JPH10295363A - ミドリゾウリムシ共生藻のクローニングおよび得られた共生藻クローン - Google Patents

ミドリゾウリムシ共生藻のクローニングおよび得られた共生藻クローン

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JPH10295363A
JPH10295363A JP12477797A JP12477797A JPH10295363A JP H10295363 A JPH10295363 A JP H10295363A JP 12477797 A JP12477797 A JP 12477797A JP 12477797 A JP12477797 A JP 12477797A JP H10295363 A JPH10295363 A JP H10295363A
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algae
paramecium
symbiotic
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bursaria
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JP12477797A
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Hiroshi Hosoya
浩史 細谷
Toshikazu Kosaka
敏和 小阪
Tadao Takahashi
忠夫 高橋
Taketo Nakano
武登 中野
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Hiroshima University NUC
Original Assignee
Hiroshima University NUC
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ミドリゾウリムシ細胞内の共生藻をクローン
化し、単離培養するための簡便、かつ、再現性が高い方
法を確立すること、及び、無藻ミドリゾウリムシに対し
高い感染率を示す共生藻のクローンを取得すること。 【解決手段】 ミドリゾウリムシ(Paramecium bursar
ia )を野菜浸出液中で、ミドリゾウリムシを破砕する
が共生藻を破壊しない程度の超音波で処理し、処理液を
遠心分離処理した後、共生藻懸濁液を培養液で洗浄し、
寒天培地に接種して照明下に培養し、形成したコロニー
を再び同じ培養液を含む寒天培地に移植して培養する。
培養工程を複数回繰り返し継代することによりミドリゾ
ウリムシ共生藻をクローニングする。得られたクローン
は無藻ミドリゾウリムシに対して高い再感染率を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞質内に多量の
共生藻を有する繊毛虫ミドリゾウリムシ(Parame
cium bursaria)から分離した共生藻をク
ローニングする方法、および共生藻除去ミドリゾウリム
シ(以下、“無藻ミドリゾウリムシ”という)に対し高
い再感染率を示す共生藻のクローンに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】単一のミドリゾウリムシはその細胞質内
に、数百にも及ぶ多数のクロレラ属に属すると思われる
藻を有することが知られている。これらの内部共生藻
は、宿主の特殊な膜(perialgal vacuo
le)内に個々に封入されており、接合の際に保持さ
れ、細胞分裂において両娘細胞に伝達される。ミドリゾ
ウリムシの細胞質から共生藻を除去することは可能であ
り、又、共生藻もその宿主とは独立して生育することが
できることも知られている。
【0003】本発明者は、バクテリア特にクレブシエラ
・ニューモニアイ(Klebsiella pneum
oniae)を接種した野菜浸出液培地を用いて、ミド
リゾウリムシを、その内部共生藻を除去し得る有効量で
且つ該ミドリゾウリムシの生存許容量の1,1′−ジメ
チル−4,4′−ビピリジリウム塩(パラコート)の存
在下に培養することを特徴とする、短時間で簡便かつ確
実に共生藻を除去して無藻ミドリゾウリムシを創製する
方法を確立し、先に特願平8−152298号として提
案した。
【0004】無藻ミドリゾウリムシを培養して得られる
株には外部共生藻を或いはその他の微生物さえも再感染
させることができる。更に、無藻ミドリゾウリムシに共
生藻を経口摂取させると、共生藻はミドリゾウリムシの
細胞質中で増殖を開始し、一定の細胞密度で見かけ上増
殖が停止する。これらの共生藻は、形態学的には自由生
活性のクロレラに類似しているが、正確な種の同定はい
まだ行われておらず、ミドリゾウリムシの細胞質中に存
在する共生藻がすべて同一種であるのか否かについても
解明されていない。
【0005】これらの共生藻は、宿主であるミドリゾウ
リムシから単離し、培養できることが知られている。過
去において、シーゲル[Siegel R.W.(19
60):Exp.Cell Research,19
239−252]とカラカシアン[Karakashi
an S.J.(1963):Physiol.Zoo
l.,36,52−68]らは、共生藻をもったミドリ
ゾウリムシを培養すると、発育相(growth ph
ase)の進行に伴い、藻が培養液中に出現してくるこ
とに注目し、この細胞外の藻をローファーの培地(Lo
efer’smedium)を含む寒天培地で培養し、
それを再感染実験に用いた。然し乍ら、これらの藻が本
来、共生関係にあった藻であるのかどうかは確かではな
い。
【0006】また、ワイス[Weis D.S.(19
78):J.Protozool.,25,366−3
70]はミドリゾウリムシから共生藻を単離し、純粋培
養する方法を報告している。しかし、この方法は再現性
に乏しく、あまり行われていない。それは、(1)ミド
リゾウリムシの年齢や発育を全く問題にしておらず、
(2)共生藻の正確な種の同定はおろか、ミドリゾウリ
ムシの細胞内の藻類が全て同一種であるかどうかも不明
のまま材料として用いており、(3)共生藻のクローン
化も、至適培養条件の検討も行われていなかった、等に
よる。
【0007】従って、この方面の研究者は、研究者相互
間の個人的繋がりや、手紙のやり取り等で交換しあって
共生藻を入手しているのが現状である。ところが上述し
たように、共生藻の正確な種の同定はおろか、ミドリゾ
ウリムシの細胞内の藻類が全て同一種であるかどうかも
不明であり、個々の研究者はこのような異なった共生藻
を使用して独自の研究成果を発表するため、成果に質的
混乱が生じていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は上述の如
く、ミドリゾウリムシより共生藻を除去して無藻ミドリ
ゾウリムシを取得することに成功したが、更に、これら
の藻を用いて、共生関係の成立やミドリゾウリムシ内で
の共生藻の増殖調節のメカニズムを解明するためには、
先ず、ミドリゾウリムシの細胞質中に存在する共生藻を
クローン化する必要があると考えた。そこで、本発明の
目的はミドリゾウリムシ細胞内の共生藻をクローン化
し、単離培養するための簡便、かつ、再現性が高い方法
を確立するにある。また、別の目的は、特に後述のCA
培地において、無藻ミドリゾウリムシに対し高い感染率
を示す共生藻のクローンを取得するにある。更に、本発
明の終局的な目的はゾウリムシを始め動物内細胞生態に
おける感染過程を解明するための頗る重要な研究材料を
提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
ミドリゾウリムシ細胞内の共生藻をクローン化し、単離
培養する方法を確立するために鋭意研究を重ねた結果、
貧栄養培地、特に後述のCA培地において、無藻ミドリ
ゾウリムシに高い再感染率を示す共生藻のクローン化に
成功し本発明を完成したものである。また、更に本発明
者等は、このようにしてクローン化した共生藻と無藻ミ
ドリゾウリムシを用いて、再感染実験の最適条件をも検
討した。
【0010】即ち、本発明によるミドリゾウリムシ共生
藻のクローニング方法は、(1)ミドリゾウリムシ(
aramecium bursaria)を野菜浸出液
中で、ミドリゾウリムシを破砕するが共生藻を破壊しな
い程度の超音波で処理する工程、(2)超音波処理液を
遠心分離処理に付する工程、(3)分離した共生藻懸濁
液を培養液で洗浄する工程、(4)共生藻懸濁液を上記
培養液を含有する寒天培地に接種する工程、(5)照明
下に培養する工程、(6)寒天培地上に形成されたコロ
ニーを任意に選んでかきとり、再び同じ培養液を含む寒
天培地に移植して培養する工程、よりなる一連の操作を
経た後、上記工程(4)〜(6)を複数回繰り返すこと
を特徴とする。
【0011】上記クローニング方法の各工程における好
ましい条件としては、工程(1)の野菜浸出液はレタス
浸出液であること、工程(5)の培養を温度24±1℃
で少なくとも30日間行うこと、および工程(4)〜
(6)を少なくとも9回繰り返すことである。
【0012】更に、前記培養液は、下記培地組成表のう
ちC,CA,MG,CAaおよびCAb培地から選ばれ
る何れか1種の培養液を含む貧栄養培地であること、特
にCA培地であることが好ましい。また、1回の培養期
間は少なくとも30日間となすことが望ましい。
【0013】
【表2】
【0014】
【発明の実施の形態】本発明方法に用いるミドリゾウリ
ムシ(Paramecium bursaria)は、
予めミドリゾウリムシの有機栄養源となるバクテリアと
して、クレブジエラ・ニューモニアイ(Klebsie
lla pneumoniae)を接種した野菜浸出液
培地中で12時間明期:12時間暗期、23±1℃で培
養する。上記培地は、野菜、特に緑色野菜の浸出液に少
量の無機成分を含む半合成培地であることが好ましく、
このような野菜浸出液としてはレタス浸出液が最も好ま
しい。野菜浸出液は、例えば乾葉レタス粉末に少量のC
aCO3 を加え、約1000〜1500倍容の水で数分
間煮沸浸出し、濾過した後、オートクレーブして調製す
る。その他、酵母抽出物、ペプトン、グルコース等、微
生物用培地に慣用される有機成分を適宜添加してもよい
ことは言うまでもない。
【0015】共生藻をミドリゾウリムシより分離するに
は、上記野菜浸出液中に懸濁したミドリゾウリムシに超
音波処理を施す。超音波処理は、ミドリゾウリムシを完
全に破砕するが、共生藻には影響を及ぼさない程度の適
宜な出力及び処理時間を選定して行う。適宜な処理時間
は30秒〜1分で目的を達することができる。次いで、
ミドリゾウリムシを破砕した液を遠心し、上清を除去し
て共生藻を得る。
【0016】分離された共生藻に、好ましくはCA培地
(CA液体培地)を添加して十分に洗いその懸濁液を、
好ましくはCA液体培地を含む2%寒天培地(CA寒天
培地)に接種し、24時間照明下、約24±1℃で培養
する。約1カ月後に、共生藻のコロニーの任意のものを
選んでかきとり、再びCA寒天培地に植え替え培養す
る。1回の培養期間は少なくとも30日間とすることが
よい。これらの操作による継代を複数回繰り返すことに
より共生藻のクローンを取得することができる。
【0017】上述の手法によりCA寒天培地でクローン
化した共生藻をCA液体培地で、約24±1℃で24時
間照明下で振盪培養し、培養約7日後に共生藻の一部を
新鮮なCA培地に接種し、以後約7日おきに継代を繰り
返すことによりクローン化共生藻を大量培養することが
できる。
【0018】
【実施例】本発明方法を以下の実施例により更に詳述す
る。 <実験材料>実験材料として、ミドリゾウリムシ(Pa
ramecium bursaria)シンジェン1
(syngen1)のミドリゾウリムシの株、OK−3
12(交配型I)、OKw−312(I)、HDK−1
24(I)、及びKSK−103(IV)を用いた。株
OK−312は1991年に広島県東広島市奥田大池か
ら[Kosaka T.:Zool.Sci.,11
517−526(1994)]、株HDK−124は1
994年に広島県府中市羽高湖から、また、株KSK−
103は1995年に広島県府中市河佐峡からそれぞれ
採集したものである。株OKw−312は、本発明者等
が特願平8−152298号の方法により、株OK−3
12をパラコート処理して得られた無藻ミドリゾウリム
シ株である。これらの株はレタス浸出液培地に予めミド
リゾウリムシの有機栄養源となるバクテリアとしてクレ
ブジエラ・ニューモニアイ(Klebsiella
neumoniae)を接種し、12時間明期:12時
間暗期、23±1℃で培養した後に使用した。
【0019】培地の調製に使用するレタス浸出液は次の
ようにして作った。即ち、レタスの葉を洗浄し30−6
0秒間煮沸し、60−80℃で乾燥した後、粉末となし
デシケーターに貯えた。この乾燥レタス粉末0.5gを
CaCO3 (片山化学)2mgと共に再蒸留水0.7リ
ットル中で5−10分煮沸して浸出液を調製し、室温ま
で冷却後濾過する。濾液に再蒸留水を加えて全容100
0mlとし、オートクレーブ処理(約15分)後、培地
に使用した。
【0020】<ミドリゾウリムシ個体数の測定>以下の
実施例中で、ミドリゾウリムシの個体数の測定は、ガラ
スシャーレを振動させて培養液内の細胞の分布を一様に
した後、マイクロピペットでO.1mlを、デプレッシ
ョン・スライド(depression slide
s)に取り、捕れた個体を一個体ずつガラスシャーレに
戻し、個体数を測定した。この操作を5回繰り返し、そ
の平均値を0.1ml中の個体数とし、それを1mlに
換算してその時点での細胞密度とした。なお、デプレッ
ション・スライドに残った培養液は全てガラスシャーレ
に戻した。
【0021】<共生藻>実験材料として用いた共生藻
は、ミドリゾウリムシ株OK−312、HDK−12
4、及びKSK−103から単離し、24±1℃、24
時間照明下(約2000ルクス)で寒天もしくは液体培
地で培養した。また、自由生活性のクロレラとして、ク
ロレラ・ブルガリス(Chlorella vulga
ris、C−27株)を用い、共生藻と同様の方法で培
養した。
【0022】<透過型電子顕微鏡観察>寒天培養(培養
開始1カ月)もしくは、液体培養(培養開始7日目)し
た共生藻を遠心(1000rpm、2分)で集め、3%
グルタルアルデヒド(TAAB)と2mM硫酸マグネシ
ウムを加えた100mMカコジル酸緩衝液(pH:6.
8)を細胞の溶液と等量加え、30分、室温で前固定し
た。次いで、1%四酸化オスミウムを加えた50mMカ
コジル酸緩衝液中で1時間室温で後固定した。その後、
アルコールシリーズで脱水し、スパー氏低粘度樹脂(T
AAB)[Spurr A.R.:J.Ultrast
ruct.Res.,26,31−43,(196
9)]を用いて包埋した。超薄切片は、3%酢酸ウラン
(メルク社製)で10分、1%クエン酸鉛で3分間電子
染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子製:JEOL 1
200EXTM)を用い、80kVで観察した。
【0023】(実施例1) <クローニング方法>ミドリゾウリムシの共生藻(Al
gae)は、ミドリゾウリムシ株OK−312、HDK
−124(I)、及びKSK−103から次の手順で単
離した。即ち、ミドリゾウリムシ各株をレタス浸出液で
3回洗い、その後、再びレタス浸出液中に懸濁し、超音
波発振装置、ソニファー・モデル・450TM(BRAN
SON社製)を用い、出力2で30秒間超音波破砕し
た。この破砕条件では、ミドリゾウリムシは完全に破砕
されたが、共生藻には影響はなかった。この破砕液を7
20xgで5分間遠心し、上清を除去した後、共生藻を
培養するための前記培地組成表に示す各培養液を加え洗
浄した。この操作を3回繰り返し、共生藻をよく洗っ
た。この懸濁液を前記培地組成表に示す各培養液のそれ
ぞれ同種の培養液を含む2%寒天(Difco社製)培
地に接種し、24時間照明下(約2000ルクス)、2
4℃で培養し、共生藻のコロニーが形成されるかどうか
を検討した。
【0024】その結果は、前記培地組成表に示す通り、
プロテオース・ペプトンやグルコース等を含む富栄養培
地(Pro、Tre、及びMCa)では、バクテリアの
増殖が盛んで、共生藻のコロニーは形成されなかった。
一方、貧栄養培地(C、CA、MG、CAa、CAb、
MDMおよびMBM)で培養開始後、約1カ月で共生藻
のコロニーが形成された。それらのコロニーを数え、そ
れぞれ1つのコロニーを任意に選んでかきとり、再び同
じ培養液を含む寒天培地に植え替えた。これらの操作を
繰り返すことで共生藻のクローンを得た。
【0025】(実験例1) <再感染実験>ミドリゾウリムシ株OK−312から得
られた共生藻クローンの感染能を調べるために、定常期
(stationary phase)の無藻ミドリゾ
ウリムシOKw−312を用いた。貧栄養培地(C、C
A、MG、CAa、CAb、MDM及びMBM)で培養
した共生藻の各クローンを用いて無藻ミドリゾウリムシ
への再感染実験を行った。
【0026】寒天培養(培養開始1カ月)もしくは、液
体培養(培養開始7日目)した共生藻を720xgで5
分間遠心し、レタス浸出液で3回洗浄した。この懸濁液
に無藻ミドリゾウリムシの100個体を加え、最終濃度
約1.0x104 algae/parameciumに
調整し、12時間明期:12時間暗期、23±1℃の条
件で、24時間培養した。その後、ミドリゾウリムシを
含む懸濁液をデプレッションスライド上にとり、レタス
浸出液中で1個体ずつ、3回洗い、ミドリゾウリムシに
取り込まれた共生藻以外の藻を除去した。
【0027】次いで、直径9cmのシャーレの底を25
の方形区に区画し、その1区画ごとにバクテリアを接種
したレタス浸出液約15μlを置いて、この培養液1ド
ロップあたり1細胞となるようにミドリゾウリムシを移
した。さらに、シャーレの蓋の内側に濾紙を置いて、蒸
留水で湿らせ、この上に水滴を置いた側を下にして(u
p−side down)シャーレをかぶせ、以後この
ハンギング・ドロップ(hanging−drop)状
態で培養した。ミドリゾウリムシに再感染できなかった
共生藻は消化吸収されるか、細胞外に排出されると考え
られるため、その後、24時間、48時間後に各ドロッ
プ中のミドリゾウリムシを前述したように洗い、培養液
中に出現してくる共生藻を除去した。ハンギング・ドロ
ップで培養を開始してから5日後、ミドリゾウリムシの
細胞内に共生藻が存在するか否かを観察し、1ドロップ
中に1細胞でも共生藻を保持しているミドリゾウリムシ
が観察された場合にはその細胞系(cell lin
e)は再感染したものと判定した。共生藻は赤色の自家
蛍光を発するため、共生藻の有無は蛍光顕微鏡(ニコ
ン、Optiphot BFD2TM)を用いて判定し、
全細胞系のうち共生藻が再感染した細胞系の割合を再感
染率としてあらわした。その結果得られた各培地ごとの
再感染率を図1に示す。
【0028】同図において、横軸は実験に用いた共生藻
を培養した培地の種類を表す。用いた共生藻はそれぞれ
「C」は3回、「CA」は5回、「MG」は2回、「C
Aa」は2回、「CAb」は2回継代したものである。
同図から明らかなようにCA培地でクローン化した共生
藻は、他の貧栄養培地で培養したものと比べ再感染率が
最も高かった。
【0029】(実施例2) <CA液体培地によるクローン化共生藻の培養>上記実
施例1によりCA寒天培地でクローン化した共生藻を5
mlのCA液体培地で、24℃、24時間照明下(約2
000ルクス)に振盪培養した。培養7日後、共生藻の
一部を新鮮なCA液体培地に接種し、以後7日おきに継
代を繰り返し共生藻のクローンを得た。各継代回数毎に
得られた共生藻の無藻ミドリゾウリムシに対する再感染
率を上記実験例1の方法に準じて調べ、その結果を図2
に示した。同図の横軸は共生藻の継代回数を示す。その
結果、継代(4回〜9回)を繰り返しても再感染率は常
に70%以上と変わらなかった。以上のことから、共生
藻のクローン化にはCA培地が適当であることが分かっ
た。HDK−124、KSK−103由来の共生藻、及
び、自由生活性のクロレラも同様に無藻ミドリゾウリム
シ(OKw−312)に対する感染能を調べた。
【0030】(実施例3) <CA液体培地による大量培養>ミドリゾウリムシの超
音波破砕液をCA培地に接種し(CA1)、更にこれら
の継代を1カ月毎に9回繰り返し、得られた共生藻(C
A9)をクローン化共生藻として用いた。興味深いこと
に、これまで何度となく共生藻のクローニングを繰り返
しても、バクテリアを除去できず、図3Bに示すように
常に共生藻のコロニー周辺にバクテリアの増殖が観察さ
れ、ある種のバクテリアが共生藻に共生している可能性
が考えられるが、詳細は未だ不明である。然し乍ら、共
生藻自身はクローン化されたと考えられるので、この共
生藻のクローンを用いて共生藻の性質について検討を行
った。
【0031】寒天培地上では共生藻のコロニーが形成さ
れるまで1〜2カ月かかり、自由生活性のクロレラに比
べ増殖が極めて遅いことが分かった。また、大量の共生
藻を得ることも難しいため、得られた共生藻のクローン
を液体CA培地中で24℃、24時間照明下に培養し
た。先ず、寒天培地上から共生藻(CA9)のコロニー
を1つかきとり、CA液体培地中に104 algae/
mlの初期密度で懸濁し培養した(CA9 liq.
1)。その後、7日ごとに新鮮なCA液体培地に継代し
(CA9 liq.2、CA9 liq.3、・・
・)、培養開始7日目の共生藻の感染能について調べ図
4(A)に示した。白丸のプロットはCA9 liq.
3、黒丸はCA9 liq.32である。図4(A)か
ら明らかなように、液体培地では培養開始7日で約10
7 cells/mlの個体密度にまで増殖した。
【0032】(実験例2)無藻ミドリゾウリムシとクロ
ーン化共生藻をCA培地において24時間培養すると、
ミドリゾウリムシの細胞内には50〜100個体の共生
藻が観察される。その後、共生藻はミドリゾウリムシの
細胞内で増殖を開始し、7日以内に500〜1000個
体の細胞密度で見かけ上増殖が停止する。クローン化共
生藻は液体培地中で7日以内に初期密度の1000倍ま
で増殖するが、宿主内では10倍しか増殖しない。この
ことから、宿主内に共生藻の増殖調節のメカニズムが存
在することが考えられるが、このメカニズムは解明され
ていない。このように本発明によって取得された共生藻
のクローンは、特に、CA培地において、無藻ミドリゾ
ウリムシに対し高い感染率と増殖率を示すことが判明し
た。
【0033】また、CA液体培地で培養したクローン化
共生藻は図4(B)に示すように、継代を繰り返しても
80%以上の常に高い再感染率を示した。ミドリゾウリ
ムシの細胞内では、宿主の発育(growth)の進行
に伴い共生藻の形態が変化するが、寒天培養(CA1
2)および液体培養(CA9 liq.15)のどちら
のクローンも、光学顕微鏡および電子顕微鏡観察により
形態学的には顕著な差はみられなかった。図5は、寒天
培養(A、BがCA12)及び、液体培養(C、DがC
A9 liq.15)したクローン化共生藻の光学顕微
鏡像(A、C)と電子顕微鏡像(B、D)であり、A、
Cのスケールバーは10μm、B、Dのスケールバーは
1μmである。これらのクローンは、共に直径4〜6μ
mで、ピレノイドを持ち、クロロプラストの形状はガー
ドル型と呼ばれるものであった。
【0034】(実験例3) <再感染実験の最適条件>液体培養した共生藻のクロー
ン(OK−312株由来)を用いて再感染実験の最適条
件を決定した。無藻ミドリゾウリムシ1個体当たり1〜
104 個体の共生藻を与え、5分から24時間培養した
後、ミドリゾウリムシを単離し、上記の実験例1の方法
で再感染率を求めた。ミドリゾウリムシ1個体当たりに
与える共生藻数を変えると、図6(A)に示すように、
1個体当たり少なくとも103 個体の共生藻を与えて初
めて再感染することが分かった。過去にワイス等[We
isD.S.,et al.:J.Protozoo
l,26,245−248(1979)]も、共生藻の
再感染には103 個体の共生藻が必要であることを報告
している。
【0035】一方、共生藻を与える時間を変えると、図
6(B)に示すように、時間依存的に再感染率は高くな
り、24時間で最大の再感染率を示した(約90%)。
したがって、再感染実験には、無藻ミドリゾウリムシ1
個体当たり104 個体の共生藻を与え、24時間培養の
条件を採用した。
【0036】(実験例4) <共生藻と自由生活性のクロレラの比較>クローン化さ
れた共生藻は形態学的には自由生活性のクロレラに類似
している。過去に共生藻の分類がいくつか試みられてお
り、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vu
lgaris)グループであると言われている。しかし
ながら、ミドリゾウリムシ細胞内の共生藻は宿主の発育
相(growth phase)に伴って形態が変化す
ることから、形態学的な特徴をもとにクロレラの種を分
類するのは難しいと思われる。そこで、本発明者等は、
共生藻と自由生活性のクロレラの成長曲線(growt
h curve)と、無藻ミドリゾウリムシに対する感
染能について比較する。共生藻と自由生活性のクロレラ
vulgaris(C27株)を初期密度104
lgae/mlで培養したところ、それぞれ107 と1
8 algae/mlの細胞密度まで増殖した。図7は
その成長曲線である。図中、黒丸は共生藻(CA9 l
iq.74)、白丸は自由生活性のクロレラvul
garis(CA3 liq.25)のそれぞれプロッ
トであり、バー(縦線)は標準誤差を示す。
【0037】更に自由生活性のクロレラと比較するため
に、いくつかのミドリゾウリムシ株から共生藻のクロー
ンを単離した。ミドリゾウリムシ株OK−312、HD
K−124、及びKSK−103から得られた共生藻ク
ローンをそれぞれSA−1、SA−2、及びSA−3と
命名した。感染実験は、無藻ミドリゾウリムシ1個体当
たり104 個体の共生藻を与え、24時間培養した。図
8に示すように、これら3株の共生藻は、無藻ミドリゾ
ウリムシ(OKw−312)に対して80%前後の高い
再感染率を示したが、vulgaris(C27
株)は、無藻ミドリゾウリムシ(OKw−312)に全
く感染しなかった。
【0038】過去に、C.vulgarisを含む自由
生活性のクロレラがミドリゾウリムシに感染するとい
う、本発明者等による実験結果と異なる報告がある[ボ
ンフォード(Bomford R.:J.Protoz
ool.,12,221−224(1965);カラカ
シアン等(Karakashian S.J.,eta
l.:Evolution,19,368−377(1
965);エーラー(Oehler R.:Exp.T
herap.Frankfurt,15,5−21(1
922);シーゲル等(Siegel R.W.,et
al.:Anat.Rec.,134,639(19
59)]。しかしながら、これら過去の研究において
は、自由生活性の藻類の種名が明らかにされておらず、
共生を確立したとする基準も不明であるなど、不明瞭な
点が多く、上記相違の原因の解明は今後の課題であろ
う。
【0039】
【発明の効果】上述の実施例で例証した通り、本発明
は、ミドリゾウリムシ細胞内の共生藻をクローン化し、
単離培養するための簡便、かつ、再現性が高い方法を確
立することに成功し、特にCA培地上で継代を繰り返す
ことにより、ミドリゾウリムシの共生藻のクローンを得
る点に本発明方法の高いオリジナリティーが存する。従
って、この方面の研究者は、研究者相互間の個人的繋が
りや、手紙のやり取り等で交換しあって共生藻を入手し
ているという不安定かつ不確実な現状が打開され、共生
藻の正確な種の同定が可能となり、本発明方法で取得し
たクローンを用いてミドリゾウリムシと共生藻の共生関
係の成立やミドリゾウリムシ内での共生藻の増殖調節の
メカニズムを解明することにより、細胞間認識機構、免
疫機構、オルガネラの進化等の生物学的現象を明らかに
することが可能となり、個々の研究者は研究成果を質的
混乱なく発表することができる。このように、本発明
は、ゾウリムシを始め動物内細胞生態における感染過程
を解明するための頗る重要な研究材料を提供するもので
ある。
【0040】また、ミドリゾウリムシでは、細胞内の共
生藻が光エネルギーを利用して産生する「糖分」を栄養
分として利用するという興味深い事実が明らかにされて
いる。この現象を解明し応用することは、動物細胞に共
生藻(クロレラ)を共生させ、光エネルギーを利用し得
る動物細胞を創製する道を拓くことに繋がり、本発明
は、従来、植物しか利用することの出来なかった無尽蔵
の光エネルギーを動物が利用する可能性を示す画期的な
ものである。また、有効な利用法が確立されれば、将
来、社会および産業界へ与える影響は測り知れないもの
があるとも言える。例えば、共生藻を導入した家畜類を
創り出すことにより、牧草地ではない場所での放牧も夢
ではなくなることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に用いる貧栄養培地で培養した共生
藻の無藻ミドリゾウリムシに対する再感染能を示すグラ
フグラフである。
【図2】本発明方法により生成した共生藻クローンの継
代回数と無藻ミドリゾウリムシに対する感染能との関係
を示すグラフである。
【図3】(A)は共生藻を培養したCA寒天培地の顕微
鏡写真であり、(B)はその一部拡大写真である。
【図4】(A)は本発明方法によりCA液体培地で培養
した共生藻クローンの成長曲線であり、(B)は、その
無藻ミドリゾウリムシに対する再感染能を示すグラフで
ある。
【図5】本発明方法培養したクローン化共生藻の顕微鏡
写真であり、(A)は寒天培養したCA12の光学顕微
鏡像、(B)はその電子顕微鏡像、(C)は液体培養し
たCA9 liq.15の光学顕微鏡像、(D)はその
電子顕微鏡像である。
【図6】本発明方法により生成した共生藻クローンの無
藻ミドリゾウリムシに対する再感染能を示すグラフであ
り、(A)は無藻ミドリゾウリムシ1細胞当たりに与え
る共生藻数の影響を示し、(B)は、無藻ミドリゾウリ
ムシと共生藻とを培養する時間の影響を示す。
【図7】本発明方法によりCA液体培地で培養したクロ
ーン化共生藻と自由生活性のクロレラの成長曲線であ
る。
【図8】本発明方法で得られた共生藻クローンと自由生
活性のクロレラの無藻ミドリゾウリムシに対する感染能
を示すグラフである。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(1)ミドリゾウリムシ(Paramec
    ium bursaria)を野菜浸出液中で、ミドリ
    ゾウリムシを破砕するが共生藻を破壊しない程度の超音
    波で処理する工程、(2)超音波処理液を遠心分離処理
    に付する工程、(3)分離した共生藻懸濁液を培養液で
    洗浄する工程、(4)共生藻懸濁液を上記培養液を含有
    する寒天培地に接種する工程、(5)照明下に培養する
    工程、(6)寒天培地上に形成されたコロニーを任意に
    選んでかきとり、再び同じ培養液を含む寒天培地に移植
    して培養する工程、よりなる一連の操作を経た後、上記
    工程(4)〜(6)を複数回繰り返すことを特徴とする
    ミドリゾウリムシ共生藻のクローニング方法。
  2. 【請求項2】 前記工程(1)の野菜浸出液がレタス浸
    出液である請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 前記工程(5)の培養を温度24±1℃
    で少なくとも30日間行う請求項1の方法。
  4. 【請求項4】 上記工程(4)〜(6)を少なくとも9
    回繰り返す請求項1の方法。
  5. 【請求項5】 前記培養液が、下表に示す組成を有する
    C,CA,MG,CAaおよびCAb培地から選ばれる
    何れか1種の培養液を含む貧栄養培地である請求項1の
    方法。 【表1】
  6. 【請求項6】 前記培養液がCA培地である請求項1の
    方法。
  7. 【請求項7】 培養期間を少なくとも30日間となす請
    求項5または6の何れか1項の方法。
  8. 【請求項8】(1)ミドリゾウリムシ(Paramec
    ium bursaria)を野菜浸出液中で、ミドリ
    ゾウリムシを破砕するが共生藻を破壊しない程度の超音
    波で処理する工程、(2)超音波処理液を遠心分離処理
    に付する工程、(3)分離した共生藻懸濁液を培養液で
    洗浄する工程、(4)共生藻懸濁液を上記培養液を含有
    する寒天培地に接種する工程、(5)照明下に培養する
    工程、(6)寒天培地上に形成されたコロニーを任意に
    選んでかきとり、再び同じ培養液を含む寒天培地に移植
    して培養する工程、よりなる一連の操作を経た後、上記
    工程(4)〜(6)を複数回繰り返すことにより取得し
    たミドリゾウリムシ共生藻のクローンを、(7)前記培
    養液を含む液体培地に移植し振盪培養する工程による継
    代を複数回繰り返すことを特徴とするミドリゾウリムシ
    共生藻のクローンの大量培養方法。
  9. 【請求項9】 前記工程(7)の振盪培養を照明下、温
    度24±1℃で行う前記請求項8の方法。
  10. 【請求項10】 前記請求項1〜9の何れか1項によっ
    て創製されたミドリゾウリムシ共生藻のクローン。
JP12477797A 1997-04-30 1997-04-30 ミドリゾウリムシ共生藻のクローニングおよび得られた共生藻クローン Pending JPH10295363A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111548982A (zh) * 2020-04-28 2020-08-18 山东东方海洋科技股份有限公司 从污染霉菌的海带配子体克隆中获取无菌配子体的方法
CN119842535A (zh) * 2025-01-13 2025-04-18 广东工业大学 一种基于草履虫富集的单细胞蓝藻分离纯化方法及应用

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