【発明の詳細な説明】
インスリン受容体チロシンキナーゼインヒビターに対するアンタゴニスト
発明の分野
本発明はインスリン受容体チロシンキナーゼ活性インヒビター、特にPC−1
の活性を中和する薬剤およびその、インスリン受容体チロシンキナーゼインヒビ
ターの不適切な発現が関与する疾病および疾患の診断と治療における使用に関す
る。詳細には、本発明はPC−1の不適切な発現に関連する疾病または疾患を検
出または治療するのに有用な薬剤に関する。好ましい局面において、本発明は、
インスリン抵抗性疾患もしくは関連疾患、特に非インスリン依存性糖尿病に罹患
していることが疑われる個体におけるインスリン抵抗性の存在を診断するのに有
用な薬剤および方法に関する。本発明はPC−1の不適切な発現に関連する疾患
に罹患している哺乳動物、好ましくはヒトの治療法をも提供する。インスリン抵
抗性およびインスリン非依存性糖尿病のようなPC−1の不適切な発現の影響を
予防、治療、または抑制するための方法を提供するのが具体的な本発明の態様で
ある。
関連技術分野の説明
ヒトの糖尿病は2つの主要な臨床症候群に分けることができる複合疾患である
。各カテゴリーは更に、多くの様々な病因を含んでいる。糖尿病患者の約10%
はインスリン依存性糖尿病(IDDM)である。IDDMはインスリン産生β細
胞の選択的な破壊、絶対的なインスリン欠乏、若年性発症、および自己免疫性病
因発生の兆候によって特徴づけられる。インスリン非依存性糖尿病(NIDDM
)はより一般的であり、しばしば肥満に関連してみられる。NIDDMは中年で
の発症、インスリンの作用に対する抵抗性、およびβ細胞の破壊を伴わない相対
的なインスリン欠乏を特徴とする。1型糖尿病および2型糖尿病という用語がそ
れぞれIDDMとNIDDMを示すのに用いられてきた。しかし、これらの用語
は生理学的状態の修飾語句として用いるべきであることが示唆されている。すな
わ
ち、1型は免疫介在性の病因メカニズムを表すのに用いられることがあり、2型
は非免疫介在性の病因を表すのに用いられることがある。例えば、1型糖尿病に
おいて、免疫系はβ細胞の破壊に関与する。この分類では、3つの主要な臨床症
候群、すなわち、1型インスリン依存性糖尿病、2)1型インスリン非依存性糖
尿病、および3)2型インスリン非依存性糖尿病がある。1型のNIDDM期と
は、後期の、進行の緩やかな自己免疫性の発症を意味することになろう。
2型NIDDMの病因は今までのところ明確に解っていない。説明的には個体
において3病期が認められる。第1期は正常な血漿グルコールレベルと血漿イン
スリンレベルの上昇を伴う明白なインスリン抵抗性を特徴とする。第2期は食後
高血糖とインスリン抵抗性の増大を特徴とする。第3期では、インスリン抵抗性
が持続し、インスリンの分泌レベルが低下することによって、空腹時高血糖が生
じる。全ての病期において、血漿インスリンレベルは血漿グルコースレベルと一
致していない。すなわち、相対的なインスリン欠乏が認められる。したがって、
2型NIDDMはインスリン抵抗性およびインスリン分泌不全を特徴とする(Ha
rrison's Prncpls.of Int.Med.,11版,McGraw-Hill出版,New York,N.Y.)。NI
DDMの発症に先だってインスリン抵抗性が認められることが、多くの最近の研
究によって示唆されている。NIDDM患者はインスリンを分泌するが、その分
泌の仕方は正常ではなく、筋肉および他のインスリン感受性組織においては内在
性および外在性インスリンに抵抗性を示す(Mollerらの、N.Eng.J.Med.,325:938
(1991))。インスリン抵抗性の存在は、それが本疾患における最初の異常であり
うることを示唆している。しかしながら、大多数のNIDDM患者において、イ
ンスリン抵抗性の分子的根拠は解っていない。
インスリン抵抗性およびNIDDMの患者由来の皮膚線維芽細胞はインスリン
受容体チロシンキナーゼ活性化のインヒビターを産生した。インスリン受容体含
有量はその患者において正常であり、精製されたインスリン受容体は正常なチロ
シンキナーゼ活性を有する。このインヒビターはインスリン受容体チロシンキナ
ーゼに対する相対的な特異性を有する糖蛋白であることが示された(Sbracciaら
の、Diabetes,40:295(1991)、およびMaddestらの、J.Clin.End.Metab.,77:73(19
93))。インスリン受容体
インスリンに対する細胞の反応は、インスリンと結合する2つの同じ細胞外α
−サブユニットおよび細胞内チロシンキナーゼ活性を有する2つの同じ貫膜βサ
ブユニットからなる4量体蛋白であるインスリン受容体によって介在される(Go
ldfineの、Endocr.Rev.,8:235(1987))。インスリンがα−サブユニットに結合
すると、β−サブユニットチロシンチナーゼが活性化し、インスリンの作用が生
じる。NIDDM患者は、筋肉、線維芽細胞、および他の組織中のインスリン受
容体チロシンキナーゼ活性が低下している。インスリン受容体遺伝子配列の異常
は、かなり大多数の被験患者にみられる該キナーゼ活性の低下の原因ではないよ
うである(Seinoらの、Diabetes 39:129(1990))。形質細胞膜糖蛋白PC−1
PC−1はクラスII(細胞質N末端)膜糖蛋白であり、肝臓ヌクレオシドピ
ロホスファターゼ/アルカリホスホジエステラーゼIと同じ蛋白である(Rebbe
らの、Mol.Immuno.,30:87-93(1993))。PC−1は以下のものを含む他の細胞中
に検出されている:胎盤、軟骨細胞、精巣上体、腎尿細管、唾液腺管、脳毛細血
管、皮膚線維芽細胞、ミエローマ細胞、骨格筋、および脂肪(Rebbeらの、Mol.I
mmuno.,30:87-93(1993))。PC−1の大きさは試験した組織によって異なり、
115〜135kDaであり、またPC−1は230〜260kDaのダイマー
としても存在する。ヒトPC−1は873個のアミノ酸を有すると推論されてお
り、6q22−6q23の染色体の位置にマッピングされている(Funakoshiら
の、Arch.Biochem.Biophys.,295:180-187(1992))。PC−1の細胞外ドメイン
はホスホサルフェート、ピロホスフェート、およびホスホジエステル結合を開裂
させる。PC−1はトレオニン特異的蛋白キナーゼ活性を持っている可能性があ
る(Odaらの、J.Biol.Chem.,266:16791-16795(1991))。PC-1は酸線維芽細胞
成長因子受容体と密接な関連があり(Odaらの、J.Biol.Chem.,266:16791-16795(
1991))、TGF−βによって調節される(Huangらの、J.Clin.Invest.,94:560-
567(1994))ことが報告されている。インスリン抵抗性および関連疾患の最新治療
インスリン抵抗性および糖尿病の最新治療法には、食事療法、およびIDDM
患者ならびに食事の変化に反応しないNIDDM患者に対するインスリン療法が
含まれる。食事療法は理想体重を維持するのに必要な総カロリー摂取量の計算と
、食事の脂肪、炭水化物、および蛋白への分数分布を基礎にした決定とに基づい
ている。しかし、蛋白、炭水化物、ならびに脂肪の含有量が同じの、同じ重量の
食物が、同じ食後血中グルコースレベルをもたらすわけではない。したがって、
食事のプロトコールにおいて参考にされることが多い置き換えチャートはますま
す疑問視されている。さらに、これらの食事チャートは摂取した食物の特定の組
み合せによって生じ得る食後血中グルコースレベルの変化を考慮していない。
インスリン療法はすべてのIDDM患者と、食事の変化に反応しないNIDD
M患者において必要である。通常、いくつかの代表的な療法の中の1つが適用さ
れるが、インスリン療法を受ける患者のための標準治療プロトコールはない。通
常のインスリン療法ではインスリンを1日に1〜2回注射する必要がある。通常
、治療は原則として外来患者に対して行われるが、患者のコンプライアンス(応
諾)にやや問題がある。
代表的ではないが、すい臓移植も糖尿病の治療法に含まれる。さらに、糖尿病
の自己免疫調節は広範に研究されている。しかし、サイクロスポリンやFK50
6のような現在利用可能な免疫抑制剤は常に薦められるものではない。
したがって、使いやすく効果的な治療経過が得られる、インスリン抵抗性のま
たはNIDDMの個体を診断および治療するのに使用できる有効な薬剤が求めら
れている。
本発明の目的は、インスリン抵抗性および関連疾患を検出および治療するため
の様々な診断法と治療法に有用な薬剤を提供することである。
発明の要約
本発明はインスリン受容体チロシンキナーゼ活性の阻害によって生じる疾病お
よび疾患の診断および治療に関する。本発明はインスリン受容体チロシンキナー
ゼ活性の不適切な阻害が関与する疾病または疾患を検出または治療するのに有用
な薬剤を提供するものである。
本発明者らは、あるインスリン抵抗性患者が、膜糖蛋白PC−1として本発明
者らが同定した、内在性のインスリン受容体チロシンキナーゼ活性インヒビター
を過剰に発現していることを発見した。インスリン受容体チロシンキナーゼ活性
インヒビターの同定によって、本発明者はインスリン受容体チロシンキナーゼ活
性のインヒビターに関連した疾病および疾患を検出および治療するのに有用な薬
剤と方法を発見することができた。
したがって、本発明のある目的は、試料を、免疫特異的結合を生じ得る条件下
で第一抗インヒビター抗体と接触させ、(b)この試料を、免疫特異的結合を生
じ得る条件下で第二抗インヒビター抗体と接触させ、次いで(c)試料中の成分
と、第一および第二抗インヒビター抗体の両方との間に生じる免疫特異的結合を
検出または測定する工程からなる試料中のインスリン受容体チロシンキナーゼイ
ンヒビター量を検出または測定するための方法を提供するものである(ここに、
試料中の成分と該第一および第二抗体の免疫特異的結合が試料中のインヒビター
の存在または量を示す)。好ましい態様において、インスリン受容体チロシンキ
ナーゼインヒビターはPC−1である。
本発明の別の目的は、(a)本明細書中に記載の方法に従って、試料中のイン
スリン受容体チロシンキナーゼインヒビターの量を測定し、(b)工程(a)で
測定された量と標準試料中に存在するインスリン受容体チロシンキナーゼインヒ
ビターの量を比較する工程からなる試料中のインスリン受容体チロシンキナーゼ
インヒビターの過剰発現を検出するための方法(ただし、工程(a)の量の増加
レベルはインスリン受容体チロシンキナーゼインヒビターの過剰発現を表す)を
提供するものである。好ましい態様において、インスリン受容体チロシンキナー
ゼインヒビターはPC−1である。
本発明の別の好ましい態様は(a)本明細書中に記載の方法に従って試料中の
PC−1量を測定し、(b)試料中のPC−1量と標準試料中のPC−1量を比
較する工程からなるPC−1分子の過剰発現に関連する疾病または疾患の存在ま
たは発症を検出するための方法(ただし、試料中のPC−1量の増加が疾病また
は疾患を示す)を提供するものである。すなわち、本発明は、インスリン受容体
チロシンキナーゼインヒビター、特にPC−1のレベルの上昇に関連する疾病ま
たは疾患を診断するための方法を提供するものである。本発明の好ましい目的は
、インスリン非依存性糖尿病を含むインスリン抵抗性のようなPC−1の過剰発
現に関連する疾患の診断法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、PC−1のようなインスリン受容体チロシンキナー
ゼインヒビター量の増加を検出するためのアッセイ用キットを提供することであ
る。本発明のキットは、インスリン抵抗性およびインスリン非依存性糖尿病のよ
うなPC−1の過剰発現に関連する疾病および疾患を診断するのに有用である。
本発明の更に別の目的は、インスリン受容体チロシンキナーゼ活性のインヒビ
ターの効果を中和することができる薬剤を提供することを含むインスリン受容体
チロシンキナーゼインヒビターの効果を中和するための方法を提供することであ
る。ある態様においては、本発明の薬剤は抗体であり、本発明の方法はin vitro
で行われる。好ましい態様において、本発明の方法は抗体、好ましくはモノクロ
ーナル抗体であり、本発明の方法はin vivoで行われる。この目的における本発
明の好ましい態様では、この抗体は宿主の免疫系に適合性がある。本発明の態様
において、対象がヒトである場合は抗体はヒトまたはヒト化抗体であることが好
ましい。
本発明の別の目的は、インスリン受容体チロシンキナーゼ活性に対するPC−
1の効果を中和するのに有効な薬剤を提供することを含む、PC−1の発現に関
連する疾病または疾患を有する哺乳動物を治療する方法を提供することである。
好ましい態様においては、本発明の薬剤はPC−1に結合することによって、イ
ンスリン受容体チロシンキナーゼ活性に対するPC−1の効果を妨げることがで
きる抗体である。
本発明の更に別の目的は、PC−1のようなインスリン受容体チロシンキナー
ゼ活性のインヒビターの効果を中和することができる薬剤を、適切な医薬的賦形
剤と一緒に含む医薬組成物を提供することである。
図の説明
図1(配列番号1)は、インスリン受容体チロシンキナーゼインヒビターPC
−1のアミノ酸配列を示す。
図2:図2では、インスリン抵抗性であるNIDDM患者由来の、および年齢
ならびに性別が同じの対照由来の、線維芽細胞中のインスリン受容体の自己リン
酸化を比較している。インスリン抵抗性であるNIDDM(MW)患者由来の線
維芽細胞は自己リン酸化を刺激するのに有意に多量のインスリンが必要であった
。
図3:図3はインスリン抵抗性であるNIDDMの患者の線維芽細胞から精製
したインヒビターPC−1を示すポリアクリルアミドゲルである。WGAで示し
たレーンは小麦胚芽アグルチニンアガロースゲルカラムで精製した物質の試料で
ある。1M NaCl溶離で示したレーンは、ATPアガロースカラムから溶離
した同じ物質を示す。PC−1は相対分子量130および260kDaの2本の
バンドとして溶離される。
図4A−4C:図4Aは、等価の対照(レーンC1、C2、およびC3)と比
較した、NIDDMであるインスリン抵抗性患者の線維芽細胞中のPC−1含有
量のウエスタンブロット分析結果である(レーンMW)。このウエスタンブロッ
トにより、インスリン抵抗性であるNIDDM患者の線維芽細胞中のPC−1レ
ベルが5〜10倍増加していることがわかる。図4B:図4Bは患者試料MWと
3つの対照試料(C1、C2、およびC3)の繊維芽細胞中のPC−1メッセー
ジのノーザンブロット分析結果である。図4C:図4Cはβ−アクチンに対する
cDNAでプローブした4Bと同じ試料のノーザンブロット分析の結果、メッセ
ージレベルに変化はみられない。インスリン受容体mRNAの8.2および3.
6kb体およびアクチンmRNAの2.0kb体が認められる。
図5A−5C:図5A:合成基質の3’−ホスホアデノシン,5’−ホスホサ
ルフェート(PAPS)の加水分解によって測定された、NIDDM患者と対照
由来の皮膚線維芽細胞中のPC−1活性。図5B:ウエスタンブロット分析で測
定したNIDDM患者(D1〜D4)と対照(C1〜C3)由来の皮膚線維芽細
胞中のPC−1含有量。130型と260型のPC−1が示されている。図5C
:2名のNIDDM患者(NIDDM2およびNIDDM4)および対応する対
照(対照)由来の線維芽細胞中のインスリン受容体β−サブユニットの自己リン
酸化。結果は、オートラジオグラフの結果を示す棒グラフで表す。
図6A−6C:図6A:競合阻害のプロットはインスリンの結合に対するMC
F−7細胞中のPC−1の過剰発現の影響が欠如していることが証明されたこと
を示している。図6B:ウエスタンブロット分析によって示されたインスリン刺
激チロシンキナーゼ活性に対するMCF−7細胞中のPC−1の過剰発現の阻害
効果。PC−1でトランスフェクトされたMCF−7細胞(MCP−7 PC−
1)およびpRKneoでトランスフェクトされたMCF−7細胞(MCF−7
NEO)。インスリン受容体βサブユニットとIRS−1(pp 185)の位置
が示されている。図6C:インスリン刺激による[3H]チミジンの取り込みに
対するMCF−7細胞中のPC−1の過剰発現の影響。MCF−7 NEO細胞
において、基礎取り込み量は19.9±1.8(平均±SEM、n=4)であり
、インスリン存在下での取り込み量は36.6±4.7であった。MCF−7
PC−1細胞における、基礎取り込み量は15.0±1.9であり、インスリン
存在下での取り込み量は34.2±4.2であった。結果は4つの異なる実験の
平均±SEMである。
定義
本発明において、用語「治療」には、疾病または疾患に対する治癒的処置およ
び予防的もしくは抑制的な処置が含まれる。すなわち、例えば、NIDDMの場
合において、疾病の発症前の有効な薬剤投与はその疾病の「治療」となる。別の
例として、疾病の臨床的発現後のその疾病の症状を抑制するための有効な薬剤投
与はその疾病の「治療」に含まれる。「治療」には、疾病を根絶するための、疾
病が発現した後に行う薬剤投与も含まれる。発症後および臨床症状が発現した後
の、考えられる臨床症状の緩和とおそらく疾病の改善を伴う有効な薬剤投与は、
疾病の「治療」に含まれる。
「治療の必要な」ものには、すでに疾病または疾患を有する哺乳動物、および
その疾病または疾患の傾向のある哺乳動物が含まれ、これにはその疾病または疾
患を予防すべき哺乳動物が含まれる。
本発明の範囲に含まれる「PC−1の不適切な発現が関与する疾病」には、膜
糖蛋白PC−1が過剰に豊富であることを特徴とする疾病または疾患が含まれる
。この過剰に豊富であることは、分子レベルでの過剰発現、作用部位における持
続的もしくは蓄積的出現、または正常と比較して糖蛋白の活性が増大しているこ
とを含むあらゆる原因によると考えられるが、これらに制限されるものではない
。そのような過剰に豊富であることは、本明細書に記載のアッセイ法に従ってP
C−1の正常な発現、出現、または活性と比較して測定することができるが、こ
れらのアッセイ法に制限されるものではない。そのような疾患には、インスリン
抵抗性、グルコーストレランスの異常、およびインスリン抵抗性が鍵となる役割
を果たす肥満、糖尿病、卵巣ハイパーアンドロゲニズム(hyperandrogenism)、
および高血圧のような多くの疾患を含むことができる。本明細書に記載の方法に
従った治療を行う疾病または疾患は、好ましくは、PC−1の過剰発現によるイ
ンスリン抵抗性が存在する疾患である。したがって、好ましい態様において、こ
れらの疾病または疾患はインスリン抵抗性、好ましくはNIDDM、より好まし
くは2型NIDDMである。
本発明の範囲に含まれる用語「薬剤(エージェント)」、「インスリン受容体
チロシンインヒビターの活性を中和する薬剤」、および「インスリン受容体チロ
シンキナーゼ活性のインヒビターに特異的な薬剤」には、PC−1と膜関連イン
スリン受容体チロシンキナーゼとの相互作用をブロックするか、妨げるあらゆる
分子が含まれる。そのような薬剤は、様々な方法でこの効果を達成する。例えば
、あるクラスの薬剤は十分な親和性と特異性をもってPC−1と結合し、インス
リン受容体チロシンキナーゼに対する影響がない程にPC−1を中和するであろ
う。このグループの薬剤には抗体が含まれる。別のグループの薬剤はPC−1の
ようなインヒビターとインスリン受容体との蛋白−蛋白相互作用に基づく分子で
ある。そのような分子には、膜関連インスリン受容体とそのインヒビターとの相
互作用を妨げる生物有機化学的低分子、例えば疑似ペプチドや、インスリン受容
体の断片が含まれる。選ばれた薬剤の例としては、抗体、蛋白、ペプチド、糖蛋
白、糖ペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機化学的分子、疑似
ペプチ
ド、薬理学的薬剤とその代謝物、および転写ならびに翻訳制御配列などが含まれ
るが、これらに制限されるものではない。別のクラスの薬剤は、インスリン受容
体とインスリン受容体チロシンキナーゼインヒビターの間に生じる細胞内のまた
は膜関連の事象をブロックするか、妨げる。好ましい態様において本薬剤は抗体
であり、PC−1のようなインヒビターと結合し、PC−1と膜関連インスリン
受容体との相互作用を妨げる望ましい特性を有する抗体である。別の好ましい態
様において、本薬剤は、in vivoでは遊離のインスリンと結合することはできな
いが、膜関連インスリン受容体とチロシンキナーゼ活性のインヒビターとの相互
作用を妨げる望ましい特徴を有するインスリン受容体の一次構造に基づく可溶性
受容体である。別の好ましい態様において、本薬剤はPC−1とインスリン受容
体との相互作用を妨げることができる生物有機化学的分子である。本発明の別の
態様において、「薬剤」はPC−1発現の転写調節剤である。
本明細書中で用いている用語「インヒビター」には、その分子とインスリン受
容体またはインスリン受容体シグナリング経路との関連によって、インスリン非
感受性をもたらすあらゆる分子が含まれる。本発明の好ましい態様において、こ
のインヒビターは、Buckleyらの、J.Biol.Chem.,265(29):17506-17511(1990)に
記載の膜糖蛋白PC−1である。対応する蛋白は、他の種、例えば、ネズミにお
いて記載されている(Van Drieらの、PNAS,82:8619-8623(1985))。本発明には
ヒト分子および他の種の分子が含まれる。
本明細書において、用語「中和する」および「〜の活性を中和する」は、例え
ば、あらゆるメカニズムによってインヒビターを無効にするか、またはその活性
をブロックするか、妨げるか、減じるか、または打ち消すことを意味するために
用いている。したがって、本薬剤はインスリン受容体チロシンキナーゼ活性を阻
害するのに必要な結合という現象を妨げることができる。「中和抗体」は、イン
ヒビターのエフェクター機能をブロックするか、有意に低下させることができる
、本明細書中で定義された抗体分子を意味する。例えば、中和抗体は、PC−1
の、インスリン受容体との相互作用によりチロシンキナーゼ活性を低下させる能
力を阻害するか、低下させてもよく、あるいはまた、中和抗体はPC−1の、イ
ンス
リン受容体シグナリング経路をブロックする能力を阻害するか、低下させてもよ
い。中和抗体はまた、本明細書中に記載したようなインヒビター活性のイムノア
ッセイにおいて、PC−1のようなインヒビターと免疫特異的に結合してもよい
。本発明の「中和抗体」は、in vitroおよびin vivoのいずれの状況においても
その機能的活性を保持するのを特徴とする。
用語「抗体」は最も広い意味で用いており、具体的には、単一の抗インヒビタ
ーモノクローナル抗体および多抗原決定基特異的な抗インヒビター抗体混合物(
中和抗体と非中和抗体を含む)を包含する。用語「抗体」は、完全分子およびイ
ンヒビターと結合するその断片、例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、
およびFvなども意味する。これらの断片は完全抗体分子のFc断片を欠き、循
環中からより速やかに除去され、非特異的な組織結合性が完全抗体より低く(Wa
hlらの、J.Nucl.Med.,24:316-325(1983)、特定の治療や診断上の有用性にとって
望ましい特性を有すると考えられる。本発明において有用な抗体の抗原結合性断
片は、完全抗体分子に関して本明細書中に開示されているインヒビター蛋白また
はペプチドの検出および定量に使用することができる。通常、そのような断片は
パパイン(Fab断片の生産)またはペプシン(F(ab’)2断片の生産)の
ような酵素を用いる蛋白分解による開裂によるか、またはジスルフィド架橋を還
元することによって生産される。
本明細書中で用いている用語「モノクローナル抗体」は、本質的に同質な抗体
の集団を示す。すなわち、この集団に含まれる個々の抗体は、わずかに存在し得
る天然に発生し得る突然変異体を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異
性が高く、単一の抗原部位と反応する。さらに、通常、様々な決定基(抗原決定
基)と反応する様々な抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体製造物とは反対
に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基と反応する。
本明細書中に記載のモノクローナル抗体には、所望の生物活性を持つ限りにお
いて、起源の種が何であるか、または免疫グロブリンのクラスやサブクラスが何
であるか、および抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、およびFv)であ
るか否かに関わらず、抗インヒビター抗体の可変(超可変を含む)ドメインを定
常ドメインと結合させる(スプライシング)(例えば、「ヒト化」抗体)、また
は軽鎖と重鎖を結合させるか、あるいはある種の鎖と別の種の鎖を結合させるか
、または融合物とヘテローロガスな蛋白を結合させることによって生産されたハ
イブリッドおよび組換え抗体が含まれる(米国特許第4816567号、および
MageとLamoyiの、Monoclonal Antibody Prod.Techniques and Applns中の79-97
頁(Marcel Dekker,Inc.),N.Y.(1987)参照)。
例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、KohlerとMilstein
の、Nature,256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法によるか、組換
えDNA法(米国特許第4816567号)によって生産することができる。「
モノクローナル抗体」は、例えば、McCaffertyらの、Nature,348:552-554(1990)
に記載の技術を用いて作製したファージライブラリーから分離することもできる
。
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形は、最小限度の非ヒト免疫グロ
ブリン由来配列を含む特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、また
はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab)2、または抗体の他の抗原結
合性部分配列)である。ヒト化抗体は、ほとんどの場合、レシピエントの抗体の
相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を
有するマウス、ラット、またはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR
由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であ
る。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFv枠組構造領域(FR)残基が対
応する非ヒトFR残基で置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント
抗体および移入されたCDRまたはFR配列のいずれにも認められない残基を含
むことができる。これらの修飾は、さらに抗体の能力を洗練させ、最適化するた
めに行われる。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に
対応するCDR領域の全てかまたは実質的に全てと、FR残基の全てかまたは実
質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである、少なくとも
1個の、通常2個の可変ドメインの実質的に全てを含む。最適には、ヒト化抗体
には免疫グロブリン、通常、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくと
も一部も含まれる。
本明細書中で用いている用語「試料」は、インスリン受容体チロシンキナーゼ
インヒビターを含むか、含むと思われる生物学的試料を示す。この試料はあらゆ
る供給源、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト由来でもよい。このような
試料には、血清、血漿、リンパ液、関節液、卵胞液、精液、乳汁、全血、尿、脳
脊髄液、唾液、喀たん、涙、汗、粘液、組織培養培地、組織抽出物、および細胞
抽出物のような水性液が含まれる。
治療を目的とする「哺乳動物」は、ヒト、変種(sport)、ズー(zoo)、ペッ
ト、および家畜または飼育動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウ
マ、および霊長類、例えばサル、を含む哺乳動物として分類されるあらゆる動物
を示すが、これらには制限されない。好ましい哺乳動物はヒトである。
発明の詳細な説明
本発明者らは、インスリン抵抗性である個体の線維芽細胞中に存在するインス
リン受容体チロシンキナーゼインヒビターはクラスII膜糖蛋白PC−1である
と同定した。本発明者らは、PC−1活性がNIDDM患者の線維芽細胞におい
て増強されていることもみいだした。この発見に基づいて、本発明者らは、イン
スリン受容体に作用するPC−1活性を中和する薬剤に基いて、膜糖蛋白PC−
1の不適切な発現が関与する疾病および疾患を診断し、治療するための新しい方
法を計画した。したがって、本発明は多くのin vitroおよびin vivoで診断およ
び治療を行う状況において有用な薬剤を提供する。本発明は、PC−1の不適切
な発現に関連する疾病および疾患の診断と治療に本薬剤を用いる方法も提供する
。本発明の薬剤について以下に開示する。本発明はin vitroとin vivoでの適用
における本薬剤の使用法によっても例示されるであろう。
1.薬剤
最も広い意味において、本発明の薬剤はインスリン受容体チロシンキナーゼ活
性インヒビターとの相互作用によって、チロシンキナーゼ活性の阻害を妨げるか
、ブロックする。本発明の薬剤は、PC−1がインスリン抵抗性患者においてチ
ロシンキナーゼ活性を阻害するという発見に基づいている。したがって、本発明
の薬剤は、PC−1のインスリン受容体チロシンキナーゼ活性阻害能を中和する
物
質である。本発明者らは科学的理論によって拘束されることを望むものではない
が、本発明の薬剤はインヒビターとインスリン受容体チロシンキナーゼ活性との
相互作用をブロックするか妨げるものであり得るし、また、本薬剤はインヒビタ
ーとインスリン受容体シグナリング経路との相互作用をブロックするか妨げるこ
とができるものであってもよい。さらに、PC−1がインスリンの作用を阻害す
ることができる少なくとも2つのメカニズム、すなわち、インスリン受容体のリ
ン酸化に依存するか、またはインスリン受容体のリン酸化に依存しないメカニズ
ムがある。これら2つのメカニズムのいずれかに作用する薬剤は本発明の範囲内
に含まれる。
2.抗体物質(エージェント)
好ましい態様において、本発明の範囲内に含まれる「薬剤」には抗体が含まれ
る。好ましい態様において、本発明の抗体はインヒビターと反応し、免疫特異的
な結合によって、インヒビターとインスリン受容体の相互作用を妨げる。
3.抗インヒビター抗体の作製
本発明のこの目的に従って、PC−1と反応し、さらにPC−1のインスリン
受容体との相互作用をブロックするか、妨げる抗体を分離する。
4.ポリクローナル抗体
PC−1分子またはその断片に対するポリクローナル抗体は、通常、動物にP
C−1またはPC−1断片とアジュバントを複数回皮下(sc)または腹腔内(
ip)に注射することによって産生される。PC−1の完全長アミノ酸配列は図1
、配列番号1に示す。完全長蛋白またはあらゆる免疫的に優性な断片を免疫原と
して用いることができる。PC−1または標的とするアミノ酸配列を含む断片を
、免疫する動物種に免疫原性を示す蛋白、例えば、キーポールリンペットヘモシ
アニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシンイン
ヒビターと、2機能性試薬または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスル
ホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して結合)、N−ヒドロキシス
クシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、琥珀酸無水物、S
OCl2、またはRとR1が異なるアルキル基であるR1N=C=NRを用いて結
合
させことは有用であろう。
PC−1ポリペプチドまたは断片、免疫原性結合物、または誘導体1mgまた
は1μg(それぞれ、ウサギまたはマウスに対して)を3倍量のフロインドの完
全アジュバントと混合し、その溶液を、動物の複数の部位に皮内注射することに
よって、これらのペプチドまたは結合物に対して動物を免疫する。1カ月後、フ
ロインドの完全アジュバント中の最初の量の1/5〜1/10のペプチドまたは
結合物を複数の部位に皮下注射することによって、動物にブースターをかける。
7〜14日後、動物から採血し、血清中のPC−1またはPC−1断片抗体価を
アッセイする。抗体価がプラトーに達するまで動物にブースターをかける。好ま
しくは、異なる蛋白と結合している、および/または異なる交差結合試薬と結合
した、同じPC−1またはPC−1断片の結合物で動物にブースターをかける。
結合物は組換え細胞培養中で蛋白融合物として作製することもできる。アラム(
アルミニウムアジュバント)のような凝集剤も免疫反応を増強するのに適してい
る。
5.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均質な抗体の集団、すなわち、その集団に含ま
れる個々の抗体が、存在し得るわずかな量の天然に生じ得る突然変異体を除いて
同一である集団から得られる。すなわち、修飾語「モノクローナル」は、その抗
体が異なる抗体の混合物ではないという特徴を示す。
例えば、本発明の抗PC−1モノクローナル抗体はKohlerとMilsteinの、Natu
re,256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いるか、組換えDN
A法(米国特許第4816567号)によって生産することができる。
ハイブリドーマ法では、マウス、またはハムスターのような他の適切な宿主動
物を本明細書の記載に従って免疫することによって、免疫に使用したPC−1ま
たはPC−1断片と特異的に結合する抗体を産生するか、産生することができる
リンパ球を誘発する。あるいはまた、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。次
に、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を用いて、このリンパ球をミ
エローマ細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成させる(Godingの、Monocl
onal Antibodies:Prncpls.and Practice,59-103頁,Academic Press,(1986))。
このようにして産生されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していな
い親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1つまたはそれ以上の物質を含
む適切な培地に接種し、増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素のヒポキ
サンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPR
T)を欠く場合、ハイブリドーマ用培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテ
リン、およびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質によってHGPRT
欠如細胞の増殖が妨げられる。
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選ばれた抗体産生細胞による安
定した高レベルの抗体産生を持続させ、HAT培地のような培地に感受性である
。これらのうち、好ましいミエローマ細胞系は、Salk Institute Cell Distribu
tion Center(San Diego,California USA)から入手可能なMOPC−21および
MPC−11マウス腫瘍細胞由来の、およびAmerical Type Culture Collection
(Rockville,Maryland USA)から入手可能なSP−2細胞由来のもののような
ネズミミエローマ系である。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地における、PC−1に対するモノクロ
ーナル抗体の産生をアッセイする。
6.抗体物質のスクリーニング
本発明に関連する有用な抗体物質のスクリーニングには、通常、何段階かの工
程がある。ある態様において、本発明の抗体は、妥当な高い親和性と特異性を持
ってPC−1分子と結合する好ましい特性を有する。さらに、本発明の抗体は、
PC−1と膜関連インスリン受容体の相互作用を、この受容体のチロシンキナー
ゼ活性に影響を及ぼさないに程度にまで妨げるか、ブロックすることが好ましい
。好ましくは、有用な抗体のスクリーニングは、これらの抗体物質の望ましい特
性の一方または両方を有する抗体を分離することを目的として行われる。
下記のような特異的in vitro結合アッセイを用いて、PC−1と反応する抗体
を分離することができる。
PC−1の抗原決定基と本発明の特異的抗体との反応性を測定するための好ま
しい方法は、酵素免疫測定法(ELISA)のような酵素イムノアッセイ(EI
A)による(Voller,A.らの、J.Clin.Pathol.,31:507-520(1978)、Butler,J.E.
の、Meth.Enzymol.73:482-523(1981)、およびMaggio,E.(編)の、Enzyme Immu
noassay,CRC Press,Boca Raton,FL,(1980))。酵素は、適切な基質に曝されると
、例えば、分光側光法、蛍光側光法、または視覚的方法によって検出可能な化学
的部分を生成するようにその基質と反応するであろう。
PC−1の検出は他の様々なイムノアッセイのいずれを用いて行ってもよい。
例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて抗体のPC−1と結合する抗
体を検出することができる(例えば、Weintraub,B.の、Prncpls.of Radioimmun
oassay,7th Training Course on Radioli-gand Assay Techniques,The Endocr
ine Society,(1986年、3月),1-5,46-49,および68-78頁、およびWork,T.S.らの
、Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Hol
land Publishing Company,(New York,1978)参照)。
イムノアッセイの種類には、さらに沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散ア
ッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射測定アッセイ、プロテイン
Aイムノアッセイ、および免疫電気泳動アッセイが含まれる。
通常のスクリーニング法において、平底96ウェルプレートのウェルを、4℃
で一夜、PBS中の2μg/mLのヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体(Cappe
l,Westchester,PA)100μLでコーティングする。プレートを、PBS中の1
%BSAの溶液で1時間ブロックした後、洗浄用緩衝液(PBS中の0.05%
Tween−20)でプレートを洗浄する。ハイブリドーマ培養上清(100μ
L)を加え、室温で1〜2時間インキュベーションする。次に、ウェルを洗浄用
緩衝液で洗浄し、洗浄用緩衝液中に約1μg/mLの可溶性PC−1、西洋ワサ
ビパーオキシダーゼ結合抗PC−1 Fc断片、2%正常マウス血清、0.25
%NP−40、および25%FCSを含む溶液100μLを加え、2時間インキ
ュベーションする。洗浄した後に反応が進行する。PC−1抗体陽性のウェルを
選び、さらに特徴づけを行なう。
あるいはまた、平底96ウェルプレートのウェルを、4℃で一夜、PBS中の
2μg/mLの精製PC−1またはその断片を含む溶液100μLでコーティン
グする。プレートを1%BSAのPBS溶液で1時間ブロックした後、プレート
を洗浄用緩衝液(PBS中の0.05%Tween−20)で洗浄する。ハイブ
リドーマ培養上清(100μL)を加え、室温で1〜2時間インキュベーション
する。次に、ウェルを洗浄用緩衝液で洗浄し、洗浄用緩衝液中に1μg/mLの
西洋ワサビパーオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス特異的抗体(Cappel,Westchester
,PA)、2%正常マウス血清、0.25%NP−40、および25%FCSを含
む溶液100μLを加え、2時間インキュベーションする。洗浄した後に反応が
進行する。PC−1抗体陽性のウェルを選びさらに特徴づけを行なう。
PC−1分子と反応する抗体が分離されたら、ハイブリドーマを、インスリン
受容体チロシンキナーゼに対するPC−1の阻害活性を中和する効果についてス
クリーニングすることが望ましい。
上記のこれらの分子を生成するための技術を用いて抗体を作製し、中和抗体を
分離する。好ましい中和抗体は、ヒトに対して非免疫原性であり、単一の抗原決
定基に反応する。1団の抗体を生成した後、これらの分子をスクリーニングにか
け、所望の基準(すなわち、in vitroまたはin vivoのいずれかでPC−1の生
物活性を中和することができる)を満たす分子を同定する。通常、PC−1の試
料を1団の抗PC−1抗体に曝し、次いで本明細書に記載のアッセイにかける。
インスリン受容体チロシンキナーゼ活性を阻害するPC−1の能力をブロックす
るそれらの抗体を、中和抗体として選ぶことができる。
潜在的中和抗体のアッセイは多くの方法で行うことができる。詳細には、イン
ヒビターに対する本発明の抗体物質の中和活性は、抗体物質が、インスリン受容
体の自己リン酸化あるいは外来性基質であるポリ(Glu−Tyr)のリン酸化
によって測定されるインスリン受容体チロシンキナーゼ活性のPC−1による低
下をブロックすることができるか否かを測定することによって評価することがで
きる(実施例1)。本アッセイを実施するための標準法はSbracciaらの、J.Biol
.Chem.265:4902-4907(1990)に報告されている。この方法に従って、ハイブリド
ーマ上清のインスリン受容体の自己リン酸化能をスクリーニングした。そのよう
なアッセイにおいて、ヒト乳癌細胞系MCF−7(Milazzoらの、Cancer Rsch.,
52
:3924-3930(1992))をPC−1 cDNAを含む発現プラスミドでトランスフェ
クトする。PC−1を発現するMCF−7細胞は、インスリン受容体の自己リン
酸化による測定において、インスリン受容体チロシンキナーゼ活性の低下が認め
られる。ハイブリドーマ上清を、PC−1を発現するトランスフェクトMCF−
7細胞とインキュベーションし、インスリン受容体の自己リン酸化を測定するた
めの既知の方法に従ってアッセイすることができる。好ましい方法において、ト
ランスフェクトMCF−7細胞で、培地100μL中、10cmプレートをコー
トし、これを加湿大気中、37℃で一夜培養する。ウェルを軽く叩いて培地を除
去し、このウェルにハイブリドーマ上清100μLを加える。ウェルを、インス
リン存在下でさらに30分間インキュベーションし、過剰のハイブリドーマ培地
をデカントする。次に、MCF−7細胞を溶解させて、インスリン受容体を可溶
化する。溶解は、50mM HEPES、0.5%TRITON X−100、0
.01%チメロサール、30KIU/mLアプロチニン、1mM 4−(2−ア
ミノエチル)−ベンゼンスルホニルフロリド塩酸塩、50μM ロイペプチン、
および2mMナトリウムオルソバナデートを含む150mM NaClからなる
緩衝液(pH7.5)中、ホスファターゼインヒビターの存在下で実施される。
次に、この溶解物中のホスホチロシンの存在を、標準的ELISA法を用いてア
ッセイする。続くELISAにおいて、インスリン受容体は、抗インスリン受容
体モノクローナル抗体で予めコーティングした96ウェルプレート上に捕捉され
る。次に、プレートをビオチニル化4G10(抗ホスホチロシン抗体、Upstate
Biotechnology,Inc.,Lake Placid,NY)とインキュベーションする。室温で2時
間インキュベーションした後、プレートを洗浄して過剰の4G10を除去し、西
洋ワサビパーオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Zymed laboratories,S.San
Francisco,CA)100μLとインキュベーションする。プレートを30分間イ
ンキュベーションし、過剰のストレプトアビジンを洗い流す。次に、基質(テト
ラメチルベンチジン)を加え、反応を進行させて発色させる。450nmで吸光
度を測定する。
MCF−7細胞は完全長PC−1を含むcDNAクローンによってトランスフ
ェ
クトされるので、この細胞は膜糖蛋白を過剰発現するものと期待される。この細
胞では正常なインスリン受容体の自己リン酸化が低下している。インスリン受容
体チロシンキナーゼの自己リン酸化を回復しているハイブリドーマ上清を選び、
さらに特徴づけを行なう。本発明の抗体物質の潜在的な予防的、抑制的、または
治療的有用性を測定することによって、in vitroの結果とin vivoの臨床結果を
査定することができる。本発明において有用なさらに多くの細胞アッセイがある
。これらにはマウス3T3−L1含脂肪細胞を用いるグルコース取り込みアッセ
イが含まれる(Cheathamらの、Mol.Cell.Bio.,14(7):4902-4911(1994))。この
方法にしたがって、可能性のある抗体物質を、そのインスリン刺激グルコース取
り込み能に基づいて選択する。本発明の抗体物質は、当業者に容易に理解される
アッセイによってインスリンの有糸分裂刺激能を評価するのにも使用することが
できる。
次に、可能性のある抗体物質をin vivoでの多くの様々な状況でスクリーニン
グする。当業者は、この抗体物質を、適切なネズミモデルにおいて、グルコース
感受性に対するそれらの効果に基づいて評価することができることを理解するで
あろう。本発明の抗体物質の治療的有用性を試験するための多くの動物モデル系
が存在する。これらにはNIDDMの雄の肥満したウイスター糖尿肥満ラットモ
デルのようなインスリン抵抗性モデルが含まれる(Greene,S.の、Obesity Res.,
2:432(1994))。インスリン抵抗性肥満糖尿Zuckerラットはヒト2型NI
DDMの動物モデルである(TerrettazとJeanrenaudの、Endocrinology,112:134
6-1351(1983)、およびHaering,H.とObermaier-Kusser,B.の、Diabetes/Metaboli
sm Reviews,5:431(1989))。
さらに、該物質は、in vivoでの数種のパラメータのいずれかと反応するその
能力に基づいてスクリーニングすることができる。自然肥満アカゲザルはこれら
の研究に適したモデル系である(Bodkinらの、Amer.J.Physiol.,256(5 pt.2):E6
76-681(1989))。このモデルによって、絶食状態およびグルコースの静脈内投与
後の、インスリンおよびグルコースの血しょう中レベルを測定することができる
(HansenとBodkinの、Diabetolosia,29:713-719(1989))。
7.適切な抗体の選択
所望の特異性を有する抗体が生成されたら、これを用いて同じかまたは交差反
応性の抗原決定基特異性を有する他の抗体を同定し、選択することができる。例
えば、新しい抗体は、既知の特異性を有する抗体のその抗原決定基に対する結合
を阻害する能力を測定することによって試験される。当該分野で知られた様々な
競合結合アッセイ法を用いることができる。
抗体のアイソタイプは、ハイブリドーマ生産中にか、免疫グロブリン重鎖のF
c部分を介する所望のエフェクター機能を達成するための当該分野で知られた適
切な組換え法によって選択することができる。例えば、IgG2aのようなアイ
ソタイプは抗体依存細胞性の細胞毒性に優れた活性を有する。同様に、IgG2
aのようなアイソタイプは網内系の細胞上のFc受容体を介して循環中からより
速やかに除去されるため、活動性疾病の部位から望ましくない抗原や標的細胞を
より効率的に除去する。したがって、使用目的によって、特定の抗体アイソタイ
プが他のものより好ましいことがあることは、当業者が過重の実験を行うことな
く容易に確認できることである。
特定のアイソタイプの抗体を生産するハイブリドーマを同定するか、抗体のア
イソタイプを変換するために、ハイブリドーマ上清を用い、免疫グロブリンのア
イソタイプについて試験するためのELISAを用いて、PC−1特異的mAb
の生産をスクリーニングすることができる。以下に、IgG1からIgG2aへ
の所望のアイソタイプの変換を選ぶための方法の例を示す。ハイブリドーマ細胞
は2〜3週間の対数増殖期に増殖し、次いで抗体でコートされた磁性ビーズを用
いてネガティブセレクションを行う。すべてのIgGアイソタイプクラスを含む
ヤギ抗マウス抗体調製物でコートした過常磁性酸化鉄粒子(Biomagビーズ、Adva
nced Magnetics,Inc.より購入)を用いることができる。IgG1からIgG2
aにアイソタイプを変換するには、IgG2aアイソタイプを有する免疫グロブ
リン(不適切な特異性の)とインキュベーションすることによって抗体をコート
したビーズ上のIgG2a結合部位をブロックする必要がある。様々なアイソタ
イプを発現している約108個のハイブリドーマ細胞はそのようなIgG2aが
ブロックされたビーズとインキュベーションされる。IgG1、IgG2b、お
よびIgG3アイソタイプを発現している細胞を結合させ、その集団から磁気的
に除去する。このようなネガティブセレクション工程は数回繰り返すことが望ま
しい。
IgG1、IgG2b、およびIgG3を保有する細胞を除去し、反対にIg
G2a保有細胞を豊富化した残りの細胞集団を約1000個/ウェルの細胞密度
でマイクロプレートに接種する。市販のELISAアッセイ中の抗アイソタイプ
試薬を用いて、ウェルのIgG2a生産をスクリーニングする。陽性クローンを
0.3個/ウェルで再接種し、次いでもう1回スクリーニングと再接種を行なう
。このような方法を用いて、アイソタイプが置き替わっている細胞107個の内
の最適な約1〜5個が選ばれる。IgMからIgGに置き替わっている細胞は、
適切な抗体でコートしたビーズを用いる同様の方法を用いて選ぶことができる。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonとPollaradの、Anal.Bio
chem.,107:220(1980)のスキャッチャード分析法によって決定することができる
。約108M−1およびそれ以上の範囲のPC−1に対する親和性を有する抗体
は本発明の目的に有用である。
ハイブリドーマ細胞が所望の特異性、親和性、および/または活性を有する抗
体を生産することを確認し、次いでこのクローンを限界希釈法でサブクローンし
、標準法によって増殖させることができる(Goding、上記)。この目的のための
適切な培地には、例えば、DMEMまたはRPMI−1640培地が含まれる。
さらに、これらのハイブリドーマ細胞は動物中の腹水腫瘍としてin vivoで増殖
させることもできる。
サブクローンが分泌したモノクローナル抗体は、培地、腹水液、または血清か
ら、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラ
フィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーのような
通常の免疫グロブリンの精製法によって適切に分離することができる。
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは通常の方法を用いて(例え
ば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することが
できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)容易に分離され、配列決定される
。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として用
いられる。分離したら、このDNAを発現ベクター中に組み込み、次いで、この
ようなベクターを組み込まない限り、免疫グロブリン蛋白を生産しない大腸菌細
胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエ
ローマ細胞のような宿主細胞中にトランスフェクトし、組換え宿主細胞中でモノ
クローナル抗体を合成させる。この抗体をコードするDNAを組換えによって細
菌中で発現させることに関する総括的文献には、Skerraらの、Curr.Opinion in
Immunol.,5:256-262(1993)およびPlueckthunの、Immunol.Revs.,130:151-188(19
92)が含まれる。
このDNAは、例えば、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインをコードする配列
によってそれとホモローガスなネズミ配列を置換するか(Morrisonらの、Proc.N
at.Acad.Sci.,81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドコード配
列の全てかまたは一部を免疫グロブリンコード配列と共有結合させることによっ
て修飾することができる。このような方法で、本明細書に記載の抗PC−1モノ
クローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体を
製造する。
通常、そのような非免疫グロブリンポリペプチドで本発明の抗体の定常ドメイ
ンが置き換えられるか、本発明の抗体のある抗原結合部位の可変ドメインが置き
換えられることによって、PC−1に対する特異性を有するある抗原結合部位と
別の抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ2価抗体が生成
される。
キメラ抗体またはハイブリッド抗体は、架橋剤を用いる方法を含む、合成蛋白
化学において知られた方法を用いてin vitroで生産することもできる。例えば、
イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を用いるか、チオエーテル結合を形成
させることによって構築することができる。この目的に適した試薬の例には、2
−イミノチオラおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートが含まれる。
8.ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該分野においてよく知られている。一般的に
、ヒト化抗体は、非ヒト供給源からその中に導入された1個またはそれ以上のア
ミノ酸残基を持っている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残
基と呼ばれ、通常、「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的にWi
nterとその共同研究者らの方法、およびJonesらの、Nature,321:522-525(1986)
、Riechmannらの、Nature,332:323-327(1988)、およびVerhoeyenらの、Science,
239:1534-1536(1988)に記載の方法に従って、げっ歯類CDRsまたはCDR配
列でヒト抗体の対応配列を置換することによって行うことができる。したがって
、そのような「ヒト化」抗体は、完全ヒト可変ドメインより実質的に小さい配列
が非ヒト種由来の対応配列によって置換されているキメラ抗体(米国特許第48
16567号)である。実際には、ヒト化抗体は、通常、CDR残基とおそらく
FR残基のいくらかがげっ歯類抗体中の類似部分由来の残基で置換されているヒ
ト抗体である。
ヒト化抗体を作製するのに用いられるヒト可変ドメイン(軽鎖および重鎖)の
選択は抗原性を減じる上で非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に
従って、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の
完全なライブラリーに対してスクリーニングする。その際、げっ歯類の配列に最
も近似しているヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトの枠組みとして容認される
(Simsらの、J.Immunol.,151:2296(1993)、およびChthiaらの、J.Mol.Biol.,196
:901(1987))。別の方法では、特定のサブグループの軽鎖および重鎖からなるす
べてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定の枠組みが用いられる。この枠組
みは多くの様々なヒト化抗体に使用することができる(Carterらの、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、およびPrestaらの、J.Immuno.,151:2623(1993))
。
さらに重要なことは、抗原に対する高親和性と他の好ましい生物特性を維持し
ながら抗体がヒト化されることである。この目的を達成するために、好ましい態
様では、親およびヒト化配列の三次元モデルを用い、親配列および様々な概念的
ヒト化産物の分析によってヒト化抗体が生産される。三次元免疫グロブリンモデ
ルが通常利用可能であり、当業者によく知られている。選ばれた候補の免疫グロ
ブリン配列の有望な三次元配座構造を図解して表示するコンピュータープログラ
ムが利用可能である。この表示を検討することによって選ばれた候補免疫グロブ
リン配列の機能における残基の有望な役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリ
ンのその抗原との結合能に影響を与える残基の分析を行うことができる。このよ
うにして、コンセンサス配列および移入配列からFR残基を選択、結合すること
によって、標的抗原に対する親和性の増加といった所望の抗体特性を達成するこ
とができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接および最も実質的
に関与する。
9.ヒト抗体
ヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマ法によって作出することができる。
ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘ
テロミエローマ細胞系は、例えば、Kozborの、J.Immunol.,133:3001(1984)、Bro
deurらの、Monoclonal Antibody Prod.Techniques and Applns.,51-63頁、Marce
l Dekker,Inc.,N.Y.(1987)、およびBoernerらの、J.Immunol.,147:86-95(1991)
に記載されている。
内因性の免疫グロブリン生産を欠き、免疫によってヒト抗体の完全なレパート
リーを生産することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を、今
や作出することができる。例えば、キメラおよびジャームライン(germ-line)
突然変異マウスにおけるホモ接合による抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子の欠失
によって、内因性の抗体生産の完全な阻害が生じることが報告されている。その
ようなジャームライン突然変異マウスにヒトジャームライン免疫グロブリン遺伝
子配列を移入すると、抗原刺激によってヒト抗体の生産がもたらされるであろう
(Jakobovitsらの、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovitsらの、
Nature,362:255-258(1993)、およびBruggermannらの、Year in Immuno.,7:33(19
93)参照)。
あるいはまた、ファージ発現(表示)技術(McCaffertyらの、Nature,348:552
-553(1990))を用いて、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン
遺伝子レパートリーからin vitroでヒト抗体および抗体断片を生産することがで
きる。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdのような
線維状バクテリオファージの主要なまたはマイナー被覆蛋白遺伝子のいずれか中
の読み枠内にクローンされ、ファージ粒子表面に機能性抗体断片として発現され
る。線維状粒子はファージゲノムの1本鎖DNAのコピーを含んでいるので、抗
体の機能特性に基づく選択によって、それらの特性を有する抗体をコードする遺
伝子も選択される。すなわち、このファージは特性がB細胞に幾分似ている。フ
ァージ発現は様々な形で行うことができる(Johnson,Kevin S.とChiswell,David
J.の、Current Opinion in Structural Biology,3:564-571(1993)参照)。ファ
ージ発現には多くの供給源からのV遺伝子断片が利用できる。Clacksonら(Natu
re,352:624-628(1991))は、免疫したマウスの脾臓由来のV遺伝子の小さなラン
ダムな組み合せライブラリーから多様な一連の抗オキサゾロン抗体を分離した。
非免疫ヒトドナー由来のV遺伝子レパートリーを構築することができ、多様な一
連の抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、実質的にMarksらの、J.Mol.Biol.
,222:581-597(1991)、またはGriffithらの、EMBO J.,12:725-734(1993)に記載の
技術に従って分離することができる。自然な免疫反応においては、抗体遺伝子は
高率に突然変異を増大させる(体細胞突然変異亢進)。導入された変化のいくつ
かはより高親和性をもたらし、高親和性表面免疫グロブリンを発現しているB細
胞は、その後抗原刺激によって優先的に複製され、分化する。この自然の工程は
「鎖再編成(shuffling)」(Marksらの、Bio/Technol.,10:779-783(1992))と
して知られる技術を用いることによってまねることができる。この方法において
、ファージ発現によって得られた「一次(プライマリー)」ヒト抗体の親和性は
、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を、非免疫ドナーから得られたVドメイン遺伝子
の天然に存在する変種のレパートリー(レパートリー)で連続的に置き換えるこ
とによって改善することができる。この技術によって、nMの範囲の親和性を有
する抗体および抗体断片を生産することができる。非常に大きなファージ抗体レ
パートリーを作製する戦略はWaterhouseらの、Nucl.Acids Res.,21:2265-2266(1
993)に記載されている。
遺伝子再編成は、出発げっ歯類抗体と同様の親和性と特異性を有するヒト抗体
を、げっ歯類抗体から誘導するのにも使用することができる。「抗原決定基刻み
込み(インプリンティング)法」とも呼ばれるこの方法に従って、ファージ発現
技術によって得られたげっ歯類抗体の重鎖または軽鎖Vドメイン遺伝子をヒトV
ドメイン遺伝子レパートリーで置き換えることにより、げっ歯類−ヒトキメラを
作出する。抗原を選択することによって、機能性抗原結合部位を回復することが
できるヒトの可変部が分離される。すなわち、この抗原決定基はパートナーの選
択を左右する(刻み込む)。この工程を繰り返して、残るげっ歯類のVドメイン
を置き換えることにより、ヒト抗体が得られる(PCT WO 93/06213、1993年4月
1日公開)。げっ歯類抗体のCDR結合による従来のヒト化法とは異なり、この
方法により、げっ歯類由来の枠組みやCDR残基を持たない完全なヒト抗体が得
られる。
10.抗体物質の使用
抗PC−1抗体、特に中和抗体はPC−1過剰発現の存在、例えば特定の細胞
、組織、または血清におけるPC−1産生の診断的アッセイを行うのに有用であ
る。例えば、PC−1抗体は、(a)免疫特異的な結合が生じる条件下で、試料
と第一抗PC−1抗体を接触させ、(b)免疫特異的な結合が生じる条件下で、
試料と第二抗PC−1抗体を接触させ、次いで(c)試料成分と第一および第二
抗インヒビター抗体との間に生じる免疫特異的結合を検出もしくは測定する工程
を含む、試料中のインスリン受容体チロシンキナーゼインヒビター量を検出もし
くは測定する方法、に用いることができる(ここで、試料成分と第一および第二
抗体の免疫特異的結合は試料中のインヒビターの存在または量を示す)。
本発明には、(a)前述の方法に従ってインスリン受容体チロシンキナーゼイ
ンヒビターの総量を測定し、工程(a)で測定した量と標準試料中に存在するイ
ンスリン受容体チロシンキナーゼインヒビターの量を比較する工程を含む、試料
中のインスリン受容体チロシンキナーゼインヒビターの過剰発現を決定するため
の方法、も含まれる(ここで、工程(a)の量のレベルの増加はインスリン受容
体チロシンキナーゼインヒビターの過剰発現を示す)。
すなわち、本発明は、前述の方法に従って試料中のインスリン受容体チロシン
キナーゼインヒビター量を測定し、試料中のインスリン受容体チロシンキナーゼ
インヒビター量と標準試料中のインスリン受容体チロシンキナーゼインヒビター
の量を比較する工程を含む、インスリン抵抗性もしくはインスリン非依存性糖尿
病、または不適切なグルコース代謝が関与する他の疾病もしくは疾患の存在もし
くは発症を検出するための方法、を提供するものである(ここで、試料中のイン
スリン受容体チロシンキナーゼインヒビターの過剰な増量は疾患を示す)。
11.アッセイの形式とキット
多くの様々なアッセイおよびアッセイの形式を用いて、対照試料と比較した試
料中のPC−1量を検出することができる。これらの形式は、例えば、本発明の
診断的アッセイに有用である。この診断的アッセイはPC−1レベルの増加や異
常が関与する疾病および疾患の同定に有用である。
当該分野で知られているあらゆる可溶性分析物の測定法を、本発明を実施する
ために用いることができる。そのような方法には、ラジオイムノアッセイ、酵素
イムノアッセイ(EIA)、好ましくは酵素免疫測定法(ELISA)、「サン
ドウィッチ」イムノアッセイ、沈降反応、ゲル拡散反応、免疫拡散アッセイ、凝
集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射分析アッセイ、蛍光イムノアッセイ、
プロテインAイムノアッセイ、および免疫電気泳動アッセイのような技術を用い
る競合および非競合アッセイ系が含まれるが、これらに限定されるものではない
。好ましいイムノアッセイ法の例は、米国特許第4845026号(1989年
、7月4日)、および米国特許第5006459号(1991年、4月9日)を
参照のこと。
ある態様においては、本発明のPC−1分子結合アッセイに用いられる1つま
たはそれ以上の抗体は標識されており、別の態様では、第一抗体は非標識であり
、標識第二抗体を用いて第一抗体と結合したPC−1を検出する。さらなる方法
には、例えば、ラットIgGモノクローナル抗体を用いてそれらに結合した試料
中のPC−1(抗原)を検出または測定するアッセイが含まれる。次いで、標識
ヤギ抗ラット免疫グロブリンを用いて結合モノクローナル抗体を検出することが
できる。
好ましい態様においては、ポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体
を、本発明のサンドウィッチイムノアッセイに用いることができる。ある態様に
おいては、第一抗体は用いられず、PC−1を直接固体の支持体と結合させ、次
いで抗体、抗体断片、または誘導体である第二結合パートナーを用いて検出を行
う。EIAにおいて、抗体を検出できるように標識するのに使用できる酵素には
、西洋ワサビパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース−6−ホ
スフェート脱水素酵素、マレエート脱水素酵素、スタフィロコッカスヌクレアー
ゼ、Δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコール脱水素酵素、α−グリセ
ロホスフェート脱水素酵素、トリオースホスフェートイソメラーゼ、アスパラギ
ナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、
ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラー
ゼが含まれるが、これらに限定されるものではない。
検出抗体を蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識抗体を適切な波長の
光にばく露すると、その存在を蛍光によって検出することができる。最も普通に
用いられる蛍光標識用化合物は、フルオレセインイソチオシアネート 、ローダ
ミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデ
ヒド、およびフルオレスカミンである。
検出抗体は152Euやランタン系列の他の元素のような蛍光励起金属を用いて
標識することができる。これらの金属はジエチレントリアミンペンタ酢酸(DT
PA)やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート群を用いて
抗体と結合させることができる。
抗体は化学ルミネッセント化合物と結合させることによって検出できるように
標記することもできる。次いで、化学ルミネッセント標記抗体の存在は、化学反
応の経過中に生じるルミネッセンスの存在を検出することによって決定される。
特に有用な化学ルミネッセント標識化合物の例には、ルミノール、イソルミノー
ル、テロマチックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩お
よび蓚酸エステルがある。同様に、生物ルミネッセント化合物を用いて抗体を標
識することもできる。生物ルミネッセンスは、触媒蛋白が化学ルミネッセント反
応の効率を増加させる、生物系においてみいだされた化学ルミネッセンスの一種
である。生物ルミネッセント蛋白の存在は、ルミネッセンスの存在を検出するこ
とによって決定することができる。標識を目的とした重要な生物ルミネッセント
化合物にはルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエアクオリンがある。当該分
野で知られた他のあらゆる標識物、例えば、放射性核種などを使用することがで
きる。
本発明のアッセイにおいて、PC−1のような抗原または抗体は、固相支持体
または担体に結合させることが好ましい。「固相支持体または担体」は、抗原ま
たは抗体と結合することができるあらゆる支持体を表す。よく知られた支持体ま
たは担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキス
トラン、ナイロン、アミロース、天然ならびに修飾されたセルロース、ポリアク
リルアミド、アガロース、およびマグネチドが含まれる。本発明の目的のための
担体の性質はある程度可溶性でも不溶性でもよい。支持体物質は、結合した分子
が抗原や抗体に結合することができる限りにおいて、実質的にあらゆる考えられ
る構造的立体配置を有していてもよい。すなわち、支持体の立体配置はビーズの
ように球状か、試験管の内部表面あるいは棒の外部表面のように円柱状であって
もよい。あるいはまた、この表面はシートおよびテストストリップなどのように
平面であってもよい。好ましい支持体にはポリスチレンビーズが含まれる。当業
者は、抗体もしくは抗原を結合するための多くの他の適切な担体を熟知している
か、通常の実験法を用いることによってそれらの担体を確認することができるで
あろう。
好ましい態様においては、抗体−抗原−抗体サントウィッチイムノアッセイが
行われる。すなわち、第一抗体と抗原を結合させ、第二抗体と抗原を結合させ、
次いで第一および第二抗体の両方と免疫特異的に結合した抗原を検出あるいは測
定することを含む方法によって検出もしくは測定する。ある態様においては、第
一および第二抗体はモノクローナル抗体である。この態様において、抗原がモノ
クローナル抗体によって認識される反復性の抗原決定基を含んでいない場合は、
第二モノクローナル抗体は第一抗体の結合部位と異なる部位に結合しなければな
らない(例えば、抗原との結合において2つの抗体間の競合阻害がないことによ
って示される)。別のある態様においては、第一または第二抗体はポリクローナ
ル抗体である。さらに別の態様においては、第一および第二抗体はいずれもポリ
クローナル抗体である。
好ましい態様において、「正(forward)」サンドウィッチ酵素イムノアッセ
イが、以下に概略的に記載したごとく用いられる。PC−1に対する抗体(捕獲
抗体、Ab1)を、固相マトリックス、好ましくはマイクロプレートに吸着させ
る。試料を、Ab1特異的な試料中のあらゆるPC−1が固相Ab1と結合する
ようにAb1コートしたマトリックスと接触させる。結合していない試料成分を
、洗浄して除去する。抗原の第二抗原決定基に対する酵素結合第二抗体(検出抗
体、Ab2)を、Ab1によって捕捉された抗原と結合させ、サンドウィッチを
完結させる。結合していないAb2を洗浄して除去した後、酵素によって発色す
る基質を加え、サンドウィッチ中に存在する酵素量に比例して着色した生成物が
形成され、これが試料中の抗原量を反映する。停止溶液を加えて反応を終了させ
る。色調は、分光光度計を用いて適切な波長で吸光度として測定する。標準曲線
を既知の抗原濃度から調製し、これから未知の試料値を決定することができる。
他の種類の「サンドウィッチ」アッセイにはいわゆる「同時」および「逆」アッ
セイがある。同時アッセイには抗体が固体の支持体と結合した抗体と標識抗体が
同時に被験試料に加えられる1インキュベーション段階が含まれる。インキュベ
ーションが完結した後、固体支持体を洗浄して液体試料の残留物および結合して
いない標識抗体を除去する。次に、固体支持体と結合した標識抗体の存在を、通
常の「ホワード」サンドウィッチアッセイと同様に決定する。
「逆」アッセイでは、最初に液体試料に標識抗体の溶液を段階的に加え、次い
で適切なインキュベーション期間を設けた後に固体支持体に結合した非標識抗体
を加える。2回目のインキュベーション後、固相を通常の方法で洗浄して被験試
料の残留物および反応していない標識抗体の溶液を除去する。次に、固体支持体
と結合した標識抗体の測定を、「同時」および「正」アッセイと同様に行う。
本発明のアッセイを行うための成分を含む1個またはそれ以上の容器またはバ
イアルを含むキットも本発明の範囲内である。例えば、そのようなキットは単一
または複数の抗体であり、好ましくは抗原の同じ結合部位で競合しないPC−1
抗原に対する1対の抗体であることが好ましい。ある態様において、PC−1は
あらかじめ固相マトリックスに吸着されていてもよい。好ましくはこのキットに
は、当該分野でよく知られている他の必要な洗浄用試薬が含まれる。EIAでは
、このキットに発色性の基質と、発色が起こったときに酵素反応を止めるための
試薬が含まれる。キットに含まれる基質は、抗体調製物の1つと結合している酵
素に適した基質である。これらは当該分野でよく知られており、そのいくつかを
以下に例示する。キットは所望により、PC−1標準品を含む。すなわち、精製
PC−1の量は標準試料中のPC−1の正常な量に対応する。
具体的な態様において、本発明のキットは、1個またはそれ以上の容器中に、
(1)第一抗体でコートされたマイクロタイタープレートのような固相担体、(
2)検出できるように標識された第二抗体、および(3)第一および第二結合パ
ートナーによって認識されるPC−1分子の標準試料を含んでいる。
12.さらなる抗体物質の使用
本明細書に記載の抗体物質はアフィニティ精製した抗体物質としても使用する
ことができる。この方法において、インヒビターに対する抗体は、何らかの通常
の技術によってセファデックスカラムのような適切なカラムに固定される。調製
すべきインヒビターを含む試料をカラムに流し、このカラムを、カラムに吸着し
ているインヒビター以外のすべての分子を通過させるような適切な溶媒で洗浄す
る。次いで、カラムをグリシン緩衝液(pH5.0)のような適切な溶媒で洗浄
し、カラムからインヒビターを溶離する。
本明細書に記載の抗体は、放射性同位元素標識インヒビター(例えば、放射性
ヨウ素化インヒビター)と抗体の混合物をインスリン受容体を含む細胞とインキ
ュベーションすることにより、抗体が標識したインヒビターと受容体との結合を
ブロックするかどうかを決定する通常の方法の受容体結合アッセイまたは放射性
受容体アッセイにも有用である。
13.可溶性受容体またはその断片
別の好ましい態様において、「作用物質」には、PC−1分子と結合するか、
PC−1と膜関連インスリン受容体との相互作用に干渉し、この結合または干渉
によって膜関連受容体のチロシンキナーゼ活性に対するPC−1の作用を中和す
るインスリン受容体の一部が含まれる。可溶性受容体はペプチドまたはその断片
のような膜関連インスリン受容体の一部であってよい。本発明のこの態様に従っ
て、in vivoでインスリンと結合しないが、PC−1分子と膜関連インスリン受
容体との相互作用を妨げる所望の特性を有する可溶性インスリン受容体を注意し
て選ぶ必要がある。理想的には、可溶性受容体断片は、膜結合インスリン受容体
チロシンキナーゼ活性のPC−1依存性阻害を妨げるかまたはブロックするであ
ろう。
そのような可溶性受容体分子は、インスリン受容体の一次構造の全部もしくは
一部に基づいている。インスリン受容体の一次構造およびこの受容体をコードす
る核酸はBellらの、米国特許第4761371号(1988年8月2日発行)に記載
されている。
したがって、インスリン受容体の膜内外領域の全部もしくは一部を欠く可溶性
インスリン受容体構築物を発明することができる。この目的のために、カルボキ
シ−末端膜内外領域を欠くインスリン受容体分子をコードする発現ベクターを構
築することができる。ある態様において、断片はin vivoでPC−1と結合する
望ましい特徴を保持している。PC−1を結合することによって、可溶性受容体
断片はPC−1と膜関連インスリン受容体との相互作用を妨げる。
インスリンを認識する上で重要なインスリン受容体分子の部分は当業者が決定
することができる。さらに、Kunkelらの、Methods of Enzymol.154:367-382(198
7)に記載されているような部位指向性突然変異やCunninghamとWellsの、Science
,244:1081-1085(1989)に記載されているようなアラニンスキャンニング突然変異
、および他の通常の技術を用いて、インスリンの結合に重要なインスリン受容体
の部分を明らかにすることができる。すなわち、インスリンと結合しないがPC
−1と膜結合インスリン受容体との相互作用を妨げる所望の特性を有するインス
リン受容体の一次構造に基づく可溶性分子を工夫することができる。
この目的のために、インスリン受容体の一次配列に基づく可溶性分子をコード
する発現ベクターを構築することができる。所望の特性を有するインスリン受容
体の部分をコードする配列を調製した後、当業者が利用可能な技術を用いて発現
させることができる。
可溶性分子の有力な候補は、それらのインスリン受容体チロシンキナーゼ活性
のPC−1依存性阻害を阻害する能力によってスクリーニングすることができる
。本明細書に記載したようなインスリン受容体の自己リン酸化および外因性基質
のリン酸化をモニターするアッセイ法を用いて、適切な可溶性受容体分子を選ぶ
ことができる。
14.作用物質の治療的使用
PC−1の過剰発現に関連する疾病もしくは疾患を治療するための本発明の前
臨床的および臨床的治療的な使用は、許容される診断および治療の原則を用いて
、当業者により最良に成し遂げられるであろう。そのような原則は当該分野で知
られており、例えば、Braunwaldら編の、Harrison's Prncpls.of Intnl.Med.、
第11版、McGraw-Hill,N.Y.(1987)に記載されている。
本発明の作用物質は、PC−1の不適切な発現が関与する疾病もしくは疾患の
治療に明らかな利点を有する。本発明以前の、インスリン抵抗性の結果としての
グルコース代謝異常を治療するための治療的選択枝としては、(a)治療せずに
自然に回復するのを待つ、(b)厳密な食事制限により食後のグルコースレベル
を調節する治療、および(c)高価なインスリン補充療法がある。本発明の治療
法は、膜糖蛋白のPC−1の過剰発現の結果として生じる異常なグルコース代謝
に関連する疾病もしくは疾患を治療するための以前の方法に比べて明らかな利点
を持っている。本方法は、病気に由来すると思われる平衡失調に対する特異的で
費用のかからない介入法を提供する。
治療に応用するために、本作用物質は哺乳動物、好ましくは患者に、医薬的に
許容される剤形で投与することができ、これには本作用物質を患者にボーラスと
してか、または分、時、日、週、もしくは月の期間にわたって連続的に注入する
ことによって静脈注射するか、または筋肉内、皮下、動脈内、関節滑液嚢内、鞘
内、骨膜内、経口、局所、または吸入の各経路によって投与することができる。
作用物質の最も効果的な投与法および作用物質の投与療法は、治療すべき疾病
の種類、疾病の重症度と経過、この作用物質の投与目的が予防であるか治療であ
るか、以前の治療、患者の病歴と抗体のような作用物質に対する反応、および治
療にあたる医師の裁量によるであろう。本作用物質は一連の治療において1回ま
たはそれ以上で患者に適切に投与される。
薬剤の1用量は、例えば、1回またはそれ以上の単回投与、連続注入、または
ボーラス注射のいずれかにより、患者に投与される。例えば、本作用物質の初期
用量は注射または注入によって患者に投与される。数日またはそれ以上の反復投
与では、条件によって、疾病症状の所望の抑制が生じるまで、治療が繰り返され
る。しかし、他の投与療法が有用なことがある。本発明の別の態様において、本
作用物質の有効性は、この目的に有効な別の薬剤と連続的にか、組み合わせて本
作用物質を投与することによって改善することができる。
多くの臨床パラメーターは、1)血糖症の管理と、例えば、血清脂質の正常化
を含むその結果、および後期血管合併症のリスクの減少、2)血糖症管理の安定
化、例えば、脆弱化の減少、および急性代償不全のリスクの減少、および3)糖
尿病性ケトアシドーシスの発生率の低下といった臨床的改善をモニターすること
を含めて治療の経過にわたって追跡することができる。患者に投与したときに、
インスリン受容体チロシンキナーゼ活性のPC−1依存性阻害を妨げることがで
きる薬物量が「医薬的有効」量であり、その量は上記の要因によって変動するが
、一般に、約0.01〜100mg/kg体重/日である。抗体物質の用量は約
0.01〜25mg/kg体重/日の範囲の、静脈内注射可能な用量で投与する
ことができる。本発明の医薬組成物
抗体および可溶性受容体断片を含む本発明の作用物質は、医薬組成物の製造に
十分適している。本発明の医薬組成物は、本発明の組成物の有益な効果にあずか
ることができるあらゆる動物に投与することができる。そのような動物の主なも
のはヒトであるが、本発明はこれには限定されるものではない。
薬理活性を有する作用物質それ自体に加えて、医薬組成物には、活性化合物を
医薬的に使用可能な調製物に加工処理するのを促す賦形剤および助剤を含む適切
な医薬的に許容される担体が含まれることが好ましい。
非経口投与に適した製剤には、水溶性の形のペプチド水溶液、例えば、水溶性
塩が含まれる。さらに、適切な油状注射用懸濁液として、蛋白またはペプチドの
懸濁液を投与することができる。適切な脂溶性溶媒またはビークルには脂肪油(
例えば胡麻油)または合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチルまたはトリ
グリセリド)が含まれる。水性注射用懸濁液は、例えば、ナトリウムカルボキシ
メチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランを含む懸濁液の
粘性を増加する物質を含むことができる。所望により、この懸濁液は安定化剤も
含むことができる。本発明の薬剤は、凝集物および他の蛋白物質を実質的に含ま
ない精製された形で製剤されることが望ましい。
この組成物は、注射によって投与するために通常の医薬的に許容される非経口
ビークルを用いて製剤される。これらのビークルは無毒性および治療性であり、
多くの製剤がRemington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Mack Publishing
Co.,(1980)中に記載されている。賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン
ゲル溶液、デキストロース溶液、およびハンクス平衡塩溶液があるが、これらに
限定されるものではない。本発明の製剤は、等張性、生理的pH、および安定性
を維持する物質のような少量の添加物を含んでいてもよい。そのような投与剤形
には、本質的に無毒性および非治療性の医薬的に許容される担体が含まれる。そ
のような担体の例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、
レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清蛋白、ホスフェート 、グリシン、
ソルビン酸、ソルビン酸カリウムのような緩衝物質、飽和植物性脂肪酸のような
部分グリセリド混合物、水、塩、または硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウ
ム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、ならびに亜鉛塩のような電解質、コ
ロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート 、ポリビニルピロリドン、セル
ロース主体物質、およびポリエチレングリコールが含まれる。
薬剤の局所用剤形もしくはゲルを基剤とする剤形用のアジュバントには、ナト
リウムカルボキシメチルセルロースやナトリウムメチルセルロースのような多糖
類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート 、ポリオキシエチレン−ポリオ
キシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、およびウッドワ
ックス(wood wax)アルコールが含まれる。
すべての投与において、通常のデポー剤形が適切に用いられる。そのような形
には、例えば、ミクロカプセル、ナノ−カプセル、リポソーム、膏剤、吸入剤、
鼻スプレー、および舌下錠が含まれる。
以下の実施例で本発明を説明する。本明細書中で用いている方法は単に例示で
しかない。本明細書と当業者の通常のレベルに照らして本発明の精神と範囲から
外れることなく、これらの技術からの様々な新しい試みや改良を行うことができ
ることは明らかであろう。実施例中のすべての文献および特許の引用は本明細書
の一部を構成する。
実施例
1.一般的方法
1.1 外因性基質の自己リン酸化
人工基質ポリ(Glu−Tyr)を用いるインスリン受容体の自己リン酸化と
インスリン受容体チロシンキナーゼ活性は標準法に従って行われた(Sbracciaら
の、J.Biol.Chem.265:4902-907(1990))。インスリン受容体1ngを、100n
Mインスリンの存在下または非存在下で、2mM MnCl2、10mM MgC
l2、50mM HEPES(pH7.6)、150mM NaCl、0.1%T
RITON(登録商標)X−100、および1%BSAを含む緩衝液25μL中
、20℃で1時間インキュベーションした。1mg/mL ポリ(Glu−Ty
r)と10μM[32P]ATPの混合物5μLを20℃で1時間加えた。次に、32
Pの取り込みを、濾紙のトリクロロ酢酸沈降度によって測定した。実施例2
:NIDDM患者由来の線維芽細胞中のインスリン受容体アンタゴニス
ト方法 インスリン受容体の自己リン酸化
患者、および性別と年齢が一致した対照由来の線維芽細胞を、前腕皮膚生検に
よって得、次いで、標準条件下、加湿大気中で、10%ウシ胎児血清を添加した
ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中、37℃で増殖させた(Tissue Cul
ture:Methods and Applns.,Kruse P.F.Jr.ら編、N.Y.Academic(1973))。アッ
セイの時点で、1nMインスリンを、線維芽細胞1×106個を含む培養物に2
分間加えた。次に、細胞を4℃のPBSで3回洗浄し、50mM HEPES(
pH7.6),150mM NaCl、1mM p−メチルスルホニルフロリド(
PMSF)および2mMナトリウムオルソバナデートを含む緩衝液1mL中に掻
き取った。細胞をペレットとし、NaClを含まず、1%TRITON X−1
00を含む同じ緩衝液中に溶解した。この溶解物をa−IR3(IGF−I受容
体に特異的なモノクローナル抗体)で免疫吸着させた。次に、除去した溶解物を
Forsayethらの、Diabetes,35:837-846(1986)に記載の抗インスリン受容体抗血清
を用いて免疫沈降させ、この免疫沈降物を還元条件下で8−16%グラジエント
ゲル(NOVEX)中、SDS−PAGEにかけた。蛋白をニトロセルロースに
転写し、ホスホチロシンに対する抗体(Upstate Biotechnology,Inc.)を用いて
免疫ブロッティングを行った。結果
完全な線維芽細胞中のインスリン受容体チロシンキナーゼ活性インヒビターの
存在を確認するために、in vivoのチロシンキナーゼ活性を、上記のごとくイン
スリン受容体βサブユニットの自己リン酸化によって評価した。対照線維芽細胞
において、1nMインスリンはインスリン受容体βサブユニットの自己リン酸化
を刺激した(図2)。10〜100nMインスリンで最大の効果がみられた(図
2)。インスリン抵抗性の患者由来の線維芽細胞は、in vivoでのインスリン受
容体の自己リン酸化を刺激するために有意により大量のインスリンを必要とした
。実施例3
:インスリン受容体チロシンキナーゼPC−1の精製
in vivoでインスリン受容体の自己リン酸化の著しい阻害がみられる患者由来
の線維芽細胞(5×108)を掻き取って洗浄した。細胞ペレットを50mM H
EPES(pH7.6)、1mM PMSF、2mMナトリウムオルソバナデー
ト、および1%TRITON X−100中に溶解した。溶解した溶解物を抗イ
ンスリン受容体アフィニティカラムにかけた(Sbracciaらの、(1991)Diabetes,4
0:295-299、およびMaddux,B.A.の、J.Clin.End.Metab.77:73-79(1993))。次に
、通過液(インスリン受容体が除去された)を小麦胚芽アグルチニンアガロース
カラム(EY Labs)にかけた。洗浄後、結合した糖蛋白を50mM HEPES(
pH7.6)、150mM NaCl、0.01%Tween−20および1m
MPMSF中の0.3M N−アセチル−D−グルコサミンで溶離した。この糖
蛋白をCentricon 100フィルター(Amicon Corp)を用いて脱塩し、ATPアガロ
ースカラム(Sigma)1mLにかけた。洗浄後、蛋白をNaClステップグラジ
エントで溶離した。小麦胚芽アグルチニン溶出液と1M NaCl溶出液をSD
S−PAGEにかけ、次いで銀染色を行った。無細胞インスリン受容体チロシンキナーゼアッセイ
PC−1を精製し、次いで下記の無細胞インスリン受容体チロシンキナーゼア
ッセイを行った。
インスリン1ngを、100nMインスリンの存在下または非存在下で、2m
M MnCl2、10mM MgCl2、50mM HEPES(pH7.6)、1
50mM NaCl、0.1%TRITON X−100、および0.1%BSA
を含む緩衝液25μL中、20℃で1時間インキュベーションした。1mg/m
Lポリ(Glu−Tyr)と10μM[32P]ATPの混合物5μLを20℃で
1時間加えた。次に、32Pの取り込みを、濾紙上のトリクロロ酢酸沈降度によっ
て測定した。最初の実験において、インスリン受容体免疫反応物0.3ngを含
む小麦胚芽精製抽出物5μLを、細胞当り106個のヒトインスリン受容体を発
現しているトランスフェクト3T3/HIRマウス線維芽細胞由来の精製ヒトイ
ンスリン受容体1ngに加えた(Whittakerらの、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:5
237-5241(1987))。受容体を除去した抽出物を用いるその後の研究では、インヒ
ビター蛋白200ngを含む抽出物5μLを精製受容体に加えた。結果
インヒビターを、無細胞インスリン受容体チロシンキナーゼアッセイを用いて
精製した。その精製法を以下に示す。可溶化した細胞溶解物からインスリン受容
体を除去し、インヒビターを、小麦胚芽アフィニティクロマトグラフィー、次い
でATP−アガロースクロマトグラフィーによって明らかに均質になるまで精製
した。インヒビターは、ATP−アガロースカラムから、相対分子量が130お
よび260kDaの2本のバンドとして溶離された(図3)。ATP−アガロー
ス溶出液は小麦胚芽溶出液よりインスリン受容体チロシンキナーゼ活性インヒビ
ターとして>100倍強力であった。細胞ホモゲネートからの精製物は、ウエス
タンブロッティングと酵素活性によって>1000倍と決定された。
130000kDaのバンドを溶離し、臭化シアンで開裂し、得られる断片を
薄層SDSグラジエントゲル(0.5mm)で分離することによって、電気ブロ
ッティング転写効率を増加させた。14および21kDaのバンドを配列決定し
(データ示さず)、自動化Edmanグラジエントによって、これは膜糖蛋白PC−
1の対応臭化シアンペプチドと同じであることがわかった(Buckleyらの、J.Bio
l.Chem.,265:17506-17511(1990)、およびFunakoshiらの、Arch.Biochem.Biophys
.295:180-187(1992))。実施例4
:線維芽細胞中のPC−1蛋白含有量のウエスタンブロッティング分析
インスリン抵抗性およびNIDDM(MW)患者の細胞由来の溶解物のウエス
タンブロッティングによって、対照細胞と比べてPC−1の130kDa(モノ
マー)および260kDa(ダイマー)形がいずれも5〜10倍増加しているこ
とがわかった。方法
インヒビター1μg/レーンを、適切な対照および標準とともに非還元試料緩
衝液を用いて12%SDS−PAGE中で電気泳動した。次に、糖蛋白のバンド
を、半乾燥電気泳動転写によってニトロセルロース固体支持膜に転写した。転写
した糖蛋白を含む膜を、1%脱脂乾燥乳蛋白、または約2%のBSAおよび約0
.3%のゼラチンのような他のブロッキング試薬で2時間ブロックした。次に、
ニトロセルロース膜をPC−1に対するポリクローナル抗体と反応させた。次い
で、この膜を、緩衝液(PBS−Tween)で4回各5〜10分間洗浄した。
次い
で、膜を、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識抗ネズミ抗体と2時間反応させた。
膜を再度洗浄し、次いで基質で発色させて、糖蛋白バンドを可視化させた。結果
インスリン抵抗性およびインスリン非依存性糖尿病患者の細胞由来溶解物のウ
エスタンブロッティングによって、対照細胞に比べて、PC−1の130kDa
(モノマー)と260kDa(ダイマー)形のいずれも5〜10倍増加している
ことがわかった。結果を図4Aに示す。実施例5
:PC−1 mRNAのノーザンブロット分析方法
線維芽細胞を全面成長(コンフルエント)に至るまで増殖させ、プロテアーゼ
Kで消化することによりポリA+mRNA10μgを調製した(Hartmannらの、E
ndocrinology,127:2038-2049(1990))。ポリ(A)+10μgを1%アガロース
ホルムアルデヒド電気泳動にかけ、ニトロセルロースに転写し、ヒトPC−1(
Warremらの、An.Intern.Med.,113:909-915(1990)またはB−アクチン(Hartmann
、上記)に対するcDNAでプローブした。結果
MW由来mRNAにおいて、PC−1に対する主要なmRNA種に5〜10倍
の増加がみられた(図4)が、B−アクチンmRNAは変化しなかった(図4c)
。実施例6
:NIDDM患者および対照由来の皮膚線維芽細胞中のPC−1の検討方法
PC−1活性のアッセイ:対照およびNIDDM患者由来の線維芽細胞をコン
フルエントに増殖させ、既述のごとく洗浄し、150mM NaCl、1%Tr
iton X−100、1mM PMSF、および20mMイミダゾール(pH7
.8)中、4℃で1時間溶解した。次に、蛋白0.05〜3μgを含む上清を、
37℃で30分間、緩衝液(0.1M 2アミノ−2−メチル−1−プロピル−
HCl、pH9.4)(Sigma)20μL中の0.1μmol MgCl2の存在下で
、9nmol[35S]3'−ホスホアデノシン,5'−ホスホサルフェート (NEN
)とインキュベーションした。0.1M酢酸ナトリウム(pH5.5)25μL
を加
え、試料を1分間煮沸した。次に、活性炭0.5mL(20mM硫酸ナトリウム
中、炭40mg/mL)を加えた。氷上に10分間保った後、チューブを遠心し
、上清をカウントした。
ウエスタンブロット分析:対照3名(C1、C2、およびC3)およびNIDD
M患者4名(D1、D2、D3、およびD4)由来の線維芽細胞のPC−1含有量を
、既述したウエスタンブロット分析によって分析した。
細胞のインスリン受容体B−サブユニットの自己リン酸化の分析を既述のごと
く行った。結果
PC−1は、ホスホサルフェート結合を加水分解する酵素活性を持っているた
め、合成基質である3'−ホスホアデノシン,5'−ホスホサルフェート(PAP
S)を用いて測定することができる(Yoshidaらの、J.Biochem.,93:1641-1648(1
983))。MW由来線維芽細胞におけるPAPSの加水分解量は417nmol/mg
蛋白/分であり、この値は対照被験者11名のそれ(42±7(平均±SEM、
範囲22〜76))より10倍大きかった(図5a)。患者の線維芽細胞抽出物
および精製PC−1蛋白をPC−1に対する抗血清で処理すると、PC−1活性
とインスリン受容体チロシンキナーゼ活性の阻害の>90%が除去された。
さらに、典型的なNIDDMの患者9名(男性4名、女性5名)由来の線維芽
細胞が試験された(図5A)。平均年齢は51歳(平均)、体質量指数28.6
±2.7kg・M2、空腹時グルコース223±22mg/dl、および空腹時
インスリン29±9μU/mLであった。患者の線維芽細胞中のPC−1活性は
128±25nmol/mg蛋白/分(平均±SEM)であり、患者9名中2名の線
維芽細胞のPC−1値は正常範囲であった。PC−1活性の高かった患者4名の
線維芽細胞中のPC−1含有量を、既述のごとくウエスタンブロッティングによ
り測定した。対照に比べてPC−1は増加していた(図5B)。PC−1活性が
低かったNIDDM患者2名ではPC−1含有量は増加していなかった。PC−
1活性が高かった患者2名(D2およびD4)の線維芽細胞では、インスリン受
容体チロシンキナーゼ活性も低下していた(図5C)。実施例6
:MCF−7細胞に対する過剰発現の影響方法
ヒトMCF−7細胞を、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下で、ヒト
PC−1のコード配列を含む発現ベクター(Suvaらの、Gene,77:95-105(1989))
とネオマイシン抵抗性に対する選択的マーカーであるpRK−neoでトランス
フェクトした。対照については、MCF−7細胞をpRK−neoのみでトラン
スフェクトした。コンフルエントの細胞を、非標識インスリンの存在下または非
存在下で、4℃で18時間20pM125I−インスリンと共にインキュベーショ
ンした(Milazzoらの、Cancer Rsch.,52:3924-3930(1992))。プレートに対する
結合はMilazzoら(上記)の記載に従って行った。
細胞を〜90%コンフルエントとなるまで増殖させ、洗浄し、培地を0.1%
BSAを含むDMEH−21に変えた。細胞を37℃で2分間インスリンとイン
キュベーションし、次いで実施例2のごとく可溶化した。溶解物を実施例2に記
載のごとくウェスタンブロットしたが、あらかじめ免疫沈降は行わなかった。図
6Bに、pRK−neoトランスフェクトMCF−7細胞およびPC−1トラン
スフェクトMCF−7細胞を用いる代表的実験を示している。
MCF−7細胞を上記のごとく調製し、インスリンと5nM a−IR3(I
GF−I受容体に対する抗体)で16時間プレインキュベーションしてIGF−
I受容体をブロックし、[3H]チミジン0.5mCi/mLで2時間インキュ
ベーションした。吸引し、洗浄した後、細胞を0.03%SDS中で溶解させた
。次に、溶解物を10%トリクロロ酢酸で処理し、[3H]チミジンの取り込み
を測定した。結果
トランスフェクト培養細胞中のPC−1の過剰発現はインスリン刺激チロシン
キナーゼ活性を低下させる。インスリンの作用を検討するために利用されてきた
ヒト乳癌細胞系のMCF−7細胞を、PC−1 cDNAを含む発現プラスミド
でトランスフェクトした。対照細胞のPC−1活性は10±5nmol/mg/分で
あり、これがトランスフェクト細胞では405±35nmol/mg/分に増加した
。
この蛋白の過剰発現はインスリン受容体結合を変化させなかった(図6A)。P
C−1の過剰発現によって、インスリン受容体β−サブユニットの自己リン酸化
と細胞内蛋白のインスリン受容体基質−1(IRS−I)のリン酸化によって測
定されるような、インスリン受容体チロシンキナーゼ活性の顕著な阻害がみられ
た(図6B)(Myersらの、Diabetes,42:643-650(1993))。対照において、両作
用に対するインスリンの効果は1nMで認められ、最大効果は10〜100nM
で認められた。トランスフェクト細胞では、10nMインスリンで効果が認めら
れ、100nMインスリンの効果は対照の半分であった。MCF−7細胞におい
て、インスリンはDNAへの[3H]チミジンの取り込みを刺激した(図6c)
。対照MCF−7細胞において、この機能はPC−1過剰発現細胞におけるより
約8倍低いインスリン濃度で最大で半分だけ刺激された。実施例8
:抗PC−1モノクローナル抗体物質の開発
1群3匹のBalb/c雌マウス(Charles River Breeding Laboratories,Wi
lmington,MA)に対して、第0、3、7、10、および14日に、Detoxア
ジュバント(RIBI ImmunoChem Res.Inc.,Hamilton,MT)100μL中の精製PC
−1 5μg/用量を腹腔内注射した。第17日に動物を屠殺して脾臓を取り出
し、確立された方法(OiとHerzenbergの、Selected Methods in Cellular Immun
ology中、B.MishelおよびS.Schiigi編、351頁、W.J.Freeman Co.,San Francisco
,CA(1980))により50%ポリエチレングリコール4000を用いて、リンパ球
とマウスミエローマ系653(Kearneyらの、J.Immunol.,123:1548(1979))と融
合させた。融合細胞を2×105個/ウェルの密度で96ウェルマイクロタイタ
ープレートに接種し、融合して1日後にHAT選択を行った(Littlefield,J.W.
の、Science,145:709(1964))。
固定化ハイブリドーマ培養上清をビオチニル化(biotinylated)PC−1と反
応させた。抗PC−1抗体が陽性であったウェルについてさらに研究を行った。
これらの培養物は続く研究においても安定しており、細胞系を低温保存した。親
培養をアイソタイプとして、PC−1捕捉能とin vitroにおけるPC−1活性中
和能をアッセイした。実施例9
:モノクローナル抗体物質の親和性の測定
Marianiらの、J.Immunol.Methods,71:43(1984)に記載の固相ラジオイムノアッ
セイ法を用いてインヒビター特異的モノクローナル抗体の親和性を測定した。簡
単には、精製抗インヒビターモノクローナル抗体を、4℃で18時間pH9.6
の炭酸緩衝液中、Immunlon2「Removawell」ストリップにコートする。上記のご
とくウェルを洗浄し、ブロックする。PBSG 50μL中の125I−インヒビタ
ー(R & D Systems)40000CPM/ウェルを、PBSG50μL中の25
00〜9.7ng/ウェルの範囲の非標識インヒビターの2倍連続希釈に加える
。得られる混合物を4℃で18時間インキュベーションする。上記のごとく、ウ
ェルを洗浄してカウントし、Scatchard分析(Munson and Pollard、上記)によ
って親和定数を決定する(この方法は、上記のAntoniとMarianiの非線形回帰分
析と同様の結果をもたらす)。実施例10
:動物モデル
インスリン抵抗性とNIDDMの動物モデルであるWistar肥満雄ラット
(Greeneらの、Obesity Res.2:432-443(1994))の筋肉と脂肪では、インスリン
受容体含有量とインスリン受容体チロシンキナーゼ活性が低下している(Greene
ら、上記)。これら2つの組織では、対照に比べて、PC−1含有量がそれぞれ
54および74%上昇している。実施例8に記載の抗体はインスリン受容体チロ
シンキナーゼ活性に影響を及ぼすことから、本抗体をこれらのラットに注射する
ことによって抗体ラットのPC−1活性は低下するものと期待される。
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フロントページの続き
(72)発明者 ゴールドファイン,イラ・ディー
アメリカ合衆国カリフォルニア94904、ケ
ントフィールド、グッドヒル・ロード640
番
(72)発明者 グルペ,アンドリュー
アメリカ合衆国カリフォルニア94002、ベ
ルモント、コンチネンタルズ・ウェイ1016
番、アパートメント105
(72)発明者 マデュックス,ベティー・エイ
アメリカ合衆国カリフォルニア94107、サ
ン・フランシスコ、ミシシッピー・ストリ
ート329番
(72)発明者 スペンサー,スティーブン
アメリカ合衆国カリフォルニア94402、サ
ン・マテオ、ティコンデロガ・ドライブ
1967番
(72)発明者 スチュワート,ティモシー・エイ
アメリカ合衆国カリフォルニア94114、サ
ン・フランシスコ、ダグラス・ストリート
465番