JPH10324920A - 抗菌性、加工性および耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

抗菌性、加工性および耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法

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JPH10324920A
JPH10324920A JP13527997A JP13527997A JPH10324920A JP H10324920 A JPH10324920 A JP H10324920A JP 13527997 A JP13527997 A JP 13527997A JP 13527997 A JP13527997 A JP 13527997A JP H10324920 A JPH10324920 A JP H10324920A
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JP
Japan
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less
stainless steel
ferritic stainless
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JP13527997A
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Hiroyuki Matsuyama
宏之 松山
Shinji Tsuge
信二 柘植
Hiroyuki Miyamoto
博之 宮本
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】抗菌性、冷間加工性および耐食性に優れるフェ
ライト系ステンレス鋼板を製造する。 【解決手段】重量%で、C:0.03%以下、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.
1〜1.0%、P:0.03% 以下 、S:0.01%以下、Cr:16〜25%、Mo:0
〜2.0%、Ti:0〜0.8%、Nb:0〜0.8%、Zr:0〜0.8%、N:0.03%以
下、CとNの合計で0.04%以下、Cu:1.0%を超え5.0%以下、Ni:
0.1〜5.0%、Cu(%)≧Ni(%)≧0.1×Cu(%)、残部Feのフェライト
系ステンレス鋼の熱延板または冷延板に600〜1000で1〜20時
間保持する焼鈍を施した後、酸洗し、冷間圧延を施し、さ
らに露点が-60〜-40℃のアンモニア分解カ゛ス雰囲気中にて900
〜1000℃で20×t〜180×t 保持する仕上げ焼鈍を施す フ
ェライト系ステンレス鋼板の製造方法。ただしtは、仕上げ焼鈍を
施す前の板厚(単位はmm)である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌性、加工性お
よび耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造
方法に関し、より詳しくは、手すり、金属容器、厨房器
具、金属食器、浴槽、家庭用電気器具および便座などの
素材として用いられるフェライト系ステンレス鋼板の製
造方法に関する。特に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、MR
SA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を滅菌する効果
を具備することが期待される器具の素材として好適なフ
ェライト系ステンレス鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼板は、清潔感
のある美麗な金属光沢、長期にわたる良好な耐食性、高
温での優れた耐酸化性および手入れのしやすさなどを備
えた素材である。そのために、フェライト系ステンレス
鋼板は、流し台、なべおよびやかんなどの厨房器具、
皿、フォークおよびスプーンなどの食器類、または、良
好な衛生状態が厳しく要求される病院および食堂の機器
類など多種多様の用途に利用されている。最近、病院で
のMRSA院内感染が大きな社会問題になるにつれて、
器具類の素材自体が抗菌性を有していることが特に望ま
れている。
【0003】元来、金属素材そのものは、多かれ少なか
れ菌類の増殖と成長を抑制する効果を持っている。例え
ば、衛生学伝染病学会誌第25巻(1929年)の第9
13ページの「微生物に及ぼす金属および金属イオンの
影響に関する研究」には、滅菌効果のある金属素材とし
て、水銀、銀、銅、亜鉛、鉛およびビスマスなどが例示
してあり、ゼオライトおよびガラスなどの無機質担体に
これらの金属を担持させた抗菌性無機材料が開示されて
いる。
【0004】また、日本規格協会出版の「銅のおはな
し」(1985年11月15日第1版第1刷発行)の第
92ページには、「微量銅の殺菌作用」と称して、18
93年に植物学者のネーゲリーが微量の銅がアオミドロ
を死滅させることを発見したことが紹介されている。ま
た、同刊行物には、真鍮製の電車のつり手に細菌がいな
かったこと、培養器のシャーレの中に入れた青銅製の1
0円硬貨と黄銅製の5円硬貨の下ではチフス菌が死滅し
たことが紹介されている。他方、同刊行物には、アルミ
ニウムとステンレス鋼の表面では大腸菌、ブドウ状球菌
アウレス、連鎖状球菌グループDおよびグラム陰性のシ
ュードモナス種のいずれもが著しく成長し増殖したこと
が紹介されており、ステンレス鋼そのものには菌類の増
殖および成長を抑制する効果も死滅させる効果もないこ
とが記載されている。
【0005】ステンレス鋼材に抗菌性を持たせる方法と
して、特開平8−60303号公報に、交番電解処理法
により貴な電位をCuを含有するフェライト系ステンレ
ス鋼材に印加して、表面のCuを溶出させ、その後卑な
電位を印加することによりフェライト系ステンレス鋼材
の表面にCuを析出させることで抗菌性を持たせる方法
が開示されている。しかし、交番電解処理法は、手間が
かかる上に電析によりCuをステンレス鋼の表面に存在
させているために、表面をワイヤーブラシやスチールタ
ワシなどでこすると表面のCuが削られて、抗菌性が低
下するという欠点がある。さらに、この方法では、鋼材
中に多量のCuが固溶したままで存在しているために極
めて硬質になり、ユーザーが任意の製品形状に冷間加工
する際に割れが起こる問題もある。
【0006】さらに、Cuが表面に露出していると通常
のフェライト系ステンレス鋼板と比較して耐食性が劣
る。これは、溶解が始まる電位が純Cuの近くまで低下
するからである。表面にCuが露出しているとまず、卑
なCuで溶解が始まり、これが起点となってフェライト
相が低電位で溶解するために耐食性が悪化するのであ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、抗菌
性を備え、しかも冷間加工性および耐食性に優れるフェ
ライト系ステンレス鋼板の製造方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次のフ
ェライト系ステンレス鋼板を製造する方法にある。
【0009】『重量%で、C:0.03%以下、Si:
0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.
03%以下、S:0.01%以下、Cr:16〜25
%、Mo:0〜2.0%、Ti:0〜0.8%、Nb:
0〜0.8%、Zr:0〜0.8%、N:0.03%以
下、CとNの合計で0.04%以下、Cu:1.0%を
超え5.0%以下、Ni:0.1〜5.0%を含有し、
かつCu(%)≧Ni(%)≧0.1×Cu(%)の条
件を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
フェライト系ステンレス鋼の熱延板または冷延板に60
0〜950℃で1〜20時間保持する焼鈍を施した後、
酸洗し、冷間圧延を施し、さらに露点が−60〜−40
℃のアンモニア分解ガス雰囲気中にて900〜1000
℃で20×t〜180×t秒間保持する仕上げ焼鈍を施
すことを特徴とする抗菌性、加工性および耐食性に優れ
るフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。』 ただしtは、仕上げ焼鈍を施す前の板厚(単位はmm)
である。
【0010】
【発明実施の形態】本発明のフェライト系ステンレス鋼
板の製造方法は、抗菌性を備えるのに必要なCuを1.
0重量%を超え5.0重量%(以下、化学組成の説明で
用いる%は重量%を意味する)以下含有するフェライト
系ステンレス鋼板を素材とし、Cuを従来のフェライト
系ステンレス鋼よりも多量に含有するがために悪化する
冷間加工性と耐食性を特定の中間焼鈍と仕上げ焼鈍を施
すことにより向上させることを特徴としている。
【0011】以下、本発明方法を具体的に説明する。
【0012】(1)本発明方法の素材となるフェライト
系ステンレス鋼板の化学組成 Cuは、フェライト系ステンレス鋼板の抗菌効果を発現
させるために最も重要な元素である。Cuは、後述する
Cuの相を鋼板の表面に露出させて抗菌性を得るために
必要不可欠である。鋼板を実用に供した場合、空気中の
水分などにより表面のCuからわずかにCuイオンが溶
出する。このCuイオンが、鋼板の表面に付着した大腸
菌、黄色ブドウ球菌、MRSAなどの菌類の成長、増殖
を抑制し、減菌、殺菌などの抗菌効果を持つ。
【0013】これらの抗菌効果を発現させるには、1.
0%を超える量のCuを含有させる必要がある。しか
し、Cu含有量が5.0%を超えると上記の効果が飽和
するばかりか、製造コストの上昇、熱間圧延での割れの
発生などの問題が生じ、さらにCr含有量によっては鋼
がフェライトとオーステナイトの二相になり、冷間加工
性が低下する。したがってCuの含有量は1.0%を超
え5.0%以下とした。Niは、フェライト系ステンレ
ス鋼板の熱間加工性を改善するために極めて重要な元素
である。特に本発明方法で製造するフェライト系ステン
レス鋼板は、Cuを従来よりも多量に含有しているの
で、熱間加工の際にカッパーチェッキングという割れ疵
が生じやすくなる。そこで本発明方法では、Niを0.
1〜5.0%含有させ、かつCu(%)≧Ni(%)≧
0.1×Cu(%)の条件を満たすように規定した。こ
の条件を満たすことによってCu系の金属間化合物の融
点を高めることができ、鋼板端面での割れと表面の疵を
低減することができる。上式で規定されるNiの含有量
の下限値は特に重要であって、0.1×Cu(%)以上
という条件を満たすことにより、熱間での加工性を改善
する効果がある。Cu(%)≧Ni(%)とするのは、
必要量以上のNiを添加すると製造コストを上昇させる
ばかりか、鋼がフェライトとオーステナイトの二相にな
り、冷間加工性を低下させるからである。
【0014】鋼中の固溶C、Nは、冷間加工性を著しく
悪化させる上に溶接した際の溶接熱影響部にCrの炭化
物、窒化物および炭窒化物を生成させ、耐粒界腐食性を
悪化させる。したがって含有量をできるだけ低減するの
が好ましく、それぞれ0.03%以下で、CとNの合計
含有量を0.04%以下に限定する。より好ましいの
は、CとNをそれぞれ0.01%以下で、CとNの合計
含有量を0.015%以下とすることである。
【0015】Siは脱酸剤として用いる元素である。こ
の効果を得るためには0.1%以上含有させる必要があ
る。しかし1.0%を超えると鋼板を硬質化させる。し
たがって、含有量を0.1〜1.0%に限定する。好ま
しくは0.1〜0.5%である。
【0016】MnもSiと同様に脱酸剤として用いられ
る元素である。また、Mnは鋼中の有害元素であるSを
固定する作用も持つ。これらの効果を得るためには、
0.1%以上含有させる必要がある。しかし、1.0%
を超えるとその作用が飽和するばかりか、鋼板を硬質化
させる。したがって、含有量を0.1〜1.0%と限定
する。
【0017】Pは、鋼の精錬時に不可避的に混入する元
素である。Pの含有量が0.03%を超えると鋼板の熱
間加工性を悪化させる。したがって、含有量を0.03
%以下に限定した。望ましくは、0.015%以下であ
る。ただし、低P化は精錬コストが高くなるので量産鋼
においては0.025%以下を目標とするのが現実的で
ある。
【0018】SもPと同様に鋼の精錬時に不可避的に混
入する元素である。Sの含有量が0.01%を超えると
Pと同様に熱間加工性を悪化させる。したがって、含有
量を0.01%以下とした。より好ましいのは、0.0
01%以下である。
【0019】Crは、本発明のフェライト系ステンレス
鋼板の耐食性を確保する上でもっとも重要な元素であ
る。表面における発銹を抑制するためには、16%以上
含有させる必要がある。しかし、含有量が25%を超え
ると、耐食性を改善させる効果が飽和するばかりか、鋼
板を硬質化させる。したがって、含有量を16〜25%
に規定した。
【0020】Moは必須ではないが、耐食性をより改善
するために添加してもよい元素である。その効果を一層
得るためには、0.5%以上含有させるのが好ましい。
ただし、2.0%を超えて含有させても耐食性を改善す
る効果が飽和するばかりでなく、鋼板を硬質化させる。
したがって、含有量を0〜2.0%とした。
【0021】Nb、TiおよびZrは、添加しなくても
よい元素である。添加すれば、鋼中のCおよびNと結合
して炭化物、窒化物または炭窒化物となり、冷間加工性
を向上させる効果と溶接部の耐食性を向上させる効果を
持つ。これらの効果を十分に得るためには、Nb、Ti
およびZrの一種以上を0.05%以上含有させるのが
好ましい。しかし、各々の元素を0.8%を超えて含有
させると、上記効果が飽和するばかりでなく、鋼板を硬
質化させる。したがって、含有量をそれぞれ0〜0.8
%とした。
【0022】(2)中間焼鈍、酸洗および冷間圧延 本発明方法では、上記組成のフェライト系ステンレス鋼
に通常の熱間圧延を施して厚さ2〜5mm程度とした鋼
板、または2回冷間圧延を施す場合は1回目の冷間圧延
で厚さ1〜2mm程度とした鋼板に、600〜950℃
で1〜20時間保持する中間焼鈍を施す。この中間焼鈍
は、鋼板に主に抗菌性と加工性を付与することを目的と
して行う。
【0023】600〜950℃で1〜20時間保持する
ことによって、固溶限を超えた量のCu原子が鋼板中や
鋼板表面にランダムに析出し、さらに時間の経過と共に
大きく成長する。このCuが析出して成長したものを本
明細書では、『Cuの相』という。
【0024】Cuの相は、鋼板中に存在するものもあれ
ば、鋼板の表面に露出しているものもある。鋼の表面に
露出しているCuの相のCu原子が溶出してCuイオン
になった場合に抗菌性を発揮する。また、この中間焼鈍
で鋼板中に固溶するCuをCuの相として析出させるこ
とにより、鋼板中に固溶するCu量が減少し、鋼板が軟
質化するので、加工性が向上する。
【0025】加熱温度が600℃未満ではCuの相が微
細に析出し、逆に鋼板を硬質化させる。一方、950℃
を超える温度では、一旦析出したCuが再固溶してしま
い、抗菌性が発現しない。望ましくは、800℃以上、
900℃以下の温度で熱処理を施す。1時間未満の熱処
理では、Cuが析出したとしても、成長したCuの相に
はなりにくい。20時間を超える熱処理を行っても、C
uの相の成長は終了しており、加熱のためのエネルギー
が無駄になる。
【0026】加熱後の冷却については、特に制限はな
く、炉冷、空冷および水冷などいろいろな冷却方法を用
いることができる。冷却速度は、10〜100℃/秒と
するのが望ましい。
【0027】Cuの相の大きさや形状は、熱処理温度ま
たは熱処理時間によって異なり、低温で短時間の熱処理
を施せば、直径が10nm程度以上の粒状となって析出
する。高温で長時間の熱処理を施せば、長さが2μm程
度以下の棒状となって析出する。
【0028】抗菌性を一層発揮させるためには、Cuの
相を直径0.5〜1μmの大きさで、鋼の表面に均一に
1個/μm2 以上の密度で析出させるのが望ましい。
【0029】Cuの相は、Cuのみから構成されるもの
もあるが、Cuの他に金属間化合物を形成するNi、T
i、Fe、Si、PまたはSを含むものであっても良
い。
【0030】中間焼鈍の雰囲気は、大気中などの酸化性
雰囲気または不活性ガス中などの非酸化性雰囲気のいず
れでもよいが、大気中などの酸化雰囲気中で行う方が下
記の理由により望ましい。大気中などの酸化雰囲気中で
中間焼鈍を施すと、前記のCuの相の析出に加えて、鋼
板の表面にFeやCrの酸化スケールが生成する。この
酸化スケールと母材との界面では、Cuの濃度が相対的
に高くなっている。従って、中間焼鈍後に酸洗を行って
酸化スケールを除去すれば、鋼板の表面には、Cuの濃
度の高い層が現れる。本発明方法で使用する鋼は、1.
0%を超えて5.0%までの多量のCuを含有させてい
るので、Cuを微量しか含有していない従来のフェライ
ト系ステンレス鋼の酸洗処理後の表面の組成と比べて、
Cu濃度が著しく高くなっている。本明細書では、酸洗
後に表面にCuの濃度が高い層が形成されていることを
『表面にCuの富化層を備える』状態と定義する。
【0031】Cuの富化層のCuが、前述したCuの相
に加えて抗菌性をより一層発揮させる。
【0032】酸洗処理の条件については、使用する酸の
種類を除いては、特殊ものでなくともよく、通常のステ
ンレス鋼材の表面を酸洗する条件でよい。酸洗に使用す
る酸は、例えば、硝酸と弗酸の混合液、硫酸等がある。
【0033】酸洗後に行う冷間圧延は、所望の厚さの鋼
板を得るために行うものであって、その条件には特段の
制約はない。
【0034】(3)仕上げ焼鈍 本発明方法における仕上げ焼鈍は、主に鋼板の耐食性と
加工性を向上させる目的で行う。
【0035】これまでに述べた工程で製造した鋼板は、
表面にCuの相またはCuの相とCuの富化層の両方が
露出している。前述のようにCuが露出しているフェラ
イト系ステンレス鋼板は、Cuを含有しない従来のフェ
ライト系ステンレス鋼板と較べて耐食性に劣る。
【0036】本発明方法では、Cuの相またはCu富化
層を表面に露出させる工程の後に、露点が−60〜−4
0℃の還元性のアンモニア分解ガス雰囲気中において9
00〜1000℃で20×t〜180×t秒間保持する
仕上げ焼鈍を施すことにより、耐食性を向上させる。t
は、仕上げ焼鈍前の鋼板の厚さを単位mmで表した値で
ある。
【0037】仕上げ焼鈍を施すことにより、鋼板の表面
に露出しているフェライト相の上に不動態皮膜が形成さ
れる。露出したCuの相やCu富化層の上には、不動態
皮膜は形成されないが、フェライト相は不動態皮膜によ
り保護されているために、この処理を施さない鋼板より
も耐食性が優れている。
【0038】露点が−40℃を超えるアンモニア分解ガ
スを焼鈍雰囲気として使用すると、フェライト相上に形
成される不動態皮膜が厚くなりすぎて、テンパ−カラ−
と呼ばれる色が鋼板表面に表れ、光沢が失われるだけで
なく、Cuの相の表面にも不動態皮膜が形成されるの
で、抗菌性が悪化する。露点を−60℃以下での焼鈍は
製造コストの上昇を招く。
【0039】鋼板を再結晶させて良好な加工性を得るた
めには、900℃以上の均熱温度が必要である。一方、
1000℃を超えるとCuの相が固溶し、抗菌性が損な
われる。また均熱温度がこの範囲であっても、保持時間
が20×t秒間未満では、不動態皮膜が形成されない。
一方、180×t秒間を超えると析出させていたCuの
相が固溶し、抗菌性が損なわれる。
【0040】
【実施例】本発明方法および本発明方法で規定する条件
から外れる方法を実施してフェライト系ステンレス鋼板
を製造した。
【0041】(実施例1)表1に示す組成の鋼を真空溶
解にて溶製し、熱間圧延を施して板厚4.5mmの熱延
板とした。次に大気中において800℃で5時間保持す
る中間焼鈍を行い、液温35℃の8%硝酸と3%弗酸の
混合液に2.5分間浸漬する酸洗を行った後、冷間圧延
を施して板厚0.6mmの冷延板とした。さらにその
後、露点を−50℃に制御したアンモニア分解ガスの雰
囲気中で温度と時間を変化させた仕上げ焼鈍を施してフ
ェライト系ステンレス鋼板を製造した。これらの鋼板の
抗菌性、加工性および耐食性を調査した。
【0042】
【表1】
【0043】(1)抗菌性 抗菌性の調査は、次のように実施した。
【0044】下記2種類の供試菌をペプトン培地にて増
菌後、滅菌リン酸緩衝生理食塩水で希釈し菌液を調製
し、各鋼板から50mm角に切り出した試験片に、供試
菌液を1ミリリットル塗布し、25℃で24時間静置
後、菌液を拭き取り希釈液中に振り出した。所定量の振
り出し液を計測用培地に混釈し、37℃で48時間培養
を行い、発生した菌の集落数を計測した。発生した菌の
集落数が50以下の鋼板を菌の増殖を抑制する優れた抗
菌性をもつものと評価した。
【0045】 供試菌 − Escherichia coli IFO 3301(大腸菌) 供試菌 − Staphylococcus aureus(黄色ぶどう球
菌) 調査した抗菌性の結果および仕上げ焼鈍の条件を表2お
よび表3に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】本発明方法で製造した鋼板(表では「発明
例」と示す)は、培養後の発生集落数が全て50以下で
優れた抗菌性を示した。一方、本発明方法で規定する鋼
組成、仕上げ温度または保持時間のいずれかが本発明方
法で規定する条件から外れる方法で製造した鋼板(表で
は比較例と示す)には、菌の発生集落数が50を超えて
いるものがあった。Cuの含有量が規定量に満たなけれ
ば、抗菌性を発揮していない。仕上げ焼鈍の温度が10
00℃を超えるか、または保持時間が180×t(0.
6mm)、即ち108秒間を超えると析出していたCu
が再固溶し、抗菌性が低下していた。
【0049】(2)加工性 上記の仕上げ焼鈍まで実施して製造した鋼板からJIS
13B号引張試験片を切り出して引張試験を実施し、
伸びの値により加工性を評価した。20%以上の伸びを
示した鋼板を加工性が良好と判断した。測定した伸びの
値を表2および表3に示した。
【0050】発明例は、全て20%以上の伸びを示し、
良好な加工性を持つが、比較例は、伸びが20%に満た
ないものがあった。Cuの含有量が規定量よりも多けれ
ば、加工性が不良となっている。仕上げ焼鈍の温度が9
00℃未満では、十分に再結晶組織とならないので加工
性が悪化していた。また、仕上げ焼鈍が1000℃を超
えるか、保持時間が上記の108秒を超える場合にはC
uが固溶し、加工性が悪化していた。
【0051】(3)耐食性 上記の仕上げ焼鈍まで実施して製造した鋼板から10×
10mmの試験片を切り出し、JIS G 0577に
準拠して孔食電位を測定し、電位が0.15VvsS.C.
E以上のものを耐食性に優れるものと評価した。
【0052】発明例は、全て0.15VvsS.C.E以上
の孔食電位を示し、良好な耐食性を有することが分かっ
た。しかし、仕上げ焼鈍の温度が900℃未満のもの
は、電位が0.15VvsS.C.E未満であり、耐食性に
劣っていた。これは、不動態皮膜がフェライト相を十分
に覆うほど形成されなかったからである。
【0053】(実施例2)上記実施例1で作製した板厚
4.5mmの熱延板に、大気中において温度と時間を変
化させた中間焼鈍を施し、実施例1と同じ硝酸と弗酸の
混合液で酸洗後、冷間圧延を施して板厚0.6mmの冷
延板を作製した。さらにその後、露点を−50℃に制御
したアンモニア分解ガスの雰囲気中において950℃で
72秒間保持する仕上げ焼鈍を施してフェライト系ステ
ンレス鋼板を製造した。これらの鋼板の抗菌性および加
工性を調査した。
【0054】(1)抗菌性 前記(実施例1)の抗菌性の調査と同じ条件で、抗菌性
を調査した。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】発明例は、培養後の発生集落数が全て50
以下で優れた抗菌性を示した。一方、比較例は、菌の発
生集落数が50を超えているものがあった。Cuの含有
量が規定量に満たなければ、抗菌性を発揮していない。
中間焼鈍の仕上げ焼鈍の温度が600℃未満か、保持時
間が1時間に満たなければ、Cuの析出が不十分であ
り、抗菌性を発揮していないものがある。中間焼鈍の温
度が950℃を超えると析出していたCuが再固溶し、
抗菌性が低下していた。
【0057】(2)加工性 前記(実施例1)の加工性の調査と同じ条件で、加工性
を調査した。結果を表4に示す。
【0058】発明例は、全て20%以上の伸びを示し、
良好な加工性を持つことが分かったが、比較例は、伸び
が20%に満たないものがあった。Cuの含有量が規定
量よりも多ければ、加工性は不良である。加熱温度が6
00℃未満ではCuの相が微細に析出し、鋼板を硬質化
させていた。950℃を超える温度では、一旦析出した
Cuが再固溶し、加工性が悪化していた。
【0059】
【発明の効果】本発明の製造方法によって得られるフェ
ライト系ステンレス鋼板は、優れた抗菌性と加工性を有
しており、しかも実用の材料として使用できる耐食性を
備えている。本発明のフェライト系ステンレス鋼板を素
材として使用することによって、一般家庭の金属食器、
厨房器具、浴槽、家庭用電気器具、また、病院、食堂な
どの機器類の衛生状態を大幅に改善することができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.03%以下、Si:
    0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:0.
    03%以下、S:0.01%以下、Cr:16〜25
    %、Mo:0〜2.0%、Ti:0〜0.8%、Nb:
    0〜0.8%、Zr:0〜0.8%、N:0.03%以
    下、CとNの合計で0.04%以下、Cu:1.0%を
    超え5.0%以下、Ni:0.1〜5.0%を含有し、
    かつCu(%)≧Ni(%)≧0.1×Cu(%)の条
    件を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    フェライト系ステンレス鋼の熱延板または冷延板に60
    0〜950℃で1〜20時間保持する焼鈍を施した後、
    酸洗し、冷間圧延を施し、さらに露点が−60〜−40
    ℃のアンモニア分解ガス雰囲気中にて900〜1000
    ℃で20×t〜180×t秒間保持する仕上げ焼鈍を施
    すことを特徴とする抗菌性、加工性および耐食性に優れ
    るフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。ただしt
    は、仕上げ焼鈍を施す前の板厚(単位はmm)である。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011036351A1 (fr) * 2009-09-24 2011-03-31 Arcelormittal Investigación Y Desarrollo Sl Acier inoxydable ferritique a hautes caracteristiques d'emboutissabilite
CN105886894A (zh) * 2016-04-18 2016-08-24 南通盛立德金属材料科技有限公司 一种超级铁素体含铜抗菌不锈钢

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