【発明の詳細な説明】
ヒト視床下部機能における変化の神経化学的イニシエータとしてのエストレンス
テロイドおよび関連する薬理組成物並びに方法
発明の背景 技術分野
本発明は、一般的にはヒト視床下部機能に変化を引起し、これにより各個人の
視床下部により媒介されるある挙動および生理機能を変えるための薬理組成物お
よびそのための方法に関する。より詳細には、本発明は生理機能および挙動の神
経化学的エフェクチュエータ(effectuators)としての、幾つかのエストレンステ
ロイド類の使用に関する。関連技術の説明
本発明は幾つかの化合物、即ち本明細書に記載されるようなエストレン(Estre
ne) ステロイドおよび関連化合物およびこれら化合物を、視床下部機能を変える
ためにヒト信号物質として使用し、結果として起こるある挙動および生理機能、
例えば不安の軽減等に影響を与える方法に関連する。エストレンステロイドは、
17β−エストラジオール(1,3,5(10)- エストラトリエン-3,17 β−ジオール)に
よって代表され、またフェノール系1,3,5(10) A-リングおよび3-位におけるヒド
ロキシまたはヒドロキシ誘導体、例えばエーテルまたはエステルによって特徴付
けられる。幾種かの哺乳類に対する幾つかのエストレンステロイド類のフェロモ
ン特性が知られている。ミカエル(Michael),R.P.等はNature,1968,218 :746
において、雄アカゲザルのフェロモン様誘因物質としてのエストロゲン類(特に
エストラジオール)に言及している。パロット(Parrot),R.F.はHormones and B
ehavior,1976, 7: 207-215において、エストラジオールベンゾエートの注入が
卵巣切除したラットにおいて交配挙動を誘発することを報告しており、またアカ
ゲザルにおける、性的応答におけるエストラジオールの血中濃度(フェニックス
(Phoenix),C.H.,Physiol.and Behavior,1976,16: 305-310)およびリメール
(remale)性的応答(フェニックス(Phoenix),C.H.,Hormones and Behavior,19
77,8 : 356-362)も知られている。他方、文献においては、フェロモン自体が哺
乳類の再現性挙動および個人間のコミュニケーションにおいて何等かの役割を演
ずるか否かについては殆ど定説はない(ボシャン(Beauchamp),G.K.等 「哺乳類
の化学的コミュニケーションにおけるフェロモンの概念(The Pheromone Concept
in Mammalian Chemical Communication: 一論評(A Critique)」,Mammalian Olfa
ction,Reproductive Processes,and Behavior,ドティー(Doty),R.L.編,ア
カデミックプレス、1976)。
本発明の一態様は、幾つかのエストレンステロイドを非−全身的に、経鼻投与
して、ヒト患者における特異的な挙動または生理的応答、例えば負の情動、気分
および性格傾向を軽減することに関連する。特に、経鼻投与は、これまで余り理
解されていなかった、通常鋤鼻器官(“VNO”、また「ヤコブソン器官」としても
知られる)として知られている神経内分泌構造の神経受容体と、一種以上のステ
ロイドまたは該ステロイドを含有する組成物との接触をもたらす。この器官は、
最も高等な動物、即ち蛇乃至ヒトの外鼻孔を通して利用され、かつ特に幾つかの
種におけるフェロモン受容に関連している(一般的には、ミュラー−シュバルツ
&シルバーシュタイン(Muller-Schwartz & Silverstein),Chemical Signals,プ
レナムプレス、ニューヨーク(1980)を参照のこと)。口蓋上部に位置する、該鋤
鼻器官の神経上皮の軸索は、鋤鼻神経を形成し、かつ副嗅球と直接的なシナプス
接続を有し、またそこから脳の視床下部核および皮質内側の扁桃様前脳への間接
的な情報供給を行う。神経ニューロンにおける端部の遠位軸索は、またVNO にお
ける神経化学的受容体としても機能することができる。シュテンサーズ(Stensaa
s),L.J.等,J.Steroid Biochem.and Molec.Biol.,1991,39,p.553。この
神経は該視床下部と直接的にシナプス接続している。
ジョンソン(Johnson)A.等(J.Otolaryngology,1985,14,pp.71-79)は、多
くの成人における該鋤鼻器官の存在に関する証拠を報告しているが、この器官は
多分非−機能性であると結論付けている。該VNO が機能性の化学的感覚受容体で
あることを示唆する矛盾する結果が、シュテンサーズ(Stensaas),L.等の上記文
献、およびモラン(Moran),D.T.等、ガルシア−べラスコ(Garcia-Velasco),J.
およびM.モンドラゴン(Mondragon) 、モンチ−ブロッホ(Monti-Bloch),L.およ
びB.グロッサー(Grosser) の文献(これらは全てJ.Steroid Biochem.and Mole
c.Biol.,1991,39に掲載されている)に報告されている。
ヒト信号物質およびフェロモンを同定かつ合成し、視床下部機能に影響を与え
るための薬理組成物およびそのための使用法を開発することが望ましいことは明
らかである。本発明は、ヒト患者にある種の神経化学的リガンド、特に幾つかの
エストレンステロイド類およびその関連物質、あるいは幾つかのエストレンまた
はその関連化合物を含有する薬理組成物を経鼻投与した場合に、神経上皮細胞の
化学受容体に特異的に結合し、かつこの結合が一連の神経生理学的応答を生じ、
この応答が個体の視床下部機能の変更をもたらすという、予想外の発見に関連す
るものである。適当に投与した場合、これら化合物の幾つかの該視床下部に及ぼ
す作用は、自律神経系および以下のものを包含するがこれらに制限されない種々
の挙動または生理現象の機能に影響を及ぼす。即ち、不安、月経前のストレス、
恐怖、攻撃性、空腹、血圧、および通常視床下部によって調節される他の挙動並
びに生理的な機能。オットアッペンセラー(Otto Appenseller),自律神経系。基
本的並びに臨床的概念の紹介(The Autonomic Nervous System.An Introduction
of basic and clinical concepts),1990; コーナー(Korner),P.I.自律心血管
機能の中枢神経制御(Central nervous control of autonomic cardiovascular f
unction)およびレビー(Levy),N.M.&マーチン(Martin),P.J.心臓の神経による
制御(Neural control of the heart)(両者ともにハンドブックオブフィジオロジ
ー(Handbook of Physiology),第2章、心血管系−心臓(Cardiovascular System
- the heart),Vol.I,ワシントンDC,1979,アメリカンフィジオロジカルソサ
イエティー(American Physiological Society)に掲載されている) 、フィッシュ
マン(Fishman),A.P.等編、ハンドブックオブフィジオロジー(Handbook of Phy
siology),第3章、呼吸器系(Respiratory System),Vol.II,呼吸の調節(Contr
ol of breathing),MD,1986,アメリカンフィジオロジカルソサイエティー(Ame
rican Physiological Society)。
幾つかの例において、単一のエストレンステロイドまたはその関連化合物を投
与し、また幾つかの例においては、エストレンステロイドおよび/またはその関
連化合物の組み合わせを投与し、更に幾つかの例においては1種以上のエストレ
ンステロイドを、一種以上のアンドロスタンまたはその関連化合物と共に、同時
投与する。
発明の概要
従って、本発明の目的の一つは、ヒト信号物質またはフェロモンを含有し、か
つ個体に経鼻投与するのに適した薬理組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、個体の視床下部機能を変えるために、これらの組成物
を使用する方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、これら組成物を使用して、通常該視床下部によって調
節されている各個体の生理的並びに挙動的機能に影響を与える方法を提供するこ
とにある。
最後に、本発明の目的は、以下の利点をもつ、視床下部機能を変える方法を提
供することにある。即ち、1)丸剤および針を使用することなしに、即ち非−侵襲
的に鼻通路および鋤鼻器官内の化学受容体に直接投与する。2)薬物作用の様式は
循環系を利用せずに、神経系を介する作用であり、従って血液脳関門を考慮する
ことなしに、脳機能に影響を与えることができる。3)該視床下部に影響を与える
直接的手段であって、フェロモン受容体と該視床下部との間の一つのシナプス接
続のみが存在する。また、4)高い特異的な薬物作用を与え、それによって望まし
からぬ副作用の可能性を大幅に減じる。というのは、知覚神経が脳の特定の位置
に存在しているからである。
本発明の付随的な目的、利点並びに新規な特徴は以下の説明部分に与えられ、
かつ部分的には以下の説明を検証することによって当業者には明らかとなるであ
ろうし、あるいは本発明の実施によって知ることができる。
本発明の目的は、個体に経鼻投与するのに適した薬理組成物を提供することに
より達成される。この組成物は製薬上許容される担体および以下の式で示される
エストレンステロイドを含む。
該式において、R1は本質的に1または2個の水素原子、メチル、メチレン、およ
び1または2個のハロゲン原子からなる群から選ばれ、R2は存在しないか、ある
いは本質的に水素原子およびメチル基からなる群から選ばれ、R3は本質的にオキ
ソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、ベンゾイル、サイピオニ
ル(cypionyl)、グルクロニドおよびスルホニル基からなる群から選ばれ、R4は本
質的に水素原子、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ基およびハロ
ゲン原子からなる群から選ばれ、R5は存在しないかあるいは本質的に水素原子、
ヒドロキシ、低級アルコキシおよび低級アシルオキシ基からなる群から選ばれ、
R6は水素原子またはハロゲン原子であり、“a”は該ステロイドのリングAの随
意の芳香族性不飽和を表し、あるいは“b”、“c”および“d”は各々随意の二
重結合を表し、および“e”、“f”、“g”、“h”、“i”および“j”は各々随
意の二重結合を表す。この態様において、一種以上の製薬上許容される担体を含
有する薬理組成物として、該ステロイドを投与することが好ましい。
好ましい一群の化合物は、上記一般式において、“a”が実在し、かつ“g”、
“h”または“i”が随意の二重結合であるようなものである。“h”および“i”
両者が二重結合である場合も好ましい。もう一つの好ましい群の化合物は、“b
”、“c”または“j”を二重結合として含む場合である。更に別の群の化合物は
、二重結合として“c”および“d”を含むものである。更に別の群の化合物は、
R2がメチル基であり、かつ(1)“e”が二重結合であり、(2) R1がメチレンまたは
単一の水素原子であり、あるいは(3)“f”が二重結合であるものである。
用語「低級アルキル」、「低級アルコキシ」等は1〜6個、好ましくは1〜4
個の炭素原子を含む炭素鎖を包含するものとする。ハロゲン原子としては、I、B
r、FおよびClを含む。
本発明の他の目的は、個体中の視床下部機能および自律機能を変える方法を提
供することにより達成される。鼻神経上皮細胞の表面上に露呈された化学受容体
に対するリガンドが与えられ、ここで該細胞は嗅覚性上皮以外の組織の一部であ
り、かつ該リガンドは該個体の鼻通路内に、該リガンドが該化学受容体に特異的
に結合して、該個体の視床下部機能の変更をもたらすように投与される。
本特許出願の全ての態様は、これらに記載された該ステロイド構造の機能的に
等価なものに関係し、かつこれらを包含し、また該機能的な等価性を明確に示す
変性ステロイド類(該変性ステロイド類が明確に記載されているか否かとは無関
係に)に関連する。
図面の簡単な説明
第1図は、1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールの合成を説明する図
である。
第2A、2Bおよび2C図は、男性被検体の鋤鼻器官に、特定のステロイドを局所投
与した際の、受容体電位に及ぼす電気生理学的効果(第2A図)、および嗅覚性上
皮に特定のステロイドを局所投与した際の、受容体電位に及ぼす電気生理学的効
果(第2C図)を表すグラフである。第2B図は、男性および女性被検体のVNO 受容
体電位に及ぼす、エストレンの効果を比較したグラフである。
第3図は、男性(3A)および女性(3B)被検体の鋤鼻器官に特定のステロイドを局
所投与した際の電気生理学的効果を示すグラフである。
第4図は、1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- イルアセテートに対する男
性被検体の種々の自律神経性応答を示す図である。Aは鋤鼻神経上皮の受容体電
位であり、Bはガルバニック皮膚応答(K- オーム) における変化であり、Cは皮
膚温度における変化(℃)である。
第5図は、1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールのメチルエーテルお
よびアセテートに暴露した後のVNO の電位における変化を比較して示した図であ
る。
第6図は、VNO のボメロフェリン(vomeropherins) による刺激に対する、局所
的および自律神経系応答における性的二形性を示す図である。種々のボメロフェ
リン(200 fmoles)およびコントロールとしての希釈剤を、記載した如く30名の男
性および30名の女性の被検体(20〜45才) に投与した。棒は該集団の平均の応答
を示す。
第6Aおよび6B図では、男性(A) および女性(B) の被検体におけるEVG 応答を、
記載の如く測定した。
第6Cおよび6D図では、電気的皮膚活性を記載の如く測定した。各被検体の該VN
O に対するボメロフェリンの送達による応答における変化(kΩで測定) を、男性
(C) および女性(D) の被検体について示した。
第6Eおよび6F図では、α−皮質活性を記載のように測定した。男性(E) および
女性(F) 被検体の、該VNO に対するボメロフェリンの送達による応答における変
化を示した。
第6Gおよび6H図では、皮膚温度(ST)を記載の如く測定した。各被検体の該VNO
に対するボメロフェリンの放出による応答における変化を、男性(G) および女性
(H) 被検体について示した。
A=1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- イルアセテート
B=アンドロスタ-4,16-ジエン-3- オン
C=1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オール
D=3-メトキシ−エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン
E=アンドロスタ-4,16-ジエン-3α−オール
F=アンドロスタ-4,16-ジエン-3β−オール
第7図は、OEをオルファクタント類(olfactants)およびボメロフェリンで刺激
することにより誘発した、男性および女性被検体のエレクトロ−オルファクトグ
ラム(electro-olfactograms)を示す図である。A:400 fmolesのオルファクタン
ト1-カルボン(carvone) およびシネオール(cineole) 並びに200 fmolesの該ボメ
ロフェリンA、B、C、DおよびF並びに立体異性体Eを別々に、1秒のパルス
として、20名の被検体(男性および女性)のOEに適用し、かつ各EOG 応答を記載
の如く測定した。該オルファクタント類およびEおよびBは、有意(P<0.01)の局
所応答をもたらした。B:400 fmolesのオルファクタント1-カルボンおよびシネ
オールは、男性および女性被検体のVNO に送達した場合には、有意のEVG 応答を
誘発しない。
第8図は、以下のボメロフェリン類の、20名の女性被検体の鋤鼻器官に及ぼす
電気生理学的効果を示す図である。
G=アンドロスト-4- エン-3- オン
H=アンドロスタ-4,16-ジエン-3,6- ジオン
J=10,17-ジメチルゴナ-4,13(17)-ジエン-3- オン
K=1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールメチルエステル
L=1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- イル−プロピオネート
EVG=エレクトロ−ボメロナソグラム(electro-vomeronasogram)
GSR=ガルバニ(Galvanic)皮膚応答
=電気皮膚活性(EDA)
ST=皮膚温度
第9図は、20名の男性被検体の鋤鼻器官に及ぼす、ボメロフェリン類の電気生
理学的効果を示す図である。
M=1,3,5(10)-エストラトリエン-3- オール
第10図は、エストラ-1,3,5(10),6- テトラエン-3- オールおよびエストラ-4,1
6-ジエン-3- オールの合成を示す図である。
第11図は、実施例16〜19に記載の化合物の合成を示す図である。
発明の詳細な説明
I.定義
「情動」とは一次的な感情状態である。典型的な負の情動は神経過敏状態、緊
張状態、羞恥感、不安、苛立ち、立腹、激怒状態の感情である。「気分」とは、
長く続く感情状態、例えば罪悪感、悲哀感、絶望感、無価値感、後悔、失意感、
不幸感等である。「性格傾向」とは、個々人のより永続的な局面である。典型的
な負の性格傾向は感受性、後悔感、非難、頑固さ、怒りっぽさ、辛辣さ、臆病、
怠惰等である。
「アンドロスタンステロイド」とは、4-リングステロイド構造によって特徴付
けられ、10−および13−位置においてメチル化された脂肪族多環式炭化水素であ
る。アンドロスタンステロイドはアンドロスタン類の亜群であり、通常は該化合
物が少なくとも1個の二重結合を有することを意味するものと理解される。通常
化合物がゴナン(gonane)として記載されない場合には、該化合物が18−炭素基を
もつものと理解される。しかしながら、18−ノル(Nor)-アンドロスタン類は本明
細書ではアンドロスタンステロイドとみなす。更に、上記の構造上の特徴をもつ
全ての誘導体も、本明細書では一般的にアンドロスタンステロイドとみなす。
本明細書で使用する「エストレンステロイド」とは、4-リングステロイド構造
をもち、A-リングに少なくとも1個の二重結合をもち、10−位がメチル化されて
おらず、およびその3-位におけるオキソ、ヒドロキシまたはヒドロキシ誘導体、
例えばアルコキシ、エステル、ベンゾエート、サイピオネート、サルフェートま
たはグルクロニドをもつ脂肪族多環式炭化水素である。これらの構造上の諸特徴
をもつ誘導体も、一般的にエストレンステロイドと見做す。エストレンステロイ
ドは、またU.S.S.N.07/638,185 においてはエストロゲンステロイドとしても知
られている。これら2つの用語は等価であるとする。
以下の構造は、16−アンドロステンおよびエストレンステロイドに共通な、4-
リングステロイド構造を示すものである。基および置換基の位置を示す際に、以
下の番号系を使用する。
「性的二形」とは、同一の種の雄および雌間の、薬剤の効果またはそれに対す
る応答に差があることを意味する。
薬物の「有効量」とは、該薬物を必要とする患者に投与した際に、ほぼ所定の
生理的および/または精神的な効果をもたらす量および/または濃度の範囲であ
る。本件においては、欠乏患者は視床下部変調または調節を必要とするものある
いは通常視床下部によって影響される生理的または挙動的特徴の変更を必要とす
る患者である。与えられた薬物の有効量は、投与経路に依存して変化する可能性
がある。例えば、該ステロイドを、被検体の顔の皮膚に適用する溶液として投与
する場合、有効濃度は約1〜約100 μg/ml、好ましくは約10〜約50μg/mlおよび
最も好ましくは約20〜約30μg/mlである。該ステロイドを該VNO に直接導入する
場合には、有効量は約1pg〜約1ng、より好ましくは約10〜約50pgである。該ス
テロイドを鼻通路に、軟膏剤、クリーム、エーロゾル等により投与する場合は、
有効量は約100 pg〜約100 μg、好ましくは約1ng〜約10μgである。幾つかの薬
物は或る経路によって投与した場合には有効であるが、他の経路により投与した
場合には有効性をもたないという結果が起こる。
「視床下部」とは、視床下溝下部の第三の脳室の腹面を構成する脳関の部分で
あり、該脳室床を形成する構造を含み、視神経交叉、管状灰白質(cinereum)、ロ
ート部、および乳頭様体を包含する。この視床下部は自律神経系を調節し、かつ
幾つかの生理的および挙動上の機能、例えば所謂闘争並びに逃避応答、性的動機
、水分バランス、糖および脂肪の代謝、飢餓、体温の調節、内分泌分泌等を調節
する。この視床下部は、また血圧を調節するバソプレシンおよび分娩および母乳
の放出を誘発するオキシトシンの源でもある。視床下部の全ての機能は、ここに
記載する信号物質療法によって強力に調節可能である。
ここで使用する用語「リガンド」とは、受容体細胞の表面上に露呈した受容体
分子に特異的に結合することにより該細胞表面を横切る信号変換を開始する、化
学信号として作用する分子である。化学的知覚受容体へのリガンドの結合は測定
可能である。化学的知覚組織、例えば鋤鼻神経上皮または嗅覚神経上皮は、多数
の神経受容体細胞を含み、その各々は少なくとも一つの細胞表面受容体を露呈す
る。該受容体分子の多くは同一のリガンド特異性をもつ。従って、該組織が特異
性をもつリガンドに暴露された場合(例えば、VNO の信号物質への暴露)、細胞
表面受容体電位の総変化を測定することができる。
本明細書で使用する用語「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜4の分枝また
は直鎖の飽和炭化水素鎖、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-ブチル等を意
味する。本明細書で使用する用語「アルコキシ」とは、その従来通りの意味で使
用され、基-OR(ここで、Rはここに定義したアルキル基である) を意味する。
「フェロモン」なる用語は、分泌または鼻による受容を介して、同一種の構成
員同志のコミュニケーションの化学的手段を与える物質である。哺乳類において
は、フェロモンは通常鼻の鋤鼻器官内の受容体によって検知される。通常、フェ
ロモンは発育、繁殖および関連する挙動に作用する。「信号物質」なる用語は、
フェロモンを包含するより一般的な用語であり、化学的知覚メッセンジャーとし
て機能する任意の源由来の物質を意味し、特定の神経上皮受容体に結合し、かつ
生理的または挙動上の効果を誘起する。「ボメロフェリン」なる用語は、その生
理的作用が該鋤鼻器官を媒介する、信号物質である。
ピコグラム(pg)とは、0.001 ナノグラム(ng)に等しい。1ngは0.001 マイクロ
グラム (μg)に等しい。1μgは0.001 ミリグラム(mg)に等しい。
II.本発明の実施形態
A. 本発明において有用なエストレン類
本発明は、一部にはエストラジオール(1,3,5(10)-エストラトリエン-3,17 β
−ジオールとも呼ばれる)と構造的に関連性をもつ幾つかのエストレンステロイ
ド類を意図する。この群のステロイド類は芳香族性1,3,5(10A-リングおよび3-位
におけるヒドロキシまたはヒドロキシ誘導体によって特徴付けられる。
本発明で使用するのに特に適したエストレン類は、それぞれ独立にR1=オキソ
基、β−ヒドロキシ基、水素原子;R2=α−ヒドロキシ基、β−ヒドロキシ基、
水素原子;R3=水素原子、低級アルキル基、アセチル基、プロピオニル基;およ
び“a”が(式Iに示した如く)二重結合であるか、あるいは二重結合ではない
ものである。
好ましいエストレン類は1,3,5(10)-エストラトリエン-3,17 β−ジオール、1,
3,5(10)-エストラトリエン-3,16 α,17 β- トリオール、1,3,5(10)-エストラト
リエン-3- オール-17-オン、1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オール、1,
3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールメチルエステル、および1,3,5(10),
16- エストラテトラエン-3- イル−プロピオネート、1,3,5(10),16- エストラテ
トラエン-3- イルアセテートを包含する。
これらステロイド類およびそのグルクロニド、サルフェート、サイピオネート
およびベンゾエート誘導体の殆どは、当分野において公知の物質であり、例えば
シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、アルドリッチケミカル社(Aldrich Che
mical Co.)等から市販品として入手できる。アルコキシ誘導体およびその合成も
当分野で公知であり、米国特許第2,984,677 号に教示されている。この特許を本
発明の参考文献とする。
1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールは、リサーチプラス社(Researc
h Plus,Inc.) およびステラロイズ社(Steraloids,Inc.)から入手できる。この
化合物の該アセテートおよびプロピオネート誘導体の調製をここに記載する。
チャート1は本発明の意図するエストレン類を含むが、本発明の範囲はこれに
限定されない。以下に示される合成図はこれらエストレン類の調製のための中間
体および亜構造体の合成を図示する。
亜構造体の合成
前記表を参照すると、与えられた列 (E1〜E12)または行(N1〜N4)における中
間体の代表的合成が以下に記載される。
市販品として入手可能な亜構造体、例えばエストロン(ESTRONE) 。
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リチャードペーターズ(Richard H.Peters),J.Med.Chem.,1989,32,1642
M.B.グリーン(Green) 等,Tetrahedron Letters,1982, 23, No.35,pp.3611-3
614
従って、合成可能な化合物はこれらのおよびこれらから誘導可能なもの、即ち
E1、E2、E3、E5、E6、E7、E8、E11 またはE12 と組み合わせた、17- メチル-N1
、17β- メチル-N2 または14α- メチル-N4 を包含する。
ジョージボスウェル(George A.Boswell) 以下に説明する特許C.A.70:58140g
G.ミカエルブラックバーン(Michael Blackburn) 等,標識化合物および放射性薬
品ジャーナル(Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals),19
86,Vol.XXIII,No.2,p.197
従って、合成可能な化合物はこれらのおよびこれらから誘導可能なもの、即ち
E1、E2、E3、E5、E6、E7、E11 またはE12 と組み合わせた、17- フルオロ-N1 、
更にE2、E6またはE12 と組み合わせた17- ヨード-N1 を包含する。
B. 本発明において有用なアンドロステン類
本発明は、さらに上記のエストレンステロイド類と、幾つかのアンドロスタン
ステロイド類、好ましくは以下の式で示されるアンドロスタンステロイド類との
組み合わせを含む組成物および方法をも意図する。
ここで、P1はオキソ、α-(β)-ヒドロキシ、α-(β)-アセトキシ、α-(β)-プロ
ピオンオキシ、α-(β)-メトキシ、α-(β)-低級アシルオキシ、α-(β)-低級ア
ルキルオキシ、およびα-(β)-ベンジルオキシ基からなる群から選ばれ、P2はメ
チル、ヒドロキシメチル、アシルオキシメチル、アルコキシメチル、低級アルキ
ル、ヒドロキシアルキル、アシルオキシアルキルおよびアルコキシアルキル基か
らなる群から選ばれ、P3は存在しないか、あるいはメチル、ヒドロキシメチル、
アシルオキシメチル、アルコキシメチル、低級アルキル、ヒドロキシアルキル、
アシルオキシアルキルおよびアルコキシアルキル基からなる群から選ばれ、P4は
水素原子、オキソ、ハロゲン原子、ヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキ
シ基からなる群から選ばれ、P5は1または2個の置換基を表し、ここでP5は1ま
たは2個の水素原子、メチル基、メチレン基、または1〜2個のハロゲン原子を
含み、P6は水素原子またはハロゲン原子であり、“a”、“b”、“c”、“d”、
“e”、“f”および“h”は随意の二重結合に対する択一的サイトである。
好ましい一つの群のステロイド類は、特に“c”または“d”も二重結合である
場合に、“b”として二重結合を有する。もう一つの好ましい群は、“a”および
“c”
として二重結合をもつ。更に別の好ましい群は、P3がメチル基であり、“h”が
場合により二重結合であり、かつP5がメチレンまたは1または2個の水素原子で
ある。“a”または“b”が二重結合である一群のステロイド類も好ましい。
好ましいステロイド類はアンドロスタ-4,16-ジエン-3- オン(P1=オキソ、a=二
重結合かつp2= メチル基;ステラロイズ社(Steraloids,Inc.)から入手可能であ
る) 、アンドロスタ-4,16-ジエン-3α- オン(P1=α-OH 、a=二重結合かつp2= メ
チル基) 、およびアンドロスタ-4,16-ジエン-3β- オン(P1=β-OH 、a=二重結合
かつp2= メチル基)を包含し、その合成は本出願人による、現在継続中の「ヒト
視床下部機能の変化の神経化学的イニシエータとしてのアンドロスタンステロイ
ド類および関連する薬理組成物並びに方法(Androstane Steroids as Neurochemi
cal Initiaros of Change in Human Hypothelamic Function and Related Pharm
aceutical Compositions and Methods)」と題する、現時点で出願番号の付され
ていない米国特許出願(1992年6月24日付けで出願された米国特許出願第07/903
,604号の一部継続出願である)に記載されている。この特許出願を本発明の参考
文献とする。
C. 合成法
ステロイド類の合成反応の一般的な手順は当業者には公知である(例えば、フ
ィーザー(Fieser),L.F.等,Steroids,ラインホルド社、N.Y.,1959を参照のこ
と)。反応時間および温度を決定する必要がある場合、これらは日常的な方法論
によって決定することができる。所定の試薬の添加後、該混合物を不活性雰囲気
下で攪拌し、アリコートを一時間間隔で取り出す。これらのアリコートを薄層ク
ロマトグラフィーによって分析して、出発物質の消失をチェックし、この時点で
仕上げ手順を開始する。該出発物質が24時間以内で使い尽くされない場合には、
該混合物を還流加熱し、前と同様に、該出発物質が残されていないようになるま
で、一時間毎にアリコートを分析する。この場合、該仕上げ手順を開始する前に
該混合物を放冷する。
エストレン類のアルコキシ誘導体は、その対応するヒドロキシステロイド類か
ら、アルキル化剤、例えばトリメチルオキソニウムフルオロボレート、トリエチ
ルオキソニウムフルオロボレートまたはメチルフルオロスルホネート等との、不
活性塩化炭素溶媒、例えば塩化メチレン中での反応によって調製される。あるい
は、アルキル化剤、例えばアルキルハライド、アルキルトシレート、アルキルメ
シレートおよびジアルキルサルフェートを、酸化銀または酸化バリウム等の塩基
と共に、DMF 、DMSOおよびヘキサメチルホスホルアミド等の極性で非プロトン系
溶媒中で使用することもできる。また、塩基、例えばK2CO3 を、エタノールまた
はアセトン等の溶媒中で使用することも可能である。
該生成物の精製は、当業者には公知のクロマトグラフィーおよび/または再結
晶化により達成される。
D. 薬理組成物およびその使用法
本発明の一態様は各個体の視床下部機能を変更する方法である。もう一つの態
様は、各個体の自律機能を変えることである。これらの自律機能は心拍数、呼吸
数、脳波パターン(百分率α皮質活性)、体温を包含するが、これらに制限され
ない。他の態様は、各個体の負の情動、負の気分または負の性格傾向を減ずる方
法を包含するが、これらに限定されない。もう一つの態様は、女性の月経前のス
トレスを治療する方法である。これら態様の全ては、幾つかのステロイド類、エ
ストレンステロイド類の組み合わせ、および1種以上のエストレンステロイド類
と1種以上のアンドロスタンステロイド類との組み合わせの、非−全身的な経鼻
投与によって達成される。
この特定の投与形式はその他の投与様式、例えば経口摂取または注入とは、該
ステロイドリガンドの経鼻投与によって与えられる該VNO との直接的接触を達成
するという理由から、幾つかの大きな意味で区別される。本発明の方法において
は、この適当なリガンドは、該鼻通路および該鋤鼻器官内の化学受容体に、丸剤
または針を使用することなく、即ち非−侵襲的手段によって直接投与される。薬
物の作用は、本発明に記載するような該リガンドの、該鼻内の神経上皮細胞、特
にVNO によって露呈された、特異的受容体への結合を介して媒介される。この薬
物作用の態様は、神経系を介するものであって、循環系を介するものではなく、
従って脳関門を考慮することなしに、脳機能に影響を与えることができる。これ
らの治療方法は、該神経系を通しての該視床下部に影響を与える直接的手段を与
える。というのは、フェロモン受容体と該視床下部との間にただひとつのシナプ
ス接続が存在するからである。知覚神経は脳の特定の位置にあるので、この方法
は著しく特異的な薬物作用を有し、従って望ましからぬ副作用の可能性を大幅に
減ずる。
VNO 接触は、該VNO が化学的受容性/フェロモン性機能と関連していることか
ら、重要である。このVNO は、鼻隔壁の下縁部に見られる一対の視覚をもたない
(blind) 管状の憩室からなる。このVNO は神経上皮を含み、その軸索は扁桃体へ
の、またそこから該視床下部への直接的シナプスを有する。このVNO は、ヒト胎
児を含む多くの陸生の脊椎動物において存在することがよく知られているが、成
人のヒトにおいては、一般的に根本的なものであると考えられている(ジョンソ
ン等の上記文献参照)。
本明細書に記載する該活性化合物またはその硫酸化、サイピオネート化、ベン
ゾエート化、プロピオネート化、ハロゲン化またはグルクロネート化誘導体は、
直接投与できるが、好ましくは組成物として投与される。これらは、液状の投与
形態、例えば液体、懸濁液等、好ましくは正確な服用量の単一回の投与に適した
単位投与形剤形で調製される。液状の服用体は鼻用滴剤またはエーロゾルとして
投与することができる。
あるいは、本発明の活性化合物は、クリームまたは軟膏組成物として調製して
鼻孔内に局所投与することもできる。別の態様として、シリコーン等の合成ポリ
マーおよびゼラチンおよびセルロース等の天然ポリマーを使用して、多量である
いは微視的濃度で封入することにより、これら薬物を制御された放出状態とする
こともできる。放出速度は拡散速度を調節するために使用した該ポリマー系を適
当に選択することにより調節できる(ランガー(Langer),R.S.等,Biomaterials
,1981,2, p.201)。ゼラチンおよびセルロース等の天然ポリマーは、数分乃至
数時間で、徐々に溶解し、一方でシリコーンは数カ月間そのままの状態に保たれ
る。本発明の組成物は公知の製薬担体または賦形剤、式Iの活性エストレン化合
物1種またはそれ以上を含み、また該組成物は付随的に一種以上のアンドロスタ
ンステロイド類を含んでもまた含まなくともよい。更に、本発明の組成物は他の
医薬、
製剤に必要な試薬、担体、添加剤等を含むことができる。
推定上のヒトフェロモン伝達の最も可能生のある手段は、他者の皮膚上に存在
する天然産のフェロモンの吸入である。5α−アンドロスト-16-エン-3α−オー
ルおよび5α−アンドロスト-16-エン-3−オンを包含する16- アンドロステンス
テロイド類、4,16- アンドロスタジエン-3- オン、5α−アンドロスタジエン-3
β−オールおよび恐らく5α−アンドロスタジエン-3α−オールは、ヒトの中に
自然に発生し、皮膚上に存在する可能生がある。ヒトの皮膚上の16- アンドロス
テンステロイド類の自然に生ずる最大濃度は2〜7ng/cm2であると予想される。
密な接触中には、ヒトは自然に生ずるステロイドの700 ng程度に暴露されるもの
と推定される。これら化合物は、比較的非−揮発生であるので、密な接触状態に
おいてさえ、ヒト被検体は他者の皮膚由来の自然発生ステロイドの0.7 pg程度を
吸入するに過ぎないであろう。この吸入された量の僅かに約1%が鋤鼻器官の受
容体に到達するに過ぎないであろう。かくして、自然に生成されるフェロモンに
対する予想最大自然暴露は0.007 pgである。
投与される活性化合物の量は、勿論治療すべき患者、苦痛の重度、投与様式、
投与頻度、および処方した医師の判断に依存する。しかしながら、該鋤鼻器官の
内腔内に直接放出される、少なくとも約10pgの単一の投与量は、該鼻孔に投与し
た場合には、一時的な自律応答を誘発するのに有効であり、従って該投与量は約
100 pg〜約100 μg 、好ましくは約1pg〜約10μg 、より好ましくは約10pg〜約
1μg である。投与頻度は、望ましくは1時間毎乃至1月毎の投与範囲であり、
好ましくは8回/日〜1回/2日、より好ましくは1〜3回/日である。例えば
水、塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等の担体中に、1種
以上の活性化合物と、随意の製薬添加剤を含む軟膏剤は石油ゼリー、ラードまた
はラノリン等のベースを使用して調製できる。
液化した投与可能な薬理組成物は、例えば上記の活性化合物および随意の製薬
添加剤を、例えば水、塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等
の担体中に、例えば溶解し、分散することにより、溶液または懸濁液として調製
できる。必要ならば、投与すべき該薬理組成物は、また少量の無毒の助剤、例え
ば湿潤または乳化剤、pH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウ
レート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエー
ト等を含むことができる。このような投与剤形を調製するための実際の方法は、
当業者には公知であるか、あるいは自明であり、例えばレミングトンズファーマ
シューテイカルサイエンスズ(Remington's Pharmaceutical Sciences),マック出
版社(Mack Publishing Co.),イーストン(Easton),PA,第15版、1975を参照でき
る。投与すべき組成物または処方物は、何れにしろ治療すべき患者の症状を緩和
するのに有効な量で、1種以上の本発明の活性化合物を含む。
エーロゾル投与のためには、該活性成分を、好ましくは界面活性剤または噴射
剤と共に、微細に粉砕した形状で供給する。典型的な活性成分の割合は0.001 〜
2重量%、好ましくは0.004 〜0.10重量%の範囲である。
界面活性剤は無論のこと、無害でなければならなず、好ましくは該噴射剤に可
溶性のものである。このような試薬の代表的なものは、6〜22個の炭素原子を有
する脂肪酸のエステルまたは部分エステル、例えばカプロン酸、オクタン酸、ラ
ウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、オレステアリン酸および
オレイン酸と、脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物、例えばエチレング
リコール、グリセロール、エリスリトール、アラビトール、マニトール、ソルビ
トール、およびソルビトール由来のヘキシトール無水物(「スパン(Spans)」な
る商品名の下で市販されているソルビタンエステル類)およびこれらエステルの
ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン誘導体である。混合エステル、
例えば混合または天然グリセリド類を使用することも可能である。好ましい界面
活性剤はオレエートまたはソルビタン、例えば「アーラセル(Arlacel) C 」(ソ
ルビタンセスキオレエート)、「スパン(Span) 80」(ソルビタンモノオレエー
ト)および 「スパン(Span) 85」(ソルビタントリオレエート)なる商品名の下で
市販されているものである。該界面活性剤の量は、該組成物の0.1-20重量%、好
ましくは0.25-5重量%の範囲であり得る。
該組成物の残部は、通常噴射剤である。液状噴射際は、典型的には周囲条件下
でガスであり、これは加圧下に濃縮される。適当な液状噴射剤としては、5個ま
での炭素原子を有する低級アルカン類、例えばブタンおよびプロパン、フッ素化
またはフッ素化塩素化アルカン類、例えば 「フロン(Freon)」として市販されてい
るものである。上記物質の混合物を使用することも可能である。
エーロゾルを調製するに際しては、適当なバルブを備えた容器を、微細に粉砕
された活性成分と界面活性剤とを含有する適当な噴射剤で満たす。かくして、こ
れら成分を、該バルブの動作により放出されるまで、高い圧力下に維持する。
投与の更に別の手段は、各個体の皮膚、特に顔面の皮膚に揮発性の液状組成物
を局所的に適用することである。この組成物は、通常エタノールまたはイソプロ
パノール等のアルコールを含むであろう。快適な香料を該組成物に含めることも
可能である。
E. 情動、気分および性格傾向の測定
情動、気分および性格傾向と関連する感情状態は、一般的にアンケート調査を
利用することにより測定する。例えば、感情状態に関連した多数のアジェクティ
ブ(adjective) を含むアンケートを各個体に与える。該個体は該アジェクティブ
に記載されたその感情状態を評価し、かつ該感情の強度を数値尺度でランク付け
する。関連するアジェクティブの集計および各アジェクティブの患者による評価
の統計的な分析は、種々の感情状態の測定のための基礎を与える。
また、感情状態は自律変化、例えばポリグラフによる評価において使用されて
いるもの(例えば、ガルバニ皮膚応答、心拍数等)によって測定することも可能
である。カバナック(Cabanac),M.,アニュアルレビューオブフィジオロジー(Ann
ual Review of Physiology),1975,37,p.415; ハーディー(Hardy),J.D.,「体
温調節(Body Temperature Regulation)」,第59章,pp.1417,Medical Physiolo
gy,Vol.IIEd.:VBマウントキャッスル(Mountcastle)(1980);ウォルフラムブセ
イン(Wolfram Bouscein),エレクトロデルマルアクティビティー(Electrodermal
Activity),(プレナムプレス(Plenum Press,1992)。更に、非−言語キュー、例
えば顔の表情および身体の姿勢を評価することもできる。
F. 幾つかの型の精神医学的疾患の治療における使用
局所的および/または10回の鼻内投与に適した、かつ一種以上の本明細書に記
載したステロイド物質を含有する組成物が治療薬として有効であり、幾つかの型
の精神医学的疾患、特に幾つかの型のノイローゼの治療において効能をもつ。好
ましい態様においては、全身的な作用を引き起こすための他の薬物処方とは違っ
て、本発明の組成物は粘膜または経皮吸収の可能性を最小化するように処方され
ている。というのは、これら物質の治療薬としての作用の様式が、鼻内の、より
詳しく言えばVNO 内の神経受容体の刺激によるものであるからである。本発明の
組成物は、全身的な循環の結果としてではなく、該VNO 中の化学的知覚受容体の
刺激の結果として有効であるので、該活性成分の全身的循環系内での吸収および
付随的な組み込みは、有効ではなく、実際には却って副作用の可能性を高める可
能性がある。これらの組成物は、該組成物の1またはそれ以上の該エストレン類
または16- アンドロステン類が患者の該VNO に与えられるような方法で投与され
た場合に有用である。
治療可能なノイローゼは急性および/または一時的なものであり、あるいは該
ノイローゼは永続生または周期性のものであってもよい。これらは、一般的に気
分の変化を伴う可能性のある異常な症状(不安、パニック、抑うつ)または思考
上の限られた異常性(強迫観念、不合理な恐怖感)または挙動上の限られた異常
性(儀典行動または強迫、偽精神病的またはヒステリー性の変調サイン)を包含
する。このような疾患においては、これらの組成物は、特に関連する不安または
抑うつ症等を改善することにより、短期間に渡り幾つかの有利な作用をもつ可能
性がある。
他の性格学的疾患も、本発明の組成物の鼻内投与によって治療可能である。こ
れらの状態は、特徴的な個人的スタイル、例えば妄想、禁断、精神病性、心気症
性等の状態、あるいは社会的予想と逆行する可能性のある挙動パターン、例えば
アルコールまたは他の物質の乱用、社会的に異常なまたは強情な挙動等を包含す
る。
正常な(例えば、月経)および関連する疾患または傷害性(例えば、慢性病)
両者を包含する、幾つかの肉体的なまたは生理的な状態は、精神医学的疾患、神
経性疾患として、あるいは不安もしくは抑うつ的情動または気分として現れる神
経学的な要素をもつ可能性がある。これらの状態も、該患者のVNO に本発明の組
成物の1種以上の該エストレン類またはアンドロステン類を与えるように、該組
成物を投与する方法によって治療可能である。
i.不安
不安は、困惑、切迫した危険、危惧または緊張感によって特徴付けられる不快
な情緒的状態である。鼻内に投与するのに適した、かつ本明細書に記載した該エ
ストレンステロイド物質1種以上を含む組成物が、不安の治療薬として有用であ
り、不安の軽減において効能を有する。僅かな狼狽から症候群に及ぶ、この疾患
の多数の発現形態があり、これらを鎮静化することができる。不安は多くの精神
医学的疾患の基本的な症状であるばかりか、多くの正常な生理的並びに社会的状
態の要素でもある。更に、不安の症状は共通して、抑うつ症および特に気分変調
疾患(神経性の抑うつ症)および多くの個人的な疾患と関連性をもっている。不
安性疾患は分離でき、パニック疾患、恐怖症および一般化された不安性疾患、後
−外傷性ストレス疾患および強迫−神経症を包含する。
ii.不安の治療に使用する薬物
薬物治療は不安の主な治療法であり、しばしば挙動的療法と組み合わせて利用
される。不安を治療するのに最も頻繁に使用される薬物はベンゾジアゼピン類で
ある。ベンゾジアゼピン類は、催眠、鎮静、不安解消、抗痙攣および筋弛緩作用
をもつ。結局、これらは不安性疾患とは異なる多くの適応症および多くの異なる
状態(例えば、不眠症、アルコール性禁断状態、筋肉痙攣、癲癇、内視鏡検査手
順に対する麻酔および鎮静)に対して使用される。これら薬物は比較的安全であ
り、以前使用されていたバルビツレート類と比較して利点を有する。これらは作
用を迅速に発現し、多幸感を発生する。しかしながら、これらの良好な安全性を
証拠付ける報告があるにも拘らず、ベンゾジアゼピン類は、特にアルコールと共
に用いた場合に、鎮静、運動失調、記憶力の減退、低下した運動性協調および危
険な中毒症状を包含する、その使用を制限する幾つかの性質に関連をもつ。医師
並びに患者両者はこの潜在的な中毒性に次第に気づきつつあり、またそういう動
向がないとしても、その長期に及ぶ使用を回避することが望ましいことを示す証
拠がある。
最近、より選択的な不安解消特性をもつと考えられる新規な一群の非−ベンゾ
ジアゼピン系の不安解消剤、即ちアザスピロデカンジオン類が推奨されている。
この群の最初に商品化されたものはブスピロン(buspirone) である。この化合物
は一般化された不安疾患の治療において、ベンゾジアゼピン類と同程度に有効で
あることが報告されている。ベンゾジアゼピン類と比較して、ブスピロンは低鎮
静性であり、より低い程度にアルコールの作用を強め、かつ低い中毒性を有する
ものである。しかしながら、正常な臨床的使用において、これは既にベンゾジア
ゼピン類を投与した患者において、これらをブスピロンに代えることは困難であ
ることが分かっている。というのは、ブスピロンは多幸感をもたらさず、かつ患
者はベンゾジアゼピン類を摂取していた場合程に満足を感じていない。更に、ブ
スピロンの遅い作用発現(1〜3週間)は急性不安症の治療におけるその有効性
を制限する。全身的に投与されたブスピロン不安解消剤は、CNS セロトニン5-HT
受容体に対する高いアフィニティーをもつことが示されており、かつこれが不安
解消の様式であると考えられている。
もう一つの群の新規な不安解消剤は全身的に投与されるベンゾフラン誘導体類
である。これら物質はCNS ドーパミンD2受容体に対する高いアフィニティーをも
つことが示されている。
iii.気分的(情動性)疾患
本発明の組成物は、また幾つかの型の気分的疾患の症状の幾つかの治療におい
ても有用である。気分的な疾患、例えば主な抑うつ病および繰病は、主な臨床的
徴候として、気分における変化によって特徴付けられる。何れの極端な気分も、
精神病と関連する可能性があり、しばしば支配的な気分と一致する、混乱した妄
想的な思考および見解によって特徴付けられる。逆に、精神病は気分における関
連したまたは二次的な変化をもつ可能性がある。同様に、しばしば医学的疾病ま
たは正常な周期的機能不全、例えば月経前のストレスと関連する正常な悲しみ、
悲惨さおよび失望、並びに気分変調または意気消沈も、本発明の組成物の鼻内投
与によって軽減することができる。
iv.本発明の組成物の作用様式
本発明の組成物の作用様式は、これまでに報告されているあらゆる治療様式と
は全く異なっている。本発明において記載された該活性ステロイドおよびステロ
イド−様化合物は、局所的投与において直接利用可能なVNO 内の受容体を刺激お
よび/またはこれと結合する。CNS 受容体との直接的接近は必要とされない。こ
れら受容体の刺激は、これに続いて神経経路を介して伝達される信号を発生し、
患者の脳の視床下部領域におけるように、神経精神性の応答を誘発する。この応
答は、心拍数、呼吸頻度、E.E.G.パターン、活動電位、皮膚温度、ガルバニ皮膚
応答および瞳孔径等を包含(但し、これらに限定されない)する様々な自律機能
における不連続な変化をもたらす。この応答は、また測定可能な負の情動および
負の気分の現象としても現れる。
視床下部機能の変調と精神医学的疾患の治療との間の関連性は十分に理解され
ていないが、本発明の組成物が自己−評価性の悲観的態度、即ち負の気分的特徴
並びに負の性格の軽減において有効であることは明白である。これらの変化は視
床下部によってもたらされる自律性変化を伴う。該変化は副交感神経の緊張にお
ける増加(あるいはまた、交感神経系の緊張の減少)と一致する。
本発明の活性化合物はその特異性においてフェロモン−類似であるので、該化
合物はその刺激および活性において種特異性を呈し、従ってその有効性の立証は
動物モデルで実施することはできない。
III.実施例
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するもので
はない。
以下の実施例で使用する略号は以下の通りである。aq.=水性、RT= 室温、PE=
石油エーテル(b.p.50-70℃)、DMF=N,N-ジメチルホルムアミド、DMSO= ジメチ
ルスルホキシド、THF=テトラヒドロフラン。実施例1−エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3- オール(28)の合成
下記の合成法は、図1に示す:
エストロンp-トルエンスルホニルヒドラゾン(27)
乾燥メタノール(2.5リットル) を溶媒とするエストロン(26)(270g,1.00mol)及
びp-トルエンスルホニルヒドラジド(232.8g,1.25mol)を、20時間、加熱還流した
。この混合物をコニカルフラスコに移し、冷却した。その結晶生成物を、吸引ろ
過によって収集し、かつメタノール(300ml) で洗浄した。生成物の他の収穫物は
、ろ液を順次2000ml、800ml 及び400ml まで蒸発し、かつそれぞれ結晶化するこ
とによって得た。合計収量は、433.5gであった(99 %)。
1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オール(28):
乾燥テトラヒドロフラン(8.0リットル) を溶媒とするエストロンp-トルエンス
ルホニルヒドラゾン(27)(219.0g,500mmol)を、塩化ナトリウム/氷浴中で冷却し
た。この混合物を、n-ブチルリチウム(ヘキサンを溶媒とする2.5M溶液、800ml,
2.00mol)を、両端針(double-ended needle) を介して添加しながら、機械的に撹
袢した。この混合物を、室温で3日間撹袢した。氷(250g)を、引き続き飽和塩化
アンモニウム溶液(500ml) を添加した。この相を、撹袢して混合し、その後沈降
した。この水相をテフロンチューブのついたアスピレーターを用いて除去し、エ
ーテル(500ml) で抽出した。これらの2種の有機相を順次、飽和炭酸水素ナトリ
ウム溶液(500ml) 、次に飽和塩化ナトリウム溶液(500ml) の同じ浴(batoh) で洗
浄した。この有機相を乾燥し(MgSO4) 、かつ真空で蒸発し、粗生成物を得た。こ
れを、500gのシリカゲル60、230-400メッシュフラッシュろ過し、酢酸エチル/
ヘキサン(25:75、2.5 リットル) で溶出した。得られたろ液を、真空で蒸発し、
結晶性物質を得た。この生成物を、メタノール(300ml) /水(75ml)で再結晶し、
メタノール(80ml)/水(20ml)で洗浄した。酢酸エチル/ヘキサン(12.5:87.5) で
更に再結晶し、純生成物(88.9g,70%)を得た。実施例2−1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールのアシル誘導体の合成
エーテル(10ml)を溶媒とする1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オール(2
54mg,1.00mmol)に、無水酢酸(0.25ml)(又はプロピオネートのためにプロピオン
酸無水物)を、その後ピリジン(0.25ml)を添加し、かつこの混合物を、室温で
16時間撹袢した。この混合物を、氷/水中に注入し、かつエーテルで抽出した(2
×20ml) 。得られた有機抽出物を水、飽和硫酸銅溶液、水、及び飽和塩化ナトリ
ウム溶液で洗浄し、乾燥(MgSO4) し、かつ真空で乾燥し、粗生成物を得た。これ
を、17.5g のシリカゲル60( 230-400 メッシュ) 上でフラッシュクロマトグラフ
ィーし、10-12 %酢酸エチル/ヘキサンで溶出し、純生成物(192mg,55%)を得
た。実施例3−エストラ-4,16-ジエン-3- オン(l) の合成
8.6ml の無水THF を溶媒とするエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3- メチル
エーテル(551.5mg,2.055mmol)に、無水アンモニア30ml、及びt-ブチルアルコー
ル6.76g 、小さく切断したリチウムワイヤー(lithium wire)(0.24g,35mg原子)
を添加した。この反応混合物を、アルゴン下で4.5 時間還流し、その後メタノー
ル(2.3ml) を添加し、かつこのアンモニアを一晩かけて蒸発除去した。得られた
残渣を、メタノール25mlに溶解し、かつ5N HClを用いて、ほぼpH1 まで酸性化し
た。55〜70℃油浴で15分間加熱した後、冷却した加水分解混合物を、25mlの水及
び50ml酢酸エチルの間で沈殿し、かつこの水相を酢酸エチル25mlで抽出した。一
緒にした有機抽出物を、飽和炭酸水素ナトリウム25ml及びブライン25mlで洗浄し
、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過した。減圧下で溶媒を除去し、油状の残渣
0.57g を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:15%酢酸エチル/
ヘキサン)で精製し、その後ペンタンで再結晶し、TLC で均質である結晶(206.1
mg,39%) を得た(m.p.67-71 ℃) 。実施例4−エストラ-2,5(10),16-トリエン-3- メチルエーテル(2) の合成
無水THF 19mlを溶媒とするエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3- メチルエー
テル(1.22g,4.54mmol) に、t-ブチルアルコール14.99g、及び無水アンモニウム
約70ml、小さく切断したリチウムワイヤー(0.53g,76mg原子)を添加した。こ
の反応混合物を、アルゴン下で6時間還流し、メタノールで失活し、かつアンモ
ニアを一晩かけて蒸発除去した。この残渣の、水100ml への懸濁液を、酢酸エチ
ル各回(portions)100ml で2回抽出し、一緒にした有機抽出物を、ブラインで洗
浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧下で溶媒を除去した後、この残渣を
、溶離液として1%酢酸エチル/ヘキサンを用い、シリカゲル上でフラッシュク
ロ
マトグラフィーを行い、その後無水エタノールで再結晶し、TLC で均質な、綿毛
のような白色結晶(884.1mg,3.269mmol,72%)を得た(m.p.72-73℃)。実施例5−エストラ-5(10),16-ジエン-3- オン(3) の合成
アセトン50mlを溶媒とするエストラ-2,5(10),16-トリエン-3- メチルエーテル
(2) (646.3mg,2.390mmol)を、シュウ酸二水和物(0.84g,6.7mmol)を用いて、室
温で6時間加水分解した。この反応混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム25mlを用
いて停止し、その後酢酸エチル各回25mlで2回抽出した。一緒にした有機抽出物
を、ブライン25mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、かつ減
圧下で濃縮した。得られた残渣を、ヘキサンで再結晶し、生成物(462.5mg,1.80
4mmol,75%) を得た(m.p.112-116 ℃) 。実施例6−エストラ-5(10),16-ジエン-3- オール(4) の合成
無水エーテル6mlを溶媒とするエストラ-5(10),16-ジエン-3- オン(3)(301.1m
g,1.174mmol) を、水素化リチウムアルミニウム(50.0mg,1.32mmol)を用い、室
温で1時間還元した。水酸化ナトリウム10水和物(2.00g) で、10分間反応を停止
した後、この懸濁液をセライトを通してろ過し、その残渣をエーテル各回25mlで
4回洗浄した。一緒にしたろ液を減圧下で濃縮し、かつフラッシュクロマトグラ
フィー(シリカゲル、5%酢酸エチル/ヘキサン溶離液)と、続く混合された分
画の分取TLC で精製した。より極性のある生成物が、水性エタノールから再結晶
することができるが、かなりの損失があり、固体4.8mg を得た。より極性の少な
い生成物が、水性メタノールから再結晶され、白色結晶(59.5mg)を得た(m.p.9
8-100 ℃)。総収量は、64.3mg(0.249mmol,21 %)であった。実施例7−エストラ-4,9,16-トリエン-3- オン(5) の合成
ピリジン(5.0ml,62ml) を溶媒とするエストラ-5(10),16-ジエン-3- オン(3)(
0.38g,1.5mmol)を、塩化ナトリウム氷浴中で-13 ℃まで冷却し、ピリジニウム
ブロミド過ブロミド(1.58g,4.94mmol) をわずかづつ加え、T<-4℃とした。1分
間撹袢した後、フェノール(0.25g,2.7mmol)を添加し、室温で24時間、反応を継
続した。酢酸エチル(50ml)を添加し、この反応混合物を1N HCl 25ml 、飽和硫酸
銅各回25mlで2回、5%水酸化ナトリウム25ml、及びブライン25mlで洗浄した。
硫酸マグネシウム上で乾燥後に、ろ過し、かつ減圧下で濃縮し、その残渣を無水
アルコール10mlで吸収し、粒状亜鉛(0.33g,5.0mg-atm)を添加し、かつこの混合
物を30分間還流した。上清を除去し、残渣を無水エタノール10mlで洗浄し、かつ
一緒にした上清を減圧下で濃縮した。得られた樹脂を、シリカゲル上で、15%酢
酸エチル/ヘキサン溶離液を用いて、フラッシュクロマトグラフィーを行った。
適当な分画を集め、濃縮し、その後ヘキサンで再結晶し、固体生成物(117.5mg
,0.4619mmol,31 %)を得た(m.p.87-92℃)。実施例8−エストラ1,3,5(10),16-テトラエン-6- オン-3-アセテート(6) の合成
三酸化クロム(13.4g,0.1340mol)を、塩化メチレン200ml 中に懸濁し、その後
塩が入った氷浴で、-10 ℃に冷却した。3,5-ジエチルピラゾール(12.90g,0.134
2mol) を添加し、かつこの混合物を20分間撹袢した。塩化メチレン20mlの冷却さ
れた溶液を溶媒とするエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3- イルアセテート(4
.00g,13.5mmol)を添加し、この反応物を2時間撹袢し、この間T<-8℃であった
。その後この混合物を、シリカゲル200gを通してろ過し、かつこの生成物を、更
に塩化メチレンを用いて溶離した。適当な分画を一緒にし、かつ濃縮した後に、
この粗生成物を、溶離剤として15%酢酸エチル/ヘキサンを用い、シリカゲル上
でフラッシュクロマトグラフィーを行った。適当な分画を収集し、かつ減圧下で
濃縮し、白色固体を得た(0.92g,3.0mmol,22%)(m.p.87-103 ℃)。実施例9−エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3- オール-6- オン(7) の合成
メタノール30mlを溶媒とするエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-6- オン-3-
アセテート(203.1mg,0.6543mmol) を、5重量%水酸化ナトリウム1.5ml で、40
分間、けん化した。この反応混合物を、減圧下で濃縮し、水で50mlにし、1N HCl
で中和し、かつ塩化メチレン各回25mlで3回抽出した。一緒にした有機相を、ブ
ライン50mlで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、白色固
体を得、これをベンゼン/ヘキサンで再結晶し、分取TLC を行い、白色晶質の固
体(52.8mg,0.197mmol,30 %)を得た(m.p.188-191℃)。実施例10−エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-6α- オール-3- イル(8) の合成
エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-6- オン-3- イルアセテート(6)(421.4g,
1.358mmol)を、95%のエタノール35mlに懸濁し、水素化ホウ素ナトリウム(98.8m
g,2.61mmol)で、室温で100 分間還元した。減圧下で濃縮後、この残渣を25mlの
水に懸濁し、1N HClで中和し、かつ塩化メチレン各回25mlで3回抽出した。一緒
にした有機相を、ブライン25mlで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し
、かつ濃縮した。得られた白色状のものを、溶離剤として25%酢酸エチル/ヘキ
サンを用いて、シリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーを行った。一緒に
した分画を、濃縮し、白色固体(0.12g,0.38mmol,28%) を得た(m.p.209-212
℃)。実施例11−エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3,6- ジオール(9) の合成
無水THF 5ml を溶媒とする水素化リチウムアルミニウム(LAH,95%、46.9mg,
1.17mmol) の懸濁液に、無水THF 5ml を溶媒とするエストラ-1,3,5(10),16-テト
ラエン-6- オン-3- イルアセテート(6)(422.9mg,1.360mmol) を、撹袢しながら
滴下した。この反応物を50分間撹袢し、その後更にLAH(46.5mg,1.16mmol) を添
加し、得られた反応物を22時間撹袢した。4時間還流した後も、TLC では依然と
して出発物質を検出した。この反応を、水0.5ml +20重量%硫酸0.5ml で停止し
、かつ減圧下で濃縮した。この残渣を、温酢酸エチルを各回10ml用いて4回抽出
し、かつセライトを通してろ過した。集められたろ液を濃縮し、フラッシュクロ
マトグラフィーで2回精製し、固体生成物(0.05g,0.2mmol,10%)を得た(m.
p.150-157℃)。実施例12−エストラ1,3,5(10),7-テトラエン-3- オール(10)の合成
ジエチレングリコール2ml を溶媒とする、エキリン(100.2mg,0.3733mmol) の
懸濁液に、ヒドラジン(59 μl,1.9mmol) 及び水酸化カリウム(0.04g,0.7mmol)
を添加した。この混合物を、200-214 ℃の油浴中で、2時間撹袢し、その後冷却
したこの反応物を、水10mlで希釈し、1N HClで中和し、かつエーテル25mlで3回
抽出した。一緒にした有機抽出物を、ブラインl0mlで洗浄し、硫酸マグネシウム
上で乾燥し、ろ過し、濃縮し、かつ分取TLC (シリカゲル、15%酢酸エチル/
ヘキサン溶離液)で精製し、黄色樹脂を得た。更に生成物を、チャコールで脱色
することで精製し、水性エタノールから再結晶し、黄褐色の結晶(13.2g,51.9
μM,14 %)を得た(m.p.130-134℃)。実施例13−20- ホモエストラ-1,3,5(10),6,8,17-ヘキサン-3- オール(11)の合成
無水DMSO 2.1mlを溶媒とするトリフェニルメチルホスホニウムブロミド(671.0
mg,1.878mg)及びカリウムt-ブトキシド(212.1mg,1.890mmol)の懸濁液を、アル
ゴン下で、76-86 ℃浴で、1時間加熱し、その後無水DMSO 2.1mlを溶媒とするエ
キレニン(100.1mg,0.3579mmol) を添加し、かつ得られた緑色の溶液を1時間撹
袢した。冷却後、氷冷した1N HClを10ml添加し、この混合物を、エーテル各回10
mlで3回抽出した。一緒にした有機抽出物を、飽和炭酸水素ナトリウム10ml+ブ
ライン10mlで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、セライトを通してろ過し、
かつ減圧下で濃縮した。この橙色油状の残渣を、分取TLC (シリカゲル、25%
酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、生成物(75.5mg,0.286mmol,76 %)を得、
これはTLC で均質であった(m.p.113-121℃)。実施例14−エストラ-1,3,5(10),6- テトラエン-3- オール(17)の合成
ジエチレングリコール1.8ml を溶媒とする、エストラ-1,3,5(10),6- テトラエ
ン-3- オール-17-オン(91.1mg,0.339mmol) 、ヒドラジン(54 μg,1.7mmol) 、
及び水酸化カリウム(0.06g) を、アルゴン下で、200 ℃の浴で2時間加熱した。
室温まで冷却後、水10mlを添加し、かつこの溶液を、1N HClでpHほぼ2まで酸性
化した。得られた懸濁液を、エーテル10mlで3回抽出し、かつ一緒にした有機抽
出物を、ブライン10mlで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、かつ減圧下で濃縮
した。この粗固体を分取TLC (シリカゲル上で、25%酢酸エチル/ヘキサンを用
いて)で精製し、TLC で均質な生成物を得た(5.9mg,23 μmol,7%)。実施例15−エストラ-4,16-ジエン-3- オール(18)の合成
無水エーテル1.7ml を溶媒とするエストラ-4,16-ジエン-3- オン(l)(87.2mg
,0.340mmol)に、水素化リチウムアルミニウムを添加し、この懸濁液を17分間
撹袢した。その後反応物は、硫酸ナトリウム10水和物0.5gと共に、10分間かきま
ぜ、セライトを通してろ過した。この残渣をエーテル各回10mlで3回洗浄し、か
つ一緒にしたろ液を減圧下で濃縮した。分取TLC (シリカゲル上で、5%酢酸エ
チル/ジクロロメタンを用いて)で、黄色樹脂状の粗生成物(50.0mg)を得た。こ
れは、十分に純粋になるまで、再びクロマトグラフィーを行った。実施例16−エストラ-4,16-ジエン-3- オン(9) 合成
この合成は、図11に示した。19- ノルテストステロン(XIX) は、ケミカルダイ
ナミック社などから市販されている。これは、19- ノル-16-アンドロステロン誘
導体の出発物質である、D 19- ノルテストステロン(XIX) を、無水酢酸及びピリ
ジンで、アセテート(Hartman,J.A.,らの論文、J.Am.Chem.Soc.,78:5662(1956))
に転化し( a)、トルエン(10ml)を溶媒とするこのアセテート(4.8g,15.17mmol)
のD A 溶液を、石英片を充填したガラス管中で、540 ℃(2667Pa(200Torr),遅い
N2流れ) で、熱分解(b) を行った。粗熱分解産物(3.1g)を、シリカゲル(150g)上
で、CH2Cl2を用いてクロマトグラフィーを行い、均質な油状ケトン9(1.1g,28
%)を得た;+57.9°(C= 1)( [27]:m.p.71-73°)。IR (CHCl3):1660s,1615m
,1585w,、1H-NMR(90MH z):0.84 (s,3H);5.82(m,2H);5.87(br.s,1H)。実施例17−エスタ-16-エン-3- オン(10)
この合成は、図11に示した。Villotti,R.らの論文(J.Am.Chem.Soc.,82:5693(
1960)) に従って、19- ノルテストステロンは、リチウム及びアンモニアで、19-
ノル-5a-アンドロスタン-17-オール-3- オン(XX)に還元した(c) 。アンドロス
タ-5a,17- ジオール-3- オン(XX)は、無水酢酸及びピリジンと共に、アセテート
へと転化した(a) (Hartman,J.A.,らの論文、J.Am.Chem.Soc.,78:5662(1956))。
オクタン/アセトン10:1(22ml)を溶媒とする17β- アセトキシ-5a-エストラン
-3- オン(8.0g,25.1mmol)を、540 ℃(2667Pa(200Torr),遅いN2流れ) で、熱分
解した( b)。粗生成物(5.4g)は、シリカゲル(600g)上で、CH2Cl2を用いて、クロ
マトグラフィーを行い、この均質な分画をPEで再び結晶化し、純粋なケトン10(3
.13g,48.3%) を得た。m.p.は、51-54 ℃;[a ]:+72.8°(C 1.0) 。IR(CHCl3):
1705s,1585w、1H-NMR(90MHz):0.79(s,3H);5.71 (m,1H);5.87(m,1H)。実施例18−エストラ-16-エン-3α- オール(11)
この合成は、図11に示した。L-セレクトリド(d,L- リチウムトリ(第二級-
ブチル)ヒドリドボレートの1M THF 溶液を4ml 、4mol)を、0℃で、乾燥エー
テル(5ml) を溶媒とするケトン10 (800mg,3.10mmol)溶液に滴下した。0℃で1
時間撹袢した後、水(10ml)を添加した。このボランは、10%aq.NaOH 溶液(5ml)
を、その後30%aq.H2O2 溶液(3ml) を添加し、室温で3時間撹袢することによ
って酸化した。後処理(エーテル)後、この粗生成物(790mg,Ca.11及び12の9:
1 の混合物)を、シリカゲル上で、CH2Cl2を用いてクロマトグラフィーを行い、
純アルコール11(700mg,87%) を得た。(m.p.119-120 ℃→123-124 ℃ (PEで))
[a] D +40.6°(c=1.0) 。IR (CHCl3):3640m,3500br,1585w、1H-NMR(90MHz):0.
78(s,3H);4.09(m,w1/2〜8,1H);5.71(m,1H);5.87(m,1H)。実施例19−エストラ-16-エン-3B-オール(12)
この合成は、図11に示した。乾燥エーテル(5ml) を溶媒とするケトン10(800mg
,3.10mmol)溶液を、エーテル(3ml) を溶媒とするLiAlH4 (38mg,1mmol)のスラ
リー中に、室温で滴下した(e) 。1時間後、この混合物を、10% aq.H2SO4で加
水分解した。後処理(エーテル)後、この粗生成物(802mg,12及び11の9:1 の混
合物) を、シリカゲル上で、CH2Cl2を用いてクロマトグラフィーを行った。11の
少量の分画(70mg)がまず溶離し、引き続き主分画12(705mg,87%) が溶離した。
(m.p.113-115℃) 。[a]:+36.3°(C= 1.0)。IR(CHCl3):3640m,3500br,1585w、1
H-NMR(90MHz):0.78(s,3H);3.60(m,w1/2〜(m,20,1H):5.71(m,1H);5.87(m,
1H)。実施例20−ヒトVNO 及び嗅上皮へのエストレン刺激の電気生理学
非侵襲的方法を、ヒト鋤鼻器(VNO) 及び嗅上皮(OE)からの局所電位を記録する
ために用いた。局所的な気体による刺激を、マルチチャンネル薬物送達システム
に連結された特別にデザインされたカテーテル/電極を用いて、異なる間隔で、
両方の鼻組織(nasal structure) に適用した。このVNO 及びOEの局所的反応は、
該リガンド刺激物濃度と相関関係があった。
本試験は、臨床的に正常な(選別された)志願者−男性2名、女性8名、年齢
18〜85歳、について行った。本試験は、全身麻酔及び局所麻酔は用いなかった。
前記カテーテル/電極は、局所刺激を与え、かつ同時に反応を記録するように
デザインした。VNO 記録の場合、対象の右鼻窩を、鼻鏡(鼻用鏡)を用いて露出
し、鋤鼻開口部が、鋤鼻及び鼻底部(nasal floor) の前端の交差点近傍に局在し
ていた。該カテーテル/電極は、VNO 開口部を通ってゆっくりと動かし、電極端
を開口部から1〜3mmの該器官の管腔部に配置した。その後鼻鏡を取り外した。
OEの場合も、該カテーテル/電極を中鼻管の側面にゆっくりと深く配置した以外
は、同様に行った。
局在した気体刺激は、該カテーテル/電極を用いて行った。室温の清潔な、無
臭の、湿気を含んだ空気の定常流を、連続的にこの刺激システムのカニューレを
通って通過させた。この刺激リガンド物質は、プロピレングリコールで希釈し、
湿気を含んだ空気と混合し、かつカテーテル/電極から、1〜2秒間吹き掛けた
。この投与法は、鼻腔に対し、ステロイドリガンドを、約25pg投与すると推測さ
れた。
本試験結果を、図2に示した。この反応は、ミリボルトー秒(mV ×S)で測定し
た。1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- オールは、男性において、他の試験
された化合物よりも、非常に強力にVNO 反応を誘発した(図2A)。1,3,5(10)-
エストラトリエン-3,16 α-17 β- トリオールも、強力なVNO 反応を誘発した
。更に、これらの2種のエストレン類に対するVNO 反応は、性的に二形性である
−男性では、女性のほぼ4倍である(図2B)。対照的に、OE反応は、男性及び
女性の双方において、丁子のような強い放臭剤と比較して低かった(図2C)。実施例21−様々なステロイド類に対する反応におけるVNO の感覚上皮細胞の受容 体電位の変化の測定
7種の異なるリガンド類に対する反応における受容体電位の変化を、対象女性
40名(図3A)及び男性40名(図3B)で測定した。各対象には、図に示したよ
うに、各7種の物質60pgを投与した。これらの物質は、実施例20に記載した方法
を用い、各々個別に1秒間投与した。VNO 感覚上皮細胞の電位の変化を、経時的
に記録し、かつ40対象それぞれの電位の変化の合計を平均した。この結果を図に
示した。図3A及び3Bの比較は、各ステロイドは、その活性において、性的に
二形性を有し、いくつかのリガンド物質は、他の物質は女性の方が強力であるの
に対し、男性の方が強力であることを示した。実施例22−VNO のエストレン刺激に対する自律神経反応の測定
実施例20に記載した方法に従って、対象男性40名に、1,3,5(10),16- エストラ
テトラエン-3- イル- アセテートを投与時に、様々な自律神経系のパラメーター
を、モニタリングした。同じくプロピレングリコールを対照として投与した。該
リガンドは、1秒のパルスで投与した。自律神経機能の変化は、まず2秒以内に
認められ、45秒間継続した。図4に示したように、プロピレングリコール対照と
比較する場合、エストレンは、VNO(4A) 、電気皮膚反応(4B)、及び皮膚温度(4C)
に関して、合計された受容体電位の有意な変化を引き起こした。実施例23−2種のエストレンステロイドによって誘発された受容体電位の変化の 比較
実施例21に記載した方法で、各ステロイド及びプロピレングリコール対照を60
Pg、男性対象に投与した。図5に示したように、1,3,5(10),16- エストラテトラ
エン-3- オールメチルエーテルは、1,3,5(10),16- エストラテトラエン-3- イル
アセテートよりも、受容体電位の大きい変化を引き起こした。実施例24−VNO のエストレン刺激の電気生理学的作用
VNO のエストレン刺激の電気生理学的効果は、投与前後の対象のフェロモン投
与及び質問表による判定によって測定した。この質問表は、標準デロガチスセク
シャルインベントリー(Derogatis Sexual Inventory)判定の一部として使用され
た付属パネル調査(a panel of adjectives) を含んだ。
対象40名は、全員健康であり、前述の実施例3に記載した投与を行うために、
20名はプラシーボ投与に、及び20名は1,3,5(1 0),16-エストラテトラエン-3- オ
ール約20pg投与に、無作為に割り付けた。これらの対象には、状態の感じを判定
する70項目の質問表について、プラシーボ又は実験物質いずれかの投与の、直前
及び30分後に、回答を求めた。この質問表の70の付属類は、無作為に与え、かつ
順に各々の気分、感じ、又は性格の特徴の関連性を基にした判定を、クラスター
分類した。実施例25−電気生理学的試験
下記の電気生理学的試験は、臨床的に健常な志願者60名、両性(男性30名及び
女性30名)、年齢20〜45歳について行った。麻酔は使用せず、かつ妊娠している
女性対象は、はずした。
刺激及び記録システムは、別に記載された“多機能ミニプローブ”を使用した
(Monti-Bloth,L.及びGrosser,B.l.の論文、“ヒト鋤鼻器官及び嗅上皮の電気活
性への推定フェロモンの効果”、J.Steroid Biochem.Molec.Biol.,39:573-582
(1991))。この記録電極は、テフロン(登録商標)で絶縁された細い銀製ワイヤ
ー(0.1mm) に付着された0.3mm の銀球であって、この電極の表面は、まず塩化銀
界面を生じるように処理し、かつその後ゼラチンで被覆した。これは、内径の小
さいテフロンカテーテル(直径5mm)内に配置し、電極の先端が約2mm 突き出る
ようにした。このテフロンカテーテルは、長さ10cmで、末端が、連続的空気流を
送る、化学感覚刺激の個別のパルスを送る、マルチチャンネル薬物送達システム
を構成している。この空気流は、まず小さい容器を通過し、希釈剤中にボメロフ
ェリン(vomreropherin) 又はオルファクタント(olfactant) のいずれかを含む溶
液、もしくは希釈剤のみの溶液を通過して、泡立つようにした。ソレノイドを用
いて、迅速に、空気流を、前述の容器から、この容器を迂回する経路へと転送し
た。これによって、該空気流中の刺激物の個別のパルスを生じる。第二に、直径
2mm の外側がテフロンのチューブで、カテーテル/電極装置を囲み、かつその中
央の端面にアスピレーターを連結し、3ml/秒で連続的に吸引した。外側の吸引チ
ューブの同心円状の配置は、放出された化学感覚刺激を、いわゆる“小領域(min
ifield) ”領域(直径約1mm)に局在させ、かつ物質が、意図された刺激部位の
外側領域、もしくは吸引システムの内側のいずれかへ拡散することを防いだ。刺
激及び記録用装置全体は、VNO の感覚上皮細胞上、もしくは嗅上皮又は気道上皮
の表面のいずれかに配置することができた。鋤鼻電図(EVG) :
記録は、対象が仰臥した状態で、静かな部屋で行った;前記多
機能ミニプローブを、前庭に配置した鼻用レトラクタを用い、鼻腔内に最初に固
定した。基準電極及び基底電極(reference and ground)は、銀円板(8mm )から
成り、両方とも眉間に配置した。
VNO 開口部、又は鋤鼻小窩は、まず鼻孔及び前庭を拡張することによって、確
認された。その後倍率6倍のハロゲン光を備えた双眼のルーペを用いて、前記テ
フロンカテーテルの先端及び記録電極装置を、VNO 開口部へと導入し、これを鋤
鼻道内に約1mm の深さで固定した。前記記録電極を最適に配置することで、試験
物質に反応した適当な脱分極に対し、試験後にシグナルを発信した。
この記録電極からの電気シグナルは、DC増幅器に送られ、その後デジタル化さ
れ、コンピューターでモニタリングし、かつまとめた。このシグナルのピークか
らピークの振幅を測定し、かつその脱分極曲線下面積を積分する一方で、このシ
グナルをコンピューター画面及びデジタルオシロスコープの両方で、連続的にモ
ニタリングした。呼吸運動によってもたらされる人為的産物は、口蓋帆咽頭を閉
じて口呼吸をするように、対象を訓練することで削除した。化学感覚刺激物:
嗅覚試験物質は、シネオール(cineole) 及び1-カルボネ(carvo
ne) であり;ボメロフェリンは、A,B,C,E 及びF であった(ボメロフェリンは、
フェリン社(メンロパーク、カリフォルニア)から入手した。)。ボメロフェリ
ン試料は、25〜800fmol の濃度で、300 ミリ秒から1秒間、連続した空気流中で
送達した。通常、各々の短い試験パルスのシリーズ間に、3〜5分間の休憩をい
れた。該試験刺激を行う経路の全ての構成要素は、テフロン、ガラス、ステンレ
ス鋼製であり、かつそれぞれの使用前に、注意深く清掃し、滅菌した。嗅上皮電図(EOG)
:嗅上皮の記録は、VNO のために使用したものと同じ多機能ミ
ニプローブを用いて、同様に刺激及び記録を行った。この先端は、記録電極が鼻
粘膜嗅部に接触するまで、ゆっくりと挿入した。適切に配置することで、放臭試
験物質のパルスに反応した脱分極によって、シグナルを発生した。
皮質性誘発活性は、ボメロフェリンによるVNO 刺激によって誘発され、かつ放
臭剤による嗅覚刺激は、空気パルス300ms で、送達した。これは、国際法10120
システムのCz-Al 及びTz-Al の位置で、標準脳波電極を用いて記録し;その基底
電極は、乳様突起上に配置した。皮膚電気活動(EDA) は、それぞれ中指及び薬指
の手掌皮膚に、伝導性ゲルを介して接触した、標準型8mm 銀電極を用いて記録し
た。皮膚温度(ST)は、右の耳垂に配置された、小さい(1.0mm) のサーミスタプロ
ーブを用いて記録した。末梢動脈波(PAP) は、人差し指の先端に取り付けられた
プレスチモグラフで追跡した。呼吸頻度(RF)は、気管低位に配置された調節可能
なひずみゲージで測定した。全ての電気信号は、DC増幅され、デジタル化され(M
P-100、バイオパックシステム) 、かつコンピューターで連続的にモニタリング
された。統計解析:
EVG 又はEOG で、ピークからピークまでの変化、及び他のパラメータ
ーの変化の頻度を測定し、統計解析を行った。結果の有意性は、両側t-検定又は
分散分析(ANOVA) のいずれかで行った。EVG に対するボメロフェリンの作用
:各々のボメロフェリンは、性的二形性を示
す受容体電位を生じることがわかった(図6A−B)。EVG の記録は、男性30名
及び女性30名(年齢20〜45歳)で行った。ボメロフェリン類は、希釈し、かつ1
秒パルスとして、VNO へ、パルス間がb 分間隔で適用し、質問時に、それらの対
象は、“臭い”を嗅ぐことができなかったか、もしくはいずれかのボメロフェリ
ンを意識的に検出した。この所見は、VNO に送達された嗅覚及び鋤鼻の試験刺激
のいずれも、送達濃度では、知覚可能な感覚を誘発しないことを示している、こ
れまでの報告(Monti-Bloth,L.及びGrosser,B.l.の論文、“ヒト鋤鼻器官及び嗅
上皮の電気活性への推定フェロモンの効果”、J.Steroid Biochem.Molec.Biol
.,39:573-582(1991)) の結果に一致した。
図6Aに、対象男性(年齢20〜38)の、該希釈剤及び等モル量(100fmol) の5
種のボメロフェン(A,B,C,D及びF)、並びにF の立体異性体であるE に対する、平
均の反応を示した。この反応のグラフは、年齢に関係なく全ての対象で類似し、
かつt-検定又は分散分析のいずれかでは、有意差は認められなかった。例えば、
A 、C 及びD は、有意な作用をもたらし(M15=11.4mV,SD=3.6mV;M76=6.4mV,SD=
2.5mV,及び M84=15.1mV,SD=4.9mV;p<0.01) 、全ての個々の場合において一致し
た。他のボメロフェリン類は、VNO-受容体を、非常に少ない程度にまで脱分極し
たが、個から個への平均の反応の振幅は、一致した。対象男性において活性があ
るボメロフェリン類は、該希釈剤よりも大きい反応を産み出した(P<0.001) 。B
、F 及び同様の濃度の放臭剤は、これらの男性のVNO 反応を、有意に低減した(
図6A及び図7)。
同様の実験プロトコールを、女性対象30名(年齢20-45)について行った。ボ
メロフェリンの中で、F(100fmol)は、この群において最も有意差を生じた(図6
B)。この場合、A は、F と有意に異なる小さい作用を生じた(p<0.01)。両方の
対象の母集団において、活性ボメロフェリンは、標準偏差の大きい受容体反応を
誘発した(図6)。A 及びF の作用の度数分布を、男性及び女性についてそれぞ
れ調べたところ、我々は二形性の分布であることを発見した。この所見の意義は
、本件において研究中である。
F の立体異性体であるE は、女性において、VNO をF 程は刺激しなかった(図
6B)。これは、ボメロフェリンのVNO 認識特性を示している。この点について
は、F が優れたボメロフェリンである一方で、E は、F よりも強力は嗅覚作用を
もたらすことは興味深い(図6B及び図7)。EOG におけるボメロフェリン類の作用
:嗅上皮(OE)からの加重された受容体電位
を、対象20名について記録した:男性10名及び女性10名であった。ボメロフェリ
ンに対するVNO の感度とは対照的に、OEは、これらの物質に対し、感度が低かっ
た。このことは、男性及び女性双方において当てはまった(図7A)。平均受容
体電位の振幅は、2.3mV 〜0.78mVであった。本試験において、B のみが、OEにお
いて有意作用を有するボメロフェリンであった(p<0.02)。各々の刺激呈示後の異
臭の感覚に問題がある対象の中で、16名は、嗅覚の感覚が無いと報告し、一方男
性3名及び女性1名がB を好ましくない匂いと表現した。この所見は、本試験に
おいて使用された濃度において、ほとんどのボメロフェリンが、嗅上皮受容体の
効果的な刺激物ではないが、鋤鼻器受容体では明らかに効果があることを明らか
にした。EVG 及びEOG に対するオルファクタントの作用
:ボメロフェリン類とは対照的に
、前述のオルファクタントである1-カルボネ及びシネオールは、VNO に対しわず
かな局所的反応のみをもたらした(図7B)。これは、男性女性双方に当てはま
った。期待されるように、これらのオルファクタント類は、OEに局所的に適用さ
れる場合には、男性及び女性双方に、強力な反応をもたらした(p<0.01)(図7A
)。この希釈剤は、嗅上皮の受容体を、シネオール及び1-カルボネよりも少ない
程度に、脱分極し(p<0.01)、かつ嗅覚の感覚を生じなかった。ボメロフェリンの反射作用
:VNO のボメロフェリン刺激に対する、中枢神経系(C
NS) の反射反応を決定するために試験を行った。ボメロフェリン類によって、誘
発された(図6A及びB)性的二形性の局所的な反応は、男性及び女性の対象の
自律神経系の反応を反映していた。男性対象においては(図6C)、A 及びC は
、皮膚電気抵抗(皮膚電気活動:EDA)を減少した(p<0.01,n=30)。女性対象にお
いては(図6B)、F 及びB は、A 又はC よりもEDA を大きく減少した(p<0.01
,n=30) 。
ボメロフェリンA 及びC は、30名の男性対象において、皮膚温度(ST)を有意に
上昇した(p<0.01)(図6G);しかし、D は有意に温度を低下した(p<0.01)。30
名の女性対象において(図6H)、B 及びFは、A 及びC に比べ、皮膚温度(ST)
の有意な上昇を引き起こした(p<0.01)。女性対象において、ボメロフェリンは、
男性よりも、EDA 及びSTの大きい標準偏差を伴う変化をもたらした。
皮質活性を、男性及び女性対象において、ボメロフェリン200fmol を含有する
空気パルス(300秒〜1分)をVNO に適用する際に、Cz及びTzから記録した(図6
G及びH)。男性において(図6E)、A 、C 及びD は、270-380 秒の潜伏期を
伴うα皮質活性を有意に増加した。D 及びA は、強力な作用を誘発した(p<0.01)
。EEG における同期化は、活性物質の単パルスの適用後1.5 〜2.7 分間維持され
た。女性において(図6F)は、VNO へのB 又はF の単パルス(200fmol) の適用
は、感覚上皮細胞の受容体の反応のα皮質独立性を増加した。我々は、ヒトのVN
O 及び嗅上皮の反応における、特徴的な特異性を発見し、このことは、これらが
、CNS と個別の接続経路を有するような、独立した機能システムであることを示
している(Brookover,C.の論文、“成人男性の神経末端”(J.Comp.Neurol.,24:1
31-135(1914))。更にこれらは、鼻中隔の気道上皮への、局所麻酔の使用(2%
リドカイン)が、EVG を阻害もしくは減弱もしないことから、EVG が、三叉神経
の侵害受容器終末に関連がないという仮説の根拠となり(Monti-Blovch,L.及
びGrosser,B.l.の論文、“ヒト鋤鼻器官及び嗅上皮の電気活性への推定フェロ
モンの効果”、J.Steroid Biochem.Molec.Biol.,39:573-582(1991))、更に対
象が、いずれかの刺激操作の結果としての痛みの感覚について報告することを欠
いていた。
VNO 受容体は、試験したいずれのオルファクタントよりも、ボメロフェリンに
対して、明らかにより感受性がある;嗅上皮受容体に対し、逆もまた真である。
OEがいくつかのボメロフェリンに対する受容体部位を有することがあるのに対し
、VNO の反応特異性は明らかに異なる。
性差は、ボメロフェリンA 、C 及びD ;B 及びF の2群間の、特異性及び効果
において認められた。このことは、受容体が関連した性的二形性の可能性を示し
ている。この所見は、ヒト成人における、VNO のボメロフェリン刺激による、自
律神経系の構成要素の活性化を示している。
更に、この結果は、ボメロフェリンによるVNO の刺激が、EEG の同期化をもた
らすことを示している(図6G及びH)。従って、これらの証拠は、鋤鼻系が、
様々な化学感覚刺激に反応すること、及びいくつかは反射性自律神経活性を誘発
することを示している。
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(72)発明者 ジェニングス ホワイト クライブ エル
アメリカ合衆国 ユタ州 84109 ソルト
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