【発明の詳細な説明】
ELAM-1に結合するペプチド類及び化合物類
発明の背景
発明の分野
本発明は内皮白血球付着分子1(endothelial leukocyte adhesion moleculel
)(ELAM-1)に結合するペプチド及び化合物および細胞付着ブロッキング方法を提
供するものである。本発明は、生化学、薬学分野の用途を有し、特に、ヒト疾患
の治療に使用するためのELAM-1反応抑制剤を提供する。
関連技術の記載
炎症部分における血液白血球の蓄積は、血管裏層への付着による、これら白血
球の局部化に依存する。インターロイキン1(IL-1)及び腫瘍壊死因子(TNF)α及
びβ等のある一種のサイトカインは、細菌内毒素と同様に、培養したヒト内皮細
胞に作用して白血球付着を増加させることが示されてきた。参照として本明細書
に含められるベヴィラキュア等、1987年12月、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84
:9238〜9242には、血管裏層への白血球付着プロセスに関係する”内皮白血球付
着分子-1”(ELAM-1、LECAM-2及びE-セレクチンとしても知られる)と呼ばれる
、約115KD の分子量を有する、誘導内皮細胞表面蛋白の同定が報告されている。
更なる研究により、この分子は、レセプターおよび血管細胞に関連する構造およ
び機能を有する誘導レセプタファミリーの一員であることが示された(ジョンス
トン等、1984年5 月24日、Cell、56:1033〜1044参照)。
参照として本明細書に含められるヘッション等、1990、Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA、87: 9238〜9242には、ELAM-1 cDNA のクローニングおよびヌクレオチド
配列が報告されている。この配列は、ELAM-1が表皮成長因子様ドメイン、補体結
合蛋白中のこれらの物に関連する幾つかの繰り返しユニット、トランスメンブラ
ン(transmembrane)ドメイン、及び短い細胞質の末端が後に続くN-末端レクチン
ドメインを含有することを示す。ELAM-1が属する付着分子のファミリーは、”セ
レ
クチン”ファミリーとして知られており、GMP-140 蛋白(CD62、PADGEM、P-セレ
クチン、およびLECAM-3 としても知られる)及びLAM-1 蛋白(LECAM-1、MEL-14及
びL-セレクチンとしても知られる)を包含する。参照として本明細書に含められ
るゲング等、1990年2 月22日、Nature、343: 757〜760;スプリンガー等、1990
年8 月2 日、Nature、346:425 〜434 及びベヴィラキュア等、1991年10月18日、
Cell、67:233)。コリンズ等、1991年2 月5 日、Biol.Chem.、266(4): 2466〜247
3には、染色体1上に、DNA の約13kbにわたる14のエキソンを含有する、ELAM-1
遺伝子のヌクレオチド配列が報告されている。
ELAM-1のレクチンモチーフは、炭水化物リガンドの結合に関係していると信じ
られており、ELAM-1は、白血球付着の間に、シアリルールイス(sialyl-Lewis)X(
SLex)、細胞表面糖蛋白質に見られる末端構造及び好中球の糖脂質炭水化物基と
結合することが見出された(参照として本明細書に含められるフィリップス等、
1990年11月23日、Science、250:1130〜1135; パレク等、1991年Oxford Glyco Sy
stems Ltd.、Tech.Bull.11; ティーメヤーズ等、1991年2 月、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA、88: 1138〜1143、及びティレル等、1991年11月、Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA、88: 10372〜10376)。白血球レセプターCD62等の他のセレクチン
も、SLeXリガンドを認識する(参照として本明細書に含められるポレイ等、1991
年7 月、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88: 6224〜6228)。他の研究者は、ELAM
-1リガンドの発現を指示するcDNAの分離を報告した。このcDNAは、α(1,3)フコ
シルトランスフェラーゼ活性を有する46kD蛋白質をコードし、フコシレイト化し
た炭水化物構造がELAM-1リガンドの不可欠な成分であることを示唆する(ゴール
ズ等、199012月21日、Cell、63: 1349〜1356)。
ELAM-1に対するリガンドは、明らかに記憶T-細胞上に存在する。何故なら、シ
ミズ等、1991年2 月28日、Nature、349: 799〜802で、生体内(in vivo) で炎症
を起こした内皮への記憶T-細胞の最初の結合、並びに組織及び炎症部位中への記
憶T-細胞の優先的な移動において、ELAM-1が最も重要であろうと報告しているか
らである。ピッカーら、1991年2 月28日、Nature、349: 796〜799には、ELAM-1
が皮膚血管アトルッシン(addressin) 、皮膚に存在する記憶T-リンパ球用の組織
選択的内皮細胞付着分子の役目をする可能性があると報告している。ELAM-1が、
重要な生物学的機能を有することは確かであるが、ELAM-1の不適当な発現は、宿
主に非常に不利益となる。例えば、IL-1やサイトカイン(cytokine)、これも一時
的なELAM-1の発現を促進する、の不適当な生成またはそれらに対する不適当な応
答は、リューマチの関節炎(RA)、骨関節炎(OA)、乾癖、炎症性腸疾患、脳炎、糸
球体腎炎及び呼吸困難症候群等の多数の慢性の炎症の疾病にある役割を有する。
これらのおのおのを参照として本明細書に含められるベンダー及びリー、1989、
Ann.Rep.Med.Chem.、25:185〜193、及び米国特許第5,075,222号、特に1 〜3 欄
参照。
白血球のELAM-1に対する結合を抑制することにより、ELAM-1抑制剤は、ELAM-1
またはELAM-1の生成を促進するサイトカインTNF またはIL-1等のサイトカイン類
の不適当な生成や応答の影響を改良するのに用いることができる。それだけでな
く、ELAM-1は、腫瘍細胞の付着を促進し、癌の転移に関係するかもしれないこと
が報告されており(参照として本明細書に含められるリック及びベビラキュア、
1989年12月8 日、Science、246: 1303〜1306)、従って、ELAM-1アンタゴニスト
は、転移の予防を行い、癌の治療に有益かもしれない。
科学者達はELAM-1の増加の程度を、(1) IL-1- 誘導皮膚炎を含む皮膚の炎症;
アトピー性皮膚炎、乾癖、及びアレルギー性接触皮膚炎;ヒトの皮膚上に、DNCB
に引き起こされた猶予型過敏性の反応;及びエンドトキシン−誘導ヒヒ属の急性
皮膚炎;(2) 潰瘍のまたはクローンズ(Crohn's) 大腸炎の患者の炎症を起こした
結腸粘膜を含む腸炎;炎症性腸疾患;及び腸内グラフト−ウイルス−ホスト(gra
ft-versus-host)疾患;(3) RA及びOA患者由来の滑液組織を含む他の部分の炎症
;ラットエンドトキシン−誘導ブドウ膜炎、及び喘息型の炎症を起こした内皮(
霊長類抗原吸引);(4) 大腸菌が寄生するヒヒ属に誘発された伝染性のショック
、で示した。ELAM-1抑制剤は、炎症の有害な影響を抑制するのに用いることがで
きるため、このような化合物を様々な用途のための試験したことを種々の団体が
報告した。これらの化合物は(1) 急性及び結腸炎疾患の治療用にオーツカ(Otsuk
a);サイテル(Cytel)およびバイオゲン(Biogen)により試験中のELAM-1に対する
モノクローナル抗体;(2) 炎症疾患及び癌のための、グリコメド(Glycomed);サ
イテル(Cytel)及びオックスフォード・グリコ・システムズ(Oxford GlycoSystem
s
)/スミス・クライン・ビーチャム(Smith Kline Beecham)により試験中の ELAM-1
の炭水化物抑制剤; 及び(3) 炎症及び癌の治療のためのアイシス(Isis)により
試験中の、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、他の化合物; を包含する。
可溶性ELAM-1誘導体を含むELAM-1のクローニングされた遺伝子の入手可能性は
、この重要なレセプターのアゴニスト(agonists)及びアンタゴニスト(antagonis
ts)の調査を促進する。たとえELAM-1の天然のリガンドが炭水化物であろうとも
、組換型レセプター蛋白質の入手可能性は、種々のランダムまたはセミーランダ
ムなペプチドの多様生成系におけるレセプター−リガンド相互作用の研究を可能
にする。これらの系は、1991年10月16日に出願された米国特許出願第778,233号
の一部継続出願である1992年10月15日に出願された米国特許出願第963,321号、
に記載の”プラスミド上のペプチド”系、1991年7 月20日に出願された米国特許
出願第718,577号、およびクウィラ等、1990年8 月、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
、87:6378〜6382、に記載の”ファージ上のペプチド”系、1991年9 月18日に出
願された米国特許出願第762,522号の一部継続出願である1992年9 月16日に出願
された米国特許出願第946,239号、に記載の”コードされた合成ライブラリー”(
ESL)系、及び米国特許第5,143,854号;1990年12月13日に公開のPCT 公開第90/150
70号、;1990年12月6 日に出願された米国特許出願番号第624,120号、;フォダ
ー等、1991年2 月15日、Science、251: 767〜773;ダワー及びフォダー、1991年
、Ann.Rep.Med.Chem.、26:271〜180;及び1991年12月6 日に出願された米国特
許出願第805,727号、に記載の”非常に大きいスケールの固定化ポリマー合成”
系を含む; 前述の特許出願及び刊行物のおのおのは参照として本明細書に含めら
れる。
このレセプターに媒介された重要な生物学的活性の研究及び疾患の治療のいづ
れのためにも、ELAM-1と高い親和力で結合するか、またはそうでなければ相互作
用する非炭水化物の必要性がある。
発明の開示
一つの実施態様において、本発明は、ELAM-1と結合するペプチド類およびペプ
チド模倣物を提供する。これらの化合物はアミノ酸配列WXXLWXXM(配列番号1)
で規定されたコア構造を含み、但し、おのおののアミノ酸は通例の1 文字省略形
で表され、かつX はいずれかのアミノ酸である。本発明のある化合物は、コンピ
ューター・モデリングによれば、コア中のW 、L 、W 及びM 残基の側鎖により規
定される疎水性面およびX 残基により規定される、より親水性面を有する両親媒
性らせん形であると推定される。
本発明のペプチド類は典型的には、9 又はそれ以上( 例えば12、15〜20)のア
ミノ酸の長さであり、上記の8 個のアミノ酸配列を有するが、しかし、M 残基が
ノルロイシン(Nle)であるペプチド類も含有する。本発明の好ましいペプチド類
は、9 〜12のアミノ酸残基の長さで、配列X1X2X3WX4X5LWX6X7X8X9 を有するペプ
チドであり、但し、おのおのの残基は独立して以下のように選択することができ
る:XはH、EまたはDである;X2はI、MまたはNleである;X3はTまたは
Sである;X4はD、EまたはLである:X5はQまたはEである:X6はNまたはD
である;X7はL、M、VまたはIである;X8はMまたはNleである;及びX9は
N、SまたはQである。本発明の特に好ましいペプチドは、DITWDQLWDLMK等の、
配列ITEDQLWDLMK を含有するペプチド類である。本発明のペプチド模倣物は、本
発明の好ましいペプチドと似かよった構造と側鎖基とを有する。本発明は、更に
、関連するペプチド、ペプチド誘導体及びペプチド模倣物も提供する。
本発明は、ELAM-1に対する白血球上のリガンドを含む、ELAM-1リガンドの結合
抑制方法、及び、本発明の化合物を利用するELAM-1の不適当な剌激に起因する疾
患の徴候及び疾患の治療方法も提供する。本発明は更に、1つ又それ以上の本発
明の化合物及び生理学的に許容し得る担体を含有する医薬組成物を提供する。
図面の簡単な説明
図1は、種々の化合物の存在下の、細胞付着検定の結果を示す;検定は実施例
1に説明する。
図2は、種々の濃度の本発明のELAM-1封鎖ペプチドの存在下の、細胞付着検定
の結果を示す;検定は実施例1に説明する。
図3は、AおよびB部分のプラスミド検定型上の2種のペプチドを示す。A部
分において、固定化したELAM-1レセプターに対するペプチドの特異性が、LacIペ
プチド融合蛋白質に順番に結合する抗-LacI 抗体に接合したアルカリフォスファ
ターゼ(AP)により生成されるシグナルの量に関係する中で、結合検定が行われる
。B 部分において、溶液中の遊離ペプチドのIC50を競争検定で測定する。
図4は、図3、B 部分に示した検定で試験した本発明の種々のペプチド類のIC50
の値(nM)を示す。D-アミノ酸は小さい"D-"を前に付ける。
図5は、本発明の好ましいペプチド類DITWDQLWDLMKの存在下での細胞付着検定
の結果を示す。
発明の詳細な説明
I.定義
本発明を理解し易くするために、次の語につき以下に定義する。
ここで使用される”薬学的に許容し得る塩”なる語は、薬剤工業に通常使用さ
れる非毒性アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウム塩を表し、ナトリ
ウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウ
ム及びプロタミン亜鉛塩を含み、これらは当該分野においてよく知られた方法に
より製造される。この語は、本発明の化合物と適当な有機酸または無機酸との反
応により一般に製造される非毒性酸付加塩も含む。典型的な塩は、塩酸塩、臭化
水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、
ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン
酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、及びナプシレート等
を含む。
この中で使用される”低級アルキル”なる語は、メチル、エチル、n−プロピ
ル、イソプロピル、n-ブチル、tert- ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキ
シル、1,2-ジメチルブチル等の、炭素数1〜6の直鎖及び分技鎖アルキル基を表
す。通常低級アルキル基はメチルまたはエチルである。
ここで使用される”低級アルコキシ”なる語は、メトキシ、エトキシ、n-プロ
ポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert- ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペン
トキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシ等の、炭素数1〜6の直鎖及び分
枝鎖アルコキシ基を表す。通常、低級アルコキシ基はメトキシまたはエトキシで
ある。
ここで使用される”低級エステル誘導体”なる語は、メチル、エチル、n−プ
ロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-
ヘキシル、1,2-ジメチルブチルエステル誘導体等の炭素数1〜6の直鎖及び分枝
鎖エステル誘導体を表す。通常、低級エステル誘導体はメチルエステル誘導体ま
たはエチルエステル誘導体である。
ペプチド中のアミノ酸誘導体は以下のように略記する: フェニルアラニンはPh
eまたはF;ロイシンはLeu またはL;イソロイシンはIle またはI;メチオニンはMet
またはM;ノルロイシンは Nle; バリンは ValまたはV;セリンは SerまたはS;プロ
リンは PreまたはP;スレオニンは ThrまたはT;アラニンは AlaまたはA;チロシン
は TyrまたはY;ヒスチジンはHis またはH;グルタミンは GlnまたはQ;アスパラギ
ンは AsnまたはN;リジンは LysまたはK;アスパラギン酸は AspまたはD;グルタミ
ン酸は GluまたはE;システインは Cysまたは C; トリプトファンは Trpまたは W
;アルギニンは Argまたは R; グリシンは Glyまたは G; 及びX はいずれかのア
ミノ酸。
II.本発明の一般的な方法および化合物
本発明は、内皮白血球付着分子 (endothelial leukocyte adhesion moleculel
)(ELAM-1)と結合する化合物を提供する。これらの化合物は、ランダムペプチド
多様性生成系を用いて見いだされた”先導(lead)”ペプチド化合物および”誘導
(derivative)”化合物を含有し、”誘導”化合物は一つまたはそれ以上の先導化
合物と同じまたは似かよった分子構造又は形状を有するように作られた化合物で
あり、しかし、加水分解または蛋白質分解を受けやすいかに関して及び/ または
ELAM-1に対する増加した親和力のような他の生物学的特性に関して、先導化合物
とは異なる化合物である。
先導化合物の発見に用いたランダムペプチド多様性生成系は、上述した”プラ
スミド上のペプチド”及び”ファージ上のペプチド”系の両方を含む。ランダム
ペプチドは、一般的に、長さに12またはそれ以上のアミノ酸残基となるようにデ
ザインした。ランダムペプチドをコードするオリゴヌクレオチド類のコレクショ
ンを製造するために、コドン モチーフ(NNK)x 、但し、N はヌクレオチドA 、
C 、G 、またはT(等モル濃度;方法に依存、他のヌクレオチドを使用し得る)で
あり、K はG またはT(等モル濃度) 、及びX は12である、を用いて、NNK モチー
フ:12アミノ酸のそれぞれに適した1つ、5 アミノ酸のそれぞれに適した2 つ、3
アミノ酸のそれぞれに適した3 つ、及び3 つのストップコドンのただ一つ、から
得られる32の可能なコドンのうちのいずれか一つを特定した。そして、このNNK
モチーフは全てのアミノ酸をコードし、ただ一つのストップコドンをコードし、
そしてコドンの歪み(codon bias)を減じる。
用いた系において、ランダムペプチドは、ファージ粒子の表面上にファージfd
誘導体のpIII又はpVIII被覆蛋白質を含有する融合蛋白質(ファージ上のペプチ
ド)の一部として、またはプラスミドに結合したLacIの融合蛋白質(プラスミド
上のペプチド)として存在する。ペプチドをコードするDNA を含有するファージ
またはプラスミドは、固定化ELAM-1を用いた親和力濃縮プロセスにより固定され
、かつ単離された。親和力濃縮プロセスは、ときに”パニング(panning)”と呼
ばれることがあり、固定化ELAM-1を用いてのファージまたはプラスミドのインキ
ュベート、ELAM-1に結合したファージまたはプラスミドの採集(伴うDNA といっ
しょに)、及びさらなるファージまたはプラスミドの生成(伴うLacI- ペプチド
融合蛋白質といっしょに)の複数回の繰り返しを伴う。
親和力濃縮を数回繰り返した後、ファージまたはプラスミドおよび伴うペプチ
ドを、ELISA により試験してペプチドが特異的にELAM-1に結合しているかどうか
判定した。この検定は、結合していないファージ(またはプラスミド)を除去し
た後に、図3aに示したように、ウェルを、ウサギ抗ファージ抗体で定型的に処
理し、次いで、アルカリフォスファターゼ(AP)- 結合したヤギ抗ウサギ抗体また
は抗LacI-AP で処理し、次いでそれぞれのウェルの中のアルカリフォスファター
ゼの量を標準的方法により決定した以外は、親和力濃縮プロセスに用いた手法と
同様に行った。
試験ウェルとコントロールウェル(レセプター無し)を比較することにより、
ペプチドがELAM-1に特異的に結合するかどうか決定できる。ELAM-1に特異的に結
合するとわかったペプチドは、次いで遊離ペプチド(ファージ無し)として合成
され、HL60細胞付着競争検定で試験した。競争検定は、ラベルしたHL60細胞をペ
プチド(コントロールウェルは典型的には少なくとも2 種の型である;(1)固定化
していないELAM-1、及び(2)ペプチド無し; 実施例参照)に加えて添加した以外
は、ELISA と同様に行った。ラベルしたHL60細胞ELAM-1の結合を妨げるペプチド
類が、本発明の好ましい化合物である。
固定化したELAM-1は親和力濃縮に用いられ、かつELISA 操作は、完全な細胞外
領域( アミノ酸1 〜554)を含む一部を切断した(truncated) 形態として組換え宿
主細胞中に生成された。ELAM-1をコードするDNA は、市販されている(R&Dデザイ
ナージーンズ(Designer Genes)、商品名BBG57)。この一部を切断した(truncated
)ELAM-1 分子は種々の異なる形態及び宿主細胞中に生成させることができる。EL
AM-1の有用な形態の一つは、通常の方法を用いて宿主細胞を形質転換したバクロ
ウイルス中に可溶蛋白質として蛋白質を発現させることにより作られ;もう一つ
の有用な形態は、蛋白質分泌用及び糖リン脂質膜アンカー付着用のシグナルペプ
チドを用いて作られる。アンカー付着のこの形態は、"PIG−テーリング(tailing
)"と呼ばれる; 参照として本明細書に含められるカラス及びウェデル、1989年3
月3 日、Science、243: 1196 〜1198、およびリン等、1990年8 月10日、Science
、249: 677〜679。このPIG-テーリング系を用いて、フォスフォリパーゼC を用
いて、ELAM-1を発現する細胞(例えば、細胞選別機で選択した高レベルでELAM-1
発現する形質転換したCHO 細胞)の表面からレセプターを切り離すことができる
。切り離したELAM-1は、膜付着のシグナルから、"HPAP"と呼ばれるアミノ酸のカ
ルボキシ末端配列を依然として含有しており、更に精製することなく固定化する
ことができる。
組換型レセプター蛋白質は、マイクロタイタープレートのウェルの抗HPAPテイ
ル抗体で被覆し、PBS 中の牛血清アルブミン(BSA)を用いてブロッキングし、及
び次いで、前記抗体に組換型の一部を切断したELAM-1と結合することにより固定
化した。この操作を用いて、種々のELAM-1濃度で固定化反応を行い、与えられた
調製物に最適な量を決定すべきである。組換型蛋白質の異なる調製物は、しばし
ば異なる量の所望の蛋白質を含有するからである。加えて、固定化する抗体が(
ELAM-1又はその他のブロッキング剤で)親和力濃縮プロセスの間に完全にブロッ
クされるのを確実にするべきである。さもなければ、ブロックされなかった抗体
は親和力濃縮処置の間に望ましくないファージと結合できてしまう。ELAM-1を固
定化した後に残った未結合部位をブロックすることで、この問題を回避するか、
または、固定化する抗体と結合するペプチドを用いることができるか、または、
固定化抗体の助けなしにレセプターを直接簡単に固定化することができる。1992
年9 月18日に出願した米国特許出願第947,339号、参照として本明細書に含めら
れる。
多価リガンドーレセプター相互作用を許容するランダム・ペプチド生成系を用
いた場合、固定化したレセプターと結合し得るリガンドの親和力の決定において
、固定化したレセプターの濃度が重要な要因であることを認知しなければならな
い。多価結合は、低いレセプターの濃度(即ち、各抗レセプター抗体−被覆ウェ
ルに0.5 〜1 μg のレセプターで処理した)の場合に比べて、より高いレセプタ
ーの濃度(即ち、抗レセプター抗体−被覆ウェルは0.25 〜0.5 μg のレセプタ
ーで処理した)において、より生じ易い。多価結合が生じる場合、より高い濃度
の固定化レセプターを用いずに先導化合物を同定し、かつより低いレセプター濃
度を用いずに上記先導化合物より高いレセプターに対する親和力を有する誘導体
化合物を単離すると、比較的低い親和性を有するリガンドが単離され易い。
ファージ系上のpIIIに基づいたペプチド類を使用し、12マーライブラリーをス
クリーニングしてELAM-1に結合する先導ペプチドを提供するシグナルファージを
見出した。このファージDNA をシークエンスして、ファージの表面に並んだペプ
チドの配列を決定した。このペプチドはアミノ酸配列HITWDQLWNVMNを有していた
。このペプチドは固定化したELAM-1に対する HL60 細胞の付着をブロックするこ
とができる(実施例1 参照)。
このペプチド配列は、このペプチドの高頻度の誘導体を含有するようにデザイ
ンされた他のペプチドライブラリーの構築の基礎として提供できる。このような
ライブラリーは、先導ペプチドとわずか数残基のみが異なるペプチドの生成に好
都合であるように合成することができる。このアプローチは、合成において4 つ
のヌクレオチドトリフォスフェートのそれぞれの純粋調製物を用いるよりは、先
導ペプチドをコードする配列を生成するように4 つのヌクレオチドトリフォスフ
ェートの混合物(55%の”正確な”ヌクレオチド及び15% の他の3 種のヌクレオチ
ドがこの目的に好ましい混合物である)を使用することを除き、先導ペプチドを
コードする配列を有するオリゴヌクレオチドの合成を包含する。
種々の突然変異誘発戦略は、70:10:10:10 および55:15:15:15 の頻度でのオリ
ジナルのコード配列突然変異誘発を含む”主題となっている突然変異誘発”;HI
TWDQXXXXXX、XXTWDQLWXXXX、XXXXDQLWNVXX、及びXXXXXXLWNVMN等の固定された移
動(sliding)ライブラリー; 標準的及び変形した(200 μM のELAM-1結合ペプチ
ドQITWAQLWNMMK、2時間、次いでグリシン-HCI)の溶出条件を用いてスクリーニ
ングされた、延伸した/ 突然変異誘発したライブラリー、XXXXHITWDQLWNVMNXXXX
(70:10:10:10);及び、プラスミドシステム上のペプチド系中に生成し、標準的条
件及び低レセプター濃度条件下で試験したXXXWXXLWXXMXおよびXXXXWXXLWXXMXXXX
XX等の固定アミノ酸を有するライブラリーを作成することにより先導ペプチドの
誘導に用いられた。これらのライブラリーのスクリーニングにより、以下の表1
〜3 に示したELAM-1結合ペプチド類を得た。
これらのペプチド類のアミノ酸分布試験より、以下の表2 及び表3 に示したペ
プチド類を記すことができる。これらの表において、保在領域中の各位置で最も
頻繁に観察された残基を、残基がその位置で観察されたペプチド類の数と共に、
最上列に示す。各位置で観察された他の残基は、示した位置においてこの残基を
有するペプチド類の数と共に、最も頻繁に観察された残基の下に示す。
図4 は、図3 、B 部分に示したように行った検定で測定した、フリーペプチド
類として合成的に生成した、本発明の種々のペプチド類のIC50値を示す。全ての
検定に使用したLac-I ペプチド融合蛋白質は、DQITWAQLWNMMKGGTVEであった。図
に示した通り、幾つかのペプチドは、低い(1〜10)ナノ分子範囲のIC50値を有す
る。保在したM がNle で置換されるノルロイシン誘導体は、これらの誘導体が、
この位置でM を含有する本発明の他のペプチドよりも、ある環境条件下でより安
定であるかもしれないので、特に注目に値する。
先導ペプチド配列は、本発明のELAM-1結合細胞付着ブロッキング化合物の最小
サイズを決定する手段も提供する。本発明の先導ペプチドの幾つかの削除アナロ
グを図4 に示す;好ましいペプチドの一つはITWDQLWDLMK である。米国特許第5,
143,845号及び前記関連刊行物に記載の”非常に大きいスケールの固定化ポリマ
ー合成”系を使用すると、ELAM-1結合活性を有するペプチドの最小サイズを決定
できるだけでなく、先導化合物とは1 、2 またはそれ以上の残基が異なる、また
は含有する非天然アミノ酸の点で異なるペプチド類のグループを形成する全ての
ペプチド類を製造することができる。このペプチド類及びペプチド模倣物のコレ
クションは、ELAM-1に結合する能力をスクリーニングされることができる。この
固定化ポリマー合成系または上記で述べたELS法等の、他のペプチド合成方法は
、本発明のペプチド化合物の、全ての切断、削除及び全ての切断と削除の組み合
わせアナロクの合成に使用することもできる。
上記したように、本発明のペプチド類は、標準固相技術を用いることにより、
当該分野に知られる古典的方法で製造することもできた。標準的方法は独占的固
相合成、部分的固相合成、断片濃縮、古典的溶液合成、組換えDNA 技術を含む。
メリーフィールド、1963年、I.Am.Chem.Soc.、85: 2149参照、参照として本
明細書に含められる。固相上で、この合成は、典型的に、α- アミノ保護した樹
脂を用いるペプチドのC-ターミナル末端から始められる。好ましい出発物質は、
例えば、必要とするα- アミノ酸をクロロメチル化樹脂、ヒドロキシメチル樹脂
、又はベンツヒドリルアミン樹脂に付加することにより製造される。このような
クロロメチル化樹脂の一つは、商品名BIO-BEADS SX-1バイオラボラトリーズ(Bio
RadLaboratories)の下リッチモンド、CAより販売されており、そして、ヒドロキ
シ
メチル樹脂の製造方法は、ボドンスキー等、1966、Chem.Ind.(ロンドン)、38
1597 に記載されている。ベンツヒドリルアミン(BHA) 樹脂は、ピータ及びマー
シャル、1970、Chem.Commn.650に記載され、ベックマン・インストラメンツ・イ
ンク(Beckman Instruments、Inc.)、パロ・アルト(Palo Alto)、CAより、塩酸塩
として販売されている。
このように、本発明の化合物は、例えば、ギジン、1973、Helv.Chim.Acta 5
6: 1467 に記載の方法に従い、重炭酸セシウム触媒を用いてα- アミノ保護した
アミノ酸をクロロメチル化樹脂にカップリングすることにより製造することがで
きる。最初のカップリングの後に、有機溶媒中、室温で、α- アミノ保護基を三
フッ化酢酸(TFA)または塩酸(HCl)溶液を含む種々の試薬の選択により除去する。
α- アミノ保護基は、ペプチド類の段階的合成の分野で有用であることが知ら
れている。アシル型保護基(例えば、ホルミル、トリフルオロアセチル、アセチ
ル)、芳香属ウレタン型保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、及
び置換されたCbz )、脂肪族ウレタン型保護基(例えばt-ブチルオキシカルボニ
ル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル)
、及びアルキル型保護基(例えば、ベンジル、トリフェニルメチル)が含まれる
。Boc が好ましい保護基である。側鎖保護基はカップリングの間そのまま残り、
アミノ−末端保護基の脱保護の間またはカップリングの間に脱離されない。側鎖
保護基は、最終的なペプチドの合成の完結後に、目的のペプチドを変化させない
反応条件下で、除去できなければならない。
Tyr のための側鎖保護基は、テトラヒドロピラニル、tert- ブチル、トリチル
、ベンジル、Cbz 、Z-Br-Cbz、及び2,5-ジクロロベンジルを含む。Asp のための
側鎖保護基は、ベンジル、2,6-ジクロロベンジル、メチル、エチル及びシクロヘ
キシルを含む。Thr とSer のための側鎖保護基は、アセチル、ベンゾイル、トリ
チル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、2,6-ジクロロベンジルおよび Cbzを含
む。Thr とSer のための側鎖保護基はベンジルである。Arg のための側鎖保護基
は、ニトロ、トシル(Tos)、Cbz 、アダマンチルオキシカルボニル メシトイル
スルホニル(Mts)またはBoc を含む。Lys のための側鎖保護基は、Cbz 、2-クロ
ロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Cbz)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2
-Br-
Cbz)、Tos またはBoc を含む。
α- アミノ保護基の除去後、残存する保護したアミノ酸を所望の順序で段階的
に結合する。それぞれの保護したアミノ酸は、溶液中の、例えば、メチレンクロ
ライド(CH2CI2)、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物中のジシクロロヘキシルカ
ルボジイミド(DCC)のような、適切なカルボキシル基活性化剤を用いて、一般に3
倍過剰で反応させる。
所望のアミノ酸配列が完成した後、ペプチド類を樹脂から開裂させるだけでな
く、全ての残っている側鎖保護基を開裂させるフッ化水素(HF)のような試薬を用
いた処理により、所望のペプチドは樹脂支持体より脱離する。クロロメチル化樹
脂を用いる場合、フッ化水素処理は遊離のペプチド酸を生成する。ベンツヒドリ
ルアミン樹脂を用いる場合、フッ化水素処理は直接遊離のペプチドアミドを生成
する。代わりにクロロメチル化樹脂を用いる場合、側鎖保護したペプチドは、ペ
プチド樹脂とのアンモニア処理により脱離させて所望の側鎖保護したアミドを得
るか、またはアルカリアミン処理により脱離させて所望の側鎖保護したアルキル
アミドまたはジアルキルアミドを得ることができる。側鎖保護は、次いで、フッ
化水素処理による通常の方法で除去して遊離のアミド、アルカリアミドまたはジ
アルキルアミドを得る。
本発明のエステルの製造では、ペプチド酸の製造に使用された樹脂が用いられ
、かつ、側鎖保護したペプチドは塩基及び適当なアルコール、例えばメタノール
、を用いて分離される。側鎖保護基は、次いで、フッ化水素処理による通常の方
法で除去して所望のエステルを得る。これらの固相ペプチド合成方法は、当該分
野においてよく知られており、更に、スチュワート、固相ペプチド合成(Solid P
hase Peptide Syntheses)(フリーマン アンド コ(Freeman and Co.)、サンフ
ランシスコ、1969) に記載されている。
これらの方法は、ペプチド類の合成に使用することもでき、その中で、20の天
然に存在する遺伝的にコードしたアミノ酸以外のアミノ酸は、本発明のいずれか
の化合物の1 、2 またはそれ以上の位置で置換される。例えば、トリプトファン
を、合成促進する、ナフチルアラニンで置換することができる。本発明のペプチ
ド類に置換しうる他の合成アミノ酸類は、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒド
ロキシフェニルアラニル、L-α- ヒドロキシリシル及びD-α- メチルアラニル等
のα−アミノ酸、L-α−メチルアラニル、βアミノ酸及びイソクイノリルを含む
。Dアミノ酸および非天然に存在する合成アミノ酸も、本発明のペプチド類に包
含することもできる。
本発明のペプチド化合物のアミノ及び/ またはカルボキシ末端を修飾すること
により、本発明の他の化合物を生成させることもできる。アミノ末端修飾は、メ
チル化(例えば、-NHCH3または-NH(CH3)2)、アセチル化、カルボベンゾイル基の
付加、またはRCOO−(但し、R はナフチル、アクリジニル、ステロイジルおよび
同様の基から成る群より選ばれる)で表されるカルボキシ化官能基を含有するブ
ロッキング基を用いるアミノ末端のブロッキングを含む。カルボキシ末端修飾は
、カルボキシアミド基を用いる遊離酸の置換または構造圧迫を導入することによ
るカルボキシ末端のサイクリックラクタムの形成を含む。本発明のペプチド類は
、環化するか、またはペプチドの末端でデスアミノ(desamino)またはデスカルボ
キシ(descarboxyl)残基を導入し、それにより、末端アミノ基またはカルボキシ
ル基をなくし、プロテアーゼ感受性を減少させるか、またはペプチドの立体配座
を制限することもできる。本発明の化合物のC-末端官能基は、アミノ、アミド低
級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、水酸基及び、カルボ
キシ、およびこれらの低級エステル誘導体、およびこれらの薬学的に許容し得る
塩を含む。
20の遺伝的にコードしたアミノ酸の天然に存在する側鎖(またはL またはD ア
ミノ酸のどれか)を他の側鎖、例えば、アルキル、低級アルキル、環状4-、5-、
6-、7-員のアルキル、アミド、低級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級
アルコキシ、水酸基、カルボキシ、およびこれらの低級エステル誘導体、および
4-、5-、6-、7-員の複素環式化合物で置換することができる。特に、プロリン残
基の環数を5から4、6、または7員に変えたプロリンアナログを用いることが
できる。
環状基は飽和または不飽和であることができ、不飽和の場合、芳香族または非
芳香族を使用できる。複素環式基は、好ましくは1またはそれ以上の窒素、酸素
、及び/または硫黄のヘテロ原子を含有する。例えば、これらの基はフラザニル
、
フリル、イミダゾリジニル、イミダゾイル、イミダゾリニル、イソチアゾイル、
イソキサゾリル、モルフォリニル(例えば、モルフォリノ)、オキサゾリル、ピ
ペラジニル(例えば、1-ピペラジニル)、ピペリジル(例えば、1-ピペリジル、
ピペリジノ)、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾ
リ、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル(例えば、1-ピロリ
ジニル)、ピロリニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チ
オモルフォリニル(例えば、チオモルフォリノ)及びチアゾリルを含む。これら
の複素環式基は、置換または非置換であることができる。基が置換される場合、
置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、酸素または置換または非置換フェ
ニルであることができる。
ペプチド類は、フォスフォリル化により容易に修飾することもでき、かつ本発
明の化合物のペプチド誘導体の他の製造方法は、参照として本明細書に含められ
るフルビ等、1990年7 月1 日、Biochem I.268(2):249〜262 に記載されている。
そこで、本発明のペプチド化合物は、同様の生物学的活性を有する非ペプチド化
合物の構造モデルを提供することもできる。先導ペプチド化合物と同じまたは似
たような所望の生物学的活性を有するが、先導ペプチド化合物よりも加水分解ま
たは蛋白質分解に対する感受性、安定性および溶解性に関して、更に好ましい活
性を有する化合物を生成するために、種々の技術を利用できることを当業者は気
づく。参照として本明細書に含められるモルガン及びガイナー、1989、Ann.Rep
.Med.Chem.24: 243〜252 参照。これらの技術は、フォスフォネート、アミデ
ート、カーバメート、スルホンアミド、第 2アミンおよびN-メチルアミノ酸から
成る骨格を有するペプチド骨格の置換も含む。
本発明の化合物は、本発明のペプチド化合物に結合するであろうCD62のような
セレクチンファミリーの他のレセプターと同様に、ELAM-1の生物学的役割を理解
するためのユニークな道具として生体外(in vitro)において有用である。本発明
の化合物は、細胞付着プロセスに影響し、かつ影響されることが考えられる多数
の要因の評価に使用することもできる。本発明の化合物は開発を促進する重要な
SAR 情報を提供するので、ELAM-1に結合する他の化合物の開発に有用でもある。
本発明の化合物を、ヒトを含む温血動物に与えて、生体内でELAM-1を発現する
細胞への白血球の付着をブロックすることもできる。このように、本発明は、生
体内でELAM-1に白血球が付着するのをブロックするのに十分な量の本発明の化合
物の投与を含む、ELAM-1が関係した病気の治療上の処置方法を含む。例えば、本
発明のペプチド類および化合物は、ELAM-1又はセレクチンファミリーの他のメン
バーの発現を促進するサイトカインの過剰生産に関係する徴候の治療のために投
与することができる。したがって、本発明は、有効成分として、薬学的担体また
は希釈剤と共同して、少なくとも一つの本発明のペプチドまたは他の化合物を含
有する医薬組成物を含む。本発明の化合物は、経口、非経口(筋肉内注射、腹膜
注射、静脈注射(IV)または、皮下注射)、経皮膚、鼻、膣、直腸または舌下ルー
トで投与することができ、それぞれの投与ルートに適した投薬の形に配合するこ
とができる。
経口投与の固形投与形態はカプセル、錠剤、丸薬、粉末及び顆粒を含む。この
ような固形投与形態において、有効成分は、シュクロース、ラクトースまたはス
ターチ等の少なくとも一つの不活性な薬学的に許容しうる担体と混合される。こ
のような投与形態は、常套手段として、不活性希釈剤以外の追加物質、例えば、
ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤を含むこともできる。カプセル、錠剤、丸
薬の場合、投与形態は、緩衝剤を含む場合もある。錠剤及び丸薬は、さらに腸(e
nteric)コーティングを有することもできる。
経口投与の液体投与形態は、水のような当分野に通常使用される万能薬(elix
irs)含有不活性希釈剤を含有する、薬学的に許容しうるエマルジョン、溶液、
懸濁液、シロップを含む。これらの不活性希釈剤に加えて、組成物は、湿潤剤、
乳化剤及び懸濁剤等の補助剤、甘味剤、風味剤及び芳香剤を含むこともできる。
非経口投与用の本発明による製剤は無菌水溶液または非水溶液、懸濁液または
エマルジョンを含む。非水溶液または賦形剤の例は、プロピレングリコール、ポ
リエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油等の植物油、ゼラチン、およ
びエチルオレイン酸等の注射可能な有機エステルである。このような投与形態は
、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤等の補助剤を含むこともある。これらは、
例えば、細菌捕捉膜を通じたろ過、組成物への滅菌剤の混合、組成物の照射、ま
た
は組成物の加熱により滅菌してもよい。これらは、使用の直前に、無菌水又は幾
つかの他の無菌の注射可能な媒質を用いて製造することもできる。
本発明の経直腸または経膣投与用の組成物は、有効成分に加えて、ココアバタ
ーまたは座薬ワックス等の賦形剤を含有してもよい座薬が好ましい。経鼻または
経舌下投与用の組成物も、当分野に良く知られた標準的賦形剤を用いて調製する
。
本発明の組成物における有効成分の投与量は、変化させることができる; しか
し、好ましい調剤形態が得られる程度の有効成分の量が必要である。選ばれる投
与量は、所望の治療効果、投与のルートおよび所望の治療の期間に依存する。一
般に、1日に0.001〜10mg/Kg 体重の間の投与量を哺乳動物に投薬して、ELAM-1
ブロッキング活性の効果が得えらる。
上記の記述から正しく認識できるように、本発明は広範囲の用途を有する。し
たがって、以下の実施例は制限としてではなく説明として提供する。
実施例1
HL60細胞付着検定
この実施例は、固定化したELAM-1に付着するHL60細胞(SleX で表され、ATCCよ
り入手可能の前骨髄球白血病60細胞クローン )の活性を、本発明のELAM-1ブロッ
キングペプチドを含む種々の化合物の存在下で試験した、細胞付着検定の結果に
ついて述べる。
検定にはトリチエート化チミジンでラベルしたHL60細胞が必要である。細胞を
ラベルするために、約1000万のHL60細胞を遠心分離(2500RPM、3 分間)により集
菌し、2 μCi/mL のトリチエート化チミジン(Amersham)を含有する15mLのDMEM/F
12プラス5%牛胎児血清に再懸濁させた。得られた細胞は、次いでらT75フラスコ
に入れ、37℃で24時間培養した。次いで、細胞を遠心分離により集菌し、RPMI/H
EPES/0.1%FCSで 2回洗浄し、約100 〜200 万cell/ml の濃度で同様の溶液に再懸
濁させた。約100 μL のこの細胞試料は、96- ウェルマイクロタイター皿のウェ
ルごとに、検定に使用した。
マイクロタイター皿のウェルは、初めに、抗レセプター固定化抗体、抗HPAP-
テイル抗体で、1つのウェルにつき約2.5 μg の抗体を用いて被覆した。それか
らウェルは、PBS 中の1%のBSA から成る溶液で処理し、次いで、可溶性ELAM-1産
物(フォスフォリパーゼC を用いてPIG-テイルドELAM-1発現細胞を処理し、得ら
れる溶液を採取することにより調製し、RPMI,HEPES,0.1%BSAと0.1%アジ化ナトリ
ウムを含む溶液中に希釈した、ELAM-1産物)の1:10希釈物を用いて処理した(1:
100及び1:500希釈及び固定化も行い、試験した)。全ての化合物検体を、ラベル
したHL60細胞の添加の前に添加し、4 ℃で1 時間培養させた。
試験化合物培養期間の後、100 μL のラベルしたHL60細胞をそれぞれのウェル
に添加し、マイクロタイタープレートを4 ℃で30分間培養した。次いで、ウェル
をマルチチャンネル ピペッターを用いてRPMI 1640 プラスO.l%FCS で三回洗浄
した。ウェルを洗浄した後、100 μL の1NNaOHをそれぞれのウェルに添加し、マ
イクロタイタープレートを室温で10分間培養した。この培養の後、アリコートを
それぞれのウェルより除去し、シンチレーションバイアルに入れた; シンチレー
ション流体をそれぞれのバイアルに添加した;そしてLS測定によりそれぞれのア
リコートの放射能を測量した。
試験化合物は以下の通りである:(1)"BBA-2" はP&D システムズ (Systems)より
購入したELAM-1ブロッキング抗体であり、約200nM の濃度で使用した; (2) ”ア
ンチ(anti-)176”はネガティブコントロールとして約200 nMの濃度で使用したEL
AM-1に結合しない抗体である; (3)”AFFY4”は、DMSOに溶解し、かつPBS/DMSOで
最終濃度5%DMSOに希釈した後200 μM の濃度で使用した、遊離アミノおよび遊離
カルボキシ末端を有する、ペプチドHITWDQLWNVMNである; (4)"AFFY1"は、ネガテ
ィブコントロールとして約200 μM の濃度で使用した非関連ペプチドである; そ
して、(5)"SLeX"誘導体、約200 μM の濃度のモノフコシル モノシアリルラク
トース。検定の結果は図1に示す。図1 は、添加化合物の非存在下で観察された
結合に対するパーセントとしてのHL60細胞結合を表す。
図1に示したように、ペプチドHITWDQLWNVMNは、添加化合物の非存在下に生じ
た細胞結合の80% 以上をブロックした。この結果は、BBA-2 の存在下に観察され
たブロッキング( 約65%)と都合よく対比できる。ネガティブコントロール(アン
チ176 およびAFFY 1)はたいしたHL60結合のブロッキングを示さなかった。SLeX
は検定に使用した濃度では細胞付着のブロッキングをたいして示さなかったけれ
ども、その後の実験は、500 〜1000μM の濃度で使用すると、SLeXは細胞付着を
ブロックすることを示した。
ペプチドHITWDQLWNVMNを、ネガティブコントロール(AFFY 1 ペプチド)と共に
、種々の濃度(0.5〜100 μM)における細胞付着検定で試験した。ペプチド濃度に
対して観察されたcpm としてプロットした、この検定の結果を図2 に示す。この
結果は、ペプチドHITWDQLWNVMNが、この検定において50μM の濃度で、HL60細胞
の結合を約50% まで抑制できることを示す。これらの結果は、このペプチドがEL
AM-1との結合から細胞をブロックするのに使用できることを示す。
図3及び図4は、本発明のペプチドの二種の検定および、種々の本発明のペプ
チドのIC50を測定した(図4参照)検定の結果を示す。図5 は、ペプチドDITWDQ
LWDLMKを用いて行った細胞付着検定の結果を示す。このペプチドは細胞付着の所
望の抑制を示した。
前述の発明は、明確および理解のために説明及び実施例を用いて幾分詳細に説
明してきたけれども、添付した請求の範囲内で、ある種の変化および修飾を行う
ことが可能であることは明白であろう。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 38/00 ABN A61K 37/02 ABA
ACD ABG
ACJ ABL
ADU ACD
C07K 7/08 ABN
14/47 9455−4C ADU
(72)発明者 ダワー ウィリアム ジェー
アメリカ合衆国、カリフォルニア 94025、
メンロ パーク、パートリッジ アベニュ
ー 761
(72)発明者 マーテンス クリスティン エル
アメリカ合衆国、カリフォルニア 94028、
ポートラ ヴァレイ、エリカ ウェイ
141