JPH10120591A - 免疫寛容誘導剤 - Google Patents

免疫寛容誘導剤

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JPH10120591A
JPH10120591A JP29800896A JP29800896A JPH10120591A JP H10120591 A JPH10120591 A JP H10120591A JP 29800896 A JP29800896 A JP 29800896A JP 29800896 A JP29800896 A JP 29800896A JP H10120591 A JPH10120591 A JP H10120591A
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JP
Japan
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antigen
peptide
tolerance
subunit
immunological tolerance
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JP29800896A
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Masayuki Nomura
昌行 野村
Masahiro Kajiki
正洋 加治木
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 治療・予防に有用で安全な免疫寛容誘導剤 【解決手段】 寛容を誘導する対象の抗原に、適当なス
ペーサーを介し、A−B型毒素を構成するBサブユニッ
トのB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープ
を含む5〜25アミノ酸からなるペプチドを結合させるこ
とで、抗原特異的免疫寛容誘導剤とする。免疫寛容誘導
の本質的機能部分だけを利用することで、毒素のサブユ
ニットが本来持つ不要な生理活性を取り除き安全な免疫
寛容誘導剤となり、自己免疫疾患、移植時の拒絶、アレ
ルギーなどの治療あるいは予防に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な免疫寛容誘
導剤に関する。本発明の免疫寛容誘導剤は、アレルギー
や、慢性関節リウマチ等の自己免疫疾患、さらには移植
時の拒絶などの不必要な免疫反応が原因となる疾患の治
療あるいは予防に有用である。
【0002】
【従来の技術】生体内の免疫系が抗原と出会ったとき
に、後から与えられる同一の抗原刺激に対して応答でき
なくなる現象は、免疫寛容と呼ばれている。正常な状態
では自己構成成分に対して免疫寛容が成立しており、免
疫系による障害機序が働くことはない。このように免疫
寛容とは、ある特定の抗原に対して、抗体産生に代表さ
れるB細胞応答、および/または、サイトカイン産生や
細胞障害性T細胞の誘導などに代表されるT細胞応答が
起こらない状態であり、生体が持つ恒常性機構の一つで
ある。それゆえ、人為的な免疫寛容誘導は、不必要な免
疫反応が原因となる自己免疫疾患・移植時の拒絶・アレ
ルギーなどの治療として有効であると考えられる。既
に、抗原を一定条件下で経口投与することで、抗原特異
的な免疫寛容が誘導できることはよく知られている (H.
L.Weinerら、Annu.Rev.Immunol.12:809-837(1994))。さ
らに、鼻粘膜を介して抗原を投与しても抗原特異的な免
疫寛容が誘導できることも知られている (J.Mestecky
ら、Annals of the New York Academy of Science 778:
194-201(1996))。このように腸管や鼻の粘膜からの抗原
の投与は、その粘膜組織が本来持つ生体機構により、い
わゆる全身性に抗原を投与するときよりも効率よく免疫
寛容を誘導する。これは、腸管や鼻の粘膜免疫系が、異
物を攻撃し排除するという排他的な機能を担っている一
方で、自分にとって有益なものはたとえ異物でも受け入
れるという寛容な側面をも合わせ持つことに由来すると
考えられる。すなわち、この二面性の背景に、過剰な炎
症免疫反応を制御する特徴的なシステムが存在すると考
えられ、経口経鼻免疫寛容はこうした粘膜免疫の特徴を
反映する現象だと考えられている (A.M.Mowat 、Immuno
l.Today 8:93-98(1987))。
【0003】こうした粘膜に備わる特殊性を積極的に利
用した免疫寛容誘導剤は、抗原特異的で、かつ、誘導効
果の安全域が広く、一度の誘導で長期間効果が持続する
といった従来にない医薬品になることが期待されてい
る。しかしながら、実際には、経口もしくは経鼻による
免疫寛容が成立するためには、投与抗原の性状、濃度、
投与頻度などがある一定の条件を満たさなければならな
い。例えば、通常OVA(オブアルブミン)を投与する
と経口免疫寛容が成立する同一条件で、化学修飾を施し
たOVAを用いると、OVAに対する免疫寛容が成立し
ないことが知られている (M.J.M.Jacobsら、Scand.J.Im
munol.37:97-103(1993) ;H.-J.Peng ら、Scand.J.Immu
nol.42:297-304(1995)) 。さらに、経口投与時の年齢や
投与間隔などで経口免疫寛容の誘導効率が変わることも
知られている (B.S.Lundinら、Scand.J.Immunol.43:56-
63(1996);A.M.C.Fariaら、Immunology 78:147-151(199
3))。すなわち、ここで述べたような粘膜が本来持つ生
体機構を利用して、あらゆる抗原において確実に免疫寛
容を誘導する方法は未だ確立していない。
【0004】粘膜面に到達した抗原は、短時間の間に粘
膜上皮細胞やパイエル板のM細胞などから取り込まれる
(P.Brandtzaegら、Gastroenterology 97:1562-1584(19
89);V.Galliaerde、Eur.J.Immunol.25:1385-1390(199
5)) 。気道上皮においても、同種の細胞が抗原の取り込
みに関与していることが知られている (J.Richardson
ら、Lab.Invest.35:307-314(1976))。取り込まれた抗原
は、抗原提示能を持った複数種の細胞内で処理された後
に、それぞれの細胞表面に提示されると考えられる。こ
のようにして提示された抗原の抗原エピトープ部分に対
し、親和性を持ったT細胞抗原レセプターを発現したT
細胞、および、親和性を持ったB細胞表面イムノグロブ
リンを発現したB細胞が反応し、一連の免疫反応が起こ
る。この一連の免疫反応はまず粘膜局所で起こるが、免
疫寛容自体は局所ではなく全身性の免疫組織において成
立するという報告もある (G.Wildner & S.R.Thurau、Eu
r.J.Immunol. 25:1292-1297(1995))。この免疫寛容成立
に至る免疫反応は、抗原の性状、関与する抗原提示細胞
とそれに反応するリンパ球の種類、個体の遺伝的な背景
など、複数の因子の影響を受ける。このため、経口もし
くは経鼻による免疫寛容が成立するためには、投与抗原
の性状、濃度、投与頻度などがある一定の条件を満たさ
なければならないわけであり、その条件設定もきわめて
経験的に決定されている。
【0005】Holmgren & Czerkinsky は、WO95/10301号
公報の中で、経口免疫寛容の誘導効率を上げることを目
的として粘膜面での抗原の吸収効率を高める方法を開示
している。コレラトキシンBサブユニットは、A−B型
毒素の一つであるコレラトキシンを構成するBサブユニ
ット部分であり、本来、粘膜面のGM1ガングリオシド
(ガラクトシル−N−アセチル−ガラクトサミニル−
(シアリル)−ガラクトシルグルコシルセラミド)など
と結合することでAサブユニットを細胞内に送り込む機
能を持った分子であることが知られている。遺伝子工学
的に作ったコレラトキシンBサブユニット(リコンビナ
ントコレラトキシンBサブユニット)を結合することに
より、羊赤血球あるいはヒトガンマグロブリンあるいは
ミエリン塩基性蛋白に対して効率よく抗原特異的に経口
免疫寛容が誘導されると報告されている (J-B.Sun ら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10795-10799(1994); J-B.S
unら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7196-7201(1996) ;
J.Holmgren & C.Czerkinsky、WO 95/10301)。
【0006】コレラトキシンBサブユニット(CT-B)や熱
不安定性エンテロトキシンのBサブユニット(LT-B)は従
来ワクチン組成物として知られている。たとえば、アン
ダーソンらは特公平 8-11737号公報の中で、無毒性変異
LT−Bを担体にすることで細菌病原体の莢膜ポリマー
に対する免疫原性を高め、細菌病原体ワクチン組成物が
完成することを開示している。このように、CT−Bや
LT−Bのような細胞表面への結合を促進する分子を、
担体として抗原に結合させる行為は抗原の免疫原性を高
める手法であり、本来、免疫寛容の誘導とは反対の免疫
反応を誘導する。上述のHolmgren & Czerkinsky が、WO
95/10301号公報の中で、CT−BやLT−Bなどの粘膜
面への結合分子を付けた抗原による免疫寛容誘導の効果
が、本当に粘膜面での抗原取り込み効率の上昇だけによ
るものかどうかを明らかにしていないことは指摘される
べきである。
【0007】また、CT−B分子やLT−B分子自体に
T細胞を細胞死に至らせる活性 (T.O.Nasharら、Int.Im
munol.8:731-736)や、パイエル板内のヘルパーT細胞を
誘導する活性 (I.Nakagawaら、J.Infect.Dis. 173:1428
-1436)、さらには毒性 (アンダーソンら、特公平8-1173
7 号公報) などもあることが知られている。そこで、こ
うした副作用の心配から、エンテロトキシンに対するワ
クチン開発を目的としてLT−BのT細胞エピトープお
よびB細胞エピトープを同定する研究がなされている
(I.Takahashi ら、Infect.Immun.64:1290-1298(199
6))。さらには、これらのT細胞エピトープとB細胞エ
ピトープの両方を含む部分のペプチドそのものを経口投
与すると、投与したペプチドに対する免疫反応がパイエ
ル板内では活性化される一方で、末梢では免疫寛容状態
になることも報告されている (I.Takahashi ら、Biophy
s.Biochem.Res.Commun. 206:414-420(1995))。これらL
T−BのT細胞エピトープおよびB細胞エピトープに関
する研究は、あくまでLT−Bなどのエンテロトキシン
を抗原としてとらえたワクチン開発を目的とするもので
あり、これまで、これらエピトープペプチドを結合され
た側の抗原に対する免疫反応について全く調べられてい
なかったことは考慮されるべきである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】CT−BやLT−B分
子など、粘膜面への結合分子をつけた抗原を経粘膜的に
投与することで得られる効果は、粘膜での抗原取り込み
効率を上昇させ、それにより結果的に抗原単独の投与に
比べて、投与回数や量を減らすことにつながり、免疫寛
容成立の確率を上げることだと考えられている。しかし
ながら、すでに述べたように、粘膜において免疫寛容が
成立するためには、抗原の取り込みのステップとT細胞
およびB細胞との相互作用のステップとの2つのステッ
プが重要であり、取り込み効率の上昇に加えて、免疫寛
容成立に働くT細胞およびB細胞との相互作用をも促し
た方がより本質的普遍的に粘膜での免疫寛容を誘導でき
るのは明らかである。さらには、CT−BやLT−B分
子自体を利用する場合、こうした分子が毒性やT細胞へ
の非特異的な生理活性などを持つため、予期し得ない副
作用などを引き起こす可能性もあり、安全性における問
題点が指摘されている。このように、より本質的で抗原
の性状に依存しない普遍的かつ安全性の高い免疫寛容誘
導剤が待ち望まれている。
【0009】すなわち、本発明者らが解決しようとして
いる問題点は、CT−B分子やLT−B分子そのものを
利用した免疫寛容誘導剤には、その毒素のサブユニット
が本来持つ生理活性がそのまま残っていることである。
たとえば、 1)5量体を形成し、 2)ADP−リボシル・トランスフェラーゼ活性などを
持つAサブユニットとの結合能を有し、 3)そのAサブユニットを細胞内に送り込む能力を持
ち、 4)さらには、Bサブユニット自体にも毒性や免疫担当
細胞への生理活性が存在する。
【0010】本発明者らは、これらBサブユニットのア
ミノ酸配列のうち、5〜25アミノ酸からなる特定領域の
ペプチドが免疫寛容誘導の本質的な機能部分であること
を見出した。従って、本発明の目的は、このペプチドを
利用することで、従来のような粘膜での抗原取り込み効
率の促進による免疫寛容成立確率の上昇のみを目的とす
るのではなく、免疫寛容成立に働くT細胞およびB細胞
との相互作用をも促すことで、より本質的普遍的で安全
な免疫寛容誘導剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のよ
うな粘膜での抗原取り込み効率の促進だけを目的とする
のではなく、粘膜における免疫寛容成立に働くT細胞お
よびB細胞との相互作用そのものに働きかけ、生体が本
来有している免疫寛容成立機構に則った形で抗原特異的
な免疫寛容を成立させる方法を確立させるため鋭意検討
を重ねた。その結果、驚くべきことにCT−Bもしくは
LT−B由来のペプチドのうち、T細胞エピトープもし
くはB細胞エピトープを含むペプチドを抗原と共有結合
させることで抗原特異的な免疫寛容が誘導できることを
見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち、A
−B型毒素を構成するBサブユニットのB細胞エピトー
プおよびT細胞エピトープを含むペプチドは、粘膜での
免疫反応において特殊な作用を持ち、そのような作用を
持つペプチドを抗原に結合させることで、その抗原に対
する粘膜でのT細胞応答およびB細胞応答が影響を受け
て、生体が本来有している免疫寛容成立機構に則った形
で抗原特異的な免疫寛容が成立する。
【0012】本発明の免疫寛容誘導剤は、次の式(1) で
表される化合物を有効成分とする。 P−L−A (1) 上記の式において、Pは、A−B型毒素を構成するBサ
ブユニットのB細胞エピトープおよび/またはT細胞エ
ピトープを含む、5〜25のアミノ酸からなるペプチドを
表す。Lはスペーサーを、Aは寛容を誘導する対象の抗
原を表す。すなわち、前記有効成分の化合物は、A−B
型毒素を構成するBサブユニットのB細胞エピトープお
よび/またはT細胞エピトープを含む、5〜25のアミノ
酸からなるペプチドを、スペーサーを介して寛容を誘導
する対象の抗原に結合させたものであり、薬学的に容認
し得る賦形剤中に前記有効成分を薬学的に効果的な用量
で存在させた免疫寛容誘導薬剤である。
【0013】本発明の免疫寛容誘導剤を利用すれば、例
えば実施例に示すがごとく、抗原のみで経口免疫寛容を
誘導するのに必要な投与量の、僅か1/1,000 程度の量で
効果が得られる。さらに、従来技術のリコンビナントB
サブユニット分子を結合させたものに比べ、その毒素の
サブユニットが本来持つ不要な生理活性を最大限に取り
除くことができ、一方で抗原特異的免疫寛容誘導には同
等程度以上の効果がある。
【0014】本発明でいう用語「免疫寛容」は、生体内
の免疫系が抗原と出会ったときに、後から与えられる同
一の抗原刺激に対して応答できなくなる現象であり、抗
原特異的に成立するものである。すなわち、ある特定の
抗原に対して、抗体産生に代表される液性免疫応答、お
よび/または、遅延型過敏症反応・抗体依存性細胞障害
作用・細胞障害性T細胞による細胞障害作用・ナチュラ
ルキラーによる標的細胞の溶解などに代表される細胞性
免疫反応が起こらない、もしくは抑制されている状態を
いう。当分野では、免疫寛容の誘導成立が、必ずしも全
く免疫反応が起こらないわけではなく、生体にとって不
利益にならない程度に抑制されている状態であることは
十分に理解されている。
【0015】本発明でいう用語「A−B型毒素」は、文
字通りAサブユニットとBサブユニットからなる毒素で
あり、まず、Bサブユニットが標的細胞の受容体と結合
してAサブユニットの細胞膜通過を補佐する。活性を持
ったAサブユニットは細胞質内に侵入して標的となる機
能タンパク質をADP−リボシル化やリン酸化修飾し、
細胞代謝異常を引き起こさせる。例えば、ジフテリア毒
素、緑膿菌エキソトキシン−A、百日咳毒素、コレラ毒
素、毒素原性大腸菌易熱性(熱不安定性)エンテロトキ
シン、シガトキシン(赤痢菌毒素)、ベロ毒素などが
「A−B型毒素」に含まれる。
【0016】本発明でいう用語「ペプチド」は、A−B
型毒素を構成するBサブユニットのB細胞エピトープお
よび/またはT細胞エピトープを含み、隣接するアミノ
酸残基のα−アミノ基とカルボキシル基間でペプチド結
合により相互に結合された線状の一連のアミノ酸を表
す。例えば、毒素原性大腸菌易熱性(熱不安定性)エン
テロトキシンBサブユニットのB細胞エピトープとして
は、アミノ酸配列85番から91番までの配列部分、36番か
ら44番までの配列部分、64番から73番までの配列部分が
知られており、T細胞エピトープとしては、34番から42
番までの配列部分が知られている(I.Takahashiら、Infe
ct.Immun. 64:1290-1298(1996)) 。このようなB細胞エ
ピトープおよび/またはT細胞エピトープを含んだペプ
チドは種々の長さであり得、中性状態(無電荷)または
塩のいずれであっても、またグルコシル化、側鎖の酸化
あるいはホスホリル化などの変性を受けていても、いな
くてもよい。当分野では、アミノ酸配列が酸性基及び塩
基性基を含み、かつ該ペプチドにより示される特定のイ
オン化状態が、取り巻いている媒質のpHに依存するこ
とは十分に理解されている。また、付随的にアミノ酸側
鎖に付加された置換基、例えばグルコシル単位、脂質あ
るいは無機イオンによって変性されたペプチド、並びに
スルフヒドリル基の酸化などの、鎖の化学転化に関連す
る変性物もこの定義に含まれる。かくして用語「ペプチ
ド」は、A−B型毒素を構成するBサブユニットのB細
胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープを含み5
〜25アミノ酸からなるアミノ酸配列を含むことを意図
し、機能を損なわない上記変性を受けたものも意図して
いる。
【0017】さらに、本発明において免疫寛容誘導剤と
して有用である限り、本発明におけるペプチド(以下、
本ペプチドという)はそのアミノ末端及び/又はカルボ
キシル末端に1又は2以上のアミノ酸が付加していても
よい。このようなアミノ酸の付加により、抗原と本ペプ
チドとをペプチドの機能を損なわずに結合することがで
きる。こうした目的のために有用なアミノ酸には、チロ
シン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システ
イン及びこれらの誘導体がある。さらに通常の蛋白質修
飾法により、例えばアミノ末端のアセチル化や、カルボ
キシル末端のアミド化などにより、本ペプチドが他のペ
プチド免疫原あるいは抗原と作用可能に結合する手段を
付加することも可能である。
【0018】本ペプチドは、多数の従来の方法で調製で
きる。通常、有機化学的な合成方法によりアミノ酸を段
階的に導入する方法により調製することができるが、遺
伝子工学的方法によっても調製することができる。A−
B型毒素を構成するBサブユニットまたはその含有物を
酵素、酸またはアルカリを用いて加水分解処理する方法
によっても調製することは可能であるが、細胞代謝異常
を引き起こす活性を持ったAサブユニットの混入をさけ
るため、十分な注意を払う必要がある。
【0019】有機化学的な合成方法としては固相ペプチ
ド合成又は液相ペプチド合成法が知られており、例え
ば、泉谷信夫他著「ペプチド合成の基礎と実験(丸善発
行)」に詳細に記載されている。より具体的に説明する
と、液相ペプチド合成法では、C末端に位置すべきアミ
ノ酸のカルボキシル基を適当な保護基(例えば、ベンジ
ル基(Bzl) 、t−ブチル基(t-Bu)等)で保護し、C末端
から2番目に位置すべきアミノ酸のアミノ基を適当な保
護基(例えば、t−ブチルオキシカルボニル基(Boc)、
ベンジルオキシカルボニル基(Z) 等)で保護し、これら
のアミノ酸を適当な溶媒 (例えば、ジメチルホルムアミ
ド(DMF) 、テトラヒドロフラン等) に溶解し、縮合剤
(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC) 等)
及び必要に応じてラセミ化防止剤 (例えば、1−ヒドロ
キシベンゾトリアゾール(HOBT)等) の存在下、低温(4
℃程度)で10〜24時間程度反応させる。
【0020】ついで、生成物のアミノ保護基をトリフル
オロ酢酸等を用いて常法により除去し、ジペプチドが得
られる。次いで、得られたジペプチドを第3のアミノ酸
(これもアミノ基を保護してある)とともに上記と同様
にして反応させ、トリペプチドを得る。更に、同様な手
順を繰り返して順次必要なアミノ酸を結合させ、保護基
の結合した状態の目的ペプチドを得る。なお、反応させ
るアミノ酸が側鎖官能基を有する場合にはペプチド合成
反応に先だって保護する必要がある。例えば、リジンの
6位のアミノ基はトシル基(Tos) などにより保護する。
最終反応の終了後、これらの保護基を接触還元やフッ化
水素(HF)などにより除去し、目的とするペプチドを得る
ことができる。また、固相ペプチド合成法は、慣用のペ
プチドシンセサイザー(例えば、アプライドバイオシス
テムズ社製430A型)を用いて行うことができる。この方
法においては、目的とするペプチドのカルボキシル末端
アミノ酸が結合したフェニルアセトアミドメチル(PAM)
樹脂(即ち、アミノ酸-OCH 2-PAM)のアミノ基側に、Boc
基で保護したアミノ酸を自動制御により逐次結合させ、
目的とするペプチドに保護基とPAM 樹脂が結合した試料
を得ることができる。次いで、この試料にアニソールな
どのスカベンジャーを添加した後、HFを導入し、−2
℃、1時間反応させることにより目的ペプチドを遊離さ
せることができる。遊離したペプチドは無水エーテルな
どで洗浄後、酢酸を含む水で抽出、凍結乾燥することに
より、目的ぺプチドを得ることができる。一般には、こ
れら合成ペプチドを合成ペプチド精製用カラムを用いた
高速液体クロマトグラフィー (HPLC) で精製し、回収し
て凍結乾燥法により乾燥する。
【0021】また、本ペプチドは遺伝子工学的方法によ
っても得ることができる。例えば、目的のアミノ酸配列
をコードするDNA断片を合成し、このDNA断片を常
法により適当な発現ベクターに組み込み、この発現ベク
ターで適当な宿主を形質転換し、得られた形質転換体を
培養し、その培養物から単離・精製することにより、目
的ペプチドを調製することができる。
【0022】本発明でいう用語「エピトープ」は、抗原
分子上で抗体と結合する部位や、組織適合抗原と結合し
てT細胞レセプターを刺激する部位をいう。前者をB細
胞エピトープ、後者をT細胞エピトープと呼ぶが、この
両者の部位は必ずしも一致しない。エピトープの最小単
位は、一般に6〜10個のアミノ酸でできたペプチド、5
〜8個の単糖でできたオリゴ糖であることが知られてい
る。しかし、近年の天然高分子抗原の化学構造研究やそ
れを分解して得たポリペプチド、糖、脂質鎖の分析よ
り、アミノ酸5〜8個、糖4〜6個ぐらいだとも言われ
ている。また、このようなエピトープを含む領域はB細
胞上の表面イムノグロブリンもしくはT細胞上のT細胞
レセプターと結合しうることから、非疎水性であること
が好ましい。
【0023】本発明でいう用語「スペーサー」は、上記
ペプチドと抗原とを、それぞれのN末端部分のアミノ基
や、C末端部分のカルボキシル基、またはアミノ基の側
鎖が有する官能基を利用して結合させるものである。よ
り具体的には、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジ
ルジチオ)プロピオネート(SPDP)、m−マレイミドベン
ゾイル−N−ハイドロキシスクシンイミドエステル(MB
S) 、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)
シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スクシ
ンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート
(SMPB)などに代表されるヘテロ二価性架橋試薬を利用し
たり、ジメチルアジピンイミデート(DMA)、ジメチルピ
メリンイミデート(DMP) 、ジメチルスベリンイミデート
(DMS) 、ジスクシンイミジルスベレート(DSS) 、ジチオ
ビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、エチレ
ングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(E
GS)、ジスクシンイミジルタルタレート(DST) などに代
表されるホモ二価性架橋試薬を利用するなど、市販の架
橋剤を利用して容易に実施できる。また、本用語「スペ
ーサー」には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミ
ノ)プロピルカルボジイミド(EDC) などのいわゆるゼロ
長架橋剤を利用したアミド結合も含んでいる。架橋剤の
詳細については、例えば、「新生化学実験講座1、タン
パク質IV、構造機能相関、13章:架橋」山田秀徳
ら、日本国、東京化学同人、 207〜230 頁を参照するこ
とも出来る。また、本「スペーサー」は、遺伝子工学的
方法によっても得ることができる。例えば、目的の「ペ
プチド」のアミノ酸配列をコードするDNA断片に、
「スペーサー」に相当する1〜4アミノ酸をコードする
DNA断片を翻訳可能に結合し、さらに、「抗原」に相
当するアミノ酸配列をコードするDNA断片を翻訳可能
に結合する。この連続したDNA断片を常法により適当
な発現ベクターに組み込み、この発現ベクターで適当な
宿主を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、その
培養物から単離・精製することにより、本発明の免疫寛
容誘導剤の有効成分化合物を調製することができる。
【0024】本発明に用いる抗原としては、例えば、卵
白アルブミン、ミルク、ダニ、カビ、スギ花粉、II型
コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク、インスリン、赤
血球、白血球、腎臓細胞、肝臓細胞、皮膚上皮細胞また
はこれらから得られる抗原成分などがあげられるが、免
疫寛容を誘導することで治療効果が期待できる抗原であ
れば、特に限定されないし、抗原の免疫学的活性を保持
するものであれば、その部分ペプチドであってもかまわ
ない。
【0025】本発明の免疫寛容誘導剤は、ヒトをはじめ
とする哺乳動物のアレルギーや、慢性関節リウマチ等の
自己免疫疾患、さらには移植時の拒絶など、不必要な免
疫反応が原因となる疾患の治療・予防に有用である。特
に、本ぺプチドは、A−B型毒素を構成するBサブユニ
ットのB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトー
プを含む5〜25アミノ酸からなるペプチドであって、B
サブユニット分子をそのまま利用するわけではないの
で、安全性が高いと推定される。
【0026】本発明の免疫寛容誘導剤は、その有効成分
の化合物を単独で免疫寛容誘導剤として用いてもよい。
しかし、通常は、各種剤形で使用することができる。か
かる剤形の具体例としては、たとえば経口剤、経鼻剤、
吸入剤、点眼剤、経膣剤、座薬などがあげられる。これ
らの各種剤形の製剤は常法に従い、治療目的に応じて、
賦形剤、結合剤、溶解剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化
剤などの製剤技術分野において通常使用することができ
る担体を用いて調製することができる。
【0027】例えば、経口剤の投与に際しては、有効成
分を経口投与に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体
と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与される。この
ような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カ
プセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、
凍結乾燥製剤等が挙げられ、これらの製剤は製剤上の常
套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒
性担体としては、例えば、薬剤用等級のマンニトール、
ラクトース(乳糖)、スターチ(でんぷん)、ステアリ
ン酸マグネシウム、蔗糖ナトリウム、セルロース、炭酸
マグネシウムなどを含む。さらには、白糖、ブドウ糖、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチ
ルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、メタケイ酸ア
ルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム、クエン
酸、クエン酸三ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロ
ース、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリ
ビニルピロリドン、植物油(落花生油、オリーブ油な
ど)、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、シ
ョ糖、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレン
グリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリ
コール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステ
ル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げら
れる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、
乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することが
できる。この組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプ
セル剤、持続放出型処方物または粉末の形状をとり、か
つ 1.0〜95%、好ましくは 2.5〜70%の有効成分化合物
を含む。また例えば坐薬の場合、伝統的なバインダ及び
担体は、例えばポリアルカレングリコ(polyalkalene g
lycos)またはトリグリセリドを含み、かかる坐薬は0.5
〜10%、好ましくは1〜2%の範囲で有効成分化合物を
含む混合物から形成できる。
【0028】本発明の免疫寛容誘導剤は、投与処方物と
一致する様式で、治療上有効かつ免疫寛容原性であるよ
うな量で投与される。投与すべき量は、治療すべき対
象、対象となる免疫系の容量及び所定の保護の程度に依
存する。投与すべきことが要求される活性成分の正確な
量は臨床医の判断に依存し、各個体に特異的であり、年
齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤
形態等により、適宜選択・決定されるが、例えば、1日
当り0.05〜500mg/kg体重程度とされ、1日数回に分けて
投与してもよい。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の特徴を明らかにす
るために、実施例に沿って記述するが、これらの実施例
は本発明の種々の具体例を説明するものであって、本発
明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
【実施例1】 (合成)A−B型毒素を構成するBサブユニット由来の
B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープであ
って5〜25アミノ酸からなるペプチドの例として、図1
(配列表配列番号1〜3)に示す配列を利用した。図1
の中で、CTBpeptideはコレラトキシンBサブユニッ
トのアミノ酸配列26番から45番までの配列、LTB(F)
peptide は熱不安定性エンテロトキシンBサブユニット
のアミノ酸配列のうち、同じく26番から45番までの配
列、そして、LTB(I) peptide は、LTB(F) の1ア
ミノ酸を変異させた配列(17番目のPhe をIle に変更さ
せた配列)である。利用する各ペプチドのC末端側にシ
ステインを人工的に付加することで、先に述べた種々の
スペーサーを利用して各種抗原に結合させることができ
るので、それぞれのペプチドのC末端にシステインが付
加されている。図1(配列表配列番号1〜3)に示す配
列をもったペプチドを常法に準じて市販の固相合成装置
(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、固相法に
より合成した。得られたペプチドを、スクシンイミジル
3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)なる
スペーサーを利用したジスルフィド結合を介してモデル
抗原オブアルブミン(OVA)およびモデル抗原ヒトガンマ
グロブリン(HGG) に結合した。
【0031】具体的には、SPDPはファルマシア社
(スウェーデン)から購入し、商品に添付されているマ
ニュアルに従って結合反応を行った。すなわち、OVA
及びHGGをそれぞれ、0.1M塩化ナトリウムを含有しpH
7.5 の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液 (以下、リン酸ナト
リウム緩衝液という) に溶解した。これらのタンパク溶
液から低分子不純物などを除くために Sephadex G-25
(ファルマシア社) を利用したゲルクロマトグラフィー
にかけた後、タンパク濃度を10mg/ml にした。この溶液
に、エタノールで20mM溶液にしたSPDPを、タンパク
とのモル比で3倍から10倍になるように一滴ずつ素早く
かき混ぜながら加えた。時々攪拌しながら23℃で30分反
応させ、先ほどのリン酸ナトリウム緩衝液での Sephade
x G-25 (ファルマシア社) を利用したゲルクロマトグラ
フィーをもう一度行った。次に、合成したペプチドをリ
ン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、SPDP反応済みタン
パク溶液にタンパクとのモル比で3倍から10倍になるよ
うに加えた。この混合液を23℃で16〜24時間反応させ、
タンパクとペプチドとを結合させた。反応終了後、Seph
adex G-25(ファルマシア社)を利用したゲルクロマトグ
ラフィーで未反応スペーサーおよび未反応ペプチドを除
去するとともに緩衝液の交換を行い、必要に応じてSeph
acryl S-300(ファルマシア社)を利用したゲルクロマト
グラフィーで目的の分子量分画を回収した。ここで目的
の分子量とは、モデル抗原OVAの場合、40、000〜60,0
00ダルトンである。モデル抗原HGGの場合、150,000
〜300,000 ダルトンである。
【0032】回収した分画が、本発明の免疫寛容誘導剤
の有効成分化合物であるかどうかは、本発明の分野で常
用の技術、例えば、SDS−PAGE法によって容易に
確認できる。市販のSDS−PAGE用グラジエントゲ
ル(例えば、第一化学薬品(株)製、日本国)を用いて
電気泳動を行う際、非還元条件でのバンドと還元条件で
のバンドとを比較する。非還元条件下では、それぞれの
モデル抗原本来のバンドよりやや大分子量側にバンドが
観察される一方で、還元条件下では、モデル抗原本来の
バンドと 500〜4,000 ダルトンのペプチド由来のバンド
が観察されることを確認した。以上の結果、以下に示す
6種類の本発明の免疫寛容誘導剤の有効成分化合物が合
成された。 CTBpeptide −OVA、LTB(F) peptide −OV
A、LTB(I) peptide−OVA、CTBpeptide −H
GG、LTB(F) peptide −HGG、LTB(I) peptid
e −HGG。
【0033】
【実施例2】 (BALB/cマウスでの評価)このようにして作製し
た本発明の免疫寛容誘導剤を経口投与した際の効果を評
価するために、抗原特異的な血清中および糞便抽出液中
の抗体濃度を測定した。評価の一例として、BALB/
cマウスに対してモデル抗原OVAを利用する系を使っ
た。BALB/cマウスに対して、6週令から7週令ま
でに本発明の免疫寛容誘導剤を一回経口投与する。投与
には経口投与針とシリンジを用い、本発明の免疫寛容誘
導剤の有効成分化合物を溶解したリン酸緩衝生理食塩水
(PBS)200μl を一匹の胃内に注入投与した。また、本実
施例では一群8匹で行った。その一週間後に、今度は抗
原のみをフロイントコンプリートアジュバントと混ぜて
エマルジョンにし、皮下投与により免疫する。さらにそ
の一週間後に血清および糞便抽出液を回収し、その中に
含まれる抗原特異的な抗体の濃度を評価した。抗体濃度
の測定は、固相酵素免疫測定法(ELISA) を用いた。この
ELISAによる抗体濃度の決定は、当分野では良く知
られており、例えば、「酵素免疫測定法、第二版」石川
榮治ら、日本国、医学書院、などに詳しく記載されてい
る。すなわち、抗原を測定プレートに吸着させ、その吸
着抗原に結合する血清中もしくは糞便抽出液中の抗原特
異的抗体を、酵素標識された抗マウスIgG1抗体、あ
るいは抗マウスIgG2a抗体あるいは抗マウスIgG
抗体、または抗マウスIgA抗体によって検出する測定
系で測定した。酵素標識の代わりにビオチン標識抗体を
利用し、さらにアビジン結合酵素を反応させることで増
感させることも一般的に行われている。このELISA
により得られた吸光度から、もとのサンプル中の該抗体
濃度を逆算することができる。
【0034】結果の一例を、図2に示す。図2では、抗
原としてオブアルブミン(OVA) を使い、本発明の疫寛容
誘導剤を一回経口投与したマウス群の抗体濃度の抗原特
異的抑制をパーセンテージで表してある。ここでは、リ
ン酸緩衝生理食塩水(PBS) 投与群の各サブクラス別抗原
特異的抗体濃度を 100%として表している。また、血清
は 1,000倍希釈での測定値、糞便抽出液は10倍希釈での
測定値に基づいて計算した。各データの標準誤差をエラ
ーバーで表してある。これらのことから、対照のリン酸
緩衝生理食塩水(PBS) 投与群に比べて、わずか25μg の
本発明の免疫寛容誘導剤を一回だけ経口摂取しただけで
抗原特異的な免疫反応が劇的に抑制されることが明らか
である。
【0035】
【比較例1】実施例2で示された抗体濃度抑制が、本当
に抗原特異的であることを示すため、各サブクラス別の
全抗体濃度を調べた。方法は、実施例2に示した投与方
法、ELISAをそのまま利用するが、抗原を測定プレ
ートに吸着させる代わりに、市販の抗マウスイムノグロ
ブリン抗体を吸着させる。抗マウスイムノグロブリン抗
体は、抗体のサブクラスにかかわらずすべての抗体と結
合するので、その後、酵素標識された抗マウスIgG1抗
体、あるいは抗マウスIgG2a 抗体あるいは抗マウスIgG
抗体、または抗マウスIgA 抗体によって検出すること
で、各サブクラス別の全抗体濃度を測定することができ
る。もちろんすでに述べたように、酵素標識の代わりに
ビオチン標識抗体を利用し、さらにアビジン結合酵素を
反応させることで増感させることも一般的に行われてい
る。このELISAにより得られた吸光度から、もとの
サンプル中の該抗体濃度を逆算することができる。
【0036】結果を、図3に示す。図3では、本発明の
免疫寛容誘導剤を一回経口投与したマウス群の全抗体濃
度を各サブクラス別にパーセンテージで表してある。リ
ン酸緩衝生理食塩水(PBS) 投与群の各サブクラス別抗原
特異的抗体濃度が 100%である。血清は1,000 倍希釈で
の測定値、糞便抽出液は10倍希釈での測定値に基づいて
計算した。各データーの標準誤差をエラーバーで示す。
本発明の免疫寛容誘導剤を投与しても、全抗体濃度、す
なわち投与抗原以外に対する非特異的な抗体産生には抑
制活性を持たないことがわかる。
【0037】
【比較例2】実施例2に示した実験系で、モデル抗原O
VAを大量一回経口投与、すなわち例えば25mg/匹、し
た場合、経口免疫寛容が誘導されることがすでに一般的
に知られている。また、リコンビナントコレラトキシン
Bサブユニットを化学的に結合したモデル抗原オブアル
ブミン(OVA) を25μg /匹、経口投与した場合も経口免
疫寛容現象が起こる。そこで、これら従来技術の効果
と、本発明の免疫寛容誘導剤の効果とを比較した。リコ
ンビナントコレラトキシンBサブユニット結合モデル抗
原は、WO95/10301号公報に開示してある方法に従い調製
した。方法は、実施例2に示した投与方法、ELISA
をそのまま利用する。このELISAにより得られた吸
光度から、もとのサンプル中の該抗体濃度を逆算するこ
とができる。
【0038】結果を図4に示す。図4では、未処理のモ
デル抗原OVA単独25mg一回経口投与のマウス群、25μ
g 本発明の免疫寛容誘導剤を一回経口投与したマウス
群、およびリコンビナントコレラトキシンBサブユニッ
ト結合抗原を25μg 一回経口投与のマウス群の抗原特異
的抗体濃度を各サブクラス別にパーセンテージで表して
ある。リン酸緩衝生理食塩水(PBS) 投与群の各サブクラ
ス別抗原特異的抗体濃度が 100%である。血清は 1,000
倍希釈での測定値、糞便抽出液は10倍希釈での測定値に
基づいて計算した。各データーの標準誤差をエラーバー
で示した。わずか25μg の本発明の免疫寛容誘導剤を一
回だけ経口摂取しただけで、未処理の抗原単独を25mg経
口投与するよりも強力な抗原特異的免疫抑制が起こるこ
とが明らかとなった。さらに、リコンビナントコレラト
キシンBサブユニット結合抗原の効果と比較しても同等
程度以上の抗原特異的免疫抑制が起こることが明らかと
なった。CT−B分子そのものを利用する上で問題とな
っていた毒素のサブユニットが本来持つ望まない生理活
性部位を取り除き、なおかつ目的とする抗原特異的免疫
寛容誘導能を保持させるために、本ペプチドを利用する
ことが有効であることを示している。
【0039】
【実施例3】 (C57BL/6マウスでの評価)本発明の免疫寛容誘導
剤の効果が普遍的であることを示すため、C57BL/6 マウ
スに対してヒトガンマグロブリン(HGG) を抗原とした場
合の抗原特異的免疫寛容誘導効果を調べた。評価方法
も、抗原特異的な血清中および糞便抽出液中の抗体濃度
の測定ではなく、遅延型過敏症反応(DTH) を利用した方
法で行った。C57BL/6マウスに対して、6週令から7週
令までに本発明の免疫寛容誘導剤の一例として、LTB
(I) peptide −HGGを25μg 一回経口投与した。投与
には経口投与針とシリンジを用い、本発明の免疫寛容誘
導剤の有効成分化合物を溶解したリン酸緩衝生理食塩水
(PBS)200μl を一匹の胃内に注入投与した。また、本実
施例では一群8匹で行った。その一週間後に、今度は抗
原のみをフロイントコンプリートアジュバントと混ぜて
エマルジョンにし、抗原0.5mg 分を皮下投与により免疫
した。さらにその一週間後に、70℃30分で熱変性させた
抗原をリン酸緩衝生理食塩水(PBS) に溶かし、抗原0.5m
g 分をマウス後ろ足の片方の足蹠に注射した。反対側の
後ろ足の足蹠にはPBSのみを注射した。注射24時間後
に、PBSのみを注射した側を対照として足の厚みを測
り、足の腫れの程度を数量化した。このDTH反応を利
用した免疫反応の測定は、当分野では良く知られてお
り、例えば、「免疫実験操作法B」日本免疫学会編、日
本国、日本免疫学会、 813〜818 頁及び1348〜1352頁、
「免疫実験操作法X」日本免疫学会編、日本国、日本免
疫学会、3349〜3353頁、R.G.Titus & J.M.Chiller 、J.
Immunol.Meth.45:65-78(1981) などに詳しく記載されて
いる。結果を図5に示す。図5では、縦軸は、24時間後
の足の腫れを対照の厚みを引いて表してある。PBS経
口投与群、25μg の未処理抗原単独に比べて、同じ25μ
g でも本発明の免疫寛容誘導剤を用いると、DTH反応
において抗原特異的免疫抑制が起こることが示された。
【0040】
【実施例4】 (免疫寛容誘導剤の調製)実施例1で得た本発明の有効
成分化合物のうち、LTB(I) peptide-OVA の凍結乾燥
粉末10g 、乳糖62g 、トウモロコシデンプン20g、カル
ボキシメチルセルロースカルシウム5g、軽質無水ケイ
酸2g、ステアリン酸マグネシウム1gを均一に混合
し、打錠機にて圧縮成型して一錠 200mgの錠剤を得た。
この錠剤一錠には、本発明の免疫寛容誘導剤の有効成分
化合物が20mg含まれており、成人一日3〜6錠を数回に
分けて服用する。
【0041】
【発明の効果】アレルギーや、慢性関節リウマチ等の自
己免疫疾患、さらには移植時の拒絶など、不必要な免疫
反応が原因となる疾患の治療・予防に有用な免疫寛容誘
導剤を提供することを目的とし、粘膜を利用した免疫寛
容誘導剤において、従来のような粘膜での抗原取り込み
効率の促進による免疫寛容成立確率の上昇のみを目的と
するのではなく、免疫寛容成立に働くT細胞およびB細
胞との相互作用を促す本質的機能部分だけを利用するこ
とで毒性などの可能性を減らし、より本質的普遍的で安
全な免疫寛容誘導剤を提供することが出来る。
【0042】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:21 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ser Tyr Thr Glu Ser Leu Ala Gly Lys Arg Glu Met Ala Ile Ile Thr 1 5 10 15 Phe Lys Asn Gly Cys 20
【0043】配列番号:2 配列の長さ:21 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ser Tyr Thr Glu Ser Met Ala Gly Lys Arg Glu Met Val Ile Ile Thr 1 5 10 15 Phe Lys Ser Gly Cys 20
【0044】配列番号:3 配列の長さ:21 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Ser Tyr Thr Glu Ser Met Ala Gly Lys Arg Glu Met Val Ile Ile Thr 1 5 10 15 Ile Lys Ser Gly Cys 20
【図面の簡単な説明】
【図1】A−B型毒素を構成するBサブユニット由来の
B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープを含
む、5〜25アミノ酸からなるペプチドの例を示す。
【図2】実施例2の本発明の免疫寛容誘導剤を経口投与
した際の抗原特異的抗体産生抑制を示す。
【図3】比較例1の本発明の免疫寛容誘導剤を一回経口
投与したマウス群の全抗体濃度を各サブクラス別にパー
センテージで示す。
【図4】比較例2の未処理のモデル抗原OVA単独25mg
一回経口投与、本発明の免疫寛容誘導剤25μg 一回経口
投与、およびリコンビナントコレラトキシンBサブユニ
ット結合抗原25μg 一回経口投与のそれぞれの抗原特異
的抗体産生抑制を示す。
【図5】実施例3のDTH反応における抗原特異的免疫
抑制効果を示す。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1) で表される化合物を有効成分
    とする免疫寛容誘導剤。 P−L−A (式(1)) 上記の式において、Pは、A−B型毒素を構成するBサ
    ブユニットのB細胞エピトープおよび/またはT細胞エ
    ピトープを含む、5〜25アミノ酸からなるペプチドを表
    す。Lはスペーサーを表す。Aは寛容を誘導する対象の
    抗原を表す。
  2. 【請求項2】 A−B型毒素がコレラトキシンまたは大
    腸菌の熱不安定性エンテロトキシンである請求項1に記
    載の免疫寛容誘導剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016159181A1 (ja) * 2015-03-30 2016-10-06 国立大学法人大阪大学 免疫用ペプチド、免疫用ペプチドの製造方法、それを含む免疫疾患用医薬組成物、および免疫疾患の治療方法
EP3081226A1 (en) 2015-04-14 2016-10-19 Kyoto University Agent for forming an immune-tolerant site and agent for attracting immunosuppressive cells

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