JPH0832556B2 - 酸化物超電導体およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導体およびその製造方法

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JPH0832556B2
JPH0832556B2 JP2-509461A JP50946190A JPH0832556B2 JP H0832556 B2 JPH0832556 B2 JP H0832556B2 JP 50946190 A JP50946190 A JP 50946190A JP H0832556 B2 JPH0832556 B2 JP H0832556B2
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直己 腰塚
征治 林
和幸 渋谷
剛雄 川手
喜男 増田
陸郎 小川
吉人 福本
隆博 和田
慎一 郡山
健 桜井
信郎 鈴木
尚雄 山内
昭二 田中
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、超電導遷移温度(以下、単にTcと記すこと
がある)が液体窒素温度を十分に超え、且つ加工中に酸
素を放出して上記Tcが変動するといった問題の少ない酸
化物超電導体、およびその様な酸化物超電導体を製造す
る為の方法に関するものである。
[従来の技術] 液体窒素温度を超えるTcをもつ代表的酸化物超電導体
として、Tc=90Kである三層構造ペロブスカイトRBa2Cu3
O7(但しRはY若しくはランタニド系列希土類元素より
なる群から選択される1種以上の元素)が発見されてい
る[APPl.Phys.Lett.Vol.51(1987)P57]。
しかしながら上記酸化物超電導体は、構成員である酸
素原子が加工時の熱影響によって抜け出し易いという性
質を有しており、従って加工時の熱処理条件等で酸素含
有量が変化し、それに伴なって斜方晶−正方晶転移を起
こし、この相転移によってTcも0Kから90Kまでの範囲で
大きく変動することが知られている[Phys.Rev.B36(19
87)P5719]。
例えばRBa2Cu3O7粉末を銀パイプに充填し、これを冷
間線引加工によって線状にした後、粉末部の焼結熱処理
(800〜900℃)によって超電導線材とする方法(銀シー
ス線材法)を採用した場合、焼結熱処理時に酸素原子が
抜けてしまい、超電導特性が劣化してしまうという欠点
があった。
これに対して、RBa2Cu4O8型酸化物は、850℃付近まで
加熱しても酸素の抜け出しが見られず安定であり、しか
もTcが80K付近にあって、液体窒素温度を上回るので実
用上からも重要な物質であると注目されている。
ところでRBa2Cu4O8型酸化物超電導体の製造方法とし
ては、これまで下記の2つの方法が提案されている。
(1) 仮焼粉を純酸素の高圧雰囲気下で熱処理(例え
ば930℃×8時間,酸素圧100atm)する方法[高圧酸素
法;Tc=81K,Nature 336(1988)P660-662またはPhys.Re
v.B39(1988)P7347-7350)]。
(2) 仮焼粉を炭酸ナトリウム等の触媒と混合し、こ
れを長時間酸素気流中で熱処理する方法[常圧法;Tc=7
7K;Nature 338(1989)P328-330]。
しかしながら、本発明者らが実験によって確認したとこ
ろによると、上記(1),(2)の方法では下記に示す
様な欠点があった。
(1)の方法では、温度や圧力条件によってはRBa2Cu
3O7−δ相やR2Ba4Cu4Oz相等が出現し、RBa2Cu4O8の生成
量が極めて少なくなり、RBa2Cu4O8相本来の特性が失わ
れてしまうことが分かった。また(2)の方法では生成
物中に不純物が残り易く、熱処理にも長時間を要するこ
とから、実際の応用には不向きである。
そればかりでなく、RBa2Cu4O8型酸化物は、Tcが液体
窒素温度を上回るとは言うものの、いずれも80K付近に
あり液体窒素温度(77K)での使用では温度のマージン
が小さすぎることから実用化が困難であり、より高いTc
を示すものを開発することが期待されている。
[発明が解決しようとする課題] 本発明はこうした技術的課題を解決する為になされた
ものであって、その目的は、液体窒素温度よりも十分高
いTcを有し且つ加工時の高温下で酸素の抜け出しを生じ
ない様な安定な酸化物超電導体を提供することにある。
また本発明の他の目的は、RBa2Cu4O8型酸化物のTcを
高め、且つ短時間で製造できる方法を提供することにあ
る。
本発明の更に他の目的は、酸化物超電導体線材を製造
するための有用な方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明に係る酸化物超電導体は、(R1-xCax)Ba2Cu4O8
の化学組成式で表わされる酸化物超電導体であって、R
はYおよびランタニド系列希土類元素よりなる群から選
択される1種以上の元素からなり、xは0.001≦x≦0.5
の範囲(但し、RがY単独でxが0.001≦x≦0.2のとき
を除く)にある点に要旨を有するものである。即ち、本
発明の酸化物超電導体は、RBa2Cu4O8におけるRの一部
をCaで置換したことを最大の特徴とするもので、このこ
とによりTcがほぼ90Kと高くなり、高温熱処理に対して
も優れた安定性を持つ。従って、上記酸化物超電導体を
銀シース線材化する場合であっても、最終工程である焼
結熱処理後も超電導特性を損なうことなく、安定な超電
導線材を作成することができるのである。
また上記目的を達成し得た本発明方法とは、RBa2Cu4O
8(但しRはYおよびランタニド系列希土類元素よりな
る群から選択される1種以上の元素)の構造を有する超
電導酸化物の製造方法において、原料粉を仮焼した後、
不活性ガスと酸素ガスの混合雰囲気中で熱間静水圧加圧
処理する点に要旨を有するものである。即ち、熱間静水
圧加圧処理を適用すれば、Rの一部をCa等で置換してい
ないRBa2Cu4O8型の酸化物超電導体であってもそのTcを
高めることができたのである。
更に上記目的を達成し得た本発明の酸化物超電導体線
材の製造方法とは、R(但しRはYおよびランタニド系
列希土類元素よりなる群から選択される1種以上の元
素),Ca,Ba,Cu,Oからなる酸化物超電導体製造用原料粉
末混合物を、不活性ガスと酸素ガスの混合雰囲気下、85
0〜1100℃の温度範囲で熱間静水圧処理することによ
り、 (R1-xCax)Ba2Cu3O7で示される中間体としての酸化物
を熱間静水圧処理前に生成させないで、 (R1-xCax)Ba2Cu4O8 (但し、xは0.001〜0.5,Rは前と同じ意味) で示される酸化物を含む酸化物超電導体粉末を生成し、
該粉末をシース材に充填して伸線した後、焼結する点に
要旨を有するものである。
[作用] 本発明者らは、液体窒素温度よりも十分高いTcを有
し、且つ高温においても酸素の抜け出しを生じない様な
安定な超電導体を実現すべく、様々な角度から検討を加
えた。
まず本発明者らは、RBa2Cu4O8型酸化物の構造面から
最適な形態について検討を重ねた。その結果、三層構造
ペロブスカイトRBa2Cu3O7型結晶構造における1重のCuO
鎖が2重のCuO鎖になったRBa2Cu4O8型酸化物において、
Rの0.1〜50原子%をCaに置換した(R1-xCax)Ba2Cu4O8
酸化物はCa置換の効果によりTcが液体窒素温度より十分
高くなり且つ850℃付近の加熱条件下でも酸素の抜け出
しがなく安定に加工し得ることが分かった。
本発明に係る酸化物超電導体の基本構造であるRBa2Cu
4O8の構造を第1図に示し、従来のRBa2Cu3O7の構造を第
2図に示す。第1図および第2図において、1はR,2はB
a,3はCu,4は線分の交差点に配置されるOを夫々示す。
本発明に係る酸化物超電導体(R1-xCax)Ba2Cu4O8は、
第1図に示す様に三層構造ペロブスカイトRBa2Cu3O7
結晶構造における1重のCuO鎖が、2重のCuO鎖になった
RBa2Cu4O8酸化物において、Rの0.1〜50原子%をCaに置
換したものである。このCa置換によってTcが大きく上昇
することが本発明の最大の特徴である。尚本発明の酸化
物超電導体(R1-xCax)Ba2Cu4O8は、スパッタリング,共
沈法等各種の方法によって製造できる。
この様な(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物の粉末であれ
ば、線材加工時の高温条件下でも酸素の抜け出しが生じ
ないので、該粉末をシース材に充填して伸線した後焼結
すれば、希望する超電導体線材が得られる。
本発明において、(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物のCa置
換量(即ちxの範囲)を、0.001〜0.5とした理由は下記
の通りである。即ちCa置換の効果が現われるのはxが0.
001以上のときであり、また本発明の製造条件下におい
てはxが0.5を超えることはほとんどないからである。
尚好ましい範囲は0.001〜0.2である(但し、RがY単独
でxが0.001≦x≦0.2のときを除く)。
一方本発明者らは、Ca置換していないRBa2Cu4O8酸化
物のTcを高める為の製造条件についても検討した。その
結果、原料を仮焼後、不活性ガスと酸性ガスの混合雰囲
気中で熱間静水圧加圧処理(以下、HIP処理ということ
がある)を施せば、RBa2Cu4O8酸化物のTcを高めること
ができることを見出した。即ち、前述した手段によれ
ば、RBa2Cu4O8型酸化物のTcが、これまで報告されてい
た方法で製造されたものでは77〜81Kであるのに対し、8
2〜83KのTcを有するに至り、しかも当該RBa2Cu4O8型酸
化物を安定に且つ短時間に製造し得ることができたので
ある。尚このときのHIP処理条件は、反応速度を速める
ためにはより高温高圧条件にするのがよいが、好適条件
は雰囲気ガス組成によって変り、例えばArガス+20%O2
ガス中で全圧1000atmのもとでは800〜1100℃の範囲が適
当である。
次に、本発明に係る酸化物超電導体線材の製造方法に
ついて説明する。この方法においては、まずR,Ca,Ba,C
u,O等からなる粉末混合物を、不活性ガスと酸素ガスの
混合雰囲気下、850〜1100℃の温度範囲でHIP処理し、(R
1-xCax)Ba2Cu4O8(但し、xは0.001〜0.5,Rは前と同じ
意味)で示される酸化物を含む酸化物超電導体粉末を生
成する。これはO2−HIP法と呼ばれるものである。
上記O2−HIP法におけるHIP処理は、不活性ガスと酸素
ガスの混合雰囲気下の処理である。従って純酸素による
場合と同じ圧力(例えば200atm)を酸素分圧で達成しよ
うとすれば混合雰囲気としての全圧を大幅に高めること
ができる。例えば不活性ガスと酸素のモル比を1:1にし
たときは全圧を400気圧に、また4:1にしたときは全圧を
1000気圧にすることが可能となり、Cu原子の拡散が更に
高められ、(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物超電導体の生成
が促進されるものと考えられる。またこのことは、純酸
素によって全圧力を高くする場合と比べ、操業上の安全
性の見地からも大きな利点である。これらの作用は、Ca
置換していないRBa2Cu4O8酸化物を、不活性ガスと酸素
ガスの混合雰囲気中HIP処理(即ち、O2−HIP法)によっ
て製造するときにも発揮される。
(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物を含む酸化物超電導体粉
末を製造するときにおけるHIP処理温度は、RBa2Cu3O7
酸化物の生成を抑制し、(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物の
生成を促進するという観点から、少なくとも850℃以上
であることが必要であるが、1100℃を超えるとR2Ba4Cu7
Oz(以下、2−4−7相と記すことがある)が生成して
混相となりやすいので温度上限は1100℃にする必要があ
る。
ところで本発明者らが実験によって確認したところに
よると、本発明のO2−HIP法において原料粉末を仮焼す
ると後のHIP処理において若干の不都合が生じることが
わかった。即ち原料粉末を仮焼すると、仮焼時に一旦
((R1-xCax)Ba2Cu3O7(以下、1−2−3相と記すこと
がある。)が生成され、この1−2−3相を経て(R1-xC
ax)Ba2Cu4O8相(以下、1−2−4相と記すことがあ
る)が生成するので、HIP処理の所要時間が長くなる
が、高温で長時間のHIP処理を続けることは、1−2−
4相が1−2−3相に比べて分解し易いことから、一旦
生成した1−2−4相が再び1−2−3相へ分解してし
まうという不都合が生じる。
そこで本発明者らは、(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物超
電導体粉末を短時間且つ高収率で製造するという観点か
ら、検討を加えた。その結果、1−2−3相が生成し易
い熱処理工程をできるだけ回避し、1−2−3相が生成
していない状態で原料粉末をHIP処理して直接1−2−
4相を形成すると共に、一旦生成した1−2−4相が1
−2−3相に分解されるのを抑えた状態で反応を停止す
れば良いことを見出した。
こうした手段を採用すれば、HIP処理前に1−2−3
相の合成が進行せず、且つ一旦生成した1−2−4相が
1−2−3相に分解されるのを極力抑えることができる
ので、例えば仮焼や予備熱処理等の1−2−3相が生じ
やすい反応の省略が達成されて短時間化が図れると共
に、HIP処理も長時間行なう必要がなく、製造工程が全
体として効率化される。また炭酸塩を原料あるいは触媒
として用いる必要もなく、炭素原子が不純物として混入
することによる超電導特性の劣化という不都合も生じな
い。但し本発明では仮焼や予備熱処理は常に省略しなけ
ればならないという訳ではなく、HIP処理に先立つある
程度のHIP前処理は許容される。
上記の様にして得られた(R1-xCax)Ba2Cu4O8型酸化物
超電導体粉末を、シース材に充填して伸線した後、焼結
すれば、希望する酸化物超電導体線材が得られる。
本発明方法で用いられる原料粉末の組成は、必ずしも
Rまたは(R+Ca):Ba:Cu=1:2:4にする必要はなく、
これからはずれた組成であっても最終的に実質上RBa2Cu
4O8相または(R1-xCax)Ba2Cu4O8相が生成されておればよ
い。しかしこの相を安定的に生成させるためにはやはり
原料粉末の組成をRまたは(R+Ca):Ba:Cu=1:2:4に
するのが好ましい。尚原料粉末の形態は、生成反応を容
易に進行させるという観点から、Y2O3,R2O3,CaO,BaO,Cu
2O等の酸化物を用いるのが好ましい。
本発明によって提供される酸化物超電導体は、明細書
の全記載から理解される様に1−2−4相の化学構造を
保有していることが特徴的構成であるが、本発明の効果
を格別に希釈するものでなければ、ある程度の1−2−
3相や2−4−7相等の不純物が混在することは積極的
に排除するという趣旨でないことは当業者にとって容易
に理解されるであろう。
次に実施例および比較例を挙げて本発明の構成および
作用効果を具体的に説明するが、本発明はもとより下記
実施例に限定されるものではない。
[実施例] 実施例1 純度99.9%のY2O3、Ba(NO3)2、CuO、CaCO3粉末を化学組
成式(Y1-xCax)Ba2Cu4O8において、x=0,0.2,0.25,0.3,
0.4,0.5,0.6となるように混合し、酸素中850℃×24時間
の仮焼を行なった。仮焼後、試料を粉砕し直方体に成形
した。この成形体を酸素中800℃で5時間予備焼結し
た。この予備焼結体を1000atm・Ar80%+20%O2ガス雰
囲気下で熱処理を行なった。200℃/hrで加熱して960℃
で6時間保持し、そこからさらに1050℃まで200℃/hrで
加熱し、その温度で6時間保持した。冷却は200℃/hr速
度で300℃まで行ない、1気圧まで減圧したあと試料を
空気中に取り出した。この試料を再び粉砕し成形した。
この成形体を酸素中800℃で20時間焼結して所定の試料
を得た。
この様にして得られた(Y1-xCax)Ba2Cu4O8の焼結体の
生成相を粉末X線回折を用いて確認した。得られた試料
の主成分はいずれもYBa2Cu4O8型の結晶構造を有するこ
とを確認した。x=0.25の試料の粉末X線回折図形を第
3図に示し、図中の数字はYBa2Cu4O8型構造にもとづい
たピークの指数である。この試料には、若干の第2相が
認められる。試料の生成相を第1表にまとめて示した。
xが0から0.2の範囲では、(Y1-xCax)Ba2Cu4O8の単一相
であり、xが0.25になると第2相を含むようになる。
これらの試料の超電導特性を抵抗測定により調べた。
その結果を第4図及び第1表に示した。第1表におい
て、Tconは常電導状態から超電導転移を開始する温度、
TcR=0は抵抗0になるときの温度、ρ300kは300Kのとき
の抵抗率である。
本実施例の(Y1-xCax)Ba2Cu4O8の超電導体試料は、第
4図及び第1表からわかるように、いずれも90K級の超
電導転移温度を示す。この超電導転移温度は、液体窒素
の沸点(77K)よりも十分高い温度である。試料の室温
における抵抗値を比較すると、Caの含有量xの増加とと
もに室温の抵抗値が低下する。このように室温の抵抗値
の低い試料に対して高臨界電流密度が期待できる。室温
の抵抗はxが0.3の試料が一番低く、xが0.4以上ではx
の増加と共に抵抗値は高くなりx=0.6ではx=0の場
合よりも高くなる。
また、これらの試料の気孔率を研磨試料の光学顕微鏡
観察から求めた。これらの値を第1表にまとめて示し
た。この結果を見ると、xの増加とともに気孔率が低下
し、x=0.3の試料でほぼ4%になる。しかし、これ以
上xが増加しても気孔率は変化しない。
X線回折の結果、室温における抵抗率、気孔率の測定
結果を考慮すると、xの増加にともなう試料の室温の抵
抗率の低下は、YBa2Cu4O8のYのサイトにCaが固溶する
ことによる効果と共に、xが0.2を越える場合には生成
した第2相が焼結助材として働き試料が高密度化するた
めによるものと考えられる。しかし、あまりに第2相が
多くなると超電導体の体積分率が低下するので望ましく
はない。xの上限は0.5である。
また、例えば第5図の(a)に示すようにx=0.3の
試料の熱重量分析の結果、常温から850℃付近まで重量
変化を示さず、850〜900℃で重量の減少を示すことか
ら、850℃という高温に至るまで酸素の出入りもなく安
定に存在することが確認できた。ところが従来の超電導
体YBa2Cu3O7では、第5図の(b)に示すように、400〜
800℃で大きく酸素が放出してしまう。
以上の説明からわかるように、本実施例によれば、母
材となる超電導体YBa2Cu4O8の超電導転移温度が80Kで、
しかも難焼結性であり、そのため焼結体の気孔率が30%
以上であるのに対して、(Y1-xCax)Ba2Cu4O8の組成を有
し、実施例試料は、いずれも超電導転移温度が90Kであ
り、焼結体の気孔率も10%以下である。さらに、これら
の試料は室温の電気抵抗率も低く、熱分析では850℃付
近まで、酸素の出入りがなく安定に存在することが確認
できた。
実施例2 純度99.9%のHo2O3,Ba(NO3)2,CuO,CaCO3の粉末を化学
組成式(Ho1-xCax)Ba2Cu4O8において、x=0,0.01,0.1,
0.2,0.3,0.4,0.5,0.6となるように混合し、空気中850℃
で24時間仮焼を行った。仮焼後、試料を粉砕し直方体に
成形した。この成形体を酸素中800℃で5時間予備焼結
した。この予備焼結体を1000atm・Ar80%−O220%のガ
ス雰囲気下で加熱処理を行った。200℃/hで加熱して960
℃で6時間保持し、そこからさらに1050℃まで200℃/h
で加熱して、その温度で6時間保持した。冷却は200℃/
hの速度で300℃まで行い、1気圧まで減圧したあと試料
を空気中に取り出した。この試料を再び粉砕し成形し
た。この成形体を酸素中800℃で20時間焼結して所定の
試料を得た。
この様にして得られた(Ho1-xCax)Ba2Cu4O8の焼結体の
生成相を粉末X線回折を用いて確認した。得られた試料
の主成分はいずれもRBa2Cu4O8型の結晶構造を有するこ
とを確認した。x=0.10の試料の粉末X線回折図形を第
6図に示した。図中の数字はRBa2Cu4O8型構造にもとづ
いたピークの指数である。この試料は、超電導相の単一
相であった。試料の生成相を第2表にまとめて示した。
xが0から0.2の範囲では、(Ho1-xCax)Ba2Cu4O8の単一
相であり、xが0.30になると第2相を含むようになる。
これらの試料の超電導特性を抵抗測定により調べた。
その結果を第7図および第2表に示した。
実施例の(Ho1-xCax)Ba2Cu4O8の超電導体試料は、第7
図および第2表からわかるように、いずれも90K級の超
電導転移温度を示す。この超電導転移温度は、液体窒素
の沸点(77K)よりも十分高い温度である。試料の室温
における抵抗値を比較すると、Ca含有量xの増加ととも
に室温の抵抗値が低下する。このように室温の抵抗値の
低い試料に対しては高臨界電流密度が期待できる。室温
の抵抗はxが0.3のときに一番低く、xが0.4以上ではx
の増加と共に抵抗値は高くなり、x=0.6ではx=0の
場合よりも高くなる。
また、これらの試料の気孔率を研磨試料の光学顕微鏡
観察から求めた。これらの値を第2表にまとめて示し
た。この結果を見ると、xの増加とともに気孔率が低下
し、x=0.3の試料でほぼ5%になる。しかし、これ以
上xが増加しても気孔率はほとんど変化しない。
x線回折の結果、室温における抵抗率、気孔率の測定
結果を考慮すると、xの増加にともなう試料の室温の抵
抗値の低下は、HoBa2Cu4O8のHoのサイトにCaが固溶する
ことによる効果と共に、xが0.2を越える場合には生成
した第2相が焼結助材として働き試料が高密度化するた
めによるものと考えられる。しかし、あまりに第2相が
多くなると超電導体の体積分率が低下するので望ましく
ない。したがってxの望ましい範囲としては、0.001≦
x≦0.2である。
また、例えば第8図の(a)に示すように、x=0.1
の試料の熱重量分析の結果、常温から850℃付近まで重
量変化を示さず、850〜900℃で重量の減少を示すことか
ら、850℃という高温に至るまで酸素の出入りもなく安
定に存在することが確認できた。ところが従来の超電導
体HoBa2Cu3O7では、第8図の(b)に示すように、400
〜800℃で大きく酸素が放出してしまう。
以上の説明からわかるように、本実施例によれば、母
材となる超電導体HoBa2Cu4O8のTcが80Kで、しかも難焼
結性であり、そのため焼結体の気孔率が30%以上である
のに対して、(Ho1-xCax)Ba2Cu4O8の組成を有し、xが0.
001≦x≦0.5の範囲にある試料は、いずれも超電導転移
温度が約90Kであり、焼結体の気孔率も20%以下であ
る。さらに、これらの試料は室温の電気抵抗率も低く、
熱分析では850℃付近まで、酸素の出入りがなく安定に
存在することが確認できた。
実施例3 (Ho1-xCax)Ba2Cu4O8のHoを、Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Er,Tm,Y
b,Luに置き換え、且つx=0.1に固定して実施例2と同
様のプロセスで試料を作製した。また、実施例2と同様
の評価を行い、その結果を第3表に示した。
第3表に見られる通り、Rを、Hoから、Nd,Sm,Eu,Gd,
Dy,Er、Tm,Yb,Luのうちのどれにかえても同様の効果が
得られることがわかった。
したがって、本発明の酸化物超電導体は、シース線材
化する場合、最終工程である焼結熱処理工程で、超電導
特性を損なうことなく安定で、しかも易焼結性であるの
で、それぞれの粒子が高密度に焼結した臨界電流密度の
高い超電導線材を作製することができる。
また、本発明による酸化物超電導体は、高温成形を行
う場合、バインダーを使用することにより高密度成形が
可能である。すなわち、従来の超電導体RBa2Cu3O7は、4
00℃以上でもバインダー除去はできないが、本発明の超
電導体の場合には、800℃以下でバインダー除去は可能
である。これにより、高密度成形ができるので、さらに
超電導電流密度を向上させることができる。
実施例4 純度99.9%のY2O3、Ba(NO3)2,CuO,CaCO3の粉末を化学
組成式YBa2Cu4O8となるように混合し、空気中で850℃で
24時間の仮焼を行った。仮焼粉を粉砕後、Arガス+20
%O2ガス中で温度950℃、圧力100atm、6時間のHIP処理
と、Arガス+20%O2ガス中で温度1050℃、圧力1000at
m、3時間のHIP処理の2つに分けて実施し超電導体を合
成した。
前記仮焼粉と本実施例の超電導酸化物のX線回折パタ
ーンを第9図に示し、本実施例の超電導酸化物の特性評
価結果を第4表に示す。
尚第4表においては比較のために、仮焼粉を同体積の
Na2CO3粉と混合し、該混合粉をさらに酸素ガス中で温度
800℃、72時間の熱処理を行った後、水洗によりNa2CO3
を分離して得たYBa2Cu4O8超電導酸化物粉末(第4表のN
o.1:比較例)の結果と、さらにオートクレーブ中で酸素
雰囲気下で温度950℃、圧力200atm、6時間の熱処理を
行い、YBa2Cu4O8(第4表のNo.2:比較例)を合成した結
果を夫々併記した。該合成粉末の超電導特性は、SQUID
磁力計を用いて50エルステッド(Oe)の磁場中のマイス
ナー効果によりTcを調べた。
第4表の特性評価結果からわかるように、実施例によ
る超電導酸化物は、いずれも82〜83KのTcを有してい
た。第4表において、No.3及びNo.4は実施例の製造方法
によるYBa2Cu4O8超電導酸化物粉末である。
前記第9図は、本発明の超電導酸化物の一実施例の効
果を説明するための粉末X線回折パターンであり、
(a)は原料粉の仮焼後の粉末X線回折パターン、
(b)は従来の第4表のNo.2(比較例)の高圧酸素法
(950℃、200atm、6時間)による試料粉末(YBa2Cu4O8
超電導酸化物粉末)のX線回折パターン、(c)は実施
例のHIP処理(1050℃×1000atm×3hr)による試料の粉
末(YBa2Cu4O8超電導酸化物粉末)のX線回折パターン
である。
前記粉末X線回折パターン(b)において×印はYBa2
Cu4O8を除いた不純物のピークを示す。
また、前記粉末X線回折パターン(c)において、図
中の数字は実施例のYBa2Cu4O8超電導酸化物粉末のYBa2C
u4O8型構造に基づいたピークの指数である。
また、仮焼粉は、第9図の(a)に示すように、90K
超電導体YBa2Cu3O7の構造を有するが、この構造からYBa
2Cu4O8を合成するには、Cu原子の拡散が必要であること
が分かる。常圧法では触媒を使用しているものの、拡散
速度が遅く、マクロ構造としてはYBa2Cu4O8を有しても
ミクロ的にはYBa2Cu3O7型の欠陥を多量に含んでいる。
このためTcが75K程度と低く抑えられることになったも
のと考えられる。
一方、高圧酸素法では、温度950℃、圧力200atmで処
理するため、常圧法に比較して欠陥が少なくなり、Tcが
78Kまで改善されているものと考えられる。
これに対して、実施例によるHIP法では、高圧酸素法
と同じ酸素分圧での処理であるが、全圧力が1000atmで
あるため、さらに拡散速度が速くなり(第4表のNo.3お
よびNo.4参照)、より均一な試料の作製を可能にしてい
る。
また、このように純酸素を使用しなくても全圧力を高
くすることによって安定に液体窒素温度以上のTcが得ら
れることは操業上の安全性の見地からも大きな利点であ
る。
実施例5 純度99.9%のY2O3,Ho2O3,CaO,BaO,CuOの各粉末を用
い、(R1-xCax)Ba2Cu4O8(但し、R=Y,Ho)におけるx
が0,0.05,0.1,0.2,0.3,0.5となる様に各種原料粉末混合
物を調製した。尚この際、BaO,CuOは空気中では不安定
であるので、混合調製はアルゴン雰囲気のグローブボッ
クス内で行なった。次に、混合調製した原料粉末混合物
を仮焼(または予備熱処理工程)を経ずしてAr-80%,O
2−20%の混合ガス雰囲気下、全圧1500atm(酸素分圧Po
2=300atm)にて1050℃の温度で3時間のHIP処理を行な
った。
得られた粉末をX線回折に付した。第10図および第11
図にその結果の一部を示す。第10図はY0.9Ca0.1Ba2Cu4O
8に対応するものであり、第11図はHo0.95Ca0.05Ba2Cu4O
8に対応するものである。第10図の粉末X線パターンで
は、粉末生成相がYBa2Cu4O8型構造を示すことを示して
おり、第11図の粉末X線パターンでは、粉末生成相がHo
Ba2Cu4O8型構造であることを示している。
得られた超電導粉末(Y0.9Ca0.1Ba2Cu4O8)を、外径5
mm,内径3mm,長さ80mmの銀パイプに充填後、パイプの一
端側を銀製キャップで密封し、小穴(0.1mmφ)を設け
た銀製キャップで他端側を閉鎖し、粉末が飛散しないよ
うに10-1Torrまで排気し、最後にキャップを押しつぶし
て管を封じた。これをスエージ加工によって、外径0.75
mmφまで伸線した後、ロール加工によって厚さ0.2mmの
テープ状とした。その後、アルゴン雰囲気下、全圧1000
atmにて830℃の温度で10時間HIP処理して焼結し、酸化
物超電導体線材を得た。
[発明の効果] 以上述べた如く本発明によれば、液体窒素温度よりも
十分高い超電導遷移温度を有し、且つ加工時の高温下で
酸素の抜けが生じない様な酸化物超電導体が実現でき
た。この酸化物超電導体は、低温電子装置の配線や磁気
遮蔽等の分野で幅広く用いることができる。
また本発明によば、RBa2Cu4O8型酸化物のTcを高め、
且つ短時間で製造できる方法や、酸化物超電導体線材を
製造するための有用な方法が実現できた。
図面の簡単な説明 第1図はRBa2Cu4O8の化学構造を説明する為の図、第
2図はRBa2Cu3O7の化学構造を説明する為の図、第3図
は実施例1によって得られたY0.75Ca0.25Ba2Cu4O8の焼
結体の生成相における粉末X線回折パターン、第4図は
実施例1によって得られたY0.75Ca0.25Ba2Cu4O8の超電
導特性を示すグラフ、第5図は実施例1によって得られ
たY0.7Ca0.3の熱重量分析の結果を示すグラフ、第6図
は本発明に係るHo0.9Ca0.1Ba2Cu4O8の焼結体の生成相に
おける粉末X線回折パターン、第7図は本発明に係る(H
o1-xCax)Ba2Cu4O8の超電導特性(温度と抵抗率の関係)
を示すグラフ、第8図は実施例2における試料の熱重量
分析の結果を示すグラフ、第9図は本発明の酸化物超電
導体の一実施例の効果を説明するための粉末X線回折パ
ターン、第10図は実施例5によって得られたY0.9Ca0.1B
a2Cu4O8の粉末回折パターン、第11図は実施例5によっ
て得られたHo0.95Ca0.05Ba2Cu4O8の粉末X線回折パター
ンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01B 13/00 565 D (71)出願人 999999999 三菱マテリアル株式会社 東京都千代田区大手町1丁目5番1号 (71)出願人 999999999 東京電力株式会社 東京都千代田区内幸町1丁目1番3号 (72)発明者 宮武 孝之 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 腰塚 直己 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 林 征治 兵庫県神戸市垂水区高丸7―3―323 (72)発明者 渋谷 和幸 兵庫県神戸市北区泉台1―6―14 (72)発明者 川手 剛雄 兵庫県神戸市垂水区塩屋北町4―20―4 (72)発明者 増田 喜男 兵庫県神戸市中央区港島中町6―2―1 (72)発明者 小川 陸郎 兵庫県神戸市北区泉台3―12―11 (72)発明者 福本 吉人 兵庫県神戸市北区淡河町淡河735 (72)発明者 和田 隆博 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 郡山 慎一 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 桜井 健 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 鈴木 信郎 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 山内 尚雄 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (72)発明者 田中 昭二 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団法 人国際超電導産業技術研究センター超電導 工学研究所内 (56)参考文献 特開 平3−109214(JP,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(R1-xCax)Ba2Cu4O8の化学組成式で表わさ
    れる酸化物超電導体であって、RはYおよびランタニド
    系列希土類元素よりなる群から選択される1種以上の元
    素からなり、xは0.001≦x≦0.5の範囲(但し、RがY
    単独でxが0.001≦x≦0.2のときを除く)にあることを
    特徴とする酸化物超電導体。
  2. 【請求項2】RBa2Cu4O8(但しRはYおよびランタニド
    系列希土類元素よりなる群から選択される1種以上の元
    素)の構造を有する超電導酸化物の製造方法において、
    原料粉を仮焼した後、不活性ガスと酸素ガスの混合雰囲
    気中で熱間静水圧加圧処理することを特徴とする超電導
    酸化物の製造方法。
  3. 【請求項3】R(但しRはYおよびランタニド系列希土
    類元素よりなる群から選択される1種以上の元素),Ca,
    Ba,Cu,Oからなる酸化物超電導体製造用原料粉末混合物
    を、不活性ガスと酸素ガスの混合雰囲気下、850〜1100
    ℃の温度範囲で熱間静水圧処理することにより、 (R1-xCax)Ba2Cu3O7で示される中間体としての酸化物を
    熱間静水圧処理前に生成させないで、 (R1-xCax)Ba2Cu4O8 (但し、xは0.001〜0.5,Rは前と同じ意味) で示される酸化物を含む酸化物超電導体粉末を生成し、
    該粉末をシース材に充填して伸線した後、焼結すること
    を特徴とする酸化物超電導体線材の製造方法。
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