JPH1046360A - 円柱状金属部品とその製造方法及びその製造装置 - Google Patents

円柱状金属部品とその製造方法及びその製造装置

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JPH1046360A
JPH1046360A JP12798897A JP12798897A JPH1046360A JP H1046360 A JPH1046360 A JP H1046360A JP 12798897 A JP12798897 A JP 12798897A JP 12798897 A JP12798897 A JP 12798897A JP H1046360 A JPH1046360 A JP H1046360A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 円柱状金属部品に硬質炭素膜をコ−テイング
して摩耗を抑える方法がある。しかし金属と硬質炭素膜
との密着性が悪いので極めて能率の悪いイオンビ−ム蒸
着法でなければ金属母材の上に硬質炭素膜を付けること
ができない。円柱状金属母材の上に硬質炭素膜を被覆す
る能率の良い方法を提供することが目的である。 【構成】 円柱状金属母材の上に、アモルファスシリコ
ンの中間層をPVD法によって形成し、この上に硬質炭
素膜を形成する。アモルファスシリコンと硬質炭素膜の
密着性が良いので、硬質炭素膜の形成は時間のかからな
いCVD法で行うことができる。生産性の高い方法によ
って耐摩耗性に富んだ円柱状金属部品を作ることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、AV機器、輸送・搬送
などに用いられるローラ状(円柱状)の機械部品に関す
る。特に、軸受、ローラ、回転軸、ピストンなどの回転
運動、往復運動に用いられ耐摩耗性と摺動特性が求めら
れるローラ部品(円柱状金属部品)に関する。
【0002】
【従来の技術】AV機器、輸送・搬送機器などに用いら
れる軸受、ローラ、回転軸、ピストンなどの摺動部材
は、相手部材と常時接触している。そのため相手材との
摩擦により摩耗が生じ易い部品である。摩耗によって、
製品寿命が短縮され部品精度が低下する。そのためこれ
ら円柱状部材について、摩耗しにくい部材の開発が望ま
れる。
【0003】一般に耐摩耗性の不足する部材において、
耐摩耗性を得るためには部材の表面にTiNなどの硬質
の膜をコ−テイングする方法がしばしば用いられる。一
方、摺動部品の母材としてはコスト、加工性の点から一
般的にSUJ又はSUS420J2製などの鉄鋼材料が
用いられる。しかしこれらの材料は200℃以上に加熱
されると変質するという欠点がある。TiNをコ−テイ
ングするためには400℃以上の温度に母材を加熱する
必要がある。従ってTiNをコ−テイングして耐摩耗性
を高めるという方法は通常のSUJ又はSUS420J
2製のロ−ラ−に対しては使えない。
【0004】SUJ又はSUS420J2製の部品の耐
摩耗性を改良するには、200℃以下の温度で成膜でき
る薄膜材料が必要である。200℃以下の温度領域でコ
−テイングできる硬質の材料としては、硬質炭素膜が挙
げられる。これは多くの半導体や絶縁体との密着性が良
いので、半導体、絶縁体の被覆材料として用いられてい
る。しかし硬質炭素膜は金属との密着性が非常に悪い。
通常のCVD法、蒸着法、スパッタ法などを用いてSU
J又はSUS420J2の上に硬質炭素層を成膜しても
すぐに剥がれてしまう。このような難点を解決するた
め、SUJ又はSUS420J2製母材へ、イオンビ−
ム蒸着法と呼ばれる方法によって硬質炭素層を被覆した
という報告がある。これによってできたものは、金属母
材/硬質炭素層という構造になる。
【0005】また、母材と硬質炭素層間の密着性を改善
する方法として、特開昭56−6920号や特開昭63
−9543号は、金属母材と硬質炭素層の間にシリコン
結晶膜、二酸化シリコン結晶膜、ゲルマニウム結晶膜な
どからなる中間層を介在させる方法を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】通常の蒸着法やCVD
法は生産性は優れるものの材料がイオンではなく原子ま
たは分子状態であり、運動エネルギ−を殆ど持たないの
で金属の内部に入らない。イオンビ−ム蒸着法はメタン
等の炭化水素をイオン源においてプラズマとし引出電極
系の作用で加速したイオンビ−ムとして引き出して被処
理物に照射するものである。加速エネルギ−が大きいの
で、蒸着などに比較して炭素が被処理物の内部まで進入
する。運動エネルギ−によって金属の表面が活性化され
ることもあって炭素原料と母材との密着性が良い。この
ため200℃以下の温度であっても金属に硬質炭素層を
被覆できる。
【0007】しかしイオンビ−ム蒸着法は成膜速度が遅
く、一度に処理できる本数が少ない等生産性が低いとい
う難点がある。炭化水素をプラズマとするのにエネルギ
−が必要で、これをイオンビ−ムとするのにも大電力が
必要であるから、イオンビ−ム電流をあまり大きくでき
ない。装置を改良してイオンビ−ム電流を増やしても今
度は金属表面に与える機械的、熱的衝撃が過大になって
金属の表面を荒らしたり成膜した部分が再び剥離したり
する可能性がある。イオンビ−ム蒸着法を用いる限り生
産性をある程度以上に昂揚させることはできない。他の
方法によって硬質炭素層を金属母材に密着性良く形成す
ることが望ましい。
【0008】一方前記の特開昭56−6920号や特開
昭63−9543号に示された結晶中間層を設ける方法
は、低速低負荷での膜の密着性が改善される。しかし高
速で摺動する部材や高負荷が掛かる用途ではなお密着性
が悪く硬質炭素層が剥離してしまう。さらにこのように
中間層を設ける方法は、中間層被覆装置と、硬質炭素層
被覆装置が異なるので設備費用が高くなる。処理時間が
かかるので、処理能力の問題も派生する。さらに、中間
層を被覆した後、硬質炭素層を被覆するまで大気中にあ
るから汚れが中間層に付着することがある。この場合は
硬質炭素層が剥離し易い。ゲルマニウム中間層被覆の場
合は、ゲルマニウムが高価であるという問題もあった。
【0009】このような従来法の難点を解決し、円柱部
材(ローラ状)に、硬質炭素膜を密着性良く、低温で安
価に生産性良く被覆する方法、装置を提供すること、お
よびそれによって製造されたローラ部品を提供する事が
本発明の目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の方法は、円柱状
金属母材の表面にアモルファスシリコン中間層を設け、
その上に硬質炭素層を形成するものである。好適には、
母材の上に、膜厚5nm〜500nm程度のアモルファ
スシリコン中間層を形成し、その上に膜厚100nm〜
1μm程度の硬質素層を形成する。アモルファスシリコ
ン中間層は、イオンプレ−テイング法やイオンビ−ムア
シスト蒸着法などのPVD法で成膜する。さらに成膜装
置内の真空状態を破る事なく、引き続き、アモルファス
シリコン中間層の上にプラズマCVD法によって硬質炭
素層を被覆する。
【0011】アモルファスシリコンを中間層とする事
と、中間層形成と硬質炭素層形成を真空状態のまま連続
して行うところが重要である。アモルファスシリコン中
間層の介在によって、母材と硬質炭素膜の密着性を著し
く改善できる。アモルファスシリコン中間層と硬質炭素
層を同一装置内で大気に戻す事なく処理することにより
汚染の可能性を排除し中間層と硬質炭素層の密着性を確
実にする。
【0012】
【作用】本発明における円柱状金属部品は、金属母材/
アモルファスシリコン中間層/硬質炭素層という構造に
なる。前記特開昭56−6920はシリコン中間層を提
案している。しかしシリコンを介在させても最外被膜の
密着性が改善されないことがある。実際には母材と外被
膜の密着性には著しいばらつきがみられる。そこで本発
明者は、シリコン中間層の膜構造と硬質炭素膜の親和性
について詳しく調査した。その結果、シリコンがアモル
ファスの時に親和性が良く密着性も優れているというこ
とが分かった。反対にシリコンが結晶質の膜である場
合、親和性に乏しく硬質炭素膜が容易に剥離するという
ことが分かった。
【0013】単結晶シリコン膜の上に硬質炭素膜を被覆
し、その密着力を、ヌープ硬度計圧子による圧痕周りの
硬質炭素膜の剥離状態を調べた。圧子の荷重が25gの
時に剥離が始まった。また、アモルファスシリコン膜の
上に硬質炭素膜を被覆し、同じヌープ硬度計で密着力を
調べた。圧子の荷重を250gに増やしても硬質炭素膜
は剥離しない事が分かった。つまり中間層として同じシ
リコンでも結晶質ではなく、アモルファスでなければな
らない、という事である。
【0014】その理由は次のようなことであろう。上層
の硬質炭素膜がアモルファス構造を取るので中間層が結
晶質であると結合性が悪い。上層の硬質炭素層に合わせ
て、中間層もアモルファスシリコンの方が親和性が高く
なる、というものである。そこで、本発明はアモルファ
スシリコンを中間層とする。つまり本発明では硬質炭素
層/アモルファスシリコン中間層/金属という構造を提
案する。
【0015】本発明で採用するアモルファスシリコン中
間層の膜厚は50Å(5nm)〜5000Å(500n
m)程度とする。50Å(5nm)以下の膜厚では、母
材の表面を完全にシリコンで覆うことが困難であり、S
i中間層導入効果が顕著に現れない。中間層膜厚の下限
はこれによって決まる。シリコン膜厚は数μmであって
も機械的強度など問題は無い。しかし生産性を考慮する
と膜厚は薄い方が好都合であるから500nm以下が良
い。生産性の観点から特に望ましいのは5nm〜300
nmである。
【0016】アモルファスシリコン中間層の成膜には例
えばPVD法を用いる。これはイオンプレ−テイング
法、イオンビ−ムアシスト蒸着法などがある。イオンプ
レ−テイング法は、Arガスなど稀ガスによるグロ−放
電中でシリコンを蒸着する方法である。シリコンはルツ
ボに入れておき電子ビ−ム等で加熱蒸発させる。Arイ
オンが加速されて金属母材に衝突し運動エネルギ−によ
って表面を活性化するので、母材が低温であってもシリ
コンと母材がよく密着するのである。またシリコンをア
モルファス構造にするためにも母材は低温である事が必
要である。
【0017】イオンビ−ムアシスト蒸着法はイオン蒸着
法ということもある。Arなど稀ガスのプラズマをイオ
ン源において生成しこれを加速して金属母材に照射す
る。シリコンはルツボに入れておき電子ビ−ム加熱など
によって加熱蒸発させる。稀ガスの運動エネルギ−、電
流量を自由に変化させることができる。Ar等イオンの
エネルギ−によって母材の表面が活性化される。低温で
あってもシリコンが母材に密着する。イオンプレーティ
ング法の場合と同様、アモルファス構造のシリコンを得
るためには母材が低温であることが望ましい。しかし同
一の真空チャンバの中にイオン源と蒸発源の2つを収容
しなければならない。
【0018】いずれにしてもシリコン自体をイオンビ−
ムにするイオンビ−ム蒸着法とは異なる。シリコンは原
子状の蒸気として飛ぶ。運動エネルギ−は少ない。しか
し稀ガスがイオンとして高い運動エネルギ−をもって母
材に衝突するから表面を活性化しシリコンの密着性を高
揚させる。いずれの方法によってもシリコン中間層を金
属母材の上に形成できる。しかしイオンビ−ムアシスト
法は照射面積が限定されるため、バッチ当たりのチャ−
ジ量を高めるためにはイオンプレ−テイング法の方が適
している。
【0019】最上層は硬質炭素層である。硬質炭素層
は、ダイヤモンド状炭素、アモルファスカ−ボン、i−
Cなどと呼ばれる。アモルファス状のカ−ボン膜であ
る。グラファイトなど結晶炭素ではなくダイヤモンド自
体でもない。硬質炭素層の特性はダイヤモンドに類似し
た点が多い。特にヌ−プ硬度が2000〜10000k
g/mm2 であって非常に硬い材料である。本発明では
この硬い硬質炭素層を円柱状金属部品(ロ−ラ−)の表
面にコ−テイングすることによって円柱状金属部品の摩
耗を防ぐ。硬質の被覆層によって摩擦係数が低下するの
で同時に接触する相手部品の損傷をも防ぐことができ
る。これによる経済的な効果も大きい。
【0020】硬質炭素層の膜厚は、1000Å(100
nm)〜10000Å(1μm)であることが望まし
い。摺動部品の保護膜として十分であるためには100
0Å以上の厚みが必要である。反対に生産性の点であま
り厚いのは望ましくない。さらに硬質炭素層は大きい圧
縮応力を持つので膜厚が大きいと応力が強くなり剥離し
やすくなる。それで1μmより薄いほうが良い。
【0021】硬質炭素層の成膜には例えばプラズマCV
D法を用いる。これは高周波放電、直流放電、マイクロ
波放電などの作用で炭素を含む原料をプラズマとしてか
ら金属母材に堆積させるものである。プラズマで金属母
材を叩くので表面を活性化できる。熱CVD法などに比
べると薄膜形成温度が低くて良いという長所がある。イ
オンビ−ム蒸着法と比較すると、プラズマとするのは同
じであるが、これをイオンビ−ムとして取り出すのでは
なく同一の空間内にある母材に直接に堆積させるので成
膜が迅速である。プラズマCVD法は、イオンビ−ム蒸
着法に比べて成膜速度は3倍以上、バッチ当たりの処理
数が数倍〜数十倍である。高速処理できるので生産性が
飛躍的に向上する。
【0022】プラズマCVD法とイオンビ−ム蒸着法を
一般的に比較すると、イオンビ−ム蒸着法の方が、密着
性が良いと言われている。しかし本発明ではアモルファ
スシリコンの中間層を設けているからプラズマCVD法
で硬質炭素層を形成しても実用上十分な密着性が得られ
る。両工程を通じて、金属母材の温度は200℃以下に
保つことができる。低温成膜できるから母材を変質させ
る惧れがない。なお、生産性を向上させ、高い密着力を
安定して得るためには、アモルファスシリコン中間層と
硬質炭素層の被覆は同一の真空装置内において、真空を
破る事なく、連続して行うのが効果的である。
【0023】もしも、それぞれの被覆を異なる装置で行
うとすると、それぞれの工程に真空排気、部品セット、
部品取りだし等の工程に時間が掛かるので生産性が落ち
る。それに加えて一旦大気圧にすると、アモルファスシ
リコン中間層の表面が空気中の酸素、水蒸気、ゴミ等に
よって汚染される。そのためアモルファスシリコン中間
層と硬質炭素層との間の密着力が低下し製品歩留まりも
低下する。そこで本発明は、同一真空装置内で、アモル
ファスシリコン中間層の被覆と硬質炭素層の被覆を連続
して行うことにする。アモルファスシリコン中間層の表
面が汚染されることなく保持されその上に硬質炭素層が
被覆されるので、常に優れた密着力の被覆を実現するこ
とができる。
【0024】さらにまた生産性を上げたり高負荷の用途
に対しては、母材にマイナスの直流電圧を印加しなが
ら、アモルファスシリコン中間層及び硬質炭素層の被覆
作業するのが有効である。真空中に放出されたシリコン
や炭素、炭化水素などのプラスイオンおよびプラスに荷
電されたクラスターなどが マイナスバイアスによって
加速されるために、母材に到着する粒子の数が増える。
ために成膜速度が上がり、その結果生産性が向上する。
マイナスバイアスの効果はそれだけではない。母材がマ
イナス電位になるので、母材に到達する粒子は加速され
運動エネルギーが増える。高い運動エネルギーを持ちつ
つ母材に反射された粒子は母材をエッチングし表面を清
浄にする。高い運動エネルギーを持ちつつ注入されたシ
リコンや炭素はそのエネルギーのために密着力がさらに
強化される。母材をマイナスにバイアスするとこのよう
に二重の効果がある。
【0025】
【実施例】直径2mm、長さ30mmのSUJ又はSU
S420J2製の円柱状金属母材に、アモルファスシリ
コン中間層と硬質炭素層のコ−テイングを同一の真空装
置にて、真空を大気圧に戻すことなく連続して2層コー
トを行った。比較のため、同じ母材に、イオンビ−ム蒸
着法により硬質炭素層のみを被覆した。そして円柱状金
属部品の性能の比較と、コ−テイング処理能力の比較を
行った。まずコ−テイングプロセスの概要について説明
する。
【0026】[実施例(同一の真空装置内で2段階被覆
する例]まず始めに、アモルファスシリコン中間層のコ
ーテイングについて説明する。本発明に係る連続コート
用の装置の一例を図1に示す。これは共通の真空槽を用
いて連続コートする装置の例である。
【0027】真空槽1は真空に引くことのできる空間で
ある。円盤型のホルダー2は5枚の円盤を軸方向に並べ
たもので、端面円周上にローラー(円柱状母材)を入れ
る多数の孔が穿たれている。対向する円盤の孔に母材3
の端を挿入して円盤を合体し、ホルダー回転軸8に取り
付けるようにする。ホルダー2は真空槽1の内部上方に
設けられる。このホルダー2の数は任意に増減できる。
円柱状金属母材3の近傍にはこれを適当な温度に加熱す
るためのヒ−タがあるが、簡単のため図示を略した。真
空槽1の下方にはシリコン蒸発源4が設けられる。これ
は水冷ルツボ12にシリコン材料13を入れたものであ
る。電子ビ−ム等によって加熱蒸発させられる。ここで
は簡単のため加熱源の図示を略した。シリコン蒸発源4
の上方にはシャタ−5がある。これは開閉することがで
き、開くとシリコン蒸気が上昇し、上方の円柱状金属母
材3に到達できる。閉じると蒸気は遮断される。
【0028】さらにこの上には高周波電極6がある。こ
れは高周波電源9によって高周波電力が与えられるよう
になっている。真空槽1の外部には基板回転用モ−タ7
がある。これは水平に真空槽を貫く回転軸8を回転させ
る。前記の円盤型ホルダー2は回転軸8の適当な箇所に
固定されるので、回転軸8とともに回転する。これは全
ての円柱状金属母材3に均一にコ−テイングするように
するためである。また回転軸8を介して円柱状金属母材
3には負の電圧を印加する。高周波電極6との間には直
流と高周波の重畳した電圧が掛かることになる。真空槽
1の壁面には、ガス入口10があってここからArなど
の稀ガスが内部に導入される。真空排気装置に接続され
た排気口11からガスが排気される。
【0029】本発明の方法を行うために、先ず、有機溶
剤による超音波洗浄でSUJ又はSUS420J2製円
柱状母材3の表面の汚れを落とした。直径30mmの円
盤ホルダー2において、円盤と円盤との間に100本ず
つこの円柱状母材をセットし、図1に示すシリコン中間
層コ−テイングのための装置にセットした。合計400
本の円柱状金属母材を処理する。
【0030】まず真空槽1を1×10-6Torr以下の
真空になるまで排気した。ついでヒ−タにより母材を1
50℃まで加熱した。さらにArガスを5×10-4To
rrまで導入した。これは高周波電極6と母材3の間で
生ずる高周波放電の作用でプラズマになる。ホルダー
2、円柱状金属母材3は回転させる。ホルダー2、円柱
状金属母材3には−500Vの負バイアスを印加してお
く。母材側は負の電圧が印加してあるので正のArイオ
ンが母材に衝突し母材の表面をスパッタして清浄化す
る。10分間放電処理し母材表面を清浄化した。
【0031】このあと、高周波放電は継続したままシリ
コンの蒸発を開始した。ルツボに入れたシリコンを電子
ビ−ム等で加熱し蒸気を発生させた。シリコンの蒸気が
上昇し加熱された母材3の表面に付着する。Arイオン
によって一部の蒸気はイオン化していることもある。母
材の表面がArイオンの衝突によって活性化されている
のでシリコン蒸気の密着性がより良くなる。所望の膜厚
になったらシャッター5を閉じて、シリコンコーテイン
グを終了する。そして、真空の状態を維持したまま、引
き続き硬質炭素膜のコーテイングを行った。
【0032】シリコンコーテイングと同一の真空槽1に
おける硬質炭素層のコ−テイングについて述べる。真空
槽1の真空度を1×10-6Torr以下の真空になるま
で上げる。ガス導入口10から水素ガスH2 を5×10
-4Torrになるまで導入し、ホルダー2に高周波を印
加した。これによってH2 がプラズマになる。水素プラ
ズマが円柱状金属母材に衝突してこれの表面を清浄化す
る。10分間の放電洗浄の後、導入ガスをメタンCH4
に切り替えた。CH4 が高周波放電によってプラズマと
なり、円柱状金属母材の表面において炭素となって堆積
する。これがプラズマCVDによる硬質炭素層のコ−テ
イングである。所定の膜厚に達したら、CH4 の導入を
停止し、コ−テイングを終了する。その後、室温まで冷
却し、ここから取り出した円柱状金属母材の寿命を評価
した。
【0033】また、シリコンコーテイング及び硬質炭素
膜コーテイングされた部品の5本について、硬質炭素膜
を除去したもののX線回折ピークを調べた。結晶質シリ
コンの回折ピークは見られなかった。これによって、コ
ーテイングされたシリコンはアモルファスであることを
が確かめられた。
【0034】[比較例] イオンビ−ム蒸着による場合 比較のためイオンビ−ム蒸着法により硬質炭素膜単層を
コ−テイングしたサンプルも作製した。これは、炭化水
素原料をイオンビ−ムとして母材に照射するものであ
る。本発明と異なりアモルファスシリコン中間層を設け
ない。ここで用いた装置はイオンビ−ム径が50mmで
ある。ホルダーは直径50mmの円盤状のものを使用し
た。直径2mm長さ30mmの円柱状金属母材を20本
このホルダーにセットした。これを装置の内部に装入
し、装置内部を1×10-6Torr以下の真空まで排気
した後、ホルダーを回転させながらArイオンを照射し
表面洗浄を行った。Arによる表面処理の条件は、
【0035】 [Arの表面処理] Arイオンの加速エネルギ− 3keV Arビ−ム電流密度 0.5mA/cm2 Ar照射時間 3分 であった。Arイオンによる表面処理後、Arに代えて
CH4 ガスを導入し以下の条件で硬質炭素層をコ−テイ
ングした。
【0036】 [硬質炭素層形成] 原料ガス CH4 CH4 イオンの加速エネルギ− 500eV イオンビ−ム電流密度 0.2mA/cm2 所定の膜厚まで成膜した後、室温まで冷却して外部に取
り出した。
【0037】本発明は、アモルファスシリコン中間層の
成膜と硬質炭素層の成膜とを同一の反応槽を用いて連続
コートするものであるが、アモルファスシリコン中間層
と硬質炭素層の膜の組成および厚さを個々に調べる為
に、それぞれの成膜を別異の反応槽にて行った。また、
生産性の評価を行うために処理能力も調べた。これらの
結果及び従来例の結果を表1に示す。また、生成された
シリコンは、X線回折のピークからアモルファスシリコ
ンであることを確認した。
【0038】
【表1】
【0039】表1において、最左欄は硬質炭素層の膜
厚、製法、処理能力を示す。第2欄はアモルファスシリ
コン中間層の膜厚、製法、処理能力を示す。第3欄は寿
命を示す。上から7つ目までの試料についてはアモルフ
ァスシリコン中間層の膜厚を500Å、とし硬質炭素層
の膜厚を500Å〜12000Åに変化させている。8
番目〜16番目の試料は硬質炭素層の膜厚を3000Å
とし、アモルファスシリコン中間層の膜厚を0Å〜10
000Åに変化させている。17番目の試料は従来法に
属するイオンビ−ム蒸着によるものである。
【0040】寿命は、AV用機器に本部品を組込みテス
トを行って評価した結果である。コ−テイングが施され
ていないSUJ又はSUS420J2母材の寿命を1と
してこれに対する比によって寿命を表現している。それ
ぞれのプロセスについて単位時間あたりの処理能力を本
数で示した。硬質炭素層の膜厚が1000Å以上になる
と、円柱状金属部品の寿命が無被覆のものに比べて格段
に増加するのが分かる。アモルファスシリコン中間層が
500Åの時、硬質炭素層が1000Åを越えると円柱
状金属部品の寿命は7倍以上になる。しかし硬質炭素層
の膜厚が10000Å(1μm)を越えると剥離が生じ
た。これは厚過ぎるのである。硬質炭素層の膜厚は従っ
て1000Å〜10000Åが最適であるということが
分かる。
【0041】アモルファスシリコン中間層については、
これがないと硬質炭素層は完全に剥離した。アモルファ
スシリコン中間層があっても50Å以下の場合は、やは
り剥離した。アモルファスシリコン中間層が50Å以上
であれば硬質炭素層の剥離は起こらなくなり、寿命も無
被覆のものに比べて5倍以上になる。アモルファスシリ
コン中間層の厚みが300Åを越えると硬質炭素層の接
合強度は増強され寿命は10倍以上になる。アモルファ
スシリコン中間層の厚みを増やしても剥離するというこ
とはなく機械的強度の観点からは厚みに上限は存在しな
い。しかしアモルファスシリコン中間層の厚みを増やす
とコ−テイング時間が余分にかかるので処理能力が減少
する。処理能力の点では、アモルファスシリコン中間層
の膜厚は5000Å以下であるのが良い。
【0042】従って、アモルファスシリコン中間層の厚
みをd1 、硬質炭素層の膜厚をd2とすると、最適の範
囲は、 50Å≦d1 ≦5000Å (1) 1000Å≦d2 ≦1μm (2)
【0043】ということになる。この範囲でいずれも寿
命は無被覆の物に比べ5倍以上である。処理能力はアモ
ルファスシリコン中間層に関しては180〜250本/
時間である。硬質炭素層に関しては、92〜300本/
時間である。本発明では2工程を含むので、全体として
の処理能力は低い方が律速する。この範囲外であって
も、硬質炭素層の膜厚が500Å〜1000Åの範囲
で、無被覆のものに比して2〜7倍程度に寿命を延長す
ることはできる。
【0044】さらにイオンビ−ム蒸着によるものは無被
覆のものに比較して10倍以上の寿命を持つが、処理能
力が13本/時間であって極めて低い。処理能力の点で
本発明に及ぶものではない。アモルファスシリコン中間
層の形成はイオンプレ−テイングによって行うと処理能
力を高めることができる。
【0045】本発明ではホルダーとは独立した高周波電
極を適用する例を示ている。ホルダーは接地でもよいが
マイナスの直流電圧を印加した方が成膜速度は向上す
る。例えば、高周波電極に400Wの電力を印加した場
合、ホルダーが接地の時は600Å/hの成膜速度であ
るがホルダ−にマイナス500Vの直流電圧を印加する
と2000Å/hまで成膜速度が向上する。
【0046】また、本装置では円柱状金属母材の円周方
向の膜厚の均一化のため図2に示す様なホルダ−を使用
した。円柱状金属母材をホ−ルドする穴の内径を円柱状
金属母材外径より大きくすることによって、ホルダ−の
公転運動にともない円柱状金属母材が自転をするという
ものである。さらにホルダ−を多段に積み重ねることで
処理本数も増やす事が出来る。この様な連続コ−ト装置
を用いることにより処理能力は2倍以上、人件費は半
分、設備投資も半分以下になり、大幅な生産性向上が達
成された。
【0047】本発明のロ−ラ−(円柱状金属部品)は、
無被覆のSUJ又はSUS420J2製のものに比べて
工程が増えるが、寿命が格段に高揚する。本発明は2層
の薄膜をコ−テイングする必要があるが、イオンビ−ム
蒸着法による硬質炭素層1層の形成よりも処理能力が高
く生産性において勝っている。
【0048】
【発明の効果】本発明は、円柱状金属母材の表面にアモ
ルファスシリコン中間層と硬質炭素層を被覆している。
硬質炭素層によって高い耐摩耗性が得られ摩耗が少なく
なる。またアモルファスシリコン中間層によって金属母
材と硬質炭素層の密着性が得られるので、膜形成に時間
のかかるイオンビ−ム蒸着法を用いることなく硬質炭素
層を母材に被覆できる。膜形成のための処理時間が短縮
できるので、イオンビ−ム蒸着法を用いるものよりも生
産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】アモルファスシリコン中間層と硬質炭素膜とを
連続して形成する装置の概略断面図。
【図2】自公転型ホルダ−の1枚の板の穴と円柱状金属
母材との関係を示す図。
【符号の説明】
1 真空槽 2 ホルダー 3 円柱状金属母材 4 シリコン蒸発源 5 シャッタ− 6 高周波電極 7 基板回転用モ−タ 8 回転軸 9 高周波電源 10 ガス導入口 11 ガス排気口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川合 弘 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号住友電 気工業株式会社伊丹製作所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円柱状金属母材の外周面の少なくとも一
    部にアモルファスシリコン中間層が被覆され、その上に
    硬質炭素層が被覆されていることを特徴とする円柱状金
    属部品。
  2. 【請求項2】 アモルファスシリコン中間層、硬質炭素
    層の膜厚をそれぞれd1 、d2 とすると、50Å≦d1
    ≦5000Å、1000Å≦d2 ≦1μmであることを
    特徴とする請求項1に記載の円柱状金属部品。
  3. 【請求項3】 円柱状金属母材が鉄を主成分とする鉄鋼
    材料であることを特徴とする請求項1に記載の円柱状金
    属部品。
  4. 【請求項4】 真空装置内で、円柱状金属母材の上に、
    PVD法によってアモルファスシリコン中間層を被覆
    し、同一装置内で、装置内の真空を維持したまま引き続
    き、プラズマCVD法によって前記アモルファスシリコ
    ン中間層の上に硬質炭素層を被覆する事を特徴とする円
    柱状金属部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 円柱状金属母材にマイナスの直流電圧を
    印加した状態で、アモルファスシリコン中間層の形成お
    よび硬質炭素層の形成を行うようにした事を特徴とする
    請求項4に記載の円柱状金属部品の製造方法。
  6. 【請求項6】 真空に引く事のできる真空槽と、真空槽
    内に設けられたシリコン蒸発源と、アルゴン、炭化水素
    等のガス及びシリコン蒸気を高周波励起するため真空槽
    内のシリコン蒸発源の上方に設けられた高周波コイル
    と、アルゴン、炭化水素を含む原料ガスを真空槽に導入
    するためのガス導入口と、複数の円柱状金属母材を真空
    槽内で保持する為のホルダ−と、ホルダ−を回転する回
    転機構と、ホルダ−にマイナスの直流電圧を印加するた
    めの機構とを備えてなることを特徴とする円柱状金属部
    品の製造装置。
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WO2008081650A1 (ja) * 2006-12-28 2008-07-10 Jtekt Corporation 高耐食性部材およびその製造方法
JP2018507960A (ja) * 2015-02-24 2018-03-22 エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーンOerlikon Surface Solutions Ag, Pfaeffikon モーターピストンをコーティングするための方法

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JP2008163430A (ja) * 2006-12-28 2008-07-17 Jtekt Corp 高耐食性部材およびその製造方法
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