のために供給すべき反応前駆体の補給を
行う必要がなく、酵素反応生成物の分離の操作を省略す
ることができることから、それが装置の簡略化に寄与す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反応方法の流れを示す概念図である。
【図2】本発明の反応素子の例の模式的断面図であり、
(1)は平面形状の素子、(2)は球面形状の素子の図
である。
【図3】本発明の反応素子の例の模式的部分断面図であ
り、(1)は入力源が電気的エネルギーの場合、(2)
は入力源が光エネルギーの場合の図である。
【図4】本発明の酵素反応素子製造方法で製造される酵
素反応素子の1例の構成を示す模式的部分断面図であ
る。
【図5】本発明の反応方法の例を示す概念図であり、
(1)は酵素反応素子の例、(2)はエネルギー供与体
合成酵素とエネルギー供与体利用酵素が同一の素子に担
持されている場合、(3)はそれら酵素が別個の素子に
担持されている場合の図である。
【図6】本発明の酵素反応素子の別の例の模式的断面図
である。
【図7】本発明の酵素反応方法のうち、駆動を電気的エ
ネルギーによって行う場合の模式図であり、(1)は反
応器の全体図、(2)は使用する反応素子の断面図であ
る。
【図8】本発明の酵素反応方法のうち、駆動を光エネル
ギーによって行う場合の模式図であり、(1)は反応器
の全体図、(2)は使用する反応素子の断面図である。
【符号の説明】
1 物理エネルギー印加手段 2、11、21、51、71 エネルギー供与体
合成酵素 3、12、22、52、72 エネルギー供与体
利用酵素 A エネルギー供与体 B エネルギー供与体前駆体 a 基質 b 生成物 13、23、33、43、53 膜 31、41a ATP(エネルギー供与体)合成
酵素 41b 光受容イオン輸送物質 32、42 ATP(エネルギー供与体)利用酵
素 60、61、62、73、85、91 素子 74 基材 81、92 反応容器 82、83 電極 84 外部電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野本 毅 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脂質と第一の蛋白質から成るプロテオリ
    ポソームと、表面に第二の蛋白質を固定したリポソーム
    とを融合することを特徴とする酵素反応素子の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法で製造される酵素反
    応素子。
  3. 【請求項3】 表面が親水性で内部が疎水性の膜からな
    るマイクロカプセルであって、第一の蛋白質分子の一部
    が該膜内部の疎水部に埋め込まれて担持され、第二の蛋
    白質分子が該膜の親水性表面に固定されている請求項2
    記載の酵素反応素子。
  4. 【請求項4】 第一の蛋白質と第二の蛋白質の一方が物
    理的エネルギーで生じるイオン濃度勾配を利用してエネ
    ルギー供与体前駆体とリン酸供与体からエネルギー供与
    体を生成するエネルギー供与体合成酵素であり、他方が
    該エネルギー供与体の脱リン酸化を行なうエネルギー供
    与体利用酵素である請求項3記載の酵素反応素子。
  5. 【請求項5】 リン酸供与体、エネルギー供与体前駆
    体、物理的エネルギーで生じるイオン濃度勾配を利用し
    て該エネルギー供与体前駆体と該リン酸供与体からエネ
    ルギー供与体を生成するエネルギー供与体合成酵素およ
    び該エネルギー供与体の脱リン酸化を行なうエネルギー
    供与体利用酵素を含む液媒体と物理的エネルギーの印加
    手段とを有して成ることを特徴とする酵素反応器。
  6. 【請求項6】 リン酸供与体、エネルギー供与体前駆体
    および請求項4記載の酵素反応素子を含む液媒体と物理
    的エネルギーの印加手段とを有して成る酵素反応器。
  7. 【請求項7】 物理エネルギーが光エネルギーであり、
    光受容性のイオン輸送物質を含有する請求項5または6
    記載の酵素反応器。
  8. 【請求項8】 物理エネルギーが電気エネルギーである
    請求項5または6記載の酵素反応器。
  9. 【請求項9】 エネルギー供与体がアデノシン−5’−
    三リン酸(ATP)である請求項5または6記載の酵素
    反応器。
  10. 【請求項10】 リン酸供与体が無機リン酸である請求
    項5または6記載の酵素反応器。
  11. 【請求項11】 請求項5ないし10のいずれか1項に
    記載の酵素反応器を用い、物理的エネルギー印加手段か
    ら物理的エネルギーを印加して液媒体にイオン濃度勾配
    を生ぜしめ、エネルギー供与体合成酵素によるエネルギ
    ー供与体合成の反応、およびエネルギー供与体利用酵素
    により該エネルギー供与体から得られるエネルギーを利
    用する系内に存在する基質の反応を連続的に進行させる
    酵素反応方法。
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