JPH10204539A - 高炭素冷延鋼帯の製造方法 - Google Patents

高炭素冷延鋼帯の製造方法

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JPH10204539A
JPH10204539A JP1737797A JP1737797A JPH10204539A JP H10204539 A JPH10204539 A JP H10204539A JP 1737797 A JP1737797 A JP 1737797A JP 1737797 A JP1737797 A JP 1737797A JP H10204539 A JPH10204539 A JP H10204539A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼鈍時間の短縮を実現しつつ、焼付き疵の発
生を防止して安価に安定して、加工性ならびに結晶組織
の均質性に優れた高炭素冷延鋼帯を得る。 【解決手段】 C:0.3〜0.8%、Si:0.03
〜0.35%、Mn:0.20〜1.50%を含有し、
残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる高炭
素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールしたのち、圧下
率25%以上80%以下で冷間圧延を実施後、75容量
%以上の水素と残部が実質的に窒素および不可避的不純
物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、2
0〜100℃/Hrの加熱速度で680℃〜Ac1点直
下に加熱して6Hr以上均熱保持後、100℃/Hr以
下の加熱速度でAc1〜Ac1点+50℃に加熱して8
Hr以下均熱保持後、50℃/Hr以下の冷却速度でA
r1点以下まで冷却する焼鈍処理を施すことによって、
焼鈍時の焼付き疵の発生を防止して、軟質化され加工性
に優れた高炭素冷延鋼帯を安価に製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、均一な形状、特性
を有し、かつ比較的軟質で良好な加工特性を有する高炭
素冷延鋼帯を工業的に安定して製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、刃物、ゼンマイ、ワッシャー、
バネ、シートベルト金具、その他の高硬度機械部品は、
JIS G 3311に規定のみがき特殊鋼帯である高
炭素冷延鋼帯を素材とし、打抜き、曲げ、プレス加工、
切削等の加工工程と、焼入れ、焼戻し、その他の熱処理
工程とを経て製造される。その製品品質の向上、安定
化、製造コストの低減を図るには、素材の高炭素冷延鋼
帯が軟質で加工性がよく、かつ組織の均一性に優れてい
ることが必要である。
【0003】上記高炭素冷延鋼帯は、熱延鋼帯を酸洗し
たのち、冷間圧延と焼鈍が施され、所望の硬度に調整さ
れて製造されるが、加工前には軟質で加工し易く、加工
後に施される熱処理において所定の硬度が得られ、か
つ、製品としての使用に十分な硬度と耐摩耗性が要求さ
れる。そのため、冷間圧延後の焼鈍は、高温で処理する
必要があり、このために鋼帯同志の密着による焼付疵が
発生し易いが、鋼帯表面はその用途上、光沢性を要求さ
れるために厳しい表面検査により焼鈍焼付疵による品質
不良が発生し易いという問題がある。
【0004】従来、高炭素冷延鋼帯を軟質で加工し易い
組織にするための方法としては、熱間圧延においてラン
アウトテーブル上で急冷して相変態を完了させ、その相
変態を完了した鋼帯を500〜620℃で巻取った高炭
素熱延鋼帯を母材として、該母材を圧下率20%以上で
冷間圧延し、その後ベル型炉にてAc1点以上770℃
以下の温度で焼鈍する方法(特開昭58−55532号
公報)、C:0.27〜0.90%、Si:0.15〜
0.30%、Mn:0.60〜0.90%、P:0.0
30%以下、S:0.035%以下、残部Feおよび不
可避的不純物からなる鋼に通常の熱間圧延を施し、次い
で酸洗して得られる熱延鋼帯を出発材として、高炭素冷
延鋼帯を製造する方法において、前記出発材としての熱
延鋼帯を680〜720℃の温度に15時間以上保持す
る一次焼鈍を行い、次いで20〜45%の圧下率で冷間
圧延を行い、その後630〜720℃の温度で10時間
以上保持する仕上焼鈍を行う方法(特開昭61−766
19号公報)、高炭素鋼を熱間圧延してからの冷却にお
いて、冷却速度を炭素量0.6%未満では30〜45℃
/sec、炭素量0.6%以上では15〜45℃/se
cとし、その後の巻取りを炭素量0.6%未満では46
0〜600℃、炭素量0.6%以上0.8%未満で55
0〜640℃、炭素量0.8%以上では620〜680
℃で行い、冷間圧延を炭素量0.6%未満では圧下率5
0〜85%、炭素量0.6%以上0.8%未満では30
〜70%、炭素量0.8%以上では25〜60%で実施
した後、球状化焼鈍を炭素量0.8%未満では680〜
Ac1点、炭素量0.8%以上では680〜750℃で
施す方法(特開平3−122216号公報)、C:0.
3%以上の高炭素熱延鋼板に、中間冷間圧延を圧下率4
5%以上で行った後、中間焼鈍を箱焼鈍によりC:0.
8%未満の場合は680℃〜Ac1点、C:0.8%以
上の場合は680〜750℃で、20〜40時間均熱し
て施し、最終冷間圧延を圧下率が13%以上とし、しか
も中間冷間圧延前後の板厚および最終冷間圧延後の板厚
をそれぞれt0、t1およびt2とするとき、中間冷間圧
延の圧下比の対数ln(t0/t1)に対して、最終冷間
圧延の圧下比の対数ln(t1/t2)が0.5倍以下と
なるようにして行い、最終焼鈍を箱焼鈍により550〜
700℃で1〜6時間均熱して施す方法(特公平7−1
16519号公報)、C:0.6〜1.3%、Si:
0.5%以下、Mn:1%以下、Cr:1.6%以下、
残部実質的にFeからなる化学組成を有する高炭素熱延
鋼帯を、水素50容量%以上で、残部が窒素である雰囲
気炉中、Ac1点〜780℃の温度域に1時間以上均熱
保持後、60℃/Hr以下の冷却速度でAr1点直下ま
で冷却する第1段の均熱・徐冷と、Ac1点直下に3〜
20時間均熱保持後、60℃/Hr以下の冷却速度でA
r1点以下まで冷却する第2段の均熱・徐冷とからなる
一次焼鈍処理に付した後、冷間圧延を行い、ついで60
0℃〜Ac1点直下の温度域での二次焼鈍処理を施す方
法(特開平4−202629号公報)等が提案されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記特開昭58−55
532号公報に開示の方法は、冷間圧延前の焼鈍工程を
省略し、酸洗した後冷間圧延し、その後の焼鈍をAc1
点以上で実施するものであるが、前記したとおり高炭素
冷延鋼帯表面はブライト肌であるため、バッチコイル焼
鈍炉で処理する限りはAc1点以上の高温焼鈍のため、
焼鈍焼付き疵が発生し、実生産設備では安定して高炭素
冷延鋼帯を製造することは困難である。しかも、この方
法は、熱間圧延のランアウトテーブル上で急冷して相変
態を完了した鋼帯を500〜620℃で巻取った高炭素
熱延鋼帯を母材として使用するのが前提であるが、55
0℃以下では母材の延性が低下し、次工程での酸洗ライ
ン内破断や、冷間圧延時の破断が発生するため、操業を
著しく阻害するという欠点を有している。
【0006】また、特開昭61−76619号公報に開
示の方法は、熱延鋼帯の一次焼鈍温度が680〜720
℃とAc1点以下であるため、十分に軟質な高炭素鋼帯
が得られない。
【0007】さらに、特開平3−122216号公報に
開示の方法は、中間焼鈍温度がAc1点以下のため焼鈍
時間が20〜40Hrも必要となり、能率面で不利であ
る。
【0008】さらにまた、特公平7−116519号公
報に開示の方法は、中間焼鈍を680℃〜Ac1点以下
で20〜40時間行うため、能率面で不利であり、実生
産設備では無駄が多い。また、特開平3−211235
号公報中には、「中間焼鈍温度がAc1点より高いと
C:0.6%以下の鋼ではフェライト相が生成するため
球状化率が低下し、C:0.6%超でも一部が完全にオ
ーステナイト化するため、焼鈍後の冷却において粗いパ
ーライトが生成し、やはり球状化率が低下する。」との
記載があり、C:0.3〜0.8%の高炭素熱延鋼帯で
は、球状化率が低下することは避けられないという問題
点を有している。しかも、仕上焼鈍温度を箱焼鈍により
550〜700℃で1〜6時間均熱して施すが、軟化の
ためには焼鈍温度を高くする必要があり、高炭素熱延鋼
帯では、焼付き疵が発生するため低温で焼鈍せざるを得
ず、薄物材の軟化焼鈍は困難である。
【0009】また、特開平4−202629号公報に開
示の方法は、Ac1点以上780℃以下の温度まで焼鈍
温度を上げた際の均熱時間を1時間以上としているが、
上限が明記されていない。Ac1点以上での長時間焼鈍
は、後述するとおり焼鈍後に球状セメンタイトを得るこ
とが困難であり、加工後はかえって劣化し、その後冷間
圧延、焼鈍を繰り返しても、高炭素鋼帯の加工性の向上
は望めない。さらに、コイル焼鈍においてAc1点以上
で短時間焼鈍を実現するための具体的な方法が開示され
ていないため、実機では良好な球状化組織を安定して得
ることが不可能である。
【0010】本発明の目的は、上記従来技術の問題点を
解消し、従来の高炭素冷延鋼帯と同等以上の加工性を有
し、かつ結晶組織の均質性に優れた高炭素冷延鋼帯を、
焼鈍時間の短縮を実現しつつ、焼付き疵の発生を防止し
て安価に安定して製造できる高炭素冷延鋼帯の製造方法
を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の高炭
素冷延鋼帯の製造方法は、C:0.3〜0.8%、S
i:0.03〜0.35%、Mn:0.20〜1.50
%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物
からなる高炭素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールし
たのち、圧下率25%以上80%以下で冷間圧延を実施
後、75容量%以上の水素と残部が実質的に窒素および
不可避的不純物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍
炉を用い、下記(1)〜(7)の焼鈍条件で焼鈍するこ
ととしている。 (1) 第1段均熱温度までの加熱速度:20℃/Hr
〜100℃/Hr (2) 第1段均熱温度×時間:680℃〜Ac1点直
下×6Hr以上 (3) 第2段均熱温度までの加熱速度:100℃/H
r以下 (4) 第2段均熱温度×時間:Ac1点〜Ac1点+
50℃×8Hr以下 (5) 第2段均熱完了後の冷却速度:50℃/Hr以
下 (6) 第2段均熱完了後の冷却到達温度:Ar1点以
下 (7) 以降は20℃/Hr〜100℃/Hrで室温ま
で冷却
【0012】このように、C:0.3〜0.8%、S
i:0.03〜0.35%、Mn:0.20〜1.50
%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物
からなる高炭素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールし
たのち、冷間圧延を圧下率25%以上80%以下で実施
することによって、パーライトが微細化され、次いで、
75容量%以上の水素と残部が実質的に窒素および不可
避的不純物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を
用い、前記(1)〜(7)の焼鈍条件で焼鈍することに
よって、冷却過程におけるパーライトの形成を防止して
短時間でセメンタイトを球状化でき、軟質な高炭素冷延
鋼帯を得ることができる。
【0013】また、本発明の請求項2の高炭素冷延鋼帯
の製造方法は、C:0.3〜0.8%、Si:0.03
〜0.35%、Mn:0.20〜1.50%を含有し、
残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる高炭
素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールしたのち、冷間
圧延を圧下率25%以上80%以下で実施後、75容量
%以上の水素と残部が実質的に窒素および不可避的不純
物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、前
記(1)〜(7)の焼鈍条件で一次焼鈍処理したのち、
圧下率20%以上80%以下で冷間圧延を行い、ベル型
バッチ焼鈍炉で600℃〜Ac1点直下で仕上焼鈍を行
うこととしている。
【0014】このように、C:0.3〜0.8%、S
i:0.03〜0.35%、Mn:0.20〜1.50
%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物
からなる高炭素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールし
たのち、冷間圧延を圧下率25%以上80%以下で実施
することによって、パーライトが微細化され、次いで、
75容量%以上の水素と残部が実質的に窒素および不可
避的不純物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を
用い、前記(1)〜(7)の焼鈍条件で焼鈍することに
よって、冷却過程におけるパーライトの形成を防止して
短時間でセメンタイトを球状化でき、さらに、圧下率2
0%以上80%以下で冷間圧延を行い、ベル型バッチ焼
鈍炉で600℃〜Ac1点直下で仕上焼鈍を行うことに
よって、冷間圧延歪を開放して結晶粒が成長し、軟質な
高炭素冷延鋼帯を得ることができる。
【0015】さらに、本発明の請求項3の高炭素冷延鋼
帯の製造方法は、請求項1、2で一次焼鈍処理した後、
圧下率20%以上80%以下の冷間圧延と、ベル型バッ
チ焼鈍炉での600℃〜Ac1点直下の仕上焼鈍とを2
回以上繰り返すこととしている。このように、一次焼鈍
処理した後、圧下率20%以上85%以下の冷間圧延
と、ベル型バッチ焼鈍炉での600℃〜Ac1点直下の
仕上焼鈍とを2回以上繰り返すことによって、セメンタ
イトの球状化率が更に向上してほぼ100%に近づき、
より軟質な熱延鋼帯を製造可能となり、最終板厚が薄
物、例えば、板厚0.3mmのように1回の冷間圧延で
は所望の板厚が得られない場合は、一旦冷間圧延を中止
して仕上焼鈍を同様の条件で行って軟質化した後、再度
冷間圧延を行うことによって所望の板厚となし、再度仕
上焼鈍を同様の条件で行って軟質化することにより、板
厚0.3mmの軟質な高炭素冷延鋼帯を得ることができ
る。
【0016】さらにまた、本発明の請求項4の高炭素冷
延鋼帯の製造方法は、C:0.3〜0.8%、Si:
0.03〜0.35%、Mn:0.20〜1.50%を
含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物から
なる高炭素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールしたの
ち、圧下率25%以上80%以下の冷間圧延で、かつ鋼
板粗度を中心平均粗さで0.3μm以上1.2μm以下
を付与した後、75容量%以上の水素と残部が実質的に
窒素および不可避的不純物からなるガス雰囲気のベル型
バッチ焼鈍炉を用い、前記(1)〜(7)の焼鈍条件で
一次焼鈍処理したのち、伸び率0.6%以上4.0%以
下での調質圧延で、鋼板粗度を0.2μm以下で処理す
ることとしている。
【0017】このように、C:0.3〜0.8%、S
i:0.03〜0.35%、Mn:0.20〜1.50
%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物
からなる高炭素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールし
たのち、圧下率25%以上80%以下の冷間圧延で、か
つ鋼板粗度を中心平均粗さで0.3μm以上1.2μm
以下を付与した後、75容量%以上の水素と残部が実質
的に窒素および不可避的不純物からなるガス雰囲気のベ
ル型バッチ焼鈍炉を用い、前記(1)〜(7)の焼鈍条
件で一次焼鈍処理したのち、伸び率0.6%以上4.0
%以下での調質圧延で、鋼板粗度を0.2μm以下で処
理することによって、パーライトが微細化されると共
に、鋼板の接触面積が減少して焼鈍時の焼鈍焼付き疵が
防止され、軟質で加工性に優れ、かつ結晶組織の均質性
に優れた高炭素冷延鋼帯を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明に使用される打抜き性、曲
げ成形性等の塑性加工を前提とする高炭素鋼帯の化学成
分の限定理由は、以下の通りである。
【0019】Cは、鋼に強度、焼入れ性、耐摩耗性等を
付与する作用を有する元素で、低いほど軟質化して加工
性は良くなるが、0.3%未満では焼入れ性が不足し、
熱処理後に所定の硬度が得られない。一方、0.8%を
超えると熱延鋼帯の段階での硬度が高く、冷間圧延が困
難となるので、0.3〜0.8%とした。
【0020】Siは、脱酸材として添加する元素である
が、0.03%未満では脱酸効果が十分ではなく、ま
た、0.35%を超えると脱酸能力が飽和し、かつ固溶
硬化により素材の成形性を阻害するため、0.03〜
0.35%とした。
【0021】Mnは、強度、焼入れ性を向上させると共
に、セメンタイトの安定化作用を有する元素であるが、
0.2%未満では安定した焼入れ性を確保することがで
きず、また、1.5%を超えると焼入れ性の改善効果が
飽和すると共に、素材の硬度上昇をもたらすので、0.
2〜1.5%とした。
【0022】上記化学組成を有する高炭素鋼片の熱間圧
延は、通常の方法で行われ、熱延条件に特別の制限はな
いが、熱延鋼帯の巻取りは、相変態終了後に行うのが好
ましい。
【0023】本発明の請求項1における冷間圧延におけ
る圧下の目的は、パーライトを微細化し、次の焼鈍で球
状化を促進するものであるが、25%未満ではパーライ
トを十分微細化できず、冷間圧延の効果が発揮できず、
80%を超えるとエッジ割れ等の問題を生じるので、2
5〜80%とした。
【0024】ベル型バッチ焼鈍炉によるバッチコイル焼
鈍では、最外周の温度と最冷点の温度差が大きく、最冷
点の温度がAc1点以上を確保し、かつ、最外周のAc
1点を超えた均熱温度を8Hr以内とするのは困難であ
る。このため、本発明におけるベル型バッチ焼鈍炉での
バッチコイル焼鈍では、表1、図1に示すとおり、温度
0℃、圧力0.1MPaにおいて、熱伝導率が窒素の約
7倍、密度が窒素の約14倍の水素を、雰囲気ガス中7
5容量%以上とすることによって、コイル幅960m
m、コイル外径1847mm、コイル内径610mm、
重量18Tonのコイルを均熱温度770℃で焼鈍した
場合の均熱時間とコイル内温度差との関係を示す図2に
示すとおり、コイル内部の熱伝達性が向上し、従来の窒
素を主体とする場合に比較し、コイル内外周の温度差を
小さくすることが可能となり、ベル型バッチ焼鈍炉を適
用することができる。
【0025】
【表1】
【0026】75容量%以上の水素と残部実質窒素から
なる雰囲気ガス中での焼鈍処理は、図3に示すとおり、
加熱速度20〜100℃/Hrで680℃〜Ac1点直
下に6時間以上均熱する第1段均熱工程と、加熱速度2
0〜100℃でAc1点〜Ac1点+50℃に8時間以
下均熱したのち、50℃/Hr以下でAr1点以下まで
徐冷する第2段均熱、徐冷工程と、以降室温まで20〜
100℃/Hrの速度で冷却する放冷工程とからなる。
なお、代表的なヒートパターンの一例を図4に示す。
【0027】上記第1段均熱工程における均熱は、球状
化を促進するためにはAc1点以上の温度で短時間焼鈍
することが理想であるが、コイル焼鈍の場合、コイル最
冷点がAc1点以上に到達するにはコイル外周部がAc
1点以上の温度で長時間焼鈍(8Hrを超えて)とな
り、組織がオーステナイト化する。
【0028】このため、本発明における第1段均熱の目
的は、コイルの最冷点温度を680℃〜Ac1点直下ま
で上げてコイル温度を均一にしたのち、第2段均熱温度
まで加熱することによって、第2段均熱におけるAc1
点以上の均熱時間を短縮することである。第2段均熱に
おいてコイルの最冷点温度が短時間でAc1点に到達す
るためには、第1段均熱時にコイルの最冷点温度を68
0℃以上確保する必要がある。第1段均熱時間は、コイ
ルの最冷点温度がAc1点直下に到達すれば、所期の目
的は達成されるが、均熱時間を延長しフェライト域で球
状化を進行させたのち、第2段均熱に入るとさらに良好
な組織の製造が可能となる。このため、第1段均熱時間
は、6Hr以上とした。
【0029】第2段均熱温度までの加熱速度は、100
℃/Hrを超えると加熱効率が悪く、しかも、コイル温
度が不均一になり易いため、100℃/Hr以下とし
た。
【0030】第2段均熱温度は、Ac1点未満ではセメ
ンタイトの球状化に長時間を要し、Ac1点+50℃を
超えると球状化炭化物粒形成の核となる未溶解の炭化物
を残留させることができなくなり、冷却条件を制御して
もパーライトが形成し、良好な球状化組織がえられない
ため、Ac1点〜Ac1点+50℃とした。
【0031】第2段均熱時間は、8Hrを超えると組織
がオーステナイト化するため、冷却の過程においてパー
ライトが生成し、良好な球状化組織がえられないため、
8Hr以下とした。なお、第2段均熱時間の下限は、コ
イルの最冷点が一瞬でもAc1点を超えればよく、特に
限定されないが、第2段均熱時間はコイルの重量によっ
て変動し、小さいコイルでは短時間で、大きいコイルで
は8Hr近く均熱時間が必要となる。ただし、8Hrを
超えると前記の問題が生じる。
【0032】第2段均熱完了後の冷却速度は、50℃/
Hrを超えると固溶Cの析出が抑制されるため、未溶解
炭化物を核とする球状化炭化物の生成が不十分となり、
オーステナイトに多量のCが固溶したままAr1変態が
生起し、層状パーライト組織となってしまい、セメンタ
イトの球状化率が低下するため、50℃/Hr以下とし
た。また、冷却完了時の冷却到達温度は、Ar1点を超
えるとセメンタイトの球状化率が低下するので、Ar1
点以下とするが、処理効率の圧下を招かない下限温度と
する。
【0033】上記第1段ならびに第2段均熱、徐冷工程
後、Ar1点以下から室温までの冷却速度は、20℃/
Hr未満では操業効率が悪く、また、100℃/Hrを
超えるとコイル内外周の温度差が大きくなり、焼鈍焼付
きが多発するので、20〜100℃/Hrとした。
【0034】本発明の請求項2においては、前記第1段
ならびに第2段均熱、徐冷工程後、圧下率20〜80%
で仕上冷間圧延を行う。仕上冷間圧延の圧下率は、プロ
セス合理化のために圧延機の能力の許す限り大きい方が
好ましいが、図5に示すとおり、軟化の点では冷間圧延
の圧下率が20%付近にピークがある。圧下率が20%
未満の場合は、結晶粒の分断が少なく、仕上焼鈍時の粒
成長エネルギーが不足して軟化されない。また、圧下率
が80%を超えた場合は、結晶粒が小さくなり過ぎて、
球状化時の炭化物が大きくならず十分軟化されないた
め、破断が生じる。そのため、仕上冷間圧延の圧下率2
0%付近で所定の板厚になるのであれば、最も軟化した
高炭素冷延鋼帯を製造することができる。
【0035】仕上冷間圧延後の仕上焼鈍処理は、一次冷
間圧延、中間焼鈍でセメンタイトの球状化は十分進んで
いるため、仕上焼鈍は冷間圧延後の歪を解消し、結晶粒
が成長すればよいのでAc1点以下でよい。このため、
均熱温度、均熱時間の影響は、図6に示すとおり、いず
れも小さく、コイルの最冷点温度で600℃以上で1H
rあれば十分である。仕上焼鈍温度は、0.5mm以下
の薄物材をコイル焼鈍すると焼鈍焼付き疵が発生し、こ
れが製品の光沢度の低下等の悪影響を及ぼすため、でき
る限り低い方が望ましいが、600℃未満ではフェライ
トの再結晶、粒成長が不十分となり、軟質化効果に不足
をきたすが、コイルの最冷点温度で600℃以上確保す
れば、焼鈍焼付き疵を生じることなく軟化焼鈍が可能と
なる。また、Ac1点を超えるとオーステナイト相が生
成し、冷却過程で層状パーライトが現れて硬質化すると
共に、焼付き疵の発生する恐れがあるからである。
【0036】上記仕上焼鈍処理は、前記中間焼鈍処理と
異なり、必ずしも高水素雰囲気とする必要はなく、窒素
主体の雰囲気であってもよい。この仕上焼鈍処理におい
ては、均熱保持時間はそれほど重要ではなく、約1時間
程度の均熱保持時間で十分である。また、冷却速度の制
御は、特に必要はなく、例えば、自然放冷とすることも
できる。
【0037】前記第1段および第2段均熱、徐冷工程か
らなる中間焼鈍処理後、圧下率20〜80%で冷間圧延
を行っても、最終板厚が薄物、例えば、0.3mm以下
の場合は、1回の冷間圧延では所望の板厚が得られない
場合は、一旦冷間圧延を中止して仕上焼鈍処理を同様の
条件で行って軟質化したのち、再度冷間圧延を行って所
望の板厚となし、仕上焼鈍処理を行う。この仕上冷間圧
延および仕上焼鈍処理は、仕上板厚に応じて複数回実施
することができる。
【0038】本発明の請求項4においては、冷間圧延時
に鋼板粗度を中心線平均粗さ(Ra)で0.3μm以上
1.2μm以下付与することによって、鋼板の接触面積
を減少し、焼鈍時の焼鈍焼付き防止が可能となる。中心
線平均粗さが0.3μm未満では、焼鈍時の焼鈍焼付き
防止効果がなく、また、中心線平均粗さが1.2μmを
超えると焼鈍後の調質圧延をブライトロールで実施して
も、鋼板粗度が十分に低下せず、ブライトネスを要求さ
れる製品には適用できないためである。
【0039】本発明の請求項4における鋼板粗度を中心
線平均粗さ0.3μm以上1.2μm以下付与した後の
調質圧延は、冷間圧延時に焼鈍時の焼鈍焼付き防止のた
め付与された中心線平均粗さ0.3μm以上1.2μm
以下の鋼板粗度を整えることを主目的とし、最終製品粗
度が中心線平均粗さで0.20μm以下となるよう伸び
率0.6%以上4.0%以下で実施する。調質圧延時の
伸び率が0.6%未満では、最終製品粗度が中心線平均
粗さで0.20μm以下を確保することができず、ま
た、伸び率が4.0%超では、最終製品粗度が中心線平
均粗さで0.20μm以下を確保できるが、鋼板硬度が
高くなり、本来の目的とする軟質鋼板の製造ができな
い。
【0040】
【実施例】
実施例1 表2に示す化学組成の鋼No.1〜4の高炭素鋼片を、
仕上板厚2mm、仕上温度840℃、巻取温度650℃
の熱延条件で熱間圧延して高炭素熱延鋼帯となし、酸
洗、脱スケールしたのち、圧下率70%で冷間圧延を行
い、水素99容量%、残部窒素からなるガス雰囲気のベ
ル型バッチ焼鈍炉を用いて、表3に示す試験No.1〜
25の第1〜第2段均熱、徐冷工程からなる一次焼鈍処
理を行い、高炭素冷延鋼帯を得た。各高炭素冷延鋼帯か
ら試験片を切り出し、JIS Z2244に規定のビッ
カース硬さ試験方法に準じてビッカース硬さ(HV)を
測定し、各高炭素冷延鋼帯の鋼種毎に、JIS G 3
311に規定のみがき特殊帯鋼に規定される焼なまし後
のビッカース硬さと比較した軟質度(表4参照)で評価
した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】表3に示すとおり、一次焼鈍処理における
第1段均熱時間が6Hr未満の試験No.4、5の高炭
素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:174、194と
なり、軟質化が十分でない。一次焼鈍処理における第1
段均熱温度が680℃未満の試験No.5の高炭素冷延
鋼帯は、ビッカース硬度HV:194となり、軟質化が
十分でない。第2段均熱温度がAc1未満の試験No.
2の高炭素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:178と
なり、軟質化が十分でない。第2段均熱温度がAc1点
+50℃を超える試験No.10の高炭素冷延鋼帯は、
ビッカース硬度HV:165と硬質である。一次焼鈍処
理における第2段均熱時間が8時間を超える試験No.
11の高炭素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:178
と硬質である。一次焼鈍処理における第2段均熱後の冷
却速度が50℃/Hrを超える試験No.12の高炭素
冷延鋼帯も硬質である。一次焼鈍処理における冷却到達
温度がAr1点以上の試験No.13の高炭素冷延鋼帯
は、ビッカース硬度HV:182と硬質である。
【0045】これに対し、一次焼鈍処理における第1段
均熱温度が680℃以上Ac1点直下、第1段均熱時間
が6Hr以上、第2段均熱時間が8時間以内、冷却速度
が50℃/Hr以下、冷却到達温度がAr1点直下と本
発明条件を満足させる試験No.1、3、6〜8および
9の高炭素冷延鋼帯は、表3に示すとおり、いずれもビ
ッカース硬度(HV)が標準よりも軟質である。また、
表3に示すとおり、試験No.14のように一次焼鈍処
理における各段の加熱速度、冷却速度が5℃/Hr、3
℃/Hrでも高炭素冷延鋼帯の硬度には悪影響を及ぼさ
ないが、焼鈍処理の生産効率の面ならびに省エネルギー
の面でのメリットはない。
【0046】実施例2 前記表2に示す化学組成の鋼No.1〜4の高炭素鋼片
を、仕上板厚:2mm、仕上温度:840℃、巻取温
度:650℃の熱延条件で熱間圧延して高炭素熱延鋼帯
となし、酸洗、脱スケールしたのち、圧下率50%で中
間冷間圧延を行い、次いで水素99容量%、残部窒素か
らなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、表5に
示す試験No.15〜28の第1〜第2段均熱、徐冷工
程からなる中間焼鈍処理を行った。次に圧下率20%で
冷間圧延したのち、水素99容量%、残部窒素からなる
ガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、均熱温度:6
00℃、均熱時間:1時間の仕上焼鈍処理を施し、高炭
素冷延鋼帯を得た。各高炭素冷延鋼帯から試験片を切り
出し、JIS Z 2244に規定のビッカース硬さ試
験方法に準じてビッカース硬さ(HV)を測定し、各高
炭素冷延鋼帯の鋼種毎に、JIS G 3311に規定
のみがき特殊帯鋼に規定される焼なまし後のビッカース
硬さと比較した軟質度(表4参照)で評価した。その結
果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】表5に示すとおり、中間焼鈍処理における
第1段均熱時間が6Hr未満の試験No.18、19の
高炭素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:169、18
8となり、軟質化が十分でない。中間焼鈍処理における
第1段均熱温度が680℃未満の試験No.19の高炭
素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:188となり、軟
質化が十分でない。第2段均熱温度がAc1未満の試験
No.16の高炭素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:
174となり、軟質化が十分でない。第2段均熱温度が
Ac1点+50℃を超える試験No.24の高炭素冷延
鋼帯は、ビッカース硬度HV:160と硬質である。一
次焼鈍処理における第2段均熱時間が8時間を超える試
験No.25の高炭素冷延鋼帯は、ビッカース硬度H
V:174と硬質である。一次焼鈍処理における第2段
均熱後の冷却速度が50℃/Hrを超える試験No.2
6の高炭素冷延鋼帯も硬質である。一次焼鈍処理におけ
る冷却到達温度がAr1点以上の試験No.27の高炭
素冷延鋼帯は、ビッカース硬度HV:180と硬質であ
る。
【0049】これに対し、一次焼鈍処理における第1段
均熱温度が680℃以上Ac1点直下、第1段均熱時間
が6Hr以上、第2段均熱時間が8時間以内、冷却速度
が50℃/Hr以下、冷却到達温度がAr1点直下と本
発明条件を満足させる試験No.15、17、20〜2
3の高炭素冷延鋼帯は、表3に示すとおり、いずれもビ
ッカース硬度(HV)が標準よりも軟質である。また、
表3に示すとおり、試験No.28のように一次焼鈍処
理における各段の加熱速度、冷却速度が5℃/Hr、3
℃/Hrでも高炭素冷延鋼帯の硬度には悪影響を及ぼさ
ないが、焼鈍処理の生産効率の面ならびに省エネルギー
の面でのメリットはない。
【0050】実施例3 鋼中の化学成分の影響を調査すべく、表6に示す鋼N
o.5〜14の各高炭素鋼片を、仕上板厚:2mm、仕
上温度:840℃、巻取温度650℃の熱延条件で熱間
圧延して高炭素熱延鋼帯となし、各高炭素熱延鋼帯を酸
洗、脱スケール処理したのち、圧下率70%で冷間圧延
を実施後、水素99容量%、残部窒素からなるガス雰囲
気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、加熱速度:50℃/H
r、第1段均熱温度:710℃、第1段均熱時間:20
Hr、第1段均熱完了後の加熱速度:50℃/Hrで加
熱後、第2段均熱温度:Ac1点+20℃、第2段均熱
時間:5Hr、第2段均熱完了後の冷却速度30℃/H
r、冷却到達温度:Ar1点−10℃の第2段均熱、徐
冷を行って焼鈍処理を行った。得られた各高炭素冷延鋼
帯から試験片を採取し、実施例1と同様にJIS Z
2244に規定のビッカース硬さ試験方法に準じてビッ
カース硬さを測定した。その結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】表6に示すとおり、本発明の範囲外である
鋼No.10、14の高炭素冷延鋼帯は、それぞれS
i、Mnの添加量が本発明範囲の上限を超えるため、他
の本発明に該当する鋼帯に比べ硬質である。また、鋼N
o.7、11の高炭素冷延鋼帯は、Si、Mn本発明範
囲の下限を下回るため、軟質となっている。鋼No.7
の高炭素冷延鋼帯では、Si含有率が低いため、焼入
れ、焼戻し後の疲労強度において酸化物の増大による特
性劣化の危険性を伴う。また、鋼No.11の高炭素冷
延鋼帯では、Mn含有率が低いため、焼入れ性が低下
し、焼入れ、焼戻し後、十分な硬度が得られない危険性
がある。
【0053】実施例4 中間焼鈍処理後の仕上冷間圧延における圧下率と、仕上
冷間圧延後の仕上焼鈍における均熱温度の影響を調査す
るため、前記表6に示す鋼No.12の高炭素鋼片を、
仕上板厚:2mm、仕上温度:840℃、巻取温度65
0℃の熱延条件で熱間圧延して高炭素熱延鋼帯となし、
酸洗、脱スケール処理したのち、圧下率40%で中間冷
間圧延を実施後、水素99容量%、残部窒素からなるガ
ス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、加熱速度:50
℃/Hr、第1段均熱温度:710℃、第1段均熱時
間:20Hr、第1段均熱後の加熱速度:50℃/H
r、第2段均熱温度:Ac1点+20℃、第2段均熱時
間:4Hr、第2段均熱後の冷却速度:10℃/Hr、
第2段均熱後の冷却到達温度:Ar1点の第2段均熱、
徐冷を行って中間焼鈍処理を施した。次いで圧下率を表
7に示すとおり20〜85%の範囲で変化させて仕上冷
間圧延したのち、水素99容量%、残部窒素からなるガ
ス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、均熱温度:60
0℃〜720℃、仕上焼鈍時間1Hrおよび5Hrの仕
上焼鈍処理を施して高炭素冷延鋼帯を得た。得られた各
高炭素冷延鋼帯から試験片を採取し、実施例1と同様に
JIS Z2244に規定のビッカース硬さ試験方法に
準じてビッカース硬さ(HV)を測定した。その結果を
表7に示す。
【0054】
【表7】
【0055】表7に示すとおり、仕上冷間圧延における
圧下率が20%の試験No.29からも明らかなとお
り、圧下率が20%未満では結晶粒が異常粒成長を生じ
るため、伸びが低下することを示している。また、仕上
冷間圧延における圧下率が85%の試験No.33で
は、冷間圧延中に破断を生じた。このことから、仕上冷
間圧延における圧下率は、20〜80%に限定される。
さらに、仕上焼鈍の均熱温度が590℃の試験No.3
4では、硬度が高くなっている。このことから、仕上焼
鈍の均熱温度は、600℃以上が必要である。これに対
し、この発明の条件を満足させる試験No.30〜3
2、35〜37では、硬度HVが満足すべきものが得ら
れている。また、試験No.38の結果からは、仕上焼
鈍の均熱時間が1Hrでも十分に軟質化していることが
わかる。
【0056】実施例5 前記実施例3の表6中の鋼No.9の高炭素鋼片を、仕
上板厚:2mm、仕上温度:840℃、巻取温度640
℃の熱延条件で熱間圧延して高炭素熱延鋼帯となし、酸
洗、脱スケール処理したのち、圧下率60%(仕上板厚
0.8mm)で表8に示す鋼板粗度を付与しつつ冷間圧
延を施し、水素99容量%、残部窒素からなるガス雰囲
気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、第1段均熱温度までの
加熱速度:50℃/Hr、第1段均熱温度:710℃、
第1段均熱時間:20Hr、第2段均熱温度までの加熱
速度:50℃/Hr、第2段均熱温度:Ac1+20
℃、第2段均熱時間:5Hr、第2段均熱完了後の冷却
速度:30℃/Hr、均熱完了後の冷却到達温度:Ar
1−10℃の仕上焼鈍処理を行った。次いで、表8に示
すロール粗度のワークロールを用い、表8に示す伸び率
で調質圧延を施し、高炭素冷延鋼帯を得た。なお、表8
中の粗度は、中心線平均粗さ(Ra)で示し、粗度評価
はブライトネス確保の点より、粗度≦0.20μmを可
(○)とした。
【0057】
【表8】
【0058】表8に示すとおり、試験No.39におい
て冷間圧延後の鋼板粗度が0.2μmでは、最終製品粗
度は満たすものの、焼鈍処理時に焼付きが発生し、製品
とはならない。そこで、試験No.40以降に示すよう
に、冷間圧延後の鋼板粗度が0.3μm以上必要とな
る。試験No.42、44の調質圧延時の伸び率が0.
6%未満では、冷間圧延時の鋼板粗度を調整しても、最
終製品粗度を満たさない。試験No.45、46の調質
圧延時のロール粗度が0.1μmを超えると他の条件を
調整しても、最終製品粗度を満たさない。試験No.4
0、41、43に示すように冷間圧延後の鋼板粗度が
0.3〜1.2μm、調質圧延時のロール粗度が0.1
μm以下、調質圧延時の伸び率が0.6〜2.0%を満
たすことで、焼鈍処理時に焼付き発生がなく、最終製品
粗度0.20μm以下の製品を得ることができる。
【0059】実施例6 冷間圧延における圧下率を明確にするため、表6に示す
鋼No.12(S55CM)の高炭素熱延鋼帯を用い
て、表9に示す圧下率で冷間圧延した後、表3の試験N
o.13の焼鈍条件で焼鈍処理を実施し、高炭素冷延鋼
帯を得た。得られた各高炭素冷延鋼帯から試験片を切り
出し、JIS Z 2244に規定のビッカース硬さ試
験方法に準じてビッカース硬さ(HV)を測定し、各高
炭素冷延鋼帯毎に、JIS G 3311に規定のみが
き特殊帯鋼に規定される焼なまし後のビッカース硬さと
比較した軟質度(表4参照)で評価した。その結果を表
9に示す。
【0060】
【表9】
【0061】表9に示すとおり、試験No.71のよう
に冷間圧延における圧下率は、80%以下が適正値であ
る。
【0062】
【発明の効果】本発明の請求項1の高炭素冷延鋼帯の製
造方法は、高炭素熱延鋼帯を圧下率25%以上80%以
下で冷間圧延を行い、75容量%以上の水素と残部が実
質的に窒素および不可避的不純物からなるガス雰囲気の
ベル型バッチ焼鈍炉を用い、20〜100℃/Hrの加
熱速度で680℃〜Ac1点直下に加熱して6Hr以上
均熱保持後、100℃/Hr以下の加熱速度でAc1点
〜Ac1点+50℃に加熱して8Hr以下均熱保持後、
50℃/Hr以下の冷却速度でAr1点以下まで冷却す
る焼鈍処理を行うことによって、冷却過程におけるパー
ライトの生成を防止して短時間でセメンタイトを球状化
でき、軟質な高炭素冷延鋼帯を得ることができる。
【0063】本発明の請求項2の高炭素冷延鋼帯の製造
方法は、高炭素熱延鋼帯を圧下率25%以上80%以下
で冷間圧延を実施後、75容量%以上の水素と残部が実
質的に窒素および不可避的不純物からなるガス雰囲気の
ベル型バッチ焼鈍炉を用い、20〜100℃/Hrの加
熱速度で680℃〜Ac1点直下に加熱して6Hr以上
均熱保持後、100℃/Hr以下の加熱速度でAc1点
〜Ac1点+50℃に加熱して8Hr以下均熱保持後、
50℃/Hr以下の冷却速度でAr1点以下まで冷却し
て一次焼鈍処理したのち、圧下率20%以上80%以下
で冷間圧延を行い、ベル型バッチ焼鈍炉で600℃〜A
c1点直下で仕上焼鈍を行うことによって、球状化の完
了した軟質な冷延鋼帯を所定板厚となし、冷間圧延歪を
開放して結晶粒が成長し、軟質な高炭素冷延鋼帯を得る
ことができる。
【0064】本発明の請求項3の高炭素冷延鋼帯の製造
方法は、高炭素熱延鋼帯を圧下率25%以上80%以下
で冷間圧延を実施後、75容量%以上の水素と残部が実
質的に窒素および不可避的不純物からなるガス雰囲気の
ベル型バッチ焼鈍炉を用い、20〜100℃/Hrの加
熱速度で680℃〜Ac1点直下に加熱して6Hr以上
均熱保持後、100℃/Hr以下の加熱速度でAc1点
〜Ac1点+50℃に加熱して8Hr以下均熱保持後、
50℃/Hr以下の冷却速度でAr1点以下まで冷却し
て一次焼鈍処理したのち、圧下率20%以上80%以下
の冷間圧延と、ベル型バッチ焼鈍炉での600℃〜Ac
1点直下の仕上焼鈍とを2回以上繰り返すことによっ
て、軟質な板厚0.3mm以下の極薄高炭素冷延鋼帯を
得ることができる。
【0065】本発明の請求項4の高炭素冷延鋼帯の製造
方法は、高炭素熱延鋼帯を圧下率20%以上85%以下
で鋼板粗度0.3〜1.2μmを付与しつつ冷間圧延を
実施後、75容量%以上の水素と残部が実質的に窒素お
よび不可避的不純物からなるガス雰囲気のベル型バッチ
焼鈍炉を用い、20〜100℃/Hrの加熱速度で68
0℃〜Ac1点直下に加熱して6Hr以上均熱保持後、
100℃/Hr以下の加熱速度でAc1点〜Ac1点+
50℃に加熱して8Hr以下均熱保持後、50℃/Hr
以下の冷却速度でAr1点以下まで冷却して焼鈍処理し
たのち、伸び率0.6〜2.0%で調質圧延することに
よって、中間焼鈍時においても、焼鈍焼付きの発生な
く、最終製品粗度0.20μm以下の軟質な高炭素冷延
鋼帯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】温度400℃、600℃、800℃における水
素濃度と熱伝導率との関係を示すグラフである。
【図2】水素:75%、残部窒素からなる雰囲気ガスと
水素5%、残部窒素からなる雰囲気ガスの雰囲気温度で
の均熱時間とコイル内温度差との関係を示すグラフであ
る。
【図3】本発明の第1段均熱、第2段均熱、徐冷工程か
らなる焼鈍処理のヒートパターンを示すグラフである。
【図4】本発明の第1段均熱、第2段均熱、徐冷工程か
らなる焼鈍処理の代表的なヒートパターンの一例を示す
グラフである。
【図5】冷間圧延における圧下率と硬度(HV)との関
係を示すグラフである。
【図6】仕上焼鈍処理時の均熱温度、均熱時間と硬度
(HV)との関係を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.3〜0.8%、Si:0.03
    〜0.35%、Mn:0.20〜1.50%を含有し、
    残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる高炭
    素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールしたのち、圧下
    率25%以上80%以下で冷間圧延を実施後、75容量
    %以上の水素と残部が実質的に窒素および不可避的不純
    物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、下
    記(1)〜(7)の焼鈍条件で焼鈍することを特徴とす
    る高炭素冷延鋼帯の製造方法。 (1) 第1段均熱温度までの加熱速度:20℃/Hr
    〜100℃/Hr (2) 第1段均熱温度×時間:680℃〜Ac1点直
    下×6Hr以上 (3) 第2段均熱温度までの加熱速度:100℃/H
    r以下 (4) 第2段均熱温度×時間:Ac1点〜Ac1点+
    50℃×8Hr以下 (5) 第2段均熱完了後の冷却速度:50℃/Hr以
    下 (6) 第2段均熱完了後の冷却到達温度:Ar1点以
    下 (7) 以降は20℃/Hr〜100℃/Hrで室温ま
    で冷却
  2. 【請求項2】 C:0.3〜0.8%、Si:0.03
    〜0.35%、Mn:0.20〜1.50%を含有し、
    残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる高炭
    素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールしたのち、冷間
    圧延を圧下率25%以上80%以下で実施後、75容量
    %以上の水素と残部が実質的に窒素および不可避的不純
    物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼鈍炉を用い、下
    記(1)〜(7)の焼鈍条件で一次焼鈍処理したのち、
    圧下率20%以上80%以下で冷間圧延を行い、ベル型
    バッチ焼鈍炉で600℃〜Ac1点直下で仕上焼鈍を行
    うことを特徴とする高炭素冷延鋼帯の製造方法。 (1) 第1段均熱温度までの加熱速度:20℃/Hr
    〜100℃/Hr (2) 第1段均熱温度×時間:680℃〜Ac1点直
    下×6Hr以上 (3) 第2段均熱温度までの加熱速度:100℃/H
    r以下 (4) 第2段均熱温度×時間:Ac1点〜Ac1点+
    50℃×8Hr以下 (5) 第2段均熱完了後の冷却速度:50℃/Hr以
    下 (6) 第2段均熱完了後の冷却到達温度:Ar1点以
    下 (7) 以降は20℃/Hr〜100℃/Hrで室温ま
    で冷却
  3. 【請求項3】 一次焼鈍処理した後、圧下率20%以上
    80%以下の冷間圧延と、ベル型バッチ焼鈍炉での60
    0℃〜Ac1点直下の仕上焼鈍とを2回以上繰り返すこ
    とを特徴とする請求項1または2記載の高炭素冷延鋼帯
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 C:0.3〜0.8%、Si:0.03
    〜0.35%、Mn:0.20〜1.50%を含有し、
    残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる高炭
    素鋼片を、熱間圧延、酸洗、脱スケールしたのち、圧下
    率25%以上80%以下の冷間圧延で、かつ鋼板粗度を
    中心平均粗さで0.3μm以上1.2μm以下を付与し
    た後、75容量%以上の水素と残部が実質的に窒素およ
    び不可避的不純物からなるガス雰囲気のベル型バッチ焼
    鈍炉を用い、下記(1)〜(7)の焼鈍条件で一次焼鈍
    処理したのち、伸び率0.6%以上4.0%以下での調
    質圧延で、鋼板粗度を0.2μm以下とすることを特徴
    とする高炭素冷延鋼帯の製造方法。 (1) 第1段均熱温度までの加熱速度:20℃/Hr
    〜100℃/Hr (2) 第1段均熱温度×時間:680℃〜Ac1点直
    下×6Hr以上 (3) 第2段均熱温度までの加熱速度:100℃/H
    r以下 (4) 第2段均熱温度×時間:Ac1点〜Ac1点+
    50℃×8Hr以下 (5) 第2段均熱完了後の冷却速度:50℃/Hr以
    下 (6) 第2段均熱完了後の冷却到達温度:Ar1点以
    下 (7) 以降は20℃/Hr〜100℃/Hrで室温ま
    で冷却
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