JPH0913146A - 打ち抜き加工性と成形性に優れた表面処理鋼板 - Google Patents

打ち抜き加工性と成形性に優れた表面処理鋼板

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JPH0913146A
JPH0913146A JP7161110A JP16111095A JPH0913146A JP H0913146 A JPH0913146 A JP H0913146A JP 7161110 A JP7161110 A JP 7161110A JP 16111095 A JP16111095 A JP 16111095A JP H0913146 A JPH0913146 A JP H0913146A
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一郎 塚谷
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 冷延鋼板のC,Si,Mn,S,Al,N,
Ti等の各含有量を規定すると共に「4≦Ti*/C」
[但し、Ti*=Ti−[(48/14)N+(48/
32)S]を規定し、且つその表面にめっき付着量が3
〜40g/m2 の亜鉛系電気めっきが施され、更にその
上に付着量0.1〜2.5g/m2 の樹脂塗膜が形成さ
れた表面処理鋼板である。 【効果】 ベースとなる鋼材の成分組成、殊にS,M
n,Tiなどの含有量を規制すると共に、S,Nおよび
C量とTi量の関係を適正にコントロールするし、更に
その表面に適正付着量の亜鉛系電気めっき層と樹脂塗膜
を形成することによって、強度特性や成形性、打ち抜き
加工性の全てに優れ、且つ耐食性、耐指紋性、アース性
も良好であり、家電製品のシャーシ材等として極めて有
用な表面処理鋼板を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、打ち抜き加工性と成形
性に優れた表面処理鋼板に関し、特に、家電製品のシャ
ーシやケース等を製造する際において、優れた成形性
(深絞り性や張り出し加工性など)を有すると共に、打
ち抜き加工を施したときの鋼板端面に形成されるバリ高
さが非常に少なく、しかも耐食性、耐指紋性、アース性
などの全ての要求特性を満足する表面処理鋼板に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】冷延鋼板を基材とし、これに亜鉛めっき
を施し、更にはその上に無機塗装や樹脂塗装などを施し
た表面処理鋼板は、自動車部品や家庭用電気製品等を始
めとして広く実用化されているが、夫々の用途に応じた
様々の特性が要求される。中でも家電製品のシャーシな
どに用いられる表面処理鋼板では、成形性、打ち抜き加
工性、耐食性、耐指紋性、アース性等の全ての特性が求
められる。
【0003】こうした要求特性の中で打ち抜き加工性
は、表面処理鋼板を打ち抜き加工するときの剪断加工部
に生じるバリの大小によって評価され、該バリの少ない
ことは、実用面で非常に重要な特性となる。しかしてバ
リが大き過ぎるものでは、剪断加工部の寸法精度に狂い
が生じて製品組み立て時の寸法合わせが困難となり、ま
た部品状態で積層して保管したり搬送する場合、該バリ
先端部の接触によって鋼板表面を傷つけたり、あるいは
該バリの摩耗によって生じる金属粉の付着によって電気
回路に悪影響を及ぼすこともしばしば経験されるからで
ある。さらには、該バリの部分で電着塗料が付着不良と
なって耐食性が悪くなるという大きな問題も生じてく
る。
【0004】またこれらの表面処理鋼板は、駆動系の部
品あるいは家庭用電気製品などのシャーシやケース材等
として使用されることも多いので、製品外観の品質を確
保する意味から、耐食性も重要な特性とされる。更に、
表面処理鋼板を打ち抜き加工等に付した後製品への組立
を行なう際には、少なからず手作業工程が加わるので、
指紋の付着による汚れを防止する意味から耐指紋性も必
要となる。こうした耐食性や耐指紋性の改善策として
は、従来は主として樹脂塗装法が採用されてきた。とこ
ろが、シャーシ用鋼板を電気機器の箱体として使用する
場合には、通常箱体でアースが行なわれるため導電性も
重要な要求特性であり、該導電性を確保することの必要
上、耐食性や耐指紋性向上のための樹脂塗装を十分に厚
くすることができない。
【0005】こうした状況の下で、前述の様な要求特性
を一応備えたものして現在実用化されているのは、冷延
鋼板の表面に亜鉛系の電気めっきを施し、その上にアー
ス性を阻害しない程度の極薄い有機樹脂塗膜を形成する
ことによって耐指紋性を高める方法であるが、アース性
と耐指紋性の両者を満足のいく程度まで高めることはで
きない。
【0006】他方、近年ではシャーシプレスメーカーに
おける工程簡素化や部品点数の削減による低コスト化の
ため、シャーシ用鋼板に求められる成形性や打ち抜き加
工性は益々厳しくなる傾向がある。そして従来は、この
種の用途に主としてSPCDやSPCDグレードの箱焼
鈍された低炭素Alキルド冷延鋼板が充当されてきた。
これは、該低炭素Alキルド鋼板の加工性は若干劣るも
のの、10時間以上にわたる箱焼鈍過程で炭素が脆弱な
セメンタイトとして結晶粒界や粒内に粗大に析出し、こ
のセメンタイトが打ち抜き加工時における亀裂発生の起
点となることから、バリの発生量が少なく且つ金型の摩
耗も少なく抑えられ、更には剪断荷重も少なくなるとい
った利点を有しているからである。
【0007】しかしながら、最近における加工性に対す
る需要者の要求は益々厳しくなっており、前述の様な低
炭素Alキルド冷延鋼板ではその様な要望を満足できな
くなっているのが実情である。
【0008】そこで打ち抜き加工性については、焼鈍後
の鋼板表層部に圧延等により加工歪を導入して硬化させ
る方法(特開平1−255625号公報)、窒化処理あ
るいは浸炭処理によって鋼板表面を硬化させる方法(特
開平1−255626号公報、同2−133561号公
報、同3−199343号公報、同3−202442号
公報)等が試みられている。
【0009】ところが前者の方法では、打ち抜き加工性
はある程度改善されるものの、それに伴って鋼板本来の
要求特性である伸びやr値等の機械的特性が著しく劣化
するという問題があり、また後者の方法では、窒化処理
や浸炭処理のために特別の設備と工程を必要とし、設備
的にもまた生産性の点でも得策とは言い難い。
【0010】また、Mn,Sを添加することによってM
nS析出物を多量に生成させる方法(特開平1−230
748号、同6−73457号公報)も提案されている
が、、この方法では、高S化に伴って加工時に熱間加工
割れを起こしたり、内部にブローホールやブリスターと
呼ばれる点状欠陥やスリバーと呼ばれる点状の表面欠陥
が頻繁に発生するという問題が生じてくる。
【0011】また家電製品のコストダウンを目的とし
て、シャーシ部品等では打ち抜き工程や組み立て工程の
省略化が進められており、従来は複数の部品で組立・構
成していたものを、プレス一体成形品化する動向も見ら
れる。例えばシャーシ板面に取り付けるプーリー用軸
は、これまでは別工程の機械切削により作製していたも
のを打ち抜き穴に嵌め込んでからかしめていたが、最近
では、張り出しや深絞りの一体成形法が主流となってき
ている。そのため、シャーシ等の用途に用いられる鋼板
においても、優れた成形性が要望される。冶金学的に考
えると、打ち抜き加工性は亀裂発生の起点となるセメン
タイトやMnSの存在や鋼板自体の硬さに影響を受ける
が、これらは何れも成形性にとっては有害であり、打ち
抜き性と成形性を両立させることは困難なこととされて
いた。
【0012】更に、焼鈍工程の能率向上、表面性状や内
部品質の向上を目的として、従来の箱焼鈍から短時間焼
鈍の可能な連続焼鈍への移行が急速に進みつつある現
在、連続焼鈍工程においても打ち抜き加工性と優れた成
形性を兼ね備えた鋼板の開発が急務となっている。
【0013】他方、Ti,Nb等の炭窒化物形成元素を
添加し、CやNを固定した所謂IF系冷延鋼板は、伸び
やr値が高く且つ降伏応力が低いなど、加工性に優れた
ものであり、自動車車体等の難加工部品に広く用いられ
ており、このIF系冷延鋼板は、特に連続焼鈍法を採用
することによってその特性を十二分に発揮する。ところ
が、加工性は良好であるものの低炭素Alキルド冷延鋼
板に比べて打ち抜き加工性が悪く、打ち抜き加工後の端
面のバリ高さが大きくなるという問題があり、シャーシ
やケース等の用途には不向きである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、その目的は、鋼材
の化学成分をうまく調整することにより、従来のIF系
冷延鋼板で得られる様な優れた成形性と機械的特性を確
保しつつ、しかも打ち抜き加工性が良好でバリの問題を
生じることがなく、更にはアースに必要な導電性を阻害
することなく耐食性や耐指紋性の改善された表面処理鋼
板を提供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記の課題を達成するこ
とのできた本発明に係る表面処理鋼板の構成は、mas
s%で、 C≦0.008% Si≦1.0% 0.25%≦Mn≦1.0% P≦0.10% 0.010%≦S≦0.025% Al≦0.10% N≦0.010% Ti≦0.20% の要件を満たし、且つ 4≦Ti*/C 但し、Ti*=Ti−[(48/14)N+(48/3
2)S]を満足すると共に、残部がFeおよび不可避的
不純物からなる冷延鋼板の少なくとも片面に、めっき付
着量が3〜40g/m2 の亜鉛系電気めっきが施され、
その上に付着量0.1〜2.5g/m2 の樹脂塗膜が形
成されたものであるところに要旨を有するものである。
【0016】本発明に係る上記表面処理鋼板において
は、優れた成形性と打ち抜き加工性を保障するための基
準として、r値が1.6以上で、打ち抜き加工後のバリ
高さが20mm以下であるものが特に好ましく、また樹
脂塗膜としては、シリコン系の無機酸化物を含有するも
のを使用することによって、耐食性や耐指紋性の一段と
優れた表面処理鋼板を得ることができる。そして上記構
成からなる表面処理鋼板は、その特徴を生かし電器製品
のシャーシの素材として極めて有効に使用できる。
【0017】
【作用】本発明に係る表面処理鋼板においては、使用す
る冷延鋼板の各含有元素の種類と量を規定すると共に、
C,N,Sの含有量との関係を加味してTiの含有量を
定めている。これは、本発明が、優れたプレス成形性を
有する極低炭素IF鋼をベース組成とし、その特徴を保
ちつつ欠点として指摘されていた打ち抜き加工性を改善
するためであり、個々の元素の作用やそれらの含有率を
定めた理由は追って詳述するが、中でも重要な技術的特
徴点は下記の通りである。
【0018】即ち、IF系冷延鋼板が本来有している優
れた成形性を保ちつつ、打ち抜き性を改善するには、打
ち抜き加工時における亀裂発生の起点となる析出物、具
体的にはTi422 の存在が不可欠であり、そのサ
イズや分散状態を適正に制御すれば、優れた成形性と打
ち抜き加工性、更には表面性状を同時に満足する冷延鋼
板が得られる、という本発明者らによって確認された新
たな知見にベースを置く。極低炭素IF系鋼板中に存在
する析出物や介在物には、Ti添加系ではTiC,Ti
422 ,TiS,TiN,FeTiP,TiO2
が、またNb添加系ではNb(C,N)等があるが、こ
れらの析出物や介在物のうち、特に成形性と打ち抜き加
工性、表面性状に顕著な好影響を及ぼすのはTi42
2 であることが確認された。そして該Ti422
以外の析出物や介在物は、次の様な傾向を有しているこ
とを併せて確認した。
【0019】TiC,Nb(C,N):析出物としての
サイズが非常に小さいため、成形性を大幅に劣化させる
傾向があり、しかも打ち抜き性改善効果も少ない。Fe
TiP:サイズはTi422 と同程度であり、打ち
抜き性改善効果は有しているが、成形性を大幅に劣化さ
せる。
【0020】TiS,TiN:Ti422 よりもや
や大きい程度で、サイズ的には打ち抜き性向上効果を期
待できる様に思われるが、軟質であるため実質的な改善
効果は少ない。また、S含有量を高めた場合Ti42
2 量は増大するが、ある一定量(CがTi422
の生成に消費されている間)まではTiSの生成が起こ
らず、Cが消費された後にTiSの生成が起こるが、T
iSは表面欠陥の原因になるため好ましくない。また実
用鋼ではN量の制御が困難であり、TiN量を適正に制
御することは非常に難しい。
【0021】TiO2 :サイズがTi422 よりも
1桁大きく、打ち抜き性向上効果が小さいばかりでなく
表面欠陥の原因にもなるので好ましくない。MnS:T
422 と同程度の打ち抜き性改善効果が期待でき
る。
【0022】以上の様な理由から本発明では、極低炭素
Ti添加系IF鋼板におけるTi422 の生成量や
分散状態を制御することにより、成形性と打ち抜き性、
更には表面性状の全てを満足する冷延鋼板を得ることに
成功したものである。尚、極低炭素IF鋼板において成
形性と打ち抜き性を改善する技術としては、特開平6−
73457号に記載されている様にTiとNbを複合添
加する方法があるが、本発明者らが検討したところで
は、Nbを0.003〜0.03%の範囲で添加する
と、Nb(C,N)が生成して鋼中のCを消費してしま
うため、打ち抜き性向上に有効なTi422 が生成
し得なくなる。しかもこの方法では、打ち抜き性の向上
に0.05%以上のSを必須としており、これはTiS
の生成によって表面欠陥の発生率を高めるという問題を
有しており、実用性を欠く。以下、本発明で使用する鋼
材の成分組成を定めた理由を詳細に説明にする。
【0023】Cは、強化元素として鋼材の強度向上に寄
与するが、多過ぎると伸びやr値等が低下して加工性が
悪化するのでの、良好な加工性を確保するため上限を
0.008%と定めた。
【0024】Siは、延性を低下させることなく強度を
高める有効な元素であるが、多過ぎると焼鈍時に生成す
る酸化皮膜が増大し、その後に行なわれることの多い化
成処理に悪影響を及ぼしたり、また電気めっきを行なう
ときはめっき厚が不均一となってめっきムラを生じると
いった問題が生じてくるので、Si量は1.0%以下に
抑えるべきである。殊に、該冷延鋼板を溶融亜鉛めっき
する場合は、酸化皮膜の形成によって不めっき部が生じ
易くなるので、好ましくはSi量を0.3%以下に抑え
ることが望ましい。
【0025】Pは、鋼中に固溶して鋼を強化する作用を
有しているので、要求強度に応じて適量含有させること
が有効であるが、多過ぎると偏析を起こして加工性に悪
影響を及ぼす様になるので、0.10%を上限とする。
【0026】Nは、含有量が多くなると伸びやr値等の
機械的性質に悪影響を及ぼすので、0.010%以下に
抑えなければならない。Alは脱酸剤として有効に作用
するが、多過ぎると非金属系介在物の生成源となって機
械的性質や加工性に悪影響を及ぼす様になるので、0.
10%以下に抑えなければならない。
【0027】Sは、後述するTiと共に本発明鋼板にお
ける極めて重要な元素である。即ち優れた打ち抜き性を
得るには、前述の様な理由から鋼中に適当量のTi4
2 2 を生成分散させることが必要であり、そのために
はSを少なくとも0.010%以上含有させなければな
らない。しかし0.025%を超えて過度に含有させる
と表面欠陥の発生率が増大してくるので、これ以下に抑
えなければならない。
【0028】ちなみに図1は、C:0.0052%,S
i:0.01%,Mn:0.4%,P:0.014%,
Al:0.03%,Ti:0.08%,N:0.006
%を含有する基本組成の冷延鋼板について、S含有量を
0.002%から0.037%に変化させた場合の打ち
抜き加工性とr値を示したものである。尚この図には、
優れた打ち抜き性と機械的性質を有するものとされてい
る箱焼鈍型Alキルド冷延鋼板(C:0.044%,A
l:0.045%)の結果を、比較例として併記した。
また図2には、S含有量と表面欠陥発生率との関係を示
している。
【0029】尚、物性試験法は次の通りとした。即ち、
実験室的に真空溶解・鋳造した40kgの鋼塊を120
0℃に加熱した後、30mmt に粗圧延する。次いで、
このスラブを1200℃に加熱した後、板厚:4mm
t 、仕上げ温度:920℃以上、巻取り温度:680℃
の条件で熱間圧延し、3.2mmt に研削した後、0.
8mmt に冷間圧延し、均熱温度800℃で1分間の連
続焼鈍を施してから1%の調質圧延を行なって供試用冷
延鋼板とした。そしてr値は、10mm×110mmの
試験片を用い、0%と15%の引張歪を付与した時の幅
と板厚を測定して求めた。また打ち抜き加工性は、0.
8mmt の冷延鋼板をクリアランス9%で10mmφに
打ち抜いた端面のバリ高さを測定して評価した。また表
面疵は、得られた各冷延鋼板の表面を目視観察し、一定
長さにおける表面疵発生率によって評価した。
【0030】図1,2からも明らかである様に、S含有
量が0.010%未満では打ち抜き加工時のバリの高さ
が非常に大きくなって本発明の目的を果たすことができ
ず、一方S含有量が0.025%を超えると、表面疵の
発生が顕著となってやはり本発明の目的に添わなくな
る。ところがS含有量が0.010%以上0.025%
以下の範囲のものでは、表面疵やバリ高さが可及的に抑
えられると共に高レベルのr値を確保し得ることが分か
る。
【0031】鋼板の打ち抜き加工部をミクロ的に観察す
ると、ポンチと鋼板の接触以降ポンチの下降に伴ってま
ず鋼板の表裏面に剪断破面が形成され、それに伴い残部
は局部的に強剪断変形を受けることによりボイドが発生
してクラックとなり、表裏面からクラックが合体して加
工が終了する。従って、打ち抜き加工後のバリを小さく
するには、前述のボイドの形成とクラックの進展を促進
することが有効と思われるが、上記Ti422 は比
較的大きな析出物であるため、鋼板が強剪断変形を受け
たときに該析出物の近傍におけるボイドおよびクラック
の形成とその進展が促進され、結果的にバリが小さくな
るものと思われる。
【0032】他方Tiは、CやSと結合してTi42
2 やTiを生成する他、Nとも結合するため、前記範
囲のNを完全に固定し得る量が必要であり、且つ成形性
や耐時効性を付与するには、Cを固定するに足る量のT
iも必要となる。こうした観点から本発明では、Tiの
添加量として前述の如く 4≦Ti*/C 但し、Ti*=Ti−[(48/14)N+(48/3
2)S]と定めた。
【0033】但し、上記の様なTi添加効果は約0.2
0%で飽和し、それ以上に添加することは経済的に無駄
であるばかりでなく、再結晶温度が上昇するというマイ
ナス効果も現れてくるので、0.20%を上限として定
めた。
【0034】またMnも、上記の様にMnSよりなる粗
大な析出物を生成して打ち抜き加工性の向上に寄与する
元素であり、その効果を有効に発揮させるには0.25
%以上含有させなければならない。しかし多過ぎると、
鋼板が硬質化し過ぎて加工性に悪影響が現れてくるの
で、1.0%を上限とする。
【0035】本発明に係る表面処理鋼板は、前記成分組
成の要件を満足する鋼材を溶製し、常法に従って鋳造し
た後、熱間圧延、酸洗、冷間圧延性、焼鈍調質圧延等を
順次行なうことによって得られる冷延鋼板を基板とし、
その少なくとも片面に、適正付着量の電気亜鉛めっきを
施すと共に、更にその上に適正付着量の樹脂塗装を施し
たものであり、それにより耐食性を高めると共に、アー
ス性を損なうことなく優れた耐指紋性と外観を改善した
ものである。
【0036】即ち通常のシャーシ用鋼板は無塗装のまま
で使用されることが多く、冷延鋼板をそのまま使用する
と、大気雰囲気でも短時間で赤錆が発生し、発錆による
侵食によって強度低下を招くばかりでなく、使用時に脱
落する錆粉末によって駆動部や電気回路系統に悪影響を
及ぼす。そこで、こうした発錆を防止するには表面処理
が必須であり、本発明では、成形性や打ち抜き加工性等
に悪影響を及ぼすことなく優れた防錆効果を発揮するも
のとして亜鉛系電気めっきを採用する。
【0037】亜鉛系めっきには、溶融亜鉛浴中に鋼板を
浸漬走行させることによって行なわれる溶融めっき法、
亜鉛イオンを含む電解液中で通電することにより金属亜
鉛を鋼板表面に析出させる電気めっき法、亜鉛等を蒸気
状態で鋼板表面に付着させる蒸着めっき法があるが、比
較的少ない付着量でピンホール等の欠陥がなく均質で美
麗なめっき層を形成し得るものとして、本発明では電気
めっき法を採用することとした。該亜鉛系電気めっきに
よる防錆効果を有効に発揮させるには、該電気めっき層
の付着量を3g/m2 以上にすべきであり、めっき付着
量が不足する場合は、満足な耐食性が保障できなくなる
か或はその上に形成される樹脂塗膜を過度に厚くしなけ
ればならなくなり、その結果としてアース性が損なわれ
るといった難点が生じてくる。耐食性の観点からする
と、該亜鉛系電気めっき付着量の上限は特に存在しない
が、40g/m2 を超えて過度に付着量を多くしてもそ
れ以上の耐食性改善効果が得られる訳ではなく、めっき
処理時間をいたずらに延長させるだけであり、また場合
によってはめっき密着性が低下して打ち抜き加工時等に
めっき剥離を起こす恐れもでてくるので、40g/m2
を一応の上限として定めた。
【0038】尚本発明で採用される亜鉛系電気めっきと
は、純亜鉛めっきの他、亜鉛と共にNi,Co,Fe等
の金属を含む亜鉛基めっき、あるいはこれら亜鉛基めっ
き乃至純亜鉛めっきの下地として同種もしくは異種のプ
レめっきが施されためっきを言い、亜鉛含有量が50重
量%以上を占める各種の亜鉛合金めっきが包含される。
【0039】該亜鉛系電気めっき層の形成により鋼板そ
のものの防錆の目的は達成されるが、これをシャーシ等
の素材として実用化するには、該亜鉛系めっき層自体の
発錆を防止すると共に、耐指紋性も改善することが必要
であり、その為の手段として本発明では、該亜鉛系電気
めっき層の上に更に樹脂塗装を施すこととしている。該
樹脂塗膜の好ましい付着量は0.1〜2.5g/m2
範囲であり、該付着量が不足する場合は満足のいく耐食
性や耐指紋性が得られず、逆に多過ぎると、表層部の導
電性が低下してアース性が極端に悪くなるという問題が
生じてくる。
【0040】該樹脂塗膜を構成する樹脂成分の種類は特
に制限されないが、最も一般的なのはエポキシ系樹脂、
エチレン性不飽和カルボン酸を重合性成分として含むエ
チレン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル
系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド
系樹脂等であり、これらは単独で使用し得る他、必要に
応じて2種以上を混合して使用することも可能である。
又これら樹脂中の官能基を常法により変性したり或は架
橋剤の併用によって強化したもの、更には、例えば耐指
紋性等の一層の改善を期してシリコン系の有機もしくは
無機化合物等を併用したもの、プレス加工時の表面型か
じり性を改善する為少量のワックス成分を併用したり樹
脂中の官能基にワックス成分を導入して改質したもの、
等も好ましい樹脂成分として推奨される。
【0041】該樹脂塗膜は、プレス加工等の後も表面保
護膜として良好な耐食性と耐指紋性を発揮することが望
ましく、こうした意味から特に好ましいベース樹脂は、
エポキシ系樹脂、エチレン共重合体樹脂、ポリエステル
系樹脂、ウレタン系樹脂の1種もしくは2種以上の混合
樹脂である。
【0042】樹脂塗膜には、これらベース樹脂に加えて
例えばシリカ粒子等のシリコン系無機酸化物を5重量%
程度以上含有させることによって、塗膜の耐食性を一段
と高めることができるので好ましい。しかし、シリカ粒
子等の含有量を多くし過ぎると、それらが増摩材として
作用する様になり、塗膜の摩擦係数を高めて潤滑性を低
下させ、ひいては加工後の耐食性を劣化させる傾向が現
れてくるので、30重量%程度以下、より好ましくは1
0重量%程度以下に抑えることが望まれる。
【0043】こうしたシリカ粒子併用による効果は、そ
の粒子径が1〜20μmのものを使用することによって
最も有効に発揮される。即ち、シリカ粒子が小さくなる
ほど塗膜が緻密になって密着性も向上し、その結果とし
て塗膜の耐食性および塗装性が向上するが、1μm未満
の極端に微細な粒子を用いたとしてもそれ以上の効果が
得られる訳ではなく、下限は1μm程度で十分であり、
逆に20μmを超えて粗大になると、塗膜の表面を粗く
して緻密な被膜が形成されなくなり耐食性も悪くなるか
らである。こうした観点からより好ましいシリカ粒子の
粒子径は4〜6μmの範囲で、この様なシリカ粒子は、
コロイダルシリカとして公知であり、たとえば「スノー
テクス−XSや同SS」(いずれも日産化学工業社製)
等の市販品として入手できる。
【0044】本発明に係る表面処理鋼板の製法には一切
制限がなく、前述の様な方法によって製造される冷延鋼
板の片面もしくは両面に、常法に従って亜鉛系電気めっ
き処理を施した後、その上にロールコート法、ディップ
コート法、スプレーコート法など任意の方法で樹脂塗装
を施せばよい。このとき、亜鉛系電気めっき層と樹脂塗
膜との密着性を高めるため、亜鉛系電気めっき鋼板の表
面にクロメート処理やりん酸塩処理等の化成処理を施し
てから樹脂塗装を施すことも有効であり、それらも勿論
本発明の技術的範囲に包含される。
【0045】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の構成および作
用効果を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実
施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣
旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施すること
も可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含
まれる。
【0046】実施例 実験室的に真空溶解した表1に示す成分組成の40kg
鋼塊を1200℃に加熱した後、30mmt に粗圧延
し、次いでこのスラブを1200℃に加熱後、板厚4m
t 、仕上げ温度920℃以上、巻取り温度680℃の
条件で熱間圧延した。その後3.2mmt に研削してか
ら0.8mmt に冷間延圧し、800℃で1分間均熱の
ための連続焼鈍を施した後、1%の調質圧延を行なっ
た。
【0047】得られた各冷延鋼板の表面に、常法に従っ
て電気めっき法により亜鉛付着量が20g/m2 となる
様に電気亜鉛めっきを施し、その上にCr付着量が金属
Cr換算で10mg/m2 となる様にクロメート処理を
施した後、エチレン系、エステル系またはウレタン系樹
脂をベース樹脂とし、これに粒子径4〜6μmのコロイ
ダルシリカを固形分換算で10重量%配合した樹脂塗料
を、樹脂付着量が1.0g/m2 となる様に塗布して表
面処理鋼板を得た。
【0048】得られた各表面処理鋼板について、下記の
方法で引張特性、r値、打ち抜き加工性、耐食性、耐指
紋性、アース性を評価し、表2に示す結果を得た。尚表
2には記載しなかったが、いずれの表面処理鋼板につい
ても、亜鉛系電気めっき層の付着量と樹脂塗膜の付着量
は適正であるため、耐食性、耐指紋性、アース性は良好
であった。
【0049】また、被処理鋼板として表1に示した冷延
鋼板の一部を使用し、その表面に、常法に従って電気め
っき法により亜鉛付着量が1〜50g/m2 となる様に
電気亜鉛めっきを施し、その上にCr付着量が金属Cr
換算で10mg/m2 となる様にクロメート処理を施し
た後、樹脂付着量が0.05〜3.0g/m2 となる様
に樹脂塗装を行なって表面処理鋼板を得た。得られた各
表面処理鋼板について、耐食性、耐指紋性、アース性を
評価し、表3に示す結果を得た。
【0050】引張特性:JIS5号引張試験片を使用
し、降伏点(YP)、強度(TS)、伸び(El)、加
工硬化指数(n値)を夫々評価し、更に100℃×60
minで処理した後の降伏点の上昇量から耐時効性
(A.I)を評価した。r値 :10mm×110mmの試験片を使用し、0%と
15%の引張歪を付与したときの幅と板厚を測定して求
めた。
【0051】打ち抜き加工性:クリアランスを9%とし
て直径10mmの円形に打ち抜き加工し、打ち抜き端面
に生じたバリ高さをマイクロメーターで測定して評価し
た。 ○…バリ高さ20μm未満、×…バリ高さ20μm以上耐食性 :JIS Z 2371に記載された方法に従っ
て塩水噴霧試験を行ない、1%白錆発生時間で評価し
た。 ○…240時間以上、×…240時間未満
【0052】耐指紋性:40℃の50%白色ワセリン水
溶液中に試験片を浸漬してから取り出し、ワセリン付着
部と未付着部の色調変化を色差計により測定して評価し
た。尚、ワセリン付着部と未付着部の色差(ΔE)が
「3以下」であるものは、耐指紋性良好とされる。 ○…ΔEが3以下、×…ΔEが3超アース性 :試験片表面の導電性を端子間隔100mmと
してテスターにより表面抵抗を測定して評価した。 ○…表面抵抗200Ω未満、×…表面抵抗200Ω以上総合評価 :○…良好、×…不良
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】表1,2より次の様に考察することができ
る。鋼種A,B,Iは軟鋼系、鋼種Eは高強度鋼系で何
れも本発明の規定要件を全て満足する実施例であり、強
度(TS)、伸び(El)、r値、A.I(耐時効
性)、バリ高さ、表面欠陥、表面性状の全てにおいて平
均して良好な結果が得られている。
【0057】これらに対し鋼種Cは、鋼種Aに比較して
C量が多く本発明の規定範囲を超える比較例であって伸
びとr値が低く、鋼種Dは、S量が多過ぎるため表面に
ブリスターやスリバー等の表面欠陥見られる。また鋼種
Fは、鋼種Eに対してSi量が多く規定範囲を超えてい
るため、電気めっきを行なったときに酸化皮膜の生成に
よってめっきムラを生じる。
【0058】鋼種FはSi量が規定範囲を超えるため表
面性状が悪く、またその後に行なわれる化成処理性を阻
害したり電気めっきの均一性を阻害する。鋼種Gは、鋼
種Aに対してS量が不足する比較例であり、打ち抜き加
工によって発生するバリが高く、本発明の目的に合致せ
ず、また鋼種HはTi*/Cの比率が本発明の要件を満
たしていないため、満足な伸び、r値および耐時効性が
得られていない。鋼種Jは、鋼種Iに対してN量が規定
範囲を超えているため、伸びやr値が悪くなっており、
また鋼種Kは、鋼種Aに対してMn量が少なく、本発明
の規定量に満たないため打ち抜き加工性が悪く、バリ高
さ低減の目的が果たせていない。
【0059】鋼種Lは、鋼種Eに対してMn量が多過ぎ
る比較例であり、伸びとr値が悪く、また鋼種Mは、鋼
種Eに対してP量が多過ぎる比較例であり、やはり伸び
とr値が低い。鋼種Nは、鋼種Aに対してAl量が多過
ぎる比較例であり、伸びやr値が低く且つ表面欠陥が見
られ、鋼種Oは、鋼種Bに対してTi量が多過ぎるため
r値が悪くなっている。
【0060】また表3より次の様に考察できる。No.
1〜5は、鋼材の成分組成、電気亜鉛めっき層と樹脂塗
膜の付着量のいずれも本発明の規定要件を満たしている
実施例であり、耐食性、耐指紋性、アース性のいずれに
おいても非常に優れた結果が得られている。
【0061】これらに対し、No.6は、亜鉛系電気め
っき層と樹脂塗膜の付着量がいずれも不足するため耐食
性と耐指紋性が悪く、No.7は、樹脂付着量が多過ぎ
るためアース性が悪く、No.8は、樹脂塗装が施され
ていないため耐食性と耐指紋性が悪く、No.9は、樹
脂付着量が不足するため矢張り耐食性と耐指紋性を満足
することができない。
【0062】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、ベ
ースとなる鋼材の成分組成、殊にS,Mn,Tiなどの
含有量を規制すると共に、S,NおよびC量とTi量の
関係を適正にコントロールし、更にその表面に適正付着
量の亜鉛系電気めっき層と樹脂塗膜を形成することによ
って、強度特性や成形性、打ち抜き加工性の全てに優
れ、且つ耐食性、耐指紋性、アース性も良好であり、家
電製品のシャーシ材等として極めて有用な表面処理鋼板
を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼材中ののS含有量が打ち抜き加工時に形成さ
れるバリ高さとr値に与える影響を示すグラフである。
【図2】鋼材中のS含有量と冷延鋼板の表面疵発生指数
の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚谷 一郎 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 (72)発明者 内海 幸博 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で C≦0.008% Si≦1.0% 0.25%≦Mn≦1.0% P≦0.10% 0.010%≦S≦0.025% Al≦0.10% N≦0.010% Ti≦0.20% の要件を満たし、且つ 4≦Ti*/C 但し、Ti*=Ti−[(48/14)N+(48/3
    2)S]を満足すると共に、残部がFeおよび不可避的
    不純物からなる冷延鋼板の少なくとも片面に、めっき付
    着量が3〜40g/m2 の亜鉛系電気めっきが施され、
    その上に付着量0.1〜2.5g/m2 の樹脂塗膜が形
    成されたものであることを特徴とする打ち抜き加工性と
    成形性に優れた表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 r値が1.6以上であり、打ち抜き加工
    後のバリ高さが20mm以下である請求項1に記載の表
    面処理鋼板。
  3. 【請求項3】 樹脂塗膜がシリコン系の無機酸化物を含
    有するものである請求項1または2に記載の表面処理鋼
    板。
  4. 【請求項4】 電器製品のシャーシとして使用されるも
    のである請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理鋼
    板。
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