【発明の詳細な説明】
発明の名称
塩化水素の精製方法
発明の分野
本発明は塩酸の精製に関し、そしてより詳しくはハロゲン化炭化水素不純物を
含む不純な塩酸の精製に関する。
発明の背景
無水の又は塩酸として水溶液の塩化水素は広汎な用途を有する商業的に価値の
ある製品である。
塩化水素はフッ素化脂肪族炭化水素の製造における副生成物である。これらは
フッ化水素と塩素化誘導体との反応により生成するフルオロカーボン及び塩素化
誘導体の水素化分解により生成するフルオロカーボンも含む。例えば、日本国公
開第3−99026号はCHF2CF3(HFC-125)を製造するためのCClF2CF3(CFC-115)と
水素との接触反応を開示している。生成するHFC-125の各モル毎に1モルのHClも
形成される。米国特許第4,766,260号はHFと少なくとも1つの塩素原子を含むテ
トラハロエチレンとの反応によるCHCl2CF3(HCFC-123)及びCHClFCF3(HCFC-124
)の製造を開示している。フッ素によって置換される塩素の原子当たり1モルの
HClとして生成するHClの外に、CHF2CF3(HFC-125)が使用する触媒しだいで0.5
%から10%の間で変動する量で形成される。米国特許第5,036,036号は酸化クロ
ム触媒上でHFとCCl3CF3(CFC-113)とを反応させることによるCFC-115及びCF3CF3
(FC-116)の製造を開示している。典型的には、これらの工程からの生成物混
合物は蒸溜されていくつかの画分を生じる。通常、このような蒸溜の結果として
HClを含むハロゲン化炭化水素が得ら
れる。
種々の方法が無水HClから有機不純物を除くために使用されており、それには
溶媒による吸収、液化と蒸溜、酸化又は燃焼、及び不純物の化学反応と引き続く
収着(sorption)又は蒸溜が含まれる。もっとも普通の精製方法は蒸溜による。
しかしながら、ハロゲン化炭化水素不純物の種類によっては、時折気−液平衡(
すなわち、VLE)ピンチポイント(pinch point)を示しそしてほとんどHCIと共
沸混合物のことがあり、そして塩化水素から痕跡量のハロゲン化炭化水素を分離
するには蒸溜は実際に役立たない。
炭素に基づく収着剤(sorbents)そしてゼオライトに基づく収着剤の双方が種
々の分離目的に提案されている。いずれの収着剤もその分離効率は関連する化学
成分及び収着剤によって変動する。収着剤に基づく系が好結果を得る設計は特定
の化合物の相対的な収着性がそのような系に適しているか否かの実験的測定に高
度に依存すると考えられる。米国特許第4,902,312号はクロロフルオロカーボン
からHF及びHClを除くためある炭素分子ふるいを使用してクロロフルオロカーボ
ンからこれらの酸を除去する方法を開示している。
発明の概要
我々は式CaHbClcFd(式中、aが1〜4の整数であり、bが0〜9の整数であ
り、cが0〜9の整数であり、そしてdが1〜10の整数であり、但しb+c+d
は非環状化合物については2a+2に等しく、そして環状化合物及びオレフィン
性化合物については2aに等しい)の飽和及びオレフィン性ハロゲン置換有機不
純物を前記有機不純物を含む不純な塩化水素から、活性炭及び無機モレキュラー
シーブ(例えば、シリカライト及びゼオライト)からなる群より選ば
れる前記不純物のための収着剤を使用することにより大部分除くことができるこ
とを見出した。本発明は前記式の少なくとも1つの不純物を含む不純な塩化水素
の精製方法を提供するものであり、この方法は前記ハロゲン置換有機不純物を含
む不純な塩化水素を前記収着剤と−20℃から300℃の範囲内の温度及び10kPaから
3000kPaの範囲内の圧力で大部分の量の前記ハロゲン置換有機不純物を除くのに
十分な時間接触させる工程からなる。
発明の詳細
本発明では不純な塩化水素からハロゲン置換有機不純物例えばCClF2CF3(CFC-
115)及びCHF2CF3(HFC-125)の分離がなされる。本発明により高純度の塩化水
素を得る方法が提供され、この方法は有機不純物を含有する塩化水素を活性炭及
びモレキュラーシーブからなる群より選ばれる収着剤と収着に適当な温度及び圧
力で大部分の量の不純物を除くのに十分な時間接触させる工程からなる。この方
法により精製される不純なHCIは通常約2モルパーセント又はそれより少ないハ
ロゲン置換有機不純物を含み、そして好ましくは約1モルパーセント又はそれよ
り少ないハロゲン置換有機不純物を含む。
有機不純物を含む不純なHClは、例えばCFC-114異性体(すなわち、CClF2CClF2
及びCCl2FCF3)と水素との反応に伴う過程から生じることがある。典型的には、
HF及びほとんどすべての有機生成物のような不純物を除去して少なくとも98モル
%純度のHClを生産するために蒸溜が使用される。本発明によるもう一段の精製
を有利に使用することができる。収着剤との接触は所望のHCl純度を達成するた
めに十分でなければならない。好ましくは、不純物のモル分率を少なくとも約50
%減らす。精製したHClは約50ppmより少ないハロゲン置
換有機不純物を含むのが好ましく、そして回収したHClは約5ppmより少ないハロ
ゲン置換有機不純物を含むのがもっとも好ましい。
本発明の実施態様の中には活性炭を収着剤として使用することがある。商業的
に入手できる活性炭を使用してよい。この方法の有効性は使用する特定の活性炭
によって影響されることがありうる。その上、活性炭床の収着効率及び収着能力
は動的フローシステムにおける活性炭の粒子寸法に依存する。好ましくは、活性
炭は約4〜325メッシュ(約0.044〜4.76ミリbメートル)の粒子寸法範囲をもつ
。より好ましくは、活性炭は約6〜100メッシュ(約0.149〜3.36ミリメートル)
の粒子寸法範囲をもつ。もっとも好ましくは、活性炭は約10〜30メッシュ(約0.5
95〜2.00ミリメートル)の粒子寸法範囲をもつ。
約0.074×0.297ミリメートル(50×200メッシュ)の粒子寸法範囲をもつ活性炭
はBarneby & SutCliffe Corp.から活性炭、タイプUU(Activated Carbon Type U
U)(天然粒子、ココヤシ殻が原料)の名称で入手することができる。0.595ミリ
メートル×1.68ミリメートル(12×30メッシュ)の粒子寸法をもつ活性炭はCalg
on CorporationからCalgon BPL(瀝青炭が原料)活性粒状炭素の名称で入手する
ことができる。約0.450×1.68ミリメートル(12×38メッシュ)の粒子寸法範囲の
活性炭はBarneby & Sutcliffe Corp.から活性炭、タイプPE(Activated Carbon
Type PE)(天然粒子、ココヤシ殻が原料)の名称で入手することができる。約
0.297×0.841ミリメ一トル(20×50メッシュ)の粒子寸法範囲の活性炭はWestva
coから微孔性木材原料粒状炭素(Microporous Wood-BaseGanular Carbon)の名
称で入手することができる。
好ましい実施態様においては、活性炭はリチウム、ナトリウム、カリウム、ル
ビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム
又はそれらの組合せからなる群より選ばれるアルカリ又はアルカリ土類金属(1
つ又は複数)を含む。
本発明の実施態様の中には無機モレキュラーシーブを使用するものがある。モ
レキュラーシーブは当該技術分野でよく知られており、そしてR.Szostak,Mole
cular Sieves-Principles of Synthesis and Identification,Van Nostrand Re
inhold(1989),2ページにおいて定義されている。本発明に使用する無機モレ
キュラーシーブはシリカ(例えば、シリカライト及びゼオライト)、メタロアル
ミネート及びアルミノホスフェート、並びに他の無機モレキュラーシーブ物質を
含む。本発明に有用なモレキュラーシーブは典型的には約0.3〜20ナノメートル
(nm)、より典型的には約0.3〜1.5nmの平均孔径をもつ。好ましい実施態様にお
いては、無機モレキュラーシーブは低アルミニウム含量のふるいであり、例えば
Si:Al原子比が3.8:1に等しいか又はそれより大きい超安定Yである。
無機モレキュラーシーブを使用する収着に適当な温度範囲は約−20℃から約30
0℃である。収着に適当な圧力の範囲は約10kPaから約3000kPaである。
本発明は固定充填床に含まれる収着剤に分離を必要とする成分を含むプロセス
流れを通過させることにより実行することができる。もしくは、収着剤自体が動
いている向流移動床として又は流動床として適用される収着剤を用いて実行する
ことができる。固定充填床として含まれる収着剤と擬似移動床として構成された
工程を使用し、分離を必要とするプロセス流れの床への導入点を変える(例えば
、
適当な切り換えバルブを使用して)ことにより適用することができる。
精製された塩化水素の製造には当初の混合物の1つ又は複数の成分の濃度が濃
厚化される他の生産物の生成が伴うことがある。不純物が濃厚化された生産物は
典型的にはHCl精製に続く脱着により得られる。収着剤に保持される成分の脱着
は収着剤を同じ場所に置いたまま行なってよく、又は収着剤を除きそして収着工
程が行われた場所から遠隔の場所で脱着を行なってもよい。これらの脱着された
成分は収着剤区分から並流方向(分離を必要とする元の流れが供給されるのと同
じ方向)、又は向流方向(分離を要する元の流れと反対方向)のいずれに出ても
よい。そのような脱着は補足的なパージ液又はガス流を使用して又は使用しない
で行なってよく、このパージ用物質は成分物質のいずれかの1つであるか、又は
適当な代替物質でもよく、これらは同様に並流式又は向流式に供給してよい。
一般に、脱着は収着剤から収着された成分を除くのに有効な任意の熱力学的変
数を変化させることによりなされる。例えば、収着及び脱着は熱スイングサイク
ル(例えば、収着段階の後、収着剤の入った容器の壁を通して外から、及び/又
は熱い液体又はガスを収着剤の中に送ることにより収着剤を加熱する。この熱い
ガスは成分物質の1つ又は代替物質のいずれでもよい)を使用して行なうことが
できる。もしくは、微量成分を圧カスイングサイクル又は真空スイングサイクル
(例えば、収着段階の後、収着された成分が脱着されるように圧力を十分に下げ
るか、実施態様によっては真空にする)を使用して除くことができる。又は、収
着成分はある種のストリッピングガス又は液体を使用し、元のプロセス供給物質
に対して並流
式に又は向流式に供給することにより除くことができる。このストリッピング物
質はプロセス供給物質の1つ又は他の物質例えば窒素でもよい。
1基又は数基の収着剤の床を使用することができる。数基の床を使用する場合
、それらを直列又は並列に組合せることができる。数基の床を使用する場合には
また、床の圧力及び/又は温度を、プロセス流れが通過する間代わるがわる上げ
たり下げたりする周期的なゾーン収着(cycling zone sorption)を使用するこ
とにより分離効率を高めることができる。
本発明の実際は次の実施例によりいっそう明らかになるであろうが、これらに
限定されるものではない。
実施例1
予めHClにさらした市販のCalgon BPL活性炭81グラムを含む充填床(内径0.84
インチ(2.Icm)、長さ18インチ(48cm))を窒素を使用して250℃、300sccm(5×1
0-6m3/s)で12時間パージした。温度を100℃に下げ、HCl中1重量%のクロロ
ペンタフルオロエタン(CFC-115)のガス混合物を圧力15気圧(1520kPa)及び0.
26グラム/分で床に供給した。結果を表1に示す。
9.7グラムを供給した後、有機物不含HCl(有機物が5ppmより少ない)が床の
他端から流出し始めた。18.8グラムの有機物不含HClが床から流出した後、CFC-1
15が流出物中に現れ始めた。流出物中のCFC-115の濃度は徐々に増加し、全量で3
3グラムのHClが床から流出した後、濃度が供給物の0.98に達した。次いで、温度
を227℃に上げ、この間に圧力が発生するにつれて溶離する平均値として1.2重量
%のCFC-115を含む6.6グラムのHClを排出して圧力を15気圧に保つ熱サイクルを
最初に使用して床からHCl及びCFC-115を脱着した。残存するHCl及びCFC-115はさ
らに床を窒素で250℃でストリッピングして減らし、そして再び収着サイクルを
開始した。
実施例2
予めHClにさらした市販のCalgon BPL活性炭81グラムを含む充
填床(内径0.84インチ(2.lcm)、長さ18インチ(48cm))を窒素を使用して250℃、
300sccm(5×10-6m3/s)で12時間パージした。温度を100℃に下げ、そしてHC
l中1重量%のペンタフルオロエタン(HFC-125)のガス混合物を圧力15気圧(1
520kPa)及び0.26グラム/分で床に供給した。結果を表2に示す。
33.5グラムを供給した後、有機物不含HCl(有機物が5ppmより少ない)が床の
他端から流出し始めた。21gの有機物不含HClが床から流出した後、HFC-125が流
出物中に現れ始めた。流出物中のHFC-125の濃度は徐々に増加し、全量で47.5グ
ラムのHClが床から流出した後、濃度が供給物の0.99に達した。
実施例3
これは脱着工程の間、向流パージを併行する熱/圧力複合スイングサイクルの
例である。内径0.527インチ(1.34cm)、長さ1フィー
ト(30.5cm)の脱着床に、予めHCl蒸気と接触させた25.75グラムのCalgon BPL活
性炭を充填した。床を窒素で約200℃の温度でパージして微量の有機物又はHClを
全て除いた。床はHCl/有機物供給の流れを開始する前に50℃の作業温度に冷却
し、窒素で200psig(1480kPa)に加圧した。次いで、HClモル当たり2.3×10-3モ
ルのCHF2CF3(HFC-125)を含む混合物を1.84×10-3モル/分の速度でカラムに供
給した。結果を表3に示す。
飽和負荷量を計算した所、HCl負荷は6.88×10-3gモルHCl/g炭素であり、HF
C-125の負荷は2.2×10-5gモル/g炭素であった。
HFC-125の出口濃度がその入口濃度と一致した時、床への供給物
の流れを停止した。床圧力を200psig(1480kPa)から100psig(791kPa)に徐々
に下げ、その後床温度を50℃から200℃に上げた。ガスは床から供給物の方向と
反対方向に出るようにした。これらの2つの工程の間にほぼ0.13モルのHCl及び0
.00033モルのHFC-125が床から引き出された。この時点で純粋なHClによるパージ
を開始した。パージは供給ガスと同じ流速であるが但し反対の流れ方向であった
。200℃で得られた結果を表4に示す。
この時点で床はほとんど純粋なHClを含んでいた。床を冷却して50℃に戻し、
次いで純粋なHClで200psig(1480kPa)に加圧した。床を最初に窒素で飽和させ
た場合に使用したのと同じ条件でもう1回の収着を行った。50℃における結果を
表5に示す。
実施例4
これは温度及び/又は圧カスイング吸着などの全収着プロセスの収着部分の例
である。収着床は内径2.13cm、長さ48cmであり、113.6グラムのシリカライトペ
レット(Silicalite S-115(UnionCarbide)、1.8インチ(0.32mm)のペレット
(SiO2結合)を含むものを使用した。
床は最初に窒素で約250℃の温度でパージした。床はHCl/有機物供給の流れを
開始する前に100℃の作業温度に冷却し、窒素で200psig(1480kPa)に加圧した
。次いで、HClモル当たり2.3×10-3モルのHFC-125を含む混合物を7.36×10-3モ
ル/分の速度でカラムに供給した。100℃における床からの流出物の組成を一定
の間隔において試料検査した。その結果を表6に示す。
HClの床への平衡負荷量は1.33×10-3モル/g収着剤であり、一方HFC-125のそ
れは1.75×10-5モル/gであった。
実施例5
この実施例は実施例4と同じ条件下でのものであるが、但し作業温度を100℃
でなく50℃とした。50℃における結果を表7に示す。
HClの床への飽和負荷量は3.5×10-3モル/g収着剤であり、一方HFC-125のそ
れは1.5×10-5モル/g収着剤であった。
実施例4及び5の結果に基づいて、熱スイングサイクルは実行可能であると結
論される。
実施例6
これは温度及び/又は圧カスイング収着などの全収着プロセスの収着部分の例
である。
54.04グラム(乾燥)のシリカライトペレット(Silicalite S-115(UnionCarbi
de)、1.8インチ(0.32mm)のペレット(Si02結合))からなる収着床を使用した。
床を外径3.4インチ(1.9cm)、長さ14インチ(35.6cm)のステンレス管(内径0.
62インチ(1.6cm))に入れた。収着剤床の充填部分は長さ約13.5インチ(34.3cm
)であった。
供給物はHCl中0.23重量%のCClF2CF3(CFC-115)を含んでいた。
実験は100℃、200psig(1480kPa)で行った。床は最初に作業条件で窒素で飽和
させた。次いで、供給物を4.09×10-3gモル/分の速度で床に導入し、そしてCF
C-115不純物の破過を観察するため、ガスクロマトグラフィーにより流出物の濃
度をモニターした。出口流れの流量計を使用してHClの破過が起こる時を知らせ
た。100℃における床からの流出物の組成を一定の間隔をおいて試料検査した。
その結果を表8に示す。
HClの床への飽和負荷量は5.24×10-3モル/g収着剤であり、一方CFC-115のそ
れは4.13×10-5モル/g収着剤であった。
本発明の詳しい特長は実施例に例示されている。本発明のその他の実施態様は
本明細書に開示された本発明の明細及び実際の記述を考慮することにより当業者
に明らかになるであろう。本発明の新規な概念の精神と範囲から逸脱することな
く修正及び変更を実行し得るものと理解される。本発明はその上、本明細書に例
示した特定の処方及び実施例に限定されず、そのような変更された形体が請求の
範囲に帰属するものとして包含されるものと理解される。