JPH0896745A - 低速多価イオンによる超高感度水素検出法 - Google Patents

低速多価イオンによる超高感度水素検出法

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JPH0896745A
JPH0896745A JP6233549A JP23354994A JPH0896745A JP H0896745 A JPH0896745 A JP H0896745A JP 6233549 A JP6233549 A JP 6233549A JP 23354994 A JP23354994 A JP 23354994A JP H0896745 A JPH0896745 A JP H0896745A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 多価低速イオンを用いることにより、標的表
面への損傷を著しく減少でき、きわめて高効率かつコン
パクトな固体表面水素の定量分析を実現する。 【構成】 運動エネルギーよりもポテンシャルエネルギ
ーの方が大きい低速多価イオンを発生するEBIS型低
速多価イオン源11と、EXB質量分析器13と、ビー
ム12を矩形波に変換するデフレクタ14と、アパーチ
ャ15、レンズ16、2次イオン検出器をもつ加速器1
8と、これに設けたメッシュ状標的19と、2次電子増
倍管20とを順次配列し、標的に低速多価イオンが衝突
する際に生ずる2次イオンを2次イオン検出器に向けて
加速して検出すると同時に、2次電子を標的に向って追
い返してこれを2次電子倍増管で検出し、2次イオンの
2次イオン検出器における検出時刻と2次電子倍増管に
おける2次電子検出時刻との差を検出する手段を具備
し、これにより固体表面水素の定量分析をする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子ビームイオン源
(EBIS)あるいはECRイオン源(ECRIS)と
いった多価イオンを効率的に生成できるイオン源からの
多価低速イオンを用いることにより、標的表面への損傷
を著しく減少でき、きわめて高効率かつコンパクトな固
体表面水素の定量分析を実現する低速多価イオンによる
超高感度水素検出法を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】固体表面及び固体中の水素分析・定量は
従来の方法では非常に困難であった。固体表面又は固体
中の水素検出、特に表面上の水素検出としては、Nとの
共鳴核反応を用いた方法をあげることができる。この場
合の深さ分解能は加速器のエネルギー分解能に強く依存
するが、数原子層程度である。
【0003】共鳴核反応では、数MeVに加速したNが
必要でプローブとなる現象が核反応であるため、検出効
率は非常に低く、測定に数時間を要する。また当然なが
ら中型の加速器を必要とする。
【0004】従来の測定法の概略を図1に示す。 図1
において、1は負イオン源を示し、負イオン源1より放
射された負イオンをタンデム加速器2で加速し、分析マ
グネト3で偏向して、この負イオンを実験用真空槽4に
セツトした標的5に当て、標的5より放出されるγ線を
核反応モニター用γ線検出器6で検出するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のように従来の表
面水素分析法は大がかりであり、しかも、検出効率の低
いものであった。また、従来法では負イオンを加速して
表面に当て、標的より放出されるγ線を核反応モニター
用γ線検出器で検出するものであるため標的表面の損傷
が大きい欠点があった。
【0006】また水素より重い例えばLi以上の原子の
表面上のふるまいは、表面付近に特に高いセンシティビ
ティをもつオージェ電子分光により従来から行なわれて
きた。しかしながら、水素はオージェ電子を放出せず、
これまでの表面分析法での盲点となっていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の従来法の
欠点を解決するために、電子ビームイオン源(EBI
S)あるいはECRイオン源(ECRIS)といった多
価イオンを効率的に生成できるイオン源からの低速多価
イオンを用いることにより、固体表面水素の定量分析を
極めて高効率かつコンパクトな方法で実現を可能とする
ことを知見したものである。
【0008】本発明は、運動エネルギーよりもポテンシ
ャルエネルギーの方が大きい低速多価イオンを発生する
EBIS型低速多価イオン源と、EXB質量分析器と、
ビームを矩形波に変換するためのデフレクターと、アパ
ーチャとレンズ及び2次イオン検出器をもった加速器
と、加速器に設けたメッシュ状標的と、2次電子増倍管
とを前記イオン源からのイオンを輸送するビームライン
上に順次配列し、前記標的に低速多価イオンが衝突する
際に発せられる2次イオンを2次イオン検出器に向けて
加速して検出すると同時に2次電子を標的のメッシュに
向って追い返してこれを2次電子倍増管で検出し2次イ
オンの2次イオン検出器における検出時刻と、2次電子
倍増管における2次電子検出時刻との差を検出する手段
を具備し、これにより固体表面水素の定量分析をするこ
とを特徴とする低速多価イオンによる超高感度水素検出
法にある。
【0009】本発明に使用するEBIS型多価イオン源
は、電子銃と、ドリフトチューブ、ドリフトチューブを
取巻くソレノイドコイルと、ソレノイドコイルを包囲す
る磁鉄心と、ドリフトチューブの外側に設けた電子コレ
クターとより成り、ドリフトチューブの入口側及び出口
側をμ−メタル及び軟鉄パイプで磁気遮蔽し、ドリフト
チューブの軸方向に強力な磁場を発生させて電子ビーム
を高密度にするよう構成したものより成る。
【0010】本発明は低速多価イオンによる超高感度の
水素検出法であって、そのための検出器は 低速多価イオン源〔電子ビーム型(EBIS)、E
CR型(ECRIS)その他低速の多価イオンを供給で
きるイオン源〕 イオン源からのイオンを輸送するビームライン 分析されるべき試料を入れる超高真空槽 表面から解離された水素を検出する質量分析器 からなる。
【0011】イオン源からのイオンを輸送するビームラ
インは図2に示すように、EBIS型イオン源11からの
イオンビームの輸送系12上にEXB質量分析器13及びデ
フレクタ14、アパーチャ15、レンズ16、ミクロチャンネ
ルプレート(MCP:1次イオン検出器)17、加速器1
8、標的19及び2次電子増幅器20を順次配列する。14A
はデフレクタ14に交流をかけてイオンビームをパルス化
するための交流発振器である。これらり低速多価イオン
11、EXB質量分析器13、デフレクタ14、アパーチャ1
5、レンズ16、加速器18、2次電子倍増管20は超高真空
系(図示せず)中に設ける。
【0012】図2において、標的19は銅メッシュを用い
た例を示したが炭素材料でもよく、水素を含有する固体
材料であればよい。
【0013】図3は本発明の実験に使用したEBIS
(エレクトロン・ビーム・イオン・ソース)型低速多価
イオン源の詳細図である。図3において、21は超高真空
容器を示し、この超高真空容器21の一方に陰極22、陽極
23よりなる電子銃24を軟鉄チューブ25及び入口側μ−メ
タル26Aで磁場より遮蔽して、電子銃より放射された電
子ビーム27をソレノイドコイル29及び磁鉄心30により包
囲されたドリフトチューブ28を通過し、出口側μ−メタ
ル26Bを経て電子コレクター31で電子を補集するように
なっている。32は電子コレクター31の後に接続したイオ
ンレンズ系である。33は電子コレクター31を冷却する液
体窒素冷却器である。
【0014】図4は図3のEBIS装置の正面から見た
断面図であり、34は液体窒素冷却器32に設けたバルブを
示し、図3と同一符号で示した個所は同一構成部分を示
す。ターボ分子ポンプ33は300 L/secで吸引して超
高真空とする。
【0015】図5は図3のEBISの原理説明用概略図
である。図5において、電子銃24は陰極22、陽極23より
成り、この電子銃24は入口側軟鉄パイプ25Aとμ−メタ
ル26Aとで磁場より遮蔽してあり、電子銃24より放射さ
れた電子ビーム27はソレノイドコイル29と磁鉄心30によ
り包囲されたドリフトチューブ28を通して搬送され、出
口側μ−メタル26B及び軟鉄25Bの個所で磁場より遮蔽
して電子コレクター31で電子を補集するようになってい
る。
【0016】図6Aは本発明に使用するEBISのソレ
ノイドの中心軸にそって測定された磁場の強さの一例を
示すZ軸方向の磁場の断面図である。図6Bは図5と対
称させた本発明に使用するEBISの各部の相対的な電
位の一例を示す特性図である。
【0017】図7(A)は、本発明に使用するEBIS
において、電子ビームがドリフトチューブ内の通る位置
を変えた場合のドリフトチューブ断面の直径に沿った空
間電荷ポテンシャル特性図、図7(B)は電子ビームの
中にトラップされたイオンの動径方向における典型的な
軌道を示す特性図である。イオンは一様な電流密度のビ
ームの中で生成されることを仮定してある。図7
((B)−a)は131 Xe8+の初期の運動エネルギーを
0、ビームエネルギー50keV、ビーム密度6×1011
/cm2 、磁場5T、動径方向の振幅0.01cm の場合を示
し、図7((B)−b)は131 Xe1+の運動エネルギー
50eV、大きな角運動量をもって生成された場合を示
し、動径方向の振幅は0.025 cm である。
【0018】図8(A),(B)は本発明のEBISに
より求めた飛翔時間とカウントとの関係を示す特性図で
ある。
【0019】図8はアルゴンイオンArq+ のチャージ
状態とH+ イオンの収率との関係を示す特性図である。
【0020】図9は本発明EBISにおいて、500 eV
のAr12+ イオンのチャンネルとチャンネル/カウント
比を示す特性図である。
【0021】以下図面について、本発明の実施の一例態
様を詳細に説明する。運動エネルギーよりもポテンシャ
ルエネルギーの方が大きな多価イオンを一般に低速多価
イオンと呼ぶ。電荷qの低速多価イオンが物質表面に近
づくと、表面付近から多数の電子(>q)を捕獲域(半
径R(q))から取り出し、その領域を一時的に強く帯
電させる。従って、電子を奪われた標的表面上の原子は
互いのクーロン力で反発しあい、真空中へイオンとして
放出される。本発明は特に一般に検出・同定が困難であ
るとされている表面上の水素に注目し、その検出効率が
低速多価イオンで非常に大きいことを示し、低速多価イ
オンによる表面水素の全く新しい検出法を提案するもの
である。
【0022】本発明による検出法の原理的模式図を図2
に示す。EBIS型イオン源11から供給される低速多価
イオンビーム12は、EXB質量分析器13を経て、デフレ
クタ14に入り、ここに加えられる交流発振器14Aよりの
高周波によりパルス状のビームとなり、アパーチュア15
よりレンズ16に入り、ミクロンチャンネルプレート(M
CP)17を経て加速器18を通りビーム輸送系の標的19に
衝突する。標的19はCuメッシュより成り、標的19では
電子を奪われ互いのクーロン反発力で放出された2次イ
オン12Aは加速器18によりMCP17の側に誘導されMC
P17で検出される。放出された2次イオンの質量電荷比
はMCP17までの飛行時間(TOF)から決定される。
図8にはこのようにして観測されたH- 強度のArイオ
ンの電荷依存特性の一例を示す。測定されたすべての価
数について全運動エネルギーは50eV一定とした。これ
から、観測されたH- 強度は、およそq4+という非常に
強い依存性をもって増大すること、及びその絶対強度
も、例えばq=16では入射イオン10個につきH+1個とい
った極めて大きいものまであることが判った。このよう
に高効率のH+ 検出は他の方法では全く実現されていな
い。
【0023】図2の左側にEBISイオン源11があり、
そこから供給される低速多価イオン12は、まずEXB質
量分析計13で電荷状態を選別される。次にデフレクタ14
に入り、ここでデフレクタ14にかけられた交流発振器14
Aの振動電場のため、アパーチャ15を取り抜けたイオン
はパルス状になっており、これが、レンズ16及びMCP
17の中心にある穴を通り抜け、加速管18を経て、銅のメ
ッシュに蒸着された標的19に衝突する。多価イオンに衝
撃されれた標的19からは、2次イオン12A及び、ここで
目的とする2次電子12Bが放出される。加速管18は2次
イオン12AをMCP17に向って加速すると同時に、2次
電子12Bを標的19のメッシュにむかって追い返すよう働
く。多価イオンは多数の2次電子12Aを生成するが、そ
の一部の2次電子12Bは標的19のメッシュの隙間を通り
ぬけ、その後方にある2次電子倍増管20に至り検出され
ることになる。電子はイオンよりはるかに軽く、従っ
て、速く動き、2次電子倍増管20からの2次電子検出信
号は、ほぼ低速多価イオンが標的19にたどり着いた時刻
と一致する。ここで用いた検出系では、2次イオン12A
のMCP17における検出時刻と2次電子12Bの2次電子
倍増管20での検出時刻の差から、2次イオン12Aの標的
19からMCP17までの飛翔時間を測定し、それにより2
次イオンのイオン種を決定している。すなわち、2次イ
オンの飛翔時間をt、2次イオンの質量をm、電荷を
q、標的19とMCP17の間の距離L、加速管18にかけら
れた電圧をVとすると、
【数1】m=qVt2 /2L2 の関係から、2次イオンの質量が決定される。通常の測
定では、MCP17による2次イオンの検出効率を上げる
ため、V=2kV程度としている。Lは10cm以下である
かとから、例えば、放出される水素イオンの飛翔時間は
300 ns程度となる。通常、MCP17や2次電子倍増管
20による飛翔時間測定では数ns程度の時間分解能は容
易に得られるので、ここで用いられた本発明の方法は水
素検出に充分な質量分解能を与えることが分かる。
【0024】このようにして測定された、2次イオンの
飛翔時間スぺクトルを、500 eV、Ar12+がC60を
標的とした場合について図10に示す。本来の標的からの
+,C2 + などに比べて3桁程度も強い強度でH+
観測されており、本発明で目的とする低速多価イオンに
よる水素検出法の効率は極めて高いことが確認された。
【0025】
【実施例】低速多価イオンと物質の相互作用は、イオン
が大きなポテンシャルエネルギーを持つという点から注
目されている。低速多価イオンは表面に近付くと表面か
ら多数の電子を供給されて中性化する。このとき放出す
るクーロンポテンシャルエネルギーは、例えば14価のA
rイオンの場合約4keVにも及ぶ。そのエネルギーを
物質へ与える機構は、通常のイオン照射が運動エネルギ
ーを与えるのとは全く異なっており、イオンのもつ大き
なエネルギーを表面にだけ与える。この特徴から、表面
に吸着原子が存在する場合、これを非常に効率よく解離
が予想される。この事実を確かめるために下記の実験を
行った。
【0026】本発明者等はEBIS型多価イオン源から
引き出した低速(0.3 keV)のArイオン(1価〜14
価)を炭素材料C60を表面に被覆した標的に照射した。
そして解離してくる正電荷イオンを飛翔時間(TOF)
で検出し、解離イオンの種類、電荷及び収量を測定し
た。検出された様々な炭素分子クラスターイオンの収量
は入射Arイオン価数が大きくなるにつれ増加したが、
このとき表面の吸着物に起因する水素イオンの収量は、
通常の1価イオン入射の場合に比べて、多価になるに連
れ著しく増加し、収量は価数の3〜5乗に比例すること
を見いだした。
【0027】一般に表面吸着水素の検出はオージェ電子
分光や光電子分光が使えず、これら以外の表面研究手法
を駆使して研究がなされているが、いずれも効率や定量
性がよくない。これらに比べ、本発明の実験結果は、低
速多価イオンが表面吸着水素に対する検出効率が非常に
良く、有効な手法であることの可能性を示唆しており、
定量化を含めてこれからの応用が期待される。
【0028】本発明に使用するエレクトロン・ビーム・
イオン・ソース(EBIS)の原理について述べると次
の通りである。図5のようにドリフトチューブ28と呼ば
れる金属円筒管の中央に電子ビーム27を走らせると、電
子ビーム27とドリフトチューブ28間に図7(A)のよう
な空間電荷ポテンシャルが発生する。この図7(A)は
ドリフトチューブ断面の直径にそったポテンシャルを、
電子ビームの様々な位置に対して示してある。ドリフト
チューブ28内に導入されたガスは電子ビームによりイオ
ン化され、引力を受ける。これのポテンシャルが深けれ
ば、イオンは動径方向に束縛され、図7(B)のような
周期的な運動をする。このため、イオンは長時間にわた
って電子ビーム衝撃を受け続けることになり、
【数2】A + e- → A+ + e-+ − e- → A2+ + 2e- ・ ・ ・ Aa-1+ + e- → A6+ + 2e- のようなステップバイステップの電離により多価イオン
が生成される。イオンを深く束縛するには、中央を通る
電子ビームを高密度にしてやればよい。ソレノイドコイ
ル29によりドリフトチューブ28の軸方向に強力な磁場を
発生させて、電子ビーム27を高密度にする。図5に示す
ようにカソード22をμ−メタル26Aや軟鉄パイプ25Aな
どで磁場から遮蔽しておく。そうすると図6(A)のよ
うに急激に磁場を立ち上がらせることができる。これ
と、カソード22とアノード23間に静電的なレンズ効果を
持たせることによって、カソード22から出た熱電子は加
速されながら急激に動径方向に圧縮される。そしてドリ
フトチューブ28内を通過した後、再びμ−メタル26B、
軟鉄パイプ25Bで磁場を遮蔽してやると圧縮された電子
ビームはクーロン リーパルションにより拡がり、電子
コレクター30に回収される。
【0029】ところで、生成されたイオン図5のZ軸方
向にはなんの束縛も受けておらず、イオン化の領域から
出ていってしまう。これを防ぐために図6(B)のよう
にドリフトチューブ両端の電位を数V〜数10V、中央よ
り高くしておくと、イオンに対してポテンシャル障壁が
形成され、イオンはドリフトチューブ28内をz軸に沿っ
て往復運動をすることになる。
【0030】イオン化の進行過程でおこる、残留ガスか
らの電子捕獲や、後で説明する残留ガスイオンが空間電
荷ポテンシャルを打ち消す効果を少なくするためにイオ
ン源全体は超高真空に維持しておく必要がある。また、
電子ビームを高密度化すればするほど多価イオン化のス
テップは速く進行し、残留ガスの悪影響を軽減できる。
【0031】生成されたイオンの引出し方には2通りあ
るが本発明では、図6Bに示すように、ポテンシャル障
壁を高めに設定して、イオンを一定時間完全に閉じ込め
ておいてから、出口側の電圧を短時間切るという操作を
繰り返して、イオンをパルス的に引き出すパルスモード
という方法を採用した。この方法によると長時間イオン
を閉じ込めておくので、多価イオンの強度がより大きく
なる利点がある。
【0032】本発明に使用するEBIS型イオン源の全
体の概略図は図3に示す。EBIS型の低速多価イオン
源の各部構成はすべて、直径200 mmφ、長さ500 mmの真
空チェーンバーの中に設置されており、300 L/sec
のターボ分子ポンプ33で排気される。
【0033】a)ソレノイドコイル 超高真空を得るために真空チェーンバーを200 ℃近くで
ベイキングする必要がある。従って、コイルには0.7 mm
φの耐熱性に優れたポリイミドアミド皮膜銅線(古河電
工製アミドマール)を用いてある。コイルの寸法は、長
さ252 mm、内径46mmφ、外径100 mmφで、独立した3つ
のコイルで構成されており、巻数合計13,000回である。
このコイルは、長さ284 mm、内径38mmφ、外径120 mmφ
の円筒型の液体窒素容器に納められている。図3の6.5
リットルの貯蓄缶に液体窒素を貯めておき上に取り付け
られたバルブを開閉することでコイルに液体窒素を送り
込むことができる。こりら二つの容器はクライオポンプ
として働き真空度の向上に一役買っている。ソレノイド
外部には磁力線を返すための軟鉄製磁鉄芯30を4つ取り
付けてある(図3)。また外部から熱が伝わらないよう
に、ソレノイド29は、8つの1.5 mmφのスポーク35で釣
ってある。スポーク35は液体窒素で冷却されて収縮する
のであらかじめゆるめに張っておく。コイルの電気抵抗
は、室温で132.6 Ω、77Kで17.1Ωまで下がる。77K
で、50Wの電力でコイルの中心に1.2kGの磁場を発生
することができる。この時液体窒素の蒸発量は一時間当
り1.1リットル程度である。
【0034】b)電子銃、ドリフトチューブ、その他 電子銃24と電子コレクター30はμ−メタル26A,26Bと
軟鉄パイプ25A,25Bによってソレノイドコイル29の磁
場から遮蔽されている。カソード22には直径2mmφでN
iにBaOをコーティングした商業用のものを使用して
いる。ヒーターは 2.1 Wでカソードを間接的に加熱す
るようになっている。アノード23の口径は、2mmφ、ま
た、ドリフトチューブ28の内径は4mmφにしてある。電
子コレクター30は30W近くの熱を発生するので液体窒素
で冷却される。
【0035】ソレノイドコイル29には次のことが要求さ
れる。 1) 均一磁場を生成すること。 2) 磁場の軸がドリフトチューブの中心軸と一致するこ
と。 1は、電子ビームの密度とそれと関わる空間電荷ポテン
シャルが磁場の強さに依存するためである。2は、ドリ
フトチューブの軸からずれると電子ビームの中の空間電
荷ポテンシャルが変わってしまうためである。これらは
イオン化領域の不安定性を招き、イオン源の性能に直接
かかわってくる。
【0036】c)多価イオンのクーリニグ 導入されたガスはイオン化が進むに連れて運動エネルギ
ーが増大する。残留ガスは主に軽い元素からなり、その
エネルギーが低い場合、エネルギーの高い重い元素のイ
オンがそれらと衝突をすると運動エネルギーを失いクー
リニグされ、電子ビームに深くトラップされるイオンが
多くなる。逆に軽いイオンは加熱され、トラップ領域か
らはじき出され壁などで次々に失われていく。重い元素
のガスを導入したとき、わずかな残留ガスがあると上記
の理由によって、残留ガスがない場合よりも多価イオン
のビーム強度が上がることになる。この効果により真空
度のきびしい制限がある程度緩められ、真空度をよくし
なくてもEBISの能力をある程度上げることができ
る。
【0037】以上簡単に多価イオン生成の基本的なメカ
ニズムについて述べたが、実際にはかなり複雑な問題も
存在する。
【0038】d)イオンビームの測定 EBISイオン源から引き出されるイオンの種、価数を
わけるため、質量分析器13を設けた。ビームの進行方向
に対して垂直に一様な電場をかけて、さらにイオンにか
かる電場の力を打ち消すように、両方に対して垂直な方
向に磁場をかける。この時、イオンの速さをv、磁場の
大きさをB、電場の大きさをEとすると、v=E/Bを
満たすものだけが直進できる。このしくみを利用して図
11のように入口と出口にスリット36,37を設けて置くこ
とで、直進するイオンだけを通過させる。この時、
【数3】m/qe=2Va 2 /E2 の関係がある。また、
【数4】m/qe=LB2 /πE Va =LE/2π e:素電荷 l:分析部の長さ Va :イオン源からWF−MSまでの加速電圧 を満たすとき、1次角度収束点が出口スリットにくるの
で微小入射角θで入口スリットに入ってきたイオンはす
べて出口スリットを通り抜けることができる。この時に
極限分解能
【数5】m/Δm〜l/π(S1 +So ) S1 :入口スリットの幅 So :出口スリットの幅 を与える。
【0039】本発明者等の試作した質量計の詳細図を図
12に示す。分析部の長さは90mm、分析電場電極の間隔は
5mm、磁場には永久磁石を使い中心部に最大約1400Gの
磁場を発生する。質量計の中心軸に沿って測定した磁場
の大きさを図13に示す。入口と出口スリットともにに幅
は0.5 mmとした。この時、計算上は極限分解能は約30と
なる。ただし、Bがきまっているのでm/qをある値に
設定するとVa 及びEが自ら決まってしまう。このため
m/qの値が違うイオンに対しては分解能が悪くなる。
【0040】
【発明の効果】本発明は図9に示した500 evのArq
+ に対する実験データからも明らかなように、例えばq
=16の場合では入射イオン10個につき表面から水素イオ
ン1個が解離され検出されている。これは例えば、水素
の検出効率の点では従来の原子核反応を用いた共鳴核反
応法の約10億倍(109 )の感度がある。さらに、非常に
運動エネルギーの低い粒子を用いるため、いわゆるキネ
ティウク スパッタリングや標的内部への放射線損傷が
きわてめ小さく、表面第1層の水素分布を知る方法とし
ては極めて優れていると考えられる。
【0041】上述のように本発明では、電子ビームイオ
ン源(EBIS)あるいはECRイオン源(ECRI
S)といった多価イオンを効率的に生成できるイオン源
からの多価低速イオンを用いることにより、きわめて高
効率かつコンパクトな表面水素の定量分析を実現するこ
とができたものである。さらに本発明の如く低速多価イ
オンを用いることにより標的表面への損傷が著しく減少
できるので、この種の検出方法が大きく改良する点工業
上大なる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は従来の測定法の一例を示す概略図であ
る。
【図2】図2は本発明の低速多価イオンによる超高感度
水素検出法の原理を示す概略図である。
【図3】図3は本発明の実験に使用する低速多価イオン
源(EBIS)の詳細を示す断面図である。
【図4】図4は本発明に使用する低速多価イオン源(E
BIS)の正面より見た断面図である。
【図5】図5は本発明に使用する低速多価イオン源(E
BIS)の原理説明用概略構成図である。
【図6】図6(A)は本発明に使用するEBISのソレ
ノイドの中心軸に沿って測定された磁場の強さの一例を
示すZ軸方向の磁場の断面図、図6(B)は本発明のE
BISの各部の相対的な電位の一例を示す特性図であ
る。
【図7】図7(A)は本発明に使用するEBISにおい
て、電子ビームがドリフトチューブ内の通る位置を変え
た場合のドリフトチューブ断面の直径に沿った空間電荷
ポテンシャル特性図、図7(B)は電子ビーム中にトラ
ップされたイオンの動径方向における典型的な軌道を示
す特性図である。
【図8】図8(A)及び(B)は2次電子の飛翔時間
(TOF)とカウントとの関係を示す図である。
【図9】図9はArq+ イオンの価数と数イオン放射数
(個/Arイオン)収率との関係を示す特性図である。
【図10】図10はチャンネルとカウントチャンネルと
の関係を示すスぺクトル図である。
【図11】図11は本発明に使用する質量分析器(WF
−MS)の概略図である。
【図12】図12は本発明に使用する質量分析器(WF
−MS)の概略図である。
【図13】図13は本発明に使用する質量分析器(WF
−MS)の中心軸に沿った磁場の大きさを示す特性図で
ある。
【符号の説明】
1 負イオン源 2 タンデム加速器 3 分析マグネット 4 実験用真空槽 5 標的 6 核反応モニター用γ線検出器 11 エレクトロン・ビーム・イオン・ソース(EBI
S) 12 イオンビーム 12A 2次イオン 12B 2次電子 13 EXB 質量分析器 14 デフレクタ 14A 交流発振器 15 アパーチャ 16 レンズ 17 ミクロチャンネルプレート(MCP)(1次イオ
ン検出器) 18 加速器 19 標的 20 2次電子増倍管 21 超高真空容器 22 陰極 23 陽極 24 電子銃 25A,25B 軟鉄チューブ 26A,26B μ−メタル 27 電子ビーム 28 ドリフトチューブ 29 ソレノイドコイル 30 磁鉄芯 31 電子コレクター 32 イオンレンズ系 33 液体窒素冷却器 34 真空ポンプ 35 バルブ 36 スポーク

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 運動エネルギーよりもポテンシャルエネ
    ルギーの方が大きい低速多価イオンを発生するEBIS
    型低速多価イオン源と、EXB質量分析器と、ビームを
    矩形波に変換するためのデフレクタと、アパーチャとレ
    ンズ及び2次イオン検出器をもった加速器と、加速器に
    設けたメッシュ状標的と、2次電子増倍管とを前記イオ
    ン源からのイオンを輸送するビームライン上に順次配列
    し、前記標的に低速多価イオンが衝突する際に発せられ
    る2次イオンを2次イオン検出器に向けて加速して検出
    すると同時に2次電子を標的のメッシュに向って追い返
    してこれを2次電子倍増管で検出し2次イオンの2次イ
    オン検出器における検出時刻と、2次電子倍増管におけ
    る2次電子検出時刻との差を検出する手段を具備し、こ
    れにより固体表面水素の定量分析をすることを特徴とす
    る低速多価イオンによる超高感度水素検出法。
  2. 【請求項2】 EBIS型低速多価イオン源は、電子銃
    と、ドリフトチューブ、ドリフトチューブを取巻くソレ
    ノイドコイルと、ソレノイドコイルを包囲する磁鉄心
    と、ドリフトチューブの外側に設けた電子コレクターと
    より成り、ドリフトチューブの入口側及び出口側をμ−
    メタル及び軟鉄パイプで磁気遮蔽し、ドリフトチューブ
    の軸方向に強力な磁場を発生させて電子ビームを高密度
    にするよう構成した請求項1記載の低速多価イオンによ
    る超高感度水素検出法。
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