【発明の詳細な説明】
非偏析酸化物超伝導体銀複合体
発明の分野
本発明は非偏析微細構造を有する高温超伝導体酸化物複合体に関する。特に、
本発明は金属先駆体の高圧酸化によって製造される高温酸化物超伝導体−金属複
合体に関する。本発明はさらに高Tc酸化物超伝導体と超伝導体複合体(supercon
ducting composite)との製造用の新規な先駆体物質に関する。
発明の背景
この6年間にわたる高い転移温度の超伝導体酸化物の発見は高温超伝導体(H
TS)物質を開発する国際レースを刺激した。多くの用途、特に電力発生のため
に必要なHTS物質は磁界において高い電流密度で作動しなければならず、頑丈
さ、フレキシビリティ及び臨界電流耐歪み性(tolerance of strain)を有さなけ
ればならない。HTS物質の厳しい性能必要条件は、物質に改良された超伝導性
と機械的性質とを与える、新規な加工材料及び方法の開発を要求している。
酸化物超伝導体の成分金属元素とマトリックス物質(典型的に、主として銀)
とを含む先駆体合金の酸化によって製造されている。マトリックス物質はそれ自
体、酸化に対して不活性でなければならない、又はプロセス中に用いる酸化条件
下で“ノーブル(noble)”でなければならない。複合体の熱処理は2工程で実施
するのが好ましい。複合体の第1熱処理は成分先駆体元素を単純金属酸化物又は
“亜酸化物”に酸化するために比較的低温において実施される。次の熱処理は亜
酸化物相を超伝導体酸化物相に転化するためにより高温において実施される。本
明細書で用いるかぎり、“亜酸化物”なる用語は超伝導体酸化物の成分金属の単
純酸化物、二元酸化物及び/又は三元酸化物を意味する。
酸素が銀マトリックス相中に比較的迅速に拡散するにも拘わらず、金属成分の
亜酸化物への完全な酸化(第1熱処理において)は極度に長時間(例えば、60
0時間)を要する可能性がある。高温における加熱中に、先駆体元素とそれらの
カチオン形との可動性は強化される。先駆体元素は周囲の銀金属中に拡散して、
それによって、複合体の化学的及び物理的統合性(integrity)を与える。これは
良好な物理的及び電気的性質を有する酸化物超伝導体複合体の形成を妨害する効
果を有する。本明細書で用いるかぎり、“先駆体元素”なる用語は、先駆体合金
の個々の金属元素又はそれらのカチオン形を意味する。典型的に、先駆体元素は
中性種として拡散する;しかし、カチオンは種々な程度に、先駆体元素の可動性
に寄与することも期待される。銅は成分の先駆体元素の中で最高の可動性を有す
るが、イットリウム−バリウム−銅−酸素(YBCO)系におけるバリウム、ビ
スマス(鉛)−ストロンチウム−カルシウム−銅−酸化物(BSCCO)系にお
けるビスマス及び/又は鉛、並びにタリウム(鉛)−ストロンチウム−カルシウ
ム−銅−酸化物(TISCCO)系におけるタリウム及び/又は鉛も銀マトリッ
クス中に拡散することが知られる。充分な時間と適当な反応条件とを与えるなら
ば、他の元素も複合体に機械的及び電気的性質を損なうほどのレベルで銀中にお
いて測定可能な可動性を有すると考えられる。
特に、先駆体元素が熱処理中に偏析しうることは、高いフィラメントカウント
を有するマルチフィラメントワイヤを製造することを困難にしている。本明細書
で用いるかぎり、“マルチフィラメントワイヤ”なる用語はマトリックス金属内
に酸化物超伝導体フィラメントを含み、フィラメントがワイヤの長さ(“最長寸
法”)に沿って相互に平行に軸方向にランするワイヤ、ロッド、テープ等を意味
する。“高いフィラメントカウント”なる用語は、本明細書で用いるかぎり、最
長寸法を横断する断面に関して測定して、10,000フィラメント/cm2を
越えるフィラメント密度を意味する。高いフィラメント密度では、先駆体元素の
最低偏析でさえも個々のフィラメントの合体とワイヤ性質の劣化を生じる。
Sn−Ag合金の内部酸化には、高い酸素圧が用いられている。Tanaka
等は米国特許第5,078,810号(以下では、“Tanaka”)において
、高圧酸化が表面へのスズの拡散による銀複合体外面上の酸化スズのスケール(s
cale)形成を除去することを観察している。Tanakaは複合体表面へのスズ
移動の問題を述べているが、複合体内部のスズ偏析を述べていない。実際に、複
雑な酸化物超伝導体複合体に観察されるような偏析が、Tanakaが開示する
、単純な酸化スズ−銀複合体に生ずることはありえない。
先駆体元素の銀マトリックス相中への拡散及び偏析を最小にし、酸化時間に不
利な影響を与えない、金属酸化物製造のための低温酸化方法を提供することが、
本発明の目的である。
先駆体元素の銀マトリックス相中への拡散及び偏析を最小にし、酸化時間に不
利な影響を与えない、酸化物超伝導体製造のための低温酸化方法を提供すること
が、本発明の他の目的である。
酸化物超伝導体複合体の製造に有用な、新規な複合体物質を提供することが、
本発明の他の目的である。本発明の新規な複合体はマトリックス金属相中への銅
の偏析減少と酸化物超伝導体相の優先的な成長とを示し、これらの両方ともが酸
化物超伝導体複合体の超伝導体性に有利な効果を有する。
酸化物超伝導体複合体への先駆体及び中間体としての複合体物質の製造方法を
提供することが、本発明の他の目的である。
例えば高い臨界電流密度のような、改良された性質を有する酸化物超伝導体複
合体を提供することが、本発明の他の目的である。
複合体の超伝導特性を改良する酸化物超伝導体複合体の製造方法を提供するこ
とが、本発明の他の目的である。
高度な非偏析微細構造と高いフィラメントカウントとを特徴とする酸化物超伝
導体のマルチフィラメント複合ワイヤを提供することが、本発明のさらに他の目
的である。
発明の概要
本発明は非偏析酸化物超伝導体銀複合体の製造方法を提供する。本発明はまた
、非偏析微細構造と高いフィラメントカウントとを有するマルチフィラメント酸
化物超伝導体−銀複合体をも提供する。本明細書で用いるかぎり、“非偏析”な
る用語は、先駆体元素が殆ど又は全く、先駆体合金領域から拡散(又は偏析)し
ていないことを意味する。拡散は酸化性条件下で生ずるので、偏析先駆体元素が
最終金属酸化物又は酸化物超伝導体複合体中に偏析元素に富む酸化物相(すなわ
ち、CuO、PbO、Bi2O3等)として確認される。
本発明の1態様では、銀と、所望の金属酸化物の化学量論量(stoichiometry)
の先駆体元素とを含む先駆体合金を形成し、先駆体元素が銀中に拡散する前に先
駆体元素から所望の金属酸化物への酸化が生ずるように、銀中への先駆体元素の
拡散を有意に制限しながら、銀中への酸素の拡散を可能にするように選択した高
酸素活性の条件下で先駆体合金を酸化することによって、非偏析金属酸化物/銀
複合体を製造する。本発明の目的のために、“高い酸素活性”とは200℃を越
える温度及び周囲圧力より大きい圧力においてそのガス形(O2)での純粋な酸
素の活性と等しい酸素活性として定義される。
本発明によると、金属酸化物を所望の酸化物超伝導体に転化するように選択さ
れた条件下で上記のようにして得た金属酸化物−銀複合体をさらに加熱すること
によって、非偏析酸化物超伝導体−銀複合体が製造される。
好ましい実施態様では、金属先駆体から金属酸化物への酸化を250〜450
℃、より好ましくは320〜430℃の範囲内の温度において実施する。好まし
い実施態様では、高い酸素圧、酸素放出ガス又は電磁気手段を用いて、高い酸素
活性を得る。高い酸素圧は周囲圧力を越える圧力から酸化銀の形成のための実質
的な酸素限界圧力までの範囲である。Po2範囲は好ましくは15〜3000ps
i、より好ましくは800〜3000psi、最も好ましくは1200〜180
0psiである。他の好ましい実施態様では、先駆体合金を200〜450℃の
範囲内の温度及び15〜3000psiの範囲内の酸素圧において酸化する。
さらに他の好ましい実施態様では、所望の酸素圧より高く全圧を強化するため
に第2ガスを用いて酸素を希釈する。全ガス圧は16〜60,000psiの範
囲であることができ、希釈用ガスは任意の不反応性ガス、例えばAr、N2、H
e、Ne、Kr又はXeでよい。
本発明の他の態様は、不連続な酸化物超伝導体相と銀相とを有し、先駆体元素
が銀相中へ殆ど又は全く拡散していない、緻密な(孔又は空隙を含まない)酸化
物超伝導体複合体を提供する。“殆ど又は全く拡散していない”は対応酸化物超
伝導体相から3ミクロン距離以下に金属酸化物を有するとして定義される。酸化
物超伝導体複合体は、最長寸法を横切る断面が銀マトリックスと、少なくとも1
0,000領域/cm2の酸化物領域密度を有する明確に画定された酸化物超伝
導体領域とから成る微細構造を有することを特徴とする。酸化物超伝導体はさら
に、偏析先駆体成分の酸化に由来する金属酸化物相が酸化物超伝導体相の厚さ及
び幅の20%の距離を越えては観察されない、相対的に非偏析の微細構造を有す
ることを特徴とする。本発明のさらに他の態様は、不連続な酸化物超伝導体相
と銀相とを有し、先駆体元素が銀相中へ殆ど又は全く拡散していない、緻密な(
孔又は空隙を含まない)金属酸化物複合体を提供する。“殆ど又は全く拡散して
いない”は対応金属酸化物相から3ミクロン距離以下に金属酸化物を有するとし
て定義される。金属酸化物複合体は、最長寸法を横切る断面が銀マトリックスと
、少なくとも10,000領域/cm2の酸化物領域密度を有する明確に画定さ
れた金属酸化物領域とから成る微細構造を有することを特徴とする。
本発明はさらに、高酸素活性の条件下で酸化されることができる、新規な金属
酸化物又は酸化物超伝導体先駆体に関する。本発明の1態様では、本発明の複合
体は所望の酸化物超伝導体の成分元素を含む第1合金相と、銅を含む第2相とを
含む。第2相は第1合金相によって支持される。
本明細書では、“合金”は通常の意味で用いられ、複数の相の完全な混合物又
は2種以上の元素の固溶体を意味する。合金は磨砕(milling)、溶融物からの冷
却、又は任意の他の慣習的手段によって製造することができる。
好ましい実施態様では、第1合金相の成分元素と第2相の銅とが、組合せて、
所望の酸化物超伝導体を形成するために充分な量で存在する。特定元素の過剰又
は欠乏は所望の酸化物超伝導体の理想的銅カチオン化学量論量に比較して定義さ
れる。幾つかの実施態様では、元素が所望の酸化物超伝導体の化学量論的割合で
存在する。他の実施態様では、所望の酸化物超伝導体の形成に用いられる加工条
件に適応するために、化学量論的に過剰な又は欠乏した任意の成分元素が存在す
ることができる。好ましい実施態様では、銅は所望の酸化物超伝導体の理想的銅
カチオン化学量論量に関して10%〜30%の範囲内の化学量論的過剰で存在す
る。
好ましい実施態様では、貴金属も第1合金相及び/又は第2相中に存在するこ
とができる。貴金属は、特に、銀、金、パラジウム及び白金を含む。
好ましい1実施態様では、第1合金相内に第2相を配置することによって、第
1合金相が第2相を支持する。本明細書で用いるかぎり、“内に配置する”とは
、第2相がマトリックス物質内に埋封されるか、又はマトリックス物質によって
実質的完全に囲まれることを意味する。第2相は好ましくはワイヤ、ロッド、ホ
イル又は粒子の形状である。
他の好ましい実施態様では、第1合金相の外周の少なくとも一部を第2相によ
って接触的に囲むことによって、支持が得られる。本明細書で用いるかぎり、“
接触的に囲む”とは、第2相の少なくとも1面が第1合金相の外周と接触するこ
とを意味する。第2相は好ましくはワイヤ、ロッド、ホイル又は粒子の形状であ
る。
本発明の1実施態様では、成分元素の銅の実質的に全てが第2相中に存在
する。本発明の他の実施態様では、成分元素の銅の一部が第2相であり、酸化物
超伝導体を形成するために必要な銅の残部が第1合金相中に存在する。
本発明の他の態様では、本発明の複合体は所望の酸化物超伝導体の成分元素を
含む第1合金相と、第1合金相によって支持され、銅を含む第2相と、第1合金
相と第2相とをその内部に支持するためのマトリックス物質とを含む。本明細書
で用いるかぎり、“マトリックス”とは、マトリックスの内部に又は周囲に配置
される物質を支持する及び/又は結合する物質又は物質の均質な混合物を意味す
る。
好ましい実施態様では、マトリックス物質は好ましくは貴金属である。第1合
金相と第2相とも付加的に貴金属を含むことができる。貴金属は、酸化物超伝導
体の形成に用いられる加工条件下で、化学反応及び酸化に対して不活性である物
質である。銀が好ましい貴金属である。
本発明のさらに他の実施態様では、酸化物複合体は所望の酸化物超伝導体の亜
酸化物を含む第1酸化物相と、その内部に配置された第2銀相とを含む。本明細
書で用いるかぎり、“亜酸化物”とは所望の酸化物超伝導体の成分元素の単純酸
化物、二元以上の酸化物(binary and higher oxide)とから成る群から選択され
る1種以上の酸化物を意味する。
本発明のさらに他の態様では、酸化物複合体は所望の酸化物超伝導体の亜酸化
物を含む第1酸化物相と、その内部に配置された第2銀相と、第1酸化物相と第
2銀相とをその内部に支持するためのマトリック物質とを含む。
本発明のさらに他の態様では、酸化物超伝導体複合体は完全に緻密な第1酸化
物超伝導体相と、第1超伝導体相を支持するためのマトリックス物質とを含む。
酸化物超伝導体相は、所望の酸化物超伝導体の理想的銅カチオン化学量論量に関
して10%〜30%の範囲内の化学量論的過剰の銅を含む。複合体はマトリック
ス中に直線的に侵入する成分元素の単純酸化物を特徴とする。酸化物超伝導体相
は第1酸化物超伝導体相内に配置された第2銀相を含む。
本発明の他の態様では、酸化物超伝導体を製造する。銀と、所望の酸化物超伝
導体の成分元素とを含む第1合金相と、銅を含む第2相とを含む複合体を製造す
る。第2相は第1合金相によって支持される。この複合体を、酸化物超伝導体を
形成するために充分な条件下で酸化する。
本発明の他の態様では、酸化物超伝導体を製造する。銀と、所望の酸化物超伝
導体の成分元素とを含む第1合金相と、銅を含む第2相と、マトリックス物質と
を含む複合体を製造する。第2相は第1合金相によって支持され、マトリックス
物質はその内部に配置された、第1合金相と第2相とを支持する。この複合体を
、酸化物超伝導体を形成するために充分な条件下で酸化する。
本発明のさらに他の実施態様では、金属酸化物/銀複合体を製造する。所望の
酸化物超伝導体の成分元素と銀とを含む第1合金相と、第1合金相によって支持
される、銅を含む第2相とを含む複合体を製造する。この複合体を、所望の酸化
物超伝導体の成分元素を酸化するために充分な条件下及び第2相中への第1合金
相の銀の拡散を促進する条件下及び、第2相を実質的に占める純粋な銀相が形成
されるように、第1合金相中への第2相の銅の拡散を促進する条件下で酸化する
。
本発明のさらに他の態様では、銅相分離複合体を製造する。銅を含む合金を加
熱して、銅を相分離させる。この熱処理は不活性雰囲気中で450〜700℃の
範囲内の温度に約10秒間加熱することを含む。
本発明のさらに他の態様では、少なくとも1つの変形及び焼きなまし工程によ
って、上述のように得られた金属酸化物相をさらにテクスチャーリング(texturi
ng)することによって、テクスチャード(textured)酸化物超伝導体を製造する。
総変形歪みは82〜89%の範囲であり、焼きなまし工程は所望の酸化物超伝導
体を形成するために充分な条件下で実施する。
本発明のさらに他の実施態様では、所望の酸化物超伝導体の成分元素を含む第
1合金相と、第1合金相内に配置された銀を含む第2相とを含む複合体を酸化す
ることによって、酸化物超伝導体複合体を製造する。第2相中への銀の集中が酸
化物超伝導体の優先的な成長を促進する。
本発明の酸化方法は、処理中の先駆体元素の可動性を劇的に低下させることに
よって、銀マトリックス中への特定先駆体元素の拡散による、所望の金属酸化物
相の“損失(loss)”を防止する。本発明の新規な先駆体は、所望の酸化物の成分
元素の第1合金相によって支持される第2相における銅の単離による金属酸化物
複合体中の偏析をも防止する。
図面の簡単な説明
図面において:
図1は、温度の関数としての、銀中への酸素及び銅の拡散のプロットであり;
図2は、(a)高温及び周囲酸素圧と、(b)低温及び高酸素圧において同じ
時間量にわたって酸化したマルチフィラメントYBa2Cu4Ox酸化物超伝導体
−銀複合体の光学顕微鏡写真であり;
図3は数種類の温度における、2種類の圧力レジメ(regime)に関する酸化度対
時間のプロットである。
図4(a)〜(d)は、第1相によって支持される第2相から成る本発明の複
合体の幾つかの実施態様の断面図であり;
図5は図4の複合体の製造のフローダイアグラムであり;
図6は第1合金相と、第2銅相と、銀マトリックス物質とを含む本発明のマル
チフィラメントワイヤの断面の光学顕微鏡写真であり;
図7は第1酸化物相と、第2銀相と、銀マトリックス相とを含む本発明のマル
チフィラメントワイヤの断面の光学顕微鏡写真であり;
図8は先行技術の先駆体複合体から製造した金属酸化物複合体の断面の光学顕
微鏡写真であり;
図9は本発明の方法の態様を説明する、臨界電流密度対テクスチャーリング歪
みのグラフである。
好ましい実施態様の説明
本発明は、酸化時間と先駆体元素可動性との競合(competing)効果を最適化す
る、先駆体合金の酸化方法を提供する。先駆体元素は、酸化時間を有意に延長せ
ずに、場合によっては短縮さえせずに、固定される。
合金の先駆体元素が銀マトリックス中に移動し、そこで酸化されて、対応金属
酸化物を形成することによって、偏析が生ずる。金属酸化物のカチオンは、ひと
度形成されると、もはや銀マトリックス中に容易に拡散しなくなる。しかし、偏
析カチオンは、その後に所望の酸化物形成のために好都合な条件下で熱処理にさ
らされるときに、所望の金属酸化物又は酸化物超伝導体を形成するために適当な
化学量論量で存在しないので、これらのカチオンは新たに形成された所望の酸化
物相を囲む粒子として残留する(図2参照)。
低温熱処理が迅速に完成すると、先駆体元素が銀マトリックス中に拡散する時
間は短時間になり、それ故、偏析度は減少する。しかし、有意な先駆体元素偏析
を避けるべきである場合には、先駆体元素の輸送速度を変えずに、銀を通しての
酸素の質量輸送速度(mass transport rate)を高めなければならない。系の酸素
活性を高めることによって、酸素の質量輸送速度の上昇を達成することができる
。このため、高酸素活性条件と組合せた“低”温における熱プロセスによって、
非偏析金属酸化物複合体を得ることができる。
充分な低温において、合金の先駆体元素が、複合体の完全な酸化に要する時間
内に、マトリックスを通って任意に有意な距離移動することが効果的に阻止され
る。銀を通る酸素の拡散速度が先駆体元素の拡散速度よりも軽度に温度依存性で
あるので、このことが可能である。図1は、拡散距離対温度のプロットを用いて
、銅及び酸素の銀を通る拡散の温度依存性を説明する。縦座標の拡散距離(x)
は、問題の元素が理想的条件下での10時間後に銀マトリックス中に拡散した距
離を表す。全ての拡散速度が温度上昇によって増強し、曲線形状が指数関数的で
あることは、図1から明らかである。銀中への酸素の拡散が縦座標のmmスケー
ルを用い、銀中への銅の拡散が縦座標のμmスケールを用いることに注目のこと
。しかし、銀中への銅の拡散(曲線10によって表現)は、銀中への酸素の拡散
(曲線12によって表現)よりも急激に上昇する指数関数形を有する。このため
、酸化温度を拡散が急激な速度で上昇する温度未満(すなわち、約450℃未満
)に維持することによって、先駆体元素の拡散を効果的に停止することができる
。
低い酸化温度における酸素の拡散低下を補償するために、系の酸素活性を上昇
させる。合金の先駆体元素と酸素との拡散はPo2独立性である。しかし、酸素圧
の上昇は、銀マトリックス中に溶解する酸素量を増加させ、それによって、銀を
通る酸素流量を増加させる。これは銀を通る酸素の質量輸送を強化する効果を有
するが、先駆体元素の拡散(及び質量輸送)は影響されない。
好ましい実施態様では、先駆体合金の酸化温度範囲は200℃〜450℃であ
る。特に、ビスマス(鉛)−ストロンチウム−カルシウム−銅含有酸化物超伝導
体の先駆体は360〜430℃の範囲内の熱処理温度を有する。タリウム(鉛)
−ストロンチウム−カルシウム−銅含有酸化物超伝導体の先駆体は200〜45
0℃の範囲内の熱処理温度を有する。稀土類−バリウム−銅含有酸化物超伝導体
の先駆体の熱処理温度は300〜350℃の範囲内である。
選択した上記温度範囲は、大抵の場合に銀の再結晶温度(Tcrystal)より低
い点で付加的な利点を有する。銀の粒子構造は酸素の質量輸送に影響する。酸化
温度が銀の再結晶温度(約200〜400℃)よりも低い場合には、銀マトリッ
クスがその微粒状構造を保持する(開始時に微粒状構造であることを想定)。こ
の場合には、酸素を銀粒界に沿って輸送することが可能である。それ故、銀の再
結晶温度未満での酸化によって、微粒状銀マトリックスにおいて酸素輸送が促進
される。
本発明は高い酸素活性を必要とする。本発明のために必要な“高い酸素活性”
は250℃〜450℃の温度範囲内及び15psi〜3000psiの範囲内の
圧力におけるガス形の純粋な酸素(O2)の活性に相当する。これは幾つかの方
法で、例えば高い酸素圧(Po2)の使用によって又は、例えば酸素放出ガス若し
くは電磁気手段によって発生する酸素の活性化形の使用によって達成することが
できる。
酸素放出ガスは当該技術分野で周知であり、限定する訳ではなく、オゾン、N
Ox等を含む。電磁気手段は、例えば、反応形の酸素を発生することができるマ
イクロ波放射線のような、高周波放射線を含む。陽極処理は反応形の酸素種を発
生する他の周知手段である。
好ましい実施態様では、高酸素活性手段として、高い酸素圧を用いる。銀複合
体の外面における広範囲な銀酸化物形成の開始に対応して、酸素圧が上昇するに
つれて(“限界圧力”)、先駆体元素の酸化速度は最大速度まで上昇する。酸化
速度はこの点(銀酸化物形成の限界圧力)を越えると、酸素圧に実質的に無関係
になる。この限界圧力は温度によって変化する。例えば、限界圧力は400℃で
は1500psiである。低い温度では、銀酸化物の限界圧力は低下する。例え
ば、300℃における300psiの限界圧力が典型的である。限界圧力におけ
る又は限界圧力近くの酸素圧において操作することが望ましいが、必ずしも必要
ではない。限界圧力よりも高い酸素圧において操作することも可能である。酸素
圧は好ましくは15〜3000psiの範囲内、より好ましくは800〜300
0psiの範囲内、最も好ましくは1200〜1800psiの範囲内である。
他の好ましい実施態様では、全ガス圧は60,000psiまでの範囲である
ことができる。酸素圧はまだ、上記好ましい範囲内である;しかし、第2ガスに
よって希釈して、系の全ガス圧を高める。この希釈用ガスは任意の不反応性ガス
、例えばAr、N2、He、Ne、Kr又はXeであることができる。希釈用ガ
スの添加は総合酸素活性に影響を与え、酸素のみの系に匹敵する酸素活性のため
には、混合ガス系にやや高い酸素圧が必要である。好ましい実施態様では、合金
を800〜3000psiの範囲内の酸素圧及び801〜60,000psiの
全ガス圧において酸化し、第2ガスを用いて、所望の酸素圧より強化された全圧
になるように酸素を希釈する。酸化に関連した体積変化(volume change)のため
に生じうる、酸化物超伝導体粒子の局部歪み/応力割れ(local strain/stress s
plitting)を阻止するために、強化された全圧が有用である。
典型的に、本発明のマルチフィラメント酸化物複合体は銀ワイヤ、リボン又は
テープの形状をとる。図2に示すようなマルチフィラメント複合体は次のように
製造する。微粉状先駆体元素を銀缶中に導入し、粉末充填缶を非常に小さい直径
のワイヤに押出成形することによって、テープを形成する。次に、数本の押出成
形ワイヤを束ねて、同時押出成形して、複数の金属先駆体フィラメントを内部に
含むワイヤを形成する。所望のフィラメント数が得られるまで、再度束ねて、同
時押出成形することを続けることができる。100〜2,000,000のフィ
ラメントカウントを有するテープが製造されている。
本発明の方法を図2に関連した下記実験で説明する。図2aと2bは銀マトリ
ックス中に金属酸化物のマルチフィラメントを含むYBa2Cu4Ox−銀複合体
の
断面図である。図において、暗領域20は酸化物超伝導体相を表し、明領域22
は銀相を表す。
6本の銀−先駆体合金複合体マルチフィラメントテープの束を0.25”(0
.635cm)孔を有する圧力容器に入れ、周囲圧力における2回の“加圧及び
ドレーンサイクル”によってパージする(purged)。テープは0.10”x0.0
2”(0.254cmx0.0508cm)の断面と1”(2.54cm)長さ
を有する。これらはY2Ba2Cu4の先駆体元素化学量論と、10容量%の先駆
体元素充填率(fill factor)とを有する銅シース入り(copper-sheathed)YBa2
合金フィラメント2527本を含む。この圧力容器を予熱炉の高温帯に挿入する
ことによって、各束を320℃に加熱する(約2000psiの酸素圧において
)。サンプルを100〜200時間加熱してから、炉から取り出し、空冷させる
。100〜200時間後にサンプルは完全に酸化される。これは周囲圧力におけ
る完全酸化に要する時間よりも一桁より大きく(more than an order of magnitu
de)迅速である。
テープの研磨断面を光学顕微鏡によって検査する。320℃において完全に酸
化されたサンプルは識別可能な銅拡散を示さず、先駆体ジオメトリー(geometry)
は複合体を通して保存される。上記方法によって加工したサンプルを超伝導性に
関して検査して、82Kの温度において零抵抗の開始を示すことが判明している
。
鉛ドープト(doped)Bi−2223酸化物超伝導体を下記方法で処理する。元
素を50容量%までの銀と機械的に合金化して、鉛ドープトBi−2223先駆
体合金粉末を製造する。この合金粉末を銀缶中に充填して、反復変形する。次に
数本の押出成形ワイヤを束ねて、同時押出成形して、複数の金属先駆体フィラメ
ントを内部に含むテープを形成する。所望のフィラメント数が得られるまで、再
度束ねて、同時押出成形することを続けて、0.75mmx3.8mmの典型的
な断面寸法を有するマルチフィラメント先駆体合金銀マトリックス複合体テープ
を得ることができる。259本のフィラメントと15容量%に等しい先駆体元素
充填率とを有するテープを2.9ksi酸素中で400℃において、フィラメン
トからの先駆体元素の偏析が実際にない、完全な酸化のために300時間酸化す
る。
図2は、低温と周囲圧力よりも高い圧力との両方を用いる、本発明の方法に起
因する複合体微細構造の改良を示す。図2aは、周囲酸素圧で600℃において
200時間酸化した、慣習的処理した複合体断面(2527本のフィラメントを
含む)の顕微鏡写真である。金属元素(主として、CuOとしてのCu)の銀マ
トリックス中への高度の拡散のために、金属酸化物領域と銀マトリックスとの境
界はあまり明確に画定されない。図2bは2000psi酸素中で340℃にお
いて200時間酸化した、慣習的処理した複合体断面(2527本のフィラメン
トを含む)の顕微鏡写真である。金属酸化物の円形領域と銀マトリックスとの境
界は非常に明確に画定される。本発明の低温/高酸素圧熱処理を受けた図2b複
合体では、銀中への金属酸化物の侵入が実際に排除される。
図3は、Y1Ba2Cu4Ox複合体サンプルに関する、2種類の酸素圧(周囲圧
力と2000psi)における酸化度対時間のプロットである。1に等しい酸化
度によって完全酸化が実証される。図3の曲線30(400℃,14.7psi
)と曲線32(400℃,2000psi)との比較によって明らかであるよう
に、酸素圧の周囲圧力から2000psiまでの上昇によって、酸化速度は約一
桁増加する。酸化速度は温度の低下と共に低下するが、曲線30(400℃,1
4.7psi)と曲線34(320℃,2000psi)との同様な勾配によっ
て説明されるように、酸素圧の上昇は温度誘導の速度低下を補ってあまりある。
例えば、曲線36(470℃,2000psi)の熱処理のような高温、高圧の
熱処理は迅速な酸化を生じるが、偏析度がまだかなりあり、超伝導用途に受容さ
れない。高温が先駆体元素の固定を許さないので、得られる微細構造は最適では
ない。偏析の最良の改良は、高い酸素活性(この場合には、酸素圧)を用いなが
ら、酸化温度を低下させることによって達成される。
金属酸化物−銀複合体がひと度形成されたならば、この複合体を当該技術分野
で周知の方法を用いてさらに熱処理して、酸化物超伝導体を形成することができ
る。例えば、限定する訳ではなく、YBa2CU3Ox[式中、xは77Kより大
きいTcを有する酸化物超伝導体を形成するために充分である];YBa2Cu4
Ox[式中、xは77Kより大きいTcを有する酸化物超伝導体を形成するために
充分である];(Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Ox[式中、xは77Kより大
きいTcを有する酸化物超伝導体を形成するために充分である];(Ba,Pb
)2Sr2Ca1Cu2Ox[式中、xは77Kより大きいTcを有する酸化物超伝導
体を形成するために充分である];Hg1Ba2Ca2Cu3Ox[式中、xは10
0Kより大きいTcを有する酸化物超伝導体を形成するために充分てある];H
g1Ba2Ca1Cu2Ox[式中、xは100Kより大きいTcを有する酸化物超伝
導体を形成するために充分である];Hg1Ba2Cu1Ox[式中、xは77Kよ
り大きいTcを有する酸化物超伝導体を形成するために充分である];[式中、
xは100Kより大きいTcを有する酸化物超伝導体を形成するために充分であ
る];(Tl,Pb)1Sr2Ca1Cu2Ox[式中、xは100Kより大きいTc
を有する酸化物超伝導体を形成するために充分である];及び(Tl,Pb)1
Sr2Ca2Cu3Cx[式中、xは100Kより大きいTcを有する酸化物超伝導
体を形成するために充分である]を含む、あらゆる酸化物超伝導体の製造に、こ
の方法を適用することができる。これらの酸化物組成物への少量の他の元素の添
加は本発明の範囲又は要旨を変えることにならない。上記酸化物組成物は公称(n
ominal)であり;これらからの若干の逸脱は本発明の範囲内である。
先駆体元素は金属酸化物のカチオン成分として有効に固定されるので;偏析な
しに、高温プロセスを用いることができる。例えば、金属酸化物−銀複合体を0
.075気圧酸素下で780℃において10時間加熱し、815℃に50時間維
持し、次に冷却して、酸化物超伝導体,Bi2Sr2Ca2Cu3Ox(2223−
BSCCO)を形成する。同様に、金属酸化物−銀複合体を15psi酸素下で
900℃において50時間加熱し、450℃に100時間維持し、次に冷却して
、酸化物超伝導体,YBa2Cu3Ox(123−YBSCO)を形成する。
本発明の複合体はそれらの均質な非偏析複合体微細構造と高いフィラメントカ
ウントとを特徴とする。例えば、銀マトリックスはバルク(bulk)酸化物相(金属
酸化物又は酸化物超伝導体)と銀マトリックスとの界面から3μmの距離を越え
ると酸化物を含まない。種々な用語で表現される、酸化物−銀複合体は,最長寸
法を横断する断面が銀マトリックスと、少なくとも10,000領域/cm2の
酸化物領域密度を有する、明確に画定された酸化物領域(金属酸化物又は酸化物
超伝導体)とから成る微細構造を有する。32,000領域/cm2を充分に越
え、1,500,000領域/cm2までの密度が電気的及び機械的性質の劣化
なく、観察されている。この規模の密度が複合体の電子的及び機械的性質を損な
うことなく生ずるためには、隣接フィラメントの間に偏析が殆ど又は全く生じて
はならない。
本発明はさらに、第1合金相と、第1合金相によって支持される、銅を含む第
2銅又は銀相とから成る、新規な酸化物超伝導体先駆体を提供する。新規な先駆
体物質を独立的に慣習的な酸化方法によって又は上記高圧酸化方法と組合せて用
いて、酸化物超伝導体を得ることができる。
先駆体複合体は幾つかの異なるジオメトリー形状をとることができる。例えば
、第1合金はテープ又はワイヤの形状であることができ、第2形は、図4(a)
に示すように、第1合金相内に共軸に配向したワイヤであることができる。最長
寸法を横切る複合体37の断面図は、第1合金相37b内に配置された、配向し
た銅ワイヤ37a(第2相)を示す。銅ワイヤ37aは複合体37と共軸に配向
し、小さい寸法である。第1合金相内には1〜1000本の銅ワイヤが配置され
る。
第2相は第1合金相の内部ワイヤ又はテープを囲むホイルの形状であることも
できる。図4(b)は最長寸法を横断する、複合体38の断面図を示す、この断
面では銅ホイル38a(第2相)が第1合金相37bを囲む。銅ホイル38aが
第1合金相の外面38bの少なくとも一部を囲む。ホイル22は合金表面に充分
に接触して、必要な場合には、相間のその後の反応を可能にする。或いは、第2
相のホイル38aを第1合金相37bのシート39bと共に巻いて(rolled)、図
4(c)に示すように、渦巻き形状を得ることができる。
第2相は第1合金相を通して配置された粒子の形状であることができる。図4
(d)は第1合金相37b内に配置された銅粒子40a(第2相)を含む複合体
40の断面図である。銅粒子40aは100μm以下の粒度を有し、0.05〜
0.65の範囲内の原子分率を占める。この原子分率は所望の酸化物超伝導体に
依存する。 第1合金相37bは任意の酸化物超伝導体の成分元素を含むことが
できる。例えば、酸化物超伝導体のY−Ba−Cu−O系(family)のイットリウ
ム(Y)とバリウム(Ba);酸化物超伝導体のBi−Sr−Ca−Cu−O系
のビスマス(Bi)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)及びカルシウム(C
a);酸化物超伝導体のTl−Sr−Ca−Cu−O系のタリウム(Tl)、P
b、Sr及びCa;及び酸化物超伝導体のHg−Sr−Ca−Cu−O系の水銀
(Hg)、Pb、Sr及びCa。所望の酸化物超伝導体のカチオン化学量論量に
関して10〜30%の範囲内の化学量論的過剰量で銅を有することが好ましい。
当該技術分野で周知であるような、各酸化物超伝導体を構成する元素の割合と成
分(constituent)の変化も、本発明の範囲と要旨に含まれる。
本発明の複合体は、例えばテープ、ロッド、インゴット又はシートのような、
任意の形状で製造することができる。酸化物超伝導体の形成のための反応時間を
最小にすることができるように、第2相を第1合金相中に均一に分配することが
できる。或いは、第2相を例えば第1相の外周近くのような、特定の領域に集め
るか又は第1相の中心に配置することができる。
所望の酸化物超伝導体を構成する銅の一部(全部ではなく)を、所望の酸化物
超伝導体の成分元素が含むことも本発明の範囲内である。銅の残部は第2相中に
存在する。合金マトリックス37bが酸化物超伝導体の成分元素以外の付加的な
元素を含むことも本発明の範囲内である。例えば、合金は例えば銀のような貴金
属を含むことができる。
さらに他の実施態様では、マトリックス物質は第1合金相と、その内部に支持
される第2相とを支持する。複数の第1合金相/第2相領域がマトリックス物質
内に配置されることができると考えられる。マトリックス物質は、決して限定す
る訳ではなく、例えば銀、金、パラジウム及び白金のような、貴金属を含む。
本発明の複合体は次のように製造することができる。実施例1
.所望の酸化物超伝導体の成分元素の粉末と銀の粉末とをブレンドする
ことによって、第1合金相を製造する。ブレンドした粉末は銅をあまり含まない
か又は、必要な場合には、全く含まないことができる。銀はブレンドの70〜8
0容量%を占める。得られるブレンドを次に、例えば、米国特許第4,962,
084号及び第5,034,373号(これらは本明細書に援用される)に開示
されるように、機械的に合金化する。機械的合金化粉末を押出成形ダイに供給し
、このダイを通して複数の銅ワイヤを同時に導入する。銀と、所望の酸化物超伝
導体の銅をあまり含まない成分元素とから成る第1合金相と、押出成形ワイヤの
長さに沿って共軸
にランする銅ワイヤの第2相とを有する複合ワイヤが得られる。実施例2
.実施例1に記載のように、又は通常の合金化方法を用いて、0.34
:1.74:1.92:2.05:3.07:0から0.34:1.74::1
.92:2.05:3.07:14.5 の原子比で元素Pb,Bi,Sr,C
a,Cu及びAgを含む第1合金相を製造する。合金を、不活性雰囲気中で10
秒間以上450−700℃の範囲の温度まで加熱して、第1合金相内に配置され
た銅領域を有する複合体を得る。実施例3
.図5のプロセス図は、プロセスの主要な要素を例示する。このプロセ
スは、金属元素の機械的合金化で始まり、実施例1に関して上述したように、均
質な銅をあまり含まない合金粉末41(第1合金相)を形成する。合金粉末41
を、銅ホイルライニング又は銅ワイヤストランド44を含有する銀又は銅の缶4
2(第2相)中に充填する。図5は、銀又は銅の缶42内に共軸に配置された銅
ワイヤ44を用いる実施態様のプロセスを例示する。次に、粉末合金41と銅4
4とを含有する銀又は銅の缶42をシールし、押出成形して、六角形ロッド46
にする。ロッドの切片をスタックし、マルチロッド束にし、これを再び銀又は銅
缶47に充填し、押出成形し、六角形ロッドにする。このプロセスを数回繰り返
す。最後の工程において、この缶をダイ48を通して押出成形して、長方形又は
丸いワイヤ46にする。200と3,000,000フィラメントとの間のテー
プは、マルチプルスタッキングを用いて容易に作ることができる。図6は、第1
合金相52と、第2銅相53と、銀マトリックス物質54とを含有する本発明の
マルチフィラメントワイヤ50の断面を示している光学顕微鏡写真である。
本発明の別の実施態様は、所望の酸化物超伝導体の完全に緻密な亜酸化物から
なる第1酸化物相と、第1酸化物相内に配置された第2銀相とを有する酸化物複
合体を含む。別の実施態様では、複合体は、第1酸化物相と、第2銀相と、第1
酸化物相及び第1酸化物相内に配置された第2銀相を支持するためのマトリック
ス物質とを含む。図7は、第1酸化物相62と、第2銀相64と、マトリックス
物質66(この場合には、銀)とを有する本発明の実施態様のワイヤ60の断面
の光学顕微鏡写真である。複合体が完全に緻密であり、すなわち、粒界(相の内
部)に又は相の間の界面に目視可能な孔(間隙又は空隙)が存在しないことに注
目のこと。これ
らの微細構造は先駆体合金の酸化から製造される複合体に特有であり、亜酸化物
の粉末から製造される、典型的にあまり緻密でなく、相内部及び相界面に孔を有
する複合体と対照することができる。
図7の実施態様は実施例4又は5に示すように製造することができる。
実施例4.実施例3に従ってマルチフィラメント複合体を製造する。次に、複
合体を800〜2000psi(O2)の酸素圧によって200〜600時間、
320〜420℃の条件下で、特に1600psi(O2)において200時間
を越えて420℃の条件下で酸化する。このプロセスは次のように起こる。カル
シウムとストロンチウムとは迅速に酸化されて、対応金属酸化物になり;ビスマ
スと鉛とは銅と実質的に合金を形成せず、そのために、Ca、Pb、Sr又はB
iの銅第2相中への有意な移動は生じない。銅は酸素活性の高いほうに、すなわ
ち、第2相から第1合金相中へ移動し、それによって、第2相に空隙を生ずる。
この空隙は空隙に付随する非常に高い表面エネルギーのために銀によって置換さ
れる。
実施例5.実施例3に従って、但し下記の変化を加えて、マルチフィラメント
複合体を製造する。合金粉末41を充分な量の銅によって合金化して、所望の酸
化物超伝導体を形成し、銅ワイヤの代わりに銀ワイヤを用いる。集成した複合体
は合金粉末を亜酸化物に酸化するために充分な条件下で酸化する。典型的な酸化
条件は800〜2000psi(O2)において200〜600時間、320〜
420℃である。
本発明の先駆体複合体と酸化物複合体とは幾つかの利点を有する。これらの複
合体は、酸化物超伝導体を形成するための酸化時に、マトリックス物質中への銅
拡散の減少を示す。このことは図7と図8との酸化物複合体を比較することによ
って実証することができる。図7は、銀マトリックス中で銅ワイヤ(第2相)を
支持する第1酸化物相を有する先駆体複合体の本発明による方法に従う酸化から
製造された酸化物複合体を示す。図8は、第2銅相を含まない先駆体複合体(銅
は第1合金相中に存在する)から製造された酸化物複合体を示す。銀マトリック
ス中への金属酸化物(典型的には、大抵は銅酸化物、但し、他の金属酸化物を形
成することも可能)の侵入は両複合体において異なる程度に生ずる。しかし、金
属酸化物の侵入(金属酸化物の微細な巻きひげ68として出現)は図7では、図
8に示す侵入金属酸化物
の二次元先端71に比べると、厳しく制限される。複合体の亜酸化物相を囲む金
属酸化物の二次元“ハロ”は図7の線状巻きひげよりも、成分元素の非常に大き
い割合を占める。銀マトリックス中への酸化物侵入は次の(further)熱処理時に
残存して、酸化物超伝導体を形成する。
さらに、本発明の酸化物複合体の第2相中の銀の濃度は、酸化物超伝導体を優
先的に成長させることができる界面を形成する。先行技術において、銀/酸化物
界面が酸化物超伝導体の配向成長(oriented growth)を促進して、テクスチャー
リング(texturing)特徴と改良された臨界輸送特徴とを生じることが示唆されて
いる(Feng等の、本明細書で援用されるAppl.Phys.Lett.,
1993を参照のこと)。
上記組成物は酸化物超伝導体複合体の製造に用いることができる。この組成物
は、限定する訳ではなく、Bi2-yPb4Sr2Ca2Cu3+zOx[式中、xはTc
≧99Kを生ずるために充分であり、0≦y≦0.6及び0≦z1.0である]
、Bi2yPb4Sr2Ca2Cu3+zOx[式中、xはTc≧77Kを生ずるために充
分であり、0≦y≦0.6及び0≦z≦0.3である]、及びAnBa2nCua(3 n+1)
Ox[式中、A=(Re1-yCay)、n=(1,2,3・・・∞)、a=(
1.0〜1.3)及び0≦y≦0.2であり、xはTc≧65Kを生ずるために
充分である]を含めた超伝導性酸化物相を含むことができる。この場合のReは
稀土類又はイットリウムである。酸化物超伝導体の理想的銅カチオン化学量論量
(stoichiometry)に基づいて10〜30%過剰な範囲で、酸化物超伝導体中に過
剰な銅を含むことが好ましい。このような組成物は、限定する訳ではなく、下記
銅カチオン化学量論量を有する組成物:Bi2-yPbySr2Ca2Cu3.5〜3.7;
Bi2-yPbySr2Ca1Cu2.3〜2.6;及びA1Ba2Cu4.6〜5.2を含む。
本発明の複合体及び酸化物超伝導体を用いる酸化物超伝導性複合体の製造を実
施例6〜10において説明する。
実施例6.Pb、Bi、Sr、Ca及びAgの元素を0.34:1.74:1
.92:2.05:14.5の原子比でブレンドすることによって第1合金相を
製造する。得られるブレンドを次に、例えば米国特許第5.034,373号(
本明細書に援用される)に開示されるように、機械的に合金化する。
33本の微細な銅ワイヤ(直径0.5mm)を銀ビレット(0.615インチ
ODx0.552インチIDx5.0インチ長さ)(マトリックス物質)内に共
軸に配列させ、Pb、Bi、Sr、Ca及びAgを含む合金化粉末をピルット内
に及び銅ワイヤの周囲に充填する。銀ビレット内の物質は0.34Pb:1.7
4Bi:1.92Sr:2.05Ca:3.07Cu:14.5Agの最終組成
を有する。銀ビレットをダイに通して押出成形して、銀マトリックスと複数の第
1合金相領域とを有し、各領域が銅ワイヤの第2領域を支持する複合体ワイヤを
形成する。
上記パラグラフで述べたように製造した複数のワイヤを共に束ねて、同時押出
成形して、マルチフィラメントワイヤを得る。本発明の複合体から製造した典型
的なマルチフィラメントワイヤの光学顕微鏡写真を図6に示す。
次に、このマルチフィラメントワイヤを100気圧酸素中で420℃において
288時間酸化する。これらの酸化条件下で、銅は第2相から第1合金相中へ拡
散する。同時に、第1合金相の銀が第2相領域の方向へ移動して、第2相中に集
中し、それによって金属酸化物/銀複合体を形成する。酸化物複合体サンプルを
0.075気圧酸素中で780℃の温度において7〜15時間の総合時間さらに
熱処理し、75%〜82%歪みの圧延(rolling)によって中間変形する。0.0
75気圧酸素中で、さらに10〜60時間、温度を831℃に上げて、さらに1
6〜20%歪み変形して、80〜85%の範囲内の全歪みを得た。831℃にお
いて60時間と、次に811℃において180時間の最終熱処理はBi2-yPby
Sr2Ca2Cu3Ox酸化物超伝導体[式中、0≦y≦0.6]を形成する。この
方法によって製造されるサンプルの臨界電流密度は表1に記載する。
実施例7.先駆体合金を上記実施例6に述べた方法に従って、但し下記を除い
て、製造し、加工する。銅を酸化物超伝導体の他の成分元素によって機械的に合
金化する。銅第2相は用いない;これは通常の先駆体合金である。0.34:1
.74:1.92:2.05:3.07:14.5の原子比でのPb、Bi、S
r、Ca、Cu及びAgの元素。得られるブレンドを次に機械的に合金化する。
先駆体合金を実施例3に述べたように加工する。Bi2-yPbySr2Ca2Cu3
Ox酸化物超伝導体[式中、0≦y≦0.6]が得られる。この方法によって製
造されるワイヤサンプルの臨界電流密度は表1に記載する。
実施例8.Pb、Bi、Sr、Ca及びAgの元素を0.34:1.74:1
.92:2.05:14.5の原子比でブレンドすることによって先駆体合金を
製造する。33本の微細な銅ワイヤ(直径0.5mm)を銀ビレット内に共軸に
配列させ、Pb、Bi、Sr、Ca及びAgを含む合金化粉末をビルット内に及
び銅ワイヤの周囲に充填する。銀ビレット内の物質は0.34Pb:1.74B
i:1.92Sr:2.05Ca:3.70Cu:14.5Agの最終組成を有
し、複合体に過剰な銅を与える。先駆体複合体を実施例6に述べたように加工し
、熱処理する。この方法によって製造されるワイヤサンプルの臨界電流密度は表
1に記載する。実施例9
.Pb、Bi、Sr、Ca、Cu及びAgの元素を0.34:1.74
:1.92:2.05:3.52:14.5の原子比でブレンドすることによっ
て先駆体合金を製造する。Pb、Bi、Sr、Ca、Cu及びAgを含む合金化
粉末をビレット内に充填する。銀ビレット内の物質は0.34Pb:1.74B
i:1.92Sr:2.05Ca:3.52Cu:14.5Agの最終組成を有
する。先駆体複合体を実施例6に述べたように加工し、熱処理する。この方法に
よって製造されるワイヤサンプルの臨界電流密度は表1に記載する。
表1は、酸化物超伝導体における過剰な銅レベルと第2銅相の存在とがサンプ
ル
中の臨界電流密度の上昇に寄与することを明確に示す。さらに明確であることは
、これらのプロセスパラメータは、パラメータが単独で又は組合せでJcを改良
する点でプロセス独立性である。本発明の複合体から製造された酸化物超伝導体
サンプルの他の目視検査は、銀マトリックス中への銅偏析の減少を示す。これは
図7と図8との酸化物複合体の比較によって支持される。
変形及び焼きなましの条件の性質は以下の実施例に示すように複合体の最終超
伝導性にも影響を与える可能性がある。
実施例10.マルチフィラメント複合ワイヤを次のように製造する。
Pb、Bi、Sr、Ca及びAgの元素を0.34:1.74:1.92:2
.05:14.5の原子比でブレンドすることによって先駆体合金を製造する。
得られるブレンドを次に、上記実施例に述べるように、機械的に合金化する。P
b、Bi、Sr、Ca及びAgを含む合金化粉末をビレット内に及び銅ワイヤの
周囲に充填する。銀ビレット内の物質は0.34Pb:1.74Bi:1.92
Sr:2.05Ca:3.80Cu:14.5Agの最終組成を有する。銀ビレ
ットをダイに通して押出成形して、六角形断面を有する複合体ワイヤを形成する
。このように製造した複数のワイヤを共に束ねて、同時押出成形して、マルチフ
ィラメントワイヤを得て、押出成形して先駆体テープ又はワイヤを形成する。
先駆体テープを製造した後に、合金フィラメントを酸化して、原子状酸素に対
する銀の大きい透過性を利用して、酸素を銀マトリックス中に分散させることに
よって微粒状の分散した亜酸化物相を形成する。
酸化後に、先駆体酸化物フィラメントを熱処理によって反応させて、それらの
大きい表面に直交するc方向を有する、高度に配向した(highly aspected)超伝
導性酸化物粒子を形成する。Bi2-yPbySr2Ca2Cu3+zOx(Bi−222
3)に関する反応経路は、亜酸化物相からのBi−2212と“0011”反応
物(組成的にCaCuO2)との周知の初期形成[反応(1)]と、形成される
Bi−2223相群中のBi2-yPbySr1Ca2Cu2+zOx(Bi−2212)
相群のテキスチャー(texture)を再現するインターカレーション機構による、そ
の後のBi−2223への転化[反応(2)]とを含む。
(2−y)BiO1.5+PbO+2SrO+2CaO+3CuO=Bi2-yPby
S
r2Cacu2Ox+CacuO2
Bi2-yPbySr2Cacu2Ox+CacuO2=Bi2-yPbySr2Ca2Cu3
Ox
Bi−2212とBi−2223相の両方を例えば圧延又は単軸プレス(uniax
ial pressing)のような変形プロセスによってテクスチャーリングする(textured
)。酸化物複合体サンプルを0.075気圧O2中で780℃の温度において7〜
15時間の総合時間にわたってさらに熱処理し、75%〜85%歪みの圧延によ
って中間変形する。温度を0.075気圧O2中でさらに20時間かけて830
℃に上昇させ、次にさらに16〜25%歪み変形させ、7.5%O2中で830
℃において60時間熱処理し、次に811℃において180時間最終的に熱処理
する。
超伝導体相をテクスチャーリングするために用いる変形も酸化物を個別の粒子
に破壊する。それ故、超伝導体相は最終熱処理によって焼結されて、過電流をマ
ルチフィラメント複合体に通して輸送するために必要な相互連絡構造を各フィラ
メント内に形成する。
テクスト(text)歪みへの酸化物Jc依存性を3種類の熱加工変化に関して図9
に説明する。テクチャーリング歪みを82%〜89%歪みの範囲内で最大までに
上昇させると共に、Jcが典型的に上昇し、その後急激に低下することが明らか
である。歪み上昇につれてのJcの上昇は改良されたテクスチャーによるもので
あり、低下は歪み配置(strain location)からのフィラメントの損傷によるもの
である。
3種類の熱プロセス変化に関するJcの総合上方シフト対歪み関係によって見
られるように、熱プロセス変化はテクスチャーリング歪み効力の強化によってJc
を改良する。82〜89%範囲内の最適テクスチャーリング歪みはマルチフィ
ラメントテープの製造に要する全歪み(>99%)に比べて小さい。これらの全
テクスチャーリング歪みは1回以上の変形工程によって得られ、変形工程は熱処
理間の物質に対する力(force)の1回以上の適用である。それ故、プロセスにお
いて高マルチフィラメントワイヤの製造に要する変形量(the bulk of the defor
mation)は、より大きく脆性の酸化物状態よりもむしろ、延性金属状態の先駆体
フィラメントによって処置することができる。
高フィラメントカウント(filament-count)先駆体複合体処理テープによって得
られる輸送性を表2に示す。
表2における77Kの短い長さの酸化物Jcレベルは任意の他のフィラメント
カウントプロセスに関して報告された最良レベルを凌駕する。さらに、これらの
テープを、長い長さまでのプロセス拡大を可能にする、例えば圧延のような、計
測可能なプロセスによってテクスチャーリングする。
明細書又は明細書に開示した本発明の実施を検討することから、本明細書の他
の実施態様が当業者に明らかになるであろう。明細書の実施例は例示のみと見な
すべきであり、本発明の実際の範囲及び要旨は請求の範囲によってのみ定義され
るように意図する。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C01G 29/00 ZAA 9261−4G C01G 29/00 ZAA
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),JP
(72)発明者 メイサー,ローレンス・ジェイ
アメリカ合衆国マサチューセッツ州02192,
ニーダム,ブラッドフォード・ストリート
133
(72)発明者 ポドバーグ,エリック・アール
アメリカ合衆国マサチューセッツ州01760,
ナティック,シャーウッド・ロード 28
(72)発明者 サンドヘージ,ケネス・エイチ
アメリカ合衆国オハイオ州43235,コラン
バス,ラングホーン・ドライブ 5756
(72)発明者 クレイブン,クリストファー・エイ
アメリカ合衆国マサチューセッツ州01730,
ベッドフォード,ハートウェル・ロード
106
(72)発明者 シュレイバー,ジェフリー・ディー
アメリカ合衆国マサチューセッツ州01949,
ミドルトン,イースト・ストリート 27