JPH10110201A - 脱脂方法およびそれにより得られる脱脂体並びに焼結体 - Google Patents

脱脂方法およびそれにより得られる脱脂体並びに焼結体

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JPH10110201A
JPH10110201A JP8263222A JP26322296A JPH10110201A JP H10110201 A JPH10110201 A JP H10110201A JP 8263222 A JP8263222 A JP 8263222A JP 26322296 A JP26322296 A JP 26322296A JP H10110201 A JPH10110201 A JP H10110201A
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degreasing
degreasing method
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aqueous solvent
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Takemori Takayama
武盛 高山
Yoshitaka Oyama
良隆 大山
Masato Miyake
正人 三宅
Katsuyoshi Saito
勝義 斎藤
Yutaka Ono
裕 小野
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Komatsu Ltd
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Komatsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱による急激な分解気化,膨張を考慮する必
要がなく、脱脂時間を短縮することのできる水溶媒抽出
脱脂方法を提供する。 【解決手段】 粉末と有機バインダーとを混合して射出
成形してなる成形体から有機バインダーを脱脂する際、
有機バインダーを、少なくとも一種以上の水溶性有機化
合物と少なくとも一種以上の非水溶性の熱可塑性樹脂よ
りなるものとし、かつ脱脂工程を、水を溶媒として前記
成形体中の有機バインダーから前記水溶性有機化合物を
抽出する水溶媒抽出工程を含むものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉末と有機バイン
ダーとを混合して射出成形してなる成形体から前記有機
バインダーを脱脂する脱脂方法およびその脱脂方法によ
り得られる脱脂体並びにその脱脂体を焼結して得られる
焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、金属粉末射出成形法による焼結
製品は、金属粉末材料に加圧成形性を付与するためにバ
インダーを混合して成形体を成形する射出成形、次にそ
の成形体からバインダーを除去する脱脂、更には脱脂さ
れた成形体、いわゆる脱脂体の焼結を順次に行うことに
よって製作される。この金属粉末射出成形法は、例えば
プレス成形による金属粉末成形法に比べてより複雑な形
状でも一度に成形でき、また後加工が少なくて済むとい
う利点を有している。これら利点は、特に小型の金属部
品を製作するのに際しては適しているとともに、コスト
面においても有利である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、粉末射
出成形技術は、通常の粉末冶金法に比べて静水圧的な加
圧成形性を付与するために用いられるバインダーの量が
多いことから、特に脱脂および焼結の加熱工程において
成形体の形崩れ,ふくれ,クラックの発生などの現象が
生じ易い傾向にある。これら形崩れ,ふくれ,クラック
の発生の防止を図るためには脱脂工程におけるバインダ
ーの除去を緩慢に進行させる必要があり、成形体の形
状,肉厚にもよるが、通常脱脂工程に2〜3日が要され
る。このような形崩れ,ふくれ,クラックの発生が起こ
り易いこと、更には脱脂工程に長時間を要すること等
は、粉末射出成形技術における解決されるべき課題であ
る。
【0004】射出成形体からバインダーを除去するのに
際して、前述のような各種欠陥を防ぐ方法として、特公
昭61−48563号公報には、射出成形体に対して不
活性なガスを乱流状態で送風する脱脂方法および多孔質
体に溶解したバインダー成分の一部を吸収させる方法が
提案されており、また特公昭62−33282号公報に
は、射出成形体の雰囲気圧力を熱可塑性バインダーの蒸
気圧以上となる加圧状態に保持する脱脂方法が提案され
ている。
【0005】しかし、実際には脱脂炉の内部を均一な乱
流状態に保つことは困難なことである。かりに温度が均
一になっていても、射出成形体の送風に面する側と背面
側とでは脱バインダーの速度が異なり、一個の射出成形
体の中でも、箇所によっては脱脂程度が不均一となる。
特に射出成形体を効率よく炉内配列するために用いる脱
脂用セッターを使用するときには、セッターと接触する
かもしくは乱流送風が阻害された場所においては不均一
となりやすく、かつ、複数個のこの射出成形体脱バイン
ダー炉に収容した場合にはその不均一性が甚だしくな
り、射出成形体間においても脱脂の進行に偏差が生じる
ために、自重による変形も無くかつ膨れまたはクラック
の発生等がない健全な脱脂性を安定して実現することは
困難であるという問題点がある。
【0006】また同時に開示されているように、融点の
異なるバインダー成分より構成される熱可塑性バインダ
ーを用いて、加熱により順次に徐々に液体の状態で成形
体から流れ出させ多孔質吸収体に吸収させて射出成形体
からバインダーを除去することにより、膨れやクラック
の発生を防止しながら、脱バインダーを早めることが期
待されるが、実際は、成形体から除去されるに際しては
液状となるため、脱脂工程においては自重に耐えきれず
に成形体から型崩れが生じやすいという問題点と、バイ
ンダー吸収体と成形体の一部を接触させる場合には上述
と同様に成形体の中での脱脂の進行に偏差が生じること
および複数個の成形体を脱脂炉内にセットするときの制
約条件から多数個の成形体を自重による変形もなくかつ
膨れ、クラックの発生等がない健全な脱脂性を安定して
実現することは困難であるという問題点がある。
【0007】また、前述のような加熱による脱脂方法が
現実的に多くの脱脂欠陥の発生を招きやすいことと脱脂
に要する時間の長いこと等を改善する方法として、英国
特許第1516079号明細書には、ポリエチレングリ
コール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコ
ール等の水溶性ポリマーとポリスチレン、ポリエチレン
等の非水溶性ポリマーからなるバインダーを使った成形
体から、まず、水を溶媒に使って優先的に水溶性ポリマ
ーを抽出した後、残りのポリマーをさらに加熱などによ
り除去する方法が開示されている。この明細書に記述さ
れている具体例としては、水溶性ポリマーとしてポリエ
チレングリコール、メチレンクロライドで溶媒抽出する
ポリスチレン、そして強度成分で加熱除去するポリエチ
レの三成分系からなるバインダーを使った成形体をポリ
エチレングリコールの融点以上に加熱してから、水を溶
媒に使って優先的に水溶性ポリマーを水溶媒抽出した
後、次にポリスチレンポリマーをメチルクラライドで溶
媒抽出し、さらに加熱により強度成分のポリエチレンを
成形体から除去する方法が開示されている。
【0008】この方法は、強度的に弱いポリエチレング
リコールを大量に含有させることは成形体を弱くする事
につながるために、同様に溶媒抽出ができる強度的に強
いポリエチレンをバインダー成分として加え、メチレン
クロライドによる溶媒抽出を実施するために、溶媒抽出
工程が2工程に及び、結果的には十分な脱脂時間の短縮
化に繋がらないこと、また、メチレンクロライド等の有
機溶媒の使用が避けられず、コスト的にも、作業者の安
全環境上も好ましくない問題点を残している。
【0009】さらに、ポリエチレングリコールの融点以
上の温度に成形体を加熱した後に、約100℃の加熱さ
れた水蒸気による抽出を実施するため、水のバインダー
への取り込みによる膨潤やポリエチレングリコールが水
溶性結合材としての性質を持つことから、ポリエチレン
グリコールを高濃度に溶解した水溶液が高粘性を示し、
成形体表面からのポリエチレングリコールの除去が迅速
に、かつ成形体表面全体に均一に起こらないために、発
汗現象に似た垂れの発生等が起こりやすく、以後の加熱
脱脂によるクラックの発生、変形の危険性を避けること
が出来ないという問題点がある。
【0010】前記英国特許第1516079号明細書と
ほぼ類似の提案は例えば特開平2ー101101号公
報、特開平2ー182803号公報、特開平2ー182
804号公報、特開平2ー305903号公報等にも開
示されている。これら公報のものでは、やはり、英国特
許第1516079号明細書に開示されているポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニ
ルアルコール等の粉体成形に用いられている代表的な水
溶性結合材として古くから、例えば粉体成形ハンドブッ
ク(昭和62年2月発刊、日刊工業)にも記述されてい
るようなポリエチレングリコールや高分子化したポリエ
チレンオキサイド、メチルセルロース、カルボキシルメ
チルセルロース(CMC)、ポリアクリルアミド、ポリ
ビニルエーテル等の水溶性ポリマーを使用して、この英
国特許第1516079号明細書の非水溶性ポリマーで
あるポリエチレン、ポリスチレン等のポリマーを使用す
る方法が提示されている。
【0011】より具体的には、前述の水溶性ポリマーで
あるポリエチレングリコールの強度的な弱さを改善させ
るために、より高分子重合している水溶性ポリマーであ
るポリエチレンオキサイドをバインダー成分として使用
し、まず水溶媒抽出によってポリエチレンオキサイドの
一部もしくは全部を抽出除去した後に、残りのポリエチ
レンバインダーの大部分を加熱除去する方法が開示され
ている。しかし、熱可塑性のポリエチレンオキサイドは
熱的不安定性が高いことが知られており、例えば金属粉
末(SUS430C)との150℃での加熱混練時に
は、混練時のせん断発熱などによるポリエチレンオキサ
イドの分解が継続して起こり、混練トルクの安定した状
態が得られず、また、比較的安定化するまで混練した粉
体との混練物でのバインダーの熱分析結果によれば、ポ
リエチレンオキサイドの平均的な融点:約70℃からポ
リエチレングリコールの融点に相当する約54℃に低下
することから多くのポリエチレンオキサイドがより低分
子のポリエチレングリコールに変化していると考えられ
る。
【0012】したがって、混練原料やリターン原料の安
定した流動性の確保の困難性およびポリエチレンオキサ
イドの分解によるバインダー強度の劣化に起因する問題
があり、特に、流動性の不安定化による成形体重量ばら
つき、焼結後の寸法精度の不安定化、バインダー強度劣
化による金型からの取り出し時の破損、金型内冷却中で
の成形体の割れなど成形体形状に対する制約が顕著にな
るとともに、水溶媒抽出時に緩やかな攪拌水による流水
抵抗で部品コーナーに型崩れが起こりやすい。さらに、
水溶媒抽出時全体的には僅かな膨潤性を示し、特に成形
体のパーティングライン部では膨潤による膨れが顕著に
現れるなど、部品によっては致命的な欠陥となるなどの
問題がある。さらにまた、水溶媒抽出時の水温に関して
も、発汗に似た垂れの発生を防止するため、ほぼ50℃
以下の温度に設定する必要があり、抽出速度を速めるた
めの昇温効果が十分に使えない問題がある。
【0013】また、これら公報の記載によると、抽出の
メカニズムは、まず、成形体表面の水溶性ポリマーが水
に溶けだして水中に拡散すると同時に、この溶出した水
溶性ポリマーが存在していた空隙を通り道として水が成
形体中に侵入し、次に、この空隙の通り道周辺の成形体
から新たに侵入水にとけだし、そして溶けだした水溶性
ポリマーが成形体外の水中に拡散していくと説明されて
いる。この過程での水溶性ポリマーの抽出速度は、まず
成形体内の通り道における水溶性ポリマーの移動、拡散
性が律速する素過程1と成形体表面での溶媒中における
水溶性ポリマーの濃度と表面から遠く離れた位置での濃
度差と水溶媒中の水溶性ポリマーの拡散性が律速する素
過程2の関係で議論されるが、特に、記載中において好
適とされているポリエチレオキサイドは高粘性型の水溶
性結合材としての性質に優れていることが知られてお
り、例えば1重量%の水溶液では室温においては完全に
ゲル状になるほどの性質を示し、また、例えば特開平2
ー182803号公報の図8に記述されているように成
形体表面付近の水溶液中では高濃度に水溶性ポリマーが
濃縮されていること、また、明確な記述は無いが、成形
体中の通り道における水溶液中のポリマー濃度が少なく
とも表面濃度に等しいと考えられることから、素過程1
および2の工程において水溶性ポリマーの移動、拡散が
遅くなり、結果として十分な水溶媒抽出速度得られない
問題がある。この問題を解決するために、従来からよく
知られている手法としては(1)水溶液中のポリマー濃
度を低く保てるような濃度調節手段をとる、(2)十分
な水量を確保する、(3)水溶液に流動化、攪拌、振動
を付加する手法があり、例えば新制金属講座新版精錬
編、非鉄金属精錬第V章、湿式精錬において抽出もしく
は侵出の原理および設備に関して具体的に説明されてい
る。特に、速度に関する記述では攪拌による効果が定量
的に説明されており、また、水溶液結合材が溶けた高粘
性な水溶液の粘性が攪拌、流動化により低下する特殊な
性質を持つことは広く良く知られている。しかし、これ
らの促進手段はあくまでも補助的手段に過ぎず、特に、
成形体形状によっては成形体内径部、溝の底部、細い錐
穴部など攪拌よっても均一な抽出性が確保できず、また
複数個の成形体を多数に処理する場合には成形体間の配
置についても、さらにまた、軽量な成形体や脱脂の配置
に不安定な形状部品などは強力な攪拌性を与えることが
できないなどの問題点もあるため、本質的には水溶液の
粘性を低く抑える水溶性物質からなるバインダーが開発
され、さらに、前述の補助的手段をプロセスにおいて講
じることが望まれる。
【0014】また、前述の補助的な手段のうち水溶媒を
流動化させる手段として、水溶媒をノズルを使って成形
体に吹き付ける(特開平2−182803号公報)、送
水ポンプを使った水溶媒の流水化(特開平2−1828
04号公報)、超音波を用いた水溶媒の流動化(特開平
2−182804号公報)が提案されているが、いずれ
の場合においても多数個の成形体を同時に処理する場合
において、例えばノズルを成形体に対応させて配置する
ことは現実の操業上非常に困難であり、また送水ポンプ
による流動化においても、超音波による水の流動化にお
いても多数個の成形体に均一に水を接触させることは困
難である。また抽出時間の異なる複数の種類の成形体を
同じ水溶媒抽出槽内で連続的に抽出処理する場合にも対
応出来ないなどの問題がある。
【0015】前述の方法以外にも、米国特許41971
18号明細書にも開示されているように、液状オイル分
のバインダー成分などをメチレンクロライドのような有
機溶媒を使用して溶媒抽出することが考えられるが、こ
の方法では安全環境上の問題があると共に、液状オイル
の使用による強度の顕著な劣化によって、射出成形後の
金型からの取り出し時に成形体が破損することが多かっ
たり、成形体の形状制約など前述のものと同様の問題点
がある。
【0016】また、粉体に金属粉末を用いた射出成形体
の脱脂時には、バインダーの熱分解と関連して脱脂体中
に残る炭素残留量や逆に大気中での酸化雰囲気下の脱脂
時では、例えば金属粉末の酸化による割れなどの問題が
有り、さらには焼結後の焼結体の炭素成分の制御不良や
成分不良による焼結密度のバラツキなどが重要な問題と
なっている。この問題に対する方策としては、射出成型
用のバインダーの選定、組成の調整および脱脂をN2
Ar、H2 ガス雰囲気中で実施することや焼結時の雰囲
気ガスを調整する方法などが報告され、これらは特開平
5−331503号公報、特開平6−200303号公
報、特開平6−73406号公報等にも開示されてい
る。
【0017】特開平7−305101号公報における実
施例でも明らかなように、金属粉末にとって不活性なN
2 ガス中での脱脂を行った鉄系焼結体の炭素量は脱脂終
了の最高温度およびバインダー組成の違いによって大き
く異なることが知られているが、いずれの場合において
も不活性なN2 やArガス雰囲気での残留炭素量の制御
は困難である。
【0018】一方、大気中において脱バインダーを実施
した場合には、N2 ガス雰囲気中での熱分解脱脂と較
べ、例えば200℃以上から、熱可塑性バインダーの熱
分解がより急激に加速されるが、250℃以上の温度域
からは逆に残留炭素分の形成によると考えられる脱脂速
度の低減が報告されており、この残留炭素分の形成によ
る内部応力の発生により成形品にクラックが発生しやす
くなることが報告されている。また、酸化しやすい金属
粉末を使用する場合には金属表面に新たな酸化物が形成
され、その結果として脱脂途中の成形品が膨張し、クラ
ックが発生しやすくなることが報告され問題となってい
る。
【0019】さらに、大気中での脱脂を実施した場合に
は、残留炭素量がほぼゼロもしくは酸素が酸化物として
残留したり、もしくは金属粉末にあらかじめ含有されて
いた炭素量が減少していたりすることが起こることか
ら、あらかじめ使用する粉末や使用するバインダーの種
類、配合量、脱脂条件を細かく管理しながら焼結体の炭
素成分を調整しなくてはならない複雑な問題を抱えてい
る。
【0020】以上の残留炭素量の調整方法に対する対策
技術としては、三浦等がN2 ガス中に高濃度のH2 ガス
を混合したガス中で脱脂することによって制御できるこ
とを報告している。また、前述のN2 ガス中と大気中で
の脱脂による残留炭素量の違いから、N2等の不活性ガ
ス流気中に空気または酸素を混合して炭素量を調整する
ことが容易に想像される。これらの例として、N2 ガス
中に水素を添加して炭素量を制御する方法の一例が、粉
末及び粉末冶金,第40巻第4号,388に詳細に報告
されている。通常よく実施されている400℃での脱脂
条件化では、炭素量の制御に大量の水素をN2 ガスに混
入する必要があり、炉外に導出される水素リッチガスの
扱いがより危険となり、その気化除去されたバインダー
管理や爆発性に対する安全設備的な管理を必要とするこ
とおよびH2 ガスによるその炭素量制御効果が小さいこ
となどの問題がある。特開平6−200303号公報に
開示された技術においても同じ問題がある。
【0021】さらに、特開平5−331503号公報に
開示されているように、空気や酸素の直接的な添加を実
施した場合には、水素添加法とは原理的に異なり、酸素
による脱脂体に残留し始める炭素との直接的な次の反応
によって炭素量を制御するため、水素添加法よりも残留
炭素量を大きく制御できることが予想される。 C(S)+(1/2)O2 (G)=CO(G)
〔(S):固体、(G):気体〕 G=−26,700−20.75T 〔T:絶対温度
K〕
【0022】しかし、現実的には上記の酸素の直接的な
炭素の酸化反応は大きな発熱反応であり、さらに、N2
等の不活性ガス中に微量添加する場合には、酸素の酸化
反応はル・シャトリエの原理に従って、より非常に過激
となるため、特に多数個の成形品の脱脂を実施するに当
たっては、多数個の成形品に対して均等に炭素量を制御
する事が難しく、導入ガスが直接的に当たる箇所の成形
品に対しては過度の酸化反応によるクラック発生の危険
が常に関与することに問題点がある。また、特開平6−
192706号公報に開示されている酸素富化空気雰囲
気下での脱脂技術に対しても上述と同じ問題がある。
【0023】本発明の主たる目的は前述の問題に鑑み、
熱による急激な分解気化、膨張を考慮する必要がなく脱
脂時間を短縮できる粉末射出成形用バインダーを用いた
水溶媒抽出脱脂方法を提供することにある。
【0024】本発明の他の目的は、脱脂に際しての成形
体の保形性を確実にしながら、脱脂工程に要する時間の
短縮化が図れる粉末射出成型用バインダーを用いた水溶
媒抽出工程を含んだ脱脂方法を提供することにある。
【0025】さらに、本発明の目的は、水分による膨
潤、加水分解等のない安定な粉末射出成型用バインダー
を使い、かつ水を溶媒として抽出した水溶液の粘性を低
く抑える水溶液物質を使用することによって、より簡便
な設備で、低コストでかつより迅速に、部品形状に対し
ても均一に水溶媒の抽出を行うことのできる工程を含む
脱脂方法を提供することにある。
【0026】さらにまた、本発明の目的は射出成形、脱
脂時の製品欠陥を改善するための強度、靱性に優れた粉
末射出成型用バインダーを使った脱脂方法を提供するこ
とにある。
【0027】また、本発明の目的は、脱脂時において残
留炭素量を調整することによって、脱脂時の欠陥の発生
を防止するとともに、焼結体における残留炭素量を制御
することのできる脱脂方法を提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段および効果】前述の目的を
達成するために、本発明による脱脂方法は、粉末と有機
バインダーとを混合して射出成形してなる成形体から前
記有機バインダーを脱脂する脱脂方法において、前記有
機バインダーは、少なくとも一種以上の水溶性有機化合
物と少なくとも一種以上の非水溶性の熱可塑性樹脂より
なり、かつ脱脂工程が、水を溶媒として前記成形体中の
有機バインダーから前記水溶性有機化合物を抽出する水
溶媒抽出工程を含むことを特徴とするものである。
【0029】本発明において、前記水溶性有機化合物と
しては、アミド系水溶性化合物および/またはアミン系
水溶性化合物が好適である。また、前記非水溶性の熱可
塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂が好適である。
【0030】前述のポリエチレンオキサイドのような熱
可塑性水溶性ポリマーは、通常5万〜500万の分子量
になるように高度な重合度を持つ高分子材料とすること
によって融点以上の温度においても十分な粘性を発現さ
せた熱可塑性ポリマーである。このような熱可塑性ポリ
マーを水に溶解した場合には、広い分子量の広がりをも
った高分子の分子間相互作用によって分子同士が絡み合
うことで曳き糸性,高粘性もしくは接着性が発現し、そ
の結果として、高粘性状態の分子の移動速度が急激に低
下し、また移動単位の分子が高分子体であるために、そ
の拡散性が低下してしまう。さらに、水溶媒抽出時に前
述の問題点を引き起こしている最大の要因が熱可塑性を
得るためと水溶性であることの条件を同時に満たす手段
として理解される高分子化である。
【0031】この問題を解決するために、本発明では前
述の手段として、重合度がほぼ無視できる熱可塑性のな
い分子量でほぼ1000以下のアミド系および/または
アミン系水溶性化合物をバインダー中の水溶性成分と
し、かつバインダーとしての熱可塑性を確保するために
その水溶性化合物と相溶する高強度で耐熱性に優れたポ
リアミド樹脂をバインダーの非水溶性成分とすることと
した。さらに、重合度のほぼ無視できる前記水溶性化合
物を使うことによって粉末との加熱混練時の熱分解によ
る低分子化が無くなるため、混練物の安定した流動性に
より、安定した射出成形を可能とし、かつランナー,ス
プール等の原料の再利用性における問題を無くすことを
可能にした。
【0032】本発明において、水溶媒抽出時に要する時
間を短縮するためには、水溶媒の温度が高いことが、水
溶液での固溶度および拡散性の観点から好ましい。この
ために、前記水溶媒抽出工程においては、ほぼ均一な温
度に維持された水溶媒に浸漬することによって前記水溶
性有機化合物を急速に抽出するのが良い。この場合、前
記成形体を非水溶性の熱可塑性樹脂の融点もしくはガラ
ス化温度以下に温度調整された水によって処理するのが
良い。前述の水溶性ポリマーを含んだ水溶液においても
一般には高粘性の範囲で粘性が低下する傾向にあるが、
前述の膨潤,発汗現象に似た垂れの発生による脱脂体の
変形,クラックの発生の問題の他に例えばCMCなどは
ゲル化することによって溶媒抽出が不能になるケースが
ある。
【0033】本発明では、まずアミド系,アミン系水溶
性化合物を使うことによって、前述の脱脂上の問題を解
決するとともに、融点が50℃以上で190℃以下のア
ミド系,アミン系水溶性化合物を選定することによっ
て、50℃以上の熱水での沸騰現象を利用して、一般の
外部からの攪拌効果では達成できない複雑な形状品に対
しても均一な攪拌効果が達成できるようにし、さらに、
補助的な手段として外部からの水溶媒中へのガスの導
入,減圧雰囲気下での加熱による沸騰の促進効果による
攪拌および公知の機械的な水流や攪拌に関する技術が併
用できるようにした。
【0034】さらに、本発明では前述の多数個の成形体
に対する均一な流動化に関する課題に対して、水溶媒抽
出中の成形体を水溶媒中で積極的に移動させることによ
って、簡便に水溶媒との新たな接触を可能にし、さら
に、成形体の移動を好ましくは円移動の一方向および/
または往復運動させることによって、例えば円運動する
回転板の上に置かれた成形体の種類と処理時間を区別し
ながら、随時成形体を取り出せるようにし、かつ多品種
の、抽出時間の異なる成形体を連続的に処理できるよう
にした。また、回転方向に対して対向から正向までに水
溶媒を流動化させることによって、より均一にかつ流動
化の強さを制御できるようにした。
【0035】なお、成形体中の水溶媒抽出時の溶媒温度
は、まず水溶性化合物の融点以下の温度に設定し、抽出
の進行に合わせてポリアミド樹脂成分の融点以下の温度
にまで加熱することが可能であり、通常はせいぜい2気
圧までの(市販品の)安価な圧力容器中での加熱処理に
よって容易に100℃以上での水溶媒抽出ができるた
め、更なる脱脂時間の短縮化が図れるとともに、抽出コ
ストをより低減することが可能となる。この場合には、
加圧力を大気圧に戻すことにより水溶媒の温度を約10
0℃に低下させることが簡単に、かつ効率的に操作でき
るため、100℃以上の融点を持つアミド系,アミン系
水溶性化合物を使用することにより直接的に成形体を浸
漬することができ、より抽出時間を短縮することができ
て好ましい。
【0036】なお、本発明で使用するアミド系水溶性化
合物はアミド基を有する物質であり、アミン系水溶性化
合物はアミン基を有する物質であるとともに、これらア
ミド系水溶性化合物およびアミン系水溶性化合物におけ
る融点が50℃以上190℃以下で、かつ沸点が175
℃以上のもののうちから一種または二種以上を混合させ
てなるものであるのが好ましい。
【0037】なお、50℃未満の低融点のアミド系,ア
ミン系水溶性物質をバインダーの主成分とした場合に
は、成形体強度が劣化し易い、成形サイクルが長くなる
ことなどを勘案しても融点が50℃以上であることがよ
り好ましい。また、融点が190℃を越えると、バイン
ダーの流動性を阻害し、ひいては射出成形性を阻害する
傾向がある。また、沸点が175℃より低くなると、粉
末材料とバインダーとの混練時または射出成形時に、バ
インダーより選択的に気化し、射出成形の安定性並びに
リターン材料の再利用において支障を来し易くなる傾向
がある。これらの水溶性物質は100ccの水(加熱状
態を含む)に1gr以上溶解すれば良いが、10gr以
上溶解するとより高い抽出効率が得られる。
【0038】前記アミド系水溶性物質は、アミド基を有
する物質であり、化学構造中にベンゼン環を有しないも
のと有するものに分けられる。このベンゼン環を有しな
いものとしては、例えばアセトアミド,プロピニックア
ミド,アロキサン(一水和物),エチルウレタン,エチ
レン尿素,グリコールアミド,ヘプタン酸アミド,メチ
ルアセトアミド,メチルアセチル尿素,
【0039】
【化1】
【0040】トリメチル尿素,カルバミン酸エチルが挙
げられる。また、ベンゼン環を有するものとしては、例
えばニトロベンズアミド(o),ニトロベンズヒドラジ
ド(o),フェニルセミカルバジド(1)(C6 5
HCO2 6 5 ),フェニルカルバミン酸エステル
(C7 7 6 4 2 CNH2 ),トルイルアミド
(o),トルイルアミド(p),アセトアミノフェノー
ル,アセトナフタリド,アミノベンズアミド(o)が挙
げられる。これらベンゼン環を有しないものと有するも
のを含め一種または二種以上を混合してアミド系水溶性
物質として用いられ得る。
【0041】アミン系水溶性物質は、アミノ基を有する
物質であり、例えばヘキサヒドロピペラジンの約1モル
と酢酸の約2モルとを常法により脱水共重合して得られ
る第2アミン系であるN,N’−ジアセチルピペラジン
が挙げられる。また、第1アミン系のものとしてアミノ
ジメチルアニリン(p),アミノピリジン(3)
(β),アミノキノレン(2)(α)(NH2 9 8
N),アミノキノレン(3)(β),ジアミノヒドラゾ
ベンゼン(p)((H2 NC6 4 NH)2 ),ヘキサ
メチレンジアミン,ヒスタミン,メンチルアミン
(1),ナフチルアミン(β),ニトロ−p−アミノフ
ェノール(3),ニトロアニリン(o),ニトロフェニ
ルヒドラジン(p),ニトロソアニリン(p),フェニ
ルアニリン(p),フェニルエチルアミン(β),フェ
ニレンジアミン(m),トルイレンジアミン,トルイレ
ンジアミン(1;2,4),トルイレンジアミン(1;
2,5),トリアミノベンゼン(1,2,3),トリア
ミノベンゼン(1,2,4),トリエチレンテトラミン
が、また第2アミン系のものとしてアセチル−p−フェ
ニレンジアミン,アミノピリジン(2)(α),ジホル
ミルヒドラジン((NHCHO) 2 ),ジピリジル
(4,4’),ジピリジル(3,3’),ホルミルフェ
ニルヒドラジン(β)(C6 5 NHNHCHO),グ
ルコースフェニルヒドラゾン(C6 5 NHN=C6
125 ),ヒドロキシエチルエチレンジアミン(HOC
2 CH2 NHCH2 CH2 NH2 ),ヒドロキシピリ
ジン,メチルアミノ−p−ヒドロキシ安息香酸(3),
メチルベンズイミダゾール(2),
【0042】
【化2】
【0043】メチルインドール(2),ニトロフェニル
ヒドラジン(p),フェニルグリシン(N),トリアゾ
ールが挙げられる。これらは第1アミン系および第2ア
ミン系を含め一種または二種以上を混合してアミン系水
溶性物質として用いられ得る。また、アミド系水溶性物
質とアミン系水溶性物質とを組み合わせて用いても良
い。
【0044】アミド系,アミン系の水溶性物質はアミド
基,アミノ基を有するために、バインダーを構成するポ
リアミド樹脂成分と相溶性がある。これら水溶性物質
は、いずれも融点が190℃以下かつ沸点が175℃以
上のものが好ましい。なお、融点が190℃を越えると
バインダーの流動性を阻害し、ひいては射出成形性を阻
害する傾向がある。また、沸点が175℃より低くなる
と、金属粉末材料とバインダーとの混練時または射出成
形時に、バインダー中より選択的に揮発し、射出成形の
安定性並びにリターン材の再利用において支障をきたし
やすくなる傾向がある。これら水溶性物質は、100c
cの水に1g以上溶解すれば良いが、10g以上溶解す
れば高い抽出効率が得られる。
【0045】前記水溶媒抽出に用いる非水溶性ポリアミ
ド樹脂は、アミド基間に挟まれる炭素数が平均8個以上
であるポリアミド樹脂原料に対して、アミド基間に挟ま
れる炭素数が平均8個以上である相溶剤としての芳香族
系ビスアミドを略等重量%まで混合させてなるものであ
るのが好適である。これによって、アミド系,アミン系
水溶性化合物との相溶性とポリアミド樹脂原料そのもの
の吸水性を改善し、水溶媒抽出時の膨潤を防止すること
ができる。
【0046】前記水溶媒抽出に用いる非水溶性ポリアミ
ド樹脂は、アミド基間に挟まれる炭素数が平均10個以
上であるポリアミド樹脂原料の一種または二種以上を混
合させてなるもとすることもできる。このように直鎖状
の化学構造を主体とすることによって、ポリアミド樹脂
原料そのものの吸水性を改善し、水溶媒抽出時の膨潤を
防止することができる。
【0047】また、前記ポリアミド樹脂原料は、C36
二酸,C44二酸、またはそれらC36二酸およびC44二酸
の混合物と、炭素数6〜10個の脂肪族ジカルボン酸
と、キシリレンジアミンと、エチレンジアミンおよ
び/またはヘキサメチレンジアミンとを共重縮合して得
られるものとするのが好ましく、この場合に平均分子量
を20,000以上とするのが良い。
【0048】さらに、前記ポリアミド樹脂原料は、ナイ
ロン11,ナイロン12を主体とするものとすることも
でき、この場合、平均分子量を13,000以上とする
のが良い。
【0049】前記ナイロン11,ナイロン12は、例え
ばω−アミノウンデカン酸、ω−アミノラウリン酸を脱
水縮合して得られるものとすることができる。また、こ
のナイロン11,ナイロン12を主体するアミド基間に
挟まれる炭素数が平均8個以上であるポリアミド樹脂原
料は、ナイロン11,ナイロン12に他のナイロン成
分、例えばナイロン2,36,ナイロン2,44,ナイ
ロン6,ナイロン6,8,ナイロン6,10ナイロン
6,36,ナイロン6,44及びエーテル等が共重合さ
れたものであっても良い。
【0050】このポリアミド樹脂成分の原料としては既
に広く市販されているものを支障無く用いることができ
る。例えば、ナイロン12としてはダイセル社製ダイア
ミドA1709P,L1724Kが挙げられ、ナイロン
12−エーテル共重合体としてはダイセル社製ダイアミ
ドE40S3,TORAY社製PEBAX5533SN
01等が挙げられる。
【0051】また、前記水溶媒抽出工程において用いら
れる水はシャワーによる水もしくは水蒸気状態の水であ
るのが好ましい。
【0052】本発明においては、さらに、前記水溶媒抽
出工程による水溶性有機化合物の抽出後に残る残留バイ
ンダーを加熱分解除去する加熱分解除去工程を備えるの
が好適である。この加熱分解除去工程においては、水溶
媒抽出によって多くの抜け道が成形体中に形成されてい
るので、非水溶性ポリアミド系樹脂成分が分解,気化す
る際の多量のガスの発生に対してもふくれ,クラックの
発生原因にならないようにすることが可能となる。した
がって、以後の加熱分解脱脂工程における加熱雰囲気は
大気において実施することも可能である。しかし、前述
のように酸化し易い金属粉末を原料とする場合には、大
気中の酸素による酸化皮膜の形成もしくは脱水素化によ
る炭化反応による内部応力の発生によるクラック発生な
どの原因となる危険性がある。さらに、大気中での脱脂
もしくは酸素の直接添加によっては、脱脂体および脱脂
以後の焼結で得られる焼結体中の残留炭素量の調整が困
難である。
【0053】これらの問題を解決する手段として、本発
明では、(1)N2 もしくはAr等の不活性ガスなガス
組成雰囲気中での加熱分解および気化除去を実施するこ
とによって酸化皮膜の形成を防止し、かつ滑剤やポリア
ミド樹脂を、有機材料の分解分子量単位が大きい状態で
気化させることによって、気化する際のガス膨張を少な
くするとともに、炭化反応を抑制することによって脱脂
欠陥の発生を低減させる、および/または(2)通常の
脱バインダーの最終加熱温度約700℃においても成形
品の脱バインダー途中で形成される残留炭素分との酸化
反応が吸熱反応となる二酸化炭素ガスの〔C(S)+C
2 (G)=2CO(G)〕反応を利用して、ル・シャ
トリエの原理によりN2 ガスなどの不活性ガス中に混入
させてその酸化性を高め、緩やかな酸化性雰囲気を作り
出すことによって。残留炭素量の制御性を確保し、さら
に過度の酸化や過度のバインダーの炭化によるクラック
の発生を防止するようにする。
【0054】さらに、水溶媒抽出後の成形体中のバイン
ダー濃度が比較的に少ないことおよび加熱雰囲気中にC
2 を導入することによってバインダーのガス化をほぼ
制御できることから、水溶媒抽出に続いて成形体を直接
的に焼結工程でほぼ800℃以下まではN2 +CO2
たはCO2 の常圧または減圧下で加熱し、以降の温度域
で真空,還元,不活性および大気雰囲気下で焼結するこ
とによって、更なる脱脂時間の短縮化を図っている。
【0055】本発明において、前記成形体に使用される
有機バインダーの組成が、アミド系水溶性化合物および
/またはアミン系水溶性化合物20〜80重量%および
ポリアミド樹脂原料および/またはポリアミド樹脂20
〜65重量%を含むものであるのが好ましい。このよう
にすれば、アミド系水溶性化合物および/またはアミン
系水溶性化合物の量が20〜80重量%と多いので、水
溶媒による脱脂が脱脂工程のかなりの部分を請け負うこ
とになり、時間のかかる加熱脱脂の割合が少なくなり、
脱脂時間の短縮化を図ることが可能となる。また、水溶
媒抽出によって成形体中にはかなりの体積率の抜け道が
形成されており、しかも加熱による脱脂分が少ないの
で、バインダーの熱による急激な分解・気化,膨張をほ
ぼ考慮する必要がないため、加熱脱脂速度も高められる
ことから、従来の加熱分解脱脂方法による全脱脂時間の
約80%以上を短縮することができる。
【0056】このアミド系,アミン系水溶性化合物の使
用量が全バインダーに対して20重量%未満であると、
次の加熱脱脂工程においてふくれ,変形の発生を防ぐこ
とができなくなり、また水溶媒の抽出に多大な時間を要
するようになるため、実質的な全脱脂時間の短縮効果と
次工程での脱脂欠陥の発生防止を実現するには40重量
%以上であることが好ましい。また、成形体の形状的制
約にもよるが、80重量%を越えると成形体強度の劣化
の観点から、成形体の金型からの取り出しが困難にな
る。なお、好ましくは45〜60重量%である。ここ
で、前記アミド系,アミン系水溶性化合物としては、前
述の物質の一種を用いても二種を混合して用いてもほぼ
同等の効果が得られる。また、ジメチルホルムアミド,
ジメチルアセトアミド等の液状物質を用いることも考え
られるが、これらジメチルホルムアミド等はバインダー
としての強度劣化を来すために適用製品の形状に制約を
生じる。なお、成形体強度の観点と水溶媒抽出による全
脱脂時間の短縮化を考慮した場合には、前記水溶性化合
物成分は40〜70重量%,ポリアミド樹脂成分は25
〜45重量%であることが好ましい。
【0057】なお、ポリエチレンオキサイドを使ったバ
インダー系では、水溶媒抽出時の水温が水溶性化合物の
融点以上である場合には、水溶媒抽出途中においてふく
れや発汗に似た垂れなどの欠陥が発生し易いことが確認
されたが、本発明のアミド系,アミン系水溶性化合物に
おいては、融点以上の温度において実施しても前述の垂
れに関する不具合が無く、好ましい結果が得られた。ま
た、アミド系,アミン系の水溶性化合物の水溶媒温度は
室温から融点の50℃以上に加熱された状態であった方
が抽出効率が良く、好ましくは70〜100℃以上に設
定することによって、水溶媒抽出温度を高く設定するこ
とができる。さらに、この温度条件における水溶媒の沸
騰現象を、攪拌効果として有効に、かつ積極的に利用す
ることによって成形体のあらゆる表面での攪拌効果が期
待でき、これによって迅速で均一な抽出効果が期待でき
る。
【0058】この効果は、従来のポリエチレングリコー
ル,ポリエチレンオキサイドの抽出温度(50℃以下)
よりも抽出性を高めることが可能であることを意味し、
さらに、例えばジアセチルピペラジンを利用する場合に
は、バインダーの熱分析から約124℃に融点が認めら
れることから、ほぼ100℃の沸騰熱水や100℃以上
120℃以下の過熱水蒸気もしくは加圧下での加熱熱水
などによる水溶液中での固溶度の増大と水溶液の顕著な
攪拌効果などにより、迅速な抽出が可能となり、脱脂時
間をより短縮化できるとともに、使用水量の低減および
水溶媒抽出設備のコンパクト化を図ることができ、水溶
性成分のほぼ全量抽出を短時間で行うことが可能とな
る。
【0059】したがって、本発明においては、すべての
安全性を考慮して、水溶媒の温度を水溶性化合物の融点
以下の温度に設定して、成形体を水溶媒中に浸漬した
後、表面から抽出しながら融点以上の温度に加熱し、1
00℃以上で、バインダーの強度成分であるポリアミド
樹脂のガラス化温度以下にまで調整するように雰囲気圧
力を調整する方法が好ましい。
【0060】また、本発明で使用するアミド系,アミン
系水溶性化合物の水溶液は低粘性を実現していることか
ら、加熱水の代わりに加熱水蒸気を使っても良い。
【0061】また、例えばアミド系,アミン系水溶性化
合物を40〜80重量%程度にまで高めることによっ
て、次の加熱脱脂時間の短縮化がより効果的に図れ、さ
らに、焼結工程の約800℃以下の温度域において不活
性ガスであるN2 にCO2 ガスを混合させた雰囲気もし
くはCO2 雰囲気下で加熱し、以後の焼結温度までを粉
体に合わせた雰囲気下(例えば真空,還元,不活性,大
気)で焼結することが可能になり、焼結前工程としての
加熱脱脂処理が実質的には不要になり、更なる脱脂時間
の短縮化が図れる。
【0062】本発明においては、15重量%以下の滑剤
を含むのが好ましい。滑剤としては、膨潤性がなく、か
つバインダー強度の観点から、化学構造が直鎖状構造を
主体とする脂肪酸アミド,N−置換アミドが好ましい。
【0063】本発明における使用されるポリアミド系バ
インダーは、C44二酸,C36二酸を原料にしたアミド基
間の平均炭素数が8個以上のポリアミド樹脂もしくはナ
イロン11,12を主体とした、アミド基間の平均炭素
数が8個以上のポリアミド樹脂にキシリレンビスステア
リン酸アミド等を相溶化させることによって、多量のア
ミド系,アミン系水溶性化合物の重量割合を相対的に増
加させることが可能になり、さらに、ポリアミド樹脂成
分の部分結晶化による離型性の向上と吸水性の改善を図
ることによって、水溶媒抽出時の水分の取り込みによる
成形体の膨潤および次の加熱脱脂工程におけるクラック
の発生を完全に防止することが可能となった。したがっ
て、この水溶媒抽出による脱脂法によれば、従来の熱分
解脱脂法に比べて脱脂時間の大幅な短縮化が可能になる
とともに、脱脂時に変形し易い形状を有する部品、加熱
分解脱脂の加熱時に発生すると考えられる内部欠陥の発
生し易い(金属材料,セラミックス)部品、タングステ
ン系などの比重の大きい金属材料を使用する部品、さら
には大型,肉厚の部品などに適用するのが容易となる。
【0064】本発明において、前記ポリアミド樹脂成分
は、全バインダー量に対して20重量%以上で用いられ
るが、比較的比重の大きい金属粉末材料(例えば鉄,
銅,ニッケル,タングステン,超硬等)を射出成形体内
で担うためには、全バインダー量に対して25重量%以
上で用いるのが好ましい。25重量%未満で用いると射
出成形後の成形体の金型からの取り出し時、更には成形
体のハンドリング時に破損する危険性がある。また、こ
のポリアミド樹脂成分は、全バインダー量に対して60
重量%以下で用いられるのが良い。なお、このポリアミ
ド樹脂成分中に相溶剤として含まれる前記芳香族系ビス
アミドの含有量は重量基準で最大70重量%までは可能
であるが、略等重量%で既に硬くなり成形時に破損する
危険を生じるので、略等重量%より少ないことが好まし
い。
【0065】なお、カーボニル鉄粉末材料を用いた成形
体をN2 +CO2 混合ガス雰囲気中で加熱脱脂した後、
真空焼結した焼結体中の残留炭素量とクラックの発生状
況を調査した結果、CO2 の混合比を増すにしたがって
炭素量が顕著に低減でき、かつ制御性が向上されること
が確認された。また、脱脂した後、脱脂体を焼結して得
られる焼結体には酸化物の形成に起因するようなクラッ
クの発生が防止できることが確認された。
【0066】次に、本発明による脱脂体は、前述の脱脂
方法により脱脂して得られることを特徴とするものであ
る。また、本発明による焼結体は、前述の脱脂方法によ
り脱脂した後に焼結して得られることを特徴とするもの
である。本発明によれば、脱脂時の欠陥の発生が防止さ
れて強度,靭性に優れた脱脂体を得ることができ、この
脱脂体を焼結して得られる焼結体によれば、残留炭素量
が制御されてクラックの発生を確実に防止することがで
きる。
【0067】
【実施例】次に、アミド系,アミン系水溶性化合物をバ
インダーに用いた粉末射出成形体からの脱脂方法の実施
例および比較例について詳細に説明する。
【0068】(A)バインダー組成 C44二酸(ユニケマ社製プリポール1004)13モル
と、アゼライン(C7二酸)7モルと、エチレンジアミ
ン7モルと、キシリレンジアミン13モルとを用いて混
合し、脱水共重縮合して平均分子量が約50,000の
ポリアミド樹脂成分(1)を得た。このポリアミド樹脂
成分(1)は、前述の化学構造的なアミド基間の平均炭
素数としては約17.5個となるように調整している。
【0069】また、C36二酸(ユニケマ社製プリポール
1013)と、アゼライン酸と、エチレンジアミンと、
キシリレンジアミンとを等モル量用いて混合し、脱水共
重縮合して平均分子量が約40,000のポリアミド樹
脂成分(2)を得た。このポリアミド樹脂成分(2)の
アミド基間の平均炭素数は約12.2個である。
【0070】また、ナイロン樹脂の代表としてナイロン
12/エーテルエラストマー共重合体(TORAY社製
PEBAX5533NO1)の市販品を使用した。
【0071】さらに、ピぺラジン1モルと、酢酸2モル
とを用いて混合し、脱水共重縮合してN,N’−ジアセ
チルピペラジン(融点140℃)を得た。また、N,
N’−エチレンビスステアリン酸アミド(融点約145
℃)、N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド(融点
約157℃)、N,N’−キシリレンビスステアリン酸
アミド(融点約123℃)、アセトアミド(融点約82
℃)、カルバミド酸エチル(融点48℃)はそれぞれ市
販品としてあるものを使用した。以上を原料として、表
1に示されているような重量比の混合割合で溶融混合
し、冷却後粉砕して各バインダーA〜Iを得た。
【0072】さらに、比較のために、表2に示されいる
ような従来公知の各バインダーJ,Kを得た。なお、バ
インダーJは米国特許第5002988号明細書、バイ
ンダーKは特開平2−101101号公報に記載の代表
的なバインダー組成である。バインダーKに使用したポ
リエチレンオキサイドは熱可塑性で、成形体強度の観点
から強いと考えられる、製鉄化学社製PEO−18(分
子量400〜500万)を使用した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】(B)成形体からの水溶媒抽出性について 水アトマイズ製法で作られたステンレス鋼微粉末(SU
S430,平均粒径;10ミクロン)100部に対して
各バインダーA〜IおよびJ,K10.5部を用いて1
50℃で加熱混練し、冷却して粉砕したものを射出成形
用の原料とした。射出成形条件は、射出温度を140
℃,圧力をほぼ700kg/cm2 の条件に設定し、図
1,図2に示されるような成形体a,bを得た。成形体
aの重量は約130gr/個,最大肉厚は11mmであ
り、射出成形技術の適用部品としては非常に大きいもの
である。成形体bは重量50gr/個,最大肉厚は4m
mの比較的に薄肉品である。
【0076】なお、前述のように水溶性ポリエチレンオ
キサイドを使ったバインダーKと前記粉末とを混練する
に際して、ラボプラストミル(島津製作所社製)を使っ
て混練性の確認を行った結果、混練トルクが非常に安定
しないため、1.5時間の混練後の混練体とPEO−1
8の両者を熱分析した結果、PEO−18が150℃で
の加熱混練時に熱分解しながら、低分子化し、融点がポ
リエチレングリコールに相当するまで低下していること
がわかった。そこで、射出成形温度は125℃に設定し
ている。また、射出成形に関しては、成形体aではネジ
山部で充填不良や微細なスキン層の剥離は発生し、パー
ティング部からのバリの発生が顕著となったが、次の抽
出実験にはブラッシングで手入れして使用した。さら
に、成形体bでは成形体の密度不良が頻発することと、
図2中の首部での折損が頻発し、良品成形体が得られな
かった。
【0077】本抽出実験に用いた設備の模式図が図3に
示されている。この設備は一般に市販されている恒温浴
槽であり、浴槽内の温度の均一化を図るための攪拌機を
備えている。次に、図1の成形体aを使って約20℃で
緩やかに攪拌し、温度の均一化を図った水溶媒に所定の
時間浸漬した後、70℃の熱風乾燥機で2時間乾燥し、
抽出前後の重量変化から、水溶性バインダー成分の抽出
率1〔(抽出成分の重量%/成形体の全バインダー重量
%)×100〕を求め、水溶媒抽出の速さについて調査
した。この結果が図4に示されている。バインダーA〜
E,H,Iについては16時間の実験時間範囲内におい
て抽出率1が20%を越える範囲があり、かなり迅速に
抽出されることが分かる。一方、比較材料であるバイン
ダーJについてはほとんど抽出性が認められず、また同
重量%のポリエチレンオキサイドを含んだバインダーK
については抽出性が認められるが、本発明に使ったアミ
ド系,アミン系水溶性化合物を含んだバインダーに比べ
て明らかに遅い抽出速度であった。また、20℃で16
時間抽出した成形体についてはわずかながら膨潤の傾向
が認められ、特に成形体の金型パーティングライン部に
顕著に認められた。
【0078】さらに、抽出性を高めるために水溶媒温度
を70℃にあげて、前述と同様の緩やかな攪拌条件で水
溶性バインダーの抽出性について調査した結果が図5に
示されている。この場合にも、バインダーJでは抽出性
はほとんど認められず、バインダーKについては2時
間,8時間のいずれの抽出時間においても顕著な膨潤性
が認められ、さらに、発汗現象に似た垂れが発生してい
ることがわかった。そこで、バインダーKについては、
先の熱分解調査結果から求めた融点が54℃であったこ
とを考慮して、かつ先の特開平2−101101号公報
に記載の抽出温度を考慮して、水溶媒温度を50℃に設
定し、先と同様の攪拌条件での抽出テスト結果が図5に
合わせて示されているが、前述の垂れに関する現象は起
こらないことが確認できた。しかし、膨潤に関する傾向
は同じであり、しかもその程度は水溶媒温度の上昇にし
たがって顕著になることが分かった。
【0079】さらに、前述の70℃での抽出テスト後の
乾燥した成形体をN2 ガス雰囲気の熱風循環炉にて室温
から350℃まで8時間で昇温しながら、残りのバイン
ダーを分解気化させて、成形体の脱脂欠陥について調査
した。この調査結果が表3にまとめて示されている。
【0080】
【表3】
【0081】バインダーJ,Kを用いた脱脂体には水溶
媒抽出時間が8時間のものについても大きな割れが発生
していた。また、バインダーKの50℃での抽出8時間
のものについても大きな割れが発生しており、とりわけ
パーティングライン部に割れが多く発生しているが、そ
れ以外の厚肉部位においても割れが多く発生しており、
また形状的に薄肉部においては少ないが割れが発生して
いることから、また割れは肉径部に多く発生しているこ
とから、原因は水溶媒抽出不足,抽出の内外径における
不均一性および膨潤によるものが関係していることがわ
かる。また、バインダーF,Gにおいて短時間水溶媒抽
出の脱脂体で変形,割れが認められたが、これは水溶性
化合物の含有量が少ないためである。また、融点が70
℃より低い水溶性化合物を使ったバインダーIでは、バ
インダーKで認められた前述の垂れの発生もなく、また
割れ,変形もなかった。また、バインダーA〜Iの成形
体aでは約15〜20重量%以上の水溶媒抽出を達成し
ていれば、後の加熱脱脂条件で欠陥無く脱脂できること
が分かる。
【0082】次に、前述と同じ装置を使って70℃で
の、バインダーA〜Dを用いて図2の成形体bを、図6
に示される荷姿で水溶媒中に浸漬したときの、抽出率2
〔(抽出した重量%/成形体中の全バインダーの水溶性
成分の重量%)×100〕の関係を調査した。この調査
結果が図7に示されている。この図7から、浸漬時間1
時間で水溶性化合物の約半分以上(55〜60%)が抽
出されており、約3時間では全水溶性化合物成分の90
%が抽出されていることが分かる。このことは、使用し
た緩やかな攪拌によっても成形体bのような深穴にまで
均一に抽出されることを示している。また、水溶媒抽出
時間を1時間としたものを前述のN2 雰囲気加熱脱脂炉
によって3℃/分の昇温速度で350℃まで加熱して脱
脂した結果、すべて良品であった。前述の成形体aの加
熱脱脂の結果から類推すれば、成形体bでは30分の抽
出処理で本来の目的が達成できることが分かる。また、
成形体bを従来の加熱脱脂法で脱脂するのに要する時間
が約50〜60時間を必要とすることから考えると、約
4時間に短縮できる本実施例は、画期的な効果を提供し
ていることが分かる。
【0083】次に、バインダーBを使った成形体aを攪
拌装置のない、水溶媒温度を100℃に引き上げた沸騰
中の恒温浴槽に浸漬し、成形体からの抽出率1を調査し
た。この調査結果が図8に示されている。抽出率は70
℃の攪拌条件の場合に比べて顕著に加速されており、抽
出時間1時間で、ほぼ70℃攪拌抽出の約4時間相当の
抽出率1を達成している。また、抽出1時間の成形体a
を先の条件で加熱脱脂した結果、問題なく良品の得られ
る範囲に抽出されていることが確認された。
【0084】次に、図9に示される減圧加熱を加圧加熱
のできる溶媒槽を使って、溶媒温度50℃,0.3気圧
の状態で溶媒の沸騰状態を実現しながら、バインダー
B,Cを使った成形体bについて抽出率2を調査した。
この調査結果が図10に示されている。抽出速度は70
℃加熱で緩く攪拌した条件での抽出速度よりも速まって
いることが分かる。これは沸騰による顕著な攪拌,対流
効果に起因する抽出速度アップの結果である。
【0085】この結果と前述の加熱沸騰の結果から類推
した場合、溶媒槽に空気等のガスを吹き込むことが非常
に有効な抽出促進効果と判断でき、設備的にもコンパク
トになると考えられる。
【0086】さらに、図11に示されているように、円
方向に回転する円板上に成形体を配置して、成形体を一
方向および/または往復移動させ、さらに水溶媒を成形
体の運動方向に対して逆方向から正方向に対流させるこ
とによって均一に水溶媒と接触させることが可能とな
り、さらに、回転円板上に配置した成形体の種類と抽出
時間とを区別しながら、各任意の処理時間後に連続的に
水溶媒槽から取り出し、かつ新たな成形体を浸漬できる
ことが可能となる。
【0087】(C)水溶媒抽出後の加熱脱脂体および焼
結体の製造方法 次に、バインダーCとカーボニル鉄粉末材料(BASF
社製CS鉄粉末,平均粒径;5ミクロン)を使って14
0℃で混練加熱し、冷却して粉砕した後、射出成形機に
て図12に示されるような形状の成形体cを射出圧力6
60kg/cm 2 の条件で成形した。比較材のバインダ
ーKでは図中の○印の箇所において折損し、成形体良品
が得られなかった。バインダーCの成形体cは100℃
で1時間の水溶媒抽出を行った後、次の加熱脱脂を行っ
た。
【0088】加熱脱脂条件は次のとおりである。 (1)10Nl/minのN2 ガスに0〜0.5体積%
の範囲でCO2 を混合させた雰囲気の熱循環炉におい
て、この成形体を風速1.0m/secの条件下で最終
温度350℃まで4時間をかけて脱脂した水準1、
(2)前述のガスに空気を使用した脱脂水準2、(3)
前述のガスにCO2 ガスを使用した脱脂水準3。
【0089】脱脂処理後、1200℃において1時間真
空焼結した後に、欠陥観察と焼結体中の残留炭素量につ
いて調査した。この調査結果が表4にまとめて示されて
いる。
【0090】
【表4】
【0091】水準1の脱脂体はすべて良品であり、水準
2の脱脂体では、微細なクラックの見つかるものが若干
発生している。これは、大気中での脱脂時には高温度側
で粉末表面に酸化膜が生成されることや、熱分解途中の
バインダーの炭化による残留応力の発生によるト理解さ
れており、水準1では、この原因がガス雰囲気の調整に
よって解決されている。また、CO2 のN2 への混合に
よって、焼結体中の残留炭素量が精度良く制御されてい
ることが分かり、水溶媒抽出後の加熱脱脂時に脱脂体の
炭素量が簡便に制御されることは、以後の焼結工程にお
ける炭素量の制御がほとんど必要でなくなり、設備的に
も安価な真空状態での焼結を可能とする。また、使用す
るバインダー系の違いによる残留炭素量の調整に対して
も効果的に対応できる技術であることが分かる。
【0092】一方、CO2 ガスを単独で使用した脱脂水
準3では、脱脂体でのクラックの発生はなく、残留炭素
量も0.1重量%以下に制御されることが分かった。
【0093】なお、以上のCO2 ガス混合の効果は、大
気圧のCO2 ガスとの酸化反応が、 C(S)+CO2 (G)=2CO(G) ;ΔG1=40800−41.7T で与えられることから、ほぼ700℃までは吸熱反応に
相当する酸化に対して保護ガス的な作用を示し、熱分解
によって発生する分解ガスやN2 ガスの混合によってC
2 ガス分圧が低下することで、ル・シャトリエの法則
に従って容易に酸化性を制御しながら進行させることが
可能になるためである。また、CO2 ガスの存在下で、
成形体中の残留バインダーをCOガスを含めた低分子ガ
スに分解し易いことと、加熱脱脂時間が非常に短くでき
ることから、直接的に焼結炉において焼結昇温途中で加
熱脱脂を行い、実質的には加熱脱脂工程を省略した水溶
媒抽出−焼結プロセスが可能と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】成形体aの断面図。
【図2】成形体bの断面図。
【図3】水溶媒抽出用恒温浴槽を示す模式図。
【図4】成形体aの20℃における抽出性についての調
査結果を示すグラフ。
【図5】成形体aの70℃における抽出性についての調
査結果を示すグラフ。
【図6】成形体bの水溶媒抽出荷姿を示す図。
【図7】成形体bの70℃における抽出性についての調
査結果を示すグラフ。
【図8】成形体aの沸騰水における抽出性についての調
査結果を示すグラフ。
【図9】減圧加熱と加圧加熱のできる溶媒槽を示す断面
図。
【図10】成形体bの50℃減圧沸騰水における抽出性
についての調査結果を示すグラフ。
【図11】成形体を移動させる装置を示す断面図。
【図12】成形体cを示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斎藤 勝義 京都市左京区下鴨貴船町36 (72)発明者 小野 裕 埼玉県熊谷市大字久保島140−3 アムテ ック研究所内

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉末と有機バインダーとを混合して射出
    成形してなる成形体から前記有機バインダーを脱脂する
    脱脂方法において、 前記有機バインダーは、少なくとも一種以上の水溶性有
    機化合物と少なくとも一種以上の非水溶性の熱可塑性樹
    脂よりなり、かつ脱脂工程が、水を溶媒として前記成形
    体中の有機バインダーから前記水溶性有機化合物を抽出
    する水溶媒抽出工程を含むことを特徴とする脱脂方法。
  2. 【請求項2】 前記水溶性有機化合物が、アミド系水溶
    性化合物および/またはアミン系水溶性化合物である請
    求項1に記載の脱脂方法。
  3. 【請求項3】 前記非水溶性の熱可塑性樹脂がポリアミ
    ド樹脂である請求項1または2に記載の脱脂方法。
  4. 【請求項4】 前記水溶媒抽出工程においては、ほぼ均
    一な温度に維持された水溶媒に浸漬することによって前
    記水溶性有機化合物が急速に抽出される請求項1乃至3
    のうちのいずれかに記載の脱脂方法。
  5. 【請求項5】 前記水溶媒抽出工程においては、前記成
    形体を非水溶性の熱可塑性樹脂の融点もしくはガラス化
    温度以下に温度調整された水によって処理がなされる請
    求項1乃至4のうちのいずれかに記載の脱脂方法。
  6. 【請求項6】 前記温度調整は加圧下もしくは減圧下に
    おいてなされるものである請求項5に記載の脱脂方法。
  7. 【請求項7】 前記水溶媒抽出工程においては、水溶媒
    の温度を室温以上に加熱することによる沸騰効果および
    対流効果が利用される請求項1乃至5のうちのいずれか
    に記載の脱脂方法。
  8. 【請求項8】 前記沸騰効果は減圧することにより得ら
    れるものである請求項7に記載の脱脂方法。
  9. 【請求項9】 前記水溶媒中にガス気泡を混合すること
    により温度の均一化,急速冷却もしくは急速加熱を実現
    するとともに、攪拌・対流効果を実現する請求項1乃至
    8のうちのいずれかに記載の脱脂方法。
  10. 【請求項10】 前記水溶媒抽出工程においては、水溶
    媒中で成形体を移動させることによってその水溶媒との
    新たな接触が図られる請求項1乃至9のうちのいずれか
    に記載の脱脂方法。
  11. 【請求項11】 前記水溶媒中での成形体の移動は、一
    方向もしくは往復方向への平行移動もしくは円移動であ
    る請求項10に記載の脱脂方法。
  12. 【請求項12】 前記アミド系水溶性化合物はアミド基
    を有する物質であり、前記アミン系水溶性化合物はアミ
    ン基を有する物質であり、これらアミド系水溶性化合物
    およびアミン系水溶性化合物における融点が50℃以上
    190℃以下で、かつ沸点が175℃以上のもののうち
    から一種または二種以上を混合させてなるものである請
    求項2に記載の脱脂方法。
  13. 【請求項13】 前記ポリアミド樹脂は、アミド基間に
    挟まれる炭素数が平均8個以上であるポリアミド樹脂原
    料に対して、アミド基間に挟まれる炭素数が平均8個以
    上である相溶剤としての芳香族系ビスアミドを略等重量
    %まで混合させてなるものである請求項3に記載の脱脂
    方法。
  14. 【請求項14】 前記ポリアミド樹脂は、アミド基間に
    挟まれる炭素数が平均10個以上であるポリアミド樹脂
    原料の一種または二種以上を混合させてなるものである
    請求項3に記載の脱脂方法。
  15. 【請求項15】 前記ポリアミド樹脂は、アミド基間に
    挟まれる炭素数が平均8個以上であるポリアミド樹脂原
    料に対して、アミド基間に挟まれる炭素数が平均8個以
    上である相溶剤としての芳香族系ビスアミドを略等重量
    %まで混合させてなるポリアミド樹脂およびアミド基間
    に挟まれる炭素数が平均10個以上であるポリアミド樹
    脂原料の二種以上を混合させてなるものである請求項3
    に記載の脱脂方法。
  16. 【請求項16】 前記ポリアミド樹脂原料は、C36
    酸,C44二酸、またはそれらC36二酸およびC44二酸の
    混合物と、炭素数6〜10個の脂肪族ジカルボン酸
    と、キシリレンジアミンと、エチレンジアミンおよ
    び/またはヘキサメチレンジアミンとを共重縮合して得
    られるものである請求項13,14または15に記載の
    脱脂方法。
  17. 【請求項17】 前記ポリアミド樹脂原料の平均分子量
    が、20,000以上である請求項16に記載の脱脂方
    法。
  18. 【請求項18】 前記ポリアミド樹脂原料は、ナイロン
    11,ナイロン12を主体とするものである請求項1
    3,14または15に記載の脱脂方法。
  19. 【請求項19】 前記ポリアミド樹脂原料の平均分子量
    が、13,000以上である請求項18に記載の脱脂方
    法。
  20. 【請求項20】 前記水溶媒抽出工程において用いられ
    る水がシャワーによる水もしくは水蒸気状態の水である
    請求項1,2,3,4,5,6,10または11に記載
    の脱脂方法。
  21. 【請求項21】 さらに、前記水溶媒抽出工程による水
    溶性有機化合物の抽出後に残る残留バインダーを加熱分
    解除去する加熱分解除去工程を備える請求項1乃至20
    のうちのいずれかに記載の脱脂方法。
  22. 【請求項22】 前記加熱分解除去工程においては、加
    熱炉内を不活性ガスもしくはCO2 の一種または二種以
    上のガス組成からなる雰囲気に調整することによって、
    得られる脱脂体および脱脂以後の焼結で得られる焼結体
    中の残留炭素量が調整される請求項21に記載の脱脂方
    法。
  23. 【請求項23】 前記成形体に使用される有機バインダ
    ーの組成が、アミド系水溶性化合物および/またはアミ
    ン系水溶性化合物20〜80重量%およびポリアミド樹
    脂原料および/またはポリアミド樹脂20〜65重量%
    を含むものである請求項1乃至22のうちのいずれかに
    記載の脱脂方法。
  24. 【請求項24】 さらに、15重量%以下の滑剤を含む
    請求項23に記載の脱脂方法。
  25. 【請求項25】 請求項1乃至24のうちのいずれかに
    記載の脱脂方法により脱脂して得られることを特徴とす
    る脱脂体。
  26. 【請求項26】 請求項1乃至24のうちのいずれかに
    記載の脱脂方法により脱脂した後に焼結して得られるこ
    とを特徴とする焼結体。
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