JPH0952539A - 車両の四輪駆動制御装置 - Google Patents

車両の四輪駆動制御装置

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JPH0952539A
JPH0952539A JP20619495A JP20619495A JPH0952539A JP H0952539 A JPH0952539 A JP H0952539A JP 20619495 A JP20619495 A JP 20619495A JP 20619495 A JP20619495 A JP 20619495A JP H0952539 A JPH0952539 A JP H0952539A
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JP
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front wheel
wheel
driving force
speed
drive
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JP20619495A
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Kazuyuki Kono
和之 河野
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Nissan Motor Co Ltd
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】副駆動輪への駆動力が大きい状態からの旋回走
行への移行時にタイトコーナブレーキ現象の発生を抑制
し、副駆動輪への駆動力が小さく変動し続ける駆動力配
分制御のハンチングを防止する。 【構成】主駆動輪である後輪速VwR と副駆動輪である
前輪速VwF との前後輪速差ΔVw,スロットル開度
θ,ブレーキ信号SBRK ,作動流体温T等に応じた基準
前輪(副駆動輪)配分トルクTq0 が減少するときの変
化速度Tq' を、実際に前輪に伝達されている目標前輪
配分トルクの前回値Tq* (n-1) が大きいときには最小
変化速度(−Tq' MAX )として旋回走行への移行時に
副駆動輪側への駆動力配分量の減少を早め、目標前輪配
分トルクの前回値Tq* (n-1) が小さいときには変化速
度Tq' を小さな所定値Tq' 1 とすることで制御の収
束性を速めてハンチングを防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の前後輪に生
じる回転数差に応じて摩擦クラッチの締結力を制御して
前後輪間の駆動力配分を制御するようにした車両の四輪
駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の車両の四輪駆動制御装置として
は、例えば前後輪のうち何れか一方を主駆動輪とし、他
方を副駆動輪に設定して、通常時にはエンジンからの出
力全部或いはその大半を主駆動輪への駆動力(厳密には
車輪に伝達されるのは駆動トルクであって、実際にタイ
ヤが路面を蹴って車両を移動させる駆動力とは異なる
が、ここでは駆動トルクを含めて車両を移動させる力を
駆動力と総称する)として伝達し、主駆動輪への駆動力
が過多となる状況で副駆動輪に駆動力を配分するものが
ある。そこで、主駆動輪への主推進軸と副駆動輪への副
推進軸との間に摩擦クラッチを介装し(正確には変速機
の出力軸と副推進軸との間である)、前記主駆動輪と副
駆動輪との回転数差から当該主駆動輪への駆動力過多状
況を検出し、この回転数差が大きいほど当該主駆動輪へ
の駆動力が過多であることから、当該回転数差検出値が
増加すると共に副駆動輪への駆動力が増加するように主
−副駆動輪間の駆動力配分量を設定し、この場合は変速
機出力軸と副推進軸との間に摩擦クラッチが介装されて
いるから、前記駆動力配分量の副駆動輪への駆動力が増
加するにつれて摩擦クラッチの係合力を増加するように
している。
【0003】一方、この四輪駆動制御装置の制御量の出
力端は摩擦クラッチであるから、前記主副駆動輪間の回
転数差検出から摩擦クラッチまでを制御系と考えると、
前述のように主副駆動輪の回転数差を検出してから摩擦
クラッチ駆動までの制御系内の応答性を高めても、副推
進軸や副駆動輪等の回転慣性に抗してエンジンの出力が
駆動輪に伝達されるまでには相応の応答遅れがあり、更
に副駆動輪のタイヤが路面を蹴って回転するまでにも応
答遅れがあるから、この副駆動輪の回転数と主駆動輪の
回転数の差をフィードバックする前記制御系では、特に
発進時等で最も主駆動輪のスリップが発生し易い状況下
での応答遅れが大きくなる。そこで、このような車両発
進時には、主駆動輪のスリップが発生し易い状況を予め
アクセルペダルの踏込み量(以下、スロットル開度とも
記す)等によって検出し、主駆動輪のスリップが発生或
いは増加する以前に、当該発進時においてスロットル開
度が大きくなるほど、副駆動輪に伝達される駆動力が大
きくなるように主−副駆動輪間の駆動力配分量を設定す
る,所謂駆動力配分フィードフォワード制御も提案され
ている。ちなみに、この発進時フィードフォワード制御
は発進から車速が所定の閾値を越えるまでの間に実行さ
れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記従来の
四輪駆動制御装置を備えた車両が、前記発進時フィード
フォワード制御の車速閾値よりも速い車速,即ち前記主
−副駆動輪間の回転数差による駆動力配分フィードバッ
ク制御が実行される状況下において、一定の加速度で比
較的路面摩擦係数状態(以下、単にμとも記す)が高
い,所謂高μ路面を安定走行している状態から、路面μ
の低い,所謂低μ路面に移行した場合について考察する
と、先に高μ路面で車両を安定して推進するに足る駆動
力を発生していた主駆動輪の駆動力は、低μ路面では大
き過ぎるために、当該主駆動輪の回転数が大幅に急増す
る。もっとも、こうした安定走行中に、高μ路面から低
μ路面に移行して発生する主駆動輪の回転数増加量は、
前記駆動力配分フィードフォワード制御のない低μ路面
で発生するものよりも確実に小さい。この主駆動輪の回
転数の増加に伴って前記主−副駆動輪間の回転数差が大
幅に増加するから、設定される駆動力配分量の副駆動輪
側への駆動力も大幅に増加し、その結果、前記摩擦クラ
ッチの係合力も大幅に大きくなる。しかしながら、この
摩擦クラッチの係合から遅れて副駆動輪の回転数が増加
することになり、これに先んじて主駆動輪の回転数が減
少することになるから、両者の回転数差は主駆動輪の回
転数が極小となる以前に大幅に減少して極小となり、こ
れに伴って摩擦クラッチの係合力が大幅に小さくなる
と、今度は主駆動輪の回転数が副駆動輪の回転数増加に
先んじて大幅に増加することから、主−副駆動輪間の回
転数差が大幅に増加して設定される駆動力配分量の副駆
動輪側への駆動力も大幅に増加し、その結果、前記摩擦
クラッチの係合力も大幅に大きくなるといった制御のハ
ンチングが発生し、この間、摩擦クラッチの係合力が大
きく増減して振動が発生する虞れがある。この傾向は、
前記発進時の駆動力フィードフォワード制御のない四輪
駆動制御装置にあっては、その発進時においてより顕著
なものとなることが想定される。
【0005】このような問題を解決するためには、前記
主−副駆動輪間の回転数差に応じた駆動力配分量の変化
速度を、前記副駆動輪への駆動系の応答遅れに合わせて
小さく抑制すればよい。即ち、例えば副駆動輪側への駆
動力が小さくなるように駆動力配分量が変化するとき
に、当該駆動力配分量の変化速度を小さく抑えてフィル
タリングすれば、これより遅れて発生する前記副駆動輪
の回転数の極小値とそれより早い主駆動輪の回転数の極
小値とを接近させることができ、これを繰り返して制御
量である摩擦クラッチ係合力、即ち主−副駆動輪間の回
転数差を或る値に収束させることができよう。しかしな
がら、このように副駆動輪への駆動力配分量の減少速度
を小さく抑制してしまうと、例えば発進時にアクセルペ
ダルを大きく踏込み過ぎてしまったために、前記発進時
フィードフォワード制御によって副駆動輪への駆動力
(配分量)が大幅に増加されており、やがて車速が前記
閾値を越えて通常のフィードバック制御に移行し、その
直後に車両を小旋回させるためにアクセルペダルを足放
ししたような場合には、旋回走行に移行するまでの間に
副駆動輪への駆動力(配分量)が十分に減少せず、その
まま小旋回走行に移行してしまうと前後輪間で発生する
回転速差が吸収できずに、所謂タイトコーナブレーキ現
象(前後輪間の回転速差がインタロックとなって制動さ
れてしまう現象)が発生する可能性がある。
【0006】つまり、副駆動輪への駆動力(配分量)の
減少速度を小さく設定してしまうと、当該副駆動輪への
駆動力(配分量)が大きいときにタイトコーナブレーキ
現象,即ち強アンダステアが発生し易くなり、逆に副駆
動輪への駆動力(配分量)の減少速度が大き過ぎると、
当該副駆動輪への駆動力(配分量)が比較的小さいと
き、より具体的には通常の走行時におけるμ変化に応じ
た駆動力配分制御時等で制御のハンチングが発生し易く
なるという二律相反する問題がある。
【0007】本発明は前記諸問題に鑑みて開発されたも
のであり、主副駆動輪間の回転数差に応じた駆動力配分
フィードバック制御において、制御のハンチングとタイ
トコーナブレーキ現象とを同時に解決することができる
車両の四輪駆動制御装置を提供することを目的とするも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段】而して本発明の車両の四
輪駆動制御装置は、車両の前後輪の何れか一方を主駆動
輪とし、他方を副駆動輪として、制御信号に応じた係合
力の可変制御によって前記主駆動輪及び副駆動輪への駆
動力配分を行う摩擦クラッチを有する駆動力配分調整手
段と、前記主駆動輪及び副駆動輪の回転数差を検出する
回転数差検出手段と、少なくとも前記回転数差検出手段
の回転数差検出値に基づいて、当該回転数差検出値の増
加に伴って前記副駆動輪側の駆動力が増加するように前
記主副駆動輪間の駆動力配分量を設定し、当該駆動力配
分量に基づいて前記摩擦クラッチを制御する駆動力配分
制御手段とを備えた車両の四輪駆動制御装置において、
前記駆動力配分制御手段は、前記駆動力配分量が変化す
るときの変化速度を、当該駆動力配分量に応じて変更設
定する変化速度設定手段を備え、前記変化速度設定手段
が、前記駆動力配分量が前記副駆動輪側の駆動力を小さ
くする方向に変化するときに、当該駆動力配分量の変化
速度を変更設定することとし、前記副駆動輪側の駆動力
が大きいときに前記駆動力配分量の変化速度を大きく設
定し、当該副駆動輪側の駆動力が小さいときに駆動力配
分量の変化速度を小さく設定することを特徴とするもの
である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の車両の四輪駆動制御装置
では、前記従来と同様に前後輪の何れか一方の主駆動輪
と他方の副駆動輪との間、より具体的には例えば変速機
出力軸と主駆動輪とは直結状態に接続し、例えば当該変
速機出力軸と副駆動輪との間に摩擦クラッチを有する駆
動力配分調整手段を介装する。この駆動力配分調整手段
は、例えば摩擦クラッチへの制御信号を可変することに
よって当該摩擦クラッチの係合力が調整され、これによ
り主駆動輪に伝達される駆動力と副駆動輪に伝達される
駆動力との駆動力配分量が調整されるように構成する。
そして、車輪速センサ等により主駆動輪の回転数と副駆
動輪の回転数との回転数差を前記回転数差検出手段とし
て検出し、少なくともこの回転数差が大きい場合には、
車体速と等価又はほぼ等価な副駆動輪の回転数に対して
主駆動輪がスリップするなどして回転数が増加している
状態であって、当該主駆動輪への駆動力が大き過ぎるた
めであるから、当該回転数差の増加に応じて副駆動輪へ
の駆動力が増加するように、マイクロコンピュータ等の
演算処理装置を用いて当該回転数差に応じた駆動力配分
量を設定する。そして、前記駆動力配分制御装置は、こ
のように設定された主副駆動輪間の駆動力配分量を達成
するために、前記駆動力配分調整手段への制御信号を形
成出力し、これによって前記摩擦クラッチによる係合力
が前記所定の駆動力配分量を満足するように制御して、
前記主駆動輪のスリップなどによる回転数増加を抑制す
る。ここで、本発明の車両の四輪駆動制御装置では、前
記駆動力配分量が変化するときの変化速度を、前記駆動
力配分量が前記副駆動輪側の駆動力を小さくする方向に
変化するときに変更設定することとし、前記副駆動輪側
の駆動力が大きいときに前記駆動力配分量の変化速度を
大きく設定すれば、このように大きな駆動力が副駆動輪
に伝達されているのは例えば大きな主駆動輪のスリップ
に応じたものであり、このような副駆動輪への大きな駆
動力も、例えば旋回走行への移行に備えてアクセルペダ
ルを足放しすると速やかに減少するから、この状態で旋
回走行に移行しても前後輪はその回転数差を吸収してタ
イトコーナブレーキ現象の発生が回避され、また当該副
駆動輪側の駆動力が小さいときに駆動力配分量の変化速
度を小さく設定すれば、通常走行時に路面μ変動等によ
って発生する主駆動輪の回転数の増減に応じた副駆動輪
への駆動力が、当該副区動輪への駆動系の応答遅れによ
って主駆動輪の回転数の増減から大きくずれてしまうの
を抑制し、最終的に駆動力配分制御がハンチングしてし
まうのを抑制防止することができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の車両の四輪駆動制御装置の実
施例を添付図面に基づいて説明する。この実施例は、F
R(フロントエンジン・リアドライブ)方式をベースに
した四輪駆動車両用駆動力配分制御装置のトランスファ
クラッチに適用したものである。
【0011】図1において1は回転駆動源,即ち機関と
してのエンジン、2FL〜2RRは前左輪〜後右輪、3
は各車輪2FL〜2RRへの駆動力配分比を変更制御可
能な駆動力伝達系、4は駆動力伝達系3による駆動力配
分を制御する駆動力配分制御装置を示す。前記駆動力伝
達系3は、エンジン1からの駆動力を断続する図示され
ないクラッチと、このクラッチの出力を選択された歯車
比で変速する変速機12と、この変速機12からの駆動
力を前輪(副駆動輪)2FL,2FR側及び後輪(主駆
動輪)2RL,2RRに分割するトランスファ14とを
備えている。そして、駆動力伝達系3では、前記トラン
スファ14で分割された前輪側駆動力が前輪側出力軸1
6,フロントディファレンシャルギヤ18及び前輪側ド
ライブシャフト20を介して、前輪2FL,2FRに伝
達される。一方、後輪側駆動力がプロペラシャフト(後
輪側出力軸)22,リヤディファレンシャルギヤ24及
び後輪側ドライブシャフト26を介して、後輪2RL,
2RRに伝達される。
【0012】前記トランスファ14は、図2に示すよう
にトランスファケース28内に挿通された入力軸30の
同図の左方端部が前記変速機12の出力側に連結され、
この入力軸30はベアリング31等によって回転自在に
軸支されている。また、入力軸30の図2における右方
端部は,ベアリング32によって回転自在に軸支された
出力軸33に結合され、この出力軸33がプロペラシャ
フト22に連結されている。なお、このトランスファ及
び後述するトランスファクラッチの詳細な構造について
は,例えば本出願人が先に提案した特開平1−2048
26号公報を参照されたい。
【0013】一方、前記入力軸30の中央部には、前後
輪に対するトルク配分比を変更できる可変トルククラッ
チとしての流体式多板クラッチ機構37が設けられてい
る。このクラッチ機構37は、入力軸30にスプライン
結合されたクラッチドラム37aと、このクラッチドラ
ム37aに回転方向に係合させたフリクションプレート
37bと、前記入力軸30の外周部にニードルベアリン
グ等を介して回転自在に軸支されたクラッチハブ37c
と、このクラッチハブ37cに回転方向に係合させたフ
リクションディスク37dと、クラッチ機構37の図2
における右方に配置されたクラッチピストン37eと、
このクラッチピストン37eとクラッチドラム37aと
の間に形成されたシリンダ室37fとを備えている。ま
た、このクラッチ機構37において、37hはクラッチ
ピストンプレート37eに対するリターンスプリングで
ある。また、このクラッチ機構37は、図2の左方端部
側に図示のように装着されたギヤトレインを介して前輪
側にも連結されている。即ち、ここでは前記クラッチハ
ブ37cは、第1のギヤ41aにスプライン結合され、
この第1のギヤ41aは、ベアリング40a,40bに
よって回転自在な第2のギヤ41bに噛合され、この第
2のギヤ41bは、ベアリング42,43によって回転
自在な第3のギヤ41cを介して前述した前輪側出力軸
16に連結されている。
【0014】前記トランスファケース28の側面所定位
置には、後述するクラッチ制御装置の一部を構成する圧
力制御弁66からの作動流体圧が,制御力として供給さ
れる入力ポートが形成されており、この入力ポートから
前記シリンダ室37fに当該作動流体圧が供給される。
このため、前記入力ポートに作動流体圧の供給がない状
態,即ちクラッチ機構37のシリンダ室37fの圧力が
大気圧若しくはほぼ大気圧に等しい状態では、リターン
スプリング37hの弾性力により、前記フリクションプ
レート37bとフリクションディスク37dとが離間し
ている。従って、この状態では入力軸30に伝達された
入力トルクの全部が出力軸33、プロペラシャフト22
を介して後輪側に伝達され、当該後輪側のみの二輪駆動
状態となる。一方、入力ポートに作動流体圧が供給され
ている状態では,そのシリンダ室37fの加圧程度に応
じてクラッチピストン37eによる押圧力が発生し、こ
れに対してフリクションプレート37bとフリクション
ディスク37dとの間に摩擦力による係合力(締結力)
が発生し、これにより全駆動トルクのうちの一部が出力
軸16を介して前輪側にも伝達される。この前輪側への
伝達トルクΔTは供給作動流体圧Pに対して下記1式で
与えられるように供給作動流体圧Pに対してリニアに増
加する。
【0015】 ΔT=P・S・2n・μ・rm ……… (1) ここで、Sはピストン37eの圧力作用面積,nはフリ
クションディスク枚数,μはクラッチ板の摩擦係数,r
m はフリクションディスクのトルク伝達有効半径であ
る。つまり前輪側への伝達トルクΔTは供給流体圧Pに
比例し、結局,締結力に応じて駆動トルクが後輪側及び
前輪側に配分伝達される。この前後輪に対するトルクの
配分比は、前記入力ポートに供給する作動流体の圧力P
に応じて(0:100〜50:50まで)連続的に変更
できる。
【0016】一方、図1に戻って前記駆動力配分制御装
置4は、前記トランスファ14と、リザーバ35b内の
作動流体を加圧供給する流体圧力源35と、この流体圧
力源35からの供給流体圧を可変制御して前記流体式多
板クラッチ機構37の入力ポートに作動流体を供給する
圧力制御弁50と、前輪速VwF を検出する前輪速セン
サ54及び後輪速VwR を検出する後輪速センサ56
と、アクセルペダル49の踏込み量からスロットル開度
θを検出するスロットル開度センサ48と、各輪への駆
動力配分を選択できるようにしたモードセレクトスイッ
チ52と、セレクトレバーによって選択されたギヤ位置
が,所謂ニュートラル位置であることを検出するニュー
トラルスイッチ54と、ブレーキペダル55の踏込み量
からブレーキペダルが踏込まれていることを検出するブ
レーキスイッチ57と、前記リザーバ35b内の作動流
体温Tを検出する流体温センサ51と、これらのセンサ
からの検出信号に基づいて前記圧力制御弁50の出力流
体圧を制御するコントロールユニット58とを備えてな
る。
【0017】前記流体圧力源35は、図2に示すように
電動モータ35aによって回転駆動され,リザーバ35
b内の作動流体を昇圧して前記クラッチ機構37の入力
ポートに供給するポンプ35cと、このポンプ35cの
吐出側に介装された逆止弁35dと、この逆止弁35d
及び前記入力ポート間の管路に接続されたアキュームレ
ータ35eと、このアキュームレータ35eの接続点に
接続されたリリーフ弁35kとを備え、このアキューム
レータ35eの接続点及びクラッチ機構37の入力ポー
ト間からリザーバ62に分岐されたドレン配管63に前
記圧力制御弁50が介装されている。
【0018】ここで、電動モータ35aは、その励磁巻
線の一端がモータリレー35hを介して正のバッテリ電
源Bに接続され,他端が接地されており、モータリレー
35hがアーキュームレータ35e及び圧力制御弁50
間の管路のライン圧力を検出して作動する圧力スイッチ
35iの検出値に基づいて駆動制御される。即ち、スイ
ッチングレギュレータをなすトランジスタ35jのベー
スが抵抗器R1 及び圧力スイッチ35iを介して正のバ
ッテリ電源Bに接続され,コレクタがモータリレー35
hのリレーコイルを介して正のバッテリ電源Bに接続さ
れ,エミッタが接地されているために、アキュームレー
タ35e及び圧力制御弁50間の管路のライン圧力が所
定設定圧力以上のときには,圧力スイッチ35iがオフ
状態となり、スイッチングトランジスタ35jもオフ状
態となって,モータリレー35hの常開接点tが開いて
電動モータ35aが非通電状態となり、これに応じて電
動モータ35aが回転停止状態となると共に、当該ライ
ン圧力としての所定設定圧力以上の作動流体圧力はリリ
ーフ弁35kを介してリリーフされる。一方、アキュー
ムレータ35e及び圧力制御弁50間の管路のライン圧
力が所定設定圧力未満のときには,圧力スイッチ35i
がオン状態となり、これに応じてスイッチングトランジ
スタ35jもオン状態となってモータリレー35hが付
勢されて,その常開接点tが閉じて電動モータ35aが
回転駆動されることにより、オイルポンプ35cによっ
て当該管路のライン圧力が昇圧される。以上によって本
流体圧力源35からは圧力制御弁50の一次側に向けて
ほぼ安定した作動流体圧が供給される。
【0019】前記圧力制御弁50は、所謂デューティ比
制御型の常時開減圧弁で構成されており、前述のように
ポンプ35cの吐出側から入力ポートへの管路に接続さ
れたドレン配管63に介装されている。この圧力制御弁
50は、所謂PWM(PulseWidth Modulation)制御に
よって、そのソレノイド50aに供給されるディーティ
比に応じた電圧信号VD/T に応じて当該減圧弁内に配設
されたスプールの開度が定まり、これにより電圧信号V
D/T のデューティ比が大きくなると当該減圧弁の一次
側,即ちクラッチ機構37側の制御圧PC が高くなる。
ここで、クラッチ機構37側の制御圧PC は当該クラッ
チ機構37の係合力とリニアであり、当該クラッチ機構
37の係合力は前輪側に伝達される駆動力とリニアであ
るため、このPWM制御によって達成される前輪側への
駆動力配分量(例えば0〜115kgm=全駆動力の半
分)Tqは、前記デューティ比D/Tに対して図3に示
すように二次曲線的に単純増加するようになっている。
【0020】一方、前記前輪速センサ54及び後輪速セ
ンサ56は、前記前輪側出力軸16及び後輪側のプロペ
ラシャフト22の所定位置に個別に装備され、各軸の回
転数を光学方式又は電磁方式で検知して、これに応じた
パルス信号又は正弦波信号による前後輪速VwF ,Vw
R を個別にコントロールユニット58に出力するように
構成されている。また、前記モードセレクトスイッチ5
2は、例えばインストゥルメントパネル等の運転席近傍
に設けられており、例えば主駆動輪である後輪のみに駆
動力が伝達される二輪走行状態を希望するために運転者
が二輪走行モードを当該モードセレクトスイッチ52上
で選択すると、論理値“1”のON状態である二輪走行
モードセレクト信号S2 が出力され、副駆動輪である前
輪にも後輪と同等の駆動力が付与される,即ち前後輪間
の駆動力配分量が50:50である四輪直結走行状態を
希望するために四輪直結走行モードを選択すると、論理
値“1”のON状態である四輪直結走行モードセレクト
信号S4Rが出力され、前記二輪走行状態と四輪直結走行
状態状態との間で車両の走行状態或いは運転者による操
作入力状態に応じた駆動力配分量が自動的に制御された
四輪自動走行状態を希望するために四輪自動走行モード
を選択すると、論理値“1”のON状態である四輪自動
走行モードセレクト信号S4Aが出力され、夫々論理値
“1”のON状態であるモードセレクト信号が出力され
ているときには、論理値“0”のOFF状態を示すその
他のモードセレクト信号が出力されるように構成されて
いる。また、前記ニュートラルスイッチ53は、セレク
トレバーによって選択されたギヤ位置が所謂ニュートラ
ルであるときに論理値“1”のON状態を示すニュート
ラル信号が出力され、その他のギヤ位置では論理値
“0”のOFF状態となるように構成されている。ま
た、前記スロットル開度センサ48は,アクセル操作量
として得られるスロットルの開度を検出するためにポジ
ショナ等で構成されており、具体的にアクセル操作量が
“0”であるとき,即ちアクセルペダルの踏込みがない
ときのスロットル開度を0%とし、アクセルペダルを限
界まで踏込んだときのスロットル開度を100%とし
て、その間で当該アクセルペダルの踏込み量に応じて次
第に増加する電圧出力からなるスロットル開度θをコン
トロールユニット58に出力する。また、前記ブレーキ
スイッチ48は、所謂ブレーキランプ点灯のために設け
られているスイッチを兼用し、ブレーキペダル47の踏
込みでON状態を示す論理値“1”,ブレーキペダル4
7の足放しでOFF状態を示す論理値“0”のブレーキ
信号SBRK を出力する。
【0021】前記コントロールユニット58はマイクロ
コンピュータ70と、前記圧力制御弁50を駆動する駆
動回路59とを備えている。また、マイクロコンピュー
タ70は前記各センサからの検出信号を各検出値として
読込むためのA/D変換機能を有する入力インタフェー
ス回路70aと、演算処理装置70bと、ROM,RA
M等の記憶装置70cと、前記演算処理装置70bで得
られたクラッチ係合力制御信号ST を出力するためのD
/A変換機能を有する出力インタフェース回路70dと
を備えている。このコントロールユニット58のマイク
ロコンピュータ70では、後段に詳述する図4の演算処
理に従って,前記前後輪速VwF ,Vw R の偏差ΔVw
から第1前輪配分トルクTq1 を算出し、前記流体温T
から第2前輪配分トルクTq2 を算出し、前記スロット
ル開度θから第3前輪配分トルクTq3 を算出し、更に
ブレーキ信号SBRK から第4前輪配分トルクTq4 を算
出し、これらのうちの最大値と前記モードセレクト信号
4A,S4R,S2 及びニュートラル信号SN とから基準
前輪配分トルクTq0 を設定し、この基準前輪配分トル
クTq0 が目標前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1)
下である場合にはその変化速度Tq' を可変設定し、そ
うでない場合には当該前輪配分トルク変化速度Tq' を
最大値Tq' MAX に設定し、このような前輪配分トルク
変化速度Tq' の時間積分値が前記基準前輪配分トルク
Tq0 をオーバシュートしないようにしながら、当該前
輪配分トルク変化速度Tq' の時間積分値を用いて目標
前輪配分トルクの今回値Tq* (n) を制御信号ST とし
て駆動回路59に向けて算出出力する。
【0022】前記駆動回路59は、前記マイクロコンピ
ュータ70から出力される制御信号ST としての目標前
輪配分トルクの今回値Tq* (n) が達成されるように、
前記図3の特性曲線に従って圧力制御弁50のソレノイ
ド50aのデューティ比D/Tを設定し、このデューテ
ィ比D/Tをなす駆動信号としての指令電圧信号VD/ T
を出力するために、例えば基準波発生回路やコンパレー
タ等を含む所謂PWM駆動回路で構成されている。
【0023】次に、本実施例のコントロールユニット内
で行われる演算処理について図4のフローチャートを用
いて説明する。この演算処理は、前記マイクロコンピュ
ータ内で所定サンプリング時間ΔT(例えば10msec)
毎のタイマ割込処理として実行される。なお、このフロ
ーチャートでは、特に通信のためのステップを設けてい
ないが、演算処理に必要なマップやプログラム,或いは
所定の演算式等は前記記憶装置70cのROMから随時
読込まれ、また演算により得られた算出値や各情報値は
随時記憶装置70cのRAMに記憶されるものとする。
【0024】この演算処理では、まず、ステップS1
で、前記前輪速センサ54からの前輪速VwF 及び後輪
速センサ56からの後輪速VwR を読込む。次にステッ
プS2に移行して、前記流体温センサ51からの流体温
Tを読込む。次にステップS3に移行して、前記スロッ
トル開度センサ48からのスロットル開度θを読込む。
【0025】次にステップS4に移行して、前記モード
セレクトスイッチ52からのモードセレクト信号S4A
4R,S2 及び前記ニュートラルスイッチ53からのニ
ュートラル信号SN を読込む。次にステップS5に移行
して、前記ブレーキスイッチ57からのブレーキ信号S
BRK を読込む。
【0026】次にステップS6に移行して、前記ステッ
プS1で読込まれた前輪速VwF 及び後輪速VwR を用
いて、下記2式に従って前後輪速差ΔVwを算出する。 ΔVw=VwR −VwF ……… (2) 次にステップS7に移行して、前記ステップS6で算出
された前後輪速差ΔVwを用いて、図5に示す制御マッ
プから第1前輪配分トルクTq1 を算出設定する。この
図5の制御マップでは、前後輪速差ΔVwが正値で且つ
所定閾値(+ΔVw1 )以上の領域では、第1前輪配分
トルクTq1 は比較的大きな所定値Tq 11(例えば11
5kgmであり、具体的には前後輪駆動力配分量が5
0:50となる最大配分量)に保持され、この正値の所
定閾値(+ΔVw1 )から“0”までの領域では前後輪
速差ΔVwの増加に伴って第1前輪配分トルクTq1
リニアに増加し、一方、当該前後輪速差ΔVwが負値で
あり場合には、当該ΔVwが“0”から負値の第1所定
閾値(−ΔVw1 )までは第1前輪配分トルクTq1
“0”となる不感帯が設定され、一方、前後輪速差ΔV
wが、この第1所定閾値(−ΔVw1 )より小さい負値
の第2所定閾値(−ΔVw2 )以下では、第1前輪配分
トルクTq1 は比較的小さな所定値Tq12(例えば50
kgm程度)に保持され、この負値の第2所定閾値(−
ΔVw2 )から“0”までの領域では前後輪速差ΔVw
の減少に伴って第1前輪配分トルクTq1 がリニアに増
加されるようになっている。
【0027】次にステップS8に移行して、前記ステッ
プS2で読込まれた流体温Tを用いて、図6に示す制御
マップから第2前輪配分トルクTq2 を算出設定する。
この図6の制御マップでは、流体温Tが“0℃”より低
い所定閾値T1 (例えば−10℃)以上の通常作動温度
領域では、第2前輪配分トルクTq2 は小さな所定値T
20(例えば2〜4kgm)に維持され、流体温Tが前
記所定閾値T1 より低い寒冷作動温度領域では、大きな
所定値(例えば60kgm程度)に維持されるようにな
っている。
【0028】次にステップS9に移行して、車体速と等
価又はほぼ等価と考えられる前記ステップS1で読込ま
れた前輪速(副駆動輪速)VwF が、予め設定された所
定車体速VC0(例えば20km/h)以下であるか否か
を判定し、当該前輪速VwFが所定車体速VC0以下であ
る場合にはステップS10に移行し、そうでない場合に
はステップS11に移行する。
【0029】前記ステップS10では、前記ステップS
3で読込まれたスロットル開度θを用いて、図7に示す
制御マップから第3前輪配分トルクTq3 を算出設定し
てからステップS12に移行する。この図7の制御マッ
プでは、スロットル開度θの増加に伴って、第3前輪配
分トルクTq3 がリニアに増加するようになっている。
なお、アクセルペダルの踏込み直後よりもやや大きなス
ロットル開度θ1 で、同図7の制御マップで競っていさ
れる第3前輪配分トルクTq3 は、前記図6に示す制御
マップにおける第2前輪配分トルクTq2 の小さな所定
値Tq20より大きくなるようになっている。
【0030】一方、前記ステップS11では、前記第3
前輪配分トルクTq3 を“0”に設定してから前記ステ
ップS12に移行する。前記ステップS12では、前記
ステップS5で読込まれたブレーキ信号SBRKが“1”
のON状態であるか否かを判定し、当該ブレーキ信号S
BRK が“1”のON状態である場合にはステップS13
に移行し、そうでない場合にはステップS14に移行す
る。
【0031】前記ステップS13では、車体速と等価又
はほぼ等価な前輪速(副駆動輪速)VwF が停車状態を
示す“0”であるか否かを判定し、当該前輪速VwF
“0”である場合にはステップS15に移行し、そうで
ない場合には前記ステップS14に移行する。前記ステ
ップS15では、第4前輪配分トルクTq4 を、前記図
6の制御マップによる第2前輪配分トルクTq2 の小さ
な初手値Tq20よりも大きな所定値Tq41(例えば30
kgm)に設定してからステップS16に移行する。
【0032】一方、前記ステップS14では、前記第4
前輪配分トルクTq4 を“0”に設定してから前記ステ
ップS16に移行する。前記ステップS16では、前記
ステップS7で設定された第1前輪配分トルクTq1
びステップS8で設定された第2前輪配分トルクTq2
及びステップS10又はステップS11で設定された第
3前輪配分トルクTq3 及びステップS14又はステッ
プS15で設定された第4前輪配分トルクTq4 のうち
の最大値を下記3式に従って選出して、それを基準前輪
配分トルクTq0 として算出設定する。
【0033】 Tq0 =MAX(Tq1 ,Tq2 ,Tq3 ,Tq4 ) ……… (3) 但し、式中、MAXは最大値選出を示す。次にステップ
S17に移行して、前記四輪直結走行モードセレクト信
号S4Rが論理値“1”のON状態であるか否かを判定
し、当該四輪直結走行モードセレクト信号S4RがON状
態である場合にはステップS18に移行し、そうでない
場合にはステップS19に移行する。
【0034】前記ステップS19では、前記四輪自動走
行モードセレクト信号S4Aが論理値“1”のON状態で
あるか否かを判定し、当該四輪自動走行モードセレクト
信号S4AがON状態である場合にはステップS20に移
行し、そうでない場合にはステップS21に移行する。
前記ステップS21では、前記二輪走行モードセレクト
信号S2 が論理値“1”のON状態であるか否かを判定
し、当該二輪走行モードセレクト信号S2 がON状態で
ある場合にはステップS22に移行し、そうでない場合
には前記ステップS21に移行する。
【0035】前記ステップS18では、基準前輪配分ト
ルクTq0 を前輪配分トルク最大値Tq0MAXに設定して
からステップS23に移行する。また、前記ステップS
20では、前記ステップS16で算出された基準前輪配
分トルクTq0 をそのまま基準前輪配分トルクTq0
設定してから前記ステップS23に移行する。
【0036】また、前記ステップS22では、基準前輪
配分トルクTq0 を“0”に設定してから前記ステップ
S23に移行する。前記ステップS23では、前記ニュ
ートラル信号SN が“1”のON状態であるか否かを判
定し、当該ニュートラル信号SN がON状態である場合
にはステップS24に移行し、そうでない場合にはステ
ップS25に移行する。
【0037】そして、前記ステップS24では、前記基
準前輪配分トルクTq0 を“0”に設定してからステッ
プS26に移行する。また、前記ステップS25では、
前記ステップS22までで設定された基準前輪配分トル
クTq0 をそのまま基準前輪配分トルクTq0 に設定し
てから前記ステップS26に移行する。前記ステップS
26では、前記ステップS25までで設定された基準前
輪配分トルクTq0 が、前記記憶装置70cに更新記憶
されている目標前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1)
下であるか否かを判定し、当該基準前輪配分トルクTq
0 が目標前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1) 以下であ
る場合にはステップS27に移行し、そうでない場合に
はステップS28に移行する。
【0038】前記ステップS27では、前記目標前輪配
分トルクの前回値Tq* (n-1) ,即ち現在前輪に配分さ
れている駆動トルクを用いて、図8の制御マップに従っ
て前輪配分トルク変化速度Tq' を算出してからステッ
プS29に移行する。この図8の制御マップでは、目標
前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1) が“0”から比較
的小さい第1所定閾値Tq* 1 (例えば20kgm)ま
での領域では前輪配分トルク変化速度Tq' は比較的小
さい第1所定値Tq'1(例えば−15kgm/s)に維
持され、目標前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1) が前
記第1所定閾値Tq* 1 よりも大きい第2所定閾値Tq
* 2 (例えば25kgm)以上の領域では前輪配分トル
ク変化速度Tq' は比較的大きい第2所定値Tq'2(例
えば−120kgm/sであり、最小前輪配分トルク変
化速度(−Tq' MAX ))に維持され、目標前輪配分ト
ルクの前回値Tq* (n-1) が前記第1所定閾値Tq* 1
から第2所定閾値Tq* 2 までの領域では、目標前輪配
分トルクの前回値Tq* (n -1) の増加に伴って前輪配分
トルク変化速度Tq' はリニアに増加設定されるように
なっている。なお、前記目標前輪配分トルクの前回値T
* (n-1) の第2所定閾値Tq* 2 は、所謂低μ路面で
の発進時や急旋回時,極端なμジャンプ等を除く、低μ
路面での通常走行で発生する前輪側配分トルクの最大値
が用いられている。
【0039】一方、前記ステップS28では、前輪配分
トルク変化速度Tq' を最大前輪配分変化速度Tq'
MAX (例えば120kgm/s)に設定してから前記ス
テップS29に移行する。前記ステップS29では、前
記ステップS27又はステップS28で設定された前輪
配分トルク変化速度Tq' に前記所定サンプリング時間
ΔTを乗じた値の絶対値が、前記ステップS25までで
設定された基準前輪配分トルクTq0 から目標前輪配分
トルクの前回値Tq* (n-1) を減じた値の絶対値以上で
あるか否かを判定し、前者が後者以上である場合にはス
テップS30に移行し、そうでない場合にはステップS
31に移行する。
【0040】前記ステップS30では、下記4式に従っ
て前輪配分トルク変化速度Tq' を算出設定してからス
テップS32に移行する。 Tq' =(Tq0 −Tq* (n-1) )/ΔT ……… (4) 一方、前記ステップS31では、前記ステップS27又
はステップS28で設定された前輪配分トルク変化速度
Tq' をそのまま前輪配分トルク変化速度Tq' に設定
してから前記ステップS32に移行する。
【0041】前記ステップS32では、前記前輪配分ト
ルク変化速度Tq' を用いて、下記5式に従って目標前
輪配分トルクの今回値Tq* (n) を算出設定する。 Tq* (n) =Tq* (n-1) +Tq' ・ΔT ……… (5) 次にステップS33に移行して、前記ステップS32で
算出設定された目標前輪配分トルクの今回値Tq* (n)
を前記制御信号ST として前記駆動回路71に向けて出
力する。
【0042】次にステップS34に移行して、前記目標
前輪配分トルクの今回値Tq* (n)を前回値Tq*
(n-1) として前記記憶装置70cに更新記憶してからメ
インプログラムに復帰する。次に本実施例の四輪駆動制
御装置による作用を説明する。まず、前記図2に示す流
体圧制御装置の作用についてであるが、本実施例の車両
が独立した流体圧制御装置を備えていること、並びに当
該流体圧制御装置でのライン圧は前述のように一定又は
ほぼ一定に自動調整されること、及び前記圧力調整弁5
0へのデューティ比制御によるクラッチ係合力及び前輪
への駆動トルク配分調整については、前述の通りである
のでこれらの詳細な説明を省略し、更に後段に詳述する
前記図4の演算処理のステップS16以後のフィルタリ
ング処理及びリミッタ処理以前に、当該演算処理のステ
ップS15までで設定される各前輪配分トルクTq1
Tq4 の作用について、それらがそのまま最終的な目標
前輪配分トルクに設定されたという見地から説明する。
【0043】まず、前記図4の演算処理のステップS1
で読込まれる前後輪速VwF ,Vw R 間に前後輪速差Δ
Vwが発生すると、同ステップS7で第1前輪配分トル
クTq1 が算出設定される。このステップS7で用いら
れる第1前輪配分トルクTq 1 算出のための制御マップ
は前述の通りであり、その変数となる前後輪速差ΔVw
の定義式が、前記2式による主駆動輪速(後輪速V
R )から副駆動輪速(前輪速VwF )を減じた値であ
るために、当該前後輪速差ΔVwが正値である場合は、
路面μの低下や急加速等によって主駆動輪である後輪2
RL,2RRが車体速を上回ってスリップしている状態
を示す。この正値のスリップ量である前後輪速差ΔVw
が大きくなるほど、副駆動輪である前輪への駆動力を大
きくして、アンダステアを含む走行安定性を高めるべき
であるから、前記図5の制御マップのように当該前後輪
速差ΔVwが正値であり且つ“0”から正値の所定閾値
(+ΔVw1 )までの間で当該前後輪速差ΔVwの増加
と共に第1前輪配分トルクTq 1 を速やかに増加させ、
前後輪速差ΔVwがこの正値の所定閾値(+ΔVw1
以上の領域では、例えば前後輪駆動力配分量を50:5
0となる,所謂四輪直結状態として走行安定性を最大限
に高めることができる。
【0044】一方、前記前後輪速差ΔVwが負値である
場合は、例えば低μ路面においてエンジンブレーキ力や
ホイールシリンダ力によって主駆動輪である後輪2R
L,2RRが車体速を下回ってロック又はロック傾向を
示しているか(実際のホイールシリンダ力による後輪制
動力はプロポーショナルバルブ等によって前輪とほぼ同
時にロック傾向になるように調整されていることが多
い)、例えば高μ路面において或る程度以下の旋回半径
で旋回走行していて、旋回半径の大きい前輪が旋回半径
の小さい後輪よりも速く(多く)回転している状態を示
す。このような後輪のロック又はロック傾向や旋回走行
を示す負値の前後輪速差ΔVwが数値的に小さくなるほ
ど、副駆動輪である前輪への駆動力を大きくして、舵取
り効果やアンダステアを含む走行安定性を高めるべきで
ある。しかしながら、その一方で、後輪のロック傾向が
あまり大きくないときに前輪への駆動力を大きくし、相
対的に後輪の駆動力が小さくなると、所謂摩擦円の概念
に従って後輪はますますロック傾向に陥る。また、主駆
動輪である後輪の絶対回転数が小さい低速走行時の小旋
回中では、前後輪速差ΔVwもさほど小さな負値となら
ず、このような状態で前輪への駆動力を大きくするため
に前記クラッチ機構37の係合力を大きくすると、前後
輪間の回転数差を吸収できずにインターロックがかか
る,所謂タイトコーナブレーキ現象が発生してしまう。
そこで、前記図5の制御マップでは、前記前後輪速差Δ
Vwが“0”から前記負値の第1所定閾値(−ΔV
1 )までの間を不感帯に設定して、この間は第1前輪
配分トルクTq1 を“0”とすることで、前記後輪ロッ
ク傾向の増幅やタイトコーナブレーキ現象を回避し、当
該前後輪速差ΔVwが前記負値の第1所定閾値(−ΔV
1 )から負値の第2所定閾値(−ΔVw2 )までの間
で当該前後輪速差ΔVwの減少と共に第1前輪配分トル
クTq1 を速やかに増加させ、前後輪速差ΔVwがこの
負値の第2所定閾値(−ΔVw2 )以下の領域では、或
る程度,より具体的には前輪の駆動力が後輪のそれの1
/4程度になるまで前輪駆動力配分量を高めてアンダス
テアを含む走行安定性を適切に高めることができる。
【0045】次に、図4の演算処理では前記流体温セン
サ51で検出され且つ同ステップS2で読込まれたリザ
ーバ内の流体温Tから、同ステップS8で第2前輪配分
トルクTq2 が算出設定される。既知のように、通常の
流体圧制御装置に用いられる作動流体は、“0℃”を大
きく下回る氷点下の低温作動環境で、その粘性が大きく
なり過ぎてアクチュエータの動特性が変化してしまう傾
向にある。本実施例では、このような低温作動環境で、
例えば前記圧力制御弁50へのデューティ比に対して所
定の作動流体圧がクラッチ機構37に供給されず、その
結果、前後輪間の駆動力配分量が目標値に一致せず、誤
動作する虞れがある。また、“0℃”を大きく下回る氷
点下の低温作動環境は、路面が凍結し易く、降雪や積雪
の可能性も高い。従って、前記図8の制御マップによれ
ば、前記作動流体温Tが氷点下に設定された前記所定閾
値T1 以下の領域では、第1前輪配分トルクTq2 を、
例えば前後輪駆動力配分量を50:50となる,所謂四
輪直結状態の大きな所定値Tq21まで高めて、流体圧制
御装置の誤動作を防止すると同時に、四輪に駆動力を分
散することでアンダステアを含む走行安定性を高めるこ
とができるようにしてある。なお、このような低温作動
環境で設定される第2前輪配分トルクTq2は、前記作
動流体の温度特性並びに流体圧制御装置の温度特性に応
じて適宜に設定すればよく、前述では或る閾値以下で一
定としたが、これを何段階かに分けてもよいし、或る特
性に応じて連続的に変化させるようにすることも勿論可
能である。
【0046】一方、このような低温作動環境以外の通常
温度作動環境下で、前後輪間の駆動力配分制御を実施す
る際に、本実施例の駆動力配分調整手段がクラッチ機構
から構成されている関係上、例えば主駆動輪である後輪
にのみ駆動力を伝達するために前記圧力調整弁50への
デューティ比を“0”%としてしまうと、前記クラッチ
機構37のフリクションプレート37bとフリクション
ディスク37dとが完全に離間してしまう。この状態か
ら、例えば当該クラッチ機構37のフリクションプレー
ト37bとフリクションディスク37dとが接触し始め
て係合力がほぼ“0”となる状態を通り越して、更に両
者の係合力を高める指令信号が出力されると、前輪への
駆動力の経時変化に不連続点が発生し、またクラッチ機
構37が接触開始するまでの応答時間によって前輪への
駆動力配分制御に応答遅れが発生し、またクラッチ機構
37が短時間に係合することによる衝撃が生じる可能性
もある。そこで、前記図6の制御マップによれば、前記
作動流体温Tが前記所定閾値T1 以上の領域では、前輪
への駆動力が発生しない程度にクラッチ機構37が軽く
接触する前記小さな所定値Tq20を、所謂第2前輪配分
トルクTq2 のイニシャルトルクに設定することで、前
述のような応答遅れや衝撃発生を回避できるようにして
ある。
【0047】次に、図4の演算処理ではステップS3で
読込まれたスロットル開度θから、同ステップS10又
はステップS11で第3前輪配分トルクTq3 が算出設
定される。前記第1前輪配分トルクTq1 のように、既
存の前後輪間駆動力配分制御の大半が、実際に発生する
前後輪速差ΔVwのフィードバック制御である関係か
ら、クラッチ機構37の係合力が変化してから副駆動輪
である前輪2FL,2FRの駆動力が路面に伝達される
までの間には、当該前輪側駆動系,より具体的には前輪
側出力軸16,フロントディファレンシャルギヤ18及
び前輪側ドライブシャフト20と前輪2FL,2FR自
身の回転慣性に抗してエンジンの出力が当該前輪2F
L,2FRに伝達されるまでの応答遅れと、当該前輪2
FL,2FRのタイヤが路面を蹴って回転するまでの応
答遅れとがあるから、この前後輪速差ΔVwのフィード
バック制御系では、特に発進時等で最も後輪2RL,2
RRのスリップが発生し易い状況下での応答遅れが大き
くなり、その収束性が悪化する可能性がある。そこで、
図4の演算処理では車体速と等価又はほぼ等価と見なせ
る前輪速VwF が所定車体速VC0以下の領域を車両発進
時とし、後輪2RL,2RRに発生すると考えられるス
リップ量とエンジン出力とスロットル開度とが互いにリ
ニアな関係にあると見なし、このうち最も時系列的に早
いスロットル開度θを検出し、同演算処理のステップS
10で用いられる図7の制御マップでは、このスロット
ル開度θの増加と共に第3前輪配分トルクTq3 を増加
させてフィードフォワード制御の成分とし、このフィー
ドフォワード制御成分を有する第3前輪配分トルクTq
3 が最終的な目標前輪配分トルクTq* に設定されたと
きには、前述のような発進時における後輪2RL,2R
Rの過大なスリップを未然に防止し、或いは発生したス
リップのその後の収束性を高めるようにしてある。な
お、本実施例では、前記車体速度等価又はほぼ等価と見
なせる前輪速VwF が所定車体速VC0より大きくなる
と、ステップS11で第3前輪配分トルクTq3
“0”に設定され、前記発進時フィードフォワード制御
は強制的に終了される。また、前記第3前輪配分トルク
Tq3 の制御マップは前述に限定されるものではなく、
制御入力を同じくスロットル開度θに設定した場合で
も、エンジンの出力特性や後輪に発生すると考えられる
スリップ量の特性に応じて適宜に設定すべきである。ま
た、本実施例では、前述のようにアクセルペダルを或る
程度踏込んだ状態に相当するスロットル開度θが所定値
θ1 であるときに、前記通常温度作動環境時に設定され
る前記第2前輪配分トルクTq2 が前記小さな所定値T
20となるようになっている。
【0048】次に、図4の演算処理ではステップS5で
読込まれたブレーキ信号SBRK 及び前記車体速と等価又
はほぼ等価と見なせる前輪速VwF から、同ステップS
14又はステップS15で第4前輪配分トルクTq4
算出設定される。この第4前輪配分トルクTq4 は、同
演算処理のステップS12からのフローによって、ブレ
ーキ信号SBRK が“1”のON状態で且つ車体速と等価
又はほぼ等価と見なせるVwF が“0”であるときに同
ステップS15で前記所定値Tq41に設定される以外
は、同ステップS14で“0”に設定される。この設定
条件,即ちブレーキ信号SBRK が“1”のON状態で車
体速と等価又はほぼ等価な前輪速VwF が“0”である
ということは、ブレーキペダルを踏込んだ完全な停車状
態であるから、本来、このときに前輪側に駆動力を配分
する必要はない。また、通常想定される低μ路面で発進
時にスリップが発生し易い場合も、少なくとも発進のた
めにアクセルペダルを踏込み、そのスロットル開度θが
前記所定値θ1 以上になれば前記第3前輪配分トルクT
3 によって前輪側への駆動力配分量が大きくなり、後
輪のスリップは発生そのものが抑制されるか或いは速や
かに収束されるはずである。しかしながら、前述した第
3前輪配分トルクTq3 を設定するための図7の制御マ
ップでは、前記スロットル開度θが前記所定値θ1 以上
にならないと、当該第3前輪配分トルクTq3 は、前記
第2前輪配分トルクTq2 における通常温度作動環境で
のイニシャルトルク,即ち前記小さな所定値Tq20以上
にならないことになり、当該イニシャルトルクに相当す
る第2前輪配分トルクTq2 の所定値Tq20が前輪への
駆動力“0”の状態であるから、極めて路面μが低い路
面や下り勾配の大きい降坂路での発進時のように、後輪
への駆動力が小さくても当該後輪にスリップが発生して
しまうような状況下では、アクセルペダルの踏込み量が
小さく、スロットル開度θが前記所定値θ1 より小さい
場合でも後輪にスリップが発生してしまう虞れがあり、
しかしながら前記発進時のスリップを補償するはずの第
3前輪配分トルクTq3 は、前記第2前輪配分トルクT
2 のイニシャルトルクよりも小さく、実質的に前輪に
駆動力を伝達していない値にしかならないから、このよ
うにして発生した後輪のスリップは、このままでは収束
されないことになってしまう(実際には前記第1前輪配
分トルクTq1 によるフィードバック制御によってやが
て収束されるが、その収束までの所要時間の長さ及びそ
の間に発生する摩擦クラッチ係合力のハンチングに問題
がある)。
【0049】そこで本実施例では、車両がこれから発進
するに足る条件,即ちブレーキペダルを踏込んで且つ車
速が“0”であることを、前記ブレーキ信号SBRK 及び
前輪速VwF から検出し、このときの第4前輪配分トル
クTq4 を或るレベル,実質的には前記所定値Tq41
で高めておき、前記ブレーキペダルの踏込み条件及び車
速条件が解除されて、今正に車両が発進しようとすると
きにこの所定値Tq41である第4前輪配分トルクTq4
が最終的な目標前輪配分トルクTq* に選定されている
ときには、前記第3前輪配分トルクTq3 が、前記第2
前輪配分トルクTq2 のイニシャルトルクTq20より小
さくても、この第4前輪配分トルクTq 4 の所定値Tq
41を初期値とし、更に後述する前輪配分トルク変化速度
Tq' 変更制御によって、当該第4前輪配分トルクTq
4 の所定値Tq41からの最終的な目標前輪配分トルクT
* の減少傾きを抑制して前輪側への駆動力配分を残存
させ、前記極低μ路面や急降坂路での後輪のスリップを
抑制防止すると共に、アンダステアを含む走行安定性を
確保しようとする。なお、本実施例では、後述するよう
に目標前輪配分トルクTq* (実際には現在達成されて
いる前輪側への配分トルクであって、具体的には目標前
輪配分トルクの前回値Tq* (n-1) である)の大きさに
よって前輪配分トルク変化速度Tq' が変化し、より具
体的には当該目標前輪配分トルクTq* が大きいときに
は前輪配分トルクの減少速度を速くし且つ当該目標前輪
配分トルクTq* が小さいときには前輪配分トルクの減
少速度を遅くする制御態様がなされるため、前記第4前
輪配分トルクTq4 の所定値Tq41からの最終的な目標
前輪配分トルクTq* の減少傾きが変化することもある
が、当該第4前輪配分トルクTq4 が所定値Tq41から
減少したときに主駆動輪である後輪にスリップが発生し
ていれば、前記第1前輪配分トルクTq1 による駆動輪
スリップのフィードバック制御が開始されているから、
前記車両発進から駆動輪スリップのフィードバック制御
までの所要時間を考慮して、より具体的にはこの所要時
間よりも前記第4前輪配分トルクTq4 の減少時間が長
くなるように、前記所定値T41及び前輪配分トルクの減
少速度を設定すればよい。
【0050】次に、図4の演算処理で同ステップS16
で、前述のようにして設定された第1〜第4前輪配分ト
ルクTq1 〜Tq4 のうちの最大値が、後述する最終的
な目標前輪配分トルクTq* の基準値となる基準前輪配
分トルクTq0 として選出される。これは、ここまで説
明した各前輪配分トルクTq1 〜Tq4 が夫々、車両の
走行状態や運転者の操作入力等に応じて独立に設定され
たものであり、しかも夫々の前輪配分トルクTq1 〜T
4 の目的が走行安定性を高めるという共通したもので
あるために、何れかを優先するとか何れの比率を高める
という考慮なく、最も走行安定性向上に寄与する前輪配
分トルクTq1 〜Tq4 の最大値を基準前輪配分トルク
Tq0 に選出する。
【0051】次に図4の演算処理のステップS17から
ステップS22では、前記モードセレクト信号S4A,S
4R,S2 に応じた基準前輪配分トルクTq0 の変更設定
が行われる。即ち、前述のようにして設定された各前輪
配分トルクTq1 〜Tq4 は、走行状態や運転者の操作
入力に応じた最適な四輪駆動状態を期待して運転者が意
図的に四輪自動走行モードを選択しているときに実行さ
れるべきであり、その他の走行モードが選択されている
ときには、本来的に運転者の意思を尊重してその通りの
走行状態を創造すべきである。そこで、四輪直結走行モ
ードが選択されているときにはステップS17からステ
ップS18に移行して、基準前輪配分トルクTq0 が、
前後輪間駆動力配分量が50:50となって前後輪が直
結状態となる最大値Tq0MAXに変更設定され、一方、二
輪走行モードが選択されているときにはステップS21
からステップS22に移行して、基準前輪配分トルクT
0 は“0”に変更設定され、四輪自動走行モードが選
択されているときに限って前記選出による基準前輪配分
トルクTq0 がそのまま基準前輪配分トルクTq0に設
定される。
【0052】また、図4の演算処理のステップS23か
らステップS25では、前記ニュートラル信号SN に応
じた基準前輪配分トルクTq0 の変更設定が行われる。
即ち、ニュートラル信号SN が論理値“1”のON状態
であることは、エンジン出力によって車両が発進するこ
とはない(ギヤ位置がニュートラルであって、降坂路等
で重力加速度によって発進する場合には、一般にスリッ
プは発生しない)し、運転者の意思としても発進する意
思はないと考えられ、このときに前記イニシャルトルク
を含む前輪側への駆動力を配分したり、或いは前記流体
圧制御装置内で不要な流体圧を発生させたりすることは
エネルギ損であるから、ギヤ位置にニュートラルが選択
されているときにはステップS23からステップS24
に移行して基準前輪配分トルクTq0 は“0”に変更設
定され、そうでないときには前述のようにして設定され
た基準前輪配分トルクTq0 がそのまま基準前輪配分ト
ルクTq0 に設定される。なお、自動変速機を搭載する
車両にあっては、このニュートラル位置判定に,所謂パ
ーキングギヤ位置判定を加えてもよい。
【0053】そして、続く図4の演算処理のステップS
26からステップS28では、前述した前輪配分トルク
変化速度Tq' の設定が行われる。前述のように、前記
前後輪速差ΔVwのみに応じた第1前輪配分トルクTq
1 が最終的な目標前輪配分トルクTq* に設定されて前
後輪間の駆動力配分フィードバック制御が実行される
と、副駆動輪である前輪の駆動系の回転慣性や当該前輪
が路面に駆動力を伝達するまでの時間が応答遅れとな
り、このとき駆動力配分量の変化速度が速過ぎると、こ
れに起因して高μ路面から低μ路面へのμジャンプ時に
駆動力制御のハンチングが発生する虞れがある。一方、
このような問題を回避するために、駆動力配分量の特に
減少方向への変化速度が遅過ぎると、副駆動輪である前
輪への駆動力配分量が大きい状態からの旋回走行への移
行時に、当該前輪への駆動力配分量が十分に小さくなら
ず、そのため旋回走行移行後もクラッチ機構の係合力が
高い状態が維持されて前後輪間の回転速差が吸収され
ず、インタロックによるタイトコーナブレーキ現象が発
生する虞れがある。この相反する問題を防止するために
は、前述のように制御ハンチングの問題が通常走行時,
即ち副駆動輪である前輪への駆動力配分量がさほど大き
くないときに発生することから、当該前輪への駆動力配
分量が大きいときに当該駆動力配分量の変化速度を速く
し、前輪への駆動力配分量が小さいときに当該駆動力配
分量の変化速度を遅くすればよい。また、これらの問題
は、何れも副駆動輪である前輪への駆動力配分量が減少
するときに発生するから、図4の演算処理のステップS
26で、前述のように設定された四輪駆動制御装置で達
成すべき基準前輪配分トルクTq0 が、現在達成されて
いる前輪配分トルク,即ち目標前輪配分トルクの前回値
Tq* (n-1) 以下であるか否かにより、前輪への駆動力
配分量が減少方向にあるかどうかを判定し、前輪への駆
動力配分量が増加方向にある場合にはステップS28に
移行して、このときには前輪配分トルクの変化速度が速
過ぎることに問題はない、むしろこのような場合には走
行安定性の面から速やかに前輪への駆動力配分量を増加
させるべきであるから、制御の応答性を高めるべく前輪
配分トルクの変化速度Tq' を最大前輪配分変化速度T
q' MAX に設定し、前輪への駆動力配分量が減少方向に
ある場合にはステップS27に移行して、前記図8の制
御マップに従って前輪配分トルクの変化速度Tq' が設
定される。
【0054】ここで、図8の制御マップによれば、前述
のように低μ路面での発進時や急旋回時,極端なμジャ
ンプ等を除いて、当該低μ路面での通常走行で発生する
前輪配分トルクの最大値に設定された第2所定閾値Tq
* 2 以上の前記目標前輪配分トルクの前回値Tq*
(n-1) の領域は、例えば前記発進時フィードフォワード
制御によって大幅に増加された前輪への駆動力配分量を
想定しており、この状態からアクセルペダルを足放しし
たときに当該前輪への駆動力配分量が速やかに小さくな
って、例えばこれに続く旋回走行時に前記タイトコーナ
ブレーキ現象が発生しないように、このときの前輪配分
トルク変化速度Tq' は最小前輪配分トルク変化速度
(−Tq' MAX )に等しい第2所定値Tq'2となるよう
にしてある。また、前記第2所定閾値Tq* 2 より小さ
い前記目標前輪配分トルクの前回値Tq * (n-1) の領域
は、低μ路面での発進時や急旋回時,極端なμジャンプ
等を除く、想定可能な全ての路面μでの走行中に発生す
る前輪配分トルクを想定しており、この領域では当該目
標前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1) の前記第2所定
閾値Tq* 2 から、高μ路面での急加速時や急旋回時に
発生する前輪配分トルクの最大値に設定された第1所定
閾値Tq* 1 までの範囲で、前記前輪配分トルク変化速
度Tq' を速やかに小さく(数値的には負値であるから
大きくなる)し、この第1所定閾値Tq* 1 以下の領域
では前輪配分トルク変化速度Tq' を比較的小さい第1
所定値Tq'1に維持し、通常走行で発生し得る駆動力配
分制御のハンチングを抑制防止できるようにしてある。
【0055】次に、図4の演算処理では前述のようにし
て設定された前輪配分トルク変化速度Tq' のフィルタ
リング処理が行われる。前述のようにして設定された前
輪配分トルク変化速度Tq' はあくまでも単位時間当た
りの変化速度として設定されるから、前記図4のタイマ
割込演算処理が実行されるサンプリング時間ΔT後の実
際の前輪配分トルク,即ち目標前輪配分トルクの前回値
Tq* (n-1) が、前記基準前輪配分トルクTq0 をオー
バシュートしてはならない。これは、前記前輪配分トル
ク変化速度Tq' を設定する際に、実際の前輪配分トル
クを検出せず、その代わりに目標前輪配分トルクの前回
値Tq* (n-1) を用いている点からも達成すべき制御項
目となる。また、図4の演算処理で出力される操作量或
いは制御量が、前記サンプリング時間ΔT毎の前輪駆動
力の目標値によるチョッピング制御であることからも、
前記ステップS29で、前記前輪配分トルク変化速度T
q' にサンプリング時間ΔTを乗じた値,即ち次のサン
プリング時間までに達成しようとする前輪配分トルクの
変化量の絶対値が、前記基準前輪配分トルクTq0から
目標前輪配分トルクの前回値Tq* (n-1) を減じた値,
即ち目標値と現在値との偏差の絶対値以上であるか否か
を判定し、前者が後者以上である場合にはそれまでの前
輪配分トルク変化速度Tq' を用いて後述のように目標
前輪配分トルクの今回値Tq* (n) を設定すると、その
値が基準前輪配分トルクTq0 をオーバシュートするこ
とになるから、同ステップS30に移行して当該基準前
輪配分トルクTq0 から目標前輪配分トルクの前回値T
* (n-1) を減じた値を更に前記サンプリング時間ΔT
で除して新たな前輪配分トルク変化速度Tq' を設定す
る。勿論、達成しようとする値が目標値をオーバシュー
トしない場合は、前記前輪配分トルクの減少速度のフィ
ルタリング作用からも、ステップS31に移行してそれ
までの前輪配分トルク変化速度Tq' がそのまま前輪配
分トルク変化速度Tq' に設定される。
【0056】そして、図4の演算処理のステップS32
からステップS33では、前述のようにしてそれぞれフ
ィルタリングされた前輪配分トルク変化速度Tq' に前
記サンプリング時間ΔTを乗じた値を、前記目標前輪配
分トルクの前回値Tq* (n-1 ) に和して、目標前輪配分
トルクの今回値Tq* (n) が算出出力される。以上よ
り、前記クラッチ機構37及び圧力源35及び圧力制御
弁50が本発明の四輪駆動制御装置の駆動力配分調整手
段に相当し、以下同様に前記前後輪速センサ54,56
及び図4の演算処理のステップS1及びステップS6が
回転数差検出手段に相当し、図4の演算処理のステップ
S26からステップS30が変化速度設定手段に相当
し、図4の演算処理全体が駆動力配分制御手段に相当す
る。
【0057】次に、前述のように図4の演算処理のステ
ップS27で前輪への駆動力配分量が減少方向にあると
き、前記前輪配分トルク変化速度Tq' をフィルタリン
グ処理する作用について図9のタイミングチャートを用
いながら説明する。このタイミングチャートは、高μ路
面を加速度一定で定常走行していたところ、時刻t1
低μ路面にμジャンプしたときの前後輪速VwF ,Vw
R と前後輪速差ΔVwとをシミュレートしたものであ
り、前記基準前輪配分トルクTq0 には前後輪速差ΔV
wのみによる前記第1前輪配分トルクTq1 がリアルタ
イムに反映されているものとする。なお、同図bに示す
前後輪速差ΔVwは、理解を容易化するために縦軸を拡
大表示してある。また、本実施例で主駆動輪である後輪
はエンジンに直結されており、その回転慣性(イナーシ
ャ)が各車輪速及び前後輪速差に大いに影響するが、こ
こではとりあえず、このエンジンイナーシャを無視した
後輪駆動系の回転慣性と前輪駆動系の回転慣性のみを考
慮し、そのときの後輪速VwR は実線で、前輪速VwF
は破線で、前後輪速差ΔVwは実線で示す。
【0058】このタイミングチャートによれば、前記時
刻t1 で低μ路面へのμジャンプによって、それまでエ
ンジン出力の大半が伝達されていた主駆動輪である後輪
がスリップして後輪速VwR が増速し、これによって前
後輪速差ΔVwが増加するために前記図4の演算処理の
ステップS7では前記図5の制御マップのリニア増加部
分に対応して第1前輪配分トルクTq1 が増加し、これ
を基準前輪配分トルクTq0 とする目標前輪配分トルク
Tq* が前記最大前輪配分トルク変化速度Tq' MAX
増加することになるから、前記前輪駆動系が有する所定
の遅れ時間をもって前輪速VwF も増速するが、未だ後
輪速VwR の増速率の方が大きいから前後輪速差ΔVw
も増加し続ける。
【0059】やがて、前輪配分トルクの増加に伴って後
輪配分トルクが減少することから、後輪速VwR は時刻
2 で極大値を迎え、このときには前後輪速差ΔVwも
ほぼ同時に極大値となったが、副駆動輪である前記前輪
駆動系の応答遅れによって前輪速VwF はこの後も増速
を継続することとなった。これにより、この時刻t2
後、前後輪速差ΔVwが減少するが、この前後輪速差Δ
Vwと等価な基準前輪配分トルクTq0 の減少速度,即
ち前輪配分トルク変化速度Tq' は、図4の演算処理の
ステップS27で図8の制御マップに従って前記小さな
所定値Tq'1程度に抑制されているために、最終的な目
標前輪配分トルクTq* は緩やかに減少されることとな
り、故に後輪速VwR の減速傾きが抑制されて当該後輪
速VwRは緩やかに減速し、従って前後輪速差ΔVwも
緩やかに減少し、これが、前輪速VwF が極大値を迎え
る時刻t3 まで継続して繰返されることとなった。
【0060】そして、前記時刻t3 では前述した前輪駆
動系の応答遅れによって前輪速Vw F が極大値を迎え、
その後、前記目標前輪配分トルクTq* は緩やかに減少
に伴って減速に転ずることとなったが、これによって前
後輪速差ΔVwの減少傾きはより一層小さくなり、しか
しながら当該前後輪速差ΔVwに応じた基準前輪配分ト
ルクTq0 から、最終的な目標前輪配分トルクTq*
は図4の演算処理のステップS29からステップS30
でリミッタがかけられるため、まず後輪速Vw R の減速
傾きが更に小さくなり、これから前記前輪駆動系の応答
遅れをもって発生する前輪速VwF の減速傾きも小さく
なることとなった。
【0061】このような後輪速VwR 変動の減衰効果に
よって、当該後輪速VwR は当該低μ路面でのトラクシ
ョンロスを含んで所定の車両加速度を満足する車輪速に
近づくものの、未だ前輪速VwF は前記前輪駆動系の応
答遅れからこの車輪速に近づいていないために、後輪速
VwR についてはほぼ良好であるが前輪速VwF をやや
増速すべき走行状態となり、その結果、時刻t4 で前後
輪速差ΔVwは極小値を迎え、その後、当該前後輪速差
ΔVwと等価な基準前輪配分トルクTq0 に応じて最終
的な目標前輪配分トルクTq* は増加に転ずることとな
ったが、未だ前輪速VwF は減速し続けていたため、こ
の前輪駆動系の回転慣性に抗して前輪を回転させるため
の実質的な目標前輪配分トルクTq* の増加率は非常に
小さなものとなり、しかも未だ前輪への駆動力が十分に
増加していないために、これからやや遅れて後輪速Vw
R も極小値を迎え、更に増速に転ずることとなってしま
った。
【0062】しかしながら、目標前輪配分トルクTq*
の増加によって前記前輪駆動系の応答遅れに相当する時
刻t5 から前輪速VwF が極小値を越えて増速に転じた
ため、前記後輪速VwR の増速量は小さく抑制され、増
速し続ける前輪速VwF との前後輪速差ΔVwは時刻t
6 で極大値となり、その後、減少に転ずるものの、前記
時刻t2 以後と同様にその減少速度,即ち前輪配分トル
ク変化速度Tq' が小さく抑制されるために、まず後輪
速VwR が極めて緩やかに減速し、これに遅れて前輪速
VwF の増速傾きが減少して時刻t7 で極大値を迎え、
この時刻t7 で前後輪速差ΔVwは、当該路面μで所定
の車両加速度を満足する値に収束し、その結果、目標前
輪配分トルクTq* の変動がなくなって後輪速VwR
前輪速VwF とも安定状態となった。
【0063】次に、前述のように前輪配分トルク変化速
度Tq' をフィルタリング処理しない従来の四輪駆動制
御装置の作用について図10のタイミングチャートを用
いながら説明する。具体的には前記図4の演算処理のス
テップS26からステップS28が削除されたものであ
ると考えればよく、前輪配分トルクが減少方向に変化す
るときも常に前記最小変化速度(−Tq' MAX )で基準
前輪配分トルクTq0に向けて目標前輪配分トルクTq
* が変化する。
【0064】このタイミングチャートでのシミュレーシ
ョン条件は、前記図9のものと全く同等であり、少なく
とも前記時刻t1 で低μ路面にμジャンプしてから前後
輪速差ΔVw及び後輪速VwR が極大値を迎える時刻t
2 までの挙動は、当該図9での説明と同等である。ま
た、ここでも、後輪に直結されるエンジンイナーシャの
影響をネグレクトした後輪速VwR を実線で、前輪速V
F を破線で、前後輪速差ΔVwを実線で示す。
【0065】従って、この時刻t2 以後、副駆動輪であ
る前記前輪駆動系の応答遅れによって前輪速VwF は増
速を継続し、同時に前後輪速差ΔVwが減少するが、こ
の前後輪速差ΔVwと等価な基準前輪配分トルクTq0
の減少速度,即ち前輪配分トルク変化速度Tq' には、
前述のようなフィルタリングによる規制が与えられてい
ないので、最終的な目標前輪配分トルクTq* も、当該
前後輪速差ΔVwの減少速度と同程度に速やかに減少さ
れることとなり、一方、未だ増速し続ける前輪速VwF
には大きな駆動力が配分されているために、後輪速Vw
R は大幅に且つ速やかに減速し、従って前後輪速差ΔV
wも大幅に且つ速やかに減少し、これが、前輪速VwF
が極大値を迎える時刻t3Pまで継続して繰返されること
となった。
【0066】そして、前記時刻t3Pでは前述した前輪駆
動系の応答遅れによって前輪速Vw F が極大値を迎え、
その後、減速に転ずることとなったが、この前輪への駆
動力配分量の減少に伴って後輪速VwR の減速傾きは次
第に小さくなり、両者の前後輪速差は時刻t4Pで極小値
となり、一方、後輪速VwR はこれより遅い時刻t5P
極小となり、以後、増速に転ずる。しかしながら、前記
大幅に且つ速やかに減少する前後輪速差ΔVwと同等に
設定された基準前輪配分トルクTq0 からなる目標前輪
配分トルクTq* によって、前記前輪駆動系の応答遅れ
を伴う前輪速VwF は、これ以後も大幅に且つ速やかに
減速し続け、これにより前後輪速差ΔVwは速やかに且
つ大幅に増加することとなり、それと共に基準前輪配分
トルクTq0 及び目標前輪配分トルクTq* が大幅に且
つ速やかに増加されようとするが、一方で後輪への駆動
力配分量は未だ大きいままであり、前記前輪駆動系の回
転慣性等によりクラッチ機構37の係合力が増加される
までに時間がかかり、その結果、前輪速VwF は、前記
時刻t5Pよりも大幅に遅い時刻t6Pで極小値となり、そ
の後、増速に転ずることができる。
【0067】この応答遅れにより、前後輪速差ΔVwは
時刻t7Pで極大値を迎え、後輪速VwR は時刻t8Pで極
大値を迎えるが、前輪速VwF の極大値はこれよりも遅
い時刻t9Pで発生し、その直後の時刻T10P では再び前
後輪速差ΔVwが極小値となってしまい、結果的に前記
時刻t2 以後と同様に前後輪速VwF ,VwR は位相が
ずれたまま増減を繰り返し、それが前後輪速差ΔVwか
ら基準前輪配分トルクTq0 及び目標前輪配分トルクT
* に大きな変動を与え続け、前後輪速VwF,VwR
が当該路面μで所定の車両加速度を満足する値に収束す
ることなく、駆動力配分制御のハンチングが継続するこ
ととなる。
【0068】この問題を回避するためには、少なくとも
前記目標前輪配分トルクTq* の減少時にその減少傾き
を小さく設定しなければならないことになるが、この目
標前輪配分トルクTq* の減少傾きを小さく抑制したま
まであるときに発生する問題と、本実施例による作用を
図11のタイミングチャートを用いて説明する。このタ
イミングチャートは、例えば路面μのやや低い路面での
発進時にアクセルペダルを大きく踏込んで,所謂スロッ
トルON状態で発進し、さほど時間のない時刻t25で旋
回走行に移行するため、それより早い時刻t21でアクセ
ルペダルを足放ししてスロットルOFF状態に移行し、
前記時刻t25ではステアリングを切込まなければならな
い状況での目標前輪配分トルクTq* をシミュレートし
たものであり、前記基準前輪配分トルクTq0 には前記
第3前輪配分トルクTq3がリアルタイムに反映されて
いるものとする。なお、前記スロットルON時に設定さ
れる第3前輪配分トルクTq3 と等しい基準前輪配分ト
ルクTq0 ,即ち目標前輪配分トルクTq* は、前記図
8の制御マップの第2所定閾値Tq* 2 以上であったも
のとする。また、この路面での前記時刻t25からの旋回
走行において前記タイトコーナブレーキ現象を発生させ
ないための目標前輪配分トルクTq*の最大値は、図1
1においてTq* lim で表す。
【0069】まず、前述のような制御のハンチングを抑
制防止するために、目標前輪配分トルクTq* の減少速
度,本実施例でいうところの前輪配分トルク変化速度T
q'を或る値で制限してしまうと、例えば時刻t21でア
クセルペダルを足放ししてスロットル開度θが“0”ま
で減少すると、前記第3前輪配分トルクTq3 からなる
基準前輪配分トルクTq0 も当該時刻t21か又はその直
後に“0”になってしまう。実際のスロットル開度θの
変化はそれほどステップ的でないから、図11の時刻t
21からに示すように基準前輪配分トルクTq0 が変化
し、その減少速度が前記規制値より速くなると、これ以
後、目標前輪配分トルクTq* は同図に二点鎖線で示す
ように傾き一様で減少することになる。ところが、この
ように減少速度が規制された目標前輪配分トルクTq*
では、前記ステアリング切込み開始時刻t25より遅い時
刻t26でしか、前記タイトコーナブレーキ現象回避前輪
配分トルクTq* lim 以下とならないから、実質的にス
テアリングを切込む時刻t25以後ではタイトコーナブレ
ーキ現象の発生する可能性がある。
【0070】一方、前記図4の演算処理のステップS2
7における図8の制御マップでは、目標前輪配分トルク
(正確にはその前回値)Tq* (n-1) が、前記第2所定
閾値Tq* 2 以上であるときには、前輪配分トルク変化
速度Tq' は前記最小変化速度に等しい所定値Tq'2
定であるため、目標前輪配分トルクTq* の減少速度に
フィルタがかかる時刻t22から、図11に実線で示すよ
うに目標前輪配分トルクTq* が第2所定閾値Tq* 2
より小さくなる時刻t23までは、前記最小変化速度(−
Tq' MAX )で当該目標前輪配分トルクTq* はリニア
に且つ速やかに減少し、次いで目標前輪配分トルクTq
* が前記第1所定閾値Tq* 1 以下となる時刻t24まで
は、前輪配分トルク変化速度Tq' がリニアに減少する
ため、当該目標前輪配分トルクTq* は二次曲線的に減
少し、次いでこれ以後は、前記小さな所定値Tq'1で傾
き一様に且つ緩やかに減少することになる。このシミュ
レーションでは、前記時刻t25よりも早い時刻t23.5
目標前輪配分トルクTq*が前記タイトコーナブレーキ
現象回避前輪配分トルクTq* lim 以下となるため、ス
テアリングを切込む時刻t25以後でタイトコーナブレー
キ現象の発生する可能性は小さくなる。
【0071】ちなみに、前輪配分トルク変化速度Tq'
をフィルタリング処理しない前記図10のタイミングチ
ャートにおいて、後輪に直結されたエンジンイナーシャ
の影響を考慮すると、当該重いエンジンイナーシャが直
結された後輪速VwR はさほど変動しなくなることが予
想され、更に電子制御によってスロットル開度に応じた
エンジン出力トルクが一定になるように制御されている
場合には、後輪速Vw R の変動幅は更に小さくなると考
えられる。こうした状況における後輪速VwRを図10
に二点鎖線で、前輪速VwF を一点鎖線で、前後輪速差
ΔVwを二点鎖線で夫々示す。このような状況下では、
後輪速VwR の変動が大幅に抑制されるから、前記時刻
2 で前後輪速差ΔVwが極大となると、変動しにくい
後輪速VwR に対して、前輪速VwF が速やかに増速
し、これとリアルタイムに前後輪速差ΔVwが減少し、
次いで前輪駆動系の遅れ時間後に前輪速VwF が減速
し、これとリアルタイムに前後輪速差ΔVwが増加する
といったように、前輪速VwFの変動周期及びそれに伴
う前後輪速差ΔVwの変動周期が短くなる。一方、前述
のように出力トルクがほぼ一定に制御されたエンジン
に、この前輪駆動系が短い周期で付加されたり外された
りすると、その周期が、実際に発生するであろう後輪速
VwR 変動を加振するものでない限り、平均的な後輪速
VwR も次第に減速することが予想される。従って、前
輪速VwF との前後輪速差ΔVwは次第に小さくなり、
これに伴って前輪速VwF の変動幅も次第に小さくな
り、相応の時間経過後に後輪速VwR ,前輪速VwF
当該低μ路面で所定の車両加速度を達成する速度に収束
するであろう。
【0072】これを本発明である図9のタイミングチャ
ートにフィードバックすると、同じく後輪速VwR は二
点鎖線で、前輪速VwF は一点鎖線で、前後輪速差ΔV
wは二点鎖線で示すように、前記時刻t2 以後、増速す
る前輪速VwF に対して後輪速VwR の変化代が小さく
なる分、前後輪速差ΔVwは緩やかに減少することにな
るから、前輪速VwF の減速代も小さく抑えられ、この
間に後輪速VwR はゆっくりと減速して前輪速VwF
漸近し、殆どオーバシュートすることなく、凡そ前記時
刻t7 よりも早い時刻で、前後輪速差ΔVwは当該路面
μで所定の車両加速度を満足する値に収束し、その結
果、目標前輪配分トルクTq* の変動がなくなって後輪
速VwR ,前輪速VwF とも安定状態となる。つまり、
エンジンイナーシャを考えると、従来の制御態様でもや
がて前輪速変動及び制御のハンチングは収束するが、本
実施例によればこうした前輪速変動や制御のハンチング
の発生そのものを抑制することができる。
【0073】なお、前記実施例では後輪駆動車両をベー
スにした四輪駆動車両について詳述したが、この種の四
輪駆動車両に限定されるものではなく、前輪駆動車両を
ベースにした四輪駆動車両に搭載されるトランスファの
クラッチ機構を制御するものであってもよい。また、前
記実施例ではクラッチ機構として流体圧駆動による流体
式摩擦クラッチを用いた場合について説明したが、本発
明は駆動力を連続的に配分できるクラッチであれば例え
ば電磁クラッチ機構等にも採用できる。
【0074】また、前記実施例では車体速の評価に副駆
動輪速を用いたが、前述のように当該副駆動輪への駆動
力変動によって変動する副駆動輪の影響が車体速に表れ
ないように、適切なフィルタをかけて用いてもよいし、
或いは既存のアンスキッド制御装置等に用いられる疑似
車速(推定車体速)を転用するようにしてもよい。ま
た、前記実施例はコントロールユニット58としてマイ
クロコンピュータを適用した場合について説明したが、
これに代えてカウンタ,比較器等の電子回路を組み合わ
せて構成することもできる。
【0075】また、前記実施例では可変トルククラッチ
を付勢する作動流体として作動流体を適用した場合につ
いて説明したが、これに限らず水等の流体,空気等の気
体を適用し得ることは言うまでもない。また、前記オイ
ルポンプの回転駆動源としては前記電動モータに限ら
ず,エンジンの回転出力を用いることも可能である。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように本発明の車両の四輪
駆動制御装置によれば、副駆動輪側の駆動力を小さくす
る方向に駆動力配分量が変化するときの変化速度を、当
該副駆動輪側の駆動力が大きいときに大きく設定するこ
とにより、大きな主駆動輪のスリップに応じた副駆動輪
への大きな駆動力も、例えば旋回走行への移行に備えて
アクセルペダルを足放しすると速やかに減少するから、
この状態で旋回走行に移行しても前後輪はその回転数差
を吸収してタイトコーナブレーキ現象の発生が回避さ
れ、また当該副駆動輪側の駆動力が小さいときに駆動力
配分量の変化速度を小さく設定することにより、通常走
行時に路面μ変動等によって発生する主駆動輪の回転数
の増減に応じた副駆動輪への駆動力が、当該副区動輪へ
の駆動系の応答遅れによって主駆動輪の回転数の増減か
ら大きくずれてしまうのを抑制し、最終的に駆動力配分
制御がハンチングするのを抑制防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両の四輪駆動制御装置の一例を示す
車両構成の概略説明図である。
【図2】図1の前後輪間駆動力配分制御装置の一例を示
す概略構成図である。
【図3】図2の前後輪間駆動力配分制御装置で用いられ
るデューティ比と目標前輪配分トルクの相関関係図であ
る。
【図4】図2の前後輪間駆動力配分制御装置の一実施例
の演算処理を示すフローチャートである。
【図5】図4の演算処理で、第1前輪配分トルクを算出
設定するための制御マップである。
【図6】図4の演算処理で、第2前輪配分トルクを算出
設定するための制御マップである。
【図7】図4の演算処理で、第3前輪配分トルクを算出
設定するための制御マップである。
【図8】図4の演算処理で、前輪配分トルク変化速度を
算出設定するための制御マップである。
【図9】図4の演算処理による駆動力配分制御の説明図
である。
【図10】従来の駆動力配分制御の説明図である。
【図11】図4の演算処理による駆動力配分制御の説明
図である。
【符号の説明】
1はエンジン 2FL〜2RRは前左輪〜後右輪 3は駆動力系 4は駆動力配分制御装置 12は変速機 14はトランスファ 16は前輪側出力軸 18は前輪側ディファレンシャルギヤ 20は前輪側ドライブシャフト 22はプロペラシャフト 24は後輪側ディファレンシャルギヤ 26は後輪側ドライブシャフト 35は流体圧力源 37はクラッチ機構 48はスロットル開度センサ 50は圧力制御弁 51は流体温センサ 52はモードセレクトスイッチ 53はニュートラルスイッチ 54は前輪速センサ 56は後輪速センサ 58はコントロールユニット 59は駆動回路 70はマイクロコンピュータ

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の前後輪の何れか一方を主駆動輪と
    し、他方を副駆動輪として、制御信号に応じた係合力の
    可変制御によって前記主駆動輪及び副駆動輪への駆動力
    配分を行う摩擦クラッチを有する駆動力配分調整手段
    と、前記主駆動輪及び副駆動輪の回転数差を検出する回
    転数差検出手段と、少なくとも前記回転数差検出手段の
    回転数差検出値に基づいて、当該回転数差検出値の増加
    に伴って前記副駆動輪側の駆動力が増加するように前記
    主副駆動輪間の駆動力配分量を設定し、当該駆動力配分
    量に基づいて前記摩擦クラッチを制御する駆動力配分制
    御手段とを備えた車両の四輪駆動制御装置において、前
    記駆動力配分制御手段は、前記駆動力配分量が変化する
    ときの変化速度を、当該駆動力配分量に応じて変更設定
    する変化速度設定手段を備え、前記変化速度設定手段
    は、前記駆動力配分量が前記副駆動輪側の駆動力を小さ
    くする方向に変化するときに、当該駆動力配分量の変化
    速度を変更設定することとし、前記副駆動輪側の駆動力
    が大きいときに前記駆動力配分量の変化速度を大きく設
    定し、当該副駆動輪側の駆動力が小さいときに駆動力配
    分量の変化速度を小さく設定することを特徴とする車両
    の四輪駆動制御装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006282146A (ja) * 2005-04-05 2006-10-19 Advics:Kk 車両姿勢制御装置
JP2016016732A (ja) * 2014-07-08 2016-02-01 日産自動車株式会社 駆動力制御装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006282146A (ja) * 2005-04-05 2006-10-19 Advics:Kk 車両姿勢制御装置
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