JPH09509178A - 低分子量ディスプレイサーを用いるタンパク質の置換クロマトグラフィー - Google Patents

低分子量ディスプレイサーを用いるタンパク質の置換クロマトグラフィー

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Abstract

(57)【要約】 ある分子量のディスプレイサー(置換剤)を用いるイオン交換媒体における置換クロマトグラフィーによってタンパク質を精製する方法が開示されている。低分子量の、電荷を有するいくつかの化合物が例示され、それにはアミノ酸、ペプチド、抗生物質及びデンドリマー系ポリマーが含まれる。ディスプレイサーとして有用な新規化合物は、式(I): のデンドリマー(ただし、R1は低級アルキル基てあり、nは2ないし6であり、Xは普通の対向陰イオンである)ならびに、これを基盤とする類似の樹枝状ポリマーである。

Description

【発明の詳細な説明】 低分子量ディスプレイサーを用いる タンパク質の置換クロマトグラフィー 連邦政府支援研究における権利に関する説明 本発明は、全米科学財団(National Science Foundation)補助金第BC S-9112481号による支援のもとに行われたものである。合衆国政府は、本発明に おいて何らかの権利を有することもあり得る。 発明の技術分野 本発明は、低分子量のディスプレイサー〔置換剤、押し出し剤〕(displace r)を用いるタンパク質の置換クロマトグラフィー(displacement chromatograp hy)に関するものであり、また、タンパク質のクロマトグラフィーに有用な新規 な樹枝状ポリマー(dendritic polymer)基盤高分子電解質に関するものである 。 発明の背景技術 置換方式のクロマトグラフィーは、Tswettによって1906年に初めて認識さ れたものである。Tswettは、過負荷状態の溶離クロマトグラフィー(elution c hromatography)のもとで試料の置換が起きることに気づいたのである。1943年 にTiseliusは、前端クロマトグラフィー(frontal chromatography)、溶離ク ロマトグラフィー及び置換クロマトグラフィーという分類を発展させた。その時 以来、多くの開発や応用、特に分析用クロマトグラフィー におけるそれらは、溶離クロマトグラフィーの分野で行われ、事実、特に断りの ないクロマトグラフィーという言葉は溶離クロマトグラフィーのことをいうのが 普通となっている。しかし、過去50年の文献の中では溶離クロマトグラフィーの 理論と実務が支配的分量を占めるものの、置換クロマトグラフィーの理論と実務 は、クロマトグラフィー学において小さいながら一つの領域を占めている。 二つのタイプのクロマトグラフィー、すなわち溶離型と置換型とは、理論及 び実務の両面で容易に区別されるものである。溶離クロマトグラフィーでは、精 製すべき試料〔本発明の場合はタンパク質〕の溶液を固定相、一般にはカラムに 添加する。移動相は、試料が非可逆的に吸着されたり、全面的に吸着されなかっ たりすることなく、むしろ可逆的に結合するように選ばれる。移動相が固定相に 流れ込むと、この移動相と固定相との間に平衡関係が確立され、それによって、 その固定相への親和性に応じて、試料は、原試料で起きるかもしれない他の成分 に関する親和性を反映した速度でカラムに沿って通過する。差動的移行(differ ential migration)の過程を第1図に模式的に示し、典型的なクロマトグラムを 第2図に示す。標準的な溶離クロマトグラフィーにおいて特に注意すべきことは 、溶離用溶媒の前端、すなわち定組成溶離(isocratic elution)におけるゼロ カラム容積(zerocolumn volume)は、つねにカラムを離れる試料に先行すると いう事実である。 定組成溶離クロマトグラフィーの改変と拡張は階段的傾斜( step gradient)クロマトグラフィーに見いだされる。この場合は、組成の異な る一連の溶離液(eluent)を固定相に通過させる。イオン交換クロマトグラフィ ーでは、移動相塩濃度及び/又はpHの階段的変更を用いてタンパク質の溶離又 は脱着を行う。 置換クロマトグラフィーは基本的には脱着(desorption)クロマトグラフィ ー〔例えばアフィニティー・クロマトグラフィー、階段的傾斜クロマトグラフィ ー〕とは異なる。仕込成分のいずれよりも高い親和性を有するディスプレイサー が、固定相の吸着部位と効果的に競合する。置換と脱着との間の重要な区別は、 ディスプレイサー前端がつねに置換列(displacement train)中の隣接仕込帯域 よりも背後にとどまり、一方、脱着物〔例えば塩、有機変性剤(modifier)〕が 仕込帯域を通って移動することである。このような区別の持つ意味は、置換クロ マトグラフィーは潜在的に、低い分別因子(separation factor)を有する混合 物から成分を濃縮し、精製することができるという点で、きわめて特徴的であり 、一方、脱着クロマトグラフィーの場合は、満足すべき分割を与えるには比較的 大きな分別因子が一般に必要である。 置換クロマトグラフィーでは、溶離液〔すなわちディスプレイサー〕は、分 別されるべき混合物中の各成分のいずれよりも、固定相に対して高い親和性を有 する。これは溶離クロマトグラフィーとは対照的であり、後者の場合は溶離液が 比較的低い親和性を有するのが普通である。置換クロマトグラフィーを溶離又は 脱着クロマトグラフィーと区別させる主要な操作上の特徴は、ディスプレイサー 分子の使用である。置換クロマトグラフィーでは、分 別されるべき成分が全て固定相に対して比較的高い親和性を有するような条件の もとで、カラムをまずキャリヤー溶媒で平衡化させる。大量の希釈仕込混合物を カラムに負荷させることができ、個々の成分は固定相に吸着されるだろう。すな わち、これらは仕込溶液から固定相上に分配されて、そこにとどまる。全ての成 分を置換によって分別したいときは、キャリヤー溶媒は試料を含まずにカラムか ら出てくる。いまや試料は固定相に位置し、カラム上の各成分の位置は、固定相 に対する相対的親和性に相関する。概念的にいえば、固定相に対して最高の親和 性を有する成分の各分子が、固定相上のある部位で比較的低い親和性を有する成 分の分子を置換していき、それによって、個々の成分は、最終的にはカラム上で 最高親和性から最低親和性までの順序に配置されることになる、と考えることが できる。 ある場合には、一部の成分をキャリヤー溶媒とともにカラムを通過させるこ とが有利となる。この場合は、カラムに残る仕込成分だけが置換クロマトグラフ ィーによって分割されることになる。 カラムに試料を負荷させた後、ディスプレイサー溶液を導入する。このディ スプレイサー溶液は、ディスプレイサーを適当な溶媒に溶解したものである。こ のディスプレイサーは、固定相に対するその親和性が各仕込成分のいずれの親和 性よりも高くなるように選択する。ディスプレイサー及び移動相が適切に選ばれ ていると仮定して、生成物成分は、吸着親和性が次第に増加する順序で、高濃縮 度の純物質の隣合う矩形波帯域としてカラムから出 て行く。これを第3図に模式的に示す。精製成分の帯域がいくつか続いて後、デ ィスプレイサーがカラムから出る。ある置換クロマトグラフィーによる代表的な クロマトグラムを第4図に示す。これは、ディスプレイサーが試料より後から出 ること、ならびに、仕込成分が、高濃縮度の純物質の隣接「矩形波」帯域として コラムから排出されること、などの事実によって、第2図に示した溶離クロマト グラフィーのクロマトグラムとは容易に区別できる。最後に、ディスプレイサー の漏出(breakthrough)の後に、ディスプレイサーの固定相からの脱着によって カラムを再生して、次の運転サイクルに使えるようにする。 置換クロマトグラフィーは、タンパク質のような生物学的巨大分子の製造規 模のクロマトグラフィーとして、いくつか特に有利な特質を有する。第1に、そ して最も有意義なものとして、置換クロマトグラフィーは一つの工程で製品分別 と濃縮を達成することができる。対照的に、定組成溶離クロマトグラフィーでは 、分別中に製品の希釈が行われる。第2に、この置換工程は、平衡等温線(equi librium isotherm)の非線形域(nonlinear region)において操作されるので、 高カラム負荷が可能である。これによって溶離クロマトグラフィーよりもはるか にすぐれたカラム活用が可能となる。第3に、カラムの展開自体には同等な溶離 工程の場合よりも溶媒が少なくてすむ。第4に、置換クロマトグラフィーでは、 低い分別因子の混合物から各成分を濃縮し、精製することができるが、脱着クロ マトグラフィーでは満足すべき分別を達成するには比較的大きな分別因子が必要 である。 これら全ての利点から見て、置換クロマトグラフィーは広範囲に利用される だろうものと考えられる。しかしながら、置換クロマトグラフィーは、これまで 知られているように、タンパク質の精製には、溶離クロマトグラフィーに比して いくつかの欠点を有している。「タンパク質」なる言葉は、本技術分野で一般に 理解されているところでは、また、本明細書において用いるところでは、分子量 10 KDa又はそれ以上のポリペプチドをいう。この約定によれば、10 KDa未満 の分子量のポリペプチドは一般にオリゴペプチドと呼ばれる。主要な問題点の二 つは、(1)カラムの再生と、(2)精製区分の一部にディスプレイサーが存在するこ ととである。 この置換工程にはディスプレイサーとして高親和性の化合物が用いられるの で、溶離クロマトグラフィーに比べて再生時間及び再平衡化時間が長くなる。さ らに、再生工程で比較的大量の溶媒がしばしば必要となり、溶離クロマトグラフ ィーに比べた場合の利点は溶媒消費量という点で事実上削減される。 第2の問題点として、ディスプレイサーの混在という問題が生じる。それは 、タンパク質分別に用いるディスプレイサーに共通な特質が、分子量の比較的高 いことにあったからである。これまでは、〔以下にも説明するように、〕置換さ れるべきタンパク質よりも高い結合係数(binding coefficient)を確保するた めに、大きな高分子電解質を用いる必要がある、という考えから、タンパク質の 置換には高分子量の高分子電解質を使用するようこの技術分野で教えられていた 。高分子量のディスプレイサーは、前記 のような二つの短所を示す。すなわち、このものは固定相に強固に結合し、その ために、カラムの再生には思い切った条件が必要となる。また、生成物区分に混 在するかも知れない痕跡量のディスプレイサーは除去が困難である。 従って、カラムの大規摸な再生を要せず、またタンパク質製品から容易に除 去できるような種類のディスプレイサーを得ることは有利であろう。本技術分野 において出願人の知る例が一つある。それは、コンアルブミンをオボアルブミン から分別するために、ポリエチレンイミン被覆弱陰イオン交換樹脂の上で2キロ ダルトンのポリ(ビニルスルホン酸)を用いる試みである。この実験は、この二 種のタンパク質が分別されたという点では成功していたように思える〔Jen and Pinto,Journal of Chromatography519,87-98(1990)参照〕。しかし、その後 の報告〔Jen and Pinto,Journal of Chromatographic Science 29,478-484 (1991)参照〕でも論じられているように、この分別は溶離クロマトグラフィーと 置換クロマトグラフィーとの混合機構によって効果を上げていたようで、後者の 報告では、著者は、このポリ(ビニル・サルフェート)ディスプレイサーを放棄 し、高分子量デキストラン・サルフェートを採用している。Jen及びPintoは、こ の第2の報告の中で、分子量の小さいポリビニル・サルフェートに比して分子量 の大きいデキストラン・サルフェートの優秀性を実証している。 Jen及びPintoは、その後の論文〔Reactive Polymers 19,145-161(1993 )の147頁〕で、イオン交換性固定相上のタンパク 質の置換クロマトグラフィーに用いられる全てのディスプレイサーの一覧表を掲 げている。彼らは、その成果についての論評の中で、前回同様、2KDaポリビ ニル・サルフェートが部分的に第2のタンパク質に置き換わり、第1のものを溶 離させるものと結論している。 意外なことに、非常に低分子量の荷電体(charged species)からなるいく つかの種類が、置換クロマトグラフィーにおけるタンパク質のディスプレイサー として非常に効果的に機能することが、ここに見いだされたのである。 発明の概要 一面では、本発明は、タンパク質〔一つ又は複数〕を精製する方法に関する もので、適当な移動相中のタンパク質をイオン交換性固定相に負荷させ、分子量 2000未満のディスプレイサーを用いる置換クロマトグラフィーによって固定相か らタンパク質を押し出す(displace)という工程を包含するものである。 ある実施態様では、この固定相は陽イオン交換樹脂であり、ディスプレイサ ーが陽イオン系化合物である。別の実施態様では、固定相は陰イオン交換樹脂で あり、ディスプレイサーが陰イオン系化合物である。種々の好ましい実施態様に おいて、このディスプレイサーは、ポリ(第4級アンモニウム)塩であり、ある いは、このディスプレイサーは、アミノ酸エステル、アミノ酸アミド、N─アシ ルアミノ酸、ペプチド・エステル、ペプチド・アミド、又はN─アシルペプチド 、好ましくは、リジン、アルギニン、 Nα─アシル化リジン又はNα─アシル化アルギニンの低級アルキル・エステル 又は低級アルキル・アミドである。低級アルキルとは、直鎖状、分岐状又は環状 の、炭素数6個以下の飽和炭化水素残基をいう。このディスプレイサーはまた、 陽イオン系又は陰イオン系の抗生物質、あるいは樹枝状ポリマー(dendritic po lymer)であってもよい。ディスプレイサーが樹枝状ポリマーである場合、好ま しいディスプレイサーは次のものである。 ここに、X-は対向陰イオン、例えば、ハロゲン、サルフェート、スルホネー ト、パークロレート、アセテート、ホスフェート又はナイトレートである。 一般にこのディスプレイサーは次のような電解質から選ぶのが有利である。 すなわち、その固有電荷(characteristic charge)(ν)及び平衡定数(equil ibrium constant)(K)が、縦座標にlog Kを、横座標にνを置いた座標系を 作成したときに、縦座標軸上のA点から、ディスプレイサーのK及びνによって 定まる点を通って構成される線が、同じA点から、精製されるべきタンパク質の K及びνによって定まる点を通って構成される対応線よりも大きな勾配を有する ようなものである。A点は、その値において、興味ある系におけるディスプレイ サー操作線の勾配(Δ) に相当する。これについては以下にさらに詳しく説明する。分子量が900より低 いディスプレイサーが特に有利である。 別の面として、本発明は、適当な負荷溶媒に溶かしたタンパク質を、イオン 交換性固定相に負荷させ、樹枝状高分子電解質ディスプレイサーを用いる置換ク ロマトグラフィーによって固定相からこのタンパク質を押し出すことを包含する 、タンパク質の精製方法に関するものである。この固定相は、陽イオン交換樹脂 であることを得る。その場合には、高分子電解質はポリカチオンとなるであろう 。あるいはこの固定相は、陰イオン交換樹脂であることを得る。その場合は、高 分子電解質はポリアニオンとなるであろう。好ましくは、この高分子電解質はポ リ(第4級アンモニウム)塩である。もう一つの好ましい樹枝状ポリマーは次の ものである。 別の面では、本発明は次の式の化合物に関するものである。 及び ここに、Rは-(CH2)n-N(R1)3 +-であり、R1は低級アルキル基であり、 nは2ないし6であり、Xは前述の通りである。これらの化合物は置換クロマト グラフィーにおけるディスプレイサーとして有用である。 図面の簡単な説明 第1図は、標準定組成線形溶離クロマトグラフィー(linear elution chrom atography)を模式的に示したものである。 第2図は、溶離クロマトグラフィーからの典型的なクロマトグラムである。 第3図は、置換クロマトグラフィーを模式的に示したものである。 第4図は、置換クロマトグラフィーからの典型的なクロマトグラムである。 第5図は、二つのタンパク質及び本発明の二つのディスプレイサーについて 平衡定数(K)を固有電荷(V)に対してプロットしたものである。 第6図、第7図及び第8図は、本発明のディスプレイサーを用いたタンパク 質のクロマトグラムである。 好ましい実施態様を含む本発明の詳細な説明 タンパク質のクロマトグラフィーにおけるディスプレイサーとして、低分子 化合物が効果的に使用できるという意外な発見をよりよく理解するには、置換ク ロマトグラフィーの改良数学モデルを少し考えてみることである。この仮説的論 理構成は、この現象の理論的説明には有益であるが、これは本発明の十分な広さ を限定することを意図するものではない。 本発明者の一人が開発したステリック・マス・アクション(SMA)イオン 交換モデルは、他のモデルとは異なり、多成分タンパク質平衡における立体効果 を明確に説明し、イオン交換型置換系における複雑な行動を予言することができ る。タンパク質や高分子電解質のような巨大分子の溶質は、イオン交換表面上で 多点付着の形をとるものと考えられ、吸収性表面と一個の巨大分子との間の相互 作用数を、溶質分子の固有電荷と定義する。ある溶質の固有電荷は、吸着の際に イオン交換表面から溶質によって押し出される塩の対向イオンの数に数値的に等 しい。しかし、高分子電解質が現実に相互に作用する部位の他に、イオン交換表 面に結合する大きな溶質巨大分子もまた、結合溶質分子の下及び隣接個所への、 同じ大きさの巨大分子の吸着を立体的に阻害する。表面において立体的に阻害さ れる塩の対向イオンの数〔吸着溶質分子当たり〕、すなわち流体相中の他の溶質 分子との交換に利用されないものの数は、その吸着巨大分子の立体因子(steric factor)として定義される。マス・アクション・イオン交換平衡関係のこれま での議論では、ある巨大分子の吸着表面への結合性は、その固有電荷に等しい吸 着性部位の数にのみ影響すると考えられていた。事実、固定相の部位の立体的遮 蔽(steric shielding)が、イオン交換系における巨大分子の非線形吸着行動に おいて重要な役割を果たしている。 溶質分子〔タンパク質又は高分子電解質〕と、交換可能な塩の対向イオンと の化学量論的交換は次式で示すことができる。 ここに、C及びQは、移動相及び固定相の濃度であり、Viは溶質の固有電 荷であり、下付き文字i及びsはそれぞれ、溶質分子及び塩対向イオンをいう。 頂部横線は、溶液中の溶質巨大分子と交換可能な結合塩対向イオンを表す。イオ ン交換表面に吸着さ れる溶質の平衡定数Kiは次式で与えられる。 平衡定数は、その分子の親和性の尺度である。固定相における電気的中性の 条件は次の関係式で与えられる。 ここに、σiは、ディスプレイサー又はタンパク質の立体因子である。 等式3を等式2に代入して整理すれば、一つのタンパク質又はディスプレイ サーについての次の平衡関係式が得られる。 かくて、移動相の対向イオン濃度CS、カラムのイオン床容積Λ、及び各成 分のモデル・パラメーターの値を知れば、陰関数式(implicit equation)(4)か ら単一成分等温線を容易に生じることができる。各成分に必要なモデル・パラメ ーターは、固有電荷Vi、立体因子σi及び平衡定数Kiである。置換行動の予測 にこのモデルを利用するためには、タンパク質及びディスプレイサーのモデル・ パラメ-ターを決める必要がある。 イオン床容積Λは、前端クロマトグラフィー技法を用いてその場で測定する ことができる。〔Gadam et al.,J. Chromatog. 630 ,37-52(1993)を参照。〕 移動相中で低ないし中程度の塩濃度で顕著な塩感受性保持行動を示すタンパ ク質分子については、線形溶離クロマトグラフィーを使用して、イオン交換系で すでに確立されている関係を用いて、三つのSMAモデル・パラメーターの内の 二つ〔すなわち、固有電荷と平衡定数〕を決定することができる〔Kopaciewicz et al.,J. Chromatog. 266,3(1983)を参照〕。線形溶離試験は、次式: によって固有電荷(Vi)及び平衡定数(Ki)を決定するために、種々の移動相 塩濃度で実施される。なお、前記の式において、log k'v log Cs plotに対して 、slope=-Vi;intercept=log(βKiΛV1)である。 タンパク質の固有電荷及び平衡定数が決定されれば、タンパク質について残 るSMAパラメーター、すなわち、立体因子σは、次式: ただし、 によって単一非線形前端クロマトグラフィー試験から個別に決定される。多くの タンパク質は、その固有電荷に比してきわめて高い立体因子を示すが、これは、 タンパク質分子における立体配座の束縛(conformational constraint)からみ て驚くにはあたらない。あるタンパク質についてSMAパラメーターが得られた なら、このモデルを用いて、任意の塩濃度における吸着等温線(adsorption iso therm)を作成することができる。 線形溶離データからの固有電荷及び平衡定数の決定は、緩やかに保持された タンパク質についてはうまく行われるが、親和性の高いディスプレイサーをこの やり方で特徴づけることはきわめて困難である。これに対して、このような高親 和性化合物のパラメーター評価には、前端クロマトグラフィーがよく適している 。ディスプレイサーの固有電荷VDは、次式: を用いて、誘導塩傾斜(induced salt gradient)から決定することができる。 ここに、n1は押し出されたイオンの全量、nDは固定相に吸着されたディスプレ イサーのモル数、CDは高分子電解質ディスプレイサーの移動相濃度、ΔCSはデ ィスプレイサー吸 着時の移動相対向イオン濃度における階段的増加(step increase)である。 移動相塩濃度が十分低い場合は、ディスプレイサーは固体相材料を完全に飽 和する。このような条件における前端試験(frontal experiment)を用いて、次 の式: から立体因子σDを決定することができる。ここに、Λはイオン床容積であり、 QD maxは、高分子電解質ディスプレイサーの最大固定相容積である。あるいはそ の代わりに、例えば、次式: によって与えられるように、アンモニウム前端によって押し出される立体的に障 害を受けたナトリウム・イオンn2の測定(床容積測定に類似)によって、立体 因子を決定することもできよう。 イオン交換工程のための平衡定数は、式2によって定義される。前記のよう にして固有電荷及び立体因子を個別に測定したなら、前端試験を用いて平衡定数 KDが決定される。この試験は、溶質が床を完全に飽和させないような高移動相 塩条件のもとで行う。平衡定数は、次式: によって、個別に決定した固有電荷(VD)及び立体因子(σD)の値を用いて漏 出容積(breakthrough volume)から直接に計算する。前記の式で、βはカラム 相比、CSはキャリヤー中の初期塩濃度である。固有電荷、立体因子及び平衡定 数が決定されたなら、前述のSMA形式論(SMA formalism)を用いて、タン パク質及び高分子電解質の等温線をシュミレートすることができる。 多糖類誘導体ディスプレイサーを用いて観察された結果に基づく従来の知識 によれば、タンパク質置換クロマトグラフィーには、比較的高い固有電荷と、高 い立体因子/固有電荷比を持った高分子量化合物が必要である。これまでのとこ ろ、ディスプレイサー相互間の効力の選定や決定のために明確に定義された基準 は存在しない。ディスプレイサー操作線の勾配が知られたなら、前述の数学モデ ルを用いて、各成分の固有電荷及び平衡定数の関数として、仕込成分の溶離順序 (elution order)を予測することが可能である。 有効な置換クロマトグラフィーの数学的基準を、log Ki対Viのプロットと して再構成できる〔第5図参照〕。アイソタチック置換列(isotachic displace ment train)における溶離順序はディスプレイサー操作線の勾配△: に相当する縦座標軸上の点から、溶質の平衡パラメーター〔固有電荷及び平衡定 数〕によって定義される各点を通る線を構成させることによって、図形的に決定 することができる。仕込成分の溶離順序は、これらの「親和性」線の反時計方向 順序〔すなわち勾配増大〕に相応する。式(12)において、(C1)dは、ディスプレ イサーが遭遇する塩濃度〔すなわちキャリヤー塩濃度〕、Qdは、固定層におけ るディスプレイサーの濃度、Cdは、移動層におけるディスプレイサーの濃度で ある。 出願人はこの仮説的論理構成に拘束されることを望まないが、これは、小さ な分子が効果的なディスプレイサーであり得るという発見と矛盾しないように思 える。なぜなら、大きさは決定的なパラメーターではないからである。この理論 によって、Ki及びViが、当該タンパク質からの親和性プロットに対して反時計 方向であるような分子であれば、このタンパク質に対して効果的なディスプレイ サーとして機能するだろう。 この予測と一致して、多数の低分子量ディスプレイサーを試験し、タンパク 質置換(protein displacement)として有効であることを見いだした。 樹枝状ポリマー〔スターバースト(starburst)ポリマーとしても知られて いる〕は、三次元、高次(highly ordered)のオリゴマー化合物又はポリマー化 合物であって、アンモニアやペンタエリスリトールのような小さい分子である「 反応開始核(initiator cores)」から出発して、反復反応シークウェンスによ って形成されるものである。選ばれた構築ブロックと成長反応によっ て、大きさ、形状、トポロジー、柔軟性、表面化学などの臨界的な(critical) 分子設計パラメーターは、分子レベルで正確に制御することができる。合成は、 世代(generation)と呼ばれる個別の段階を経て進む。デンドリマー(dendrime r)は、三つの明確な構造的特徴を有する。すなわち、(1)反応開始核領域(init iator-core region)、(2)この反応開始核に放射状に結合した分岐セルのカスケ ード列(cascading tiers of branch cells)を含んだ内部領域、及び、(3)最外 部世代に結合した末端部分からなる外部領域又は表面領域である。 ゼロ(12)、第1(14)、及び第2〔スキーム2に示したような(16)〕世代のペ ンタエリスリトール基盤デンドリマーの合成を、以下に詳しく記述するように実 施した。便宜上、ゼロ世代のデンドリマーをPETMA4(PentaErythrityl( TriMethylAmmonium)4)、第1世代をPETMA12、第2世代をPETMA36 と称する。 ゼロ世代、第1世代、及び第2世代のデンドリマーのSMAモデル平衡パラ メーターを、前端クロマトグラフィー技法を用いて、50×5mmI.D.SCXカラ ム中で測定した。 第1表から判るように、各デンドリマーの全電荷数の約1/3が表面に結合 している。第1世代(PETMA12)及び第2世代(PETMA36)のデンドリ マーは、同様な吸着行動を示し、σD/VD及びQD *Dの値は同様であり、塩濃 度の減少に伴ってQDが限界的増加(marginal increase)した。 第1表から判るように、第2世代デンドリマーであるPETMA36は、第1 世代デンドリマーより比校的高い固有電荷を有するが、σi/Vi比は同程度であ る。理論上は、PETMA36は効率的なディスプレイサーとして働くはずである が、それが事実であることが見いだされた。100×5mm陽イオン交換カラム中で 、PETMA36を用いて、二つのタンパク質〔α─キモトリプシノーゲンA及び シトクロムC〕の置換分別(displacement separation)を実施した。かなり良好な理論と実験の整合が見られた。精製した 〔ダイアフィルトレーションによる〕第1世代ペンタエリスリトールPETMA 12をディスプレイサーとして用いて、この実験を繰り返した。このような置換に よって、分子量と、デンドリマー上の電荷グループ数とが減少しても、そのディ スプレイサーとしての効力にほとんど影響がないらしいことが示されている。こ の予想をさらに1段拡張すれば、ゼロ世代のデンドリマーもタンパク質ディスプ レイサーとして作用するものと予想できよう。この予想は、イオン交換系におけ るタンパク質のディスプレイサーとして、高固有電荷の高分子量の高分子電解質 を用いるという従来の知識に逆行するものである。〔ゼロ世代デンドリマーは、 正味の(net)電荷4、固有電荷1.7、分子量480Daである。〕 このゼロ世代樹枝状ディスプレイサーを用いた、α─キモトリプシノーゲン A及びシトクロム─Cからなる二つのタンパク質の混合物を置換クロマトグラフ ィーにかけた結果を第6図に示す。この図からわかるように、二つのタンパク質 のすぐれた置換分別が、明確な境界線を有し、比較的混合の少ない、高度に濃縮 された、合い接する帯域の状態で観察される。この結果はまさに革命的であり、 大規模タンパク質分別に置換クロマトグラフィーを用いる場合にきわめて有意義 なものである。 ゼロ世代、第1世代、及び第2世代の樹枝状高分子電解質が、イオン交換系 におけるタンパク質の有効なディスプレイサーとして機能することは明かである 。さらに顕著なこととして、「ゼロ」世代デンドリマー〔分子量480〕のような 低分子量化合物が比較 的高分子量タンパク質を置換する能力を有することは、置換現象についての現状 の理解においては全く興味深いことである。分子量と、デンドリマー上の電荷グ ループ数とが、そのディスプレイサーとしての効果にほとんど影響しないように 思えることから、「ゼロ」世代のデンドリマーをディスプレイサーとして用いる 方が有利であるかも知れない。このような分子の合成ははるかに容易であり、工 程が少なくてすむ。〔従って廉価である。〕このものは、置換後の、サイズ基準 下降流処理(size-based downstream processing)における仕込成分帯域からの 分別が容易であるという別の利点を有する。 その他の低分子量電解質も、タンパク質のディスプレイサーとして有効に機 能するようである。例えば、変性アミノ酸や電荷担持抗生物質をディスプレイサ ーとして用いることができる。変性によるとは、アミノ酸を両性から陽イオン性 〔陽イオン交換置換クロマトグラフィー用〕又は陰イオン性〔陰イオン交換クロ マトグラフィー用〕に変わるように変化させることを意味する。これを最も好都 合に達成するには、カルボキシル基をエステル化して陽イオン性化合物にするか 、あるいは、アミンをアシル化して陰イオン性化合物にする。 電荷がカルボキシル基に由来するディスプレイサーは、クロマトグラフィー において普通に用いられるpHにおいて固有電荷が低く、その結果、親和性のプ ロットにおいて、興味ある殆どのタンパク質に対して反時計方向となるにはきわ めて高い平衡定数を有するものでなければならないことから、非常に有効な陰イ オ ン性ディスプレイサーとはなりにくい。このような理由から、アミノ酸の中では 、アシル化タウリン誘導体が比較的可能性の高い陰イオン性ディスプレイサー候 補化合物である。 カルボキシル基誘導化アミノ酸は非常に有効な陽イオン性ディスプレイサー となる。例えば、カルボベンゾキシリジン・メチル・エステル、ベンゾイルアル ギニン・エチル・エステル(BAEE)、アルギニン・メチル・エステル、及び アルギニンアミドは、α─キモトリプシノーゲン及びシトクロム─Cの置換クロ マトグラフィーにおいて、全て効果的なディスプレイサーである。初めの二つは 、一つの陽電荷を有する。アルギニン・メチル・エステル及びアルギニンアミド は、二つの陽電荷を有し、その結果、固定層への親和性がより高い。アイソタシ ックな(isotacic)置換におけるα─キモトリプシノーゲンとシトクロム─Cと の分割は、DEAEデキストランのような高分子量ディスプレイサーを用いて得 られる分割に匹敵するものである。45mMのベンゾイルアルギニン・エチル・エ ステルを50mM塩溶液に溶かしたpH6.0の溶液を用いた、8ミクロン強陽イオン 交換カラムでのα─キモトリプシノーゲンA及びシトクロムCの置換クロマトグ ラムの例を第7図に示す。変性アミノ酸ディスプレイサーは、高分子量ディスプ レイサーの費用の何分の1かの費用で、きわめて純粋な形で購入することができ る。その上、サイズが小さいことから、輸送性がよく、より速い動力学を与える 。 多くの抗生物質は、もし所望のタンパク質区分中に見いだされたとしても、 容易に除去できるほど小さいという利点を有する。 さらに、これらはタンパク質区分の中に残ることが有利な場合がしばしばあり得 る。高い固有電荷と平衡定数との所望の組合わせを達成するために、一つ又はそ れ以上の強解離性官能性を有する抗生物質が特に有用のようである。このような 抗生物質には、二つのグアニジン官能性を有するストレプトマイシンが含まれる 。45mMのストレプトマイシンサルフェート塩〔分子量581〕を30mM塩溶液に溶 かしたpH6.0の溶液を用いた、8ミクロン強陽イオン交換カラムでのα─キモト リプシノーゲンA及びシトクロムCの置換クロマトグラムの例を第8図に示す。 いずれも分子量が600以下であるアミノ酸エステル、解離性抗生物質及びゼ ロ世代デンドリマーがきわめて有効なディスプレイサーであることが実証された ことで、タンパク質クロマトグラフィー用のディスプレイサーとしては2000を越 える分子量は必要でないことが確かめられている。事実、我々は、固有電荷と平 衡定数が、そのSMA解析によって効果を予測できるようなもの〔第5図に示し 、先に説明したように〕である限り、分子量2000未満の電荷化合物で機能しなか った例を見ていない。 粗製のPETMA(12)をディスプレイサーとして用いて、100×5mm陽イオ ン交換カラム中で、2成分タンパク質混合物の置換分別を実施した。タンパク質 成分は押し出されて、隣接帯域としてうまく分別されたが、溶出液のプロフィル は、不純なDEAE─デキストランをディスプレイサーとして用いた従前の置換 と類似した特性を示した。最も目立つこととして、シトクロム─C帯域は、α─ キモトリプシノーゲンA帯域に比べてかなり濃度が低 かった。恐らく、ディスプレイサー中の不純物がタンパク質の脱着と、その等温 線の降下に影響したもの思われる。従って、デンドリマーを精製することが有利 と考えられる。 デンドリマーの一つの特質は、そのデンドリマーの表面に、種々の末端部分 を存在させ得ることである。この末端グループは、異なる有用性の可能性を与え る官能性に容易に変化させることができ、デンドリマーは、最終の外層に高密度 の末端部分を有するものとなる。これらの密な分子の表面にある有機基を、第4 級アンモニウム塩やスルホネートなどの電荷基となるように官能基化すれば、そ れらは、クロマトグラフィー媒体に対して、ある種のタンパク質よりも高い親和 性を示し、クロマトグラフィー分別における新型のディスプレイサーとして有用 なものとなる。樹枝状ポリエーテルの基幹の合成をスキーム1に示し、それを新 規なポリ(エーテル─アミン)へ官能基化する経路をスキーム2に例示する。デ ンドリマー前駆物質の陰イオン性デンドリマー〔スルホネート〕への官能基化を スキーム3に示す。スキーム1で用いた戦略は、Hall及びPadiasの業績〔J. Org. Chem. 52, 5305(1987)〕から導かれた変性手順である。ペンタエリスリ トール(PE)は反応開始核でもあるが、構築ブロックとして、ヒドロキシメチ ル・ビサイクリック・オルソフォルメート(HTBO)の代わりに、1─メチル ─4─(ヒドロキシメチル)─2,6,7─トリオキサビシクロ─[2.2.2 ]─オクタン(MHTBO)が用いられる。第3級アミン部位を導入するための シントンとして、N,N─ジメチルエタノールアミンが用いられる。 デンドリマー電解質の調製 ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)及び2─メトキシエチル・エーテ ル(ダイグライム)をナトリウム上で乾燥させ、使用する直前に蒸留した。N, N─ジメチルホルムアミド(DMF)は、HPLCグレイドのものをAldrich Chemical Co.から購入した。その他の溶媒及び試薬は全て、操作中で特に断ら ない限り、それ以上の精製を行うことなく使用した。 ペンタエリスリチル・テトラブロマイド、PE-Br(4)〔化合物1〕 機械的撹拌器及び温度計を取り付けた1L容三口丸底フラスコに、ペンタエ リスリトール(26.0g,0.19mol)及び200mLのピリジンを加えた。撹拌を開始し 、この懸濁液を氷浴中て冷却しながら、これに、固体状のp─トルエンスルホニ ル・クロライド(152.52g,0.8mol)を、温度が30℃より上がらないような速度で 加えた。添加完了後、得られたスラリーを35-40℃でさらに2時間撹拌した。水2 00mL、メタノール400mL及び濃塩酸160mLからなる溶液を激しく撹拌し、この 溶液に、スラリーを徐々に加えた。さらに氷を加えることによって、無色の粗製 ペンタエリスリチル・トルエンスルホネートをさらに冷却し、吸引濾過し、水1 L及び、冷メタノール200mLを二つの区分に分けて洗浄した。 機械的撹拌器、温度計及びコンデンサーを取り付けた1L容 三口丸底フラスコ中で、わずかに湿ったペンタエリスリチル・トルエンスルホネ ート(約140g)、臭化ナトリウム(120g,1.16mol)及びジエチレン・グリコール 300mLを混合した。次いでこの混合物を、緩やかな撹拌のもとで140-150℃に加 熱し、この温度範囲で一夜反応させた。室温にまで冷却後、この混合物を400mL の水の中へ撹拌下に注入し、沈澱物を吸引濾過し、水500mLで洗浄した。粗製物 を減圧下(1トル)に50℃で一夜乾燥させ、アセトンから再結晶させた。収量: 52g(70%)。融点:157-160℃。 1─メチル─4─(ヒドロキシメチル)─2,6,7─トリオキサビシクロ[ 2.2.2]オクタン、MHTBO〔化合物2〕 通常の蒸留装置を取り付けた250mL容丸底フラスコ中で、ペンタエリスリ トール(13.6 g,0.1mol)、トリエチル・オルソアセテート(16.22g,0.1mol,18. 3mL)、ピリジン・p─トルエンスルホネート(PPTS)(0.5 g,2mmol)及 び100mLのジオクチル・フタレートを混合した。この混合物を130-140℃に加熱 し、エタノールを徐々に留去した。エタノールの量が理論値に近くなった時点で 、圧力を<0.1トルに減じ、生成物を減圧下で蒸留した。留出した白色の生成物 はコンデンサー中で結晶化して、13.6-14.9gのMHTBOを与えた。収量:85-9 3%。この化合物はトルエンから再結晶させることができるが、そのままで使用 す ることができる。融点:110-112℃。 PE-MBO(4)〔化合物3〕 機械的撹拌器、温度計及び添加漏斗を備えた500mL容三口フラスコ中で、ア ルゴン雰囲気下に、カリウム・ハイドライド(2.8 g,0.07mol,35%懸濁液として 8.0g)をヘキサンで2回洗浄し、洗浄液を傾瀉して除き、ダイグライム100mLを 加えた。撹拌下に混合物を0℃に冷却し、MHTBO 10.25g(0.064mol)をダイ グライム100mLに溶かした溶液を滴加し、混合物を室温で3時間撹拌した。次い で、ペンタエリスリチル・テトラブロマイド5.82g(0.015mol)をダイグライム10 0mLに溶かした溶液を、同じく室温で滴加した。混合物を加熱して24時間還流さ せた。次いで混合物を600mLの氷水中に注入し、沈澱物を濾過し、水で洗浄し、 真空下(1トル)に50℃で一夜乾燥させた。白色の固体(8.2g,78%)を得た。 バイルシュタイン試験によるブロマイドは陰性であった。この生成物を、最後に 4:1酢酸エチル/ヘキサンから再結晶させた。収量:5.86g,55%。融点:220 ℃でわずかに収縮し、230-244℃で溶融。 PE-OH(12)〔化合物4〕 250mL容丸底フラスコ中で、PE-MBO(4)(6.0g,8.53mmol)を100mLの メタノール及び1mLの濃塩酸と混合した。 混合物を徐々に加熱して還流させ、1時間還流を継続した。溶媒の約1/3だけ が残るまで、メタノールと酢酸メチルを留去した。白色の生成物を濾過し、乾燥 させた。収量:4.86g(8.0mmol)、94%。融点:180℃で収縮し、220-235℃で溶融 。 PE-Tos(12)〔化合物5〕 500mL容三角フラスコ中で、PE-OH(12)(2.24 g,3.68mmol)を40mLの ピリジンに溶解し、0℃に冷却した。21.2gのp─トルエンスルホニル・クロライ ド(0.11mol,30equiv)を100mLのピリジンに溶かした溶液を、添加漏斗から滴 加した。溶液を0℃でさらに1時間撹拌し、室温で4日間放置した。混合物を500 mLの氷水に注入し、沈澱物がビーカーの底に凝集した後に、溶媒を傾瀉して除 いた。粗製物9gを真空下(1トル)50℃で一夜乾燥させ、次いで4:1エタノー ル/クロロホルムから再結晶させた。収量:8.16g(3.32mmol)、90%。融点:130 -133℃。 PE-Br(12)〔化合物6〕 PE-Tos(12)(8.0g,3.25mmol)を50mLのN,N─ジメチルアセトアミド (DMAc)に溶解し、次いで10.06gのNaBr(98mmol,30equiv))を加えた。生 じた懸濁液を撹拌し、150℃に加熱し、この温度でさらに1時間保った。混合物 を室温に冷却 し、氷水中に注入した。沈澱物を濾過し、真空下(1トル)に一夜乾燥させ、酢 酸エチルから再結晶させた。収量:3.40g(77%)。融点:150℃で収縮、172-1 77℃で溶融。 PE-MBO(12)〔化合物7〕 機械的撹拌器、温度計及び添加漏斗を取り付けた500mL容三口丸底フラスコ 中で、アルゴン雰囲気下に、カリウム・ハイドライド(1.6g,40mmol,35%懸濁液 として4.57g)をヘキサンで2回洗浄し、洗浄液を傾瀉して除き、100mLのDM Fを加えた。混合物を0℃に冷却し、5.76gのMHTBO〔化合物2〕(36mmol, 24equiv)を50mLのDMFに溶かした溶液を滴加した。生じた懸濁液を室温で3 時間撹拌した。このドデカブロマイド(2.05g,1.5mmol)を50℃で100mL DMF に溶解し、次いで、ただちに反応フラスコに、まだ温かい内に急速に滴加した。 混合物を加熱して24時間還流させ、次いで、約50gの塩化ナトリウムを含む氷水 中に注入した。沈澱物を濾過し、真空下(1トル)、40℃で一夜乾燥させた。粗 収量は定量的(3.45g)であった。固定層としてシリカ・ゲルを、溶離液として 1:1酢酸エチル/ヘキサン混合物を用いるカラム・クロマトグラフィーによっ て、生成物を精製した。Rf値:0.42。収量:2.9g(1.25mmol),82%。バイルシュ タイン試験によるハロゲンは陰性であった。融点:78℃で収縮し、88-90℃でゲ ル化、170℃で軟化。 PE-OH(36)〔化合物8〕 250mL容丸底フラスコに、PE-MBO(12)(4.4g,1.9mmol)、100mLのメ タノール、及び1mLの濃塩酸を入れた。混合物を加熱して、1時間還流させる 。溶液の15-20mLだけが残るまで、メタノール及び酢酸メチルを留去し、この溶 液をビーカーに移した。残りの溶媒を完全に蒸発させた後、シロップ状物を真空 下(1トル)で乾燥させて発泡体を得た。収量:3.35g(1.66mmol),88%。融点: 75℃で収縮、83-85℃でゲル化し、220-230℃で軟化した。 PE-Tos(36)〔化合物9〕 500mL容三角フラスコ中で、PE-OH(36)(4.17g,2.05mmol)を180mLの ピリジンに溶解し、0℃に冷却した。p─トルエンスルホニル・クロライド(29. 4g,0.15mol,75equiv)を200mLのピリジンに溶かした溶液を滴加した。混合物を さらに1時間0℃で撹拌し、次いで室温に7日間放置した。褐色の溶液を2Lの 氷水に注入し、沈澱物を濾過し、真空下(1トル)に40℃で一夜乾燥させた。収 量:14.36g(1.88mol)、92%。融点:120℃で収縮、220-245℃で溶融。 PE-Br(36)〔化合物10〕 250mL容三口丸底フラスコ中で、7.58g(1.0mmol)のPE-Tos(36)、8.32g(8 0mmol,80equiv)のNaBr及び100mLのDMAcを混合した。この混合物を撹拌し 、150℃に加熱し、この温度に1時間保った。次いで、混合物を室温に冷却し、 2Lの氷水中に撹拌下に注入した。沈澱物を濾過し、さらに500mLの水で洗浄し 、室温で真空下(1トル)に一夜乾燥させた。収量:4.18g,98%。融点:48℃ で収縮、52-68℃で溶融。 テトラキス[((N,N─ジメチルアミノ)エトキシ)メチル]メタン、PE- DMA(4)〔化合物11〕 機械的撹拌器、添加漏斗及び温度計を備えた500mL容三口丸底フラスコ中で 、アルゴン雰囲気下に、カリウム・ハイドライド(5.2g,0.13mol,35%懸濁液と して14.8g)をヘキサンで2回洗浄し、100mLのDMFを加えた。混合物を0℃ に冷却し、10.7g(0.12mol,6equiv)のN,N─ジメチルエタノールアミンを100m LのDMFに溶かした溶液を滴加し、室温で3時間撹拌した。7.8g(0.02mol)の ペンタエリスリチル・テトラブロマイドを100mLのDMFに溶かした溶液を滴加 した。混合物を80℃に加熱し、80-90℃で12時間反応させた。次いで温度を上げ て、さらに12時間還流させた。得られた混合物を50℃末満に冷却し、300mLの氷 水中に注入した。蒸発器上で溶媒を全て除去し、800mLのエチル・エーテルで、 残留物をいくつかの区分に抽出し、抽出液を合わせて、MgSO4上で乾燥させた 。このエーテル を蒸発させた後、粗製物を真空下(<0.1トル)に蒸留して、5.7gの油状液体の PE-DMA(4)を得た。溶離液として4:1酢酸エチル/ヘキサン混合物を用い て、Al23カラムで、この化合物をさらに澄明な液体にまで精製した。Rf値: 0.57。収量:4.66g,59%。沸点:140-143℃(0.03mmHg)。 テトラキス[((N,N,N─トリメチルアンモニウム・アイオダイド)エトキ シ)メチル]メタン、PE-TMAiodide(4)〔化合物12〕 100mL容三口フラスコ中に、アルゴン雰囲気下に、PE-DMA(4)(2.3g,5 .5mmol)と30mLのTHFを入れた。この溶液を0℃に冷却し、CH3I(9.3g,6 6mmol,12equiv,4.1mL)を20mLのTHFに溶かした溶液を滴加した。添加完了 後、混合物を室温でさらに5時間撹拌した。帯黄色の沈澱を濾過し、真空下(1 トル)に60℃で一夜乾燥させ、最後にメタノールから再結晶させた。この化合物 は、高度に吸湿性である。収量:3.84g,70%。 PE-DMA(12)〔化合物13〕 操作は、PE-DMA(4)で用いたものと同様である。アルゴン雰囲気下に、カ リウム・ハイドライド(2.8g,0.07mol,35%懸濁液として8.0g)をヘキサンで2 回洗浄し、100mLのDMFを加 えた。6mL(0.06mol,5.34g)のN,N─ジメチルエタノールアミンを50mLの DMFに溶かした溶液を0℃で滴加し、混合物を室温で3時間撹拌した。PE- Br(12)(2.72g,32mmol)を150mLのDMFに50℃で溶解し、この溶液を、まだ 温かいうちに、添加漏斗を通じて滴加した。この混合物を加熱して24時間還流さ せ、300mLの氷水中に注入した。DMF及び水を全て蒸発させた後に、800mLの エーテルで、この残留物をいくつかの区分に抽出し、MgSO4上で乾燥させた。 このエーテル溶液を濾過し、約200mLに濃縮した。300mL容三口フラスコ中で、 この溶液にHClガスを導入し、塩がそれ以上形成されなくなった時点でこの溶 媒を傾瀉して除いた。塩を無水エーテルで2回洗浄し、アルゴン下に半時間乾燥 させ、水に溶解し、pH>10に塩基性化した。得られた水溶液を回転蒸発器で乾 燥させ、残留物を500mLのエーテルで柚出し、MgSO4上で乾燥させた。エーテ ルを蒸発させた後、2.1gのかなり純粋な生成物を得た。この化合物は粘性の油 状物である。沸点:0.02トルで220℃。収量:72%。 PE-TMA iodide(12)〔化合物14〕 操作は、PE-TMA iodide(4)で用いたものと同一である。PE-DMA(1 2)(2.04g,1.4mmol)を60mLのTHFに溶解した。3.2mL(7.12g,50mmol,36equ iv)のCH3Iを20mLのTHFに溶かした溶液を0℃で滴加した。混合物を室温 でさらに3時間撹拌した。黄色の沈澱物を濾過し、真空下(1トル)に、60℃で 一夜乾燥させた。この塩はメタノールから再結晶することができず、限外濾過に よってさらに精製してからディスプレイサーとして試験した。収量:3.74g,84% 。 PE-DMA(36)〔化合物15〕 この操作は、PE-DMA(12)で用いたものと同一である。カリウム・ハイ ドライド(2.8g,0.07mmol,35%懸濁液として8.0g)をヘキサンで2回洗浄し、10 0mLのDMFを加えた。6.4mL(5.7g,64mmol,80equiv)のN,N─ジメチルエ タノールアミンを50mLのDMFに溶かした溶液を0℃で加え、混合物を室温で 3時間撹拌した。PE-Br(36)(3.43g,0.8mmol)を100mLのDMFに溶解し、 室温で滴加した。次いで混合物を加熱して24時間還流させ、200mLの氷水中に注 入した。全ての溶媒を除去した後、残留物を800mLのエーテルで抽出した。エー テル溶液中にHClガスをバブルさせることによって、このポリアミンを塩に変 換し、次いで水溶液をpH>10に塩基性化することによって遊離させた。この化 合物は非常に粘重なシロップであり、高度に吸湿性である。収量:1.86g,51%。 PE-TMA iodide(36)〔化合物16〕 操作は、PE-TMA iodide(4)及びPE-TMA(12)で用いたものと同一で ある。PE-DMA(36)(1.79g,0.39mmol)を100mL のTHFに溶解し、0℃に冷却した。4.2g(1.82mL,30mmol,75equiv)のCH3 Iを20mLのTHFに溶かした溶液を加え、この混合物を室温でさらに3時間撹 拌した。次いで沈澱物を濾過し、真空下(1トル)に60℃で一夜乾燥させた。収 量:2.8g,75%。 本発明は、その好ましい実施態様に関連して特に示し、記述されているが、 本発明の精神と範囲から逸脱することなく、形式ならびに詳細においてその他の 変更を行い得ることは、当業熟練者によって理解されることであろう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 リー,ユーフェイ 中華人民共和国、ベイジン、アカデミア シニカ、インスティチュート オブ ケミ ストリー (72)発明者 ジャヤラマン,グーハム インド国、600017、マドラス、ティー.ナ ガー、バーキット ロード エー−4 57 番地 【要約の続き】 のデンドリマー(ただし、R1は低級アルキル基てあ り、nは2ないし6であり、Xは普通の対向陰イオンで ある)ならびに、これを基盤とする類似の樹枝状ポリマ ーである。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.適当な負荷溶媒に溶かしたタンパク質をイオン交換性固定層に負荷させ、 分子量1620未満のディスプレイサーを用いる置換クロマトグラフィーによって前 記のタンパク質を前記の固定層から押し出すことを包含する、タンパク質の精製 方法。 2.前記の固定層が陽イオン交換樹脂であり、前記のディスプレイサーが陽イ オン系化合物である、請求項1に記載の方法。 3.前記のディスプレイサーがポリ(第4級アンモニウム)塩である、請求項 2に記載の方法。 4.前記のディスプレイサーが次式の化合物: (ただし、X-は、ハロゲン、サルフェート、スルホネート、パークロレート、 アセテート、ホスフェート及びナイトレートからなる群から選ばれた対向陰イオ ンである)である、請求項2に記載の方法。 5.前記の固定層が陰イオン交換樹脂であり、前記のディスプレイサーが陰イ オン系化合物である、請求項1に記載の方法。 6.前記のディスプレイサーが、アミノ酸エステル、アミノ酸アミド、N─ア シルアミノ酸、ペプチド・エステル、ペプチド・アミド及びN─アシルペプチド からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。 7.前記のディスプレイサーが、リジンの低級アルキル・エステル及びアミド 、アルギニンの低級アルキル・エステル及びアミド、Nα─アシル化リジンの低 級アルキル・エステル及びアミド、及びNα─アシル化アルギニンの低級アルキ ル・エステル及びアミド、からなる群から選ばれる、請求項6に記載の方法。 8.前記のディスプレイサーが樹枝状ポリマーである、請求項1に記載の方法 。 9.前記のディスプレイサーが陽イオン性抗生物質である、請求項1に記載の 方法。 10.前記のディスプレイサーが陰イオン性抗生物質である、請求項1に記載の 方法。 11.前記のディスプレイサーを溶媒系に溶解すること、及び前記のディスプレ イサーを下記の電解質から選択することであって、その電解質の固有電荷(ν) 及び平衡定数(K)は、縦座標(log k)、横座標(ν)の座標系を作成したと きに、縦座標軸上のA点から、ディスプレイサーのK及びνによって定まる点を 通る線が、同じA点から、精製されるべきタンパク質のK及びνによって定まる 点を通る対応線よりも大きい勾配を有し、かつ前記のA点は、その値が、このデ ィスプレイサーを溶解する前記の溶媒系におけるディスプレイサー操作線の勾配 (Δ)に相当するものである、請求項1に記載の方法。 12.適当な負荷溶媒に溶かしたタンパク質をイオン交換性固定層に負荷させ、 樹枝状高分子電解質ディスプレイサーを用いる置換クロマトグラフィーによって 、前記タンパク質を固定層から押し出すことを包含する、タンパク質の精製方法 。 13.前記の固定層が陽イオン交換樹脂であり、かつ前記の高分子電解質ディス プレイサーがポリカチオンである、請求項12に記載の方法。 14.前記の高分子電解質ディスプレイサーがポリ(第4級アンモニウム)塩で ある、請求項13に記載の方法。 15.前記のディスプレイサーが次式の化合物: (ただし、X-はハロゲン、サルフェート、スルホネート、パークロレート、ア セテート、ホスフェート及びナイトレートからなる群から選ばれる対向陰イオン である)である、請求項14に記載の方法。 16.次式: (ただし、R1は低級アルキル基であり、nは2ないし6であり、Xはハロゲン 、サルフェート、スルホネート、パークロレート、アセテート、ホスフェート又 はナイトレートである)の化合物。 17.次式: (ただし、Rは、-(CH2)n-N(R1)3 +-であり、R1は低級アルキル基であり 、nは2ないし6であり、Xはハロゲン、サルフェート、スルホネート、パーク ロレート、アセテート、ホスフェート又はナイトレートである)の化合物。
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