JPH09177554A - 過給機付内燃機関 - Google Patents

過給機付内燃機関

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JPH09177554A
JPH09177554A JP7339148A JP33914895A JPH09177554A JP H09177554 A JPH09177554 A JP H09177554A JP 7339148 A JP7339148 A JP 7339148A JP 33914895 A JP33914895 A JP 33914895A JP H09177554 A JPH09177554 A JP H09177554A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 過給機付内燃機関におけるブーツストラップ
発生を防止する。 【解決手段】 内燃機関1の過給機10入口にウエィス
トゲート弁26を設け、制御ユニット30によりウエィ
ストゲート弁開度を機関回転数に応じて制御する。制御
ユニットは、機関回転数の増大とともに機関出力が急激
に増大する領域(ブーツストラップ運転領域)を機関回
転数の範囲として予め記憶しておき、ブーツストラップ
運転領域では、回転数に応じてウエィストゲート弁開度
を設定し、機関回転数の増大とともに過給圧が緩やかに
上昇するようにする。これにより、ブーツストラップ運
転領域での急激な機関出力増大が防止されるため、ブー
ツストラップが発生しない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は過給機付内燃機関に
関し、詳細には過給機付内燃機関の出力制御に関する。
【0002】
【従来の技術】排気ターボチャージャ等の過給機を装備
した往復動内燃機関を航空機に搭載して推進プロペラを
駆動するような場合にはいわゆるブーツストラップ現象
が生じる運転領域があることが知られている。ここで、
ブーツストラップ現象とは、運転中に機関のスロットル
弁開度やガバナー設定回転数を一定に保持していた場合
でも機関回転数が不安定になって機関回転数の急上昇や
急低下を繰り返すようなような現象をいう。このブーツ
ストラップ現象は以下のような原因で発生すると考えら
れる。
【0003】過給機付内燃機関では、機関や過給機の保
護のために機関過給圧に上限値が設定されている。通
常、機関過給圧の制御には過給機入口排気管に配置した
機械式のウエィストゲート弁(以下WGVと略称する)
または過給機出口空気通路に設けられた機械式の吸気リ
リーフ弁等の過給圧制御弁が用いられる。これらの過給
圧制御弁は、過給圧が設定値に到達するまでは全閉状態
を保持し、過給圧が設定値以上になると開弁して過給圧
の上昇を抑制する。例えば、WGVが開弁すると、排気
の一部が過給機をバイパスして流れるため過給機流入排
気圧力(排気流量)の増大が防止され、過給機回転数の
上昇が抑制される。このため、過給圧は設定圧力以上に
は上昇しない。また、吸気リリーフ弁は同様に、過給圧
が設定値以上になると開弁して過給機出口空気の一部を
大気に放出することにより、過給圧の上昇を抑制する。
【0004】図3(A) は、このような過給圧制御弁を有
する機関の、機関回転数NEに対する過給圧PDの変化
特性を示している。図3(A) に示すように、機関回転数
NEが低い間(図3(A) で0<NE<NE1の領域)で
は、機関排気圧力(流量)が低く過給機の回転数が上昇
しないため、過給圧PDは略一定の低い値PD1に維持
される。過給機の回転数は機関回転数とともに上昇し、
機関回転数がNE1(図3(A) )に到達すると過給圧P
Dが上昇を開始し、図3(A) でNE1≦NE<NE2の
領域では機関回転数NEの上昇とともに過給圧PDは急
激に上昇する。また、過給圧PDが過給圧の設定値PD
2に到達すると(NE=NE2)、過給圧制御弁が開弁
するため過給圧PDは機関回転数にかかわらず一定値P
D2に保持される(NE≧NE2の領域)。図3(B) 、
図3(C) は、それぞれ回転数NEに対する過給圧制御弁
(この場合はWGV)の開度特性と機関出力特性とを示
している。図3(B) に示すように、WGVは機関回転数
NEがNE2より低い領域では全閉に維持され、回転数
NEがNE2より高い領域では、過給圧PDを設定値P
D2に維持するために回転数NEの上昇につれてWGV
開度が増大する。
【0005】このため、機関出力HPは、回転数NEが
NE<NE1の領域では比較的緩やかに上昇するが、N
E1≦NE<NE2の領域では過給圧PDの急激な上昇
に対応して機関出力も急激に増大する。また、NE≧N
E2の領域では過給圧PDは一定値PD2に維持される
ため、機関出力の増大は再び緩やかになる。なお、通常
航空機用の機関の定格出力は図3にNERで示した付近
の回転数に設定されている。
【0006】ところで、航空機用エンジンにおいては、
機関回転数NEはプロペラの消費動力と機関出力とによ
り決定される。すなわち、プロペラはピッチが一定の場
合には回転数の3乗に比例して増加する。このため、実
際の運転においては機関回転数が上昇すると機関出力と
ともにプロペラの消費動力も増大し、機関はプロペラの
消費動力と機関出力とがバランスする回転数で運転され
ることになる。このため、機関回転数の変化に対して機
関出力の変化が大きい領域(例えば、図3でNE1≦N
E<NE2の領域)では、外乱等により僅かに機関回転
数が変化したような場合でも機関出力が大きく変化して
しまい、プロペラ消費動力と機関出力とのバランスが崩
れてしまう。
【0007】例えば、このような運転領域で機関回転数
が僅かに上昇したような場合、プロペラの消費動力は僅
かに回転数が上昇した程度ではそれほど変化しないにも
かかわらず機関出力は大幅に上昇する。このため、機関
回転数の上昇はきっかけとなった僅かな回転数の上昇幅
にとどまらずに、回転数上昇によるプロペラ消費動力の
増大と機関出力特性(図3(C) )で定まる出力とがバラ
ンスする回転数まで一気に上昇することになる。また、
外乱等により機関回転数が僅かに低下した場合には、逆
に機関回転数は急激に低下することになる。
【0008】このように、スロットル弁開度を一定に維
持した状態でも機関回転数が安定せずに上昇、低下を繰
り返す状態をブーツストラップと呼ぶ。ブーツストラッ
プは、図3でNE1≦NE<NE2の領域のように機関
回転数の変化に対する機関出力の変化が大きい領域、す
なわち、一般に過給圧制御弁が全閉になっている運転領
域で生じる。ブーツストラップが発生すると、機関回転
数を正確に制御することができなくなり、航空機の操縦
性に問題を生じるおそれがある。このため、従来ブーツ
ストラップ運転領域での定常的な運転を禁止することが
一般的であった。
【0009】上記は、固定ピッチプロペラの場合につい
て説明したが、一般に航空機用機関には、可変ピッチプ
ロペラを用いた回転数ガバナーが使用される。回転数ガ
バナーは、可変ピッチプロペラのピッチを変更すること
によりプロペラの消費動力を調節し、設定した機関回転
数を保持するための機構である。すなわち、プロペラピ
ッチが変化すると、同一の回転数であってもプロペラの
消費動力は変化する。このため、ガバナーは飛行中の機
関回転数と予め設定した回転数との間に差が生じた場合
には、実際の回転数と設定回転数との偏差に応じてプロ
ペラピッチを増減し、機関回転数を設定値に維持する制
御を行う。このように、回転数ガバナーを備えた機関で
は固定ピッチプロペラ機関の場合に較べて安定した機関
回転数を得ることができる。
【0010】ところが、このような回転数ガバナーを備
えた機関であっても、上記のように機関回転数に対する
出力の変化率が大きいブーツストラップ運転領域ではブ
ーツストラップが発生してしまう場合がある。すなわ
ち、このような機関では機関回転数が上昇すると機関回
転数を低下させるためにプロペラピッチが増大される
が、回転数の上昇を検知してからプロペラピッチが増大
するまでには実際にはピッチ可変機構の作動遅れ等によ
る遅れ時間が存在する。このため、機関回転数に対する
出力の変化が大きいブーツストラップ領域では、この遅
れ時間の間に機関回転数が急激に上昇してしまい、固定
ピッチプロペラの場合と同様にブーツストラップが発生
する場合が生じるのである。
【0011】上述したように、ブーツストラップは過給
機回転数上昇による機関出力の増大特性と、機関負荷
(プロペラ消費動力)の増大特性とが適合しないために
生じる。航空機用機関に関するものではないが、従来よ
りターボチャージャの過給圧を制御することにより機関
出力の増大特性と機関負荷の増大特性とを適合させる試
みがなされている。例えば、この種の制御装置として
は、実開昭61−113936号公報に記載されたもの
がある。同公報の装置は、車両用の過給機付内燃機関の
過給圧制御装置に関するものである。車両用過給機付内
燃機関では、車両の発進や急加速時には、機関回転数の
上昇に伴ってターボチャージャの過給圧が急上昇するた
め機関出力も急激に増大する。このため、機関出力の増
大特性と機関負荷(駆動輪の駆動馬力)の増大特性との
不適合が生じ、発進、加速時に駆動輪がスリップする現
象が生じる。上記公報の装置は、この駆動輪スリップを
防止することを目的としたものであり、機関回転数の上
昇率が予め定めた値を越えた場合にウエィストゲート弁
を開弁して過給圧を通常の設定圧力より低くなるように
補正している。同公報の装置は、上記補正により機関の
急激な回転数上昇を抑制して駆動輪のスリップが生じる
ことを防止したものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記実開昭61−11
3936号公報の装置は、車両発進、加速時の駆動輪ス
リップ防止を図る上では効果があるものの、航空機用過
給機付内燃機関に同公報の装置を適用したのではブーツ
ストラップの発生を防止することはできない。すなわ
ち、上記公報の装置では機関回転数の急激な上昇が生じ
たことを検出してからウエィストゲート弁を開弁するよ
うにしている。しかし、航空機用機関では機関回転数の
急激な上昇が生じた場合には、既にブーツストラップが
発生してしまっている。従って、上記公報の装置ではブ
ーツストラップ発生後の過給圧(機関出力)上昇幅を低
減することはできるものの、ブーツストラップ発生その
ものを防止することはできない。
【0013】本発明は、上記問題に鑑み航空機用過給機
付内燃機関においてブーツストラップの発生を効果的に
防止可能とする手段を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、内燃機関の吸気を過給する過給機と、前記機関
の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記運転状
態が機関のブーツストラップが発生する可能性があるブ
ーツストラップ運転領域にあるか否かを判定する運転領
域判定手段と、前記運転領域判定手段により機関がブー
ツストラップ運転領域で運転されていると判定されたと
きに、機関出力増大を抑制するブーツストラップ抑制手
段と、を備えた過給機付内燃機関が提供される。
【0015】すなわち、運転領域判定手段は機関の運転
状態に基づいてブーツストラップが発生するおそれのあ
るブーツストラップ運転領域で機関が運転されているか
否かを判断し、ブーツストラップ抑制手段はブーツスト
ラップ領域で機関が運転されているときには機関出力増
大を抑制する操作を行う。このため、機関出力の急激な
変化ガ抑制されブーツストラップの発生が生じない。こ
こで、運転領域判定手段は、例えば機関回転数、出力、
過給圧などの機関運転状態に基づいてブーツストラップ
運転領域を判定するようにしてもよい。また、ブーツス
トラップ抑制手段は、吸気リリーフ弁、ウエィストゲー
ト弁等を開弁することにより過給圧上昇を制御して機関
出力増大を抑制するようにしてもよい。
【0016】請求項2に記載の発明によれば、前記運転
状態検出手段は前記機関の回転数を検出する回転数検出
手段を備え、前記運転領域判定手段は、少なくとも機関
回転数に基づいて機関がブーツストラップ運転領域で運
転されているか否かを判定する請求項1に記載の過給機
付内燃機関が提供される。すなわち、請求項2の発明で
は、運転領域判定手段は、少なくとも機関回転数に基づ
いてブーツストラップ運転領域を判定する。
【0017】請求項3に記載の発明によれば、前記過給
機は、過給圧が予め定めた設定圧力以上になったときに
開弁し、過給機出口空気圧力もしくは過給機入口排気圧
力の上昇を抑制することにより過給圧を前記設定圧力に
維持する過給圧制御弁を備え、前記ブーツストラップ抑
制手段は、機関がブーツストラップ領域で運転されてい
るときに、過給圧が前記設定圧力より低い場合であって
も前記過給圧制御弁を開弁し、機関出力増大を抑制する
請求項2に記載の過給機付内燃機関が提供される。
【0018】すなわち、請求項3の発明では、ブーツス
トラップ抑制手段は過給圧制御弁を開弁することにより
ブーツストラップ運転領域における急激な機関出力増大
を防止する。請求項4に記載の発明によれば、前記ブー
ツストラップ抑制手段は前記過給圧制御弁の開度を機関
回転数に応じて補正する第1の補正手段を備えた請求項
3に記載の過給機付内燃機関が提供される。
【0019】すなわち、過給圧(機関出力)の回転数変
化に対する上昇率は機関回転数により変化する。請求項
4の発明では、第1の補正手段は機関回転数に応じて過
給圧制御弁開度を補正するため、過給圧の急激な変化が
機関の回転数変化にかかわらず抑制される。請求項5に
記載の発明によれば、前記運転状態検出手段は、更に機
関のスロットル弁開度を検出するスロットル弁開度検出
手段を備え、前記ブーツストラップ抑制手段は、スロッ
トル弁開度に基づいて前記過給圧制御弁開度を補正する
第2の補正手段を備えた請求項4に記載の過給機付内燃
機関が提供される。
【0020】すなわち、過給圧(機関出力)の回転数変
化に対する上昇率は機関スロットル弁開度によっても変
化する。請求項5の発明では、更にスロットル弁開度に
応じて過給圧制御弁開度を補正する第2の補正手段が設
けられているため、請求項4の発明の作用に加えて、機
関スロットル弁開度にかかわらず過給圧の急激な変化が
抑制される。
【0021】請求項6に記載の発明によれば、前記運転
状態検出手段は、更に大気温度と大気圧力との少なくと
も一方を含む大気状態を検出する大気状態検出手段を備
え、前記ブーツストラップ抑制手段は、更に前記大気状
態に応じて前記過給圧制御弁開度を補正する第3の補正
手段を備えた、請求項4または5に記載の過給機付内燃
機関が提供される。
【0022】すなわち、過給圧(機関出力)の回転数変
化に対する上昇率は過給機入口空気条件(大気状態)に
応じて変化する。請求項6の発明では、更に大気温度、
大気圧力等の大気状態(飛行高度)に応じて過給圧制御
弁を補正する第2の補正手段が設けられているため、請
求項4または5の発明の作用に加えて、飛行高度の変化
等による大気状態の変化にかかわらず過給圧の急激な変
化が防止される。
【0023】請求項7に記載の発明によれば、前記運転
状態検出手段は、機関回転数を検出する回転数検出手段
と、機関出力を表す出力パラメータを検出する出力パラ
メータ検出手段とを備え、前記ブーツストラップ抑制手
段は、前記出力パラメータの機関回転数に対する変化率
を算出する変化率算出手段と、機関がブーツストラップ
運転領域で運転されていると判定されたときに前記算出
された変化率が予め定めた基準変化率以下になるように
機関出力増大を抑制する手段と、を備えた請求項1に記
載の過給機付内燃機関が提供される。
【0024】すなわち、請求項7に記載の発明では、ブ
ーツストラップ運転領域では、機関回転数に対する機関
出力の変化率は所定の基準変化率以下になるように制御
されるため、ブーツストラップ領域においても急激な機
関出力の増大が生じない。請求項8に記載の発明によれ
ば、前記運転領域判定手段は、更に機関回転数または前
記出力パラメータの値の少なくとも一方に基づいて機関
がブーツストラップ運転領域にあると判定する判定手段
と、実際の運転における前記出力パラメータの機関回転
数に対する変化特性の所定の基準状態における変化特性
からのずれを検出する特性変化検出手段と、該変化特性
のずれ量を記憶する記憶手段と、記憶した変化特性のず
れに基づいて前記設定領域を変更する学習補正手段とを
備え、前記判定手段は該補正後の設定領域に基づいて機
関がブーツストラップ運転領域にあるか否かを判断する
請求項7に記載の過給機付内燃機関が提供される。
【0025】すなわち、請求項8に記載の発明では、運
転領域判定手段は実際の機関出力特性の基準状態からの
ずれを記憶し、この出力特性のずれに基づいてブーツス
トラップ運転領域の設定を変更する。このため、請求項
8にに記載の発明によれば、請求項7の発明の作用に加
えて、経年変化等により機関出力特性が変化したような
場合にもブーツストラップ運転領域の判定が正確に行わ
れる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を用いて本発明の
実施形態について説明する。図1は本発明の過給機付内
燃機関の一実施形態の概略構成を示す図である。図1に
おいて、1は内燃機関本体、2は機関1により駆動され
るプロペラを示す。本実施形態では機関1として多気筒
(図1ではV型8気筒)の4サイクルレシプロエンジン
が使用されている。また、図1において、5は機関1の
各気筒の吸気ポートを共通の吸気ダクト6にに接続する
吸気マニホルドである。吸気マニホルド5の各気筒の吸
気ポート接続部近傍には、それぞれ各気筒の吸気ポート
に加圧燃料を噴射する燃料噴射弁7が配置されている。
【0027】図1において、11で示したのは、インタ
クーラ8下流の吸気ダクト6内に配置されたスロットル
弁である。スロットル弁11は、操縦席に設けられたパ
ワーレバー12に接続され、パワーレバー12の操作量
に応じた開度をとる。また、8は吸気ダクト6上に設け
られたインタクーラ、10は排気ターボチャージャ、9
はターボチャージャ10のコンプレッサ16の吐出口1
5とインタクーラ8とを接続する吸気ダクトを示してい
る。
【0028】また、図1において21、22で示したの
は、機関1の両側のバンクの各気筒の排気ポートを共通
の排気管23に接続する排気マニホルドである。共通排
気管23はターボチャージャ10の排気タービン20の
排気入口17に接続されている。ターボチャージャ10
は遠心型コンプレッサ16と、コンプレッサ16を駆動
する遠心型の排気タービン20とからなる。機関1の吸
入空気は、エアクリーナ(図示せず)から吸気入口管1
3を経てコンプレッサ16に流入し、昇圧された過給空
気となって吸気ダクト9からインタクーラ8に供給さ
れ、インタクーラ8で冷却された後、吸気ダクト6、ス
ロットル弁11、吸気マニホルド5を通って機関1の各
気筒に供給される。
【0029】また、機関1の排気は、排気マニホルド2
1、22から排気管23を通り、排気入口17からター
ビン20に流入し、タービン及びそれに接続されたコン
プレッサ16を回転駆動した後、排気出口管19から排
出される。また、本実施形態では、排気管23とタービ
ンの排気出口管19とを接続する排気バイパス通路24
が設けられている。この排気バイパス通路24には、バ
イパス通路24から排気タービン20をバイパスして排
気出口管19に流入する排気流量を制御するウエィスト
ゲート弁26が設けられている。ウエィストゲート弁
(WGV)26が全閉状態では、機関1からの排気の全
量がタービン20に流入するためターボチャージャ10
の回転数が上昇し、コンプレッサ16の出口圧力(過給
圧)が上昇する。一方、WGV26が開弁すると機関1
の排気の一部はタービン20をバイパスして排気出口管
19に流出するためタービン20を通過する排気流量が
低下する。これにより、ターボチャージャ10の回転数
は低下し、WGV26の開度に応じて過給圧が低下す
る。すなわち、WGV26の開度を調節することによ
り、機関1の過給圧を所望のレベルまで低下させること
ができる。
【0030】図1の実施形態では、WGV26はDCモ
ータからなるアクチュエータ25により駆動される。ア
クチュエータ25は、後述するエンジン電気制御ユニッ
ト(EEC)30(図2)からの指令信号に応じて作動
し、WGV26をEEC30からの指令信号に応じた開
度に制御する。なお、アクチュエータ25としては、E
EC30からの指令信号に応じた開度にWGV26を駆
動できるものであればDCモータ以外のものも使用可能
であり、例えば、電気/油圧式のアクチュエータ等を使
用することもできる。
【0031】本実施形態では、機関1により駆動される
プロペラ2は可変ピッチプロペラとされており、プロペ
ラ2のプロペラピッチを制御する回転数ガバナー31を
備えている。本実施形態では、プロペラガバナー31は
遠心型ガバナーとされ、図示しない回転伝達軸を介して
プロペラの駆動軸に接続されている。プロペラガバナー
31は機関回転数(プロペラ回転数)が設定回転数に一
致するようにプロペラピッチを調節する作用を行う。す
なわち、プロペラ回転数が設定回転数より高くなった場
合にはガバナー31はプロペラピッチを増加させ、プロ
ペラの吸収馬力を増大することにより機関回転数を低下
させる。また、プロペラ回転数が設定回転数より低くな
った場合にはガバナー31はプロペラピッチを低減し、
プロペラの吸収馬力を低下させることにより機関回転数
を増大させる。これにより、プロペラ回転数(機関回転
数)はプロペラガバナーの設定回転数に一致するように
制御される。本実施形態では、回転数ガバナー31はス
ロットル弁11とともに共通のパワーレバー12に接続
され、単一のパワーレバー12を操作することによりス
ロットル弁11開度(機関出力)と機関回転数(プロペ
ラ2のピッチ)との両方を同時に制御することができる
ようにされている。このため、スロットル弁11とガバ
ナー31の制御用ケーブルを、それぞれ機体特性に応じ
た形状のカムを介してパワーレバーに連結し、パワーレ
バー12の操作量に対するスロットル弁11とガバナー
31との動作量変化特性をそれぞれ適宜な特性に設定す
ることにより機体特性に応じた最適な機関出力/回転数
特性を予め設定できるようになっている。
【0032】図2は、機関1の制御を行うEEC(エン
ジンエレクトリックコントロールユニット)30の構成
を示す図である。図2に示すように、EEC30は本実
施形態では、RAM、ROM、CPU、及び入力ポー
ト、出力ポートを相互に双方向性バスで接続した公知の
構成のマイクロコンピュータとされる。本実施形態で
は、EEC30はエンジン1の燃料噴射制御、点火時期
制御等の基本制御を行う他、後述するブーツストラップ
抑制のための過給圧制御を行っている。これらの制御の
ため、EEC30の入力ポートにはエンジン1のクラン
ク軸(図示せず)に設けられたNEセンサ32から、エ
ンジン1の回転数NEに応じたパルス信号が入力されて
いる。EEC30のCPUは、このパルス信号に基づい
て機関回転数NEを算出し、後述する種々の制御に使用
する。
【0033】また、EEC30の入力ポートには、スロ
ットル弁11下流の吸気ダクト6に設けられたPMセン
サ33、及びスロットル弁11上流の吸気ダクト6に設
けられたPDセンサ34から、吸気ダクト6内の絶対圧
力PMに比例した電圧信号と、ターボチャージャ10の
過給圧(デッキ圧)PD(絶対圧力)に比例した電圧信
号とが、それぞれAD変換器67を介して入力されてい
る。更に、EEC30の入力ポートにはスロットル弁1
1開度THに応じた電圧信号がTHセンサ35から、大
気温度TAに応じた電圧信号がTAセンサ37から、大
気圧力PAに応じた電圧信号がPAセンサ36から,そ
れぞれAD変換器67を介して入力されている。
【0034】また、EEC30の出力ポートは、機関1
の各気筒の点火プラグ4と燃料噴射弁7とにそれぞれ点
火回路68、駆動回路69を介して接続され、機関1の
燃料噴射量及び時期、点火時期を制御している。本実施
形態では、EEC30はPMセンサ33とNEセンサ3
2とにより検出した吸気圧力PMと機関回転数NEとに
基づいて、予めROMに格納した数値テーブルから最適
な燃料噴射量、噴射時期、点火時期を決定し、これらに
基づいて燃料噴射及び点火を行う。
【0035】また、EEC30の出力ポートは、更に駆
動回路69を介してWGV26のアクチュエータ25に
接続されており、WGV26開度を制御して以下に説明
する過給圧制御を行っている。次に図4を用いて、本発
明の一実施形態について説明する。本実施形態では、ブ
ーツストラップが発生する可能性のある運転領域におい
て、過給圧PDが機関保護のための上限値PD2に到達
していない場合でもWGV26を開弁することにより過
給圧を緩やかに上昇させるようにして、回転数の上昇に
伴う機関1の急激な出力増大を抑制している。前述のよ
うに、ブーツストラップは機関1の回転数に対する出力
変化率がプロペラ2の消費動力の変化率を越えて大きく
なるために生じる。従って、機関1の急激な出力増大を
抑制し出力変化率を小さく設定することによりブーツス
トラップの発生を防止することが可能となる。
【0036】本実施形態では、EEC30は機関運転
中、回転数NEに基づいて機関がブーツストラップ領域
で運転されているか否かを判断し、ブーツストラップ運
転領域で運転されている場合には回転数NEに応じてデ
ッキ圧(過給圧)PDの目標値PDTを設定し、実際の
デッキ圧が目標値PDTに一致するようにWGV26を
制御する。
【0037】前述のように、本実施形態ではパワーレバ
ー12によりスロットル弁11開度とガバナー31の設
定回転数とを同時に制御している。このため、WGV2
6が全閉の状態では機関回転数と機関出力との関係は一
義的に決定される。このため、予め実際の機関を用いて
図3に示したような機関回転数と機関出力との関係を求
めておけば、ブーツストラップが発生するおそれのある
領域を機関回転数NEを用いて特定することができる
(例えば、図3においてNE1≦NE<NE2の領
域)。なお、本実施形態では、上述のように機関回転数
NEと機関出力との関係は一義的に定まるため、機関回
転数NE以外に機関出力HPまたは他の機関出力を代表
するパラメータを用いてブーツストラップ領域を特定す
ることも可能である。また、このようにスロットル弁開
度と設定回転数とが一義的に決定されるような場合には
回転数が同一であれば機関出力はデッキ圧PDに応じて
変化するため、WGV26を用いてデッキ圧PDを回転
数NEに応じて制御することにより、所望の機関回転数
/出力特性を得ることができる。
【0038】図4(A) は、本実施形態におけるデッキ圧
PDの設定値PDTと機関回転数NEとの関係を示す図
であり、図4(A) の実線は本実施形態のデッキ圧目標値
PDTを、破線は図3(A) のようにブーツストラップ運
転領域でWGV26を全閉のままに保持した場合のデッ
キ圧変化を示している。図4(A) に示すように、本実施
形態ではデッキ圧PDがブーツストラップ運転領域の下
限回転数NE1から緩やかな傾斜の直線状に上昇し、デ
ッキ圧の上限値PD2に到るように目標値PDTが設定
される。図4(B) は図4(A) のようにデッキ圧を制御し
た場合の機関回転数NEに対する機関出力HPの変化特
性を示す。図4(B) 実線に示すように本実施形態では、
機関出力はデッキ圧PD(図4(A) )の変化に対応して
緩やかに上昇し、従来のブーツストラップ運転領域(N
E1≦NE<NE2の領域)においても、従来の(破線
で示す)のように機関回転数に対して急激な変化を生じ
ない。
【0039】このため、本実施形態によれば従来のブー
ツストラップ運転領域においてもブーツストラップが発
生することがなくなるため、この領域で定常的に機関を
運転することが可能となり、航空機の操縦性を大幅に向
上させることが可能となる。なお、図4(A) のデッキ圧
設定値PDTは、プロペラ2の消費動力の変化特性を考
慮して、ブーツストラップが発生しない傾斜に設定する
必要があり、実際の機関1とプロペラ2とを用いて実験
等によって決定することが好ましい。
【0040】図5は本実施形態の上記デッキ圧制御のフ
ローチャートを示す。本ルーチンは、EEC30により
一定時間毎に実行される。図5においてルーチンがスタ
ートすると、ステップ501では、NEセンサ32とP
Dセンサ34とから機関回転数NEとデッキ圧PDとが
読み込まれる。また、ステップ503では算出した機関
回転数NEを用いて図4(A) に示した関係に基づいてデ
ッキ圧目標値PDTが算出される。本実施形態では、図
4(A) のPDTとNEとの関係は、NEをパラメータと
した1次元数値マップとしてEEC30のROMに格納
されており、ステップ503ではこの数値マップからP
DTが決定される。
【0041】次いで、ステップ505では、ステップ5
03で求めた設定圧PDTとステップ501で求めた実
際のデッキ圧PDとの差ΔPDが算出され、ステップ5
07では、WGV26のアクチュエータ25(本実施形
態ではDCモータ)の駆動電流PDIが、PDI=α
(PDT+β×ΔPD)として算出される。ここで、
α、βは定数である。また、ステップ509では上記に
より算出した駆動電流PDIの値がDCモータ25の駆
動回路69に出力され、本ルーチンは終了する。すなわ
ち、PDIはデッキ圧設定値に対応する値(α×PD
T)(フィードフォワード項)と、PDTと実際のデッ
キ圧PDとの偏差に応じて定まる値(α×β×ΔPD)
(フィードバック項)との和として設定されるため、W
GV26の開度は応答性良く高精度に設定圧PDTが得
られる開度に収束する。
【0042】次に、本発明の別の実施形態について説明
する。図4、図5の実施形態では、デッキ圧設定値PD
Tを機関回転数NEのみに基づいて設定していたが、以
下に説明する実施形態では、デッキ圧設定値PDTは機
関回転数NEのみではなく他の機関運転状態をも考慮し
て決定される。実際の機関運転においては、WGV26
全閉時の機関回転数NEとデッキ圧PDとの関係は必ず
しも図3(A) に示したように一義的に定まらない場合が
ある。例えば、同一の機関回転数であっても、デッキ圧
PDは大気圧PA、大気温度TA等により変化する。す
なわち、大気圧PAが低い場合には、ターボチャージャ
コンプレッサの入口圧力が低下するため、コンプレッサ
で同一の圧縮比が得られたとしてもコンプレッサの出口
圧力(すなわちデッキ圧)は低下する。また、大気温度
TAが低い場合にはコンプレッサ入口圧力が同一であっ
た場合でも、空気密度が増大するためコンプレッサ出口
圧力は上昇する。このため、同一の回転数で機関を運転
した場合でも大気圧と大気温度が変化すればデッキ圧も
変化することになる。
【0043】特に航空機の場合には飛行高度により大気
圧と大気温度が変化するため、飛行高度によってはブー
ツストラップ運転領域自体が変化する場合があり、実際
には図4(A) のように設定圧PDTを一律に定めるので
はなく、大気圧力や大気温度に応じて決定することが好
ましい。例えば、図6は大気圧PAの変化を考慮したデ
ッキ圧目標値PDTの設定を示す図である。図6におい
て、破線はWGV26全閉状態におけるデッキ圧PDの
変化を大気圧PA毎に示している。図中PA1、PA
2、PA3、PA4は、それぞれ高度0m(地上)、6
000m(20000ft)、7600m(25000
ft)、9100m(30000ft)における大気圧
の場合のデッキ圧PDの機関回転数NEによる変化を表
している。図6に示すように、大気圧が低いほど同一機
関回転数ではデッキ圧が低下し、ブーツストラップ運転
領域も大気圧が低くなるほど高回転側に移行する。この
ため、本実施形態では、図6の実線に示すように各大気
圧(高度)毎に目標デッキ圧PDTを設定する。これに
より、大気圧の変化にかかわらずブーツストラップの発
生を防止することが可能となる。また図7は大気温度T
Aの変化を考慮したデッキ圧目標値PDTの設定を示す
図である。図7の破線は大気圧一定の状態においてWG
V26全閉でのデッキ圧PDの変化特性を示している。
図7において、例えばTA1はマイナス40℃、TA2
は0℃の場合のデッキ圧PDの変化を示している。図7
に破線で示したように、デッキ圧は同一の機関回転数で
は大気温度が低いほど高くなり、ブーツストラップ運転
領域も大気温度が低くなるほど低回転側に移行する。従
って、本実施形態では大気温度に応じて図7に実線で示
したようにデッキ圧目標値PDTを設定する。なお、図
7は大気圧一定の場合について示しているが、実際には
各大気圧毎に図7に示したチャートを作成し、大気圧と
大気温度との両方に基づいてPDTを設定することが好
ましい。
【0044】なお、上記実施形態では、デッキ圧の上限
値は大気圧力にかかわらず一定値PD2としているが、
実際には上限値を一定に設定していると大気圧が低下し
た場合に上限値PD2に到達するまでにターボチャージ
ャコンプレッサの圧縮比が過度に上昇してしまい、ター
ボチャージャの過回転が生じる場合がある。従って、タ
ーボチャージャの許容回転数に十分に余裕があり飛行高
度にかかわらずデッキ圧の上限値をPD2に設定できる
場合や、別途ターボチャージャの過回転を防止するため
の機構(ターボチャージャの圧縮比が所定値以上になっ
たときにWGVを強制的に開弁する機構等)を備えた機
関以外では、上限値PD2も大気圧に応じて変更する必
要が生じる。
【0045】そこで、図6のようにデッキ圧PDの上限
値を一定値PD2に設定する代わりに、図8に示すよう
にデッキ圧PDの上限値も大気圧毎に変化させるように
しても良い。ここで、図8のPD3、PD4等は大気圧
とターボチャージャの許容圧縮比(許容回転数)から定
まる値である。図9は、大気圧PAと大気温度TAとを
考慮してデッキ圧目標値PDTを設定する過給圧制御の
フローチャートを示している。図9のフローチャートで
は、図5のフローチャートに対して、ステップ901で
NE、PDの他に大気圧PAと大気温度TAをそれぞれ
PAセンサ36とTAセンサ37から求め、ステップ9
03でNEとPA、TAとを用いて各大気圧毎に作成し
た図7のマップに基づいてデッキ圧の目標値PDTを設
定する点のみが図5のフローチャートと相違している。
図9のようにデッキ圧PDを制御することにより、飛行
高度による大気圧と大気温度の変化にかかわらず、確実
にブーツストラップの発生を防止することが可能とな
る。
【0046】なお、上記の各実施形態では、スロットル
弁開度とガバナーの回転数設定値はパワーレバーにより
同時に設定されるが、スロットル弁開度と回転数とを個
別に設定する機関の場合には、デッキ圧PDは同一回転
数であってもスロットル弁開度THに応じて変化する。
すなわち、同一回転数であっても、スロットル弁開度T
Hが大きければエンジンの排気流量も大きくなるためタ
ーボチャージャの回転数も上昇する。このため、同一回
転数であればスロットル弁開度が大きいほどデッキ圧P
Dは上昇し、ブーツストラップ運転領域もスロットル弁
開度が大きいほど低回転側に移行する。そこで、このよ
うな機関の場合には、デッキ圧PDは、大気圧PAと大
気温度TAに加えて、スロットル弁開度THをも考慮し
て設定することが好ましい。この場合には、例えば、図
7の各大気温度毎のデッキ圧設定値を、種々の大気圧と
スロットル弁開度との組合せについて作成しておき、E
EC30のROMに最適なデッキ圧PDTを回転数N
E、大気圧PA、大気温度TA、スロットル弁開度TH
の関数として予め格納しておき、例えば図9のフローチ
ャートのステップ901で更にスロットル弁開度センサ
35からスロットル弁開度THを読み込み、ステップ9
05ではNE、PA、TA、THを用いてデッキ圧目標
値PDTを算出するようにすれば良い。
【0047】次に、本発明の別の実施形態について説明
する。前述の実施形態では、実験等により求めた機関出
力/回転数特性を用いてデッキ圧目標値(例えば、図
4、及び図6から図8)を定め、この目標値を用いてブ
ーツストラップ抑制のためのデッキ圧制御を行ってい
る。ところが、機関の稼働時間が長くなると、各部品の
特性の変化などにより機関出力/回転数特性もデッキ圧
目標値を設定したときの特性(基準状態での特性)から
変化する可能性がある。このように機関出力特性に経年
変化等が生じた場合には、ブーツストラップ運転領域も
最初に設定した領域から変化するため、実際のデッキ圧
目標値の設定は機関出力特性の経年変化を考慮して十分
な余裕をみたものとする必要がある。このため、ブーツ
ストラップ運転領域でのデッキ圧目標値は真に必要なも
のより低く設定する必要が生じ、ブーツストラップ運転
領域では機関の性能を十分に利用できなくなる問題があ
る。そこで、以下の実施形態では、機関運転中に機関出
力/回転数特性を常に監視し特性の変化に応じてデッキ
圧目標値PDTを補正する学習補正を行う。
【0048】以下、図10を用いて本実施形態における
デッキ圧目標値の学習補正について説明する。図10
は、大気圧PAと大気温度TAとを一定にした場合のデ
ッキ圧PDと回転数NEとの関係を示す図4(A) と同様
な図である。図10において、カーブIはデッキ圧PD
の目標値を一定値PD2に設定した場合のデッキ圧PD
の変化を示し、回転数NE1からNE2までの間はWG
V26は全閉となるためデッキ圧PDの急激な上昇が生
じている。すなわち、図4(A) と同様NE1≦NE<N
E2の領域がブーツストラップ運転領域となる。図4で
説明したように、この領域でブーツストラップが発生す
ることを防止するためには、図10に直線K1で示した
ようにブーツストラップ運転領域でのデッキ圧目標値P
DTを設定する必要がある。ここで、直線K1の傾き
(dPD/dNE)はブーツストラップが発生しないデ
ッキ圧の変化率であり、プロペラの消費動力特性から決
定される一定値である。
【0049】従って、前述の実施形態で説明したように
機関出力特性がカーブIで示される場合には、デッキ圧
目標値PDTを直線K1のように設定すればブーツスト
ラップ運転領域においてもブーツストラップが発生しな
い。ところが、機関の経年変化等により機関出力特性が
カーブIからカーブIIに変化したとする。この場合ブ
ーツストラップ運転領域も出力特性の変化に応じて移動
し、NE1′≦NE<NE2′が変化後のブーツストラ
ップ運転領域となる。この場合には、デッキ圧目標値を
直線K1のようにに設定していたのでは、例えば図10
の区間BSで示す領域ではWGV26が全閉に制御され
るためデッキ圧PDの急激な上昇が生じ、ブーツストラ
ップが発生するおそれがある。従って、この場合にはデ
ッキ圧の目標値は図10に直線K2で示すように設定す
る必要がある。また、逆に機関出力特性がカーブIII
のように変化した場合には、直線K1でデッキ圧を制御
していると、図10にBTで示す領域ではデッキ圧が必
要以上に低く制御されることになるため、この領域では
機関性能を十分に利用することができなくなる。このた
め、この場合には、デッキ圧PDTの目標値は図10に
K3で示すように設定する必要がある。なお、直線K
1、K2、K3の傾きは同一である。
【0050】本実施形態では、機関回転数NEとデッキ
圧PDとを常時監視し、デッキ圧が上昇を始める点(例
えば、図10でA1、A2、A3で示す点)を検出し、
この点から傾きdPD/dNEが一定の直線を設定し、
この直線をそれぞれの場合のデッキ圧目標値PDTに設
定する(例えば、図10の直線K1、K2、K3)。な
お、これらの直線の傾きdPD/dNEは、前述したよ
うにブーツストラップが発生しない最大のデッキ圧の変
化率であり、プロペラの消費動力特性から決定される。
また、この場合もデッキ圧目標値PDTは、上限値PD
2を越えないように制御される。
【0051】このようにデッキ圧目標値PDTを制御す
ることにより、機関出力特性の変化が生じた場合でもブ
ーツストラップの発生を防止しつつ十分な機関性能を得
ることが可能となる。図11、図12は、上記のデッキ
圧学習制御を示すフローチャートである。本ルーチン
は、図1のEEC30により一定時間毎に実行される。
【0052】図11、図12において、ステップ110
3から1109及び1115、1117は、現在の機関
出力特性におけるブーツストラップ運転領域の開始点
(例えば図10にA1、A2、A3で示す点)を検出す
るための動作を、またステップ1119から1127
は、上記により検出したブーツストラップ運転領域の開
始点に基づいたデッキ圧目標値PDT(例えば、図10
の直線K1、K2、K3)の設定のための動作を示して
いる。
【0053】まず、図11、ステップ1103から11
09では、WGV26が全閉であり(ステップ110
3)、かつ機関が過渡運転状態にない場合(ステップ1
105)に、回転数NEに対するデッキ圧PDの変化率
(dPD/dNE)がブーツストラップ抑制のために必
要とされる変化率上限値K以上になったときのデッキ圧
PDと回転数NEとをそれぞれPDn 、NEn として順
次記憶する(n=1、2、……)とともに、フラグSE
Tの値を1にセットする(ステップ1111)。
【0054】また、ステップ1103から1107のい
ずれかの条件が成立しない場合にはルーチンはステップ
1113に進む。ここで、ステップ1103でWGV2
6が全閉時にのみステップ1109を実行するのは、W
GV26全閉時のブーツストラップ運転領域の開始点
(例えば図10にA1、A2、A3で示す点)を検出す
るためである。また機関が過渡運転状態にない場合にの
みステップ1109を実行(ステップ1105)するの
は、過渡運転時の検出値のばらつきによる検出精度の低
下を防止するためである。なお、ステップ1105で
は、前回ルーチン実行時の機関回転数NEi-1 と今回検
出した機関回転数NEとの差が所定値ΔN0以下の場
合、すなわち機関回転数NEの時間的変化が少ない場合
に機関が過渡運転状態にないと判定する。
【0055】また、ステップ1107では、デッキ圧P
Dの回転数NEに対する変化率(dPD/dNE)は、
今回ルーチン実行時のデッキ圧PDと前回ルーチン実行
時のデッキ圧PDi-1 との差(すなわち、前回ルーチン
実行時からのデッキ圧PDの変化量)と前回ルーチン実
行時からの回転数NEの変化量との比として算出される
(すなわち、(dPD/dNE)=(PD−PDi-1 )
/(NE−NEi-1 ))。また、ステップ1109で
は、上記変化率が所定値Kを越えたPDとNEとの組が
逐次記憶される。
【0056】また、変化率(dPD/dNE)が所定値
を越えた組を記憶した後、ステップ1111ではフラグ
SETが1にセットされる。これにより、次にステップ
1103から1107の条件のいずれかが成立しなくな
った場合に、図12のステップ1115から1125が
1回だけ実行され、ブーツストラップ運転領域の開始点
が決定される。
【0057】すなわち、図12ステップ1115では、
ステップ1109で記憶した回転数NEのうち最小の回
転数がNEMIN として記憶され、ステップ1117で
は、NEMIN に対応するデッキ圧PDの値がPDMIN と
して記憶される。すなわち、NEMIN は、今回(dPD
/dNE)>Kとなった最小の回転数であるため、現在
の機関出力特性におけるブーツストラップ運転領域の開
始点(例えば図10にA1、A2、A3で示す点)と考
えることができる。
【0058】また、ステップ1119では、定数Gの値
が、G=PDMIN −K×NEMIN として算出される。こ
こで、定数Gは、図10においてPDMIN とNEMIN で
表される点を通過する傾きKの直線(例えば図10の直
線K1、K2、K3)を設定するための定数である。上
記により算出した定数Gは、ステップ1121で、例え
ば機関のメインスイッチがオフにされた場合も記憶内容
を保持可能な記憶手段(例えばバックアップRAM)に
記憶され、ステップ1123、1125では今回Gを算
出するために用いたPDn 、NEn 等の値がクリアされ
るとともに、フラグSETの値が0にリセットされる。
これにより、次回ルーチン実行時には、図11ステップ
1103から1107の条件が成立しない場合には、直
接ステップ1127が実行され、ステップ1115から
1125は実行されない(ステップ1113)。
【0059】図11ステップ1127から1135は定
数Gを用いたデッキ圧目標値PDTの設定を示す。ステ
ップ1127では、定数Gとステップ1101で検出し
た回転数NEとを用いて、デッキ圧目標値PDTが、P
DT=K×NE+Gとして算出される。ここで、PDT
=K×NE+Gは、今回検出したブーツストラップ運転
領域の開始点(NEMIN ,PDMIN )を通り、傾きdP
D/dNE=Kの直線を表す。また、ステップ1129
では、上記により算出したPDTの値が下限値PD1以
下、又は上限値PD2以上の場合には、PDTの値がそ
れぞれPD1またはPD2に設定され、ステップ113
7では、設定したPDTの値を得るようにWGV26の
開度が制御される。なお、ステップ1137の制御は、
図5ステップ505から509または、図9ステップ9
05から909と同一である。
【0060】上記ルーチンにより、機関出力特性が図1
0のカーブIからカーブIIまたはIIIのように変化
した場合でも、デッキ圧目標値は特性の変化に合わせて
K2またはK3のように設定されるため、機関出力特性
に変化が生じた場合でも精度良くブーツストラップの発
生を防止することが可能となる。なお、図10から図1
2では、説明を簡単にするために大気圧PAと大気温度
TAとが一定の場合について説明したが、大気圧PAと
大気温度TAとが変化する場合、更にはスロットル弁開
度THを回転数NEとは独立して制御する場合にも図1
1、図12と同様な制御が可能である。この場合には、
各大気圧PAと大気温度TA(及び該当する場合にはス
ロットル弁開度TH)の関数として、傾きKの値を設定
しておき、ステップ1107、1119、1127では
実際のPA、TA(及びTH)に応じて傾きKの値を算
出するようにすれば良い。
【0061】
【発明の効果】各請求項に記載の発明によれば、従来ブ
ーツストラップが生じていた領域において、ブーツスト
ラップの発生を効果的に防止できるため、この領域で機
関の安定した運転が可能となる。このため、機関の運転
可能領域が拡大する効果がある。また、請求項3から6
に記載の発明によれば、ブーツストラップ領域における
機関出力の制御が機関出力特性に影響を与える要因に基
づいて補正されるため、上記共通の効果に加えて運転状
態の変化にかかわらずブーツストラップを効果的に防止
することが可能となる。
【0062】更に、請求項8に記載の発明によれば、経
年変化などにより機関出力特性が変化した場合であって
も、ブーツストラップ運転領域では特性変化に応じて機
関出力が制御されるため、上記共通の効果に加えて経年
変化による機関出力特性の変化の有無にかかわらずブー
ツストラップを効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の過給機付内燃機関の一実施形態の概略
構成を示す図である。
【図2】図1の実施形態の制御装置の概略構成を示す図
である。
【図3】ブーツストラップ現象の発生原因を説明する図
である。
【図4】図1の機関のデッキ圧制御の一実施形態を説明
する図である。
【図5】図4の制御のフローチャートの一例を示す図で
ある。
【図6】図1の機関のデッキ圧制御の別の実施形態を説
明する図である。
【図7】図1の機関のデッキ圧制御の別の実施形態を説
明する図である。
【図8】図1の機関のデッキ圧制御の別の実施形態を説
明する図である。
【図9】図6の制御のフローチャートの一例を示す図で
ある。
【図10】図1の機関のデッキ圧制御の別の実施形態を
説明する図である。
【図11】図10の制御のフローチャートの一部であ
る。
【図12】図10の制御のフローチャートの一部であ
る。
【符号の説明】
1…内燃機関本体 2…プロペラ 10…ターボチャージャ 26…ウエィストゲート弁 30…制御ユニット

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関の吸気を過給する過給機と、前
    記機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、前記
    運転状態が機関のブーツストラップが発生する可能性が
    あるブーツストラップ運転領域にあるか否かを判定する
    運転領域判定手段と、前記運転領域判定手段により機関
    がブーツストラップ運転領域で運転されていると判定さ
    れたときに、機関出力増大を抑制するブーツストラップ
    抑制手段と、を備えた過給機付内燃機関。
  2. 【請求項2】 前記運転状態検出手段は前記機関の回転
    数を検出する回転数検出手段を備え、前記運転領域判定
    手段は、少なくとも機関回転数に基づいて機関がブーツ
    ストラップ運転領域で運転されているか否かを判定する
    請求項1に記載の過給機付内燃機関。
  3. 【請求項3】 前記過給機は、過給圧が予め定めた設定
    圧力以上になったときに開弁し、過給機出口空気圧力も
    しくは過給機入口排気圧力の上昇を抑制することにより
    過給圧を前記設定圧力に維持する過給圧制御弁を備え、
    前記ブーツストラップ抑制手段は、機関がブーツストラ
    ップ領域で運転されているときに、過給圧が前記設定圧
    力より低い場合であっても前記過給圧制御弁を開弁し、
    機関出力増大を抑制する請求項2に記載の過給機付内燃
    機関。
  4. 【請求項4】 前記ブーツストラップ抑制手段は前記過
    給圧制御弁の開度を機関回転数に応じて補正する第1の
    補正手段を備えた請求項3に記載の過給機付内燃機関。
  5. 【請求項5】 前記運転状態検出手段は、更に機関のス
    ロットル弁開度を検出するスロットル弁開度検出手段を
    備え、前記ブーツストラップ抑制手段は、スロットル弁
    開度に基づいて前記過給圧制御弁開度を補正する第2の
    補正手段を備えた請求項4に記載の過給機付内燃機関。
  6. 【請求項6】 前記運転状態検出手段は、更に大気温度
    と大気圧力との少なくとも一方を含む大気状態を検出す
    る大気状態検出手段を備え、前記ブーツストラップ抑制
    手段は、更に前記大気状態に応じて前記過給圧制御弁開
    度を補正する第3の補正手段を備えた、請求項4または
    5に記載の過給機付内燃機関。
  7. 【請求項7】 前記運転状態検出手段は、機関回転数を
    検出する回転数検出手段と、機関出力を表す出力パラメ
    ータを検出する出力パラメータ検出手段とを備え、前記
    ブーツストラップ抑制手段は、前記出力パラメータの機
    関回転数に対する変化率を算出する変化率算出手段と、
    機関がブーツストラップ運転領域で運転されていると判
    定されたときに前記算出された変化率が予め定めた基準
    変化率以下になるように機関出力増大を抑制する手段
    と、を備えた請求項1に記載の過給機付内燃機関。
  8. 【請求項8】 前記運転領域判定手段は、更に機関回転
    数または前記出力パラメータの値の少なくとも一方に基
    づいて機関がブーツストラップ運転領域にあると判定す
    る判定手段と、実際の運転における前記出力パラメータ
    の機関回転数に対する変化特性の所定の基準状態におけ
    る変化特性からのずれを検出する特性変化検出手段と、
    該変化特性のずれ量を記憶する記憶手段と、記憶した変
    化特性のずれに基づいて前記設定領域を変更する学習補
    正手段とを備え、前記判定手段は該補正後の設定領域に
    基づいて機関がブーツストラップ運転領域にあるか否か
    を判断する請求項7に記載の過給機付内燃機関。
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