JPH10231122A - 多結晶薄膜の製造方法と酸化物超電導導体の製造方法および多結晶薄膜の製造装置 - Google Patents
多結晶薄膜の製造方法と酸化物超電導導体の製造方法および多結晶薄膜の製造装置Info
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- JPH10231122A JPH10231122A JP9291404A JP29140497A JPH10231122A JP H10231122 A JPH10231122 A JP H10231122A JP 9291404 A JP9291404 A JP 9291404A JP 29140497 A JP29140497 A JP 29140497A JP H10231122 A JPH10231122 A JP H10231122A
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Abstract
結晶軸のc軸を配向させることができると同時に、成膜
面と平行な面に沿って結晶粒の結晶軸のa軸およびb軸
をも揃えることができ、結晶配向性に優れた多結晶薄膜
を提供すること、および、結晶配向性に優れた臨界電流
密度の高い酸化物超電導層を備えた酸化物超電導導体を
提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明は、ターゲット36から発生させ
た粒子を基材A上に堆積させ、基材上にターゲット36
の構成元素からなる多結晶薄膜Bを形成する方法におい
て、ターゲット36の構成粒子を基材上に堆積させる際
に、イオンソース39が発生させたイオンビームを基材
Aの成膜面の法線Hに対して50〜60度の範囲の入射
角度で斜め方向から照射しながら前記粒子を基材上に堆
積させて成膜するとともに、成膜時の温度を300℃以
下とすることを特徴とする。
Description
結晶薄膜の製造方法と酸化物超電導導体の製造方法に関
する。
は、液体窒素温度を超える臨界温度を示す優れた超電導
体であるが、現在、この種の酸化物超電導体を実用的な
超電導体として使用するためには、種々の解決するべき
問題点が存在している。その問題点の1つが、酸化物超
電導体の臨界電流密度が低いという問題である。
という問題は、酸化物超電導体の結晶自体に電気的な異
方性が存在することが大きな原因となっており、特に酸
化物超電導体はその結晶軸のa軸方向とb軸方向には電
気を流し易いが、c軸方向には電気を流しにくいことが
知られている。このような観点から酸化物超電導体を基
材上に形成してこれを超電導導体として使用するために
は、基材上に結晶配向性の良好な状態の酸化物超電導層
を形成し、しかも、電気を流そうとする方向に酸化物超
電導層の結晶のa軸あるいはb軸を配向させ、その他の
方向に酸化物超電導体のc軸を配向させる必要がある。
配向性の良好な酸化物超電導層を形成するために種々の
手段が試みられてきた。その1つの方法として、酸化物
超電導体と結晶構造の類似したMgOあるいはSrTi
O3などの単結晶基材を用い、これらの単結晶基材上に
スパッタリングなどの成膜法により酸化物超電導層を形
成する方法が実施されている。前記MgOやSrTiO
3の単結晶基板を用いてスパッタリングなどの成膜法を
行なえば、酸化物超電導層の結晶が単結晶基板の結晶を
基に結晶成長するために、その結晶配向性を良好にする
ことが可能であり、これらの単結晶基板上に形成された
酸化物超電導層は、数10万A/cm2程度の十分に高
い臨界電流密度を発揮することが知られている。
導体を導電体として使用するためには、テープ状などの
長尺の基材上に結晶配向性の良好な酸化物超電導層を形
成する必要がある。ところが、金属テープなどの基材上
に酸化物超電導層を直接形成すると、金属テープ自体が
多結晶体でその結晶構造も酸化物超電導体と大きく異な
るために、結晶配向性の良好な酸化物超電導層は到底形
成できないものである。しかも、酸化物超電導層を形成
する際に行なう熱処理によって金属テープと酸化物超電
導層との間で拡散反応が生じて酸化物超電導層の結晶構
造が崩れ、超電導特性が劣化する問題がある。
スパッタ装置を用いてMgOやSrTiO3などの中間
層を被覆し、この中間層上に酸化物超電導層を形成する
ことが行なわれている。ところがこの種の中間層上にス
パッタ装置により形成した酸化物超電導層は、単結晶基
材上に形成された酸化物超電導層よりもかなり低い臨界
電流密度(例えば数1000〜10000A/cm2程
度)しか示さないという問題があった。これは、以下に
説明する理由によるものと考えられる。
スパッタ装置により中間層2を形成し、この中間層2上
にスパッタ装置により酸化物超電導層3を形成した酸化
物超電導導体の断面構造を示すものである。図14に示
す構造において、酸化物超電導層3は多結晶状態であ
り、多数の結晶粒4が無秩序に結合した状態となってい
る。これらの結晶粒4の1つ1つを個々に見ると各結晶
粒4の結晶のc軸は基材表面に対して垂直に配向してい
るものの、a軸とb軸は無秩序な方向を向いているもの
と考えられる。
軸とb軸の向きが無秩序になると、結晶配向性の乱れた
結晶粒界において超電導状態の量子的結合性が失なわれ
る結果、超電導特性、特に臨界電流密度の低下を引き起
こすものと思われる。また、前記酸化物超電導体がa軸
およびb軸配向していない多結晶状態となるのは、その
下に形成された中間層2がa軸およびb軸配向していな
い多結晶状態であるために、酸化物超電導層3を成膜す
る場合に、中間層2の結晶に整合するように酸化物超電
導層3が成長するためであると思われる。
以外において、多結晶体の基材上に各種の配向膜を形成
する技術が利用されている。例えば光学薄膜の分野、光
磁気ディスクの分野、配線基板の分野、高周波導波路や
高周波フィルタ、空洞共振器などの分野であるが、いず
れの技術においても基材上に膜質の安定した配向性の良
好な多結晶薄膜を形成することが課題となっている。即
ち、多結晶薄膜の結晶配向性が良好であるならば、その
上に形成される光学薄膜、磁性薄膜、配線用薄膜などの
質が向上するわけであり、更に基材上に結晶配向性の良
好な光学薄膜、磁性薄膜、配線用薄膜などを直接形成で
きるならば、なお好ましい。
にイットリウム安定化ジルコニア(以下、YSZと略称
する)の多結晶薄膜を形成し、この多結晶薄膜上に酸化
物超電導層を形成することで、超電導特性の優れた酸化
物超電導導体を製造する試みを種々行っている。そし
て、このような試みの中から本発明者らは先に、特開平
4−329865号(特願平3−126836号)、特
開平4−331795号(特願平3−126837
号)、特開平4−90025号(特願平2−20555
1号)、特開平6−39368号(特願平4−1344
3号)、特開平6−145977号(特願平4−293
464号)などにおいて、結晶配向性に優れた多結晶薄
膜、およびそれを利用した酸化物超電導導体の特許出願
を行っている。
ば、基材上にYSZの粒子を堆積させる際に、基材の斜
め方向からイオンビームを照射すると、結晶配向性に優
れた多結晶薄膜を形成することができるものである。ま
た、前記の特許出願に並行して本発明者らは、長尺また
は大面積の多結晶薄膜および酸化物超電導導体を製造す
るための研究を行なっているが、結晶配向性において更
に優れた多結晶薄膜を製造する方法、および、多結晶薄
膜上に超電導層を形成した場合に従来よりも更に優れた
超電導特性を得ることを課題として研究を進めた結果本
願発明に到達した。
願の技術を発展させるとともに、前記課題を有効に解決
するためになされたもので、基材の成膜面に対して直角
向きに結晶軸のc軸を配向させることができると同時
に、成膜面と平行な面に沿って結晶粒の結晶軸のa軸お
よびb軸をも揃えることができ、結晶配向性に優れた多
結晶薄膜を提供すること、および、結晶配向性に優れた
臨界電流密度の高い酸化物超電導層を備えた酸化物超電
導導体を提供することを目的とする。また、本発明は、
結晶配向性に優れた多結晶薄膜を製造するための装置の
提供を目的とする。
するために、ターゲットから発生させた粒子を基材上に
堆積させ、基材上にターゲットの構成元素からなる多結
晶薄膜を形成する方法において、ターゲットの粒子を基
材上に堆積させる際に、イオンソースが発生させたイオ
ンビームを基材の成膜面の法線に対して50〜60度の
範囲の入射角度で斜め方向から照射しながら前記粒子を
基材上に堆積させて成膜するとともに、成膜時の温度を
300℃以下とすることを特徴とする。本発明は前記課
題を解決するために、請求項1においてイットリウム安
定化ジルコニアのターゲットを用いるものである。本発
明は前記課題を解決するために、請求項1または2記載
の多結晶薄膜の製造方法において、基材上に生成させる
多結晶薄膜の厚さを200nm以上とすることを特徴と
する。
ゲットから発生させた粒子を基材上に堆積させ、基材上
にターゲットの構成元素からなる多結晶薄膜を形成し、
次いでこの多結晶薄膜上に酸化物超電導層を形成する酸
化物超電導導体の製造方法において、ターゲットの粒子
を基材上に堆積させる際に、イオンソースが発生させた
イオンビームを基材の成膜面の法線に対して50〜60
度の範囲の入射角度で斜め方向から照射しつつ前記粒子
を堆積させて多結晶薄膜を形成させるとともに、成膜時
の温度を300℃以下に設定し、多結晶薄膜形成後にそ
の上に酸化物超電導層を形成することを特徴とする。
項4においてイットリウム安定化ジルコニアのターゲッ
トを用いるものである。本発明は前記課題を解決するた
めに、請求項4または5において基材上に生成させる多
結晶薄膜の厚さを200nm以上とするものである。
容器に設けられて成膜処理容器の内部にテープ状の長尺
の基材を送り出す送出装置と、送出装置から出された基
材を巻き取る巻取装置と、前記送出装置と巻取装置の間
に設けられて送出装置から出された基材の裏面側に接触
して基材を案内する基材ホルダと、前記基材ホルダに案
内された基材の表面側に対向配置されてこの基材表面に
粒子の堆積を行なうためのターゲットと、前記基材の表
面側に対向配置されて基材表面に基材の斜め方向から所
定の角度範囲でイオンビームを照射するイオンソース
と、前記基材ホルダを冷却して基材を冷却する冷却装置
とを具備してなることを特徴とする。
材ホルダを装着するための中空の基台と、この基台に接
続されるとともに前記成膜処理容器の外壁を貫通して外
部に導出され、基台の内部空間と成膜処理容器の外部空
間とに連通する冷媒導入管とを具備してなることを特徴
とする。更に、本発明は、前記冷媒導入管が、基台の内
部空間に連通して冷媒を導入するための往管と、基台の
内部空間に連通するとともに前記往管を囲み成膜処理容
器の外部空間に連通する戻管とからなる2重構造とされ
たことを特徴とする。
施の形態について説明する。図1は本発明方法を実施し
てYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)の多結晶薄
膜を基材上に形成したものの一構造例を示すものであ
り、図1において、Aはテープ状の基材、Bは基材Aの
上面に形成された多結晶薄膜を示している。前記基材A
は、この例ではテープ状のものを用いているが、例え
ば、板材、線材、条体などの種々の形状のものを用いる
ことができ、基材Aは、銀、白金、ステンレス鋼、銅、
ハステロイ等のニッケル合金などの各種金属材料、もし
くは、各種ガラスまたは各種セラミックスなどからなる
ものである。
を有するYSZ、あるいは、CeO 2などの微細な結晶
粒20が、多数、相互に結晶粒界を介して接合一体化さ
れてなり、各結晶粒20の結晶軸のc軸は基材Aの上面
(成膜面)に対して直角に向けられ、各結晶粒20の結
晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしは、互いに同一方向
に向けられて面内配向されている。そして、各結晶粒2
0のa軸(またはb軸)どうしは、それらのなす角度
(図2に示す粒界傾角K)を35度以内にして接合一体
化されている。なお、この粒界傾角Kの値は後述する多
結晶薄膜Bの製造方法において成膜時の温度を制御する
ことで調整することが可能であり、成膜時の温度制御に
より35度よりも小さな値まで調整することができる。
実施に好適に用いられる多結晶薄膜の製造装置の一例を
示す図である。この例の多結晶薄膜の製造装置は、テー
プ状の基材Aを支持するとともに所望温度に加熱または
冷却することができるブロック状の基材ホルダ23と、
基材ホルダ23上にテープ状の基材Aを送り出すための
基材送出ボビン(送出装置)24と、多結晶薄膜が形成
されたテープ状の基材Aを巻き取るための基材巻取ボビ
ン(巻取装置)25と、前記基材ホルダ23の斜め上方
に所定間隔をもって対向配置された板状のターゲット3
6と、このターゲット36の斜め上方においてターゲッ
ト36の下面に向けて配置されたスパッタビーム照射装
置(スパッタ手段)38と、前記基材ホルダ23の側方
に所定間隔をもって対向され、かつ、前記ターゲット3
6と離間して配置されたイオンソース39と、冷却装置
Rが、真空排気可能な真空チャンバ(成膜処理容器)4
0に設けられた構成とされている。
熱する金属線等からなる加熱ヒータ23aを内蔵して構
成され、基材ホルダ23の上に送り出されたテープ状の
基材Aを必要に応じて所望の温度に加熱できるようにな
っている。このような基材ホルダ23は、成膜処理容器
40内のイオンソース39から照射されるイオンビーム
の最適照射領域に配設されている。また、この基材ホル
ダ23が側面三角型の基台60に装着されて設けられ、
この基台60が成膜処理容器40の外壁40aを貫通し
て設けられた冷媒導入管61により成膜処理容器40の
中央部に支持され、基台60と冷媒導入管61を主体と
して冷却装置Rが構成されている。
断面三角型の中空の金属ブロック製とされ、その上面6
0aは後述するイオンビームの基材に対する入射角度を
50〜60度の範囲にできるように傾斜面とされてい
る。また、基台60の背面60bに冷媒導入管61が接
続されるとともに、冷媒導入管61は、内部の往管62
とその外部を覆う戻管63とからなる2重構造とされて
いて、往管62と戻管63がいずれもチャンバ内部で基
台60の内部空間に連通されているとともに、これらが
いずれもほぼ水平に延出されて成膜処理容器40の外壁
40aを貫通して外部に導出され、外部において両管が
上方に湾曲されているとともに、往管62の先端部に戻
管63の先端部よりも若干上方に突出した注入部64が
形成されていて、更に注入部64に漏斗状の注入部材6
5が装着されて構成されている。
戻管63の基台60側の先端部はいずれも基台60の背
面60bの接続孔に気密に接合されているので、成膜処
理容器40の内部を減圧した場合においても基台60の
内部を成膜処理容器外部の大気圧状態とすることがで
き、前述の注入部材65の内部に液体窒素などの液体冷
媒、あるいは冷却空気などの気体冷媒等を送り込み、基
台60の内部を冷媒で満たすことができるように構成さ
れている。
往管62のみで冷媒導入管61を構成すると注入部材6
5に液体窒素を投入して往管62から基台60に液体窒
素を送入しようとしても、先に送入している液体窒素ま
たは蒸発した窒素ガスが基台60の内部に滞留し、新た
な液体窒素を基台60に供給できなくなることを防止す
るためである。この点において戻管63を設けてあるな
らば、基台60内に滞留している古い液体窒素や気化し
た窒素ガスを戻管63を介して大気中に排出することが
容易にできるので、基台60に常に新鮮な液体窒素を供
給して基台60を十分に冷却することができ、冷却能力
を高めることができる。更に、往管62の外部を戻管6
3で覆う2重構造を採用するならば、戻管63を通過し
ている冷媒や窒素ガスで往管62を覆うことができる構
成であるので、戻管63の内部の冷媒で往管62を冷却
することができ、往管62の内部において冷媒の温度を
不要に高めてしまうことを防止できる。
貫通して設けられ、このフランジ板66は成膜処理容器
40の外壁40aに形成された取付孔40bを塞いで外
壁40aにネジ止め等の固定手段により着脱自在に固定
されている。また、前記フランジ板66には、基台60
の温度計測用の温度計測装置67が冷媒供給管61に隣
接するように装着され、この温度計測装置67に接続さ
れた温度センサ68により基材ホルダ23の温度を計測
できるように構成されている。即ち、基台60の上面6
0a上に図5の2点鎖線の如く基材ホルダ23をセット
した場合にこの温度センサ68を基材ホルダ23に接触
させておくことで基材ホルダ23の温度を計測できるよ
うに構成されている。
より常温よりも高い温度に基材ホルダ23を加熱して基
材Aを加熱するか、基台60により基材Aを冷却するこ
とにより、基材Aを所望の温度、例えば+500℃〜−
196℃の範囲の温度に調節できるように構成されてい
る。即ち、ヒータ加熱により、常温〜500℃程度まで
は容易に加熱調整することができ、更に、ヒータを停止
して冷却用の媒体として液体窒素などの冷媒を用いて上
述の冷却装置により77K(約−196℃)程度まで容
易に冷却することができる。
す構成のものに限らないので、クーラー等の通常の冷却
装置に用いられるフロン等のフッ素系ガスやアンモニア
を用いた冷却装置で−30℃程度に冷却できる装置を設
けても良いのは勿論である。また、成膜の際に基材には
ターゲットからの高熱粒子の飛来により自然加熱される
ので、例えば、常温で成膜して基材ホルダに一切加熱や
冷却を行わない場合に基材は100℃程度に加熱される
ことになる。また、液体窒素で冷却しながら成膜する場
合、基材を供給する基材ホルダ23の材質や厚さを調節
することで、基台60から基材Aを冷却する能力を調整
できる。例えば、薄く、熱伝導性に優れた基材ホルダ2
3を用い、冷媒導入管61からの液体窒素の供給量を充
分に確保した場合は成膜時の発熱を差し引いても−15
0℃程度まで容易に冷却することができ、逆に基材ホル
ダ23を厚い金属材料で形成することで基台60からの
冷却能力を低く抑えることができ、このようにした場合
に液体窒素冷媒を用いても基材Aの温度を−150〜−
50℃程度まで容易に調整することができる。
は、前記基材送出ボビン24から基材ホルダ23上にテ
ープ状の基材Aを連続的に送り出し、前記最適照射領域
を通過させた後に基材Aを基材巻取ボビン25で巻き取
ることで基材A上に多結晶薄膜Bを連続成膜することが
できるようになっている。
薄膜を形成するためのものであり、目的の組成の多結晶
薄膜と同一組成あるいは近似組成のものなどを用いるこ
とができる。ターゲット36として具体的には、MgO
あるいはY2O3で安定化したジルコニア(YSZ)、C
eO2、MgO、SrTiO3などを用いるがこれに限る
ものではなく、形成しようとする多結晶薄膜に見合うタ
ーゲットを適宜用いれば良い。このようなターゲット3
6は、ピン等によりターゲット支持体36aに回動自在
に取り付けられており、傾斜角度を調整できるようにな
っている。前記スパッタビーム照射装置(スパッタ手
段)38は、容器の内部に、蒸発源を収納し、蒸発源の
近傍に引き出し電圧をかけるためのグリッドを備えて構
成されているものであり、ターゲット36に対してイオ
ンビームを照射してターゲット36の構成粒子を基材A
に向けて叩き出すことができるものである。
照射装置38と略同様の構成のものであり、容器の内部
に蒸発源を収納し、蒸発源の近傍に引き出し電圧をかけ
るためのグリッドを備えて構成されている。そして、前
記蒸発源から発生した原子または分子の一部をイオン化
し、そのイオン化した粒子をグリッドで発生させた電界
で制御してイオンビームとして照射する装置である。粒
子をイオン化するには直流放電方式、高周波励起方式、
フィラメント式、クラスタイオンビーム方式などの種々
のものがある。フィラメント式はタングステン製のフィ
ラメントに通電加熱して熱電子を発生させ、高真空中で
蒸発粒子と衝突させてイオン化する方法である。また、
クラスタイオンビーム方式は、原料を入れたるつぼの開
口部に設けられたノズルから真空中に出てくる集合分子
のクラスタを熱電子で衝撃してイオン化して放射するも
のである。
は、図4に示す構成の内部構造のイオンソース39を用
いる。このイオンソース39は、筒状のイオン室45の
内部にグリッド46とフィラメント47とArガスなど
の導入管48とを備えて構成され、イオン室45の先端
のビーム口49からイオンをビーム状に略平行に放射で
きるものである。このイオンソース39の設置位置は、
変更できるようになっており、また、ビーム口49の口
径dも変更できるようになっている。
にその中心軸線Sを基材Aの成膜面に対して入射角度θ
(基材Aの垂線(法線)Hと中心線Sとのなす角度)で
もって傾斜させて対向されている。この入射角度θは5
0〜60度の範囲が好ましいが、より好ましくは55〜
60度の範囲、最も好ましくは55度である。従ってイ
オンソース39は基材Aの成膜面の法線Hに対してある
入射角度θでもってイオンビームを照射できるように配
置されている。
放射されるイオンビームの広がり角度Δθが下記式
(I) Δθ≦2tan-1(d/2L) ・・・(I) (式中、Δθはイオンビームの広がり角度、dはイオン
ソース39のビーム口径(cm)、Lはイオンソース3
9のビーム口49と基材Aとの距離であるイオンビーム
の搬送距離(cm)を表す。)により計算できるため、
目的とする多結晶薄膜の結晶配向性に応じてイオンビー
ムの搬送距離Lとビーム口径dが設定されている。この
イオンビームの広がり角度Δθは5度以下が好ましく、
より好ましくは3度以下の範囲である。例えば、L=4
0cmの場合、d≦3.49cmとすればΔθ≦5゜に
制御することができ、d≦2.09cmとすればΔθ≦
3゜に制御することができる。
材Aに照射するイオンビームは、YSZの中間層を形成
する場合にHe+、Ne+、Ar+、Xe+、Kr+などの
希ガスのイオンビーム、あるいは、それらと酸素イオン
の混合イオンビームなどで良いが、特にCeO2の中間
層を形成する場合には、Kr+のイオンビーム、あるい
はKr+とXe+の混合イオンビームを用いる。
膜処理容器40内を真空などの低圧状態にするためのロ
ータリーポンプ51およびクライオポンプ52と、ガス
ボンベなどの雰囲気ガス供給源がそれぞれ接続されてい
て、成膜処理容器40の内部を真空などの低圧状態で、
かつ、アルゴンガスあるいはその他の不活性ガス雰囲気
または酸素を含む不活性ガス雰囲気にすることができる
ようになっている。さらに、前記成膜処理容器40に
は、この成膜処理容器40内のイオンビームの電流密度
を測定するための電流密度計測装置54と、前記容器4
0内の圧力を測定するための圧力計55が取り付けられ
ている。なお、この形態の多結晶薄膜の製造装置におい
て、イオンソース39の支持部分に角度調整機構を取り
付けてイオンソース39の傾斜角度を調整し、イオンビ
ームの入射角度を調整するようにしても良く、角度調整
機構は種々の構成のものを採用することができるのは勿
論である。また、イオンソース39の設置位置を変更す
ることにより、イオンビームの搬送距離Lを変更できる
ようにしたが、基材ホルダ23の支持体23aの長さを
調整できるようにして、イオンビームの搬送距離Lを変
更できるようにしても良い。
の基材A上にYSZの多結晶薄膜を形成する場合につい
て説明する。テープ状の基材A上に多結晶薄膜を形成す
るには、YSZあるいはCeO2などからなるターゲッ
ト36を用い、基材Aを収納している成膜処理容器40
の内部を真空引きして減圧雰囲気とするとともに、基材
送出ボビン24から基材ホルダ23に基材Aを所定の速
度で送り出し、さらにイオンソース39とスパッタビー
ム照射装置38を作動させる。
タあるいは冷却装置を作動させて基材ホルダ23に接す
る基材Aの温度を300℃以下の所望の温度に調節す
る。基材Aの設定温度は、後述するYSZの結晶配向性
の結果と、後述する超電導層の臨界電流密度のデータか
ら、300℃以下の範囲でもできるだけ低い温度に設定
することが好ましい。300℃以下に成膜温度を設定す
る場合、常温において基材Aを基材ホルダ23で特に加
熱しない場合の基材温度を示す100℃以下の温度範囲
が好ましく、冷媒として安価に多用できる液体窒素によ
り容易に冷却できる−150℃以上の温度範囲がより好
ましい設定温度となる。
し、ここから往管62を介して基台60の内部空間に液
体窒素を満たす場合に、堆積する粒子による加熱状態あ
るいは成膜処理容器40に設けた他の装置からの熱輻射
等により、液体窒素を用いてできるだけ薄い基材ホルダ
を採用しても基材Aの温度は−150℃程度に冷却する
ことが限界であるので、これ以上低温に冷却する場合
は、液体ヘリウム等の他の冷媒を用いることになる。
ト36に対してイオンビームを照射すると、ターゲット
36の構成粒子が叩き出されて基材A上に飛来する。そ
して、基材ホルダ23上に送り出された基材A上にター
ゲット36から叩き出した構成粒子を堆積させると同時
にイオンソース39から、例えば、Ar+イオンと酸素
イオンの混合イオンビームを照射して所望の厚みの多結
晶薄膜Bを成膜し、成膜後のテープ状の基材Aを基材巻
取ボビン25に巻き取る。
度θは、50〜60度の範囲が好ましく、より好ましく
は55〜60度の範囲、最も好ましくは55度である。
ここでθを90度とすると、多結晶薄膜のc軸は基材A
上の成膜面に対して直角に配向するものの、基材Aの成
膜面上に(111)面が立つので好ましくない。また、
θを30度とすると、多結晶薄膜はc軸配向すらしなく
なる。前記のような好ましい範囲の入射角度でイオンビ
ーム照射するならば多結晶薄膜の結晶の(100)面が
立つようになる。このような入射角度でイオンビーム照
射を行ないながらスパッタリングを行なうことで、基材
A上に形成されるYSZの多結晶薄膜の結晶軸のa軸ど
うしおよびb軸どうしは互いに同一方向に向けられて基
材Aの上面(成膜面)と平行な面に沿って面内配向す
る。
っては、前述のように真空排気可能な成膜処理容器40
内に設けたターゲット36の構成粒子をスパッタリング
により叩き出して基材A上に堆積させる際に、イオンソ
ース39から発生させたイオンビームを基材Aの成膜面
の法線Hに対して入射角度50〜60度で照射しつつ堆
積させ、基材A上に多結晶薄膜を成膜する方法におい
て、基材Aの温度を所望の温度に制御することによっ
て、より結晶配向性の良好なものを得ることができる。
なお、イオンビームの入射角度の調整は、基台60の上
面60aの傾斜角度の異なるものを複数用意しておき、
適宜所望角度のものを交換してから成膜処理を行うこと
で実現できる。
如く、基材温度を300℃に設定することで粒界傾角3
5度のYSZの多結晶薄膜を得ることができ、200℃
に設定することで粒界傾角25度のYSZの多結晶薄膜
を得ることができ、100℃に設定することで粒界傾角
18度のYSZの多結晶薄膜を得ることができ、0℃に
設定することで粒界傾角13度のYSZの多結晶薄膜を
得ることができ、−100℃に設定することで、粒界傾
角10度のYSZの多結晶薄膜を得ることができ、−1
50℃に設定することで、粒界傾角8度のYSZの多結
晶薄膜を得ることができる。
晶薄膜上にスパッタリングやレーザ蒸着法などの成膜法
により酸化物超電導層Cを積層することで図5に示す構
造の酸化物超電導導体22を得ることができる。この酸
化物超電導層Cは、多結晶薄膜Bの上面に被覆されたも
のであり、その結晶粒23のc軸は多結晶薄膜Bの上面
に対して直角に配向され、その結晶粒23…のa軸とb
軸は先に説明した多結晶薄膜Bと同様に基材上面と平行
な面に沿って面内配向し、結晶粒23どうしが形成する
粒界傾角が小さな値に形成されている。
導体は、Y1Ba2Cu3O7-x、Y2Ba4Cu8Oy、Y3Ba
3Cu6Oyなる組成、あるいは(Bi,Pb)2Ca2Sr
2Cu3Oy、(Bi,Pb)2Ca2Sr3Cu4Oyなる組
成、あるいは、Tl2Ba2Ca2Cu3Oy、Tl1Ba2
Ca2Cu3Oy、Tl1Ba2Ca3Cu4Oyなる組成など
に代表される臨界温度の高い酸化物超電導体である。
8度程度に精度良く揃えられた多結晶薄膜上にスパッタ
リングやレーザ蒸着法などの成膜法により酸化物超電導
層Cを形成するならば、この多結晶薄膜上に積層される
酸化物超電導層Cも多結晶薄膜の配向性に整合するよう
にエピタキシャル成長して結晶化する。よって前記多結
晶薄膜B上に形成された酸化物超電導層Cは、結晶配向
性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層Cを構成する
結晶粒の1つ1つにおいては、基材Aの厚さ方向に電気
を流しにくいc軸が配向し、基材Aの長さ方向にa軸ど
うしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られ
た酸化物超電導層Cは、結晶粒界における量子的結合性
に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どない
ので、基材Aの長さ方向に電気を流し易くなり、MgO
やSrTO3の単結晶基板上に形成して得られる酸化物
超電導層と同じ程度の十分に高い臨界電流密度が得られ
る。
傾角35度のYSZの多結晶薄膜を得たものにおいては
酸化物超電導層の臨界電流密度として55000A/c
m2を得ることができ、基材温度を200℃に、粒界傾
角25度のYSZの多結晶薄膜を得たものは酸化物超電
導層の臨界電流密度として180000A/cm2を得
ることができ、基材温度を100℃、粒界傾角18度の
YSZの多結晶薄膜を得たものは酸化物超電導層の臨界
電流密度として550000A/cm2を得ることがで
きる。また、基材温度を0℃に、粒界傾角13度のYS
Zの多結晶薄膜を得たものにおいては酸化物超電導層の
臨界電流密度として800000A/cm2を得ること
ができ、基材温度を−100℃に、粒界傾角10度のY
SZの多結晶薄膜を得たものにおいては酸化物超電導層
の臨界電流密度として1300000A/cm2を得る
ことができ、基材温度を−150℃に、粒界傾角8度の
YSZの多結晶薄膜を得たものにおいては酸化物超電導
層の臨界電流密度として2500000A/cm2を得
ることができる。
適宜の温度に維持しつつイオンビーム照射を行って成膜
することにより、YSZ多結晶薄膜Bの結晶配向性に優
れ、臨界電流特性に優れた酸化物超電導導体22を得る
ことができる。また、この例で得られる酸化物超電導導
体はフレキシブル性に優れた長尺のテープ状とすること
が容易であり、超電導マグネットの巻線等への応用が期
待できる。
整う要因として本発明らは、以下のことを想定してい
る。YSZの多結晶薄膜Bの結晶の単位格子は、立方晶
であり、この結晶格子においては、基板法線方向が<1
00>軸であり、他の<010>軸と<001>軸はい
ずれも他の方向となる。これらの方向に対し、基板法線
に対して斜め方向から入射するイオンビームを考慮する
と、単位格子の原点に対して単位格子の対角線方向、即
ち、<111>軸に沿って入射する場合に、基板法線に
対する入射角度は54.7度となる。
によれば、図14に示すようにイオンビームの入射角度
に応じて得られるYSZの多結晶薄膜の結晶配向性を示
す半値全幅の値はイオンビーム入射角度が55〜60度
の範囲で極小値を示す。ここで前記のように入射角度5
0〜60度の範囲で良好な結晶配向性を示すことは、イ
オンビームの入射角度が前記54.7度と一致するかそ
の前後になった場合、イオンチャンネリングが最も効果
的に起こり、基材A上に堆積している結晶において、基
材Aの上面で前記角度に一致する配置関係になった原子
のみが選択的に残り易くなり、その他の乱れた原子配列
のものはイオンビームのスパッタ効果によりスパッタさ
れて除去される結果、配向性の良好な原子の集合した結
晶のみが選択的に残って堆積してゆくものと推定してい
る。
対する照射効果として、基材に垂直にYSZの(10
0)面を立てる効果と面内方位を整える効果の2つを奏
するが、本発明者としては、基材に垂直に正確に(10
0)面を立てる効果が主要であるものと推定している。
それは、基材に垂直にYSZの(100)を立てる効果
が不十分であると、必然的に面内配向性も乱れるためで
ある。
て50〜60度の入射角度で照射しながら成膜する場合
に温度制御を行うと多結晶薄膜Bの粒界傾角Kの値が良
好になる理由、換言すると、多結晶薄膜Bの結晶配向性
が良好になる理由について本願発明者は以下のように推
定している。通常のスパッタ、レーザ蒸着等の成膜法に
おいて結晶性の良好な薄膜を得るためには、成膜雰囲気
を高温度、例えば400〜600℃程度、あるいはそれ
以上の温度に加熱しながら成膜することが常識的な知見
である。このような高温度に加熱しつつ成膜することで
一般的に結晶性の高い膜を得ていることは、成膜温度と
結晶化との間に密接な関係が存在することを意味し、薄
膜の製造分野において成膜温度が低い場合はアモルファ
ス性に富む膜が生成し易いものと理解されている。
イオンビーム照射に伴う成膜技術を用いる場合は、イオ
ンビームにより結晶を整える効果が極めて大きいため
に、成膜温度は逆にできるだけ低い温度が好ましい。こ
れは、低い温度の方が結晶を構成する原子の運動や振動
がそれだけ少なくなり、イオンビーム照射に伴う結晶を
揃える効果がより効果的に発揮される結果として、結晶
配向性に優れた多結晶薄膜Bが生成し易くなるものと推
定している。
ほど[100]軸が安定した多結晶薄膜を得ることがで
き、それに伴って[111]軸の角度が一意的に決まるこ
と、および、結晶を構成する原子の熱振動によりディチ
ャネリング(dechanneeling)が起こらなくなり、[11
1]軸に沿ったイオンの衝突断面積が減少して効果的な
配向制御が可能になることによって結晶配向性が良くな
るものと思われる。なお、成膜温度が低温になるほど結
晶配向性の高い多結晶薄膜Bを得ることができ、100
℃以下の温度で多結晶薄膜Bを成膜した場合により優れ
た結晶配向性の多結晶薄膜Bが得られるという事実は、
一般の成膜技術において高温度に加熱しながら成膜しな
くては結晶性の高い膜を得ることが難しいという知見と
は相反するものであり、この点においてイオンビームを
斜めから照射しながら成膜する技術の特異性を知ること
ができる。
オンビーム照射を伴うスパッタリングを行ってYSZの
多結晶薄膜を金属テープ上に成膜した。図3に示す装置
を収納した真空容器内を真空ポンプで真空引きして3.
0×10-4Torrに減圧するとともに、真空容器内にAr
+O2のガスをArにおいては16.0sccm、O2ガ
スにおいては8.0sccmの割合で供給した。基材と
して、表面を鏡面加工した幅10mm、厚さ0.5m
m、長さ数mのハステロイC276テープを使用した。
ターゲットはYSZ(Y2O3:8モル%)製のものを用
い、Ar+イオンをイオンガンからターゲットに照射し
てスパッタするとともに、イオンガンからのイオンビー
ムの入射角度を基材ホルダ上の基材テープの成膜面の法
線に対して入射角55度に設定し、Kr++O2のイオン
ビームのエネルギーを300eV、イオン電流密度を1
00μA/cm2に設定して基材上にレーザ蒸着と同時
にイオンビーム照射を行ない、基材テープを基材ホルダ
に沿って一定速度で移動させながら基材テープ上に厚さ
1100nmのYSZ層を形成した。
熱ヒータを作動させ、成膜時の基材および多結晶薄膜の
温度を500℃、400℃、300℃、200℃にそれ
ぞれ制御した。また、加熱ヒータを作動させないで常温
で成膜した場合、基材および多結晶薄膜の温度はイオン
ビーム照射効果および装置内部の他の部分からの発熱等
により100℃の温度に維持された。更に比較のため
に、図5に示す冷却装置を用いて液体窒素で冷却し、用
いる基材ホルダの厚さを変えて冷却することにより、基
材および多結晶薄膜の温度を0℃、−100℃、−15
0℃にそれぞれ制御して多結晶薄膜をテープ状の基材上
に形成した。
1)極点図と(100)極点図を求めた結果を図8〜図
12と図18に示す。図8〜図12と図18とに示す結
果から、前記の成膜時において、成膜温度を300℃以
下の低い温度にする方が配向性が優れた状態([100]
配向状態)になることを確認することができた。また、
逆に、300℃よりも高い温度(400℃あるいは50
0℃)にすると[100]配向しなくなり、[111]配向
となってしまうことも確認できた。
において、YSZ多結晶薄膜のa軸あるいはb軸が配向
しているか否かを測定した。その測定のためには、図7
に示すように、基材A上に形成されたYSZの多結晶薄
膜にX線を角度θで照射するとともに、入射X線を含む
鉛直面において、入射X線に対して2θ(58.7度)
の角度の位置にX線カウンター58を設置し、入射X線
を含む鉛直面に対する水平角度φの値を適宜変更して、
即ち、基材Aを図7において矢印に示すように回転角φ
だけ回転させることにより得られる回折強さを測定する
ことにより多結晶薄膜Bのa軸どうしまたはb軸どうし
の配向性を計測した。
結晶粒における結晶配向性を試験した。この試験では図
7を基に先に説明した方法でX線回折を行なう場合、φ
の角度を−20度〜20度まで1度刻みの値に設定した
際の回折ピークを測定した。そして、そのピーク値が±
何度の範囲で現れ、±何度の範囲では消失しているか否
かにより面内配向性を求めた。
スパッタ装置を用いて酸化物超電導層を形成した。ター
ゲットとして、Y0.7Ba1.7Cu3.0O7-xなる組成の酸
化物超電導体からなるターゲットを用いた。また、蒸着
処理室の内部を1×10-6トールに減圧し、スパッタリ
ングを行なった。その後、400゜Cで60分間、酸素
雰囲気中において熱処理した。得られた酸化物超電導テ
ープ導体は、幅10.0mm、長さ1mのものである。
この酸化物超電導テープ導体を液体窒素により冷却し、
中央部の幅10mm、長さ10mmの部分について4端
子法により臨界温度と臨界電流密度の測定を行なった結
果を求めた。以上の測定結果において、成膜温度と面内
配向性と臨界電流密度の関係を以下に示す。
は多結晶薄膜が[111]配向となってしまい、超電導層
の臨界電流密度として良好な値が得られなかった。更
に、300℃以下において成膜するならば、多結晶薄膜
の結晶配向性も良好になり、臨界電流密度も高いものが
得られた。そしてこの傾向は、成膜温度が低くなるほど
顕著になり、このデータから、180000A/cm2
以上の臨界電流密度を得るためには200℃以下の温度
とすることが好ましく、550000A/cm2以上の
臨界電流密度を得るためには100℃以下の温度とする
ことが好ましいことも判明した。以上のことから、高い
臨界電流密度を得るための成膜温度範囲は、300℃〜
−150℃の範囲内であっても、100℃〜−150℃
の範囲がより好ましい。
結晶薄膜の半値全幅に対する膜厚依存性を示すものであ
る。図13は100℃に基材テープを保持して前記と同
じ条件で成膜した場合の結果である。この結果から[1
00]軸の配向は、200nmを超える膜厚から安定し
始めている。このことから、イオンビームを50〜60
度の入射角度で斜め方向から照射しながら成膜する場合
に、膜が堆積する初期の段階では結晶配向性が整ってい
ない結晶が多少生じても、厚さが増加するにつれて結晶
配向性が良好となり、[100]軸の配向状態から見て2
00nm以上の膜厚であれば結晶配向性に優れたものを
得ることができることが明らかである。
YSZの多結晶薄膜の蒸着時間と半値全幅の関係におい
て、成膜温度100℃と200℃での値の比較を示し、
図17は同YSZの多結晶薄膜の膜厚と半値全幅の関係
において、成膜温度100℃と200℃での値の比較を
示す。いずれの図においても、200℃よりも低温の1
00℃で成膜した方が優秀な結晶配向性を示す多結晶薄
膜を得られていることが示されている。これらの試験結
果から、より低い温度で成膜した方がより結晶配向性に
優れた多結晶薄膜を得られることが明らかになった。ま
た、いずれの成膜温度においても、蒸着時間がある程度
長くなくては、換言すると、膜厚がある程度厚くならな
くては、良好な結晶配向性の多結晶薄膜を得にくいこと
も判明した。
ば、ターゲットから発生させた粒子を基材に堆積させる
際に、基材成膜面の法線に対して50度〜60度の入射
角度でイオンビームを照射し、成膜温度を300℃以下
にするので、基材の成膜面に対してc軸配向性に加えて
a軸配向性とb軸配向性をも向上させた粒界傾角35度
以下のYSZの多結晶薄膜を確実に得ることができる。
これは、基材上に堆積する構成原子において、規定の向
きから外れた向きに配置された不安定な原子をイオンビ
ームのイオンがスパッタ効果を発揮させて除去するの
で、規定の位置に配置された安定性の高い原子のみが選
択的に残り易くなり、この結果として配向性の良好な粒
子の堆積が主体的になされて配向性の良好な多結晶薄膜
が得られたものと思われる。また、成膜時の温度を30
0℃以下に制御することで、結晶を構成する原子の振動
や運動を少なくすることができ、これらの影響力よりも
イオンビームによる結晶配向性制御効果を大きくするこ
とができる結果として配向性の良好な多結晶薄膜を得る
ことができる。また、イオンビームによる配向制御効果
は、多結晶薄膜の特定の面を基材成膜面に垂直に正確に
立てる作用を促進するものでもあるので、特定の面を基
材成膜面に対して正確に位置決めできる結果として他の
面の方向制御効果も向上させることができ、結果として
膜全体としての結晶配向性に優れた結晶粒の集合体とし
ての多結晶薄膜を得ることができる。
膜を有する基材を用いてこの多結晶薄膜上に必要な膜の
成膜を行なうならば、膜質の良好なものが得られる。即
ち、前記膜が磁性膜であれば良好な磁気特性を有する磁
性膜を得ることができ、光学薄膜であれば、優れた光学
特性を有する光学薄膜を得ることができる。また、ター
ゲットから発生させて基材上に堆積させるものとして具
体的にイットリウム安定化ジルコニアを用いることがで
き、結晶配向性に優れたイットリウム安定化ジルコニア
の多結晶薄膜を得ることができる。更に、得られる多結
晶薄膜の厚さを200nm以上とするならば、十分に結
晶配向性に優れた多結晶薄膜を確実に得ることができ
る。
な多結晶薄膜上に酸化物超電導層を形成するならば、結
晶配向性の良好な酸化物超電導層を生成させることがで
き、これにより臨界電流密度の高い超電導特性の良好な
酸化物超電導導体を得ることができる。そして、多結晶
薄膜の一具体例としては、イットリウム安定化ジルコニ
アを用いることができる。また、得られる多結晶薄膜の
厚さを200nm以上とするならば、十分に結晶配向性
に優れた多結晶薄膜を備えた臨界電流密度の高い酸化物
超電導導体を得ることができる。
材ホルダに基材を供給して巻き取りつつ基材上にターゲ
ットから粒子を堆積させると同時に斜め方向所定の角度
からイオンビームを照射することができ、この際に基材
ホルダを冷却して基材を低温度に維持しつつ成膜できる
ので、イオンビーム照射による粒子堆積時の結晶配向制
御効果をより活かしつつ粒子堆積させることができ、結
晶配向性に優れた多結晶薄膜を製造することができる。
また、冷却装置として、成膜処理容器の内部の減圧状態
とは別個に成膜処理容器の外部から冷媒を冷媒供給管に
より基台に供給することができるので、冷却した基台を
介して基材ホルダと基材を冷却することができ、イオン
ビーム照射に伴う配向制御性能を有効に活用しながら、
堆積粒子の熱振動等を抑制して結晶配向性の良好な多結
晶薄膜を製造することができる。
排出するための戻管を基台に接続したので、基台に古い
冷媒や気化ガスを残留させることなく新しい冷媒を順次
供給しながら成膜できるので、基材を充分に効率よく冷
却することができる。また、往管を戻管で覆う2重構造
とすることで、戻管を通過する冷媒や気化ガスで往管を
冷却することができるので、往管内部の温度上昇を抑制
して往管内部で冷媒の温度上昇が無いようにすることが
できる。
の多結晶薄膜を示す断面図である。
粒とその結晶軸方向および粒界傾角を示す拡大平面図で
ある。
晶薄膜を製造するための装置の一例を示す構成図であ
る。
ガンの一例を示す断面図である。
置の一例を示す断面図である。
形成された酸化物超電導層を示す断面図である。
ためのX線装置の配置図である。
ンビームエネルギー300evで100℃で成膜した多
結晶薄膜の極点図である。
ンビームエネルギー300evで200℃で成膜した多
結晶薄膜の極点図である。
イオンビームエネルギー300evで300℃で成膜し
た多結晶薄膜の極点図である。
イオンビームエネルギー300evで400℃で成膜し
た多結晶薄膜の極点図である。
イオン ビームエネルギー300evで500℃で成膜
した多結晶薄膜の極点図である。
全幅の関係を示す図である。
れた多結晶薄膜の半値全幅との関係を示すグラフであ
る。
多結晶薄膜と酸化物超電導層を示す構成図である。
膜の半値全幅と蒸着時間の関係を示す図である。
膜の半値全幅と膜厚の関係を示す図である。
イオンビ ームエネルギー300evで0℃で成膜した
多結晶薄膜の極点図である。
粒界傾角、θ…入射角度、φ…回転角、20、21…結
晶粒、22…酸化物超電導導体、23…基材ホルダ、2
4・・・基材送出ボビン(送出装置)、25・・・基材巻取ボビ
ン(巻取装置)、36…ターゲット、38…イオンガン、
39・・・イオンソース、40…成膜処理容器、R・・・冷却
装置、60・・・基台、61・・・冷媒導入管、62・・・往
管、63・・・戻管。
Claims (9)
- 【請求項1】 ターゲットから発生させた粒子を基材上
に堆積させ、基材上にターゲットの構成元素からなる多
結晶薄膜を形成する方法において、ターゲットの構成粒
子を基材上に堆積させる際に、イオンソースが発生させ
たイオンビームを基材の成膜面の法線に対して50〜6
0度の範囲の入射角度で斜め方向から照射しながら前記
粒子を基材上に堆積させて成膜するとともに、成膜時の
温度を300℃以下とすることを特徴とする多結晶薄膜
の製造方法。 - 【請求項2】 イットリウム安定化ジルコニアのターゲ
ットを用いることを特徴とする請求項1記載の多結晶薄
膜の製造方法。 - 【請求項3】 基材上に生成させる多結晶薄膜の厚さを
200nm以上とすることを特徴とする請求項1または
2記載の多結晶薄膜の製造方法。 - 【請求項4】 ターゲットから発生させた粒子を基材上
に堆積させ、基材上にターゲットの構成元素からなる多
結晶薄膜を形成し、次いでこの多結晶薄膜上に酸化物超
電導層を形成する酸化物超電導導体の製造方法におい
て、 ターゲットの粒子を基材上に堆積させる際に、イオンソ
ースが発生させたイオンビームを基材の成膜面の法線に
対して50〜60度の範囲の入射角度で斜め方向から照
射しつつ前記粒子を堆積させて多結晶薄膜を形成させる
とともに、成膜時の温度を300℃以下に設定し、多結
晶薄膜形成後にその上に酸化物超電導層を形成すること
を特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。 - 【請求項5】 イットリウム安定化ジルコニアのターゲ
ットを用いることを特徴とする請求項4記載の酸化物超
電導導体の製造方法。 - 【請求項6】 基材上に生成させる多結晶薄膜の厚さを
200nm以上とすることを特徴とする請求項4または
5記載の酸化物超電導導体の製造方法。 - 【請求項7】 成膜処理容器と、この成膜処理容器に設
けられて成膜処理容器の内部にテープ状の長尺の基材を
送り出す送出装置と、送出装置から出された基材を巻き
取る巻取装置と、前記送出装置と巻取装置の間に設けら
れて送出装置から出された基材の裏面側に接触して基材
を案内する基材ホルダと、前記基材ホルダに案内された
基材の表面側に対向配置されてこの基材表面に粒子の堆
積を行なうためのターゲットと、前記基材の表面側に対
向配置されて基材表面に基材の斜め方向から所定の角度
範囲でイオンビームを照射するイオンソースと、前記基
材ホルダを冷却して基材を冷却する冷却装置とを具備し
てなることを特徴とする多結晶薄膜の製造装置。 - 【請求項8】 前記冷却装置が、前記基材ホルダを装着
するための中空の基台と、この基台に接続されるととも
に前記成膜処理容器の外壁を貫通して外部に導出され、
基台の内部空間と成膜処理容器の外部空間とに連通する
冷媒導入管とを具備してなることを特徴とする請求項7
記載の多結晶薄膜の製造装置。 - 【請求項9】 前記冷媒導入管が、基台の内部空間に連
通して冷媒を導入するための往管と、基台の内部空間に
連通するとともに前記往管を囲み成膜処理容器の外部空
間に連通する戻管とからなる2重構造とされたことを特
徴とする請求項8記載の多結晶薄膜の製造装置。
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Cited By (9)
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