JPH0833701A - ジルコニア質医療用材料及びその製造方法 - Google Patents

ジルコニア質医療用材料及びその製造方法

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JPH0833701A
JPH0833701A JP6169453A JP16945394A JPH0833701A JP H0833701 A JPH0833701 A JP H0833701A JP 6169453 A JP6169453 A JP 6169453A JP 16945394 A JP16945394 A JP 16945394A JP H0833701 A JPH0833701 A JP H0833701A
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JP
Japan
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zirconia
medical material
based medical
rare earth
boron
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JP6169453A
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English (en)
Inventor
Nobuo Ayusawa
信夫 鮎澤
Terumitsu Ichimori
照光 一森
Tadahiro Mino
忠弘 美濃
Susumu Nakayama
享 中山
Masahiro Yoshida
昌弘 吉田
Hiroaki Tanji
宏彰 丹治
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Shinagawa Refractories Co Ltd
Hoya Corp
Original Assignee
Shinagawa Refractories Co Ltd
Hoya Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 ZrO2 を主成分とし、Yb23 ,Er2
3 ,Ho23 ,Y23 ,Dy23 のうち1種又
は2種以上と、ホウ素化合物と更に、Al23,Si
2 とを含むジルコニア質医療用材料。更に、La2
3 ,Pr211/2,Nd23 ,Sm23 ,Gd2
3 の1種又は2種以上を併用しても良い。この配合にて
酸化物混合法で得た原料を500〜1200℃で仮焼し
た後、1500〜1700℃で焼結する。 【効果】 高い機械的特性を有し、熱安定性に優れたジ
ルコニア質医療用材料が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い機械的特性を有
し、熱安定性に優れたホウ素化合物を含有する希土類金
属酸化物安定化ジルコニア質医療用材料及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ジルコニア(ZrO2 )質焼結体
は、材料の有する特徴を応用して種々の分野において、
部材材料として使用されている。例えば、その強靭性を
応用したセラミックス製ハサミや、断熱性、熱膨張性の
特性を利用した断熱型エンジン用部品、酸素イオン導電
性を応用した酸素センサーや燃料電池等が挙げられる。
更に、ジルコニアセラミックスの有する固有物性は、最
近の高福祉化社会の要求にも対応し、医師が治療や診断
の目的で使用するメス、ハサミ、ピンセット、歯列矯正
用ブラケット、歯冠、歯根、関節、骨固定材などに好適
な医療用材料として注目されている。
【0003】従来用いられている医療用材料としては、
金属製品が多く、炭素鋼、ステンレス、特殊合金など種
々の材料が用いられているが、熱湯や蒸気による洗浄、
滅菌消毒時や人体などに装着した場合などにおいて、水
分の影響による錆、金属イオンの溶出、或いは装着の部
位によっては審美性に劣るなどの問題がある。このよう
な錆、金属イオンの溶出や審美性の点で高分子材料が検
討され、これが使用される場合もあるが、高分子材料は
機械的特性の面で問題がある。
【0004】そこで、水分などの影響による錆や金属イ
オンの溶出などの心配がなく、更に高い機械的特性を有
するジルコニア質焼結体の医療用器具への応用が特公昭
61−60697号公報にて提案されている。このジル
コニア質焼結体は、正方晶系の結晶構造をもつジルコニ
アを少なくとも50モル%含み、かつ立方晶系の結晶構
造をもつジルコニアが10モル%以下であるものとされ
ている。当該公報の実施例の記載では、医療器具として
の使用に関連して蒸気滅菌器で120℃、圧力1.2気
圧でジルコニア製刃物の特性変化を述べている。更に、
特開昭62−235255号公報、特公平3−2902
1号公報では、ジルコニア質焼結体が種々の用途と共に
医療器具用、医療用材料として用途が記載されている。
しかし、これらの公報では、ジルコニア質焼結体の医療
用材料への応用に関する記載が十分ではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のジルコニア質焼
結体は、100〜300℃付近で長時間にわたり放置さ
れると著しい強度の低下が起こるという欠点がある。こ
のように熱安定性が低いのは、ジルコニア質焼結体の結
晶相のうち、常温では準安定相である正方晶が安定相の
単斜晶に転移し、相転移に伴う体積膨張が焼結体内に微
小亀裂を発生させることによる。特に、この相転移は、
水中もしくは水蒸気中の環境下において上記温度より低
温でも生じ、その速度も非常に速いため、高温(100
〜300℃)で溶媒として水を用いるような洗浄や滅菌
消毒などを行う場合などにおいて、支障をきたすことと
なる。
【0006】更に、近年の食生活の健康に及ぼす影響に
関連して、歯列矯正が注目されているが、それは歯列矯
正により、歯並びが改善されるだけでなく、咀嚼機能が
向上する。この際、歯面に接着して使用されるブラケッ
トは、使用前の滅菌あるいは使用中の口腔内の飲食物に
由来する熱的条件にも耐え得ることが要求されるが、従
来、このような要求特性を十分に満足するジルコニア質
焼結体は提供されていない。
【0007】本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされ
たものであって、機械的特性に優れる上に、上述の如き
温度域の熱安定性が良好なジルコニア質医療用材料及び
その製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1のジルコニア質
医療用材料は、ZrO2 を主成分とし、Yb23 ,E
23 ,Ho23 ,Y23 及びDy23 よりな
る群から選ばれる1種又は2種以上の希土類金属(R
1)の酸化物(R1−O)と、ホウ素化合物とを含むこ
とを特徴とする。
【0009】請求項2のジルコニア質医療用材料は、請
求項1に記載のジルコニア質医療用材料において、Zr
2 に対する希土類金属(R1)の酸化物(R1−O)
のモル比(R1−O/ZrO2 )が、1.5/98.5
〜5/95であることを特徴とする。
【0010】請求項3のジルコニア質医療用材料は、Z
rO2 を主成分とし、Yb23 ,Er23 ,Ho2
3 ,Y23 及びDy23 よりなる群から選ばれる
1種又は2種以上の希土類金属(R1)の酸化物(R1
−O)と、La23 ,Pr211/3,Nd23 ,S
23 及びGd23 よりなる群から選ばれる1種又
は2種以上の希土類金属(R2)の酸化物(R2−O)
と、ホウ素化合物とを含むことを特徴とする。
【0011】請求項4のジルコニア質医療用材料は、請
求項3に記載のジルコニア質医療用材料において、希土
類金属(R1)の酸化物(R1−O)と、希土類金属
(R2)の酸化物(R2−O)とのモル比(R1−O/
R2−O)が30/70以上、100/0未満であるこ
とを特徴とする。
【0012】請求項5のジルコニア質医療用材料は、請
求項3又は4に記載のジルコニア質医療用材料におい
て、ZrO2 に対する希土類金属(R1)の酸化物(R
1−O)と希土類金属(R2)の酸化物(R2−O)と
の合計のモル比((R1−O+R2−O)/ZrO2
が、1.5/98.5〜5/95であることを特徴とす
る。
【0013】請求項6のジルコニア質医療用材料は、請
求項1ないし5のいずれか1項に記載のジルコニア質医
療用材料において、ホウ素化合物が、酸化ホウ素、窒化
ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化ジルコニウム、希土類金属
(R1)のホウ化物及び希土類金属(R2)のホウ化物
よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のホウ素化合
物であることを特徴とする。
【0014】請求項7のジルコニア質医療用材料は、請
求項1ないし6のいずれか1項に記載のジルコニア質医
療用材料において、ホウ素化合物の含有量がホウ素
(B)に換算して0.05〜8モル%であることを特徴
とする。
【0015】請求項8のジルコニア質医療用材料は、請
求項1ないし7のいずれか1項に記載のジルコニア質医
療用材料において、更に、Al23 及び/又はSiO
2 を含むことを特徴とする。
【0016】請求項9のジルコニア質医療用材料は、請
求項8に記載のジルコニア質医療用材料において、ホウ
素化合物が、酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホ
ウ化ジルコニウム、希土類金属(R1)のホウ化物、希
土類金属(R2)のホウ化物、ホウ化アルミニウム及び
ホウ化珪素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の
ホウ素化合物であることを特徴とする。
【0017】請求項10のジルコニア質医療用材料は、
請求項8又は9に記載のジルコニア質医療用材料におい
て、ホウ素化合物の含有量がホウ素(B)に換算して
0.05〜8%モル%、Al23 の含有量が0.1〜
5モル%、SiO2 の含有量が0.05〜1.5モル%
であることを特徴とする。
【0018】請求項11のジルコニア質医療用材料は、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載のジルコニア
質医療用材料において、平均粒子径が3μm以下、嵩密
度が5.8g/cm3 以上で且つ、結晶粒子が主として
正方晶の相又は正方晶と立方晶との混合相よりなり、1
00〜300℃の温度にて大気中又は水及び水蒸気中に
おいて長時間使用しても当該材料の劣化が起こりにくい
ことを特徴とする。
【0019】請求項12のジルコニア質医療用材料は、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のジルコニア
質医療用材料において、医療分野における治療や診断の
目的で使用されるメス、ハサミ、ピンセット、歯列矯正
用ブラケット、歯冠、歯根、関節、骨固定材などに使用
することを特徴とする。
【0020】請求項13のジルコニア質医療用材料の製
造方法は、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の
ジルコニア質医療用材料を製造する方法であって、化学
合成法(中和共沈法、加水分解法、アルコキシド法等)
又は、酸化物粉末の混合による方法にて得られたものを
500〜1200℃で仮焼を行った後、1300〜17
00℃にて焼結させることを特徴とする。
【0021】以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】本発明のジルコニア質医療用材料におい
て、安定化剤として用いる希土類金属は、Yb23
Er23 ,Ho23 ,Y23 及びDy23 より
なる群から選ばれる1種又は2種以上の希土類金属(以
下「R1」と略す。)の酸化物(以下「R1−O」と略
す。)である。また、このR1−Oと共に、La2
3,Pr211/3,Nd23 ,Sm23 及びGd2
3 よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の希土
類金属(以下「R2」と略す。)の酸化物(以下「R2
−O」と略す。)を併用しても良い。なお、Sc2
3 ,Eu23 ,Tb23 ,Tm27/2 及びLu2
3 を安定化剤として用いることもできるが、これらは
非常に高価であり、ジルコニア製品とした場合、コスト
面における市場競争力で問題となる。
【0023】これらの希土類金属酸化物のうち、R1−
Oは、ZrO2 を安定化させる効果をもっており、高い
機械的特性を有する良好なジルコニア質医療用材料を得
ることを可能とする。一方、R2−Oを、単独で安定化
剤として用いた場合には、R1−Oで安定化させたジル
コニア質医療用材料ほど、高い機械的特性を有する良好
な材料とはなりにくい。しかし、本発明者らにより、R
1−OとR2−Oとを一定の比率で混ぜ合わせて安定化
剤とすることにより、従来から知られているR1−O単
独で安定化させたジルコニア質医療用材料と同等な特性
を有するジルコニア質医療用材料を得ることができるこ
とが見出された。この一定比率とは、本発明で規定する
比率であり、R1−OとR2−Oのモル比(R1−O/
R2−O)で30/70以上、100/0未満である。
このモル比が30/70未満でR2−Oの量が多いもの
ではR2−Oの影響が大きくなり、ZrO2 を安定化さ
せることが困難となる。このようなことから、R1−O
とR2−Oとのモル比R1−O/R2−Oが30/70
以上の範囲を外れるものでは、本発明で目的とする優れ
た特性を有するジルコニア質医療用材料を得ることがで
きない場合があるため、R1−O/R2−Oは30/7
0以上とする。
【0024】また、本発明において、希土類金属酸化物
の合計とZrO2 とのモル比、即ち、希土類金属酸化物
としてR1−Oのみを用いる場合にはR1−O/ZrO
2 、希土類金属酸化物としてR1−OとR2−Oとを併
用する場合には(R1−O+R2−O)/ZrO2 (以
下、このR1−O,R2−Oを「R−O」と総称し、希
土類金属酸化物とZrO2 とのモル比を「R−O/Zr
2 」と略す。)が1.5/98.5〜5/95、特に
2/98〜4/96の範囲内にあることが好ましい。R
−O/ZrO2 のモル比が、1.5/98.5未満で
は、焼結し難く、得られるジルコニア質医療用材料に安
定した正方晶が生成せず、主として正方晶からなるジル
コニア質医療用材料は得られない。また、5/95を超
えるものでは、十分な機械的特性を有するジルコニア質
医療用材料は得ることはできない。
【0025】本発明のジルコニア質医療用材料は、その
原料組成中にホウ素からなる化合物を含有している。こ
れは、次の理由による。即ち、200℃,250時間の
水中テストを行った試料の曲げ強度及び表面組織を観察
した結果、ホウ素化合物を含まないジルコニア焼結体に
は大きな強度の低下が見られ試料表面においても多数の
微亀裂が観測された(図1(a)参照)。しかし、これ
に対し、ホウ素化合物を添加したジルコニア焼結体には
上記のような変質層は殆ど認められないが、非常に薄い
ものであった(図1(b)参照)。テストを行う前の試
料の強度は、ホウ素化合物の添加の有無によって異な
り、添加したもののほうが明らかに強度の向上が認めら
れた。これらのことより、ホウ素化合物は、ジルコニア
質医療用材料を更に高強度とさせると共に熱安定性を向
上させることのできる添加物であると判明したことによ
る。即ち、本発明のジルコニア質医療用材料において、
ホウ素化合物が含まれないとジルコニア質医療用材料が
得られず、ホウ素化合物を含有する場合であってもその
含有量が0.05モル%未満(B換算)では、ホウ素化
合物の添加による効果は見られない。また、ホウ素化合
物を8モル%(B換算)を超えて添加した場合では、か
えって強度の低下を招く傾向がある。このことより、ホ
ウ素化合物の添加量は、B換算で0.05〜8モル%、
好ましくは、0.05〜5モル%が良い。
【0026】本発明のジルコニア質医療用材料において
は、更に、Al23 及び/又はSiO2 を添加するこ
とが好ましく、添加により試料の焼結が容易となり、低
温にて焼成することができるようになる(ホウ素化合
物、Al23 及びSiO2 を最適量添加した試料に対
し、ホウ素化合物のみを添加した試料では、同一の密度
及び機械的強度を得るためには、焼成温度を約50〜1
00℃高くする必要がある(実施例1の No.4と No.1
6の関係)。)。よって、Al23 及び/又はSiO
2 の添加でホウ素化合物の添加量を少なくすることも可
能である。
【0027】また、Al23 は、ジルコニア質医療用
材料の機械的強度、特に硬さ特性の向上に効果が見られ
る。更に、ジルコニア中に均一に分散させることによ
り、焼結性の向上が見られる。しかし、Al23 の添
加効果は、0.1モル%未満の添加では現れない。5モ
ル%を超えての添加は、逆に密度や機械的強度を低下さ
せる原因となる。従って、Al23 を添加する場合、
その添加量は0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜2
モル%とする。
【0028】一方、SiO2 は、ジルコニア質医療用材
料の焼結性を向上させることのできる添加物である。よ
って、SiO2 を添加することにより、試料を低温度で
焼結させることが可能となり、焼成コストが削減でき、
更に、粒成長を抑えるなどの効果が得られる。しかし、
SiO2 の添加量が0.05モル%未満では、SiO2
添加による効果は認められない。また、1.5モル%を
超えてSiO2 を添加した場合では、粒成長が促進さ
れ、機械的強度や熱安定性の低下を招いてしまう。従っ
て、SiO2 を添加する場合、その添加量は0.05〜
1.5モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%とす
る。
【0029】これらの添加物は、添加成分(Al,S
i)の酸化物のほかに窒化物、炭化物又は、水酸化物な
どの形で添加しても同様の効果が得られる。また、ホウ
素化合物に関しては、ホウ素からなる酸化物(B2
3 )のほかに窒化物(BN)、炭化物(B4 C)、又
は、主成分であるZr、安定化剤としての希土類金属、
又は、添加成分のAl,Siなどからなるホウ化物(Z
rB2 ,YB8 ,AlB2 ,SiB4 など)によって添
加しても良い。
【0030】本発明の方法に従って、ジルコニア質医療
用材料を製造するには、まず、酸化物混合法又は、中和
共沈法、加水分解法、アルコキシド法等の化学合成法を
用い、ZrO2 にR−O及びホウ素化合物、更に好まし
くはAl23 及び/又はSiO2 を含有するような上
記所定組成原料を作成する。次に、得られた原料粉を5
00〜1200℃の温度範囲内で仮焼し、仮焼粉を解砕
した後、成形する。成形法としては特に制限はなく、金
型法、CIP法、射出法、押出し法、鋳込み法などを採
用することができる。得られた成形体を1300〜17
00℃、好ましくは1400〜1600℃の温度範囲内
で焼結させる。
【0031】本発明の方法において、仮焼は、混合原料
を出来る限り均一なものとするため、及び、ZrO2
一部を相転移させておき焼成過程での焼結の促進を図る
ためのものであり、本発明の製造方法において重要な要
件である。ここで言う仮焼条件においても下限値500
℃は、仮焼によってZrO2 の単斜晶の一部を正方晶に
相転移させることが可能な最低温度である。一般に、Z
rO2 の単斜晶から正方晶への転移は、1170℃付近
と言われているが、ZrO2 に安定化剤を加えることに
よりその温度は低温に移動し、例えばY23 を安定化
剤として用いたものでは、800℃ぐらいの温度で相転
移が見られる。この温度は、安定化剤の種類あるいは量
による異なる値となる。一方、仮焼温度の上限値120
0℃は、仮焼後の原料に見られる凝集粉が、解砕工程に
より十分粉砕され得る最高温度であり、この温度を超え
て仮焼を行ったものでは、解砕後においても凝集粒が残
留し、これが大きな破壊点となり、ジルコニア質医療用
材料の強度の低下を招く。従って、仮焼温度は500〜
1200℃、好ましくは800〜1200℃とする。
【0032】また、本焼成となる焼結温度が1300℃
未満では、緻密化が進まず、一方、1700℃を超える
と、結晶粒の異常粒成長などにより、高強度な焼結体と
はならない。
【0033】本発明のジルコニア質医療用材料は、上記
したような組成及び製造方法よりなり、且つ、平均粒子
径が3μm以下、好ましくは2μm以下で、嵩密度が
5.8g/cm3 以上、好ましくは5.9g/cm3
上で、且つ、結晶粒子が主として正方晶の相又は正方晶
と立方晶との混合相よりなり、100〜300℃の温度
にて大気中又は水及び水蒸気中での長時間における使用
に際し、当該材料の劣化が起こりにくいものである。平
均粒子径が3μmを超えるようなジルコニア質医療用材
料では、熱安定性等の面において良い特性を得ることが
できない。よって、100〜300℃の温度にて大気中
又は水及び水蒸気中での長時間における使用に際し、材
料の劣化を招くこととなる。また、嵩密度が5.8g/
cm3 未満のものも同様に熱安定性の向上効果が得られ
ない。
【0034】なお、材料の結晶相内の単斜晶、正方晶、
及び立方晶の含有量は、材料表面を#600のダイアモ
ンド砥石で研削した後、1〜5μmのダイアモンド粒に
より鏡面に仕上げ、その表面のX線回折による強度比よ
り以下の式を用いて求めた。
【0035】
【数1】
【0036】また、平均粒子径の測定には、まず、上記
するような鏡面に仕上げた焼結体の表面をフッ化水素酸
によりエッチング処理を行い電子顕微鏡写真で粒子を5
0個以上含むような一定面積S内に等しい円の直径d
を、式d=(4S/π)1/2 により計算する。そして、
dを同一試料の3ケ所以上の視野について求めその平均
値を平均粒子径とする。粒子数nは、一定面積Sに完全
に含まれる粒子の数と一定面積の境界線で切られる粒子
の数の1/2との和とする(測定法については、特公昭
61−21184号公報参照)。
【0037】本発明においては、特に、加圧焼結処理に
よりジルコニア質医療用材料を製造することにより、よ
り一層高い機械的特性を有するジルコニア質医療用材料
を製造することができる。例えば、後述の実施例におい
てCIP成型後の焼成により製造された強度100kg
f/mm2 以上のものは、HIP処理により、140k
gf/mm2 以上の高強度な焼結体とすることができ
る。
【0038】
【作用】本発明の医療用材料は、ホウ素化合物を含有す
るR−O安定化ジルコニア質焼結体であり、本発明に規
定される組成を有することが、好適な平均結晶粒子径、
嵩密度、結晶構成相を満足すると共に、機械的特性にお
いても、従来、市販されているジルコニア質焼結体に劣
らず高い性能を有し、かつ本発明の主目的である熱安定
性に極めて優れるジルコニア質焼結体である。
【0039】特に、本発明のジルコニア質医療用材料に
おいては、更に、Al23 及び/又はSiO2 を添加
することにより、低温焼成が可能となり、また、ホウ素
化合物の添加量の低減を図れるという利点がある。ま
た、特に、Al23 は、ジルコニア質医療用材料の機
械的強度、とりわけ、硬さ特性の向上に効果があり、更
に、ジルコニア中に均一に分散させることにより、焼結
性の向上効果が得られる。
【0040】一方、SiO2 は、ジルコニア質医療用材
料の焼結性を向上させることのできる添加物であり、S
iO2 を添加することにより、試料を低温度で焼結させ
ることが可能となり、焼成コストが削減でき、更に、粒
成長を抑えるなどの効果が得られる。
【0041】本発明のジルコニア質医療用材料は、メ
ス、ハサミ、ピンセット、歯列矯正用ブラケット、歯
冠、歯根、関節、骨固定材などに使用される材料として
有効であるが、特に、近年の食生活が健康に及ぼす影響
或いは美容などの要素として注目されている歯列矯正用
材料として、本発明に係るジルコニアセラミックスの有
する機械的特性、熱安定性もしくは歯牙の色調に近いと
いう審美性などから見て好適な材料である。
【0042】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。
【0043】実施例1 表1〜4に示す組成となるように酸化ジルコニウム(Z
rO2 ),R1−O及びR2−Oの希土類金属酸化物
(R−O),酸化アルミニウム(Al23 ),二酸化
ケイ素(SiO2 ),酸化ホウ素(B23 )を秤量し
て、溶媒としてイオン交換水を用い、ゴムライニングの
ボールミルにてZrO2 質玉石を使用して混練した後、
乾燥を行った。
【0044】次に、表5〜8に示す温度にて仮焼を行い
(ただし、表5〜8中、仮焼温度0℃のものは仮焼せ
ず)、得られた仮焼粉を上記混練時と同様のボールミル
にて解砕し、アクリル系共重合樹脂を3重量%加えてス
プレー造粒した。得られた造粒粉を1000kgf/c
2 の圧力でCIP成型して表5〜8に示す温度にて本
焼成を行った。
【0045】得られたジルコニア質焼結体の「平均結晶
粒子径」、「嵩密度」、主たる「結晶相」、ファインセ
ラミックスの曲げ強さ試験方法(JIS R1601)
に従って測定した「3点曲げ強度」、「ビッカース硬
さ」(JIS R1610)、IF法により求められた
「破壊靭性値」(JIS R1607)及び焼結体の
「熱安定性」を測定し、結果を表5〜8に示した。
【0046】なお、焼結体の「熱安定性」は、焼結体を
オートクレーブに入れ、200℃の熱水中にて250時
間のエージングテストを行った後、焼結体の劣化具合を
観察して判断した。図1に示す焼結体の切断面からわか
るように、熱安定性の悪い(×)ものは、図1(a)の
如く、試料1A表面の転移相2の層(正方晶→立方晶に
転移した相)が厚く(50μm以上)、多数の微亀裂3
が認められた。一方、熱安定性の良い(○)ものは、図
1(b)の如く、試料1B表面の転移相2の層が薄く
(10μm以下)、微亀裂が認められなかった。さら
に、最も熱安定性の良いもの(◎)を各表中に示した。
【0047】なお、表1〜4のうち、例えば、No. 25
の「Y23 +Yb23 」はY23 とYb23
を併用したことを示し、モル比の1+2/97はY2
3 が1モルでYb23 が2モルであることを示す。そ
の他のものも同様である。また、表5〜8において、M
は単斜晶、Tは正方晶、Cは立方晶を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】得られた結果より次のことが明らかであ
る。
【0057】本発明のジルコニア質医療用材料は、希土
類金属酸化物R−Oとホウ素化合物を含有し、更に、A
23 ,SiO2 が添加され、ホウ素化合物が0.0
5〜8モル%(B換算)、Al23 が0.1〜5モル
%、SiO2 が0.05〜1.5モル%の範囲内にあ
り、高い機械的特性を有し、熱安定性に優れている。こ
れに対し、ホウ素化合物を含まないものでは、機械的特
性、熱安定性に優れたジルコニア質焼結体を得ることは
できない。
【0058】また、安定化剤R−OとZrO2 とのモル
比が本発明の好適範囲内にあり、更に、本発明に係る上
記3種類の添加物をそれぞれ本発明の数値限定範囲内に
収めた組成を用いるものであっても、仮焼条件において
500〜1200℃の範囲外の条件にて行った場合で
は、十分な機械的特性を得ることができない。同様に、
本焼成条件においても、本発明の数値限定範囲外の条件
にて行うと、結果として、十分な機械的特性を有するジ
ルコニア質医療用材料を得ることはできない。
【0059】実施例2 実施例1に示される組成のうち、No. 4,25,51の
配合となるように酸化ジルコニウム(ZrO2 ),Y2
3 ,Yb23 ,Gd23 ,酸化アルミニウム(A
23 ),二酸化ケイ素(SiO2 ),酸化ホウ素
(B23 )を秤量して、表9に示す温度にて仮焼を行
い、得られた仮焼粉をボールミルにて解砕して出発原料
粉とした。これに対し、射出成形用コンパウンドを作成
するために、一般的な樹脂を添加して、加熱ニーダーに
より加熱混練し、更に、射出成形機内への安定供給のた
めにペレット化した。
【0060】次いで、目的とする歯列矯正用ブラケット
の所定形状を設計している金型を保持する射出成形機に
コンパウンドを投入、成形した。成形体を約350℃の
温度でコンパウンド中の樹脂分を分解、散逸させ、表9
に示す本焼成温度にて焼結させた。
【0061】製作した歯列矯正用ブラケットに関して
は、表面を研磨し、実施例1と同様の方法により、「ビ
ッカース硬さ」(JIS R1610)、「破壊靭性
値」(JIS R1607)を測定し、また、「熱安定
性」をオートクレーブ中、120℃の熱水中にて250
時間のエージングテストを行って評価した。その結果を
表9に示す。
【0062】得られた結果より次のことが明らかであ
る。実施例1と同様、本発明のジルコニア質医療用材料
は、焼結体の特性として、ビッカース硬さ及び破壊靭性
値ともジルコニアセラミックスとしては市販材料と比較
しても優れた値を示し、熱安定性の点に関しても、ブラ
ケットの表面は何ら変質することのないことが確認さ
れ、滅菌条件或いは通常口腔内の使用条件を考慮するな
らば、全く問題のないことが示唆された。
【0063】
【表9】
【0064】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のジルコニア
質医療用材料及びその製造方法によれば、ZrO2 を主
成分とし、所定範囲の希土類金属酸化物(R−O)と所
定範囲のホウ素化合物を含み、更に必要に応じてAl2
3 ,SiO2 からなる添加物を含むものであって、こ
れにより高い機械的特性及び熱安定性に優れたジルコニ
ア質医療用材料が提供される。
【0065】このような本発明のジルコニア質医療用材
料は、本発明の方法により、容易かつ効率的に、確実に
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における熱安定性の評価テストによる
焼結体の断面を示す模式図であり、図1(a)は熱安定
性の悪いものを示し、図1(b)は熱安定性の良いもの
を示す。
【符号の説明】
1A,1B 試料 2 転移相 3 微亀裂
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中山 享 岡山県倉敷市大内957−5 (72)発明者 吉田 昌弘 埼玉県日高市大字中鹿山452−149 (72)発明者 丹治 宏彰 神奈川県川崎市多摩区中野島6−29−6− 905

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ZrO2 を主成分とし、Yb23 ,E
    23 ,Ho23 ,Y23 及びDy23 よりな
    る群から選ばれる1種又は2種以上の希土類金属(R
    1)の酸化物(R1−O)と、ホウ素化合物とを含むこ
    とを特徴とするジルコニア質医療用材料。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のジルコニア質医療用材
    料において、ZrO2 に対する希土類金属(R1)の酸
    化物(R1−O)のモル比(R1−O/ZrO2 )が、
    1.5/98.5〜5/95であることを特徴とするジ
    ルコニア質医療用材料。
  3. 【請求項3】 ZrO2 を主成分とし、Yb23 ,E
    23 ,Ho23 ,Y23 及びDy23 よりな
    る群から選ばれる1種又は2種以上の希土類金属(R
    1)の酸化物(R1−O)と、La23 ,Pr2
    11/3,Nd23,Sm23 及びGd23 よりなる
    群から選ばれる1種又は2種以上の希土類金属(R2)
    の酸化物(R2−O)と、ホウ素化合物とを含むことを
    特徴とするジルコニア質医療用材料。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載のジルコニア質医療用材
    料において、希土類金属(R1)の酸化物(R1−O)
    と、希土類金属(R2)の酸化物(R2−O)とのモル
    比(R1−O/R2−O)が30/70以上、100/
    0未満であることを特徴とするジルコニア質医療用材
    料。
  5. 【請求項5】 請求項3又は4に記載のジルコニア質医
    療用材料において、ZrO2 に対する希土類金属(R
    1)の酸化物(R1−O)と希土類金属(R2)の酸化
    物(R2−O)との合計のモル比((R1−O+R2−
    O)/ZrO2)が、1.5/98.5〜5/95であ
    ることを特徴とするジルコニア質医療用材料。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか1項に記載
    のジルコニア質医療用材料において、ホウ素化合物が、
    酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化ジルコニ
    ウム、希土類金属(R1)のホウ化物及び希土類金属
    (R2)のホウ化物よりなる群から選ばれる1種又は2
    種以上のホウ素化合物であることを特徴とするジルコニ
    ア質医療用材料。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれか1項に記載
    のジルコニア質医療用材料において、ホウ素化合物の含
    有量がホウ素(B)に換算して0.05〜8モル%であ
    ることを特徴とするジルコニア質医療用材料。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項に記載
    のジルコニア質医療用材料において、更に、Al23
    及び/又はSiO2 を含むことを特徴とするジルコニア
    質医療用材料。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載のジルコニア質医療用材
    料において、ホウ素化合物が、酸化ホウ素、窒化ホウ
    素、炭化ホウ素、ホウ化ジルコニウム、希土類金属(R
    1)のホウ化物、希土類金属(R2)のホウ化物、ホウ
    化アルミニウム及びホウ化珪素よりなる群から選ばれる
    1種又は2種以上のホウ素化合物であることを特徴とす
    るジルコニア質医療用材料。
  10. 【請求項10】 請求項8又は9に記載のジルコニア質
    医療用材料において、ホウ素化合物の含有量がホウ素
    (B)に換算して0.05〜8%モル%、Al23
    含有量が0.1〜5モル%、SiO2 の含有量が0.0
    5〜1.5モル%であることを特徴とするジルコニア質
    医療用材料。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし10のいずれか1項に
    記載のジルコニア質医療用材料において、平均粒子径が
    3μm以下、嵩密度が5.8g/cm3 以上で且つ、結
    晶粒子が主として正方晶の相又は正方晶と立方晶との混
    合相よりなり、100〜300℃の温度にて大気中又は
    水及び水蒸気中において長時間使用しても当該材料の劣
    化が起こりにくいことを特徴とするジルコニア質医療用
    材料。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし11のいずれか1項に
    記載のジルコニア質医療用材料において、医療分野にお
    ける治療や診断の目的で使用されるメス、ハサミ、ピン
    セット、歯列矯正用ブラケット、歯冠、歯根、関節、骨
    固定材などに使用することを特徴とするジルコニア質医
    療用材料。
  13. 【請求項13】 化学合成法(中和共沈法、加水分解
    法、アルコキシド法等)又は、酸化物粉末の混合による
    方法にて得られたものを500〜1200℃で仮焼を行
    った後、1300〜1700℃にて焼結させることを特
    徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載のジ
    ルコニア質医療用材料の製造方法。
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