JPH09307148A - 高温超電導単結晶体型ボルテックスフロー素子及びその作製方法 - Google Patents

高温超電導単結晶体型ボルテックスフロー素子及びその作製方法

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JPH09307148A
JPH09307148A JP8143491A JP14349196A JPH09307148A JP H09307148 A JPH09307148 A JP H09307148A JP 8143491 A JP8143491 A JP 8143491A JP 14349196 A JP14349196 A JP 14349196A JP H09307148 A JPH09307148 A JP H09307148A
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single crystal
vortex flow
temperature superconductor
axis
crystal body
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JP8143491A
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Kaname Matsumoto
要 松本
Yoshio Furuto
義雄 古戸
Yoshio Nakamura
芳雄 中村
Toshihiko Maeda
敏彦 前田
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Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温超電導体単結晶体を用い、ボルテックス
フローの原理に基づき、新規で実用的なボルテックスフ
ロー素子の構造とその作製方法を提供する。 【解決手段】 高温超電導体単結晶小体と、この高温超
電導体単結晶小体のc軸方向の両端部に接合した一対の
電極と、高温超電導体単結晶小体に対してc軸と直交す
る方向に磁界を印加する励磁手段とを備え、前記一対の
電極間に超電導状態で電流が流れている状態で前記励磁
手段によって高温超電導体小体に磁界を印加した時に前
記一対の電極間に電圧を発生させる高温超電導単結晶体
型ボルテックスフロー素子において、前記高温超電導体
単結晶小体が基板表面上に設けられ、この高温超電導体
単結晶小体のa軸とb軸とを含むab面がこの基板に対
して直交して設けられたもの。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物高温超電導
体単結晶を用いたボルテックスフロー素子に関するもの
である。より具体的には、外部より超電導体内に侵入し
た磁界が形成する磁束量子、すなわちボルテックス
(渦)が磁界と直交するボルテックス駆動電流によって
高温超電導体単結晶内を高速移動する現象(ボルテック
スフロー)を動作原理とする高温超電導単結晶体型ボル
テックスフロー素子およびその作製方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】超電導体を用いたエレクトロニクス素子
は本質的に低い消費電力と超高速のスイッチング速度を
持つ。この特性を生かしながら半導体トランジスタと同
様な動作方式を有し、微弱な電気信号を増幅できる超電
導素子が得られれば、半導体回路中の素子を超電導素子
に置き換えるだけで高性能の超電導回路を実現できるこ
とになる。
【0003】このような可能性を担った超電導増幅素子
としてはこれまで、次の3つのタイプが提案されてい
る。(1) 電界効果を応用する素子、(2) キャリア(電
荷)注入を応用する素子、(3) ボルテックスを応用する
素子、これらは信号を担う電界や、キャリア、或いはボ
ルテックスを制御して信号を増幅しようとするものであ
る。以下に、各々の超電導増幅素子について説明する。
【0004】(1) 電界効果を基本とする超電導増幅素子
については、マンハートらによる報告が知られている
(J.Mannhart et al.:Phys.Rev.Lett. 67 (1991) 2099)
。半導体表面Sに絶縁物Iを介して金属電極Mを設け
たMISコンデンサCに、電圧Vを加えると半導体表面
Sに電荷Q=CVが誘起される。この電荷Qがもともと
半導体表面にある電荷の量と同じ程度になると、半導体
表面の電気伝導はVにより大きく変化することになり、
トランジスタ動作が可能となる。
【0005】図9はこの効果を利用した電界効果素子の
例である。酸化物高温超電導体のキャリア密度は金属の
1/10〜1/100と少なく、電界効果が金属より起
こり易い。しかし半導体に比べれば100〜1000倍
も多いことと、MIS構造の接合面を再現性よく制御す
ることが困難なため充分安定した素子作製は今のところ
成功していない。
【0006】(2) キャリア注入タイプの素子については
アベらによる報告がある。このキャリア注入タイプの素
子の構造の例を図10に示す(H.Abe et al.:Supercon
d.Sci.&Technol.4 (1991) 598)。これは半導体バイポー
ラトランジスタのベース領域を、超電導体で置き換える
ことによって電気抵抗を小さくし、より高性能を得よう
とするものである。例えばNbをドープしたn型半導体
基板をエミッタとし、(Ba,Rb)BiO3 超電導体
をベースとする素子ではエミッタ接地電流増幅率10が
得られている。しかしながら、この素子作製においては
3種類の材料を用いるため2つの接合界面を制御する技
術が重要であるが再現性に未だ問題がある。また上記超
電導体は臨界温度が低く液体窒素温度での動作はできな
い。
【0007】(3) ボルテックスを応用する素子について
はマルテンらによる報告が知られている。図11はこの
ボルテックスの運動を利用した素子構造の例である(J.
S.Martens et al.:IEEE Trans.Appl.Supercond. 1 (199
1) 95)。2つの超電導体を微細加工された超電導体で弱
く結合(弱結合)する。2つの超電導体の間にバイアス
電流を流しておき、入力信号線に電流を流すと磁界が誘
起されるが、この磁界はボルテックスとなって弱結合部
に侵入する。ボルテックスにはボルテックス駆動電流に
よってローレンツ力が働くため、弱結合部をボルテック
スが高速でフローし、2つの超電導体の間にボルテック
スフロー電圧Vf が発生する。Vf はボルテックスフロ
ー速度とボルテックス密度に比例するため、入力信号に
よってVfの大きさを制御することができる。
【0008】すなわち、電流信号を入力とし、ボルテッ
クスフロー電圧を出力とする増幅器が実現できる。Vf
としては10mVのものも得られているが、このために
は素子サイズが数mmと大型化してしまう問題がある。
このように素子の縮小化に問題があるが、電力利得を得
ることが可能であり、他の端子に比べて実用化に近い。
【0009】一方、最近、増幅特性を有する新しい超電
導素子の原理が提案されている(T.Yamashita and M.Ta
chiki : Proc. of International Superconductive Ele
ctronic Conference (ISEC95) Sept. 18-21 (1995))。
これは高温超電導体単結晶特有の異方的な結晶構造と物
性、及びボルテックスを利用するもので、図12に素子
構造と動作原理を示した。
【0010】先ず、高温超電導体からなる単結晶小片の
c軸方向に予めボルテックス駆動電流を流しておき、小
片外周に巻かれた入力信号電流線に電流Ic を流すこと
によって磁界を発生させる。発生した磁界は単結晶のa
b面に平行に異方的ボルテックスとなって侵入する。小
片中にボルテックスのピンニング点となる微細な結晶欠
陥が存在しなければ、ボルテックスはローレンツ力によ
って高速でab面内をフローしていく。こうして小片の
両端にはボルテックスフロー電圧Vf が発生する。高温
超電導体単結晶においてはボルテックスのフロー速度が
大きいためVfも大きく、これを入力信号で制御するこ
とで高い増幅機能を実現することができる。
【0011】この素子の原理は、先の(3) ボルテックス
フロー素子に似ているが、従来素子に比べて素子の小型
化、高出力化、高速化が可能である。すなわちこのボル
テックス走行領域となる単結晶小片のab面内方向の幅
(W)は、c軸に平行に磁界を印加した時の磁界侵入長
λc の2倍以上、c軸方向の長さ(L)はab面に平行
に磁界を印加した時の磁界侵入長λabの2倍以上であれ
ばよい。
【0012】ここでは材料としてLa2-x Srx Cu3
O(LSCO)が提案されているが、この場合、λab
0.08μm、λc =0.8μmと小さいため、素子サ
イズは2μm程度と先のボルテックスフロー素子に比べ
て大幅に素子を小型化できる。またc軸方向の臨界電流
値も弱結合を用いないため、〜1011A/m2 と従来素
子より桁違いに大きく、高出力化ができる。更に、高温
超電導の特徴として、ab面内でのボルテックスフロー
速度は〜106 m/sとなるため、素子の小型化と合わ
せてスイッチング速度が速くなり高速化、高周波数化も
可能となり、従来ボルテックスフロー素子の特性を大幅
に上回ることになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この原
理の高温超電導体型ボルテックスフロー素子を実現する
ためには解決すべき問題が多々ある。すなわち、素子実
現のためには、c軸方向に通電可能で幅が2λc 程度の
ボルテックス走行領域となる良質の単結晶小片と、これ
にボルテックス駆動電流供給線が接合され、また走行領
域のc軸方向に直交してボルテックスを導入するための
入力信号線を配した素子構造が必要である。さらに駆動
電流供給線や入力信号線は、熱損失や信号の歪みの問題
を考えると金属常電導体よりも高温超電導体そのもので
作製することが必要である。
【0014】以上述べたような素子を低コストで、簡便
な方法で作製する方法は先の文献においても開陳されて
なく未だ模索状態である。
【0015】このような問題に鑑み、本発明は良質の高
温超電導体単結晶体を用い、ボルテックスフローの原理
に基づき、新規で実用的なボルテックスフロー素子の構
造とその製法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明に係る高温超電導単結晶体型ボルテックスフ
ロー素子(以下、「ボルテックスフロー素子」と記す)
では、高温超電導体単結晶小体と、この高温超電導体単
結晶小体のc軸方向の両端部に接合した一対の電極と、
高温超電導体単結晶小体に対してc軸と直交する方向に
磁界を印加する励磁手段とを備え、前記一対の電極間に
超電導状態で電流が流れている状態で前記励磁手段によ
って高温超電導体小体に磁界を印加した時に前記一対の
電極間に電圧を発生させるボルテックスフロー素子にお
いて、前記高温超電導体単結晶小体が基板表面上に設け
られ、この高温超電導体単結晶小体のa軸とb軸とを含
むab面がこの基板に対して直交して設けられたもので
ある。
【0017】本発明のボルテックスフロー素子における
高温超電導体単結晶小体は、その結晶構造(単位胞)に
おいて、a,b軸の長さがほぼ等しく、c軸が長い構造
となっている。超電導キャリアが自由に動ける CuO2
はa,b軸方向に広がっているが、c軸方向にはこの C
uO2 層と、半導体的なブロック層とが積み重なった構造
をしており、c軸方向には超電導キャリアは動きにくい
異方的電気特性を示す。図12で示したように、高温超
電導体単結晶小体のc軸方向に予めボルテックス駆動電
流を流しておき、小体外に置かれた励磁手段によって磁
界を印加すると、磁界は異方的ボルテックスとなって単
結晶のab面に平行に侵入する。この場合、先に述べた
異方的性質のため、ボルテックスはa,b軸方向に大変
動き易くなっており、ローレンツ力によって高速でab
面内をフローする。その結果として、小体のc軸両端に
は大きなボルテックスフロー電圧Vf が発生するもので
ある。
【0018】本発明では、この励磁手段によって磁界が
印加される高温超電導体単結晶小体が、基板に対してこ
の小体のab面が直交するように基板表面上に設けられ
る。これにより、ボルテックスフロー素子の励磁手段に
よって磁界が印加される高温超電導体単結晶小体(即
ち、ボルテックス走行領域)を基板平面上に設けること
ができるため、製造上、ボルテックス走行領域の幅
(W)やボルテックス走行領域の長さ(L)等の加工が
容易になり、製造が容易で、大量に低コストな製作が可
能となる。
【0019】本発明のボルテックスフロー素子では、励
磁手段によって磁界が印加される高温超電導体単結晶小
体(即ち、ボルテックス走行領域)のc軸に直交する方
向の幅(W)とc軸方向の長さ(L)とが、一定の条件
を満たす必要がある。前述の図12で示された条件で
は、ボルテックス走行領域となる単結晶小片のab面内
方向の幅(W)は、c軸に平行に磁界を印加した時の磁
界侵入長λc の2倍以上、c軸方向の長さ(L)はab
面に平行に磁界を印加した時の磁界侵入長λabの2倍以
上であればよいとなっていた。しかし、本発明において
は、鋭意研究を重ねた結果、ボルテックス走行領域の幅
(W)が、c軸に平行に磁界を印加した時の磁界侵入長
λc に対してW≦5λc を満たし、且つ、ボルテックス
領域の長さ(L)が、ab面に平行に磁界を印加した時
の磁界侵入長λabに対してL≧λabである条件を満足し
ておれば、充分な臨界電流密度を有し、且つ、超高速ス
イッチング特性などの高機能が実現できることが確認さ
れた。
【0020】尚、本発明のボルテックスフロー素子にお
ける励磁手段は、高温超電導小体のc軸と直交する方向
に磁界を印加するするものであればよく、基板上の小体
のボルテックス走行領域を取巻く位置にあればよい。例
えば、磁界は電流が流れる導線の回りに発生するので、
ボルテックス走行領域に平行な導線を設けて励磁手段と
すればよい。このような導線は基板上でのパターニング
によって簡単に得ることができる。好ましくは、前記励
磁手段は前記高温超電導体単結晶小体が設けられた同一
基板表面上に設けられる。また、励磁手段は高温超電導
体単結晶小体の上又は下に絶縁層を介して重なるように
設けられてもよい。
【0021】また、本発明のボルテックスフロー素子に
おける電極も、基板上でのパターニングによって簡単に
得ることができる。従って、好ましくは、前記電極は前
記高温超電導体単結晶小体が設けられた同一基板表面上
に設けられたものである。
【0022】本発明に係るボルテックスフロー素子の製
作方法では、高温超電導体単結晶小体と、この高温超電
導体単結晶小体のc軸方向の両端部に接合した一対の電
極と、高温超電導体単結晶小体に対してc軸と直交する
方向に磁界を印加する励磁手段とを備え、前記一対の電
極間に超電導状態で電流が流れている状態で前記励磁手
段によって高温超電導体単結晶小体に磁界を印加した時
に前記一対の電極間に電圧を発生させるボルテックスフ
ロー素子の作製方法において、前記基板上に、高温超電
導体単結晶膜をa軸とb軸とを含むab面が基板表面に
対して直交するように成膜するものである。
【0023】即ち、適当な基板上に基板面に対して高温
超電導単結晶膜のab面が直交するように単結晶膜を成
膜する。この場合、超電導単結晶膜は基板上にエピタキ
シャル成長した欠陥の極めて少ない単結晶膜である必要
がある。
【0024】従って、好ましくは高温超電導体単結晶膜
を、少なくとも表面が予め定められた結晶配位を有する
基板表面上に、液相エピタキシャル法又は気相エピタキ
シャル法によって、a軸とb軸とで構成される面が前記
基板表面と直交するように成膜して得るものである。
【0025】従って、高温超電導体単結晶膜を形成する
基板は、高温超電導単結晶膜のab面が基板表面と直交
するように液相又は気相エピタキシャル成長を促す結晶
面が表出されればよい。例えば、NdGaO3 単結晶基
板の(110)面を表出させたもののほか、LaGaO
3 ,SrTiO3 ,LaAlO3 やこれらに他元素、例
えばGd等を微量添加し、基板特性を改善した単結晶基
板の特定面が用いられれる。この場合、高温超電導単結
晶と格子定数が近く、且つ、熱膨張係数が近く、結晶成
膜温度以下で相転位のない結晶構造が好ましい。また高
温超電導体と同じ結晶構造を有するが、超電導特性を示
さないPrBa2 Cu37-x 等や、キャリアを制御し
て臨界温度Tc を押えた高温超電導体単結晶体自身も用
いることができる。
【0026】尚、本発明のボルテックスフロー素子にお
ける高温超電導材料としては、高温超電導体単結晶特有
の異方的な結晶構造,物性等を有するものが適宜選択さ
れる。特にペロブスカイト型結晶構造を有する超電導体
が好ましくは用いられる。素子の高速化・小型化の観点
から、臨界温度が高く侵入長λab、λc が小さい材料が
望ましい。従って、例えばLSCO系、YBa2 Cu3
7-x (YBCO)、Yを他の元素に置換したRBa2
Cu37-x (R=希土類)等が有望である。これ以外
にもY,R系の124構造物質やBi系(例えば、Bi
2 Sr2 CaCu28 )、Tl系(例えば、Tl2
2 Can-1 Cuny (n=1,2,3,4))、H
g系(例えば、Hg2 Ba2 Ca2 Cu38+x )など
も用途によっては利用される。
【0027】成膜された膜には微細加工を施してボルテ
ックス走行領域を形成する。ここでボルテックス走行領
域に流れるボルテックス駆動電流はc軸方向に流れるよ
うにし、かつ走行領域の幅WはW≦5λc を満たし、か
つその長さLはL≦λabを満たすように作製する。
【0028】なお、励磁手段と電極等については、走行
領域と同時に成膜した単結晶膜に微細加工によって形成
してもよく、また、走行領域を形成した後に別途気相法
或いは液相法を用いて走行領域に組み合わて形成しても
よい。後者の場合は、励磁手段,電極を形成するものは
臨界電流密度が高ければよいため特に高品質単結晶膜で
ある必要はない。このようにa軸又はb軸配向した高品
質な高温超電導単結晶膜を用いて、新規な原理に基づく
ボルテックスフロー素子を作製することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明においては、高温超電導体
単結晶小体が基板表面上に設けられ、この高温超電導体
単結晶小体のa軸とb軸とを含むab面がこの基板に対
して直交して設けられたものである。これにより、ボル
テックスフロー素子のボルテックス走行領域を基板平面
上に設けることができるため、製造上、c軸に直交する
方向の幅Wやボルテックス走行領域のc軸方向の長さL
の加工が容易になり、製造が容易で、大量に低コストで
製作が可能となる。
【0030】具体的な高温超電導体単結晶小体の形成
は、基板上に高温超電導体単結晶膜をa軸とb軸とを含
むab面が基板表面に直行するように成膜すればよい。
この成膜には、好ましくは液相エピタキシャル法又は気
相エピタキシャル法によって行われる。従って、基板に
は、高温超電導単結晶膜のab面が基板表面と直交する
ように液相又は気相エピタキシャル成長を促す結晶面が
表出されたものを用いる。
【0031】また、高温超電導体単結晶小体のc軸方向
の両端部に接合した一対の電極や、高温超電導体単結晶
小体に対してc軸と直交する方向に磁界を印加する励磁
手段は、同一の基板上に配置することができ、作製も通
常のパターニング、エッチング等の加工によって容易に
作製することができる。
【0032】以上のように構成されたボルテックスフロ
ー素子においては、ボルテックス走行領域に発生するフ
ロー電圧は、走行領域をフローするボルテックスの数と
フロー速度の積に比例する。また、ボルテックスの数は
入力信号電流で制御され、フロー速度は走行領域を流れ
るボルテックス駆動電流の大きさと、超電導体中の粘性
抵抗で決まる。また走行領域における超電導臨界電流値
は、走行領域におけるc軸方向の臨界電流密度と走行領
域の幅と厚さに比例する。
【0033】従って、駆動電流の大きさを適宜設定し、
入力信号を変化させることによって走行領域両端には変
調された大きなフロー電圧を取出すことができる。また
走行領域の本数を増やしたり、厚さや長さを適宜変えた
素子を作ることによって、より高出力の素子を作製する
ことも可能である。
【0034】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳しく説明す
る。 実施例1(ボルテックスフロー素子の製作1) 図1は本発明のボルテックスフロー素子の一実施例の構
成を示す説明図である。図に示す通り、NdGaO3
結晶基板(11)の(110)面上に、液相エピタキシャル
法によって結晶を成長させてa軸配向(基板表面に対
し、a軸方向に直交する配向)したYBa2 Cu3
7-x (以下、YBCO単結晶薄膜)を5μm堆積させ、
その後ポリッシングとエッチングによって膜厚(T)を
1μmとした。従って、得られたYBCO単結晶膜はb
軸とc軸とが基板表面に平行な結晶構造となっている。
【0035】この超電導単結晶膜上にフォトレジストを
塗り、通常のフォトリソグラフィでフォトレジストを、
図に示すような、5μmの長さ(L)と所望の幅(W)
とを有するボルテックス走行領域(12)と、この走行領域
(12)の両端に直交して配されたボルテックス駆動電流供
給線(13)とを含む略U字の形状にパターニングした。ま
た同時に、ボルテックス走行領域(12)と平行に配置した
入力信号線(14)と、この入力信号線(14)の両端に直交し
て配された駆動電流供給線(15)とをパターニングした。
【0036】パターニングした超電導単結晶膜をエッチ
ングしてボルテックスフロー素子構造を形成した。得ら
れた素子を形成する高温超電導体の臨界温度はいずれも
88〜92Kの範囲であった。尚、ボルテックス走行領
域の幅(W)は0.3μmから8μmの範囲で種々変化
させた試料を作製し、入力信号線(14)の幅(W’)は
W’≧Wとした。
【0037】実施例2(ボルテックスフロー素子のW依
存性の検証) 図2は液体窒素温度,ゼロ磁界下における各ボルテック
ス走行領域の臨界電流密度のボルテックス走行領域の幅
(W)依存性を示す線図であり、縦軸は臨界電流密度
(1010A/m2 )、横軸はW/λc である。図に示す
通り、臨界電流密度はWが小さくなるにつれて上昇し
た。特にこの変化はλc =0.7μmとした場合、W/
λc 5において顕著であった。図に示された臨界電流
密度の上昇は一種のサイズ効果である。
【0038】実施例3(ボルテックスフロー素子の特
性) 次に液体窒素温度にてボルテックスフロー素子特性の評
価を行った。図3はボルテックスフロー素子特性の評価
を行う際の測定系の概要を示す回路図である。評価は図
3に示す回路を用いて行った。試料としてはW=1μm
の素子を選択した。ボルテックス駆動電流Id =22m
Aを予め流しておき、入力信号線に入力電流Ic =1m
Aを通電したところ素子両端部にボルテックスフロー電
圧Vf =4mVが発生した。また素子の内部抵抗Ri
0.22オーム、トランスレジスタンスRm 〜10オー
ムであった。このVf の発生は入力信号が電圧信号に変
換されたことに相当し、付加抵抗R2 を調整することに
よって電力利得Gp を得ることができる。
【0039】図3の回路の場合、電力利得Gp は低周波
領域ではインダクタンス分を無視できて、 Gp =Rm 22 /R1 (Ri +R22 として近似できる。利得を大きくするためにはRm が大
きく、Ri が小さいことが重要である。尚、R1 =R2
=Ri =0.22オームとした時にGp =770が得ら
れている。以上の結果によって、本素子を電気信号の増
幅素子として容易に利用できることが示された。
【0040】実施例4(ボルテックスフロー素子の交流
特性) 一方、本ボルテックスフロー素子の交流特性を調べた。
図4はボルテックスフロー素子の交流特性の検証に用い
た測定系の回路図である。図に示す回路において、信号
入力線に直流2.8mAとこの電流に重ねて搬送波電流
(周波数10kHz,振幅0.2mA)を入力した。ボ
ルテックス走行領域には直流21.5mAと信号波電流
(周波数1kHz,振幅0.5mA)を入力した。この
とき素子両端部には最大振幅2mVの振幅変調電圧信号
が発生した。これにより、本ボルテックスフロー素子を
用いて変調・復調回路が容易に作製できることが示され
た。
【0041】実施例5(ボルテックスフロー素子の発振
特性) さらに、本ボルテックスフロー素子を用いて発振回路を
作製し、高周波信号の発生を行った。図5はボルテック
スフロー素子を用いた発振回路の概要を示す説明図であ
る。素子の入力信号線に直流電流Id =21.5mV
と、ボルテックス走行領域に直流電流Ic =1.5mA
とを入力し、素子両端部に発生した電圧の一部を正帰還
して入力信号線に入力した。このとき、素子中のLC共
振部にGHz級周波数の発振が観測され、本素子を用い
て容易に高周波信号の発振回路が作製できることがわか
った。
【0042】なおこの素子の最大応答周波数は数100
GHzから数THzに達すると予想されるため、今後素
子を最適化することによって、これ以外にも本素子を用
いたミリ波・サブミリ波帯の超高周波用受動素子や、ピ
コセコンド級の超高速スイッチング素子などが用途とし
て考えられる。
【0043】実施例6(ボルテックスフロー素子の製作
2) 図6は本発明のボルテックスフロー素子の別の実施例の
構成を示す説明図である。NdGaO3 単結晶基板(61)
の(110)面上に、液相エピタキシャル法によってa
軸配向したYBCO単結晶薄膜を5μm堆積させた。そ
の後、ポリッシングとエッチングによって膜厚(T)を
1μmとした。
【0044】この超電導単結晶薄膜上にフォトレジスト
を塗り、通常のフォトリソグラフィでフォトレジスト
を、図に示すような、ボルテックス走行領域(62)と対応
する形にパターニングした後、イオンミリングでエッチ
ングしてボルテックスフロー素子構造におけるボルテッ
クス走行領域(62)を作製した。形成された走行領域(62)
は長さ(L)が10μm,幅(W)が1μmであって。
この後、基板全体にフォトレジストを塗り、フォトリソ
グラフィでレジストを、ボルテックス駆動電流線(63)、
入力信号線(64)、駆動電流供給線(65)と対応する形状に
パターニングした。
【0045】この上からマグネトロンスパッタリングに
よってYBCO多結晶膜を0.5μm堆積させ、その後
フォトレジストを除去して図6に示すボルテックスフロ
ー素子を作製した。駆動電流線(63)は、ボルテックス走
行領域(62)の両端部に重なっており、入力信号線(64)は
ボルテックス走行領域(62)と平行に形成されいる。
【0046】ボルテックス走行領域(62)の臨界電流密度
は77K,ゼロ磁界下において2.4×1010A/m2
であった。ボルテックス駆動電流Id =22.3mAを
流しておき、入力信号線にIc =1mAを通電したとこ
ろ素子両端部にボルテックスフロー電圧Vf =4.5m
Vが発生した。この場合、素子のRi =0.20Ω、R
m 〜10Ωであった。
【0047】このように、気相法によって素子のボルテ
ックス駆動電流線及び入力信号線を後から付加した素子
においても、実施例1と同様な基本特性が確認できた。
【0048】実施例7(ボルテックスフロー素子の製作
3) 図7は本発明のボルテックスフロー素子の更に別の実施
例の構成を示す説明図である。NdGaO3 単結晶基板
(71)の(110)面上に、液相エピタキシャル法によっ
てa軸配向したYBCO単結晶薄膜を5μm堆積させ
た。その後、ポリッシングとエッチングによって膜厚
(T)を1μmとした。
【0049】このYBCO単結晶薄膜上にフォトレジス
トを塗り、通常のフォトリソグラフィでフォトレジスト
をパターニングし、この後イオンミリングでエッチング
してボルテックスフロー素子構造におけるボルテックス
走行領域(72)よりも長い単結晶体(80)を作製した。更に
この上にもう一度フォトレジストを塗り、フォトリソグ
ラフィでレジストをパターニングし、この上からマグネ
トロンスパタリングによってc軸配向YBCO多結晶膜
を0.5μm堆積させ、その後、フォトレジストを除去
した。これにより単結晶体(80)の全面に重なるようにボ
ルテックス駆動電流線(73)を形成し、ボルテックス走行
領域(72)に平行した位置に入力信号線(74)を形成し、こ
の入力信号線(74)の両端に配して駆動電流供給線(75)と
を形成した。
【0050】ここで集束イオンビーム法によって、ボル
テックス走行領域(72)の上に積層されたYBCO多結晶
膜に微細加工を施して除去し、図7に示すような小さな
ボルテックス走行領域(72)を有する素子を作製した。ボ
ルテックス走行領域(72)の長さ(L)は5μm、幅
(W)は1μmであった。
【0051】この微細加工の長さは実施例1及び6にお
けるLに相当するもので、Lは0.1μmから1μmの
範囲で変化させた素子を試作した。
【0052】図8は各素子のトランスレジスタンス(R
m )とボルテックス走行領域長さ(L)との関係を示す
線図である。図8に示す通り、Rm はLとほぼ比例関係
にあるが、L=0.1μmになると直線から大幅にずれ
て大きく低下し、Rm が小さくなり過ぎると電力利得が
得られないことが確認された。YBCO単結晶では、λ
ab=0.14μm,λc =0.7μmであるので、本発
明による素子を得るにはL≧λabである必要があること
が確認された。
【0053】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
基板上にab面が垂直となるように成膜された高温超電
導単結晶膜に微細加工を施すことによって、新規な原理
に基づくボルテックスフロー素子を作製することがで
き、これによって簡便、低コストな方法で、小型・高出
力・高い応答周波数を持つ超電導ボルテックスフロー素
子およびその周辺回路が供給できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボルテックスフロー素子の一実施例の
構成を示す説明図である。
【図2】液体窒素温度,ゼロ磁界下における各ボルテッ
クス走行領域の臨界電流密度のボルテックス走行領域の
幅(W)依存性を示す線図であり、縦軸は臨界電流密度
(1010A/m2 )、横軸はW/λc である。
【図3】ボルテックスフロー素子特性の評価を行う際の
測定系の概要を示す回路図である。
【図4】ボルテックスフロー素子の交流特性の検証に用
いた測定系の回路図である。
【図5】ボルテックスフロー素子を用いた発振回路の概
要を示す説明図である。
【図6】本発明のボルテックスフロー素子の別の実施例
の構成を示す説明図である。
【図7】本発明のボルテックスフロー素子の更に別の実
施例の構成を示す説明図である。
【図8】各素子のトランスレジスタンス(Rm )とボル
テックス走行領域長さ(L)との関係を示す線図であ
る。
【図9】電界効果を基本とする超電導増幅素子の構成を
示す説明図である。
【図10】キャリア注入タイプの素子の構造を示す説明
図である。
【図11】ボルテックスの運動を利用した素子の構造を
示す説明図である。
【図12】高温超電導体単結晶を用いたボルテックスフ
ロー素子の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
(11)(61)(71)…NdGaO3 単結晶(基板) (12)(62)(72)…ボルテックス走行領域(高温超電導体単
結晶小体) (13)(63)(73)…ボルテックス駆動電流線(電極) (14)(64)(74)…入力信号線(励磁手段) (15)(65)(75)…駆動電流供給線(励磁手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 敏彦 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温超電導体単結晶小体と、この高温超
    電導体単結晶小体のc軸方向の両端部に接合した一対の
    電極と、高温超電導体単結晶小体に対してc軸と直交す
    る方向に磁界を印加する励磁手段とを備え、前記一対の
    電極間に超電導状態で電流が流れている状態で前記励磁
    手段によって高温超電導体小体に磁界を印加した時に前
    記一対の電極間に電圧を発生させる高温超電導単結晶体
    型ボルテックスフロー素子において、 前記高温超電導体単結晶小体が基板表面上に設けられ、
    この高温超電導体単結晶小体のa軸とb軸とを含むab
    面がこの基板に対して直交して設けられたことを特徴と
    する高温超電導単結晶体型ボルテックスフロー素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の高温超電導単結晶体型
    ボルテックスフロー素子において、 前記励磁手段によって磁界が印加される高温超電導体単
    結晶小体のc軸に垂直な幅Wが、c軸に平行に磁界を印
    加した時の磁界侵入長λc の5倍以下とし、 前記励磁手段によって磁界が印加される高温超電導体単
    結晶小体のc軸方向の長さLが、ab面に平行に磁界を
    印加した時の磁界侵入長λab以上としたことを特徴とす
    る高温超電導単結晶体型ボルテックスフロー素子。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の高温超電導単結
    晶体型ボルテックスフロー素子において、 前記励磁手段は、前記高温超電導体単結晶小体が設けら
    れた同一基板表面上に設けられたことを特徴とする高温
    超電導単結晶体型ボルテックスフロー素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の高温超電
    導単結晶体型ボルテックスフロー素子において、 前記電極は、前記高温超電導体単結晶小体が設けられた
    同一基板表面上に設けられたことを特徴とする高温超電
    導単結晶体型ボルテックスフロー素子。
  5. 【請求項5】 高温超電導体単結晶小体と、この高温超
    電導体単結晶小体のc軸方向の両端部に接合した一対の
    電極と、高温超電導体単結晶小体に対してc軸と直交す
    る方向に磁界を印加する励磁手段とを備え、前記一対の
    電極間に超電導状態で電流が流れている状態で前記励磁
    手段によって高温超電導体単結晶小体に磁界を印加した
    時に前記一対の電極間に電圧を発生させる高温超電導単
    結晶体型ボルテックスフロー素子の作製方法において、 前記基板上に、高温超電導体単結晶膜をa軸とb軸とを
    含むab面が基板表面に対して直交するように成膜する
    ことを特徴とする高温超電導単結晶体型ボルテックスフ
    ロー素子の製作方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の高温超電導単結晶体型
    ボルテックスフロー素子の作製方法において、 前記高温超電導体単結晶膜を、少なくとも表面が予め定
    められた結晶配位の前記基板表面上に、液相エピタキシ
    ャル法又は気相エピタキシャル法によって、a軸とb軸
    とで構成される面が直交するように成膜して得ることを
    特徴とする高温超電導単結晶体型ボルテックスフロー素
    子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112204679A (zh) * 2018-05-25 2021-01-08 赫姆霍兹-森德拉姆德雷斯顿-罗森多夫研究中心 在稀土锰酸盐中重构涡旋密度的方法,以及一种非易失性阻抗开关及其用途

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