【発明の詳細な説明】
改良型ポリメラーゼ
発明の分野
この発明は、好熱性の酵素を備えるものであり、さらに詳しく述べるとニュー
ジーランドThermus種のThermus filiformisから単離された耐熱性のDNAポリ
メラーゼである。この発明は、また、組換プラスミドとその酵素を産生すること
ができる形質転換された宿主細胞をも包含する。この酵素は、EC2.7.7.7分類;
DNAヌクレオタイディルトランスフェラーゼ DNA志向型(a DNA nucleoti
dyltransferase DNA-directed type)に分類される。
定義
特に変更の余地についてなんら言及していないリストに従って、一連のアミノ
酸によって「実質的ないしは実効的に(substantially or effectively)」構成
されているペプタイド鎖について述べているときは、そのペプタイド鎖からなる
蛋白質の全体の構成及び全体の機能が実質的に変更される前のものと同じである
ような(ないしは検知できない程度の差異があるような)方法で、一つまたは二
つ以上のアミノ酸を類似のアミノ酸で置換しているペプタイド鎖は、その引用に
含まれることとする。例えば、蛋白質の特性に大きな変化を与えることなくアラ
ニンからバリンへ変更することは一般的に可能であり、とくに、変更された部位
が重なり合った蛋白質の構造に重要な意味を持たない部位であったような場合に
は、一般的に可能なのである。
「好熱性」という言葉が酵素に対して使われた場合には、それは酵素が比較的
熱による影響を受けにくいということを意味する。通常そのような酵素は水溶液
の中で使用され、そして高温限界はその関係する環境の圧力下で沸点によって決
定される。好熱性酵素は、高温下にて長期間活性を保つことができることが望ま
しく、また高温下にて増加された(enhanced)Kmを持つことが望ましい。
その他の定義は関係技術分野の通常の用法に従って使用される。
発明の背景
耐熱性DNAポリメラーゼ(EC2.7.7.7、DNAヌクレオタイディルトランス
フェラーゼ DNA志向型(a DNA nucleotidyltransferase DNA-directed type
))は、数多くの好熱性生物から単離されている(例えば、Kaledin et al.1980
.Biokimiya 44,644-651; Kaledin et al.1981.Biokimiya 46,1247-1254; Kaledi
n et al.1982.Biokimiya 47,1515-1521; Ruttimann,et al.1985.Eur.J.Biochem
149,41-46; Neuner et al.1990.Arch.Microbiol.153,205-207)。いくつかの生
物において、ポリメラーゼ遺伝子がクロレーンされ、発現されている(Lawyer e
t al.1989.J.Biol.Chem.264,6427-6437; Engelke et al.1990.Anal.Biochem.191
,396-400; Lundberg et al.1991.Gene 108,1-6; Perler et al.1992.Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 89,5577-5581)。(引用文献への参照は、好適実施例の記載の末
尾にあげておいた。)
好熱性DNAポリメラーセは、分子生物学において使用するために、ますます
重要なツールとなりつつあり、そして、診断法、クローニング及びDNAシーク
エンシングにおいて使用するために、より適した特性と活性を有する新しいポリ
メラーゼを求める要求が高まっている。例えば、非常な割合で既存の核酸配列を
増殖するPCR反応において、好熱性酵素を使用すること、などである。現在、
3種のポリメラーゼがThermus種から入手可能である。T.aquaticusからTaq ポリ
メラーゼ(イエローストーン公園、アメリカ合衆国、Brock et al.1969.J.Bacterio
l.98,289-297)、「T.thermophilus」からTth ポリメラーゼ(日本、Oshima and Im
ahori.1974.J.Syst.Bacteriol.24,104-112)、そして、「T.flavus」からTflポ
リメラーゼ(日本、Saiki et al.1972.Agric.Biol.Chem.34,2357-2366)である
。本願特許は、ニュージーランドのWaimangu Hot Springsから採取されたT.fili
formis種から得られた4番目のDNAポリメラーゼに関するものである(Hudson
et al.1987.Int.J.Syst.Bacteriol.
37,431-436)。T.filiformisとT.aquaticusは区別された、有効な種として認めら
れているのに対して、「T.thermophilus」も「T.flavus」も有効な種の名として
まだ受け入れられてはいない。Thermus属の系統分析(本書面において後述する
ように)によれば、単離されたニュージーランドThermus(T.filiformisを含む
)は、アメリカ及び日本で単離されたものとは革新的に異なったものなのである
(Saul et al.1993.Int.J.Syst.Bacteriol.43,754-760)。
現在は、Tagポリメラーゼが、Applied Biosystems 373A DNA Sequencerのよう
な自動サーマル・シークエンシング機械に使われるDNAシークエンシング用の
酵素として、もっともよく使われている。好熱性酵素を使用する利点は、サーマ
ル・サイクリングに伴っておきる線形増幅(linear amplification)のために必
要な鋳型(template)が少なくて済むことと、高温によって、従来のシークエン
シング技術で問題であったDNA中の副次構造の溶解を助ける、ということであ
る。現在Tagポリメラーゼは、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR
)に使われる酵素としては唯一のものである。DNA鋳型ではなくRNAでPC
Rを行う(RT/PCR)場合には、通常のPCRが始まる前に、ポリメラーゼ
は、RNA鋳型のDNAコピーを最初に作ることができなければならない。逆転
写として知られるこの活性は、TthとTaq DNAポリメラーゼにおいて程度を異
にするものとして注目されてきた(Jones,et al.1989.Nucl.Acids Res.17,8387-
8388;Meyers and Gelfand 1991.Biochem.30,7661-7666)。好熱性DNAポリメ
ラーゼによる逆転写は、中等温度好性のウイルス逆転写酵素、例えばcDNA合
成によく使われるモロニー・マウス白血病ウイルス(Moloney murine leukemia
virus)逆転写酵素(RT)及びトリ型骨髄芽細胞症ウイルス(avian myeloblas
tosis virus)RTなどに比べて、利点を有している。つまり、好熱性ポリメラ
ーゼによって可能とされる高温反応は、中等温度好性ウイルスRTの場合に非常
な問題となるRNA副次構造物を不安定化させるのに有用なのである。
DNAポリメラーゼに関しての幅広い使用は、さまざまな種類の酵素を使用し
うるという利点を有することを意味する。例えば、Taqポリメラーゼの逆転写酵
素
活性はTfilやTthポリメラーゼのそれに比べてかなり低く、したがって、RT/
PCRには不向きである。自動DNAシークエンシングにおいては、酵素は、能
率的に、蛍光ラベルされたジデオキシヌクレオシドを取り込むこと(incorporat
e)ができることが要求される。Taq ポリメラーゼは、この仕事を、低減された
温度と高濃度の類似塩基の存在下にて、最高度にこなす。これは、変性のために
高温を必要とする副次構造物を形成する傾向のある鋳型にとっては、不利な点で
ある。
したがって、費用対効果の改善と得られる成果物の品質の改善のために、もっ
ともよく使用されるTaqポリメラーゼに代わるDNAポリメラーゼを作り出すこ
とが、当該技術分野において必要とされているのである。高温下において活動し
うる改良型酵素の使用が、PCR反応において、プライマー・ディレクテッドの
延長プロセスの特定性と選択性を改善するということは、当該技術分野において
顕著であった。
目的
ポリメラーゼ酵素(EC 2.7.7.7)及び/又はDNAクローン及び/またはベ
クター及び/またはこの酵素を産生しうる形質転換された宿主細胞を提供するこ
とが、本願発明の目的であり、または、少なくとも、有用な選択肢を社会に提供
するということが本願発明の目的である。
発明の詳細な説明
本願発明は、そのひとつの特徴として、マグネシウムイオンの存在下にて逆転
写酵素活性を有することによって特徴づけられる、精製された耐熱性DNAポリ
メラーゼ酵素(EC 2.7.7.7、DNAヌクレオタイディルトランスフェラーゼ
DNA志向型(a DNA nucleotidyltransferase DNA-directed type))を提供す
るものである。
他面において、本願発明は、微生物Thermus filiformisのDNAポリメラーゼ
活性をコードする組換DNA配列を備えるものである。
それに関連する点として、そのDNA配列は、図1において示されるものであ
る。
それに関連する第二の点として、本願発明は図1において示されるアミノ酸残
基1番から833番をコードする組換DNA配列を備えるものである。
さらに関連する点として、本願発明は、プラスミド・ベクターに挿入された本
願発明のDNA配列、及び、そのプラスミドによって形質転換された宿主細胞中
にてThermus filiformisの好熱性DNAポリメラーゼの発現をもたらすために使
用可能なプラスミド・ベクター、を備える組換DNAプラスミドを備えるもので
ある。
それに関連する点として、本願発明は、Thermus filiformis DNAポリメラ
ーゼ遺伝子を有するベクターpUC18及びpNZ2300と命名されたものを備える組換プ
ラスミドを包含する。
同様に、関連する点として、本願発明は、Thermus filiformis DNAポリメ
ラーゼ遺伝子を有するベクターpT7-7及びpNZ2300と命名されたものを備える組換
プラスミドを包含する。さらに、本願発明は、本願発明の組換DNAによって形
質転換された宿主細胞を備えるものである。
ひとつの選択肢として、本願発明は、Escherischia coli/pNZ2300、PB5900と
指名される菌株、からなる宿主細胞を備えるものである。
その他の選択肢として、本願発明は、Escherischia coli/pNZ2303、PB5904と
指名される菌株、からなる宿主細胞を備えるものである。
さらに、本願発明は、約93.4KDaの分子量を有するDNAポリメラーゼを備え
るものである。
さらに、本願発明は、図3に示されているようなpH依存活性を有するDNA
ポリメラーゼを備える。
さらに、本願発明は図4に示されるようなマグネシウムイオン濃度依存性を有
するDNAポリメラーゼを備える。
また、他の点では、本願発明は、マグネシウムイオンが実質的に存在しない場
合において、逆転写酵素活性を有するDNAポリメラーゼを備える。
さらに、本願発明は、図5に示されているようなTaq ポリメラーゼと対照され
る活性を有するDNAポリメラーゼを備える。
望ましくは、本願発明は、Thermus filiformisから単離された、本願酵素をコ
ードする遺伝子を含む組換Escherichia coli菌株から精製された好熱性DNAポ
リメラーゼを提供するものである。
そのポリメラーゼをコードしている領域は、T.filiformisのゲノムDNAから
PCR増幅法によって単離された。PCR生成物は、pUC18ベクター中にてクロ
ーニングされ、活性好熱性ポリメラーゼは、βーガラクトシダーゼのアミノ末端
を有する融合プロテイン(fusion protein)として発現された。発現ベクターpT
7-7中にて遺伝子をクローニングすることによってより大きな発現を得ることが
でき、その場合にはポリメラーゼは、T7 遺伝子 10 タンパク(T7 gene 10 Prot
ein)との融合物として発現された。そのポリメラーゼの配列の分析によると、
それは明らかにThermus aquaticus、「Thermus flavus」、及び「Thermus therm
ophilus」からの類似の酵素とは識別可能なものであった。
DNAポリメラーゼは、単純な3段階の方法によって均質なところまで精製さ
れ、その方法は、E.coliタンパク質の加熱沈殿とそれに続くQ−セファローゼと
ヘ
パリン・セファローゼ・クロマトグラフィーによりなされる。精製されたタンパ
ク質は、12%と7.5%のポリアクリルアミド・ゲルを使用したSDSポリアクリ
ルアミド・ゲル・電気泳動(PAGE)により決定された94kDaの相対分子量を
有するが、図1のポリペプチド配列から予想された分子量は93.5kDaである。精
製された酵素は、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼまたはリボヌクレア
ーゼ活性を示さず、アルカリ性のpHsにおいて低塩バッファー中にて最大限の活
性を示し、そしてMg2+イオン(Km 1.5 mM)の絶対的な要求を有する。DNAポ
リメラーゼは、プライムドRNA鋳型において逆転写酵素活性を示す。このポリ
メラーゼは、高い進行性を示し、約1000base/minの延長効率を有している。
図面
本願発明に関するこれらの及びその他の側面は、すべてのその新規な点におい
て考慮されるべきであるが、添付の図面に対する参照とともに、実施例の方法に
よってのみ与えられる以下の記載から明らかになるであろう。すなわち、
図1 (3枚、図1-1、図1-2及び図1-3)は、Thermus filiformisのポリメラーゼ
遺伝子のDNA配列及びTfil ポリメラーゼの得られたペプタイド配列を示す。
アミノ酸の略文字(1文字)を便宜上以下に示す。
図2 Tfil、Taq及びTflDNAポリメラーゼの演繹(deduced)されたア
ミノ酸配列の表。Taq及びTflに関しては、Tfil配列と異なる残基のみ示されてい
る。
図3 異なるpHにおけるPCR生成物の相対生成図。PCRは、一般的な方法の
説明の項において説明されているように、P4及びP5プライマー並びにヒツジmyoD
遺伝子を含むpUC18プラスミドを使用して行われた。それぞれのpH値における相
対生成量は、臭化エチジウムで染色された2%アガロース・ゲル上において10ml
の反応生成物を電気泳動し、撮影されて得られた(パネルA)。バンドの明暗度
は、ネガ(図において使用されているネガ)の写真濃度計によるスキャンニング
及び写真の暗部と明部に相関してプロットされた変数(パネルB)によって計ら
れている。
図4 Mg2+に対するTfilポリメラーゼのKmである。ソリッド・フェーズ・アッセ
イにおけるMgCl2に対するTfilポリメラーゼのKmは、基準となる5mMからMgCl2の
量を変化させて、通常のソリッド・フェーズ・アッセイにおけると同様に70℃で
1時間反応させた後、ラジオ(放射性)・ヌクレオチドとの結合によって測定さ
れることとなる。プロットは、テストされた各々のMgCl2濃度における結合カウ
ントの数を示すものであり、差込み図はイーディー・ホフスティープロット(Ea
die-Hofstee plot)としてのデータを示すものである。
図5 異なるKCl濃度におけるTfilポリメラーゼとTaqポリメラーゼの活性である
。様々な量のKClが、示された濃度において、その反応に含まれるということを
除いて、各ポリメラーゼの0.05ユニットの活性は、下記に示されるソリッド・フ
ェーズ・アッセイによって決定される。
図6 異なったバッファーと鋳型を用いたTfil DNAポリメラーゼを使用した
PCR増幅法である。パネルAは、ゲノムDNAとP6及びP7プライマーを使
用してThermus flavusから16S rRNA遺伝子のPCR増幅を示したものであり、パ
ネルBは、プライマーP4及びP5を使用してプラスミド鋳型からのmyoDの280b
p断片の増幅を示したものである。これらの増幅法は、一般的な方法の項におい
て記載された方法で、そこに示されたような異なったMgCl2、Tween20、及び
(NH4)2SO4の濃度で行われたものである。rDNA遺伝子の増幅のために、PCRバ
ッファーは、1.5mM MgCl2、400mM dNTPs、及び0%,0.01%,0.02%,0.04%のいず
れかのTween20(それぞれ第2レーンないし第6レーンに対応する。)を含む50mM
Tris-HCl pH8.8を用いた。Taq ポリメラーゼは、0.01%のTween20で同じバッフ
ァーで使用された。プラスミドDNAからの増幅も、一般的な方法の項において
説明された。PCRバッファーは、次のような添加物を含む50mM Tris-HCl pH8.
8であった:すなわち、第8、9、10及び11レーンは、15mM(NH4)2SO4,0.01
%Tween20及び1,1.5,2.0または2.5mM MgCl2をそれぞれ含み、第12レーンは、1
.5mM MgCl2,0.01%Tween20を含み、第13レーンは、1.5mM MgCl2,25mM(NH4)2SO4
,0.01%Tween20を含み、第14レーンは、1.5mM MgCl2及び15mM(NH4)2SO4を含
むものである。双方のPCR反応から生成された反応生成物は、臭化エチジウム
で染色された0.8%(パネルA)または2%(パネルB)のアガロース・ゲル上で
50ml反応物のうち5mlの電気泳動によって分析された。マーカーは、BRL 1kb lad
derである。
図7 RT/PCR増幅法の感度である。RT/PCR増幅法の感度は、αーラ
クトアルブミンのRNA転写を連続的に希釈し、その希釈をRT/PCR反応の
ための鋳型として使用することによって決定された。αーラクトアルブミンのR
T/PCR増幅は、RT反応において両プライマーを使用し、そして一般的な方
法の説明の項において記載されているように2ユニットのTfilDNAポリメラー
ゼを使用することによって行われた。レーン1から5は、それぞれ32pg,160pg,8
00pg,4ng,20ng及び100ngのRNA鋳型にそれぞれ対応している。反応生成物は、
臭化エチジウムによって染色された0.8%アガロース・ゲル上にて、5mlの生成物
を電気泳動することによって分析された。第6レーンは、BRL 1kb ladderである
。そのゲルは、明確にするためにネガの状態で示されている。
図8 全細胞RNAからのRT/PCR増幅である。パネルAは、アムサクリン
耐性(amsacrine-resistant)、アドリアマイシン耐性(adriamycin-resistant
)、または通常の感度の(第1、2及び3レーンにそれぞれ対応する)ジャーカ
ット・セル
ライン(Jurkat cell lines)から単離された全細胞RNAからのトポイソメラ
ーゼIIa(topoisomerase IIa)の200bp領域の増幅を示したものである。約400ng
のRNAがそれぞれの増幅及び5ユニットのポリメラーゼに対して用いられた。
方法において記載されているように、RTの後に、センス・プライマー(sense
primer)がPCRバッファーに対して加えられた。パネルBは、実験方法に記載
された様に、500ngの全細胞RNAからのαーラクトアルブミンの増幅を示した
ものである。反応生成物は、2%(パネルA)または0.8%(パネルB)のアガロ
ース・ゲル及び臭化エチジウム染色上での、10mlの電気泳動によって分析された
。分子量マーカーは、BRL 1kb ladderである。
図9 Saul et alによるThermus単離物の系統樹。(1993.Int.J.System.Bacterio
l.43,754-760)。この系統樹は、16S rRNA配列のデータを基礎にしており、マキ
シマム・パーシモニー(maximum parsimony)の方法を用いて作成されたもので
ある。スケール・バーは、予想される、サイトあたり0.01の核酸置換率を示して
いる。枝上の値は、100 bootstrapped treesからのサポートのレベルを示すもの
である。影つきのボックスは、bootstrapped treesの80%以上によってサポート
されているクレード(clades)を表現したものである。
好ましい実施態様
使用される一般的な方法
ポリメラーゼ活性の分析法
好熱性DNAポリメラーゼ活性は、Day et al.1993 Anal Biochem,211:174-17
6に記述されているソリッド・フェーズ・アッセイを使用して測定された。
ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動
SDS PAGEは、Laemmli(1970)Nature 227,680-685に記述された方法で、本質的
には行われた。すなわち、12.5%と7.5%のSDS ポリアクリルアミド・ゲル及びP
harmacia"Phastgel"systemを用いた。ゲルはPharmacia"PhastSystem"Users Manu
al
に記載されているように銀染色された。
エンドヌクレアーゼ、エクソヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ活性の測定
精製されたポリメラーゼは、酵素を、リニアライズとスーパーコイルされたプ
ラスミドまたはRNAトランスクリプトでインキュベートすることによって、エ
ンドヌクレアーゼとエクソヌクレアーゼ活性の存在をテストした。10ユニットの
DNAポリメラーゼが、200ngのリニアライズされたプラスミドまたは未切断の
プラスミド、もしくは500ngのRNAトランスクリプトで、5mM Mg++を含有する2
0mM Tris-HClバッファーpH8.0またはpH8.8中で70℃または37℃にて3時間、イン
キュベートされた。RNAまたはプラスミドDNAの分解もしくはプラスミドの
緩和は、臭化エチジウムで染色され、アガロース・ゲル電気泳動によって決定さ
れた。
染色ラベルされたプライマー・シークエンシング
ABI染色ラベルされたM13フォワード・シークエンシング・プライマーを使用し
たシークエンシングが、好熱性組織(pNZ2201)から得られた16S RNA遺伝子
からのG:C リッチ・インサート(rich insert)を含む一本鎖のM13鋳型上で行わ
れた。シークエンシング反応は、Tfilポリメラーゼを使用することに伴うバッフ
ァー条件の違いを除いて、Applied Biosystems Taq Dye Primer Cycle Sequenci
ng Kit Manualに記載されたとおりに正確に行われた。
染色ラベルされたジデオキシヌクレオチド(dideoxynucleotide)・ターミネーター・
シークエンシング
染色ラベルされたプライマー・シークエンシングの際と同様の鋳型が用いられ
た。ABIによって示唆されたプロトコルはいくつかの変更を加えられて使用され
た。いろいろな量のMgCl2を含有するバッファーと塩が、推奨されている「TACS
」バッファーの代わりに用いられた。染色ラベルされたターミネーターに対する
デオキシヌクレオチドの割合は、ABIによって供給されたヌクレオチド・ミック
ス(750mM dITP,150mM dATP,150mM dTTP及び150mM dCTP)の量を増加させな
がら加えることによって変化させた。96℃で30分、50℃で15分、60℃で4分の25
サイクルの基準シークエンス・サイクルは、延長温度を60℃から65℃または70℃
4分間に増加することによって変化させられた。
RNAプリパレーション
全細胞RNAは、「Molecular Cloning:A Lboratory Manual」Cold Spring Harbo
ur Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NYにおいてSambrook et al.1989に
よって記述されているようにMA104細胞(αーラクトアルブミン・セル・ライン
)またはJurkat細胞(トポイソメラーゼ IIa セル・ライン)から得られたセル
ラインから単離された。a-ラクトアルブミン遺伝子のクローンのRNAラン・オフ
・トランスクリプト(RNA run-off transcripts)は、その他の部分に記述され
ている(L'Hullier et al.1992.EMBO J.11,4411-4418)。
使用されたオリゴデオキシヌクレオチド・プライマー
PCR及びRT/PCR併合増幅
全てのPCR増幅は(50ml)は、1.5mM MgCl2、0.01%Tween20,各400mMのdAT
P,dCTP,dGTP及びdTTP(dNTPs)を含む50mM Tris-HClバッファーpH8.8、各10pmoles
のフォワード及びリバース・プライマー、2ユニットのDNAポリメラーゼ及び
他に特に示さない限り表示された量の鋳型、で行われた。反応は、増幅の前に50
mlのミネラル・オイルで覆われた。RT/PCR増幅は、50mM Tris-HClバッフ
ァーpH8.8、2mM MgCl2、0.05%Tween20、0.05%Nonidet P40、400mMの
各dNTP、及びリバース・プライマーP1またはP2を100ng含有する25ml中にて、ま
ず逆転写反応が行われた。この反応に使用された酵素の量は1ユニットから5ユ
ニットに変化させられて使用され、そしてしばしば逆転写混合液中にPCR増幅
過程に必要なフォワード・プライマーT7またはP3が含まれていた。60℃反応温度
に達した後で、酵素を加えられ、逆転写は60℃で(ミネラル・オイルの下で)行
われた。逆転写は5分間続けられ、その後反応温度が94℃に上げられ、そしてそ
の反応はあらかじめ94℃に予熱されたPCRバッファー75ml(1.5mM MgCl2、0.01
%Tween20及び400mMのdNTPsを含有する50mM Tris-HClバッファーpH8.8)によって
希釈された。フォワード・プライマーは、もし最初の逆転写反応において省略さ
れていた場合には、この段階で加えられた。その反応は、さらに量を増やしたミ
ネラル・オイルで覆われ、そしてそれから94℃で35サイクルを1分間、55℃で1
分間及び72℃で2分間、αーラクトアルブミン及びトポイソメラーゼ IIa鋳型の
ためにサーマル・サイクラー(thermal cycler)中で増幅された。この「ホット
・スタート」方式は、逆転写及びそれに続くPCR増幅過程においてミス・プラ
イミングが起こるのを防止することを助けた。
PCRバッファー条件の最適化
PCR生成物を最大限産生するバッファー条件は、プライマーP4及びP5並びに
ヒツジmyoD遺伝子(Huynen,et al.1991.Nucl.Acids Res.20,374)を含有するプ
ラスミド鋳型10ngを使用して決定された。また、プライマーP6及びP7(16S rRNA
遺伝子プライマー)とT.flavus ゲノムDNA50ngを鋳型として用いて決定された
。PCRバッファーは、50mM Tris-HClバッファーpH8.8に加えられるMgCl2、(NH4
)2SO4及びTween20の量を変えることによって、規則的に変更された。各dNTPは
、400mMで使用され、1ユニットのポリメラーゼが反応毎に使用された。使用さ
れたPCRサイクルは、プラスミド増幅のために94℃で1分間、60℃で1分間、
72℃で2分間の25サイクルであり、94℃で4分間の最初の変性過程とともに94℃
で1分間、53℃で1分間、72℃で2分間の35サイクルであった。
PCRに最適なpHの決定
上記のプライマー(各100ng)が、異なったバッファーで得られるPCR生成
物の産生を決定するために用いられた。全ての反応には、各dNTPを400mM、1.5mM
MgCl2、0.01%Tween20、10ngの鋳型DNA、1ユニットのポリメラーゼ及びTri
s、Bis-Tris propane(1,3bis[tris(Hydroxymethyl)methlyamino]propane)、または
EPPS(N-[2-Hydroxyethyl]-piperazine-N1-[3-propanesulphonic acid])のいずれ
かのバッファー50mM(pH7.4から9.5の範囲で)が使用された。その反応は、94℃
で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間の25サイクルでサーマル・サイクルされ
た。PCR生成物の産生は、10mlの反応生成物の電気泳動によって決定され、そ
れは、臭化エチジウムで染色されたアガロース・ゲルの写真ネガのデンシトメー
タ・スキャンニングされた。
Thermus Filiformis DNAポリメラーゼ遺伝子のクローニング
遺伝子の単離
DNAポリメラーゼをコードする遺伝子は、Thermus filiformis ゲノムDN
Aからポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)技術を用いて単離され
た。その増幅のために、二つのオリゴヌクレオチド・プライマーが使われた。
そのプライマーは、その5'末端に、A及びBについてそれぞれEcoRIサイト及
びBamHIサイトを含み、Thermus aquaticusからTaq ポリメラーゼ遺伝子をクロー
ンするために、Engelke et al.(1990)Anal.Biochem.191:396-400によって使用さ
れたプライマーから得られる。PCR増幅は、10mM Tris-HCl pH8.8,2.5mM MgCl2
、50mM KCl、400μM dNTPs、各プライマーを10pmoles及びTaqポリメラーゼ(Am
plitaq;Cetus Corp)を2.5ユニット含有するバッファー50ml中において、行われ
た。目標となる配列は、最初に94℃で4分間変性させ、その後94℃で1分間、55
℃で1分間、及び72℃で4分間の35サイクルで増幅された。サーマル・サイクリ
ングは、Perkin Elmer Cetus thermal cycler中にて行われた。
クローニングとpUC18中における発現
PCR生成物は、0.8%Tris-Acetate アガロース・ゲル上で100mlのPCR混
合物の電気泳動によって精製された。ポリメラーゼをコードする領域の2.6kbバ
ンドは、ガラス・パウダーに吸着・溶離させることにより、アガロースから精製
した(Geneclean,Bio 101,San Diego,CA)。その生成物は、各1ユニットのT4ポ
リヌクレオチド・キナーゼ、T4DNAポリメラーゼ及びKlenow フラグメントと
ともに、6mM MgCl2及び50μM dNTPsを含む66mM Tris-HCl pH7.6中で、37℃で15
分間処理することによってクローニングに備えた。その後、DNAは、フェノー
ル/クロロホルムとともに抽出され、そしてエタノールとともに沈殿する前にク
ロロホルムによって抽出された。ペレットは、再度浮遊させられ、そして指向性
クローニングのためにそれに粘着性末端を与えるために、EcoRIで消化された。
そのDNAは、EcoRI及びSmaIで消化されたpUC18中に結合させられ、そしてその
結合されたものは、E.coli strain DH中にトランスフォームされた。形質転換体
は、組換体の選択ができるように100μg/mlアンピシリンおよびIPTG/Xgal(それ
ぞれ5mM及び33μg/ml)を含むL-agar上で生育された。白コロニー(コロニー中
でLacZ遺伝子が差し込まれ不活性になっている)が摘出され、そして100μg/ml
アンピシリンを含むL-broth中で生育され、そしてプラスミドDNAがアルカリ
溶解(alkaline lysis)によって用意された。そのプラスミドは、PvuIIで消化
して、挿入のためにチェックされた。これらの挿入物を含む組換体は、アンピシ
リンを含むL-broth中で生育され、0.5mM IPTGで典型的に育った培養の誘導によ
って好熱性DNAポリメラーゼの発現をテストし、またDNAポリメラーゼ活性
のために熱処理した抽出物を分析した。発現可能な組換ポリメラーゼが得られた
。その菌株は、PB5900及びプラスミドpNZ2300と指定された。
クローニングとpT7-7中における発現
Tfilポリメラーゼのコード領域は、ベクターの複数クローニング・サイトのユ
ニークなEcoRI及びHindIIIサイトにおいて消化されることによって、pNZ2300か
ら切り取られた。EcoRI-HindIII切断断片は精製され、そして同様にEcoRI及びHi
ndIIIにおいて消化された表現ベクターpT7-7に挿入された。結合されたDNAは
、E.coli
JM101菌株中にトランスフォームされ、形質転換体はアンピシリン(60μg/ml)
を含有するL-agar上におくことによって選択された。コロニーは成長し、そして
プラスミドは、アルカリ溶解によって処理された。挿入部分を含むコロニーは、
EcoRIによる消化によって特定された。新規な組換菌株はPB5902と命名され、新
規のプラスミドはpNZ2302と命名された。
プラスミドpNZ2302中のDNAポリメラーゼをコードする配列は、ファージT7
遺伝子 10 プロダクトに関してはフレームの外であった。DNAポリメラーゼの
コード領域は、EcoRIサイトをKlenow断片で充足し、再結合した後、EcoRIでpNZ2
302を消化することによって、遺伝子 10 プロテインのATGとともにフレームに置
かれた。この新しい構築体は、pNZ2303と命名された。
プラスミドpNZ2303は、プラスミドpGP1-2を含む、適格なE.coli K12をトラン
スフォームするために用いられた。形質転換体はアンピシリンとカナマイシン(
60μg/mlずつ)を含むL-agarの上に置かれる方法で選択され、そして32℃で成長
させられた。コロニーは採取され、そしてアンピシリンとカナマイシン(60μg/
mlずつ)を含むL-broth中で32℃で成長させられた。そして、上記に記載された
ように、誘導され、熱処理された誘導抽出物中にて活性好熱性DNAポリメラー
ゼの発現をテストした。活性耐熱性DNAポリメラーゼ(PB5905)を発現する組
換菌株が得られた。
Tfilポリメラーゼの精製
Tfil DNAポリメラーゼの生産のための組換E.coli菌株PB5905の成長
10リットルの培地(60μg/mlのアンピシリンを含むL-broth)を体積比40分の
1のPB5905の静止期培養で接種し、そして回分培養で成長させた。細胞は32℃で
、吸光度600nmで0.5まで成長させられ、それから成長温度を42℃まで急激に上昇
させることにより誘導され、そしてさらに45分間この温度で維持された。その後
、温度は37℃まで下げられ、細胞は採取及び1mM EDTA(TEバッファー)を含む10
mM Tris-HClバッファーpH8.0中で洗浄するまで、さらに2時間成長させられた。
約20gウェット・ウエイトの細胞が取得され、使用前に冷凍することができる。
Tfil DNAポリメラーゼの精製
細胞は解凍され、100mlのTEバッファー中にて浮遊させられた。プロテアーセ
阻害剤フェニルメチルスルフリルフルーオライド(phenylmethylsulphonylfluor
ide)が、0.5mMの最終濃縮物及びフレンチ・プレッシャー・セルを通してワン・
パッセージで破壊された細胞に加えられた。破壊された細胞は30分間予熱された
1リッターフラスコ中で、70℃の水中において接種され、その後、それらは氷の
上で冷やされた。沈殿したタンパク質と細胞の残骸は、4℃で15分間、32,600xg
で遠心分離することによって取り除かれた。表面に浮かんだものは他の瓶に注が
れ、そして5リッターのTEバッファーを3回交換して12時間透析し、そして微細
片を取り除くために0.22μmフィルターを使用して濾した。
Phamacia「Q-Hiload 26/10」は、1M KClで洗浄され、それから4℃でバッファ
ーA(1 mM EDTA及び10%v/vグリセリンを含有する20mM Tris-HCl pH8.0)で平
衡させられた。熱処理された抽出物(85ml)は、流速2ml/minで蠕動ポンプ(perist
altic pump)(PharmaciaP-1)を使用してカラムを通された。結合していない物
質は50mlのバッファーAとともにカラムから洗い流された。その後、カラムはPh
armacia FPLCシステムに接続され、結合したタンパク質は、流速5ml/minで、バ
ッファーA(300ml中0-400mM KCl)中でリニアーKClグラディエントを使用して溶
出された。タンパク質の溶出は280nmでモニターされ、7.5ml分が集められてすぐ
さま氷上に置かれた。
DNAポリメラーゼ活性を含有する部分はプールされ、そして20mM リン酸カ
リウムpH7.5(バッファーB)5リッターを3回交換して透析された。5mlヘパリン
・セファローゼ・カラム(Pharmacia HiTrap heparin,5ml)が4℃でバッファー
Bと平衡させられ、全ての透析抽出物が2つの同等の流れで(それぞれ抽出物の
半分(70ml)を使用)通された。サンプルは流速2ml/minで通され、カラムは10m
lのバッファーBで洗われた。結合したポリメラーゼは、バッファーB(30ml中
、
0-500mM KCl)でKClのリニアー・グラディエントとともに溶出した。純粋なDN
Aポリメラーゼは、約350mM KClでシングル・ピークとして溶出した。活性のあ
る部分はプールされ、同等の体積のグリセリンで希釈され、-20℃で保存された
。この精製方法によって、約20mgの純粋なポリメラーゼが取得できた。
Tfilポリメラーゼの特性
Tfilポリメラーゼ遺伝子の配列の分析
DNAポリメラーゼ遺伝子の配列は、M13の中に、PCR単離・クローンされ
たTfil遺伝子の制限酵素断片を挿入したり、シークエンシングしたりして決定さ
れた。それらはスタンダードなM13フォワード・シークエンシング・プライマー
をダイ・プライマー・ケミストリーとともに用いて、そしてApplied Biosystems
373A Automated DNA Sequencerを用いてシークエンスされた。Tfilポリメラー
ゼのDNA配列と、得られた酵素のアミノ酸配列は図1に示されている。その他
の入手可能なThermusポリメラーゼ遺伝子配列と比べると、Tfilポリメラーゼ配
列は次のような同一アミノ酸の割合を示す。Tfil 対 Taq=84%、Tfil 対 Tfl=82
%。これはTaqとTflとの間の場合(Taq 対 Tfl=86%同一)よりも、Tfilポリメ
ラーゼとその他のものの間における差異の方がより大きいということを示してい
る。これらの酵素の演繹されたアミノ酸配列を示したものが図2である。
Tfilポリメラーゼは、その他のポリメラーゼに比べていくつかの長所を有して
おり、そのいくつかの長所をここに簡単に説明する。Tfilポリメラーゼの特性を
列挙すると、その特性はTaqポリメラーゼと明らかに異なっていることがわかる
。たとえば、Tfilポリメラーゼは、低塩バッファー中で最大の活性を示し、逆転
写活性を有し、そして染色ラベル(dye-labelled)されたジデオキシヌクレオチ
ド・アナログに対して有用な大きな親和性を示す。方法の項に記載された5'-3'
エキソヌクレアーゼ・アッセイを使用すると、TfilポリメラーゼまたはTaqポリ
メラーゼにおいてはエキソヌクレアーゼ活性は検知されることがない。
Tfilポリメラーゼは、異なったバッファーにおけるPCR生成物の収量を比べ
る
方法によって示されるように(図3)、pH8.5と9.0の間で最大限の活性を示す。
その酵素は低塩バッファーで最大の活性を示し、Mg2+イオン(Km 1.5mM)に対し
て絶対的な要求を持つ(図4)。その酵素はEDTAの添加によって完全に、しかし
可逆的に阻害される。DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素活性にもっとも適切な
バッファーは、1.5mM MgCl2及び0.01%Tween20を含む50mM Tris-HClバッファーp
H8.8である。このバッファー中において、Tfilポリメラーゼは、94℃で約28分間
の半減期を有する。
逆転写酵素活性
好熱性DNAポリメラーゼの逆転写酵素活性は、以前に記述されており(Jone
and Foulkes 1989.Nucl.Acids Res.17,8387-8388;Meyers and Gelfand 1991.Bio
chem.30,7661-7666)、それによるとTaqポリメラーゼの活性はTthポリメラーゼの
活性に比べて低いものとなっている。Tthポリメラーゼは、Tfilポリメラーゼの
活性と同様の逆転写酵素活性を示すが、しかし、Tthポリメラーゼが高濃度の塩
の(100mM KCl)バッファー中で最大限の活性を示すという点で異なっている。
その上、Taqポリメラーゼ及びTthポリメラーゼは双方とも、その活性のためにMn
Cl2のような形で供給されるMn2+を要求する。Tfilポリメラーゼは、Tth polと同
様の高レベルの逆転写酵素活性を示すが、しかし逆転写のためにMgCl2の代わり
にMnCl2を使うと、全く活性が得られないこととなる。Mn2+ではなくてMg2+を使
用するということは、Tth polとTfilポリメラーゼの間における重要な違いであ
る。Mn2+イオンはDNA合成の忠実度を低下させることが知られているので、R
NAのコピーがDNAエクステンションに続く場合は、Mg2+イオンの存在下にお
ける逆転写は、二段階反応にとってより望ましいのである(Beckman et al.1985
.Biochemistry 24,5810-5817)。低忠実度DNA合成は、オリジナル鋳型の変異
的コピーを導きやすい。加えて、Mn2+イオンは、特に高温で、RNA分解の割合
の増加に関係があったし、逆転写反応における短縮された生成物の合成を引き起
こすことがある。
塩に対する耐性
Tfilポリメラーゼは、低いKCl濃度でもっとも優れた活性を示すが、しかし高
い
塩の濃度でもTaqポリメラーゼより高いパーセンテージの活性を維持する。Taqポ
リメラーゼは、25mM KClでソリッド・フェーズDNAポリメラーゼ・アッセイ中
で最大限の活性を示すが、KClの濃度が増加するにつれて急速にその活性を失う
(図5)。Tfilポリメラーゼは、より高い塩の濃度に対して耐性があり、150mM
KClでTaqポリメラーゼは2%の活性しか示さないのに対し、35%の活性を保って
いる。この結果は、高濃度の塩のバッファーが要求されている場合には、Taqポ
リメラーゼよりもTfilポリメラーゼがより優れた有用性を有しているということ
を示すものである。
DNAシークエンシング
ABI 373A自動DNAシークエンサー(現在世界中でもっとも使われているDN
Aシークエンサー)上で使用しうる2つのシークエンシング化学反応がある。ど
ちらの方法も、終了した反応にラベルするために蛍光染料を用い、レーザー/フ
ォトマルティプライアー エキサイテーション/ディテクション システム(a
laser/photomultiplier excitation/detection system)によって検知されるシ
ークエンシング・ラダーを生成する。その化学反応は、染料でラベルされたプラ
イマーとシークエンスのターミネートのするための通常のジデオキシヌクレオチ
ド、またはラベルされていないプライマーと染料でラベルされたジデオキシヌク
レオチド・ターミネーターのいずれかを使用する。染料でラベルされたプライマ
ーを使用して得られたシークエンスは、通常、品質と長さの点で染料でラベルさ
れたターミネーターを使用して得られたものよりも優れているが、染料でラベル
されたターミネーターは、シークエンス・データを生成するためにいかなるプラ
イマーも使用しうるという長所がある。
Tfilポリメラーゼは、染料でラベルされたプライマーとM13シングル・ストラ
ンドの鋳型を使用したとき、長い、不明瞭な点のないシークエンス・データを生
成することができる。この化学反応でTfilポリメラーゼによって得られたシーク
エンスの品質は、Taqポリメラーゼによって得られたものと似ている。よいシー
クエンス・データは、ABI推奨のリアクション・サイクルとともに1.5mM MgCl2及
び0.01%Tween20(v/v)を含む50mM Tris-HClバッファーpH8.8を使用して得られた
。良いシークエンス・データは、また、より高い濃度のMg2+、Tween20及びTris-
HClで得ることができた(それぞれ4mM、0.1%v/v、135mMまで)。
シークエンス・データが、染料でラベルされたジデオキシヌクレオチド・ター
ミネーターを使用して生成された場合には、Taqポリメラーゼ及びTfilポリメラ
ーゼの間においてより大きな違いが発見された。シークエンスが未完成に終わっ
たり、最初の部分で折り重なってしまうような、染色されたターミネーターによ
るシークエンシングにおいてTaqポリメラーゼに推奨されている60℃のエクステ
ンション温度で、Tfilポリメラーゼは、Taqポリメラーゼよりもより効率的にタ
ーミネーターを取り込んだ。全長のシークエンスは、terminator:dNTPの割合を
減少させることによって得ることができ、それは、染料でラベルされたターミネ
ーターの費用がこの手法の費用の大きな部分を占めるので、経済的なメリットを
提供することになった。
DNAのPCR増幅
このポリメラーゼは、プラスミドまたはゲノムDNAを鋳型として使用する効
率的なPCR増幅に適していた(図6)。ポリメラーゼ・アッセイにおいてみら
れたように、PCRバッファー中のKCl濃度の増加はPCR生成物の収量の減少
を引き起こすこととなる。PCRバッファー中のKCl、(NH4)2SO4、MgCl2及びTween
20の濃度を変更すること(図6)及びPCR生成物の収量を測定することによっ
て、Tfilポリメラーゼを使用したPCR増幅のためにもっとも適したバッファー
は、1.5mM MgCl2及び0.01%Tween20を含む50mM Tris-HClバッファーpH8.8であっ
た。いくつかの鋳型のために、より高いMgCl2及びTween20の濃度は(それぞれ2m
M及び0.02%)、不要な生成物の数と度合いを減少させることによって、PCR
増幅をより良いものとした。
PCR生成物はプライマーP4及びP5を使用して、広い幅のpHの値で得ることが
できたが、もっとも大きな収量は、pH8.5から9.0で得られた(図3)。PCR
を通じて、そのポリメラーゼは、ヌクレオチド及びPCRのためのバッファー条
件を使用するプライマー・エクステンション・アッセイ(Carballeira et al.19
90.Biotechniques 9,274-281)によると、約1000bases/min.の延長割合を有する
と思われた。
逆転写/PCR増幅
Tfilポリメラーゼは、また、いろいろな種類のRNA鋳型についても大変能率
の良い逆転写酵素活性を示す。方法において記述されているプロトコルを用いて
、Tfilポリメラーゼは、32pgのRNA鋳型という少量で逆転写及びPCR増幅(
RT/PCR)を行うことができた(図7)。より多くのPCRサイクルを使用するか
、あるいはアガロース・ゲルの上でより多くの反応生成物を分析することによっ
て、より優れた感度を得ることができた。そのポリメラーゼは、またより複雑な
サンプル中に存する目標物をRT/PCR増幅することができた。図8は、トポ
イソメラーゼ IIa(topoisomerase IIa)メッセージからの200bp断片の全細胞R
NAから及びa-ラクトアルブミン(a-lactalbumin)の完全800bpメッセージから
のRT/PCRを示している。PCR反応中にてターゲットとなりうる可能性の
あるDNAによるRNA鋳型への混入の可能性は、最初の逆転写なしでPCR増
幅を行うことによってテストされた。PCR増幅に最適な条件下でTaqポリメラ
ーゼまたはTfilポリメラーゼのどちらかを使用するPCR生成物のないことは、
RNA鋳型に対するDNAの混入がないことを示し、そして生成物はRT/PC
Rの第一フェーズにおいて作られたcDNAのPCR増幅から作られたことを示して
いた。また同様に、逆転写に使用されたバッファーは、PCR増幅に適さないこ
とが判明し(プライマーP4およびP5をプラスミド鋳型とともに使用して生産物は
得られなかった。)、そしてPCRに使用されたバッファーは、逆転写段階に使
用された場合に、RT/PCR中で生成物を作ることができなかった。
寄託
Thermus filiformisは、ATCC アクセス・ナンバー43280として、すでにAmeric
an Type Culture Collectionに寄託された命名された菌株である。
Thermus filiformis種の系統発生
Thermus filiformis種は、Thermus aquaticus、「Thermus flavus」及び「The
rmus thermophilus」と区別され、これはいくつかの方法で示されてきた。形態
学的には、Thermus filiformisは、糸状のものである属のうちでは非定型的であ
り、この組織に関する16S rRNAの分析及びその他によると、それはニュージーラ
ンドに特異的な組織のグループの一部であることを示している(図9)。20の単
離されたThermusの完全な16S rRNAがシークエンスされ(Saul et al.1993.Int.J.
System.Bacteriol.43,In press)、そしてそのデータは、マキシマム・パーシモ
ニー(maximum parsimony)の方法を用いる系統分析に付された。このデータは、「
T.flavus」と「T.thermophilus」との間の関係が近いことを示唆しているが、しか
しT.aquaticusとT.filiformisは、これらの組織とより遠い関係にあり、そのそ
れぞれも遠い関係にあることを示唆している。この樹のなかの枝の有効性は、「
ブートストラッピング(bootstrapping)」によって評価された。Felsentein,1985
.Evolution 39,783-791は、もしそれがbootstrapped treeの95%以上で発生した
場合にのみ、その枝は受け入られなければならない、となるようにデータの信頼
限界がセットされるべきであると示唆している。T.filiformis、T.aquaticusと
「T.flavus」/「T.thermophilus」組は、その樹の100%において分離される(
図9)。
これらの結果は、この発明によるクローン酵素が、DNA及びRNA鋳型の双
方からのDNA合成活性に適した好熱性DNAポリメラーゼであるということを
示唆しており、同様に自動DNAシークエンシングにも非常に適したものである
ことを示唆している。Tfilポリメラーゼは、同じバッファーにおいてこれらの反
応の両方を行うし、高い塩濃度に対する耐性もあり、そして染色プライマー及び
染色ターミネーターの両方を使用したサイクル蛍光DNAシークエンシングにお
いて使用することに適している。既存の酵素よりも染色ターミネーターに対して
大きな親和性をもっているので、これらのコストの高い化学物質の消費の抑制を
達成することができることになる。一つの酵素の持つこれらの全ての特性は、分
子生物に携わるものにとって、Tfilポリメラーゼを非常に有用なツールとするの
であ
る。
最後に、クレイムされたこの発明の範囲から出ることなく、上記に対して様々
な変更及び修正がなされうるということを認識されるであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ),AM,
AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C
N,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE
,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,
LR,LT,LU,LV,MD,MG,MN,MW,N
L,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SI,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 ギブズ,モアランド,デイビッド
ニュージーランド国, オークランド
1001,パネール,ローリー アヴェニュー
30
(72)発明者 ソール,デイビッド,ジェイムス
ニュージーランド国, オークランド
1001,パネール,コーウィー ストリート
5/4
(72)発明者 リーブズ,ロザライン,アリソン
ニュージーランド国, オークランド
1001,パネール,ローリー アヴェニュー
30