JPH1046298A - 耐食性に優れた内燃機関のバルブシート用耐摩耗性焼結合金およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた内燃機関のバルブシート用耐摩耗性焼結合金およびその製造方法

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JPH1046298A
JPH1046298A JP22076896A JP22076896A JPH1046298A JP H1046298 A JPH1046298 A JP H1046298A JP 22076896 A JP22076896 A JP 22076896A JP 22076896 A JP22076896 A JP 22076896A JP H1046298 A JPH1046298 A JP H1046298A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 掃鉛剤、鉛化合物への耐食性、適当な耐摩耗
性を有する従来より安価な内燃機関用バルブシート材を
提供できるようにする。 【解決手段】 耐摩耗性焼結合金は、全体組成が、重量
比で、W:2.75〜5.79%、Ni:1.58〜1
3.5%、Cr:0.75〜7.0%、Mo:0.21
〜2.2%、Si:0.015〜0.3%、C:0.5
5〜2.0%、および残部Feおよび不可避不純物から
なり、その金属組織が、 ベイナイト相もしくはベイ
ナイトとソルバイトの混合相と、 主としてCr炭化
物よりなる硬質相の核を有し、その核を取り囲むNi、
Cr濃度の高いオーステナイト相もしくはオーステナイ
トとフェライトの混合相と、 前記の周囲をさらに
取り囲むマルテンサイト相、の上記〜からなると共
に、微細なW炭化物が上記硬質相をのぞく基地中に均一
に分散する組織を呈している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に、内燃機関のバル
ブシートに好適な耐摩耗性焼結合金およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンの高性能化、高出力化に
対応するためバルブシート用焼結合金は高温耐摩耗性、
高温強度を求められ、本出願人も特許第1043124
号で登録された製法によるバルブシート用焼結合金等を
提供してきた。さらに、近年のより一層の高性能化、高
出力化、特に、希薄燃焼化による燃焼温度の高温化に対
応し、より高温耐摩耗性、高温強度に優れた特開昭62
−10244号や特開平7−233454号等に開示さ
れた焼結合金を開発してきた。しかし、これらの材料は
高温時の性能を向上させるため、基材成分中にCo等の
高価な元素を多用したため高価な材料となっている。
【0003】また、高温環境下の高性能内燃機関で有鉛
ガソリンを対象とした地区では酸化鉛のみならず、有鉛
ガソリン中に含まれる掃鉛剤(鉛成分を排気ガス中に効
果的に排出することを助ける成分および硫酸鉛、臭化
鉛、塩化鉛等の鉛化合物)のバルブおよびバルブシート
への付着による腐食摩耗が生じ、極端な耐久性の低下を
示す傾向が見られ、掃鉛剤や鉛化合物に対する耐食性も
求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、最近では、エ
ンジン設計技術の向上により特開昭62−10244号
や特開平7−233454号等に開示された材料等の如
く高性能かつ高価な材料でなくてもバルブシートとして
使用できるようになっている。特に、インテーク側のバ
ルブシートは環境温度がエギゾースト側よりも低いた
め、特開昭62−10244号や特開平7−23345
4号等に開示された材料等では品質過剰となっている。
また、最近の自動車開発は、より一層の高性能化を目指
す性能重視の自動車開発から、コストパフォーマンスの
高い、安価な自動車を開発する経済性重視の方向に変化
している。したがって、これからのバルブシート用焼結
合金としては、従来の過度の耐摩耗性を有するものでは
なく、適度な耐摩耗性を有し、かつ、安価であることが
求められるようになってきている。
【0005】また、内燃機関の燃料事情別にバルブシー
トの材料を使い分けることは生産ラインを煩雑にし、コ
ストアップの原因になるため、現在の自動車の国際商品
の性格上、仕向け地毎に異なる諸条件に対しても広範囲
に対応できるバルブシート材料が望まれる。
【0006】本発明は、上記の問題点を解決すべく、掃
鉛剤、鉛化合物への耐食性、適当な耐摩耗性を有し、従
来より安価な内燃機関用バルブシート用焼結合金および
その製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の内、第1発明の耐摩耗性焼結合金は、全体組成
が、重量比で、W:2.75〜5.79%、Ni:1.
58〜13.5%、Cr:0.75〜7.0%、Mo:
0.21〜2.2%、Si:0.015〜0.3%、
C:0.55〜2.0%、および残部Feおよび不可避
不純物からなり、その金属組織が、図1に示す金属組織
の模式図の如く、 ベイナイト相もしくはベイナイト
とソルバイトの混合相と、 主としてCr炭化物より
なる硬質相の核を有し、その核を取り囲むNi、Cr濃
度の高いオーステナイト相もしくはオーステナイトとフ
ェライトの混合相と、 前記の周囲をさらに取り囲
むマルテンサイト相、の上記〜からなると共に、微
細なW炭化物が上記硬質相をのぞく基地中に均一に分散
する組織を呈している。第2発明の焼結合金は、上記第
1発明合金に、さらに、重量比で、V:2.12%以下
を含み、微細なV炭化物が硬質相をのぞく基地中に、さ
らに、均一に分散する組織を呈している。具体的には、
重量比で、W:2.75〜5.79%、V:2.123
%以下、Ni:1.58〜13.5%、Cr:0.75
〜7.0%、Mo:0.21〜2.2%、Si:0.0
15〜0.3%、C:0.55〜2.0%、および残部
Feおよび不可避不純物からなり、その金属組織が、図
1の模式図の如く、 ベイナイト相もしくはベイナイ
トとソルバイトの混合相と、 主としてCr炭化物よ
りなる硬質相の核を有し、その核を取り囲むNi、Cr
濃度の高いオーステナイト相もしくはオーステナイトと
フェライトの混合相、 前記の周囲をさらに取り囲
むマルテンサイト相、の上記〜からなると共に、微
細なW炭化物およびV炭化物が上記硬質相をのぞく基地
中に均一に分散する組織を呈している。
【0008】第3発明の焼結合金は、上記第1もしくは
第2発明の全体組成中に、さらに、重量比で、Mn:
0.762%以下およびS:0.438%以下を含み、
前記硬質相をのぞく基地中に、1.2%以下のMnS粒
子が分散している組織を呈する。第4発明の焼結合金
は、上記第1もしくは第2発明の耐摩耗性焼結合金にお
いて、前記焼結合金の気孔中に、アクリル樹脂、鉛また
は鉛合金、銅または銅合金の何れかが分散している。
【0009】また、上記第1発明の焼結合金の製造方法
としては、重量比で、W:3.5〜6.0%、および残
部Feおよび不可避不純物からなるFe基合金粉末に、
Cr:25〜35%、Mo:7〜11%、Si:0.5
〜1.5%、C:1.5〜3.0%、および残部Niお
よび不可避不純物よりなるNi基合金粉末:3〜20
%、および黒鉛粉末:0.5〜1.4%を配合した混合
粉末を用いることを要部としている。上記第2発明の焼
結合金の製造方法としては、上記第1発明の製造方法に
おけるFe基合金粉末中に、さらに、重量比で、V:
2.2%以下を含むことを要部としている。
【0010】上記第3発明の焼結合金の製造方法として
は、上記第1もしくは第2発明の製造方法におけるFe
基合金粉末中に、さらに、重量比で、Mn:0.790
%以下、S:0.454%以下を含むことを要部として
いる。また、上記第3発明の焼結合金の他の製造方法と
しては、上記第1もしくは第2発明の製造方法における
混合粉末中に、さらに、重量比で1.2%以下のMnS
粉末を添加することを要部としている。上記第4発明の
焼結合金の製造方法としては、上記第1〜3発明の製造
方法における混合粉末を用いて成形し、焼結した焼結体
の気孔中に、アクリル樹脂、鉛または鉛合金、もしくは
銅または銅合金の何れかを含浸もしくは溶浸することを
要部としている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明の金属組織および各
成分について説明する。まず、耐食性を考えた場合、ス
テンレス鋼等のように耐食成分を多量に含有させること
が有効ではあるが、粉末の圧縮性を考えた場合、高合金
化は粉末が硬くなるため悪化し、そのため、機械的特性
および耐摩耗性が低下する。一方、合金成分を単味粉で
添加した場合、圧縮性の低下は生じないが、合金元素の
拡散が不均一となり耐食性の弱い部分から腐食が進行す
ることとなり、有効ではない。さらに、高合金化は経済
性の面においても好ましくない。そこで、本発明では少
量の合金成分で、有鉛ガソリン中の掃鉛剤成分に対する
耐食性を得るため、Fe−WまたはFe−W−VのFe
基合金粉末をベースとして採用した。同時に、WやV
は、優れた炭化物生成元素であるため、これらの微細な
炭化物を基地中に分散することで、基地の耐摩耗性の向
上を図るようにした。
【0012】(Fe基合金粉末)以上の混合組織を得る
場合、Fe基合金粉末中に固溶されて与えられるWは、
添加された黒鉛と反応し基地中にW炭化物を形成する。
形成された炭化物は基地中に微細かつ均一に分散してい
るため基地の耐摩耗性向上に寄与する。また、炭化物を
形成しなかったWは基地中に拡散し、有鉛ガソリン中に
存在する掃鉛剤成分(H2SO4、HCl)に対する耐食
性を向上させる。このとき、W量が3.5%以下である
とほとんどが基地中に固溶し、炭化物が析出せず、耐摩
耗性が低下する。また、6.0%を超えると、Fe基合
金粉末が硬くなり、圧縮性、流動度等の粉末特性に悪影
響を及ぼし、ひいては機械的強度および耐摩耗性の低下
を生じる。このため、本発明(第5,第6発明)ではF
e基合金粉末中のW量を3.5〜6.0%に限定した。
【0013】また、Vは、Wと共にFe基合金粉末中に
固溶されて与えられ、添加された黒鉛と反応し基地中に
V炭化物を形成する。形成されたV炭化物は基地中に分
散して基地の耐摩耗性向上に寄与する。また、炭化物を
形成しなかったVは基地中に拡散し、有鉛ガソリン中に
存在する掃鉛剤成分(H2SO4、HCl)に対する耐食
性を向上させる。このとき、V量が2.2%を超える
と、Fe基合金粉末が硬くなり、圧縮性、流動度等の粉
末特性に悪影響を及ぼし、ひいては機械的強度および耐
摩耗性の低下を生じる。このため、本発明(第6発明)
ではFe基合金粉末中のV量を2.2%以下に限定し
た。
【0014】以上のFe−WまたはFe−W−VのFe
基合金粉末に、0.1〜1%のCを含有させると、Fe
基合金粉末中のWまたはVが炭化物を形成し、粉末の基
地中の合金成分量が低下し粉末の圧縮性が向上するので
好ましい。なお、Fe基合金粉末中のC量が0.1%に
満たないとFe合金粉末中に形成される炭化物の量が乏
しく、圧縮性の向上に寄与せず、1%を超えると形成さ
れる炭化物の量が多くなりすぎかえって圧縮性を損な
う。
【0015】(Ni基合金粉末)耐食性を確保した上で
耐摩耗性を向上させるため、掃鉛剤成分に対する耐食性
を有するNiを基とし、硬質な炭化物を形成するCr、
Moを含有するNi基合金粉末を硬質相形成のため添加
した。すなわち、Cr炭化物、Mo炭化物、Cr−Mo
共晶炭化物等よりなる硬質相は、ピン留め効果でバルブ
が着座したときに発生する基地の塑性流動を抑制する働
きを示す。また、Ni基合金粉末のNi、Crは前記F
e基合金粉末に拡散し、基地の焼入れ性を向上させ、マ
ルテンサイト化させて耐摩耗性を向上させると共に、硬
質相の周囲のNi、Crの濃度の高い部分は、軟質な、
白色のオーステナイトまたはオーステナイトとフェライ
トの混合相を形成し、バルブ着座時の衝撃を緩和すると
共に、硬質相の脱落を防ぐ効果がある。
【0016】Ni基合金粉末の添加量が3%以下では耐
摩耗性向上に寄与せず、20%を超えると圧縮性が低下
して機械的特性が低下すると共に、硬質相の量が多くな
り、バルブに対する攻撃性が増加してバルブを摩耗させ
る。このため、本発明ではNi基合金粉末の添加量を3
〜20%に限定した。
【0017】また、Ni基合金粉末中に固溶して与えら
れるCrは、Ni基合金粉末中のCと反応し、硬く耐摩
耗性に優れたCr炭化物および後述するMoとの共晶炭
化物を形成する。また、基地に拡散することで基地の焼
入れ性を改善し、基地組織をマルテンサイト化して耐摩
耗性を向上させると共に、Cr濃度の高い硬質相の周囲
にオーステナイトまたはオーステナイトとフェライトの
混合相を形成し、バルブ着座時の衝撃を緩和すると共
に、硬質相の脱落を防止する。このとき、Cr量が25
%未満であると充分な炭化物を得られず、また35%を
超えると炭化物の量が多くなり相手攻撃性が高くなりバ
ルブを摩耗させる。このため、本発明ではNi基合金粉
末中のCr量を25〜35%に限定した。
【0018】また、Ni基合金粉末中に固溶して与えら
れるMoは、Ni基合金粉末中のCと反応し、硬く耐摩
耗性に優れたMo炭化物およびCrとの共晶炭化物を形
成する。このとき、Mo量が7%未満であると充分な炭
化物が得られないため耐摩耗性に寄与せず、また11%
を超えると炭化物の量が多くなり相手攻撃性が高くなり
バルブを摩耗させる。このため、本発明ではNi基合金
粉末中のMo量を7〜11%に限定した。
【0019】SiもNi基合金粉末中に固溶して与えら
れ、脱酸剤として作用し、Ni基合金粉末とFe基合金
粉末の固着性を高める効果がある。ただし、Ni基合金
粉末中のSi量が0.5%以下であると、脱酸効果が不
十分で粉末の固着性を改善するには至らず、1.5%を
超えるとそれ以上の脱酸効果が望めず、Ni基合金粉末
自体が硬くなるため圧縮性が低下し、機械的強度、耐摩
耗性の低下の原因となる。このため、本発明ではNi基
合金粉末中のSi量を0.5〜1.5%とした。
【0020】なお、Ni基合金粉末に、Fe基合金粉末
に拡散しやすいCあるいはFeを少量含有させること
で、両粉末の固着性を向上させることも可能である。C
は、Ni基合金粉末中に固溶され、Cr、Moと反応し
て硬質な炭化物を形成することによる耐摩耗性向上のた
めに与えられる。また、Cは黒鉛粉末として与えられ、
基地中のW、V炭化物の析出および基地のマルテンサイ
ト化、ベイナイト化の基地強化に寄与する。Ni基合金
粉末中に固溶されて与えられるC量は、1.5%未満で
あると析出する炭化物の量が少なくなり、耐摩耗性向上
の効果が乏しく、一方、3.0%を超えると析出する炭
化物の量が多くなりすぎ、バルブ攻撃性が高まるほか、
粉末が硬くなるため圧縮性が低下し、成形体密度が低下
する結果、強度が低下する。このため、本発明ではNi
基合金粉末中のC量を、1.5〜3.0%にした。
【0021】(黒鉛粉末)黒鉛粉末として添加されるC
量が0.5%未満であると、W、V炭化物の析出量が少
なくなると共に、基地中に固溶されるC量が少なく、基
地の強化および耐摩耗性の向上に寄与せず、一方、1.
4%を超えると、基地中にCが過飽和に固溶され、靱性
の低下および被削性の低下が生じると共に、焼結時に液
相が発生しやすくなり、寸法制度が損なわれる。このた
め、本発明では黒鉛粉末として添加するC量を0.5〜
1.4%とした。
【0022】(MnS粒子またはMn,S)以上の焼結
合金において、被削性改善を望む場合には、第3発明の
如くMnS粒子を組織中に均一かつ微細に分散させるこ
とが効果的である。すなわち、MnS粒子はチップブレ
ーカー作用を持つため被削性向上に効果があると共に、
加工時に工具刃面に付着して刃先を保護し、工具の寿命
を向上させる。MnS粒子を基地中に分散させる方法と
しては、MnS粉末を配合する方法が簡便であり、有効
である。ただし、MnS粉は焼結を阻害するため、Fe
基合金粉末粉末中にMnとSの状態で添加し、焼結時に
反応させ基地中に微細に分散させることがより好まし
い。基地中に分散するMnS粒子の量は、MnS粉添加
による場合も、Fe基合金粉末中に固溶して反応生成さ
せる場合も、何れも1.2%を超えると機械的性質およ
び耐摩耗性が低下するため、MnS粉添加の場合、Mn
S粉の添加量の上限を1.2%、Fe基合金粉末の形で
与える場合、Fe基合金粉末中のMnおよびSの量をM
n:0.76%以下、S:0.44%以下とした。
【0023】(アクリル樹脂等)以上の焼結合金におい
て、被削性を向上させる場合は、焼結体の気孔中にアク
リル樹脂、鉛または鉛合金、銅または銅合金を含浸ある
いは溶浸することが効果的である。アクリル樹脂、鉛ま
たは鉛合金、銅または銅合金が気孔中に存在させると、
切削時の切削形態が断続切削から連続切削になり、工具
に与える衝撃を減少させて工具刃先の損傷を防止し、被
削性を向上させることができる。また、鉛または鉛合
金、銅または銅合金は軟質であるため、工具刃面に付着
して工具の刃先を保護し、被削性および工具の寿命を向
上させると共に、使用時にバルブシートとバルブフェイ
ス面の間で固体潤滑剤として作用し、双方の摩耗を減少
させる働きがある。しかも、銅または銅合金は熱伝導率
が高く、切削時に刃先で発生する熱を外部へ逃がし、刃
先部の熱のこもりを防止して刃先部のダメージを軽減す
る効果がある。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに説明す
る。実施例では、表1に示す成分組成からなるFe基合
金粉末(粉末番号1〜21)を用いると共に、硬質層形
成粉末、黒鉛粉末、MnS粉末および成形潤滑剤(ステ
アリン酸亜鉛)を用いて、表2に列記した割合で配合
し、その各配合物を30分間混合した後、成形圧6.5
ton/cm2で成形した。
【0025】そして、以上の各成形体をアンモニア分解
ガス雰囲気中1175℃で60分間焼結することによ
り、表3の本発明合金1〜29(試料番号1〜29)
と、何れかの成分が本発明から外れた比較合金1〜12
(試料番号1〜12まで)を得た。
【0026】なお、本発明合金18〜20は、焼結後、
さらに気孔中にアクリル樹脂、Pb、Cuの含浸または
溶浸を施した。また、表2,3の比較合金13は従来合
金として特許第1043124号に記載のバルブシート
用従来合金である。
【0027】使用したFe基合金粉末の成分組成
【表1】
【0028】本発明合金(1〜29)と比較合金(1〜
13)の配合比
【表2】
【0029】本発明合金(1〜29)と比較合金(1〜
13)の全体組成
【表3】
【0030】以上の焼結合金に対して見掛け硬さ試験、
圧環強さ試験、被削性試験、耐摩耗性試験および耐食性
を行った。その結果を表4に一覧表示した。なお、被削
性試験は卓上ボール盤を使用し、回転部自重および追加
の重りのみの荷重で、ドリルで試料に穴をあけ、その加
工数を比較する試験であり、今回の試験では荷重は1.
8kg、使用ドリルはφ3mm超硬ドリル、試料の厚さ
を5mmに設定した。
【0031】耐摩耗性試験は、アルミ合金製ハウジング
にバルブシート形状に加工した焼結合金を圧入嵌合し、
バルブをモータ駆動による偏心カムの回転で上下ピスト
ン運動させることにより、バルブフェースとシート面を
繰り返し衝突させ、これを一定時間行い、そのときに発
生するバルブシートとバルブフェース面の摩耗量を測定
することで評価を行った。試験時にはバルブの傘をバー
ナーで加熱することにより温度を制御する。なお、今回
の試験では偏心カムの回転数を3000rpm、バルブ
シート部分の試験温度を250℃、繰り返し時間を10
時間に設定した。耐食性はPb化合物の混合粉を腐食剤
として使用し、この中に試料を設置し、大気中雰囲気で
加熱、300℃で5時間保持した後に試料最表面に発生
した腐食層の厚さを測定することで評価を行った。
【0032】本発明合金(1〜29)と比較合金(1〜
13)の評価
【表4】
【0033】以上の表4の評価からは次のことが分か
る。なお、図2〜図8は前記評価の内、図2〜図5は耐
摩耗性(摩耗量)と耐食性(腐食深さ)についてグラフ
化し、図6,図7はさらに被削性(加工孔数)をも含め
てグラフ化した。△印はバルブ、○印はバルブシート、
□印はバルブとバルブシートの合計の摩耗量をプロット
し、従来合金(比較13)もバルブとバルブシートの合
計の摩耗量で図示した。また、図8は焼結合金の気孔中
にアクリル樹脂、Pb、Cuの含浸した場合の被削性
(加工孔数)を示している。なお、図中、例えば、本発
明合金1は発明1と、比較合金1は比較1と表示してい
る。
【0034】本発明合金1,2,17,29および比較
合金1,2,3の比較により、Fe基合金粉末中のW量
を変化させたとき、その影響を調べると以下のようにな
る。Fe基合金粉末中のW量が増加するにつれて、図2
に示す如くバルブシート摩耗量が減少している。一方、
バルブの摩耗量は、W量の増加にしたがい大きくなって
いる。バルブシートとバルブの合計の摩耗量は、3.5
〜6%で安定して低くなっている。このときの摩耗量
は、比較合金13の従来合金よりも低い値となってい
る。これは、W量の増加にしたがい、基地中のW炭化物
の量が増加した結果、バルブシートの摩耗は減少する
が、バルブに対する攻撃性が増加するためバルブの摩耗
量が増加するためと推察される。また、バルブ摩耗量が
増加すると、摩耗粉の影響でバルブシート自体の摩耗量
も増加するため、W量が6%以上では逆に合計摩耗量が
大きい結果となる。また、耐食性はFe基合金粉末中の
W量の増加にしたがい、基地に固溶するW量が増加した
結果、腐食深さが減少しており、良好な耐食性を示して
いる。以上のことから、Fe基合金粉末中のW量は、
3.5〜6%の範囲で耐摩耗性および耐食性ともに良好
であることが判る。
【0035】本発明合金3〜6,17,28および比較
合金4,5を比較して、Fe基合金粉末中のV量を変化
させたときの影響を調べると、次のようになる。なお、
本発明合金3〜6,17,28は請求項1,2に関し、
その内、本発明合金3はFe基合金中のV量が0%のも
のであり、請求項1に対応している。Fe基合金粉末中
のV量が2%までは図3に示す如く、バルブシート摩耗
量はやや減少しているが、2%を超えると摩耗量が増加
している。一方、バルブ摩耗量はV量の増加にしたがい
徐々に増加している。バルブシートとバルブの合計摩耗
量は、V量が2%まではほぼ一定しており、2%を超え
ると摩耗量が増加し、2.2%で0%とほぼ同程度の摩
耗量となり、2.2%を超えるとかえって摩耗量が大き
くなっている。これは、V量の増加にしたがい基地中の
V炭化物が増加し、バルブシートの耐摩耗性を向上させ
るが、バルブ攻撃性が高まるため、バルブ摩耗量が増加
し、その影響でバルブシート摩耗量が増加するためと推
察される。また、耐食性は、V量の増加にしたがって腐
食深さが減少しており、向上している。以上のことか
ら、Fe基合金粉末中のV量は、2.2%以下で良好な
耐摩耗性と耐食性を示すことが判る。
【0036】本発明合金7,17,25〜27および比
較合金6,7を比較すると(図4)、Ni基合金粉末が
3%の添加により、バルブシートの摩耗量は急激に減少
し、その後、添加量が20%までは徐々に摩耗量が減少
している。一方、バルブ摩耗量は、Ni基合金粉末の添
加量の増加にしたがい徐々に増加し、20%を超えると
急激に摩耗量が増加している。これにより、合計の摩耗
量は、Ni基合金粉末が3%の添加により低下し、20
%までは、比較合金13(従来合金)よりも低く、ほぼ
一定の値を示すが、20%を超えると急激に摩耗量が増
大している。これは、Ni基合金粉末の添加により、硬
質な金属間化合物からなる硬質相が形成されると共に、
硬質相周囲に軟質なオーステナイトまたはオーステナイ
トとフェライトの混合相およびその周囲に耐摩耗性に効
果のあるマルテンサイト相が形成され、金属間化合物に
よる耐摩耗性の向上、オーステナイトまたはオーステナ
イトとフェライトの混合相による金属間化合物の脱落防
止およびバルブ着座時の衝撃緩和、マルテンサイト相に
よる耐摩耗性の向上の効果により摩耗量が減少するが、
過剰なNi基合金粉末の添加は、金属間化合物の量、マ
ルテンサイト相の量が増加するためバルブ攻撃性が高ま
ること、および、オーステナイトまたはオーステナイト
とフェライトの混合相が増加することによる基地強度の
低下と相まって、耐摩耗性の急激な低下が生じるからと
推察される。一方、耐食性は、Ni基合金粉末の添加量
によらずほぼ一定であり、比較合金13(従来合金)よ
りも低い良好な値を示す。以上のことから、Ni基合金
粉末の添加量は3〜20%の範囲で耐摩耗性に大きな効
果があることが判る。
【0037】本発明合金8,9,17,23,24およ
び比較合金8,9を比較すると、バルブシート摩耗量
は、図5に示す如く0.5%の黒鉛粉末の添加で急激に
摩耗量が減少し、黒鉛粉末添加量:1.4%までは摩耗
量がさらに減少し、1.4%を超えるとかえってバルブ
シート摩耗量が急激に増加している。一方、バルブ摩耗
量は、黒鉛粉末添加量の増加にしたがい徐々に増加して
いる。これにより、合計摩耗量は、0.5〜1.4%の
間で比較合金13(従来合金)よりも低い値で安定して
いる。これは、黒鉛粉末添加量が増加することで基地中
の炭化物量が増加し、そのためバルブシート摩耗量は減
少するが、バルブ攻撃性が高くなるため、バルブの摩耗
は徐々に増大して、黒鉛粉末添加量が1.4%を超える
とバルブの摩耗の影響でバルブシートも摩耗するため、
急激に合計摩耗量が増加したものと推察される。また、
耐食性は、黒鉛粉末添加量が1.4%まではほぼ一定
で、比較合金13(従来合金)よりも低い良好な耐食性
を示している。以上のことから、黒鉛粉末添加量は0.
5〜1.4%の範囲で耐摩耗性に大きな効果があること
が判る。
【0038】発明合金10〜12,14,17,21お
よび比較合金10,12により、Fe基合金粉末にMn
とSを固溶させて与えたときのMnS量の影響(図
6)、および発明合金10,13,15,16,22お
よび比較合金11により、MnS粉末を添加して与えた
ときのMnS量の影響(図7)が判る。すなわち、Mn
SをFe基合金粉末中にMnとSを固溶させて与えた場
合も、MnS粉末を添加して与えた場合も共に、全体組
成中のMnS量が1.2%まではバルブシート摩耗量が
徐々に増加し、1.2%を超えると基地の強度が低下し
た結果、摩耗量が増大している。また、耐食性は、どち
らの場合も比較合金13(従来合金)よりも低い良好な
値を示している。MnSの添加形態から見ると、Mnと
SをFe基合金粉末中に固溶させて与えた場合は、Mn
S粉末を添加して与えた場合よりも摩耗量が低く、Mn
S量の増加による摩耗量の増加率も低くなっている。こ
れは、MnS粉末を添加して与えた場合、MnS粉末が
基地粉末の焼結による拡散・結合を阻害し、基地強度が
低下するためと推察される。そのため、耐食性もMnS
粉末添加の場合、問題ない範囲ではあるが若干低下する
傾向が見られる。一方、被削性は、どちらの場合でもM
nS量の増加にしたがい改善されているが、Fe基合金
粉末に固溶させて与えた場合の方が、基地中に均一に分
散するため同じMnS量でも被削性改善効果が大きくな
っている。以上のことから、添加形態によらずMnSに
より被削性は改善されるが、全体組成中のMnS量が
1.2%を超えると耐摩耗性が急激に悪化する。このた
め、MnSの添加量の上限を1.2%とした。また、添
加形態はMnS粉末を添加してもよいが、Fe基合金粉
末中にMnとSを固溶させて与えた方が、効果が高いこ
とが判る。
【0039】また、発明合金17,18,19,20と
比較合金13を比べると、被削性はFe基合金中にMn
とSを固溶させて全体組成中で0.9%のMnSを分散
させた合金は、従来合金よりも耐摩耗性、耐食性および
被削性において優れているが、図8に示す如くアクリル
樹脂、Pb、Cuを含浸または溶浸することで耐摩耗
性、耐食性を損なうことなく被削性をより向上させるこ
とが可能であることが判る。
【0040】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明
のバルブシート用耐摩耗性焼結合金およびその製造方法
によれば、Co等の高価な元素を使用しないため安価で
あり、内燃機関のバルブシート用焼結合金として実用に
十分な耐摩耗性を有しており、さらに、掃鉛剤成分、P
b化合物に対する優れた耐食性を有する焼結合金が得ら
れる。特に、請求項3,4およびその製造方法の場合は
さらに被削性をも改善した優れた焼結合金となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結合金の金属組織の模式図である。
【図2】本発明の実施例において、基地形成合金粉末中
のW量を変化させたときの摩耗量と腐食深さの評価結果
を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例において、基地形成合金粉末中
のV量を変化させたときの摩耗量と腐食深さの評価結果
を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例において、硬質相形成粉末の添
加量を変化させたときの摩耗量と腐食深さの評価結果を
示すグラフである。
【図5】本発明の実施例において、黒鉛粉末の量を変化
させたときの摩耗量と腐食深さの評価結果を示すグラフ
である。
【図6】本発明の実施例において、全体組成中のMnS
量を変化させたときの摩耗量と腐食深さおよび加工孔数
の評価結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例において、MnS粉末の添加量
を変化させたときの摩耗量と腐食深さおよび加工孔数の
評価結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例において、焼結合金にアクリル
樹脂、Pb、Cuを含浸した場合の加工孔数の評価結果
を示すグラフである。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全体組成が、重量比で、W:2.75〜
    5.79%、Ni:1.58〜13.5%、Cr:0.
    75〜7.0%、Mo:0.21〜2.2%、Si:
    0.015〜0.3%、C:0.55〜2.0%、およ
    び残部Feおよび不可避不純物からなり、その金属組織
    が、 ベイナイト相もしくはベイナイトとソルバイトの混
    合相と、 主としてCr炭化物よりなる硬質相の核を有し、そ
    の核を取り囲むNi、Cr濃度の高いオーステナイト相
    もしくはオーステナイトとフェライトの混合相と、 前記の周囲をさらに取り囲むマルテンサイト相、 上記〜からなると共に、微細なW炭化物が上記硬質
    相をのぞく基地中に均一に分散する組織を呈することを
    特徴とする耐食性に優れた内燃機関のバルブシート用耐
    摩耗性焼結合金。
  2. 【請求項2】 全体組成が、重量比で、W:2.75〜
    5.79%、V:2.123%以下、Ni:1.58〜
    13.5%、Cr:0.75〜7.0%、Mo:0.2
    1〜2.2%、Si:0.015〜0.3%、C:0.
    55〜2.0%、および残部Feおよび不可避不純物か
    らなり、その金属組織が、 ベイナイト相もしくはベイナイトとソルバイトの混
    合相と、 主としてCr炭化物よりなる硬質相の核を有し、そ
    の核を取り囲むNi、Cr濃度の高いのオーステナイト
    相もしくはオーステナイトとフェライトの混合相、 前記の周囲をさらに取り囲むマルテンサイト相 上記〜からなると共に、微細なW炭化物およびV炭
    化物が上記硬質相をのぞく基地中に均一に分散する組織
    を呈することを特徴とする耐食性に優れた内燃機関のバ
    ルブシート用耐摩耗性焼結合金。
  3. 【請求項3】 請求項1もしくは2に記載の耐摩耗性焼
    結合金において、全体組成中に、さらに、重量比で、M
    n:0.762%以下およびS:0.438%以下を含
    み、前記硬質相をのぞく基地中に、1.2%以下のMn
    S粒子が分散する組織を呈する耐食性に優れた内燃機関
    のバルブシート用耐摩耗性焼結合金。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3記載の耐摩耗性焼結合金に
    おいて、前記焼結合金の気孔中に、アクリル樹脂、鉛ま
    たは鉛合金、もしくは銅または銅合金の何れかが分散し
    ている耐食性に優れた内燃機関のバルブシート用耐摩耗
    性焼結合金。
  5. 【請求項5】 重量比で、W:3.5〜6.0%、およ
    び残部Feおよび不可避不純物からなるFe基合金粉末
    に、 重量比で、Cr:25〜35%、Mo:7〜11%、S
    i:0.5〜1.5%、C:1.5〜3.0%、および
    残部Niおよび不可避不純物よりなるNi基合金粉末:
    3〜20%、および黒鉛粉末:0.5〜1.4%を配合
    した混合粉末を用いる、ことを特徴とする請求項1記載
    の耐食性に優れた内燃機関のバルブシート用耐摩耗性焼
    結合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 重量比で、W:3.5〜6.0%、V:
    2.2%以下、および残部Feおよび不可避不純物から
    なるFe基合金粉末に、 重量比で、Cr:25〜35%、Mo:7〜11%、S
    i:0.5〜1.5%、C:1.5〜3.0%、および
    残部Niおよび不可避不純物よりなるNi基合金粉末:
    3〜20%、および黒鉛粉末:0.5〜1.4%を配合
    した混合粉末を用いる、ことを特徴とする請求項2記載
    の耐食性に優れた内燃機関のバルブシート用耐摩耗性焼
    結合金の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5もしくは6に記載のFe基合金
    粉末中に、さらに、重量比で、Mn:0.790%以
    下、S:0.454%以下を含むFe基合金粉末を用い
    る、請求項3に記載の耐食性に優れた内燃機関のバルブ
    シート用耐摩耗性焼結合金の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項5もしくは6に記載の混合粉末
    に、重量比で、1.2%以下のMnS粉末をさらに添加
    する、請求項3に記載の耐食性に優れた内燃機関のバル
    ブシート用耐摩耗性焼結合金の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項5〜8に記載の混合粉末を用いて
    成形し、焼結した焼結体の気孔中に、アクリル樹脂、鉛
    または鉛合金、もしくは銅または銅合金の何れかを含浸
    もしくは溶浸する、請求項4に記載の耐食性に優れた内
    燃機関のバルブシート用耐摩耗性焼結合金の製造方法。
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