JPH10108697A - アンモニア酸化細菌の硝化活性阻害の測定方法 - Google Patents

アンモニア酸化細菌の硝化活性阻害の測定方法

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JPH10108697A
JPH10108697A JP8267053A JP26705396A JPH10108697A JP H10108697 A JPH10108697 A JP H10108697A JP 8267053 A JP8267053 A JP 8267053A JP 26705396 A JP26705396 A JP 26705396A JP H10108697 A JPH10108697 A JP H10108697A
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ammonia
gene
oxidizing bacteria
oxidizing
bacteria
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Taro Iiizumi
太郎 飯泉
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Kurita Water Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アンモニア酸化細菌の硝化活性の阻害の有無
または阻害の程度を簡便かつ迅速に検知することができ
る方法を提案する。 【解決手段】アンモニア酸化細菌にルシフェラーゼ遺伝
子を導入して形質転換したアンモニア酸化細菌組換え体
を、試料を含む培地を用いて培養し、前記組換え体が示
す発光強度を指標とするアンモニア酸化細菌の硝化活性
阻害の測定方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンモニア酸化細
菌の硝化活性阻害の測定方法に関し、さらに詳しくはル
シフェラーゼ遺伝子を導入して形質転換したアンモニア
酸化細菌組換え体を用いたアンモニア酸化細菌の硝化活
性阻害の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アンモニア酸化細菌はアンモニアを酸化
して亜硝酸を生成する化学反応を通じてエネルギーを獲
得する独立栄養細菌であり、この細菌によるアンモニア
酸化反応は自然環境中の窒素循環において重要な役割を
担っている。ニトロソモナス(Nitrosomonas)属細菌は
このようなアンモニア酸化細菌に属する細菌であり、土
壌、水中、排水プラント等の環境中に広く生息すること
が知られている。
【0003】環境浄化における排水中のアンモニア性窒
素分除去は自然環境中の窒素循環を模擬したプロセスに
よって行われている。すなわち、排水中のアンモニアを
アンモニア酸化細菌および亜硝酸酸化細菌を用いて亜硝
酸または硝酸に酸化し、さらに窒素呼吸能を持つ細菌に
よって硝酸または亜硝酸を還元して窒素ガスとし、空気
中に放出する。しかしながら、BOD除去と比べて窒素分
除去プロセスはやや不安定である場合が多く、時として
処理能力が低下して処理水の水質悪化が起こる場合があ
り、排水処理プラントの運転管理上の問題点となってい
る。
【0004】この主な原因としては、活性汚泥中に含ま
れるアンモニア酸化細菌が他の従属栄養微生物と比べ、
環境変化に対して感受性が強く、温度やpH変化等の物理
的要因や、排水中に存在する低濃度の化学物質によっ
て、その生物活性が低下し易いことがあげられる。分子
微生物学観点から見た場合、アンモニア酸化の最初の酸
化反応において触媒として働くアンモニア酸化酵素(ア
ンモニアモノオキシゲナーゼ)が、様々な化学物質や物
理的要因によって失活し易いことが指摘されている。
【0005】このような物理的、化学的要因によるアン
モニア酸化細菌の生物活性低下を初期段階で検知し、迅
速に処理工程を改善するなどの方法をもって対応するこ
とは、排水処理プラントの運転管理上望ましいことであ
るが、環境中に存在する阻害物質や影響を与える物理的
要因は多岐にわたっており、機器分析や化学分析を用い
て個々の要因を分離定量することは事実上不可能であ
る。そのため、細胞に対する阻害要因を総括的に評価で
きるような、硝化細菌を利用した測定方法が必要とな
る。そしてこのような方法は、測定結果を速やかに排水
処理プラントの運転管理に適用することができるよう
に、特別な生化学技術に精通していない作業者にも容易
に扱える必要性があり、また迅速性および簡便性を備え
たものでなくてはならない。
【0006】従来技術において、アンモニア酸化細菌の
阻害は環境条件を模擬した条件下でのアンモニア酸化速
度の比較から推定することができる。すなわち、アンモ
ニア酸化細菌またはこの細菌を含む活性汚泥等の生物群
を、アンモニアを含む試験水中に懸濁し、環境条件を模
擬した条件下で好気的にインキュベーションし、アンモ
ニア濃度、溶存酸素濃度、亜硝酸濃度などを指標として
アンモニア酸化速度を測定し、その速度の減少を測定す
ることができる。しかしながら、このような方法は試料
中の指標物質の濃度測定を経時的に行い、その増減から
アンモニア酸化速度を算出するため、簡易性、迅速性に
欠けるという問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アン
モニア酸化細菌の硝化活性の阻害の有無または阻害の程
度を簡便かつ迅速に検知することができるアンモニア酸
化細菌の硝化活性阻害の測定方法を提案することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、次のアンモニ
ア酸化細菌の硝化活性阻害の測定方法である。 (1)アンモニア酸化細菌にルシフェラーゼ遺伝子を導
入して形質転換したアンモニア酸化細菌組換え体を、試
料を含む培地を用いて培養し、前記組換え体が示す発光
強度を指標とすることを特徴とするアンモニア酸化細菌
の硝化活性阻害の測定方法。 (2)アンモニア酸化細菌がNitrosomonas europaea
あることを特徴とする上記(1)記載の測定方法。 (3)アンモニア酸化細菌がNitrosomonas europaea IF
O14298株であることを特徴とする上記(1)記載の測定
方法。 (4)ルシフェラーゼ遺伝子がVibrio属由来のlux遺伝
子群であることを特徴とする上記(1)ないし(3)の
いずれかに記載の測定方法。 (5)ルシフェラーゼ遺伝子がVibrio harveyi ATCC338
43株由来のlux遺伝子群であることを特徴とする上記
(1)ないし(3)のいずれかに記載の測定方法。
【0009】本発明において宿主として使用するアンモ
ニア酸化細菌はアンモニアを酸化して亜硝酸を生成し、
このとき得られるエネルギーを用いて二酸化炭素の同化
を行う独立栄養細菌であり、具体的にはニトロソモナス
Nitrosomonas)属細菌、Nitrosospira属細菌、Nitros
ovibrio属細菌などがあげられる。さらに具体的にはNit
rosomonas europaea IFO14298株などがあげられる。こ
れらのアンモニア酸化細菌はATCC(American Type Cult
ure Collection)、IFO(Institute for Fermentation,
Osaka)などの公的微生物保存機関から入手可能であ
り、これらの機関から分譲されたものを使用することが
できる。また硝化脱窒処理系の生物汚泥等から分離した
ニトロソモナス属細菌などを使用することもできる。
【0010】アンモニア酸化細菌は、その生育に必要な
全てのエネルギーをアンモニアの酸化反応によって得
る。アンモニア酸化に始まる一連の酸化反応は、硝化酵
素、すなわちアンモニアモノオキシゲナーゼ(AMO)
とヒドロキシルアミンオキシドリダクターゼによって触
媒される。アンモニアモノオキシゲナーゼは下記反応式
(1)で示される反応を触媒する。
【化1】 NH3 + O2 + 2H+ + 2e- → NH2OH + H2O …(1) またヒドロキシルアミンオキシドリダクターゼは下記反
応式(2)で示される反応を触媒する。
【化2】 NH2OH + H2O → NO2 - + 5H+ + 4e- …(2)
【0011】後者の反応がエネルギー生成反応であり、
アンモニア1分子あたり4個の電子が生成する。電子は
チトクロムC554に受渡された後、未同定の電子受容体
に受渡される。このうち、およそ半分が電子伝達系に渡
りATP生成に利用される。残りの半分はアンモニアモノ
オキシゲナーゼによる酸化反応のための還元力として利
用される。
【0012】これらの硝化酵素は、アンモニア酸化細菌
の生育にとって中心的役割を演ずる酵素群であるにもか
かわらず、極めて低濃度の化学物質やpH変化等の物理
的要因によって容易に失活する。特にアンモニアモノオ
キシゲナーゼは感受性が高く、硝化阻害の主原因とされ
ている。
【0013】ルシフェラーゼは酸化反応を触媒し、生物
発光を引起こす発光酵素であり、大別して蛍等の動物細
胞由来のものと、Vibrio属細菌等の発光性細菌由来のも
のとが存在する。前者は下記反応式(3)、後者は下記
反応式(4)で示される酸化反応を触媒することによっ
て光を発する。
【0014】
【化3】 ルシフェリン + O2 + ATP → オキシルシフェリン + CO2 + ADP + ピロリン酸 + 光 …(3) 還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH2) + 長鎖アルデヒド(RCHO) + O2 → FMN + RCOOH + H2O + 光 …(4)
【0015】細菌ルシフェラーゼ反応において、FMNH2
は細胞内に存在するFMN還元酵素の反応によってNADHま
たはNADPHから生成するものであり、一定量のルシフェ
ラーゼおよびFMN還元酵素が存在する場合、発光の強度
はNADHおよびNADPHの濃度に依存する。アンモニア酸化
細菌において、NADHはヒドロキシルアミンオキシドリダ
クターゼによって生成した還元力のおよそ1/40を利
用して生成される。従って、硝化阻害物質によってアン
モニア酸化細菌のアンモニアモノオキシゲナーゼまたは
ヒドロキシルアミンオキシドリダクターゼが阻害された
場合、アンモニア酸化反応に始まる一連の酸化反応が停
止し、NADH濃度の急激な低下が起きる。このため、細胞
内のNADHの濃度を、生物発光の程度を指標としてモニタ
リングすることで、硝化阻害の強度を測定することが可
能である。動物細胞ルシフェラーゼにおいても、硝化阻
害物質によってアンモニア酸化酵素が阻害された場合、
還元物質の生成が停止し、ATP濃度の急激な低下が起こ
る。このため、細胞内のATPの濃度を、生物発光の程度
を指標としてモニタリングすることで、硝化阻害の強度
を測定することが可能である。
【0016】本発明で用いるルシフェラーゼ遺伝子は、
前記のように酸化反応によって生物発光を引起こすルシ
フェラーゼ蛋白質をコードする遺伝子であり、先に述べ
たように蛍等の動物細胞や、Vibrio属等の発光性細菌な
ど、種々の生物細胞を起源とするものが使用できるが、
細胞培養が容易であることや通常の微生物細胞内には存
在しない基質(ルシフェリン)を必要としないことか
ら、Vibrio属、Photobactrerium属等の細菌細胞由来の
ルシフェラーゼ遺伝子を使用することが望ましい。ルシ
フェラーゼ遺伝子の具体的なものとしては、luxAB等のl
ux遺伝子群およびこれらの遺伝子群を含むDNA断片など
があげられる。いくつかの細菌由来のルシフェラーゼ遺
伝子の塩基配列は公知になっており、このような遺伝子
としてはP. leiognathi PL741株由来のluxAB遺伝子(参
考文献:J. Biolumin. Chemilumin., 4, 326-341(198
9))、V. harveyi ATCC33843株由来のluxAB遺伝子(参
考文献:J. Biol. Chem., 260, 6139-6146(1985)、J. B
iol. Chem., 261, 4805-4811(1986))などがあげられ
る。Vibrio属、Photobactrerium属等の微生物は、自然
界から分離して使用することも可能であるが、ATCC、IF
Oなどの公的微生物保存機関から入手したものを使用す
ることもできる。
【0017】ルシフェラーゼ遺伝子は前記生物細胞から
抽出・精製したDNAより、公知の方法に基づいてクロー
ニングすることができる。例えば、大腸菌等の比較的扱
いやすい細菌細胞を宿主とし、プラスミド等をベクター
とした宿主−ベクター系を用いて遺伝子ライブラリーを
構築し、ルシフェラーゼ蛋白質のアミノ酸配列に対応す
るDNAプローブや、形質転換体の形質発現等を利用して
目的遺伝子を含む形質転換体をスクリーニングすること
が可能である。より簡便には、目的とするルシフェラー
ゼ蛋白質のアミノ酸配列や、既に蛋白質の一次構造が明
らかになっている異種ルシフェラーゼ間において高度に
保存されているアミノ酸領域に対応するDNA配列を用い
て、PCR(Polymerase Chain Reaction)を用いてクロー
ニングすることができる。
【0018】ルシフェラーゼ遺伝子の上流にはルシフェ
ラーゼ遺伝子をアンモニア酸化細菌内で発現させるため
のプロモーター領域が必要である。このようなプロモー
ター領域には、アンモニア酸化細菌由来のRNAポリメラ
ーゼで認識される転写開始領域が含まれている必要があ
る。アンモニア酸化細菌由来のRNAポリメラーゼにおけ
る共通認識配列はこれまでに報告されていないことか
ら、アンモニア酸化細菌内で発現させるためのプロモー
ター領域としては、アンモニア酸化細菌の既知遺伝子由
来の構造と機能が明らかになっているプロモーター、ま
たはプロモーターの存在が推測される既知遺伝子の5’
側上流領域が利用しやすい。具体的には、N. europaea
由来のアンモニアモノオキシゲナーゼ遺伝子(amo
5’側上流領域(参考文献:J. Bacteriol., 175, 2436
-2444 (1993))、N. europaea由来のヒドロキシルアミ
ンオキシドリダクターゼ遺伝子(hao)プロモーター
(参考文献:J. Bacteriol., 176, 3148-3153 (199
4))、およびこのプロモーターを含むDNA断片などが利
用できる。また異種生物由来のプロモーター領域も、ア
ンモニア酸化細菌内において機能するものであれば使用
することができる。
【0019】このようなプロモーター領域の下流に前記
ルシフェラーゼ遺伝子を連結した融合遺伝子を、宿主ア
ンモニア酸化細菌に導入することによって目的とするア
ンモニア酸化細菌組換え体を得ることができる。融合遺
伝子は、プロモーター領域とルシフェラーゼ遺伝子とを
公知の方法により連結することにより得られる。また融
合遺伝子の導入は、宿主となるアンモニア酸化細菌内で
自律的に複製可能であるプラスミド、ファージ等のベク
ターを用いて、宿主内にサテライトDNAの形態として共
存させることができる。またトランスポゾン、相同的組
換え等の手法によって、目的融合遺伝子を宿主染色体内
にインテグレートした状態で導入させることもできる。
【0020】上記のようにして得られたアンモニア酸化
細菌組換え体は培養によって増殖させることができる。
培養は組換え体に適した条件で行うのが好ましく、例え
ば20〜30℃で、アンモニア酸化細菌の培養に一般的
に使用される栄養培地、例えばP培地などを用いて行う
のが好ましい。培地は液体培地でも固体培地でもよい
が、液体培地が好ましい。プラスミドを含む組換え体の
場合、プラスミドを安定させるのに必要な適量の抗生物
質等を添加するのが好ましい。最初の植種量にもよる
が、通常3日〜7日間の培養時間で対数増殖期に達す
る。例えば、P培地を用いて培養した場合、対数増殖期
において、菌体濃度は1×106〜1×107cells/ml
となり、培養液の亜硝酸濃度はおよそ1〜10mMに達す
る。
【0021】アンモニア酸化細菌組換え体を用いて硝化
活性阻害の測定を行うには、上記組換え体培養液に硝化
活性阻害の有無の判定を行いたい試料を添加し、さらに
培養を継続させた後、組換え体が示す発光強度を測定す
ることにより行うことができる。使用する培養液は、上
記組換え体が対数増殖期の状態におかれているものがよ
り好ましい。また、対数増殖期の状態におかれている培
養液または菌体を、予め凍結または凍結乾燥等によって
処理し、低温下に保管したものを再び復元させて用いて
も差し支えない。試料添加後の培養時間は、発光強度の
変化が観察される時間でよく、おおむね1分間〜1時間
程度が適当である。培養温度は20〜30℃が好まし
い。
【0022】アンモニア酸化細菌の硝化活性が阻害され
ないコントロール試験では、細胞内には発光に必要な濃
度のNADHまたはATPが存在することになり、比較的強い
発光が生じる。これに対して、アンモニア酸化細菌の硝
化活性が阻害されている場合は、細胞内には十分な発光
に必要な濃度のNADHまたはATPが存在しないことにな
り、比較的弱い発光が生じるか、または全く発光しな
い。阻害の程度が大きい程、コントロールに対する発光
強度の低下は大きい。従って、発光の有無または発光強
度の低下により、硝化活性の阻害の有無または阻害の程
度を判定することができる。
【0023】発光は、ルミノメーター等の測定機器を用
いることにより定量的に測定することができる。反応は
短時間で起こることから測定時間は短い。また、組換え
体細胞を破壊することなく発光量を測定することができ
るので、操作は簡便かつ迅速に行うことができ、自動化
によるモニタリングも可能である。
【0024】発光は、ルシフェラーゼの活性およびアン
モニア酸化細菌の生物活性が高く維持される条件で測定
するのが好ましく、通常温度20〜30℃、pH7.5
〜8.0の条件で測定するのが好ましい。
【0025】ルシフェラーゼの基質を必要とする場合に
は、基質、例えば長鎖アルデヒドなどを添加して発光反
応を進めなければならない。添加する基質の具体的なも
のとしては、n−デシルアルデヒド、n−ノニルアルデ
ヒド等の長鎖アルデヒドなどがあげられる。基質生成に
関与する遺伝子、例えばVibrio属、Photobactrerium
等のアルデヒド合成遺伝子群、より具体的にはVibrio h
arveyiluxCDE遺伝子を含む組換え体においては、基質
を添加する必要はない。
【0026】このような方法により検出される硝化阻害
物質の種類は限定されず、例えばアリルチオ尿素、ニト
ラピリン(Nitrapyrin、2-chloro-6-trichloromethyl p
yridine)またはこれらの混合物、あるいはこれまでに
知られていない硝化阻害物質があげられる。また硝化阻
害物質以外にも、pH等の物理的阻害も測定することが
できる。
【0027】
【発明の効果】本発明のアンモニア酸化細菌の硝化活性
阻害の測定方法は、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するア
ンモニア酸化細菌組換え体を用いて、この組換え体細胞
の発光強度を硝化阻害の指標としているので、アンモニ
ア酸化細菌の硝化活性の阻害の有無または阻害の程度を
簡便かつ迅速に検知することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施例について説明
する。実施例で使用したプラスミド、微生物などは次の
通りである。 《Nitrosomonas europaea IFO14298株》IFO発行の「Lis
t of Cultures 1992 Microorganisms 9th Edition」に
記載されている。 《Vibrio harveyi ATCC33843株》ATCCから入手できる。
ATCC No.33843 (Catalogue of Bacteria & Phages 17th
edition, 1991)。 《Escherichia coli HB101株》コンピテントセルとして
東洋紡績株式会社より市販されている。
【0029】《pHSG296》大腸菌用プラスミドベクタ
ー。宝酒造株式会社より市販されている。 《pKK223-3》大腸菌用プラスミドベクター。ファルマシ
アバイオテク株式会社より市販されている。 《pKT240》IncQ系のプラスミド。ATCCから入手できる。
ATCC No.37258 (Catalogue of Recombinabt DNA Materi
als 2nd edition, 1991)
【0030】実施例1 (1)アンモニア酸化細菌組換え体の構築N. europaea細胞内でプロモーター活性を示す領域下流
に、V. harveyi ATCC33843株由来のルシフェラーゼ遺伝
子(luxAB遺伝子)をコードするプラスミドpALUX10およ
びpHLUX20の構築を以下のようにして行った。概略図を
図1に示す。得られたプラスミドを、後述の方法により
アンモニア酸化細菌に導入し、アンモニア酸化細菌組換
え体を得た。
【0031】《V. harveyi由来luxAB遺伝子のクローニ
ング》これまでに報告されているV. harveyi ATCC33843
株由来luxAB遺伝子配列より、5'-フランキング領域およ
び3'-フランキング領域に相当するオリゴヌクレオチド
プライマー、LX117、LX2268を合成した。これらオリゴ
ヌクレオチドの配列を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】次に、合成された2種類のオリゴヌクレオ
チドをプライマーとし、V. harveyiATCC33843株染色体D
NAを鋳型としたPCRを行った。PCRの試薬は宝酒造株式会
社製Takara PCR amplification kitを用いた。すなわ
ち、0.5μgのV. harveyi染色体DNA、20pmolの各プライ
マー、5μlの10 x PCR buffer、5μlの2.5mM dNTP mixt
ure、0.5μlの5U/μl Takara Taq polymeraseをパーキ
ンエルマー社製Micro Ampチューブ(商標)に加え、蒸
留水で50μlに調整した。これを、パーキンエルマー社
製Gene Amp PCR System 2400に移して、94℃で30秒間の
前処理の後、1サイクルが94℃30秒、55℃1分間、72℃
1分間の連続する反応よりなる反応を25サイクル繰返し
た。さらに72℃で10分間の後処理を行った。
【0034】増幅されたPCR産物はフェノール−クロロ
ホルム処理後、エタノール沈殿によって回収した。すな
わち、反応終了液は25:24:1の容量比のTE飽和フェノー
ル:クロロホルム:イソアミルアルコール混合液を加
え、10,000 x gで5分間の遠心分離後、上清を得た。こ
の上清の1/10容量に相当する3M 酢酸ナトリウムを加
え、よく混合したのち、2.5容量に相当するエタノール
を加え、混合後、-80℃に15分間放置した。10,000 x g
で10分間の遠心分離によって沈殿物として得られたPCR
産物は70%エタノールでリンスした後、減圧乾燥した。
【0035】得られたPCR産物はTE緩衝液(10mM Tris-C
l(pH 8.0), 1mM EDTA)に溶解し、1%アガロースゲル電
気泳動に供した。泳動終了後、ゲルを10μg/mlの臭化エ
チジウム溶液に移し、室温で30分間放置した。ゲルを充
分に水洗後、紫外線照射によってDNAバンドを検出し
た。その結果、2.2kbに相当する位置に明瞭なDNAバンド
を検出した。このDNAバンドを含むゲルを切出し、DNA C
ELL(草野科学器械製作所製、商標)を用いてゲル中に
含まれているDNAを抽出し、ルシフェラーゼをコードす
luxAB遺伝子を含む2.2kbのDNA断片を得た。このDNA断
片は、上記と同様にしてフェノール−クロロホルム処理
した後、エタノール沈殿によって回収し、TE緩衝液に溶
解し、後述のプラスミドの構築に用いた。
【0036】《N. europaea由来プロモーター領域のク
ローニング》N. europaea染色体DNAより、プロモーター
の存在が推測されるamo遺伝子5’側上流領域、および
機能と構造が報告されているプロモーターであるhao
伝子由来のプロモーター領域のPCRクローニングを、表
2、表3に示すプライマーを用いて行った。その結果、
amo遺伝子5’側上流領域として0.24kbのPCR産物、hao
遺伝子プロモーター領域として0.35kbのPCR産物を得
た。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】《pKTK40の作製》図1におけるpKTK40は図
2に従って作成した。まずTn903由来のカナマイシンア
セチルトランスフェラーゼ遺伝子(カナマイシン耐性遺
伝子、以下KmRと記す場合がある)のPCRクローニング
を行った。すなわち、pHSG296プラスミドを鋳型DNAとし
て、表4に示す2種類のオリゴヌクレオチドをプライマ
ーとしてPCRを行った。
【0040】
【表4】
【0041】PCRの結果、1.2kbの増幅産物を得た。この
増幅産物をPstI、PvuIIで消化し、あらかじめpKT240をP
stI、PvuIIで消化した5.8kb断片とライゲーションし
た。ライゲーション産物は大腸菌HB101株に形質転換
し、得られた形質転換体よりpKKM712を得た(図2参
照)。
【0042】次に、大腸菌5S RNA遺伝子のターミネータ
ー領域(以下、rrnB T1T2と記す場合がある)のPCRクロ
ーニングを行った。すなわち、pKK223-3プラスミドDNA
を鋳型DNAとして、表5に示す2種類のオリゴヌクレオ
チドをプライマーとしてPCRを行った。
【0043】
【表5】
【0044】PCRの結果、0.3kbの増幅産物を得た。この
増幅産物をEcoT22I、PstIで消化し、あらかじめPstIで
消化しアルカリフォスファターゼ処理したpKKM712とラ
イゲーションした。ライゲーション産物は大腸菌HB101
株に形質転換し、得られた形質転換体よりpKTK40を得た
(図2参照)。
【0045】《プラスミドの構築およびアンモニア酸化
細菌への導入》こうして作成したpKTK40を用いて、図1
に従ってプラスミドの構築を行った。まずV. harveyi
色体DNAよりPCRクローニングしたluxABを含む前記2.2kb
のDNA断片をBamHIおよびBglIIによって消化し、予めBam
HIで消化しアルカリフォスファターゼ処理したpKTK40と
ライゲーションした。ライゲーション産物は大腸菌HB10
1株に形質転換し、得られた形質転換体よりpKLUX27を得
た(図1参照)。amo遺伝子5’側上流領域またはhao
伝子プロモーター領域をコードするPCR産物をBamHIおよ
BglIIで消化後、それぞれBamHIで消化しアルカリフォ
スファターゼ処理したpKLUX27にライゲーションした。
ライゲーション産物は大腸菌HB101株に形質転換し、得
られた形質転換体より、目的とするpALUX10(amo-luxA
B)およびpHLUX20(hao-luxAB)を得た(図1参照)。
得られたpALUX10、pHLUX20はそれぞれamo遺伝子5’側
上流領域、hao遺伝子プロモーターによって転写制御さ
れたluxAB遺伝子を含む。
【0046】上記のようにして得たpALUX10またはpHLUX
20をエレクトロポレーション法によりN. europaea IFO1
4298株に導入し、組換え体(形質転換体)N. europaea
(pALUX10)およびN. europaea(pHLUX20)を得た。なお装
置としてはバイオラッド(Bio-Rad)社製のジーンパルサ
ーおよびキュベットを使用した。すなわち、pALUX10ま
たはpHLUX20とN. europaeaとの混合液を氷冷しておいた
キュベット(電極間隔0.2cm)に移し、直ちにジーンパ
ルサー・キュベットチャンバーに装着して電気パルスを
かけた。パルスの設定条件は、5〜12.5kV/cm、5.0msec
とした。
【0047】(2)アンモニア酸化細菌組換え体を用い
た硝化阻害物質に対する応答試験 次に上記のようにして得たアンモニア酸化細菌組換え体
N. europaea(pALUX10)株を、25μg/mlのカナマイシンを
含むP培地(2.5g/l (NH4)2SO4, 0.7g/l KH2PO 4, 19.5g
/l Na2HPO4, 0.5g/l NaHCO3, 0.1g/l MgSO4・7H2O, 5mg/
l CaCl2・2H2O,1mg/l Fe-EDTA, pH 8.0)100mlを用い
て、500ml容フラスコにて、亜硝酸濃度が約5mMとなるま
で30℃で暗所にて好気的に振とう培養した。培養液を5m
lずつ培養用試験管に移し、典型的なアンモニアモノオ
キシゲナーゼの阻害物質であるアリルチオ尿素またはニ
トラピリン(Nitrapyrin、2-chloro-6-trichloromethyl
pyridine)をそれぞれ終濃度1μMまたは10μMとなるよ
うに添加した。なお阻害物質を添加しない系をコントロ
ールとした。
【0048】30℃で振とう培養を継続し、経時的に培養
液の一部をサンプリングしてその発光量を測定した。発
光は、予めエタノールで10倍に希釈したn-デシルアルデ
ヒド10μlを分注した発光測定用のキュベットに、前記
培養液0.2mlを添加することにより開始した。発光量の
測定はターナーデザイン社製のルミノメーター Model 2
0eを用い、delay time 5秒、integrate time 10秒の条
件で行った。結果を図3に示す。
【0049】またN. europaea(pALUX10)株の代わりにN.
europaea(pHLUX20)株を用いて、上記と同様にして培養
し、発光試験を実施した。結果を図4に示す。
【0050】図3および図4の結果からわかるように、
1μMもしくは10μMのアリルチオ尿素またはニトラピリ
ンを添加した系では、阻害剤添加後、短時間で発光量の
低下が起こることが示された。
【0051】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:29 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 CGGGATCCAA CAAATAAGGA AATGTTATG 29
【0052】配列番号:2 配列の長さ:30 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 CCAGATCTTC CATATAAATG CCTCTATTAG 30
【0053】配列番号:3 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 CGAGATCTTA CCCGTTATTC CAATCTG 27
【0054】配列番号:4 配列の長さ:26 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 CGGGATCCTT ATAGTTTAAA AGTAAC 26
【0055】配列番号:5 配列の長さ:28 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 CGAGATCTTC GAAATATTGA TGAGCAGC 28
【0056】配列番号:6 配列の長さ:25 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 CGGGATCCGT AAATATGCGG GTCAG 25
【0057】配列番号:7 配列の長さ:29 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 GGCTGCAGGA TCCAGCCAGA AAGTGAGGG 29
【0058】配列番号:8 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 GGCAGCTGCC GTCCCGTCAA GTCAGCG 27
【0059】配列番号:9 配列の長さ:27 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 GGATGCATGC GAGAGTAGGG AACTGCC 27
【0060】配列番号:10 配列の長さ:37 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成プライマーDNA 配列 GGCTGCAGCA TGCGACAGGA AGAGTTTGTA GAAACGC 37
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるpALUX10またはpHLUX20の構築
過程を示す概略図である。Km Rはカナマイシン耐性遺
伝子、rrnB T1T2は大腸菌リボゾームRNA遺伝子のターミ
ネーターを示す。
【図2】実施例1で用いたpKTK40の構築過程を示す概略
図である。
【図3】N. europaea(pALUX10)株の硝化阻害物質に対す
る発光応答の結果を示すグラフである。〇;終濃度10μ
Mのニトラピリンを添加した系、●;終濃度1μMのニト
ラピリンを添加した系、□;終濃度10μMのアリルチオ
尿素を添加した系、■;終濃度1μMのアリルチオ尿素を
添加した系、△;無添加系(コントロール)を表す。
【図4】N. europaea(pHLUX20)株の硝化阻害物質に対す
る発光応答の結果を示すグラフである。〇;終濃度10μ
Mのニトラピリンを添加した系、●;終濃度1μMのニト
ラピリンを添加した系、□;終濃度10μMのアリルチオ
尿素を添加した系、■;終濃度1μMのアリルチオ尿素を
添加した系、△;無添加系(コントロール)を表す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:01) (C12N 15/09 ZNA C12R 1:01)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンモニア酸化細菌にルシフェラーゼ遺
    伝子を導入して形質転換したアンモニア酸化細菌組換え
    体を、試料を含む培地を用いて培養し、前記組換え体が
    示す発光強度を指標とすることを特徴とするアンモニア
    酸化細菌の硝化活性阻害の測定方法。
  2. 【請求項2】 アンモニア酸化細菌がNitrosomonas eur
    opaeaであることを特徴とする請求項1記載の測定方
    法。
  3. 【請求項3】 アンモニア酸化細菌がNitrosomonas eur
    opaea IFO14298株であることを特徴とする請求項1記載
    の測定方法。
  4. 【請求項4】 ルシフェラーゼ遺伝子がVibrio属由来の
    lux遺伝子群であることを特徴とする請求項1ないし3
    のいずれかに記載の測定方法。
  5. 【請求項5】 ルシフェラーゼ遺伝子がVibrio harveyi
    ATCC33843株由来のlux遺伝子群であることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかに記載の測定方法。
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CN111320265A (zh) * 2018-12-17 2020-06-23 中国石油化工股份有限公司 一种厌氧氨氧化污泥活性评价方法及应用

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