JPH10306386A - 硬質被覆材およびそれを被覆した摺動部材ならびにその製造方法 - Google Patents

硬質被覆材およびそれを被覆した摺動部材ならびにその製造方法

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JPH10306386A
JPH10306386A JP12808197A JP12808197A JPH10306386A JP H10306386 A JPH10306386 A JP H10306386A JP 12808197 A JP12808197 A JP 12808197A JP 12808197 A JP12808197 A JP 12808197A JP H10306386 A JPH10306386 A JP H10306386A
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crn
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昭二 田中
Nobuyuki Yamashita
信行 山下
Naoki Ito
直樹 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 CrN皮膜の摺動特性、特に耐摩耗性を向上
させる。 【解決手段】 ピストンリング1の外周面にアークイオ
ンプレーティングによって硬質皮膜2を被覆する。硬質
皮膜2はCrNの結晶構造中に〔O〕が3〜20重量%
および〔C〕が0.5〜8重量%の割合で固溶してお
り、結晶粒径が1μm未満である。硬質皮膜2の硬さは
ビッカース硬さで1500〜2200の範囲にあり、膜
厚は1〜60μmが好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摺動特性特に耐摩
耗性を改良した硬質被覆材に関し、例えば内燃機関用ピ
ストンリング等の摺動部材の摺動面に施して有効なもの
である。
【0002】
【従来の技術】近年、エンジンの高出力化や排ガス規制
対応に伴って、ピストンリングの使用環境がますます苛
酷になっているため、摺動面の表面処理として従来使用
されているCrめっきや窒化処理等では耐久性能を満足
できないエンジンが多くなってきた。この状況に対処す
るため、PVD法を利用したCrN皮膜や、CrNの結
晶構造中に〔O〕を固溶した硬質皮膜(特開平6−26
5023号)あるいはCrNの結晶構造中に〔C〕を固
溶した硬質皮膜(特開平6−300130号)が提案さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】CrNの結晶構造中に
〔O〕あるいは〔C〕を固溶した硬質皮膜は、CrN皮
膜に比べて摺動特性が改良されている。しかしながら、
苛酷なエンジン条件下にあっては、未だに耐摩耗性が劣
る問題がある。
【0004】本発明の目的は、硬質被覆材としてのCr
N皮膜の摺動特性、特に耐摩耗性を向上させることにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の硬質被覆材は、
CrNの結晶構造中に〔O〕が3〜20重量%および
〔C〕が0.5〜8重量%の割合で固溶されており、ビ
ッカース硬さが1500〜2200の範囲にあり、結晶
粒径が1μm未満であることを特徴とする。
【0006】本発明の摺動部材は、上記硬質被覆材から
なる硬質皮膜が少なくとも摺動面に被覆されているもの
であり、例えば上記硬質被覆材からなる硬質皮膜が被覆
されたピストンリングは苛酷な条件下においても充分な
耐焼付性および耐摩耗性を有する。硬質被覆材の被覆は
イオンプレーティングにより行うことができる。
【0007】CrNの結晶構造中に固溶される〔O〕の
含有量が3重量%未満あるいは20重量%を越えると、
耐焼付性が低くなる。CrNの結晶構造中に固溶される
〔C〕の含有量が0.5重量%未満あるいは8重量%を
越えると、耐焼付性が低くなる。CrNの結晶構造中に
〔O〕と〔C〕の両方を上記所定の割合で固溶すると、
〔O〕あるいは〔C〕を単独で固溶している場合より
も、耐摩耗性が優れる。
【0008】なお、〔O〕の含有量は下限が3.5重量
%、上限は15重量%がより好ましい。〔C〕の含有量
の上限は5重量%がより好ましい。
【0009】硬さはHV1500未満では耐摩耗性が低
くなり、HV2200を越えると、耐焼付性が低くな
る。なお、硬さの下限はHV1800がより好ましい。
【0010】結晶粒径が1μm以上であると、摺動部の
耐脱落性および皮膜の密着性が劣る。結晶粒径は0.1
μm未満がより好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態である
ピストンリングの一部分を示す縦断面図である。本実施
形態におけるピストンリング1は鋼、鋳鉄、チタンある
いはチタン合金等で形成されている矩形断面リングであ
る。
【0012】ピストンリング1の外周面にはアークイオ
ンプレーティングによって硬質皮膜2が被覆されてい
る。硬質皮膜2はCrNの結晶構造中に〔O〕を3〜2
0重量%および〔C〕を0.5〜8重量%の割合で固溶
しており、結晶粒径が1μm未満である。CrNの結晶
は(200)面に配向している。硬質皮膜2の硬さはビ
ッカース硬さで1500〜2200の範囲にあり、膜厚
は1〜60μmが好適である。
【0013】アークイオンプレーティング法はイオンプ
レーティングの一つで、真空アーク放電を利用して、陰
極の皮膜材料を蒸気化、イオン化して、被コーティング
物の表面に皮膜を形成するものである。このアークイオ
ンプレーティング法は蒸気のイオン化率が高く、緻密で
密着性に優れた皮膜が得られる特長がある。
【0014】図2に基づいて、アークイオンプレーティ
ング装置の基本的構成を説明する。真空チャンバ10内
に、皮膜を形成する材料からなる陰極11と、皮膜が形
成される被コーティング物12が設置されている。陰極
11は真空チャンバ10の外側に設置されているアーク
供給源13に接続されており、アーク供給源13には図
示外の陽極が接続されている。被コーティング物12に
はバイアス電圧供給源14によって負のバイアス電圧が
印加されるように構成されている。真空チャンバ10に
はプロセスガスの供給源に接続されているガス入口15
と、ポンプに接続されている排気口16とが設けられて
いる。
【0015】したがって、真空チャンバ10内におい
て、陰極11と陽極との間でアーク放電が起こされる
と、アークは陰極11の表面上にアークスポットを形成
し、陰極11の表面上をランダムにかつ高速に移動す
る。アークスポットに集中するアーク電流(数十〜数百
A)のエネルギーにより、陰極11の材料は瞬時に蒸発
すると同時に金属イオン17となり、真空中に飛び出
す。一方、バイアス電圧が被コーティング物12に印加
されることにより、金属イオン17は加速され、反応ガ
ス分子18とともに被コーティング物12の表面に密着
し、緻密な皮膜が生成される。
【0016】本実施形態においては、上記アークイオン
プレーティング装置において、陰極11材料としてCr
金属が使用され、プロセスガスとして窒素源にN2
ス、酸素源にO2 ガス、炭素源にCH4 ガス、C2 4
ガスあるいはC2 2 ガスが使用されることにより、被
コーティング物12としてのピストンリングに、CrN
の結晶構造中に〔O〕と〔C〕が固溶された硬質皮膜を
被覆することができる。
【0017】〔O〕の濃度および〔C〕の濃度のコント
ロールは、イオンプレーティングの際の酸素源と炭素源
の分圧をコントロールすることによって行うことができ
る。それぞれ分圧を高くすると濃度は上昇する。
【0018】皮膜硬度のコントロールはバイアス電圧を
コントロールすることによって行うことができる。バイ
アス電圧を高くすると、硬度は上昇する。
【0019】上記硬質皮膜2の耐摩耗性を評価するため
に、往復動摩擦試験機を使用して耐摩耗性試験を行っ
た。
【0020】(1)往復動摩擦試験機 図3に往復動摩擦試験機の構成を示す。ピン状の上試験
片20は固定ブロック21により保持され、上方から油
圧シリンダ22により下向きの荷重が加えられて、下試
験片23に押接される。矩形の平盤形状の下試験片23
は可動ブロック24により保持され、クランク機構25
により往復動させられる。26はロードセルである。
【0021】(2)試験片 上試験片20:17Crマルテンサイト系ステンレス鋼
からなる直径φ8mm×長さ25mmの丸棒の一端にR
18mmの球面加工を施し、その球面上に表1に示す硬
質皮膜を施したもの。 下試験片23:長さ70mm×幅17mm×高さ14m
mの平板で材質は鋳鉄材(FC250)
【0022】(3)試験条件 ならし:50N×100cpm×5min 本試験:300N×600cpm×60min 潤滑油:軽油相当粘度油
【0023】(4)試験結果 試験結果を表1に示す。表1に示されているように、比
較例4(〔C〕のみ固溶、〔C〕:5.3%),比較例
5(〔O〕:20.3%、硬さ:2310),比較例6
(〔C〕:0.4%),比較例7(〔C〕:8.2
%),および比較例9(硬さ:HV1480)は、比較
例1(〔O〕のみ固溶、〔O〕:5.8%)より、上試
験片および下試験片の少なくともどちらか一方の摩耗量
が多い。これに対して、実施例1〜6は、上試験片(ピ
ストンリングに相当)の摩耗量が比較例1より少なく、
下試験片(シリンダに相当)の摩耗量が比較例1と同等
であるか、比較例1より少ない。
【0024】なお、比較例2(〔O〕:2.8%)は摩
耗量が少ないが、後述するように、耐焼付性が低い。比
較例3(〔O〕と〔C〕:0%)も、摩耗量は比較例1
と同等であるが、後述するように、耐焼付性が低い。比
較例8(硬さ:HV2280)も摩耗量は少ないが、後
述するように、耐焼付性が低い。
【0025】 比較例および実施例とも、硬質皮膜の結晶粒径は0.1
μm未満である。摩耗試験結果における摩耗比は、比較
例1の摩耗量を1としたときの比である。
【0026】次に、硬質皮膜2の耐焼付性を評価するた
めに、高面圧焼付試験機を使用して皮膜の耐焼付性試験
を行った。
【0027】(1)高面圧焼付試験機 図4に高面圧焼付試験機の構成を示す。ステータ30は
ロータ31側の面に円形状の凹部を備えており、この凹
部にディスク32(鋳鉄材:FC250)が固定されて
いる。ディスク32はロータ31側に突出しており、ロ
ータ31側の表面は垂直な平坦面をなしている。ディス
ク32の中心部には油孔33がステータ30の軸方向に
形成されており、この油孔33に連通する細長い油孔3
4がステータ30に斜めに形成されている。これらの油
孔33,34を通じて、ステータ30のディスク32と
後述するピン35との接触部に潤滑油が供給される。
【0028】ロータ31は水平軸を中心に回転し、ステ
ータ30側の面に円形状の凹部が形成されており、この
凹部に円盤形状のピンホルダ36がロータ31に同心状
に固定されている。ピンホルダ36のステータ30側の
面には、同一円上に等間隔をおいて4つの凹部が形成さ
れており、これらの凹部にそれぞれ試験片としてのピン
35(φ8mm)が挿入されて固定されている。各ピン
35はピンホルダ36の表面からステータ30側に水平
に突出されている。
【0029】各ピン35の突出端面には表2に示す硬質
皮膜が形成されており、この端面がステータ30のディ
スク32面に接触している。なお、比較例および実施例
とも、表1と表2に示す番号は対応しており、同じ番号
のものは同じ皮膜である。
【0030】したがって、ステータ30に荷重Pをかけ
てディスク32をピン35に押接し、ピン35とディス
ク32の接触部分に油孔33,34を通じて潤滑油を供
給しながらロータ31を回転させる。
【0031】このロータ31の摺動速度を一定にして、
荷重Pを変動していったとき、ピン35が焼き付いたと
きの焼付発生荷重を測定した。
【0032】(2)試験条件 潤滑油 :日石ハイディーゼルS3 10W エンジ
ンオイル 油温 80℃ 荷重(P):初期196Nから3分間隔で98Nずつス
テップアップ 摺動速度 :8m/s 一定 温度 :室温
【0033】(3)試験結果 試験結果を表2に示す。表2に示されているように、比
較例2,3,7,8は比較例1より耐焼付性が劣る。実
施例1〜6は比較例1と同等の耐焼付性を有している。
【0034】 焼付試験結果における焼付面圧比は、比較例1の焼付面
圧を1としたときの比である。
【0035】次に、実機試験結果について説明する。表
3に示す硬質皮膜を外周面に被覆したトップリングを、
φ93mmの直列4気筒4サイクルディーゼルエンジン
に組み込み、全負荷の条件で300時間の耐久試験を行
った。なお、比較例および実施例とも、表1と表3に示
す番号は対応しており、同じ番号のものは同じ皮膜であ
る。
【0036】試験結果を表3に示す。表3に示されてい
るように、実施例1〜6は比較例1よりもトップリング
の摩耗が少ない。
【0037】 実機試験結果における摩耗比は、比較例1の摩耗量を1
としたときの比である。
【0038】以上のように、実施例の硬質皮膜は、従来
の硬質皮膜の中で耐焼付性および耐摩耗性が優れている
皮膜(CrNの結晶構造中に〔O〕を固溶)と耐焼付性
が同等であり、耐摩耗性はより優れている。
【0039】なお、上記実施形態では、ピストンリング
1の外周面に硬質皮膜2を被覆した例を示したが、ピス
トンリングの外周面と上下面とに硬質皮膜を被覆しても
よいし、さらには、ピストンリングの外周面と上下面と
内周面とに硬質皮膜を被覆するようにしてもよい。
【0040】また、上記実施形態ではピストンリングに
硬質皮膜を被覆した例を示したが、硬質皮膜はピストン
リングに被覆するに限らず、他の摺動部材、例えば内燃
機関の動弁系部品であるタペットやカム等の少なくとも
摺動面に被覆すれば有効である。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の硬質被覆
材は耐焼付性に優れるとともに、耐摩耗性が特に優れて
いる。したがって、この硬質被覆材を摺動部材例えばピ
ストンリングに被覆することによって、苛酷な条件下に
おいても充分な耐久性を具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるピストンリングの一
部分を示す縦断面図である。
【図2】アークイオンプレーティング装置の構成を説明
するための図である。
【図3】往復動摩擦試験機の構成を示す図である。
【図4】高面圧焼付試験機の構成を示す縦断面図であ
る。
【符号の説明】
1 ピストンリング 2 硬質皮膜 10 真空チャンバ 11 陰極 12 被コーティング物 13 アーク供給源 14 バイアス電圧供給源 15 ガス入口 16 排気口 17 金属イオン 18 反応ガス分子 20 上試験片 21 固定ブロック 22 油圧シリンダ 23 下試験片 24 可動ブロック 25 クランク機構 26 ロードセル 30 ステータ 31 ロータ 32 ディスク 33,34 油孔 35 ピン 36 ピンホルダ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CrNの結晶構造中に〔O〕が3〜20
    重量%および〔C〕が0.5〜8重量%の割合で固溶さ
    れており、ビッカース硬さが1500〜2200の範囲
    にあり、結晶粒径が1μm未満であることを特徴とする
    硬質被覆材。
  2. 【請求項2】 前記CrNの結晶が(200)面に配向
    していることを特徴とする請求項1記載の硬質被覆材。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の硬質被覆材から
    なる硬質皮膜が少なくとも摺動面に被覆されていること
    を特徴とする摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記硬質皮膜が被覆されている部材がピ
    ストンリングであることを特徴とする請求項3記載の摺
    動部材。
  5. 【請求項5】 前記硬質皮膜の厚さが1〜60μmの範
    囲にあることを特徴とする請求項3または4記載の摺動
    部材。
  6. 【請求項6】 請求項1または2記載の硬質被覆材をイ
    オンプレーティングにより少なくとも摺動面に被覆する
    ことを特徴とする摺動部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2001033065A1 (fr) * 1999-10-29 2001-05-10 Nippon Piston Ring Co., Ltd. Combinaison chemise de cylindre et bague de piston pour moteur a combustion interne
JP2008014228A (ja) * 2006-07-06 2008-01-24 Teikoku Piston Ring Co Ltd 内燃機関用ピストンリング
JP2008274435A (ja) * 2007-05-04 2008-11-13 General Electric Co <Ge> 保護皮膜を有する物品及びその方法
CN103917686A (zh) * 2011-05-27 2014-07-09 马勒发动机零部件巴西有限公司 用于内燃机的具有至少一个滑动面的元件

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