JPH0978526A - 耐食性、密着性および耐Cr溶出性に優れた吊橋ケーブル用鋼線 - Google Patents

耐食性、密着性および耐Cr溶出性に優れた吊橋ケーブル用鋼線

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JPH0978526A
JPH0978526A JP7231671A JP23167195A JPH0978526A JP H0978526 A JPH0978526 A JP H0978526A JP 7231671 A JP7231671 A JP 7231671A JP 23167195 A JP23167195 A JP 23167195A JP H0978526 A JPH0978526 A JP H0978526A
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JP
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layer
steel wire
adhesion
amount
suspension bridge
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JP7231671A
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Kenji Miki
賢二 三木
Kazuo Okumura
和生 奥村
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐食性(特に乾湿繰り返し、屋外暴露、湿潤
環境下での塗膜下腐食を抑制することのできる高度の耐
食性)、密着性および耐Cr溶出性に優れた吊橋ケーブ
ル用鋼線を提供する。 【解決手段】 鋼線の上に、めっき付着量が300g/
2 以上であり且つ下層にZn−Fe系合金層を有する
溶融Zn系めっき層、Cr付着量(金属Cr換算)が3
0〜200mg/m2 でありSi(金属Si換算)/C
r(重量比)が0.2〜2.0であるSiO2 含有クロ
メート層、および有機樹脂付着量が3〜25g/m2
有機樹脂層を順次被覆したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性、密着性お
よび耐Cr溶出性に優れた吊橋ケーブル用鋼線に関し、
詳細には、特に長大吊橋の平行線メインケーブルに有用
な防錆処理付与鋼線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、全国の交通網が整備されるに伴
い、河口、湾口、本州と四国の間、本土と離島の間等に
長大橋の建設が計画され或いは実行されている。なかで
も本四(本州と四国)架橋は、図1に示す様に、中央支
間長(吊橋の主塔間の距離)が1000m若しくは20
00mもある長大吊橋であるが、これには、吊橋平行線
メインケーブル用鋼線として、引張強度が160kgf
/mm2 級あるいは180kgf/mm2 と高強度化さ
れたものが使用されている。更には、次期長大吊橋とし
て、中央支間長が2000mを超える橋も計画されてお
り、これに伴い、工期の短縮、構造の合理化のために
は、メインケーブル用鋼線の強度も180kgf/mm
2 級(例えば、200kgf/mm2 )にまで高強度化
されるものと予想される。
【0003】上記した鋼線の高強度化に伴い、ケーブル
の耐食性を向上させることが必要になる。その理由は、
図2に示す通り、直径が同じで強度の異なる2種類の鋼
線(160kgf/mm2 と200kgf/mm2 )を
用いた場合、同じ荷重を支えるのに必要な鋼線の本数を
比較すると、後者は前者の4/5ですむ(つまり、後者
のケーブル断面積は前者の4/5)が、鋼線を束ねたケ
ーブルが外層から同程度腐食された場合、腐食後のケー
ブル強度を比較すると、後者は前者より低くなるからで
ある。
【0004】一般に吊橋メインケーブルは、図3に示す
様に、めっきや樹脂塗布等の防錆処理が施された直径5
mm程度の表面処理鋼線(図4参照)を1〜3万本束ね
たものから構成されており、ケーブル外周には、ワイヤ
ーラッピングや塗装等の重防食が施されている。ケーブ
ルの耐食性を向上させるためには、重防食の性能を向上
させることが重要である。他方、表面処理鋼線自体の耐
食性を改善することも重要である。何故ならば、製造後
の表面処理鋼線は、架設まで倉庫内で保管されており、
結露・乾燥の乾湿繰り返しを受ける恐れがあるからであ
る。また、架設後、橋桁等の工事が行われた後で重防食
が施されるため、表面処理鋼線は、1〜2年、海上等に
暴露される。従って、重防食前の表面処理鋼線が、この
様な環境下で激しく腐食されると、その上に、たとえ重
防食を施したとしもその効果が激減するからである。更
には、重防食を施したとしても表面処理鋼線と外界を完
全に遮断することは不可能であり、重防食内に水や空気
が入る恐れがあり、表面処理鋼線が湿潤環境下に曝さ
れ、腐食される恐れがあるからである。
【0005】この様な状況を踏まえて、主に吊橋初期に
おける耐食性の向上を目的として、鋼線にめっき付着量
が300g/m2 以上のZn系めっき層を形成した後、
種々の樹脂塗布や化成処理を施す方法が検討されてき
た。
【0006】例えば防錆開発の初期には、Zn系めっき
層の上にクロム酸系処理を施したものをそのまま製品と
して出荷していたが、皮膜中の6価クロム(Cr6+)が
雨等によって流出し耐食性が著しく劣化するうえ、6価
クロムによる公害問題の恐れにより適用されなくなっ
た。
【0007】この様な問題を回避すべく上記クロム酸系
処理に代わってタンニン酸系処理(特公昭54−227
81号、特公昭55−18786号、特公昭56−53
13号)あるいは水ガラス系の処理(特公昭55−30
593号)を施したものが提案されている。しかしなが
ら、このうちタンニン酸系処理の場合は、架設後に比較
的短時間で耐食性が劣化することが分かった。一方、水
ガラス系処理の場合は、製造時や架設時に鋼線が構造物
に接触すると、皮膜が粉状になって脱落する場合がある
等の問題があった。
【0008】あるいは特公昭62−40473号や特開
昭63−297613号には、Zn系めっき層の上にシ
リカの如き無機物を含有する有機樹脂層を施す方法が、
また特開昭61−60884号には、Zn系めっき層の
上にクロム酸−硫酸系(CrO3 −H2 SO4 )処理、
タンニン酸系処理若しくはリン酸塩系処理を施した後に
有機樹脂を塗布するといった防錆処理皮膜付与方法が提
案されている。しかしながら、前者の無機物含有有機樹
脂層を施す方法では、上述した乾湿繰り返し、屋外暴
露、湿潤環境下では、図5に示す様に、剥離や疵付きに
よって生じる樹脂欠陥部を起点として塗膜の下を進行す
る腐食(塗膜下腐食)が容易に進行するという問題を有
している。一方、後者の防錆処理皮膜付与法のうちクロ
ム酸−硫酸系処理若しくはタンニン酸系処理を施した後
に有機樹脂を塗布する方法では、下層皮膜中のCr6+
の水可溶性成分を難溶化することによって樹脂の密着性
は向上するものの、めっき内部にまで到達する疵が入っ
た場合には、上記水可溶性成分が溶出して疵付き部に皮
膜を再生する作用(自己修復作用)がほとんど働かない
ため、疵付き部を再度覆うことが困難になる。そのた
め、図5に示す疵付き部からのZnの溶出が激しくな
り、結果として、塗膜下腐食を抑制できないという問題
がある。逆に水可溶性成分を多くすると樹脂の密着性が
劣化したり、Cr6+等の水可溶性成分が溶出し過ぎると
いう問題が生じる。またリン酸塩系処理を施した後に有
機樹脂を塗布する方法では、樹脂の密着性は向上するが
防錆処理皮膜に疵が入った場合には、上記と同様に塗膜
下腐食を抑制できないという問題を抱えている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであって、その目的は、ケーブル架
設中にも皮膜が剥離しない高度の密着性を有し、乾湿
繰り返し、屋外暴露、湿潤環境下における耐食性、特
に、皮膜欠陥部からの塗膜下腐食の進行を抑制する高度
の耐食性を具備すると共に、水可溶性のCr6+等が溶
出しない高度の耐Cr溶出性といった特性を全て兼ね備
えた吊橋ケーブル用鋼線を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明の耐食性、密着性および耐Cr溶出性に
優れた吊橋ケーブル用鋼線とは、鋼線の上に、めっき付
着量が300g/m2以上であり且つ下層にZn−Fe
系合金層を有する溶融Zn系めっき層、Cr付着量が3
0〜200mg/m2 でありSi/Cr(重量比)が
0.2〜2.0であるSiO2 含有クロメート層、およ
び有機樹脂付着量が3〜25g/m2 の有機樹脂層を順
次被覆したものであるところに要旨を有するものであ
る。特に本発明では、クロメート層中に、Crに対して
特定の比率のSiO2 を含有させることによって樹脂の
密着性を向上させ、塗膜下腐食を抑制し得たところに最
大の特徴を有するものである。
【0011】尚、本発明において、耐食性、密着性およ
び耐クロム溶出性の更なる向上を図るべく、(a)溶融
Zn系めっき層が、Zn−Fe合金層よりなる下層と、
Zn:99.9%以上、Al:0.05%以下、Pb:
0.005%以下、Ni:0.03%以下、Sn:0.
002%以下を含有する純Zn層よりなる上層から構成
されているものや、(b)有機樹脂としてエポキシ系樹
脂を使用するものは、いずれも本発明のより好ましい実
施態様である。上述した本発明の吊橋ケーブル用鋼線
は、特に180kgf/mm2 以上の強度を有する硬鋼
線を用いた場合に有用である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明者らは、吊橋ケーブル用鋼
線に耐食性、密着性および耐Cr溶出性の諸特性を兼備
させることを目的として、Zn系めっき層の上にクロム
酸系処理および有機樹脂を順次施した従来の防錆被覆処
理法の改善について鋭意研究してきた。
【0013】その結果、まず、吊橋ケーブル用鋼線に、
下層にZn−Fe系合金層を有する付着量300g/m
2 以上の溶融Zn系めっき層を形成し、引き続き、クロ
メート皮膜を形成するに当たり、クロメート層中のCr
付着量を制御することによって、自己修復作用に必要な
Cr6+の量を確保すると共に、クロメート層中に特定量
のSiO2 を含有させることによって上層の有機樹脂と
の密着性を一段と高めることができた。更に、樹脂との
密着性の向上に加えて樹脂の付着量を制御することによ
って水可溶性Cr6+の皮膜外への溶出を抑制し得た。そ
して、この様な全ての要件を満足させることによって、
密着性や耐Cr溶出性の向上は勿論のこと、最終的に、
図5に示す様に、自己修復作用を確保することによって
Zn2+およびe- の発生反応を抑制する;樹脂の付着量
を確保することによって外界からのH2 OやO2 の透過
を抑制する;樹脂との密着性の向上を図るといった三つ
の効果により、塗膜下腐食の進行を著しく抑制すること
に成功したのである。
【0014】即ち、本発明の吊橋ケーブル用鋼線は、鋼
線の上に、(i)めっき付着量が300g/m2 以上で
あり且つ下層にZn−Fe系合金層を有する溶融Zn系
めっき層、(ii)Cr付着量が30〜200mg/m2
でありSi/Crが0.2〜2.0であるSiO2 含有
クロメート層、および(iii )有機樹脂付着量が3〜2
5g/m2 の有機樹脂層を順次被覆したところに特徴を
有するものである。
【0015】図6は、本発明に係わる吊橋ケーブル用鋼
線の断面構造を示す模式図であり、同図から明らかな様
に、本発明の鋼線は、鋼線1の周囲に、最下層にZn−
Fe系合金層2を有する溶融Zn系めっき層3を下層と
し、クロメート層4を中間層とし、有機樹脂層5を上層
とする三層構造からなる防錆処理を施したものである。
【0016】ここで、本発明における溶融Zn系めっき
とは、ZnもしくはZnを主成分としてAl,Pb,S
b,Sn,Mg,Ni,Ce,La,Si,Fe,Cu
等の元素を含有せしめた溶融めっきを意味するものであ
り、Zn−5%Alめっきの様な二元系めっきも本発明
に含まれるものである。更には、溶融Zn系めっき層中
の最下層に位置するZn−Fe系合金層とは、Zn−F
e合金を主成分として、Al,Si,Ni,Pb,S
b,Sn等の元素を含有せしめた合金を意味するもので
あり、Zn−Fe−Al合金の様な三元系合金も本発明
に含まれるものである。
【0017】尚、より高度の耐食性や耐Cr溶出性の付
与を目的として、上記溶融Zn系めっき層中の最下層の
Zn−Fe系合金層をZn−Fe合金層とし、そのZn
−Fe合金層を除いた溶融Zn系めっき層中の上層を、
Zn含有量が99.9%以上で、且つZn以外の不純物
量が適切に制御された純Zn層とすることが推奨され
る。
【0018】この様に、本発明者らは、溶融Zn系めっ
き層中の上層のZn含有量を極力上げて不純物量を低下
させることにより、図7に示す様に、クロメート層とめ
っき層との均一で強固な反応を達成して、樹脂との密着
性を更に向上させ、外界から透過してくるH2 OやO2
により発生する塗膜下腐食の起点を極力減らし、塗膜下
腐食の進行を更に著しく抑制することに成功したのであ
る。更には、樹脂との密着性を格段に向上させることに
より、耐Cr溶出性の更なる改良に成功したのである。
図8は、この様な構造からなるZn系めっき層を有する
吊橋ケーブル用鋼線の断面構造を示す模式図であり、図
中6はZn−Fe合金層を、7は純Zn層を夫々表す。
以下、各要件について詳細に説明する。
【0019】まず、本発明に用いられる鋼線は、JIS
−G3502(ピアノ線材)に規定されているSWR7
7Bに相当する線材を用い、これを熱間圧延、熱処理、
冷間伸線を順次施すことによって所定の強度や伸び、線
径等にしたものである。本発明では、特に強度が180
kgf/mm2 以上の硬鋼線を対象にしている。
【0020】次に、本発明における防錆皮膜の下層に位
置する溶融Zn系めっき層では、めっき付着量を300
g/m2 以上にし且つ下層にZn−Fe系合金層を有す
る二層構造にすることが必要である。一般に吊橋の耐用
年数は100年以上と考えられるが、上記めっき付着量
が300g/m2 未満であるか、或いは上記めっき層が
二層構造となっていない場合には、その様な長期間に亙
って高耐食性を維持することが不十分になるからであ
る。即ち、溶融Zn系めっき層の上に施されるクロメー
ト層や有機樹脂層は、Zn系めっき層の腐食開始時期と
進行速度を数倍程度遅延させる効果はあるが、耐食性の
基本となるのは、あくまでもZn系めっき層であり、そ
のめっき付着量を制御し、このZnめっき層において、
上層には腐食環境で溶出し易い純度の高いZn層(例え
ば、純Zn層7)を設け、下層には該上層よりは溶出し
難い合金層(例えばZn−Fe系合金層2、Zn−Fe
合金層6)を設けた二層構造とすることにより、上層の
腐食生成物が下層を覆って高度の耐食性を発揮させるこ
とが肝要なのである。
【0021】尚、塗膜下腐食のより一層の抑制、耐Cr
溶出性のより一層の改良のためには、本発明における上
層の純Zn層中のZnを99.9%以上とすることが必
要であり、且つ不純物の成分組成についてもAl:0.
05%以下、Pb:0.005%以下、Ni:0.03
%以下、Sn:0.002%以下に夫々制御することが
必要である。これらの含有量が上記範囲外の場合には、
図7に示す如くクロメート層とめっき層の反応が不均一
で若干弱くなり、水可溶性のCr6+が雨水等によって皮
膜外へ溶出し易くなるうえ、塗膜下腐食の抑制能力が若
干低下するからである。
【0022】次に、本発明における防錆皮膜の中層に位
置するクロメート層では、Cr付着量を30〜200m
g/m2 の範囲に制御することが必要である。Cr付着
量が30mg/m2 未満では、クロメート層中の水可溶
性Cr6+の量が不足してクロメート層の形成による自己
修復作用が得られず、図5に示す様に欠陥部からZnが
溶解してアノードとなり、健全部がカソードとなり、塗
膜下腐食の抑制に悪影響を及ぼすからである。好ましい
下限値は、Cr付着量が40mg/m2 であり、より好
ましくは70mg/m2 である。一方、200mg/m
2 を超えるとクロメート層自体が凝集破壊を起こし易く
なって密着性が低下するうえ、水可溶性Cr6+が増加し
過ぎて雨水等によって皮膜外へ溶出し易くなる。好まし
い上限値はCr付着量が180mg/m2 であり、より
好ましくは150mg/m2 である。
【0023】本発明では、このクロメート層中にSiO
2 を添加するところに最大の特徴を有するが、その量
は、全Cr量に対する全Si量(Si/Cr,いずれも
金属換算)を重量比で0.2〜2.0の範囲に制御する
ことが必要である。この比が0.2未満では、上層の有
機樹脂層との密着性が低下して塗膜下腐食が抑制され難
くなるうえ、水可溶性Cr6+が皮膜外へ溶出し易くな
る。一方、上記比が2.0を超えると、クロメート層自
体が硬くなって凝集破壊を起こし易くなり、密着性が低
下するという不具合を生じる。
【0024】上記SiO2 としては、乾式製法によって
得られる粉末状のものや湿式製法によって得られるコロ
イド状のものが挙げられるが、その粒径は通常、5〜5
00nmである。更に密着性の向上を目的として、Si
2 の代わりにAl23 、TiO2 、ZrO2 等の酸
化物や、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系等の
有機バインダーを用いても良いし、或いは、これらの成
分をSiO2 と共にクロメート層中に含有させることも
可能である。その他、めっき層との反応を促進させるた
めに、リン酸、弗化水素酸、珪弗化水素酸等の金属塩を
クロメート層中に含有させることも有効である。
【0025】最後に、本発明における防錆皮膜の上層に
位置する有機樹脂層は、樹脂付着量を3〜25g/m2
の範囲にすることが必要である。この付着量が3g/m
2 未満では、倉庫内保管時や海上暴露時における耐食性
が低下するうえ、雨水等によって皮膜外へ水可溶性Cr
6+が溶出し易くなるからである。好ましい樹脂付着量の
下限値は5g/m2 であり、より好ましくは7g/m2
である。一方、上記付着量が25g/m2 を超えると、
有機樹脂層自体が凝集破壊を起こし易くなり、鋼線と構
造物が接触した際に剥離が発生し易くなるという問題が
生じる。好ましい樹脂付着量の上限値は22g/m2
あり、より好ましくは18g/m2 である。
【0026】上記有機樹脂としては、耐食性、密着性お
よび耐Cr溶出性の向上を考慮すると、エポキシ系樹脂
の使用が推奨されるが、これに限定されるものではな
く、その様な作用を有する樹脂であれば、例えばポリエ
ステル系、アクリル系、アルキド系、ウレタン系、ポリ
エチレン系、フッ素系、シリコン系、フタル酸系、塩化
ゴム系、メラミン系、フェノール系等の樹脂を用いるこ
とも可能である。また上記作用を維持する範囲内におい
て、上記有機樹脂層中にSiO2 等の無機物や有機・無
機顔料、染料等を含有させることも勿論可能である。
【0027】以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、先に述べた主旨を逸脱しない範囲における硬鋼線
は、全て、本発明の技術的範囲に包含される。
【0028】
【実施例】本発明例に相当するサンプルの成分組成を表
1及び表2に、比較例に相当するサンプルの成分組成を
表3及び表4に示すと共に、それらの作製方法を下記に
詳述する。
【0029】1)サンプルの作製 被処理鋼線 被処理鋼線として直径φ=5.2mm、長さ200m
m、強度187kgf/mm2 の鋼線を用いた。
【0030】溶融Zn系めっき JIS H 2107に規定される最純Zn地金を浴中に
溶解した後、必要に応じて純度99.95%のAl,純
度99.999%のPb,純度99.95%のNiおよ
び純度99.999%Sn板あるいは粒を同浴中で溶解
することによって溶融めっき浴を調整した。
【0031】次に、上記の鋼線をアルカリ水溶液にて
脱脂した後、塩酸で酸洗してからZnCl−NH4 Cl
系のフラックスにて処理した。続いて、上記の溶融めっ
き浴中に上記の鋼線を垂直に浸漬して引き上げること
によって溶融Zn系めっき鋼線を作製した。また、溶融
Zn−Al系めっき鋼線(本発明例のNo.18および1
9)の場合は、引き続き、この溶融Zn系めっき鋼線を
上記地金で調整したZn−Al系溶融めっき浴中に垂直
に浸漬して引き上げることによって作製した。尚、めっ
き付着量は、めっき浴温度および浸漬時間を制御するこ
とによって調整した。
【0032】クロメート処理 の様にして作製された溶融Zn系めっき鋼線をクロメ
ート処理液[関西ペイント(株)製コスマーC]中に垂
直に浸漬した後引き上げ、垂直のままで保持して処理液
を切った後、到達鋼線温度が80℃となる条件にて乾燥
させた。尚、Cr付着量は処理液の濃度を変化させるこ
とによって調整し、Si/Crの比は処理液のCr濃度
を変化させることによって調整した。
【0033】またクロメート層中にSiO2 を添加しな
い比較例(表3のNo.7〜9および表4のNo.19〜2
1)は、クロム酸−硫酸系の処理液(30g/CrO3
−1.0g/H2 SO4 ,25℃)中に、の要領で作
製したZn系めっき鋼線を浸漬して引き上げた後、水洗
し、到達鋼線温度が80℃になる条件にて乾燥すること
により調製した。尚、Cr付着量は浸漬時間を変化させ
ることによって調整した。
【0034】樹脂塗布 で作製した各クロメート処理Zn系めっき鋼線または
で作製したZn系めっき鋼線を、エポキシ系樹脂液
[久保孝ペイント(株)製コベロン]またはポリエステ
ル系樹脂液[日本ペイント(株)製No.700−2]中
に垂直に浸漬して引き上げ、垂直のままで保持して処理
液を切った後、到達鋼線温度が150℃になる条件にて
焼き付けた。尚、樹脂付着量は樹脂液の固形分濃度を変
化させることによって調整した。
【0035】2)めっき付着量、合金層の有無およびめ
っき層組成の測定 上述の様にして作製されたサンプルのめっき付着量、上
層めっき層の組成、下層Zn−Fe系合金層の有無、C
rおよびSi付着量、並びに樹脂付着量を下記の要領で
測定した。
【0036】めっき付着量 Zn系めっき鋼線を酸にて溶解し溶解前後の重量差を求
め、その差を表面積で除することによりめっき付着量を
算出した。
【0037】下層Zn−Fe系合金層 Zn系めっき鋼線を切断し、樹脂に埋め込み、断面を研
磨した後、0.05vol%ナイタール(3vol%硝
酸/メタノール)−0.5vol%HCl−エタノール
溶液で数秒間エッチングした。続いて、その断面を光学
顕微鏡で観察し、溶融Zn系めっき層がZn−Fe系合
金層の下層とそれ以外の上層の二層構造になっているこ
とを確認した。図9は、その観察結果を示す顕微鏡写真
である。
【0038】上層めっき層の組成 Zn系めっき鋼線を室温で5%KCl水溶液中に浸漬し
た後、電流密度10mA/cm2 のアノード定電流電解
を行ってめっき層を溶解した。この溶解処理と並行して
電解電位を測定し、電解電位が電解開始時の電位から上
昇し始めた時点をもって上層めっき層が溶解した終点と
判断し、その時点でめっき鋼材を取り出し、それまでに
溶出した各々の元素をフレームレス原子吸光発光分析法
にて定量することにより、めっき層の組成を算出した。
【0039】CrおよびSi付着量 クロメート処理Znめっき鋼線をめっきごと酸で溶解
し、原子吸光発光分析法によりCr量およびSi量を定
量した。引き続き鋼線の表面積を測定し、Cr量を該表
面積で除してCr付着量を算出した。また、Si量をC
r量で除し、Si/Crの重量比を算出した。
【0040】) 樹脂付着量 樹脂を塗布したサンプルをテトラヒドロフラン中に浸漬
して樹脂を溶解し、溶解前後の重量差を求め、その差を
表面積で除すことによって樹脂付着量とした。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】3)評価試験 耐食性 1)白錆発生 サンプルをJIS Z 2371の塩水噴霧試験(SS
T)に1440時間供試した場合と、50℃,R.H.
98%の条件下にて8時間−屋外にて16時間暴露する
工程を1サイクルとする乾湿繰り返し試験に60サイク
ル供試した場合について、夫々、表面の白錆発生率を調
査した。評価基準は以下の通りである。 ○:白錆発生率<1% △: 〃 =1%以上10%未満 ×: 〃 >10%
【0046】2)塗膜下腐食 図10に示す様に、サンプルの長さ方向の真ん中且つ円
周方向に、Zn系めっき層にまで到達する疵をカッター
ナイフで付した後、JIS Z 2371の塩水噴霧試験
を720時間実施し、疵からの片側最大塗膜膨れ幅を測
定した。評価基準は以下の通りである。 ◎:膨れ幅<3mm ○: 〃 =3mm以上5mm未満 △: 〃 =5mm以上10mm未満 ×: 〃 >10mm
【0047】密着性 サンプルを半径:r=25mmのコーナーに沿って18
0°曲げ、その曲げ部の凸部にセロハンテープを貼って
密着させた後剥離し、皮膜の剥離面積を調査した。評価
基準は以下の通りである。 ○:皮膜の剥離面積<1% △: 〃 =1%超5%未満 ×: 〃 >5%
【0048】耐Cr溶出性 沸騰した脱イオン水(2L)中にサンプル300本を3
0分間浸漬した後、溶出したCr量をフレームレス原子
吸光発光分析法により定量した。続いてCr量を処理面
積で除すことによってCr溶出量を算出した。評価基準
は以下の通りである。 ◎:Cr溶出量<0.03mg/m2 ○: 〃 =0.03以上0.05mg/m2 未満 △: 〃 =0.05以上0.10mg/m2 未満 ×: 〃 >0.10mg/m2 本発明例の試験結果を表5及び表6に、比較例の試験結
果を表7及び表8に夫々示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】表5及び表6の結果から明らかな様に、本
発明の規定要件を満足する本発明例No.1〜25は、い
ずれも耐食性、密着性および耐Cr溶出性に優れてい
る。更に、より高度の耐食性や耐Cr溶出性の付与を目
的として、溶融Zn系めっき層中の上層のめっき層組成
を、Zn含有量が99.9%以上とし、且つZn以外の
不純物の量を適切に制御した本発明例No.26〜46
は、耐Cr溶出性、塗膜下腐食の抑制効果がNo.1〜2
5より更に優れている。これに対して、表7及び表8の
結果から明らかな様に、本発明の要件を満足しない比較
例は以下の様な不具合を有している。
【0054】比較例1のNo.1はCr付着量が少ないた
め耐食性に劣り、一方No.2はCr付着量が多いため密
着性および耐Cr溶出性が悪い。No.3はクロメート皮
膜中のSi/Cr比が低く、No.4はこの比が高い例で
あるが、いずれも密着性および耐Cr溶出性の両方が劣
っている。No.5は樹脂付着量が少ないため耐食性およ
び耐Cr溶出性に劣り、No.6は樹脂付着量が多いため
密着性が悪い。
【0055】比較例1のNo.7〜9は、従来のCrO3
−H2 SO4 系クロメート処理を行った例である。この
うちNo.7は有機樹脂を塗布しているものの、クロメー
ト皮膜中にSiO2 を含有していないため、耐食性のな
かでも特に塗膜下腐食の抑制効果が得られず、更に密着
性や耐Cr溶出性も劣る。一方、No.8,9は有機樹脂
を塗布していないため耐食性、密着性および耐Cr溶出
性の全ての点で劣っている。No.10〜12はクロメー
ト処理を行わずに樹脂を直接塗布しているため、耐食性
および密着性が劣っている。
【0056】更に、本発明の要件を満足しない比較例2
は、溶融Zn系めっき層の構成は本発明の要件を満足し
ているが、その他の要件を具備しない比較例2は、以下
の様な不具合を有している。
【0057】比較例2のNo.13はCr付着量が少ない
ため耐食性に劣り、一方、No.14はCr付着量が多い
ために密着性および耐Cr溶出性が劣っている。No.1
5はクロメート皮膜中のSi/Cr比が低く、No.16
はこの比が高い例であるが、いずれも密着性および耐C
r溶出性、並びに塗膜下腐食の抑制効果が劣っている。
No.17は樹脂付着量が少ないため耐食性および耐Cr
溶出性が劣り、No.18は樹脂付着量が多いために密着
性が劣っている。
【0058】No.19〜21は、従来のCrO3 −H2
SO4 系クロメート処理を施した例である。このうちN
o.19は、有機樹脂を塗布しているものの、クロメート
皮膜中にSiO2 を含有していないため、耐食性のなか
でも特に塗膜下腐食の抑制効果が得られず、更に密着性
および耐Cr溶出性も劣っている。一方、No.20およ
びNo.21は樹脂を塗布していないため耐食性、密着性
および耐Cr溶出性が劣っている。No.22〜24は、
クロメート処理を行わず樹脂を直接塗布した例であり、
耐食性および密着性が劣っている。
【0059】
【発明の効果】本発明の吊橋ケーブル用鋼線は、上記の
様に構成されているので、従来のクロメート処理層のみ
をめっき層の上に設けた鋼線と比較して耐Cr溶出性が
格段に優れており、有機樹脂のみを塗布した鋼線および
従来のクロメート処理を行った後に有機樹脂を塗布した
鋼線と比較しても耐食性および密着性の双方に優れてい
る。本発明では、特に乾湿繰り返し、屋外暴露、湿潤環
境下での塗膜下腐食を格段に改善することができる。更
には、溶融Zn系めっき層中の上層めっき層のZnの含
有率を高めることにより、更なる塗膜下腐食の改善、耐
Cr溶出性の改善を達成することができる。
【0060】この様に本発明鋼線は、吊橋ケーブル用鋼
線の更なる高強度化、ひいては吊橋の一層の長大化を可
能にすると共に、長大吊橋のメンテナンスの簡略化、寿
命の向上等に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】長大吊橋の外観を示す模式図である。
【図2】吊橋ケーブル用鋼線の高強度化に伴って耐食性
を高める必要性を示す説明図である。
【図3】吊橋メインケーブルの構成を示す模式図であ
る。
【図4】吊橋メインケーブルに用いられる表面処理鋼線
の模式図である。
【図5】塗膜下腐食状況を示す模式図である。
【図6】本発明に係わる吊橋メインケーブル用表面処理
鋼線の概略断面を示す模式図である。
【図7】溶融Zn系めっき層中の上層めっき層のZn純
度の向上によってクロメート層との反応が均一且つ強固
になることを示す説明図である。
【図8】本発明に係わるめっき層の組成を規定した吊橋
メインケーブル用表面処理鋼線の概略断面を示す模式図
である。
【図9】溶融Zn系めっき鋼線のめっき層断面を示す光
学顕微鏡写真である。
【図10】塩水噴霧試験によって塗膜下腐食を評価する
際のサンプルの状況を示す説明図である。
【符号の説明】
1 鋼線 2 Zn−Fe系合金層 3 溶融Zn系めっき層 4 クロメート層 5 有機樹脂層 6 Zn−Fe合金層 7 純Zn層

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼線の上に、めっき付着量が300g/
    2 以上であり且つ下層にZn−Fe系合金層を有する
    溶融Zn系めっき層、Cr付着量(金属Cr換算、以下
    同じ)が30〜200mg/m2 でありSi(金属Si
    換算、以下同じ)/Cr(重量比)が0.2〜2.0で
    あるSiO2 含有クロメート層、および有機樹脂付着量
    が3〜25g/m2 の有機樹脂層を順次被覆したもので
    あることを特徴とする耐食性、密着性および耐Cr溶出
    性に優れた吊橋ケーブル用鋼線。
  2. 【請求項2】 前記溶融Zn系めっき層が、Zn−Fe
    合金層よりなる下層と、Zn:99.9%(重量%、以
    下同じ)以上、Al:0.05%以下、Pb:0.00
    5%以下、Ni:0.03%以下、Sn:0.002%
    以下を含有する純Zn層よりなる上層から構成されてい
    る請求項1に記載の吊橋ケーブル用鋼線。
  3. 【請求項3】 前記有機樹脂がエポキシ系樹脂である請
    求項1または2に記載の吊橋ケーブル用鋼線。
  4. 【請求項4】 前記鋼線が180kgf/mm2 以上の
    引張強度を有する硬鋼線である請求項1〜3のいずれか
    に記載の吊橋ケーブル用鋼線。
JP7231671A 1995-09-08 1995-09-08 耐食性、密着性および耐Cr溶出性に優れた吊橋ケーブル用鋼線 Withdrawn JPH0978526A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20100076140A (ko) * 2008-12-26 2010-07-06 재단법인 포항산업과학연구원 Mr유체 케이블 및 그 시스템
KR101429052B1 (ko) * 2012-04-12 2014-08-11 구로사와 겐세츠 가부시키가이샤 이중 방청 pc 강연선
CN107675622A (zh) * 2017-10-26 2018-02-09 杨晓艳 一种高强度低自重的钢丝桥梁缆索
JP2021179371A (ja) * 2020-05-14 2021-11-18 旭化成ホームズ株式会社 部材の耐用年数推定方法

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