JPH1046497A - 酸性紙の脱酸兼紙質補強剤の製法 - Google Patents

酸性紙の脱酸兼紙質補強剤の製法

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JPH1046497A
JPH1046497A JP26006396A JP26006396A JPH1046497A JP H1046497 A JPH1046497 A JP H1046497A JP 26006396 A JP26006396 A JP 26006396A JP 26006396 A JP26006396 A JP 26006396A JP H1046497 A JPH1046497 A JP H1046497A
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Hiroshi Kato
寛 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】酸性紙の残留酸により劣化した紙、或は劣化が
現に進行している紙に注入浸透し、脱酸と劣化紙質の補
強を同時に行う。 【解決の手段】劣化した酸性紙に補強物質とアルカリ物
質を適量だけ同時に水を媒体としないで注入浸透をはか
る。熱可塑性高分子物質を有機溶媒で溶かした第I液を
用意し水酸化ナトリウムに少量の水を加え加熱液状にし
たのち非イオン性界面活性剤を加えてできた第II液に
第I液を加え攪拌後酸化マグネシウムを加えて均質化し
て得た液を第III液とする。これはアルカリ物質を含
む熱可塑性高分子物質の有機溶媒溶液で、劣化の程度に
応じて第I液で希釈して酸性紙に注入浸透させ、有機溶
媒の気化乾燥によってアルカリ物質は脱酸に、熱可塑性
高分子物質は劣化紙質の補強に役立つ。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】酸性紙の残留酸により劣化し
た紙、或は劣化が現に進行している紙に注入浸透し、脱
酸と劣化紙質の補強を同時に行うことを目的として製造
した新物質である。劣化した酸性紙に本物質を注入浸透
させれば、有機溶媒溶液中の熱可塑性高分子物質と水酸
化ナトリウムの混合物質が紙のすべての繊維内及紙の構
造のすべての部分に供給される。有機溶媒の気化乾燥後
紙に供給された熱可塑性高分子物質は極めて薄い被膜状
となり紙繊維の中及周辺、繊維どうしの接触部等に付着
し、接続の役割を果し、同時に溶けこんでいる水酸化ナ
トリウム溶液も紙繊維の中に入りこみ、或は紙繊維表面
に付着する。これが酸性紙に含まれる酸の脱酸に役立
つ。酸化マグネシウムは緩衝剤として働くと同時に脱酸
剤としても寄与する。現在放置状態にあり、そう遠くな
い将来に粉塵になる可能性のある「永久保存」資料や、
文化的資料の修復保護保全に有効な役割を果す。 【0002】 【従来の技術】劣化した酸性紙に対して脱酸と紙質の補
強を併せて行いうる技術又はそれらを同時になし得る紙
質はなかった。脱酸についてのみではジエチル亜鉛ガス
による法、ペルフルオロカーボンに分散された酸化マグ
ネシウム懸濁液に浸す方法(カレントアウエアネスCA
1030.NO.194.〈1995−10〉国立国会
図書館刊)がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ジエチル亜鉛ガスは発
燃性があり設備火災の報告がある。ペルフルオロカーボ
ンと酸化マグネシウムによる脱酸法では既に酸による劣
化がひどい資料には役立たず、脱酸のためのみの酸性紙
処理法で、劣化のはげしい紙への補強策は視野に入って
いない。また図書館等の類似同型同品質書籍等の大量脱
酸処理に目的を置いているため膨大な設備を要し、少量
多品種の酸性紙処理には適さない。まして劣化が進み脆
弱となっている酸性紙の救済法は皆無である。原料パル
プの漂白精製から成品にいたるまでの多くの添加薬品等
残留酸による紙質の劣化――つまりいわゆる酸性紙問題
が文化遺産の保存、保護の観点から論議の対象となるま
では紙(特に洋紙)は酸性を呈することがむしろ当り前
であった。抄造も酸性のままの方が容易とさえいわれて
いる。酸性の紙は時間の経過と共に紙質に極めて悪い結
果をもたらす。抄紙時の残留酸によって紙は変色し脆く
なり柔軟さが失われるためにわずかな外力で隅が欠けた
り、折れれば分離したり、はなはだしくは粉塵となる。
また脱酸のみでは劣化の進行は停止しても一たん酸に侵
されて劣化し脆くなった紙の強度はもとにもどらない。
現在論議され処理しようとしている酸性紙問題の対象は
印刷物(主として図書館の蔵書)についてであるが、こ
こで見落としてはならないのが筆記用の水性インキによ
るペン書きの原稿用紙対策である。文豪と敬われる人た
ちや多くの文化人の残した原稿用紙、手紙、葉書等は文
学館、記念館等で展示され、或は保存されているがその
殆どが酸性紙であり、ペン書きである。これらのものを
脱酸処理しようとするとき、水溶液によるアルカリ物質
の添加は行えない。水性のインキはどのような前処理を
しても水に弱く、霧ふきなどで湿らせただけでインキの
文字はにじんでしまう。 【0004】 【課題を解決するための手段】以上のことがらから酸性
紙対策として求められる絶対的条件として、 1、水を媒体として用いないこと。 劣化のはげしい紙は水でとろけるおそれがある。ペン書
き原稿用紙の筆記用インキは水でにじんだり流れ去った
りする。水で紙は変形する。 2、劣化した紙質の補強ができること。 脱酸処理により劣化の進行が止ってもそのままでは紙の
強度は劣化の固定であって復元はしない。 3、アルカリ物質の注入浸透により脱酸処理後もアルカ
リ性を保ち得ること。 4、速乾であること。 熱可塑性高分子物質の一種〈ホットメルト〉はそれ自体
柔軟性があり、これを有機溶媒で溶かした液を紙に浸透
させて同溶媒を気化乾燥させると紙繊維のあらゆる部分
に〈ホットメルト〉の極く薄い被膜が付着する。この時
紙の風合は変わらず強度と▲撥▼水性だけがます。また
同じ溶媒で洗滌すれば完全除去できる性質をもってい
る。この熱可塑性高分子化合物〈ホットメルト〉の有機
溶媒で液状としたものにアルカリ物質を含ませて劣化し
た酸性紙に注入浸透させれば脱酸と紙質の補強が同時に
行える。二つの別々の役割をもつ物質を有機溶媒を介し
て劣化した紙に注入浸透したのち有機溶媒の気化後夫々
の物質が必要な役割を果すことになる。 【0005】 【発明の実施の形態】 熱可塑性高分子物質〈ホットメルト〉 重量比 20 有機溶媒〈トリクロロエチレン〉 300 水酸化ナトリウム 5 水道水 2 非イオン性界面活性剤 2 酸化マグネシウム 1 熱可塑性高分子物質〈ホットメルト〉20に有機溶媒
〈トリクロロエチレン〉300を加え、加熱溶解する。
この溶解液を第I液とする。水酸化ナトリウム5に水道
水2を加えて加熱して溶解し放置後40°C以下に温度
が下ったときに非イオン性界面活性剤2を加え攪拌均一
化する。これを第II液とする。第II液に第I液を少
量ずつ注ぎながら強く攪拌する。この時第I液の温度は
第II液の温度より5°C以上低くなければならない。
第I液と第II液の温度が夫々高すぎると液中に含まれ
る熱可塑性高分子物質と水酸化ナトリウムの一部が強く
反応し沈澱物を生ずる。この時には上澄みを第I液の容
器に戻し沈澱物を再び加熱して液状にしてから冷却し、
除いた上澄みの第I液を加え充分両液の混合をはかる。
第I液と第II液の混合終了後酸化マグネシウム1を加
え見た目に均一になるまで攪拌するか、密閉して容器ご
と強く振り混ぜる。この液を第III液とする。この第
III液が本発明の新物質で劣化した酸性紙の脱酸兼紙
質補強剤である。この紙は濃厚原液である。第III液
を酸性紙の脱酸と紙質の補強のために使用するには、劣
化の程度により希釈する。第I液を重量比100から4
00、補強力が低くてよいときには有機溶媒のみ400
程度の範囲内で加える。 【0006】 【発明の効果】本発明の新物質である第III液を劣化
した酸性紙に注入浸透させたのち放置しておくと15〜
18秒程度で溶液中の有機溶媒は気化して乾燥する。こ
のとき周辺を加熱、通風をよくすると乾燥時間はより早
くなる。乾燥と同時に水酸化ナトリウムを均一に含んだ
熱可塑性高分子物質が注入された酸性紙の紙繊維のあら
ゆる部分に付着し、紙の繊維どうしを接続して連続体と
し、また繊維間の空隙をうめる役割を果すと同時に均一
に含まれる水酸化ナトリウム希薄液が紙繊維のすべての
部分に供給されることになり、酸性紙中の酸に作用して
“酸”の性質を除く作用をする。酸化マグネシウムは高
分子物質と水酸化ナトリウムの作用、及び水酸化ナトリ
ウムと紙繊維の間で緩衝作用をし、また酸化マグネシウ
ム自体も脱酸に寄与する。第III液を紙に注入浸透し
たときの紙質強度増加について岐阜県紙業試験場に依頼
して得た試験報告を 【表1】に示す。尚 【表1】の試験の補足として 【/表2】に1942年頃産の更紙の引張強度試験結果
を、 【表3】に古新聞紙の表裏2頁分を表と裏の2枚に剥離
したものの縦目、横目夫々の引張強度、 【表4】にはティッシュペーパーの引張強度試験の、夫
々注入浸透前後の引張強度変化を示す。併せて 【表5】に於て脱酸試験結果を岐阜県紙業試験場の試験
報告書として記載する。 【表1】から 【表4】にいたるまですべての項目で紙の強度は引張試
験で1.17倍から4.07倍まで強度が増している。
耐折強度は縦目で2.1倍、横目で測定不能、つまり1
回も折ることが出来ない弱さのものが19回も折れに耐
えられる等著るしく紙質の補強をなし得ている。 【表5】はPH試験結果で、左欄で第III液の希釈別
配合比に対応するPHの変化を記した岐阜県紙業試験場
の試験報告書である、左欄の左から有機溶媒、熱可塑性
高分子物質、水酸化ナトリウム、水道水、酸化マグネシ
ウムとなっており、酸化マグネシウムは加えたものと加
えないもののを比較検討のため試験した。尚、非イオン
界面活性剤は記載を省略。 【表5】は本発明物質の第III液が酸性紙の酸に対し
て注入浸透したときにどのような脱酸結果をもたらすか
を確かめるために行った実験結果で、中性の和紙で銘柄
大唐紙を、試薬で塩化水素35%塩酸に容積比12倍の
水道水で希釈したのち自然乾燥したものを原紙としてこ
れに希釈の割合を変えた第III液を注入浸透して得た
PHの数値である。希釈割合による差はあるが脱酸効果
が認められる。 【0007】 【実施例】本発明物質の第III液を劣化した酸性紙に
作用させるには、 (1)ハケ等により紙の両面よりの注入浸透。 (2)槽内でのドブ漬け。 (3)両面よりのスプレー。 (4)書籍等は1頁ずつのハケ塗りか閉じたまま小口よ
り圧搾注入。 等を施したのち有機溶媒の気化乾燥をはかる。乾燥は放
置自然乾燥のほかに、加熱、送風或はこの両者の併合方
式だと乾燥速度は早まる。乾燥により気化した有機溶媒
は回収再使用をはかる。 【0008】 【使用例】 1、書籍、雑誌、新聞紙等の印刷物の脱酸と紙質の補
強。 2、水性インキ使用の手書き原稿用紙の脱酸と紙質の補
強。 3、書画の修復。触れれば粉になるほど劣化した紙本の
書画、墨書の墨が粉になって紙の上にのっている状態時
の墨書文字の固定。 4、書画洗滌の前処理、色止めに従来用いられていたド
ーサ、ホルマリンにかえて用いる。 5、レプリカ印刷用和紙のタッブサイジング剤、和紙に
対する印刷効果が極度に向上する。 【0009】 【使用不適応紙】 1、複写機によるコピー紙 2、感熱紙 【表1】 【表2】 【表3】【表4】 【表5】【表5】の説明 本表は本発明物質の希釈割合によるP
H値を求めたものである。 試作品 (1)そのままの原紙とは塩化水素35%の塩酸に容積
比で12倍の水道水を加えて希釈した希塩酸溶液を品名
大唐紙に浸したのち自然乾燥したもので(2)以下
(8)までの脱酸試験の基礎紙とした。 配合比 (2)から(8)の試験品名欄の斜線で区切られた数字
は、(2)に例をとると200/13.5は有機溶媒2
00と、熱可塑性高分子物質13.5で第I液、2.5
/1は水酸化ナトリウム2.5と水道水1で第II液に
相当する。非イオン性界面活性剤は省略。 PH (2)から(6)までは夫々配合の比率を変えてPHを
求めたので、併せて(7)では酸化マグネシウムMgO
1を加えた結果、(8)では(3)の試験品を溶媒洗滌
によって熱可塑性高分子物質を除去したのちのPHであ
る。(3)のPH6.4から第I液中に含まれていた熱
可塑性高分子物質を除くと(8)のPH10.1までP
Hは増加する。これは熱可塑性高分子物質が脱酸作用を
ゆるやかに行うことを示している。(4)のPH6.3
に(7)の如くMgO1を加えればPHは9.7へと増
加する。MgOの効果は大である。 希釈 【0005】 【発明の実施の形態】に示す第I液の有機溶媒と第II
液の水酸化ナトリウムの割合は300対5であるが 【表5】の希釈割合は次のとおりである。 原液 5/300を1としたときの希釈倍率 (2) 5/400 1.33 (3)(8) 5/500 1.66 (4)(7) 5/600 2.00 (5) 5/700 2.33 (6) 5/900 3.00

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 (イ)熱可塑性高分子物質に有機溶媒を加えて加熱液状
    にした第I液 (ロ)水酸化ナトリウムに少量の水を加えて加熱液状に
    したものに非イオン性界面活性剤を加えて攪拌した第I
    I液 (ハ)第II液に第I液を加え均質になるまで攪拌した
    のち酸化マグネシウム粉末を加えた第III液 (ニ)以上第II液に第I液を加えて得られる酸性紙の
    脱酸兼紙質補強剤第III液の製法
JP26006396A 1996-07-30 1996-07-30 酸性紙の脱酸兼紙質補強剤の製法 Pending JPH1046497A (ja)

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JP26006396A JPH1046497A (ja) 1996-07-30 1996-07-30 酸性紙の脱酸兼紙質補強剤の製法

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999051819A1 (en) * 1998-04-03 1999-10-14 Preservation Technologies, L.P. Deacidification of cellulose based materials using hydrofluoroether carriers
KR20010070082A (ko) * 2000-01-10 2001-07-25 이인수 규소계 운반체를 이용한 각종 인쇄물의 장기 보관을 위한처리제
CN111501409A (zh) * 2020-04-22 2020-08-07 齐鲁工业大学 一种纸张脱酸用的混悬剂

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