JPH0881740A - 浸炭用鋼および浸炭部材 - Google Patents
浸炭用鋼および浸炭部材Info
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Landscapes
- Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】優れた靭性が得られる浸炭用鋼およびこれを用
いた浸炭部材を提供する。 【構成】 本発明は、重量%で、C0.4%以下,Cr
2〜7%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W
+2Mo)として3〜20%、V0.5%以上、1.1
%未満含有し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物
からなる浸炭用鋼である。また本発明の浸炭部材は、本
発明の浸炭用鋼の表面の一部または全部を浸炭したもの
である。
いた浸炭部材を提供する。 【構成】 本発明は、重量%で、C0.4%以下,Cr
2〜7%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W
+2Mo)として3〜20%、V0.5%以上、1.1
%未満含有し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物
からなる浸炭用鋼である。また本発明の浸炭部材は、本
発明の浸炭用鋼の表面の一部または全部を浸炭したもの
である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷間鍛造金型、摺動部
材等の過酷な条件下に適用するため、浸炭処理してから
用いられる浸炭用鋼およびこれを用いた浸炭部材を提供
するものである。
材等の過酷な条件下に適用するため、浸炭処理してから
用いられる浸炭用鋼およびこれを用いた浸炭部材を提供
するものである。
【0002】
【従来の技術】工具あるいは摺動部材において、表面の
耐摩耗性を高めるために硬さを高めた材料を使用する場
合、表面に発生したクラックが進展し、欠け等の発生に
より寿命にいたる場合が多い。上述したクラックの進展
を抑制するためには、材料の靭性を高れば良いのである
が、靭性と硬さは相反する関係であり、靭性を高めれば
硬さが低下し、摩耗によって寿命が短くなるという問題
が生ずることになる。従来、冷間鍛造用金型等の鍛造用
工具あるいは摺動部材に対して、耐摩耗性や耐熱性を付
与し、かつ靭性を高めるという目的に対しては、熱処理
の変更や合金組成の変更により対応されてきた。
耐摩耗性を高めるために硬さを高めた材料を使用する場
合、表面に発生したクラックが進展し、欠け等の発生に
より寿命にいたる場合が多い。上述したクラックの進展
を抑制するためには、材料の靭性を高れば良いのである
が、靭性と硬さは相反する関係であり、靭性を高めれば
硬さが低下し、摩耗によって寿命が短くなるという問題
が生ずることになる。従来、冷間鍛造用金型等の鍛造用
工具あるいは摺動部材に対して、耐摩耗性や耐熱性を付
与し、かつ靭性を高めるという目的に対しては、熱処理
の変更や合金組成の変更により対応されてきた。
【0003】最近、従来の単純な熱処理や合金元素の添
加ではなく、表面を窒化処理や浸炭処理して上述のクラ
ックの進展を抑制する新たな技術が開発され注目されて
いる。たとえば、特開昭61−236923号に記載さ
れるように、表面を浸炭して熱処理をすることによって
表面に残留圧縮応力を付与するとともに、表面硬度およ
び高温硬さを高め、浸炭されない内部は低炭素であるが
ために硬度が低く靭性に優れた組成を残しておく技術が
開示されている。特に、この低炭素の浸炭用鋼に浸炭す
る技術は、表面の残留圧縮応力によって高硬度の表面に
発生したクラックの進展を抑制できるとともに、低硬度
の靭性が高い非浸炭部である芯部を存在させることによ
り、芯部でのクラックの進展をも抑制できるという優れ
た技術である。
加ではなく、表面を窒化処理や浸炭処理して上述のクラ
ックの進展を抑制する新たな技術が開発され注目されて
いる。たとえば、特開昭61−236923号に記載さ
れるように、表面を浸炭して熱処理をすることによって
表面に残留圧縮応力を付与するとともに、表面硬度およ
び高温硬さを高め、浸炭されない内部は低炭素であるが
ために硬度が低く靭性に優れた組成を残しておく技術が
開示されている。特に、この低炭素の浸炭用鋼に浸炭す
る技術は、表面の残留圧縮応力によって高硬度の表面に
発生したクラックの進展を抑制できるとともに、低硬度
の靭性が高い非浸炭部である芯部を存在させることによ
り、芯部でのクラックの進展をも抑制できるという優れ
た技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した浸炭して使用
するための材料、すなわち浸炭用鋼は、浸炭後にあって
は材料の内部にそのままの組成で存在するものである。
材料内部を構成する材料としては、浸炭した表面に加わ
る負荷に耐えられるだけの十分な強度が必要であり、そ
のためには内部の硬さをある程度確保する必要がある。
そして浸炭用鋼としては、最も重要な特性である靭性の
確保および浸炭する表面に十分な硬さが得られることも
必要である。
するための材料、すなわち浸炭用鋼は、浸炭後にあって
は材料の内部にそのままの組成で存在するものである。
材料内部を構成する材料としては、浸炭した表面に加わ
る負荷に耐えられるだけの十分な強度が必要であり、そ
のためには内部の硬さをある程度確保する必要がある。
そして浸炭用鋼としては、最も重要な特性である靭性の
確保および浸炭する表面に十分な硬さが得られることも
必要である。
【0005】上述した特開昭61−236923号によ
れば、浸炭して用いられる軸受鋼としてCr−Mo−V
系であって、M50よりもC量の低い、C0.11−
0.15,Mo3.0−4.5,Cr4.0−4.2
5,V1.1−1.3,Ni3.2−3.6、残部Fe
用からなる浸炭用鋼が開示されている。本発明者がこの
材料を検討したところ、浸炭後の材料内部を構成する素
材としては、さらなる靭性の確保が必要であった。本発
明の目的は、内部硬さを浸炭用鋼に必要な程度に高めて
も、クラックの進展の抑制が可能である、極めて靭性の
高い浸炭用鋼およびこれを用いた浸炭部材を提供するこ
とである。
れば、浸炭して用いられる軸受鋼としてCr−Mo−V
系であって、M50よりもC量の低い、C0.11−
0.15,Mo3.0−4.5,Cr4.0−4.2
5,V1.1−1.3,Ni3.2−3.6、残部Fe
用からなる浸炭用鋼が開示されている。本発明者がこの
材料を検討したところ、浸炭後の材料内部を構成する素
材としては、さらなる靭性の確保が必要であった。本発
明の目的は、内部硬さを浸炭用鋼に必要な程度に高めて
も、クラックの進展の抑制が可能である、極めて靭性の
高い浸炭用鋼およびこれを用いた浸炭部材を提供するこ
とである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、浸炭して用
いられる浸炭用鋼に着目し、その成分、組織、靭性、硬
さの関係を研究し、Vを従来よりも低めの特定範囲に規
制すると、硬さを低下させることなく、靭性を飛躍的に
向上させることができることを見いだし本発明に到達し
た。
いられる浸炭用鋼に着目し、その成分、組織、靭性、硬
さの関係を研究し、Vを従来よりも低めの特定範囲に規
制すると、硬さを低下させることなく、靭性を飛躍的に
向上させることができることを見いだし本発明に到達し
た。
【0007】すなわち本発明は、重量%で、C0.4%
以下,Cr2〜7%、WまたはMoの1種または2種を
W当量(W+2Mo)として3〜20%、V0.5%以
上、1.1%未満含有するFe基のマルテンサイト系鋼
であり、浸炭して用いられることを特徴とする浸炭用鋼
である。
以下,Cr2〜7%、WまたはMoの1種または2種を
W当量(W+2Mo)として3〜20%、V0.5%以
上、1.1%未満含有するFe基のマルテンサイト系鋼
であり、浸炭して用いられることを特徴とする浸炭用鋼
である。
【0008】また好ましくは重量%で、C0.1〜0.
4%,Si2%以下、Mn2%以下、Cr2〜7%、W
またはMoの1種または2種をW当量(W+2Mo)と
して3〜18%、V0.5%以上、1.1%未満含有
し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物からなる組
成とする。また望ましくはFeの一部を5%以下のNi
で置換する。またFeの一部を10%以下のCoで置換
しても良い。
4%,Si2%以下、Mn2%以下、Cr2〜7%、W
またはMoの1種または2種をW当量(W+2Mo)と
して3〜18%、V0.5%以上、1.1%未満含有
し、残部実質的にFeおよび不可避的不純物からなる組
成とする。また望ましくはFeの一部を5%以下のNi
で置換する。またFeの一部を10%以下のCoで置換
しても良い。
【0009】本発明の浸炭部材は、上述した浸炭用鋼の
表面の一部または全部に浸炭層が形成され、浸炭層が形
成された表面の硬さはHRC60以上、浸炭部以外の内
部は、HRC60未満であることを特徴とする浸炭部材
である。
表面の一部または全部に浸炭層が形成され、浸炭層が形
成された表面の硬さはHRC60以上、浸炭部以外の内
部は、HRC60未満であることを特徴とする浸炭部材
である。
【0010】
【作用】本発明の最大の特徴の一つは、高速度工具鋼の
組成からCを低め浸炭して使用される浸炭用鋼のV量を
0.5%以上、1.1%未満という低めに規制したこと
である。このVの規制により本発明の浸炭用鋼は、硬さ
をほとんど落とすことなく、極めて高い靭性を得ること
ができるものである。
組成からCを低め浸炭して使用される浸炭用鋼のV量を
0.5%以上、1.1%未満という低めに規制したこと
である。このVの規制により本発明の浸炭用鋼は、硬さ
をほとんど落とすことなく、極めて高い靭性を得ること
ができるものである。
【0011】本発明におけるVの規定によって硬さを低
下させず、著しく靭性が向上する理由は不詳であるが、
熱処理(焼入れ、焼戻し)後のマトリクスの微細な2次
硬化析出物の種類と形態によるものと推測される。本発
明において、Vが1.1%以上であると、靭性が著しく
低下するため1.1%未満と規定した。好ましくは1.
0%未満である。また、0.5%未満であると靭性は向
上するものの、浸炭された層のV添加による高温焼戻し
における十分な2次硬化が得られなくなり、しいては耐
摩耗性、耐熱性の向上が劣化してしまい結果として寿命
特性を劣化させてしまうので好ましくない。したがっ
て、本発明におけるVの下限は0.5%と規定した。
下させず、著しく靭性が向上する理由は不詳であるが、
熱処理(焼入れ、焼戻し)後のマトリクスの微細な2次
硬化析出物の種類と形態によるものと推測される。本発
明において、Vが1.1%以上であると、靭性が著しく
低下するため1.1%未満と規定した。好ましくは1.
0%未満である。また、0.5%未満であると靭性は向
上するものの、浸炭された層のV添加による高温焼戻し
における十分な2次硬化が得られなくなり、しいては耐
摩耗性、耐熱性の向上が劣化してしまい結果として寿命
特性を劣化させてしまうので好ましくない。したがっ
て、本発明におけるVの下限は0.5%と規定した。
【0012】以下V以外の各元素の規定理由について述
べる。CはVについで重要な元素であり、浸炭して用い
られる本発明鋼の基本的な靭性と硬さを決定する元素で
ある。Cはマルテンサイト変態による焼入れ硬化後の硬
さを高める。また、オーステナイト安定化元素であり、
オーステナイト化温度でのδフェライトが生成するのを
抑える効果がある。一方、C量を高めるすぎると、硬さ
が高くなりすぎ、靭性が劣化する。本発明においては、
浸炭されて使用されるため、浸炭されない芯部の靭性の
確保が最も重要であり、残留炭化物の生成過多による靭
性の低下を防ぐため、Cの上限を0.4%とした。ま
た、δフェライトの生成を抑制するためには、好ましく
は0.1%以上とする。
べる。CはVについで重要な元素であり、浸炭して用い
られる本発明鋼の基本的な靭性と硬さを決定する元素で
ある。Cはマルテンサイト変態による焼入れ硬化後の硬
さを高める。また、オーステナイト安定化元素であり、
オーステナイト化温度でのδフェライトが生成するのを
抑える効果がある。一方、C量を高めるすぎると、硬さ
が高くなりすぎ、靭性が劣化する。本発明においては、
浸炭されて使用されるため、浸炭されない芯部の靭性の
確保が最も重要であり、残留炭化物の生成過多による靭
性の低下を防ぐため、Cの上限を0.4%とした。ま
た、δフェライトの生成を抑制するためには、好ましく
は0.1%以上とする。
【0013】Crはマトリクスと炭化物の両方に固溶
し、マトリクスの焼入れ性の確保、炭化物の焼入れ時の
基地への固溶の促進、浸炭される表面の高硬度化に有効
な元素である。Crは2%未満では焼入れ焼戻し後の硬
さがHRC40以上が得られないため、下限値を2%と
した。また7%以上添加すると、δフェライトが安定
し、靭性を著しく劣化するため7%以下と規定した。
し、マトリクスの焼入れ性の確保、炭化物の焼入れ時の
基地への固溶の促進、浸炭される表面の高硬度化に有効
な元素である。Crは2%未満では焼入れ焼戻し後の硬
さがHRC40以上が得られないため、下限値を2%と
した。また7%以上添加すると、δフェライトが安定
し、靭性を著しく劣化するため7%以下と規定した。
【0014】WとMoは、浸炭用鋼の浸炭部の硬さを高
め、また耐熱性を付与するという点で同一の作用を有す
る元素である。重量比でMo1%はW2%と等価であ
り、W当量(W+2Mo)として規定する。WまたはM
oは浸炭されることによって、微細なM6C型炭化物を
形成し、硬い浸炭層を形成する。また微細な炭化物によ
りオーステナイト結晶粒が粗大化が防止されるため靭性
の確保にも有効である。しかし、W当量を高めていくと
浸炭部の硬さが上がるが、浸炭されない芯部の硬さも硬
くなり、クラックの進展速度を速めてしまう。また、W
当量が高すぎるとδフェライトが安定化し、靭性を著し
く劣化する。本発明では、浸炭用鋼として充分な表面硬
さをえるために、W当量は3%以上と規定し、充分な靭
性を確保するためにW当量の上限を20%とした。好ま
しいW当量の上限は18%である。
め、また耐熱性を付与するという点で同一の作用を有す
る元素である。重量比でMo1%はW2%と等価であ
り、W当量(W+2Mo)として規定する。WまたはM
oは浸炭されることによって、微細なM6C型炭化物を
形成し、硬い浸炭層を形成する。また微細な炭化物によ
りオーステナイト結晶粒が粗大化が防止されるため靭性
の確保にも有効である。しかし、W当量を高めていくと
浸炭部の硬さが上がるが、浸炭されない芯部の硬さも硬
くなり、クラックの進展速度を速めてしまう。また、W
当量が高すぎるとδフェライトが安定化し、靭性を著し
く劣化する。本発明では、浸炭用鋼として充分な表面硬
さをえるために、W当量は3%以上と規定し、充分な靭
性を確保するためにW当量の上限を20%とした。好ま
しいW当量の上限は18%である。
【0015】Siは、脱酸元素として、あるいは硬さや
耐熱性を向上させる元素として知られており、添加する
ことが好ましい。添加する場合には2%を超えると靭性
が劣化するので上限を2%とした。Mnは、脱酸元素と
して、あるいはMnSとして析出させ、不純物として含
有されるSの有害性を抑える効果がある。添加する場合
には2%を超えると靭性を劣化するため、2%を上限と
する。
耐熱性を向上させる元素として知られており、添加する
ことが好ましい。添加する場合には2%を超えると靭性
が劣化するので上限を2%とした。Mnは、脱酸元素と
して、あるいはMnSとして析出させ、不純物として含
有されるSの有害性を抑える効果がある。添加する場合
には2%を超えると靭性を劣化するため、2%を上限と
する。
【0016】Niは、δフェライトの生成を著しく抑え
るとともに、浸炭表面の硬さの変化を緩やかにする効果
があり、疲労寿命特性を向上するのに極めて有効な添加
可能元素である。しかし、5%を超えるとA1変態点が
下がり、焼きなまし硬さを上げ、被削性等を劣化するた
め添加する場合には、5%以下とする。
るとともに、浸炭表面の硬さの変化を緩やかにする効果
があり、疲労寿命特性を向上するのに極めて有効な添加
可能元素である。しかし、5%を超えるとA1変態点が
下がり、焼きなまし硬さを上げ、被削性等を劣化するた
め添加する場合には、5%以下とする。
【0017】Coは、主にマトリックスに固溶し、硬さ
と耐熱性を向上させる効果がある。ただし、添加量を増
やしていくと、強度と靭性は漸減する。特に高硬度が要
求される軸受部材に添加するのが望ましい元素である。
Coの10%以上の添加は、靭性が劣化し過ぎて、軸受
部材として不適となるので上限は10%とした。
と耐熱性を向上させる効果がある。ただし、添加量を増
やしていくと、強度と靭性は漸減する。特に高硬度が要
求される軸受部材に添加するのが望ましい元素である。
Coの10%以上の添加は、靭性が劣化し過ぎて、軸受
部材として不適となるので上限は10%とした。
【0018】また本発明においては、具体的な添加元素
としてNbがある。Nbは合金組織の微細化に効果のあ
る元素であり、浸炭用鋼の靭性を高めるためには有効で
ある。Nbは添加し過ぎると、硬さが高くなりすぎ、ク
ラックの進展速度を速めてしまうため、添加する場合
は、0.5%以下とする。
としてNbがある。Nbは合金組織の微細化に効果のあ
る元素であり、浸炭用鋼の靭性を高めるためには有効で
ある。Nbは添加し過ぎると、硬さが高くなりすぎ、ク
ラックの進展速度を速めてしまうため、添加する場合
は、0.5%以下とする。
【0019】Niを含有する場合の本発明の浸炭用鋼の
好ましい具体的な組成範囲の一例を示すと、重量%で、
C0.1〜0.4%,Si2%以下、Mn2%以下、N
i5%以下、Cr2〜7%、WまたはMoの1種または
2種をW当量(W+2Mo)として3〜18%、V0.
5%以上、1.1%未満含有し、残部実質的にFeから
なる鋼である。さらに、Nbを含有する場合の本発明の
浸炭用鋼の好ましい具体的な組成範囲の一例を示すと、
重量%で、C0.1〜0.4%,Si2%以下、Mn2
%以下、Ni5%以下、Cr2〜7%、WまたはMoの
1種または2種をW当量(W+2Mo)として3〜18
%、V0.5%以上、1.1%未満含有し、Nb0.5
%以下、残部実質的にFeからなる鋼である。
好ましい具体的な組成範囲の一例を示すと、重量%で、
C0.1〜0.4%,Si2%以下、Mn2%以下、N
i5%以下、Cr2〜7%、WまたはMoの1種または
2種をW当量(W+2Mo)として3〜18%、V0.
5%以上、1.1%未満含有し、残部実質的にFeから
なる鋼である。さらに、Nbを含有する場合の本発明の
浸炭用鋼の好ましい具体的な組成範囲の一例を示すと、
重量%で、C0.1〜0.4%,Si2%以下、Mn2
%以下、Ni5%以下、Cr2〜7%、WまたはMoの
1種または2種をW当量(W+2Mo)として3〜18
%、V0.5%以上、1.1%未満含有し、Nb0.5
%以下、残部実質的にFeからなる鋼である。
【0020】本発明は、上述した規定を満足した浸炭用
鋼を浸炭することにより、浸炭層の表面硬さはHRC6
0以上、浸炭部以外の内部硬さはHRC60未満にする
ことができる。また、本発明の浸炭用鋼は浸炭処理と、
その後の熱処理により表面に圧縮応力を残留させること
ができる。この圧縮応力場によって、表面のクラックの
進展が抑制できるととともに、高い靭性を有する内部に
よって、内部でのクラックの進展も防止できるため、寿
命特性を著しく向上することができる。
鋼を浸炭することにより、浸炭層の表面硬さはHRC6
0以上、浸炭部以外の内部硬さはHRC60未満にする
ことができる。また、本発明の浸炭用鋼は浸炭処理と、
その後の熱処理により表面に圧縮応力を残留させること
ができる。この圧縮応力場によって、表面のクラックの
進展が抑制できるととともに、高い靭性を有する内部に
よって、内部でのクラックの進展も防止できるため、寿
命特性を著しく向上することができる。
【0021】
(実施例1)表1に示す本発明の浸炭用鋼および比較鋼
を、真空溶解法にて溶製し、その後、ソーキング処理を
施することによって得た。得られた浸炭用鋼に対して、
浸炭後の部材の内部を構成する材料としての特性を評価
するため、浸炭処理を行わずシャルピー衝撃試験片用に
15mm×15mmに圧延し、焼入れ焼戻し処理を行ない評
価試料とした。なお焼入れ、焼戻しは、1100℃で焼
入れ、高温焼戻しで2次硬化が得られるピーク硬さが得
られる焼戻し温度より10℃高めの温度で処理したもの
である。得られた評価試料に対して、硬さの測定および
シャルピー衝撃試験を行なった。
を、真空溶解法にて溶製し、その後、ソーキング処理を
施することによって得た。得られた浸炭用鋼に対して、
浸炭後の部材の内部を構成する材料としての特性を評価
するため、浸炭処理を行わずシャルピー衝撃試験片用に
15mm×15mmに圧延し、焼入れ焼戻し処理を行ない評
価試料とした。なお焼入れ、焼戻しは、1100℃で焼
入れ、高温焼戻しで2次硬化が得られるピーク硬さが得
られる焼戻し温度より10℃高めの温度で処理したもの
である。得られた評価試料に対して、硬さの測定および
シャルピー衝撃試験を行なった。
【0022】結果を表1に示す。また、浸炭部材として
の評価を行うため、φ24mmに加工した浸炭用鋼に対
して、950℃で48時間の浸炭処理を行い、表面から
1mm除去した後、上述した焼入れ焼戻し処理を行い、
約2.5mmの浸炭層を有する浸炭部材を得た。得られ
た浸炭部材は、X線による分析から表面に圧縮応力が残
留していることが確認された。また浸炭部材の表面硬さ
を測定した結果を表1に示す。さらに高温での軟化抵抗
を評価するため、焼戻し温度を650℃に変え、表面硬
さを評価した。
の評価を行うため、φ24mmに加工した浸炭用鋼に対
して、950℃で48時間の浸炭処理を行い、表面から
1mm除去した後、上述した焼入れ焼戻し処理を行い、
約2.5mmの浸炭層を有する浸炭部材を得た。得られ
た浸炭部材は、X線による分析から表面に圧縮応力が残
留していることが確認された。また浸炭部材の表面硬さ
を測定した結果を表1に示す。さらに高温での軟化抵抗
を評価するため、焼戻し温度を650℃に変え、表面硬
さを評価した。
【0023】
【表1】
【0024】測定結果を表1に示す。本発明の浸炭用鋼
は、V量の高い比較鋼(試料No18)に比べて、同等
もしくはそれ以上の硬さを有するにもかかわらず、約2
倍〜4倍という極めて高い衝撃値を有しており、浸炭用
鋼として優れていることがわかる。また、本発明の浸炭
用鋼では、Cを高めて硬度を高めた(試料No2および
3)においても、極めて高い衝撃値を有するものであ
る。本発明の浸炭用鋼よりも、さらにCが高い比較鋼試
料No19はV量が本発明の規定範囲であっても、硬さ
が高くなり衝撃値が低下して好ましくないものであるこ
とがわかる。
は、V量の高い比較鋼(試料No18)に比べて、同等
もしくはそれ以上の硬さを有するにもかかわらず、約2
倍〜4倍という極めて高い衝撃値を有しており、浸炭用
鋼として優れていることがわかる。また、本発明の浸炭
用鋼では、Cを高めて硬度を高めた(試料No2および
3)においても、極めて高い衝撃値を有するものであ
る。本発明の浸炭用鋼よりも、さらにCが高い比較鋼試
料No19はV量が本発明の規定範囲であっても、硬さ
が高くなり衝撃値が低下して好ましくないものであるこ
とがわかる。
【0025】Vの添加量を変えた本発明の浸炭用鋼であ
る試料No1、4、5からV量が1%を超えると衝撃値
が低下する傾向があることがわかる。また、本発明の浸
炭用鋼のVの規定範囲よりもV量の少ない比較鋼の試料
No.20は、衝撃値は高いものの、表面を浸炭したと
きに、十分な2次硬化が得られておらず、また高温にお
ける軟化抵抗も劣化するため好ましくないものである。
W,Cr、Coの添加量を変えた本発明の試料No6、
7、8、9、10、11、12、16および17におい
ても、Vが本発明の範囲よりも高い比較鋼No18より
大幅に優れた衝撃値を有することがわかる。
る試料No1、4、5からV量が1%を超えると衝撃値
が低下する傾向があることがわかる。また、本発明の浸
炭用鋼のVの規定範囲よりもV量の少ない比較鋼の試料
No.20は、衝撃値は高いものの、表面を浸炭したと
きに、十分な2次硬化が得られておらず、また高温にお
ける軟化抵抗も劣化するため好ましくないものである。
W,Cr、Coの添加量を変えた本発明の試料No6、
7、8、9、10、11、12、16および17におい
ても、Vが本発明の範囲よりも高い比較鋼No18より
大幅に優れた衝撃値を有することがわかる。
【0026】また、Niの添加量を変えた、試料No1
3,14および15から、Niの増加とともに衝撃値が
高くなっており、靭性を確保するためにNiの添加が有
効であることがわかる。また表1の本発明の浸炭部材の
表面硬さはHRC60以上が確保できており、耐摩耗性
を確保できる高い硬さを有する表面と、靭性の極めて高
い内部で構成された浸炭部材が構成できたことがわか
る。650℃で焼戻した時の硬さ(軟化抵抗)を測定し
たところ、本発明鋼に対し、Vが0.34%である比較
材No20は著しく軟化している。本発明鋼は、耐熱性
のためには軟化抵抗が高いほど良いので、Vが0.5%
未満では最高硬さが60HRCに到達せず、しかも軟化
抵抗が低いので、好ましくないことがわかる。
3,14および15から、Niの増加とともに衝撃値が
高くなっており、靭性を確保するためにNiの添加が有
効であることがわかる。また表1の本発明の浸炭部材の
表面硬さはHRC60以上が確保できており、耐摩耗性
を確保できる高い硬さを有する表面と、靭性の極めて高
い内部で構成された浸炭部材が構成できたことがわか
る。650℃で焼戻した時の硬さ(軟化抵抗)を測定し
たところ、本発明鋼に対し、Vが0.34%である比較
材No20は著しく軟化している。本発明鋼は、耐熱性
のためには軟化抵抗が高いほど良いので、Vが0.5%
未満では最高硬さが60HRCに到達せず、しかも軟化
抵抗が低いので、好ましくないことがわかる。
【0027】(実施例2)表1の発明鋼No1、2、お
よび比較鋼No18、20に示す成分にて、同様に試料
を作製した。浸炭せずに焼入れ温度を1100℃とし、
300℃から600℃間の所定温度で焼戻し、焼戻し温
度と靭性の関係を調べた。靭性は、実施例1と同様にシ
ャルピー衝撃試験によって得られる衝撃値で評価した。
その結果を図1に示す。Vの高い比較鋼No18に対
し、Vの低い本発明の浸炭用鋼No1は靭性に優れてい
る。また、本発明の浸炭鋼No2は本発明の内、Cを高
く調整したものであり、内部硬さを高めたものである。
Cを高めたため、衝撃値はやや低くなる。しかし、53
0℃で焼き戻すとHRC52の高い硬さとともに、Vの
高い比較鋼No18よりも高い衝撃値が得られており、
Vを低めた本発明の浸炭用鋼はCにより硬さを高めて
も、高い靭性を確保できることがわかる。
よび比較鋼No18、20に示す成分にて、同様に試料
を作製した。浸炭せずに焼入れ温度を1100℃とし、
300℃から600℃間の所定温度で焼戻し、焼戻し温
度と靭性の関係を調べた。靭性は、実施例1と同様にシ
ャルピー衝撃試験によって得られる衝撃値で評価した。
その結果を図1に示す。Vの高い比較鋼No18に対
し、Vの低い本発明の浸炭用鋼No1は靭性に優れてい
る。また、本発明の浸炭鋼No2は本発明の内、Cを高
く調整したものであり、内部硬さを高めたものである。
Cを高めたため、衝撃値はやや低くなる。しかし、53
0℃で焼き戻すとHRC52の高い硬さとともに、Vの
高い比較鋼No18よりも高い衝撃値が得られており、
Vを低めた本発明の浸炭用鋼はCにより硬さを高めて
も、高い靭性を確保できることがわかる。
【0028】
【発明の効果】本発明の浸炭用鋼によれば、浸炭されて
浸炭部材となったとき、極めて優れた靭性特性と、十分
な強度を保つことができるため、従来の浸炭部材の寿命
特性を飛躍的に向上することが可能となる。したがっ
て、冷間鍛造金型、摺動部材、パンチやエンドミル等の
工具としてクラックの発生が予想される過酷な条件下に
適用する浸炭用鋼として極めて有用である。
浸炭部材となったとき、極めて優れた靭性特性と、十分
な強度を保つことができるため、従来の浸炭部材の寿命
特性を飛躍的に向上することが可能となる。したがっ
て、冷間鍛造金型、摺動部材、パンチやエンドミル等の
工具としてクラックの発生が予想される過酷な条件下に
適用する浸炭用鋼として極めて有用である。
【図1】本発明鋼と比較鋼の焼戻し温度と靭性の関係を
示す図である。
示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 重量%で、C0.4%以下,Cr2〜7
%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W+2M
o)として3〜20%、V0.5%以上、1.1%未満
含有するFe基のマルテンサイト系鋼であり、浸炭して
用いられることを特徴とする浸炭用鋼。 - 【請求項2】 重量%で、C0.1〜0.4%,Si2
%以下、Mn2%以下、Cr2〜7%、WまたはMoの
1種または2種をW当量(W+2Mo)として3〜18
%、V0.5%以上、1.1%未満含有し、残部実質的
にFeおよび不可避的不純物からなり、浸炭して用いら
れることを特徴とする浸炭用鋼。 - 【請求項3】 請求項1ないし2のいずれかに記載のF
eの一部を5%以下のNiで置換したことを特徴とする
浸炭用鋼。 - 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載のF
eの一部を10%以下のCoで置換したことを特徴とす
る浸炭用鋼。 - 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の浸
炭用鋼の表面の一部または全部に浸炭層が形成され、浸
炭層が形成された表面の硬さはHRC60以上、浸炭部
以外の内部の硬さはHRC60未満であることを特徴と
する浸炭部材。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP21908594A JP3476097B2 (ja) | 1994-09-13 | 1994-09-13 | 浸炭用鋼および浸炭部材 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP21908594A JP3476097B2 (ja) | 1994-09-13 | 1994-09-13 | 浸炭用鋼および浸炭部材 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH0881740A true JPH0881740A (ja) | 1996-03-26 |
| JP3476097B2 JP3476097B2 (ja) | 2003-12-10 |
Family
ID=16730030
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP21908594A Expired - Fee Related JP3476097B2 (ja) | 1994-09-13 | 1994-09-13 | 浸炭用鋼および浸炭部材 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3476097B2 (ja) |
Cited By (4)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2012058404A1 (en) * | 2010-10-29 | 2012-05-03 | Carnegie Mellon University | High toughness secondary hardening steel |
| JP2017066452A (ja) * | 2015-09-29 | 2017-04-06 | 大同特殊鋼株式会社 | ダイカスト用金型 |
| JP2019522732A (ja) * | 2016-06-17 | 2019-08-15 | オベール エ デュヴァル | 鋼組成物 |
| US10428410B2 (en) | 2010-10-29 | 2019-10-01 | Carnegie Mellon University | High toughness secondary hardening steels with nickel as a primary strength and toughening agent |
-
1994
- 1994-09-13 JP JP21908594A patent/JP3476097B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (5)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| WO2012058404A1 (en) * | 2010-10-29 | 2012-05-03 | Carnegie Mellon University | High toughness secondary hardening steel |
| US9359653B2 (en) | 2010-10-29 | 2016-06-07 | Carnegie Mellon University | High toughness secondary hardening steel |
| US10428410B2 (en) | 2010-10-29 | 2019-10-01 | Carnegie Mellon University | High toughness secondary hardening steels with nickel as a primary strength and toughening agent |
| JP2017066452A (ja) * | 2015-09-29 | 2017-04-06 | 大同特殊鋼株式会社 | ダイカスト用金型 |
| JP2019522732A (ja) * | 2016-06-17 | 2019-08-15 | オベール エ デュヴァル | 鋼組成物 |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JP3476097B2 (ja) | 2003-12-10 |
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Legal Events
| Date | Code | Title | Description |
|---|---|---|---|
| LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |